1: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:37:10 ID:mi2
最初に言っておくけど、これは作り話だよ。
そう思っておくのがお互いのためだって、わかるよね?
2: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:37:33 ID:mi2
あいつを刺した時の生々しい感触が、まだ手に残っている。
耳をつんざくような叫び声が、耳にこびりついて離れない。
気持ちが悪い。
吐きそうだ。
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・ダンブルドア「ハリー、君は最近勃起をしているのかのう?」ハリー「えっ?」
3: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:37:55 ID:mi2
でも、全部彼女のためなんだ。
後悔はしてない。
この感覚は、彼女を守った証でもあるんだから。
4: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:38:13 ID:mi2
悪いけど一方的に話させてもらうよ?
そうでもしないと落ち着かないんだ。
もう一回、改めてお願いしよう。
これからする話はすべてつくり話だと思って聞いてほしい。
それが、お互いのためだからさ。
8: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:38:52 ID:mi2
神崎 恭子と出会ったのは大学の入学式だ。
落とし物を拾ってもらった、それだけの短い時間だったけど、綺麗な人だなと思った。
その後入った映画サークルで彼女と再会した時は、運命だなんて勝手に思ったりもしたよ。俺はその時にはもう彼女に惹かれていたんだ。
10: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:39:56 ID:mi2
そうして飲み会やイベントが開かれるたびに、できるだけ彼女と話すようにした。
彼女と付き合いたかったってのもあるんだけど、ただ単純に彼女と話していると楽しかったってのもあるんだ。
11: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:40:27 ID:mi2
*
恭子。
ポケットに入れていた彼女の写真。
それを見るとなんだか落ち着く。
俺は君のために、あいつを刺したんだ。
ビルにつけられた大型ディスプレイから、俺の名前が呼ばれたのが聞こえた。
容疑者。指名手配。
嫌な感じだ。
13: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:40:57 ID:mi2
俺はフードを深くかぶって、早足でその場から離れた。
まだ捕まるわけにはいかない。
とにかく、彼女のもとに急がなくては。
大通りを少し外れると、あの場所に通りかかった。ここは、そうだ、あの映画を撮った場所だ。
15: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:41:22 ID:mi2
*
その映画は一年生主導で撮ることになった。
ヒロインは神崎 恭子。
そうとなれば、俺としては取るべき選択は一つしかなかった。
18: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:41:40 ID:mi2
死闘ともいえるじゃんけん大会を制し、俺は主役の座をもぎ取ることに成功した。
神様がくれたチャンスだと思ったよ。
そして自分で勝ち取ったチャンスでもあった。
それをものにしないわけはにはいかないからさ、俺の気合の入り方は尋常じゃなかった。
19: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:42:13 ID:mi2
映画の内容はまあよくある、甘いラブストーリーってところだ。これも、俺からしてみればありがたかったね。
恋人役をやって、いい感じになって付き合う。
よくできたストーリだ。
20: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:42:39 ID:mi2
そうして撮影は順調に進んでいき、ラストシーンに突入した。
細かいところは割愛するけど、素直になれなかった恋人同士がやっと素直になるってシーンだ。
撮影場所は大通りから外れた、さみしい路地裏。その場にいたのは俺と彼女と、数人のスタッフだけだった。
そこで俺は彼女を抱き寄せて、唇を重ねた。
21: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:43:33 ID:mi2
*
あの映画結構好評だったんだよな、リアリティがあるってさ。
本当にキスまでしたんだから当たり前か。
いまリアリティのある作品を撮りたいなら、人を刺す役は俺に任せてほしいよ。
俺はきっと名優になれるだろうな。
なんたって、あの感覚は一生忘れられそうにない。
23: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:44:02 ID:mi2
なんて冗談を言ってる場合でもないんだ。
本当にどうしたらいいのか、わからない。
問題もたくさんある。
袖についた血が落ちない。
どうしよう?
人の目が気になる。
俺が殺人犯だって気づいてるのか?
一度考え出すと恐怖は止まらなかった。
夜の街を照らす街灯すら、いまは俺を追い詰めるサーチライトに感じられた。
24: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:44:21 ID:mi2
横を流れるこの川にいますぐ飛び込んで、全てを終わらせたい。もう全部投げ出したいと、そう思う。
それでもそうするわけにはいかない。
彼女のところに行かなきゃならない。
彼女を守るんだ。
その使命感だけが、いまの俺を突き動かしていた。
25: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:45:13 ID:mi2
*
撮影後の打ち上げでは、先ほどのキスシーンのことを散々囃し立てられた。
27: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:45:51 ID:mi2
「いやー、熱かったねー、キスシーン。なあ? 相川」
始まりは青木のこの言葉だった。
青木は俺たち一年生のリーダー格で、今回の映画ではメガホンを取っている。
「でも本当にいいシーンだったよ、神崎さんも
橘くんもさ……」
話を振られた相川は戸惑いながらも、そうフォローした。
28: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:46:20 ID:mi2
相川はカメラマンとして俺たちの作品を撮ってくれている。
あまり主張をしないタイプだから、何を考えてるかよくわからないけど、カメラマンとしての腕は確かだ。
結局、青木の声をきっかけにして、打ち上げの席は俺たちのキスシーンの話題で持ちきりになってしまった。
29: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:46:38 ID:mi2
「ちょっと、いこ?」
いつまでも止まらない声に辟易とした頃だ、恭子にそう声をかけられた。
「え?」と戸惑う俺を恭子は無理やり外に引っ張っていった。
「え、なになに? 二人でどっか行くの?」
最後に聞こえたのは青木のこの言葉だった。
30: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:47:47 ID:mi2
*
そうそう、この川だったよな。
彼女が引っ張ってきたのは。
あの時の俺の気持ちは動揺なんてもんじゃすまなかったな。
本当にハラハラさせてくれるよ、彼女は。
31: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:47:59 ID:mi2
だけど、なぜだかこの時の彼女はいままでで一番綺麗だったんだよな。
だから、俺はこの時決めたんだ。
絶対に彼女を守るって。
32: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:48:20 ID:mi2
*
「ごめんね、連れ出して。なんか、疲れちゃってさ……」
「大丈夫。俺も、同じだから」
なんて平静を装ったけど、内心俺の緊張は半端なかった。
正直、映画を撮ってる時より緊張したな。
33: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:48:37 ID:mi2
それからいくつか言葉を交わしたんだけど、頭の中はフル回転だった。
この言葉でいいんだろうか。間違ってないか。
恭子の気を引けてる? 本当に大丈夫?
俺の頭の中では円卓会議が開かれていたよ。
34: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:48:58 ID:mi2
そうして会話がだんだん詰まってきて、次は何を話せばいいか、全然わからなかった。
ああ、どうしよう。
そんな風に思って、俺の頭の中の円卓の騎士たちは何をトチ狂ったんだろうな、とんでもない結論を導き出した。
35: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:49:19 ID:mi2
「俺と……付き合ってください」
恭子はポカンと口を開けていた。
よっぽど驚いたんだろうな。
俺も驚いた。自分でも何言ってるんだかわからなかった。
36: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:49:35 ID:mi2
もう完全に終わったと、そう諦めかけた時、大きな笑い声が聞こえた。
「いいよ。君、面白い」
笑い声の主は、綺麗な笑顔でそう言っていた。
37: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:49:48 ID:mi2
今度は俺が口を開ける番だった。
そうしてその開いた口は恭子によって塞がれた。
俺たちは二回目のキスをした。
39: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:50:44 ID:mi2
*
あれからサクール内は、二人が付き合ってるって話題で持ちきりだったな。
しばらくいじられてたよ。
ホント、いい加減にして欲しいよな。
40: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:51:07 ID:mi2
それにしてもハロウィンだからだろうか?
仮装してるやつがちらほらいる。
まったく楽しそうなことだ。
教えてあげようかな、この中に本物の殺人鬼がいるってさ。
41: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:51:23 ID:mi2
まあでも、今日は俺が一等賞でしょ。
なんせ人を殺してまでの、仮装だからね。
だけど、日本人はいつからこんなイベント好きになったんだろうな。……昔からか。
42: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:51:40 ID:mi2
イベントといえば俺たちもサークルでいろんなとこに行ったな。
青木がそういうの大好きだからさ。
そうだ、あのとき海に行こうって言い出したのも青木だったな。
43: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:52:53 ID:mi2
*
「いいねぇ〜 夏! 海! 水着! 最高だ!」
青木の軽さは海に来ても変わらなかった。
俺が恭子と付き合い始めて一ヶ月くらいした頃、青木の提案で俺たちはサークルの一年生で海に来ていた。
44: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:53:15 ID:mi2
「それにしても、悠人もうまくやったよな、ホントずるいよな、? 相川」
「はは、でも本当に羨ましいよ。橘くん」
「いつまですんだよその話、なあ? 恭子」
「そうだよ、しつこいと嫌われちゃうよ、青木くんさ」
恭子の言葉に青木は思いの外傷ついたようで、ようやく少しだけおとなしくなった。
45: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:53:31 ID:mi2
他のメンバーからの追及もそれとなくかわして、俺たちは海へ飛び込んだ。
それから日が暮れるまで遊んで、本当楽しかったなこの時は。
46: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:53:50 ID:mi2
*
「それ、仮装ですか? リアルですね、その血」
みんなで行った海のことを思い出して感傷に浸っていたら、突然そう声をかけられた。
誇張抜きに心臓が止まるかと思った。
47: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:54:08 ID:mi2
振り返ると二十代後半くらいのサラリーマン風の男がいた。
なんなんだこの男は? という気持ちを抑えて息を吸う。
「ええ、まあ、似てるでしょ? 殺人鬼がモチーフなんですよ」
精一杯声の調子を整えてそう返した。
「はい、気合い入ってますね」
「そちらは、 仕事帰りですか?」
48: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:54:25 ID:mi2
「いや、実はこれ仮装なんですよ、サラリーマンの。……私、こういうものです」
そう言って渡された名刺には、
四月商事、磯崎。
と書いてあった。
49: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:54:42 ID:mi2
「暇ですね」と思わず本音がもれてしまう。
「あなたこそ、わざわざ血なんかつけたりして、凝ってますよ。それとも……」
「本当に殺人鬼とか?」
空気が凍る。
本当になんなんだこの男は。
50: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:55:11 ID:mi2
「はは、まさか」
「ですよね、実はあなたこそやっぱり本当はサラリーマンなんじゃないですか」
「じゃあ、やっぱりあなたは殺人鬼ですね」
なんて軽い会話を交わしながらも、俺は内心気が気じゃなかった。
一刻も早くこの場を離れたい。
その気持ちだけが脳みそを支配していた。
51: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:55:38 ID:mi2
その願いが叶ったのか、磯崎さんは少しすると「それでは」と立ち去った。
「ハッピーハロウィン」
磯崎さんの残したその言葉が、いやに耳につく。
52: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:55:55 ID:mi2
とにかく俺はこんなことをしてる場合じゃないんだ。
彼女の家ももう近い。
一刻も早く彼女を迎えに行かなくては。
その気持ちはどんどん高まっていった。
53: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:56:31 ID:mi2
*
それを見てしまったのは偶然だった。
恭子の家に遊びに来て、それでたまたま落ちてたそれを見つけてしまった。
54: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:56:44 ID:mi2
真っ赤な文字で『死ね、死ね、死ね……」の言葉で埋め尽くされた紙。
封筒に入っていたから多分手紙だろう。
なんでこんな悪意の塊のようなものが恭子の家にあるのか。
ゾッとたった鳥肌は一向におさまらなかった。
55: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:57:00 ID:mi2
「どうした……の……」
にこやかな顔で戻ってきた恭子は、目があうなり俺の手に握られた紙をひったくった。
56: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:59:03 ID:mi2
「おい、なんだよそれ?」
「……大丈夫だから」
「大丈夫なわけないだろ!」
思わず声を荒げてしまうと、恭子は怯えた顔でこちらを見ている。
何をしてるんだ俺は。
「……ごめん……大きな声出して。……でも、できれば話してほしい。力になりたい……なんて偉そうかもしれないけど……それでも俺にできることならやりたいんだ」
「……うん……ごめん……ありがとう」
57: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:59:24 ID:mi2
*
あと少しだ。
あと少しで彼女の家に着く。
待っててくれ。
俺が必ず守るから……
58: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:59:41 ID:mi2
*
恭子がそいつと出会ったのは高校生のころだった。
受験も終わってもうすぐ卒業というときに、最後だからと告白をされたそうだ。
そうして恭子もそれを受け入れた。
だけどそいつがおかしいと気づくのに、そう時間はかからなかった。
59: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)20:59:59 ID:mi2
最初は些細なことだったらしい。
男友達といるとちょっと嫌な顔をしたり、少し嫉妬深いだけだと思っていた。
でもそれは次第に強くなって、少しラインの返信が遅くなるだけで、そいつは電話までかけてきたり、男友達のアドレスを全部消させたりと、だんだんそいつの束縛はエスカレートしていった。
恭子がいつも何をしてるか把握して、恭子のスケジュールを全部管理しようとして……
60: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:00:15 ID:mi2
恭子は流石におかしいと思って、大学に入って会えなくなったの口実に別れた
もちろんそいつはなかなか別れようとしなかったから、半ば強引に。
これでやっと終わったと、そう思った。
けれどその安心は長くは続かなかった。
61: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:00:33 ID:mi2
恭子について聞きまわっている人がいる、と友達に言われた。
それから朝起きたらラインの通知が溢れていたり、友達越しに手紙が届けられたり、校門の前で待ち伏せしているそいつを見かけた時には、心臓が止まるかと思ったそうだ。
62: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:00:50 ID:mi2
そしてついに俺が見てしまった手紙が送られてきた。手紙を何通も送っても無視をする恭子に、とうとう愛情が憎しみへと変わったらしい。
63: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:01:06 ID:mi2
守らなきゃ。
そう思った。
たとえ何をしてでも。
絶対に恭子を守る。
64: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:01:18 ID:mi2
「ちょっと待ってて」
恭子にそう言い残すと、ある決意をして俺は家を飛び出した。
65: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:02:15 ID:mi2
*
走れ、走れ、走れ!
もうあと数十メートル。
彼女の家は目と鼻の先だ。
走れ、走れ。
66: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:02:41 ID:mi2
*
古びれたアパートのインターホンを鳴らすと、中から金髪の男が出てきた。
「あ? だれ?」
男は俺も顔を見ると、銀歯を光らせながら目を細めた。
「神崎 恭子の彼氏です」
男の顔が歪んだのがハッキリと見えた。
67: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:03:03 ID:mi2
次の瞬間、頬に衝撃が走った。
俺は中に浮かびながら状況を飲み込む。
ああ、俺は殴られたんだ。
あんまり経験のないことに、少し脳が追いつかない。
68: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:03:18 ID:mi2
「どこだよぉ、恭子は、どこだ! だせよ!だせ!」
男の目は異常に血走っていた。
だめだ、やばい。
脳は危険信号を発しつづてけていた。
このままだと……殺される。
69: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:03:37 ID:mi2
それでも、俺は引くわけにはいかない。
恭子のために、絶対に……
俺は慌てて鞄をまさぐった。
アレを使うしかない。
できれば、使いたくなかったが……
もう仕方がない、俺が守るんだ。
鞄の中でこぶしを握り締めた。
70: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:04:04 ID:mi2
*
ついた! ついたぞ。
やっとだ…… やっと会える。
やっと、俺が彼女を守れるんだ。
俺は強くドアノブを握った。
71: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:04:25 ID:mi2
*
「……なんだよ、なんでだよ、なんで俺じゃだめなんだよぉ!」
金髪の男が顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくっている。
72: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:04:52 ID:mi2
手には俺が鞄から取り出した手紙が握られていた。
俺が彼に渡したのは、恭子から彼への手紙だった。
俺が恭子の家を飛びしてきた後、追いかけてきた恭子に渡されたものだ。
恭子はずっと前からこの手紙を用意していたらしい。
そこには丁寧な言葉で、彼を気遣いながらも、ハッキリと別れの言葉が書かれていた。
73: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:05:10 ID:mi2
「なあ、なんでお前なんだ? なんで、俺じゃないんだよ」
「……それはわかりません。でも……お願いします。もう恭子とは別れてください」
そう頭をさげる。
これが俺にできる精一杯だった。
74: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:05:30 ID:mi2
俺にはヒーローみたいに、こいつを退治するなんてできない……
だから、せめて彼女のために……
殴ったり、殺したり……、俺にはそんなことできないから、だからせめて彼女のために頭をさげよう。そう思った。
75: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:05:44 ID:mi2
「わかった。もうわかったから、お願いだから帰ってくれ」
男がそう言ってドアを開ける。
後ろ目に見る彼は、どこか寂しそうで、なぜかその姿を俺は忘れてはいけない気がした。
76: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:06:06 ID:mi2
*
ドアを開けると、真っ暗な部屋の隅で彼女がうずくまっていた。
神崎 恭子。
やっぱり綺麗だ。美しい。
そうして俺は彼女に近づく。
一歩、一歩、一歩……
78: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:06:31 ID:mi2
あと少しだ、あと少しで……
彼女が顔を上げた。
暗闇の中、目があう。
彼女の目が大きく見開かれた。
驚いてるんだな、俺が来たことに。
自然とにやける。
そうか、そんなに嬉しいのか、俺がき――
80: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:07:05 ID:mi2
「やめて! こないで!」
は?
世界がひっくり返ったみたいだった。
怯えた目で彼女はそう叫んだ。
彼女は何を言ってるんだ?
俺が来たんだぞ? 彼氏の俺が。
そうか動転してるんだな。
81: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:07:29 ID:mi2
「どうしたんだよ? 大丈夫か? 俺だよ俺、彼氏の顔忘れんなよ」
「何言ってるの! やめて! 近づかないで」
彼女は喚きながら、枕を投げてきた。
82: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:07:59 ID:mi2
全く冗談がきついな。
「いい加減にしろよ? ほら、こっちにきなよ。せっかく彼氏が来たんだからさ」
「ふざけないで! 私の彼氏は……悠人は……あなたが……あなたが刺した……」
83: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:08:15 ID:mi2
は? なんだよ、何言ってんだよ。
やめろ。やめろ、やめろ、やめろ。
84: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:08:31 ID:mi2
「どうして…… どうして悠人を刺したの? ねえ、相川君?」
彼女の頬をつたる涙が、淡く光った。
85: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:09:10 ID:mi2
*
「おお、どうしたんだよ? こんなところで」
金髪の男の家を出てから数分、暗い裏道を歩いていると、相川に声をかけられた。
「……さ……い、か……えせ」
87: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:09:46 ID:mi2
「え?」
様子が少しおかしかった。
相川は口をもぞもぞ動かしている。
格好も少し変だ、パーカーのフードを深くかぶって、ポケットに――
え?
――プスッ、と音がした。
88: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:10:10 ID:mi2
なんだ、何が起こった。
おかしい、なんだこれ?
途端、腹に激痛が走った。
「おいおい、なんだよ……これ」
思わず腹に回してしまって手を見ると、俺の手は真っ赤に染まっていた。
89: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:10:37 ID:mi2
「……うそ……だろ」
だめた、力が入らない。
人形みたいに、地面に伏せてしまった。
90: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:10:53 ID:mi2
薄れゆく意識の中、最後に相川の声が耳に響いた。
「許さない、彼女を返せ」
91: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:11:16 ID:mi2
*
「何言ってんだよ。あんな奴が彼氏だって? ふざけるな! お前に、……君に相応しいのは俺だけだ!」
そうだあんな奴は、神崎 恭子に相応しくない。完璧で、美しい、彼女に相応しいの俺だけだ。
92: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:11:39 ID:mi2
「それなのにお前は、あんな奴と付き合って! 腸が煮えくりかえりそうだったよ、あんな、あんな奴と!」
仕方がないから俺も喋り方を変えてみたんだ。あいつみたいに。吐き気がしそうだった。
それでも、僕は俺になったのに、それなのに……神崎 恭子は俺に見向きもしなかった。
それどころか……
93: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:11:58 ID:mi2
「見てたんだぞ! 俺は、あの日、映画の打ち上げの日。抜け出したお前らが気になってついてったんだ、そしたら、お前らは…… 俺はずっと見てたんだ、海の時も、いつも、いつも」
あの席にいるはずべきなのは、俺なのに。
それなのに橘なんかが神崎 恭子の横にふんぞり返って座ってる。
そんなの、許せるわけないだろ?
94: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:12:17 ID:mi2
「だから、罰を下したんだ。はは、あいつに相応しい末路さ。邪魔者は消えた。さあ恭子、こっちに来るんだ……結婚しよう。君に相応しいのは俺だけだ」
「やめて! こないで! やだ、やめて!」
俺が一歩踏み出すごとに、彼女は逃げ回った。
まったく手間のかかる……
95: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:12:41 ID:mi2
「確保!」
は?
大きな音がすると、突然叫び声が耳をつんざいた。
後ろからどたどたと、何人もの男が入ってくる。
96: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:13:01 ID:mi2
「なんだ、お前ら! 邪魔すんな!」
「警察だ。相川 椪、住居侵入罪で現行犯逮捕だ」
「は? ふざけるな! あと少しだろ! やめろ!俺と恭子の邪魔を……邪魔をするな!」
97: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:13:16 ID:mi2
手錠をはめられた腕に、力を込めて恭子へ手を伸ばす。
ほら、俺の手を掴むんだ。
誓うよ、君は必ず俺が守る。
必ず幸せにするよ。
98: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:13:37 ID:mi2
*
そっか、俺、刺されたんだ。
ということは今までのは走馬灯?
走馬灯か、思い出したのほとんど恭子のことだったなあ。笑っちゃうな、どんだけ好きなんだよ、あいつのこと。
楽しかったなあ、恭子に会って、いろんなとこ行って。
99: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:14:02 ID:mi2
ああ、俺死ぬのか……
やだな。
もっと恭子といろんなとこ行きたい。
もっと恭子と一緒にいたい。
駄目だ、こんなところで、死ぬわけには――
いかない。
100: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:14:23 ID:mi2
*
目を開くと、とても不安そうな顔をした恭子がいた。
恭子は俺に気づくと、泣きそうな顔をして、それがなんだかとても愛しくて、目に入る恭子のすべてが大好きで、愛おしくて、なんだか無性に抱きしめたかった。
101: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:14:43 ID:mi2
だから口からは自然と言葉が漏れていた。
「結婚しよう」
102: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:14:56 ID:mi2
すると恭子は、初めて告白したときみたいに目を丸くして、口をポカンと開けていた。
そうしてまたあのときのように、大きく笑って……
「いいよ。……やっぱりあんた面白い」
103: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:15:19 ID:mi2
*
相川 椪は俺と同時期に恭子に出会い、そうしてやはり俺と同じように、恭子に惚れた。
「俺だけだよ、俺だけが君を幸せにできるんだ。必ず君を幸せにするよ、恭子」
相川は留置所でずっと、そうつぶやいているらしい。
104: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:15:38 ID:mi2
警察の取調べでわかったのはこれくらい。
俺が入院してからどんどん時間が過ぎて、あんなことがあったのに、記憶もだんだん薄れていった。
105: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:15:55 ID:mi2
見舞いに来る連中も減ってきた頃だ、看護師から一つ話を聞いた。
「そういえば一つ伝言を預かってるの」
「伝言?」
106: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:16:22 ID:mi2
「ええ、君が倒れてるのを見つけて通報した人よ。救急隊員に君に伝えってくれって……伝言を残したらしいわ」
初耳だ。俺を見つけて、救急車を呼んでくれた人は、名前も残さず立ち去ったらしい。
その人が俺に……
「恭子を頼むって。それだけ、なんのことなのかしらね」
「え?」
107: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:16:48 ID:mi2
「君の知り合いなのかな? でも一度もお見舞い来てないわよね」
「その人の特徴、わかりますか?」
「詳しいことはわからないけど、金髪の人だったって……」
「……そうですか、ありがとうございます」
なんだか胸をこみ上げる想いがあった。
108: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:17:08 ID:mi2
ああ、そうか俺はたくさんの人に生かされたんだな。
たくさんの奇跡とたくさんの人のおかげで、俺はいまここにいる。
それはとてもありがたいことで、とても誇らしいことだ。
109: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:17:27 ID:mi2
だから俺はこの生かされた命で、毎日、精一杯生きよう。
それが俺にできることだ。
110: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:17:48 ID:mi2
「あ! 悠人、ちゃんと大人しくしてるー?」
そんなことを考えてると恭子が騒がしい声で、やってきた。
「ちょっと、行きたいところあるんだけど、いい?」
「いいけど……どこ?」
恭子が不思議そうな顔でそう尋ねた。
「屋上」
111: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:18:09 ID:mi2
*
恭子に車椅子を押してもらって、屋上に出ると少し肌寒かった。
「寒いねー、もう直ぐクリスマスだ」
「まだ先でしょ」
「そうかなー、楽しみだね」
恭子はいつも楽しそうな顔をしている。
俺はやっぱりその顔が大好きで、つまり恭子のことが大好きということで、そんな恭子との時間を大切にしたかった。
113: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:18:41 ID:mi2
「なあ」
「なに?」
「幸せになろう」
口からついそう漏れていた。
115: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:22:15 ID:mi2
「なに言ってるの? 当たり前じゃん。私は悠人と一緒にいれて、いまも、これからも、ずっと幸せだよ」
「ああ、ありがとう」
この笑顔をいつまでも守りたい、改めてそう思う。
この笑顔をいつまでも、俺が隣で……
117: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:24:02 ID:mi2
一緒に幸せになろう。
そうなにかに誓った。
恭子の左手では、薬指にはめられた指輪が淡く光っていた。
119: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:29:09 ID:mi2
これでこの話はおしまいです
ここまで付き合ってくださった方ありがとうございました
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120: 名無しさん@おーぷん 2017/07/18(火)21:30:38 ID:mi2
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