引用元
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1222774824/



 
331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 00:12:15.22 ID:bY2fgTHT0
勇者「たまにはそっちに戻るからあんまり悲観すんなよ?」

女魔法使い「お店ほったらかして大丈夫なの?」

勇者「ときどきなら町のみんなも許してくれるってもんだ。」

勇者「まぁ、その時は酒でも飲みながらバカ話しようぜ。昔みたいにさ。」

女魔法使い「うん…。約束だよ?」

勇者「もちろん。」

333 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 00:29:01.69 ID:bY2fgTHT0
女魔法使い「じゃあ…、そろそろ帰ろうかな。」

女魔法使い「今日は来て良かった。おかげで答えが出せたわ。」

勇者「答え?」

女魔法使い「うん。いろんな答え。多分正解なんてないんだけど。」

女魔法使い「あ、あと今日のお代はあんたが帰って来た時に払うわ。」

女魔法使い「じゃあね。」 バタン
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 20:40:24.82 ID:3o4Y6vSk0
勇者「またフラれた…3連敗か。」

ガラガラ

女魔法使い「うわ…勇者、昼間っから酒飲んで何してんの?」

勇者「お、魔法使いじゃん。いいとこ来た、俺に付き合え。」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 20:48:46.23 ID:3o4Y6vSk0
勇者「何で俺ってこんなにモテないんだろ…」

女魔法使い「勇者が真昼間から酔いつぶれてちゃあモテないわよ…」

勇者「勇者が酒飲んで何が悪いんだよお〜、ってかお前も飲めよ〜」

女魔法使い「いや、遠慮しておく。」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 21:08:23.45 ID:3o4Y6vSk0
女魔法使い「大体、あんたは軽すぎなのよ。」

女魔法使い「暇さえあれば女の子にちょっかい出して。」

女魔法使い「もう大人なんだからそろそろちゃんとしないと…」

勇者「…zzZ」

女魔法使い「って寝てるし。」


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 21:21:42.18 ID:3o4Y6vSk0
勇者「ぅ…ん?…ここどこ?」

女魔法使い「あ、起きた?はい、水。」

勇者「お、ありがと。」 グビリグビリ

勇者「ぷはぁ〜。…って、ここ女魔法使いの家じゃん!」

女魔法使い「そんなにびっくりすること?子供の時よく来てたじゃん。」

勇者「まぁ、そうだけどさ…。」

勇者「女魔法使いがここまで運んでくれたのか?」

女魔法使い「その通り。荷車でね。」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 21:30:50.12 ID:3o4Y6vSk0
勇者「しっかし、この家も変わってねえなー。」

勇者「薬草の匂い、怪しい実験道具、悪趣味なインテリア…」

女魔法使い「魔法使いの家なんてみんなこんなものよ。」

勇者「うわ、懐かしいー!この拷問道具で何度女魔法使いにいじめられたことか…!」

女魔法使い「さすがに爪をはごうとした時は母さんに止められちゃったけどね。」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 21:33:46.70 ID:3o4Y6vSk0
勇者「お前のおばさん、怖かったなあ〜」

勇者「そういえば、今日はおばさんは外出中?」

女魔法使い「え?母さん?去年死んだわ。」



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 21:43:52.06 ID:3o4Y6vSk0
女魔法使い「魔法使いは葬儀なんてめんどくさいことやらないから、あんたが知らなくても当り前か。」

勇者「そうなんだ…。何か、ごめんな。」

女魔法使い「気にしなくていいわ。私たちは死という概念について鈍感だから。」

勇者「そうか…。じゃあ今は女魔法使いが一人でここに住んでる訳か。」

女魔法使い「うん。家にあるもの全部、自由に使っていいから魔法の研究はしやすくなったわ。」

女魔法使い「道具の手入れはとても面倒なんだけどね。」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 21:53:59.54 ID:3o4Y6vSk0
勇者「一人暮らしってさみしくない?」

女魔法使い「さみしい?どういうこと?」

勇者「ほら、女魔法使いってさ、小さい頃から友達とかつくらなかったじゃん。」

勇者「だから、おばさんが死んでからこの1年間、さみしくなかったのかなって…」

女魔法使い「あんた、以外に優しいのね。」

女魔法使い「でも、そんな気遣いは私には必要ない。」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 21:58:59.38 ID:3o4Y6vSk0
女魔法使い「私はさみしいって感情がわからないの。」

女魔法使い「研究に没頭していればそんな感情に支配されることもないし。」

女魔法使い「何より、魔法使いって人種は一人を好む傾向にあるから。」

女魔法使い「あんたと仲良くなったのもあんたが一方的に私の家に来てたから。」

女魔法使い「だから、今のままで大丈夫なの。」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 22:01:35.38 ID:3o4Y6vSk0
勇者「そっか…わかったよ。」

勇者「そろそろ夜警の仕事あるから、帰るわ。」

女魔法使い「そう。仕事頑張ってね。」

勇者「じゃあな…」  バタン





女魔法使い「……」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 22:11:10.23 ID:3o4Y6vSk0
それからしばらく月日は経ち、勇者は王のいる城へと招かれた…

勇者「つまり、また魔王が復活したかも知れない、と。」

王「その通りだ。魔王討伐を頼めるのも勇者であるお前しかいない。」

王「実際、この国での一番の実力者もお前だろう。」

王「頼まれてくれるか?」

勇者「わかりました。この勇者、世界の平和のためなら命をも惜しみません。」

王「おお!それでこそ勇者だ。…お前の父親とは大違いだよ。」

勇者「父…ですか?」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 22:24:33.29 ID:3o4Y6vSk0
>>26
こうでもしないとおさまりがつかなかったんだ…



王「ああ。お前の父は魔王討伐の時、仲間を見捨てて一人でここへ戻ってきた。」

王「しかもその後、若い町娘を孕ませて、そのまま結婚しおった!」

王「お前が生まれる前に、周囲の目に耐えられなくなったのは知らんが、突然姿をくらましたのだ…」

王「この話を聞くのは初めてじゃろう?」

勇者「はい…。しかし、私は必ずや仲間と全員で帰還いたします!」

王「うむ、それでこそ勇者だ!武運を祈るぞ!」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 22:35:09.04 ID:3o4Y6vSk0
勇者(はぁ…親父って結構ひどい人間だったんだな)

勇者(母さんは、とっても強くてかっこいい人って言ってたのに)

勇者(……とりあえずパーティ組まなきゃな)

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 22:46:40.92 ID:3o4Y6vSk0
女魔法使い「ふぅ…今日の研究はこれくらいで終わろう。」

女魔法使い(最近誰とも会ってないな…)

女魔法使い(…やっぱり私はさみしいのか?)

女魔法使い(いや、違う。これは生活のマンネリ化。)

女魔法使い(だから他人と会って自分を換気しようとしているだけだ。)

女魔法使い(ちょっと外に出てみようか…)

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 22:57:55.85 ID:3o4Y6vSk0
勇者「お、女魔法使いが外出なんて珍しいな。」

女魔法使い「! 何だ、勇者か。驚かせないでよ。」

勇者「お、悪い。」

女魔法使い「あの…さ、立ち話もなんだし、私の家に寄っていかない?」

勇者「お前が俺を誘うなんて初めてじゃないか?」

女魔法使い「悪い?あんたで試したい薬があるのよ。」

勇者「ふうん…。何か怖い気もするけど、寄ってくよ。」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 23:00:35.92 ID:3o4Y6vSk0
もうID:Lo9mIA8qOに譲ろうかな…

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 23:22:49.83 ID:3o4Y6vSk0
女魔法使い「この前より散らかってるけど、気にしないでね。」

勇者「元がカオティックだったからいまさら気にしてらんねーよ。」

勇者「ってか、お前痩せたな…ちゃんと食べてんのか?」

女魔法使い「魔法使いは何も食べなくても生きていけるのよ。」

勇者「それ、マジ?」

女魔法使い「ウソ。魔法の研究してるとどうも食べるの忘れちゃってね。」

勇者「そんなんで大丈夫かよ…。」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 23:35:52.48 ID:3o4Y6vSk0
勇者「そうだ。お前、一緒に魔王討伐に行かないか?」

女魔法使い「魔王?…そう、魔王が復活したのね。」

女魔法使い「でも、悪いけど私は行けない。」

勇者「何故行けないんだ?」

女魔法使い「そうね…。まずは私の研究の話から始めなきゃいけないわね。」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 23:44:57.63 ID:3o4Y6vSk0
女魔法使い「この町がまだアナログな照明に頼ってるのは知ってるわよね?」

勇者「ああ。」

女魔法使い「うちの家系は長年、魔法の力による照明システムの開発をしてきたの。」

女魔法使い「その研究もあと一歩で完成を迎えるの。」

女魔法使い「だからその研究を途中で手放すわけにはいかないってわけ。」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/30(火) 23:50:28.61 ID:3o4Y6vSk0
女魔法使い「あんたはそんな研究より世界平和が大事だって思ってるでしょう。」

女魔法使い「それも正論だとは思うの。」

女魔法使い「でも、私はこの町の人が快適に暮らせるようになることのほうが大事なの。」

女魔法使い「勇者、わかってくれる?」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 00:05:41.01 ID:8c7Hbtnc0
勇者「ああ。お前の気持ちはよくわかった。」

勇者「ただ…、ひとつだけ聞きたい。俺がこの町を去ってもお前はやっていけるのか?」

女魔法使い「何言ってるの?あなたがいなくなっても何も変わりはしないわ。」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 00:13:20.27 ID:8c7Hbtnc0
勇者「お前のその言葉が本音なら俺も安心して出ていけるんだけどな。」

勇者「幸か不幸か俺は勇者だ。人の感情とかには敏感なんだよ。」

勇者「俺が快く旅に出るためにもお前には本当のことを言ってほしい。」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 00:22:13.01 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い「……さすが勇者。ってとこね。」

女魔法使い「でも、私自身でさえうまく説明できないの。」

女魔法使い「さみしいと言えば、それは嘘なの。」

女魔法使い「魔法塾の講師をしてるから他人との交流は無いわけではないし。」

女魔法使い「私に求愛してくる男もいた。」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 00:35:24.47 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い「でも、あんたがいなくなると思うと不安なんだよね。」

女魔法使い「おかしいよね。魔法使いの血筋だったらこんなこと考えないよ。」

勇者「魔法使いだって人間だろ。自然なことさ。」

勇者「今までのお前は、魔法使いだからって自分を型にはめようとしていたんだ。」

勇者「でも、大事なのは『魔法使い』らしさじゃなくて、『自分』らしさじゃいのか?」


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 00:42:08.75 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い「自分らしさねえ…。」

女魔法使い「やっぱりよくわかんないや。」

女魔法使い「でも、あんたのおかげで結論が出たわ。」

勇者「結論?」

女魔法使い「そう。私が今からどうしたいかっていうことのね。」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 00:49:57.03 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い「勇者、あんたがこの町を出るまで私と暮らしてほしい。」

女魔法使い「そして、あんたと出会えてよかったってことを再確認したい。」

女魔法使い「頼まれてくれる?」

勇者「わかりました。」

勇者「この勇者、あなたのためなら残されたわずかな時間、一秒たりとも無駄にはしません!」





第一章、完。




63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 01:08:41.85 ID:8c7Hbtnc0
第二章「勇者と女魔法使いの1週間」

勇者「……よし、これで荷物は全部か。結構な量だな。」

勇者「母さんもあっさり了承してくれたし、生活に不安なしだな。」

勇者「で、女魔法使い。俺の部屋は?」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 01:13:08.76 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い「え?私と一緒の部屋に決まってるじゃない。」

勇者「決まってるって…ベッドは?」

女魔法使い「もちろん一緒。新しいのを買うなんて馬鹿げてるしね。」

勇者「マジですか…」



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 01:19:25.11 ID:8c7Hbtnc0
勇者「早速ですが、パーティに組む仲間を探しに行きたいと思う。」

女魔法使い「アテはあるの?」

勇者「残念ながら皆無でございます。」

女魔法使い「やっぱり…まぁいいわ、いってらっしゃい。」

勇者「おう。行ってきます!」 ガチャリ



女魔法使い(まだ家にきて1時間しか経ってないのに…)

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 01:24:00.56 ID:8c7Hbtnc0
勇者(女魔法使いと同じ部屋に住むのか…)

勇者(しかもベッドも一緒。)

勇者(困ったな。女魔法使いのためを想って同棲を快諾したのはいいが)

勇者(俺は異性として女魔法使いを好きなわけではない。)

勇者(親友…いや、腐れ縁と言ったほうが正しいか。)

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 01:32:18.29 ID:8c7Hbtnc0
勇者(小さい頃はよく女魔法使いの家に遊びに行ってたな。)

勇者(家自体が遊び場みたいなもんだからな。あいつの家は。)

勇者(小遣い稼ぎのためのスライム退治のときもあいつと一緒に荒稼ぎしたな。)

勇者(フラれたときに慰めてくれるのもあいつだしな。)

勇者(大抵は説教になってたけど。)


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 01:41:55.80 ID:8c7Hbtnc0
勇者(俺はあいつが女であることを意識してなかった。)

勇者(性別の違いが付け入る隙のないほどの仲だと思っているし。)

勇者(……、そんなことより仲間を探さなきゃいけん。)

勇者(城に行ってみるか。)

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 01:48:23.28 ID:8c7Hbtnc0
ザワザワ……

勇者「何だ?この人だかりは。」

近衛兵「あ、勇者様!これは、魔王討伐のメンバーの試験を始めるところです。」

勇者「へぇ…じゃあ、俺が決めるわけじゃないんだ。」

近衛兵「はい。我々が厳正な基準の下、メンバーを選出しますので勇者様はゆっくりと英気を養っていてください。」

勇者「…わかった。そうさせてもらうよ。」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 01:58:38.14 ID:8c7Hbtnc0
勇者「ただいま。」

女魔法使い「あ、お帰り。随分早いじゃない?」

勇者「どうやら俺は仲間探しをする必要がないみたいだ。」

勇者「王様がオーディションを開催してるんだ。」

女魔法使い「へえ、良かったじゃん。確実に強力な仲間ができるね。」

勇者「王様の見立てが正しければな。」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 02:05:14.27 ID:8c7Hbtnc0
勇者「そんなことより腹が減った。」

女魔法使い「何食べたい?」

勇者「ん…、カレーかな。ちょっぴり甘めの。」

女魔法使い「了解。ちょっと待っててね。」

勇者「おう。…って、何で実験部屋に向かってるんだ?」

女魔法使い「カレーならこの鍋を使わなきゃね!」

勇者「それ、鍋やない、壺や。しかもめっちゃでかいし。」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 02:11:25.62 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」  ブシュワァァァー

勇者(何かすごい勢いでカレーが出来上がっていく!)

2分後

女魔法使い「できたよー!ちょっぴり甘めだよ!」

勇者「うわぁ…食うの怖ぇ…」

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 02:19:31.02 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い「私、こんな料理の仕方しか知らないんだ。」 もぐもぐ

女魔法使い「他人がどうやって料理を作るのか、知らないし。」 もぐもぐ

勇者「お前らしいな。まぁ、美味いから気にならないよ」  もぐもぐ

勇者「この漬物も美味い。」 ぽりぽり

女魔法使い「それはマンドラゴラの浅漬けね。美味いよね!」

勇者「たくあんじゃねえのか、コレ…」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 02:29:52.43 ID:8c7Hbtnc0
勇者「ごちそうさま。」

女魔法使い「お粗末様です。」

勇者「お前さ、昨日までと大分態度変わったな。」

女魔法使い「え?そうかな?」

勇者「素直になったというか…明るくなったというか。」

勇者「今のお前のほうが、俺は好きだな。」

女魔法使い「何言ってんの!?やめてよ!」

勇者「とか言いつつ笑ってんじゃん。」

女魔法使い「むぅ…私、からかわれるのに慣れてないから、よしてよ。」

勇者「これから慣れていけばいいさ。」


96 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/01(水) 02:50:24.13 ID:8c7Hbtnc0
勇者「もうこんな時間か…」

女魔法使い「結局、勇者の荷物の整理だけで終わっちゃったね。」

勇者「あー疲れたー」 ぼふん

女魔法使い「あ、ずるい!私の寝るスペースがない!」

女魔法使い「こうなったら…!」 ピョーン、ドスン!

勇者「グブッ!俺に飛び乗るなよ…どいてぇ…」

女魔法使い「勇者、以外に弱いね。」 ひょい

勇者「不意打ちだろ。もう寝る。」 もぞもぞ

女魔法使い「ふ…ふぁ…。私も寝よ。」 もぞもぞ

勇者「狭い。」

女魔法使い「しょうがない。我慢しなさい。」

女魔法使い(勇者のとなり…やっぱり不思議な気持ちになる。)

女魔法使い(恥ずかしさ、嬉しさ…色々混ざった気持ち。)

勇者「…zzZ」

女魔法使い(もう寝てるし。私も寝なきゃ。)

98 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/01(水) 03:00:58.97 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い(…寝れない。)

女魔法使い(心拍数が高い…落ち着かない。)

女魔法使い(恋愛感情…か。いや、違うな。)

女魔法使い(それよりもっと低俗な感情を抱いている。もっと原始的な。)

女魔法使い(でも、この感情は抑えたほうがいい気がする。)

女魔法使い(今日はもう考えないほうがいいかな。)

女魔法使い「…zzZ」



100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 03:18:44.32 ID:8c7Hbtnc0
5日後…

勇者「彼らが、魔王討伐に同行するメンバーなんですね。」

王「何か不満はあるか?」

勇者「いえ…。とても心強い仲間になってくれると思います。」

王「そうか。それで、出発は?」

勇者「明日の朝にでも出発しようと思います。」

王「うむ。では今日中に出陣式の準備をしておかなくてはな。」

勇者「いえ、出陣式は結構です。住人の貴重な時間を割くことはできません。」

王「そうか…。お前らしい意見だな。では、明日の出陣式は取りやめだな。」

勇者「ありがとうございます。」

王「では勇者、世界を平和へと導いてくれ!」

勇者「はい!」


104 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/01(水) 03:29:29.79 ID:8c7Hbtnc0
勇者「ただいま。」

女魔法使い「おかえりー。」

勇者「とうとうパーティに組む仲間が決まったよ。」

女魔法使い「どんな人たちだった?」

勇者「やっぱりエリートたちが選ぶだけあって優秀だよ。」

勇者「冗談通じないけどね。」



105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 03:36:40.25 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い「で、いつ出発?」

勇者「明日の早朝になるな。」

女魔法使い「そっか。…さみしくなるね。」

勇者「まぁ、ちゃっちゃと魔王倒して帰ってくるさ。」

女魔法使い「それ、嘘だったら許さないからね。」

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 03:45:08.62 ID:8c7Hbtnc0
勇者「まぁ、実際旅の途中でくたばっちまう可能性もあるわけで」

勇者「もしかしたら今日が俺と会う最後の日かもしれないわけで」

勇者「そんな、もしもの時のために何か言い残すことは?」

女魔法使い「そんな悲しいこと言わないでよ…」

107 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/01(水) 03:56:05.90 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い「でも…言い残すこと、というかわがまま、聞いてくれる?」

勇者「可能な範囲なら。」

女魔法使い「じゃあ、言う。一回しか言わないからね。」




女魔法使い「私を、抱いてほしいの。」

109 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/01(水) 04:14:19.22 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い「あんたがウチに来た日からずっと考えてた。」

女魔法使い「でも、あんたはそういう気はさらさらないってのも分かってた。」

女魔法使い「私のこと異性だなんて思ってないでしょう?」

110 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/01(水) 04:24:33.39 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い「ところがどっこい、私は意識している。」

女魔法使い「一緒のベッドで身を寄せて寝てたら普通は意識するわ。」

女魔法使い「でもあんたはそんな気にはならない。勇者の血ってやつなのかな?」

111 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/01(水) 04:30:37.91 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い「正直いらついてるわ。あんたにも、私自身にも。」

女魔法使い「だから、そのイライラを解消するためにも私は言うわ。」

女魔法使い「ねぇ、今日の一度きりでいいの。お願い。」

113 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/01(水) 04:41:39.42 ID:8c7Hbtnc0
………

勇者「ん…、朝か。」

勇者「おい、女魔法使い、朝だぞ。」

女魔法使い「?…む〜、もう朝か〜…。」

女魔法使い「出発までまだ時間ある?」

勇者「んーと、まだ余裕はあるな。」

女魔法使い「じゃあ、まだこのままでいて…」

勇者「そうだな。俺もこのままがいい。」

114 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/01(水) 04:59:51.13 ID:8c7Hbtnc0
そして出発の時


勇者「じゃあ、魔王倒してきます!」

女魔法使い「絶対途中でくたばんなよ。死ぬなら魔王倒して死ね。」

勇者「もちろん。ってか絶対帰ってくるし。帰ってくるに5千G。」

女魔法使い「私も帰ってくるに5千G。」

勇者「賭けになんねえじゃん。」

女魔法使い「こんなことに賭けるのが不謹慎極まりない。」

勇者「だよな。」

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 05:05:02.95 ID:8c7Hbtnc0
勇者「じゃ、行きますかね。」

女魔法使い「勇者、忘れ物!」

勇者「え?なに忘れたっ……ん…」

女魔法使い「……ぷはっ。これで忘れ物はないわね。」

勇者「なんとベタな忘れ物。」

女魔法使い「…行ってらっしゃい。」

勇者「行ってきます!」




第二章、完。




164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/01(水) 22:41:32.48 ID:8c7Hbtnc0
第三章、「勇者と女魔法使いの行く末」


勇者へ。

あんたがいなくなってから今日で3年ね。

2年前に魔王を討伐したって知らせが届いたわ。

でもあんたはそれ以来、人前に姿を見せてないみたいじゃないの。

そろそろ帰って来てもいい頃じゃない?

せめて生きてるかくたばったかははっきりさせなさい。

もし生きてたらあんたのとこに行ってやるわ。

その時はまたお酒でも飲みながら話しましょう。

                   女魔法使いより


169 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/01(水) 23:13:54.55 ID:8c7Hbtnc0
送るあてのない手紙を書き終わり、女魔法使いはため息をつく。

勇者がこの町を出て、いろいろな事が変わった。
女魔法使いは、先代から研究し続けていた魔法による発電システムが完成し、
一躍その名声を国中に広めた。
仕事もそれ以前とは比較にならないほど舞い込んできた。
富と名誉を手に入れた女魔法使いは、魔法の研究だけに没頭することができた。

170 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/01(水) 23:19:54.43 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い(…ふう。)

女魔法使い(研究しかすることが無いとはいえ、こんなものを書いてしまうとは…)

女魔法使い(勇者…やっぱりくたばっちゃったのかな。)

女魔法使い(人里離れた場所で暮らしてるってこともあるけど…。)

女魔法使い(…あ、もうウイスキー切れた。飲み足りないなあ…。)

171 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/01(水) 23:33:43.47 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い(生きてるとすれば、ほかの女性と暮らしてるのかな?)

女魔法使い(いろんな国へ行って、いろんな女性とも出会う。)

女魔法使い(そんな中で勇者が好意を持つ人が現れるのも当り前か。)

女魔法使い(もともとあいつ、女好きだったし。)

174 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/01(水) 23:51:08.33 ID:8c7Hbtnc0
女魔法使い(でも…、勇者は私を抱いてくれた。とても、優しく。)

女魔法使い(私の体の感触、あいつは忘れちゃったのかな…)

女魔法使い(私は一度だって忘れたことがないのに。)

女魔法使い(……あぁ、もう!私、何考えてんの!)

女魔法使い(もう、忘れよう…)

女魔法使い(私は魔法使い。恋愛感情など持ち合わせない。)

女魔法使い(あしたはアテガミーでの講義。早く寝なきゃ。)

女魔法使い(おやすみ、勇者。もうあんたのことは考えない。)


彼女はベッドに横たわる。酔いのせいか、あっという間に眠気が女魔法使いを包んだ…。

177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/02(木) 00:07:46.90 ID:TAiLbZ2P0
勇者「いらっしゃいませー!」

勇者「注文は?」

客「んーっと、デビルフィッシュのムニエルと、ミネストローネ。」

勇者「かしこまりました!」

178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/02(木) 00:12:41.26 ID:TAiLbZ2P0
客「兄ちゃん、会計ー!」

勇者「はーい!合計800Gになります!」

勇者「また来てくださいねー!」

勇者「ふうーっ、もうこんな時間か。店、閉めようかな。」

180 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 00:25:20.24 ID:TAiLbZ2P0
勇者(魔王を倒してからちょうど3年か…)

勇者(この料理屋もこの3年でだいぶ繁盛し始めたなあ。)

勇者(顔だって、賢者にかけてもらった魔法で別人みたいになってるし。)

181 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 00:42:32.51 ID:TAiLbZ2P0
勇者(今じゃ、俺はただの料理屋の店長。)

勇者(正直、勇者っていう肩書は俺には重すぎた。)

勇者(どこに行っても過剰な期待をかけられて、無条件に信頼されて。)

勇者(今の生活のほうが楽だ…)

勇者(魔王討伐に出る前の生活に似てるな。)

182 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 00:56:00.43 ID:TAiLbZ2P0
勇者(適当に金を稼いで、遊んで、酒飲んで…)

勇者(…また女魔法使いと飲みに行きたいな。)

勇者(あいつ、男できたかな?)

勇者(まあ、できてねえだろうな。)

193 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 06:20:53.27 ID:TAiLbZ2P0
勇者(あいつ、俺の帰りを待ってたりすんのかな?)

勇者(一緒に住んだこともあったしな。)

勇者(おまけに俺のこと好きみたいだったし。)

勇者(…よし、戻ってみるか、あの町に。)

197 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 07:13:45.27 ID:TAiLbZ2P0

女魔法使い「男ー、朝食できたわよ!起きなさい!」

男「うぅ…もうちょいっと寝かせてくれませんか…?」

女魔法使い「そんなこと言ってると仕事に遅刻するわよ?」

女魔法使い「とにかく、朝食が冷めないうちに起きてね!」

198 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 07:17:12.86 ID:TAiLbZ2P0

男「いってきまーす。」

女魔法使い「いってらっしゃい。」

バタン

女魔法使い「……ふう。」

女魔法使い(…妻って役割も結構忙しいものね。)

女魔法使い(男もちょっとは家事を手伝ってくれるとありがたいんだけど。)

200 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 07:26:05.96 ID:TAiLbZ2P0
女魔法使いが男と結婚して半年以上が過ぎた。

子孫を残すための半ば義務的な結婚だったが、それなりに楽しくやってるらしい。

5年もたてばさすがに勇者のことも(綺麗さっぱりとまではいかないが)忘れることができた。

いや、正確に言えば勇者に対する感情を抑えることができた、ということだ。

男はなかなかにうだつの上がらない夫ではあったが、優しく、いつも女魔法使いのことを考えてくれている。

こんな暮らしもいいか。と、女魔法使いも思っていた。

202 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 07:39:40.63 ID:TAiLbZ2P0
―ある日のこと―

勇者「おぉ〜、懐かしい!変わってないなあ〜。」

勇者(5年ぶりに戻って来たけど、やっぱりいい町だな。)

勇者(女魔法使いの家はどこだっけ…?) うろうろ

勇者(確かこの辺……。あの家だ!)

勇者(俺が勇者ってこと、気づいてくれるかな?)

勇者(まあ、思い出話の1つや2つでもすればいやでも気づくだろうな。)

203 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 07:42:47.57 ID:TAiLbZ2P0
コンコン、コンコン

女魔法使い(こんな時間に…誰かしら?)

ガチャッ

女魔法使い「…どなた?」

204 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 07:52:08.30 ID:TAiLbZ2P0
勇者(やっぱり全然気づいてない…。)

勇者(って、そのポジションの指輪は…!)

勇者(そっか、女魔法使い、幸せになれたんだな。)

女魔法使い「…あの、ご用件は?」

勇者「! あのですね、私は○○の街で料理屋を経営しているものなんですが」

勇者「お宅のマンドラゴラの漬物がおいしいとの噂を聞きつけましてね。」

206 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 08:00:35.23 ID:TAiLbZ2P0
女魔法使い「あら、いつの間にそんな遠くまでウチの漬物のことが。」

勇者「はい。なので、是非私の店に定期的に宅配してほしいのですが。」

女魔法使い「残念ながら、お店で取り扱えるほどの量は作れませんわ。」

勇者「いえいえ、ごく少量でもかまいません。」

勇者「希少価値が高い商品と言うのは一種のステイタスにもなりますし。」

207 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 08:08:08.79 ID:TAiLbZ2P0
女魔法使い「はあ…。わかりました。ごく少量でもかまわないのならお送りしますわ。」

勇者「ありがとうございます。宅配についてはこちらが手配しておきますので。」

勇者「あと、代金のほうは……これくらいでどうですか?」

女魔法使い「あら、こんなにもらっていいのかしら?」

勇者「ええ。噂を聞く限りではこれが相場かと。」

女魔法使い「わかりました。この値段でお願いします。」

勇者「ありがとうございます。では、私はこれで…。」

210 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 08:24:25.82 ID:TAiLbZ2P0
ガチャッ

勇者(……)

勇者(なんで、俺って言わなかったんだろ。)

勇者(まあ、今の幸せを壊しちゃいけないよな。)

勇者(って、何で女魔法使いが俺の事を好きって方向で考えてんだ…。)

勇者(この自意識過剰野郎め…!)

勇者(でも、俺もあの家であいつと暮らしてたんだんよな。ちょっとだけだったけど。)

勇者(あの時が一番幸せな時期だった気がするな…。)

勇者(なんだか目頭が熱いな…。)

213 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 08:38:34.67 ID:TAiLbZ2P0
勇者(あいつが他の男と暮らしているって…、くやしいな。)

勇者(…くやしい?…ははっ、そうか。)

勇者(結局、俺はあいつのことが好きだったってわけか。)

勇者(自分でも気づかなかったよ。)

勇者(…もういい。今は俺は勇者じゃない。)

勇者(別の顔、別の名前で暮らしている、料理屋の店長。)

勇者(店に戻ろう…、客が待ちわびてるだろうな。)

勇者(この町にも、もう来ることはないよな…)

勇者(じゃあな、女魔法使い、そして勇者。)

214 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 08:48:17.21 ID:TAiLbZ2P0
勇者…いや、元勇者の料理屋は相も変わらず繁盛している。

巷では、勇者が見つかっただの、死んだだの噂が流れている。

そんなことはもう、彼にはどうでもいい事柄だった。

女魔法使いから毎月送られてくる漬物は店には出さず、自分のために取ってある。

はじめのうちは女魔法使いのことを思い出し、時には涙さえ流していたが、

最近ではただ美味しいという理由で毎朝のご飯のお供にしている。

今、自分は幸せだと彼は思う。

やりがいのある仕事、そこそこの収入、町の人々との交流。

そこに何一つ不足はない。そう、何一つ。



今日も朝は清々しく、澄んだ空気が町を満たす。

今日は客の入りがいいだろう、と思いつつ、彼は店を開ける。


第三章、完。


273 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 20:31:18.84 ID:TAiLbZ2P0
最終章「勇者と女魔法使いはやっぱり…」


勇者「いらっしゃいませー!」

勇者「ありがとうございましたー!」


相も変わらず、勇者は一人で店を切り盛りしている。

いまや、町の人々の中で知らない者はいないほどの人気になっていて、

自分が勇者であったことを忘れてしまうくらい忙しい毎日を送っている。



277 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 20:46:05.52 ID:TAiLbZ2P0
勇者(今日は客が来ないな…)

勇者(ヒマだな…)

ガチャッ

勇者「あ、いらっしゃいま―…!」

勇者(お、女魔法使い!?何でここに!?)

勇者「これは女魔法使いさん、遠路はるばるご苦労さまです。」

勇者「一体、今日は何の御用で?」

女魔法使い「いや、あんたに会いに来ただけ。」

278 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 20:49:10.69 ID:TAiLbZ2P0
勇者「え?…今、『あんた』って言いました?」

女魔法使い「そう。『あんた』って言ったわ。」

女魔法使い「だって、あんた勇者でしょ?」

279 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 20:52:24.32 ID:TAiLbZ2P0
勇者「女魔法使い…何で俺ってわかったんだ?」

女魔法使い「うーん、仕草、声、雰囲気ってとこかしら?」

女魔法使い「変わったとこって言えば、顔ぐらいしかないもの。」

女魔法使い「私は魔法使いよ。なめないでもらいたいわ。」

282 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 20:59:25.58 ID:TAiLbZ2P0
勇者「そうか…。お前は何でもお見通しだな。」

女魔法使い「まあね。このお店、いっつもこんなガラガラなの?」

勇者「いや、いつもならこの時間は忙しいな。」

女魔法使い「へえ…。あんたって以外に料理の才能あったんだ。」

勇者「勇者はやろうと思えば何でもできるのさ!」

女魔法使い「女の子にはモテなかったクセによく言うわ。」

283 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 21:02:59.42 ID:TAiLbZ2P0
女魔法使い「せっかくだから何か頼もうかしら。」

女魔法使い「じゃあ…、から揚げ定食をお願い。」

勇者「承った。ちょっと待ってな。」

288 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 21:21:20.82 ID:TAiLbZ2P0
勇者「できたぞー。」

女魔法使い「あら、結構美味しそうじゃない。いただきます。」

勇者「そういえば、お前の家にあった料理作る壺、どういう仕組みになってんだ?」

女魔法使い「うん。美味しい。ご飯が進むわ。」 もぐもぐ

勇者「中にコックが住んでるとか?」

女魔法使い「お味噌汁も具だくさんで嬉しいわ。」 ずずーっ

勇者「人の話を聞け。」


289 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 21:27:50.61 ID:TAiLbZ2P0
女魔法使い「ふーっ、ごちそうさま。とても美味しかったわ。」

勇者「ありがとう。でも人の話を聞け。」

女魔法使い「ん?何の話?」

勇者「…、もういい。」

女魔法使い「あんたの手料理を食べ終わった私からひとつお願いがある。」

女魔法使い「この店で働かせてくれない?」

293 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 21:46:25.75 ID:TAiLbZ2P0
勇者「いきなり何のお願いだと思えば…。」

勇者「でも、それはダメだ。大体、お前旦那さんいたろ?」

女魔法使い「いるけど、正直どうでもいいわ。特別好きなわけじゃないし。」

勇者「おい…。だったら結婚なんてするなよ…。」

女魔法使い「子孫を残すって言う義務を果たそうとしただけよ。」

女魔法使い「未だに子供はできないけどね。」

297 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 22:10:32.00 ID:TAiLbZ2P0
女魔法使い「夫と結婚してから私は考えたわ。」

女魔法使い「本当にこの人で良かったのか」

女魔法使い「もし勇者が帰って来たらどうしようか。って。」

女魔法使い「勇者か夫だったら、絶対勇者をとっちゃうからね。」

300 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 22:29:18.11 ID:TAiLbZ2P0
勇者「それで、ホントに俺が来ちゃったから俺を選ぶってわけか。」

勇者「でも、お前には仕事があるだろ?まったく無責任なヤツだ。」

女魔法使い「何よ、その言い方。わざわざここまで来てやったのに。」

勇者「そんなこと言われたって…、俺が頼んだ訳じゃないだろ。」

勇者「俺達はもう大人なんだから、社会人としての責任を持てよ。」


306 名前:◆ANekjjU2vA 投稿日:2008/10/02(木) 23:16:46.29 ID:TAiLbZ2P0
女魔法使い「社会人としての責任ねえ…。理解できないわ。」

女魔法使い「その責任とやらに丸め込まれて自由が奪われるのは嫌よ。」

女魔法使い「私は自分に正直になりたいの。」

女魔法使い「でも、それすら許されないの?もう手遅れなの?」

314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/02(木) 23:30:47.11 ID:TAiLbZ2P0
勇者「いや、一概にそうは言えないが…。」

勇者「とにかく、自分のわがままで周囲に迷惑をかけるやつを俺は好きになれない。」

勇者「これで十分な理由だろ?」

322 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/02(木) 23:42:16.87 ID:TAiLbZ2P0
女魔法使い「……グスッ…ヒック…。」

女魔法使い「勇者…変わっちゃったね…。」

女魔法使い「昔の…グスッ、ダメな勇者のほうが良かった…。」

325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/02(木) 23:50:15.07 ID:TAiLbZ2P0
勇者「…人は良くも悪くも変わるんだよ。」

勇者「でも、心の根っこの部分は変わっちゃいないと思ってる。」

勇者「俺はいつでもお前の味方なんだよ。」

勇者「だから…さ、泣くなよ。美人が台無しだ。」

326 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/02(木) 23:57:46.99 ID:TAiLbZ2P0
女魔法使い「うん…グスッ、やっぱり勇者はやさしいね。」

勇者「当然だ。勇者は常に優しくあるべきだからな。」

勇者「ダメではなくなったと信じたいがね。」


340 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 01:03:44.55 ID:bY2fgTHT0
勇者と女魔法使いはあれから月に1度、町の酒屋で会っている。

仕事の話、身の回りの話を肴に飲む酒は多少進み過ぎる様で

帰る頃には、どちらかが足取りもおぼつかなくなっているほどだ。

またこうして、昔のようにくだらない話をして、笑いあう。

町の酒場の他愛もない幸せ。でも大事にするべき幸せ。

勇者と女魔法使いの他愛のない幸せは一生続くだろう。



 

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