引用元
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1223989313/



 
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/14(火) 22:01:53.30 ID:IQ9/htA1O
女「よー、男ー」
男「女じゃないか。何やってんだこんなとこで」
女「昨日マージャンで大敗してさー、賭け金の支払い逃れるために公園で段ボール暮らしなのー」
男「そういう刹那的な生き方はやめろっつってるだろ?」
女「えへへー、でも慣れると病みつきだよ?」
男「そんな生活してると、早いうちに死ぬぞお前」
女「いいじゃないか、死に急ぐも生き急ぐも、結局は同じことなのさ」
男「……はぁ」


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/14(火) 22:11:18.95 ID:IQ9/htA1O
男「なぁ、ひとつ聞いていいか?」
女「なんでもござれよー」
男「お前の思う無頼の定義って、何よ」
女「うーん、そうだねー」
女「死に生くことを天に預け、明日行く道を風に聞く、かな?」
男「全く分からないんですが」
女「つまりは、こーいうこと」

----スタスタ、ふらっ

男「!?、危ないっ!」

----キキーッ

男「はぁ…はぁ…いきなり車道に飛び出す奴があるか!」
女「どうやら天は、私にまだ生きろと言っているようだ」
女「神様も私を見捨ててないし、男も私を見捨ててない。つまりはこれが無頼の生」
男「分かった、分かったからもう危ないことしないでくれ…」
女「ふひひ」


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/14(火) 22:22:27.48 ID:IQ9/htA1O
女「男ー、見て見てー」どさっ
男「おま、どうしたんだその金!?」
女「たまたま同席した小金持ちからふんだくったのー」
男「ひーふーみーよー…百万の束が十個ある……」
女「こんだけあれば、当分食いっぱぐれはないねー」
男「いやお前、こんだけ持ってて段ボール暮らしはないだろ…」
女「たくさんお金があると、逆にここのが落ち着くんだよー」
女「それに、私の居場所は男しか知らないから、お金がなくなったら男が盗ったってすぐ分かるしねー」
男「ぬう、世知辛い…」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/14(火) 22:27:44.41 ID:IQ9/htA1O
男「女でこういうことすんのって、勇気いらないか?」
女「怖いのは最初のうちだけさ。この辺は割と治安もいいしね」
男「それでも、怪しい奴とか暴漢とかいない訳じゃないだろ?」
女「さいですなぁ」
男「その…襲われたりとかの不安は、ないのか?」
女「なーに、レイプされかかったら舌噛んで死んでやりますよー」
男「なるほど、俺なんかとは覚悟がちがうのね……」


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/14(火) 22:34:38.91 ID:IQ9/htA1O
女「男ー、ねこ拾ったー」
男「ねこは雨避けに段ボールを使っただけだと思うが」
女「ねこはねー、餌付けしとくといいことがあるんだよー」
男「ほう、どんな?」
女「不審者が近づいたら、シャーフー言って威嚇するの。だから番犬代わりになるの」
男「へー」
女「そんでね、いざという時には非常用の食料にも!!」
男「それはやめとけ。野良猫なんか食ったら病気になるぞ」
女「三毛猫は特に美味しいんだって!」
男「だから食うなってば」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/14(火) 22:48:22.96 ID:IQ9/htA1O
女「にゃーにゃーにゃー♪」
男「野良、すっかりなついたなぁ」
女「なんかこいつ、私と気が合うみたいだねー」
男「猫は寂しがりの人間になつくらしいぞ」
女「むー、それじゃ私が一人でいるのを寂しがってるみたいじゃんかー」
男「うむ、そりゃすまん」
女「きっと、こいつと私は野良同士だから気が合ったのさ」
男「野良同士、か。確かにな」
女「猫なのに、一匹狼とはこれいかに」
男「誰がうまいこと言えと」


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/14(火) 22:58:02.75 ID:IQ9/htA1O
女「おっす、男ー」
男「おっす…うわくさっ!」
女「えー、何がー?」
男「お前だよお前、ズバリ風呂入ってないだろ!」
女「そういやーここ一週間ほど入ってなかったわー」
男「いくら涼しくなったからって、一週間はないだろ」
女「まぁ、風呂くらい入らなくても死にはしない」
男「こっちの鼻が死ぬんですが」
女「すまん、じゃあ今日あたり巣に戻って風呂入るわ」
男「そうしろ」


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/14(火) 23:06:21.76 ID:IQ9/htA1O
女「そうだー、男も私の巣に来るか?」
男「巣……ってえと、お前んち?」
女「おうよー。お前にはいつもお世話になってるからなー」
男「ありがたいが、俺なんかが行っていいのか?」
女「水道水くらいなら振る舞ってやろー」
男「……なら、お邪魔しようかな」

-----------------------------------------------------------------------------

女「ようこそ、我が城へー」
男「……超殺風景だな」
女「無頼が物を持たないのは、基本だろ?」
男「ねぇ、なんで部屋に中年向けのエロ本があるの?」
女「そういう雑誌には、たまにアングラ系の求人が載ってるから拾ってくんの」
男「徹底してるのな、お前って…」


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/14(火) 23:22:22.56 ID:IQ9/htA1O
女「さ、風呂風呂ーっと」
男「え?……ちょ、おま!」
女「どーかした?」
男「どーかした?じゃねえよ、こんなとこで脱ぐな!」
女「こんなとこでって言われても、ここで脱がなきゃどうやって風呂入れってんだよー」
男「え?」
女「え?」
女「あーあーそうか。男んちにはちゃんとしたシャワーとかあるんだっけ」
男「ここもしかして、風呂なしだったりとかする?」
女「そう。だからうちの風呂はこれだよ」

----バンバン

男「それは風呂ではなく、台所のシンクというのでは…」


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/15(水) 00:06:58.80 ID:dgFfzCMXO
男「女ー、差し入れ持ってきたぞー」
女「おー男ぉ、さんきゅーなー」
男「……なんかテンション高くね?」
女「ちょっくら酒をば食らっているところだ」
男「真っ昼間から飲酒とは、うらやましい限りだ」
女「そういうなよー、こちとら酒なんざ滅多に飲めないんだからさー」
女「そうだ、お前も一緒に飲まないか?」
男「悪いけど、午後一の講義に出とかないと単位やばいからさ」
女「ふーん、大学生も楽じゃないねー」ぐびぐび
男「お前さんの生活よりは楽だよ、間違いなく」


79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/15(水) 03:10:57.55 ID:dgFfzCMXO
女「男ー、私ちょっくら旅に出てくるわー」
男「…旅?」
女「そう。流れ流れて自分の死に場所を探すんだよー」
男「そっか……どのくらいで帰ってくる?」
女「おいおい、無頼にそれを聞くのは野暮ってもんだろー?」
女「ま、しいて言うなら風がこっちに吹いた時かなー」
男「……そうか」
女「うん、ほいじゃ明日の朝には出ていくから」
男「おう、分かったよ」
女「餞別とかいらないからな?全然気にしなくていいからな?」
男「………了解、なんか食いもん持ってくるわ」
女「できるだけ日保ちするものがいいなー」
男「…おk、把握」


80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/15(水) 03:21:05.65 ID:dgFfzCMXO
女「旅立ちのっ、朝ー!」
男「今、朝五時だぞ……元気だなおい……」
女「旅に出る日の朝は、私はいつもこんな風だぞ?」
男「遠足前の子供かよ」
女「それに、こんな時間にわざわざ起きて、見送りに来てくれる奴もいることだしなー」
男「へいへい、どーせ俺はヒマですよ」
女「そんなに自分を卑下するもんじゃないぞ、男。お前がきてくれて嬉しかったのは本当なんだからな」
男「……」
女「ところで、餞別はどした?」
男「ん、ああ。ほれ、缶詰め類その他食料の詰め合わせだ」
女「おー、悪くないねー」
男「大事に食えよ?」
女「もっちろん!」


81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/15(水) 03:33:08.73 ID:dgFfzCMXO
女「ほいじゃー、準備も出来たし行きますか」
男「………あのよ、女」
女「『行ってくれるな』とかは、言ってくれるなよ?」
男「ぐっ……ば、バーカ。誰がそんなこと言うか」
女「なら良かった。お前なら私のしたいことは止めないからな」
女「これで心置きなく、旅に出ることができるよ」
男「…」
女「土産話しか持って帰れないけど、楽しみにしてろよー」
男「……おう」
女「じゃ、また会う日まで達者でな」
男「お前も元気でいろよ」
女「おー!」


男「……行っちまったか」
男「惚れた女の息災を願うしかできない俺って、無力だなぁ…」
男「………はぁ」


97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/15(水) 05:42:40.29 ID:dgFfzCMXO
男 「……」
悪友「おい、男」
男 「……」
悪友「おいってば」
男 「……はぁ」
悪友「こりゃあ重症だな」
男 「なぁ、悪友よぅ…」
悪友「今にも死にそうな顔をしてどうした」
男 「あいつ、今ごろどこで何してんのかなぁ……」
悪友「知るか。あいつって誰よ」
男 「教えねーよ馬鹿」
悪友「なんでだよアホ」
男 「無頼に惚れたって、ロクなことないからだよ」
悪友「意味分からん」


98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/15(水) 05:49:23.87 ID:dgFfzCMXO
男「……」
男「……」
男「……女にやるつもりで、学食から残り物もらってきちまった」
男「しょうがない、猫の餌にするか」


99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/15(水) 05:56:49.54 ID:dgFfzCMXO
一方その頃、女はというと----

女「潮風サイコー!」
女「やっぱ海はいいねぇ、一人になるには絶好の場所だ」
女「あそこで鳴いてんのは、ウミネコか?」
女「私って、つくづく猫に縁があるなぁ」


104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/15(水) 07:44:04.31 ID:dgFfzCMXO
女「ウミネコにゃーにゃー、ウミネコにゃーにゃー」
女「野良と渡りにゃ海が合う、ってね」
女「やっぱ私は、一人が好きだなぁ。死ぬにしろ生きるにしろ、全部一人でやるんだろうなぁ」
女「あ、でも男なら隣にいてくれてもいいかな」
女「あいつはいい奴だよ。私みたいなワケわからんもんにも優しいし、おっちょこちょいだけど根はしっかりもんだし」
女「……いかんいかん、人は一人、人は一人」
女「肝に銘じておかねーとねー」


105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/15(水) 08:11:53.64 ID:dgFfzCMXO
数日後

男「おっと、また公園きちまった」
男「女はいねぇっつうのに、俺も学習しないよなぁ」
女「どーおせおいーらーはヤクゥザなあにーきー、分かーっちゃいーるんだいーもおーとよー」
男「……ん!?この寅さんのテーマソングは……」
女「よっ、男!」
男「女!」
女「早すぎるけど、帰ってきちゃったよ」
男「そうか…でも、なんで?」
女「そうさねー、風に倣うのが無頼なら、風に抗うのも無頼だってことなんかねー」
男「お前の言い回しはいちいち小難しいが、帰ってきてくれて嬉しいよ」
女「そうだ、帰還祝いになんか飯おごれ」
男「いいぞ、なんでも食え」
女「マックとか、食ってみたいな」
男「おう、好きなだけ食えよ」


116 名前:昼休みを利用して 投稿日:2008/10/15(水) 13:06:10.79 ID:dgFfzCMXO
女「よーす男、久しぶりー」
男「おぉ、女。なんか久々に顔見た気がするが、何してたんだ?」
女「そりゃもちろん、労働っすよー」
男「なんの?」
女「ストリップ劇場の仕事」
男「ブッ……まさか、脱いだのか!?」
女「んなわけないっしょー。舞台の証明とか雑用とかしてたんだよー」
男「そうか……んなら良かった」
女「大体、ぽっと出の新人がプロのストリッパーに叶うわけないだろ?お前はストリップをなめすぎだ!」
男「へいへい、すんませんでしたっと」


117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/15(水) 13:17:12.95 ID:dgFfzCMXO
女「さみーよー」ガタガタ
男「冬服、もってないのか?」
女「全部巣に置いてあるー」
男「なら、取りに帰れよ」
女「今は駄目ー、博打の負債取り立て人が来てるからー」
男「また麻雀か?懲りない奴…」
女「さーびー。段ボールの中もさみー」
男「ったく……これ着ろよ」
ふぁさ
女「ふぇ…いいのか?」
男「俺が見過ごして凍死させるよりはマシだ」
女「ふへへ、ありがとー」
男「後でちゃんと返せよ?」
女「ぬふふ、これ男の匂いがするー」
男「聞いてないし…」


149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします ただいま帰りました 投稿日:2008/10/15(水) 21:00:15.27 ID:dgFfzCMXO
男「今までで一番ヤバかった仕事って何よ」
女「うーん、運び屋かなぁ」
女「指定された場所まで行って、何かがつまった鞄を渡すだけで百万ももらっちゃった!」
男「おい……それってかなりヤバいんじゃ……」
女「後をつけられなかったかとか、鞄の中身を見てないかとか色々聞かれたけど、結局なんもなかったよ?」
男「単なる結果論じゃんよ…」
女「危ない橋わたんないとお金なんか手に入んないよー」
男「頼む。お前の為じゃなくて俺の為にやめてくれ……聞いてるだけで胃がキリキリしてきた……」


150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/15(水) 21:07:39.93 ID:dgFfzCMXO
女「さー、今日も一発行きますかー!」
男「また麻雀か?よく飽きないなぁ」
女「生活のためっすからー」
男「他の賭け事はしないのか?競馬とかパチンコとか」
女「んー、なんちゅうかねー」
女「人と人との関係が希薄な博打は、打つ気がしないんだよー」
男「なるほどな。じゃあ花札とか丁半博打は得意な訳か」
女「お、いいねー!なんなら今度一緒に打つかい?」
男「ケツの毛までむしられそうだからやめとく」


151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/15(水) 21:16:31.49 ID:dgFfzCMXO
男「もしも俺が、博打で負けた金を取り立てにきたヤクザだったらどうする?」
女「男がそう名乗り出た時点で、潔く死ぬ」
男「お……マジで?」
女「うん。だって一宿一飯の恩義を忘れたら、人間じゃあないもの」
男「そうか……なんかちょっと嬉しいな」
女「でも、死ぬ前に金玉蹴りあげて腕もぎ落とすくらいはするかもねー」
男「………」


152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/15(水) 21:43:26.72 ID:dgFfzCMXO
女「………」パラパラ
男「珍しく読書中か、何読んでんの?」
女「林芙美子ー」
男「聞かない名前だなぁ…」
女「知らないの?林芙美子はね、日本一の女無頼さんなんだよ!」
男「へー」
女「ひとつところに定住せず、人との馴れ合いを嫌った無頼人」
女「あぁ…私もこんな風になりたいなぁ…」
男「心配しなくても、充分なってるから」
女「いやー、まだまだ」



156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/15(水) 22:32:27.19 ID:nCocnmZU0
女「・・・おつかれしたー」

女「・・・ったく。女殴りながらじゃないと、イケないなんて。世も末だぁね」
女「まぁ、顔だけは避けてくれたし?いい金にはなったかな」
女「ガキの頃から、殴られるのだけは慣れてるさ」
女「あ〜あ、ったく。あいつらも金払ってくれればよかったのになぁ」

女「・・・っん?電気ついてる?」
女「滞納してた電気代、払ったっけか?」

男「おう、差し入れだぞ。・・・どうした?その格好?」
女「・・・なんでもねぇよ。こっちの事情だ」
男「・・・そうか。出来ることはあるか?」
女「サケとメシ、奢れ」
男「・・・おまえ、そればっかりだな」
女「それ以外にいる物なんて、ねーよ」


157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/15(水) 22:32:46.20 ID:nCocnmZU0
男「・・・いつまで、こんな事を続けるんだ?」
女「すみませ〜ん、焼酎ロック! ・・・で?」
男「聞けよ。」
女「聞いてるよ。お前、間違ってる。『こんな事』じゃない。『そんな事』だ」
男「・・・大して違わないだろう?」
女「違う・・・。決定的に違うね。お前と私は、所詮他人だ」
男「俺は、そんな事は・・・」
女「いいから聞けよ? まず、俺はお前の事は嫌いじゃない」
男「・・・おう」
女「だが、俺は俺のことが大っ嫌いだ」
男「なっ!?」
女「俺ってのは結局、何処まで行っても『半人前』で『不完全』で『役立たず』なんだ」
男「そんな事は・・・」
女「いいから聞け。これはお前の為に言ってるんだ。そんな『役立たず』にお前は何を期待してるんだ?
  同情か?憐憫か? ・・・だったら要らない。今すぐ金置いて消えろ。
  俺が好きなのか? 言っちゃ何だが・・・子供も産めないし、将来もないような女だぞ?」
男「そんなことは・・・ない」
女「お前には、感謝してる。・・・本当だ。
  でも、だからこそ・・・俺を嫌いになれ? なっ?」

162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 00:23:59.74 ID:/bZQ1OnH

男「うぅ・・・吐きそう」
女「お前、大して強くないのに飲むからだよ」
男「お前が飲ませたんだろうが・・・」
女「そうだったか? ・・・って本当に大丈夫か?」
男「・・・大丈夫・・・だ」
女「どこがだよ。 今日は泊まっていけ」
男「しかし・・・」
女「その様子じゃ帰るの無理だろうが?」
男「・・・スマン」

女「ちょと待ってろ。今、風呂入れるから。先に入れよ?」
男「しかし・・・」
女「いいから!! タオルはココな? 下着は・・・、俺の使うか?」
男「断る」
女「だな。とりあえずバスタオル使ってろ。コンビニで買ってくるわ。他に何かいるか?」
男「・・・女?」
女「んっ?」
男「・・・スマン」
女「男が軽々しく謝るな、馬鹿」

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 00:24:33.09 ID:/bZQ1OnH0
女「ただいま。男〜?」
男「・・・ん?」
女「下着ココに置いておくな?」
男「あぁ。スマ・・・」
女「謝るな、馬鹿」

男「上がった」
女「気分は?」
男「マシになった」
女「そうか。次、俺も入るか」
男「お前・・・脱衣所で着替えろよ」
女「バストイレ共同で、そんなことできるかよ」

男「・・・その傷は・・・」
女「ん〜? あぁ。みっともないもの見せちゃったな
  すまんな、気持ち悪いだろ?」
男「・・・おまえ、やっぱり・・・」
女「・・・その話は、もう終わった」
男「だが・・・」
女「いいから、もう寝ろ。明日も講義だろ?学生クン?」

164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 00:25:33.70 ID:/bZQ1OnH0
女「上がった」
男「だから、脱衣所使え。・・・俺も男だぞ?」
女「この傷を見て、それでも・・・。ってんなら犯してもいいよ」
男「・・・本気で言ってるのか?」
女「今日、客のデブに言った『もっと、激しくして』よりは、本気だよ」
男「・・・お前」
女「俺のこと、嫌いになれたか?」
男「・・・いいや」
女「お前は・・・、馬鹿だ。大馬鹿だ」
男「そうかな?」
女「・・・きっと、そうだ。この、馬鹿やろう・・・」


171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 00:53:50.15 ID:Sezxreci0
女「銭湯行ってくるー」
男「銭湯? わざわざ行かなくても、うちの風呂くらい使ってもいいぞ?」
女「他人の風呂なんて借りてたまるか。それに銭湯はいいぞー。他人と情報交換ができるからな」
男「なるほどね。道理で、街の事情に詳しいわけだ」
女「でも最近は、銭湯に来る人が少ないな。寂しいや」
男「……寂しい?」
女「ん? おかしいか?」
男「いや、なんとなく……」
女「まぁいい、行ってくる」

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 01:12:00.73 ID:Sezxreci0
男「あれ、女だ。何してるんだおい」
女「……かつおぶしじゃない。まず言葉を選ぶ。太くてよく乾いた言葉を……」
男「ん?」
女「……血合いの黒い部分から、言葉を正しく削ってゆく。言葉が透きとおって
   くるまで削る。つぎに意味を……」
男「おいおい、女。しっかりしろー」
女「……あー。男か。何してるんだこんな時間に」
男「こっちの台詞だ。女一人で何してるんだ」
女「知らない外人に薬貰ったんで、試してみたら……。って、ここどこだ」
男「とりあえず帰るぞ。もう薬なんてやるなよ」
女「……気持ち悪い。頭がくらくらする」
男「それ見ろ。禁断症状が出たら相談しろ、縛り付けてでも押さえるから」
女「……もうここで寝るー」
男「こらこら」

177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 01:33:09.61 ID:Sezxreci0

男「女ー。お裾分けに来てやったぞー」
女「んー? サツマイモかー。くれるのなら貰う」
男「お袋がわざわざ送ってくるんだよ。まだ子供だと思われてんのかね」
女「仕方ないよ。親はいつでも子供が可愛いんだから。子がいくつになっても、
   親にとっては子供なんだから」
男「……そういや女は、家族とは……」
女「お、いいサツマイモだ。わざわざどうもー」
男「……」

178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 01:42:12.85 ID:Sezxreci0
女「暇だ」
男「それは良かったな。俺は忙しさで死にそうだ」
女「無頼と言っても、大してする事は無いなー。仕事も学問もやってないんだから、
   そりゃ暇になるわー」
男「じゃあ俺の為に何か飲み物を作ってくれないか? 熱いコーヒー」
女「図書館でも行ってくるー。夏目漱石でも読むかな」
男「おーい、コーヒー」
女「……無頼に頼るなよ」

179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 01:54:52.69 ID:Sezxreci0
女「髪が伸びたなぁ……」
男「せめて前髪は切れよ。近くにいい美容院あるぞ」
女「髪くらい自分で切るよ。ハサミどこだっけか……」
男「……あのなぁ女」
女「ん?」
男「女性なんだから、少しは身嗜みとか気を使え。元が良いのに勿体無い」
女「アホかお前は。女が化粧するのは男に媚びるためでしょうが。
   私には関係ないの。お、あったあった」
男「じゃあせめて、俺が切ってやるから。貸せ」
女「だから髪くらい自分で切るって。返せー」

181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 02:20:25.83 ID:Sezxreci0
男「女、誕生日いつだ?」
女「丁度、三日前か。もう過ぎた」
男「あら。何かプレゼント贈ろうと思ったんだが」
女「止めてくれ、気持ち悪い」
男「ひどいなぁ」
女「ただの知り合いから貰うなんておかしいだろ。
   そんな金があるなら、自分の勉強に使った方が有意義だぞー」
男「勉強より大事な物がこの世にはある。俺はそう信じている」
女「少なくともそれは、他人に物を贈るのとは違うよ」

184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 02:43:17.61 ID:Sezxreci0
男「ん? なんだこれ」
女「こら、人の家を勝手に漁るな。大事な物もあるんだぞ」
男「女。これなんだ?」
女「……? 雪駄か。こんなのあったかな……」
男「ああ、サンダルみたいな物か。高そうだな」
女「うん。高そうだ。
   そうだな、質屋に買ってもらうか。酒代くらいにはなるだろ」
男「ちょっと待て、大事な物だったらどうするんだよ」
女「大事な物なら忘れないよ。大方、何かの折で貰ったのさ」
男「でもなぁ……。こんなの普通、理由が無いなら貰わないだろ」
女「女々しいやつめ。思い出なんか、抱えた所で荷物になるだけだぞ」
男「でもなぁ……」

186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 02:52:36.00 ID:Sezxreci0
女「小学校の教科書に、『スイミー』という話があった」
男「懐かしい。一人が弱くても、集団になれば強いって話だったな。
   どうしたんだ、いきなり」
女「いや。現代日本の人間には、当てはまらないと思って」
男「お前だろ」
女「そうだけど。時々考えるよ、一人と集団のどちらが幸せなのかって」
男「集団だろ。少なくとも、寂しくない」
女「そうだな。寂しくないな。でも、煩わしいじゃないか」
男「それは人によりけりだろ……」


198 名前:大量の支援感謝 投稿日:2008/10/16(木) 09:36:48.87 ID:VAJxvFZaO
女「……」グスッ、グスッ
男「なに泣いてんだよ、らしくないな」
女「……猫が、車に轢かれて死んじゃった……」
男「……そうか、知らなかったとはいえすまん」
女「謝らなくていい。ただ、この子のために手を合わせてくれないかな」
男「分かった」

女「良かったね、お前の死を悼んでくれる奴、私以外にもいたよ」グスッ
男「お前でも、泣くんだな」
女「涙を枯らすほど、まだもうろくしちゃいないよ」
男「無頼っぽくないな」
女「無頼である前に人間であれ、だよ」


203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 10:40:51.84 ID:VAJxvFZaO
女「男ー」
男「何だ」
女「男は車とか乗らないのか?」
男「いちおこれでも貧乏大学生っすから、免許なんか持ってません」
女「なんだー、じゃあこれはいらないな」

どんっ

男「何だそれ?」
女「ガソリンー」
男「……念のため聞こう、どうやって入手した?」
女「盗難ー」
男「やっぱりか…」
女「ちょっと前なら金属窃盗とかもお金になったけど、今じゃ警戒強くなってるしねぇ」
男「で?そのガソリン、俺が買わなかったらどうすんだ」
女「裏ルートでさばくよ?」
男「……たくましいな、ある意味うらやましい」


204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 11:24:21.88 ID:VAJxvFZaO
女「男が卒業したら、男のヒモになろっかなー」
男「迷惑だ。やめろ」
女「どっかに麻雀するお金出してくれるパトロンいないかね」
男「世の中そう甘くはない。って、言わなくても分かってるよな」
女「けど、楽な生活求めだしたら無頼とは呼べないよね」
男「いや、知らんけど」
女「男ー、お前は私みたいになるんじゃないぞー」
男「頼まれてもならんから、安心しろ」


217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 16:31:38.29 ID:VAJxvFZaO
女「困った」
男「なにを困ることがある」
女「家賃滞納してて、マンションおん出された」
男「マジか、どうすんだよ」
女「冬場じゃ段ボールハウスにも限界あるしねー」
男「………ならさ、おれんとこ来るか?」
女「男んち?そういや行ったことないね」
男「どうせ他にあてもないんだろ?だったら来いよ」
女「あてがない訳ではないが、まぁ男んちなら気を使う必要もないか」
女「じゃあお言葉に甘えて、ちょっくら厄介にならせてもらうよ」
男「お、おう!(同棲ハァハァ…)」


218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 16:39:01.98 ID:VAJxvFZaO
女「お邪魔しま〜。なかなか小綺麗にしてるじゃないか」
男「まーな、掃除とか嫌いじゃないし」
女「お、エロDVD発見」
男「なにっ!?」
女「嘘だよー、その焦りようはどっかに隠してあるな?」
男「うっ……」
女「図星か。ならお前がいない時にゆっくり探させてもらおー」
男「駄目だこいつ……精神的にはただのオッサンだ……」
女「んじゃ、これからよろしくー」


220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 16:56:11.83 ID:VAJxvFZaO
男「夕飯できたぞ」
女「oh、サンキューサンキュー」
男「今日はカレーだ」
女「独り暮らしらしからぬマメさだのぅ、感心感心」
男「誉めても何も出ないぞ?」
女「別に気にしなくてよい。ただの本音だから」
男「…まぁ、食えよ」
女「うむっ」パクッ
男「どうよ?」
女「……うん、美味い!」
男「そうか、良かった」
女「この料理の腕前、私が女じゃなかったらほっとかないのに」
男「女じゃないのかよ?」
女「私は無頼だよ?無頼には、女も男も関係ないの」
男「じゃあお前、今まで惚れた男とかいないのか?」
女「うん。だって人の助力を当てにしたら無頼じゃなくなるし」
男「そっか…」
女「男んちに間借りしてんのはまた別だけどさ」ガツガツ
男「………」


226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 17:54:20.21 ID:VAJxvFZaO
女「てやってやっ」----ずびしっずびしっ

男「何してる?」

女「シャドーボクシング」

男「ボクシングなんかやるのか」

女「うん。見よう見まねだけどね」

男「そこまでしなきゃならんかね、女さん?」

女「無頼の身としては、強くあるのも当然なんだよね」

男「そりゃ大変だ」

女「でりゃっ!」ーーずびしっ

女「あ」

男「ん?」

女「今、鏡の中の自分より早いパンチが打てたよ!」

男「ねーよ」


234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 19:20:21.16 ID:VAJxvFZaO
女「男の友情っちゅうのに憧れる」
男「なぜ」
女「女には、拳で語ることができないから」
男「男でもそうそうできることじゃねーよ」
女「でもさ、私が男に生まれてたら、男との関係ももっと違ってたと思うよ」
男「……俺は今のお前以外と、付き合う気はしねーな」
女「何だよそれ、下心?」
男「ちげーよ、お前には女に生まれたことを後悔してほしくないってだけだ」
女「うわー、男ってエロエロだー」
男「そういう意味じゃねえ!」
女「ふふふ、心配しなくても、無頼は自分の人生を後悔したりしないもんだぞ?」
男「それならいいが」


237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 19:39:26.18 ID:VAJxvFZaO
繁華街にて―

男「暇だな〜っと…」

女「待てこらボケェっ!!」

男「!?」
女「あ、男!そいつ捕まえてー!!」
脇役「ひいぃぃっ!」
男「よく分からんが、どりゃっ」

----ぼぐっ

脇「げふっ!?」
女「ハァ…ハァ…ありがと男、助かった」
男「こいつ、ひったくりかなんかか?」
女「そんな一文にもならないことしないよ」
女「こいつ、私との麻雀の負け分払わずに逃げようとしてたから、追っかけてたとこだったんだよ」
男「へー」
女「さ、おっさん。負けた十八万六千円、即金で払ってもらおうか?」
脇「か、金なんかねーよ……」
女「なら、ヤミ金でも何でも頼ってさっさと金作んな!」
女「お天道様は待ってくれても、私は待ったりしないからね?」
男(口上の切り方がプロだな…)
女「分かったらキリキリ歩く!今度逃げたら指一本じゃすまさないからね?」

男(俺の知らない女の顔、か……)


248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 21:01:18.68 ID:VAJxvFZaO
男「おわ、雨だ…」
男「あいつ、濡れてないかな…」
男「気になるな、ちょっと公園までいってみっか」

女「雨か、これじゃ麻雀打ちにもいけないな…」

とんとん

女「おや、誰かね?」
男「おいっす」
女「男じゃないか、なんか用?」
男「お前が段ボールハウスで右往左往してんじゃないかって、心配になってきてみた」
女「ご心配なく。防水加工は完璧だよ」
男「だな、俺が思ってた以上に作りはしっかりしてたようだ」
女「まああがんなよ。ボロいけど、狭いながらも楽しい我が家っていうし」
男「じゃあ…失礼する」


249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 21:13:26.42 ID:VAJxvFZaO
----しとしと

男「雨、やまないな」
女「秋だしね、当たり前さ」
男「台風とか来たらどうすんだ?」
女「いちお、男んち以外にも緊急避難場所は確保してある」
男「そっか、顔広いんだなお前」
女「そうでもないよ。案外自分でも知らないうちに、他人を利用
  してやろうと思ってるだけかもしれないし」
男「俺もその中の一人か?」
女「まさか、男は私の友達だよ」
男「そっか…友達か…」
女「うん。友達」

男「………」
女「………」


250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 21:31:59.81 ID:VAJxvFZaO
男・女「「あのさ」」

男「………どうぞ」
女「じゃあ、遠慮なく…」
女「なんか妙な空気になってるから釘をさしとくけど、君、私なんかに恋するんじゃないぞ?」
男「うぇっ!?」
女「黙ってると告白でもしかねない感じだったから、先手を取らせてもらった」
男「………」
女「図星だね?けどやめといた方がいい」
女「私は明日をも知れぬ根なし草。いつかふらりといなくなって、そのまま帰って来なくなるかもしれない」
女「そんな女の相手をさせて、君の人生を不意にさす訳にはいかないからね」
女「私は、風を頼りに生きるのが好きなんだ。流れ、流れて、いつかは野垂れ死ぬ」
女「そんな女、付き合っても疲れるだけだろ?」
男「……」


254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 22:27:07.40 ID:VAJxvFZaO
男「…俺が、それで良いって言っても駄目か?」
女「それでって……根なし草の、寄る辺ない私でも良いって?」
男「うん」
女「私、不潔だよ?家事とか育児とか、女がすべきことなんにもできないよ?」
男「それでも俺は、お前がいいんだ」
女「なんで?なんで私なんか選ぶんだよ」
女「私はいつか君になんにも言わずに、突然出ていくかもしれないんだよ?」
男「そしたら待つ。お前が帰ってくるのを、ひたすら待つ」
男「お前が流れに流れて死ぬ覚悟をしてるなら、俺もお前を待って死ぬ覚悟をしたってことよ」
男「だから言う。女、お前、俺の側にいてくれよ」
男「俺と、付き合ってくれ」
女「……」


257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 22:38:49.18 ID:VAJxvFZaO
女「……雨、止んだみたいだね」
男「え、あ…本当だ……」
女「段ボールハウスの補修しなくっちゃ」
男「おい、返事は……!?」
女「あのなー、お前にだけは教えとくけどなー」
女「無頼は普通の幸せを手にしようとしたら、途端に不幸になってしまう生き物なんだよ」
女「だから、私はお前にどれだけアプローチされても、ノーとしか言えんのだわ」
男「……あぁ、……そうなのか……」
女「…………それでもお前が、私を待っててくれるっていうならさ」
男「え?」
女「お前は私の、巣になってくれ」


258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/16(木) 22:48:10.24 ID:VAJxvFZaO
男「巣、というと?」
女「そのまんまな意味。私の帰る場所、疲れた時の止まり木」
男「それって、無頼の定義から外れてないか?」
女「自分から告ってきたくせに、文句あっか」
男「いや、ないが」
女「ならよし」
男「存外簡単に決めちまうんだな」
女「別に、あんたと付き合おうと付き合うまいと、無頼の性根は変わらないしね」
男「なら、俺がお前の巣になる意味って俺の満足以外にないんじゃ……」
女「………実を言うと、生まれて初めて人に必要とされて、嬉しかったってのもある」
男「そうなのか?」
女「イエス。納得したなら早く段ボールハウスの補修手伝う!」
男「お…おう!」



268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/17(金) 00:24:31.98 ID:qrop9MdKO
がさがさ

男「女、ここ水漏れして破れてるぞ」
女「……」
男「女?」
女「あ……ごめんぼーっとしてた」
男「何泣いてんだよ」
女「雨粒が目に入ったの」
男「嘘つけ」
女「本当だよー」
男「素直じゃないな、無頼ってのも」
女「無頼は関係ないし」
男「なら、お前が素直じゃないんだ」
女「そうだよ、私はひねくれてんの」
男「素直になれよ」
女「やーだよ、一生素直になんかならないかんな。べぇっ」
男「いいよ別に。それならそれで」
男「ほどよい風向きになるのを、気長に待てばいいだけよ」
女「男も無頼の心が分かってきたね」
男「誰かさんとしょっちゅう一緒にいますから」
女「それもそうだね」

336 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/17(金) 19:02:41.77 ID:qrop9MdKO
女「いたた…」
男「どうしたその怪我!?」
女「麻雀負けてバックレようとしたら、捕まってフルボッコされたー」
男「とりあえず血ぃ拭え。そんで治療してやるからうちにこい」
女「ううん、今男んちいったら男にも迷惑かけちゃう」
男「気にすんな。俺はお前の巣になるって決めたんだから」
女「怖いお兄さん来るぞ?」
男「そんときゃ一緒に逃げりゃいい」
女「じゃあ、頼んだ」
男「軽っ」
女「私もお前に頼るようになっちゃったのかな。無頼失格だね」
男「よいよい、俺としちゃそっちのが嬉しい」
女「男ー」
男「ん、何?」
女「ありがとなー」
男「いいってことよ」


344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/17(金) 20:25:20.63 ID:qrop9MdKO
女「なんかさー」
男「段ボールから顔だけ出してどうした」
女「こーして見ると私って、女スネークみたいじゃね?」
男「ソリッドスネーク知ってんのか」
女「まあね。でもそういえば、潜伏する系のヤバい仕事はやったことないなー」
女「あーあ、某宗教とか某利権団体とか、危ないとこに潜伏して取材してみてー」
男「お前にゃ段ボールハウスがお似合いだ」
女「うー、まあ私のことを心配しての発言だと受け取っておこう」
男「そうそう」ばんばん
女「我が家を叩くなー、壊れるー」


347 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/17(金) 20:53:12.86 ID:qrop9MdKO
女「男、ちょっとこい」
男「ん?」
女「ブランコ乗るから、背中押してくれ」
男「なんでまたブランコに?」
女「後で教える。今は背中を押すだけでいい」
男「……?」

----キィッ、キィッ

女「………」
男「後で教えるとか言いながら、なんで黙る」
女「うるさい、今考え中なんだから静かにしろ」
男「…へーへー」
女「……」
男「……」


349 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/17(金) 21:10:56.50 ID:qrop9MdKO
キィッ、キィッ

女「……男ー」
男「あ?何だよ」
女「お前は一体、私のどこに惚れたんだ?」
男「さあね……わかんねー」
女「自分でも、分かんないのか」
男「そうだな。ただよ」
女「ただ?」
男「俺よりしっかりしてるくせに、俺よりふらふら生きてるお前を見てると、
  なんかこう、妙な気分になることは多々あったな」
女「妙な気分…?」
男「おう。恥ずかしいのを覚悟で言っちまうと、これが愛しいって感じなのかなとか、思ったりした」
女「プッ…」
男「笑うなっ!」
女「ごめん、でもその顔で愛しいって……ブフッ」
男「笑うなっつうの!」
女「ごめん、本当にごめん」


350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/17(金) 21:17:15.94 ID:qrop9MdKO
キィッ、キィッ

女「笑ってごめんよ…」クスクス
男「クスクス言いながら謝られても、説得力ねーよ」
女「いやーね、私には恋とか愛とか無縁だと思ってたから、ついね」
女「私って根っからの無頼性じゃん。だから誰かに好意を向けられても、冗談みたいにしか思えないんだよね」
男「自分で聞いたくせに……」
女「悪い悪い」


352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/17(金) 21:27:00.81 ID:qrop9MdKO
キィッ、キィッ

女「私は、一生一人で生きてくんだと思ってた」
男「そりゃあ無理な話しだろう」
女「だって、誰かと一緒になっても、私はそいつを裏切って旅に出ちゃうかもしれない」
男「というか、きっと出るよな、旅」
女「うん。けどさ、お前はそんな私がいい、そんな私を待ち続けるって言ってくれたんだよ」
男「……言ったな、そういえば」
女「嬉しかった」
男「そうか」
女「だから、私もそろそろ身を固めるころかなって思ったんだ」
男「…あ?」


女「男、私と籍を入れてくれない?」


354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/17(金) 21:32:43.53 ID:qrop9MdKO
キィッ……

男「………」
女「その唖然とした顔、駄目なのか?」
男「だ、駄目じゃない。駄目じゃないが、お互い早すぎないか?」
女「大丈夫。私は今まで通り自分の食いぶちは自分で稼ぐし、それで君に迷惑かけるようなへまはしないよ」
男「………」
女「だからこそ、もう一度言う」
女「男。私と…け、け、結婚してくれ!」
男「………はぁ」


355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/17(金) 21:40:22.76 ID:qrop9MdKO
男「びっくりした…お前突然何を言い出すんだよ…」
男「たまには素直になってみただけだ」
男「にしてもなぁ…」
女「私との結婚は嫌?」
男「あ、いや……ただ不安なだけだ」
男「俺にお前みたいな自由人の相手が務まるのかどうか……」
女「その点に関しては、私は誰よりも君を信頼してるよ」
男「はぁ、じゃあまあ……よろしくお願いします」


356 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/17(金) 21:48:53.97 ID:qrop9MdKO
女「…ふーっ、緊張したー」
男「なんだなんだ、急に素に戻りやがって」
女「だって、当たり前だけどプロポーズなんて初めてだったんだも〜ん」
男「にしてもキャラ変わりすぎだろ」
女「あー恥ずかしかった!」
男「さてはお前、照れ臭くて顔見られたくないからブランコなんか乗ったんだろ」
女「うぐっ……」
男「その顔、図星だな」
女「そうだよその通りだよ文句あっかー!」
男「いや、むしろ俺も赤面してるから顔見られたくない」
女「男も、恥ずかしかったのか…」
男「そりゃそうだ」


359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/17(金) 21:56:36.30 ID:qrop9MdKO
男「そうだ、いいこと考えた」
男「女、ちょっとそのままの格好でいろよ」
女「え?」
男「とりゃっ!」

ぎゅっ

女「!!!」
男「こうして後ろから羽交い締めにしたら、お互い顔見られなくてすむぞ」
女「あ、ぁぅ…」
男「どーした、女?」
女「………///」ボシュー
男「ははっ、ショートしちまったか」
女「は、恥ずかしいだろがっ。離せ!!」
男「やだよ、お前は無頼なんだから離したらどっかいっちまうだろ」
女「う、うぅぅぅ…」

男「……女、これからもよろしくな」
女「お、おう///」

おしまい
 

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