1: 名も無きAAのようです 2012/06/05(火) 15:00:10 ID:XeEvIbEM0

似非時代小説でござる




2: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 15:06:20 ID:XeEvIbEM0


 一昨日から降り続いている雨が道場の床に染みこんでいた。
足の指を動かすと、湿った木の感触が皮膚を撫でる。


 ショボンは柄を握り直し、焦る呼吸を何とか落ち着かせようと必死だった。
試合では幾度となく剣を交えたというのに、まるで目の前の男は今までとは別人の気配を纏っていた。


(´・ω・`)(殺気か……)


 夜明け前の深々とした闇の中で、自分と相手の刀身だけが鈍く光を放った。
命の取り合いは初めてである。
ぬるま湯の中で想像していた地獄は、果てのない狂気に包まれていた。





 


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3: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 15:11:19 ID:XeEvIbEM0


( ^ω^)「来ないのかお?」


 挑発とも取れるブーンの言葉に、不思議と嫌味は感じなかった。
彼の全身からはただ殺気と狂気だけが放たれていた。


 荒巻一刀流の同門であるブーンを殺そうと思い立ったのは、今から数日前である。
町に現れた辻斬りの正体がブーンであるというのは、今や小僧の間でも噂されていることだ。


(´・ω・`)「なぜ、人を殺す」


 青眼の構えを取っているショボンに対し、ブーンは刀を下段に構えていた。
下段に構えて、というよりは、脱力した腕が何となく刀を持っているような、やる気の感じられない構えだ。




4: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 15:16:16 ID:XeEvIbEM0


( ^ω^)「お前にはわからないお」


 彼の返答は、辻斬りを認める言質に値する。
これでショボンは思い残すことなくブーンを斬ることができる。


 殺人に対して未だ心が躊躇しているショボンを、見透かしたようにブーンは笑う。
いつも笑っているような表情をしているブーンが、さらに笑みを伴うと、狂気の闇がちらと見えた。


 小鳥の鳴き声が聞こえる。
雨の匂いに混じって、朝の気配が立ちこめ始めた。




5: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 15:22:03 ID:XeEvIbEM0


 ショボンがにじり寄る。
今や二人の距離は互いの間合いから一寸も離れていない。


 だがショボンはそこから踏み込むことはできなかった。
脱力しているはずのブーンから届く、おびただしい程の殺気と、死の匂いが脳を揺さぶる。
直感だが、近づけば死ぬと考えた。


(;´・ω・)「剣を極めるはずじゃなかったのか」


 かつて同じ時期に荒巻道場の同門となり、日々剣を振るった。
今でもショボンは、ブーンのことを仲間だと考えている。




6: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 15:28:19 ID:XeEvIbEM0


 そこに大きな違いがあった。
ブーンはそもそも"仲間"という概念そのものを持っていなかった。


 互いに距離を詰めぬまま、戦いの律動だけが二人を繋げる。
ショボンにとって、四半刻ほどの時間が経ったかのように思えたが、実際は短い停滞であった。


 左足で大きく一歩、さらに右足でもう一歩、ショボンが足を踏み出した。
同時に刀を振り上げ、眼前のブーンめがけて袈裟切りを繰り出す。

 幾度となく鍛錬を重ねた一撃だった。


(´・ω・`)「………………………」




7: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 15:34:39 ID:XeEvIbEM0


 ショボンは剣を振り下ろそうと柄を握りしめた瞬間、全身の力が抜けていくのを感じた。
刀を頂点に構えたまま、視点が下に下がる。


 視界の淵から黒い"もや"が侵食を始め、瞬く間に視界を暗闇が覆った。
夜の闇に似た、底の見えない闇だった。


(´・ω・`)「そ………し……………………」


 ショボンの胴体は綺麗に寸断されていた。
上半身だけでブーンを見上げようとしたが、寸前で彼は事切れる。
下半身は彼のすぐ傍に転がっていた。




8: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 15:42:25 ID:XeEvIbEM0


 ブーンは刀をしまう前に、ショボンの着物で刀身についた血をぬぐった。
普段と変わらぬ表情に、およそ特別な感情は見えなかった。

 鞘に刀を収め、ショボンの亡骸を後にしようとしたとき、道場の入口を見てまた柄に手を出した。


( ^ω^)「先生」


 入口に仁王立ちしていた荒巻を見て、ブーンは歩みを止める。


/ ,' 3「殺したのか」


 荒巻の問いに応えようとはしなかった。
代わりにブーンは刀を引き抜き、今度は脇構で刀を構えた。
やや腰を低めに落とした独特な構えだったが、先ほどの脱力した構えより彼にしっくりきていた。




9: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 15:43:39 ID:XeEvIbEM0


/ ,' 3「よせ」

( ^ω^)「怖いのかお?」

/ ,' 3「獣に振るう剣などない」


 見つめ合ったまま動かずにいたが、やがてブーンは刀をしまった。
荒巻からは殺気を感じられなかった。


/ ,' 3「辻斬りはお前の仕業か」

( ^ω^)「そうだお」

/ ,' 3「なぜ殺した」




10: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 15:46:57 ID:XeEvIbEM0


( ^ω^)「刀を持っていたからだお」

/ ,' 3「三一(さんぴん)や浪人を殺して楽しいか?」

( ^ω^)「木刀しか使えない道場よりはマシだったお」


 荒巻は静かにショボンの亡骸に近寄り、腰を落として手を伸ばした。
見開いたまま宙に止まっていた瞳に指を被せ、まぶたを閉じさせる。


/ ,' 3「来月。ショボンは結納じゃった」

( ^ω^)「知ってるお」

/ ,' 3「シャキンも楽しみにしておった」




11: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 15:51:26 ID:XeEvIbEM0


 ショボンの弟であるシャキンは、兄を越えた天賦の才の持ち主として知られている。
試合ではブーンに勝ち越す成績だった。


/ ,' 3「初めてお主を見たとき、大成すると思っておった。とんだ勘違いじゃ」

( ^ω^)「話はそれだけかお?」

/ ,' 3「出て行け。さもなくば殺す」


 道場の窓から、青白い朝日の光が差してきた。


( ^ω^)「手が震えてるお。じいさん」




12: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 16:04:55 ID:XeEvIbEM0


 はっとして手を押さえた荒巻を横目に、涼しい顔で道場から出て行った。
真剣での戦いなど幾度となく経験してきた荒巻が、初めて闘う前に汗をかいていた。


/ ,' 3(悪として生まれた者は、悪として死ぬしかないのか)


 初めてショボンと出会ったときを思い出した。
彼はまだ十にも満たない童であったが、その目に何人たりとも寄せ付けない光が宿っていた。


/ ,' 3(いや……闇か)


 ブーン、齢二十四のときであった。
陽の当たらない場所に生まれ、そして闇の中で生きることを決意した。


一輪「発つ」 終わり




13: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 16:06:44 ID:XeEvIbEM0

実は時代小説あんまり読んだことないんですけど、剣での戦いが書きたかったので始めました
ちょくちょく更新していきます




14: 名も無きAAのようです 2012/06/05(火) 16:13:19 ID:a6JTAIsMO

巷に見かける剣豪小説のように、丁寧に良く書けていると思いやす

これには期待させて頂きますよ




16: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 18:51:15 ID:XeEvIbEM0

初回投下にしては短いんで第二話を付け足します




17: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 18:57:03 ID:XeEvIbEM0


 山小屋を見つけたのはいいが、問題はその中にいた者たちだった。
一宿一飯だけ頼みたかったが、ことは上手く運ばない。


 山小屋の中には六人の男たちと、一人の少女がいた。
少女は柱にもたれかかり、淡い桃色の着物をはだけさせていた。
一人の男が全裸で、彼女の顔めがけて腰を振っていた。


( ・∀・)「邪魔しちゃったかな」


 男たちが農民でないのは一目瞭然だった。
ぎらついた目をした男たちの一人が、伸ばしっぱなしの髭を撫でながら言った。




18: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 18:59:41 ID:XeEvIbEM0


(’e’)「有り金全て寄こせ。その袴も脱げ」


 男たちは山賊の類だろうと思われた。
少女はどこからかさらってきたものだろう。


( ・∀・)「それは困る。邪魔するつもりもないし、帰るよ」


 モララーは軽い感じで言い返し、踵を返した。
背中に殺気を感じた。
振り返るよりも先にモララーは抜刀していた。




19: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:03:52 ID:XeEvIbEM0


 振り向き様に人たち、匕首を振りかぶっていた男の両腕を薙いだ。
血の一閃が宙で弾け、床に落ちるよりも前に返しの太刀で男の顔を切り裂いた。
骨にまで達した斬撃は、即死とはいかなくても致命傷となった。


 山賊たちは思い思いの武器を手に取り、モララーへ襲いかかった。
不用意に間合いをつめた二人の男は、一人は首を飛ばされ、もう一人は肩から股下にかけて斬り捨てられた。


(;’e’)「囲め!」


 おそらく首領であろう男が叫ぶ。
しかし遅かった。
モララーの突きが一人の男の胸に突き刺さり、一度刀を引いてから振り上げられた太刀に胸と顔を斬られた。




20: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:10:10 ID:XeEvIbEM0


 焦ったのか、男が不細工な悲鳴を上げながら長脇差しで突進してくる。
刀身を器用に使い、攻撃をいなしてから男の喉を切り裂いた。
喉の傷口と、開きっぱなしの口から、鮮やかな色の血を吐き出しながら、虚ろな目で男は倒れた。



(;’e’)「名前を聞かせろ」


 モララーが首領だと感じた男が、八双の構えを崩さずに尋ねてきた。
この中では唯一剣の心得がありそうだった。


( ・∀・)「モララーだ」


 山賊の男は甲高い叫びを上げながらモララーへと駆け込んだ。




21: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:14:55 ID:XeEvIbEM0


 二度、三度、男は太刀を浴びせたが、寸前の所でモララーは見きっていた。
身の躱し方が上手いのではなく、目がよかった。


 山小屋の中にはむしろが引いてあり、男がむしろの上に足を踏み降ろしたとき、
一瞬であったが足を取られた。


 次の瞬間には、男の頭頂に振り下ろされた太刀が、左脇腹を駆けていった。


 濃い血の臭いが立ちこめる。
土がむき出しになった土に、血と内臓が混じり墨のように黒く濁った。


( ・∀・)(面倒なことになった)




22: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:17:14 ID:XeEvIbEM0


 残骸となった男たちの後ろに、俯いた少女の姿が見える。
先ほどまで男たちの慰み者にされていただろう少女だが、いっそ自分に斬りかかってきてくれないかと
モララーは考えていた。


 面倒は何よりも嫌いだった。
だが関わってしまったことを、途中で投げ出すことはそれ以上に嫌っていた。


( ・∀・)「無事か」


 モララーは少女の傍に腰を下ろした。
はだけた着物から乳頭が見えていた。
胸は真っ平らで、顔も幼いので十か十一くらいの小娘だと思った。




23: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:19:33 ID:XeEvIbEM0


 少女はゆっくりと顔を上げた。
その時初めて周りの惨状に気がついたのか、男たちの死体を見て小さな悲鳴を上げた。


(*;゚∀゚)「……」

( ・∀・)「俺が斬った。お前は自由だ。帰れる場所があるなら帰るといい」


 しばらく返事を待ったが、一向に口を開かない。
腹が減って苛々していた所でもあるので、犯してやろうかとも考えたが、
女を抱けるほど体力の余裕も無かった。


(*゚∀゚)「侍の人?」




24: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:22:29 ID:XeEvIbEM0


 もうしばらくして少女はやっと口を開いた。
憔悴しているかと思ったが、声を聞く限りはまだ元気がありそうだった。


( ・∀・)「ただの浪人だ」

(*゚∀゚)「ねえ。オレを抱ける?」


 モララーは面食らって答えに詰まった。
少女は着物の裾を割り、股を開いてみせる。


 ―――目を見開いた。
股間には、少女ではなく、少年であるという証がついていた。




25: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:25:23 ID:XeEvIbEM0


( ;・∀・)「お、男……」

(*゚∀゚)「うん。こいつらは、オレを買ったんだ」

( ・∀・)「金を払うような輩じゃないぞ」

(*゚∀゚)「そうなんだ。だから困ってた。助かったよ」

( ・∀・)「とにかく、すぐに帰れ」

(*゚∀゚)「家なんて無いよ」


 モララーは深いため息をついた。
いっそ傍に転がっている山賊たちが蘇って、目の前の少年を斬り殺して欲しかった。




26: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:29:48 ID:XeEvIbEM0


(*゚∀゚)「オレ、どうしても路銀がいるんだ」

( ・∀・)「どこに向かってる?」

(*゚∀゚)「美府だよ」


 訊かなければよかったと後悔する。
モララーが行こうとしていた先もまた、美府だからだ。


( ・∀・)「……とりあえず、ここを出るぞ」

(*゚∀゚)「うん」


 少年がモララーの腕を掴んできたので、軽く振り払って山小屋を出た。
モララーの後を追って小さい歩幅でついてくる。




27: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:33:50 ID:XeEvIbEM0


( ・∀・)「俺はモララー。名は?」

(*゚∀゚)「つー」

( ・∀・)「俺も美府に向かってる。何かの縁だ。一緒に来い」


 つーの顔がぱっと明るくなった。
嬉しそうに何度も頷くと、少年にしては長い髪がさらさらと縦に揺れた。


 親はどうした、家はどうした、聞きたい気持ちはあったが堪えた。
面倒事は嫌いであった。


 モララーは袴についた血を洗うために、ひとまず近くに流れている小川へ向かった。
血の臭いは、面倒事の次に嫌いである。


二輪「美府へ向かう者たち」




28: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:35:10 ID:XeEvIbEM0

第三話も投下します




30: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:39:46 ID:XeEvIbEM0


 道場の入口に、数人の人だかりが出来ていた。


('A`)「どうした?」


 ドクオが尋ねると、野次馬の一人が嬉々とした表情で中を指さした。
話を聞いてみると、道場破りが現れたとのことだった。


 門下生でない者が集まるほどのことではないと思ったが、
今時道場破りなんてしている男がいるというのは、確かに興味をそそられるかもしれない。


 しかもそれが、美府でも名門であるとされる長岡道場であれば、より一層に期待は高まる。




31: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:43:19 ID:XeEvIbEM0


 期待とはもちろん、道場破りが無様に負けている姿を拝むことである。


 ドクオは長岡道場の門下生の一人だが、本業は商人である。
自分に剣の才能が無いとわかってから、剣術は趣味の一環となった。



 自分とは違い、上を目指して剣技を高める者たちもいる。
ドクオは密かにそういう人間たちを馬鹿にしていた。
剣の腕だけで出世できる者など、今時いないからだ。


 野次馬の間をすり抜け、門をくぐり道場を目指す。
開け放していた扉から中を覗くと、信じられない光景を前に、ドクオの体は固まった。




32: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:48:28 ID:XeEvIbEM0



 道場の中央で、素面のまま竹刀を持っている男がいる。


 かなり若い。
歳は自分とあまり変わらないか、むしろ自分よりも若いと思えた。
二十、二十一、二十二、その辺りだ。


 彼の視線の先に、羽目板に寄りかかって、のど笛を押さえ苦悶の表情を浮かべる、
師範、長岡の姿があった。


(;'A`)(何が起こった?)




33: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:51:12 ID:XeEvIbEM0


 そう思ったが、容易に想像はついた。
一撃の突きで師範を羽目板まで吹き飛ばしたのだろう。



(;'A`)「先生!」


 ドクオが声を上げたのをきっかけに、あっけにとられていた周りの門下生たちが
一斉に立ち上がった。


 師範を突き飛ばした道場破りに襲いかかろうとする勢いだ。
口々に野次が飛び交う中、済んだ声が一際目立って聞こえた。


 「やめんか!」




34: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:54:20 ID:XeEvIbEM0


 声のした方を全員が振り向く。


ξ;゚゚)ξ「その者は正々堂々と闘った! 長岡道場の名をさらに汚す気かお前ら!」


 しんと静まりかえった。
彼女の言うことには一寸の曇りもなかった。


 女は長岡道場の師範代で、ジョルジュ長岡の娘でもある。
名をツンという。
女でありながら、父親の才を受け継ぎ、剣の技巧だけなら父親を凌ぐとも言われている。




35: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:57:31 ID:XeEvIbEM0


ξ゚゚)ξ「奥に案内しよう。他の者は父上の手当を」


 ツンの一言で、固まっていた門下生たちはぞろぞろと動き出した。


ξ゚゚)ξ「ドクオさん。この方にお茶を」

(;'A`)「は、はい!」


 台所で湯を沸かし、やや高級な茶葉を使い、二人分の茶をいれた。
居間で向かい合って頓挫しているツンと道場破りの元へ、茶を運んでいく。




36: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 19:59:48 ID:XeEvIbEM0


ξ゚゚)ξ「ありがとう」

(`・ω・´)「わざわざすみません」


 間近で見る道場破りの男は、やはりかなり若く見えた。
体格もそこまで大きいようには見えない。


 しかし、近くに立ってみてわかることがある。
体の軸を微動だに動かさず、かつ隙のない身のこなし方をするのだ。


 男に興味が沸いたドクオは、部屋から出ずに部屋の隅に腰を下ろした。
何か言われれば部屋を出るつもりでいたが、ツンは何も言ってこなかった。




37: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 20:03:09 ID:XeEvIbEM0


ξ゚゚)ξ「素晴らしい技だった」

(`・ω・´)「ありがとうございます」

ξ゚゚)ξ「流派は?」

(`・ω・´)「荒巻一刀流です」


 ドクオには聞き覚えのない流派であったが、ツンは知っているようだった。


ξ゚゚)ξ「我流を極め、一つの技を伸ばすという、変わった実戦剣法を取る流派だな。
      荒巻先生とお会いしたことはないけど、その門下生の方と剣を交えたことはあるわ。
      とても強かった」




38: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 20:05:49 ID:XeEvIbEM0


(`・ω・´)「そうですか」

ξ゚゚)ξ「お主も強かった。私では相手にならんだろうな」

(`・ω・´)「足りないのです。今のままでは」


(;'A`)(あの野郎!)


 挑発に取れる言葉であった。
ツンの表情に焦眉が漂う。


(`・ω・´)「斬らねばならん者がいます。奴に届く太刀でなければ、意味がないのです」




39: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 20:08:47 ID:XeEvIbEM0


 しばし見つめ合っていた二人だったが、ツンの表情から殺気が消えると、
その場に漂っていた緊迫していた空気が徐々に薄まっていった。


ξ゚゚)ξ「長岡道場の師範代、ツンといいます。名を聞いても」

(`・ω・´)「荒巻一刀流のシャキンです」


 ツンは立ち上がり、部屋を出て行った。
すぐに戻ってきた彼女の手には、懐紙が握られていた。


ξ゚゚)ξ「どうぞ」

(`・ω・´)「有り難く頂戴いたします」




40: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 20:12:06 ID:XeEvIbEM0


 受け取ると、シャキンはすぐにその場を立ち去ろうとした。
彼の背中に向かって、


ξ゚゚)ξ「行き場が見つからなければうちの道場に来なさい。寝床だけは貸せる」

(`・ω・´)「お気持ちだけ頂きます。では」


 振り返ることなくシャキンは部屋を出て行った。
ただ歩くだけで圧倒されそうな雰囲気だった。


ξ゚゚)ξ「さあ、稽古に戻ろう」


 ドクオは商人の道を選んで正解だと感じた。
斬らねばならん者というのが誰なのか見当はつかないが、少なくとも
自分のような人間が生きていける世界の話ではないことだけは、理解することができた。


三輪「道場破り」 終わり




41: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/05(火) 20:16:09 ID:XeEvIbEM0

主人公格はあと一人だけいますが、今日はおしまいです
一話につき十レス程度で、そんなに長い話にはならないです。たぶん全二十話くらい




43: 名も無きAAのようです 2012/06/05(火) 20:52:05 ID:Himt7TOEO

簡潔でありながら雰囲気が滲み出てていいな





44: 名も無きAAのようです 2012/06/05(火) 21:11:27 ID:SHV2EiUc0

面白そう楽しみにしてます。
剣客物すきです




46: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 14:42:14 ID:KHdOabxI0


 寂れた寺にたどり着いたのは日が傾き始めた頃だった。
住職が一人、他に小姓が一人いるだけで、塀すらない貧しい寺だ。


( ・∀・)「一夜だけで構わん。貸してくれ」


 笑顔が張り付いたような顔をした住職は、快く庵を貸してくれた。
荷物を庵に置くと、しばらく座禅したまま瞑想を始める。


(*゚∀゚)「ねえ、それ楽しいか?」


 退屈なのか、傍をうろうろしていたつーが声をかけてきた。




47: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 14:45:07 ID:KHdOabxI0


( ・∀・)「楽しくはない」

(*゚∀゚)「うさぎでも狩りにいかない? 追い込むだけならできるよ」

( ・∀・)「お前、歩けないんじゃなかったのか?」


 モララーたちはずっと山道を歩いていた。
普段あまり人が通らないようで、獣道のようになっていた山道は、木の根と石で歪みきっており
歩くのは難儀だった。


 特につーは華奢な体で体力はなく、大股で歩くモララーについていくのは無理があった。
結局音を上げたつーを背負って一晩中歩き通して今に至る。




48: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 14:48:25 ID:KHdOabxI0


(*゚∀゚)「寝たし、もう大丈夫」

( ・∀・)「調子のいい野郎だ」


 つーを連れていくには理由があった。
一人で旅をするよりも、子連れの方が怪しまれないからだ。


 しかし彼を連れて歩くのは一人で歩くより倍以上疲れることを知った。
明らかに失敗であったが、今更彼を見捨てるのは情けないことだと考えた。


 物事を投げ出すのは土を舐めるよりも情けないことだ。
モララーは剣を教えられた祖父にそう教わり、死ぬまで守り通す気でいる。




49: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 14:52:41 ID:KHdOabxI0


 夕餉の時間になり、住職が庵を訪ねてきた。


( ´W`)「質素な食事ですが、いかがでしょうか」


 断るはずがなかった。
確かに味噌汁に白飯、そして申し訳程度に漬け物が添えられているだけの質素なものだった。


 しかしこの頃は蛇や生魚しか食べていなかったため、白飯を食えるのが有り難かった。
つーも白飯が嬉しそうだ。


(*゚∀゚)「美味しい」

( ´W`)「それはよかったです。お代わりはどうですか?」




50: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 14:55:51 ID:KHdOabxI0


(*゚∀゚)「いいの?」

( ´W`)「子供は食べるのが仕事ですから」


 つーの顔が光を帯びたように明るくなる。
普段つんとしている部分があるが、嬉しいときの表情はまだやはりまだ幼い感じがする。


 住職は夕餉の最中、しきりにお茶を勧めてきた。
特につーの方を気にしてお茶を出している感じがあった。


( ・∀・)「…………」


 無邪気な笑顔は心を照らすが、微動だにしない笑顔は気味の悪いものだ。
モララーはつーを見て微笑む住職を見てそう思った。




51: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 15:00:06 ID:KHdOabxI0


 夕餉のあと、剣を取って裏庭へ回った。
これから始まる死闘を考えると、いてもたってもいられなかったのだ。


 美府に行くのは、ある男を斬らねばならないからだ。
任された仕事というのは暗殺。
しかも、藩の汚職に関する証拠を握った者の抹殺であるから、胸を張れない仕事だ。


 その男とは長い付き合いであった。
同じ流派で剣を学び、競い合った仲であった。


 男は藩の不正を暴こうとし、自分は藩の不正を隠そうとしている。
正義は向こうにある。




52: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 15:02:41 ID:KHdOabxI0


( ・∀・)(正義で剣を振るうなど、阿呆のすることだ)


 頭ではそう考えても、太刀には迷いが出ていた。
迷いを断ち切るためにまた剣を振るう。
気がつけば一刻が過ぎていた。


 小姓が布団を出してくれたらしく、庵に戻ると寝床が準備されていた。


(*゚∀゚)「もう寝る?」


 二つある布団の内、一つから顔だけを出してつーが見上げてくる。
疲れは溜まっていただろうに、どうやらモララーを待っていたようだ。




53: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 15:05:48 ID:KHdOabxI0


( ・∀・)「さっさと寝ろ」

(*゚∀゚)「うん」


 布団に入り、つーに背を向けて目を瞑ると、夜の気配が一層際立った。
旅を初めてから刀を抱えて眠る癖がつき、その夜もそうしていた。


 モララーが寝入ってから、半刻ほど経った頃、床鳴りの音で目を覚ました。
柄に手をかけ、体を動かさずに音だけで様子を探る。


 どうやらつーが起き出したようだ。
布団から這い出て、庵からそっと出て行くのを、気配だけで感じ取った。




54: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 15:08:49 ID:KHdOabxI0


 一体何の用事かと考えたが、すぐに検討はついた。
夕餉のとき、湯飲みに入れられた茶を何杯も飲んでいたのだ。
厠に立つのも無理はない。


 しかししばらく経ってもつーは帰ってこなかった。
代わりに、夜の気配に混じって妙な音が聞こえた。


 風が走る音の間に、時折うなり声のような音が混じるのだ。
微かだが、はっきりと聞こえた。
つーを見るときの住職の顔を思い出す。


( ・∀・)(俺には関係ない)




55: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 15:12:59 ID:KHdOabxI0


 柄から手を離し、目を瞑った。
うなり声は、甲高い喘ぎにも聞こえた。


 程なくしてモララーは眠ったが、つーが戻ってくると、その音でまた目を覚ました。
しばらく隣の布団の上に座っていたようだが、ゆっくりとモララーの布団へと侵入してきた。


 殺気が感じられないので、モララーは寝入っているふりをし続けた。
ここで声をかければ、また面倒なことが起こるかもしれないからだ。


 つーはぴたっとモララーの背中に張り付き、手と顔を押しつけていた。
何をするのかと少し身構えたが、間もなく背中から小さな寝息が聞こえてきた。
既に子供には遅い時間だ。




56: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 15:15:54 ID:KHdOabxI0


 つーを起こさないように、慎重に体を反転させた。
後ろを振り向くと、少し髪の乱れたつーの顔が間近にあった。


 あどけない表情は、子供のようにも、女のようにも見える。
近くで見ると、まつげの長さが目立って見えた。



 いつの間にかモララーは眠っていた。
朝の勤行の音で目がさめ、まだ眠っているつーの横から這い出て、
使っていない布団を畳んだ。


 しばらくすると小姓がやってきて、朝餉の時間だと伝えてくれた。




57: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 15:19:52 ID:KHdOabxI0


 朝餉も質素なものだったが、食えるだけマシというものだ。
昨日と変わらぬ笑顔の住職であったが、今朝は茶を勧めてくるようなことはなかった。


 旅の話などを聞いてくるので、いくらか話してやった。
その間、つーはずっと俯いたまま、黙って飯を口に運んでいた。


( ´W`)「そうですか。お気をつけて下さい」


 もう一日くらい泊まってはどうか、という提案をされたが、断った。
モララーはそこまで時間に余裕があるとは思っていなかった。
何よりも、すぐにこの寺を離れたかった。




58: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 15:21:54 ID:KHdOabxI0


( ´W`)「こんなものしかありませんが、どうぞ」


 巾着袋を取りだした住職は、モララーではなくつーにそれを手渡した。
恐る恐る中を覗いたつーは、ぱっと目を見開かせて笑った。


(*゚∀゚)「飴!」


 モララーも中を覗く。
様々な色の飴が、小さな巾着袋の中でぎゅうぎゅうに詰まっていた。


( ・∀・)「飴、好きなのか」

(*゚∀゚)「うん」




59: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 15:24:49 ID:KHdOabxI0


( ´W`)「よろしければ、また旅の途中でここに寄ってやって下さい。
     何分、退屈しているのでね」


 いつもの笑顔で、またつーを見やった。
答えに窮しているのか、困った顔で隣のモララーを見上げた。


 つーは、もう二度とここには来たくないだろう。
モララーも同じ気持ちだった。


 モララーは軽く握った拳で住職の頬を打った。
不意をつかれた住職は、枯れ木のように後ろに飛んだ。




60: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 15:27:26 ID:KHdOabxI0


( ・∀・)「飴をくれなければ、真剣だったかもな」


 昨夜から感じていた胸のわだかまりが、すぅっと消えていくのを感じた。


 つーは仰向けで白目を剥いている住職を、ぼんやりと見ていた。
やがてモララーの方を振り向き、


(*゚∀゚)「行こう。もうすぐ美府だよ」


 もらった飴を大事そうに懐にしまい、寺の前の階段を駆け下りていった。
どうせすぐばてるだろうとは思いつつ、つーの後を追ってモララーも駆けだした。


四輪「飴」 終わり




64: 名も無きAAのようです 2012/06/06(水) 16:29:20 ID:R10M0Q1c0

淡々としてて派手さはないけどすげえ面白いな




66: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 18:10:57 ID:nnSfn1Gg0


 酒さえ呑んでいなければまだ戦えただろうか。
ギコは対峙している敵を弱々しく睨み付けながら、なおも剣を振るった。


( ´_ゝ`)「お、今のは今日一番の太刀だったな」


 やはり紙一重でかわされた。
敵と自分には圧倒的な力の差があり、勝つのが絶望的だというのは理解していた。
せめて、相打ちになろうとギコは考える。


 兄者と弟者がこの村にやってきたのは、今から二時間前のことだ。
彼らは各地を旅しながら、たった二人の盗賊として略奪を繰り返していた。




67: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 18:14:58 ID:nnSfn1Gg0


 彼らが無頼に生きると決めたのは十二のときだ。
双子の彼らは家を飛び出し、以来何物にも縛られず生きてきた。


 今日、この村にやってきたのは、ただの偶然だ。
ちょうどお祭りをしていて、村の広場に人が集まっていた。


 広場で刀を振りかざせば、あっという間に囲まれてしまう。
そうなると面倒なので、広場を離れた者から一人ずつ殺していくことに決めた。


 今ごろ弟者は、別の場所で誰かを殺していることだろう。
殺しの数を競い合う夜は、今日が一度目や二度目ではない。




68: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 18:20:05 ID:nnSfn1Gg0


 兄者たちにとって殺しはお遊びだった。
自分たち以外の人間は犬猫と同じ価値しかないと思っていた。


(,;゚Д゚)「しぃ! 逃げろ!」

(*;゚ー゚)「い、いや……誰か、助けて」


 ギコたちは広場を離れ、近くの雑木林で絡み合っていた。
密かに近寄って二人同時に斬り殺すのは簡単だったが、ギコが脇差しを差していたのを見つけて
正面からやり合いたくなった。


 しかしそれももう飽き始めていた。
二人の茶番とも思えるやり取りも、初めは面白がって眺めていたが、
これ以上見ても仕方ないと思えてきた。




69: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 18:23:30 ID:nnSfn1Gg0


( ´_ゝ`)「自害しろ。そうすれば女は助けてやる」


 兄者がささやく。
斬りかかろうとしていたギコは、動きを止めざるを得なかった。
兄者と目が合った女は、何とも言えない表情で唇を震わせた。


(*;゚−゚)「ほ、本当に……?」

( ´_ゝ`)「ああ。約束する」


 瞬間、獣のような雄叫びが聞こえた。
極限状態だった緊張が、破裂したのだろう。




70: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 18:27:20 ID:nnSfn1Gg0


 叫んだのはギコだ。
よだれを垂らしながら、焦点の合わない目で兄者を睨み付ける。
無茶苦茶な足さばきで猛然と刀を振り回した。


( ´_ゝ`)「駄目だな。それじゃ」


 兄者は全て紙一重でかわした。
端から見れば当たっているように見えるも、皮一枚の所で見切っていた。


 つまらない。
兄者は剣を持っていた腕を、無造作に振り上げた。
ただそれだけで、ギコの利き腕が宙を舞った。




71: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 18:31:18 ID:nnSfn1Gg0


 片腕で振るった太刀とは思えぬ鋭さだった。
流派に裏付けされた技術ではなく、幾度となく人を斬った男の我流の剣閃だった。


 ギコは発狂していた。
腕ごと脇差しを落としたが、もう片方の腕で脇差しを拾おうとしていた。


 そこに兄者の太刀が振り抜かれる。
左腕も失ったギコは、片膝をついて地面に崩れた。


 あとは全て早かった。
右耳、左耳、右肩、左肩、頭皮、両膝、胸板、背中、尻。
魚を解体するがごとく、ギコの体が少しずつはぎ取られていった。




72: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 18:35:24 ID:nnSfn1Gg0


 全ての作業が片腕で行われていた。
鮮やかといっていい太刀筋だった。


 ギコはいつの間にか絶命していた。
傍にいた女は、股から小便を垂らして泣いていた。


 兄者は女の着物を切り裂き、手短に犯した。
中に性欲を流し込んだあと、自分の着物を直すついでに女の首をかき斬った。


 情欲を満たすと心に余裕ができる。
散歩の気分で広場が見える場所へ向かった。




73: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 18:37:23 ID:nnSfn1Gg0


 広場の近くまでやってきた。



( ´_ゝ`)「……………」


 鞘に収めていた刀を引き抜いた。
耳をすませる。


( ´_ゝ`)(弟者?)


 ついさっきまで、大勢の人間がいたはずの広場に、人の気配を感じなかった。
物音一つしない。




74: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 18:41:06 ID:nnSfn1Gg0


 兄者は小走りで広場へ向かった。
たどり着く前にさらなる以上を察知した。
風が慣れ親しんだ血の臭いを運んできていた。


( ´_ゝ`)「何だ、これ」


 広場には大勢の人間だった塊があった。
何人が血の海に沈んでいるのか見当がつかない。


 屍体は全て両断されていた。
腰を真っ二つにされた者ならまだしも、頭頂から股下まで切り裂かれている屍体もあった。


 切り口はかなり綺麗で、美しさすら感じた。
人間業とは思えなかった。




75: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 18:46:20 ID:nnSfn1Gg0


 例えるなら、村を悪意のつむじ風が通過した。
そういう表現が似合いそうだ。


( ´_ゝ`)「弟者。どこにいるんだー?」


 天性のバランス感覚を持った兄者でも、血の海の中で弟者を探し回るのは、
足を取られそうで面倒だった。


 幸いにも、弟者の首から下はすぐに見つかった。
立ったままの状態で、未だに青眼の構えのまま固まっていた。


 首から上は、傍の血溜まりの中で、目を見開いていた。


( ´_ゝ`)「よう。今夜の勝負は俺の勝ちだよな?」




76: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 18:51:22 ID:nnSfn1Gg0


 耳に手を当てて、弟者の返事を聞いている振りをした後、手に持った刀を振るった。
兄者の太刀は刀を構えている弟者の屍体の前を駆けた。


 両腕ごと弟者の刀が宙を舞う。
兄者はもう一度斬撃を繰り出し、刀を掴んだまま離さない両腕を切り離した。


 刀だけが足下に突き刺さった。
刀を持っていない方の手で掴み上げ、二刀流の構えを一瞬取った。


( ´_ゝ`)「悪くないね」


 どうせなら鞘は新調しようと考えた。




77: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 18:56:36 ID:nnSfn1Gg0


 崩れ落ちた弟者の屍体を後にし、村を発った。


 弟者も含め、屍体は全て同じ切り口、つまりたった一人の者の行為であることを示唆していた。
半刻程度で村を滅ぼし、そして弟を一撃で屠った者に、興味が沸いていた。


( ´_ゝ`)(仇討ちになるのか。格好いいねえ。俺)


 今まで目的もなく全国を放浪していた。
ここに来て、心が躍るのを感じた。


 ブーンが荒巻道場を発った、一年後の出来事であった。


五輪「兄弟」




81: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 19:07:55 ID:nnSfn1Gg0


 商店通りを歩いていたツンは、見覚えのある顔に目を留めた。
向こうもツンに気がついたようで、小さく頭を下げるのが見えた。


ξ゚ー゚)ξ「久しぶりね」

(`・ω・´)「お久しぶりです」


 相変わらず隙の無い男だと思った。
自分と話しているときも、周りへの注意を全く怠っていない。


 例え後ろから剣を振り下ろされても、難なくかわしてみせるだろうという迫力があった。
今までどういう修羅場をくぐり抜けてきたのか、想像は難かった。




82: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 19:13:09 ID:nnSfn1Gg0


ξ゚゚)ξ「少しお茶でも」


 無表情なシャキンの目が少しだけ泳いだ。
もしかすると、女には免疫の無い方なのかもしれない。


ξ゚゚)ξ「斬らねばならない者、そのお話を聞きたい」


 シャキンは考えているようだったが、やがて微かに頷いた。

 二人が並んで歩くと、周りの視線が集まった。
若くして剣の才を持つシャキンは、端正な面立ちと女を惹きつける眼光を持っていた。


 茶屋が近くにあったので、団子と茶を買い、道ばたに直接敷かれたござに腰を下ろした。




83: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 19:15:23 ID:nnSfn1Gg0


ξ゚゚)ξ「荒巻先生は、まだお元気で?」

(`・ω・´)「わかりません」

ξ゚゚)ξ「わからない?」

(`・ω・´)「旅に出て五年近くになります。三年前に一度、立ち寄りました。
      そのときは元気でしたが、最近はわかりません」

ξ゚゚)ξ「そう。お歳でもあるだろうしね」

(`・ω・´)「先生が病気になる姿など、想像も出来ませんが」


 ツンは上品に茶をすすった。
良家のお嬢様らしい気品を持った動作だった。




84: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 19:18:03 ID:nnSfn1Gg0


ξ゚゚)ξ「最近、道場破りの噂をよく聞く」

(`・ω・´)「私です」

ξ゚゚)ξ「やめた方がいい。逆恨みも少なくない」

(`・ω・´)「向かってくるなら、好都合だ」

ξ゚゚)ξ「なぜ?」

(`・ω・´)「遠慮無く真剣で立ち会える」


 シャキンは串団子を掴み、一度に全部口に含んだ。


ξ゚゚)ξ「殺し合いがしたいのか?」




85: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 19:21:24 ID:nnSfn1Gg0


(`・ω・´)「命の取り合いでなければ、上達はできません」


 口をもごもごさせながらの台詞ではあったが、言い切り方が力強かった。
ツンが口に手を当てて笑う。


ξ゚ー゚)ξ「たれがついてる」

(`・ω・´)「え?」


 シャキンの口元に手を持っていき、たれで汚れた場所を指で拭った。


(`・ω・´)「すみません」


 無表情だが、どことなく恥ずかしそうな感じがした。




86: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 19:25:09 ID:nnSfn1Gg0


ξ゚゚)ξ「殺したい者とは、誰?」

(`・ω・´)「兄弟子です」

ξ゚゚)ξ「同門同士で争っているのか?」

(`・ω・´)「私の実の兄を殺した者です」


 ツンの表情から笑みが消えた。
まずいことを聞いたという顔になった。


(`・ω・´)「それに、奴は生き続ける限り人を斬り続ける。そういう人間です」

ξ;゚゚)ξ「その者は、今どこにいるかわかってるのか?」




87: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 19:31:43 ID:nnSfn1Gg0


(`・ω・´)「奴の足取りを追って、この町に来ました。おそらく、今この町にいるはずです」


 言い切ってから、茶を一気に飲み干し、シャキンは立ち上がった。


(`・ω・´)「九州で斬鬼と呼ばれた辻斬り。
     この地域では、人喰い夜猿(ひとぐいよざる)と呼ばれてる。
     私はあれを斬らねばならんのです」


 人喰い夜猿の噂は、いやでも耳に入る。
幕府が全国に通達を出している辻斬りで、三百両の懸賞金がかけられていた。


 姿を見た者はほとんどおらず、一人なのか、それとも複数なのかすらわかっていない。




88: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 19:36:47 ID:nnSfn1Gg0


 わかっているのは、夜猿は全て一撃で殺しているということだけだ。


(`・ω・´)「ご馳走になりました。では」

ξ゚゚)ξ「ああ。気をつけて」


 猿のように笑うから、人喰い夜猿。
半ば伝承の魔物のようになっている存在だが、それ故に恐ろしくもある。


 人間業では無い斬撃を放つ。
もしかすると、本当に人間をやめたのだろうか。


 想像すると、膣辺りが冷えそうだった。




89: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 19:42:36 ID:nnSfn1Gg0


ξ゚゚)ξ「あっ」


 茶を飲み干し、ござから腰を上げたとき、通行人の男と肩がぶつかった。


ξ゚゚)ξ「すまん」


 編み笠を深く被り、黒一色の羽織に長い刀を一本だけ差していた。


(  ω^)「いえ……」


 片目だけ覗かせて微笑んできた男に一礼を返し、通りを歩き出した。
夜猿のことは既に忘れていて、夕餉の材料に何を買うか考え始めていた。


六輪「夜猿」 終わり




90: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 19:49:54 ID:nnSfn1Gg0


( ・∀・)「三両もくれた。今日はいい飯が食えるぞ」

(*゚∀゚)「ほんと!? 刺身が食べたいなあ」


 美府に着いたら別れようと思っていたが、つーがぐずる為に、
ひとまず同じ旅籠に泊まることにした。


 路銀が心許なかったので、目に着いた道場に入り、
試し稽古であっさりと師範代を破って金一封を得た。


 藩士の中では名の知れた剣の使い手であったため、
そこいらの道場でモララーに適う者はいなかった。




91: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 19:52:38 ID:nnSfn1Gg0


 夜になり、賑わっている居酒屋に入ると、刺身と焼き魚、酒を注文した。
つーは魚をがっついたが、モララーはちびちびと酒を飲んでいた。


(*゚∀゚)「食べないの?」

( ・∀・)「遠慮するな」

(*゚∀゚)「しない」


 つーとの旅も一ヶ月余りになる。
人なつっこく、物怖じしない性格なのが気に入っていた。


 しかしこれからの戦いを考えると、傍につーを置いておくのはまずかった。
何処かで別れた方がお互いの為だと思った。




92: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 19:58:28 ID:nnSfn1Gg0


 たまたま行き先が同じだったから、一緒にいる。
もはやそれは自分を慰める為の言い訳に過ぎなかった。


 モララーは初めてつーを見たときから、表現しがたい感情を覚えていた。
昔病気で死んだ妹に似ているのが、関係しているのかしれない。


 大人になって感情を表情で示すことはしなくなった。
藩士になってから、剣の腕だけで出世できないことを知った。
上り詰めるには他人を欺き、士道を捨てるのが一番の近道だと知った。


(*゚∀゚)「お酒飲んでもいい? 少しだけ」

( ・∀・)「舐めるくらいにしておけよ」


 大口を開けて笑うつーを見ていると、それも馬鹿らしく思えてくる。




93: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 20:04:10 ID:nnSfn1Gg0


 つーに情欲を抱いている訳ではない。
もしかするとそれは、師を敬うそれに近いかもしれないし、母が子に注ぐ愛に似たものかもしれない。


( ・∀・)(らしくないか? らしい方なのか?)


 出世はしたい。
許嫁である富家の娘に約束もしている。
大体、身分を底上げしなければ、彼女の父親に祝言を許してはもらえないだろう。


 やはり斬るしかない。
旅に出る前に、覚悟はしたはずだった。
ここまで来て気持ちを揺らがせてどうする。




94: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 20:08:11 ID:nnSfn1Gg0


 モララーはふと隣に座っているつーに目を落とした。
頬を赤く染め、目元を潤わせ、視線が遠くにいっている。


( ・∀・)「おまえ、全部飲んだだろ」


 返事はなかった。
代わりに、重そうな頭を一度だけ、かくんと下に降ろした。


 つーを背負い、旅籠への道を戻る。
賑わっていた飲み屋の通りから、少しだけ離れた場所に、モララーたちが泊まっている旅籠がある。


 時折、背中からうなり声が聞こえた。
首に回されたつーの腕が冷たい。
背中で吐かれたらその辺に捨てようと思った。




95: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 20:12:12 ID:nnSfn1Gg0


 「もし」


 呼び止められる。
振り返ると、五、六人の岡っ引きがぞろぞろと後ろについていた。


(岡゚∀゚)「あんたら、何処に行く?」

(岡゚∀゚)「この辺りで何をしていた?」

( ・∀・)「飲んでただけだ。こいつが酔っぱらってるんで、早く帰りたいんだが」


 岡っ引きたちがひそひそと耳打ちし合う。


(岡゚∀゚)「刀を見せてくれねえか」




96: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 20:16:14 ID:nnSfn1Gg0


( ・∀・)「何だと? 俺に喧嘩を売ってるのか」


 つーを近くの戸板にもたれさせ、岡っ引きの一人を睨み付ける。
気圧されたのか、全員が一歩ずつ後ろに下がった。


(岡゚∀゚)「ち、違うんでさぁ。この辺りで辻斬りが出まして。
     刀を見せてくれたら、すぐに帰します」


 不本意ではあったが、辻斬りの疑いをかけられるのはもっと嫌だったので、
刀を引き抜き、刀身が見えるように空中で刀身を寝かせた。


(岡゚∀゚)「失礼しやす」


 一人が鼻先を刀に持っていく。
すぐに頭を下げながら無礼を詫びた。
血の臭いを確かめたかったのだろう。




97: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 20:21:15 ID:nnSfn1Gg0


( ・∀・)「辻斬りか。この町には来たばかりなんだが、やはりでかい町は物騒だな」

(岡゚∀゚)「以前はそうでも無かったんですけど、人喰い夜猿が来てるのかもしれません」


 夜猿の名前を聞いて、緊張が走った。
生ける伝説ともなっている辻斬り、もちろんモララーは知っていた。


( ・∀・)「そうか。捕まえれば三百両だ。金がうろついてると考えればまだましだ」

(岡゚∀゚)「幕府から通達が来ていて、五百両に値上げしたらしいです」


 周りを見ると、通りのあちこちに岡っ引きの姿が見える。
浪人たちや、やくざ者の集団もあった。
金のためなら命を惜しまない類の連中だ。




98: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 20:23:00 ID:nnSfn1Gg0


(*゚∀゚)「ねえ、もう帰ろう」


 いつの間にか立ち上がっていたつーが、裾を引っ張ってきた。


( ・∀・)「斬られないように気をつけてな」

(岡゚∀゚)「お気を付けて」


 つーと並んで旅籠を目指す。
まだ酔いが回っているのか、先ほどからつーは口をつぐんでいた。


( ・∀・)「気持ち悪いのか?」




99: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 20:28:17 ID:nnSfn1Gg0


 胸の前で自分の両腕を抱えていた。
寒いのかと思ったがそんな季節ではない。


(*゚∀゚)「人喰い夜猿」

( ・∀・)「話を聞いてたのか。一人で出歩くのはやめた方がいいな」


 町中が夜猿に警戒しているようで、あちこちに緊迫した面持ちの男たちが見えた。
道場も多くあるので、誰かが夜猿を倒してくれるのを待った方が、自分の任がやりやすそうだ。


 つーの姿が視界から消えた。
三歩分ほど後ろにいたつーは、やはり両腕を抱えて、震えていた。


(*゚∀゚)「オレの村に、そいつが来た。オレ以外、みんな死んだ」


 面倒事がまた一つ、増えた気がした。


七輪「警戒」




101: 名も無きAAのようです 2012/06/06(水) 20:31:00 ID:CVSI3DTYO


時系列は話毎に進んでいると考えていいのかな




102: 名も無きAAのようです 2012/06/06(水) 20:32:20 ID:CVSI3DTYO

しまった 違うな

その人物視点毎に時系列があるのか




103: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/06(水) 20:32:58 ID:nnSfn1Gg0

時系列はばらばらです
ちょっと戻ったりちょっと進んだり




104: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 18:48:48 ID:CxWS4TYQ0


 上弦の月が輝いていた。
柳の傍を通り過ぎ、小川の上をまたぐ橋の上まで歩いた所で、シャキンは歩を止めた。


(`・ω・´)「いつまでついてくる気ですか?」


 一人言に聞こえる呟きだ。
反応した者がいた。
塀の影になった所から一人の男が姿を現し、月に照らされた。

  _
( ゚∀゚)「流石だな」


 橋の上で向かい合った両者の間に、殺気が飛び交う。




105: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 18:51:25 ID:CxWS4TYQ0

  _
( ゚∀゚)「俺を覚えてるか」


 返事の代わりにシャキンは頷いた。
ジョルジュ長岡。
長岡道場の師範であり、先日シャキンが他流試合を申し込んだ相手であった。


(`・ω・´)「用件は」
  _
( ゚∀゚)「真剣での立ち会いを所望している」


 初めからわかっていたことだった。
シャキンは無言で刀を引き抜き、ジョルジュもまた刀を構えた。




106: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 18:58:36 ID:CxWS4TYQ0

  _
( ゚∀゚)「お前のせいで、うちの道場の評判は地に落ちた。死ぬがいい」


 つまらない人間だと思った。
流行の道場は金儲けの場としてはかなり有効だ。
ある程度名の売れた者が師範となり、素人でも続けられる程度のぬるい修練を課せばいい。


 例え強くなれなくとも、道場に通っているというだけで自慢や自己啓発になるという軟弱者の思考だ。
シャキンは面や籠手を付けた竹刀道場を軽蔑しており、そこに通う者を見下していた。


 強くなるには死の淵に立つしかないと考えている。
五年前から、真剣での立ち会いに挑み続け、多くの修羅場をくぐった。
全ては、獣となる為。




107: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 19:03:16 ID:CxWS4TYQ0


 ジョルジュは上段で構えていた。
対して、シャキンは青眼の構え、に近い構え方だ。


 シャキンは突きの遣い手であった。
荒巻一刀流の神髄はただ一つの技を必殺に仕上げることから始まる。
よって荒巻流を名乗る者たちは、それぞれ構えも技も異なる。


 橋の真中での対峙は、固着から動かなかった。
ジョルジュの顔に汗の粒が浮かび、あごからしたたり落ちた。

  _
( ゚∀゚)(隙が無い……)


 道場で剣を交えたときから、とてつもない剣の遣い手であることはわかっていた。
真剣での立ち会いなら経験がものを言うはずだと考え、今対峙している。
甘い考えだったと改めざるを得なかった。




108: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 19:06:07 ID:CxWS4TYQ0


 ジョルジュの方から少しずつ間合いを詰めていった。
すり足で慎重に、確実に近づいていく。


 だが圧されているのはジョルジュの方だ。
シャキンの剣気は樹齢千年の大木が如く揺らぎを見せない。


 一瞬だけ、シャキンの剣先が下がった。
ジョルジュが右足で踏み込む。


 上段から肩口を狙った斬撃が振り下ろされた。
頭では斬ったと思った。
だがジョルジュの手に手応えは返ってこなかった。




109: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 19:09:42 ID:CxWS4TYQ0


 ジョルジュは右肩が濡れているのを感じた。
それが自身の首がぱっくりと割れ、流れ出した血が濡らしたものだとはわからなかった。


 いつの間にかシャキンが横にいた。
既に納刀している。


 ああ、負けたのだ、とジョルジュが理解した瞬間、その場に崩れ落ちた。
絶命したジョルジュの屍体を一瞥し、何ごともなかったかのようにその場を立ち去ろうとする。


 歩みを止めたのは橋を渡りきってからだった。


(`・ω・´)「道理で気配が乱れると思った」




110: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 19:15:44 ID:CxWS4TYQ0


 再び抜刀する。
月明かりが及ばない闇に向かって、体を向けた。


 尋常でない殺気を纏った、三人の男たちが姿を見せる。
先ほどのジョルジュとは較べものにもならない剣気を、それぞれが纏っている。


ミ,,゚Д゚彡「シャキン。久しぶりだな」

(`・ω・´)「フサギコさん。それから、ミルナさんに、ロマネスクさんですか」

( ゚д゚)「俺の名を気安く呼ぶな、シャキン。お前はもう弟弟子ではないのだ」

(`・ω・´)「昔話をしに来た訳では無さそうですね」

( ФωФ)「仇討ちだ。三人がかりだが、悪く思うな」




111: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 19:19:24 ID:CxWS4TYQ0


(`・ω・´)「先生は、ちゃんと一人で相手してくれましたがね」


 三人とも、シャキンの倍はありそうな年齢だった。
総髪の男、フサギコは抜刀せずに構えた。
居合いの遣い手だった。


 ミルナは下段、ロマネスクは青眼の構えだ。
三人はシャキンを取り囲み、剣気を放った。


 三人、それぞれが放つ剣気は甚大だが、それを跳ね返すシャキンのそれも、
常人を遙かに超えていた。




112: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 19:22:21 ID:CxWS4TYQ0


(`・ω・´)「俺は闇を討つ」


 シャキンは青眼の構えに近い、独特な構えから、やや腕を下げた。


(`・ω・´)「闇を討つには、俺自身が闇に墜ちねばならんのだ」


 ロマネスクが跳んだ。
助走も無いのにかかわらず、人を飛び越えるほどの跳躍だった。


 同時にミルナが一歩踏み込む。
ロマネスクとミルナ、二人の斬撃がシャキンを挟んだ。




113: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 19:27:38 ID:CxWS4TYQ0


 上空から稲妻のように振り下ろされたロマネスクの斬撃を、刀の鍔で受け止めて返した。
体の動きは止めずに、地面を前転し、ミルナの間合いから逃げる。


 シャキンの動きに最初に反応したのはフサギコだった。
抜刀から横薙ぎの斬撃、居合い特有の高速の一撃だ。


 あらかじめ予測していた一撃だったので、致命傷は免れた。
だが庇い手が斬られる。
早く止血しなければ半刻以内に失血死する傷だ。


 シャキンが後ろに下がった。
ミルナがさらに一撃を加えようと前に足を踏み出す。
安直な行動であった。


 ミルナが片足を上げ、それが地面に着くよりも前に、シャキンが斬撃を繰り出す。
大きく横腹を斬られたミルナは、力なく地面に倒れた。




114: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 19:32:13 ID:CxWS4TYQ0


 ロマネスクが再び跳ぶ。
だが反対方向へシャキンが駆けていた。


 フサギコの正面に走り込む。
不意を衝かれたことで、居合いの抜刀が瞬きの時間ほど遅れた。


 シャキンはフサギコの腕を掴み、顔に肘鉄を食らわせた。
怯んだところを押し倒し、片腕で振るった刀によって首を掻き切った。
ごぽごぽと血の泡を吹くフサギコは、地面に倒れたまま、手足をばたつかせた。


 背中に風を感じた。
シャキンは振り向き様に斬撃を繰り出した。
宙を飛んでいたロマネスクの斬撃とかち合い、火花が散って二人の顔を照らした。




115: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 19:35:53 ID:CxWS4TYQ0


 一瞬のつばぜり合いが起こった。
両者が体を離したとき、シャキンは刀を振るっていた。


 確かな手応えを感じたが、ロマネスクの顔色は変わっていない。
二人はしばらく対峙したまま固着した。


 近くを流れる小川のさらさらという音だけが聞こえた。
やがてその音に、ロマネスクの弱々しい呼吸が混じった。
彼の羽織の腹の部分から血がにじみ出ていた。


 シャキンは動かず、ひたすら待った。
月明かりが彼らを照らす。
ロマネスクの顔色が、徐々に土色になっていくのがわかった。




116: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 19:42:16 ID:CxWS4TYQ0


 シャキンとて、止血しなければ間もなく死ぬ。
気合いの勝負だった。


 月が大分傾いた。
虫の鳴く声がどこからか聞こえてくる。


(`・ω・´)「闇だけが、闇を斬れるのだ」


 シャキンが刀を収めた。
鍔鳴りを合図にしてロマネスクが倒れた。


 早く止血しなければいけないのだが、三人の屍体の前で、しばらく立ち尽くした。
遠くで酔っぱらいの声が聞こえた。
夜にも、様々な音があるのを知った。


八輪「月」 終わり




117: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 19:57:24 ID:CxWS4TYQ0


 美府でも評判の高い料亭に、芸者が集められた。
つい最近、旗本となった男、あさぴーは、人生の最盛を満喫していた。


(-@∀@)「おい。もう歌はよい」


 隣の部屋に移動し、芸者たちを一斉に脱がせた。
複数の女を相手するのがあさぴーのが愉悦の瞬間であった。


 およそ一刻ほど、女たちを相手にした後、料亭を出た。
外に数人の部下と、一人の商人を待たせていた。


(-@∀@)「待ったか?」

(;'A`)「いえ、とんでもございません。あたしら、待つのも仕事の内です」




118: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 20:02:40 ID:CxWS4TYQ0


 平身低頭で返事をしたのは、長岡道場へ通っている商人のドクオであった。
ドクオはあさぴーに懇意にされている。


 というのも、ドクオが扱っているのが主に薬関連で、
彼の横流しする違法な薬物を使った儲けであさぴーは潤ったのだ。


 時折、町にやってきてはドクオを連れ回す。
小ずるい男を傍に置くのも面白いとあさぴーは考えている。


(;'A`)「あさぴー様。大変恐縮なんですが、町に辻斬りがいるという噂があります。
    先日も、私の通っている道場の師範が殺されてしまいました。
    今夜はこの辺にして、そろそろお開きとはいきませんか?」




119: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 20:05:23 ID:CxWS4TYQ0


(-@∀@)「辻斬りなど、俺が斬り捨てる」

(;'A`)「はあ……」

(-@∀@)「それに、これだけの人数と、今日は用心棒も雇っている。
      何をびくつく。商人よ」


 用心棒。
ドクオはその男が本当に頼りになるのかを心配していた。


 ドクオの視線に気がついたのか、用心棒の男は笑みを返した。


( ´_ゝ`)「どこの町にも辻斬りはいるだろう」




120: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 20:07:59 ID:CxWS4TYQ0


(;'A`)「そうかもしれませんが。夜猿の噂もありますし」


 夜猿の名を聞いて、あさぴーの部下たちは一瞬顔を曇らせた。
しかし、用心棒の男だけは笑みを崩さなかった。



 それからもう一軒、あさぴーは遊女屋を回った。
いい歳して精力旺盛だと、心の中で笑った。


 あさぴーが出てきた頃には、既に月が傾き始めていた。
いくら遊び人のあさぴーでも、流石に遅すぎたと思ったのか、足が帰路に向かった。




121: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 20:11:32 ID:CxWS4TYQ0


 ただ待つだけのドクオはくたくただった。
さっさと家に帰って、酒を一杯あおってから寝よう。
先に帰らせてもらいやす、そう言う機を計った。


 夜の闇がいっそう濃くなり始める。
生ぬるい風が肌を撫でた。


 何かがおかしい。
最初に気がついたのは、用心棒の男だった。


 続いて、あさぴーの部下たち、そしてドクオ。
最後に、あさぴー。
全員が足を止めた。




122: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 20:15:59 ID:CxWS4TYQ0


(-@∀@)「何だ?」


 何がおかしいか、というのは誰も具体的に言えなかった。
ただ、足下がふわふわするような、夢見心地の感覚だ。


 用心棒一人だけが、静かな剣気に身を包み、襲い来る闇の中心にいる者を待った。



 男は一人で現れた。
まるで陽炎のように、いつの間にか目の前にいた。


(-;@∀@)「何だ、こいつ」



 殺気に似た、何か別の、悪意を伴った、だが表す言葉が見つけられない、気配を放っていた。
根拠など何一つ無かったが、全員の心中に人喰い夜猿のことが浮かんだ。




123: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 20:19:56 ID:CxWS4TYQ0


 月がちょうど雲に隠れ、深淵の闇が彼らを襲った。
現れた男の黒の羽織が、ちょうど闇に溶け込んだ。



 血と悲鳴が闇の中を飛び交った。
首が、胴体が、下半身が、半身が、空を飛び、地に横たわる。


 あさぴーの部下たちが、瞬く間に肉塊となった。
技というにはあまりにも荒々しく、だが反応すらできない剣技は間違いなく一流だ。



(-;@∀@)「よ……ざ……る……」




124: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 20:24:09 ID:CxWS4TYQ0


 あさぴーは刀を抜き、構えていたが、ただ震えているだけで動けなかった。
踏み出そうが、下がろうが、追おうが、逃げようが、何をしても死ぬ気がした。


(;゚A゚)「鬼……人じゃない、鬼だ」


 見慣れた町が著しく様相を変えていた。
地獄だと言われれば信じることができた。


(-;@∀@)「よ……用心棒! 俺を」


 あさぴーの目の前で剣閃が光った、気がした。
事実、縦に半分に割れたあさぴーが、ぬらりと地面に横たわった。




125: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 20:27:22 ID:CxWS4TYQ0


 ドクオは死ぬ覚悟を決めざるを得なかった。
相打ちなど望む気にも、ましてや生き残るかもしれないという希望など、生まれるはずもなく。


 夜猿は、刀を抜いていた。
体の動きは緩慢で、病人が歩いているみたいに見えた。
ドクオは目を瞑った。


 刀の交わる音がした。
今夜、初めて聞こえた、普段の剣での戦いの音だ。


 用心棒、兄者の二刀流が、夜猿の一撃を弾いたのだ。


(;'A`)「あんた……」




126: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 20:34:14 ID:CxWS4TYQ0


 兄者は二刀流は見事なものだった。
片方の刀で斬撃を弾き、もう片方の刀で瞬時に攻撃を始めていた。
手首の返しのみで放った斬撃だった。


 夜猿は背中を逆に反らせて兄者の斬撃を躱した。
と同時に、片足で水月を蹴り、兄者の体を突く。


 弾かれたように両者が距離を取った。
向かい合ったとき、夜猿が被っていた編み笠が外れていた。


( 鵙悄亜法峪造譴鵑…それじゃあ。俺の、体は」


 夜猿の右目は、上下をまたいで刀傷が走っており、眼球が割れていた。
傷跡は赤く染まり、割れた眼球の奥で闇がこちらをのぞき込んだ。




127: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 20:37:26 ID:CxWS4TYQ0


( ;´_ゝ`)「走るぞ!」

(;'A`)「え?」


 ドクオは片手で兄者に掴み上げられ、肩に担がれた。
踵を返して全速力で町を駆ける。


 敵前逃亡は初めてのことではないが、たった一人に負けた経験はなかった。
剣気をはじき返されるならまだしも、呑み込まれたのも初めてのことだ。


( ;´_ゝ`)(なるほど。一筋縄にはいかないか)




128: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/07(木) 20:39:18 ID:CxWS4TYQ0


 夜猿は、逃げてゆく兄者の背中を見ながら、薄笑いを浮かべた。
また向かってくるのがわかっていたから、わざと逃がした。


( ´_ゝ`)「しばらくお前の家に厄介になる。命を助けた借りは返せよ」

(;'A`)「あ……ああ」


 ドクオはまだ体を動かせないでいた。
師範も亡くなったし、もう剣を取るのはやめようと決意した。


九輪「闇」




132: 名も無きAAのようです 2012/06/07(木) 20:57:14 ID:r9CC..RM0

これおもしれえ・・・長過ぎずさっくり読めて、かつ雰囲気は時代劇してていい
投下ペースも申し分ねえ




133: 名も無きAAのようです 2012/06/07(木) 21:14:23 ID:Ih1ZpDOEO

時代劇ものって苦手なんだがこれは好きだな




136: 名も無きAAのようです 2012/06/07(木) 21:59:02 ID:hBTJo5to0

面白いな
淡々としてる分斬り合いの緊迫も呆気なさが伝わってくる




142: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 16:59:10 ID:R8VTn.ik0


 美府の口入れ屋に足を運び続け、とうとう情報を掴んだ。
一月前から仕事を受け入れているらしく、時期はちょうど合う。


 浪人らしいが剣の腕は確かで、名前を高岡と名乗っている。
流派は聞いていないらしいが、情報としては十分だった。


( ・∀・)「今日は来ていないのか?」

爪'ー`)y‐「つい先日、仕事を受けたばかりだからねえ」


 口入れの男は煙管に吸い付きながら飄々と言った。
商いを行う者特有の、捉えづらい雰囲気の男だった。




143: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 17:04:40 ID:R8VTn.ik0


 モララーは懐紙を取りだし、男の前に置いた。
男は手触りで中身を確かめている。


爪'ー`)y‐「あと五両、払えるかい?」


 手持ちを投げ出せば払える額だった。
金の匂いでわかるのか、流石の勘というべきか。


爪'ー`)y‐「長屋に住んでいるらしい。ここからあまり離れていない。場所は……」


 金を渡すとべらべらと喋った。
ここから半里も無い場所の、小川近くの長屋とのことだった。
軽く頭を下げ、口入れ屋を後にした。




144: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 17:13:16 ID:R8VTn.ik0


 長屋はすぐに見つかった。
部屋は五つ、どの部屋なのかは聞いていないが、米を洗っている女に尋ね、部屋の場所も明らかになった。


 年季の入った長屋で、障子が所々破れている、いわゆる貧乏長屋という家だ。
藩士が住まう場所とは思えないが、隠れ場所としては適しているかもしれないと思った。


 モララーが目的の部屋の前に立つ。
ちょうどそのとき、戸板が動いた。


从 ゚∀从「……お前か」


 モララーが探していた男は、別段驚く様子も見せなかった。


( ・∀・)「驚かないのだな」




145: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 17:15:47 ID:R8VTn.ik0


 高岡、モララーはハインと呼んでいるその男は、歯を見せて陽気に笑った。


从 ゚∀从「これほどの殺気を持つ者が誰か、心当たりは多くない。
      お前が来るのは何となくわかっていたしな」

( ・∀・)「藩の犬だとでも罵るつもりか?」

从 ゚∀从「そういう生き方もあるだろう」

( ・∀・)「時間はあるか」

从 ゚∀从「いくらでも」

( ・∀・)「少し話をしよう」

从 ゚∀从「ああ」




146: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 17:21:46 ID:R8VTn.ik0


 川沿いの土手を並んで歩いた。
モララーは昔に戻ったような錯覚を覚えた。


 あの頃と違うのは、もはやハインのようなあっけらかんとした笑い方が出来なくなったということ。
そして竹刀や木刀ではなく、真剣で斬り合わなければならなくなったということだ。


从 ゚∀从「祖国の者たちは、元気にしているか」

( ・∀・)「何も変わらん」

从 ゚∀从「そうか」


 口数は少なかった。
二人とも、何処か本題を避けるようにしていた。




147: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 17:24:38 ID:R8VTn.ik0


( ・∀・)「門下生たちを纏めるのは、俺一人では無理だ」

从 ゚∀从「そうか? 師範代が二人も三人もいるより、一人が纏めた方が都合がいいと思うが」

( ・∀・)「師範がしっかりしていればな」

从 ゚∀从「ご老体を隠して剣を取るのも士道ではないか」

( ・∀・)「そうかもしれないな」


 ハインがまた屈託のない笑顔を見せると、ようやくモララーもぎこちなく笑った。


( ・∀・)「明日の正午でいいか」

从 ゚∀从「場所は?」




148: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 17:29:38 ID:R8VTn.ik0


( ・∀・)「宋佐久寺の境内で」

从 ゚∀从「わかった」


 結局、あまり話は弾まなかった。


从 ゚∀从「モララー」


 別れ際にハインは、また子供のように笑っていた。


从 ゚∀从「迷うな。でなければ俺には勝てんぞ」

( ・∀・)「わかっている」


 土手の近くで子供たちが水遊びをしていた。
モララーは昔の自分たちと重ね合わせようとしたが、上手くいかなかった。




149: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 17:37:22 ID:R8VTn.ik0


 旅籠に戻ると、部屋で退屈そうにしていたつー、ぱっと笑って手を振った。
何度モララーが注意しても、女のように足を崩す癖を直さない。


(*゚∀゚)「お茶出すよ」

( ・∀・)「頼む」


 旅籠の台所に駆けていくつーを見送ってから、刀を引き抜いて刀身に目をこらした。
手入れを欠かさなかったために、刃こぼれなどはない。
刀の不調で負けるということは無いだろう。


 ただしハインは自分と同格の遣い手である。
さらに今は、家老の汚職を明かそうとするハインと、隠すことに荷担している自分との戦いだ。


 心気に差が出てしまえば、間違いなく斬られるのは自分の方である。




152: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 17:40:21 ID:R8VTn.ik0


 昔は士道を貫こうと夢を見ていたはずだ。
命を賭けて汚職を明かそうとするハインは、まだ夢を追っている。
自分は夢を捨てた。


 いつから道が分かれてしまったのだろうとモララーは考えた。
明確な分岐点など無かったように思える。


 本当に、いつの間にか、自分は汚れていた。


(*゚∀゚)「お茶だよ」


 つーが持ってきてくれたお盆から湯飲みを手に取った。
渋い茶だったが、モララーの舌によく馴染んだ。




153: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 17:43:39 ID:R8VTn.ik0


 急に焦燥が頭を支配し、心臓の鼓動が早くなった。
ふと思ったのだ、明日死ねば、もう茶を味わう機会も無くなるのだと。


( ・∀・)「つー」

(*゚∀゚)「何だ?」

( ・∀・)「お前の、故郷の話をしてくれ」

(*゚∀゚)「もう無いよ」

( ・∀・)「何でもいい。聞かせてくれ」


 もしも自分が死ねば、つーはどうなるのだろう。
意外と、一人でも生きていけるかもしれない。


 つーは時々旅籠の手伝いをしているので、女将に気に入られていた。
ここに住み込みで働ければ、食っていくのには困らないだろう。




154: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 17:47:17 ID:R8VTn.ik0


 体を売るのはもうやめた方がいいと思った。
つーには似合わないと。


(*゚∀゚)「百人もいない村で、そんなに大きくないんだ。みんなそれぞれ畑を持ってる」


 しばらく間が空いてからつーはしゃべり出した。


(*゚∀゚)「米と大根と、それから薬草と茸が採れる山があって、猪も出たけど。
    祭りの日にはお腹いっぱい食べられるけど、それ以外の日はあんまり食べられない。
    お母ちゃんは時々町に出て、オレに服を買ってくれる」

( ・∀・)「父親も農家か」

(*゚∀゚)「お父ちゃんはいない」




155: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 17:51:40 ID:R8VTn.ik0


 深くは訊かなかった。
よくある話だ。


(*゚∀゚)「でも、お母ちゃんは時々男を家に入れてくる。そういうとき、オレが相手するんだ」


 それも、よくある話ではないが、聞いたことはあった。
閉鎖的な村ではあり得ること、しかし子供には少し同情していた。


(*゚∀゚)「でもオレ、別に嫌じゃなかった」

( ・∀・)「どうして?」

(*゚∀゚)「オレは力が無いし、あんまりクワも振れない。まともな仕事はそれだけ。
     お母ちゃんは、オレがそうやって仕事をしたら、夜中一緒に寝てくれるんだ。
     普段は、土蔵で寝てるんだ」




156: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 17:55:41 ID:R8VTn.ik0


 位は高くないが、一応名家と呼ばれる家に生まれたモララーにとって、
それは少し信じがたい世界の話だった。


 つーは平然とした顔でいた。


(*゚∀゚)「あの夜も、オレは土蔵で寝てた。そしたら悲鳴が聞こえたんだ」


 話がころころと変わるので始めはわからなかったが、夜猿のことだと見当がついた。


(*゚∀゚)「オレは、ずっと震えてた。クマが出たんだと思って。そしたら、違った。
     土蔵の扉は窓がついてるけど、そこからあいつがのぞき込んだ。
     目が、開いてた。貝みたいに割れてた。オレのことをじっと見てた」




157: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 17:59:11 ID:R8VTn.ik0


 両手で湯飲みを抱えるつーの手先が震えていた。


(*゚∀゚)「あいつはいつの間にかいなくなってた。オレは夢だと思って寝たんだ。
     次の日の朝、オレは土蔵から出た。村のみんなは、もう死んでた。
     お母ちゃんは首が取れてたよ」


 淡々と話しているようだったが、言葉尻が消え入りそうに小さくなっていった。
モララーはつーの手を取り、片手で包み込んだ。
つーが握り返してくる。


(*゚∀゚)「しばらく、オレは土蔵で暮らした。食べ物はあった。
     そしたら、ある日侍が一人やってきて、屍体を調べてた」

( ・∀・)「幕府の者か?」




158: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 18:05:28 ID:R8VTn.ik0


(*゚∀゚)「わかんない。二十歳くらいの。その人に夜猿の話を聞いた。
     夜猿は美府に向かっただろうって言って。だからオレも、この町に」

( ・∀・)「お前は夜猿に会ってどうするのだ」

(*゚∀゚)「オレがこの手で、あいつを倒すんだ」


 握り返していた手に力が込められた。


( ・∀・)「無理だ。幕府が手を焼く辻斬りだぞ」

(*゚∀゚)「相打ちでいい」


 子供にしか見えなかったつーの目に、小さな剣気が宿っていた。
本気で言っているのがわかり、笑い飛ばすこともできなかった。




159: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 18:07:45 ID:R8VTn.ik0


( ・∀・)「相打ちどころか、逃げることも無理だろう」

(*;゚∀゚)「だって」

( ・∀・)「俺が斬ろう」


 丸くて大きめのつーの目が、さらに大きく見開かれた。
モララー自身、自分の言葉に驚いていた。


( ・∀・)「お前には世話になっている所もある。恩は返すさ」


 考えるよりも先に口が動いたが、決して気休めの嘘ではない。
つーの心に少しでも陽が灯るのなら、自分が刀を振ろうと思った。




160: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 18:13:50 ID:R8VTn.ik0


 欲望にまみれた刀にうんざりしていたのかもしれない。
新しい転機を探していたことも関係しているだろう。


(*゚∀゚)「ありがとう」


 モララーを信じているのか定かではなかったが、手から力みが消えていた。
つーは崩していた足をもぞもぞと動かし、モララーの膝の上に乗っかってきた。


 鬱陶しいと振り払うことはせず、つーの好きなようにさせた。
モララーの胸板に頭を預け、目を閉じていた。


 元々は護るために侍がいたのだ。
明日を生き延びることができたら、この華奢な少年のために剣を振ろうと決意した。
償いにも似た決心だが、悪くないと思えた。


十輪「義」




162: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 18:22:21 ID:R8VTn.ik0


(;'A`)「俺の金なんですよ。あんまり張り切らないで下さいよ旦那」


 居酒屋でとっくりごと酒を飲む兄者に、呆れたドクオが声を上げた。
既にかなりの量を飲んでいるはずだが、兄者の表情は普段と全く変わっていない。


( ´_ゝ`)「それより、目星はつけたのか」

('A`)「まあ。浪人程度だったら十人は集められる」


 ドクオが言い終わるよりも先に兄者の裏拳が頬を叩いた。


(;'A`)「何するんですか」

( ´_ゝ`)「木偶など何万人いようが数には入らん」




164: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 18:26:55 ID:R8VTn.ik0


(;'A`)「旦那が仲間を集めるっていうから、方々を探し回ってるんですよ。
    文句を言うなら少しは自分も足を動かして……」


 今度は一本拳を人中に打ち込まれ、顔を押さえて悶える。
このところドクオは災難ばかりであった。


( ´_ゝ`)「相手は夜猿だぞ。俺と同じ程度の剣の遣い手を三人、最低でも二人は欲しい」


 ドクオと向かい合って机に座っているものの、先ほどから兄者は店内の一点を見ていた。


('A`)「そういえば、通ってた道場に他流の人間が来まして、そいつはかなりの腕を持ってますよ」

( ´_ゝ`)「お前、もう帰っていいぞ」




165: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 18:29:51 ID:R8VTn.ik0


(;'A`)「はい?」

( ´_ゝ`)「金だけ置いていけ」


 苦虫をかみつぶしたような顔をしたドクオだが、兄者には逆らえない。
命を助けてもらった借りがあるし、気圧される迫力がこの男にはあった。


 ドクオが店から出て行ってから、兄者はとっくりを持って席を移った。


( ´_ゝ`)「よう。一緒に飲まないか」


 歳は三十、くらいの刀を差した男が、子供を連れて酒をあおっていた。
男は表情を変えず兄者を見返す。




166: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 18:34:22 ID:R8VTn.ik0


( ・∀・)「今夜はすぐに帰るんだ。悪いが、絡むなら別の相手にしてくれ」


 兄者は、男が机の下で刀の鞘に手を伸ばしたのを感じ取った。
はっきりと見えた訳ではないが、いくつもの修羅場をくぐった勘が教えてくれる。
この男はただ者では無い。


( ´_ゝ`)「お嬢ちゃん。刺身が好きなのかい?」


 兄者が来たことに関心を示さず、刺身を口に運び続けていた子供に声をかけた。


(*゚∀゚)「好き」

( ´_ゝ`)「海沿いの町だからな。いい魚が捕れるんだ」




167: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 18:37:41 ID:R8VTn.ik0


(*゚∀゚)「海」


 子供は男の方を振り返ってぱっと笑った。
この男には不釣り合いな連れだと兄者は思った。


(*゚∀゚)「海って、やっぱ臭いのか?」

( ・∀・)「潮の臭いはあるが、慣れればそうでもない。見てみたいか?」

(*゚∀゚)「うん」

( ・∀・)「明日は用事があるんだ。明後日、連れていってやる」


 仲はいいようだ。
兄妹だと目星をつけた。
そういえば自分にも妹がいたなと兄者は思い出す。




168: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 18:40:38 ID:R8VTn.ik0


( ´_ゝ`)「妹かい?」

( ・∀・)「お前には関係ない」

( ´_ゝ`)「つれないねえ」


 兄者が机についてから、男の片腕はずっと机の下だ。
警戒されていた。


 男は即座に兄者が相当な遣い手だと悟っていた。
それも、血の気配をたぎらせる、人斬りであるということまで察している。


( ´_ゝ`)「暗殺かい?」


 男の動きが一瞬だけ止まったのを兄者は見逃さなかった。




169: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 18:45:59 ID:R8VTn.ik0


( ・∀・)「何のことだ」

( ´_ゝ`)「こめかみに面ずれの痕がある。身のこなしから見ても、道場剣法を学んだ者だ。
      上等ではないが、職人の袴を着ている。商人ではないのに身なりを整えている。
      藩士だろう。だがこの町には住んでいない。藩士がこんな不味い酒を出す居酒屋には来ない。
      どこか遠く、別の藩から何かの目的があってやってきた。
      それもお忍びだ。あらかじめ通達があるのなら町を案内する付き人がいるはずだ。
      他人には明かせない用事でわざわざ藩士が……それも、相当な剣の遣い手が寄こされた。
      十中八九、そりゃ暗殺だ」


 男の剣気が兄者に向けられた。
肌を凍てつかせる冷たい殺気だった。


( ´_ゝ`)「なあに、俺はただの浪人。興味本位で言ってみただけだ。そう睨むな」




170: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 18:49:00 ID:R8VTn.ik0


( ・∀・)「ただの浪人には見えんな。お前から血の臭いがする。
      今まで何人の人間を斬った」

( ´_ゝ`)「どうでもいいことは覚えられないたちでなあ」


 不穏な空気を察したつーは、刺身を食べる手を止めて二人を交互に見やった。


( ・∀・)「表に出よう」

( ´_ゝ`)「あんたと斬り合うつもりはない」

( ・∀・)「道を踏み外した外道相手に斬る理由が必要か?」

( ´_ゝ`)「踏み外した? 馬鹿言え。俺が歩けばそこが道だ」




172: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 18:51:14 ID:R8VTn.ik0


 兄者は席を立ったが、男の殺気には反応を返さなかった。
斬り合うつもりが無いというのは本当だった。


( ´_ゝ`)「ん?」


 突然、顔をつーの方へ伸ばし、くんくんと鼻を鳴らした。


( ´_ゝ`)「男か」


 兄者は意味ありげな目線を男に向ける。
男は静かににらみ返した。




173: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 18:54:24 ID:R8VTn.ik0


( ´_ゝ`)「世の中、色んなやつがいるからね」


 ドクオからもらった金を店主に渡し、残りの金を男がいる机の上に置いた。


( ´_ゝ`)「俺は兄者。名は」

( ・∀・)「モララー」

( ´_ゝ`)「夜猿を殺すために仲間を集めてる。
      気が向いたらドクオという男がやってる薬屋に来い。
      どうしても俺と立ち会いたいなら、ついてるこぶは置いてくることだな」


 店を出ると、外は薄暗くなっていた。
少し前までは人で賑わっていたが、夜猿の件があってから人が減ったように思える。




174: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/08(金) 19:01:18 ID:R8VTn.ik0


 ドクオの家に帰ろうと足を踏み出したとき、自分のあごから汗がしたたり落ちたのを感じた。


( ´_ゝ`)(お坊ちゃん剣法も馬鹿にはできないね)


 あの子供に顔を近づけたとき、モララーから一際大きい剣気をぶつけられた。
一瞬、刀を抜きそうになったが、何とかこらえた。


 ここで殺してしまっては、いつまでも仲間など集められない。


 全てが終わったあとに、全員殺せばいいだけの話だ。
夕焼けが町を染めていた。
兄者にとって、赤は気持ちが安らぐ色だった。


十一輪「邂逅」 終わり




179: 名も無きAAのようです 2012/06/08(金) 23:21:23 ID:XRln3Xps0

どちらからも迫力が伝わってくるってすげえよ





182: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 00:06:14 ID:QPRHnsBc0


 美府の夜に、めっきり人が減った。
夜猿の影響が顕著だ。


 夜風に当たりながら散歩するのは子供の頃から好きだった。
隣には、いつも兄がいた。
将来藩士として認められ、道場を持つことを夢に見ていた。


 貧しい家ではあったが、そこには確かに希望があった。
今はこの夜に相応しい暗闇に囲まれて生きている。


 長岡道場の前までやってきた。
門から看板を下ろしている。
師範が死んだのだから無理はない。




183: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 00:10:02 ID:QPRHnsBc0


 塀に向かって跳躍し、片足で塀を蹴り、垂直に体を飛ばした。
片手で這い上がり、中へ侵入する。


 道場と隣接して建てられた住まいに、ツンが住んでいるはずだ。
一度奥へ免れたときに、確認していた。


 小さな気配を感じた。
人ではなく、二匹の犬がこちらに走ってやってきている所だった。


 シャキンは素早く抜刀し、一閃にて犬たちを斬り捨てた。
斬り殺すときに、微かに吠えたが、目立たないようには済ませた。
ツンの寝室を目指す。




184: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 00:13:36 ID:QPRHnsBc0


 家の造りというのは大体どこも同じなのだ。
庭をぐるりと回れば、どこが寝室なのか大体わかった。


 廊下に上がり、床鳴りに注意しながら、寝室の障子戸を指の幅ほど開けた。
殺気が膨れあがるのを感じ取った。


 障子ごと切り裂こうとする斬撃が目の前を走った。
下がらず、上半身の動きだけで躱してのける。


 障子が真っ二つになり、寝室の中が露わとなった。
寝間着のまま真剣を構えたツンは、来訪者がシャキンだとわかると剣気を一瞬揺るがせた。




185: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 00:18:13 ID:QPRHnsBc0


 シャキンが素早く抜刀し、刀の根本を斬り上げた。
強く弾かれたツンだったが、手元から刀を離さなかったのは、師範代に似合う実力だった。


 シャキンは斬撃と同時に間合いを大きく詰めていた。
ツンの手首を掴み上げ、強引に刀を捨てさせる。


 後ろに敷かれた布団の上に押し倒されたツンは、必死の抵抗でシャキンの腹を殴ったが、
岩を打ったような感触がしただけで、効いた様子は微塵もなかった。


ξ;゚゚)ξ「誰か……」


 叫ぼうとした瞬間に、シャキンから容赦なく顔を殴られた。
歯が折れ、口から飛び出していくのを、どこか冷静な気持ちでツンは眺めていた。




186: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 00:21:00 ID:QPRHnsBc0


(`・ω・´)「お前を犯す」

ξ;゚゚)ξ「シャキン……」

(`・ω・´)「お前に惚れた訳ではない。
      ただ、町に来てから、最初に話をした女を犯すと決めている」

ξ;゚゚)ξ「馬鹿な真似を、するな」

(`・ω・´)「賢い獣などおらん」


 寝間着をはぎ取ると、すぐにツンの肢体が暗闇に浮かび上がった。
背後の月に照らされ青白く光る肌は、きめ細かい健康な女の肌を主張していた。




187: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 00:26:54 ID:QPRHnsBc0


 ツンの胸は小ぶりではあったが、整った形をしており、乳頭は薄い桃色に光っていた。
一新に胸をむしゃぶりつかれる。
ツンは声を我慢していたが、乳頭を強く吸ったとき、喉の奥で息が詰まる音が漏れた。


 シャキンは頭を下げ、へその辺りをなめ回した。
同時に内ももを手で撫でる。


 無理矢理足を開かそうとしたときに、また強くツンは抵抗した。
今度は顔ではなく、腹を殴った。
一瞬、うめき声を上げ、そこからもうツンは暴れなくなった。


 両足首を掴み、大きく股を広げた。
ツンの秘部は、薄く細い毛が申し訳程度にしか生えておらず、形がよくわかった。
ぴっちりと閉じられた肉の溝から、透明な汁が線を作っていた。




188: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 00:31:41 ID:QPRHnsBc0


 汁を吸い取るように舌を這わせた。
舌で溝をこじ開け、敏感な部分に吸い付き、なめ回し、時には息を吹きかけた。


ξ; )ξ「堪忍、してえ……」


 およそ半刻もの間、ただ舌で愛撫し続けた。
やがて舌の動きに合わせて腰が浮き上がるようになった。
さらに吸い付く力を強めると、ツンの呼吸の間に唸りのような喘ぎ声が混ざるようになった。


 シャキンは股の間から顔を離すと、膨張しきった自身のものを溝にあてがった。
唾液と愛液を先端に塗り、体重をかけて奥へと進む。




189: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 00:34:51 ID:QPRHnsBc0


ξ; )ξ「い、痛い、痛い」


 途中まで入れた所で、わざと腰を止めた。
体を倒し、ツンの唇を奪った。


(`・ω・´)「お前の父親を殺したのは、俺だ」


 ツンの瞳にさっと影が横切るのを確かに見た。
シャキンは足に力を込め、最も深い場所まで一気に腰を沈めた。


ξ; )ξ「あ、あああああ、あああああああ、あああ!」


 爪を立てた手で体中を引っかかれた。
意にも介さず、腰を振り続ける。
愛液に血が混ざったのが臭いでわかった。




190: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 00:38:51 ID:QPRHnsBc0


 それからさらに時間が経った。
いつの間にかツンは抵抗をやめていた。


 シャキンの腰の動きに合わせて、悲鳴に近い喘ぎ声を上げるだけだ。
狂うことで、自分を保っているようにも見えた。
汁と汁が重なり、ぶつかり合い、官能の音を立てた。


 いっそう腰の振りが激しくなり、ツンの中でシャキンが果てようとしていた。
同時に、ツンの喘ぎ声も今まで以上に大きくなった。


 シャキンは背中と足のももが張り、目の前が黒く染まるのを感じた。
全く同じときに、ツンの腰ががくがくと揺れ、足先がぴんと張った。




191: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 00:42:36 ID:QPRHnsBc0


 全て終わると、自分の着物だけを直し、落ちていた刀を拾った。
ツンはまだ足を開いたまま、体を痙攣させていた。
肉の溝から、白い液が垂れていた。


(`・ω・´)「懐刀くらいあるだろう。死ぬなら勝手に死ね」


 部屋から出て行こうとすると、背中に声をかけられた。


ξ; )ξ「何故……生き急いでいる……」


 剣士ではない、弱々しい女の声だ。
だが、無視できない力も感じた。




192: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 00:46:42 ID:QPRHnsBc0


 シャキンが振り返る。


(`・ω・´)「光など、一片も必要でない。俺はただ闇に墜ちたいのだ」

ξ; )ξ「な……ぜ……」

(`・ω・´)「俺が、もう一度朝日を拝むためだ」


 それだけ言って、また歩き始めた。


ξ; ー )ξ「無理だな、お前には」


 最後の言葉だけは、今まで聞いたことのない声色だった。
一度立ち止まったが、結局シャキンは振り返ることなく、闇に消えていった。


十二輪「夜」




200: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 19:26:05 ID:cnLtUQjQ0


 その日、朝早く起きたにもかかわらず、既につーは目を覚ましていた。
布団の中で顔を隣に向けると、自分の胸の辺りからつーがこちらを見上げていた。


(*゚∀゚)「おはよう」


 まるで小さな妻を娶ったようだ。
どちらかと言えば娘に近いか。


 布団を片付け、顔を洗い、髪を結った。
つー程では無いがモララーの髪も結わなければ邪魔になる長さだった。


( ・∀・)「俺は出る。留守番を頼むぞ」




201: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 19:27:57 ID:cnLtUQjQ0


(*゚∀゚)「やだよ。オレも行く」

( ・∀・)「駄目だ」

(*゚∀゚)「だって退屈だもん」


 今日に限ってつーは強情な態度を取った。
無理もないかとモララーは諦める。
一日中旅籠にいては腐った人間になってしまうかもしれない。


 かといって付いてくるのを許すことはできなかった。
これからモララーは斬り合うのだ。


( ・∀・)「町に出てもいい。ただし、陽が傾くよりも前に帰ってくるんだ」




202: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 19:30:45 ID:cnLtUQjQ0


 つーに二十文渡し、小遣いとした。
刺身を前にしたときよりも明るい顔で受け取る。


(*゚∀゚)「これでお団子食べていい?」

( ・∀・)「ああ」

(*゚∀゚)「刺身は?」

( ・∀・)「買えないとは思うが、どう使ってもいい」


 つーは自分で縫ったらしい巾着袋に二十文を入れた。
二人で旅籠を出て、別れる直前に、思い出したようにつーが言った。




203: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 19:33:10 ID:cnLtUQjQ0


(*゚∀゚)「明日は海に連れて行ってくれるんだよね」


 そういえば昨夜、そんな話をしたと思い出した。


( ・∀・)「ああ。約束する」


 生きて帰ってくることができれば、とは付け加えなかった。
子供らしい笑顔で笑い声を上げながら、巾着袋を手につーが駆けていった。

 危なっかしい走り方に目を離せなかったが、背中が見えなくなると、
反対方向へモララーも歩き出した。




204: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 19:37:13 ID:cnLtUQjQ0


 商店通りをゆっくりと歩く。
正午までまだたっぷりと時間がある。


 足が重く、水の中を歩いている気分になった。
これからのことを考えると、時間の余裕も関係無く、歩が遅くなる。


 死ぬのだ。
おそらくこれから、自分は死ぬ。


 生きて帰れたら、つーを海に連れて行ってやり、彼女の心に闇を落とす辻斬りを倒す。
約束はしたし、決心もついている。


 ただ、約束を守るには、今日一日を生き延びねばならず、
可能性は絶望的だと考えていた。




205: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 19:39:47 ID:cnLtUQjQ0


 結局の所、士道を捨て、藩の犬にまで成り下がったあげく、死の淵に向かっている。
つーの存在だけが癒しであったが、逃げ場所にしていることも否めなかった。


 尺八の男が聞こえ、足を止めた。
飴売りの男が台車を引いて通りを歩いている。


 呼び止めて、飴細工を六つほど買った。
金を払うとき、自分の手が震えているのがわかった。


 長い間、町の中を行ったり来たりしていた。
往来の中で、町人が訝しげにモララーを見てくることがあったが、気にしている余裕もなかった。




206: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 19:42:42 ID:cnLtUQjQ0


 やがて正午が近づき、重い足を引きずって宋佐久寺へと向かった。


 宋佐久寺は小高い丘の上にあり、長い階段を登れば、境内から町を見渡せる。
ただ数年前から住職が不在となり、今ではあちこちに雑草が生え、夜には浮浪者が集まる。


从 ゚∀从「よう」


 境内に入ると、真っ直ぐ進んだ先にハインが立っていた。
いつ見ても自信を漲らせている態度を取っていた。


( ・∀・)「待たせちまったな」




207: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 19:46:13 ID:cnLtUQjQ0


从 ゚∀从「随分といい場所を見つけたな。
      美府に来て一月が経つが、こんなに景色がよく見える場所を俺は知らなかった」

( ・∀・)「旅籠の女将が教えてくれたんだ」

从 ゚∀从「人徳というやつだな」

( ・∀・)「俺にそんな高尚なものがある訳ないだろう」


 二人は間合いから数歩距離を離して向かい合った。


( ・∀・)「俺は汚れた。お前のような綺麗な魂を失った」

从 ゚∀从「魂に価値の差なんてないさ。あるかどうかだ」




208: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 19:53:19 ID:cnLtUQjQ0


( ・∀・)「では俺は、魂を亡くした木偶だ」

从 ゚∀从「木偶は悩まない。景色の善し悪しもわからん」


 距離を縮めないまま、数瞬の間見つめ合った。
言葉は無いが、視線の交じり合いの中で、互いの思念が飛び交った。


 二人は同時に笑みを浮かべ、同時に抜刀した。
ぶつかり合った剣気が境内の空気を揺らし、木にとまっていた鴉がまとめて飛び去った。


 構えは全く同じであった。
同門として剣を取り、同じ場所で同じ時間を過ごした過去が、血流の速さまで等しくさせていた。
ただ剣気だけが異なり、混ざらぬものとして弾き合っていた。




209: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 19:58:03 ID:cnLtUQjQ0


 高く昇った太陽がじりじりと肌を焦がした。
二人は僅かに足の指を動かし、間合いを詰めていった。


 モララーは夢を見ていた。
子供の頃、大きな闇を見上げて、勇んで剣を取っていた頃の夢だ。


 隣にはいつもハインがいて、身のない話ほど花が咲いた。
思い返すのは、いつも下らない記憶だけだ。
だが、愛おしい過去だ。


( ・∀・)(すまん、つー)


 剣気で圧倒されたモララーは、心の高まりが跳ね上がる瞬間に、足を踏み出した。
視界に映るものが全て遅く見えた。




210: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 20:03:01 ID:cnLtUQjQ0


 筋肉の躍動まで如実に感じ取ることができた。
五感から入ってくるもの全てが、自身の死を教えた。


 だが、突然それらの感覚が途絶えた。
精神は既に死の境界を乗り越えていた。
だから反応が遅れた。


 自分と対峙していたはずのハインが、いなくなっていた。
違う、ハインはいる。
しかし、視線がどこも見ていなかった。


 ハインの首に、ぷつぷつと血の玉が浮かび上がった。
玉同士が繋がり、赤い線となって首を横断すると、前のめりになって首が落ちた。
ハインの首は、モララーの足下にまで転がってきた。




211: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 20:09:05 ID:cnLtUQjQ0


 首からの体が、遅れて地面に倒れる。
ハインの後ろの空間が、酷く歪んで見えた。


 陽炎のように揺らめく男が、その空間からぬらりと現れる。
黒い羽織に身を包み、編み笠を深く被った男が、こちらをのぞき込んでいた。


 全身の毛穴から汗が吹き出す。
剣気ではない、殺気でもない、だがおぞましい気配をぶつけられた。


 子供の頃、厠へ行く途中の闇夜に感じた恐怖、それに近い―――ようで、遠い。
今まで生きて積み上げてきたものを、圧倒され、呑み込まれ、破壊される感覚。


 ―――――滅びだ。
この者が放っているのは、滅びの息吹だ。




212: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 20:13:42 ID:cnLtUQjQ0


 男が抜刀したが、モララーは動けなかった。
どうせハインに殺されていたのだから、何も変わらないと思った。


 様々な記憶が、津波のように押し寄せては消えていった。
記憶の包みが破れ、そこから漏れ出していくような感覚だった。




 かしゃん、という音が聞こえた気がした。
首から上だけは、動かすことができた。


 落ちたのは、つーのために買ってやった、飴細工だった。
猫の形を模した飴細工が、足下で割れていた。
つーの顔が頭に浮かんだ瞬間、体の痺れが消えた。




213: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 20:18:44 ID:cnLtUQjQ0


 男が斬撃を放った瞬間を、鮮明に見ることができた。
どういった道筋を辿り、どのように自分を刻むのか、未来をのぞき込んだ感覚だった。


 刀で受けようとはせず、全身の瞬発で逃げ切った。
肩口に熱を感じたが、構わず跳躍した。


 境内を駆け、階段を転げ落ちるようにして下る。
背中から滅びの気配が迫ってくるのを感じた。
振り返れば死ぬとわかった。


 階段を下りきると、止まらずにまた走り続けた。
通行人の傍を通り過ぎると、背中から短い悲鳴が聞こえた。


 全速で駆けるモララーを追いながら、すれ違い様に人を斬っているのだ。




214: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 20:21:52 ID:cnLtUQjQ0


 モララーはわざと人通りの多い場所を選んで走った。
走っている内に、汗が目に入り、足を取られそうになる。
その度に背中の重圧が重くなるのを感じた。


 やがて背中から悲鳴が聞こえなくなった。
疲労は凄まじく、気を抜いた瞬間に崩れ落ちた。


 倒れていると、周りの者たちが自分に集まってきた。
肩口を斬られているらしく、袴まで血に染まっていたが、痛みは感じなかった。


( ;・∀・)(人喰い……夜猿)




215: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/09(土) 20:26:41 ID:cnLtUQjQ0


 放心のまま、旅籠へ戻った。
女将から水をもらい、三杯ほど体に流し込んでから、布団へ潜った。


 まだ陽は高いが、眠気が襲ってきていた。
何も考えたくないという気持ちもあった。


 目を瞑ると、ハインを斬った男の顔が浮かびそうだったが、
思い出すのはただ、闇と転がったハインの首だけだった。


 モララーは一刻ほど眠った。
起きてから、縁側で空を見上げ、また放心した。
月が高く昇るまで、じっと動かずに、そうしていた。


 その日、いつまで待っても、つーは旅籠に帰ってこなかった。


十三輪「滅び」




227: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 12:55:03 ID:VI5vVPZM0


 人喰い夜猿が、白昼堂々と十七人の町人を斬ったという報せは、町中を駆け抜けた。
身元のわからない屍体は、近くの寺に運び込まれたらしい。


 シャキンは寺の場所を聞き出し、屍体を確かめるために向かった。
町からやや外れた場所にある五厘寺という寺には、一人の住職と数人の見習いがいた。


 面白がっている野次馬もいたが、身内なのか、嗚咽を漏らす集団もあった。
屍体は境内の庫裡の中に並べられていた。


 すまきが敷き詰められ、体を両断された屍体が等間隔で並んでいる。


(`・ω・´)(間違いなくブーンだ)




228: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 13:00:50 ID:VI5vVPZM0


 屍体の切り口は鮮やかなものだった。
いずれも体が二分されており、断面は水平に切り離されている。
斬られたとき、死んだことすら理解できなかっただろう。


 兄の屍体も、腰の辺りを水平に断絶されていた。
他に傷はなく、綺麗なものだった。


 庫裡の中には哀愁と絶望が入り交じり、鬱屈した空気になっていた。
さっさと外に出ようとしたとき、一人の男が気になり、足を止めた。


 男は、少女らしき屍体の前で、生気のない顔を浮かべていた。
身なりも姿勢もよく、道場剣法を学んだものだとわかった。




229: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 13:06:22 ID:VI5vVPZM0


 男は懐から巾着袋を取りだし、中から白い塊を手に取った。
よく見ると、それが魚を模した飴細工だとわかった。


 肩口から腰を、斜めに分断された子供の屍体の口を開けようとし始める。
だが硬直した顎のせいで、僅かにしか口が開かない。


 男は片手で飴細工をすりつぶし、小さく開いた口にさらさらと破片を流し込んだ。
彼の視線は少女ではなく、何処か遠くをさまよっていた。


 気味の悪い男だと思った。


 庫裡を出ると、まだ回っていない道場がないか町をうろつくことにした。
路銀はいつも心許なく、かといって口入れをもらうのも嫌なので、道場破りはし続けていた。




230: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 13:11:48 ID:VI5vVPZM0


 一つの道場を見つけ中に入ったが、他流試合は断られた。
人喰い夜猿を打つために、自警団を組んでいるところで、道場の剣士たちが出払っているらしい。


(゚A゚* )「えらい、物騒なことになってますさかい、うちもてんやわんやですわ」


 強い訛りを使う女は、訪れた道場の下女であった。
詫びということで茶を出してもらっているが、試合ができない以上早く帰りたい。


(゚A゚* )「あんた、知ってます? 幕府の方が愚連隊を遣わしてくるって」

(`・ω・´)「愚連隊?」

(゚A゚* )「夜猿です。夜猿を討つために、美府に精鋭を送り込んで来るらしいんです。
    嫌ですわあ。この町で物騒なことしないで欲しいんです」




232: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 13:21:19 ID:VI5vVPZM0


(`・ω・´)「どれだけ急いでも、あと二週間はかかります。
      その間に夜猿が別の町に行ってしまうかもしれない」

(゚A゚* )「そうでっしゃろ」

(`・ω・´)「何か奴が、この町に居残る理由があれば、別なんでしょうが……」

(゚A゚* )「しかもですよ、送られてくるのは有子部超急隊(ありしべちょうきゅうたい)という部隊で、
    徳川直参の剣豪たちを集めた部隊らしいです。数も、五十人程度いるとか」


 有子部超急隊は、幕政が揺らぐときのみかり出される、超級剣客隊である。
徳川の直命でのみ動き、所属している剣士の情報や、全体の正確な人数は秘密にされている。


 おそらく、先日の旗本殺害が効いているのだと目星をつけた。
五年もの間人斬りを許した幕府が、やっと重い腰を上げたのだ。




233: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 13:24:09 ID:VI5vVPZM0


(`・ω・´)(奴らよりも先に、夜猿を討つべきなのか)


 様々な思惑が頭を駆けるが、目的はただ一つ、五年前から変わらずにいるものだ。
人喰い夜猿、ブーンを自分の手で斬り殺す。
ただそれだけを目指して、闇にまで墜ちてきた。


(`・ω・´)「ご馳走になりました。のーちゃん殿も、夜道にはお気を付けて」

(゚A゚* )「あら、そんな、大したことしてませんけども」


 下女の女は耳を赤くし、飲み干した湯飲みを持っていそいそと部屋から出て行った。




234: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 13:29:04 ID:VI5vVPZM0


 道場から出ると、ただ町をふらふらと歩いた。
あまり寝ておらず、足下が浮ついた。


 日が落ちると、朝になるまで町をさまようことも多かった。
ブーンに出くわすことを期待して、わざと人通りのいない道を歩いたが、
今の今まで気配すら感じたことがない。


 浪人の集団とすれ違った。
どうやら、浪人同士で手を組んで夜猿を討伐しようとしている者たちだった。


(`・ω・´)(お前らには一生かかっても無理だ)


 だが、一人でいるよりは、出くわす可能性だけは高そうだ。
繋がりがあれば、情報の交換も行える。
シャキンのように地道に聞き回っているよりは、よほど賢いかもしれない。




235: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 13:31:51 ID:VI5vVPZM0


 だが誰かと手を組むとすれば、使えない木偶はまっぴらごめんだ。
むしろ、いるだけ邪魔だろうと思った。


 「シャキンさん?」


 不意に名前を呼ばれ、歩みを止めた。
振り返ると、見覚えのある小男がいた。


('∀`)「探しましたよお。覚えていらっしゃいますか?」


 始めはわからなかったが、記憶の底を辿ると、長岡道場の者だと見当が付いた。
ツンのことで自分を探していたのかと思ったが、敵意は感じられなかった。




236: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 13:34:18 ID:VI5vVPZM0


(`・ω・´)「ええ。長岡道場の」

('A`)「そうですそうです。良ければ、お茶などしませんか?」

(`・ω・´)「いえ、急いでおりますので」


 さっさと旅籠に戻って昼寝でもした方が有意義そうに思えた。
男は慌ててシャキンの前に回り込むと、平身低頭で言った。


(;'A`)「ちょっとお待ちください。実は夜猿のことで、仲間を集めているんです。
    もしも夜猿を倒して五百両得たいということでしたら、一枚噛んでやみませんか?」


 ちょうどそのことを考えてはいたが、安易に受けていいものだろうか。




237: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 13:37:48 ID:VI5vVPZM0


(`・ω・´)「あなたと私が組むと?」

('A`)「いえ、あたしの家に浪人がおりまして。その男が仲間を欲しいと言っているんです。
   大勢はいらないようで。シャキンさんほどの方でしたら、奴も喜ぶと思うのですが」

(`・ω・´)「夜猿はただの辻斬りじゃない。その男は遣える者なのですか?」

('A`)「あたしは商人もやってるんで、目利きにだけは自信があります。
   相当な遣い手だと思いますよ」

(`・ω・´)「へえ。そう」


 シャキンが抜刀し、刃先を男ののど元に当てるまで、男は何も見えなかったようだ。
いつの間にか自分に向けられていた刀を見て、小さく悲鳴を上げた。


(`・ω・´)「私よりも強いと思いますか?」




238: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 13:40:59 ID:VI5vVPZM0


 腰が砕けた男は、その場に崩れ、がたがたと震えていた。
だが視線だけはシャキンから外さなかった。


(;'A`)「わ、わかりません。けど、強いですよ。あなたも相当お強い。
    そこいらの剣士とは訳が違う。でも、その男も、ただの浪人ではない」


 嘘を言っている風ではないし、騙そうとしているようにも見えない言い方だ。
目利きというのがどの程度か信用はできなかったが、会うだけ会っても良さそうだと思った。


(`・ω・´)「その男は何処に?」

(;'A`)「あたしの家にいます。あ、申し遅れました。あたしは薬屋のドクオといいます」




239: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 13:50:24 ID:VI5vVPZM0


(`・ω・´)「ドクオさん。近い内に伺います」

('A`)「はい。お待ちしております。何卒、ごひいきに」


 立ち上がり、深く頭を下げたドクオに背を向け、シャキンは歩き出す。


 得体の知れない浪人たちがはびこり、その乱れた剣気に、にわかに町がざわめきだっていた。
五百両という懸賞金以上に、自分の名を売りたい者たちが多いようだ。


 まずは自分で、強い者を探してみようと考えた。
見つからなければ、ドクオの言う浪人を当たってみればいい。




240: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 14:07:07 ID:VI5vVPZM0


 だが、誰と、何人と組もうが、最後にやつを斬り殺すのは自分の役目だと思った。
五年前から一時も忘れず、やつの殺意だけで生きてきた。


 皆が兄を忘れ、記憶の隅に追いやる中、自分だけが兄を背負っていた。
今でも振り返れば兄がこちらに笑いかけてくる気がした。


 背負っているのではない。縛られておるのじゃ。


 シャキンに殺される直前に、荒巻が言った言葉だ。
心に響いた訳ではないが、兄の追懐と共に、どこからか響いてくるようになった。
呪詛のように、夜がやってくると、耳の奥で荒巻が囁くのだ。


 夜猿ごと、全て絶ちきる。
生きるには、そうするしか無かった。


十四輪「愚連隊」




249: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 19:32:52 ID:FWqRUnWY0


( ・∀・)「もうすぐ海だ」


 松林に囲まれた道を抜けていくと、遠くに砂浜の盛り上がりが見えた。
早足で歩く癖が無くなっていたので、ここまで随分とかかってしまった。


 小さな砂浜に、いくつか舟が座礁していた。
既に使われていないようで、手入れされておらず、藻が生えていた。


( ・∀・)「想像していたより、潮の臭いはしないだろう?」


 海岸線を歩いて行く。
陽はまだ高く、ちりちりと耳の裏から肌を焦がしていった。




251: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 19:38:50 ID:FWqRUnWY0


 しばらく歩くと、岩礁がぽつぽつと見えた。
飛び移りながら沖の方を目指したが、上に乗れるほどの岩礁はすぐに途絶えた。


 岩に当たる波が砕けて散り、袴を濡らしていく。
肌にじっとりと潮がつき始めた。


 両手に抱えた壺をそっと隣に降ろし、岩の上に腰を下ろした。
尻が濡れたが、気にならなかった。


 つーが死んだ。
五輪寺でつーの屍体を見つけた旅籠の女将が、モララーへ教えた。
確認した屍体は、確かにつーのものだった。




252: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 19:42:49 ID:FWqRUnWY0


 夜猿が町人を斬り殺したというのは、知っていた。
あのとき夜猿から逃げ回っていたのはモララーだ。


 ただ、あのときつーが、あんなにも近くにいたことは、知らなかった。
知っていれば、走る道を変えていただろう。


 いずれにしろ、モララーは夜猿から逃げ出し、逃げ出したことで、つーが死んだ。
一度拾った命を、また落とした。


( ・∀・)(全て失った)


 士道も、友も、つーも、何もかもを失った。
ハインは否定してくれたが、今の自分は魂すらない木偶にしか感じなかった。




253: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 19:46:14 ID:FWqRUnWY0


 骨壺の蓋を取り、中の骨を手ですくう。
元々小さい体だったのに、もっと軽くなった。


 手のひらの上で残っていた骨のかけらは、風が吹くと消えるように飛んでいった。
陽が高いにも関わらず、暑いとは感じず、光の眩しさもわからなかった。


 最後につーとした会話は何だったか、思い出せないでいた。
思い出せるのは、屈託のない笑顔だけだった。


 ハインも、つーも、記憶にある顔はいつも笑っているものばかりだ。
仏頂面の自分と居るときでさえ笑えるのだ。
あの二人に勝てるはずがない。




254: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 19:49:09 ID:FWqRUnWY0


 汚い仕事に手を染めたにも関わらず、ハインに気迫で負け、夜猿から逃げ出し、
つーを殺してしまって、まだおめおめと生きようとしている。


 これを、木偶と言わずして何と呼ぶか。
木偶は悩まない。
ハインの笑い声が聞こえた気がした。


 一つ、思い出した。
約束があった。


( ・∀・)(海、これも、そういえば約束だった)


 こんなことになるなら、ハインと立ち会わずに、つーと海に行くべきだった。
そしてもう一つ、自分は約束していることがある。




255: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 19:51:16 ID:FWqRUnWY0


 骨壺を掴み、振り上げた。
渾身の力を込めて、壺ごと海に放り投げる。


 空中で骨の粉が飛び散り、風に舞って海に消えていった。


( ・∀・)「魚が好きだっただろう。生まれ変わるなら、魚になるといい」


 好きといっても、刺身が好きというのなら、少し違うかとも思った。


 岩礁から腰を上げたとき、下半身がすっかり海水で濡れていた。
手で絞ると、足下に海水がぼたぼたと落ちた。




256: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 19:55:35 ID:FWqRUnWY0


 一際大きい波が岩礁に乗り上げた。
突然の出来事であったが、割れる水の壁を冷静に眺めていた。
目はいいのだ。


 刀を抜き、振り上げるまで、躊躇や迷いはなかった。
縦に割れた波は、モララーを避けるように岩礁を叩いた。


 積み上げてきたものは無くなったが、かえって剣が軽くなったように感じる。


( ・∀・)「薬屋の、ドクオか」


 波の音に掻き消されそうなほど、それは小さな呟きだった。


十五輪「海」 終わり




257: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 20:01:33 ID:FWqRUnWY0


 ドクオは店に入ってきた者に挨拶をしたが、その者は棚に並んだ薬には目も暮れず、
真っ直ぐに店の奥へ進んでいった。


(;'A`)「お客さん?」


 男は構わず廊下を進んでいく。
ある部屋で立ち止まると、障子を勢いよく開けた。
部屋の中にいた男が、酒をあおりながら薄く笑った。


( ´_ゝ`)「よく来たな」


 着流しをはだけさせ、大きくあぐらをかいて座っていた兄者は、
目線だけで座ることを促した。




258: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 20:03:53 ID:FWqRUnWY0


( ・∀・)「昼間から、酒か。人斬りに品性が無いというのは同じだな」

( ´_ゝ`)「まあ、否定はせんよ」


 モララーは、兄者の正面ではなく、横に置かれた座布団の一つに腰を下ろした。
兄者とは対照的に、座っているときでも姿勢は崩さなかった。


( ・∀・)「座布団がもう一つあるが、誰か来るのか?」

( ´_ゝ`)「さあ? そいつに訊いてくれ」


 兄者が顎で指したのは、障子戸の前でもじもじしているドクオだ。




259: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 20:06:00 ID:FWqRUnWY0


(;'A`)「今日来るかはわかりませんよ。でも声はおかけしたんで」

( ´_ゝ`)「だそうだ」

( ・∀・)「強いのか?」

('A`)「た、たぶん」


 軽くドクオを睨むモララーから逃げるように、お茶を出しますとだけ言って
ドクオは部屋から駆けていった。


( ´_ゝ`)「来ないかと思ってた。お坊ちゃんには厳しい相手だからな。五百両が惜しくなったか?」




260: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 20:10:36 ID:FWqRUnWY0


( ・∀・)「約束だ」

( ´_ゝ`)「何?」

( ・∀・)「約束があるんだ。俺が夜猿を斬ると言った。だから斬る」

( ´_ゝ`)「ふうん」


 兄者はモララーの発する、数日前とは異なる剣気に気がついていた。
何が変わったのかはわからないが、一種の覚悟は感じた。


( ´_ゝ`)「夜猿と会ったことはあるか?」




261: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 20:13:45 ID:FWqRUnWY0


( ・∀・)「ある。剣を構えることすらできず、肩を斬られたが」

( ´_ゝ`)「よく逃げられたな」


 モララー逃げられたのは、飴細工のおかげだ。
つーが救ってくれたのだと思うと、いっそう剣気が漲った。


( ・∀・)「俺一人では勝てん。それは、理解できた」

( ´_ゝ`)「俺たちならどうだ?」

( ・∀・)「無理だろうな」

( ´_ゝ`)「俺もそう思う。俺も、夜猿とは一度会った。
      あれは人ではない。人を捨てた者だ。まともな太刀では体を素通りするだろうさ」




262: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 20:17:26 ID:FWqRUnWY0


( ・∀・)「勝てる当てはあるのか?」

( ´_ゝ`)「ドクオが連れてくるもう一人の男次第だな」


 兄者が酒を勧めてきたが、モララーは断った。
ちょうどそのとき、廊下を走る音が聞こえ、ドクオが顔を出した。


(;'A`)「来てくれましたよ。例の人」


 すぐには返事をせずに、兄者はまた酒をあおる。


( ´_ゝ`)「下らん奴だったら、お前ごと斬り捨てるからな」

(;'A`)「そ、そんなあ。勘弁して下さいよ旦那」




263: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 20:23:30 ID:FWqRUnWY0


 ドクオは一度部屋から出て行き、例の男とを呼びに行った。
間もなく、廊下を歩く音が聞こえてきた。


 兄者がとっくりを畳の上に置き、刀の柄に手をかける。
モララーは体の向きを変え、身を固くした。
部屋に届く剣気が、異様に冷たかった。


(`・ω・´)「失礼する」


 入ってきた男を見て、意外に若い、と二人は思った。
確実に年下にもかかわらず、全ての動作が洗練されている風に感じた。




264: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 20:26:13 ID:FWqRUnWY0


( ´_ゝ`)「座りなよ」

(`・ω・´)「ああ」


 シャキンは一番近くの座布団に腰を下ろし、片膝を立てた形で座った。
身のこなしに一切の隙を感じなかった。


( ´_ゝ`)「兄者だ」

( ・∀・)「モララー」

(`・ω・´)「名は、シャキン」




265: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 20:31:26 ID:FWqRUnWY0


 部屋の外にいたドクオは、どうやら合格だったらしいと胸をなで下ろし、
いつもの商いへと戻っていった。


 三人がそれぞれ向かい合って座ると、しばらく沈黙が続いた。
元々、相容れぬ性質を持った三人であった。
偶然同じ目的を持った彼らを、奇妙な縁が結んだだけだ。


( ´_ゝ`)「シャキンさんよお」


 沈黙を破ったのは兄者だった。


( ´_ゝ`)「その若さで、今まで何人を斬ったんだい?
      血の臭いを通り越して、獣かと思ったよ」




266: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 20:35:26 ID:FWqRUnWY0


(`・ω・´)「お前には関係無いな」

( ´_ゝ`)「へえ。どうしてこう、みんな俺に冷たいのかね」

( ・∀・)「そんなことより、これで全員なのか?
      三人集まったところで、どうにかなる相手とは思えん」

( ´_ゝ`)「ドクオ! 酒が切れたぞ!」


 言葉を遮られたモララーが、兄者を睨み付けた。
大げさな動作で視線を払うと、口の端を持ち上げる独特な笑い方で兄者は笑った。


( ´_ゝ`)「策は一応、あるんだよ」




267: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 20:39:01 ID:FWqRUnWY0


(`・ω・´)「策などいらん。奴の場所を突き止めさえすれば、俺が一人で奴を斬る」

( ´_ゝ`)「無理だな」


 言った瞬間、おぞましい程の殺気がシャキンから放たれた。
いつでも抜刀できるようにモララーは柄を掴んだが、兄者は座ったまま涼しい顔をしていた。


( ´_ゝ`)「殺気も、剣気も、奴は呑み込む。あんたじゃ奴は斬れない。
      俺たち三人が向かった所で、触ることすらできないだろう」

(`・ω・´)「他に仲間がいるのか?」

( ´_ゝ`)「仲間ではないが、人手はある」




268: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/10(日) 20:44:56 ID:FWqRUnWY0


 どたどたと廊下を駆けてくるドクオの足音が聞こえた。
とっくりを乗せたお盆を持って、息を切らせて部屋に入ってきた。


(;'A`)「ちょっとは遠慮して下さいよお」

( ´_ゝ`)「いいから酒を渡せ」


 お盆を奪い取ると、犬猫を払うみたいに帰れという仕草をする。
ぶつぶつと小言を愚痴りながら、ドクオが部屋から出て行った。


( ´_ゝ`)「有子部超急隊。これを奴にぶつける」


 兄者のとっくりを傾ける手が止まらない。
他の二人は、ただ黙って腕を組んでいた。


十六輪「集結」 終わり




280: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 16:56:50 ID:gmcKMzrA0


 ハインの住んでいた長屋を訪ねた。
部屋が何処かは覚えている。


 中に入り、彼が持ち出したはずの藩の証文を探した。
書かれているのは、幕府に隠している裏金の証拠だが、それ自体に興味は無かった。


 ハインはこの証文に命をかけ、終わり方はどうあれ、散ってしまった。
死ぬには惜しい、惜しすぎる男だと思える。


|゚ノ ^∀^)「あなた、ハインさんのお友達?」


 長屋を出たところで声をかけられた。
見覚えがあった、以前ハインの部屋が何処なのかを尋ねた、米を洗っていた女だ。




281: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:01:25 ID:gmcKMzrA0


( ・∀・)「ええ、まあ」

|゚ノ ^∀^)「ハインさん、亡くなってしまったわね」


 妙齢の女で、身なりは貧しかったが、顔は美しかった。


|゚ノ ^∀^)「川の傍で屍体が見つかったらしいけど、どうも人喰い夜猿の仕業らしいわね」

( ・∀・)「え?」

|゚ノ ^∀^)「あら……屍体を見ていなかったのね。それに、先日も夜猿が町に来たらしいわ」

( ・∀・)「あ、ああ」

|゚ノ ^∀^)「あなたも、お気を付けて」


 軽く礼をしてから、長屋から離れていった。
薬屋へ戻る途中、どういうことなのか、自分で考え始めた。




282: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:04:29 ID:gmcKMzrA0


 商店通りを通ると、以前見かけた尺八を吹く飴売りがいた。
一瞬足を止めたが、もう用は無いと考え、通り過ぎた。


 「こんなときに散歩かい」


 ドクオの薬屋の前で声をかけられ、振り返る。
だらしなく胸元をあけた着流しの兄者が、いつものうすら笑いを浮かべていた。


( ・∀・)「いつから?」

( ´_ゝ`)「商店通りを歩いていたときだ。気がついていなかったのか」

( ・∀・)「考え事を……」




283: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:07:10 ID:gmcKMzrA0


 頭の隅に追いやっていた疑問が解け出し、新たな形となる感覚を確かに感じた。
同時に、ハインの屍体が何故川の近くから見つかったか、仮説を立てる。


( ・∀・)「つーは俺を、追ってきたんだ」

( ´_ゝ`)「あ?」

( ・∀・)「だからあのとき、近くにいたんだ……」

( ´_ゝ`)「大丈夫か? 寝ていないんじゃないだろうな」

( ・∀・)「いや、それはいいんだ。もう、いいんだ。
      夜猿の居場所がわからないから困ってるって言ってたな」

( ´_ゝ`)「ああ。もしかして、見当がついたのか?」

( ・∀・)「とりあえず中に入ろう」




284: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:12:28 ID:gmcKMzrA0


 薬屋の中に入ると、頬杖をついて眠そうにしているドクオが見えた。
軽く挨拶を交わしてから、二人は奥の居間へと向かった。


 居間にはシャキンが正座し、静かに瞑想をしていた。
二人が部屋に入ってくると、瞑想をやめて、足を崩した。


 とっくりが散乱する部屋に、兄者たちが腰を下ろす。


( ´_ゝ`)「で、奴は何処にいる?」

( ・∀・)「宋佐久寺だ」

( ´_ゝ`)「本当か? 誰からの情報だ」




285: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:19:43 ID:gmcKMzrA0


( ・∀・)「誰かに調べてもらった訳じゃない。あそこで俺の……浪人が一人、斬られた。
     だが屍体はそのままにはされず、わざわざ近くの川に移動されたようだ」

( ´_ゝ`)「邪魔だから、片づけたってことか」

( ・∀・)「俺はそう思う」

( ´_ゝ`)「奴があの場所にこだわる理由があるってのか?」

( ・∀・)「それは……わからん」


 シャキンは二人の会話を黙って聞いていた。
行動を共にすることになったが、助け合うつもりはなく、心の繋がりは無い。




286: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:22:21 ID:gmcKMzrA0


( ・∀・)「ただ、景色がいい場所なんだ」

( ´_ゝ`)「はあ?」

( ・∀・)「高い場所にあるから、町を遠くまで見渡せる。
      夕日や朝日なんかも、綺麗に見られるんじゃないのか」

(`・ω・´)「そこだ」


 突然、会話に混ざったシャキンに、二人の視線が集まった。
何故、自分が喋ったのか、どうしてそこが夜猿の場所だと思ったのか、シャキン自身わからなかった。
ただ確信めいたものはあった


( ´_ゝ`)「それじゃあ、確かめてみるか。ドクオ!」




287: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:26:05 ID:gmcKMzrA0


 大声で名前を呼ばれると、すぐにドクオが駆けつけてきた。


 いつから兄者がこの家に住んでいるのか知らないが、
突然呼びつけられるのはもう慣れてしまっているようだ。


('A`)「何です?」

( ´_ゝ`)「この町に幕府の密偵が既に到着しているはずだ。
      夜猿が宋佐久寺にいるっていう噂を、さり気なく流せ」

(;'A`)「え?」

( ´_ゝ`)「さり気なくだ。ただの町人共は知らないが、その筋の人間は知っている。
      そういう風に情報を流してくれ」

(;'A`)「いや、そんな、難しくありませんか?」




288: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:32:36 ID:gmcKMzrA0


( ´_ゝ`)「俺は難しさを議論しているんじゃない。やれと言っている」


 ドクオはいつもの渋い顔をしながら、部屋から出て行った。
臆病な男だが、頭は切れる。
彼ならやってくれそうな気がした。


( ´_ゝ`)「あとは数日待つ。俺の予測なら十人程度死ぬ。問題は有子部超急隊だ。
      まだ町には到着していないようだが、いずれ奴らはやってくる」

(`・ω・´)「人頼みとは、情けない話だ」

( ´_ゝ`)「嫌なら降りてもいいぜ」


 二人は軽くにらみ合ったが、最初のような緊迫感は無くなっていた。
元々、気の合う二人ではなかった。
このくらいのいざこざは毎日のように起こる。




289: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:35:31 ID:gmcKMzrA0


( ´_ゝ`)「以前、飲み屋のいざこざで有子部の奴らを斬ったことがある」


 初めて聞く話だった。


( ´_ゝ`)「強かったよ。二人まで斬れたが、それ以上は面倒だったから逃げたな。
      向こうも俺も、酒に酔ってたしな」

( ・∀・)「では、五十人もいれば夜猿は斬られてしまうんじゃないか」

( ´_ゝ`)「無理だ。奴らでは、絶対に無理だ」


 兄者はとっくりをひっくり返し、一滴だけ滴った酒を舌の上に落とした。


( ´_ゝ`)「どれだけ強くても、所詮は乳離れできていない、お坊ちゃんの剣だ」




291: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:40:58 ID:gmcKMzrA0


(`・ω・´)「そうだ。奴を斬ることができるのは、闇に墜ちた者だけだ」


 それから数日間、ドクオからの報告を待った。
ある日の夜、兄者から有子部超急隊が町に到着したという話を聞いた。


( ´_ゝ`)「幕府の奴らは、やはり夜猿を甘く見ている」


 到着したのは、およそ七十人の部隊らしい。
シャキンが以前聞いた話より多かったが、兄者いわく、これでも全部隊の半数以下らしい。


 ドクオの報告は、次の日になった。
川で夜猿に斬り殺された屍体が見つかり、数は全部で二十。
中に幕府の隠密らしき者が混ざっていたということだ。




292: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:46:26 ID:gmcKMzrA0


 これで有子部側には宋佐久寺に夜猿がいるという情報が送られる。
部隊の偵察隊が様子見に伺い、また屍体で見つかると兄者は予言した。


 次の日の朝、さっそく兄者の予言が的中し、五人の屍体が見つかることとなる。
屍体は川ではなく、富家の敷地内に無造作に投げ捨てられていたようだ。


 一連の情報操作、情報収集は、全てドクオ一人が行っている。
鮮やかな手際と言えた。


( ´_ゝ`)「ドクオ。よくやった。駄賃だ、取っておけ」


 駄賃と言い、使い物にならなそうな割れ銭を手渡されると、
ドクオの目元がうっすらと潤んだ。




293: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:53:31 ID:gmcKMzrA0


 有子部超急隊が町に到着してから、四日が経った。
その日、ドクオから報告されたのは、討伐日時が決定したという話だった。


 明日、正午、宋佐久寺を有子部超急隊の全隊員が囲み、
一気になだれ込むという計画となっているらしい。


 明日、明日である。
モララーにとって、ついにやってきた、という感じよりも、
とうとう来てしまった、という感覚が強かった。


 体の底に巣くう夜猿への恐怖を抑え込めぬまま、
前夜がやってきた。


十七輪「恐怖」




294: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:54:21 ID:gmcKMzrA0




一話増量しました




296: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 17:58:43 ID:gmcKMzrA0


 その夜も酒を飲んでいた。
冷遇し過ぎたためか、人と会う約束があると言ってドクオが逃げ出してしまったために、
酒樽を居間に置いて飲み続けた。


 既に夜は深く、静まりかえった町から夜の気配が流れ込んでくる。
一人で飲んでいてもつまらないので、モララーでも誘おうと、家の中を探した。


 モララーはシャキンと一緒に、縁側に座っていた。


( ´_ゝ`)「何してんだ?」


 二人は顔を見合わせないまま、無表情に月を見上げていた。
近寄りがたい感じではあったが、二人のちょうど真中に兄者も腰を下ろした。




300: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 18:03:56 ID:gmcKMzrA0


 しばらく無言のまま、三人は月を見上げた。
詩や俳句をたしなむような三人ではなかった。


( ・∀・)「実を言うと、俺は怖い」


 始めに口を開いたのはモララーで、心なしか声に気力が無かった。


( ・∀・)「奴に出会ったとき、俺は絶望を感じた。
     何年、何百年努力しても、足下にも及ばないような壁を感じた。
     元々迷いがあったのだ。何の為に剣を振るうのか、わからなかった。
     奴のように何の躊躇もなく人を斬れるのが、俺には理解できん」

(`・ω・´)「闇は闇だ。理解するものではない」




301: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 18:07:02 ID:gmcKMzrA0


 シャキンの話は、いつも曖昧さがあったが、その実的を射ているような気もした。


(`・ω・´)「真剣で立ち会うようになってから、闇というものが何なのか、ますますわからなくなった。
      理解できるまで、人を斬ろうと思った。自分よりも強い者と立ち会えば、その片鱗が
      浮かび上がるかもしれないと考えた」


 今日のシャキンは、普段では考えられないほど饒舌だった。


(`・ω・´)「挑戦は誰からでも受けた。強い者には自分から向かった。
      長年の間世話になった師匠でさえ、俺は斬った」

( ・∀・)「師を、斬っただと?」




302: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 18:12:25 ID:gmcKMzrA0


(`・ω・´)「そうして俺は、墜ちていった。闇など理解せずとも、闇に墜ちればいいのだ。
      でなければ、奴と同じ土俵には立てん」


 シャキンを見るモララーの顔が微妙なものになった。
彼の並々ならぬ克己心は、闇に墜ちる覚悟の裏返しでもある。
どうしても、モララーには理解ができない部分だ。


( ´_ゝ`)「闇なんざ、夜になれば何処にでも転がってるがね」


 とっくりが空になったので、庭の植木辺りに投げ捨てた。
割れる音が小さく聞こえただけで、夜の静寂はすぐに辺りを呑み込んだ。




303: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 18:15:16 ID:gmcKMzrA0


( ´_ゝ`)「夜猿に弟を殺された」


 隣にいたシャキンが、ぴくりと眉を動かした。


( ´_ゝ`)「だからまあ、これは仇討ちになるのかもしれん。
      しかし人はいつか死ぬ。あれが弟の寿命だったというだけで、大して気にはしていない」

( ・∀・)「ではどうしてお前は夜猿を追う。命の危険まで犯して」

( ´_ゝ`)「運命さ」


 静寂がさらに色濃くなった気がした。
音が、空気が重くなる感覚を覚える。




305: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 18:18:31 ID:gmcKMzrA0


( ´_ゝ`)「弟は死に、俺は生き残った。双子の弟でな。顔はそっくりだ。よく間違えられる。
      おそらくそのとき、俺も死んだ。だが生きている。
      もしかすると、辻褄を合わせようとしているのかもしれん」

( ・∀・)「死ぬつもりなのか」

( ´_ゝ`)「冗談はよせ。そこのお侍さんと違って、勝てぬ戦はしない主義でね」


 モララーは何となく、兄者が嘘をついている気がした。
だが追求する気は無かった。
運命という陳腐な言葉に、妙な共感も覚えた。


( ´_ゝ`)「あんたは何で夜猿を? まさか数百両ぽっちの金のためじゃないよな」

(`・ω・´)「朝日だ」




306: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 18:23:45 ID:gmcKMzrA0


 何処からか、鈴虫の鳴く声が聞こえる。


(`・ω・´)「俺がもう一度朝日を浴びるには、奴を斬らねばならんのだ」


 それ以上シャキンは喋らなかった。
相変わらず兄者は薄笑いを浮かべ、モララーは満ちる直前の月を見上げている。


( ・∀・)「俺はわからないんだ」


 モララーは、迷うな、というハインの言葉を再び思い出していた。
今は迷うことこそが自分なのではないかと考え出している。




307: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 18:27:26 ID:gmcKMzrA0


( ・∀・)「確かに、約束をした。夜猿を討つと誓った。
      でもどうして自分が、命を賭して約束を護ろうとしているのか、わからない」

(`・ω・´)「明日、答えが出る」


 三人は結局、顔を見合わせないまま、ちりぢりに散っていった。


 シャキンだけが、いつまでも夜空を見上げていた。
手の届かない何かを、睨み付けているようでもあった。


十八輪「前夜」 終わり




308: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 18:37:44 ID:gmcKMzrA0


 朝から小降りの雨が続き、道はぬかるんでいた。
宋佐久寺を取り囲む、およそ七十の侍たちの様子が、遠目からでもわかった。


 町外れにある宋佐久寺の周りに、町人の姿は無かった。
旅装の者が時々、侍たちに訝しげな目線を送るくらいだ。


 正面の階段から三十人、他の者たちは丘を登って宋佐久寺を取り囲むようだ。


( ´_ゝ`)「およそ一刻、程度だろうな」


 兄者がぼそっと呟いた。
三人は木の陰に身を隠しながら、丘の上を伺っていた。




309: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 18:39:42 ID:gmcKMzrA0


( ・∀・)「雨で気配が乱れているが、まだ対峙はしていないようだ」



  最終話「最後に立つ者」



(`・ω・´)「正午ちょうどまで待つつもりか」

( ´_ゝ`)「奴さんが、そこまで辛抱強ければそうなるだろうな」


 しとしとと降る雨に、三人は体を濡らしていた。
動いてはいないものの、体は芯から熱くなっているので、寒さは感じなかった。




310: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 18:44:07 ID:gmcKMzrA0


 間もなくすると、新緑にも関わらず、木の葉が降ってくるようになった。
雨の冷気を突き破り、肌をぴりぴりと焦がす熱を感じた。


( ´_ゝ`)「始まったな」


 丘の上にあるので、境内の様子は見えない。
だが、雨の音に悲鳴と蛮声が混じるのがわかった。


 街道は相変わらず緩慢な空気に包まれ、
旅人が急いでいる風でもなく町を目指して歩いて来る。


 丘を少し上った所で、壮絶な死闘が行われていると考えると、
妙な気分になった。




311: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 18:50:09 ID:gmcKMzrA0


 三人はただひたすら待ち続けた。


 シャキンは目を閉じたまま、木の幹に背を預け、じっと腕組みをしている。


 モララーは、飴を舐めていた。
しきりに口の中で飴を転がし、小さくなるとかみ砕き、次の飴を口に入れた。


 兄者は視線を宋佐久寺に向けたまま、耳を澄ましていた。


 そうして、有子部超急隊が突入し、半刻の時間が経った頃であった。
寸分も体を動かさなかったシャキンが、腕組みを解いた。




312: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 18:52:11 ID:gmcKMzrA0


 同時に兄者が二人を振り返り、モララーは口の中を飴をかみ砕いた。


(`・ω・´)「終わった」


 どういう決着なのか、三人にも予測がついていない。
とにかく、境内で始まった戦いが、何らかの形で決着が着いたのだけは察した。


 三人は刀を引き抜き、境内への階段を上った。


 途中まで上ったとき、三人の足が止まった。




313: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 18:56:11 ID:gmcKMzrA0


 雨の中で空気が震えているのを感じた。
体にべったりと纏わり付く滅びの気配、間違いなく夜猿は生きていた。


 さらに上ると、境内から雨と血が混ざったものが流れているのを見つけた。
三人の心臓の鼓動が速まる。
心気をそぎ取り、生命力さえ奪おうとする滅びを、気迫で押し返した。



 境内は、地獄と化していた。


 おびただしい数の屍体は、全て両断されており、何体転がっているのかわからない。
おそらく、数人か、十数人くらいは逃げただろう。
だが屍体の数だけ見ると、百人以上いたような気さえする。




314: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 19:02:11 ID:gmcKMzrA0


 流れ出た血はあまりにも多く、土の色が赤く染まっていた。
雨で多少は隠れているものの、血の臭いが強く鼻をついた。


 ブーンは境内の中心にいた。
彼の周りだけ、屍体が転がっていなかった。
まるで屍体が意志を持って、ブーンから遠ざかろうとしているように見える。


 刀を持ったまま、項垂れた姿勢であらぬ方向を向いている。
返り血が全身を染めているが、彼自身の血は流れていないように見えた。


 屍体の上を踏みつけながら、ブーンの周りを取り囲んだ。
三方から、刀を向ける。
まだブーンは項垂れたままで、何処にも視線が向かっていない。




315: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 19:05:44 ID:gmcKMzrA0


 シャキンの、兄者の、モララーの、刀の切っ先がブーンに向いている。
三者三様の剣気がブーンを囲んだが、彼は何の反応も返さなかった。


 まさか、死んでいるのか、と思わせる程に、動きを見せない。
だが斬りかかる隙など微塵も存在しなかった。


( 鵙悄亜法峪造譴襪里お」


 雨は強さを増していた。
ブーンが小さく呟いた言葉は、どういう訳か三人全員に届いていた。


(`・ω・´)「斬る」


 シャキンが短く応える。
ブーンが、笑ったように見えた。




316: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 19:11:06 ID:gmcKMzrA0


 ブーンはとうとう動きを見せた。
腰を低くし、脇構で刀を構える。


 荒巻一刀流で培った、超速の横薙ぎを放てる構えだった。


(`・ω・´)(この剣で、兄さんを、斬ったのだな)


 シャキンは血が冷たくなっていくのを感じた。
人を斬るときは、いつもこうなる。
熱を失い、光を遮ることで、自分の体が別のものになっていくような感覚に陥る。


 兄者は左手で構えた刀を前に突き出していた。
この刀は、弟者の形見であった。




319: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 19:25:22 ID:gmcKMzrA0


 使い始めた頃から不思議とよく手に馴染んだ。
やはり兄弟ということかと、苦笑した記憶がある。


 モララーは、自身の心から恐怖と迷いが消えて行くのを感じた。
死の淵に立ってみて、わかったことがある。
自分は死から逃げていたのだと。


 心の底から夜猿を恐怖していた。
だが心の奥、魂と呼ばれる場所で、死を恐れる自分自身に怯えていたのだ。


 三人は感覚を研ぎ澄まし、全ての五感をブーンに向けていた。
雨音が耳の奥で吸収されていく。
血の臭いが消えた。




322: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 19:33:07 ID:gmcKMzrA0


 四人全員は、微動だにせず対峙していた。


 動いた者から死んでいく。
斬り合いよりも先に、心を絶つ戦いが始まった。
死合とは往々にして、そういうものだ。


 膠着が続いて、一刻(二時間)が経った。
雨は未だに、強く降り続いている。


 徐々に、空気と体が混ざっているような感覚に陥った。
境内に満ちる空気と自分の存在の境界線が曖昧なものへ変わってゆく。


 変わらないのは、ブーンの放つ闇だけだ。
闇と、水と、空気。
今存在するのは、それらだけだった。




323: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 19:39:13 ID:gmcKMzrA0


 さらに一刻が経ち、境内の空気に変化が訪れた。


 雨が降り止み、雲が引いていく。
徐々に青空が空に混じっていった。


 曖昧だった体の感覚が引き戻され、再び剣を持った人間へと変容する。


 濁流の如き滅びの気配が放たれたのは、その直後だ。
空気が歪み、目の前を大口を開けた獣の幻影が通過する。


 毛穴の穴が開き、ぷつぷつと汗の玉が浮かんだ。
地面が崩れる幻覚を感じたが、三人は足裏に気合いを入れ、
決して倒れることなく踏みとどまった。




325: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 19:43:39 ID:gmcKMzrA0


 膠着は何処までも続いた。
地獄の淵に足を踏み入れた状態で、滅びを受け続けた。


 一生分の時間を何度も経験した気分になった。
対峙を始めてから、何百年も過ぎた気がした。


 こうしてさらに、一刻が経つ。


 常人であれば一瞬で気を失いそうになる滅びの空間、
懸命に耐え続けてきた三人の中で、限界を迎えた者がいた。


 彼は青眼に構えた刀を振り上げ、大きくブーンへ踏み込んだ。




326: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 19:47:18 ID:gmcKMzrA0


 残りの二人が、死へと向かうモララーを止めることはしなかった。
モララー自身、そんなことは望んでいない。


 ブーンが体の向きを変え、肩を沈める動作を見せた。


 ふと、目の前に、笑いかけた者がいたように見えた。
モララーには見覚えの無い少年だった。
それでも何処か、懐かしい気分になった。


 自身の腰を通過する斬撃を、確かにモララーは見た。
目は良かったが、できれば見たくないものでもあった。


 視線がぐらりと宙を舞い、地面が迫ってくる。
何もかもが如実に見えた。




327: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 19:49:53 ID:gmcKMzrA0


 逃げ続けた先に、闇がいた。
闇の中で、光を得た。


 光は屈託無く笑い、笑うと前髪がさらさらと揺れた。
痩せていて、抱くと骨が痛かった。
頭を撫でると、気持ちよさそうに目を閉じる。


 どうして自分が闘うか、わかった気がした。
生きる意味を見つけたかったからだ。


 横向きになった世界で、白い光を見た。
それがモララーの捉えた、最後の景色だった。




328: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 19:55:00 ID:gmcKMzrA0


 シャキンたちは、胴体を絶たれたモララーには目もくれず、
同じ構えのままブーンに集中している。


 ブーンが構えを直し、また対峙が始まった。
空には夕陽が混じり、境内を濡らす血の色で世界が染まっていた。


 やがて、夜がやってきた。


 太陽が沈みきってから半刻が絶ち、空には星が光っている。
今日は満月だった。
斜め向こうの空から、青い光を放っている。




330: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 19:59:04 ID:gmcKMzrA0


 夜は明るい。
星の光、月の光、たき火などすれば、書物だって読める。
夜の闇など、温すぎるほど明るい。


 ブーンの放つ闇は深淵の黒で染まっている。
光すら呑み込み、破壊する。
そこでは何も照らされず、ただ闇へと沈んでいく。


 一刻、二刻、時が進む。
一秒を何時間にも感じる、気が狂いそうになる死闘の中でも、
時の流れは変わることがない。


 命もまた、時の流れに浮かんでいく。
どこからか生まれ、どこかで死んでいく。
誰も逆らうことなどできない。




331: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:01:20 ID:gmcKMzrA0


 だからこそ、無頼なのだと考えた。
時に縛られた命、何を躊躇する必要がある。


 そう考えて、今まで生きてきた。
死ぬ時は死ぬ、今の今までがそうでなかっただけ。


 今が、死ぬ時であるというだけ。
兄者は声を上げて笑い出した。
悲鳴のような笑い方だった。


 跳躍し、宙を舞った。
一足飛びで、人を飛び越える程の高さの跳躍になった。




332: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:06:30 ID:gmcKMzrA0


 空中で体を翻し、弟者の形見を振り下ろした。
斬った、と思ったのは、ブーンの残像であった。


 肩口から切り込まれた刃が、左半身ごと弟者の刀を斬り捨てた。


 それでも兄者は笑っていた。
体を二つに断裂されてなお、右手に持った刀を振ろうとした。


 しかし兄者の最後の斬撃は、ブーンには届かず、虚空を彷徨い、地面に落下した。
俯せで崩れた兄者は、瞬きほどの時間、夢を見た。


 地面の上で干からびる、みみずの屍体の夢だった。
兄者は最後にもう一度、笑った。
笑い声は、誰にも届かなかった。




333: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:11:25 ID:gmcKMzrA0


 空高く昇った月が、二人の男を映し出す。


 シャキンは最初の構えから、不動のまま立っていた。
表情には感情が見られない。
闇だけがそこにあった。


 ブーンもまた、闇を携えていた。
夜の闇よりも濃い二人分の滅びが、境内を包み込んだ。


 二人は無表情のようであり、笑っているようでもあった。
狂気か、凶気か、それともやはり、形容することなどできないのか。




334: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:14:57 ID:gmcKMzrA0


 二人はただ、闇の中で対峙を続けた。
闘っている相手が誰なのか、お互いわからなくなっていた。
自分と対峙している気分だった。




 ブーンの話をしよう。
誰も知らない、彼の中に巣くう闇の話だ。


 ブーンの母親は、富家の主が雇っていた下女である。
ある日、その家の息子が下女を犯した。
まだ十二才だった下女を、毎晩のように犯し尽くした。




335: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:18:38 ID:gmcKMzrA0


 膣を、尻穴を、口内を、欲望のままに犯した。
四年後、下女は一人の子を孕んだ。


 残虐非道の末に生まれた命、だが下女は子を産もうとした。
絶え間なく襲い来る闇の中で、大きくなる自分の腹だけを希望に感じた。


 だが主は産むことを許さなかった。
息子の仕打ちが外に漏れる可能性を恐れたのだ。
毒を含んだ水を飲ませ、腹を殴り、子を堕ろさせようとした。


 しかし下女の精神力のおかげか、過酷な環境にも耐え抜き、
下女は赤ん坊を産むことになる。
子は、ブーンと名付けられた。




336: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:23:45 ID:gmcKMzrA0


 ブーンを産んだのは、使われていない土蔵の中だった。


 主は赤ん坊を土蔵の外には出さないという条件で、下女に世話を許した。
子を育てさせてくれないなら自害する、この脅しが効いた。
富家の息子は、下女に心の底から惚れていたからだ。


 土蔵は高い場所に小さな天窓があるだけで、他に窓は無い。
さらにその天窓は、昼間の間は閉ざされている。


 乳離れし、自分で飯が食べられるようになった頃から、
ブーンの食料は一日一回だけの、天窓から投げ込まれる一個の握り飯だけだ。




337: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:28:21 ID:gmcKMzrA0


 ブーンは文字通り、闇の中で生まれ、闇の中で育った。
塞がった天窓から漏れる、微かな陽の光だけで、昼と夜の概念を覚えた。


 狭い土蔵の中で、話す相手はいない。
そもそも会話ができるほど、言葉を知らない。


 空腹を我慢できないとき、虫やねずみを食う、ただそれだけを繰り返した。
暗闇の中で獲物を捕らえる術を、いつの間にか身につけていた。


 夜が来る度に、下女は土蔵へやってきた。
天窓から握り飯を投げ込むと、決して開かない扉に顔を寄せて、呪いの言葉を呟く。
下女はブーンを産んでからも、毎晩、毎朝、犯され続けていた。




338: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:30:46 ID:gmcKMzrA0


 死んで欲しい。
下女は毎夜繰り返す。


 みんな死んで欲しい。
死に尽くして欲しい。
死んで消えて欲しい。
死んでくれないかしら。
死にたい。
死ね。


 支離滅裂で、意味もよくわからない。
ブーンにとって、それは夜の音に過ぎなかった。
夜というのは、そういうものだと思っていた。




339: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:34:38 ID:gmcKMzrA0


 八年もの間、ブーンは土蔵の暗闇で生きた。
糞尿にまみれた中で握り飯を食っても、病気にならない体を得ていた。


 ある日、唐突に、土蔵の扉が開いた。
四畳程度にしかないはずの世界が、何万倍にも広がった。


 全てが初めて見る景色だった。
空が、広かった。
星の明かりでさえ、眩しくて目が眩んだ。


 自分と同じような姿をしている生き物が、月の光を受けて立っていた。
肩を斬られていて、着物を血に染めていた。




340: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:37:32 ID:gmcKMzrA0


 女は、みんな殺して、と言ってブーンに脇差しを与えた。
初めて触れる刀だったにも関わらず、どういう使い方をすればいいのか、何となくわかった。


 女は懐刀で、ブーンの目前で腹を切った。
ぼたぼたと内蔵が溢れている中で、女は笑っていた。


 倒れ伏した女の後ろから、やはり似たような生き物が駆けてくる。
ブーンは刀を構えていた。


 気がつけば、辺りには屍体しか転がっていなかった。
自分の体も少し斬られていたが、あまり気にはならなかった。


 屍体の肉を喰ってみた。
ねずみより、不味かった。




341: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:40:02 ID:gmcKMzrA0


 だだっ広い世界で、何処へ行けばいいかわからなかった。


 脇差しを抱えて、当てもなく世界を彷徨った。


 言葉を覚え、会話を覚え、まともな食事を覚えていった。


 だが満たされない気持ちがいつも胸の奥で広がっていた。
人を斬る度に、心のつっかえが取れていくのを感じた。


 手があり、足があり、布を纏っているのが人間である。
人間には、色々な性質のものがある。
ブーンは少しずつ学んでいく。




342: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:44:04 ID:gmcKMzrA0


 放浪の旅が始まってから一年が経とうとしていた。


 その頃になると、人を見る目がまた変わっていた。


 人は欲望の生き物だ。
ねずみや蛇のように、生きるためだけに生きようとはしない。


 心の中で罵倒し合い、悪を隠したまま笑い合う。
闇に生まれ、闇に生きたブーンは、人の中にある闇を見通す力を持っていた。


 この世は闇に包まれている。
土蔵の中と、何ら変わらない。




343: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:45:55 ID:gmcKMzrA0


 やがて荒巻に拾われ、剣の道に足を踏み入れた。


 道場の中で、竹刀を振り合う。
何の面白みも感じなかった。


 ただ、荒巻の中に、闇を感じなかった。
それが居心地がよく、人を殺さなくなった。


 しかし十年以上が経った頃、耳の奥であの女が囁き始めた。
殺して欲しい。
殺して欲しい。
眠れない日が続いた。




344: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:48:57 ID:gmcKMzrA0


 また世界が闇に染まっていくのを感じた。
殺して欲しい。
死んで欲しい。
死んでよ。
死ぬ。
死。


 糞尿よりも汚らわしい人の闇に包まれる。
天窓の隙間から漏れる僅かな光、それすらも存在しない。


 何もかもが闇であれば、どうやって生きればいいのだ。
闇の中、死のうと思った、だが、死ねない、生きたかった。
光を。
光が。
光へ。




345: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:54:51 ID:gmcKMzrA0


 土蔵の中へ帰りたかった。
人の悪が、何よりも恐ろしかった。


 闇の中で生きるには、闇へ同化するしか無かった。
陽の当たらない場所に籠もり、糞尿を喰らって生きた。
これからも、そうするしかないと思った。




 どれほどの時間が経ったか。
空は、うっすらと青みがかっていた。


 体の表面に砂とほこりが纏わり付いていた。
二人の刀だけが、鈍い光を放っていた。




346: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 20:59:25 ID:gmcKMzrA0


 対峙を続けた両者の間に、僅かな変化が訪れていた。


 張り詰めたものが時々弛緩し、またぴんと張る。
押し寄せる波が砕け、また引いていくように。


 いくつもの波が砕けは引いていった。
無数に散らばる空気の粒が、宙でぶつかり、弾け、混ざり合う。


 ブーンとシャキンは、同時に踏み込んだ。


 お互いが間合いの中に入り、至近距離で顔を見合わせた。
ブーンの割れた右目から覗く闇に、シャキンが自らの姿を見つけた。




347: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 21:01:53 ID:gmcKMzrA0


 ブーンは薙いだ。
シャキンは突く。


 境内に群がる鴉たちが一斉に飛び立ち、濃紺の空を黒く染めた。


 シャキンは、視界に血の色が広がるのを感じた。
膝が折れ、その場に崩れる。


 ブーンの右目に、自分の刀が突き刺さっていた。


 自分の方は、腹を斬られている。
だが致命傷ではない。




350: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 21:04:49 ID:gmcKMzrA0


 顔を拭うと、手に血が付いた。
ブーンを突いたときの返り血だった。


 右目に刀が刺さったまま、しばらくの間ブーンは立っていた。
何か、言いたいようにも見えた。


 間もなく、直立したままブーンは後ろに倒れた。
顔の部分から血が広がり、地面を円状に染めた。


 腹に手を当て、止血を試みる。
しばらくすれば、血は止まりそうだった。


(`・ω・´)(兄さん……兄さん)




352: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 21:07:34 ID:gmcKMzrA0


 目を瞑れば見えていた兄の残影が、見えなくなっていた。
頭の中で囁いていた荒巻の気配も、既に感じない。


 空を見上げると、既に夜の名残は消え去っていた。


 片膝をついて、立ち上がる。
屍体の上をまたぎ、町がよく見える場所まで歩いた。


 昨日と、何も変わらない、町の景色があった。
遠くの山から、眩しいほどの光も感じる。


 朝日が、顔を出そうとしていた。




354: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 21:13:46 ID:gmcKMzrA0


 何年かぶりに、気持ちの昂ぶりを覚えた。


 同時に、背中に熱が走るのを感じた。


 体力も気力も、底をついている。
一握りの生命力で、後ろを振り返った。


 胸の前で白い剣閃が光った。
直後に、血が噴き出したのもわかった。


 今度、目の前を遮ったのは、血の赤ではなく、闇だった。
何処までも落ち続けられる、地獄へと続く闇に、身を投じた。




357: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 21:16:31 ID:gmcKMzrA0


 これが、本当の闇なのか。
最後に、何かを思い出そうとしたが、それすらも闇に消えていった。




ξ゚゚)ξ「だから、無理だと言っただろう」


 音もなく倒れたシャキンから、血溜まりが広がっていく。
人を殺したのは初めてだった。


(;'A`)「死んだんですか」


 ツンの後ろから、体を震わせながらドクオが顔を覗かせた。




362: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 21:19:04 ID:gmcKMzrA0


ξ゚゚)ξ「ああ」

(;'A`)「一緒に夜猿を倒すっていう話じゃ、なかったんですか?」

ξ゚゚)ξ「夜猿はここにいる」


 まだ血に濡れた刀で、シャキンの屍体を指した。


ξ゚゚)ξ「そして、闇に墜ちた」


 これで満足か、と既に事切れたシャキンに、心の中で問いかける。
闇に墜ちたいと言ったのは、確かにシャキンだった。




367: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 21:25:18 ID:gmcKMzrA0


 ドクオは周りの屍体を見渡し、深々と息を吐き出した。


('A`)「それにしても、凄い。一体どういう戦いが起こったんでしょう」

ξ゚゚)ξ「戦いなど起こってはおらんさ」

('A`)「はい?」

ξ゚゚)ξ「ここにはただ、闇があった」


 眩しさを感じ、目を細めた。
遠くの山々から、朝日が顔を覗かせ、境内を煌々と照らしていた。


ξ゚゚)ξ「夜が……明ける」


 小鳥の鳴き声が聞こえてきた。


 風が吹き、新緑の匂いを運んでくる。
朝の気配が、境内に満ち始めた。



( ^ω^)悪の華を咲かせるようです  ―終―




369: ◆hb8Q6YeeDk 2012/06/11(月) 21:26:14 ID:gmcKMzrA0





  
 
    

  全部終わり!




370: 名も無きAAのようです 2012/06/11(月) 21:26:36 ID:g4busvtcO






371: 名も無きAAのようです 2012/06/11(月) 21:26:39 ID:J1vxdOD.0






372: 名も無きAAのようです 2012/06/11(月) 21:26:40 ID:F2UlmO320

最大級の乙!
マジで引き込まれた!!




373: 名も無きAAのようです 2012/06/11(月) 21:26:47 ID:VyVxPDJo0

超乙でした!!




374: 名も無きAAのようです 2012/06/11(月) 21:27:17 ID:kpBL8tPY0

淡々と始まって淡々と終わったけどその割に異常に濃くて面白かった





375: 名も無きAAのようです 2012/06/11(月) 21:27:19 ID:IyLOzb520


久々にハラハラドキドキしながら読んだ…
面白かった




379: 名も無きAAのようです 2012/06/11(月) 21:28:27 ID:/e14wxSQO


胸と胃が痛くなったわ
間違いなくこれは俺の好きなブーン系トップ5に入る




381: 名も無きAAのようです 2012/06/11(月) 21:28:40 ID:DyMPR6hIO

乙でしたー




転載元:( ^ω^)悪の華を咲かせるようです


・( ^ω^) ブーン系創作板のようですに投稿されたスレッドの紹介でした
 ( ^ω^)悪の華を咲かせるようです
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