転載元:('A`)はベルリンの雨に打たれるようです

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('A`)はベルリンの雨に打たれるようです【前編】【後編】

1: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:08:12.94 ID:N84Ou5maO

《ベルリン放送、朝のニュースの時間がやって参りました。

深海棲艦の脅威が再び高まる中、大手旅行会社の株価が軒並み大幅に下落する事態が発生しており───》

《ZDFより新鮮な朝のニュースを放送します。

欧州大陸近海における深海棲艦側の小規模な襲撃はここ2週間で8件に上り、EU連合艦隊司令部では大規模攻勢に備えて大西洋上における戦力の増強を────》

《【Guten Morgen Deutschland】のお時間がやって参りました。司会のアンニー=スロムカがお届けします。

先日アメリカ、ロシア、日本の3カ国防共協定締結が正式に発表された件について、ヨコスカで第七艦隊提督の────》

《ドイチェ・ヴェレよりお知らせです。来月から開かれる欧州戦車道博覧会に先駆けて、毎朝5分【私の戦車道】のコーナーを───》

《アメリカのトソン=カーヴィル大統領は、東海岸防衛のためにも深海棲艦への対応をヨーロッパ諸国と連携し緊密に行っていくと声明を───》

《ダイオード=リーンウッド首相は、本日フランス大統領とロシアの東欧問題に関する対策を協議する予定で───》

《北ドイツ放送よりお知らせです。

ドイツ連邦刑事局は、ここ一年ほど北部地域にて活動を活発化させているバイカーギャング【デビル・ブレーメン】が、昨晩ノルデン方面へ大規模な移動をしていたという目撃証言があったと発表しました。

刑事局では【デビル・ブレーメン】と敵対組織による抗争が勃発する可能性を示唆し、住民になるべく外出を控えるよう勧告がでています》







 


本田翼さん(24)、性行為シーンが生々し過ぎるだろ・・・
【GIF】本気でスポーツしてる女の子、Hなのに気付いてない・・・・
【GIF】最近の女の子のオナ●ー、思ったより激しい
【ロ●コンGIF】マニア歓喜!超リアル、女子校身体測定の様子にぼ●きがとまらねーwwww
橋本環奈「このハゲ!違うだろ!」俺「すみません…」
【闇深注意】コレ見てガチでぼ●きする奴、今すぐ病院行くか犯罪犯す前に警察に相談しとけ。。。(GIF25枚)
親友「あとは、任せたよ。」
男「こんなところにいられるか! 俺は部屋に戻る!」
小倉唯の肛門「うーん……」
上坂すみれ「ツイッター更新しよう」
目の前にこんな神乳があったら我慢できるはずがない…
【盗撮】最近jkの運動会エ●チすぎwww
ビビアンスー ヌードエ□画像114枚!若い頃に出したヘア●ードが今でも余裕で抜ける!
カマキリ「いくぜっ、相棒!」ハリガネムシ「おうっす!」ウネウネ
俺「はあ…ア〇ルに女の子の腕ぶち込まれたいなあ」女「はあ…男のア〇ルに腕ぶち込みたいなあ…」俺女「「!?」」
銀行員「ひゃっはー!!15時だぜ!」
(´・ω・`)「兄ちゃんいつものやったげて」彡(゜)(゜)「聞きたいかワイの武勇伝」
元アイドルグループ所属の女子、フ●ラと騎乗位セッ●ス動画流出・・・簡単に撮影させたらダメでしょ・・・
【画像あり】元NMB48松田美子AV転向、遂に本番セッ●スシーン解禁!アイドルのマ○コにずっぽり!
【画像】俺(しこしこ、うっ) チノ「……」
幼女「キモヲタに誘拐された時の話をしよう」
勇者「終わりだな」魔王「まぁまて世界やるから」
ダンブルドア「ハリー、君は最近勃起をしているのかのう?」ハリー「えっ?」

2: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:09:27.40 ID:N84Ou5maO

〜('A`)はベルリンの雨に打たれるようです〜




3: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:10:19.94 ID:N84Ou5maO






「当店は禁煙です」

('A`)「……あー、すまない」

何の気なしに取り出した煙草を、横から伸びてきた手がかすめ取る。
絶対零度の視線で口元にだけ笑みを貼り付けたウェイトレスに頭を下げると、彼女はツンッと顔を背けて足早にその場を去って行く。

('A`)「……Verdammt」

ウェイトレスが十分に離れた辺りで、聞こえないように小さく悪態をつく。仮にも軍人が情けない話だが、そもそも非が此方にある以上強く言えないのが現実だ。彼女はあくまで職務を全うしたに過ぎない。

('A`)「くたばれ禁煙法」

やり場のない怒りを、とりあえず10年前に施行された今世紀最悪の悪法にぶつけることにする。
まぁ10年前の段階では俺はまだ煙草のうまさを知らなかったわけだが、Marlboroがティーマスの次に掛け替えのない相棒となってしまった今は「喫煙者に対する人種差別」の深刻さを身を以て感じる日々だ。

('A`)「……朝飯食うか」

喫煙者の社会的地位を取り戻すにはどうすればよいか真剣に頭を悩ませつつ、厚焼きのベーコンをフォークに突き刺しスクランブルエッグに絡めつつ口に運ぶ。

ベルリン屈指の高級ホテル備え付けカフェだけあって、味は最高だった。




4: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:11:56.52 ID:N84Ou5maO


('A`)「………休暇、ですか?」

「ああ、明日から1週間だ」

それは、二日前の出来事。呼び出しを受けておっかなびっくり陸軍局へと出頭した俺に、眼鏡を掛けたいかにも頭が固そうな局員はそういって紙の入った封筒を突きつけてきた。

「アルカンタラマールでの大手柄への“報償”だよ。帰国から日が経ってしまい申し訳ないがね」

('A`)「また急な話ですね」

「君が大尉への昇進を素直に受けてりゃこの“急な話”を持ち出す必要も無かったさ」

嫌味を苦笑いでスルーし、封筒を開封。中に入っていた書類には休暇期間中も給与対象となること、加えて、休暇期間中の諸費用も陸軍から支給されることが書かれている。

('A`)「……こりゃ至れり尽くせりだ」

「2階級特進に見合う代替案だからね。ま、陸軍全体の話で言えばこっちの方が安上がりだから助かると言えば助かるさ」

局員はそう言って、受付の台に100ユーロ紙幣の束を三つ叩きつける。

「こっちはしめて二万ユーロの“休暇手当”だ。足りなくなった分は領収書を切っておけばそれも陸軍局から補填する。また使い切れなかった場合でも、手元に残った金の返済義務はない。こっちの一万ユーロは純粋なボーナスの方だな。これは休暇手当とは別だから、ここからの消費分は補填の範囲内だ。

何か質問は?」

('A`)「いや、特にない」

「ならその金持ってとっとと失せな。

よい休暇を、“英雄気取り”君」




5: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:13:54.28 ID:N84Ou5maO


さて、かくして俺は昇進を蹴り上層部に睨まれた見返りとして、1週間の素敵なバケーションを獲得した。

とは、いえ。

('A`)「……休暇は休暇で持て余すな」

彼女ナシ。
趣味ナシ。
友達ナシ……というほどではないが、休暇中に遊びに誘うような仲の奴はごく少数。

そのごく少数も、リスボンでの一件以降激増した深海棲艦襲撃の対応に逐われ激務の日々だ。貴重な休日を俺の退屈しのぎに付き合わせるような真似はしたくない。

結果、俺の手元には“特にすることがない10080分”という膨大な空白の時間だけが残った。

因みにこの内1440分は、割り当てられた部屋でルームサービスをつまみながらベットで寝転んでいたらいつの間にか消化されていた。

('A`)「……金はあるしな、うん。今日から適当にベルリンを回ってみるか」

('A`)

('A`)「ベルリンってどこ見りゃ良いんだ?」

休暇、マンドクセ。




6: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:20:08.30 ID:N84Ou5maO

「ベルリンの見所、でございますか」

('A`)「あぁ。多忙なところ申し訳ないんだが、頼む」

いちいち調べるのも億劫なので、年配のウェイターを一人呼び止めて尋ねることにする。相場より少し多めのチップを盆に置くと、目尻の皺をだらしなく緩めながら饒舌に答えてくれた。

「いつもならヨーロッパ・パークがやはり一番手に上がるのですが……ここ数日はあいにくの天気ですからな」

そう言ってテラスの外にちらりと視線をやる。今日も厚い雲が空を覆い、朝から盛んに雨水をアスファルトに叩きつけている。

「ブランデンブルク門など如何でしょう。今年で建設から326年になる歴史ある門ですが、雨の中のたたずまいもまた格別な趣がございます。

距離的にもここからそう遠くありません。タクシーなら2〜3分、徒歩でも15分といったところですな」

('A`)「……なるほど、ね」

グランドスクールの頃に歴史学で最悪な成績を叩き出し続けていた俺にとって、そのブランデンブルク門とやらが積み重ねた326年の月日は“この天気に近づいたらさぞ土臭いだろうな”という感想を抱かせるだけだ。

此方の心情が伝わったらしく、ウェイターは「お気に召さないようですな」と言って苦笑いを浮かべた。

「確かに、今の若い人たちにはあまり愉快な場所とは言えないでしょうな。

しかし、同じドイツ人に紹介できるようなベルリンの見所というとなかなか思いつきませんなぁ」

('A`)「いや、そこは気にしないでくれ。元は田舎の出身だし、アビトゥーア(ドイツにおける高等教育受講の権利)を取得できず学園艦への乗船ができなかった落ちこぼれだ。

俺にとってはベルリンもニューヨークも変わらないよ、脳みそがラードでコテコテのアメリカ人に紹介する感じで大丈夫だ」

「なるほど。ではケンタッキーフライドチキンかステーキハウスが付近にあることは必須条件ですな。

……とまぁ冗談はさておきまして、今ならばパリ広場に行かれては?」

('A`)「パリ広場?」




7: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:20:56.84 ID:N84Ou5maO

どちらにせよブランデンブルク門も目にすることになりますがねと前置きした上で、ウェイターはどこからともなく一冊の手帳サイズの冊子を取り出し、机の上に置く。

表紙には“ドイツ戦車展覧会”と書かれ、やや装飾過多なその文字の下に突撃戦車A7V、ティーガー供▲譽パルト2の写真が並んでいる。

「来月の欧州道博覧会に先駆けて、ムンスター戦車博物館から借り出された保管車両がパリ広場に展示されているんですよ。

このドイツは戦車、そして戦車道と共に歩んできた国ですからね。ベルリン市の方でもかなり気合いを入れているみたいです。

なかなか壮観な光景でしたよ、ドイツ国内だけでなく欧州各国の戦車道ファンが朝から広場に詰めかけるぐらいの眺めですから」

そう言われ、今更ながらこのカフェが朝から大盛況な理由に合点がいった。
こいつらの大半はパリ広場に雁首揃えるドイツ戦車群が目的というわけか。




8: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:22:11.69 ID:N84Ou5maO

ぱらりと何の気なしに冊子を開けば、最初のページにはやたらと古くさくてでかい門──おそらくブラなんとか門──を背景に、その門に向かってずらっと2列縦隊で並ぶ戦車隊の写真が見開きで載っている。
なるほど、砲や機銃を斜め上に向けて整列する様は、王に仕える歴戦の騎士達が剣を掲げ忠誠の誓いを立てている姿を思い起こさせる。

例え戦車道に微塵も興味が無い人間でも、少なからず高揚を覚えそうな光景だ。

他にも、近くのホテルやショッピングモールでTBL───タンク・ブンデス・リーガの歴代優勝チームパネル展や強豪学園艦による戦車の実演操作イベント、近年国際試合でめざましい結果を上げつつある日本の戦車道特集、果てには陸軍で公式に利用される戦車シミュレーターの体験など催しはかなり充実している。
……シミュレーターまで借り出されてるって事は陸軍も一枚噛んでるのか。

世界に冠たるドイツ戦車道のアピールの場とあって、どうも戦車道連盟も鼻息が荒い。ここ数年海の女神にばかり賞賛が集まった結果、陸の女神の崇拝者達が欲求不満気味らしい。

('A`)(しかし、“パリ広場”ねぇ……)

ふと、アルカンタラマールで出会った巻き毛の戦車兵を思い出す。

アイツとはその後顔を合わせぬまま帰国となったが、今はどこで何をしているのだろうか。






ξ゚゚)ξ「お話中にごめんなさい。私にもそのパリ広場?への行き方を教えてほしいのだけれど」

('A`)




9: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:23:15.68 ID:N84Ou5maO

「おや、マドモアゼル。戦車道に興味が?」

ξ゚゚)ξ「興味というか関係者というか……ベルリンって大して見るところも無さそうだし、暇つぶしになるなら寄ってみようかなって」

('A`)

「はっはっはっ、これは手厳しい。ですが、戦車道と何らかの関わりがある方なら退屈しないことは保証させていただきます。

これを機に、ベルリンへの印象も変えていただければ幸いですが」

ξ゚゚)ξ「善処はするけどそれは私次第ね、えぇ」

('A`)

ξ゚゚)ξ「あら」

('A`)






ξ゚゚)ξノ「よっす久しぶり、元気してた?」

('A`)「軽くね?」




10: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:24:44.80 ID:N84Ou5maO


《ヴェルヘルム=スハーフェン鎮守府にて行われた定例記者会見の中で、マモン元帥は海上防衛網の盤石性を強調。深海棲艦側はリスボン攻撃の失敗後勢いを欠いている状態だと説明し───》

《ポルトガル政府は本日、日本のミナミ首相に正式に艦娘の派遣を要請することを決定したと発表───》

《えー、駅構内の皆様にお知らせ致します。マリーエンハフェ〜ノルデン間の列車は現在貨物車の脱線が原因で運休となっており───》

《此方レーベレヒト=マース、該当エリアの捜索を完了。未だに捕捉できない、引き続き───》

《台頭著しい日本の戦車道界で、一人の少女の活躍が脚光を浴びています。

国から廃艦を突きつけられた学園艦を救ったその少女は、まさしく現代のジャンヌ=ダルクと言っても過言ではなく───》

《あぁ、そうさ。あのどら息子は集会があるとかいって昨日の夜から家を空けてるさね!はっ、あいつは年がら年中遊び回ることしか考えてないからね!

どうせまたバイク仲間とそこらを走り回ってるだろうよ、電話にも一向に───》

《此方51号車、高速道路沿いで【デビル・ブレーメン】のメンバーと思われる男を一人確保した。

酷く錯乱している、応援と救急車を急ぎで寄越してくれ。

……女?女がいったいどうしたってんだ。それよりお前さん、バイクはどうした?他のメンバーはどこにいるんだ?》




11: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:29:23.89 ID:N84Ou5maO

ξ゚゚)ξ「改めて、フランス陸軍のツン=デレよ。

階級は先日昇格して中尉になったわ。四日前からミュルハイムに配属されているの、よろしく」

('A`)「ドイツ連邦陸軍第11歩兵連隊所属のドク=マントイフェルだ、階級は少尉。

リスボンの時はアンタ達のおかげで助かった」

ξ゚゚)ξ「それはこっちの台詞よ。貴方が声を掛けてくれなければ私は今頃2階級特進だったわね。

後、当然のことながらそちらのBismarck zewiにも感謝してる」

('A`)「もしも会う機会ができれば伝えるよ………しかし、ミュルハイムね」

多少フランス訛りがあるものの、非常に流暢なドイツ語に合点がいった。

ミュルハイムには欧州合同軍の一角であるドイツ・フランス合同旅団が駐屯している。
ドイツ語の取得も趣味や酔狂ではなく必要に駆られてのことだろう。

('A`)「それにしてもたった四日でそのレベルか、凄いな」

ξ゚゚)ξ「あぁ、配属が四日前ってだけで辞令自体はもっと前から貰ってたのよ。ドイツ語の勉強も別件もあって二ヶ月前ぐらいから既に始めてたし」

ツンはコーヒーを飲み干しながらそう言って肩を竦める。
……いや、二ヶ月でもここまで完璧にできるか?ドイツ語って他の国の奴等からしたら難しいって聞いたことあるんだが。

ξ--)ξ「一応リスボンの時点で日常会話ぐらいならこなせはしたけど、あの急場だと表現のすれ違い一つでお陀仏の可能性もあったしね。

だからやりとりはより使い慣れている英語でやらせて貰ったの」

つまり英語も本来ならもうちょっと高いレベルで扱えると。なるほど、合同軍に派遣されるだけあってかなり優秀なようだ。

('A`)「………あー、ところで中尉殿」

ξ゚゚)ξ「……急に他人行儀ね。何?」

('A`)「何故自然な形で相席を?」




12: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:32:33.74 ID:N84Ou5maO

ξ゚゚)ξ「………」

依然として俺の目の前の席に座りながら、ツンは何故か空になったコーヒーカップを口元に持っていき傾けた。

フランス式のテーブルマナーだろうか。

ξ゚゚)ξ「……ほら、あれよ。お店混んでるから、ね?見ず知らずの他人と相席になってもアレだし」

('A`)「……」

言われて店内を見回す。確かに朝の八時半にしては異例の人入りなのは確かだが、空席は皆無じゃない。窓際のカウンター席は寧ろ若干の余裕すらある。

ξ゚゚)ξ「それに貴方と私の仲で挨拶無しって言うのも変だしほら助けて貰った御礼もしっかり言えてなかったし何より見知らぬ土地で見知った顔に会えたから少し安心したというかまぁそういうね深い意味はないのよ別に」

一時間弱同じ戦車に乗っていたことが“深い仲”と言えるかどうかは議論の余地があるだろ間違いなく。
しかしやけに早口だな、やはり取得期間が短かった分ドイツ語は慣れない面もあるのか。

ξ゚゚)ξ、「その……相席が迷惑って事なら移動するけど」

('A`)「疑問に思っただけで別に迷惑じゃない。そっちが構わないなら俺はこのままでいい」

ξ*゚゚)ξ「!」

ξ;*゚゚)ξ「そ、そう!な、ならこのまま相席でいいわね!

別に私はどっちでもいいけど!どっちでもいいけど!!」

('A`;)「……そうか」

15分にも満たない時間の中で、俺は一つ学ぶ。

目の前のフランス人女性は、割と変な奴らしい。




13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/08(月) 12:40:51.64 ID:N84Ou5maO

秋口の空模様のように表情を安定させないツンを面食らって眺めつつコーヒーカップを持ち上げるが、いやに軽い。覗いてみるとカップにはなにも入っていなかった。

ドイツには空のコーヒーカップに口吻をする習慣はないので、通りすがったウエイトレスにお代わりを注文する。

ξ゚゚)ξ「貴方、この後予定はないのね?」

そう尋ねつつもう一度カップを口元に持って行こうとしたツンは、一瞬眼を見開いてカップの中を覗き込んだ後「私にもお代わりを」とウェイトレスに手元のそれを差し出す。
……はて、ではさっきの動きはいったい何だったのだろうか。

('A`)「というか待て、何を根拠に決めつけてるんだ?」

ξ゚゚)ξ「予定のある人間がウェイター呼び止めてわざわざベルリンの見所なんて聞くかしらね?」

('A`)「……」

ぐうの音も出ない正論を叩きつけられ、口にコーヒーと苦虫を含んで黙り込む。単に変な奴というわけではなく、存外鋭い。

('A`)「軍人やめて探偵でも始めたらどうだ?女エルキュール=ポワロになれるぜ」

ξ--)ξ「よく勘違いされるけど、ポワロはフランス語圏に住んでるだけでベルギー人よ。それに私、子供の頃あこがれたのはアルセーヌ=ルパンの方だし」

ああ言えばこう言う奴だ。

('A`)「仰るとおり、何も特に決めてないよ。というかドイツ人でありながらベルリンに来たこと自体数えるほどしかないな」

ξ゚゚)ξ「そう……」

ξ゚゚)ξ

ξ゚゚)ξ「あー………んっん。その、私はフランス広場の戦車道展に行こうと思ってるんだけど、良かったら貴方も一緒に来る?」

('A`)「え?」

ξ゚゚)ξ「ほ、ほら。それなりに扱えるようになったとはいえやっぱり私のドイツ語なんて付け焼き刃だし?ベルリンも私は完全に初めてだし?その、もし行くところがないなら一緒に回ってくれないかしら……なんて……」

('A`)「別に構わんが、エスコートといえるような上質な案内はできなi」

ξ*゚゚)ξ「そ、そう!!なら仕方ないから貴方にエスコートされてあげるわ!

別にどっちでも良かったけど!!どっちでも良かったけど!!」

('A`;)「……」

どっちでも良かったのなら、一人でさっさとフランス広場に行けばよかったんじゃないだろうか。





14: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:42:45.62 ID:N84Ou5maO



《何度も言うがこんなこと陸軍の連中にも上にも知られるわけにはいかんのだ!!類を見ない大失態だぞ!?何としても内々に処理を───》

《軍のヘリがやたらと飛んでるな……また深海棲艦か?

あぁいや、こっちの話だ。そろそろ家を出るから駅で待ち合わせを───》

《ドイツ中央は今日も厚い雲に覆われ、ベルリンを中心に強い雨が────》

《先年から続くウクライナ問題についてEU加盟各国は引き続きロシアに対応を要請していますが、ロシア政府は深海棲艦との戦闘激化を理由に返事を引き延ばし───》

《BFM-TVよりニュースです。フランス海軍は我が国唯一の艦娘であるコマンダン・テストの配備数が昨日丁度40隻目になったと発表。新たなコマンダン・テストは深海棲艦の本土上陸への備えとして内地に配備される予定で────》

《France 24から臨時ニュースをお伝えします。つい先ほど、フランス・ドイツ国境付近のA-320番道路にて大規模な陥没・崩落事故が発生した模様です。

死傷者についての情報はまだ入っておらず、フランス陸軍・消防・警察が急行中とのこと。

付近の住人の皆様は、決して現場に近づかないようにしてください》




15: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:44:41.56 ID:N84Ou5maO






あまり早く出過ぎてしまってもそれだけ雨に多く当たることになると考え、1時間ほどカフェテリアで潰してからホテルを後にする。

ぱらりと傘を開いて一歩外に踏み出す。大量の雨粒がナイロン生地の上で弾け、たくさんの子供が裸足で走り回っているようなバタバタという音が耳朶を打った。

フランス広場までの道中を、並んで歩きながら他愛のない会話で潰す。会話と言っても、ほとんどはツンが一方的に喋り俺は軽く相づちを打つ程度だが。

ξ゚゚)ξ「にしても、このご時世によく軍属で一週間も休暇なんて取れたわね」

('A`)「そりゃドイツ陸軍上層部のありがたーーいご厚意………と言いたいところだが、世間体半分、もう半分はある種の嫌がらせだろうな」

深海棲艦の襲撃が続き、陸海空軍全てが厳戒態勢を維持している欧州にあって一人だけ優雅に一週間バカンス。特に最前線で命がけの日々を送る海軍並びに艦娘からしたら、深海棲艦より先に俺をぶち殺したくなるような案件だろう。

陸軍にしたって、決して良い気持ちがするものとは思えない。ジョルジュやビロードやミルナ中尉、ティーマスのように理解してくれている(と思いたい)面々はともかく、話だけを聞いた奴等からすれば俺は敵前逃亡した臆病者にしか見えない。
 _,
ξ゚゚)ξ「……特に何もしてないのに罰を与えるの?ドイツって割と変な国ね」

ツンはそう言って首をひねったが、上層部の当たりが異様に悪い理由は察しがついている。

('A`)「広告塔がほしかった陸軍の期待に添わなかった結果だな」

艦娘の実装で深海棲艦が大西洋に叩き出されて以来、陸軍の存在感は海軍に比べてあからさまに薄くなった。ポルトガルでの一件は久しぶりのアピールの場だったが、それもBismarck zwei という“救世主”の登場にかっさらわれた。

人類の平和よりも自分たちの権力の方が大事らしい上層部は、「陸軍の功績」を大々的に発表するために俺に白羽の矢を立てたというわけだ。そんなものに参加させられたくなかったので断ったが。

小耳に挟んだ話だが、将軍の一人は「いっそ名誉の戦死を遂げていてくれていた方が好き勝手に脚色できたのに」とこぼしたらしい。




16: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:48:52.78 ID:N84Ou5maO


ξ゚゚)ξ「……陸海軍の啀み合いはどこも同じってわけね」

('A`)「やっぱりフランスも酷いのか?」

ξ゚゚)ξ「貴方たちよりもね。

ウチの海軍が実装している艦娘はコマンダン・テストだけ、数もようやく40隻に過ぎない。それで艦娘の数を増やしたい海軍と、増やされたら困る陸軍が泥沼の主導権争いしてるわ」

ツンはそう言いながら、心底不快げに息を吐く。

ξ--)ξ「しかもその陸軍の中でも、海軍との協調も必要だとする穏健派とこれを機に陸軍の指導力を徹底的に強化しようとする強硬派が権力争いの真っ最中よ」

('A`)「……」

ξ゚゚)ξ「………私ね、所属する部隊の隊長に聞かれたのよ。君は“どっちの派閥に入る気だ”って。

今は国のために戦っているので、どっちにも入りませんって答えたら………」

('A`)「ジャガイモとソーセージの国に飛ばされた、と」

::ξ* )ξ::「ゴフッ………そ、その通りだけど、人が真面目な話してるときに笑わせに来るのやめなさいよ」

……優秀さを買われての抜擢ではなく、中央から遠ざけるための左遷だったと。

われわれの真の国籍は人類である────確か、H.G.ウェールズの言葉だったか。

“深海棲艦”という共通の脅威を前にしても、【人類共和国】の設立は残念ながら難しいようだ。




17: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:51:19.41 ID:N84Ou5maO


ヤパーヌ製の高性能防水傘さえあまり役に立たない大雨の中で、しかしながらフランス広場は傘を広げた多くの人でごった返す。

('A`)「………おぉ」

そして、その人混みが納得できる程度には確かに“その眺め”は荘厳だった。

ブランデンブルク門へ向かって伸びる石畳の道路、その両脇にパンフレットと全く同じ構図で並ぶ歴代のドイツ軍戦車。

最も手前にはドイツ軍が世界に誇る、“最強の戦車”ケーニッヒ・ティーガーと第一次大戦時にの最初の戦車であるA7V。この二台を先頭に、優に30は越えるであろう戦車・軽戦車・自走砲が門へ向かって鎮座する。
最奥、門のすぐ手前では超重量戦車マウスとカール自走臼砲が巨躯を晒し、あえての演出なのか砲を広場へ入ってくる人々に向けていた。

門の上に鎮座する、おそらく大昔の王様と思われる馬車に乗った銅像の存在も併せれば、雨靄の中に悠然と佇む戦車群はまさに“精強な騎士団の整列”だった。

会場周囲は万一の車両の誤作動やテロを警戒してか、ドイツ陸軍の顔も知らぬ同僚達が一個小隊ほど警戒の任にあたっている。
とはいえ景観への配慮からか身につけているのは全員Reichswehr時代の軍服だ。邪魔になるどころか彼らの存在もまたこの眺めの重厚さを増すのに一役買っていた。

ξ*゚゚)ξ「────Tr?s bien」

隣で、恍惚とした表情を浮かべてツンが呟く。

TBLの試合をニュースで追う程度の関心でしかない俺でもこの光景には圧倒されているのだから、実際に戦車と関わり愛着を持っている人間からすれば例え他国のものであっても相当な感動を受けるに違いない。

ξ*゚゚)ξ「アーーー……アーーーっ!!

ドク、もうちょい近くで見るわよ!行くわよ!!」

('A`)「ぉK、落ち着け。この雨の中ですっ転んだら悲惨だぞ」

興奮状態のツンにほとんど引きずられるようにして、俺は門の方へと向かう。正直一緒に居るのが少し小っ恥ずかしくなるぐらいのはしゃぎようだが、幸いどいつもこいつも居並ぶ戦車達に釘付けだ。

まぁ、せっかく来たんだし少し見て回ろう。そう考え直し、顔を上げ────






18: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:52:26.82 ID:N84Ou5maO








─────眼が、合った。








19: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 12:54:29.72 ID:N84Ou5maO


('A`)「…………」

広場を埋め尽くす人混みの中で、

“それ”は。

“そいつ”は。

ただ一人、俺たちを見据えていた。

『…………』

土砂降りの中で傘も差さず、佇む影。

ブランデンブルク門の、丁度真下辺り。そこから向けられた赤い瞳は、間違いなく俺たちを───俺を見据えている。

(;'A`)「………」

一時期軍内でも話題になったバイカーギャングのエンブレムがついた革のジャケットを着ているせいで、一目見ただけではただの人間にしか見えない。実際周囲は大雨の中で傘を差さずにいるそいつを奇異の目線でちらりと見た後避けこそすれ、誰も騒ぎ立てはしない。

それでも、俺には解った。

漆喰で塗り固めたような白い肌。

対照的に、血のように紅い双眸。

“奴等”にしては滑らかで自然な笑みを浮かべた、口元。

ヤァ、マタ会ッタネ。

まるでそう言いたげな笑みを浮かべて、奴は────重巡リ級eliteは、挨拶するように左手をひょいと上げる。

腕周りに、艤装が展開された。

(;'A`)「────伏せろ!!」

ξ;゚゚)ξそ「きゃあっ!?」

傘を投げ捨て、ツンに飛びつき、地面に転がる。





─────砲声。

轟音と共に、ブランデンブルク門が崩落した。




25: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 22:32:25.49 ID:Z9goZ7tp0

《あー……此方51号車。現場に到着したが酷い有様だ、死体がそこら中に───》

《此方43号車、デビル・ブレーメンのユニフォームを着てバイクで走行中の一団を捕捉。これより追せk

《42号車より43号車、状況を報告せよ!それと今の爆発音はなんだ!?おい、43号車───》

《プリンツ・オイゲンよりHQ、観測機が奴等を捕捉しました、24号道路です……タ、タ級elite2隻!?HQ、単艦での対処は困難、至急増援を────》

《ば、ば、ば、バイクに乗った女が突然ぶっ放してきたと思ったらパトカーが吹き飛んじまったんだよ!!ありゃイスラムのテロリストにちげえねぇ、早く来て────》

《元帥、陸軍局から問い合わせです!民間から深海棲艦が現れたという通報が入ったと────》

《誤情報だと言っておけ!何度も言うがこのことは奴等にバレては───》

《げ、元帥!!ベルリンに、ベルリンに深海棲艦が!!》

《……………何だと?》

《ラベ川よりハンブルクにル級4体の上陸が確認されました!民間から通報があった模様!》

《ハノーファー北部、七番道路にて陥没事故発生!無人偵察機が急行していますがおそらく深海棲艦による攻撃です!!》

《ヴンストルフ空軍基地に【Helm】による大規模な空襲を確認!!同基地よりグラーフ・ツェッペリンの出撃要請が出ています!!》

《ネルフェニッヒ航空基地からも要請が到着!ル級による砲撃も行われているとのこと!!》

《イェーファー空軍基地からも同様の要請あり!》

《何が、何が起きている……?》




26: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 22:35:03.98 ID:vhkD1UQdO

《France 24より緊急放送です。A-320番道路にて、艦隊規模の深海棲艦の出現が確認されました。現在陸軍が迎撃を敢行すると同時に、警察と連携して避難誘導を各地で行っています。フランス東部の皆様は、誘導に従い速やかに避難してください》

《北ドイツ放送より北部住民に緊急放送をお送りします。複数地域に深海棲艦が出現したという通報が陸軍・海軍局に入りました。最低限の身の回りの物のみ持って迅速な行動を心がけて下さい》

《ZDFより特別報道を行います。

この映像が見えますでしょうか、ドイツ各地に深海棲艦の艦載機が襲来しております。街に容赦なく爆弾の雨が降り注いでいます。人が、建物が、次々となぎ倒されていきます》

《ドイツ海軍から、深海棲艦の本土上陸に関する公式のコメントは未だにありません。複数箇所で艦娘と海軍陸戦隊、陸軍が展開、深海棲艦への反撃と遅滞を行っている模様です》

《既に幾つかの地方支局と連絡が取れない状態になっており、ドイツ国内は混乱の極みに達しています》

《BBCから衝撃の映像をお届けします。ドイツ・フランス両国で深海棲艦の大規模な内陸侵攻が確認されました、ご覧下さい、ル級が砲撃を放ちながら道路を闊歩しています》

《オランダ政府は陸軍を国境線へ出撃させたと発表、同時に国民に、政府公式発表を絶対に聞き逃さないようにと注意喚起のコメントを添えています》

《CNNドイツ支局との連絡は途絶しており、フランス支局も混乱状態で正確な情報が入ってこない状況です。

ホワイトハウスは在独アメリカ人の保護と、友好国であるフランス・ドイツの救援に最大限力を尽くすと談話を発表。

大西洋上で深海棲艦の警戒に当たらせていた第六艦隊をイギリス海峡に派遣、ドイツ・フランス救援作戦を発動する模様です》




27: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 22:41:04.57 ID:vhkD1UQdO


.




真下から門に向かって放たれた、重巡洋艦の主砲撃と同程度の威力を持つ一撃。積み重ねた300年の歴史とやらは、その前にはあまりにも無力だ。

門は上部中央を破砕され、両断状態となった支柱は音を立てて崩れていく。

そして────“真下からの砲撃”によって上空に撃ち上げられるかたちとなった門の残骸が、迫撃砲弾のような軌道で周辺へと降り注いだ。

「────えっ」

「……は?何?うs」

ツンを庇って地面に伏せる俺の周りで、事態を飲み込めぬまま石の弾丸に人間が叩きつぶされるしめった音がいくつも雨音をかき消して聞こえてくる。噎せ返るような血の臭いが、一瞬で広場に充満した。

ξ;゚゚)ξ「……ドク、いったい何が」

(#'A`)「逃げるぞ!!立て!!」

ξ;゚゚)ξそ「あ、えっ?」

瓦礫の飛翔が納まったのを確認し、まだ理解が追いついていないツンの腕を引いて立ち上がらせる。

走り出しながら背後を見やると、リ級eliteはニヤニヤとからかうように笑いながら此方に腕を向けていた。

(;'A`)「────皆、散れーーーーーーーーっ!!!!」

ξ;゚゚)ξ「きゃあっ!?」

未だにボケッと突っ立っている広場の奴等に向かって絶叫しつつ、ツンを抱きかかえて先ほど落下してきていた瓦礫の影へと転がり込む。下敷きになっている紅い染みと白い脂肪、それから左手が眼に入ったが気にしている暇はない。

『♪』

熱と鉄の塊が、リ級eliteの右腕艤装から吐き出される。第4世代戦闘機の装甲をも引きちぎる威力と速度を誇る弾丸が、雨粒を切り裂いて先ほどまで俺たちが居た場所を駆け抜けていった。

「ふぁっ」

「ああああああああああえあっ!!!!?」

叫び声に反応した幾らかは、俺の後に続いて物陰に飛び込み避けられたようだ。だが、そうできなかった奴の方が遙かに多い。

ξ;゚゚)ξ「っ」

射線上の人体が引き裂かれ、砕かれ、意思がある人間から物言わぬ肉塊へと姿を変えて路上に横たわる。響き渡る断末魔に腕の中でツンの身体がびくりと震えた。




28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/08(月) 22:44:40.64 ID:vhkD1UQdO

「撃て、撃て!!」

「早く広場の外に逃げろ!!巻き込まれるぞ、急げ!!」

「此方フランス広場、敵襲を受けている!至急増援を派遣してくれ!!」

機銃掃射が納まると同時に、広場のあちこちで銃声が幾つも上がる。

先ほどの瓦礫の雨と掃射から生き残った警備担当のドイツ兵達が、H&K G36Cを構えリ級eliteに向けて引き金を引いていた。同時に、広場の外からも民間人に逃げるよう促しつつ20名あまりがなだれ込んでくる。

誰もが、死を覚悟した顔つきで。

('A`)「行くぞ」

ξ゚゚)ξ「……私たちも戦」

('A`)「俺たちがあっちに入っても意味はない」

ξ;゚゚)ξ「……」

あえて、感情を殺して平坦な声で答える。

事実、俺たちが彼らに加わったところでできることはない。俺もツンも武器を持っていないし、もし持っていたとして「歩く重巡洋艦の装甲」を歩兵の携行火器ごときで抜けるはずもない。

そして彼らが生を捨ててまで稼げる時間も、あのリ級が最大限に「遊ぶ」であろう事を考慮に入れても15分あれば十分な“健闘”だ。

ならばせめて、彼らの意思を少しでも無駄にしないように選択する。

('A`)「急いでここから離れろ!!東だ、東へ向かえ!!」

ξ゚゚)ξ「もし怪我人が居たら手の空いてる人で運んで!押さないで、押し合うとかえって逃げ足が遅れるわよ!!」

ようやく現状を認識して会場出口に恐慌状態で殺到しようとする人の波を誘導し、パニックや怪我で動けない奴等を立たせ、促し、リ級から遠ざけていく。

('A`)「こっちだ、早く!!」

座り込んで泣き喚く子供を抱え上げ、その母親と思わしき女の背を押し進ませる。

一瞬、背後に視線を向けた。

「………」

警備隊の指揮官と目が合う。彼は微笑み、ありがとうとでも言いたげに此方に向かってサムズアップした。

「────Los, Los, Los!!」

突撃の号令、アサルトライフルを構えた兵士達が弾丸を放ちながらリ級との距離を詰めていく。俺は彼らに背を向け、母親の背中を先ほどより強く押す。

指揮官の右手薬指に輝いていた指輪の存在を、無理やり脳内から追い出す。

やがて、H&K G36Cのそれよりも遙かに重苦しい銃声が後ろで鳴り響いた。




29: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 22:46:07.00 ID:vhkD1UQdO

「おい見ろ!陸軍の援軍だ!!」

「頼むぞ、あいつをやっつけてくれ!!」

広場を後にしてほんの数分。ベルリン大聖堂──“敬虔なる信徒”だった両親のおかげで、俺が唯一明確に認識しているベルリンの建造物──の前に差し掛かった辺りで、プーマ装甲戦闘車三両とすれ違う。
周囲の人々は安堵の息と共に彼らに歓声を送り、程なくして広場から機関砲の軽快な発射音が聞こえてくるとそれは更に大きくなった。

俺とツンを除いての話だが。

ξ゚゚)ξ「さ、後は陸軍がきっとなんとかしてくれるわ!私たちは今のうちに逃げましょう!」

('A`)「ここなんてまだまだ奴の射程圏だ、流れ弾が飛んできたら元も子もないぞ!!」

彼らのおかげで恐慌が治まってくれたのは幸いなので、わざわざ事実は告げない。だが、相手は「歩く戦艦」だ。機関砲で障壁を抜ける相手ではない。

副兵装のスパイクLR対戦車ミサイルなら或いはダメージを与えられるかも知れないが、それも「当たれば」。

要は、時間稼ぎが「何分延ばせるか」の問題だ。

ξ゚゚)ξ「……それで、どこに誘導する気?」

('A`)「………まずは東だ。あくまでも“見る限り”だが、他に安全な方角はない」

小声で問いかけてきたツンにそう返しながら、俺は改めて辺りを見回した。




30: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 22:51:08.00 ID:vhkD1UQdO


('A`)「………クソッ」

───やはり、見直したところで黒煙が上がっている箇所がフランス広場だけではないという事実は変わらなかった。

西でも、北でも、南でも、まるで空の黒雲が地面から立ち上っているのではと錯覚するほどに。

太く黒い煙の柱が天へ昇っていく。

幾筋も、幾筋も、根本にオレンジ色の炎をちらつかせながら。

警察車両や救急車のサイレンが、或いは市民に避難を促す役所の放送が、風に乗って聞こえてくる。それらの幾つかが、爆発音の後に不自然に途切れた。

今、この街で何が起きているのか───グランド・スクールに入りたての子供でも解る簡単なクイズだ。

('A`)「黒煙が上がってないってのもそうだが、実際こっちはプーマが走ってきた方角でもある。少なくとも、陸軍がそれなりの規模で防衛線を展開しているはずだ」

ξ゚゚)ξ「展開している“はず”、ね……」

そう、100%ではない。プーマが東からやってきた理由がたまたまである可能性も、俺たちが深海棲艦共によって罠に誘い込まれている可能性も十分にあり得る。

それでも、他に選択肢がないのも確かなことだ。

ξ--)ξ-3「ま、あんたの予想が当たることを神にでも祈りましょうか」

('A`)「あぁ、祈るのは勝手だがそいつに捧げるのはやめといた方が良いぞ」

ツンも、逃げ道が限定されていることは理解している。肩を竦めながら賛同してくれた彼女への感謝から、俺は一つだけ忠告しておくことにした。

('A`)「どんなに必死に祈っても、あいつらが応えてくれることなんて滅多にないさ。

お宅のところのジャンヌ=ダルクだって、最後には見捨てられただろ?」

ξ゚゚)ξ「………あんた、友達少なかったでしょ」

('A`)「何で過去形なんだ?現在進行形で少ないぞ」

ξ;゚゚)ξ「何で自慢気に胸張ってるのよ………」


.




31: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 22:55:35.24 ID:vhkD1UQdO








レヒフェルト航空基地の滑走路に、次々とUH-1/D?イロコイが着陸していく。

機内から降り立つ兵士達も、それを迎える側も一様に表情は暗く険しい。彼らの多くはベルリンや、或いは自身の故郷が────即ち祖国ドイツが現在どのような状況下を正確に認識していた。更に言えば、この事態が半ば“人災である”という点にも、一部の兵士達は気づいていた。

(?゚д゚?)「…………やはり、そうか」

〈::゚−゚〉「あぁ、完全なヒューマン・エラーだよ」

早々に滑走路を後にし、ブリーフィングルームへ直行していたミルナ=コンツィもまた、“勘づいていた”内の一人だ。彼の予測は、廊下で一緒になった同僚からの申告によって“事実”にたった今変わった。

〈::゚−゚〉「警戒網をかいくぐったヒト型の深海棲艦複数体が沿岸部から国内に侵入していた可能性は、海軍は昨日の内に既に把握していたそうだ。

ただ、問題が発覚すれば自分のキャリアに傷がつくとマモン元帥が現場の艦娘と提督達に箝口令を敷いてね。極秘に見つけ出して始末するつもりだったようだが、結果はご覧の有様さ」

(?゚д゚?)「そこまで正確な情報が入ってるとなると、エラーはこっち側にも責がありそうだな」

〈::゚−゚〉「当然。私たちの上層部は、海軍が陸戦隊や艦娘を内陸に動かしていることに早い段階で気づいていた。ただ、彼らの愉快な思考回路はその光景を見て“国家と国民の危機”ではなく“海軍を追いおとすチャンス”だと考えた。

彼らは、海軍の失敗がより致命的なものになるまで泳がせておくことにした」

(?゚д゚?)「…………そして、陸海が予想してたよりも遙かに多くの深海棲艦が入り込んでいた結果、通報も民間への警報も戦力の編成も何もかも後手に回ってこのザマか」

ミルナは意図的に、深く深くため息をつく。そうして落ち着いておかないと、彼はまず部下達にコブレンツの陸軍指揮司令部への攻撃を命じかねなかったからだ。





32: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 22:57:46.58 ID:Z9goZ7tp0

( ゚д゚ )「それで、核爆弾の方は?」

〈::゚−゚〉「在独米軍が回収済みだ。ビューヒェルのB-61は全弾深海棲艦の襲撃前に移送を完了した」

ミルナの問いかけに、イッシ=ストーシュル陸軍少佐は即座に答えつつ皮肉な響きを声に含ませた。

〈::゚−゚〉「かの国の軍が我々ほどお花畑な脳みそは持ってなかったのは幸いだな。海軍の動きがおかしいことに気づいた時点で、米軍の上層部は緊急時に備え核の運搬用意をさせていたらしい。

ホントに、迅速な対応には感謝してもしきれない」

( ゚д゚ )「全くだ」

アメリカ軍の管理下、ドイツ国内で唯一核兵器が配備されているビューヒェル航空基地。
目と鼻の先であるネルフェニッヒが襲撃されたと聞いたとき、ドイツ軍の誰もが“最悪の事態”が頭を過ぎり顔色を無くした。

一国の軍事組織としては赤っ恥以外の何者でも無いが、恥か核爆発かを選択するならどんな内容であろうと前者一択だ。

( ゚д゚ )「戦力の再編状況は?」

〈::゚−゚〉「当たり前だが艦娘の集結はほとんどできていない。主要戦力は北部沿岸に居たわけだが、最早南北を繋ぐ交通網は壊滅状態だ。ヴェルヘルム=スハーフェンの司令府とは連絡こそついているが、機能はほぼ停止している。

艦娘どころの話じゃない、陸軍戦力さえ集結が完了したのはようやく30%だぞ。

本当に、上のアホ共が権力争いごっこに夢中になった挙げ句がこれだ」

ほとんど蹴破るようにして、イッシはブリーフィングルームの扉を開ける。途端廊下にはコンソールを叩く音や通信を試みるオペレーターの声が溢れかえるが、彼女はミルナを連れて脇目も振らずに奥の机へ直進した。

〈::゚−゚〉「大佐、戻りました」









(`∠´)「あぁ、待っていた」




33: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 23:03:19.09 ID:Z9goZ7tp0

その男の容姿を一言で言い表すなら、“南部戦線帰りのシャーロック=ホームズ”だろうか。

オールバックでまとまった黒髪に、細く鋭い眼光。肌はたたき上げの軍人らしく日に焼け、幾つもの小さな傷が刻まれている。
6フィートと少しの長身は一見すると細く頼りないが、軍服の下に鋼のような鍛え抜かれた筋肉が眠っていることが覗えた。

特に目につくのは鼻で、お伽話に出てくる魔女の顔にうってつけなほど見事な鉤鼻である。

足を組んで机に座るその男の姿を見て、ミルナは思わず襟を正す。

出世という物に興味が無く軍上層部の人物相関に疎いミルナでも、その男のことは知っていた。否、ドイツに住まう人間ならば、“知っていなければいけない”人物だ。

(`∠´)「初めましてミルナ=コンツィ中尉。ベル=ラインフェルトだ」

(?゚д゚?)「存じ上げています、ラインフェルト大佐。お目にかかれて光栄です」

差し出された手を握り返すとき、震えが走らないようにするのに苦労した。




34: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 23:04:59.48 ID:Z9goZ7tp0

ルール攻防戦、ラベ川封鎖作戦、アムステルダム救援戦など、艦娘のヨーロッパ配備前にドイツ軍が携わった主要な深海棲艦との“陸戦”。

そのほとんどに参戦し、内陸浸透の危機を幾度となく跳ね返した「21世紀のマンシュタイン」、それがベル=ラインフェルトだ。

同時に、艦娘の配備後に泥沼の権力闘争を繰り広げる陸海両上層部を痛烈に批判して形だけの昇格で閑職に追いやられた「問題児」でもあるが。

(?゚д゚?)「大佐が何故ここに?確か交流武官としてイタリアに派遣されていたはずでは」

(`∠´)「戦車道展での舞台挨拶を押しつけられてしまってな、たまたま帰国したところにこの騒動が起きたというわけだ。事態収拾のために、今から私が指揮を執る」

(?゚д゚?)「それは心強い。……しかし、状況が状況というのもありますがそれを差し引いてもよく上があっさりと許可しましたね」

〈::゚−゚〉「あぁ、上層部はこのことを知らない」

(?゚д゚?)「は?」

〈::゚−゚〉「いや、ほら。クソバカが現場に介入するとめちゃくtゲフンゲフン……んっん。何せ我々ドイツ軍の頭脳に当たる方々だからな、万一があったら多大な損失だ。

全員安眠の上、輸送ヘリに詰め込んでポーランドの方に飛ばしておいたよ」

(;゚д゚?)「………そうか」

ミルナは深く突っ込まないことにした。




35: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 23:07:41.64 ID:Z9goZ7tp0

(`∠´)「さて、挨拶はこのぐらいにして、仕事の話に移ろう。

コンツィ中尉、君のポルトガルでの活躍は聞いているよ。ストーシュル少佐の戦車隊も心強い限りだ。二人とも宜しく頼む」

( ゚д゚ )「はっ、恐縮です」

〈::゚−゚〉「ご期待に応えます」

(`∠´)「現状だが、単刀直入に言おう。絶望的だ。

北部は陸海空全ての主要な軍事拠点が深海棲艦の襲撃を受けて通信途絶或いは混乱状態、民間人の犠牲者も既にまともな把握が不可能な数までふくれあがっている。

リーンウッド首相を始めドイツ首脳も安否不明、深海棲艦の内陸侵攻という事態に伴い欧州の全空港は全便を緊急欠航。ドイツ・フランス全学園艦の退避受け入れによりイギリス、スウェーデン、ポーランドは海路の物流も滞った。経済損失もこの僅かな時間で既に数百億ユーロに上るだろうな。

だがそういう状況下にあってなお、我々は敵の正確な規模さえ把握できていない」

(;゚д゚ )「……」

〈::゚−゚〉「……」

(`∠´)「そしてつい10分前、もう一つ悪いニュースが飛び込んできた」

ベルはそう言って、二枚の紙を机の上に置く。ミルナとイッシは同時に手に取り、同時に眼を通し、

(゚д゚)

〈゚−゚〉

同時に、顔色を失った。

(`∠´)「海軍も我々同様、下の方は決して毒されていない。この情報は警備府の提督がリークしてきたものだ。

………ただ、この混乱の中で情報の到着が遅れた」

言いながら、ベルは二人の顔色を見て口元に笑みを浮かべる。

尤も、眼は微塵も笑っていなかったが。





「7時間前より、ルール地方の艦娘艤装製造工場からの定時連絡が途絶している。調査に向かった海軍陸戦隊も消息を絶った。

………おそらく、深海棲艦の手に落ちたとみていい」




36: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/08(月) 23:14:08.02 ID:Z9goZ7tp0


《Россия?1より深海棲艦の欧州襲撃に関する続報です。

連邦政府は先ほどクレムリンより、モスクワ周辺に首都防衛機甲師団を展開したと正式に発表。同時に、防共協定に基づきアメリカ、日本にも相互連携の確認を電話で行い、政府は欧州の“失陥”も視野に入れた防衛計画を練っている模様です》

《ポーランド政府は先ほど、西部全住民に避難警報を正式に布告しました。陸軍が出動し、国境の防備を固めています》

《スヒップホル空港には海外への避難を望む人々が殺到し、港内は大変な混雑状況です。

また、南オランダでは恐慌状態となった民間人の一部が暴徒化し、陸軍と警察が鎮圧に動いています》

《ベルギー政府より国民の皆様にお知らせ致します。ドイツ・フランスへの深海棲艦襲撃に伴い、多くの流言が飛び交っている状態です。決して慌てないで下さい。基本的に、政府からの公式発表にのみ耳を傾けて下さい》

《ルクセンブルク市は無法地帯となっています!そこかしこのスーパーが襲われ民家に人々が押し入り………いや、やめて、放して───きゃあああああ!!?》

《イタリア海軍は陸軍との共同展開に備えて北部に一部艦娘戦力を転用、ドイツ・フランス両国への増援派兵も視野に連絡を試みていますが、どちらも混乱が続き連絡がつかない状態のようです。

また、ターラント海軍基地より艦娘のRome、Paula、Aquila、Libeccio、そして強襲揚陸艦ジュゼッペ・カリバルティを旗艦とした洋上打撃艦隊6隻を編成し地中海に展開。イタリア政府は深海棲艦の別方面からの襲撃に対応するための物だとして、近隣諸国に理解を求める声明を発表しました》

《スペイン政府はイタリアのこの迅速な対応を評価する一方、我々のジブラルタル海峡における警戒はリスボン沖の惨事以来徹底していると主張。イタリア海軍の地中海への展開を、“過剰な反応である”と批難しています。

また、スペイン国民の皆様にお知らせします。現在ドイツ・フランスにおける深海棲艦の襲撃によって、欧州全体に大きな動揺が広がっています。

決して不確かな情報に惑わされず、落ち着いた行動を心がけて下さい》





39: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/09(火) 13:14:15.01 ID:B042YGid0








ベルリン大聖堂を通り過ぎてからの20分ほどの逃避行の中で、更に四台の装甲車と相次いですれ違う。
最初こそ上がっていた激励の歓声は回を追うごとに少なくなっていき、最後の一台の時には誰も顔すら上げなかった。

まぁ、当然だろう。一向に治まらないどころか、激しさを増していく戦闘音。黒煙が立ち上る数は増え、逆にパトカーや救急車、消防車のサイレンは次々と途切れていく。何より、これほどの騒ぎにも関わらずヘリや戦闘機は一機たりとも市の上空を飛んでいない。

どれだけ鈍くて楽観的な人間でも、ベルリンが置かれている状況がいかに悲惨かは見えてくる。

「押さないで、誘導に従うんだ!」

「深海棲艦は陸軍と警察が食い止めている!まだ来ない、安心して下さい!」

なので、予想(というより願望)通りに築かれていた陸軍とベルリン市警の共同防護陣地にたどり着いたときに、誰よりも安堵したのは俺とツンだ。

ξ;゚゚)ξ「正直、危なかったわね」

(;'A`)「全くだ」

深海棲艦に対する恐怖から暴動一歩手前だった避難民達の悪意は、明らかに東への逃走を先導した俺とツンに向けられていた。もし実際に彼らが暴徒化して俺たちの私刑(リンチ)を始めた場合、幾ら軍隊格闘の経験があってもこの人数を丸腰で抑えることは不可能だったに違いない。




40: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/09(火) 13:16:04.20 ID:B042YGid0

ξ゚゚)ξ「先ずはこの拠点の指揮官のところに行きましょう。武器も何もないわけだし」

('A`)「そうだな………あー、そこのあんた!あんたらの指揮官のところまで連れてってくれないか?」

「……は?」

たまたま傍に居た年若い歩哨に声をかけたところ、胡乱げな表情で生返事を返される。思わぬ反応に一瞬面食らうが、自分とツンの服装を思い出して合点がいった。

俺は灰色のトレンチコートに黒のスラックス、コートの中も白のポロシャツという服装。ツンが身につけているのは藍色を基調にしたジャケットにチェック柄のタイトスカート、ゆったりしたブラウス。

逆立ちしたって見た目で軍人と判別することはできない。しかもフランス広場での一件とその後の逃避行によって頭から足の先までずぶ濡れだからなおさらだ。

('A`)「いいとこベルリン旅行中に戦闘に巻き込まれたアベックってところか」

ξ;*゚゚)ξ「あ、アベック!?私と、あんたが!?」

後ろで慌てふためくツンをひとまず無視し、身分証を鼻先に突きつける。歩哨は一瞬眼を見開いた後直立不動になり、すぐにどこかへと駆けていった。

ξ;*゚゚)ξ「だだだだだ!誰が!!あんたなんかと!!!アベックに!!!!」

('A`;)「…………冗談だから落ち着けよ」

いくらなんでも嫌がりすぎじゃないかと、流石に少しヘコんだ。




41: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/09(火) 13:32:33.26 ID:B042YGid0

この部隊の指揮官は案内された即席指揮所であるテントの中で、折りたたみ式の椅子にその瘦せぎすの身体を乗せて手元の地図を睨んでいた。
ほうぼうに好き勝手に撥ねるブロンズ色の短髪に子狐を思わせる少しとがり気味の横顔、鼻の頭にはそばかす。長身ではあるが力強さは微塵も感じられず、アサルトライフルよりはコミック雑誌でも持たせた方がおそらくよほど様になる。

俺とツンを先導した歩哨が、指揮官のすぐ傍まで行き耳打ちする。すると奴さんは此方を一瞥し、軽い調子で片手を上げた。

(=゚ω゚)ノ「イヨウ=ゲリッケだよぅ」

そう言って、奴は挨拶を終えた。……やや高い声といい若干幼い顔立ちといい、胸元に光る中佐の階級章と身長がなければ来年アビトゥーアを受ける予定の学生だと言われても信じてしまいそうだ。

(=゚ω゚)「ドク=マントイフェル少尉、並びにツン=デレフランス陸軍中尉。細かい話は抜きだ、とにかく人手が足りない。

君たちには早速前線で働いて貰うよぅ」

ξ;゚゚)ξそ「ちょっ……いきなり!?というか、私のこと知って」

(=゚ω゚)「無駄話をしている暇はないよぅ。ベルリン東部一帯の掌握に成功したとはいえいつ全面崩壊が起きてもおかしくないよぅ。諸々の話は事態が収拾してから聞くよぅ」

ξ゚゚)ξ「」

早口で語尾がやけにうわずった、いかにも神経質そうなしゃべり方でイヨウ中佐は捲し立てる。ツンは面食らった様子で黙り込んだ。

……まぁ、聞き心地のよい喋りとは世辞でも言えないが内容はド正論なので此方も合わせることにする。

('A`)「市内ドイツ軍・ベルリン市警の現在の稼働状況は?」

(=゚ω゚)「兵力だけで言えば凡そ一個師団相当、陸軍としての兵力は戦車道展の警備のために投入されていた2000名ほどだよぅ。ただし、この内組織的な戦闘を展開できている戦力はシュプレー川以東に展開している4000人ほどでしかないよぅ。

敵勢力に関しては現在把握される限りではフランス広場に重巡リ級elite、アムボス通りに戦艦ル級、タ級各一隻。それと、未確定ながら軽巡棲姫と思わしき存在と護衛のヒト型数隻がシュパンダウ方面で確認されているよぅ」

イヨウ中佐は地図の各所を矢継ぎ早に指さし、若干どもりながらも戦況を正確に述べていく。だが、地図には何も書かれておらず、報告書のようなものも辺りに見当たらない。

まさか、ベルリン市内の戦況全部記憶してるってのかこの人?





42: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/09(火) 13:38:19.12 ID:B042YGid0

(=゚ω゚)「ベルヴュー宮殿、連邦首相府、国会議事堂は襲撃開始段階で通信途絶。ダイオード首相以下内閣議員も野党議員も安否不明。

ベルリン市外のドイツ三軍拠点とも……更に言えば欧州周辺国ともまともに通信ができない状況だよぅ。妨害されているのか、或いは単純に全滅したか。

どちらにせよ現段階では外部からの増援が期待できないよぅ。そもそも、さっき言った首相府一帯を始め市内ですら通信の乱れが見られるよぅ」

ξ゚゚)ξ「一応聞きますけど、艦娘戦力は?」

(=゚ω゚)「あったらもっとまともな対処してるよぅ。

装甲戦力としては、プーマ歩兵戦闘車が残6両にレオパルト1戦車が8両、それからエノク(軽装甲車)が20両と少し」

('A`)「………レオパルト1って確か退役済のはずじゃ」

(=゚ω゚)「戦車道展における展示車両とほとんど兼任みたいな扱いで引っ張り出された代物だよぅ。深海棲艦の襲撃激化に伴い、たかがイベント警備のために前線からレオパルト2を引き抜くわけにはいかなかったようだよぅ」

つまり、今までの話を要約するとこうか。

ベルリンは現在孤立無援で連絡すらまともに取れず、深海棲艦の正確な規模は不明、かつ姫級を始め知能も戦闘力も高いヒト型が主力。
対抗する此方の戦力は、型落ちの戦車と旅団になるかならないか程度の数の歩兵、しかも主力は警官隊。加えて行方不明の国家首脳部の捜索と、逃げ惑う民間人の保護もおそらく併行することになる。

そして、艦娘はいない。航空支援もない。

('A`)「無理ゲーじゃね?」

(=゚ω゚)「だが、それが我々の役割だ」

('A`)「………」

その一言だけは、イヨウ中佐はどもりもしなければ語尾も上げず、力強い口調で言い切った。




43: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/09(火) 13:41:17.86 ID:B042YGid0


(=゚ω゚)「とにかく、まずシュプレー川以東の防衛線は死守するよぅ。二人は避難してくる民間人の保護と合わせて、最激戦区になる可能性が高いフリードリッヒスハイン区の防衛指揮を─────」

元の口調に戻りながら、なおも指示を出していたイヨウ中佐。

('A`)「……………」

だが、それを遮るようにして何の前ぶれもなく。

ξ゚゚)ξ「………」

外で、甲高いサイレンが鳴り響く。

('A`)「………中佐、一応聞きますが今のは」

(=゚ω゚)「空襲警報だよぅ」

正直違っていて欲しかったが、残念ながら予想は大当たりだった。

(=゚ω゚)「交通整理用の拡声器と音声テープを組み合わせた簡易な奴だったけど役に立って良かったよぅ。ま、そろそろ来ると思ってたよぅ」

「中佐!!」

テントを跳ね上げて歩哨が一人駆け込んでくる。
一瞬、不安げな人々のざわめきとこれを制止する兵士達の叫び声が入り交じったものがテントの中を満たす。

「高層警戒班より緊急連絡!!北西よりベルリンに向かって飛来する何かの“群体”を捕捉したとのこと!!

おそらく深海棲艦の戦闘機、到着予想時刻は6分後です!!」

(=゚ω゚)「展開中の全部隊に対空戦闘の準備を指示……それと君、余っている軍服とアサルトライフルを二人に。

あぁ、マントイフェル少尉、デレ中尉、1分で用意して外へ」

イヨウ中佐はそれだけ言うと、軍帽を被りテントから出て行く。

(=゚ω゚)「さぁ、“僕らの仕事”の時間だよぅ」




44: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/09(火) 13:43:51.52 ID:B042YGid0


.


中佐の指示より10秒早く着替えを終えて、テントから飛び出す。隣の更衣スペースからツンが転がり出てきたのもほとんど同時だった。

('A`)「女の身支度は長くかかると聞いてたがな!」

ξ゚゚)ξ「知らなかった?フランスのレディは余裕の笑みで男を待ってやるもんなのよ!」

相変わらずざざ降りの雨の中で軽口を交わしながらG36Cの安全装置を外す。自身の装備を簡単に確認した後、今一度周囲の地形を頭に叩き込むために辺りを見回した。

深海棲艦機が来るまであとたったの300秒。できることは限られているが、それでもやれるだけのことはやっておきたい。

相変わらずサイレンは鳴り続け、あえて人の不安を煽るよう作られた警戒音に急かされ避難民達が我先にと道路を駆けていく。兵士と警官が、ともすれば大氾濫を起こしかねない人間の濁流をぎりぎりのところで制御し、更に東へと送り出していく。

('A`)(……あと五分でこの人数が避難しきるのは間違いなく無理だな)

この密集状態に深海棲艦の空爆が直撃すれば大惨事もいいところだ。かといって、避難民の「自主性」に任せて分散避難をさせても間違いなくパニックが起きる。それに、部隊運用にも大きな制約がかかりかねない。

つまり間もなく行われる深海棲艦の爆撃から避難民達を護るには、攻撃を此方に可能な限り引きつけ、かつそもそも爆撃自体を抑制する必要があると言うことだ。

(;'A`)「やっぱ無理ゲーじゃねえか………!」

一週間も素敵な休暇を下さった、上層部のおかげでこのざまだ。

いつか、感謝と殺意と火薬が籠もった御礼を贈ると胸の内で誓う。




45: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/09(火) 13:45:28.91 ID:B042YGid0


('A`#)「各区画、レオパルト1とプーマは避難民の列からなるべく離れろ!!随伴歩兵は戦車隊になるべく密着、対空警戒を厳となせ!!」

(=#゚ω゚)ノ《東部区画に展開する全ての陸軍並びに警察戦力は今の指示に従うんだよぅ!!

これより防衛線は全指揮権を今発言したドク=マントイフェル少尉に一任!僕から別途指示がなければ少尉に従うよぅ!!》

近くに止まっていたパトカーに駆け上がり、声を張り上げる。ざわめいた場は直後に飛んだイヨウ中佐の命令で静まり、すぐに全軍が指示に従って動き出した。

全権委任ってマンドクセッ!!でも仕事が早いのはありがたい!!

深海棲艦機が到着するまで後4分程。煙草でも吸って不安を紛らわせたいところだが、懐に入れていた煙草はびしょ濡れになり全滅済みだ。

クソッタレ。

(#'A`)「歩兵並びに警官隊は10名程度で一塊となり射線形成!分散射撃だとかえって隙間を奴等に潜り抜けられる、戦力を塊にすることで奴等を射線上に引きつけろ!!」

「し、しかし少尉!サブマシンガンやアサルトライフルが届く距離に敵が来るとは」

('A`#)「断言するが間違いなく来る!!

寧ろ自動小銃はHelm共に対抗する主兵装だ、射線には穴を開けるな!最低限半数以上は常に撃ち続ける状態を作れ!!」

兵力不足、火力不足、時間不足と無い無い尽くしの状態だが、打つ手は皆無じゃない。不幸中の幸いと言うべきか、天が俺たちに全力で味方をしてくれていた。

天と言っても断じて神のことではない。神はいない、いたとしても死ね!!




46: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/09(火) 13:49:14.84 ID:B042YGid0


(=#゚ω゚)ノ《ベーデカー隊、マントイフェル少尉の直属指揮に!ディーツェル軍曹の隊はデレ中尉の指揮下に入るんだよぅ!!》

「「Jawohl!!」」

(#'A`)「ツン、レオパルト1の随伴に付け!!常に機銃の死角をカバーする形で射線を集中させろ!」

ξ#゚゚)ξ「了解!!」

残り3分。俺たちは、慌ただしく戦いの準備を終えていく。

ξ#゚゚)ξ「機銃の射撃仰角もう少し上げて!それと一機一機狙う必要は無いわ、空にばらまく感じで撃ちなさい!!」

「や、Jawohl!!」

(=#゚ω゚)ノ《避難誘導班は持ち場を絶対に離れるな!!最後まで市民の導き手としての責務を全うするんだよぅ!!》

(#'A`)「エノクは各車機動防御態勢!なるべく敵艦載機の目につくように動き回ってくれ!歩兵並びにレオパルト1は釣られた敵機は特に重点的に撃墜しろ!!」

残り2分。サイレンに、録音された早鐘の音が加わった。意味など聞かなくても察しがつく。

真っ直ぐに向かってきているんだ。奴等が。

「押すんじゃねぇ!!」

「早く進めよ、深海棲艦が来てるんだぞ!!」

「子供が、子供がぁ!!」

「列を乱すとかえって動けなくなるぞ!!死にたくないならそれこそ誘導に従ってくれ!!」

恐怖から箍が外れかけている避難民達の怒鳴り声が響く。

俺たちは降りしきる雨の中でただ銃口を空に向け、敵を待つ。

────残り、1分。

「敵機、来襲!!!!」

(;'A`)「っ」

音が、聞こえてきた。




47: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/09(火) 14:02:28.76 ID:B042YGid0

腹を空かせた獣が呻いているような、低い音。

ジェット戦闘機の全盛期にあって最早空から駆逐されたはずの、レシプロエンジンが奏でる重低音が、雨に混じり雲の中から聞こえてくる。

奴等は最大のものでも4フィートを越えない程度の大きさでしかない。そのため、まだまだその姿は見えない。

見えないが、音は確実に近づいてきている。

('A`;)「────!!」

エンジン音は、丁度俺たちの頭上に差し掛かったところで調子を変えた。

低いうなり声から、高い叫び声へ。

【Helm】が急降下爆撃の態勢に入ったときに鳴る、独特の風切り音。

ジェリコのラッパ───かつて、ドイツを護るためにソヴィエト赤軍の頭上で空の魔王によって吹き鳴らされていた音が、今はベルリンを破壊しドイツ人を殺すために迫ってくる。

なんとも、皮肉な巡り合わせだ。

('A`;)「合図があるまで撃つな!それから絶対にフォーメーションを崩すなよ!!」

音は次第に大きくなり、数を増やして降りてくる。周りに指示を出しながら、ともすれば震えそうになる照準を必死に抑える。

ベルリンの雨は、未だに止まない。




48: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/09(火) 14:09:05.11 ID:B042YGid0


───やがて、“奴等”は来た。

「………ひっ」

厚い雲の隙間から、ぽつりとインクの染みのように小さな点が最初に一つ。刹那の間を置いて二つ、四つ、八つ………一瞬で、数えるのも馬鹿らしくなるほどの黒点が空を埋め尽くした。あまりの数に、誰かが小さく悲鳴を上げる。

西洋甲冑か、さもなきゃ競輪選手が被るヘルメットか。とにかく通称が本当によく似合う、細長く先鋭的な黒い機体。

少なく見積もっても1000は下らないHelmの群れが、“ジェリコのラッパ”を吹き鳴らしながら雨と共に降ってくる。

Helm達は街区に展開する戦車や装甲車、そして歩兵隊に向かって、降下速度を上げながら獰猛な猛禽類の如く突っ込んできた。



、、、 、、、、
完璧に、読み通りだ。

('A`#)「─────Feuer!!」

声を限りに叫び、H&K G36Cの引き金を引く。

無数の弾丸が、雨を切り裂いて空へと駆け上がった。




52: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 00:28:47.50 ID:/QEg56gn0

『────!!!?』

『!?』

『!?!!?』

市街地から撃ち上げられた何百条という火線。先陣を切っていた十何機かが真正面から貫かれて空中で爆散し、それを皮切りに群れをなして押し寄せてきたHelmが次々と対空射撃を受けて火を噴き、落ちていく。

爆弾の投擲音は、未だに一発も聞こえない。

「敵機撃墜、敵機撃墜!!」

「よし、一機落としたぞ!」

「口を動かす暇は一秒残らず手を動かす時間に費やせ馬鹿野郎!!撃て、撃て、撃て!!!」

400マイルで空を飛び回り、現代戦闘機の装甲でも十分貫ける威力の機銃を放ち、その小ささ故に空対空ミサイルによるロックオンはほぼ不可能。

“ワンショットライター”と揶揄される脆さを加味しても、本来なら人類が艦娘抜きで太刀打ちするのは難しい。

アルカンタラマールで迎撃ができたのも、向こうが“損耗を極端に嫌った”という戦略的要因があってこそだ。他に日本で近代戦闘機がHelmの大群体を完封した事例があるが、アレは練度の高い艦娘ありきの作戦になる。

故に、本来なら俺たちは高高度から一方的に爆弾と機銃掃射の雨に晒されるだけの「狩られる獲物」でしかなかった。

天候さえ、まともなら。




53: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 00:30:51.74 ID:/QEg56gn0

「リロードします!」

「弾幕絶やすな!常に撃ち続けろ!!」

《レオパルト、配置転換します!》

ξ゚゚)ξ「解った、後続する!!」

深海棲艦機の“小ささ”は、決して利点ばかりを持っているわけではない。鹵獲された奴等の機体は非常に軽く、非武装の状態なら大人が片手で軽々と担げる。搭載される爆弾に至っては3〜7インチとポケットに入れて持ち運べるお手軽サイズだ。

(=#゚ω゚)ノ《補充班、とにかく弾薬補給の手は止めるなよぅ!!要請があるまで動かないんじゃなく、自分たちで不足する場所を予測して運搬するんだよぅ!!》

軽く、小さく、そのくせ威力は従来の爆弾と遜色なし。オーバーテクノロジーの極みだが、故に奴等の航空攻撃は天候の影響を強烈に受ける。例えば今日のように強い風雨がある時は、まともに狙いを定めようとすれば必然的に高度をギリギリまで下げなければ狙った箇所に効果的な損害を与えることは難しくなる。

「弾が切れた!リロードする、カバーを!!」

「一機撃墜した!!」

「敵機の投弾、未だ見られず!!」

ではここで、奴等の爆撃経路がなるべく収束されるように───決まったコースにHelmが殺到するように戦力を展開すれば、どうなるか。

「撃墜四機目!!」

「当方損害、未だ無し!!」

(#'A`)「上空10時方向より新手来るぞ!射線合わせ!!」

その答えが、この光景。

(#'A`)「Feuer!!」

   ターキー・シュート
───七面鳥撃ちだ。




54: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 00:37:23.52 ID:/QEg56gn0

(#'A`)「状況知らせ!!」

「防衛線全域において未だ敵機の投弾・損害発生報告無し!」

「墜落機の直撃を受けて家屋が一部倒壊も影響ありません!敵航空隊、大損害を受けて攻勢が鈍化しています!」

雲霞のごとき大編隊に襲われているとは到底思えない、あまりにも順調な戦況推移。だが、そこで手放しで喜ぶような間抜けな真似はしない。

此方にとっての優勢は、敵にとっての苦境。俺たち人間がそうであるように、深海棲艦も「現状を覆すにはどうするべきか」を考えるはずだ。

('A`)「……っ」

深海棲艦の立場になって考える。上方からの攻撃は悪天候の影響もあってまんまと誘い込まれた形になり、対空射撃によって攻撃の体さえほとんど為していない。この状況をどう打破するか。

数を更に増やすか?いや、無意味とまではいかないが効果的じゃない。

そう、俺なら。

『────ォオオオオオオオオォオオオッ!!!!!』

「高層観測班より報告!!トレプトゥ=ケーペニック区で非ヒト型深海棲艦の出現を確認!!

艦種は軽巡ホ級が三体、内1体はflagshipです!!」

俺なら、攻撃面を一つ増やす。




55: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 00:41:26.00 ID:/QEg56gn0


深海棲艦の非ヒト型に共通する、あの耳障りな叫び声が聞こえてきた方向を振り向く。

立ち並ぶ建物の間に、巨体が屹立している。

砲台の中から這い出そうとしているような、或いは巨大な口に今にも食いちぎられそうになっているような、そんな何度見てもおぞましさを拭えない紛れもない“化け物”。

そんなただでさえ気色の悪い存在が、途方もない大きさで此方に迫ってきていた。BGMにアキラ=イフクベの音楽でも流せば、そのままモンスター映画の一幕として使える素材になるだろう。

非ヒト型のflagshipクラスは、平均して30Mという巨体を誇る。当然耐久力も通常種から跳ね上がっており、陸上戦力なら相応の火力が無ければ対抗することは難しい。

('A`)「プーマ戦闘車隊、ホ級flagshipを射程圏内におさめている車両は?」

《此方2号車、射程に捉えてます!!》

《5号車、射撃可能!いつでも撃てます!》

ただし。

('A`)「Go, Missile!!」

《《Jawohl!!》》

相応の火力が備わっている場合、ただのデカい的だが。




56: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 00:43:53.18 ID:/QEg56gn0

『───ア゛ッ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!?』

プーマ二台の砲塔から放たれたスパイクLR対戦車ミサイルが、相次いでホ級flagshipの巨体に直撃する。
片方は頭、片方は砲塔。

轟音が響き、破片が飛び散り、ホ級は苦悶の声と共に着弾箇所をのたうちまわる。

指の隙間からは、血の代わりに凄まじい量の黒煙が吹き出した。

《だーんちゃーーーく!!どーだいこの威力!》

《落ち着け5号車!少尉、続けて撃ちます、いいですか?!》

('A`)「許可する!第ニ射は頭部集中、間髪入れずにトドメを刺せ!!」

《《Jawohl!!》》

深海棲艦は、艦娘同様“歩く戦艦”だ。例え第4世代戦車や最新鋭の歩兵戦闘車が雁首を揃えても、闇雲に攻撃をするだけなら駆逐イ級すら一隻仕留めるのに膨大な犠牲が必要となる。

ただ、同時に奴等は“生ける戦艦”でもある。生き物は、戦艦や戦車よりも“効率的に殺す手段”が圧倒的に多い。

《────弾着、今!!!》

『ア゛ッ………ア゛ァ゛ッ…………』

700mmという高い貫通能力を持つミサイルは、傷口を覆っていたホ級の手の甲を引きちぎり、その下の頭を抉り取る。

その傷口に2発目が飛び込み、炸裂し、吹き飛ばす。

頭を失ったホ級flagshipは、びくびくとニ、三度痙攣した後家屋を巻き込みながら地面に倒れ込んで“絶命”した。




57: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 00:45:56.74 ID:/QEg56gn0

「観測班より報告!ホ級通常種、此方への進行を停止!反転し後退していくとのことです!」

「おい見ろ!Helmの奴等が逃げていくぞ!!」

非ヒト型とはいえ、【flagship】の瞬殺は奴等にとって流石に少し想定外だったらしい。
それまで膨大な撃墜機を出してもどこぞの島国宜しくkamikazeを繰り返していた深海棲艦機が、潮が引くように空へと舞い戻っていく。

ホ級の進撃が止まったという報告が流れたこともあって、一瞬弛緩と安堵が入り交じった空気が流れた。だが、それはあくまで一瞬に過ぎない。

(=#゚ω゚)ノ《今のうちに各区画は物資を補給、それから戦力の再編を急ぐよぅ!!それと市民の避難を更に急がせるんだよぅ!!》

無線越しのイヨウ中佐の声に、弾かれたように全員が活動を再開する。避難誘導の声が今まで以上に大きく響き、負傷者の確認や弾薬の点検のための点呼が飛び交う。此方の影響下にあるベルリン東部以外で、通信が繋がらないかどうかを試みる声も聞こえてくる。

('A`)「………」

イヨウ中佐を初め、誰もが理解している。今の攻撃は跳ね返したが、それはとりもなおさず奴等に俺たちの力を見せつけたということだ。

奴等は俺たちが、艦娘がいなくても十分に抵抗し得る戦闘能力を持っていると理解した。理解した以上、もう“ターキー・シュート”は起こらない。

次の攻撃は、より本格的に此方を叩きつぶすために動いてくる。





58: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 00:47:21.43 ID:/QEg56gn0

ξ゚゚)ξ「…………“無理ゲー”、まだまだ続きそうね」

('A`)「……あぁ」

いつの間にかそばに来ていたツンの呟きに、頷く。そもそもさっきの防衛にしても、圧倒的だったのは“たまたま俺の読みが全て当たったから”だ。もし深海棲艦戦闘機の動きが予測から外れていたら、もしホ級の出現に動揺して指示が遅れていたら、今頃俺は2階級特進の権利を手にしていた。

('A`)「…………マンドクセ」

一瞬、このまま敵の攻勢が止まってくれることを期待したが、下らない願望だとすぐに頭を振って追い出す。

あり得るはずがない。ここまで大規模な攻撃をかけてきた深海棲艦の攻めが、この程度で終わるなど。









(;'A`)「………」

何より、あのリ級eliteが。

この程度で“お楽しみ”をやめるはずが、ない。




59: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 00:49:16.61 ID:/QEg56gn0








かつてブランデンブルク門と呼ばれていた瓦礫の山の上に、二つの人影。血の臭い、焼けた人体の臭い、蒸発した油の臭いが充満して噎せ返るほどだが、二人はまるで気にする素振りを見せない。

片方は、腰に手を添え、朱い眼を細め、額に右手を当ててわざとらしく遠くを眺める素振りをする。先ほどまで着ていた黒の革ジャケットは脱ぎ捨てられ、今は水着のような露出の高い服装と蝋や漆喰のように白い肌、腕や足の艤装が剥き出しになっている。

もう片方は、瓦礫の上にあぐらをかき、ぱたぱたと足を上下させ、少し前のめりになってある方角に興味深げな視線を向けている。目深に被ったフードの奥から、めいっぱいに見開かれた金の双眸が垣間見えた。

彼女たちは、深海棲艦とは思えぬほどに自然で柔らかい、満面の笑みを浮かべていた。




60: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 00:57:47.34 ID:/QEg56gn0

“全の意思”を通じて、この戦いを指揮している“棲姫”の怒りの声が同胞達に届けられている。順調極まりなかった今回の入念な作戦にあって、小さいとはいえ敗北の傷がついたことは彼女の高いプライドに泥を塗ったらしい。
棲姫は艦載機を飛ばした空母達と、一撃でなぎ倒された軽巡を口汚く罵倒している。

だが、そんなことは瓦礫の上で佇むリ級ともう一人にとってはどうでもいいことであった。

リ級は、確信していた。今し方眼にした、東部での同胞達の敗北は、“あの男”によるものだと。さっきこの門を破壊したときに、多くの人間と共に見逃しておいた『あいつ』がやったのだと。

('A`)

彼女は満面の笑みを浮かべ、街の東を眺める。見えるはずがないと解っていても、あの陰気な顔つきの優男に向かって愛おしげに両手を広げる。

ヤッパリダ。

アノ時、君ヲ見テ思ッタ事ハ正シカッタ。

君ト遊ブノハ、心底楽シイ。

彼女の眼は、まるで恋人に出会った乙女のように輝いていた。




61: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 01:07:03.03 ID:/QEg56gn0


.

本当ニ、楽シソウダナ。

隣であぐらをかいている少女が、クツクツと肩を震わせる。

デモ、楽シイ奴ダロウ?

リ級eliteは、口元を緩ませながら紅い双眸を隣に向ける。

マァ、人間デモ強クテ賢イ奴ト戦ウノハ楽シイナ。

少女はその視線を受けて、頷く。

私ハソロソロイクケド、君ハドウスル?

─────ソウダナ。

少女は、リ級に続いて立ち上がる。

その笑みが、無邪気な殺意で歪む。

ソロソロ、私モ遊ボウカナ。

尻尾が、瓦礫を撥ねのけながら獲物を見定める蛇のように彼女の後ろで屹立する。

その先端から、魚雷と砲塔が飛び出した。




67: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 17:38:08.35 ID:PFrSjBIhO

《France?24よりお送りします。先ほどフランス政府より、東部における深海棲艦の封じ込めに失敗したと正式に発表がありました。

既に本土での深海棲艦の展開数は50を越えており、フランス軍は防衛線の後退と再構築を行っています。ナンシー市以東にお住まいの全国民は、速やかに避難を開始してください》

《ドイツ西部トリール近郊に出現した深海棲艦の大群が、一部ルクセンブルクに侵入しました。ルクセンブルク陸軍は全戦力でこれを迎撃していますが、戦況は絶望的です》

《国境線を突破した深海棲艦の大群はマルメディに向けて侵攻中です!ベルギー陸空軍による迎撃は全く効果がありません!!あぁ、神様!!》

《ヘルダーラント州の複数の都市において深海棲艦艦載機による空爆が行われ、民間人に多数の死傷者が出た模様です。

一部の暴徒はドイツは人類を裏切り深海棲艦を引き入れた主張して民衆を扇動。オランダ国内のドイツ関連企業や在オランダドイツ人が襲撃を受けています》

《深海棲艦のフランスにおける動向でSNSを中心に様々な情報が錯綜し、スペイン国内が動揺しています。。マドリードでは生活用品や食料品の買いだめをしようとスーパーや小売店に人々が殺到し、空港には海外避難を求め全便欠航にもかかわらず在留外国人や富俗層が詰めかけています》

《コペンハーゲンからのライブ中継です!皆様見えますでしょうか!?深海棲艦の戦闘機が、まるで黒雲のように───嗚呼、街が……街が……!!》

《オーストリア、スロバキア、チェコ、スロベニアなどドイツ付近の幾つかの国は深海棲艦の侵入が行われた場合のトルコへの国民亡命を打診していますが、トルコ政府は経済的・安全保障的観点から難色を示しています》

《BBCより、政府方針を国民の皆様にお伝えします。

先ほどイギリス政府により、英国全土に特別戒厳令が布告されました。解除されるまで、外出は緊急時を除き絶対に控えて下さい。

また、今時騒乱におけるSNS等を用いた不確かな情報の流布も法律により禁じられています。以後、無責任な情報のやりとりを全て停止し、政府発表のみを受け取るよう徹底して下さい》




68: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 17:39:34.15 ID:PFrSjBIhO

現状報告1
ドイツ北部、並びに近郊での深海棲艦による襲撃状況

図1:襲撃前
no title


赤マーク:ドイツ空軍基地
黄☆:軍民共用或いは民間空港

図2:襲撃後
no title


×印:機能停止、壊滅
矢印:深海棲艦による近隣国への侵攻ルート
○:ミルナ、ベルら待機地点




69: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 17:41:30.66 ID:PFrSjBIhO








何度か、「自分はいったい何者なのか」と考えたことがある。

私と同じ名を冠する存在は、現在ドイツ国内に29人いる。彼女たちは名前だけでなく、容姿も、髪型も、服装も、声も、身長も私と同じだ。まるで工場で作られたおもちゃの兵隊のように、“私”は規格に則って“生産”された。

私に個別の名前はなく、配備No.09が他の個体と区別するために付与された。私は母の胎内ではなく、艦娘の“核”を展開できる特殊な液体プールの中で目覚めた。

もし私が死んだとしても、多少貴重と言うだけで代わりがいないわけではない。

一方で、29人の「私」は全員が別々に喜怒哀楽を有し、別々のタイミングで感情を発露する。

好きなものも、嫌いなものも、嬉しいと感じることも、悲しいと感じることも、29人全員がそれぞれ違った形で持っている。

私たちは全ての個体が別々に、嬉しいと、ムカつくと、哀しいと、楽しいと感じる。

整備士と愛を育む“私”もいれば、提督と恋に落ちる“私”もきっといる。かく言う私は同じ鎮守府に勤めるビスマルクお姉様一すzゴホンッ、ゴホンッ!!

結局私たちは、
兵器なのか。
人間なのか。

夜寝ようとする時に、平穏な海をただ眺めるだけの退屈な哨戒任務の時に、無心でお昼ご飯を口に運んでいる時に、この哲学的な思考はしばしば私の思考の隙間に沸いて出た。当て所ない考察が脳内を埋め尽くし、最終的に結論の出ない堂々巡りへと落ち込んでいく。





70: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/10(水) 17:45:06.93 ID:PFrSjBIhO


この哲学的な迷宮に迷い込んだとき、私は大抵自分が“艦娘”だと定義して無理やり結論づける。

兵器でも人間でもない、その合間の存在。

ハーケンクロイツの下では果たせなかった「ドイツに住まう人々を護る」という使命を、もう一度与えられた存在。

人間でも兵器でもいい、私は“艦娘”としての使命を果たすだけだ。そう言い聞かせて、答えのない問いに蓋をする。

何より、それは私の本心でもあった。自身が「モノ」と「ヒト」の狭間に揺れる曖昧な存在であっても、課せられた使命が崇高であることは変わらない。

この使命のためなら、“兵器”として命を捨てることも厭わない。




────そう、本気で思っていたはずなのに。

  _
(#゚∀゚)「ユーロファイター部隊より通達!爆撃実行、なれど敵損害極めて軽微!敵は未だ強固な抵抗力を有するとのこと!!」

(#゚д゚?)「ハナから期待はしてないさ!!

プリンツ、レーベレヒト!市街地に突入するぞ、後続しろ!」

「Jawohl!!」

「っ、や、Jawohl!!」

今の私───Prinz Eugen-09の胸の内にあるのはそんな高尚な使命感ではなく。

「死にたくない」という、無様な願望だけだった。




72: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/11(木) 00:50:58.90 ID:Tww0axjQ0








その知らせは、確かに待ち望んだ内容だ。だから、故に俺たちはすぐには信じられなかった。

(=;゚ω゚)ノ「………増援?」

「はいっ、高層観測班よりの報告です!」

目を丸くして問いただすイヨウ中佐に、テントに駆け込んできた下士官は興奮気味に頷く。飛び込んできた当初は「ドイツ語でぉK」状態だったので、これでもまだ落ち着いている。

(;'A`)「誤報や見間違いじゃないのか?」

「いえ、間違いありません!V-22 オスプレイの編隊が、ベルリン南西の複数区画に降下中です!それから、ユーロf

台詞の末尾は、近づいてくる超高音にかき消される。

ジェリコのラッパなんて目じゃない、音速を悠々と超えていく最新鋭戦闘機のエンジンだけが奏でる甲高い雄叫び。

('A`)「っ」

テントから飛び出すのとほとんど同時に、南の方で連続的に幾つかの火柱が立ち上る。

頭上を、突風を地上に残しながらカナード・デルタの特徴的な機影が駆け抜けていった。

ユーロファイター・タイフーン。EUが世界に誇る、マルチロール戦闘機。

ドイツ空軍のものであれ他のEU加盟国のものであれ、確かに味方機であることは間違いない。




73: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/11(木) 00:52:02.87 ID:Tww0axjQ0

「味方だ!味方の戦闘機だ!!」

「援軍だ、助けが来たんだ!!やった、やったぁああああ!!!!」

周りでは、予期せぬ“白馬の王子様”の登場で誰もが歓声を上げている。感極まって泣き出している奴も少なくない。

空の方でも、俺たちの存在に気づいたらしい。わざとらしく旋回して俺たちの真上で宙返りをしてみせると、ユーロファイターは再び悠々と南へ戻っていった。

周りの奴等はその姿を見ながら、なおも歓声や指笛を贈っている。

『オオアアアアアアアアアアッ!!!』

そして、ユーロファイターが帰還した後も南での戦闘音は止まらない。砲声、爆発音、非ヒト型の咆哮や断末魔が途切れることなく上がり続け、大規模な攻防戦が発生していることを示唆した。

('A`)「………」

観測班の見間違いではない、どれほど少なく見積もっても連隊規模の味方増援軍がベルリン南に展開を開始している。

俺はそこまで確認すると、再びテントへと駆け戻った。




74: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/11(木) 00:54:06.96 ID:Tww0axjQ0


ξ゚゚)ξ「どうだった?」

指揮所に戻るや否や問いかけてきたツンに、地図を取り出しながら頷いてみせる。

('A`)「そいつと観測班の報告内容は正しい。確かに味方の援軍だ、それも最低で連隊規模。南の方で大激戦の真っ最中らしい」

「………うわぁああ!!!」

俺の言葉を受けて、報告者の下士官はディズニー映画のキャラクターのように跳び上がって叫ぶ。同じくテントの中にいた通信兵や将校達も互いに抱き合ったり脱力して座り込んだり、思い思いのやり方で喜びと安堵を露わにした。

まぁ、孤立無援と思われたところに友軍、それも空軍まで生き残っていたことが判明したんだ。この喜びようは無理もない。

本当なら、俺だって手放しで歓喜の輪に加わりたいところだ。

俺はペンを握りながら下士官の肩を叩く。

('A`)「V-22の降下した区画はどこか解るか?」

「……は?こ、高層観測班からはテンペルホーフ=シェーネベルク区、それからノイケルン区と聞いていますが」

('A`)「降下していたV-22に対して攻撃は?」

「ほ、ほぼありませんでした。事前にユーロファイターによる爆撃が相当規模で行われていたので、おそらくそのせいかと」

('A`)「おっ、そうだな」

下士官の言葉に適当に相づちを打ち、報告内容にあった区画に印を付ける。次いで、そのままドイツ全体の地図をその上から広げた。

('A`)「イヨウ中佐、オスプレイの配備基地は?」

(=゚ω゚)「僕らドイツ軍が正式に配備している機体はないよぅ。ただ、深海棲艦との戦争に合わせて“借用”の名目で利用権利がある機体はビューヒェルとレヒフェルトにそれぞれ数十機ずつあるよぅ」

('A`)「………ビューヒェル、B-61弾頭の事も考えれば騒動初期段階で間違いなく南に全力で逃げてるな」

(=゚ω゚)「大隊規模の増援が出せる戦力の収容、かつユーロファイターが未だ投入可能となれば間違いなく増援は南から来てるよぅ」

('A`)「でしょうねっと」

地図上にペンを走らせ、ビューヒェルとレヒフェルト、そしてレヒフェルトとベルリンを線で結ぶ。

………あぁ、やっぱりか。

書き込みを終えた地図を見て、疑念は確信に変わる。

('A`)「罠だ」

ξ゚゚)ξ「罠ね」

(=゚ω゚)「罠だよぅ」




75: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/11(木) 00:58:48.21 ID:Tww0axjQ0

「なっ……」

下士官が絶句し、他の面々も静まりかえる。

だが、俺とツン、そしてイヨウ中佐の見解は見事に一致してしまった。

(=゚ω゚)ノ「どう考えてもこの2区画に無抵抗に友軍の降下を許すのはあり得ないよぅ。特にノイケルン(Neuk?lln)区は」

no title


ξ゚゚)ξ「深海棲艦がこっち側へ攻め込む主要経路が横っ面を張られる形になるわね、下手したら奴等の前線が縦に分断されるわ」

加えて肝になるのは、降下した味方の数が“たかが大隊規模でしかない”という点だ。

('A`)「一応聞くがV-22に装甲戦力を空輸していた機体は?」

「………確認する限りでは、見られませんでした」

('A`)「となると、増援に間違いなく艦娘が含まれてるな」

南から増援を寄越した指揮官が脳みその代わりに牛糞が頭につまってでもいない限り、“たった1000人強の歩兵”を深海棲艦はびこる市街地に投入などただの集団自殺と変わらない事は理解できるだろう。

ただし、ベルリンがこの有様にも関わらず今までどこからも艦娘が来ていないことを考えると、ヴェルヘルム=スハーフェンの司令府を初め北部の主要な艦娘駐屯地は動きを封じられたか壊滅している。自然、南に逃げ延びて友軍と合流し、かつそのまま奪還作戦に参加できる艦娘となれば自然と数は大きく制約される。

('A`)「投入された艦娘は10隻あるかないか、しかも現段階ではこれが最大戦力と見て間違いないな」




76: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/11(木) 01:09:26.51 ID:Tww0axjQ0



ここまで考えれば、自ずと深海棲艦の狙いも見えてくる。

奴等は既に、ベルリンの“陥落後”を見据えている。

ξ゚゚)ξ「首都防衛餌にして唯一の脅威である艦娘の残存部隊つり出して殲滅、しかる後各個撃破ってところかしら?

えげつない戦法とるわねあいつら」

('A`)「この作戦を考えた奴が相当性格悪いのは間違いないな、少なくとも」

だが、お生憎様だ。

(=゚ω゚)「────さて、それじゃ。敵の狙いも解ったことだし」

性格の悪さと狡賢さに関しては、年期が違う。

(=゚ω゚)ノ「そろそろ、ペイバックタイムとしゃれ込むよぅ」

ξ゚゚)ξ「「了解!」」('A`)

さぁ、反撃開始だ。




80: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 01:37:48.02 ID:cHXotTvn0






雨と共に降り注いでくる敵の砲弾が、そこかしこに突き刺さって炸裂する。

火柱が吹き出し、建物が崩れ落ち、地面が揺れる。

街に立ちこめる、硝煙と土煙の匂い。

それらはとりもなおさず、今私が「戦場にいる」ということを実感させた。

(;><)「敵艦砲射撃、来たんです!!」

(#゚д゚ )「足を止めるな!!行け行け行け!!」

頭上をまた1発、砲弾が飛び去っていく。背後で上がった大きな爆発音に竦みかけた足を、歯を食いしばって無理やり動かす。

『オオアアアアアアアアアアッ!!!』

唐突に、150メートル程向こうで古びたアパートが一つ崩れ落ちた。瓦礫を踏みしめながら現れたのは、オタマジャクシの足に無理やり深海魚の身体をひっつけたような、黒光りする歪な化け物。

『アァアアアアアアアッ!!!』

駆逐イ級は、此方を見てサイズだけなら列車砲ほどもある大きな図体を震わし、威嚇するように咆哮した。

「っ」

その耳障りな声に、私の足は再び棒になる。

( <●><●>)「正面、駆逐イ級後期型1体。砲塔はまだ格納中」

(#゚д゚ )「出すまで待ってやる必要はない!パンツァーファウスト!!」

  _
(#゚∀゚)「Jawohl!!」

先頭を行く妙に目力が強い分隊長───ミルナ=コンツィ陸軍中尉の叫び声に応じて、対戦車携行砲を構えた二人が隊列から躍り出た。
  _
(#゚∀゚)「Feuer!!」

『ウォオオオオオオオンッ!!!?』

イ級の鼻っ面に、2発のロケット弾がほとんど同時に直撃。イ級はガラスを引っ掻いたような音の叫び声を上げて仰け反る。
  _
(#゚∀゚)「レーベ、行け!!」

「Jawohl!!」




81: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 01:40:09.34 ID:cHXotTvn0

怯んだイ級に向かって飛び出したのは、私と同じ警備府に所属するZ1───駆逐艦娘のレーベレヒト=マースだった。

彼女は12.7cm連装砲を胸の高さに構えつつ、姿勢を低くしてイ級に向けて弾丸のように突っ込んでいく。

「Feuer!!」

『ア゛ア゛!!?』

150メートルの距離を更に半分まで詰めての砲撃。私たち艦娘からすれば目をつぶってでも当てなきゃいけない超至近距離だ。砲弾は先ほどジョルジュ少尉達が攻撃した箇所に寸分違わず命中。

火花が散り、イ級の強固な外殻が砕けて白くぶよぶよした肉繊維が黒煙と共に露出した。

( <●><●>)「Los Los Los」

(#><)「Weiter Feuer!! Weiter Feuer!!」

『アアアァアア………』

大きな損傷を負ったイ級に、間髪を入れず今度はアサルトライフルによる弾幕射撃が浴びせられる。

勿論幾ら中破状態とはいえ、深海棲艦の装甲や耐久に対して歩兵の小銃でトドメを刺すなんて不可能だ。

ただし、火線は悉く眼の付近に集中し、イ級の視界を奪いにかかる。

『オォ、アァアアァァァ………』

ミルナ中尉達の巧みな連携に反撃すらままならないイ級は、どうやら“戦略的撤退”を試みたらしい。

遭遇当初の威勢の良さはどこに行ったのか、弱々しい鳴き声を上げて黒煙が吹き出す身体を引きずりながらきびすを返す。

当然、その動きは遅すぎる。

「───Feuer!!」

レーベは既に、ティーマス軍曹とビロード軍曹の牽制射撃の合間に、距離を残り10メートル足らずまで詰めている。彼女は右手の連装砲と、背負っている艤装の両端に備え付けられた10cm高角砲を同時に起動した。

『オァ゛ア゛ア゛ッ!!?』

間近から放たれた“艦砲射撃”。巨体が爆圧で浮き上がり、まるでクリケットのボールのように飛翔する。

ぐしゃりと音を立てて、道脇の家屋に叩きつけられる。

崩れ落ちた瓦礫の下敷きになったイ級は、そのまま二度と起き上がらなかった。




82: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 01:42:20.02 ID:cHXotTvn0

「っ!!」

敵の撃破に、歓声を上げる暇なんてない。レーベはすぐに表情を険しくすると、その場から後ろに飛び下がる。

先ほどまで彼女が立っていた位置に、巨大な拳が叩きつけられた。
  _
(;゚∀゚)「レーベ!!」

「大丈夫、避けました!!損傷ありません────っと!!」

今度は砲撃。再び彼女は跳び、爆風による衝撃を着地ざまに地面に転がって逃がす。

私たちの足下まで転がってきたレーベを、ティーマス軍曹が手早く助け起こした。

( <●><●>)「損傷状況を」

「深刻な損傷はない!まだ戦えます!」
  _
(#゚∀゚)「そいつぁ上等だ────お客さんのお出ましだぞ!!」

ジョルジュ少尉の注意喚起の声に応じるように、新たな敵は右手───さっきイ級が現れたのと反対方向の家屋を突き崩して私たちの前に立ち塞がる。

まず眼を引くのは、大きさも形もてんでんばらばらな三つの頭。首から下には胴体や足がなく、太くて白い、ぬらぬらと気持ちの悪い光沢を放つ図太い腕が二本伸びて頭部を地面から持ち上げている。
どの頭部にも眼はついておらず、代わりにおおよそ8メートルほどの高さから私たちをにらみ据えるのは頭頂に備え付けられた連装砲とあごの横に盛り上がった魚雷発射管だ。

『ウゥオオオオオ………』

出来損ないのケルベロスのような形をした深海棲艦、軽巡ト級は本当に犬が威嚇するように私たちに向かって低く唸る。

なんとなく、仲間のイ級が轟沈したことに対する、怒りと悲しみを露わにしているようにも見えた。




83: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 01:47:21.81 ID:cHXotTvn0

  _
(#゚∀゚)「Feuer!!」

『ォオオオォオオオ』

私たちを吹き飛ばすべく発射態勢に入った砲塔に、ジョルジュ少尉たちが放ったロケット弾が3発相次いで命中する。大きなダメージこそ与えられなかったようだけど、暴発や照準のぶれを嫌ったのかト級は砲撃を取りやめて爆発から逃れようとするように身をよじる。当然のことながら、その動きは大きな隙を生む。
  _
(#゚∀゚)「プリンツ!!」

「ふ、Feuer!!」

合図に合わせて艤装の上側、SKC 20.3cm連装砲2門を起動。ト級の中央頭部めがけて放つ。

『グォウッ!?』

「くっ……」

右舷の砲撃は外れ、すぐ傍の民家の屋根を吹き飛ばす。左舷の砲撃は命中し、奴は衝撃でよろめき蹈鞴を踏んだ。

だけど、明らかに浅い。損傷具合で言えば、小破に行くか行かないか。

( <●><●>)「ト級、損害有りもなお健在、未だ戦闘能力を有しているの解ってます」

(#゚д゚ )「ジョルジュ、もう1発お見舞いしてやれ!!」
  _
(#゚∀゚)「言われずとも!! Feuer!!」

(#><)「小銃一斉射、奴の腕に火線を集中!動きをせめて封じるんです!!」

『オオォオオオッ!!!』

三回目のロケット弾は向かって左手の頭部に命中。間を置かずアサルトライフルの弾丸もト級の腕で弾ける。ト級は鬱陶しげに頭を振りうなり声を上げるけれど、効いているようには見えない。

(;><)「ターゲット、効果的なダメージは見られず!行動抑制効果も薄いんです!!」
  _
(;゚∀゚)「やっぱ戦車がないとキツいかクソ………おぉっ!?」

『ガァアアアアアアッ!!?』

“真下”から撃ち上げられた砲撃が、突然ト級の頭部を跳ね上げる。完全に予想していなかった箇所から攻撃を受けたト級は、後ろに大きくよろめいた。バランスを崩し手をもつれさせて、家屋を巻き込みながら地響きと共に転倒する。




84: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 01:48:44.91 ID:cHXotTvn0


「よし、どうだ!!」
  _
(*゚∀゚)「ッヒュゥー!やるねぇレーベちゃあん!!」

前のめりに倒れ込んできたト級の巨体を避けながら、いつの間にか再び隊列から飛び出していたレーベは小さくガッツポーズをしている。手に持っている連装砲が小さく煙を上げているところを見ると、今の一撃はト級の懐に飛び込んだ彼女によるものなのだろう。

「プリンツ、今だ!!」

「う、うん!!」

レーベの合図に併せて全ての砲塔をト級に向ける。

至近距離、転倒して身動きがとっさに取れない相手、地上のため足場も安定。

これで外したら、私は恥ずかしさと情けなさのあまりBismarck姉様の胸に顔を押しつけて窒息死する事を選ぶ。

「Feuer!!」

『ガッ………』

4門、一斉射。砲撃は起き上がりかけていたト級の中央の頭を跡形もなく吹き飛ばし、両側ニ頭の凡そ半分ほどの面積を抉り取る。

ズンッ、と重い音を立てて再び崩れ落ちたト級は、そのまま完全に機能を停止した。

(;><)「敵艦の機能停止を確認───敵艦砲射撃、再び来るんです!!」

(;゚д゚ )「伏せろぉお!!」

……立て続けに2隻の敵艦を撃沈したっていうのに、深海棲艦の奴等は私たちに余韻に浸る僅かな暇すら与えてくれない。

ぬかるむ地面に身を伏せた私たちの前後、それぞれ20メートルも離れていない位置に飛翔音と共に砲弾が突き刺さる。

巨大な爆発。
降り注ぐ泥。
地面から身体に這い上ってくる震動。

………私の歯がやたらかちかち鳴っているのは、きっと地面が砲撃で揺れたせいだ、そうに違いない。




85: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 01:51:54.50 ID:cHXotTvn0

(#゚д゚ )「損害、損傷報告!!」

( <●><●>)「全員無事です。分隊に欠員なし」

「レーベレヒト=マース、損傷無し!」

「プリュ、プリ、プリンツ=オイゲン、損傷ありません!!」

(#゚д゚ )「HQに現状を報告したい!ジョルジュ、通信を繋げろ!」
  _
(#゚∀゚)「もう無理ですよ中尉!!既に五分ほど前からベルリン市外への通信は全部隊が通じていない模様です!深海棲艦の妨害区域に入ってます!!」

眉g、ジョルジュ少尉はそれだけいうと罵倒を吐き出しながら地面を蹴った。近くにいたレーベが、びくりと一瞬肩を震わせる。
  _
(#゚∀゚)「あのクソッタレの鷲鼻野郎!!何が“この区画に突入すれば事態が好転する”だよ!!このままだと全滅を待つだけだぞ!!」

(#゚д゚ )「落ち着けジョルジュ!!ラインフェルト大佐の命令はお考えがアッテのことだ!!」
  _
(#゚∀゚)「あぁそうだな!!21世紀のマンシュタイン様にはさぞや大層な深謀遠慮があるんだろうよ!!

ところでその深謀遠慮の結果俺たちは現在進行形で死にかけてるわけですがね中尉!!」

(;゚д゚ )「っ……」

……あまり学があるとは言えない私でも、ジョルジュ少尉が私とレーベをミルナ中尉の部隊に配属したあの鷲鼻の陸軍大佐の作戦に怒っているのは理解できた。

そして、はっきり言うと私も同じ気持ちだった。
  _
(#゚∀゚)「機甲師団なし、空軍の支援は効果希薄、東部に展開しているであろう友軍は正確な規模不明!!この上本部とは通信が繋がらねえ状況下で待ち伏せていた敵の十字砲火に晒されてると来た!どんな深謀遠慮だか、楽しみすぎて涙が出てくるよ!!」




86: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 01:54:35.23 ID:cHXotTvn0

深海棲艦の神出鬼没ぶりに対抗するためアメリカから大量に輸入されたという、最新鋭の高速輸送機に乗せられて私たちはベルリン南部に空から突入した。

戦力は、私とレーベを含め戦闘能力を残した状態で南に逃れることができた艦娘8人。そして、ミルナ中尉ら陸軍歩兵1200余名。

深海棲艦は、私たちが南部に完全に展開しきるのを待ち構えてから区画を包囲封鎖。前衛攻撃・足止めとして非ヒト型のホ級やイ級、ト級を投入しつつ周辺から壮絶な艦砲射撃を開始した。

“艦娘が八人”とは言っても、その中にはBismarckお姉様もグラーフさんも1隻もいない。重巡プリンツ=オイゲンですら、私一人だけ。

他の艦娘は、レーベレヒト=マースが3隻とマックス=シュルツが4隻。

ル級やタ級といった“戦艦”に包囲されている現状を打破するには、火力も数も足りない。

この状態が続けば、多分私たちはまともな反撃ができないまま1隻残らず全滅する。肉薄して至近での砲撃戦に持ち込もうにも、非ヒト型が間断なく投入されてくる現状だと仮にたどり着いたとして弾薬も燃料も残らない。

少なくとも私には、あの大佐さんが立てた“作戦”はただの手の込んだ自沈命令にしか見えなかった。

( <●><●>)「今は、言い争っている場合ではないことは解ってます」

今にもつかみ合いをはじめそうなミルナ中尉とジョルジュ少尉の間に、ティーマス軍曹がそっと割って入る。軍曹は二人を引きはがしながら、私の方をちらりと見た。

( <●><●>)「中尉、少尉。正直な話、貴方方が言い争いをしている間に敵の砲撃が私たちを吹き飛ばさなかったのは奇跡です。すぐに移動しましょう」

( ゚д゚ )「……そうだな。総員、一先ず西に移動しろ!敵に位置を把握されている可能性が高い、砲弾の飛翔音に気をつけろ!」

( <●><●>)「プリンツ=オイゲン、貴女が水偵を装備しているのは解ってます。退却であれ進撃であれ、敵の現状を確認しなければなりません。

可能ならば飛ばしていただけませんか?」




87: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 02:05:52.98 ID:cHXotTvn0

「あっ、はっ、はい!!」

ティーマス軍曹に声をかけられ、私は我に返る。ミルナ中尉達に小走りでついて行きながら、懐からAr-196改を取り出して左手の艤装に装着。【Helm】や【Ball】の機影がないことを確認して、空へと向ける。

「お仕事だよ、お願いね!」

機内の妖精さんに軽く声をかけ、機体を空へ放った。

「………あの、軍曹、お手数なんですけれどしばらく手を握って私を先導していただければと」

( <●><●>)「えぇ、かしこまりました」

「Danke、では────」

ティーマス軍曹に手を引かれながら目をつぶり、私の「意識」をAr-196に乗る妖精さんの「意識」に重ねる。

途端、瞼の裏しか見えない状態の筈の私の眼は、空へと駆け上がっていくAr-196のコックピットからの景色を映しだした。

(………やっぱり、酷い有様だ。街が、こんなに滅茶苦茶に)

空から見たベルリンは、“無事なところ”を探す方が遙かに難しかった。瓦礫の山と化した区画、無数の炎が飲み込んでいる区画、黒煙に包まれて何も見えない区画…………そして、たくさんの死体が積み重なっている区画。どこもかしこも、見られるのは深海棲艦による“破壊”の跡だけだ。

(………っんぷ)

一瞬こみ上げてきた吐き気を、無理やり喉から押し返す。

今は吐いている暇はない。まず敵の状態を偵察、逃げ道か打開策か、とにかく何か見つけないと────





.




88: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 02:23:28.73 ID:cHXotTvn0

「……………ミルナ中尉!!!!」

(;゚д゚ )そ「うおっ!?」
  _
(;゚∀゚)そ「わぁこっち見んな!?」

自分でもびっくりするほどの大声が、喉から迸った。私はティーマス軍曹から手を放すと、一目散にミルナ中尉の下に駆け寄……ろうとして、足がもつれて転び頭から水たまりに突っ込んだ。

………おかしいな、私巷じゃ船だった時代のせいもあって幸運艦なんて呼ばれてるんだけど。

「ちょっ、プリンツ大丈夫?」

思い切り鼻の頭をぶつけた痛みで立ち上がれない私に、ミルナ中尉とレーベが呆れた様子で駆け寄ってくる音が聞こえる。

( ゚д゚ )「……」

その足音は。

「………」

遠くから聞こえてきた“砲声”によって、止まった。
  _
( ゚∀゚)「………」

深海棲艦の、ル級やタ級が放つ“艦砲射撃”とは明らかに異質な、少し“軽い”と感じる響き。

(;><)「………」

キャタピラーが瓦礫を踏みしめながら道を進んでいく音を同時にこだまさせつつ、確実に此方へ近づいてくる幾つもの轟音。

「────中尉!!!」

ようやく鼻の痛みから復活できた私は、地面から身を起こして中尉の袖を掴み、叫ぶ。







「市街地東部にて大量の戦車隊を有する友軍部隊が突貫!!深海棲艦の包囲網に対して攻撃を開始しています!!」




92: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 15:54:51.54 ID:cHXotTvn0





(`∠´)「士官学校時代の私は、とんだクソガキでね。

“連邦軍始まって以来の神童”なんて周りから煽てられた結果、鼻持ちならない自信家になって全ての人間を見下していた」

ベル=ラインフェルトは椅子に深く腰掛けながら、唐突にそんなことを語り出した。

彼の眼前には、北部の混乱からなんとか逃げ延びレヒフェルト基地に集った三軍の将校達が集まっている。

ベルの立案した「無謀な作戦」に物申すために司令室に詰めかけた彼らは、誰もが唖然として椅子に座り懐かしげに微笑む彼を見つめている。あまりに絶望的な状況にとうとう気が狂ったのではないかと、本気で訝しんでいる者も少なくない。

(`∠´)「そういえば、以前の同期達とは今すっかり会わなくなってしまったな。この騒動が終わった暁には、是非彼らと酒でも酌み交わして」

「大佐ァ!!」

あまりに場違いな物言いに、遂に一人が声を荒げて机を殴りつけた。ペン立てが震動でひっくり返り、中身をぶちまける。ベルはその光景に、小さく眉をひそめた。

(`∠´)「落ち着きたまえ君、物が壊れたらどうしてくれるんだ。

君もドイツ連邦陸軍の少佐として、もう少し思慮を深く持ちなさい」

「何を落ち着けと言うんですか!!」

食い気味に反駁した海軍少佐は、北方沿岸部の警備府で提督をやっていた。深海棲艦と前線で渡り合った経験もある若く有能な人材だったが、利権争いに明け暮れる上層部と衝突した結果辺境に左遷されたというなかなか激しい経歴の持ち主だ。

彼から見れば、今この瞬間目の前に悠然と座っている鷲鼻の陸軍大佐は何者よりも許しがたい悪徳に他ならない。




93: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 15:56:38.82 ID:cHXotTvn0

「市内に突入した友軍から、電波妨害圏内に入る直前深海棲艦による待ち伏せ攻撃を受けたとの報告がありました!!

現在強襲部隊は包囲下で全滅の危機にあると思われます!!一刻も早ぐ……う゛っ……」

提督の言葉は、後半涙に呑まれてまともな声にならずかき消える。

ドイツ領の端の端に勤務していた彼に部下として配備されていた艦娘は、Z3 マックス=シュルツただ1隻。苦楽を共にした彼女は今、ベルの命令により首都強襲部隊の一角に編入され深海棲艦による十字砲火の直中にいる。

ベルへの怒りと安否不明となった部下に対する思いは、最早彼の許容量を超えていた。

「大佐、何度も申し上げました通りやはりこの作戦は無謀だったのです」

机にすがりつくようにして泣く提督の後を、空軍中佐が引き継ぐ。彼はベルから聞かされた作戦概要を見たときに、最後まで強硬な反対を続けている。

「レヒフェルトからベルリンまでの凡そ500km、敵からの強襲がないわけがない。

仮に強襲・対空迎撃がなかったとすれば、それは間違いなく向こうの罠だ………正直、大佐ほどの方が解らないはずがないと信じていました」

彼の口調は静かだが、語尾に走る震えが内に秘めた怒りの大きさを表している。

「大佐……私は貴方の名声と実績を信じて最終的に作戦を託した2時間前の自分を射殺したい気持ちです」

(`∠´)「………」

「1200人の優秀な陸軍士官と8人の艦娘を、希望的観測ありきの死地に追いやる………これが、今の我々にとって、否、世界にとってどれほど背信的な行為かおわかりですか?」




94: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 16:00:56.07 ID:cHXotTvn0

50機近いV-22を動員した大規模空挺強襲……言葉だけを聞けば威勢が良いが、内実は1200人の歩兵を化け物に制圧された市街地に降下させたに過ぎない。

深海棲艦に対抗し得る戦力である“艦娘”にしても、僅か八人、しかも戦艦も空母もいない。

もし海の上ならば、駆逐艦と重巡にも魚雷攻撃という一撃必殺の切り札があった。だが、今回は内陸に敵の侵攻を許した上での陸上戦闘だ。主砲の火力差は、そのまま彼我の戦力差に直結する。

はっきり言って、道中で襲撃を受けて追い返されたり激烈な対空砲火によって市街地への着陸がならず帰投したという話になれば寧ろドイツ軍にとってマシだった。
少なくとも通信もままならない市内に引き込まれての包囲殲滅という考え得る限り最悪の、それも比較的容易に想像がつく事態よりはよほど収拾も立て直しも効く。

そして、ベルがそれらの不利を覆し作戦を強攻する理由として挙げたのは、根拠不明の「ベルリン市街地の残存友軍戦力の存在」だった。

「旅団規模の友軍が市街地東部を占拠し防衛線を展開している可能性が高く、おそらく機甲戦力も有しているこの友軍と連携すれば十二分にベルリンを奪還できる………こんな、こんな荒唐無稽な推測を“ベル=ラインフェルトが言うことだから”と最終的に真に受けた私がバカだった!!!」

最早空軍中佐も、感情の昂ぶりを抑えきれずに激昂する。

確かに、ベルリン以南への南下速度が極端に遅い理由を「中枢たるベルリンが未だ制圧できていないから」と考えること自体は論理的だ。戦車道博覧会の警備を行うために機甲戦力が駐屯しているのは事実なので、もしかしたら戦車や戦闘車両も生き残っているかも知れない。

だが、仮に警備隊や機甲戦力が生き残っていたとしてそれが“ベルが言うとおりの規模”だという確実な証拠はどこにもない。また万歩譲って旅団規模の味方とやらが奇跡的に生き残っていたとして、彼らが突入部隊と連携できるとも限らない。

何せ、ベルリンは敵の電子戦によって通信途絶中だ。援軍の存在すら事前に知らせていない中で、瞬時に状況を把握して即応できる人材がベルリンにいるとは到底思えなかった。




95: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 16:10:56.34 ID:cHXotTvn0

「大佐、今からでも遅くはありません。ユーロファイターを総動員して爆撃を敢行すれば、包囲網を崩すとまでは行かなくても強襲部隊への十字砲火を鈍化させることは十分に可能です!その間にV-22で再び彼らを回収すれば、最低限貴重な艦娘戦力の損失は避けられます!!」

空軍中佐は身を乗り出し、眼を見開いてベルに詰め寄る。

彼の視線には、軍の垣根を越えて一刻も早く死地にいる友軍を救いたいという強い思いしか宿っていなかった。

「大佐、首都を救いたいというお気持ちは解ります!!しかしこればかりはどうか、どうか今すぐに中止を!!」

(`∠´)「………」

形振り構わず、額が机に着きそうな勢いで中佐は頭を下げる。

ベルは、眼を細めて彼をしばらく見つめ………

「………っ!!」

机を開けると、爪切りを取り出して手の爪を削り始めた。

「大佐、大佐!!貴官……正気かお前はぁ!!!」

「落ち着け!!………大佐、今はふざけているときではないのです!いい加減友軍の救援を!!」

腰の拳銃に手をかけた提督を抑えながら、陸軍少佐がもう一度声を上げる。

提督を止めてはいたが、彼も最早我慢の限界が近いことは明白だ。彼の右手も今にも腰のホルスターに手を伸ばしかねない姿勢で痙攣しており、あと一つ何かきっかけがあればベル=ラインフェルト陸軍大佐は味方の「誤射」によって命を落とすことになるだろう。

(`∠´)「さっきの話に戻るが、私は士官学校時代完全な天狗だった。

図上演習では特に本当に敵無しでね。視察に来た将軍方をお相手したときは、わざわざ自軍に不利な場面設定をした上で叩きのめし面と向かって皮肉を浴びせてしまったほどだ」

だが、彼はそんな空気を意に介さずに昔話を再開した。
いよいよ激怒した将校達を眼で制しながら、訥々と語り続ける。




96: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/12(金) 16:27:25.42 ID:cHXotTvn0


(`∠´)「そんな私を、一人だけ負かした奴がいてね。

いやぁ、アレは本当に苦い薬だったよ。何せ今私が将軍方に対して行った設定と同じ内容で、しかも私が優勢側で戦って負けたんだ。

手も足も出ない完封だった」

当時の悔しさを思い出したのか、ベルの視線がすっと細まる。

口元が不満げに尖っているのを見ると、未だに「苦味」は残っているようだ。

(`∠´)「その後何度も新しい作戦を考案し、何度もあらゆるシチュエーションで演習を挑んだ。だがその都度、私は手もなく捻られてね。

ふん、アイツのすました顔は今でもたまに悪夢に見るよ。今この瞬間も、奴さんは神経質な早口で部下に捲し立ててるんだろうさ」

「……ラインフェルト大佐、その話が今の我々の現状と何の関係が」

(`∠´)「その、唯一私の鼻っ柱をへし折った男は今、ベルリンにいる」

「………は?」

唐突に放たれた一言に、更に詰め寄ろうとした陸軍少佐の動きが止まる。

ベルは、机の上に一冊の冊子を置き、あるページを開いて指さした。

ベルリン戦車道博覧会のパンフレットの最後のページ。そこには、当日の会場警備を担当する陸軍将校の名が書かれている。

(`∠´)「君らの言っていることは、本来正論だ。

ベルリンに旅団規模の残存戦力がある、希望的観測だ。

東側は友軍が確保している、そんな保証はない。

我々の意図をくみ取り残存友軍は動いてくれる、作戦というのも烏滸がましい下らない言い草だ。

だが、彼がいるなら話は別だ」





(`∠´)「───イヨウ=ゲリッケが指揮を執っているなら、全ての事情が変わる。

間違いなく在ベルリンドイツ軍は私の予想通りの形で戦力を残し、間違いなく彼はこの罠の最中に飛び込んだ増援の意図を読み取って動く。

これは希望的観測でも楽天的妄想でもない、【イヨウ=ゲリッケ】という存在に基づいた明確な“事実”だ」




100: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 00:49:26.54 ID:pE2iAJdj0






《パンコウ区、全部隊の再編成完了。

車両、全て問題なく稼働。いつでも戦闘に移れます》

《トレプトゥ=ケーペニック区、ポイントK-1より指揮車。戦闘編成を完了。迫撃砲も設置しました》

《リッテンベルグ、後方支援班。現在把握している避難市民の地下施設への収容を完了。ただし、依然ベルリン市外・ドイツ国外との通信は不能。市外への避難誘導は不可能です》

《高層観測班より前線指揮車、強襲部隊は引き続き深海棲艦の包囲下で十字砲火に晒されている。長くは持ちそうもない。

また、他の区画における非ヒト型に大きな動きなし。位置情報の更新はない、オーバー》

('A`)「前線指揮車より高所観測班。情報提供を感謝する。引き続き敵の動向を注視せよ、オーバー」

《了解、監視に戻る。アウト》

一連のやりとりを終えた俺は、エノク上部の機銃座でもう一度ベルリン市街の地図を広げる。

イヨウ中佐のように軍事キチガi明晰な頭脳を持っていない俺は、考えた作戦を丸ごと頭に入れるなんて人外行為はできない。たった20分の作戦会議の中で、地図はメモ書きと矢印で隙間無く埋め尽くされている。

('A`)「………本当に、無理ゲー三昧だな今日は」

味方増援部隊に向かって放たれる艦砲射撃の轟音を聞きながら、俺は今日何度目か解らない深いため息をついた。

………どうでもいいけど、ベルリン大聖堂はちゃんと破壊しろよあの深海魚共。




101: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 00:53:02.47 ID:pE2iAJdj0

(=゚ω゚)ノ《CPより前線指揮車、現状を知らせるよぅ》

('A`)「指揮車よりCP、全区画攻勢部隊の編成を完了。また、当区画においても戦闘態勢は万端、後は作戦開始を待つのみです。戦車隊、状況は?」

ξ゚゚)ξ《いつでもいけるわ。全車両、状況オールグリーン》

《プーマ戦闘車、1号車から6号車まで異常なし。システムオールグリーン、戦闘に支障ありません!》

入ってきた報告に、少しだけ、本当に小指の先ほどだが気持ちが軽くなった。

プーマとレオパルト1はどちらもこの作戦の肝であり、そうでなくとも俺たちが深海棲艦に損害を与えられる数少ない保有兵器の一つだ。機器の不調で一両が機能を落とすだけでも、とてつもない痛手になる。

こんな換算がクソの極みであることを理解した上であえて言うなら、歩兵と警官隊が1000人吹き飛ばされるよりもプーマが一両破壊される方が俺たちにとっては遙かに大きな痛手になる。

('A`)(………ウツダシノウ)

ξ゚゚)ξ《…………あの、ドク?》

(;'A`)そ「ひやぅっ!?」

机の上でコマと数字を動かして戦争をした気になっている、上層部のクソ野郎共みたいな思考が過ぎった自分への自己嫌悪に思わず気分が沈み込む。
どの自決方法が一番苦しまずにすむかと真剣に考えてしまった結果、無線から飛び込んできたツンの問いかけに年端もいかない小娘のような悲鳴が喉から飛び出した。

「…………クップププ」

(*;'A`)「………あー、ツン、どうした?」

「あ痛っ!?」

赤面と共に無線を手に取りながら、運転席を蹴飛ばす。エノクの運転手が恨めしげに此方を睨んできたが、無視。上官侮辱罪じゃ上官侮辱罪。射殺されなかっただけありがたく思え。

('A`)「………まさかと思うけど故障が発覚したとかやめてくれよ。もしそうならすぐにも作戦の変更を」

ξ;゚゚)ξ《そこは安心して頂戴、例え急ピッチのチェックでもフランス戦車道の名にかけてどんな異常も見逃さないから。

そうじゃなくて、戦車隊の指揮は本当に私でいいの?私フランス人なのよ?》




102: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 00:57:14.62 ID:pE2iAJdj0

('A`)「は?……あぁ、なるほど」

一瞬質問の意味を理解しかねたが、ついさっきの作戦会議(といえるような内容は時間の問題でできていないが)の様子を思い出して納得する。

俺とイヨウ中佐はおろか、他の部隊指揮官やレオパルト1の乗組員達まで満場一致で戦車隊の指揮官代理を任されたことに戸惑っているようだ。まぁ、本来の指揮官まで手放しで喜びハグまでやってたのは俺も少し驚いたが。
それにしても、派閥争いの誘いを突っぱねて国外に飛ばされる程度には図太い神経のくせに変なところで気が小さいな。

思わず漏れた笑いが無線に入らないように、慌てて咳払いで誤魔化した。

(=゚ω゚)ノ《もっと自信を持って欲しいよぅ。これは君の実力を正当に評価した上での配置だから、誰も君のことを悪く思うことはあり得ないよぅ》

イヨウ中佐が、彼にしては静かな口調でツンを諭す。語尾が僅かに震えているのを聞くに、彼もツンの自己過小評価におかしみを覚えたのかも知れない。

(=゚ω゚)ノ《リスボンでの君の戦車乗りとしての手際は、マントイフェル少尉の作戦指揮同様僕たちの間でも高く評価されてるよぅ。

ましてや、ベルリンに配備されていたレオパルト隊はほとんどが新兵。寧ろ、君の深海棲艦との戦闘経験は戦車隊の運用に無くてはならないものだよぅ》

ξ゚゚)ξ《……》

《そうですよ中尉!!もう少し自信を持って下さい!!》

ξ;゚゚)ξ《わっ》

中佐の台詞の後に続いて、戦車隊の乗り手の一人が声を上げた。
そしてそれを皮切りに、彼女たちは次々にツンに向かって思いの丈をぶちまける。

《私たちはドイツ軍人ですけれど、同時に中尉と同じ戦車乗りでもあるんです!中尉が優れた戦車乗りであることを、私たちはよく知っています!》

《祖国を、戦友を、国民を護るためには下らないプライドなんか必要ないです!中尉、私たちを勝利に導いて下さい!》

《ドイツ戦車道の団結力をお見せ致しましょう!私たちは、皆中尉のいかなる命令にも従います!!》

ξ*゚゚)ξ《……皆》

《例え抱かれろと命令されても、私たちは喜んd……謹んでお受け致します!!》

ξ゚゚)ξ

………ん?




103: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 00:59:24.17 ID:pE2iAJdj0

《おい1号車ふざけんな!お姉様と同じ車両だからって抜け駆けすんなや!!》

《はっはっはっざまぁwwww!ゲリッケ中佐に“一番練度が高い”って評価受けた結果だぜwwww!?文句は自分の腕前に言うんだなぁ!!》

《3号車より指揮車!1号車に砲撃許可を、砲撃許可をぉおおおおお!!!》

《ざっけんな3号車お姉様にも傷つくだろうが!!》

えっ、何思いの丈ってそういう方向?待て、この戦車隊って全員ソッチの趣味?

《ツンお姉様hshs!!ツンお姉様hshs!!》

《ツンLove!!ツンLove!!》

《私、この作戦で生き延びたらお姉様に抱いて貰うんだ………》

('A`)「これは酷い」

(=゚ω゚)ノ《これは酷い》

やだ………ドイツの戦車道終わってる………

ξ゚゚)ξ

ξ゚゚)ξ《前線指揮車並びにCP、至急ツン=デレ中尉の配置転換を具申します》

('A`)「……クソッ、深海棲艦のジャミングか!?ツンの声がまるで聞こえないぞ!!」

(=゚ω゚)ノ《なんてことだ、レオパルト1の1号車だけ通信が途絶えたよぅ!!奴等なんて高度な電子戦を行うんだよぅ!!》

ξ;゚゚)ξ《いやぁああああ!!!!》

………ツン、強く生きろ。

あと、安心しろ。だいたいの男はそういうの嫌いじゃないから。




104: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 01:16:00.60 ID:pE2iAJdj0

《────高層観測班より指揮車並びにCP、深海棲艦主力部隊が南方の友軍増援部隊を完全に包囲!!敵主力艦隊の集中展開完了を確認!!》

('A`)「………!」

ξ;゚゚)ξ《っ》

(=゚ω゚)ノ《………いよいよかよぅ》

和気藹々とした(約一名除く)、戦場に似つかわしくないやりとりがその報告を聞いて終わりを告げる。

敵主力部隊の展開。それは、俺たちの作戦が遂行されるための最後の材料が揃ったということだ。

空気が、張り詰める。眼前の味方を一刻も早く助けたいという信念と、死にたくないという生への執着。恐怖と勇気とがない交ぜになって、誰もが表情を硬くする。

(=゚ω゚)ノ《───Achtung!!》

張り詰めた空気の中で、イヨウ中佐の声が無線越しに響く。

(=゚ω゚)ノ《東街区に展開する、全ての部隊に伝達!これより我々は、友軍増援部隊の救援とベルリン市の奪還を目指して反転攻勢へと移る!

敵は強大であり、この作戦はきっと困難を極める、多くの犠牲者も出る!!そしてはっきり言って、成功するという確実な保証もない!》

中佐の声からは、再び震えもどもりも消えていた。決して大きな声ではないけれど、朗々と、はっきりとした口調で俺たちに語りかける。

(=゚ω゚)ノ《僕は、君たちに「死んでこい」と今から命じるクソ野郎だ!だが優秀な兵士であり、警官であり、人間である君たちは、クソ野郎な僕の命令に従う必要は微塵も無い!

名誉なんて必要ない、誇りなんてかなぐり捨てろ!そして何としても生き残り、僕に向かって中指を突き立てて眉間に風穴でも開けてやれ!!》

張り詰めた空気が熱される。語られる言葉に誰もが高揚し、武器を握る手に自然と力がこもる。

(=#゚ω゚)ノ《名誉の死も、英雄的な働きも、奇跡的な生存も、僕は君たちに求めない!!ただ君たちが、最後まで“人間”としての責務と生を全うすることだけを望む!!》

(=#゚ω゚)ノ《君たちの任務はただ一つ!!

化け物共に、目に物見せてやれ!!》

《《《Jawohl!!》》》




105: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 01:20:14.76 ID:pE2iAJdj0

(=#゚ω゚)ノ《────Angriff!!》

イヨウ中佐の号令が、無線を通じて全ての部隊に伝わる。

それを、合図として。

ξ#゚゚)ξ《Panzer vor!!》

(#'A`)「Los Los Los!!」

4000人の“人間”が、“化け物”に向かって攻撃を開始した。




106: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 01:51:05.82 ID:pE2iAJdj0


《アルジャジーラの取材に対して中東主要国の外交部は、深海棲艦がヨーロッパから流入してくる可能性について国の枠組みを超えた対策が必要だと共通の認識を表明しています》

《イタリア政府は先ほど、ドイツ領南方のレヒフェルト空軍基地と連絡がついたと発表。現在艦娘戦力を含めた増援部隊の派遣に向けて軍の編成を開始しているとのことです》

《ロシア連邦政府は、ヨーロッパ全域の失陥を防ぐためには熱核攻撃も辞すべきではないと談話を発表。常任理事国のアメリカ、イギリスは反対の意と併せて強い不快感を示していますが、中国政府はロシアの地政学的な事情を考慮すべきだと二国を牽制しました》

《フランス政府首脳は深海棲艦のパリ到達を防げなかった場合に備えて、政府機能の移転先を模索中です。また、国土全域が陥落した場合の亡命先も選定を開始したとの噂がTwitterに流れ、フランス国内は各地で暴動と混乱が相次いでいます》

《現在デンマークはほぼ全土が深海棲艦の襲撃を受け、通信が完全に途絶した状態になっています》

《イギリス国防省は、ドイツ・フランスの失陥による深海棲艦の総攻撃に備えて近隣海域を封鎖したと発表しました。イギリス海峡には現在クイーン・エリザベスを旗艦とした空母機動艦隊と艦娘のウォースパイトが展開し、厳戒態勢を敷いています》

《茂名官房長官は先ほど緊急記者会見を開き、ヨーロッパにおける在留邦人の保護とポルトガル政府からの要請を理由とした欧州特派部隊の編成に入ったと発表しました。

この部隊は赤城、大和ら艦娘を中核とした戦力になる予定ですが、韓国、中国、北朝鮮は帝国主義の復活であると日本のこの動きに反発を見せています》

《ホワイトハウスより第六艦隊とヨーロッパ各空軍基地、更に艦娘サラトガによるドイツ本土への共同攻撃作戦を発動したと公式発表がありました。既にイギリス・レイクンヒース空軍基地よりF-15E並びにF-15C/Dが発進、間もなく北部ノルデンを中心に第一次攻撃が行われる模様です》




114: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 16:38:22.59 ID:pE2iAJdj0









《空中管制機【Angel-Ring】より全機、状況を報告せよ》

《Dragon-01よりAngel-Ring、当編隊は全機オールグリーン。戦闘に問題なし》

《此方Boxer-01、全機問題なく飛行中。腹に子供を抱えてるんでね、しっかりエスコートを頼むぜ》

《Witch-01よりBoxer-01、あんたのそれは妊婦じゃなくて悪性腫瘍だろ?》

《おい、口を慎めマーニー》

《慎むのは二人共だ、私語をやめろ。

Falcon-01よりAngel-Ring、全機異常なし》

《よし、Angel-Ringより全機に伝達。我々はこれより、ドイツ北部沿岸奪還作戦の一環としてルール地方への爆撃を敢行する。

我々の目標は、ドイツ連邦軍の管理下にあった艦娘艤装製造工場の破壊だ》

《BoxerよりAngel-Ring、そんな真似をしたらドイツだけじゃなくフランスやイギリスも黙ってないんじゃないか?ドイツの艤装製造技術は図抜けてる、コマンダン=テストやウォースパイトにも必須の筈だが》

《南方のドイツ残存軍司令から、イタリアを経由して既に正式に依頼が為されている。

通信途絶から10時間が経過し、最早製造工場は間違いなく占拠されている状態のようだ。敵になんらかの形で利用される可能性も否定できない以上、破壊するのが得策という判断らしい》

《ついでに言うと合衆国政府の判断とも一致している、と?》

《あぁ、既にトソン大統領は攻撃命令に署名済みだ。ジェントルマン諸君、人間様を嘗め腐った化け物共に存分に爆弾の雨をプレゼントしてやれ》

《《《Yes sir!!》》》

.




115: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 16:40:02.43 ID:pE2iAJdj0

《大佐、第六艦隊より通信!サラトガ-05、サラトガ-07が艦載機隊を発艦、レイクンヒースの航空隊と連携してノルデン地方への攻撃を開始したとのことです!》

《サラトガ-06よりルール地方制空部隊が発艦、問題なく該当空域に侵入したとのことです。

深海棲艦艦載機と接敵、交戦中の模様》

《よし、これで深海棲艦の艦載機・護衛機はある程度抑え込める。全機、あと5分で作戦空域だ。心してかかれ》

《Dragon-01, Roger.

しかし深海棲艦の奴等、何が楽しくて陸なんかに上がってくるんだ?》

《Witch-01 Roger.

聞いた話だと、深海棲艦共は艦娘同様ヒト型は女を模した奴しか確認されていないらしい。セックスでもしに来たんじゃないのか?》

《Boxer-01, Roger.

はっ、海の中だが男日照りってか?なんなら俺のレミントンでヒーヒー言わせてやりたいぜ》

《Falcon-01, Roger.

………マーニー、ジェイムス、お前らがよく女に振られる理由が今よくわかったよ》

《おいFalcon-01、先にお前を撃ち落としてやろうか?》

《対地攻撃機で制空機にドッグファイト挑む気かバカ。あと四分だ、そろそろ見える頃か?》

《此方Dragon-01、目標地点を視認した────おい、Angel-Ring、本当に地点座標はここであってるのか?》

《………。そのはずだ》

《一体何だありゃ?黒い………あぁ、クソ、何て言えばいい?とりあえずろくでもない代物なのは確かだが》



《───要塞、か?》





116: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 16:41:43.63 ID:pE2iAJdj0


《地表、物体周辺に膨大な数の非ヒト型深海棲艦を確認。また、ヒト型も多数展開している模様です。

少なくとも深海棲艦の拠点であることは間違いありません》

《通信途絶から10時間しか経ってないはずだよな!?一体何が起きたんだ!?》

《とにかく今は我々の仕事をこなすだけだ。全機、攻撃態勢を────》

《………おい、何か上がってきてるぞ?》

《黒い……鳥………?》

《────レーダーに反応!所属不明の機影が接近!迎げk

《!? Angel-Ring、応答しろ!Angel-Ring!!》

《Negative!! Angel-Ring down!! I repeat, Angel-Ring down!!》

《Enemy attack coming!! All unit, Break!! Break!!》




117: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 16:47:58.99 ID:pE2iAJdj0

《クソッタレ、なんだこいつら!?》 《Ahhhhhhh!!?》
   《Doragon-3, one hit!!》
《Falcon-04、回り込め!援護しろ!》    《後ろに着かれた、振り切れない!》
  《Fox-2! FOX-2!》      《撃ってきやがった!!》
《Falcon-03 Lost!!》
  《Mayday Mayday Mayday》《何なんだよこいつら、速いぞ!!》
《八時方向から新手だ!!》《爆撃隊、退避しろ!!》
《Shit, Boxer-01 down!!》    《Falcon-01, Bogy behind you!! Break!! Break!!》
  《Help me…!!》




118: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 16:48:42.52 ID:pE2iAJdj0





《Jesus………!!》



.




119: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 16:57:53.04 ID:pE2iAJdj0








.




120: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 17:04:31.55 ID:pE2iAJdj0








.




121: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/13(土) 17:05:18.72 ID:pE2iAJdj0







「生き残る種とは、

最も強いものではない。

最も知的なものでもない。

それは、変化に最もよく

適応したものである」

「チャールズ・ダーウィンの有名な言葉だ」

「これは、我々人類の歴史そのものを表した言葉と言っても過言ではない。

我々は常に進化と進歩を続け、他の種族に対して圧倒的優勢を作り出すことによって栄華を極めてきた」

「だが、進化とは人類の特権的な存在ではない。

全ての生物は、常に進化を続けている。人間は単に、その速度が少しだけ速かったに過ぎない」

「そう、“我々だけの特権”ではないのだ。

いつから錯覚していた?敵は進化をすることがないと。

いつから勘違いしていた?この戦争は代理戦争であり、標的は狩られるだけの存在でしかないと」





( ФωФ)「深海棲艦は進化している、我々人間との“生存戦争”に勝利するために。

このことにいち早く気づき、同じように“進化”を始めることができた国家だけが、この戦争に勝利するのである」




125: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 02:09:16.09 ID:uN3uvxTa0












OM642?270?6気筒ディーゼルエンジンが咆哮し、車体は身震いするように揺れ続ける。降りしきる雨が、猛スピードで疾走する車体を濡らし続ける。

狸(Enok)なんて可憐な相性とは裏腹な、獰猛極まりない排気音をまき散らしながら四台のLAPV軽装甲車は瓦礫だらけのベルリンの街を駆けていく。

(;'A`)「……っ」

優雅なドライブ……なんて言うにはほど遠い乗り心地だ。
上層部に半ば押しつけられたものとはいえ、バカンス中に味わいたいものではない。

いや、そもそもバカンス中とかは関係なく。

『────ォオオオオオオオオ!!!!』

(;'A`)「右手に非ヒト型確認!回避行動!!」

「Jawohl!!」

おぞましい化け物を相手取った命がけのカーチェイスなんて、いつどんなときだって御免被る。




126: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 02:10:26.40 ID:uN3uvxTa0

ほんの100メートルほど先にこんもりと小山のように盛り上がった、黒い巨大な塊。立ち並ぶ家の隙間から赤い眼がぎょろりと此方を睨み、塊はおもむろに周りの建物を突き崩しながら身体を起こした。

角張った頭部にくっついている丸みを帯びた白い胴からは、用途不明のケーブルのようなものが伸びて尾まで繋がっている。見るからに怪物然とした巨躯とは不釣り合いな、ちょこんと張り付いた飾りのような脚がかえって奴の姿をより醜悪に仕立て上げる。

イ級と違って剥き出しの、僅かに端が上がった口はまるで俺たち人間を嘲笑っているかのようだ。

《駆逐ロ級後期型、eliteを視認!》

(#'A`)「そのまま走行を続けろ!射撃を開始する!!」

運転席に向かってそう叫びながら、銃座を回転させ照準を奴の鼻っ柱に向ける。

(#'A`)「Feuer!!」

引き金を引く。ラインメタルMG3が火を噴き、7.62mm?NATO弾が凄まじい勢いで銃口から吐き出された。

『オオオオオオンッ!!!』

毎秒19発という頻度で放たれる機銃弾の雨は、しかしながら生ける戦艦の皮膚を貫くには役者不足にも程がある。

表皮で弾ける火花は奴さんに痒みすら与えていないらしく、ロ級は無機質な眼で此方を見据えながら口を開いた。

主砲が、顔を覗かせる。

('A`#)「右に曲がれ!!」

《了解!!》

『ウオオオオンッ!!!』

俺の叫び声、エノクのタイヤが雨に濡れた路上を滑る音、ロ級の吠え声、そして主砲の発射音が順に響く。間一髪で右手の路地に飛び込んだ俺たちのほんの5メートル後ろで、砲弾が炸裂してコンクリート片が舞い上がった。




127: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 02:14:43.11 ID:uN3uvxTa0

《うっひぃ、スリル満点!!》

そのまま路地を疾走する俺たちに向かって、2発、3発とロ級の追撃の砲火が降り注ぐ。そこかしこで炸裂して破片をまき散らす砲弾に、運転席からは恐怖と(理解しがたいことに)歓喜が入り交じった声が聞こえてきた。

《いいねぇいいねぇ滾ってくるねぇ!!人類を滅ぼそうとしてくる化け物達と、祖国の存亡を巡ったカーチェイス!最ッ高だね、まるでハリウッドの超大作映画だ!!あっひゃひゃひゃ!!!》

('A`;)「おい運転手!その神経の図太さは頼もしい限りだが興奮のあまりハンドル操作ミスなんて勘弁してくれよ!!よりによって指揮車両が作戦開始早々にアボンなんて洒落にならんぞ!!」

《おぅおぅ、だーれに物言ってんだい少尉殿!!このあたしがそんなヘマするわけないだろっての!!》

あからさまに箍が外れた口調での返答と共に、運転席から此方に向かって中指を立てた右手が突き出された。

ふざっけんなこの状況下で片手運転なんて冗談じゃねえぞ!!

(*゚∀゚)《ドイツ陸軍一の美少女走り屋、ツー=アハッツ様のハンドル捌きィ!!深海棲艦ごときに捉えられるかっての!!あひゃひゃひゃひゃぁ!!!》

(;'A`)「美少女まるで関係ない───うぉおおおっ!!?」

ツーがひときわ激しくハンドルを切り、雨に濡れた路上でエノクがコマのように一回転して進路を真逆に転換する。

予想進路に放たれていた何十発目かの砲弾がアスファルトに突き刺さり、爆発で車体が少し浮き上がった。




128: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 02:16:22.30 ID:uN3uvxTa0

(*゚∀゚)《あっひゃひゃーーい!!》

《オオオオオォッ!!!》

そのままツーは再びアクセルを踏み込み、エノクは先ほどまでと逆方向に疾走する。此方の動きを予想していなかったらしいロ級は苛立たしげに叫んだ後、もう一度此方の予想進路へと照準を合わせ始めた。

完全に、隙だらけの動きだ。

('A`#)「停車!!総員展開!!」

(*゚∀゚)《あいあいさー!!!》

「「「Jawohl!!」」」

軽いドリフト共に急停車したエノクの車内から、同乗していた四人が転げ落ちるようにして路上に飛び出す。

彼らは素早く起き上がると、ロ級eliteに背負っていた筒を向けた。

('A`#)「Feuer!!」

『オア゛ッ!?』

4発のロケット弾がロ級めがけて飛翔し、間抜けに開らかれた大口にその内3発が飛び込む。

『ア゛

上がりかけた断末魔を掻き消し、閃光と轟音が迸る。

ロ級の巨躯が、内側から爆炎に貫かれて砕け散った。

「ロ級elite、轟沈を確認!!」

「よっしゃぁ!!ざまぁみろ深海魚野郎!!」

('A`)「喜んでる暇ないぞ、死にたくなかったら乗り込め!!」

今にもハイタッチでも始めそうな兵士達を、水を差す形にはなるがとっととエレクの中に引き戻す。

無論、俺も高揚を覚えていないわけではない。注意を引きつけられれば万々歳の攻撃だっただけに、内蔵弾薬への誘爆に伴う轟沈は“最高の計算外”だ。

だが、当然のことながらこの大戦果は、

《高層観測班より前線指揮車、其方に向かってホ級通常種三体と駆逐イ級通常種一体、elite二体、それからへ級一体が進撃中!!》

('A`;)「情報提供感謝、移動を急ぐ!」

良くも悪くも、奴等の目を引くことになる。




129: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 02:20:30.54 ID:uN3uvxTa0

《総員搭乗完了!》

(;'A`)「よしツー、発進を………おっふ!?」

(*゚∀゚)《あっひょ!!》

左手20メートルほどのところに、砲弾が落下した。つーか運転席うるせぇ。何なの今の気が抜ける奇声。

『ウォオオオオオオンッ!!!』

('A`;)「お早いデリバリーだなクソがっ!!」

姿こそ立ち並ぶまだ無事な建物や瓦礫の山に隠れて見えないが、割と近くから例の胸くそ悪い咆哮が聞こえてくる。
単に俺たち人間に対する威嚇なのか或いは仲間がやられた怒りと悲しみなのか、まぁとりあえず俺たちにとってあまり喜ばしくないものが含まれていそうな響きだ。

爆発の小ささから考えて今の砲撃はイ級通常種だろうか。とにかく一秒でも早く移動した方がいい。

(#'A`)「予定通り作戦を続行する!このまま西進しろ!」

(*;゚∀゚)《あいよ、おおおおっとおおお!!?》

('A`;)「ウボァッ」

発進した直後に頭上から迫る車大の瓦礫塊。崩れてきた4階建ての小ビルから逃れるためにハンドルが左に切られ、俺の身体は不快なGに圧迫され潰れた蛙のような声を出す羽目になった。

『アアアアアアアアッ!!!』

(#;'A`)「っ、いい加減見飽きたぜてめえのツラはよぉ!!」

ビルの残骸を押しつぶしながら此方に迫る、軽巡ホ級。こみ上げてきた吐き気を無理やり嚥下し、頭部と砲塔に向かって機銃を掃射する。

『ヲォオオオオオオッ!!!』

ダメージはどうせ全くないだろうが、それでも砲塔への攻撃はあまり心地の良いものじゃなかったようだ。

ホ級は鬱陶しげに機銃掃射を左手で防ぎつつ、右手を握り込み俺たちに向かって振り下ろす。

(#'A`)「行け!!」

(*゚∀゚)《はいなぁ!!》

エンジンが唸り、車体が加速する。

迫る拳を潜り抜け、狸は再び駆けだした。




130: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 02:23:32.73 ID:uN3uvxTa0

『オオォ────アアアァッ!!?』

走り出した此方に向かって、背中の砲を向けるホ級。だがその真上から、弧を描いて飛んできた砲弾が突き刺さる。

『ア゛ア゛ッ!?ア゛ア゛ア゛ッ!?』

砲撃は1発では終わらない。2発、3発、4発と途切れることなくホ級を襲う。砲塔、頭部、腕、また砲塔といった具合に、身体のあちこちが爆炎に焼かれる。

『オア゛ッ』

砲撃の飛来箇所を確かめようとでもしたのか、不用意に振り向いたホ級の左肩に120mm迫撃砲弾が突き刺さり、半ばまで埋まった後に炸裂する。

『グア゛ッ……』

腕が千切れ飛び、ぶよぶよとした肉片がそこら中に散乱した。ホ級は道路に投げ出されるようにして倒れ伏し、そのままぐったりと動かなくなった。

《迫撃砲陣地より前線指揮車、支援砲火を敢行した。効果の程を求む》

('A`)「前線指揮車より砲兵隊、敵艦は機能を停止したと思われる。支援を感謝する、引き続き前衛を援護されたし。オーバー」

《了解した、アウト》

('A`)「……さて」

最早二度と此方に砲を向けてくることはなくなったホ級の屍から眼を離し、南側の様子を伺う。

腹の底に響くような砲撃の嵐は、激しさを増し続けている。おそらく、増援部隊の展開区画は地獄の様相だろう。

一方イヨウ中佐達が展開する東側に対しては、全くといっていいほど攻撃は向けられていない。曲がりなりにも機甲戦力と火砲を保有している部隊なワケだが、深海棲艦はどうやら艦娘つぶしに全身全霊を傾ける腹づもりらしい。

それだけ、深海棲艦にとって艦娘とは脅威であり逆に人間はとるに足らない存在というわけだ。

('A`)(まだまだこっちを振り向いてくれないか、つれないね。

だがまぁ、それなら振り向いてくれるまでアプローチをするだけだ)

俺は、イヨウ中佐に通信を繋ぐ。




131: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 02:33:57.68 ID:uN3uvxTa0




.
('A`)「前線指揮車よりCP、他の軽装甲車隊による陽動の進捗を伝えられたし」

(=゚ω゚)ノ《CPより前線指揮車、現在全車両が未だ健在。各区画にて非ヒト型深海棲艦の挑発誘導に成功しているよぅ》

イヨウ中佐の淡々とした戦況報告。それは俺たちの作戦が現状順調であるという何よりの証になる。

(=゚ω゚)ノ《我々東部軍への抑えとして展開していた非ヒト型は、続々と我々の対峙地点から引きはがされている状態だよぅ。

それと、君たちが撃破したものも含めて現時点で5隻の深海棲艦を撃沈、或いは戦闘能力喪失に追いやったよぅ》

('A`)「なるほど、現時点では中佐の読み通りに状況は推移していると」

(=゚ω゚)ノ《即ち、君の予想通りでもあるってことだよぅ》

………ミルナ中尉といいイヨウ中佐といい、過大評価はマンドクセェのでやめてほしいものだ。

('A`)「前線指揮車よりCP、此方は引き続き陽動にかかる。戦車隊の」

(*;゚∀゚)《────っ!!!》

('A`;)「機動攻勢準備を……うぅおおっ!?」

唐突に、ツーがハンドルを切る。車体が激しく右に流れ、振り落とされそうになった俺は慌てて銃座にしがみついた。

疾走する車体の真横を、機銃掃射が駆け抜けていく。

(;'A`)「っ!」

ハッとして空を見上げると、まさに俺たちの直上を風切り音を残して飛び去っていく影が三つ。

(;'A`)「避けろ!!」

(*;゚∀゚)《仰せのままにぃ!!》

三機の【Helm】は、猛り狂ったスズメバチのように下部の機銃を此方に向けながら猛然と降下してきた。

(*#゚∀゚)《せいっ!!》

火線が走った瞬間、ツーは急ブレーキを踏みながらエレクの車体を横に向ける。そのまま走っていれば運転席を貫くはずだった機銃掃射は、僅かに車体に届かない。

(#'A`)「逃がすかよ!!」

そのまま飛び去ろうとした編隊の背後に照準を重ね、MG3 ラインメタルの引き金を引く。

編隊最後尾の機体が火だるまになり、そのまま空中で四散した。




132: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 02:43:45.98 ID:uN3uvxTa0

(=;゚ω゚)ノ《CPより前線指揮車、どうしたよぅ!?》

(#'A`)「前線指揮車よりCP、深海棲艦艦載機部隊の襲撃を受けている!!」

ツーが再びエレクを発進させる中、俺はなおも空に向かって弾幕を放つ。攻撃態勢に入っていた残りの2機は一度散開して射線を交わしつつも、方向を変えて再度此方に向かってくる。

いや、奴等だけじゃない。他に右手と正面からもレシプロエンジンの音が近づいてくる。少なく見積もっても20機ほどが、俺たちに狙いを定めているようだ。

(;'A`)「前線指揮車よりCP!」

奴等が迫ってくる音を聞きながら、俺は……

(;'∀`)「陽動作戦、着実に成功中!!」

俺は、口元が綻ぶのを抑えきれなかった。

(*゚∀゚)《笑顔キモっ》

(=゚ω゚)ノ《笑顔キモっ》

('A`)「ここでその反応はおかしいだろ」

あと中佐はなんで見えてんだよ。




133: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 02:59:28.01 ID:uN3uvxTa0

(;'A`)「っと、ふさげてる場合じゃねえ!!九時方向から敵機、回避運動!!」

(*#゚∀゚)《Jawohl!!》

不快な摩擦音を残してタイヤが濡れた路上をスリップし、殺到してきたHelmの銃火を躱す。横っ面に反撃の対空射撃を食らわせると、蜂の巣にされた一機が錐揉みしながら墜落し道脇の一軒家に突っ込んだ。

(=゚ω゚)ノ《CPより前線指揮車、陽動作戦中のエレク各車両から同様の報告多数!深海棲艦による航空攻撃が陽動部隊に行われているよぅ!!》

(#'A`)「前線指揮車よりCP、了解!」

イヨウ中佐からの報告を聞いて、群がるHelmを弾幕で振り払いつつ俺の胸は更に高鳴った。

未だに、主力艦隊は増援のみに火力を割いており此方への本格的な攻撃はない。

しかしながら、序盤の空襲失敗で大損害を受けているはずの航空部隊を出さなければ無視が続けられない程度には、奴等は俺たちを意識し始めている。

(#'A`)「前線指揮車よりレオパルト1並びにプーマ全車2通達!!」

ならばそろそろ、強引に此方を振り向かせるときだ。






(#'A`)「作戦をフェイズ2に移行、全車両深海棲艦主力艦隊への総攻撃を開始しろ!!」




138: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 17:36:02.52 ID:uN3uvxTa0








“彼女”は、人間達に戦艦ル級という呼び名が付けられている種族の一人であった。

無論、そのことを彼女は知らない。そもそも彼女たちは個体はおろか種族を識別するような名前を持たず、また特に持つ必要も無かった。
彼女たちに“個人”が存在しないわけではない。だが彼女たちは、『全の意志』に全てを委ねることによってこの海の世に存在する全ての同胞達と解り合うことができた。そのため、“個”と“全”を区別する為のあらゆる事象を必要としなかったのである。

一応、『個の意志』を通して語ることで、特定の個体同士“のみ”での精神共有も可能ではあったが、そのような行為は彼女からすれば極めて非効率だった。

彼女が人間を殺すにあたっても、彼女自身には何の動機もない。
ただ、『全なる意志』が陸に上がる人間の廃滅を望んでいるためその意志に従事しているに過ぎない。そして、彼女自身はそうでなくても『全なる意志』は人間への強い憎悪を抱いていたため、自然彼女も人間を憎悪し、その抹殺を徹底する。

『全なる意志』がそれを望むのなら、彼女もまたそれを望み実行することが自然かつ効率的だからだ。




139: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 17:38:13.50 ID:uN3uvxTa0


一方で、『全の意志』から離れた“彼女個人”の見解を述べるなら、彼女は人間に対して何の感情も抱いてはいない。

“彼女”にとって、そして彼女以外の全ての同胞にとって、『全の意志』が人間と呼び抹殺対象に選んだ種族は脆弱に過ぎた。下級個体以外にとって人間の武器は彼女たちの脅威とはなり得ず、今は同様に抹殺対象にカウントされている【艦娘】が出現するまで彼女たちは人類に対して圧倒的に優勢だった。

彼女たちが艦娘ではなく人類の兵器と戦うときの心境は、言うなれば虫けらを見たときの人間とよく似ている。

害にはならないが、見ていても不快だ。だから、叩きつぶす。それだけの話。







『…………』

────だから、人間が操る鉄の砲車が瓦礫を蹴散らして眼前に現れたときも。

ξ#゚゚)ξ「Feuer!!」

、、、、、、
その時点では。

彼女は単に、“全の意志”に基づく不快感と憎悪を露わにしただけだった。




140: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 17:39:12.99 ID:uN3uvxTa0

現状報告2

ベルリンにおける彼我の戦力展開状況


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オレンジ太線:深海棲艦による増援部隊包囲陣

青線:在ベルリンドイツ残存戦力による防衛線

青矢印:ドクオ、ツンらの大まかな進撃路。北側がドクオ、南側がツン

赤矢印:深海棲艦側の攻撃方向




141: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 17:43:17.40 ID:uN3uvxTa0





放たれた砲弾は、寸分違わぬ狙いでその“人影”に直撃する。105mm滑空砲によるAPFSDS(対装甲貫通弾)なんて普通の生身の人間が食らえば生々しい断裂音と共に飛散してしまう代物だが、響いてきたのは分厚い金属の板にぶち当たったような、生々しさとはほど遠い高い音。

そいつの周囲に張り巡らされた、戦艦丸ごと1隻とほぼ同級の耐久力を持つと言われる不可視の障壁に砲弾がはじき飛ばされる。

ξ゚゚)ξ「………流石に固いわね、カルシウム取り過ぎじゃない?」

ゆっくりと此方を振り向く戦艦ル級に向けて、私は苦笑いと共にそう呟いて見せた。

長く滑らかだが、化学繊維のような不自然な光沢を放つ黒髪。顔立ちも人間基準で見て普通に“美人”といって差し支えないけれど、ピクリとも動きやしない口元やヒト型のこいつらに共通した蝋のように白い肌のせいで作り物のマネキンにしか見えない。
此方をじっと見つめる青い眼も、まるでガラス玉のように無機質で不気味だ。

ただしそのあまり人間性が感じられない雰囲気故に、身体にぴったりとフィットして線を浮き立たせた黒い服はかえって妙な艶めかしさを感じさせる。
 _,
ξ゚゚)ξ

………おい待て何だあの胸の膨らみ。あれ私より明らかにあるんだけど。どれだけ低く見積もってもDはかたいぞ。
おい化け物がしていいパイオツじゃないぞふざけるなその肉塊私に寄越せ。

ξ;;)ξ「フゥグッ!!!」

《隊長!?》

『!?』

25歳にしてAカップブラな自身の境遇に、思わず涙が吹き出る。

なんとなくだけど、ル級が少しだけ戸惑った気がした。




142: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 17:45:13.32 ID:uN3uvxTa0

ξ#;;)ξ「うぉおおお世界中の巨乳死ねぇえええええ!!!第二射ァあああ!!!」

『ッ!!』

八つ当たりの絶叫。レオパルト1の主砲が火を噴く。弾種は引き続きAPFSDS。

弾丸は再び障壁に弾かれ、まるで上から踏みつぶしたアルミ缶のようにぺしゃんこに潰れて地面に落下する。

大きなダメージを負った様子はないけれど、その攻撃で我に返ったように此方をにらみつけながら両腕の艤装を向けてくる。

ξ;゚゚)ξ「全速後退!!」

《Jawohl!!》

水平射撃された砲弾が、斜め後ろに下がって射線を空けた私たちの眼前をすさまじい勢いで飛び過ぎる。

2、3キロほど彼方で、巨大な火柱が立ち上った。




143: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 17:56:08.81 ID:uN3uvxTa0

ξ#゚゚)ξ「Feuer!!」

まさに「戦艦」の名にふさわしい圧倒的な攻撃力だが、ビビれば死ぬのは私たちだ。即座に砲塔を旋回させ、三発目を叩き込む。

ル級はこれを直立不動で平然と受けながら、再び艤装の狙いを定めてきた。

ξ;゚゚)ξ「っ!!」

咄嗟に、機銃の引き金を引いて奴の顔面付近に弾幕を集中。戦車砲で貫けないものに7.62mm弾なんて撃ち込んだところで、当然ダメージなんて蚊に刺されたほども与えられないだろう。

『……!?』

だけど、障壁にぶち当たった弾幕は無数の火花を散らす。顔の周りに集中した射撃と激しくまき散らされる弾着の火花に視界を奪われたル級が、機銃掃射を避けるために艤装で射線を塞ぎにかかった。

ξ#゚゚)ξ「前進!併せて砲撃!!」

《了解っと!

Feuer!!》

操縦手がアクセルを踏み込み、エンジンを唸らせながら私たちはル級に肉薄。20メートルもない至近距離から砲弾を叩き込む。

『────ッ!!』

ξ゚゚)ξ凸「はっ、ようやくちょっといい顔したわね!」

ダメージ自体は大したことなくても、流石に超近距離から叩き込まれた戦車砲弾による衝撃は完全に殺しきれなかったらしい。

後ろに少しだけ仰け反ったル級は、態勢を立て直すと機銃座の私を睨んでくる。私は中指を突き立ててそれに応じた。

とはいえ、今姿勢を崩したのはあくまで着弾の衝撃によるもの。断じて効果的な損害を与えたわけではないだろうし、実際奴の動きには微塵もダメージは感じられない。

だけど、砲撃によるダメージは“極めて小さい”ものではあっても“皆無”じゃない。

APFSDSの貫通可能な装甲厚は、700mm。単純なスペック上の貫通能力だけで言えば、かの名高きバトルシップ・ヤマトの砲盾すら撃ち抜ける。

そう、実際にやろうとすればどれだけ気の遠くなるような時間がかかるとしても、私たちが“アンタ達を沈める力は持っている”。何発か攻撃受けて、あんたもその辺りは理解したでしょ?

流石に、カスダメとはいえ損害与えてくる相手がすぐ傍にいるのに悠長に援軍なんて相手にしてる場合じゃないわよね?




144: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 17:58:41.68 ID:uN3uvxTa0



.

────さぁ。

『……………!!!』

《ル級、再び此方に照準!!》

ξ#゚゚)ξ「発砲しつつ回避運動!

Feuer!!」

“艦娘”ばっかり気にかけてないで、たまには“人間”の方も見なさいな!!




145: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/14(日) 18:16:59.83 ID:uN3uvxTa0







(`∠´)「…………この報告は、間違いのないものか?」

「……………。あくまで、脅しの可能性はあります、100%とは言えません。

しかしながら、実際に政府談話も発表されている以上“可能性が極めて高い”と見るべき事象なのは確かです」

(`∠´)「…………」

「あの国が過激とはいえ、いくら何でもこんな馬鹿げた真似をするなんてあり得るか……!?

流石に信じられん、デマに決まっている!国際社会からも袋だたきに遭うぞ!絶対に、あり得ない!!」

(`∠´)「………あり得ないと言うことは、あり得ない」

「大佐……?」

(`∠´)「戦時において、“常識”、“秩序”、“良心”などという言葉は全て無意味だ。

そもそも考えて見たまえ、君たちは六年前のあの日まで、“海の底から現れた正体不明の化け物”と戦うことを一度でも想定したか?それこそ、六年前の君たちはそんなことを言われれば鼻で笑って肩を竦めたはずだ。

“常識的に考えてあり得ない”と」

「………」

(`∠´)「現在通信が繋がっている、国内外の全ての軍組織・政府組織に連絡を取れ。アメリカへのリーク許可は事後承諾で構わん、事は一刻を争う」

「はっ!内容は如何します!?」

(`∠´)「当然、一言一句違えずアメリカからの情報をそのまま、だ」






「『ロシア政府が、非公式にアメリカ合衆国へ以下の内容を通達した。

36時間以内に欧州における深海棲艦の制圧が為されない場合、ロシア軍は国家安全保障的観点からルール地方への戦略核兵器の使用を独断で実行する』とな」




148: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/15(月) 02:37:40.22 ID:LXRvfH1A0






2011年10月、ソロモンアイランズ領ガダルカナル島近海で、オーストラリア海軍によって深海棲艦の【ヒト型】が初めて確認される。太平洋上で奴等と人類の本格的な「戦争」が始まってから、おおよそ二ヶ月が経過していた。

記録に残っている限りでは、彼らが遭遇したのは今日重巡リ級と呼ばれる存在2隻。何故文頭のような注釈が着くのかというと、報告到達から17分後に遭遇部隊は全艦船が通信途絶となり、交戦した敵艦隊の全容が判明しなかったためだ。

この重巡リ級の出現を皮切りに世界中の海洋で【ヒト型】が確認されるようになり、私たち人類は日本、アメリカ、イギリス、ロシアの4ヶ国を除いて一時的に世界規模で制海権を喪失した。全保有艦艇の95%が撃沈されたオーストラリア、空母遼寧を失った中国を筆頭に、文字通り海軍が「全滅」した国も決して少なくない。

《回避成功!車体運動に未だ支障なし!!》

ξ;゚゚)ξ「とにかく砲撃は当て続けて! Feuer!!」

《Jawohl!! Feuer!!》

何故、これほどヒト型が人類を一方的に駆逐できたのか?

理由は当然幾つもある。単なる“潜水”だけなら戦艦や空母でも可能で、海とあればどこにでも出現することができる神出鬼没性。

イージス艦の薄い装甲など容易く粉砕する火力。

時として私たちの裏をかくこともある高い知力。

人間程度しかない大きさ故と、未だに正体が解析できていない特殊な電磁波の影響が相まってミサイルによるロックオンが不可能という技術的な事情。

主立ったものを数え上げていくだけでもこれだけのものが上げられる。

『ッ、ッッ!!』

《よし、直撃弾!!射線がぶれてます、ル級砲撃動作解除!!》

ξ#゚゚)ξ「続けて撃て!! Feuer!!」

だけど、これらを備えた上でヒト型の最も厄介な点を述べるとすれば。

『…………』

《………ル級未だ健在》

ξ;゚゚)ξ「……ほんっと、いやになるくらいタフねあんたたちって」

間違いなくそれは、戦艦と同等の【耐久力】だ。





149: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/15(月) 02:40:36.30 ID:LXRvfH1A0

非ヒト型が脅威じゃないとは言わないけれど、あいつらの場合【軽巡洋艦並み】、【駆逐艦並み】なのはあくまで火力と表皮硬度の話だ。第二次大戦当時の軽巡洋艦の装甲なんて、はっきりいって近現代からすれば陸上兵器にとっても紙のように薄く脆い。加えて、頭部或いはそれに準ずる機関を破壊すると絶命するという点は人間と全く変わらない。

そのため、状況によっては戦闘車両どころか歩兵の携行火器でも容易く撃破できてしまう。eliteやflagshipになれば流石に歩兵で太刀打ちするのは厳しくなってくるが、それでも第3世代戦車が2、3両もいれば用兵次第では完封できる。

ξ;゚゚)ξ「装填手、残弾は!?」

《まだ全然余裕ですけど、流石にこのまま破壊できるほどの弾数かは判断つかないです!》

ξ;゚゚)ξ「大丈夫、私たちの目的は果たせてるわ!キツいけどもうちょい頑張って!!」

《了解っす!これが終わったらご褒美に抱いtξ゚゚)ξ「お前を砲弾として撃ち出してやろうか?」

ただし、【ヒト型】の場合大きく事情が変わる。彼女たちは、周囲に張り巡らされた防護障壁それ自体が“戦艦の船体”の役割を果たしている。

『……!!!』

《くぅっ、涼しい顔で跳ね返しやがって!!》

ξ;゚゚)ξ「とはいえ気は引けてる!

次は奴の左から回り込んで!とにかく照準を合わせさせないよう小刻みに動け!!」

《Jawohl!!》

要は、今私たちがやっていることは「ミズーリ級の船体に、何の計画性もなくただひたすら戦車砲を撃ち込んでいる」のと変わらない。

《……今ので丁度10発目です》

ξ;゚゚)ξ「今のところ全弾命中ね。流石世界に誇るドイツ戦車道だわ」

『………』

こっちを睨み付けるル級の様子からは、私たちへのいらだちは垣間見えてもダメージなんてこれっぽっちも感じられない。流石に少しうんざりする。

《あちらさんからすりゃようやくちょっと腕の辺りに痒みが走ったくらいですかね》

ξ゚゚)ξ「デコピンくらいは効いてると思いたいわね」

理論上は、装甲を貫通している以上撃沈が可能だ。少なくともレオパルト1の搭載可能弾数60発では必要量の何千分の一にも満たないだろうけれど。

私はル級の動きを注視しつつ、無線機を手に取る。




150: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/15(月) 02:42:45.61 ID:LXRvfH1A0

ξ゚゚)ξ「レオパルト一号車より各車、応答せよ。損害、それから誘因状況を報告しなさい」

《此方二号車、タ級eliteと交戦中!敵火砲苛烈なれど、未だ誘引は継続できています!》

《六号車より一号車、ル級と交戦中。奴さんだいぶ怒ってますが、もうしばらく便所のハエの如く顔周りを飛び回ってやる所存です》

《七号車、ル級flagshipの足止めに成功中!お姉様、この戦果のご褒美に私たちwξ゚゚)ξ「あ?」いえなんでもないです》

喜ばしくも驚くべきことに、全車両健在。ばかばかしい軽口を挟んで来る奴もいたけれど、それだけ彼女たちがこの一撃食らえば跡形もなく吹き飛ばされる“命がけのちょっかい”をリラックスして遂行している証左だ。

……この娘らがイベントに引っ張り出された練度不足の新兵っておかしくない?ドイツ軍の戦車道って変態と化け物育成するためにやられてんの?

今や、南街区への砲撃はほとんど止まっている。白兵戦力として投入されているであろう非ヒト型との戦闘音はそこかしこで続いているが、私はそれらの音が少しずつ近づいていることに気づいた。

ξ゚゚)ξ「────全速後退!!」

ぴくりとル級の腕が反応したのを見て取り、指示を出す。力強くアスファルトを踏みしめながらレオパルト1が下がり、目の前を鉄の塊が突風を残して通過。

右手の古びたビルに砲弾が突き刺さり、一瞬で瓦礫の山になる。

よし、敵の動きもよく見えてる。

まだ、やれる。

ξ#゚゚)ξ「Panzer vor!!」

奴等に一泡吹かせてやるまで、あと少しだ。




151: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/15(月) 02:46:08.01 ID:LXRvfH1A0


レオパルト1のエンジンが唸り、車体が雨を切り裂いてル級へと突っ込んでいく。

『─────!!!?』

それまである程度の距離をとって回避運動を繰り返しながら攻撃していた私たちの、予想外の動きにル級の眼が見開かれた。

慌てて艤装を構えるけど、その動作は酷く緩慢で私たちからすればスローモーションと変わらない。

ξ#゚゚)ξ「Feuer!!」

『!! ………ッ!?』

外す方が難しい肉薄射撃。砲弾は今まで通りル級の全身を覆う“不可視の戦艦”に激突して拉げたが。その後奴からの応射はない。

、、、 、、、、
距離が、近すぎる。

『〜〜〜!!』

私たちと奴との距離は、今や3メートルもない。幾ら戦艦並みの耐久力があっても、“戦艦の砲撃並みの爆発”が至近距離で起きればただではすまなくなる。

こいつの圧倒的な火力は、この場にあっては寧ろ足枷だ。

ξ゚゚)ξ「どうも、ごめんあそばせ」

『…………!』

勿論、ここまで近づいたところで私たちにできることもない。私たちでも接射は流石にダメージを避け得ないし、向こうの自爆と違ってダメージの比率が明らかに割に合わない。体当たりにしても、あの障壁強度を考えれば此方が壊れる確率の方が高い。

だけど、挨拶とプレゼントぐらいはくれてやれる。




152: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/15(月) 02:50:35.48 ID:LXRvfH1A0

ξ゚゚)ξ「これ、“お近づきの印”に持って行きなさい!」

飛び下がって距離をとろうとしたル級の足下に、フラッシュバンを投げつけながら私自身は機銃座の中に伏せた。

『!!!!?!?!!!?』

炸裂する閃光、耳をつんざく破裂音。さっきの機銃掃射による目つぶしと同じで、砲弾は防げても強い光は防げない。ル級が声にならない悲鳴を上げて、眼を押さえてのたうち回る。

ξ#゚゚)ξ「Feuer Feuer Feuer!!」

即座に機銃の引き金を引きつつ、叫ぶ。レオパルト1が全速力で下がり距離をとりつつ、叫んだ数だけル級に向けて砲弾を放った。

一発目。ル級の身体が防壁越しに伝わる着弾の衝撃で仰け反る。

二発目。踏ん張りきれず、ル級は姿勢を崩して濡れた路面に足を滑らせる。

三発目。とうとう堪えきれず、ル級はばしゃりと水飛沫を立てて仰向けに地面に転がった。

ξ゚゚)ξ「私たち、教科書に載るんじゃない?“世界で初めてル級を転ばせた戦車乗りたち”って」

《そいつぁ光栄ですね》

少なくとも、将来自分の子供に聞かせる寝物語としてはなかなかのネタだ。

そこまで、世界が滅びずにあってくれればの話だけど。




153: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/15(月) 03:11:21.24 ID:LXRvfH1A0


『─────────っっっっっ!!!!!』

《おぉ、激おこ》

ξ゚゚)ξ「やべーわねあれ。完全に私らのこと縊り殺したい気持ちでいっぱいの目つきだわ」

転倒させたとは言っても、踏ん張りが利かない状態のところを突っ転ばせただけで何のダメージにもなりはしない。フラッシュバンの衝撃から立ち上がったル級は、すぐに起き上がって此方を見据える。

きっと彼女は、最早主力部隊への砲撃なんて眼中にない。海のように蒼い眼は怒りに燃えていて、両手の艤装はワナワナと小刻みに震えている。唇は心底悔しそうに噛みしめられ、もしや怒りのあまり泣き出す寸前の子供みたいな表情だ。

あのリ級以外にも、これだけ感情を露わにする深海棲艦がいるのかと少し意外に思う。

ξ゚゚)ξ(ま、気持ちは解るるけどね)

私たちが眼前に立ち塞がった当初の、そして戦闘中のル級の表情を思い出す。

こいつ単体の思想なのか深海棲艦全てがそうなのかは知らないけれど、こいつら私たち人間をとるに足らない存在として見下していた。だけど、その“取るに足らない存在”に作戦を邪魔され、やかましく騒ぎ立てられ、挙げ句恥をかかされた。

きっと、腸が煮えくりかえってこめかみの辺りが熱くなって、とにかく私たちに無惨な死を与えたくて仕方ないはずだ。

ξ゚゚)ξ(でもね、一つ教えて上げるわ。

こう手口ってね、あたしら人間の常套手段なのよ)

今のあんたの脳は、私たちをむごたらしく殺すことしか考えてない。

今のあんたの眼は、私たちしか見据えていない。

今のあんたの殺意は、私たちにしか向けられていない。

だから、あんたは。







「───プリンツ、僕が突っ込むから援護して!!」

「うん、任せて!………Feuer!!」

『………!!?』

一番の天敵が、すぐ傍まで来ている事に気づけない。




156: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/16(火) 00:16:10.47 ID:9hQehj8k0

私たちとル級が交戦する区画に飛び込んできた、二つの人影。後続している金髪の少女が、背負っていた艤装を駆動させ4門の砲を一時にル級めがけて放つ。姿勢が安定しきらないうちに放ったこともあってか、命中は一発にとどまる。

だが、一発でも戦車の滑空砲とは威力が段違いだ。“軍艦”による一撃を背後から浴び、ル級の姿勢が再び崩れた。

「食らえっ!!」

『ウッ……』

再び地面に転びかけながら、右手の艤装を杖代わりにしてなんとか堪えるル級。その横を全速力で駆け抜けながら、先行した銀髪の少n……少女が右手の連装砲を構えて追撃を加える。

『グゥッ……』

先ほどの金髪の子による一撃よりも、爆発は遙かに小さい。それでもダメージはあったらしく、ル級の表情が怒り以外の感情────苦痛によって歪んだ。

『ア゛ア゛ッ!!!』

「っと!」

崩れた体勢で主砲を放つことはかなわず、やむなく機銃掃射での反撃。銀髪の少女は横っ飛びで射線を躱し、そのまま路上で一回転。素早く身体を起こして、ル級の前方へと回り込む。

『…! ……ッ!!』

一瞬で、それも艦娘に挟撃の形を作られたル級が、初めて本気で動揺していた。

「そっちの戦車、在ベルリンドイツ軍の!?」

ξ゚゚)ξ「ええ、私はフランス人だけどね!」

「そうですか、間に合って良かった!!」

ボーイッシュな服装の銀髪の少女は、そう言って微笑みつつベレー帽を被り直す。

ちらりと、帽子に書かれた「Z1」の文字が見えた。

「ドイツ連邦海軍所属の艦娘、駆逐艦【Z1?Leberecht?Maa?】です!!

レヒフェルト空軍基地より、第1波増援軍として派遣されました!!以後、貴軍との連携戦闘に移ります!!」

ξ゚゚)ξ「………っ!援軍感謝するわ、支援は任せて!!」

思わずこみ上げてきた熱い何かをなんとか堪えて、私はレーベレヒトからの言葉にそう答える。

作戦の直前、ドクが言っていた意味が少しだけ解った。

微笑みと共にかけられた言葉は、神の啓示よりもよっぽど優しくて。

『Feuer?!!』

圧倒的な力を持つ化け物に立ち向かう姿は、神様よりよっぽど頼もしい。




157: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/16(火) 00:18:54.50 ID:9hQehj8k0

  _
(#゚∀゚)「Los, Los !!」

(#゚д゚ )「Allemann Feuerschutz !!」

レーベレヒトともう一人──私の記憶が正しければPrinz Eugen──に続いて小銃や対戦車砲を構えた。ドイツ兵の一団が区画に雪崩れ込んできた。さっきのレーベの言葉通りなら、彼らはさっきまで包囲下にあった増援部隊の一部だろう。

何人かは見覚えがある。異常に眼力の強い指揮官の人に、眉毛が突然変異した(頭が)軽そうな男性、それと実際に言葉を交わしたティーマス=ワーカー軍曹。

ポルトガルの地で、ドクの同僚や上官だった人たちだ。

( <●><●>)「私たちの武器はヒト型に対してまるで役に立たないことは解っています。

弾幕を防壁の艤装部分と顔面部分に集中、奴の動き、視界を制限せよ」

(#><)「グレネードは足下に!!震動と爆光は少なからず奴の牽制に繋がるはずなんです!!」

「「「Jawohl !!」」」

艦娘の影に隠れがちだけど、ドイツ陸軍の前線部隊は私達フランス軍と並んで深海棲艦との交戦経験が最も豊富だ。そのため彼らは、戦車や艦娘と連携して深海棲艦と戦うことに慣れている。

『ア゛ア゛、ゥア゛!?』

所詮は歩兵の携行火器、ほとんどはル級からすればレオパルト1よりも更に無力な存在だ。
だけど、迅速な部隊展開とその後に敷かれる猛烈な妨害射撃はル級一隻を縫い止めるには十分すぎる。

(#゚д゚ )「レーベ、プリンツ!!」

「了解、任せて中尉!!」

「確実に仕留めます!!

Feuer !!」

ξ#゚゚)ξ「私達も撃って!!たとえ微かでもダメージに成るのなら撃たない理由はないわ!!」

《Ja!! Feuer!!》

『ウア゛ア゛、ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!?』

そこに更に、レーベレヒト、プリンツ、そして私達の砲撃が加わる。とはいえ、幾ら艦娘といっても駆逐艦と重巡洋艦。魚雷という必殺兵器が使える水上ならともかく、陸戦となれば流石にル級を轟沈させることはできない。

だけど、包囲され、身動きが取れず、反撃もままならず、ただ攻撃を受け続けるだけという現状では。

『ウ、ア゛、ア゛……ッ!!』

一気に死ねないというのは寧ろ、拷問と変わらない。




158: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/16(火) 00:21:25.30 ID:9hQehj8k0

『ギぃッ!?』

鈍い金属音。

全方位から降り注ぐ砲火の中で、ル級が突然今までとは毛並みの違う呻き声を上げた。

《………砲撃が奴の艤装に当たった!!》

ル級が構える右腕の艤装、その中ほどから小さな黒煙が上がっている。それは今まさに、レーベレヒトの砲弾が防壁を貫いて“直撃”した箇所だった。

防壁の出力が弱まって、攻撃を防ぎきれなくなっている。

つまりは。

「───ル級、中破状態に移行!!」

(#゚д゚ )「ここで仕留めろ、絶対にだ!!」

プリンツの報告を受けて、ミルナ中尉が叫ぶ。レーベや他の兵士達も応えたようだけれど、全ての声は更に激しくなった砲声・銃声・爆音に飲み込まれて聞こえなくなる。

ベルリン市全てに響き渡るような、轟音の嵐。

《よし、追い詰めてるぞ!!》

《弾はまだある!いっそトドメはあたしらでいただいちまえ!!》

ξ゚゚)ξ「………?」

誰もが、ル級を「陸で」追い詰めていることに興奮している。一号車の搭乗員達も勝利を疑う素振りはなく、誰もがル級撃沈の瞬間を一秒でも早く迎えるために動き続ける。

ξ;゚゚)ξ「─────全速後退!!」

《ひゃっ!?》

だから、私が“それ”に気づけたのは偶然以外の何物でもない。

『『────ォオオオオオオオオッ!!!』』

私の叫び声に驚いた操縦手が、車両を慌ててバックさせる。

直後、目の前の道路が盛り上がりアスファルトを突き破って私の目の前に巨大な何かが屹立した。




159: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/16(火) 00:36:32.69 ID:9hQehj8k0


「……っ!? なっ!?」
  _
(;゚∀゚)「冗談だろ……!?“下から”だと!?」

『アアアアアアアッ!!!』

『オォオオオォォッ!!!』

映画【トレマーズ】の看板モンスター、グラボイズを思わせる演出で姿を現したのは、駆逐イ級、そしてハ級の二隻。

全く予想していなかった、「下から」の攻撃に私達全員の対処が遅れる。

『ゴォアッ!!』

「わっ!?」

(;<●><●>)「通常種なら十分対応は可能です!!パンツァーファウスト!!」

ξ;゚゚)ξ「砲塔旋回、目標正面イ級!!」

《り、了解!! Feuer?!!》

イ級の方が地面から這い出し、その足でレーベを踏みつぶしにかかる。私とティーマスが迎撃に移ったけれど、目標を急激に変えたため射線が定まらず攻撃は全て見当違いの方向に飛翔する。

そしてレーベも回避運動をとってしまったことで、包囲網の一角に巨大な隙が生まれてしまった。

『───ッ!!!』

「きゃあっ!?」

(;゚д゚?)「Hinlegen!」

全方位射撃の圧力による拘束から解放されたル級は、プリンツとミルナ中尉達に向けて機銃を掃射。彼女たちが怯んだ瞬間、よろめく身体を無理やり踏ん張って包囲網から離脱を計る。

「に、逃がさなi『ウォオオオオオオオッ!!!』あぁもう!!」

ξ;゚゚)ξ「砲手、ル級を狙える!?」

《無理です!あいつイ級達に射線を塞がせて……!》

ξ;゚゚)ξ「Merde!!」

反撃に使われたのが機銃で、しかも足取りはまさに重傷者のそれだ。

おそらく奴の艤装はほとんど機能を停止していて、耐久面でも最早“大破”に突入している可能性が高い。下手をすれば、駆逐艦のレーベレヒトはおろかレオパルト1でトドメをさせる可能性すら0じゃない。

だけど、艦娘二人はイ級達に進路を封じられ、私達の射線も通らない。迅速な排除を行おうにも、流石に地下からの強襲に対してミルナ中尉達の混乱が収拾しきっていない。

ξ;゚゚)ξ(っ、せめて、せめてル級の方の動きだけでも封じないと!このままじゃ、あいつに逃げられ────)





「────攻撃隊、出撃! Vorw?rts!」




160: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/16(火) 01:06:05.08 ID:9hQehj8k0


低く、思わず背筋を伸ばしてしまうような、厳格な女の人の号令が聞こえた。

ξ;゚゚)ξ「!?」

私達の頭上を、ミニチュアサイズの“航空機”が駆け抜けていく。
時代遅れのプロペラ式で、更に言えばBf109改───ナチス・ドイツ軍の【メッサー・シュミット】に酷似しているそれらが、手前のイ級に向けて一斉に機銃掃射を叩き込む。

「───ハイン、撃って!!」

『ヴァアッ、オアアッ!?』

『ガァッ!?』

苦悶の声を上げて仰け反るイ級の横っ面に、今度は砲弾が直撃する。

正確に、完璧に眼を射抜かれたイ級は更に声高に断末魔を上げて、ハ級を巻き込み転倒した。

『─────!?』

ξ;゚゚)ξ「………!

レーベレヒト!!」

「解ってる、逃がすもんか!! Feuer!!」

一気に開ける視界、射線。イ級の妨害から解放されたレーベレヒトは、乱れた衣服を直すことすらせず街路に躍り出る。

遠ざかりつつ驚愕に眼を見開いているル級に向けて、彼女は艤装の引き金を引いた。

『ウァッ───!』

ル級は、最後の一瞬まで生を諦めてはいなかった。

彼女は此方に向かって身を翻すと、左手の艤装を盾のように構えつつ反撃を試みる。

『──────ア』

障壁を。
艤装を。
胸を。

レーベレヒトの放った弾丸が、貫く。

ル級は、ぎこちない動きで下を向く。

彼女は、一瞬自分の身体に空いた穴を見つめると、

『………ア、ァ────』

そのまま、糸が切れた操り人形のように。

雨に濡れながら、アスファルトの上に膝から崩れ落ちた。

その様子を見届けて、レーベレヒトはなおも艤装を構えつつ鋭い息を口から吐く。

「…………ル級、轟沈を確認しました!」




161: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/16(火) 01:28:36.04 ID:9hQehj8k0

《ル級、撃沈………っ!!!》

《っしゃああああ!!!あたしらも!!艦娘もいたとはいえあたしら陸軍も深海棲艦のヒト型と互角に戦えたんだ!!》

ξ;゚゚)ξ「喜んでる場合じゃないでしょ!!次は……イ級と……」

『ォオオオオオオオオ………』

ズシャッというしめった音で、私の言葉は遮られそのままかき消えた。目の前には全身をくまなく蜂の巣にされて息絶えたロ級とイ級の屍が転がっている。

上空を、20機あまりの小さなメッサー・シュミットが自らの勝利を顕示するように飛び回っていた。

「それにしてもエミ、お見事な指揮だったわね!どう、貴女このまま陸軍に入隊して私達のカメラードにならない?!」

「冗っ談じゃないわよ、一般人を戦争に巻き込むつもり?

それに、私は本当に口を出しただけよ。褒めるなら撃ったハインを褒めて頂戴」

「……お前、作戦行動中に勧誘行為って、何を考えてるんだ?」

「堅いこと言わないでよグラーフ!貴女だってエミの実力は道中で見たでしょ!?」

後ろから、女性同士がやり取りをする声を乗せてキャタピラーの走行音が近づいてくる。唖然としていた私は我に返って振り返り………また、ぽかんと大口を開けて思考を止める羽目になった。

ξ;゚゚)ξ「ケーニッヒ・ティーガー………?」

第二次世界大戦時に最強を謳われた、伝説の戦車が止まっている。




162: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/16(火) 01:53:29.79 ID:9hQehj8k0

「…………そこの車長、大丈夫か?どうも意識が混濁しているようだが」

ξ;゚゚)ξそ「───へ!?あ、いえ!!」

次々と発生した事態に脳の処理が追いつかなくなっていた私の肩を、ティーガーに搭乗していた(正確には上に乗っていた)女性がポンッと叩く。

半分私に分けてくれてもバチは当たらねえんじゃねえかって思えるぐらいデカい胸と、白く透き通った、陶磁器のような肌が眼に飛び込んできて少しどぎまぎした。

それほど整ったスタイルなのに、彼女の服装は露出がほぼない。白いコートを肩からかけ、その下には黒のラインが入った軍服をビシッと着込んでいる。

………ただ、その服のサイズはなぜだか異様にぴっちりしており、艶めかしいボディラインははっきりと浮き出ている。背中や腕に艤装を付けているから、彼女もおそらく艦娘だろう。

因みにもう一人───ティーガーの上で何故か腰に手を当てて仁王立ちになっている女性は、灰色を基調とした軍服を着ているものの此方は肩がばっちり露出している。ついでに服の方はこれまたしっかりボディラインを協調するサイズに調整されていて、丈は短く素材は光沢を放つタイプと…………まぁ、言ってしまうなら艤装がないと「保護された痴女かな?」と首をかしげたくなる過激な服装だ。

今更ながら、何故艦娘達の多くはこうも扇情的な服装が多いのだろうか。

アレか、やっぱり極東のHENTAI大国日本発祥の技術だからこうなるのか。

ξ゚゚)ξ「…………」

「………あら!」

思わず見つめてしまっていると、眼が合った。何故か、満面の笑みでふんぞり返っている。

「ふっ、ニホンで魅力に磨きをかけた結果、同じ“れでぃ”をも虜にしてしまうようになったのね。流石よね、私」

ξ゚゚)ξ「何いってだお前」




163: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/16(火) 02:40:44.96 ID:9hQehj8k0

「…………」

なんか残念な感じの艦娘()の足下で、ティーガーのキューポラから顔を出している車長と思わしき少女はどうやら生身の人間のようだ。

赤みがかったツインテールの髪に、ブラウンのぱっちりとした瞳。頬はうっすらとピンク色が入り、顔立ちは東洋の血が入っているのか少し幼く感じる。少し聞こえてきたやりとりを推察するに、エミというのが彼女の名前なのだろう。

女の子───エミは、仏頂面で戦車の上に頬杖を突き、黒煙が上がり続けるベルリン市街地を眺めていた。

この間に、しっかりとした方の艦娘────ドイツ連邦海軍空母、グラーフ・ツェッペリンは戦車を降りてミルナ中尉と握手を交わしている。

「よくこれだけの部隊が生き残ってくれていた。

マース、オイゲン、お前達も頑張ったな」

「あ、いえ。違うんですグラーフさん」

「私とレーベは、南に展開している残存部隊から派遣された増援なの。他に、レーベは後二隻、マックスも四隻来てるわ」

(?゚д゚?)「ドイツ全域で言えば、北部全土は事実上失陥したと言っても過言ではない。今、ドイツで組織的な抵抗が展開し得ている軍は南方と、それからベルリン市のシュプレー河以東だ」

ミルナ中尉はそう言って、グラーフさんとティーガーの上の艦娘()───相変わらずふんぞり返ったままのBismarck?zweiを交互に見た。

(?゚д゚?)「寧ろ、お前達こそよくここに来られたな。

ヴィルヘルム=スハーフェンですら通信途絶している状況下だ、奴等も戦艦と空母は徹底的に潰すと踏んでいたが」

「私とあのビスマルクは、大西洋警備の任に着いていたからな。かえってこの襲撃をうけることを回避できた。

我々はアメリカ第六艦隊と合流。極秘裏に海兵隊に同行する形でベルリン近郊に空挺降下し、作戦行動中に彼女たちを保護した」

グラーフさんはそう言って、ティーガーを親指で差す。

「戦車道展のイベントの関係で此方に来ていたところ、深海棲艦の襲撃をうけてホテルの地下に避難していたそうだ。全容は把握できていないが、ベルリンの西部や北部には彼女たち同様取り残された市民がまだ相当数いるぞ」




168: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/16(火) 16:17:57.36 ID:9hQehj8k0

ξ゚゚)ξ「───了解。えぇ、こっちも貴女たちと同じ状況よ。心配しないでいいわ。

あと抱かねえよぶち殺すぞ」

ミルナ中尉とグラーフさんが情報を共有している合間に、私は私で他の区画のレオパルト1と通信を繋げて戦況を確認する。

概ねのやりとりを終えて無線を一度切り、地図を広げ彼我の確認し得る現状を書き入れていく。

ξ;゚゚)ξ「……ドン引きするぐらい完璧に作戦がハマってるわね」

深海棲艦側の致命的なミスは、ベルリン市東側───即ち私達が展開していた区域からの増援を防ぐために配置した深海棲艦をことごとく【非ヒト型】にしてしまった点にある。

勿論、私達の残戦力からすればたとえ駆逐や軽巡でも脅威だったことに変わりは無い。高所観測班の報告で判明していた隻数は20隻を越えていて、私達の保有する機甲戦力よりも数が多かった。レオパルト1は主砲の貫通能力こそ高いけれどレオパルト2に比べて砲口径が小さく、短時間で撃沈するには火力が足りない。

一応プーマ戦闘車のLRミサイルならば、弱点を正確に狙えればflagshipすら2、3発で沈められる。だが、こちらは残弾8発という数量的な制約がつきまとい、やはり封鎖艦隊を無傷で突破することは難しくなる。

向こうがそこまで此方の戦力事情を把握しての展開だったかは定かではないけれど、私達にとっては非ヒト型でも十分すぎる「壁」になっていた。




169: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/16(火) 16:18:52.47 ID:9hQehj8k0


(=゚ω゚)ノ『じゃ、この壁を動かせばいいよぅ』

('A`)『ですね』

私は、作戦会議の時のドクとイヨウ中佐の様子を思い出す。

本当に、淡々と、何でも無いことのように。

彼らは敵の配置を見るなりこう言ってのけた。

('A`)『非ヒト型は、たとえflagshipであっても奴等の“知識階級”に比べて動きも思考も動物的です。単に釣るだけなら簡単極まりない』

(=゚ω゚)ノ『“壁”がこっちに釣られて動き出したら、その後ろから一気に機甲部隊を突入させればいいよぅ。レオパルトの走行速度は65km、奴等の陸上徒歩速度とは比べものにならないスピードだよう。

そして、主砲の貫通能力を考えれば、主力艦隊の増援部隊への手出しを止めるには十分な役者だよぅ』

('A`)『逆に非ヒト型は、eliteまでならパンツァーファウスト3と迫撃砲でも理論上はダメージを与えられます。

エノクで肉薄し攻撃をかけて何隻かに損傷を与えれば、“攻撃能力有り”と見なしてヒト型も陽動部隊の撃破を優先する可能性が高まるはずです』

(=゚ω゚)ノ『“壁”が移動を開始したら、プーマと警官隊並びに歩兵隊を市街地要所に迅速に展開。増援部隊と機甲部隊の合流まで深海棲艦の出戻りを防がせるよぅ。

ヒト型と交戦開始後のレオパルト1については………こんな言い方無責任かも知れないけれど、“各位の奮闘に期待する”としか言えないよぅ』

('A`)『そうですね、後は』

('∀`)『増援部隊が手練れ揃いであることを祈りましょう』

(=゚ω゚)ノ『笑顔キモっ』

('A`)

ξ;゚゚)ξ(……ひっでぇ)

最後のやりとりは、ドクの名誉のために忘れてあげることにする。




171: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/17(水) 00:39:58.68 ID:uhwHcgm70

地図に一通りの情報をまとめ終えると、今度は作戦経過を報告するためイヨウ中佐に無線を繋げる。

………自分で書き出しておいてなんだけど、これが「実際に上がった戦果」というのはちょっと信じられない。

ξ゚゚)ξ「レオパルト一号車よりCP、経過報告です。

ミルナ中尉指揮下の増援部隊との合流並びに敵主力艦隊の撃退を完了。また、アメリカ軍の支援を受けて市内に突入していたBismarck zwei, Graf Zeppelin、それから彼女たちが保護していた民間人とも接触しました」

(=゚ω゚)ノ《ご苦労様だよぅ。〜〜〜〜》

応答したイヨウ中佐は、会話に入る前に一瞬だけ無線の向こう側で誰かとやりとりをする。

英語だったところを見ると、グラーフさんとビスマルクが同行していたアメリカ海兵隊が指揮所に到着したようだ。

(=゚ω゚)ノ《グラーフとビスマルクのことは此方でも聞いているよぅ。………欧州全体の状況はともかく、戦艦と空母の参加は僕たちにとっては僥倖だよぅ。

それと、マントイフェル少尉達の陽動機動部隊も無事全車帰還したよぅ》

ξ゚゚)ξ「……そう、ですか」

………いや、いや。ホッとなんかしてないわよ?全然これっぽっちもしてないわよ?
仮にホッとしていたにしろ、それは戦友が無事だった事への安堵だから!!

ξ;*゚゚)ξ「って!誰への言い訳だオラァああああああっ!!!!」

「!?」

(=;゚ω゚)ノ《えっ、何が?》

戦車の屋根をがつんとぶん殴りながら一人叫ぶ。隣で赤髪の子が驚いて此方を向き、無線越しにイヨウ中佐の困惑した声が聞こえてきた。

ξ;*゚゚)ξ「何でもありません中佐!!何でもありません!!続けて戦果報告に移ります!!」

(=;゚ω゚)ノ《アッハイ》

(;゚д゚ )「……」

「……」

ξ;*゚゚)ξ「こっち見んなぁああああ!!!」

(;゚д゚ )ゝ「Ja!!」

「や、Jawohl!!」

「全く、大声出しちゃダメじゃない。いつでもどこでも落ち着いてなきゃれでぃ失格よ?」

うるせーソードフィッシュぶつけるぞ!!




172: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/17(水) 00:41:13.41 ID:uhwHcgm70

ξ;*゚゚)ξ「せ、戦果報告!!交戦した敵主力艦隊は11隻、ヒト型8に非ヒト型3!非ヒト型3体は、2カ所でそれぞれ地下から出現!それで───」

ξ゚゚)ξ「────敵に与えた損害としては、非ヒト型3体とル級通常型1体の撃沈。タ級通常型、ル級通常型とeliteが各1大破、タ級elite2隻、中破。ル級flagship、タ級flagship改、損害極めて軽微も形勢不利と見たか離脱」

「……Ich erschrecke」

顔に差していた血の気が少しずつ引き、うわずり早口だった口調が読み上げるにつれて自然と落ち着いていく。グラーフさんが私の報告を聞きながら、眼を丸くしてぽつりと呟いた。

そりゃ、確かに私はついさっきまでこの作戦に参加していた内の一人だ。
現に深海棲艦達は空からも陸からも兵を退き、こうして私達がほとんど無防備に休息をとっている状況下でも一向に再攻撃をかけてこない。立て直しが必要な大損害を与えたことも間違いないだろう。

それでも、読み上げている私自身が、こんな戦果信じられない。

ξ;゚゚)ξ「彼我損害まとめ。深海棲艦側、撃沈4隻、戦闘力喪失3隻、戦闘力大きく低下2隻、健在2隻。

……当方損害、先見増援部隊の一部に死傷者。艦娘は全隻健在。また、レオパルト8両、プーマ6両、エノク軽装甲車22両、投入人員3048名に損害無し。

以上です」

非現実的な数字の羅列だった。もし私が全く無関係の第三者としてこの数字を聞いたなら、きっとそいつを鼻で笑って嘘か虚構と断じたに違いない。

それほどに一方的で、英雄的な数字だ。

だけど、この結果をもたらす采配を振るったはずの当人が返してきた反応は

(=゚ω゚)ノ《報告、ご苦労だよぅ》

その一言だけだった。




173: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/17(水) 00:46:49.69 ID:uhwHcgm70

(=゚ω゚)ノ《喜ばしい結果なのは確かだけれど、深海棲艦の思考や狙い、特性、何よりマントイフェル少尉やデレ中尉をはじめ皆の力量を考えれば全て当然の帰結なんだよぅ。

君たちや増援軍への感謝こそあれ、いちいち感情を出すほどのことじゃないよぅ》

此方の驚きを察したのか、イヨウ中佐は淡々とした口調で付け加える。

……え、なんでこの人新兵と旧式戦車率いてのイベント警備担当なんて閑職に飛ばされてるの?軍の上の人たちってバカしか成れないようになってるの?

(=゚ω゚)ノ《深海棲艦は一時的に退却しただけで、彼我の物量差やドイツ北部全体の戦況を考えればベルリンの制圧を諦めるなんてあり得ないよぅ。……ま、制圧したがってる理由までは解らないけれど。

デレ中尉、避難民の人数、並びに構成を報告してくれよぅ》

ξ;゚゚)ξ「了解!……あー、ねぇ、貴女?」

「………私?」

赤髪の女の子は、何が面白いのか厚い雲に覆われて水滴を降らせるばかりの空をぼうっと見上げていたが、私に声をかけられて此方を険のある目つきで睨んできた。

一瞬鼻白みかけるが、すぐに彼女が一般人であることを思い出す。それも、制服を着ている点や戦車道展のイベントに参加していたことから考えておそらく学生。深海棲艦の襲撃なんて事態が起きて……多分、彼女の周りでも、目の前でもたくさんの人が死んだ。ショックを受けて人に対する態度がつっけんどんになったとしても不思議じゃない。寧ろ、その程度で済んでいるなら彼女の精神はとても強い。

そういえば、と私は彼女が着ている服が初見ではないことを思い出す。TBLへのプロ選手も多数輩出しているドイツ屈指の名門学園艦の制服だ。国際交流でフランスの戦車道チームと何度か対戦していた学園艦なので、制服も番組を通じて何度か目にしていた。

「ねぇ、なんなの?」

ξ;゚゚)ξ「あ、ごめんなさい。えーと、エミ?でいいのかしら?」

「……えぇ。エミ=ナカスガ、教育グレードは11。戦車道履修者として学園艦【ジークフリート】への乗艦が許可されているわ。年齢は今年で17歳。

…………“一応”、ドイツ国民よ」




174: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/17(水) 00:48:32.19 ID:uhwHcgm70

《おいおい、“一応”を強調しすぎだろ……オレはエミと同じドイツ人で、しかも同じ戦車に乗れて嬉しいぜ?》

「………ハインは黙ってて!!」

車内から聞こえた呆れたような声に対して、戦車の座席を蹴飛ばす音が響き声の主が小さな悲鳴を上げた。

エミの頬は、さっきよりももうちょっと紅くなっている。……何かしら、この胸にわき上がる親近感は。

「っ、それで!ここにいる民間人は私含めて今ケーニッヒ・ティーガーに搭乗している六人だけ。他のジークフリート生や同じホテルにいた人たちは………その、解らないわ」

ξ゚゚)ξ「ああいや、無理もないから気にしないで。寧ろ、幾ら戦車があるとはいえあんな化け物達が跋扈して破壊されまくってる市街地を学生六人で────六人?」

おかしい。ケーニッヒ・ティーガーの搭乗員数は五人の筈だ。いや、勿論ジークフリート生で決まった戦車搭乗のメンバーが固まって逃げられるとは限らない。一人余分だったり足りなかったりしても何一つ不思議ではないけれど……

「あぁ、最初は私達五人だけだったけれど、ホテルの地下駐車場からこの戦車で瓦礫を吹っ飛ばして脱出した時に道路で気絶している人がいたから拾ったのよ。

それで────ちょっとっ!?」

突然、エミの隣でケーニッヒティーガーのもう一つの車上ハッチが開く。

中から、長く黒い髪を持った長身の女性が顔を出した。

「あんた何出てきてるのよ!」

「そうは言うが外の様子が見えないし、車内だとくぐもって君の声もろくに聞こえないんだ。少しは気を遣ってくれてもいいだろう。いい加減不安も限界だし………」



/ ゚、。 /「むっ。なんだこの状況は」




175: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/17(水) 00:50:04.71 ID:uhwHcgm70


「あら、貴女がエミが助けた人?綺麗な髪ね!私もれでぃとして貴女みたいな髪質がほしいわ!」

/ ゚、。 /「髪についてはよく言われるな。

しかし君は……ビスマルクで間違いないのか?どうにも私が過去に会ったビスマルク達と君は似ても似つかないんだが」

ξ゚゚)ξ
  _
( ゚∀゚)

「……あの人、確か」

「ふっ、当たり前じゃないの!!ヤーパンで新たな力を受け、数あるビスマルクの中でも最強の力を手に入れたBismarck zweiよ!!

流石よね、私!!」

( ><)

( <●><●>)

「お、お姉様!Bismarckお姉様!!お願いです、お願いですから少しお静かに!!」

/ ゚、。 /「なるほど、じゃあ君が今のドイツで一番強いBismarckなのか」

「その通り!!私こそが1人前のれでぃ!もっと褒めても構わないわよ!!頭が高い、控えおろう!!このハーケンクロイツが眼に入らぬかぁ!!」

「はぁ……どうでもいいけど、人の頭の上で騒がないで貰える?」

( ゚д゚ )「……」

「………ビス」

「えっ、なぁにグラーフ?

というか、皆静かね。どうしたの?」

「……頭が高いのは、お前だ」

ξ゚゚)ξ「…………あー、CP?」

(=゚ω゚)ノ《どうしたよぅ?いやに確認に時間がかかって────》

ξ゚゚)ξ「おたくの首相拾ったわよ」

(=゚ω゚)ノ《…………》







 _,
(=゚ω゚)ノ《は?》




181: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 00:55:01.81 ID:qcFlP+vx0







       、、、、、
(’e’)「……何だこれは?」

セント=ジョーンズ合衆国海軍中将の困惑した声が、CICの中に響き渡る。彼のそんな声も、そしてこれほど漠然とした質問内容も、どちらも彼の部下達が今まで聞いたことがないものだった。

セントは、率直に言って優秀な軍人だ。アナポリス海軍学校を経由せず、グレナダ侵攻に始まり多くの戦場で合衆国に貢献してきた叩き上げの将軍である。

戦場に長らく身を置き深海棲艦との交戦経験も豊富な彼は、いかなる苦境、いかなる事態にも常に冷静さを保てる胆力と敵の思考を分析し的確な作戦を立案する明晰な頭脳を併せ持っていた。彼はこの戦争が始まってからも──それこそ深海棲艦という化け物が現れた直後でさえ、一度も取り乱す素振りを見せず常に黙々と任務に従事し続けてきた。

だが今のセントは、明らかに戸惑い、驚愕している。

彼は第六艦隊旗艦【マウント・ホイットニー】に送信されてきた航空写真を、ドイツ・ルール地方のある一角を映した写真を机の上に置き、額に手を置いて眺めている。

やがて彼は写真から視線を上げ、もう一度彼らしからぬ要領を得ない問いかけを口にした。

(’e’)「いったい、これは何だ?」




182: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 00:56:40.17 ID:qcFlP+vx0

まるで、カーペットの上にひっくり返したインク壺の染みのような青黒く巨大な円。

深く暗い海の底を思わせる色合いのその“染み”は、ドイツ領ルール地方の一角に今現在広がっているものだ。

「つい先ほど、USEUCOM空軍司令部より共有があった画像です。

消息を絶つ直前、同地で任務にあたっていた空中管制機から送信がありました」

セントと十数年のつきあいになる海軍中佐が、硬い表情で捕捉する。彼からしても、このような事態は全くの未経験であり冷静に処理することに苦労していた。

「直径は、凡そ8キロから9キロ程度になると思われます。小さな街なら、まるごと一つすっぽりと覆えるほどの大きさです。

“染み”それ自体の成分や形状に関しては詳細全く不明。気体なのか、液体なのか、人工物なのか、自然物なのか、或いは単に地面が着色しているだけなのか、何も解らない状態です」

(’e’)「………衛星写真でより詳しい状況は確認できないのか?」

「この大規模侵攻の前後から、該当地域の周辺は映像の乱れが酷く衛星情報の収集は極めて困難になっています。

現段階では、Angel-Ringから送付されてきたこの情報が最新のものです」

(’e’)「グローバルホークによる偵察は?」

「二機を投入しましたがどちらも該当区域の遙か手前で撃墜されています。USEUCOMではプレデター編隊による威力偵察を行いましたが、此方も詳細確認はならず全滅しました」

(’e’)「……」

その報告自体には、セントは落胆のため息をついただけで特に強い反応は示さない。

無人航空機では、様々な面で有人の戦闘機に劣る。加えて相手はF-15のストライクパッケージ(戦爆連合)を殲滅した相手だ。

あわよくばの成功を期待していなかったと言えば嘘になるが、ただ機体を無駄に摩耗するだけだろうとは概ね予想していた。

寧ろ、問題は。

(’e’;)「……航空管制機による支援付きの第4世代戦闘機と真っ向勝負して、一方的に殲滅し得る航空戦力の存在だと?」




183: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 01:00:18.38 ID:qcFlP+vx0

セントは、在欧アメリカ軍の司令部から送られてきている二枚目の写真に目をやる。それはAngel-Ringが撮影した画像の一部を拡大したもので、大地を覆う巨大な黒い染みの中に、少しだけ色合いの違う「何か」が混じっていた。

(’e’)「………鳥、か?」

青みがかった黒の中に、更に小さな漆黒の点が幾つかあった。丸みを帯び、鈍い光沢を放つその点は分かりやすいように白い線で縁取られている。

そして縁取りの形は、セントが言うとおり翼を広げ飛翔する猛禽類を思わせた。

「USEUCOM上層部では、その飛行物体による襲撃で攻撃隊は全滅したと見ているようです」

(’e’)「まあそうなるな。こいつは完全な新型だ」

Helmとも、Ballとも明らかに一致しない形状。加えて、ある程度の高度からとられたはずの映像で既に視認可能な大きさなら翼を含めた全幅は少なく見積もっても8メートルから10メートルになる。

そして、サイズ的に戦闘機からの視認・ロックオンは十分に可能だ。にもかかわらず、攻撃隊は極めて短時間で殲滅された。

考えられる可能性は三つ。
攻撃隊が思わぬ奇襲に動揺して対応できなかったか、この“染み”の影響で計器や兵装に異常が発生しまともな迎撃行動が取れなかったか。

或いは、ただ単に性能面で圧倒され手も足も出なかったか。

(’e’)「…………深海棲艦の進化、か」

(’e’;)

口に出してみて、セントは自身の言葉に背筋を冷やす。

確かに、深海棲艦のこの“進化”は必要事項ではあったかも知れない。艦娘の出現により「陸上活動ができる戦艦・空母」としてのアドバンテージが薄まり、従来の艦載機はポルトガルで人類側の陸上戦力に多数が撃墜された。太平洋においては、艦娘との連携によるものとはいえほぼ無力だったはずの人間の航空戦力が空対空戦闘において深海棲艦側を圧倒した。

だが、どちらも発生した時期としてはようやく一ヶ月経つか経たないかだ。

もし、深海棲艦が人類側の新戦術に対応してこの兵器を造り出してきたのだとしたら───あまりにも、早すぎる。

生物学的な、「進化」としてみても。

技術的な、「進歩」としてみても。




184: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 01:04:27.46 ID:qcFlP+vx0

(’e’;)(………この件について考えるのは後だ。今は作戦に集中しよう)

首を振って迷宮に陥りかけた思考をCICまで戻す。

絶対に考察が必要な事項ではある。だが、それは今この瞬間ではない。

自分に与えられた任務は、深海棲艦に関する科学考証ではない。ドイツ・フランスを中心とした北欧の奪還と、ロシア連邦による核発射の阻止だ。

(’e’)「ドイツ北部、沿岸部強襲部隊の状況は?」

「流石に一方的勝利にはほど遠いですが、現状優勢です。各攻撃地点、アイオワやサラトガの支援もあり順調に強襲部隊が取りついています」

「ベルリン市強襲突入のために派遣した海兵隊並びにBismarck、Graf Zeppelinは何れも無事同市郊外に降下したと護衛の航空隊から報告がありました。

ベルリン市は通信が妨害されているため報告は受けられませんが、時間的には市内の残存戦力や南部からのドイツ軍増援部隊と合流している頃かと」

(’e’)「そうか……各ドイツ軍鎮守府との連絡も密に取れ。応答のある場所は優先的に救援する」

スクリーン上に映し出された、北欧における指揮下部隊の攻勢状況を見て少しだけ肩の力を抜いた。

深海棲艦の反撃は苛烈だが、広域の大規模攻勢は戦力を大きく分散させてしまったらしく報告に上がる敵兵力はどこも決して大きくない。ルール地方の制空戦失敗は衝撃的な知らせだったものの、全体として戦況を見直せば僅かずつだが挽回の目は見えつつある。

(’e’)(“ヒト型”の数が多いのは厄介だが、このまま行けばノルデン方面を中心に橋頭堡の確保は十分できる。

後は主力陸戦隊の上陸と空軍と連携した浸透作戦を行えば、ルール地方にも地続きで侵攻が可能か)

南方のベル=ラインフェルト大佐率いるドイツ軍とは連絡を取り合っているし、西ではフランス軍もなんとか体勢を立て直し防衛ラインを形成することに成功したらしい。ルクセンブルク、ベルギー、デンマークなど未だ危機的な地域が多いのも事実だが、これらに攻撃している深海棲艦は数的にも編成的にも枝葉の群体だ。

ドイツ・フランスの中核的な敵拠点を抑えれば、すぐに立ち枯れになる。なんとかオランダ軍に踏ん張って貰うしかない。




186: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 01:09:52.92 ID:qcFlP+vx0



(’e’)(逆にノルデン、フランス、ベルリンさえ立て直せれば、南部のドイツ軍・イタリア軍と併せて四方からルール地方を逆包囲できる。

大方艤装工場を潰しつつ拠点にすることで内陸浸透を狙ったんだろうが、これなら………)

気がついたら、セントの視線は再び「染み」の写真に戻っていた。

「…………しかし、ルールの“これ”は本当になんなんだろうな、いったい」

「まぁ順当に行けば深海棲艦の前線基地だろうさ。さもなきゃ“巣”か」

部下達も写真を見ながら口々に意見を言い合っているが、最早それらはセントの耳に入らない。

(゜e゜;)

セントの脳内で、猛然と形作られていく仮説があった。

そうだ。何故基地と決めつけていた?奴らの知能は決して低くない。内陸浸透をしても、海中からの戦力補充を続けなければいつか物量で浸透軍は押しつぶされる。そして日本や自分たち米軍の存在がある以上、沿岸部から続く兵站線の維持などどう考えても不可能だ。

だが、仮定する。

もし深海棲艦による今回のヨーロッパ襲撃が、「ルール地方の制圧」こそが本命であり他の全てが欧州全体の動きを封じるための陽動だとしたら?

もし、生産拠点の「破壊」ではなく「確保」が目的だとしたら?

もし、深海棲艦が自然増殖やオカルト的な発生ではなく、“艦娘と類似した過程で生産される”存在だとしたら?

もし、今までの深海棲艦が「海底での製造」という、様々な制約が課せられる状況下であの物量を生み出していたとしたら?

もし、深海棲艦と艦娘の製造工程が似通っていて────その上で、奴らの方が精錬された技術力を擁していたとしたら?

(゜e゜;)「………工場だ」

「………は?」

(゜e゜;)「合衆国政府に、ノーフォークに至急連絡を取れ!!こんな兵力では到底足りない、ヨーロッパとアメリカの全兵力を動員して至急ルール地方を封鎖しないと間に合わん!!」

「ち、中将?何を……」

「よ、揚陸攻撃地点各所より緊急連絡!!」









「内陸部より膨大な数のヒト型、非ヒト型深海棲艦、並びに艦載機が襲来!!戦線維持が困難、救援を請うとのことです!!」




187: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 01:17:59.52 ID:qcFlP+vx0

http://m.youtube.com/watch?v=STE_ugj7s2M
https://m.youtube.com/watch?v=STE_ugj7s2M






188: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 01:24:27.75 ID:qcFlP+vx0

《Mayday Mayday Mayday!! Hotel-06 down!!》

《αビーチよりCIC、凄まじい砲撃を受けている!!沿岸部にル級が少なくとも10隻以上、非ヒト型は最早数え切れない!!全滅を待つだけだ、応援を寄越すかさもなきゃ退却を許可してくれ!!》

《サラトガ-05より旗艦【マウント・ホイットニー】、敵艦載機の数が多すぎます!!当方の投入可能機数の10倍、20倍……とにかく、レーダーが真っ赤よ!お願い、援護を!!》

《Eagle-01より【マウント・ホイットニー】、敵の数は膨大だ。奴らは地を埋め尽くしている。

爆撃が、意味を成さない。

あぁ……ダメだ……》

《CTF-60より【マウント・ホイットニー】、アイオワ-03が敵の砲撃により轟沈した。

I repeat, Iowa-03 down》

《CTF-61より旗艦、戦力の40%を損失しなお敵勢力は増加!最早継戦不可能、沿岸部を離脱する!!》

《USEUCOMより緊急連絡、フランス東部にも凄まじい数の深海棲艦が出現、一斉に西進を開始!!攻勢範囲が広すぎてフランス軍、ヨーロッパアメリカ空軍共に対応しきれません!!》

《CICよりCTF-62, 応答せよ!!CTF-62, 応答を………Oh my god………》




189: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 01:36:00.39 ID:qcFlP+vx0

《France 24 より、全ての国民の皆様に緊急連絡をお知らせします。必ず、ご覧になって下さい。

政府は先ほど、東部防衛線の全面崩壊を正式発表、パリ以東全域の完全放棄を決定致しました。

皆様、可能な限り西へ、西へ逃げて下さい。西へ、逃げて下さい》

《これはヘンローの様子です、見えますでしょうか!!地平線を深海棲艦が埋め尽くしています!!何百という数の深海棲艦が、オランダ領内に侵入してきます!!

ヘンローの空は、敵の艦載機が飛び回っています!!もう、我々は助からないでしょう、皆様!さようなら、さようなら、さようなら!!》

《ルクセンブルク全土との通信が途絶した状態ですが、間もなくベルギーも同じ状況となるでしょう。

我々RTBFは、最後の瞬間まで深海棲艦による人類蹂躙の様をお届けし、一人でも多くの方にあの化け物達の恐ろしさをお伝えさせていただきます》

《スペイン政府は先ほど、東部に展開している全陸軍をフランスに派遣、共同防衛ラインの構築を決定し越境を開始しました。

また、スペイン全土の空港や港では国外への脱出を求める人々が殺到、多くの地域で暴動が発生し、陸軍と警官隊が鎮圧にあたっていますが効果は見られません》

《ここリスボン・ウンベルト・デルガード空港は大変なパニックになっています!!政府は全便の緊急欠航を通達していますが市民は一刻も早い避難を求めて空港に殺到、暴徒化した民間人が陸軍や警官隊と……あ、今陸軍が発砲しました!!》




190: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 01:49:30.42 ID:qcFlP+vx0

《欧州脱出を求める避難民の大移動、そして暴動や略奪の波はチェコ、スロバキア、ポーランド、果てはこのイタリアにまで広がっています。イタリア国内では「艦娘の存在が深海棲艦を呼び寄せる」という情報がSNSで拡散、一部鎮守府を暴徒が襲撃し、海軍陸戦隊が発砲したとの情報も入っています》

《スイス政府は先ほど、特別国家戒厳令を布告。スイス国軍の他、全予備役に武装を命令、全戦力を持ってドイツ国境に展開しました》

《イギリス政府では、ヨーロッパにて発生した避難民の受け入れを自国民を除いて完全に拒否する意向を発表。空港、海港を軍と警察が封鎖しました。

また、既に避難受け入れをしていた一部国の学園艦をアメリカに「人道的観点から」避難させる動きも出ています》

《トルコ軍は全軍をイスタンブールに集結。また、イラク、イラン、シリア、エジプト各国もトルコ軍との連携を強化する旨を表明。国境線に陸軍を動員し有事に備える模様です》




《ロシア政府は先ほど、ヨーロッパにおける戦況の悪化に伴い事態解決のために戦略核を国連の審査を経ず強行する旨を正式に国内外に通達しました。

現刻より20時間後、深海棲艦の中心的な活動地点であるドイツ西部、フランス東部に大規模な核兵器投射を行うとのことです》




191: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 02:09:56.32 ID:qcFlP+vx0



(?´∀`)《────えー、現在発生する欧州動乱に関して、在欧邦人の保護、欧州周辺国における、在邦人の安全の確保、並びに、人類全体における利益という点から見て、ロシア連邦による核弾頭の発射は我が日本国としては認められないものであります。

また、今時の状況は人類それ自体の危急存亡に直結する深刻な事態であり、深海棲艦に対する有効な攻撃能力を有する日本、並びに日本国内の鎮守府が対応することは、寧ろ国際貢献的な観点から、そして人類融和の観点から当然のことと言わざるを得ません。

よって、我が日本国は友好国たるポルトガルからの要請に応える意味合いでも、欧州救援艦隊の派遣は他国の同意や懸念を得ることを待たず、速やかに行うべきであると判断致しました。

現在既に、第1波として第一防空機動艦隊をインド洋まで派遣しており、ここから陸路を以て中東、そして欧州へと艦娘並びに陸海空各自衛隊特別外征統合部隊を展開。

欧州の混乱の収拾に、全力を尽くさせていただく所存であります》




192: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 02:11:34.27 ID:qcFlP+vx0

今回分投下完了。
次回投下はまたお昼にでもできれば。

※このジャパンはフィクションです。実際の日本国の外交力、胆力、精神力と大きく異なる場合があります




194: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 18:24:07.67 ID:qcFlP+vx0







(//‰ ゚)「アメリカ海兵隊、第二海兵師団所属のサイ=ヨーク=ヴォーグルソンだ。階級は大尉。

以後、貴軍との連携行動に移る」

('A`)「ドイツ連邦陸軍所属、ドク=マントイフェル少尉です」

司令部テントの前に立っていた筋肉モリモリマッチョマンの変態が、名乗りと共に差し出してきた手を握り返す。中肉中背の、軍人としてはひ弱な体格の俺は190cmはかたいその巨体を自然と見上げる形になった。

某州知事を思わせる精悍な顔つきの右半分は火傷の跡で覆われ、黒い眼帯を身につけている。手は銃ダコと盛り上がった傷でごつごつした凹凸があり、まるで拳大の岩を握っているかのような感触だ。

(//‰ ゚)「……おいおい、まるでターミネーターに出くわしたみたいな表情はやめてくれ」

いかにも前線で戦い続けてきた男という風貌に少し気圧されていると、サイ大尉はフッと相好を崩した。

体格に見合った威圧感のある顔立ちは、笑うと存外愛嬌がある。

(//‰ ゚)「まぁ、このデカい図体にブルドックのクソを捏ね上げたみたいな不細工なツラだ、少しひくのも無理ないがな」

('A`)「大尉殿、失礼ながらその自虐は俺に刺さります」

(//‰ ゚)「お前さんこそ自虐が過ぎるな。実際なかなか男前だぜ。あ、でも笑顔キモそうだな」

その指摘いらねーだろこれだからヤンキー野郎は。

(//‰ ゚)「あぁ、それと俺は敬語が聞くのも使うのも苦手でな。部下にも言ってるんだが、“大尉(キャプテン)”さえ付けてくれるなら後は砕けた口調で構わない」

('A`)「しかし」

(//‰ ゚)「あー、国は違えど一応階級は俺の方が上と言うことで職権乱用だ。上官“希望”により、敬語をやめてくれ。

あくまでも希望なので聞き入れなくてもいいぞ」

('A`)「……そのやり方は卑怯じゃないか?大尉」

(//‰ ゚)「軍人にとって“卑怯”は褒め言葉さ少尉」

サイ大尉はそう言って、笑いながら俺の背中を叩く。

(//‰ ゚)「もっとも、“キャプテン”は譲れないがな。ジャック・スパロウが大好きなんだ」

('A`)「キャプテン違いじゃねーか」

船長に成りたいんなら海軍に行けよ。




195: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 18:28:55.74 ID:qcFlP+vx0

('A`)「にしても、あんたもドイツ語が上手いな」

(//‰?゚)「母親が戦車道の関係者でね、11歳から3年間役員としての仕事の関係で親に着いてこっちに来ていた。

友達も多かった、俺にとってドイツは第二の故郷だ」

サイ大尉は、ふと視線を目の前の西から延びてくる人の列に向けた。

「急ぐな、急ぐな!今深海棲艦の攻撃は来ていない!ここから先は軍と警察の防衛ラインだ!既に艦娘も来ているし南から友軍の増援も到着しつつある!」

「俺たちはアメリカ海兵隊だ、外国も友邦ドイツを見捨ててない!今はとにかく東に逃げろ!まだ深海棲艦の手も及んでいない!

10km先にはドイツ警察と消防の生き残りが避難誘導の非常線も引いてる!車両による避難民移送も開始された!」

主力艦隊に大きな損害を受けた深海棲艦は、此方が艦娘戦力───それも、空母・戦艦を含む10隻と合流したこともあってか現在活動を沈静化している。

空爆も収まり逃げる隙ができた中で、西側で逃げ遅れていた人々が再び此方へ向かって避難を再開していた。ドイツ軍とベルリン市警に加えて、サイ大尉指揮下の海兵隊も避難誘導を手伝ってくれている。

西側からの避難者の中には生き残っていた陸軍や警察の残存部隊の姿もあり、彼らの中でまだ戦闘可能なものは戦力として各区画に再配置された。

「怪我人、病人、それから子供と老人はこっちに!向こうに移送用の車両が用意してある!」

「あくまで身体が弱っている者だけだ、健常者は悪いがこのまま東に歩いてくれ!さっきも言ったとおり10km先でも移送は行われている、慌てなくていい!」

東部や中央で乗り捨てられていた車両や破壊を免れた警察車両、それから輸送トラックなどを挑発して避難民の一部を移送するよう手配したこともあり、先ほどまでより民間人の避難は格段に順調にいっている。艦娘到着の噂が流れたことや実際にアメリカ軍が展開している事への安堵もあってか、避難民同士での諍いや特に懸念されていた車両移送の権利を奪い合うような事態も発生していない。

('A`)「………」

ただ、彼らの表情は一様に暗く、重く。

何よりも、今日ベルリンに詰めかけていたであろう人数からすると、その数はひどく少なかった。




197: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 18:29:51.35 ID:qcFlP+vx0

明らかに車両移送の対象者なのに、兵士の誘導に気づかず虚空を見つめ虚ろな顔つきでふらふらと歩いて行く老人がいる。

警官に抱え上げられてトラックに乗せられながら、姿がない父と母を呼び泣き叫ぶ少女がいる。

かける言葉が見当たらず途方に暮れる海兵隊の隊員に縋り付き、どうしてもっと早く来てくれなかったのかと、怒りも悲しみもない淡々とした口調で問いかけ続ける中年の男がいる。

黒焦げの、かつて赤ん坊“だった”物体を胸に抱き、俯く夫の横で延々と子守唄を歌い続ける母親がいる。

それらの光景は、俺たちが「救った」人々よりも、「救えなかった」人々がどれほど多いかを突きつける。

('A`)「………」

作戦の成功によって胸の内に芽生えていた微かな高揚は、消えていた。

無論、出来うる限りの最善を尽くしたという自負はある。作戦成功に伴う南側の主力艦隊打撃がなければ、今ここに逃げてきている人々すら命を落としていたかも知れないのだと解ってはいる。

それでも、無い物ねだりだと解っていても。

例えば自分が艦娘のように単騎で深海棲艦と戦える力を持っていたとしたら、より多くの命を救えたのは事実だ。

(//‰ ゚)「奴らは、あの腐った深海魚共は俺の二つ目の故郷を灰にした。二つ目の祖国の友人達を殺した。その報いは必ず受けさせる」

俺の横で、サイ大尉のそんな呟きが聞こえてくる。巨大な掌は満身の力で握りしめられ、食い込む爪のせいで僅かに血がにじんでいた。

(//‰ ゚)「そろそろ行こうぜドク。奴らをぶちのめすための作戦会議だ」




198: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 18:35:15.72 ID:qcFlP+vx0

(=゚ω゚)ノ「…………何度も言っているように、首相。その申し出は到底受け入れられませんよぅ」

サイ大尉と共に司令テントまで戻ると、既にツンや彼女が合流したミルナ中尉、大尉以外の米軍指揮官も集合していた。彼らに取り囲まれる形で、テントの中央には机を挟んでイヨウ中佐と───我が国の首相様、ダイオード=リーンウッドが向かい合っている。

彼女は、東欧で不穏な動きを見せることが多かったロシア連邦の対応を話し合うためにフランスへ向かう予定があった。深海棲艦による襲撃開始の折は丁度空港に向かう車の中にあり、難を免れたのだという。

中佐の口調は首相を前にしてもいつも通りだが、言葉の端々に幾らかの困惑と「険」が籠もっていた。

(=゚ω゚)ノ「ベルリン市の状況は確かに“今この瞬間は”沈静化していますが、深海棲艦の在ベルリン戦力は未だ強大です。我が方にも南方からの援軍やBismarckとGraf Zeppelin、アメリカ海兵隊が合流して幾らかその差は縮まりましたが、数的にも質的にも依然劣勢であることは変わりないのですよぅ。

はっきり申し上げまして、一分後、一秒後に敵の大規模攻勢が再開されても何の不思議もありませんよぅ」

/ ゚、。 /「しかしだね中佐、現在は戦時であり、戦時においては軍法上ドイツ軍の最高司令官は首相である私だ。最高司令官なら前線から離れるのはいかがなものか」

(=゚ω゚)ノ「最高司令官だからこそ後方に下がるんだよバカかお前鼻フックかますぞゴルァ」

/ ゚、。 /「あれ……私……首相……」

………仮にも国家首脳に吐いていい言動かどうかはノーコメントとして、イヨウ中佐の言葉は全面的な正論だ。

文民統制とやらの原則のために確かに多くの国が最高司令官に首相や大統領を添えているらしいが、結局のところ「民主主義」を守るための形式的な存在に過ぎない。

彼らは政治家であって軍人ではない、作戦指揮や用兵は当然専門外。はっきり言って、前線・現場に出しゃばられても邪魔になる。




199: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 18:37:59.36 ID:qcFlP+vx0

(=゚ω゚)ノ「我々ドイツ国民にとって、首相だけでも生き延びて下さっていたのは奇跡に近い幸運なのですよぅ。

貴女に課せられた義務は現場で兵士達と命運を共にすることじゃない、崩壊した国を立て直し、惨事から生き延びた国民を導くことですよぅ。

この場は我々に任せて、一刻も早く避難して下さいよぅ」

/ ゚、。 /「………幸運、か」

イヨウ中佐の言葉に、首相は苦笑いを浮かべて俯く。

虚ろな、何も見ていない、外の避難者達と同じ瞳をしていた。

/ ゚、。 /「確かに、私は幸運だな。他の多くの者達の不幸と引き替えに、私は生き延びた」

ダイオード首相は、虚ろな眼を司令テントの出入り口に向ける。外から聞こえてくる、何千という避難民たちの足音に被せるように、彼女は言葉を吐き出す。

/ ゚、。 /「共に国政に携わっていた議員達も、私の周りを固めていたSP達も、皆死んだ。国民の命も、数え切れぬほど失われた。大統領閣下も安否不明だ。

海の底の化け物共に私達は国土を蹂躙され、今なおドイツ国民はその多くが危機にさらされている」

声の語尾が震え、彼女の視線がイヨウ中佐へと戻る。虚ろだった眼には、やりきれぬ怒りが込められていた。

/#゚、。 /「この上更にベルリン市民を、国民を見捨て、私に逃げろと!?無能で無力な私の代わりに奴らと戦う君たちを置いて、私に逃げろと言うのか!?」

(=゚ω゚)ノ「それが、首相の義務ですよぅ」

首相の視線を真っ向から受け止めながら、イヨウ中佐は言い放つ。

机の向こう側に身を乗り出し、負けず劣らずの怒りと決意を込めた視線を、首相にぶつける。

(=゚ω゚)ノ「そして我々軍人の義務は、“貴女たち”国民を、ドイツを、人類を害する敵に立ち向かうことです。

貴女の気持ちは解るが、ここは我々の仕事場だ」

/ ゚、。 /「………」

(=゚ω゚)ノ「首相」

イヨウ中佐は、椅子から立ち上がると首相に向けて陸軍式の敬礼を贈る。

(=゚ω゚)ゝ「ドイツを、ドイツ国民を、お願いします」




200: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 18:44:32.63 ID:qcFlP+vx0








( ゚д゚ )「現在、ラインフェルト大佐指揮下の南部ドイツ軍はマンハイム・ニュルンベルクを絶対防衛ラインとした戦力展開を行っている。以北には俺たちの他、ドレスデンに混成一個旅団、さらにチェコ共和国軍からの増援部隊が展開しているはずだ」

ダイオード首相を車両移送のために送り出した後、俺たちはすぐに作戦会議に移る。

まずドイツ全域の状況を整理するため、南部から駆けつけたミルナ中尉、アメリカ軍として新たな情報を保持しているサイ大尉らがドイツ全土を記した地図を机の上に広げた。

( ゚д゚ )「それと、マンハイムを起点にフランクフルト方面にはイッシ=ストーシュル少佐指揮下の機甲部隊が攻勢に出ている。

とはいえ、あくまで陽動であって深海棲艦の撃滅は目的としていない。

……それと、フランス、ルクセンブルク、ベルギーは情報が入ってくる限りでは酷い有様だ。奴らにいいようにやられている」

(//‰ ゚)「一つ捕捉すると、西ヨーロッパへの深海棲艦の攻撃拠点はルール地方だ。奴らはこの地点を橋頭堡に、フランス方面を中心に大規模な攻勢を展開している」

サイ大尉は胸ポケットからボールペンを取り出し、地図上でルール地方の辺りをぐりぐりと塗りつぶした。

更に、オランダへと伸びる矢印を一本付け足す。

(//‰ ゚)「オランダの複数都市にも爆撃が行われたらしい。イタリア、ドイツと切り離されたことでコマンダン・テスト以外にまともな対深海棲艦戦力を持たない西ヨーロッパは防衛線すらまともに引けていない。デンマークも深海棲艦の攻撃により沈黙している。

暴動の拡大もとどまるところを知らない。このままいけばヨーロッパ全土が無政府状態に陥る時も近い。

あぁ、あと」

続けられたサイ大尉の言葉に、テントの中は静まり返った。

(//‰ ゚)「ミルナ中尉はもう聞いているかも知れんが、ロシア連邦は36時間以内にヨーロッパの混乱が治まらない場合戦略核の投射を非公式に示唆している。

それもこれは、あくまで“俺が聞いた時点で”の発表内容だ。もし正式発表を行っていたとすれば、あの気が短い大国は時間を繰り上げて発射するかも知れないな」




201: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/18(木) 18:48:54.18 ID:qcFlP+vx0

現状報告3

ドイツ、フランス等西ヨーロッパ諸国における人類側の展開状況

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赤線:人類側の防衛線
赤矢印:人類側の戦力展開
黒丸:ルール地方
黒矢印:深海棲艦側の攻勢展開




210: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/20(土) 11:07:44.78 ID:otGQSIH90

ξ;゚゚)ξ「核………」

「そんな………」

サイ大尉の言葉に、ツンを初め何人かの士官が信じられないといった面持ちで呻き声を上げる。
  _
(#゚∀゚)「……っざけやがって」

(;-д- )「………」

そしてそれは、ミルナ中尉やジョルジュにも共通した表情だった。

('A`)「………中尉、一応聞きますがこの知らせは」

(;゚д- )「今初めて知った。知っていればラインフェルト大佐が黙っているはずがない。

おそらく俺たちがベルリン市に突入した後に入った情報だな」
  _
(#゚∀゚)「あのクソッタレのアル中国家め!したり顔の国家元首様共々脳みその代わりにウォッカでも詰め込んでるんじゃねえだろうな!?

他所の国だからって好き勝手やりやがる!!」

ジョルジュはやり場のない怒りを拳に込め、机に叩きつける。置かれていたボールペンや定規が撥ね、カタリと音を立てた。
  _
(#゚∀゚)「深海棲艦との戦争中に人間同士で争ってる場合かよ!!本気で何考えてやがんだあいつら!!」

(=゚ω゚)ノ「欧州の失陥は艦娘戦力に乏しいロシアにとって死活問題に直結するよぅ、先日アメリカや日本と防共協定を結んだ矢先にこれほど思い切った動きを見せているのは、それだけ彼らにとってこの“危機”が深刻である証拠だよぅ。

僕は、彼らの立場も理解するよぅ。国際協調も必要だけれど、“ロシア”という広大な土地に住まう国民を守るためには時に独善的とも取れる判断に走りざるを得ないこともあるよぅ」
  _
(;゚∀゚)「……っ」

イヨウ中佐は、淡々とそう述べながら一心に地図を見つめ続ける。咎めるでも同情するでもない、平坦な声にかえってジョルジュは気圧されているようだった。

(=゚ω゚)ノ「“国家間に真の友人はいない”───シャルル=ド=ゴールの言葉だよぅ。

ロシアとドイツは別に友人じゃない、ただの“共通の敵を持つ国家同士”だよぅ。正式には同盟すら結んでいないんだよぅ。

その共通の敵が、自分たちの国のすぐ傍で圧倒的な内地浸透能力を手に入れつつあるという現状で、“ただの他国”に配慮しろってのが無理な話だよぅ」




212: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/20(土) 11:22:59.91 ID:otGQSIH90

  _
(;゚∀゚)「───、ですが」

(=゚ω゚)ノ「ジョルジュ=オッペル陸軍少尉、お前はいつから国際政治の評論家になった?」

イヨウ中佐は突然顔を上げ、尋ねる。

独特の語尾もなく、少しドスの利いた、はっきりとした口調での「詰問」。さっき首相を説得していたときよりも更に険しい目つきで、加えて言えば頬も僅かに紅潮させて中佐はジョルジュを睨み付けていた。

俺はこの数時間で初めて、明確に「怒り」を露わにした中佐を目にした。

(=#゚ω゚)ノ「少尉、貴様の政治思想なんてどうだっていい。貴様がどこまでわめき散らしても、祖国に訪れる危機もロシア政府の決定も覆らない。

変わらない現実を嘆くのではなく、祖国と国民を守るために全ての力を注げ!それが貴様に、今課せられた仕事だ!!」
  _
( ゚∀゚)「…………」

一瞬の沈黙の後、ジョルジュはさっと背筋を伸ばして中佐に向かって敬礼した。
  _
( ゚∀゚)「Jawohl!!」

ジョルジュに限らず、中佐の檄に誰もが目の色を変えて地図に向き合い、各自が必死に頭を回転させる。

(;'A`)「………!」

本当はこの会議をしている時間さえ惜しいが、状況を見極めず闇雲に動いても事態は間違いなく悪化に繋がるだろう。逸る気持ちを抑えて、俺もまた身を乗り出してどこかに活路はないかと隅から隅まで地図を凝視する。

決定されたのは、あくまでも“36時間後の”核兵器の投射だ。サイ大尉が言うとおり繰り上げの可能性も否めない以上安心するわけにもいかないが、逆に言えば流石にロシアも国際的な批判を“完全無視”と決め込めるほど戦力に余裕はない。

特に、アメリカと日本がロシアの核兵器使用に沈黙しているとは思えない。

アイオワが実装されるまでは艦娘抜きで深海棲艦の攻撃をほぼ完全に退けてきた超大国と、二万隻越えとも言われる艦娘戦力を保有する【東洋の盾】との関係が決裂すれば、現段階では駆逐艦ヴェールヌイしか所持していないロシアは国防計画に致命的な傷を負うことになる。

加えて言えば肝心のヴェールヌイさえ、日本の駆逐艦響が改造されたものを一部転用して貰っている身の上だ。日本との関係が断絶すれば、今後ロシアは艦娘の補充も整備も遙かに劣る自国の技術で行わなければならない。

つまり、ロシアは核兵器を“即座に”使うことはあり得ない。アメリカへの非公式通知が大尉達が突入する前に布告されたものとなれば、まだ2時間も経過していない。国際社会に“我慢”としてアピールするには、流石に間がなさ過ぎる。





214: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/20(土) 11:27:55.04 ID:otGQSIH90

(;'A`)(……とはいえ、日本とアメリカだってヨーロッパが橋頭堡として完全に掌握されるのを防ぎたいのも同じなはずだ)

アメリカ軍が実際にドイツでの作戦を実行していることを考えても、ヨーロッパ全体の状況は良くない。現在の戦況によっては、アメリカは寧ろ積極的に核を投射したいとすら思っているかも知れない。

ロシアがわざわざ“汚れ役”を買って出てくれるのだ。「ロシア連邦の独断」という名目でいよいよとなれば核発射が黙認される可能性は低くない。

ロシア側の「言い訳」と、アメリカ側の「メンツ」が折り合う丁度良い時間は────

( ゚д゚ )「……20時間、ってところだな」

俺と同じ結論に至ったらしいミルナ中尉が、ぽつりと呟く。

ξ;゚゚)ξ「核兵器の発射時刻ですか?それならさっきサイ大尉が36時間後って……」

( ゚д゚ )「ヨーロッパの状況は地図上に記されている時点からおそらく更に悪化している、少なくとも好転はあり得ない。

通信が繋がらずベルリン市外の状況は未だに確認できないが、逆に言えばそんな状態が今なお続いていることが形勢不利の証左だ。ロシアが国際社会に“最大限の我慢”をアピールしつつ核発射の時間を切り上げるとして、おそらく20時間が妥当なラインだ」

「そう言えば、僕たち以降南からの増援が全く来てないね」

ミルナ中尉の分隊に加わってベルリンに派遣されてきたレーベレヒト=マースも口を開いた。幼いのは外観だけで、ツンと交戦していたル級にトドメを刺したという武勲艦はかなり肝が据わっているらしい。

彼……ゲフン、彼女は指揮所の張り詰めた空気の中でも臆することなく声を張った。

「僕は陸軍のことをよく知らないけれど、あのラインフェルトっていう大佐がとても優秀な人であることはなんとなく解りました。

あの大佐なら、僕らの増援によって好転したであろうベルリンの状況を見逃すとは思えないです」

「更なる援軍でたたみ掛けるべきタイミングに、ドレスデンからさえ兵を動かさない……いや、動かせないということか」

グラーフの人差し指が、苛立たしげに机を叩く。

「おそらく、我々が聞いた時点よりもフランス方面の情勢が悪化していると見た方がいいな。ルール地方の敵勢力が相当増強されたか?」

(=゚ω゚)ノ「───“増強”というより、“生産”の方が近いよぅ」





215: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/20(土) 11:36:12.33 ID:otGQSIH90

「………生産?深海棲艦が何を造っているっていうの?」

(=゚ω゚)ノ「言うまでもない、“深海棲艦”に決まっているよぅ」

首をかしげて尋ねるビスマルクに答えながら、イヨウ中佐は黒く塗りつぶされたルール地方を指し示した。

(=゚ω゚)ノ「そもそも、深海棲艦が“ただの前線拠点”として使うにはルール地方は遠すぎるよぅ。この襲撃が始まった直後から電撃的に内地に兵力を送り込んでいたと仮定しても、サイ大尉達アメリカ軍が到達するまでに集結できる兵力はたかが知れてるよぅ。

ましてや、北も完全に抵抗が止んでいたわけじゃない。統率が取れていないとはいえ艦娘やドイツ軍の抵抗を受けてそれほどの戦力を南下させる余裕があったとは思えないよぅ」

中佐の指が、ノルデンの辺りとルール地方を行き来する。紙の地図上ではほんの2cmに過ぎないその“間”に、現実は200kmの距離が横たわる。

確かに、深海棲艦が他の地域へ大規模攻勢もかけられるような兵力を逐次投入できる距離ではない。

(=゚ω゚)ノ「深海棲艦の今回の目的は、おそらく最初からこのルール地方───更に言うならここにあった国営艤装工場。他の場所への攻撃は、ここから人類側の注意を背けるための陽動攻撃だよぅ」

(//‰ ゚;)「相当強固な拠点になっているとは思うが、流石に生産拠点というのは突拍子もなさ過ぎませんか?それに、生産拠点だったとしても奴らの自己増殖速度が常軌を逸している。前段階の拠点化速度も尋常じゃない」

(=゚ω゚)ノ「深海なんていう過酷な環境下にあって、物量面では常に人類を圧倒し続けている化け物共だよぅ?

“生ける軍艦”の製造技術は、間違いなく奴らに分がある」

サイ大尉の反論を、中佐は一蹴する。

(=゚ω゚)ノ「ルール地方は今や深海棲艦の一大製造拠点として機能していると見て間違いないよぅ。断言するけど今後、フランス方面並びにドイツ南部の戦況が好転することはない。

北沿岸のアメリカ軍に関しても、既に損害を受けて退却している可能性が高いよぅ」

ξ;゚゚)ξ「……じゃあ、もう36時間以内の事態解決はおろか私達完全な孤立無援じゃないの。挽回のしようなんて」

(=゚ω゚)ノ「あるよぅ」

バサリと、二枚目の地図が───ベルリン市街地の地図が机の上に広げられる。




217: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/20(土) 11:50:12.28 ID:otGQSIH90

(=゚ω゚)ノ「物量面で我々が圧倒されているにしろ、向こうが損害を全く恐れないというわけではないよぅ。深海棲艦側にとっても、流石にelite以上の戦艦・空母や【姫・鬼】といった等級の損失は絶対に避けたいはずだよぅ。

現に、敵は未だに戦力再編と他地域からの戦力補充のために活動を停止している。

このベルリン市に来ている姫級────西側で確認された、“軽巡棲姫”の安全を確保するために奴らの増援が到着するまでは、今の防衛的な展開は続くよぅ」

中佐の掌がミッテ区に置かれ、そのまま左側へと滑る。

(=゚ω゚)ノ「同時に姫を割くということは、ベルリン攻撃は陽動ではあっても本気度は低くない。“重要攻勢地点で姫級が沈んだ”、この事実を深海棲艦に突きつけることが出来れば、ルール地方を含めたドイツ全域の深海棲艦の動きを確実に鈍化させられる。

同時にベルリンを解放することが出来れば、市外と通信を取ることで残存戦力と連携して北部全体での反撃にも繋がるよぅ」

拳を握りしめ、中佐は勢いよくそれを再びミッテ区の位置に叩きつけた。

その細身のどこにそんな力があったのか、机がミシリと少しいやな音を立てる。

(=#゚ω゚)ノ「戦力的劣勢は否めないどころの話じゃない。奴らはあくまで大事を取ったに過ぎず、未だ僕らは吹けば飛ぶような圧倒的劣勢だ!

だけどだからこそ、僕らはこれより総攻撃に出る!!どれほど微かでも、この好機にすがる!!

ヨーロッパ全土の劣勢を覆すには姫級を短時間で撃沈するという大戦果を上げるほかない!!」

喉の奥から、身体の底から、絞り出すような叫び声。

それはこの策が、中佐の全力をかけて練られたものであるという証。

(=#゚ω゚)ノ「作戦の最終目標はただ一つ、軽巡棲姫の撃滅とベルリンの奪還だ!各位、持てる力の全てを駆使し課せられた使命を遂行せよ!!」

「「「……Jawohl!!」」」

(=゚ω゚)ノ「……ヴォーグルソン大尉、申し訳ないけれど君の部隊にもデレ中尉同様有無を言わさず作戦に参加して貰うよぅ。今の僕らにとって、“最強の国”の兵士200人は必要不可欠な戦力だよぅ」

(//‰ ゚)「言われるまでもないことです、中佐」

中佐の言葉に、サイ大尉は少し芝居がかった笑みを浮かべ胸板を叩いてみせた。

(//‰ ゚)「アメリカ海兵隊に、退却はありません」




218: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/20(土) 12:27:26.09 ID:otGQSIH90







「────Attention!!」

雨の中に佇む、「世界最強の部隊」の名に相応しい鍛え抜かれた体躯を持つ200人。彼らは副官の号令に従い、一斉に彼らの指揮官────サイ=ヨーク=ヴォーグルソンの方を向く。

(//‰ ゚)「────俺たちはこれより、在ベルリンドイツ軍の指揮下に入りこの街の奪還作戦に参加する!!」

何の前置きもない、いきなりの宣言。だが、誰も動揺は見せない。それは彼らの隊長の「いつもの姿」だからだ。

(//‰ ゚)「先に言っておく、俺たちの勝算は薄い!なぜなら敵は手強く、多く、そして賢い!!

俺たちの側には10人の艦娘が着いているが、奴らはその何倍か見当もつかん!!戦艦はただの一隻だ!!

俺たちは彼女らの盾となり、囮となり、そして死ぬために作戦に赴く!!

それも祖国の地じゃない!遠く離れたヨーロッパの、俺たちには縁もゆかりもない場所で、言葉を交わしたことすらない人々のために俺たちは死ぬ!!」

飾りもごまかしもない、厳しい任務の宣告。だが、誰も恐怖は見せない。それは彼らの部隊の「いつもの任務」だからだ。

(//‰ ゚)「だが、俺たちはアメリカ海兵隊だ!!

俺たちの任務は、“敵”を殺すことだ!!そして今、この街にいる深海棲艦の奴らは、間違いなく俺たちの敵だ!!」

サイは、真っ直ぐにベルリンの西側を指さす。

黒煙が濛々と上がる街並みを指し示しながら、彼の眼は怒りに燃えていた。

(//‰ ゚)「奴らに殺されたのは、顔も、名前も知らない人々だ!だが、同時に、生きていたとしたらどこかで俺たちのかけがえのない友になったかも知れない人々だ!」

(//‰ ゚)「任務に疲れた俺たちと、どこかの街角で美味いビールを酌み交わしていたかも知れない人々だ!!」

(//‰ ゚)「軍を退役した俺たちと、ポップコーンをかじりながらTBLの試合を見ていたかも知れない人々だ!!」

(//‰ ゚)「今日この日がなければ、明日も明後日も、1年後も10年後も、どこかで誰かと笑い合っていた人々だ!!」

(//‰ ゚)「あの化け物達が奪ったのは!顔も名前も知らぬ人々の、だが間違いなく存在した命だ!!」

理性も理論も無い、感情的な叫び。だが、誰も怒りの表情を隠さない。

全員が、サイと同じ気持ちだからだ。




219: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/20(土) 12:41:11.69 ID:otGQSIH90

(//‰ ゚)「俺はお前らに、合衆国への忠誠なんてくだらんものは求めん!!人類への貢献なんて吐き気を催すものは求めん!!

だが思い出せ!!俺たちはなんだ!!」

「「「We are United States Marine Corps!!」」」

(//‰ ゚)「アメリカ海兵隊は!?」

「「「Retreat “No”!!」」」

(//‰ ゚)「海兵隊の心得は!?」

「「「Once a Marine, Always a Marine!!」」」

(//‰ ゚)「俺たちの任務は!!?」

「「「Kill the enemy!!」」」








(#//‰ ゚)「Ok, Let's Go guys!!」

「「「Sir yes Sir!!」」」




227: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/21(日) 14:16:54.99 ID:Ffb9jAHh0









「ねえ、貴女は何のために戦っているの?」

「…………へ?」

避難民の警護役として駆逐艦の子たちと一緒に配置についていた私に、その問いは唐突に投げかけられた。

私の目の前には女の子が二人、東へ流れていく人混みから一歩外れた位置で立っている。

一人は見覚えがある。確かビスマルクお姉様と一緒に戦車に乗っていた子だ。お姉様はエミと呼んでいたかな?

エミは赤みがかった二の腕辺りまで伸びる髪をツインテールにまとめ、勝ち気そうなブラウン色の眼を僅かに細めて私を見つめてくる。顔立ちは少し幼い感じがして、なんとなく以前出会った日本の駆逐艦娘たちと似通った雰囲気がある。もしかしたら東洋人の血が混じっているのかも知れない。

从;゚∀从

隣に立っているもう一人の子は、髪型が真っ先に眼を引いた。美しい金色の髪を左側だけ極端に伸ばして、顔の半分を覆い隠している。肌は健康的に日に焼けていて、少しボーイッシュな印象だ。

そして……何というか、うん。首から下の“凹凸”がとてつもない。

多分、エミの発育だって彼女たちの世代にしてはいい方だと思う。ただ、彼女が隣に並んでしまうとまるで大人と子供のよう。

二人とも、世事に疎い私でも名前を知っている戦車道の強豪学園艦の制服に身を包んでいる。おそらく学友なのだろう。




228: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/21(日) 14:19:39.35 ID:Ffb9jAHh0

「……貴女、艦娘のPrinz Eugenでしょう?」

「……ふぇっ!?あ、う、うん!!」

質問の意味を理解しかねてワケも無く二人を観察していた私に、エミはもう一度問いかけてきた。ビスマルクお姉様やデレ中尉にも向けられていた、少し険のある声音。じぃっと此方を見つめてくる一対の瞳に気圧されて、艦娘ともあろうものがたじろいでしまう。

「ええっと、さっき戦車に乗っていた子だよね?あー、もう間もなく私達の方で反撃作戦が始まるし、できれば早く避難して欲しいんだけれど……」

从;゚∀从「あーーっ!そうっすよね!!いや、本当に連れが任務中にご迷惑をおかけします!」

おそるおそる切り出した私の言葉に、被せるようにして金髪の子が応じる。彼女は申し訳なさそうに私の方に目配せしながら、エミの袖を引っ張った。

从;゚∀从「ほらエミ、とっとと逃げるぞ。それに仕事の邪魔しちゃまずいって」

「だったらハインだけ逃げて。私はこの質問が終わったら後から行くわ。ここは私を残して先に行きなさい」

从;゚∀从「ものすげぇテンプレな死亡フラグ屹立やめろよ……お前たまにとてつもなくベタだな……」

「うっ、うるっさい!!」

金髪───ハインと呼ばれた子の手をエミはふりほどく。そう力のこもった動きではなかったけれど、ハインは諦めたようにため息をついて一歩下がる。

「質問の答えを聞いたらすぐに避難するわ、それにどうしても答えたくないならそれで構わない。でも、もし答えられるのなら教えて。

貴女は何のために戦っているの?」

「………その前に一つ言わせてね。私ね、ベタにはベタの良さがあr痛ぁっ!?」

「今そのフォローはいらんわ別に!」

頭をひっぱたかれた。うー……指摘された辺りから顔が真っ赤だったから少し気を遣ったのに……

::从* ∀从::「ゴッ、グフッ、ヒーッヒーッヒーッ」

因みに横ではハインが腹抱えてメッチャ笑ってた。あ、エミが肘入れた。

痛そう。




229: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/21(日) 14:21:22.97 ID:Ffb9jAHh0


「そっれっでっ、どうなのよ!?答えてくれるの?!くれないの!?」

「…………うん」

別に、答えても支障は無い。それで納得して素直に退くのなら、私は今すぐにでも彼女に求める答えを与えるべきだろう。

だけど私は、Prinz Eugen-09は、“答えられない”。

艦娘としてそう定められているから、私は今深海棲艦に立ち向かっている。目の前でドイツに住む人たちを死なせたくないという思いも抱いてはいる。

でもそれらは、私が“自分がどんな存在なのか”を考えないようにするための気休めだ。私は“艦娘”だから戦うんだと言い聞かせていれば、余計なことを考えずにすむからという逃避だ。

だとしたら、艦娘としての使命の下に戦っているわけでも人間としての矜持の下に戦っているわけでもない私は、結局のところ「何」になるのだろうか?

「………ちょっと、プリンツ?貴女大丈夫?」

「ふぇあっ!?」

ぐるぐるとまとまらない思考の波に呑まれた私の肩を、誰かが叩く。

ふり向くと、ビスマルクお姉様が立っていた。

「お、お姉様!?何でここに!?」

「貴女を呼びに来たのよ。ゲリッケから作戦配置につくよう指示があったわ。具合が悪いように見えたけど、そんな大声が出るなら大丈夫ね……あら、エミにハインじゃない」

お姉様はエミ達の姿を見て、少し目を丸くする。いつもニコニコしているこのお姉様にしては珍しく、少し眉間に皺を寄せる。

「貴女たち、こんなところにいないで早く避難しなさい。せっかく私とグラーフが守った命なんだもの、大切にして貰わなきゃ困るわ」

从;゚∀从「悪りい、オレはさんざん逃げるように言ってんだけどフロイラインが頑固でさ。エミ、いい加減にしようぜ」

「あんた人にテンプレだの何だの言っといて自分は思いっきり死語使ったわね……解ってるけど、本当にあと少しだけ待って。

───あのさ、ビス」

「ん、何かしら?」

おいちょっと待てビスって何だ愛称呼びってなんだ私のお姉様といつの間にこんな親しくなりやがったこの小娘おい待てゴルァ!!

「ビスは、何のために戦っているの?」




230: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/21(日) 14:36:57.16 ID:Ffb9jAHh0

エミの問いかけに、ビスマルクお姉様は心底不思議そうに眼をパチクリさせた。可愛い。

「私が戦う理由って………そんなもの、貴女たちドイツ国民を、そして世界中の人間を深海棲艦から守るために決まっているわ。それ以上の理由なんて」

「でも、それを望んでいない人間も大勢いる」

お姉様の言葉を遮り、エミは少し強くなった口調で問い詰める。

「私とハインは、勿論ビスにもグラーフさんにも感謝してる。二人が、艦娘の皆がいてくれて良かったって思ってる。私の家族や周りの人たちも、皆貴女たち艦娘に感謝していた。

でも、貴女が守りたいと言ったドイツ人の中には、貴女たちのことを亡霊とか悪魔とか、兵器とか呼んで蔑んでいる奴も大勢いるわ」

視界の端、エミの後ろで、流れていく人混みの何割かがびくりと気まずげに身を震わせたように見える。

从;゚∀从「おい、エミ!!」

「………すっごく酷い質問をしてるって解ってる、ごめんなさい。だけど、知りたいのよ。認められず、蔑まれて、疎まれて、終わりは見えなくて、それでもなんで貴女は戦うの?なんで戦えるの?」

从;-∀从「………」

「お願い、時間が無いだろうけど───少しでいいの、教えて頂戴」

………エミは「酷いこと」と言ったけれど、彼女の指摘は完全な事実だ。

私やビスマルクお姉様や、世界中の艦娘達が「戦う船」として経験した、人類同士による大きな戦争。80年近く前に起きたその戦争から、私達は人の姿を得て蘇った。

深海棲艦という、強大な力を持つ敵から人々を守るために戦う日々。だけど、私たちに守られることを、私たちが「艦娘」として蘇ったことをよく思わない人々がいる。

平和と人道を叫び、「あの人」の名の下にハーケンクロイツを掲げていた時期のドイツを忌むべき時代だと論じるその人達。彼らは私やビスマルクお姉様、或いは日本の艦娘達を「第三帝国の亡者」と呼んで、出て行け、もう一度鉄屑に戻れと罵る。

その声は数が多いわけじゃない。けれど、決して少なくも小さくもない。

そして、日頃はその叫びに眉を顰めているような人々でも、実際に私達と出会うとその視線は淀んでそっぽを向く。




231: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/21(日) 14:52:39.24 ID:Ffb9jAHh0

守ってくれるのは解っている。だけど、貴女は「恐ろしい兵器」だから。

深海棲艦と戦ってくれて感謝している。だけど、貴女は「忌まわしい記憶」だから。

いろいろな人たちが私達に向ける「感謝」は、多くの不純物が混じって粘ついて。

当然の反応と解っていても、私は胸に纏わり付いてくるような“不純な感謝”にますます迷いを深くする。

自分に向けられたモノでは無い問いに、それでも自然と私は俯いてしまった。

(……………でも、なんでそれを、今このタイミングで聞きたいんだろう?)

私にはなんだか、エミはその問いかけをエミ自身にも向けているような気がした。

「ええ、そうね。確かに私たちの事を嫌ったり、疎んだり、一刻も早く消えて欲しいって思っている人はいるわ。

それも何人、何十人なんてレベルじゃない、きっと何百万人。世界中に目を向けたら何億人かもね」

下を向いた私と違って、ビスマルクお姉様はエミの問いから、視線から逃げなかった。お姉様は微笑みながら、エミを真っ直ぐに見返す。

「自分が世界中から無条件に感謝されるヒーローだとは思ってないわよ最初から。でもね、それは私が戦いをやめる理由にはならないわ」

「……それは、なんで?」

「彼らもドイツ人で、人間で、艦娘である私が守らなきゃ行けない存在だからよ」




232: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/21(日) 15:18:40.11 ID:Ffb9jAHh0

お姉様は、エミの後ろ────東へと逃れていく人々の姿に目を向ける。

「かつて私達が海の上に掲げて戦ったハーケンクロイツは、今のドイツにとっては思い出したくない記憶だと知ったときは、流石に私もショックだったわ。快く思わない人に罵詈雑言を受けて、傷ついたことだってある。……でもね、エミ。それは当然のことなのよ」

お姉様は優しい笑顔で、エミの肩を叩く。いつもと少し違う、諭すような口調で語りかける。

「人間は全員が違う考えを持っている。私達が船だった80年前だって、正義の旗印だった鍵十字を嫌い罵倒していた人たちはいたんだもの。たとえ私が完璧超人のヒーローだったとしても、きっと世界のどこかで私をよく思わない人はいるはずよ。

私がzweiへの改修を受けた日本では、あの国の軍人達は私なんかより遙かに酷い罵倒を受けていたわ。勿論浴びせてた人間はごく一部だけどね。

でもそれは、その人たちが生きているからこそ抱く感情なの。

私達艦娘は、そしてドイツ軍は、世界中のカメラードは、彼らが生きて、私達を罵倒する権利も守るために戦うのよ」

お姉様はエミの眼を真っ直ぐに見つめ、決意に満ちた声で告げる。

「それに、たとえ戴く旗が変わっても、ここはドイツ人が住まう地よ。

たとえ時代や意見が違っても、貴女たちは“あの人達”が80年前に守ろうとした国の国民よ。

だから私は、誰に認められるとか認められないとか関係ないわ。

私がBismarck zweiである限り、絶対にこの国を、この世界を、貴女たちを守ってみせる。

“あの時”できなかったことを、今度こそやり遂げたいの」




233: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/21(日) 15:38:05.24 ID:Ffb9jAHh0

「………」

从 ゚∀从「………エミ、流石に本当にもう時間が無い。行くぞ」

「う、うん………ビス、その、仕事の邪魔してゴメン」

「あら、1人前のレディたる私は気にしないわよ。寧ろ、作戦開始前にリラックスできたわ」

あっけらんかんとした口調でそういって、お姉様はひらひらと手を振る。エミはハインに手を引かれ、私達に一度頭を下げると避難民の列に戻っていった。

私は日本の駆逐艦娘がやっていた、“お辞儀”という挨拶を思い出す。やはり、エミには日本人の血筋も流れているのかも知れない。

もしかしたら、そのせいで彼女も学園艦や生活の中で何かの形で差別を受けたのかも知れない。それが、あの唐突な私やお姉様への問いに繋がったのだろうか。

「………さ、ホントに時間も圧してきたわ。いきましょうプリンツ」

エミ達が人ごみに呑まれて見えなくなると、お姉様はそう言って私の背を叩く。

─────帽子を目深く被り、艤装を展開して西の空を睨むお姉様の眼光は、先程までと一転して凜々しく、鋭い。



「さぁ、80年前のリベンジよ」




234: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/21(日) 16:05:05.14 ID:Ffb9jAHh0






《遅れてごめんなさい、Bismarck zwei、配置についたわ》

《Prinz Eugen-09、同じく!》

《なあにギリギリだが予定時刻には間に合ってるさ。俺たちニューヨーク・ヤンキースはいつでもプレイボールに対応可能だ》

《お生憎だなサイ大尉、ドイツ人はクリケットは嗜むが野球はあまりやらないんだ。迫撃砲隊、全砲稼働準備完了!》

《Graf ZeppelinよりCP並びに前線各隊に通達、全機の整備・発艦準備を完了した》

《コンツィ中尉、各分隊整列完了しました!》

《よし、CP、此方ノイケルン区。敵制圧区域への突入態勢を取りました》

《西街区から逃げ延びてきたレオパルトとプーマはどうした?》

《プーマは三両中二両を前線に新たに配置、一両は後衛に予備戦力として配置したわ。レオパルト1は私の指揮下に組み込んである》

《OK. 前線指揮車よりCP、全区画戦闘態勢ヨシ。繰り返す、全区画戦闘態勢ヨシ》

《CPより指揮車、了承したよぅ。────作戦を開始せよ》

「了解。

指揮車より、全部隊に通達」







(#'A`)「───────Angriff!!」

《《《《Jawohl!!》》》》




238: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/22(月) 00:24:55.75 ID:i/R4/LC00

《アメリカ国防省は先程、ドイツ・フランス北部にて行われた深海棲艦への攻撃作戦が失敗したことを正式に発表しました。未だ正確な損害は判明していませんが、第六艦隊は少なくとも30%以上の戦力を損失したとみられ、艦娘に轟沈者が出ているとの情報もあります》

《フランス政府は政府機能をパリからル・マンに移転、領内に侵攻する深海棲艦に対し総力を挙げた徹底抗戦を宣言しています。しかしながら東部における戦況は絶望的で、国民の混乱と恐慌による暴徒化・治安悪化は歯止めがかかりません》

《NRKよりベルゲンから最悪の映像をお送りします!深海棲艦の攻撃が、遂にノルウェーに到達しました!激しい爆撃です!見たことも無い黒い戦闘機が街の上を飛び回っています!》

《ノルウェー政府は国内に残存する全ての陸海軍に厳戒態勢を命じると同時に、空軍機をスクランブルさせました。また、スウェーデン、フィンランドにも共同迎撃を要請しているとのことです》

《フィンランド政府は要請を受諾、待機中の全空軍にベルゲンへの出撃を通達しました》

《スウェーデン空軍はリドショーピング=ソーテネス飛行場の第7航空師団投入を決定。サーブ39が次々と基地から飛び立っていきます》

《イタリア各地に広がる艦娘排斥を目的としたデモと暴動の波は、遂にナポリで市民の大規模な武装蜂起に伴う市街戦に発展しました。

イタリア政府は、このナポリにおける騒乱は反艦娘を標榜する国際テロリストと、彼らを支援するマフィアが暴徒を煽り決起に繋げたものであるとして陸軍並びに警官に武力による鎮圧を許可しています。

また、一連の事件によってイタリア国内の指揮系統が混乱。ドイツ南部への増援部隊派兵が大きく遅れる見込みです》




239: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/22(月) 00:27:06.04 ID:i/R4/LC00







シュプレー川を越えた瞬間に、降り注いでくる砲弾。完璧な統制で横一列に放たれたそれらは、雨の中に美しい放物線を描いて俺たちに迫る。

(*;゚∀゚)《掴まってなお客さん!!》

(;'A`)「おおっう!!?」

甲高いスリップ音を響かせて、エノクが道脇の家屋に車体を叩きつけるようにしてカーブ。本来俺たちが走り抜けるはずだった進路上で爆炎が立ち上り、車体が一瞬浮遊する。

(*゚∀゚)《よいしょっしょぉ!!》

そのまま、眼前に連続して突き刺さった砲撃の隙間を縫うように蛇行しつつ、ツーは一気に路上を駆け抜ける。

(#'A`)「後続車、損害報告!!」

《全車両健在!お宅のスーパードライバーが引きつけてくれたおかげです!》

(#'A`)「一つ注意だ、こいつはスーパードライバーの前に“美人”って形容詞を付けないと機嫌が悪くなる、気をつけろ!!

突入10秒前!総員展開用意!!」

《Jawohl!!》

《Yes sir!!》

整地時速96km/hの軍用車にとって、2kmを越えるかどうかの距離は1分少々で0にできる間合い。

俺達の車両を先頭に、三台のエノクが弾丸の如くフランス広場に飛び込んだ。




240: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/22(月) 00:28:27.22 ID:i/R4/LC00

俺とツンがリ級に襲撃をうけた当初から、広場の様子はほとんど変わっていない。

庭石のようにそこかしこに突き刺さる瓦礫、積み重なった屍、潰れ拉げた戦車道展用のテント、吹き飛ばされ崩落したブランデンブルク門、そして動かす者がなく、雨と屍臭の中に虚しく放置された戦車達。

ほとんど全てがそのままだ。

かろうじて光景の変化を見いだすとすれば、雨に洗われて地面に広がっていた血の赤がなくなったことと───

『───ガアッ!!』

『『ォオアアアアッ!!!』』

門の前に佇む、3体の番犬が増えたことぐらいだ。

《イ級elite、それから随伴のハ級通常種。何れも後期型です!!》

(#'A`)「速やかに半包囲、射撃開始!!」

『ォオオアアッ!!!』

指示を出しつつ、中央に仁王立ちするイ級eliteに照準を合わせてラインメタルMG3の引き金を引く。弾丸が奴の装甲上で弾け、此方に注意を向けたイ級eliteが威嚇の咆哮をした。

「Los Los Los!!」

(#//‰ ゚)「Fire, fire!!」

その間に、車内から飛び出したサイ大尉たち歩兵の一団が一斉に広場に散開。瓦礫をバリケードにしながら、アサルトライフルで射撃しつつ奴らとの距離を詰めていく。

『グォオオッ!!』

『アァアアッ!!』

「Enemy shot!!」

(#//‰ ゚)「瓦礫で防げ!姿勢を低くしろ!!」

イ級達も下腹部や側頭部から艤装を展開。突き出された機銃が火を噴き、瓦礫やアスファルトを砕き削る。水ぶくれした死体が弾けて散らばり、はやくも腐乱しだしているぶよぶよした白い肉を鼻がねじ曲がるような匂いと共にまき散らした。




242: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/22(月) 01:10:08.58 ID:i/R4/LC00

(#'A`)「迫撃砲隊、砲撃開始!目標、フランス広場!!」

《砲兵陣地了解、衝撃に備えよ!》

背後から響いてきたズンッ!という地鳴りのような砲声。程なくして、今度は味方の砲弾が曲線を描いて飛来する。

『ォオオオッ!?』

『ウォオオオ………』

立て続けに炸裂する、10発を越える120mm砲弾。通常種の装甲と耐久では為す術も無く、背面から黒煙と肉片を吹き出しながら二体のハ級は広場に横倒しとなって息絶えた。

『ヴヴァアっ……』

そしてeliteといえども所詮は駆逐艦。俺たちや海兵隊に気を取られていて回避や防御が出来ず全弾が直撃したことも有り、明らかに大きな損害を受けた様子でゆっくりと後退る。

当然、逃がさない。

('A`#)「────Graf!!」

《抜かりはない!!》

軽快なレシプロエンジン音を響かせて、頭上十数メートルの位置を駆ける4つの小さな影。

Fw 190───メッサーシュミット、スツーカと共に連合国を震え上がらせたナチス・ドイツの傑作機“フォッケウルフ”が、逃げるイ級の懐に飛び込む。

『グゥアアアアアアッ!!!???』

背中ギリギリ、ほんの30cmほどの距離を飛びつつ爆弾を投下。爆撃は全て、迫撃砲弾の命中跡に寸分の狂い無く叩き込まれる。

イ級eliteは激しくもだえ、断末魔の悲鳴を上げた後前のめりに崩れ落ちた。

(#'A`)「敵艦沈黙確認!後続部隊随時突入して前線を押し上げろ!!損害出るまでは先鋒がとにかく突貫する!!」

《Graf Zeppelinより前線指揮車、予定通りFW190を補給に下げる!!》

(#'A`)「あぁ、手はず通り頼む!!他の艦娘、並びに機甲師団も合図があるまでは
後衛待機だ!!」

《《《Jawohl!!》》》

とにかく、時間との勝負だ。向こうが完全に“お姫様”の周りを固めきるまでに、可能な限り此方の不利を消していく。

(#'A`)「いいか、非ヒト型による前段防御にはGraf Zeppelinの航空支援以外一切艦娘の手を借りない!!人間の兵器のみで全ての防衛線を突破する!!

足を止めるな、走り抜け!!」




247: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/24(水) 00:16:11.91 ID:FI3x2H040

ビスマルク、グラーフという艦隊決戦の要を手に入れたが、戦力はイヨウ中佐も言っていたとおり質量両面で此方が未だ圧倒的に劣る。

加えて俺たちは孤立しているため、艦娘艤装の燃料・弾薬を補給できないという深刻な事情がある。もし西側へバカ正直にビスマルク達を中核とした攻勢をかければ、枯渇は一瞬だ。

そのためこの作戦の厄介な点として、俺たちは前段防御をなるべく艦娘の火力を使わず、かつ迅速に打通しなければならない。……吝い話だが、正直最初のグラーフによる爆撃すら本当はケチりたかった程こちらには余裕がない。

《Graf Zeppelinより前線指揮車、電探に感あり!!》

そして、相手はヒト型の中でも秀でた存在である“姫”だ。

人間達がそうであるように、彼女もまた俺たちの策を予測し、動きを読み、手を打ってくる。

《ベルリン市西部より機影多数接近!!数は80前後!!》

《Prinz Eugenより前線指揮車、敵機種視認!Helm爆装型がほとんどですがBallらしき機影も10機ほど見えます!

Ar-196改、捕捉される前に一時離脱!》

(;'A`)「っ、随分仕事が早えーじゃねえか……!」

艦娘の航空戦力に対して凶悪な制空能力を持つBallだが、対空格闘能力と対地攻撃力を両立したフォッケウルフの存在を考慮に入れると10機はいくら何でも少ない。おそらく、“万一”此方がメッサーシュミットやフォッケウルフを出したときの保険だろう。

当然覚悟はしていたが、やはり此方の状況はお見通しらしい。

《Bismarckより前線指揮車、私達が出た方がいいかしら?》

('A`)「……いや、この程度なら艦載機を使わなくても簡単に対処できる。艦娘各位はミルナ中尉の指揮下で対空迎撃の用意を!

ただし、艤装は使うな!配布されているアサルトライフルで対処しろ!」

《はぁ!?》

《ず、Z3-26より前線指揮車、こんな小火器で戦闘機撃墜しろというの!?冗談でしょ!?》

('A`)「安心しろ、今の天候ならそれで十分撃ち落とせる!七面鳥より簡単にな!」

ここから先は、お互いの手の読み合いだ。ただしこっちの手札は恐ろしく悪い、奇策とはったりと我慢の連続になる。

………ああクソッ、面倒くせぇ!!




248: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/24(水) 00:18:20.65 ID:FI3x2H040

('A`)「先遣機動部隊2〜5班の被害状況は!?」

(*゚∀゚)《各班からの損害報告無し、まだまだ行けそうだぁ!》

('A`)「よし、指揮車より機動部隊各班、後続待つな!突貫、突貫!!」

《《《Jawohl!!》》》

(*゚∀゚)《その言葉を待ってたぜお客さぁん!!アッヒャァーーー!!!》

ツーが歓喜の叫びを、6気筒ディーゼルエンジンが獰猛なうなり声をそれぞれ上げる。

雨水を蹴立てて急加速した三台のエノクが、引き絞り放たれた矢の如く広場から飛び出した。

('A`;)「……お早い到着だな」

突撃再開から30秒と経たないうちに、空から降ってくるレシプロエンジンの低い音。何十機分もが重なって響いてくるそれらの一部が、此方に近づいてくるにつれて様子を変えていく。

獲物を見つけた歓喜を現すように一瞬ひときわ大きな音をまき散らした後、甲高い風切り音を唸らせつつ“奴ら”は一斉に高度を下げ始める。

高度を下げるにつれて、音は更に悪魔の襲来を知らせるサイレンに、そして、俺たちに死への旅立ちを促すラッパの音に。

《敵機直上、数は5!!急降下きます!!》

(#'A`)「機銃仰角最大!全車対空射撃開始!!」

火を噴く三挺のラインメタル。“ジェリコのラッパ”を高らかに吹き鳴らしながら駆け下りてきた【Helm】の編隊に火線が突き刺さり、先頭を飛ぶ一機が火を噴いた。

だが、撃墜機を追い越す形で加速突出した別の一機が弾幕をかいくぐる。

('A`;)「散開回避!!」

懐に飛び込んできたHelmが両脇に抱える、二つの爆弾の片割れが切り離された。かつんという軽い音を立てて、爆弾はそのまま地面に突き刺さった。

(;'A`)「───っぐ!!」

(;*゚∀゚)《ひょおあっ!?》

轟音と閃光。視界が一瞬白く染まる。




249: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/24(水) 00:21:03.84 ID:FI3x2H040

手のひらサイズの物体が放つものとしては反則が過ぎる巨大な爆発。熱風が顔に吹き付け呼吸を阻害し、衝撃波に煽られた車両がコントロールを失いかけて激しく蛇行する。

(#*゚∀゚)《っ、落ち着きなさいなじゃじゃ馬タヌキちゃん!!》

危うく横転しかけたエノクを、巧みなハンドル捌きでツーがギリギリ立て直す。そのまま流れるような軌道で道脇に寄せると、ほんの1メートル横を後続機の機銃掃射が弾痕を残しながら通過した。

……助けて貰った立場でアレだが、馬と狸どっちだよ。

('A`;)「指揮車より2号車、3号車、被害状況知らせ!」

(;//‰ ゚)《此方2号車、損傷無し!》

《3号車、被弾免れました……っ、後方より敵機来ます!!》

(;'A`)「射撃、射撃、射撃!!弾幕まき散らせ!振り切れ、振り切れ!!」

追いすがってきた敵機に再度車列を組みながら一斉射撃。当てるための攻撃ではないが、爆撃・対地掃射の突入コースを塞がれた敵機は忌々しげに陣形を解いて上空に戻っていく。

(#//‰ ゚)《敵機後退、敵機後退!》

('A`)「前線指揮車より機動部隊各班、被害状況と敵機数知らせ!」

《此方2班、損害無し!襲撃敵機は8、内2を撃墜!》

《3班より指揮車、8号車の機銃手が負傷も軽傷につき影響なし!敵機5襲来、撃墜1、損傷1!》

《4班、損害無し!襲来敵機11、損傷3も撃墜に至らず!》

《5班より指揮車、襲来4機にBallが1含まれるも迎撃成功。敵機に損害無しも編隊は後退》

しめて33機。グラーフの報告から逆算すると、最低4割の戦力ならなかなかの「釣果」か。

そして、釣られた敵機は損害をほとんど受けていないにもかかわらず空域を離脱していく。

《………空母Graf Zeppelinより前線指揮車、あー、敵空襲部隊の迎撃を完了した》

つまり、別方面で「本命」の部隊が致命的な損害を受けたということだ。

《襲来敵機52、内撃墜39、損害10。撃墜にはBall4機を含む。

また、当方損害並びに艤装の弾薬消費、0………どういう手品だこれは》




250: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/24(水) 00:26:13.86 ID:FI3x2H040

《深海棲艦の艦載機を、通常兵器でこんなに一方的に撃墜できるなんて……》

《Bismarckより前線指揮車………えーと、ドックン=メンドイフェルだっけ!?貴方海軍に来ない?きっとエーリヒ=レーダーも真っ青の提督になれるわよ!!》

('A`)「過剰極まりない評価をいただき痛み入るが面倒臭いので断る、それと人を勧誘する前にまず名前を正確に覚えて貰えると嬉しいね」

ひとまず、此方の突貫に“何らかの意図”を感じとり戦力を分散させてくれたのは大いに助かった。ミルナ中尉達を救援する際に、エノク部隊による攪乱が大きな戦果を挙げていたことがここで生きた。

たとえ全ての艦載機が殺到していたとしても撃退は容易かっただろうが、50機と80機とではやはり難度が大きく変わる。艤装温存の目的も平行しなければいけない以上、後方に温存している主力部隊の負担は爪一枚分でも減らせるなら減らす。

《Prinz Eugen、水上偵察機再度上げます!》

('A`)「了解した、頼む。

高層観測班、敵の動きを報告しろ!」

前段防御第一陣の早すぎる壊滅、全く損害を与えられぬまま失敗した空襲。

加えて、LAPV軽装甲車隊による電撃的な後方浸透の可能性の示唆。

軽巡棲姫が警戒するに足る材料はばらまいた。後は向こうが更なる安全策として、ここで防衛線を下げてくれると最高の展開になるが───

《高層観測班より前線指揮車に通達!敵前段防御艦隊、第二陣が一斉に東進を開始!此方に向かってきます!

更に第三陣、第四陣で発砲煙を複数視認!砲撃きます!!》

('A`;)「そりゃそう楽な相手じゃねえよなクソ!!全車曲がれ!!」

(*゚∀゚)《っひゅうう!!》

女の悲鳴のようなスリップ音と共にドリフトカーブを決めたツーが脇道に飛び込み、後続二台もこれに続く。俺たちが本来直進する予定だった経路に瞬く間に砲弾が殺到し、泥とアスファルトが十数メートルにわたって舞い上がった。

更に、砲弾の一部は俺たちの傍に着弾せず、頭上を飛び越えてより東へと飛翔する。

地鳴りのような爆発音が連なり、空気が震えた。




251: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/24(水) 00:27:50.81 ID:FI3x2H040

(;'A`)「前線指揮車より後方全戦隊・全拠点、被害状況知らせ!!」

《高層観測班より前線指揮車、命中弾無し!損害ありません!》

ξ;゚゚)ξ《レオパルト並びにプーマ、全車損害無し!予備戦力てして待機中のLAPVも全て健在!》

《迫撃砲隊、全部隊移動完了していたため無事です!》

《Graf Zeppelinより前線指揮車、展開中の全艦娘点呼完了!損傷艦無し、損傷艦無し!》
  _
(#゚∀゚)《此方ジョルジュ=オッペル、部隊損害無しもベルリン大聖堂に直撃弾!ベルリン大聖堂は崩落した!》

凸 ('A`) 凸「や っ た ぜ」
  _
(;゚∀゚)《何故!?》

ξ;゚゚)ξ《今そんな場合じゃねえだろ!!》

損害報告がないどころか、最高のGoodニュース付きだ。これが喜ばずにいられるか。

………という冗談はさておいて。

('A`;)(大きな損害が出なかったのは幸いだがいきなり至近弾多数か……!)

おそらく、先程の特攻に近い空襲で此方の位置情報を艦載機の犠牲と引き替えに掴んだのだろう。本来なら向こうも弾着観測射撃の為に常時偵察機でも上げておきたいのだろうが、深海棲艦側で水偵や艦載機を用いた観測情報を円滑に全艦船に伝えられる“知能”の持ち主は限られている。

下手に軽巡棲姫や他のヒト型が観測機を飛ばせば、離陸箇所や滞空域から正確な位置を割り出されてそれこそ“事故”に繋がる可能性が高まる。

そのため軽巡棲姫は、位置特定を防ぐためにわざわざ市外から艦載機を呼び出して“威力偵察”によって此方の戦力展開を確認した。

('A`;)(………となると、向こうの航空戦力もまだ余裕あるなこれは。もしくは奴らの空母機動艦隊が到着しつつあるか)

少なくないもののなんとも中途半端な空襲部隊の規模や此方の動きに伴ってあっさりと分散した点は確かに不可思議だったが、これで合点がいった。最初から壊滅ありきの偵察編隊だったのならある程度情報を取得できる“数”さえ確保できればどう動かそうが問題ない。

………そもそも、恐ろしく脆いとはいえ80機の戦闘機が“中途半端な数”に見えてしまう辺り、どうも俺の感性も順当に奴らの物量に狂わされている。




252: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/24(水) 00:44:29.42 ID:FI3x2H040



とにかく、先程の航空戦力の特攻によって得た情報から“お姫様”は少しだけ踏み込んだ戦略方針を立てたようだ。

《前進中の敵艦、駆逐14、軽巡4、内elite・flagshipは各2ずつ!このままいけば先鋒部隊は五分以内に全班が接敵します!》

即ち、東部街区への浸透強襲による艦娘戦力の強制的な消耗。

('A`)「前線指揮車より高層観測班、敵防衛線第二陣は“全て”攻勢に出ているか?」

《はっ、展開していた全艦隊戦力が進撃中です!!》

('A`)「そうか」

全戦力投入。つまり、棲姫は第三陣以西に俺たち先鋒が突出する可能性は考慮していないか、していたとして容易く潰せる存在という評価を俺たちに下している。

(//‰ ゚)《ま、要は俺たちの突撃が“半ばハッタリ”だとバレたわけだな》

ざっくりと言ってしまえば、サイ大尉の台詞が全て。実際俺たちが後方浸透したところで、艦娘戦力を車内に隠しているわけでも超強力な秘密の火砲を装備しているわけでもない。生身の戦艦からすれば、そこらの蟻を踏みつぶすより簡単に処理できる存在。

そう。所詮俺たちの突撃はハッタリだ。

(#'A`)「先遣機動部隊各班、速やかに敵第二陣の予想進撃経路に展開!遅滞戦術を敢行し奴らの動きを鈍らせろ!!

第二陣、状況を報告せよ!」

《フランス広場より前線指揮車、シュプレー川の渡河と橋頭堡の建設、戦力集結を全てのポイントで完了。いつでも行けます》

ただし、あくまでも“半ば”だ。

(#'A`)「前線指揮車より第二陣────強襲打撃部隊各位に伝達、前進開始!!」





( <●><●>)《そろそろ、その指示が出ることは解っていました》




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