転載元:ξ゚゚)ξはサイレントヒルで看護婦をやっていたようです

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ξ゚゚)ξはサイレントヒルで看護婦をやっていたようです【前編】【後編】

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 00:55:41.55 ID:vMJ2LfJF0


 遊ぶのに飽きたら帰らなきゃならない。


 遊ばれるのに疲れても帰ることはできない。


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4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 00:57:56.54 ID:vMJ2LfJF0

ここはどこなのだろう。
お化け屋敷を出たのか。
それとも、変調したお化け屋敷をめぐっているのか。

ぴたぴたぴたぴた。
足裏が張り付いては離れる音。

ゴードン氏は――否、もはや、クリーチャーだ――止まらない。
四足歩行の不恰好な移動。
それで生まれる振動は小刻みにわたしの身体を揺らしている。

視界が閉ざされているために、肌でのみ速度を感じられた。
湿り気を帯びた空気がひどくべたついた髪を撫でている。
それは後頭部から顔に向かって流れ続けていた。

向かい合うように抱きしめられたわたし。
鼻をつくすえた体臭。
さらに、吐きかけられる生臭い息。

「じゃくりぃいん、たぁあめぇえぇぇのぉお、おみっやっげー」

視界が開けたと言って、彼の言葉を理解することはできなかっただろう。
その後の行為は予想だにできなかった。
狂人だと、それだけが分かる程度だった。




5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:00:11.09 ID:vMJ2LfJF0

わたしを抱き上げていた腕の一対、長い二本が外された。

「きゃははははははははは」

「うふふ、きゃははっ」

ピンクのウサギ。
間違いない、それが多数いる。
囲まれている。

「じゃっきーのためぇのぉ、うさちゃんが、うさちゃんがいっぴきー」

ゴードン氏の歩調が大きくなる。
上下動が激しくなる。

何をする――

ずん。

ぶじゅ。

「しんだ」

肉の中から、何かを引き抜くような音。
「腕ほどの太さを持った」何かが、「胴体の柔らかい」肉から引き抜かれるような。




6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:01:48.12 ID:vMJ2LfJF0

「ギャー!!」

「キャハ―――!!」

「ろびーちゃんのお人形、だよおおおおお!!」

あ。

「もう、いっぴーきーしんだーらー、みーんなーがしーあわせー」

あ?

ぐびゅりゅ、びちっ。

「ギャーハハハハ! ギャ――――――!」

「にひーきー。さんーびきー」

ご、ぶちり、ごっごっ、ごっごっごっ。

あ?

何を、している……?




8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:04:03.35 ID:vMJ2LfJF0

眼を塞がれ凶行を目撃できなかったことは、わたしにふたつの心理状態をもたらした。

ひとつ、つや無く重苦しい灰色の鎮静。
ひとつ、煤けたようなぼけた黒の絶望。

容易く死を作り出すこの男が、わたしの心から負の側面を引き出す。
混濁したふたつの色が胸中で溶け合い、打ち消しあい、体力を奪う。

ゴードン氏の腕が緩んだことに気付いたのは、それから少し経ってからだ。
ぬめついた身体に押し付けられる圧力が減っている。
わたしの腕の肘から先だけが自由になっていた。

だが、抵抗はしない。

ゴードン氏の鼻歌が聞こえる。
上機嫌そうな、調子はずれのメロディ。

下手なことをすれば、わたしの身体は、あるいは頭は強力な腕に……。

昔見た救急患者の、砕けた膝から覗く骨と肉。
あれを全身で再現することになる。

そんなのは嫌だ。




10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:05:30.40 ID:vMJ2LfJF0

「のぼる、おいらァはrぁsきえぁ」

のけ反るように抱えられていたわたしの身体の傾きが逆になる。
ゴードン氏のひやりと湿った肩に頭を預ける形だ。
努めて、わたしはそれを拒絶した。

「こわーくないっよおお、だいじょうぶだよおお、じゃっきいいいいいい」

大丈夫。

ちらりとモララーの無事を祈った。
せめて、彼だけは、無事で。
本当にいるかも不確かな息子との再会を求める彼だけは。

わたしは?

「くっ、ふぅ」

抱えなおされると同時に息が漏れる。
わたしは改めて肩をすぼめるように締め付けられた。

……対抗するための手が無い。
このままでは好きに遊ばれて終わる。

嫌だ、嫌だ……。




12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:07:16.63 ID:vMJ2LfJF0

「じゃっきぃいぃぃぃぃ?」

ゴードン氏の脚が、止まる。
何かを感じ取られたのだろうか。

「……な、なんでもないわ!」

引きつった顔を無理やり笑わせる。
緊張した声だ。

「ううん? んんん。あああああ」

「大丈夫、大丈夫よ」

「おほうぅ。うあは」

納得、したのだろうか。
歩みが再開された。

少しして、身体の傾きが解消された。
平地に着いたらしい。
感覚からして、高い位置にある何かアトラクションのひとつ。

頭をすえた臭いから離すことができて、ほんのわずかに安心する。




13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:07:58.91 ID:vMJ2LfJF0



ほっとしたのもつかの間。

ぐら と 身体 が 揺れる。

塞がれた 目元 が ぐわ と。






14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:09:13.69 ID:vMJ2LfJF0

ξ;゚゚)ξ「う、わ」

急に視界が開ける。

わたしは揺れる床の上に立っていた。
突然支えがなくなったにも関わらず、両脚がしゃんとしているのに気付く。
まるで元からそこにいたかのように。

ダメージを負った精神では、解放されたことを理解するまでに時間を要した。
10秒、いや20秒はぼんやり周囲を見渡していただろう。
状況把握のためではなく、単に思考が追いつかずにそうなってしまったようだ。

奥へと続く通路。
左右には途切れ途切れの段差が並ぶ。
そして、その上に窓。

ξ;゚゚)ξ「ここは?」

自由が戻った腕を壁に押し付け、窓のひとつにかじりついた。
外を流れ行く光の筋、この定期的な振動。
手を付いたのは、壁というより、横開きのドアらしい。

ξ;゚゚)ξ「電車だ」

間違いなく、ここは地下を走る電車の中だ。




15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:10:36.81 ID:vMJ2LfJF0

理解は行動に繋がる。
危険が完全に去ったのかを確認するのだ。

ξ;゚゚)ξ「彼は……」

後ろの車両とを繋ぐドアの窓は曇っていてよく見えない。
これまでに体験したどの変調とも同様に、車内は薄汚く、空気がどんよりしていた。
座席のクッションも埃っぽく、長らく人が利用していないことが分かる。

どうやら、わたしは思いがけず束の間の安全と自由を――

キキキィィイ。

急ブレーキがわたしの身体を2mも転がした。

圧縮された空気の吹き出す音がする。

ごごん。

ドアが、開いた。

ξ;-゚)ξ「っつ!」

疲労しきった身体をなんとか起こす。
どこかのホームに到着したらしい。




17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:11:26.23 ID:vMJ2LfJF0

車内に未練はなかった。
迷わずわたしは電灯がまばらについたホームに降り立つ。
そこでは自販機だけが低くうなり声を上げている。

ξ゚゚)ξ「!」

駅名が書かれた看板を発見して、驚愕する。
その地名は。

ξ;゚゚)ξ「帰れる。ホライゾンのところに、帰れる」

わたしが夫と住む家から少しだけ離れた駅だ。
歩いて20分もしないで辿り着ける。

次の瞬間、明滅した電灯の向こうに上り階段を認めた。
それを上れば、改札。
切符が無くても通れるだろうか。

駅員がいないけど、人はいるんだろうか。
そうだ、時計を外していて時間が分からない。
もう夜遅くなのかもしれない。

とにかく、なんとかしてここを出れば夫の待つ家に帰れる。
もう辛い思いはしなくてもいい。




19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:13:32.56 ID:vMJ2LfJF0

やった。

夢だったんだ。

きっと、ちょっと電車で出かけた帰りに居眠りしていただけなんだ。

やったぁ。

怪我だって一個もしないで、銃なんて持ち歩かないで、
見知らぬ男と協力したりなんかせず、泣くようなこともなく、
こんな苦しいこと。

ξ )ξ「もう、いい」

もういい。
もういいんだ。
はははは。

もう、いい。

ξ )ξ「ふふふふ、あはははははは! あは、あは、あは……」




20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:14:42.51 ID:vMJ2LfJF0


くだらない幻想なんか抱かせないで。

もうわたしで遊ばないでよ。






22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:20:19.80 ID:vMJ2LfJF0

ξ;;)ξ「もういいのよ。こんなの」

もう、分かってるんだ。
いいんだ。

ξ ;)ξ「ほら」

高い位置にある看板に、足元の砕けた床材を投げる。
金属製の錆びた板を、小さなコンクリート片は貫通した。
元からそんなものが無かったかのように、煙のように、看板は消えた。。

ξ ;)ξ「こんな駅、見たことないもの」

指先で触れても、そこには冷たい壁があるのみだ。

ξっ )ξ「慣れちゃったわ」

たとえ実在したとして、外が正常な世界であると考えるなど、ひどい笑い種だ。
逃避が根本の解決にならないことは重々承知している。

ξっ-)ξ「……」

わたしは遊園地に戻らなくてはならないのだ。
たとえゴードン氏から逃げられたとして、それだけでは無意味だ

ξっ-)ξ「どうにかして戻らないと」

自販機の稼動音がもう少し小さければ良かったのに、と思ったのは直後だった。




24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:23:48.05 ID:vMJ2LfJF0

「ぐるるるるぅう……」

ξ;゚゚)ξ「ッ!」

犬だ、どこかに犬がいる。
灯りの輪から外れた暗がりに輪郭が少しだけ見え隠れする。

「ガウッ! ガフッ、ガァッ!」

――下手に手を出すと仲間を呼ぶんだ。脚も早い。

モララーがそう言っていた。

気配は左右から、背後から、どこからでもする。
いつの間にか囲まれているような気がする。
こんなにも接近を許してしまったのか。

手に武器は無い。
柄の長くて便利だった鉄パイプはどこか――そうだ、モララーといた部屋――にある。
素手で相手にできるわけがない。

どっ どっ どっ どっ

絶望に沈んでいた心臓の動きが活発になる。




26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:24:43.76 ID:vMJ2LfJF0

なんとかすれば状況が打開できるのではないか。
その淡い期待が防衛本能を掻き立て、身体を戦闘状態に持っていく。

相手はたかが犬だ。
数が多くてもどうにかできる。
ゴードン氏に比べれば大したことがない。

……はずだ。

「ぐるるるるる」

一匹の犬、に似た怪物が灯りの下に進み出る。
明滅した電灯がさらにそれを照らした。
病院前で遭遇した筋肉が剥き出しのものとは違い、灰色のだぶついた皮を纏った眼の無い怪物だ。

ξ;゚゚)ξ「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

モララーならこうするだろうという姿を思い描き、実践する。
腰を少し落とした、すぐに走ることも攻撃にも移れる姿勢だ。

電車に逃げる。
一見、安全に思えるが、反撃の術が無ければ自ら密室に篭るのは「詰み」の状態に陥る。
武器に出来そうなものはないだろうか……。

犬、暗がり、遠くの明るみへと素早く眼を走らせた。
その間も犬は着実に近づいてくる。
距離は5mも無い。




27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:27:05.84 ID:vMJ2LfJF0

「ぐるぐるぐるるるる」

犬が止まった。

ξ;゚゚)ξ「?」

そうか。

眼が無いこいつらは、視覚でわたしを追いかけられないのだ。
どうやら、わたしがさっき立てた音を頼りに集まってきたようだ。
その証拠に、目の前にいるのに襲い掛かってこない。

ξ;゚゚)ξ「――ッ……」

理解した途端に息を殺すことに注力する。
犬は唸ったまま、首をゆっくりと振っている。
音の発生源を探しているのだろう。

……かなり離れた電灯の下にひとつの長い物が壁から生えている。
あの形状は、いや、しかしまさか。
だが、奇怪なこの空間にならあってもおかしくはない。

あれを取りに行くなら、今だ。




28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:28:14.61 ID:vMJ2LfJF0

腰をさらにかがめてコンクリート片をいくつか拾い上げる。
衣擦れの音でも、今は命取りになる。
やかましく胸を叩く心臓さえも、犬に聞き取られてしまうのではないかと、取り出して捨ててしまいたいくらいだった。

ξ;--)ξ「……」

ゆっくりと、酸素を吸い込む。

心拍数の増加に必要酸素量は比例し、排気したくなる二酸化炭素量も増える。
吸っている最中であっても息を吐きたいという、辛い状況だ。

犬が完全に動きを止めた。

ξ;゚゚)ξ「?」

その口が開かれる。

ξ;゚゚)ξ「ッ!!」

普通の犬と同じようにならよかった。

その怪物は口と言わず、頭部を先端から「左右に裂けるように」開いた。

ぬちぃぃいり。

めちゃあ。




30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:31:33.40 ID:vMJ2LfJF0

ξ;゚゚)ξ「〜〜〜ッ」

粘つく糸を引きながら、それは頭を二股に裂いていく。
首元まで裂けてから、気付く。

そこにはむき出しの牙と小さな穴が二つ付いていた。
ふんふん、とニオイをかぐような音が耳に届いた瞬間、ぞっとする。

犬の嗅覚。

考える早く、手にしたコンクリートの破片をひとつ後方に強く投げていた。

こっ。

こつん。

「ガウッ! ギャウゥ! ガウガウ!」

それを聞いた犬達が一斉に吼え声を上げた。
その数は分からないし、知りたくもなかった。

破片をもうひとつ、遠くへ。




31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:32:36.83 ID:vMJ2LfJF0

二つ目が地面に落ちるより早く、わたしは駆け出した。

ξ;゚゚)ξ「――ひっ、はぁっ!」

息を吸うのを忘れていた。
それが、怪物の頭が割れる光景が思いの外、衝撃的であったことを物語っていた。

何匹かが吼えながら後ろを着いてくる。

コンクリートを停車中の電車に叩き付けた。

ガッシャァン。

運よく割れかけていた窓に当たったらしい。
けたたましい音が立つ。
これでそちらに引き付けられてくれれば。

闇を走ることには慣れたつもりだが、見えざる障害物まで避けられはしない。

途中、腰ほどの高さの何かに膝を強く打ち、身悶えるような痛みに耐えた。
その際も激しい音が立ち、多くの犬達がこちらに興味を持つことが予想された。

ξ;゚゚)ξ「ハァッ! ハァッ! ハァッ!」

あと、20mもないはずだ。




32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:35:59.24 ID:vMJ2LfJF0

コンクリート、最後のひとつを電車に投げつける。

がん。

金属の車体に凹みを作るくらいの勢いではあったようだが、どうにも地味な音だ。
音量も小さい。

「ギャン! ガウガウバウ!」

犬の吼え声が近くに聴こえてきた。
接近の速度は上がるのに、わたしはそれを引き離せない。
太腿がだるく、ふくらはぎは痙攣している。

酸欠の視界で、「あれ」を見る。
壁に突き立った長い白銀に、茶色とも黒とも付かぬ、握り手。
境界には金属の板が備えられている。

間違いなく、期待していたものだ。

ξ;゚゚)ξ「……ッ! ……ッ!」

息がもう長くは続かない。
全身に鞭を打ちすぎた。
既に限界を越えるすれすれでここまで来たのだ。




34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:39:47.27 ID:vMJ2LfJF0

粘つく口腔に、血錆びの香り。
発生源はわたしの喉のようだ。
あるいは肺か。

灯りの下に入り込んだ。

手を伸ばす。

指先が触れる。

掴む。

ξ;゚゚)ξ「――ッ!」

力を込めて、引き抜き――

ξ;゚゚)ξ「くっ!!」

抜けない!

視界の端に灰色の小さな塊が飛び込んできた。

追いつかれた!




35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:40:36.32 ID:vMJ2LfJF0

砲弾のような体当たりを、わたしはまともに喰らった。

ξ; )ξ「くうっ!」

さらにもう一匹が頭を二つに分けて駆けてくる。
剥き出しの顎が開かれ、今にも噛みつかんとばかりに開かれている。

ξ; ゚)ξ「くそっ!」

ほぼ反射的に左脚を振り上げたのが功を奏し、靴裏で歯を防ぐことに成功した。

「グググガァ! ガフッ! ギャアアッ!」

そのまま壁に頭を蹴りつけ、よろめいた犬の口から足を外し、踏みつける。

ズズズズズ、ガリカカッ。

肉が壁面に摩り下ろされ、骨を削ったようだ。

「ギャアアアア!!」

呻きに感想を抱く前に、次の犬が襲い掛かってくる。
再び、左足を蹴り出す。




39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:43:23.60 ID:vMJ2LfJF0

だが、幸運は二度も続かなかった。

ぶん。

空振りでバランスを崩したところに、軸足への痛み。
眼を持たない犬の噛み付きが脛に食い込んでいた。

ξ;゚゚)ξ「ッ! いっ! くう……ッ!」

デニムが辛うじて牙の進行を阻んでいる。
だが、感触からして中で出血していることは確かだ。
しかも、この咬む力。

脛にある二本の骨のうち、片方は細く比較的折れやすい。
歩行すら不能にされてはたまらないと、ぎりぎり噛み続けるグロテスクな頭を蹴る。

蹴る、蹴る、蹴る。

ξ;゚゚)ξ「離せ!!」

蹴る!

めぎ、と犬の牙が折れる感触が伝わる。

同時に、それがデニムにずぶりと突き立つのも。




40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:44:46.56 ID:vMJ2LfJF0

ξ; )ξ「あああああああッ!!」

右脚に生暖かい物がまとわり付く。
犬の吐息か、わたしの血か、判別するだけの余裕は無い。

頭に浮かんだのは、ひとつの否定しようがない考えだった。

このままでは、じわじわと体力を奪われる。
行き着く先は、死。

遊ばれたまま、死ねるものか。

ξ; )ξ「ああぁぁあ!! うああああ!!」

壁に突き立った物を死に物狂いで掴み、乱暴に揺さぶる。
捻り、捩り、押して、引く。
上下左右に力任せに、半ばぶら下がるようにして。

めぎ、り。

さらに進行する牙。
右脚先の感覚が薄れてきた。
疲労に加えての激痛で神経がどうにかなりそうだ。

痛みに歯を食いしばれば食いしばるほど、両手にも力が篭った。
そして、ついにその時が訪れる。




41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:45:27.15 ID:vMJ2LfJF0



ばぎん、と日本刀の刀身が先端の方で折れ、自由を得た。






44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:49:31.37 ID:vMJ2LfJF0

痺れるような手応えを覚えた瞬間、逆手に握ったカタナを振り下ろす。

ずぶゅる。

犬の首に刺し込んだ刃がぬるりと滑り、頚椎辺りに接触。

ξ; )ξ「ああああ!!」

柄頭をもう片手で押し、そして。

ご、きん。

胴体と忌々しい頭を分断した。

右脚を振るい、ぶら下がっていたものを落とす。

ξ; )ξ「ハァッ! ハァッ! ハッ! ハッ! ハッ! ハッ!」

まだ終わりではない。
寸暇すら程遠い。
一匹や二匹殺したところで。

犬が二匹、わたしの前にいる。




45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:50:13.52 ID:vMJ2LfJF0

両手で日本刀を握り締め、無様に折れた先端を向ける。

……襲い掛かってこない。
仲間の断末魔を聴いたのか。
楽観視すれば、わたしに恐怖を抱いて戸惑っているようにも思える。

ならば好都合だ、と今のうちに状況を確かめる。

右脚に力を入れてみる。
骨は折れていないようだ。
筋肉に裂傷は負っているが、歩けないほどではない。

電車のドアは開いている。
階段はわたしの後方にある。
どちらに逃げるのが得策だ。

考えろ。

未知なる闇に踏み出すか、来た道を引き返すか。

ξ; )ξ「ハァ――。ハァ――」

リスクを天秤にかけて、わたしがとった道は後者だった。




46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:50:53.89 ID:vMJ2LfJF0

じりじりとしか移動できず、過剰なストレスが付きまとう。
脚は思うように動かず、暗い場所に何がいるかも分からない状況だ。
重たい刃物を辛うじて目に付く犬達に向ける労力も、決して小さくはない。

犬は、まだ迷っているようだった。
できることなら見失っていて欲しい。
本当に、小さな希望でしかないけれど。

二匹のうち、片方が頭を二つに裂いた。

「バウバウバウッ!!」

犬がこちらへと走るべく一瞬身を低くしたのを認めるや、わたしは残りの距離を走りぬけることを決意した。

ξ )ξ「ッアアアァ!」

一気にかけた体重に耐えかねて、ふくらはぎ辺りの肉が血を吹く。
デニムの中に熱い物が染み渡ることがそれを示していた。

どくん。

もう少し。

どくん。

あと、ちょっと。

――あはぁ。

え?




48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:54:45.69 ID:vMJ2LfJF0

最後の一歩で電車に転がり込む瞬間、わたしは発見してしまう。

それは電車を降りて始め、わたしが向かった自販機の奥にいた。

出来の悪い人間のような、成長しすぎた新人種のような。

四本の脚に沿った身体、長短そろった二対の腕。

腐った果実のような頭に下卑た笑みを浮かべた顔は皺が寄っている。

嬉しそうな、こもった歓声を上げたそれは、わたしを呼ぶ。

首元で感じる心拍音と吼え声の中で、何故かはっきりと聴こえた。

わたしを、別の名で呼ぶその声が。

「じゃっきー」

ゴードン氏が、犬を握りつぶしながら佇んでいた。




50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:55:27.08 ID:vMJ2LfJF0

車内座席横に備えられたバーを掴み遠心力で体勢を整える。

ξ; ゚)ξ「くうううぅぅぅっ!!」

踏ん張る足が悲鳴を上げる。
だが、それよりも。

「あっはぁあああああ!!」

大きな影が構内に点在する灯りを横切る。
小さなものが車内に乗り込むのが分かる。

こちらに乗り込んだのは失敗だったか……!?

考えているよりも事態は好転していなかった。
わたしだけが変調に巻き込まれて地下鉄に移動したものと考えていたのだ。

まったくの別世界、そう、「裏」の世界であるここは、わたしに都合よく働くわけではないのに。
なんという勘違いだ。

「ガウ! ギャウゥウゥ!」

ξ; ゚)ξ「ッ!」

真っ直ぐに飛びついてくる犬に、咄嗟に日本刀を突き出す。




52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 01:59:09.25 ID:vMJ2LfJF0

ぐっ、びゅごるん。

開かれた寄生虫のような頭部に刺し込まれた刃が、咽頭を乱暴に撫でて進む手ごたえ。
犬が飛んだ勢いとわたしの腕力で、日本刀は一撃の下に怪物を絶命させた。

若干遅れて両腕にかかる、怪物の体重。
上半身ごと重力に引っ張られ傾いてしまう。

ゴードン氏の速度は変わらないのに。

「うふふふ、あはははは、あはぁ、えふうっ」

わたしが入り込んだ車両、それも同じドアから彼は侵入を試みるつもりなのか。
いくつもの出入り口を無視し、恐るべき移動速度を貫いている。
点滅した電灯が本当に瞬く間だけ、そのたるんだ口元を照らした。

にたり、と歪んだ唇を。

ξ; )ξ「――ッ」

ゴードン氏に殺されていた犬の怪物が宙を舞う。
投げ飛ばされたのだ。
それは凄まじい勢いで――

ガッシャァアン。




53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:00:09.04 ID:vMJ2LfJF0

ひしゃげた怪物が窓を突き破って、車内へ。
たまらずガラスの雨から顔を背け、頭をかばう。
背中にいくつもの大きな破片が当たる。

「うひっうふひ、ぬふぁあは」

砕け散る甲高い音にも混じる声。

はっ、と日本刀を手放してしまったことに気付いた。
即座に暗い足元を探し始める。

「じゃっきー、じゃっきー、じゃあぁっきぃいぃい」

もうすぐそこにいるのが分かる。

これだ。
この手触り、犬の死体だ。
口から早く武器を抜き取るんだ。

ぶよぶよした皮、こっちは尻尾。
頭を探せ。
割れた頭を……。

え?

何も、ない?




54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:00:49.37 ID:vMJ2LfJF0

ξ; )ξ「違う!」

これは投げられた方の死体だ!

「かぁあくれんぼうは、しなあぁあああいいいよおおおぅうううう」

もう一体はどこだ!
なんてことだ!
たった数秒で見失うなんて!

「いぬがすきだったろおおぅう?」

乱暴に掌を床に叩き付けてもうひとつの怪物を探す。
見えない。
でも、探し当てるしかない。

ゴードン氏の接近を確認する余裕はない。
偶然にも床の上でトゲのように立っていたガラス片が指を細かく傷つける。
ばたばたと動かす手が、ひやりとして、熱い、切り傷の感触に包まれる。

ξ; )ξ「ッ! あった!」

ついに、日本刀の柄が手の甲に触れた。
よし、後はこれを抜くだけだ。




57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:04:00.77 ID:vMJ2LfJF0



「な に が あ ?」


見上げた先には大きな影が立ちはだかっていて


四本の腕の一本が、わたしに向かって素早く振り下ろされ


それで


わたしは。






58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:04:45.92 ID:vMJ2LfJF0

「ガウガウガウガウ!」

吼え声だ。

闇に隠れていたものの声か、さっきわたしが殺した二匹の近くにいたもののそれか、分からなかった。
だが、その犬はわたしにとってある種の天恵だった。

「うああぁ、じゃあああまああだああぁあああ!!」

暗闇で大きなシルエットに、小さなものが喰らい付いている。
ゴードン氏の声で状況は掴めた。

わたしは、わたしが出来うる最善を。

つまり、日本刀の回収と――

ξ )ξ「ああああああ!!」

ず、ぶ。

「ああああぁあぁいだあああいいいいいぃぃぃ!!」

収めるべき場所への「挿入」だ。

ξ゚ ゚)ξ「ああッ!」




60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:08:00.57 ID:vMJ2LfJF0

手応えは硬い。
肋骨に阻まれたらしい。

ほとんどを黒に塗りつぶされた車内で、眼を全開にして叫ぶ。

ξ゚ ゚)ξ「**!」

叫びながら、刺す。

ξ゚ ゚)ξ「――ッ」

息を吸いながら抜く。

ξ゚ ゚)ξ「**ッ!!」

また、刺す。

「うぎゃああああいたああああいいいあああああ!!」

振り回された腕が、わたしの肩を殴った。
驚くべき力強さで身体が浮く。
しかし、狙いの定まっていない攻撃では気絶しなかった。

距離が離れはしたが、日本刀を手放すことはなかった。
影はまだ犬とも格闘中に見えた。
ここぞとばかりに、わたしは刃を突き立てに駆け寄る。

圧縮空気の吐き出される音。




61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:08:40.86 ID:vMJ2LfJF0

ごごごん。

ドアだ。
ドアが閉まろうとしている。
いや、「閉まろうとした」。

「ぐっ、ああああわあああ! ぎゃああうあっうああああっ!」

ゴードン氏が電車のドアにその不恰好に斜めを向いた身体を挟まれたらしい。

絶好機。

わたしはすかさず日本刀を大上段に構える。
この武器は重さもある。
きっと、体重を乗せれば致命的な一撃を与えることができる。

ξ゚ ゚)ξ「**ぇぇぇ!!」

ぶうん。

踏み込んだ脚が痛みに呻くイメージと、首を切断して落とすイメージ。
二つが脳内で混ざり合い、わたしは何を感じたのだろう。
どうしてだ。




62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:09:21.27 ID:vMJ2LfJF0



何故、


ξ゚∀゚)ξ「死ねええええええぇぇぇ」


笑う。






63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:10:05.51 ID:vMJ2LfJF0


――勝利を確信した。

当面の危機を回避したと思った。

なのに。





66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:12:43.42 ID:vMJ2LfJF0

なのに、わたしは、今。

「はああっ! はあぁっ! こいつ! こいつううううう!!」

ξ )ξ「ガッハッ!」

わたしは、今、地面を這いつくばっている。

背中を殴られたらしい。
息が詰まる。
わたしはなんとか日本刀の柄を握り締め、隣の車両へと逃げていく。

「みえてるぞ! そこらにいるのはわかってるんだぞおおお!!」

見なくても、怒り狂ったゴードン氏が無茶苦茶に腕を振り回しているのが分かる。
窓から差す光は微弱で、言うほど見えていないことくらい知っている。
だが、危険だ。

過失は、三つあった。
わたしに対して不利な条件が重なり合った。
たった一瞬のうちに立場は入れ替わった。




67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:13:34.45 ID:vMJ2LfJF0

その電車はドアが閉まると同時に動き出した。
ゴードン氏が間に挟まっているにも関わらずだ。
半開きのドアのまま、電車は動き出した。

日本刀は、わたしが折り取ったせいで短くなっていた。
元の正確な長さなど知る由もない。
だが、間違いなく5cmはあの壁に刃先を残してきた。

そして、何故だかは知らないが、上手く斬れなかった。
斧のように、竹が綺麗に割れるような斬撃を想像していた。
実際は、そんな風にはならなかった。

電車の揺れで足元がふらついた。
刃で首を狙ったつもりが、肩に入った。
そして、それもほとんど腕に阻まれ斬れなかった。

ξ; )ξ「はぁ、はぁ、はぁ」

無理やりドアをこじ開けて侵入したゴードン氏の動きは迅速だった。
わたしの首を絞める手が日本刀で傷ついていなければ、抜け出すことはできなかっただろう。

ようやく辿り着いた車両間のスライドドアを、力一杯使って横に。

「そっちだなああぁあああああ!!」




68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:14:14.81 ID:vMJ2LfJF0

隣の車両に転がり込み、足でドアを閉める。
隙間からゴードン氏の、いや、ゴードンの影を少しだけ認めた。

……ゴードンがここを通るのはかなり苦労するだろう。
多少でも時間稼ぎができればいい。

逃げるため?

いや、違う。
わたしはまだ、生きるのを諦めてはいない。

立ち向かうための道具が、これだけでは足りない。
条件がわたしにとって不利すぎる。
逃げ場の無い一本道であんな怪物と渡り合うための何か、要素が。

ξ; )ξ「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

ξ; ∀ )ξ「ふっ、くふっ……」

わたしは、また笑っている。

恐怖の極致でついにタガが外れたか。
だが、おかしい。
まだ頭では冷静に物事が判断できている。




70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:16:34.39 ID:vMJ2LfJF0

どくん。

胎動にも似た感触。

どくん。

身篭りこそしたが、経験などしたことないのに。

どくん。

別の心臓がもうひとつわたしの中にあるような。

どくん。

同調した拍動が生命の主張をする。

どくん。

意思があると錯覚させるほど強く。

どくん。

そういえば、わたしはこの「何か」と、サイレントヒルに来てからずっと一緒にいる気がする……。




71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:17:33.36 ID:vMJ2LfJF0

三車両分移動した。
背後でドアが破壊される音が聴こえたが、遠い世界のもののようだった。

車内にはめぼしいものが落ちていない。
ここにショットガンでもあれば。
無いものねだりだが、わたしはもはや銃器の取得を「切望」している。

足首が頼りなさげにがくがくする。
何キロも走った後みたいだ。
左手の日本刀を杖に突きそうになり、踏みとどまった。

これ以上短くなってしまっては対抗手段がなくなる。

さらに一車両通過する。

座席に比較的新しい鞄を発見する。
オフィスワーカー用の肩掛けタイプだ。
中身は……。

栄養ドリンク。
万年筆、手帳などの筆記具。
ヘッドホンに延長ケーブルつきのポータブルCDプレイヤー。

後は書類などがまちまち。
サイドポケットに、タバコ、ライター、携帯灰皿。
タバコの箱を見て、銘柄がモララーのものと同じであることを思い出す。

持って行ってやろう……。




72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:18:21.61 ID:vMJ2LfJF0

わたしは賞味期限を確認して、栄養ドリンクを一本、すぐに空けた。
温い薬品のような液体が喉にしつこく絡み、胃が少々拒むような反応を見せた。

ξ; -゚)ξ「っ、くう」

吐き戻しそうな瞬間を乗り越えれば、水分が染みるのが分かった。
無理をしてでも栄養を取らねばならない。
思考力を保たなければ、死ぬ。

電車の走行音に混じってゴードンの喚きが聴こえる。

「おまえが、おまえがわたしをおいていくからいけないんだああああ」

「わたしをっじゃくりぃぃぃいいんん!! おいていくからああああ!!」

「ひとっ、ひとりっ! ひとりはっ、いやだぁあ!」

「わたっ、うえっ、ひとりにするなよおおおおおぉぉぉ」

確か、カルテには精神退行の見られる患者であると書かれていた。
痴呆症の妻を殺害したと妄想している、とも。

「ころおおぉしてええぇやぁああるんだあぁああ! おまええええをおお! じゃあっきいぃいい!」

「どこだああぁああああ! ひいいぃいぃいいいいいいい! あああああああああああああ!」

本当に妄想なのだろうか……。




74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:22:20.36 ID:vMJ2LfJF0

わたしにはゴードンの思考を読むほどのゆとりが時間的にも体力的にも無い。
叫びの中にどれだけ彼の想いがこもっているのか、汲むことができないのだ。
どころか、彼はわたしを、わたしは彼を、互いに殺そうとしている。

変えようの無い事実だ。

ひとつ、確信がある。
彼は、ゴードンは、わたしを手にかけるまでは止まらないということだ。

つまり、裏を返せばわたしが彼から逃げ切るには……。

「わたしを、わたしをおいていかないでくれよおおぉぉ……わああああああ!! ぎゃあああああああああ!!」

悪夢の一部を止めるためには、わたしはやらなければならない。
死を作り出す、のだ。

ξ; ∀ )ξ「……くっ……ふふっ」

そして、わたしはまた笑う。
意思に反して。

どくん。

そして、拍動は強くなる。

どくん。

意思に反して。

わたしは鞄を肩にかけ、よろよろと先を進む。




75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:23:00.91 ID:vMJ2LfJF0

先頭車両のひとつ手前までやってきた。
取り残された荷物がまたひとつある。
今度はランニングなどにも使われる、若者向けのリュックサックだ。

くだらないオカルト雑誌、スナック、ペットボトルの水。
ヘアスプレー、小さな飛び出しナイフ、サングラス。

……モララーは無事だろうか。
わたしは彼のためにも早く戻らなければならない。

彼もわたしの手助けがなければ目的を達成できない。
わたし達にとって生還は二の次だ。
優先事項は別にある。

分かっているからこそ、ここでわたしは負けられない。

ξ )ξ「……」

負けられない、という考えがいかに甘いか、わたしは既に知っている。
この空間で勝敗とは、生死をかけたものだ。

十二分に、知っている。




76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:24:22.94 ID:vMJ2LfJF0

しばしぼうっとした後、わたしは身を強張らせることになる。

ガシャアァン。

進行方向の左側の窓ガラスが砕けて車内に舞った。

ξ; )ξ「ッ!」

車外のライトを遮るシルエットには、長い四本の腕を備えたもの。
それが電車の上からぶら下がっていた。

「みぃいつけたあぁ!」

ゴードンは地下鉄の屋根を伝ってこちらに来たのだ!

「うふふふふうううふふふふはあふふふはうはうはうあははははははは」

いけない。
早く駆け抜けなければ道をふさがれてしまう。
まだ残された手段さえも取得できないしれない。

ξ; )ξ「そうだ」




78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:25:31.84 ID:vMJ2LfJF0

わたしは飛び出しナイフを取り出し、車内を進む。
ゴードンは電車と地下鉄の壁との狭い隙間を慎重に抜けてくる。
たるんだ顔が重力に負けて逆さに肉を緩ませている。

あわや、車内に侵入し直そうというところで、わたしはナイフを投げた。

回転したナイフはゴードンの方に飛び、そして、

とん。

ξ; )ξ「くそっ!」

握り部分の方が当たって、車外に消えた。
怯ませる材料にもなりはしなかった。

ならば、と荷物の中身を頭の中で整理する。
その間もゴードンはぬるぬると電車に入り込んでくる。
四本の腕が通路を塞ごうと伸びてきているのは、嫌でも分かった。

どくん。

雑誌、スナック菓子、ボトル。

どくん。

「うへええはああは」




79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:26:12.38 ID:vMJ2LfJF0

どくん。

タバコ、ライター、スプレー。

どくん。

これだ。

「もうにぃいいげないんだあなあああ、いいぃこだあぁ」

ゆっくりと侵入してくる様子は、わざとなのだろうか。

ξ )ξ「わたしは」

わたしは対象的に素早く日本刀を座席に置き、三つの道具を選ぶ。

ξ゚ ゚)ξ「逃げないわよ」

まず、雑誌を引き裂く。

「ふふふうふうううううふふふ」

どくん。

わたしの中で何かがのた打ち回る。




80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:28:19.06 ID:vMJ2LfJF0

ξ゚ ゚)ξ

なんとか半分に千切れた紙束を、ゴードンに投げつけた。
吹き込む風が、上手くそれらをゴードンにまとわり付かせる。

どくん。

右にライターを。
左にスプレー缶を。

どくん。

ξ゚ ゚)ξ

じゃり、と着火剤が擦れあう。
火が起こるところに、スプレーを吹きかける。

どくん。

「ひぃっ!?」

車内に火炎の明るさが広がった。




83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:28:59.62 ID:vMJ2LfJF0

ξ゚ ゚)ξ

身体の七割を電車に戻していたゴードンの驚愕した顔面に吹き付ける炎。
両腕で防御される。

「うわあああああぁぁああ!! ひいいぃいぃいいいい!!」

なら、こっちだ。
足元に散らばった雑誌のページに向けてスプレー、いや、火炎放射。

どくん。

ξ゚∀゚)ξ

着火した紙切れが、ゴードンが足を下ろそうとしていた床を覆う。
どうだ、これで降りられないだろう?

「ああっ! くそ、くそ、く、あぎゃああぁ!」

窓から乗り込もうとしていたのだ。
バランスを取るには腕が必要だ。

ξ゚∀゚)ξ「くふふふ」

だから、火の無いところに突いた腕を焼いてやる。




85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:31:28.39 ID:vMJ2LfJF0

火達磨になれ。
焼けてしまえ。

ξ゚∀゚)ξ「うふふふ……あはは」

「ぎゃああああああああ!!」

どくん。

みっともなく叫ぶ怪物は、身体を半分車外に出して逃げようとする。
急いで火から離れる蜘蛛のような怪物。
もちろん、簡単に逃がしてやるつもりはない。

ペットボトルに、水は半分以上入っていた。
身体の表面を濡らすには十分だろう。
もとより、わたしの衣服は血錆びに塗れてしまっているのだから。

どくん。

スプレー缶を手放して、ボトルを取り上げる。
絶叫を聞きながら頭から水を被る。
これで多少の防火作用があるはずだ。

ξ゚∀゚)ξ「は は は は は は は は」




86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:32:12.26 ID:vMJ2LfJF0

手にした日本刀が赤々と光を返す。
黒煙を噴く炎が点々と車内にはある。
それに照らされる、灰色の皮膚をあぶられた怪物の姿。

車外の壁にぶつかり、身体を痛めつけては慎重に、しかしなるべく早く逃げようとしている。
ひいひいと泣き喚きながら這い出るゴードンに、わたしは今度こそとどめをさすべく歩む。

麻酔がかかったかのように、わたし自身の傷は痛まなかった。
肌から数センチのところまで、神経が麻痺しているみたいに。
カタナの重みが数倍にも感じられる。

疲れた。
笑える。

辛い。
幸せ。

何故、満ち足りた気分なのだろう。

ゴードンの身体が外に出切る前に、わたしは日本刀を腰だめに構えて突進する。

ξ゚∀゚)ξ「あ は は は は は は は」

耳がじん、として電車の走行音すら聴こえない。
嬌声だけだ。
わたしの。

目指すはゴードンの、あばらが浮いた胸。




90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:34:35.89 ID:vMJ2LfJF0

ずっ。

ずゅ。

押し込んだ先には壁がある。

ず、ずるるりゅるゆ。

摩り下ろされるゴードンの身体。

「あぎゃぎゃがががぎあああぁああ! やめっ! やめで、やめえぇでぐれ!!」

柄に伝わる振動。

暴れる怪物の腕が空をかく。

ぎりぎりぎりぎり。




91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:35:20.52 ID:vMJ2LfJF0

座席に足をかけ、さらに深く。

ゴードンが、電車から離れた。

辛うじて窓枠に掴んでいる。

わたしはそれを蹴りつける。

割れ損ないのガラスがゴードンの指を傷つけていた。

上から踏みつける。

ゴードンの指が落ちた。

切れたのだ。

一本の腕が離れ、他の三本がさらに強く窓を掴む。

身体が車外に落ちていく。

日本刀を持っていかれてはかなわない。

刀身をぬるぅりと引き抜く。




92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:36:00.91 ID:vMJ2LfJF0

すぐに次の手を狙う。

もはやゴードンは電車にぶら下がり、長い下半身を地面に擦っていた。

「やめてくれじゃっきぃい!! じゃあっきいいいいい!!」

いい加減にしろ。

もういい。

構うつもりはないんだ。

邪魔をするな。

「おれは、わたし、愛してっぎゃあああ!!」

「ジャクリーン!! 助けてくれええええ!!」

落ちろ。

そんな言葉なんて聴きたくない。




93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:37:50.04 ID:vMJ2LfJF0



炎以外の光が全て消え去る。


いつもの変調だ。


真っ暗な中に、赤が点在する。


めりめり、と。


暗闇が晴れる頃、わたしは、ローラーコースターの上にいた。






94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:39:05.60 ID:vMJ2LfJF0

ξ゚ ゚)ξ「!」

わたしが足をかけていた柔らかい座席は、硬いソレになっている。
乗車スペースに止まったコースターから離れた位置に、ゴードン。
赤錆が這うコンクリートの上に灰色の怪物がうずくまっていた。

「ひぃ……うっうううう……ひぃいぃい」

距離にして、5m。
考えるよりも先に身体が動く。

すぐさま、馬乗りになる。
両手で握った日本刀の柄頭で、ゴードンの頭を、

ξ゚ ゚)ξ「ふっ」

がっ。

がっ。

がっ。

がっ。




98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:44:08.92 ID:vMJ2LfJF0

「やめ」

ベギリ。

「やべってくれ」

ごき。

「たすけ」

がっ。

ぐべちゅ。

ぶちゃっ、ぐちゃっ、ぬち。

原型を留めなくなったところで、ぐずぐずになった下半身が暴れだす。

「やあああめえててえええくれええああああああ!!」

ブリッジの要領で身体が跳ね、わたしは弾き飛ばされてしまう。
そして、転がる最中に電子音。

ピリリリリリリリ。

音の発生源に気を取られている間に、ゴードンが動く部分を総動員して這いずり、逃げていく。
そちらには、ローラーコースター。
ああ、そうかこの音は。




99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:45:47.68 ID:vMJ2LfJF0

浮かぶ考えは、ひとつだった。

「逃がさない」

途端、わたしから何かが吐き出される。
感覚としてはそれが一番近かった。
ぬるり、わたしの皮膚全体から黒の「もや」が浮き始める。

蒸気のようで、それでいて粘度の高い大気。
肌を覆う「もや」がわたしの身体の自由を奪う。

確信があった。
この「もや」はわたしの想いを実現するのだ。

ゴードンがローラーコースターにしがみつく。

「ひいいいいぃいい……」

安全レバーが下りて、ゴードンの長い手足がそれに巻きついた。
発車準備が整ったようだ。

だが、さらに、その上をわたしの身体から発せられた黒煙が縛る。

ぐえっ、だか、げぼっ、だかの短く苦しげな吐息。
それを合図にコースターが発車した。




100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:46:51.25 ID:vMJ2LfJF0


 あああああ ああぁあああ
              ぎゃああ
                        あああ
ああああ


   死を想わせる絶叫が線路を走る。
   縦横無尽に断末魔が駆け巡る。


    ごぶ               ぶええ

               あぐぁ
   たす、け                 や め





102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:48:25.75 ID:vMJ2LfJF0

コースを一周して戻ってきたゴードンの身体はぐにゃぐにゃに折れていた。
コースターの座席が作る凹凸に沿って、大きな体躯が変形していた。
骨という骨は砕け、皮膚という皮膚は圧迫で裂けていた。

わたしは、動けない。

黒い「もや」が緊縛を解く。
降り立つ先は、コースターを挟んで向かい側。
収束する気体が輪郭を作っていく。

わたしは、動けない。

形成された曖昧な人型が女性像へ。
血色の悪い肌に、金髪、デニム、シャツ。
どれもが血錆びに塗れている。

理解した。

これは、「わたし」だ。
「わたし」がわたしから分離した。

笑っている。
「わたし」が、向き合って、笑っている。

ξ゚ ゚)ξ「『わたし』……」

ξ゚∀゚)ξ『わたし』




104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:51:17.36 ID:vMJ2LfJF0

それ以上の言葉は交わさなかった。
「わたし」がコースターの出口に向かう。

柵を透過して歩き続ける「わたし」を追う。
瞬きをする間に、あちらは何mも進んでいった。

階段を下っているときも、脚の痛みに気をとられた隙に、「わたし」は地面まで降り立っていた。
そして、振り返り小さく手招き。

アトラクションから離れると、真っ直ぐ行った先に赤茶けたライトを見付ける。
その下に、「わたし」が立っていた。

金網の床を鳴らしながら、わたしは行く。
左右に広がる闇に踏み出すことはしない。

これ以外の道は用意されていないだろうことが分かっている。
何を置いても、従うしかないことを肌で感じる。

従う、か。
わたしの選択じゃないみたいだ。




106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:53:20.34 ID:vMJ2LfJF0

それはメリーゴーラウンドだった。
金銀、赤や白の装飾全てが煤け、ぼけている。

わたしが門をくぐり、ステージに上るとアトラクションが作動した。
揺れでバランスを崩し、馬のオブジェに手を突く。

……生暖かく、脈動している。

「わたし」はわたしの様子を離れて伺っていた。
わたしは、「わたし」を見つめていた。

回転が次第に速くなる。
いや、周囲の風景だけが加速して回っていく。

ごりごり、と何かを削るような音がする。

二人とも動かないままに、景色だけがめまぐるしく変わっていく。
高速で回っていたアトラクションの外装が、上へと登っていく。
いや、メリーゴーラウンドの方が地中に潜り始めたのか。

世界が移動しているのか、わたし達がそうなのか。

区別はつかない。




107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:54:00.90 ID:vMJ2LfJF0

ξ゚∀゚)ξ『わたし』

両手が空いていたはずの「わたし」の手に、鉄パイプが握られていた。
対して、わたしの方には先の折れた血まみれの日本刀。

ξ゚ ゚)ξ「わたし」

少し離れているところに、姿かたちの同じ人間がいる。
もしくは、怪物。
狂気を孕んだ危険な笑みをたたえている。

わたしの中で育った悲哀の感情。
誰かの怒りが纏め上げた、わたしの怒り。
暗黒の殺意に、血糊の赤を練り込んだ、異形。

ξ゚ ゚)ξ「……」

わたしはこれも倒さなければならない。

ξ゚∀゚)ξ『死ななきゃ』

いや、わたしは殺さなければならない。




109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/22(火) 02:55:44.10 ID:vMJ2LfJF0


『わたしは死ななきゃいけない』


彼女の言う「わたし」とは、どちらなのだろう。


【Save】





4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 15:47:55.76 ID:LKII3+QZ0


深淵を覗き込め。


あなたはそこにいる。


【Load】





5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 15:49:01.15 ID:LKII3+QZ0

左回りに回転を続けるメリーゴーラウンド。

ごりごりごりごり。

地面に潜っていく遊具が、「わたし達」を導く。
頭の片隅に、地獄のイメージがその姿を現した。
行く先は悪魔の巣窟か、それとも――

ごりごりごりごり。

対峙した「敵」が振動する床を一歩、踏み出した。

ごりごりごりごり。

それとも。

地獄は今、この場なのだろうか。

ξ゚∀゚)ξ『ふふふ』

「敵」は笑う。

ξ゚ ゚)ξ「……」

わたしは笑わない。

わたしの姿かたちをした何かが、確かな足取りでもう一歩、踏み出した。




6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 15:51:39.15 ID:LKII3+QZ0

滑り止め付きの鉄板には白いペンキが塗られていたようだ。
……本来の色調が失われたのは、もう遠い過去のことのようだ。

眼を足元に彷徨わせるのが、するべきことではない。
真正面を見据え、向き合わねば。

「わたし」を、両の眼を見開いて。

ごりごりごりごり。

ξ゚∀゚)ξ

その手には、赤錆の浮いた鉄パイプ。
先端に付いたL字ジョイントは一際汚れている。
こびりついた物から分かるように、生物を殴った証拠だ。

ごりごりごりごり。

ξ゚ ゚)ξ

この手には、刃先が10cmほど折れた日本刀。
ぬらりと刀身に広がった液はわずかに鉄分の香りがする。
いまだ残る感触が覚えているように、生物を斬った証だ。




7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 15:54:46.90 ID:LKII3+QZ0

わたしの脚は地面に張り付いて動かない。
全身の筋肉が、神経伝達をまるで放棄してしまったのか。

ξ゚∀゚)ξ『わたし、死ぬの』

「わたし」が歩く様は、健康な時の自分を見ているようだ。
対照的に、あっちは笑い、歩いている。

ξ゚ ゚)ξ「……」

指先が日本刀の柄に食い込む確かな手応えがあった。
肩から先が「勝手に」力を込めている。

ξ゚∀゚)ξ『死ぬのよ』

弧を描くように点在する回転木馬達が、上下動を繰り返す、奇妙な花道を作っている。
悠々と間を闊歩するかのような、「わたし」。

ξ゚ ゚)ξ「ええ」

……「勝手に」腕に力が入っている?
いいや、違う。

わたしは一つの意思に反応しているんだ。




8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 15:56:11.72 ID:LKII3+QZ0



目の前の相手を屠るという、単純にして強力な意思に身体は反応している。






9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 15:59:58.27 ID:LKII3+QZ0

理解した途端、わたしはかたわらの馬に右手を突いて身を屈めた。
掌にオブジェの持つ動物的な脈を感じながら、眼を細める。
左手に握る柄が、今までよりじっとりと湿っていく。

5m前方で「わたし」が立ち止まった。
攻撃に移るような素振りはない。
わたしは、口の中で小さく呟く。

ξ゚ ゚)ξ「あなたは、どうしてわたしを殺すの」

ごりごりごりごり。

メリーゴーラウンドの掘削音にかき消されるほどの小さな声だった。
しかし、答えは返ってくる。

ξ゚∀゚)ξ『違うの、違うのよ』

何が違うの。

ξ゚∀゚)ξ『あなたじゃない。わたしなの。わたしが死ぬの』

「わたし」?

ξ゚∀゚)ξ『だって、わたしが望んだことじゃない』

わたしが望んだ?




10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:03:34.74 ID:LKII3+QZ0

ξ゚∀゚)ξ『あのね、もう苦しいのは嫌』

フラッシュバックする、怪物との殺し合い。
病院で蹴り落としたパペット・ナースの姿。

――たす、けて。

断末魔でもなく、絶句でもなく。
その、一言。

え……?




12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:04:40.45 ID:LKII3+QZ0

ξ゚∀゚)ξ『もう、終わり』

暗がりに押し込めた記憶をまさぐられる。
螺旋階段で追いかけてきたナース達の、赤子殺しの光景。

――やめて。

冷たい刃を胸の中心に刺し込まれたような痛み。
自らの吐息さえ熱く感じるほど、乱れた呼吸。

終わりなんて。




13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:06:10.82 ID:LKII3+QZ0

ξ゚∀゚)ξ『もう、わたしは生きられないから』

わたしがゴードンに吐いた言葉は?

――死ね。

……。

ξ゚∀゚)ξ『痛いのから、逃げるの』

嬉々として吐いた言葉は?

――死ね!

……痛い。




14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:07:20.48 ID:LKII3+QZ0

ああ、そうか。


欠片ほどに磨耗しきった良心が、殺人の事実を忘れず、

ξ゚∀゚)ξ『心が痛いから、もう堪えられないから』

この街、サイレントヒルでの出来事を見過ごせず、

ξ゚∀゚)ξ『わたしのために、わたしは死ぬのよ』

「わたし」として、わたしを殺しにきた。


捻じ曲がった良識が、わたしの存在を抹消するために。




15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:10:19.85 ID:LKII3+QZ0

罪人を罰する最大、最高の手段だ。

罪を自ら認め、自らを罰することだ。

痩せこけた心ごと戒めることだ。

萎えた草木の幹を踏みにじることに躊躇しないように。

老いた鶏の首を絞めることが当たり前であるように。

さも当然のように「わたし」がわたしを罰する。




16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:11:39.62 ID:LKII3+QZ0



正当な裁きとは対極にある、自戒。

「自分を甘やかす」類の酌量は「わたし」の中にはない。

人間が平生、自らに課し得ないほどに厳戒な罰を、「わたし」が与えようとしている。






17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:12:52.90 ID:LKII3+QZ0

わたしは自分が赦せなかった。
誰かに求めてばかりいた。
結局、どこからも得られはしなかった。

ξ゚∀゚)ξ『ふふふ』

「わたし」が大上段に構え、歩みを再開する。
行動の意味が分かる。
全てが把握できている。

ξ゚ ゚)ξ「――――」

鋭く息を飲む。

「わたし」が長柄物を振りかざす。
赤く錆び付いた鉄パイプ。
両手で握り締めた武器が、わたしを救う物だと「わたし」は信じて止まないのだ。

半ば仰ぐようにして、それを見、そして感じた。

死による特赦を成さんと、それは脳天を叩き割ろうとしている。

一撃で終わらせるための、全身全霊の殴打を放つために動いている。




18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:16:16.86 ID:LKII3+QZ0

生物の中枢は首から上に集中している。
衝撃による損傷が充分であれば、一瞬で死に至る。

少なくとも、意識を失って痛覚は遮断される。

わたしはどうしたいんだ。
このまま頭を破壊されてやるのか。

なにより、わたしは「わたし」から逃げられない。

自身を責め立てる「わたし」は目の前にいて、目の前にいない。
どこにだっていて、どこからでも現れる。

胸の内、頭の片隅、視界の外側、記憶の奥底。

壁を作られたメリーゴーラウンドが邪魔なのではない。
「自分の良心からは、いつ何時であろうと逃げられはしない」という直感。




19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:19:00.28 ID:LKII3+QZ0

記憶が黒い影となって「わたし」にまとわりついていく。

夫がありながら、院長フォックスに汚されたこと。

ようやく孕んだ子を堕胎したこと。

他人の子供を屋上から落としたこと。

どころか、小さな罪悪感さえもが吸い出されていく。

生死に直結した問題だけではない。

遊びたいがために生まれて初めて両親を欺いた日の、些細な胸の痛み。

保身のために隠した真実の数々。

全て、黒いもやの塊となって、鉄パイプを包む。

ξ゚ ゚)ξ「――――」

これはわたしが望んだ結末なのか。

生きてきた証が寄り集まり、わたしを消すためにはたらいている。




20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:22:00.90 ID:LKII3+QZ0

「わたし」が一度上体を反った後、腹筋を絞ることで背を丸めるようにして、遠心力を両肩に加えた。
それは上腕を伝わり、しなやかな肘の動きで前腕から手首へ。
重さが乗った殴打は、最後に固く握られた両の手で全威力が一点に収束される。

視界の上から下へ、縦一直線に黒ずんだ赤褐色が降ってくる。
闇をまとった鈍器がまるで、斬りつけるかのように。
断頭台の刃が果たす役割のように。

ξ゚∀゚)ξ『あははははははは』

その一瞬でさえ、「わたし」は笑っていた。
この時、存分にわたしは理由を認知した。
「わたし」の笑顔に、前向きな喜びは無い。

ξ゚ ゚)ξ

希望に満ちたもの?
未来に向けているもの?
どちらも違う。

苦痛からの解放を期待した、負の感情でしかない。




21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:23:22.69 ID:LKII3+QZ0


だから、わたしは

咄嗟に日本刀を振り上げ、

鉄パイプに対抗し、

「自殺」を拒んだ。





22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:25:25.52 ID:LKII3+QZ0

ξ゚∀゚)ξ『……!?』

峰に右手を当てて、辛うじて鉄パイプの殴打を抑える。
もう10分の何秒も受けるのが遅ければ、押し切られてしまっただろう。

ξ゚ ゚)ξ「わたしは、決め、た……のよ」

奥歯を噛み締めながら、声を絞り出す。

ξ゚∀゚)ξ『ふ、ふふふ、あはははは』

互いの武器がキリ、と火花を上げた。
十字に直交する日本刀と鉄パイプがわずかにずれ合う。

ξ゚ ゚)ξ「こんなのは望んでいない」

力が、強い。

ξ゚∀゚)ξ『やだ!! わたしは、わたしは、辛いのが、いやだから逃げなきゃ』

ξ゚ ゚)ξ「違う!!」

腹の底から叫ぶ。




23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:27:47.54 ID:LKII3+QZ0


ξ゚ ゚)ξ「もう!!」


ξ゚゚)ξ「もう!! 逃げないって決めたのよ!!」


両足を踏みしめて、わたしは武器を跳ね上げた。





24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:29:52.85 ID:LKII3+QZ0

同時に右方向へ身体を流し、落ちてくる鉄パイプの軌道から逃れた。

前につんのめった「わたし」が固まった笑顔のまま、眼だけを追わせた。

わたしの左手には日本刀、そして、そちらには「わたし」。

瞬くよりも短い時間が流れた。


決意があった。

逃げ出すことからは何も生まれない。

光を目指して走るのでもない。

ただ、あの子の元へ。


――わたしは、胴体を薙ぐように左腕を払うだけでよかった。




25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:31:44.29 ID:LKII3+QZ0


ず、ぐ。

みち。

ど、たん。





26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:33:37.93 ID:LKII3+QZ0

ξ゚゚)ξ「……」

わたしは倒れた「わたし」を見下ろす。
それは眠るように安らかな顔で横になり、胎児が身を縮める姿でそこにいた。
少しずつ端から身体がほどけ、黒いもやが立ち上る。

ごりごりごりごり。

メリーゴーラウンドの潜行は続く。
回転の速度は変わらず、生ぬるい風は停滞している。
歩き回っても、広い密室に出口は見当たらない。

ごりごりごりごり。

かつん、かつん。

ξ゚゚)ξ「まだ何か用なの」

背を向けたままでも分かる。

『死ななきゃならないのよ』

そこにまだ、いることが。




27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:35:41.79 ID:LKII3+QZ0

何故なら、それはわたしから生まれたものだから。
堪えきれずに乖離したわたし自身なのだから。

ξ゚゚)ξ「わたしはまだ終われない」

『それはだめ』

振動が騒音が脈動が、肌を震わせていた。

ξ゚゚)ξ「立ち止まるためにここに来たんじゃない」

赤錆が血煙が暗闇が、眼に焼きついていた。

ξ゚゚)ξ「あなたを何回消したらいいの?」

絶望が恐怖が諦観が、脳の髄に染みこんでいた。

『違う』

全てを受け入れよう。
乗り越えるために。
認めるために。

ξ゚゚)ξ「……そうね。違うわね」

わたしは振り向く。




28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:37:49.21 ID:LKII3+QZ0

そこには、回転式拳銃を持った「わたし」。
先ほどまでのようにしっかりと立っていない。
どこか病人のようですらある。

ξ。∀゚)ξ『ふふ、うふふ』

傾げた頭に浮かべる笑みは変わらず、固まっていた。

ξ゚゚)ξ「『わたしが納得するまで』続くのね」

これも、わたしだ。

ξ。∀゚)ξ『あは』

壊れてしまったわたしの欠片だ。

ξ。∀゚)ξ『ふふ、死ぬのー』

銃口が上がる前に、わたしはそばの木馬に身を隠した。
体温を持った馬のオブジェを遮蔽物にして、頭を預ける。
そして、大きく息を吐いた。

ξ- -)ξ「……始めましょう」

銃声が、戦いの鐘となった。




29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:39:24.79 ID:LKII3+QZ0

一発目の弾丸が馬の頭に命中した。
爆ぜた頭部から「生物のような肉」が飛ぶ。
本物の馬のようにいななきが響く。

噴出する血飛沫を浴びながら、撃鉄が起こされるまでの時間に次の遮蔽物へ。
方向はもちろん、「わたし」に近づく方だ。
上下に動く馬の間から、狂気の笑みを見る。

弾丸はあと六発中、五発。
あの銃はわたしが持ち込んだ回転式拳銃だ。
護身用程度だが、充分な殺傷力はある。

『終わりにするんだよー、うふふふー』

ξ゚゚)ξ「そう簡単にやられてはあげないわ」

一発でも受けてしまえば、かなりの不利を呼ぶことになる。
既にわたしには余裕がない。
気力を奪われたらそこで終わりだ。

二発目の発砲。
同時に、二頭目の木馬が断末魔の叫びを上げた。
これで残り、四発。




30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:40:56.52 ID:LKII3+QZ0

ξ゚゚)ξ「……」

かつん、かつん。

今度は移動を始めた。
ペースは遅い。
その足音は……。

ξ゚゚)ξ「離れていく……」

当然だ。
こちらには遠距離攻撃の術がない。
これ以上の接近はアドバンテージをむざむざ潰すことになる。

急いで顔を少し出し、行方を確認する。
メリーゴーラウンドは言うまでもなく円形をしている。
背後に回られないよう注意しなければならない。


          ξ。∀)


背を丸めながら歩く姿が馬の影に消えた。
メリーゴーラウンドの回転方向とは逆に、「わたし」が歩んでいった。

ξ゚゚)ξ「……」

追いかけなければ。




31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:42:38.39 ID:LKII3+QZ0

機械の作動音が聞こえたのは直後だった。

がくん。

ξ;゚゚)ξ「!?」

この時、わたしは右脚が前に、左脚が後ろに引っ張られる奇妙な感触を覚えた。
バランスを崩しかけ、足元を注視する。
そして、このアトラクションの構造を思い出す。

ξ;゚゚)ξ「そうか」

メリーゴーラウンドのステージ上は、二枚の円で構成されていたのだ。
内側、つまりわたしの右足が乗っていた部分と、そうでない外側の部分。
それぞれが異なる速度で動きだしていた。

今は外側が内側より早く回っている。

確か昔乗った時は何周か毎に速度が入れ替わったはずだ。
横にいる乗客が常に同じではないため、飽きにくい。
父親にそう説明されたことがある。

ξ;゚゚)ξ「……っ。しまった!」

すぐさま重たい足で駆ける。




32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:44:01.32 ID:LKII3+QZ0

ギミックに気をとられている隙に「わたし」を見失った……!

ξ;゚゚)ξ

首を回して影を捉えようとするも、無駄だった。

ξ;゚゚)ξ「まずい」

終わりが見えない戦いで敵まで見失っては、危険すぎる。
もとよりクリーンな戦闘ではないのだ。
どんな手を使ってでも「わたし」はわたしを殺しにかかってきている。

待ち伏せ。

その言葉が脳裏をよぎった。

ごごん。

メリーゴーラウンドの回転パターンが変わる。
内側が早く、外側が遅く。
わたしは今、外周の柵を背に立っていた。

ξ;゚゚)ξ「どっちから来る……」

視界の両端には馬、また、その奥には左から右へ流れていく馬。




33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:46:52.38 ID:LKII3+QZ0

変化が訪れた。

ξ;゚゚)ξ「っ」

木馬の上にピンク色のウサギ――マスコットのロビーちゃん――が乗っている。

回転を早めた内側の馬が視界に現れる度に、死んだようにぐったりしたウサギが乗せられていた。
一体、二体、三体……。

罠だ、気を散らすための罠だ。
頭を振ってそれに注目するのをやめた。

全体を見通していなければいけない。
接近するものを見つける必要がある。

ξ;- -)ξ「あれに意味はない……。あれに意味はない……」

何周しているか分からないが、変化は次第に起こっていく。
出来の悪いアニメーションを観ているようだった。




34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:48:40.19 ID:LKII3+QZ0

まずは馬のたてがみ辺りに突っ伏していたウサギ。
次に流れてくるウサギの首は、ややこちらに向いている。

薄ら笑いがわたしを見つめてくる。
1コマ1コマで身体が徐々に起き上がってくる。

ついに、外で待つ両親を探す子供のような体勢を作った。
この変化に意味はない。

意味は、ない。

きっと。

そう思いたかった。

チェーンソウを持っているウサギが回ってくるまでは。




35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:51:47.08 ID:LKII3+QZ0

ξ;゚゚)ξ

ウサギの手にある凶器は、鎖連結の刃を回転させている。
それ自体は真横に構えられ、振るわれることはない。

だが、メリーゴーラウンドが稼動している。
突き出されたチェーンソウは丸鋸のように回っている。

実にゆっくりした上下動を加え「確実なる殺傷」を旨としているように見えた。

惑わしだ、まやかしだ。
あれに意味はない。
ただあるだけだ。

ξ;- -)ξ

そちらに気をとられるな。
エンジン音に耳を貸すな。
もっと他に注意しなければならないことがある。

ξ;- -)ξ


かちゃり。




36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:54:10.44 ID:LKII3+QZ0

ξ;゚゚)ξ「ッ!」

銃が動いた音だ。

右に――いない。

左――もだ。

ウサギ、木馬。
ウサギが乗った木馬。

右にはやはりいない。
左にもやはりいない。

前はチェーンソウを持ったウサギが流れていく――






ξ。∀゚)ξ

その後ろに、「わたし」が、いた。




37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:55:34.87 ID:LKII3+QZ0


向けられ「た」銃口。

どん、と大きな物を殴られたような衝撃が襲う。





38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 16:58:03.32 ID:LKII3+QZ0

被弾部――右肩。

ξ; )ξ「がっああうううああああああ」

きゃあ、と声を上げて済む程度ではなかった。
それくらいであったら、わたしは諸手を上げて喜んだ。
喉から押し出された声は信じられないくらい、低かった。

砕ける骨の感触。
引き裂かれる肉。
焼ける皮膚。

ξ。∀゚)ξ

そんなのは全部、度外視にしていい。
前面から無理に肩を押しつぶされたようにしか思えない。
小さな物に撃たれたというより、大きな塊に「打たれた」。

かちん。

もう一発来る。

隠れなければ。




39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 17:00:15.51 ID:LKII3+QZ0

どん。

――ヒイヒヒイイイィイン。

外れだ。
わたしの隠れた木馬が悲鳴を上げた。
身代わりに討たれた馬は、急激に体温を失って上下動を止める。

ξ; )ξ「ゼッ――ゼッ――ヒュウ。ゼッ――ゼッ――」

一瞬の絶叫が喉を潰したようだ。
苦しい。
息が気道を切り裂いていく錯覚すら覚える。

残りの弾の数はいくつだ。

始めに、二発。
始めに三発?
一発しか撃っていない?

ξ; )ξ「ゼェ――ッ……ゼェ――ッ」

右腕が動かない。
肩関節の境が潰されたのか。
神経がやられていなければいいが……。




40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 17:04:56.96 ID:LKII3+QZ0

満身創痍でも、負傷をしても、冷静に。
ここで思考することから逃げてはならない。

雑念が行動に邪魔をする。

休んで様子を伺うんだ。
そうすれば体力を温存して待ち伏せになる。

馬鹿な、すぐに移動するべきだ。
既に場所が特定されている。

いっそ刀を投げて投降してみるふりをしてはどうだ。
少しは隙が生まれるかもしれない。

自分の中にいくつかの意見が発信される。
いずれもが対立しあい、まとまらない。
肩から中枢神経に注がれる痛みという油が、思考の混線を円滑に進めていく。

「わたし」が遠巻きにこちらを射程内に捉えるのが最も悪い結末だ。
今度こそわたしは銃弾に頭を弾かれるだろう。
これは一種の確信だ。




41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 17:07:18.50 ID:LKII3+QZ0

かつん。
かつん。

――移動を開始した。

途端、内側と外側の回転速度が逆転する。
わたしの立つ外周が相対的に早く回る。

結果、足音の判別が困難になってしまった。

右半身が熱く疼く。
波のような痛みの周期。

ξ; ゚)ξ「ぐうう……」

左手に持つ日本刀がねっとりと掌に食い込む。
だが、その強さは痛みに反比例して弱々しくなっていく。

かつん。

ξ; ゚)ξ

いま、この木馬の真裏。

かつん。

「わたし」が、いる。

かつん。




42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/04(月) 17:10:42.66 ID:LKII3+QZ0

))


)∀)


)。∀)


)ξ。∀)


),,,,,ξ。∀)


)   ξ。∀゚)


「あは」

かちん。




80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:17:15.78 ID:6NvqvKA50

もう安全を確保する――もとより、そんなものはないが――にはこれしかないと思った。

ξ; ゚)ξ「あああああああ!!」

前のめりに「わたし」の腹へと突進する。

ξ。∀゚)ξ「?」

銃口の先をかいくぐるように。

射線から外れるように。

死線から、逃れるように。

低い姿勢での体当たりを強行する――!

耳の後ろで破裂音がする。
空気伝播する圧と熱。

恐怖に今更身を退けば、全てが無に帰す。




81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:21:36.22 ID:6NvqvKA50


次の瞬間、わたし達は激しく衝突し、組み付き合う。

ほぼ抱きつくのに近い形で腰を捕まえ、飛びついた。

間の抜けた声を機械音の狭間に聴きながら、わたしは、

引き倒した彼女から馬乗りの姿勢を奪う。

どぷ、と、肩からの流血が機を見て強まった――。




82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:26:10.28 ID:6NvqvKA50

たんぱく質が焦げる臭い。
髪の毛が撃たれたらしい。

ξ。o゚)ξ

初めて驚愕の表情に染まる「わたし」が、拳銃を持ち上げる。

ξ; ゚)ξ「くっ」

わたしは、それの撃鉄が起こされる前に腕を掴み、捩る。

ξ。v゚)ξ

ぐんっ。

ξ; ゚)ξ「っ!」

前のめりになったわたしを煽る、強烈な胴体の反り。
それも一度や二度ではない。
激しく暴れる「わたし」に体力の限界はないようだった。

ξ。v゚)ξ

小首をかしげた顔は、少女の笑みを浮かべている。
肌が黒ずみ、健康な色をした外層は、角質のように落ちていく。

ξ。w゚)ξ「くくっ」




83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:30:21.10 ID:6NvqvKA50

身体が安定しない。
このままでは振り落とされてしまう。

ξ。w゚)ξ「くくくくかかか」

拳銃を持った「わたし」の左腕は、わたしの両腕――あまり動かない右腕を勘定にいれても――に勝る力だ。

ξ; ゚)ξ「くっ、あっ」

がくがくと揺れる視界の中で、「わたし」は邪悪な色に染まっていった。
腕力が、それに応じて強くなっている気がする。

そして、わたしは「わたし」の上から放り出される。
日本刀を手放してしまったが、それは後回しだ。

ξ; ゚)ξ「銃は……!」

ξ。∀゚)ξ「かかかかか」

同時に立ち上がった「わたし」の手には、何もない。
どこかに転がっているのか。

「わたし」がそれすらも意に介さず、両手を前に上げて歩いてくる。




84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:34:12.57 ID:6NvqvKA50

距離はほとんどなかった。
「わたし」の指はわたしの首に触れるなり、力強く巻きつく。

ξ; )ξ「――!!!」

頚動脈だけを狙った「傷付けない」絞めではない。
気道ごと、喉を潰しにかかる圧迫。

ξ; )ξ「がひっ! ――ギッ!!」

搾り出される空気が血の香りを含んでいる。
頭部の血液が弱い血管に集中する。

眼が、まぶたの血管が急激に膨れ、耳の奥がキン、とする。

腕を殴り、首に食い込む指を引っ掻く。
脚を乱暴に振り、腹を蹴っ飛ばす。
すぐに出来うる限りの抵抗を試みる。

だが、動かない。

ちょっとやそっとの衝撃で、「わたし」は動じない。

それどころか、どんどん力は、つよくな、ってきて。




86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:37:01.87 ID:6NvqvKA50

しかいの、そとがわが、しろ、く。

くびがどくどくと

あたまが、はじけ、くるし

ゆびにちからが、あし、あし、たたなく

なにか、わたしを



たす、け

くるし……



――?




87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:40:05.04 ID:6NvqvKA50

べるとに、なにかが

ああ、そうだ、これは

はや、く、ひきぬい、て

    つか

  わ

     ない 


   と




88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:42:07.97 ID:6NvqvKA50

ξ )ξ「がぁひっ」

しゃき。

とれた。

これを、こいつに

ξ。∀゚)ξ「ああ?」

きりつける。

これでは、あさい。

もっと、つよく。




90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:46:36.98 ID:6NvqvKA50

ぶっ、ず。

だめ、だ。

もっと、じゅうような、ぶぶんを。

うでのけんを。

ξ。∀゚)ξ「あ」

ざく。

ざん。

はなせ。

はなせ。

ざっ、がりり。

ここがほねだ。

もうほとんどみえない。

これを、まわすように。




91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:47:21.86 ID:6NvqvKA50

ぎりりり。

ぶち、ぶちぶち。

びちん。

よし、かたうでの、ちからが、ぬけた。

ξ。o゚)ξ「ああ、ああ、あ、あ、あ」

ずん。

ぶち。

ぎ ち ぎ ち ぎ ち ぎ ち。




92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:48:47.78 ID:6NvqvKA50

ξ。o゚)ξ「ああああああああ!!」

はな、れた!
いまだ、けりとばせ!

どん。

ξ; )ξ「がっ! がはっ!! ぐぇ!!」

「メス」は?

ちゃんとまだ手に残っている!




94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:51:25.51 ID:6NvqvKA50

まずい、視界が全快するまでいくらかかかってしまう。

ξ; )ξ「おっ、うあっゲホォッ」

酸素が素早く脳に伝わりすぎて痛い。

それでも、「ベルトに挟んでいた」そして「敵の両腕を使用不能にした」メスは放さない。

「あああああああ!! あああああ!!」

「わたし」が人間らしくわめいている。

いや、人間らしくて当たり前か。

わたしの良心から生まれた存在なのだから。




95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:54:15.77 ID:6NvqvKA50

赤と黒の暗澹たる世界が網膜に戻ってきた。

ξ; ゚)ξ「ハァハァハァハァ」

「わたし」が肘から先をぶらぶらさせて、わたしに歩み寄ってくる。
何かできるような状況ではないことくらい分かっている。
何故なら、さっきわたしが両の前腕の腱を切り裂いたのだから。

メスを逆手に持ち、親指を柄の尻に当て、わたしは向き合う。

ξ.o;)ξ「あああああ、うああああ」

もう始めの頃の、健康体は「わたし」にはない。
剥がれた表皮から露出している黒い血管。
光のない瞳。

もはや亡骸が歩いているだけだ。

息も絶え絶えによろめく「わたし」。

意味のない呻きを続ける「わたし」。

それを止める役は、無論、わたし。




96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 03:57:42.84 ID:6NvqvKA50


肋骨の隙間を狙い、メスを振り下ろす。

斜めに心臓の辺りへ侵入した刃が、筋肉を二度、斬る。

大胸筋。

そして、心筋。

引き抜きざまに、前蹴りで「わたし」をメリーゴーラウンド中央へ押し出す。

どうしてそうしたのか。

もちろん、そこにちょうどチェーンソウを持ったウサギ付き木馬が、流れてきたからに他ならない――。





98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:00:17.64 ID:6NvqvKA50


「わたし」が声もなく胴体を両断され、消え去ったのは瞬間だった。

音を拾わなくなったはずの耳が、きん、とした静寂だけを脳髄に通す。

膝から落ちる寸前で、しかし、わたしは踏みとどまった。

頭が、重い。

やがて、メリーゴーラウンドは、壁に門の設えられた位置で停止する。

出入り口のシャッターは開き、ウサギ達は雲散霧消した。





100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:02:41.48 ID:6NvqvKA50

乗り越えた。
自身を律する心が形を成したものを、圧倒した。
わたしは、勝ったのだ。

道徳観を備えているはずの、自身の良心を踏み越えたのだ。

ξ )ξ「あら?」

赤い紙がメリーゴーラウンドの出入り口に落ちていた。
いや、今までのものより少し黒いか。

[ありがとう ごめんなさい]

稚拙な文字が、ほんの少し。
わたしはそれを小さく畳んでポケットにしまった。

わたしの左手には日本刀がある。
先の折れた、頼りないものだ。

わたしの右肩には弾丸が入っている。
先の動かない、どうしようもないものだ。

それでも。

ξ゚゚)ξ「会いに来たわよ」

両足が動く。
充分すぎる。




101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:04:49.95 ID:6NvqvKA50

アトラクションのゲートをくぐった先には焼焦げた壁の通路。
頭を度々低い天井を擦り、捲れた壁紙を落とす。

依然として音が戻らない。
いや、気にするな、進め。

にわかにたわむ床の黒が脚にまとわり付く。
重たくべっとりとした闇が床板から染み出してきている。

進む先には小さな子供ほどの影がひとつ、ふたつ、みっつ……。
最も近くにいた、しゃがみこんだシルエットが、わたしに気付く。

泣いているの?

――――。

どうしたの?

――――。

泣いてばかりじゃ分からないわ。




102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:09:37.17 ID:6NvqvKA50

頭に手を乗せて小さく呟く。
よし、よし、と。

本当は触れることなど叶わなかった。
少し密度の濃い空気を撫でたようにしか感じない。

よし、よし。

――――ごめんなさい。

影が困ったふうに頭を上げて、少しして、笑った。
表情すら曖昧なままに、それはほどなく地面に溶け去った。

言葉が、わたしという存在の核に語りかけてきた。
「ごめんなさい」。

意味は、すぐに理解できた。




104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:12:08.92 ID:6NvqvKA50

分かれ道はほとんどなかった。
あったとしても、いずれもすぐ合流するものだと分かっていた。

誰かが先を行った様子はない。
影の小さな小さな子供達は、わたしが来るまでそれぞれが孤独だったのだから。

ほとんど全ての他を認識できないほど、脆い存在ばかり。
彼、あるいは彼女らが唯一感ぜられるのは、自身を包み込むものだ。

子を赦し、抱くのはいつでも母親だ。
母はこの際、代理でも良い。

わたしと同じなのだ。
誰かに赦されるのを待っていた。

ここに囚われたのは無垢な罪悪感。

生まれ損なった自分を、あるいは、望まれずに成立した生命。
「自分の存在」を悔いる、最も純粋な罪の意識が、影を縛り付けていた。




105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:16:38.92 ID:6NvqvKA50

わたしは、単にそうすることが自然に思われて、彼らを解放していった。

先の見えぬ道は続く。

ドアをくぐればその度に天井は高くなったり、壁が消えたり、足が水に浸かったりした。

怪物が地を這い、空を横切り、共に殺し合い、または、無関心に自分を傷付けていた。

淀む大気に鉄の錆びた臭いは常に居座り、入れ替わり立ち代り何らかのガスが混じった。

日本刀を振ることはなかった。

わたしに触れる前に、怪物の腕は闇に腐り消えていった。

静かな世界だ。

初めて、わたしはまとわりつく影を愛おしく、美しく捉えていた。

サイレントヒル。

しずかな、世界だ。





107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:20:23.52 ID:6NvqvKA50

いつの間にかわたしは、白く頑丈そうな木戸の前にいた。
教会のそれと思しきドアは押しても引いても動かずに、わたしを立ち止まらせた。

『――――』

頭に直接響く声が誰のものかはすぐに分かった。
姿そのものの代わりか、黒い足跡が地面に現れる。

着いて来いということか。

小さな靴跡を注意して見ていれば、その行方が元来た道を少し戻ることが分かった。
あるところまで進むと、それらは左の壁に向かっていく。

その中に足跡は消え、声がもう一度わたしを呼んだ。

後を追い、壁に手をやると元からそこには何もなかったかのように、道が開ける。
そして、突き当たりにはまた木戸。

しかし、今度は一般家庭にあるようなものだ。
迷わずわたしはノブを捻り、中に踏み入れた。




108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:22:38.40 ID:6NvqvKA50

そこでわたしを待っていたのは子供部屋と――。

ξ;゚゚)ξ「!」

子供部屋には小さなクロゼットと勉強机。
壁に貼られた、または床に散らばったクレヨンの絵。

ベッドにはぬいぐるみがいくつか乗っていて、そして、そして
その傍らに、足を投げ出して横たわる



(メメ ∀ )



死を匂わせる男の姿。

ξ;゚゚)ξ「モララー!!」




110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:25:07.23 ID:6NvqvKA50

がらがらの叫び声を自分では制御できなかった。
まともな聴力を失っているのとは別に、真実、驚愕から声を張り上げていたのだ。

ξ;゚゚)ξ「モララー! モララー!」

血みどろのままに動かないモララーの耳元で呼びかける。
脈は――弱いが確実に打っている。

浅い呼吸と散大しきった瞳孔が生命の危機を物語っていた。
普通じゃ考えられない状態で、彼はそこに寝かされていた。

ξ;゚゚)ξ「モララー!!」

(メメ ∀ )「……――?」

ξ;゚゚)ξ「良かった! あのあとあなたがどうしたか――」

(メメ ∀ )「――――」

口を、つぐんだ。




111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:26:16.25 ID:6NvqvKA50

「―! ―――――!! ―――――!!」

ξ;゚゚)ξ「っ」

わたしを見て、いや。

「―――――! ―――――!」

「なにか」を見て、彼は取り乱す。

ξ;゚゚)ξ「もら、」

「―――――――――――――!!」

ぼろぼろの指先を口に突っ込み、涎をたらしながら壁に逃げる。

ξ; )ξ「……モララー」

声が聴こえなくても、表情で分かった。

(メメ Aο)「―――、―――、――――――――――!!」

彼は、もう、何者かに壊されていた。




113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:30:28.31 ID:6NvqvKA50

ξ )ξ「……」

(メメοAο)「ッ!! ―――ッッ!! ――――――――――!!!」

縮こまって泣き喚く男は、自分の手指を噛み、ぬいぐるみを投げた。
シャツに唾液の染みが広がって、既についていた赤を黒く滲ませる。

見ては、いられなかった。

ξ )ξ「待ってて」

子供部屋には、入ってきたのとは別にもう一つの扉があった。
そこには画用紙が貼られており、簡単な地図となっているようだった。

さっきの教会風ドアの向こうに繋がる、もうひとつの入り口があるらしい。
手に取れば、拙い字だが「ゴール」と書き入れられているのが分かる。

すぐに戻るから、とわたしはモララーに呟いて、部屋を出た。
終わらせなければ。

彼のためにも終わらせなければならない。




114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:34:12.73 ID:6NvqvKA50

ドア同士の奇妙な、異次元的接続を疑うことはもはやしない。
ゴールへ。終わりへ。

それだけを考えて黙々と地図を辿る。

ついにわたしは聖堂内に踏み込んだ。
蝋燭の炎が壁際を怪しく照らす室内。

中央の一段低くなった場所には、何者かの黒焦げた身体と陶器の小壷がいくつか。
祭壇の左右に集中している燭台のおかげで、部屋の全貌をよく見通すことができた。

(´・_ゝ・`)「――」

どこか遠くの記憶か、世界で見たことのある人物が一人、黒いローブに身を包んで佇んでいた。
そして、見たことのある顔がもうひとつ。

爪'ー`)




115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:37:23.69 ID:6NvqvKA50


床に転がる顔が、ひとつ。





117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:42:40.91 ID:6NvqvKA50

背後に気配を感じて、振り返る。

『結局は、あなたも自分の利益のために生きたのね』

黒髪の少女が曖昧な輪郭のまま、男に問いかける。

(´・_ゝ・`)「――――」

『言い訳はいいの。あなたには、楽園なんてないもの』

二人の問答について、少女の声から内容を推測するしかなかった。

『わたしにも、あなたにも』

(´-_ゝ-`)「――――」

やれやれ、といった風に男は祭壇の前にある身体に近付く。

ξ゚゚)ξ(わたしにも話をさせて)

少女はこくりと頷いた。




118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 04:46:21.59 ID:6NvqvKA50

(´・_ゝ・`)「聖母。あなたの到着を待ちわびていましたよ」

超常的な仲介を経て、わたしはついに会話に参加する。

ξ゚゚)ξ「あなたがこれを?」

(´・_ゝ・`)「おや、おや。おやおやおや。あなたが考えるべきことではない」

ξ゚゚)ξ「答えて」

男のローブの下に拳銃の存在を感じながら、わたしは強く訊く。

(´・_ゝ・`)「……私ではない。私はこちらからドアを少しノックしただけ。開けたのは」

男が顎で焼死体――いや、わずかに息がある?――を差した。

(´・_ゝ・`)「聖なる贄にして、俗世に生まれ落ちた現人神、その人です」

『……』

わたしはそんなものに興味はない。
この男は勘違いをしている。




122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 05:13:19.74 ID:6NvqvKA50

ξ゚゚)ξ「もう一度しか訊かない。あなたがこれを?」

(´・_ゝ・`)「……ああ。なんですか、こんなもののことを言ってるんですか」

神も生贄もわたしとは別世界の話だ。
ただひとつ、これだけをはっきりとさせたかった。

(´・_ゝ・`)「望んだ楽園とは程遠いと言って喚きだしたのでね。処分したまでです」

ξ゚゚)ξ「そう」

わたしの世界のものについて、はっきりさせたかった。

処分。

爪'ー`)

フォックス院長の笑った顔が、いくらか皺に包まれて見えた。
首を落とされて、何日間かそのまま転がっていたのだろうか……。




123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 05:18:47.24 ID:6NvqvKA50

(´・_ゝ・`)「後悔でしたよ。最期の言葉は。懺悔のつもりだったのでしょうか」

ξ゚゚)ξ「懺悔?」

(´・_ゝ・`)「手にかけた人々の怨念が見えるとか、ね。あ、いえアレッサ。あなたは違います」

わたしは気付けば、微笑むその顔面に拳を叩き付けてやりたくなっていた。

一言一言が聴こえるよりも早く肌に触れる。
その瞬間に怖気を感じさせるほどの狂気が含まれていた。

洗練された悪意ではなく、まるで、そう、生まれ持ったかのような。

(´・_ゝ・`)「最後は笑うしかなかったのでしょうか。ふふふ」

爪'ー`)

張り付いた笑みに絶望を見出すことは、わたしには難しかった。
同時に死の瞬間、笑顔を浮かべてしまう心情を理解することも、できそうにない。

ただ、こんな所で孤独に晒されていることに、少しの哀れみを感じることしかできなかった。




124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 05:20:43.09 ID:6NvqvKA50

ξ゚゚)ξ「あなたは知ってるでしょうね? わたしの娘について」

(´・_ゝ・`)「娘?」

『そこにいるわ』

アレッサが、自らの肉体の横に置かれたものを指差す。
小さな壷の一つ。

その中にわたしから取り出したものが。

自然、わたしは日本刀の柄を強く握り締めていた。

ξ゚゚)ξ「返してもらえないかしら」

(´・_ゝ・`)「なるほど、生まれ損ないの依り代。それを聖母、あなたは子と呼ぶのですか?」

ξ゚゚)ξ「わたしが決めることよ」

頭の中に、子供達の泣き声が残響している。
めそめそとべそをかく子供が、わたしには見えていた。

(´・_ゝ・`)「もう充分でしょう。あなたに娘などいません。危険を冒す意味がないのですよ」

ξ゚゚)ξ「へえ。危険だなんてどこにあるのかしら」

あくまで、強気な姿勢は崩さない。




125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 05:22:08.07 ID:6NvqvKA50

何故か男はわたしを撃たない。
そうしたければすぐにでもそうできるのに。

殺せない理由が何かあるはずだ。
奴は何かを待っている。

つまり、話を長引かせることは不利に働く。
狂った世界で磨かれた第六感がそう告げている。

(´・_ゝ・`)「いやはや、とんだクセのある女性だ」

ξ゚゚)ξ「勝手に持って……連れていくわ」

小瓶を取りに近付くのを、男は無理に止めようとはしない。

男の言葉がそれを実現しうるものだったからだ。

(´・_ゝ・`)「ところで、病院で妙なフォックス氏に会いませんでしたか」

ぴくりと意識を逸らされてしまう。

ξ゚゚)ξ「……」

(´・_ゝ・`)「奇妙に優しかったり、正義感に燃えていたり?」




126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 05:25:20.39 ID:6NvqvKA50

ξ;゚゚)ξ「……」

(´・_ゝ・`)「沈黙は肯定、ですよ。いやあ、なるほど。やはり」

ξ;゚゚)ξ「どういう、こと」

(´・_ゝ・`)「死してなお、罪の意識に囚われし人間であったというだけですよ」

フォックスは既に死んでいた。
罪の意識に囚われた……。

わたしのように、自身を罰する存在をこの街に求めた?
もしくは自らを肯定する仮初の、肉体を彷徨わせたのか?

わたしを病院から逃がそうとしたフォックス。
多くの言葉で惑わしてきた彼の声。

ξ;゚゚)ξ「彼は」

男は、わたしの傍らまで近付いていた。
全く接近を感じさせない自然さで、音もなく。

(´・_ゝ・`)「欲望に弱いだけの善人であったのでしょうか? 私には分かりかねますがね」




127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 05:28:00.00 ID:6NvqvKA50

いつの間にか日本刀を握っていた方の手首は掴まれていた。

ξ;゚゚)ξ「っ!」

(´^_ゝ^`)「身重の女性がこんなものを振り回していてはいけません」

薄い顔の印象とはそぐわぬ力強さ。
空いた右手で殴りかかるが、容易く受け止められてしまう。

(´・_ゝ・`)「じき転生の儀を執り行いますので、あなたには大人しくしてもらわなければ」

ξ;゚゚)ξ「……アレッサッ!」

助けを求めて呼んだ名の主は、しばらくしても干渉してこない。
首を回して姿を探す。

いた。

焦げた肉体から離れた位置でわたし達を見守っている。
いや、その顔は。

『……』

笑って、いる?




128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 05:31:43.27 ID:6NvqvKA50

教会の明かりという明かりが、吹き込んだ一陣の風にかき消される。
完全なる暗闇の到来だが、依然として男の手が緩む様子はない。

「はなっ、せっ!」

遠くに炎がゆらめき始めた。
松明のそれは、高い位置にある。

ひとつが発火し、その左右に火線が走る。
両側から伸びる赤は対称の点で集結する。

炎の輪に照らされた教会は、もう元の形を保ってはいなかった。

ξ;゚゚)ξ「くっ!」

大理石の広い円形の部屋。
そこは、魔方陣を所狭しと書き殴られており、美しさの対極を具現化していた。

だが、内装の中でも最悪なのが、天から伸びる手枷だった。
その一つがわたしの左腕を束縛している。

暴れても金属はびくともしない。
肩を負傷した右腕が役に立つとも思えなかった。

男はもういない。
いつこの鎖と入れ替わったのか――。




129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 05:34:56.12 ID:6NvqvKA50

そこで思考内容を放り出す。

ξ;゚゚)ξ「!!」

わたしは状況を把握した。
して、しまった。

死人に口無しとは言うが、それは大きな間違いだ。

何故なら、同じように手枷に繋がれた死体の腹には、

あんなに大きな口が開いているではないか。

天から吊るされた多数の「女性の死体は腹を内側から食い破られている」。

あれがわたしの未来?




130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 05:37:01.80 ID:6NvqvKA50


ゴぽ ン





131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 05:38:17.66 ID:6NvqvKA50


たいないを なにかが うごく。





150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 19:08:54.48 ID:6NvqvKA50

ゴぽ

ぐりゅ ボゴ

ξ )ξ「……うぐ」

ゴボ

そんな なぜ いつ?

ξ )ξ「ぐる、じ……」

きゅうに おなかが うちがわから ふくれ

ゴポゴポ ずりゅ

じゅグ

むねやけが いや はいせつよくが

しぬ くる、しいいいいい




152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 19:13:08.13 ID:6NvqvKA50

ξ )ξ「うっ、ぶう」

げっぶぉ

がぼ

びたびたびたびた

げりょ

ごぶぉぼぼぼおぼ

はちきれそうだ
のどが のどがきれる

のど?




153: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 19:14:33.93 ID:6NvqvKA50

全てを吐き終えた時、わたしは「それ」の醜さに眼を覆った。

ξ; )ξ「これは」

男は転生と言った。
まるで聖なる儀式であるかのように。

「それ」は神々しさとは程遠い、むしろ怪物寄りの姿だった。

逞しい男の腕が5mも伸びて分岐を繰り返したら、このようになるのだろう。
加えて、例のぬめった灰色は変わらず、無数の穴が表面でぱくぱくと開閉している。

しばらく「それ」は動かなかった。

穴から小さな眼球が時々外界を覗いては、腐って地面に落ちた。
ささやきのような声がそこから一緒に聴こえる気がした。

……損傷した耳ではノイズしか拾えないが。

ξ; )ξ「うっ、え」

脈打ち、のろのろと何かを求めて動き出した「それ」が、おぞましかった。
何かの間違いであって欲しかった。

こんな物が身体から出てきたことが、一番の悪夢だと信じて疑わなかった。




155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 19:20:09.54 ID:6NvqvKA50

これが転生だって?
これをあの男は求めていた?

消えた時と同じように男は現れた。
抱きかかえたアレッサの哀れな肉体と共に。

(´・_ゝ・`)「素晴らしい。母体を残しての出産。ようやく成功の兆しですね」

ξ; )ξ「あっ! うああ!」

異常な大きさの怪物を吐き出したことで、わたしの喉は潰れてしまったようだ。

ふざけるな。
何が成功なんだ。

(´・_ゝ・`)「まずは、子の種を」

ポケットから取り出された小さな壷が放られる。
床に当たって砕け黒ずんだ中身が撒かれると「それ」はすぐさま飛び掛って、吸った。

やめろ。




157: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 19:25:30.76 ID:6NvqvKA50

次々と壷が放られ、「それ」は吸収していく。

(´・_ゝ・`)「想像以上! 種に対する反応が素晴らしい! 生の残り香を喰らい尽くしている!」

やめろ。

最後の一つが宙を舞う。
あれは、確かわたしの。

やめろ!

ξ )ξ「ッ!」

かしゃん。

わたしの、子が「それ」の中に。
「それ」が寄り集まり、肉塊を形成していく。

(´・_ゝ・`)「これで、あとは聖女の肉を贄に……おっと」

(´^_ゝ^`)「元・聖女を、核に」

アレッサ。
わたしにこいつの声を聴かせているってことは、見ているんでしょう。

どういうこと。
これはどういうこと!




158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 19:33:01.74 ID:6NvqvKA50

ぐむ、ぐむ、と「それ」はアレッサを取り込んでいく。

(´・_ゝ・`)「あなたに仕込んだ甲斐がありました! ようやく、悲願が!」

『ええ、そうね。元・修道士』

(´・_ゝ・`)「え?」

(´Ο_ゝο`)「ぎ」

男は言葉を詰まらせた。

彼が血の塊を吐き出すまでの間、世界は静止してしまったかのようだった。




161: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 19:40:27.98 ID:6NvqvKA50

一瞬が引き伸ばされて感じられた。
「それ」の伸ばした触手が、そして、それに貫かれた男の身体が止まって見えた。

何が起きた?

男の表情がそう物語っていた。
不思議そうに胴体を眺める眼が、わずかにこちらを見ているようにも思える。

わたしと男を置いて、時流は再開する。

だが、音が無い。
炎が揺らめいても、変わらずわたしの主観では静寂が空間を支配していた。

ξ;゚゚)ξ

急激に、肉塊から生えた槍は引き抜かれる。

男の顔面が地面に激突するのを見届ける間もなく、「それ」の変化が訪れる。
決して急ぎすぎず、しかし、遅すぎずといった確実な動きだった。




162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 19:43:51.56 ID:6NvqvKA50

始めはただの人型だった。
女性をかたどった姿は、身の丈4mほどもある巨体。

壁に手をついてバランスを取る途中、その頭が部屋を照らす炎の輪に触れた。
それがそのまま移ったかのように、人型は赤く燻る炎の冠を得る。

絶えず姿かたちが変わっていく。
肉は次第に硬質化していき、手足がむき出しの骨のようになる。

完成された顔面は、まるでひび割れたコンクリートのようで、これといった表情を持たなかった。
辛うじて分かりやすく残された女性らしい胸部でさえ、甲冑の装甲と違いが見当たらない。

胴体が、空洞だった。

内臓の大部分が納まっているはずの腹部を透かして背骨を見ることができた。
乱杭歯のごとく凶悪に尖った肋骨のみが、集中して下腹部を守っている。

不恰好で、ともすれば華奢にも見える「それ」。
黄ばんだ色味にひび割れの全身は、古い磁器のようだった。

やはり怪物と呼んで差し支えない外見ではあったが、「それ」は間違いなくある種の美しさを持っていた――。




164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 20:19:43.18 ID:6NvqvKA50

空いた腹部に影の存在を認める。
子供達の、囚われた場所がそこなのだ。

わたしは左手を繋がれたまま、空いた手を伸ばす。

ξ )ξ「待って、で! 今、今行くが、ら!」

その時、頭上を「それ」の腕が掠めた。

ξ )ξ「!?」

アレッサの声はもう聴こえない。
だが、意図は伝わった。

手枷ははめられたままだが、鎖が断ち切られている。
わたしは自由になった両手で、ぎこちなく顔を打った。

ξ゚゚)ξ「終わ、らぜる、の、ね」

手枷からほんの少しだけ残された鎖が、腕に当たってひやりとした。
相対的にわたしの体温がまだ暖かいことを知る。

まだ、生きていることを実感する。

ξ゚゚)ξ「……」

まだ、戦うことができると、知る。




166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 20:21:51.02 ID:6NvqvKA50

ξ;゚゚)ξ「っ」

地面に叩きつけられる腕は大振りで、疲労した身体でもなんとか避けられた。
風圧でよろけた隙にもう一発が来る。

右上から斜めに降る拳には、突出した鋭い部位が光る。
体力が充実した状態でも当たれば即死級の攻撃だ。

後ろでなく、あえて前に飛び込んで回避。
無様なジャンプだが、生きている。

「それ」は両膝を半ば落とすように追撃を繰り出した。
全体重の乗った、文字通り重い膝蹴り。

ξ;゚゚)ξ「くっうううう!!」

日本刀の背に手を当てて、頭上に掲げながら真横に転がった。
両手に手応えを感じた瞬間、それを押す。

歪んだ軌道で動く右腕に激痛。
肩口に入った弾丸が焼きつくような痛みで、行動を阻害する。

ごり、と骨が悲鳴を上げた。




167: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 20:24:52.71 ID:6NvqvKA50

なんとか、わたしは右側に転がり抜ける。
失敗していれば頭が赤い花を咲かせたことだろう。

体中に走る痛覚の叫びはまるで稲妻。
気だるいはずの筋肉に、それだけが鋭敏に走る。

舞い上がる粉塵が晴れる前に、壁際まで這う。
見上げながらの前進。

「それ」はわたしを見失っているのか、振り下ろした腕の下を眺めている。

この機を逃す手はなかった。
膝を突いている「それ」の背後にじりじりと近寄る。

こちらを向くな……。
まだ、見失っていろ……。




178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 22:25:14.86 ID:6NvqvKA50

そのまま真後ろへ回り込み、むき出しの背骨に飛びつく。
「それ」はようやくわたしの居場所を知ったらしい。

身を振り抵抗し、何度も振り落とされそうになった。

ただでさえ右手がほとんど自由に動かないのだ。
全力でしがみつく必要があった。

両足さえも肋骨の隙間に差し入れる。

ξ; )ξ「っつう!」

鋸のようなぎざぎざが太腿を左右に傷付けていく。

力を緩めるか。
否、むしろ自ら力んで被害を減らさなければ。




180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 22:27:31.29 ID:6NvqvKA50

アレッサの意志は分かっている。
自分を殺せと言っているのだ。

だが、一緒に取り込まれた命はどうだ?
ようやく得た――たとえ、異形であるとして――肉体に対する執着を簡単に捨てられるだろうか。

この攻撃の激しさがその表れだ……。

なんとかわたしは、脊椎の両脇から飛び出した肋骨を足がかりに肩まで登り詰める。
こちらに向かって伸びる腕は日本刀で遠ざけた。

見た目ほど硬い身体ではないのかもしれない。
鈍く音を立てて入り込んだ刃は、黒い体液を付けて薄い皮や肉を裂いた。

あと少し。

その時、「それ」が上半身を右に振るった。
揺られて右腕だけを絡めて「それ」の首にすがりつく。

宙に身体を投げ出された時、ある部位に過剰なストレスがかかる。
結果、右肩は、

ξ )ξ「〜〜〜〜〜!!!」

ぼぐりと音を立てて外れた。




181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 22:29:55.93 ID:6NvqvKA50

「わたし」が放った銃弾は楔のように関節を打っていたのか。

即座に筋肉が固まる。
これ以上動かすな、という信号なのか。

激痛で全身にどっと汗をかく。
噛み締めすぎた奥歯がみしみしと鳴る。

左の日本刀を咄嗟に「それ」の首の裏へ回す。
わたしは向き合う形で「それ」に抱きついた。

ほとんどその直後、硬直が解けて右腕が捩れて背中側へと回る。
傷つき合った筋がさらに損傷を受け、視界に火花が散った。

もうもたない。

がむしゃらに足場を探して、とっかかりを探す。

もたない。
片腕でたえられない。

早く、早く上に。




182: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 22:32:36.80 ID:6NvqvKA50


ぶん。

わたしは、再び激しく宙に投げ出された。
今度は真上に。





183: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 22:34:31.81 ID:6NvqvKA50

何メートルも空を飛んだ気がした。
間違いなくわたしの眼前を炎の冠が通った。

そして、世界が揺らぐ。

放物線の頂点に到達したわたしは、遥か下方に、大理石の部屋がめりめりと有刺鉄線に侵食されるのを見た。
地面が、血の泉を中心からこんこんと湧き出させているのを視た。

全てが一枚の絵のようだった。

わたしを見上げて仮面のような顔を傾げる「それ」。
そのだらりと下りた両の腕、畳まれた脚。

仏教徒の崇める像のようだ。

美しいとさえ思い、楽園という単語を想起する。
剥ぎ取られていく表面上の装飾美が、真の顔を覗かせていく。

身体が落下していく――。

ゆっくりと、ゆっくりと、身体は落ちていく――。




184: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 22:37:46.82 ID:6NvqvKA50

このまま地面に叩きつけられたらどうなるのだろう。

床に横たわる、男の身体はドス黒い赤に浸かって、ローブを輝かせていた。
その胴に空いた大穴が小さなプールのように煌く。

鎖に縛られた多数の母親だった者達の骸が影を落としている。
いくつかの亡骸は「それ」の攻撃で床に転がってしまっていた。

彼らの元へと行くのだろうか。
わたしは、死を迎え入れることになるのか。

諦める気などなかった。
なのに、現実としてわたしは抗う術を持たない。

加速していく。

「それ」がわたしをみつめている。
無表情、無関心に。

ぴ、き。




185: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 22:40:44.51 ID:6NvqvKA50

ξ゚゚)ξ「――!」

「それ」の固まった口元が、ひび割れた。
どんどん迫ってくる死の中で、間違いなくわたしはその声を聴く。

『――』

ずっと、ずっとわたしを呼んでいた。
彼女は、娘は――。

応えなければ。

もう限界だっていうのは、分かっている。
もうこれ以上は何もするべきでないことは分かっている。

でも、お願いだから言うことを聞いて。
腕を伸ばして。

肩口から不思議な方向に折れた腕を、武器を持った腕を、伸ばしてあげて。

彼女が待ってる。


だから、あなたも。




186: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 22:44:16.42 ID:6NvqvKA50


「それ」はわたしを空中で受け止めた。





187: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 22:47:27.56 ID:6NvqvKA50

灯りの輪がわたしを、「それ」を、子供達を照らしている。

固く冷たい掌の中で、わたしは立ち上がる。

一ミリ動かす度に全身が軋んだ。

眼は霞み、耳は遠くぼやけ、肌が鈍く熱を持ち、息は血の香りがする。

わたし以外に動くのは、灯りと紅の泉。

変調に囲まれて「それ」は腕を伸ばして待った。

変調に囲まれてわたしはその腕の上を歩いていく。

そうして肩を登り、顔の上、煤を吐き出し空を舐める炎の冠まで、到達に成功する。




192: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 23:14:07.50 ID:6NvqvKA50

ξ )ξ「――」

吐く息は、長く。
吸う息は、深く。

ξ )ξ「――」

足の下にある顔は、ひびが走って笑って見えた。
ここで急ぐ必要はない。

ξ゚゚)ξ「まだ ぜで ごめんな さい」

「それ」の顔のひびが目元にも現れる。
目頭の亀裂から染み出した血液は、頬を流れて落ちた。

大丈夫。
大丈夫だから。

わたしは言葉を探して、しかし、何も見つけられない。




193: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 23:14:59.44 ID:6NvqvKA50

代わりに、小さくキスする。

そして、日本刀を振り上げ

子を叱る時に叩くように

子を褒める時撫でるように

愛を込めて、終わりの刃を「それ」の頭に差し入れた――。




194: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 23:16:40.92 ID:6NvqvKA50

――。

――。

なあに?

――。

――。

大きな声で言ってちょうだい?




195: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 23:18:13.18 ID:6NvqvKA50


ママ……愛してる……。





196: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 23:19:55.86 ID:6NvqvKA50

崩落する部屋の中にわたしは取り残されていた。
もう身体は動かない。

「それ」が崩れ落ちる時の衝撃で脚に力が入らなくなっていた。
下半身は粘り気のある赤の泉に浸かってしまって様子を診ることもできない。

ξ゚゚)ξ

「それ」の骸に寄り添いながらわたしは子守唄を歌う。
膝元にある、小さな命の名残を撫でながら。

暗闇を身の依り代とした子供の影だ。
一人だけ闇へと還ることができなかったらしい。

落下する瓦礫は泉の血液を跳ね、波紋を作り、そして闇に解ける。
いつの間にか壁は無くなり、永遠の闇が広がっていた。




197: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 23:22:06.45 ID:6NvqvKA50

「それ」の炎の冠はまだ残っており、周囲の様子はまだ見て取れた。
次第に弱まっていく明度が、わたしの膝にすがる影を闇に溶かそうとしているように思えた。

ξ゚゚)ξ

「それ」の骸に寄り添いながらわたしは子守唄を歌う。
膝元にある、消えていく命の名残を撫でながら。

モララーはあの部屋から無事に帰れたのだろうか。
恐らくサイレントヒルの変調はこれを最後になくなるはずだ。

元凶とも被害者とも言える少女はわたしが斬った。
だからこの部屋も異次元ごと維持ができなくなっているのだと思う。

一重に、無事を祈る。




198: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 23:25:53.70 ID:6NvqvKA50

炎の冠はもはや消え、血の泉はわたしを完全に沈める高さまで水位を上げた。
子供の影はついに無に還りわずかな手応えすらなくした。

ξ゚゚)ξ

暗闇にたゆたう血液の中に浮かびながらわたしは子守唄を歌う。
娘が寂しい思いをしないよう、安らかに眠れるよう。

少しずつ意識が遠のいてきた。
わたしは永遠の眠りを想って

おもたくおちてくるまぶたを

ξ゚゚)ξ


ξ゚ー゚)ξ


ξ゚ー )ξ

と じ た。




200: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 23:30:02.17 ID:6NvqvKA50





          ξ ー )ξ








201: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 23:33:13.92 ID:6NvqvKA50


【end】





202: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 23:34:24.52 ID:uxq+NbKe0

ツンの優しさに触れた気がするよ

取り合えず>>1




203: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 23:36:21.11 ID:n4Y4lPbb0

乙でした。

何とも言えない読後感があるな……いい意味で




207: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 23:44:31.16 ID:6NvqvKA50


【epilogue】





208: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/05(火) 23:45:11.16 ID:Ntmky3yV0

エピローグwktk




210: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/06(水) 00:02:56.87 ID:eR6hgeXe0

その日、朝から珍しく霧が立ち込めていた。

ある家の主は携帯電話の着信歴を確認してため息をつく。

ベッドから抜け出して新聞を取りに行く途中のキッチンで、彼はコーヒーメーカーを起動させた。

ペットの犬は主人の起床に興奮して付いてくる。

ゴールデンレトリバーの豊かな毛を撫でてから、彼は玄関ポーチに下りる。

霧の日でもお構いなしにガレージ前へ新聞を落とす配達人の仕事ぶりに閉口ながら、腰を屈めた。

しっかり湿ってしまっている。

彼は二度目のやれやれ、といった鼻息を吐く。




211: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/06(水) 00:09:21.37 ID:eR6hgeXe0

室内のソファに腰掛け、犬が膝元に頭を乗せてきた上で新聞を広げる。

一面には少し前まで住んでいた街での爆発事故が取り上げられていた。

男は眉根を寄せて被害者の名前を探した。

犬がぴくりと身体を動かした。

家の外に向かって唸りながら、吼え声を上げようとする。

「?」

彼は不審に思い、耳を澄ませた。

「――――」

「泣き声?」

数十秒後、再び玄関ポーチに彼の姿があった。




212: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/06(水) 00:14:20.92 ID:eR6hgeXe0

捨て子。

厄介事だ、などと彼は思わなかった。

元来優しい気性であったので、寒いだろうと思いすぐに抱き上げて部屋の中に連れて帰ったくらいだ。

その時、不規則な足音を背後に聴いて、霧中を見据える。

なんとか見つかったのは、片足を引きずり、歩き去ろうとする誰かの背中だった。

遠ざかる不審な人物にすら暖かい飲み物を勧めようとして、彼は赤子の泣き声にそれを止められる。

揺すりながらあやし、犬が飛びついてくるのを避けながら、彼はソファに腰を下ろす。

「……これは?」




213: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/06(水) 00:17:44.52 ID:eR6hgeXe0

彼の表情が固まった。

赤子の手に握られたリング。

それに見覚えがあったのだ。

「……」

彼はまだ、何も知らない。

ただ、静かに妻を想った。

( ^ω^)「ツン」

小さく彼は呟く。

「あう」

赤子が応えるように声を上げた。




214: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/06(水) 00:19:02.80 ID:eR6hgeXe0


【epilogue end】





1: ◆s7L3t1zRvU 2010/01/21(木) 21:02:44.85 ID:Nb39fhgI0

こんばんわ。
先日完結しました今作ですが、投下中にお約束した別エンドを数種用意しました。
期待に沿えるかは分かりませんが、始めます。




3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:09:54.80 ID:Nb39fhgI0

【ロード】

ロードするデータを選んでください。

【1 警察署内 (パラレル)】

【2 道路・病院前 (ボツ)】

【3 病院・二階通路 (▲)】

【4 遊園地・入り口 (∞)】

【5 遊園地・メリーゴーラウンド (サイコ)】

【6 ? (?)】




8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:15:57.08 ID:Nb39fhgI0

【2 道路・病院前】

警察署を出たξ゚゚)ξと( ・∀・)は途中、何体もの怪物を避け、ついに病院前に到達する。
しかし、目的の場所に入るには邪魔な怪物が二体……。

( ・∀・)の情報が正しければ、ヘタに手を出すことで犬型の怪物は仲間を呼び寄せてしまう。
病院の門が開いているとは限らず、無理に走り抜けることが得策であるともいえない。

彼らはそれらから離れた位置で作戦を練る。
これは、ξ゚゚)ξがかなり突飛な機転を利かせて犬達の間をすり抜ける、ifパターン。




9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:18:13.70 ID:Nb39fhgI0

――――病院まであと少し。


ヾ( ・∀・)「……」

すっ、と手が上げられた。
身を屈めたモララーに倣って、わたしも姿勢を低くする。
地面に近いところの、霧が薄い場所を睨んだ。

ぼんやりと見えたのは、四足の獣の影だった。

うろうろとするものが一体。
車にもたれかかった何か――いや、ぼかす必要もなくヒト、だ――を貪るのが一体。
食事に夢中な方が、水っぽい咀嚼音を響かせていた。

( ・∀・)(距離を開けよう)

モララーはわたしの肩を小さく叩くと、来た道を戻った。
二十メートルほど後退してから、彼は静かに口を開く。




13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:20:24.50 ID:Nb39fhgI0

( ・∀・)「病院まであとちょっとなんだが、正直あいつらとはやりあいたくない」

潜めた声に耳を澄ます。

( ・∀・)「下手に手を出すと仲間を呼ぶんだ。脚も早い」

ξ゚゚)ξ「どちらかに構っている間に取り囲まれちゃうのね」

( ・∀・)「弾を無駄にはしたくない。そこで、二択だ」

モララーの指が二本立てられる。

( ・∀・)「走るか、餌で釣るか」

提示されたプランの一長一短。

走る。
駆け抜ければ病院まで十分にたどり着けるはず。
しかし、音を立ててしまうし、また、病院にすぐ入れるとは限らない。

餌。
食べている間は注意力が下がっているらしい。
だが、うろついている方が既に空腹でない可能性がある。




15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:22:39.85 ID:Nb39fhgI0

( ・∀・)「どうする?」

訊かれて、躊躇する。

実は、病院の鍵はわたしの手元にある。
そこで看護婦をしていた頃に合鍵を「持たされていた」のだから。
無論、夜勤の無い日も呼び出されていたためだ。

とはいえ、先の玄関のように強固な封印を施されていないとは言い切れない。
走り、気付かれた挙句、正面口で立ち往生。
病院の玄関の両脇は背の高い塀に挟まれており、逃げ場はない。

餌、と言った。
やるならこっちだ。
ただ、従順な犬と一緒にして飼い犬でもないのに手を噛まれてはいけない。

( ・∀・)「……」

彼はじっと待っていた。
あくまでも、病院を目的地としていたわたしに選択権をゆだねようというのだ。

ξ゚゚)ξ「そうね――」

わたしは、しばし思案した後にある物の存在を思い出す。




16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:25:03.34 ID:Nb39fhgI0

ξ゚゚)ξ「馬鹿げてるかもしれないけど、これならいけるかも……」

( ・∀・)「どんな作戦だ?」

モララーはわたしの考えを聞くなり、神妙な面持ちを作った。
 _,
( ・∀・)「お前、それは、なんというか」

ξ゚゚)ξ「やってみなければわからない、でしょう?」




20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:27:18.69 ID:Nb39fhgI0

元の位置に戻ると、わたしはバッグから「それ」を取り出した。
そして、広げた「それ」の影に隠れて二人で道の端ぎりぎりを歩く。
モララーは途中、ビーフジャーキーを一掴み、地面に置く。

――?

ちらりとゾンビ犬の頭がこちらを向いた。
しかし、特に何かをしようとはしない。
ゆっくりとわたし達は二体の怪物から遠ざかる頃、徘徊していた方がジャーキーに気付いた。

尻尾を振ってそこに近付く片方のゾンビ犬。
皮が剥がれてさえいなければもう少し愛嬌があったんだろうな、と思う。
やがて、死体に鼻面を突っ込んでいた方も続いた。

人肉よりも塩コショウの効いた牛肉がお好みらしい。
わたしはそれを見届けると、にわかに脚を早め、モララーを急かした。
霧の向こうに、見慣れたレンガ塀を発見する。

振り返ると、二体は仲良く肉にかじりついている。

( ・∀・)(そろそろ良いだろ)

ξ゚゚)ξ(ええ)




21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:30:02.13 ID:Nb39fhgI0

わたしが音を立てないように畳んだ「それ」は、銀色の薄く大判なシートだった。
緊急時に寒波から身を守り、体温放散を防ぐ代物。
車のトランクに入っていたエマージェンシーブランケットだった。

病院の正面玄関に到着すると、モララーが関心した顔で言う。

( ・∀・)「ジャパニーズの知恵かい? ニンジャのワザってのがこんなに凄いとは」

ξ゚゚)ξ「単に犬は目が悪いってだけよ。ゆっくり動く大きな物には鈍感なの」

白い霧の中で、銀色はかなり視認しづらい。
加えて、相手は色盲で弱視。
昔、父親が飼い犬相手にそんないたずらをしていたのを思い出したのだ。

考えてみたら、お茶目な父親だったな。
子供よりもはしゃいじゃって。

水分が多い大気中では音が伝わりにくいのもよかった。
モララーが奴らの特性として聴覚があまり鋭敏でないことを教えてくれていた。
あとは、掲げたシートの影をゆっくり抜き足差し足、それだけで事足りたのだ。




22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:32:11.98 ID:Nb39fhgI0

そうして、わたし達は病院前に辿り着く。
被害は、特にない。
強いて言えば食料のビーフジャーキーを少し失ったくらいか。

さあ、行くわよ。

モララーの目をちらりと見て、病院の鉄扉を強く、引いた。

【んなアホな方法で犬から隠れられるかよだからボツなんだよ end】




24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:34:24.09 ID:Nb39fhgI0

【ロード】

ロードするデータを選んでください。

【1 警察署内 (パラレル)】

×【2 道路・病院前 (ボツ)】
(こんな恥ずかしい作戦を本投下で使う予定だった自分が怖い)

【3 病院・二階通路 (▲)】

【4 遊園地・入り口 (∞)】

【5 遊園地・メリーゴーラウンド (サイコ)】

【6 ? (?)】




25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:37:04.42 ID:Nb39fhgI0

【遊園地・メリーゴーラウンド】

ξ゚゚)ξは辛くも怪物の手から逃れるが、その際自らの分身とも言える影を生む。
笑顔をたたえた自身の移し身に、ξ゚゚)ξは歩み寄っていく。

そうして二人は……。




27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:39:13.21 ID:Nb39fhgI0

――――メリーゴーラウンドは回り出した。


ξ゚゚)ξ「あなたは」

ξ゚∀゚)ξ『わたしは』

ξ゚゚)ξ「わたしなの?」

ξ゚∀゚)ξ『あなたなの』

ξ゚゚)ξ「わたしはわたしで、つまり、あなたがわたしでもある」

ξ゚∀゚)ξ『あなたはあなただけど、結局、二人でもある』

ξ゚∀゚)ξ『怖いの?』

ξ゚゚)ξ「あなたが怖いかって?」

ξ゚∀゚)ξ『わたしはわたしが怖い』

ξ゚゚)ξ「わたしがあなたを怖がっているのかを訊いているの?」

ξ゚∀゚)ξ『今この時、あなたというわたし自身にも恐怖を抱いている』

ξ゚゚)ξ「それは、わたしという存在ね」

ξ゚∀゚)ξ『そう』




28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:41:44.08 ID:Nb39fhgI0

ξ゚゚)ξ「あなたはどうしたいの」

ξ゚∀゚)ξ『わたしはどうしたいの?』

ξ゚゚)ξ「わたし?」

ξ゚∀゚)ξ『いいえわたし達のこと』

ξ゚゚)ξ「わたしはただ先に行きたいだけ」

ξ゚∀゚)ξ『わたしはもう先を見たくない』

ξ゚゚)ξ「そうなの……」

ξ゚∀゚)ξ『否定はしないの?』
ξ゚゚)ξ「わたしのことだもの」

ξ゚∀゚)ξ『そう、わたしのこと』
ξ゚゚)ξ『わたしのこと』

ξ゚∀゚)ξ「わたしのこと」
ξ゚゚∀゚)ξ『「わたしのこと」』

ξ゚∀゚゚)ξ「『オワリ マデ ワタシ タチガ フタリデ』」

わたし達がそれを決める。

【イミフ end】




30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:44:39.30 ID:Nb39fhgI0

【1 警察署】

ξ゚゚)ξは( ・∀・)に助けられ、警察署に逃げ込む。
地図を確認しながら、ξ゚゚)ξは自らを応急処置して、探索に備える。

そこで埃だらけのソファに座った途端、ξ゚゚)ξは人に会えた一時的な安堵からか眠ってしまう。
そんな時にあり得たかもしれない、ひとつのストーリー。




31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:46:51.86 ID:Nb39fhgI0

ξっ-)ξ「ん……。くぁ……あふ」

「……おい、起きろ。そろそろ出発するぞ」

ξっ-)ξ「わたし、どれ――どれ――どれくらい寝てふぁ?」

「ざっと一時間は寝てたんじゃないか? あれ、おかしいな……」

ξ゚゚)ξ「ウソ、ごめんなさい」

ξ゚゚)ξ(気が緩んでたのかしら。本性も分からない男の前で寝るだなんて)

ξ゚゚)ξ「あら? モララー、あなたどこにいるの?」

「いや、ちょっと探し物をな。ん、あった」

ξ゚゚)ξ「探し物って、何かめぼしい物資でも?」

「いやいや」




33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:49:25.08 ID:Nb39fhgI0

    ‖ コツコツコツ

    ‖) コツコツコツ

    ‖Ξ) コツコツコツ

ξ;゚゚)ξ「!」


    ‖ .....(-@∀@)ノ「おまたせしましトゥース☆(語尾を上げながら)」


       ガビ――――ξ;゚゚)ξ――――ン!!
 「テンションウザイのはまだしも、結構イケメンっぽかったのに猫背蟹股でやたら痩せ型になっとる――――!!」




35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:52:05.49 ID:Nb39fhgI0

(-@∀@)「いやあ、ほんとにね、すみませんね、眼鏡がね、どこかにいってしまいましてね。
     困りますいつもポケットに入れてるのに、ふとした拍子にlost、紛失してしまうのですよwwwww」

ξ;゚゚)ξ「誰だお前! つか、ルーのテンションはやめとけ!」

(-@∀@)「やだなあ何言ってるのかさっぱり分かりませんよwwwご婦人wwwww(ご婦人とか俺テラ紳士www)ドゥフフフ、モララーですよモララーwwwww」

ξ;゚゚)ξ「ウソでしょ……」

(-@∀@)「ウソじゃナッスゥィン! ノンッ! ノンッダウッ! クローズなロングしかキャントシーなオンリーよ!」

ξ;゚゚)ξ「アメリカだけどさ! 確かにここアメリカ的な舞台だけどさ! 『近視なんだ俺』くらい言えよ!」


ξ゚゚)ξ


ξ;゚゚)ξ「ていうかあんた裸眼で精密射撃してたろうが!」

(-@∀@)「正真正銘、えむおーえむおーあーるおー、モララーですってば☆」

ξ゚゚)ξ「エム・オー・エム・オー・アール・オー」




36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:54:25.03 ID:Nb39fhgI0

ξ;゚゚)ξ「ってMOMOROってモモローじゃねーか!!」

(-@∀@)「ジョーダンじゃないですかwwwよくいうじゃないですか、マイケル・ジョーダンのジョーダンは」

ξ;゚゚)ξ「ちょ、ウザイ、近寄るな。お前犬歯と前歯の間にオレンジ色の歯垢溜まってんだよ」

(-@∀@)「……え?」

ξ゚゚)ξ「……」

(-@щ@)ヌグムグ

ξ゚゚)ξ「何してんの」




37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:56:34.07 ID:Nb39fhgI0

(-@щ@)「いや、歯垢取ろうと思って」

ξ;゚゚)ξ「無理だろ! 歯ァ磨けよ!」

(-@∀@)「ああ、そうそう、マイケル・ジョーダンのジョーダンは」

ξ;゚゚)ξ「そっちの話まで戻すの!?」

((-@∀@))=3「Oh....」

ξ;゚゚)ξ「やれやれって顔すんなお前」

(-@∀@)「じゃあアレですか、アレにしたらあなたもほら、ソレですか?」

ξ゚゚)ξ「アレにしたらソレ?」




38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 21:58:43.32 ID:Nb39fhgI0

(-@∀@)「ほら、爆発的に流行ってテンプレ入りしたアレですよアレ、ほら、あの」

(-@∀@)「イトーξ゚゚)ξ「No black dog.」

((-@∀@))=3「Oh....」

ξ゚゚)ξイラッ(あ、コイツ殺りてぇ〜)

(-@щ@)ムグムグ

ξ;゚゚)ξ「だから諦めりょよ!」

(-@∀@)「『あきらめりょよ!』wwwww」

ξ////)ξ「ちょ、ちょっと噛んだだけでしょ!」

(-@∀@)「萌えねぇ〜なこいつ」ボソッ

ξ゚゚)ξ「なんつった」


ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以それからどんどこしょ




39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:00:55.75 ID:Nb39fhgI0

(-@∀@)「したらばツン殿、我らが武器を選ぶでゴザルぞ☆ ニンニン♪」

ξ゚゚)ξ「キャラの迷走具合はもういいでしょう。うん、気にしない」

(-@∀@)「次の中から選ぶニャン☆」

【釘バット】
撲殺するならやっぱコレだよね♪ (20クレジット)

【バールのようなもの】
決してバールではない。 (30クレジット)

【名刀・靭帯切断丸】
「兄貴! 俺はもうだめだ!」「馬鹿野郎! 膝の前十字靭帯が切れたくらいでなんだ!」「だから立てないんだって……」(100クレジット)

【アルファベットY】
それはショボンの巨体でようやく振るえるような   >(@∀@-)

        ξ゚゚)ξ「  ま   て  」




40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:03:22.51 ID:Nb39fhgI0

(-@∀@)「なんでゴザルかwwwwwツン殿wwww職人ツン殿wwwww」

ξ゚゚)ξ「待て、とりあえずテンションと声のボリュームを下げろ」

(-@∀@)(はぁい)

ξ゚゚)ξ「しかる後に死ね。氏ねじゃなくて死ね」

(-@∀@)「ツン殿ったらつーれーなーいーなーあ! もっと昔はノリ良かったじゃん!」

ξ゚゚)ξ「色々引っ張り出してるけど有名じゃない方の歯車のパロとか誰がわかんだよ」

(-@∀@)「あの頃は無茶したよね、二人で湘南の暴走族シメて、ぼろぼろになってさ」

ξ゚゚)ξ「おーい、せめて北米ベースの話題持って来い」

(-@∀@)「帰り道バイクでパクられそうになったから、アクセルふかしすぎて大ゴケしたり……」

ξ゚゚)ξ「もしもーし」

(-@∀@)「挙句の果てにメタトロン発電所半壊させたりさwww」

ξ゚゚)ξ「ほとんどお前せいだろアレは」




41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:05:51.14 ID:Nb39fhgI0

(-@∀@)「えー、じゃあほら、『あなたの望むのはどっちだ』ゲェエェエームッ」

ξ゚゚)ξ(うっぜ)

(-@∀@)「あなたの望む武器はどーっちだっ」


(-@∀@)つ【 】 【 】  ババーン

ξ゚゚)ξ(AAセンスのなさをここで露呈したか)


(-@∀@)「ほらほら、箱の蓋開けてみてくださいよお」

ξ゚゚)ξ「……」

ぱかっ




42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:08:11.64 ID:Nb39fhgI0

【鉄パイプ】
赤錆の浮いた金属製のパイプ。先にL字ジョイントがついている。丁度いい重さだ。
太さもなかなかで、リーチも結構ある。武器としては使いやすいかもしれない。

ξ゚゚)ξ「やっとまともなのきた」

(-@∀@)「出ましたっ! 『やっとまともなのきた』っ!」

(@∀@-)

(-@∀@)

(-@∀@)「あれ? 慎吾は?」

ξ゚゚)ξ「スマスマとか今日びいらんわ」

(-@∀@)「はいっ、では次の箱をどうぞ!」

ぱかっ




44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:11:01.42 ID:Nb39fhgI0

ξ゚゚)ξ


【('A`)】
あああ、あの、なんで、僕フヒッwここにいr


ばたん


ξ゚゚)ξ「ナマモノは無しだろナマモノは」

(-@∀@)「見えない敵と戦う戦闘力も兼ね備えてますよ」

ξ゚゚)ξ「いや、だから別作品で強化服着ての状態な」

(-@∀@)「それに生物兵器的な顔してるじゃないですか」

【  】<ウツダシノウ

ξ゚゚)ξ「お前言える面……だな、眼鏡外せばイケメン系だもんな……」

(-@∀@)「そぉですょぉ」

ξ゚゚)ξ「ギャル字止めろ吐き気がするんだよ」




45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:13:15.84 ID:Nb39fhgI0

ξ゚゚)ξ「もう間違いなく鉄パイプ選ぶわ」

(-@∀@)「ゲーム第二セットー!! ドンドンパフパフ!! ギュウィィンギャーンギャーンギャーンズズギャーン!!」

ξ;゚゚)ξ「最後のギター音やたらリアルだな!」

( ・∀・)「特技なんだよな」
つ-@-@ スッ

ξ゚゚)ξ

(-@∀@)スッ「と、いうわけでー」

ξ゚゚)ξそ




47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:15:27.10 ID:Nb39fhgI0

ξ;゚゚)ξ「なんで今一瞬眼鏡とったの、ねえ、なんで?」

(-@∀@)「どうでもいいじゃあないですか」

ξ;゚゚)ξ「お願い! あの、本筋的には早く警察署出て病院いきたいからさ! 眼鏡とって!」

( 3∀3)「細かい人ですねえ」
つ-@-@ スッ

     ガビ―――ξ;゚゚)ξ―――ン!
       「あれえええええええええええええ!?」

(-@∀@)「引き続き、今選んでいただいた箱と新しい箱とで二択! 選んで〜ドンッ!」

ξ;っ-)ξ「やばい、やばいぞ、ツッコミ病と被る……。これはやばい……。番外編でよかった……」


  (-@∀@)っ 【鉄パイプ】  【 】 ババーン


ξ;っ-)ξ(落ち着けツン、冷静になれ)




48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:18:33.08 ID:Nb39fhgI0

(-@∀@)「箱の中身は――」


ぱかっ


【BBBlade】



ξ゚ー゚)ξ


ξ゚ー゚)ξ


ξ゚゚)ξ「アウト」

【('A`)】
僕っすか? 強いメイド連れてなきゃダメなの?

ξ゚゚)ξ「お前はまず本編出てないから色々アウト」




49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:20:48.10 ID:Nb39fhgI0

(-@∀@)「え?」

ξ゚゚)ξ「いや、これはアウトだろ」

(-@∀@)「え? え? パードゥン? パードゥン?」

ξ゚゚)ξ「っていうかわたしあっちだと開発者側だし、どっちかっていうとロボットアーム出てきた方が」

(-@∀@)「何言ってんのアンタ?」

ξ゚゚)ξ

ξ゚ー゚)ξブチ


「使ってやろうじゃねえええかこの野郎!! くたばれクソ眼鏡が!!」

「やめっ! お尻に青いエネルギー注入やめえええええ!!」




50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:23:09.48 ID:Nb39fhgI0

こうして、ツンは蔓延るセカンドウィルスを撲滅するべく、青い光を携えサイレントヒルの街を出た。
彼女はセントラルの思惑の通り、ただのコマに成り果てるのか。
権力が絡み、いつ終わるとも分からない戦いはさらに複雑化していく。

平和は時代を作るため、ツンは戦い続ける。

なんだこれ。

【Second end】




51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:25:28.55 ID:Nb39fhgI0

【ロード】

ロードするデータを選んでください。

×【1 警察署内 (パラレル)】
(この程度でパロったと言えるのか)

×【2 道路・病院前 (ボツ)】
(こんな恥ずかしい作戦を本投下で使う予定だった自分が怖い)

【3 病院・二階通路 (▲)】

【4 遊園地・入り口 (∞)】

×【5 遊園地・メリーゴーラウンド (サイコ)】
(二人はプリキュア)

【6 ? (?)】




52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:27:56.14 ID:Nb39fhgI0

【4 遊園地・入り口】

病院の地下室から通じる階段を降り切り、最後の鉄扉をあけたξ゚゚)ξとモララー。
二人がそこで見たのは、変調をいたるところに起こした暗澹たる遊園地だった。

そうして、二人が進むと、現れたのは、変調をいたるとこに起こした暗澹たる遊園地だった。
不思議に思いつるもξ゚゚)ξは歩みを止めず、ついに辿り着いたのは、変調をいたるところに起こした暗澹たる遊園地だった。

( ・∀・)は何かを言いかけるが、足を止めようとはせず、二人の行き着いた先は変調をいたるところに起こした暗澹たる遊園地だった。




53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:30:15.43 ID:Nb39fhgI0

――――病院地下?

おそらく、これは地階で開かずの間となっていたであろう扉。
病院に勤めてきて、一度もその向こうを見たことがない。

未知であるとの覚悟も相まってだろうか。
何が起きても、もう驚かないはずだ。
どこへ繋がっていても、不可思議とは思わない。

ドアをくぐる。
その先は、鉄と錆びにまみれた、暗澹たる「遊園地」だった。

ξ゚゚)ξ「遊園地、ね」

(メメ ∀・)「チケット、が、なくても、入場できる、よな」

もとよりチケット売り場は鉄格子で閉め切っており、無人なのは言うまでもないことだ。
入場ゲートですら鉄柵が鎖で固められており、出入りは叶わない。
進むしかない。

ξ゚゚)ξ「行きましょう」

わたし達は園内へと続くレンガ造りのアーケードの下を歩いていった。




54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:32:41.16 ID:Nb39fhgI0


そして、目前に閃光。


――――病院地下?

ξ゚゚)ξ「?」

(メメ ∀・)「どうした、は、はやく、進もう」

ξ゚゚)ξ「……ええ」

目前にあるのは、おそらく、地階で開かずの間となっていたであろう扉。
病院に勤めてきて、一度もその向こうを見たことがない。

未知であるとの覚悟も相まってだろうか。
何が起きても、もう驚かないはずだ。
どこへ繋がっていても、不可思議とは思わない。

わたしはモララーを支えながら、ドアノブに手をかけた。




55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:34:51.60 ID:Nb39fhgI0

ドアをくぐる。
その先は、鉄と錆びにまみれた、暗澹たる「遊園地」だった。

ξ゚゚)ξ「遊園地、ね」

(メメ ∀・)「チケット、が、なくても、入場できる、よな」

もとよりチケット売り場は鉄格子で閉め切っており、無人なのは言うまでもないことだ。
入場ゲートですら鉄柵が鎖で固められており、出入りは叶わない。
進むしかない。

ξ゚゚)ξ「行きましょう」

道の向こう側に、ピンク色のウサギが一体立っている。
マスコットキャラクターのロビーだ。

狂ったような笑みに、青いオーバーオール。
頭を小刻みに前後させながら立ち尽くしているのが、不気味だ……。

わたし達は園内へと続くレンガ造りのアーケードの下を歩いていった。




56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:38:02.19 ID:Nb39fhgI0

(メメ ∀・)「な、んだか、おかしく、ないか」

突風が吹いたように、言葉にノイズが乗っていた。

ξ゚゚)ξ「え? ごめんなさい、もう一度言って」

(メメ ∀・)「だから――」


そして、目前に閃光。


ξ゚゚)ξ「?」

(メメ ∀・)「どうした、は、はやく、進もう」

ξ゚゚)ξ「……ええ」

目前にあるのは、おそらく、地階で開かずの間となっていたであろう扉。
病院に勤めてきて、一度もその向こうを見たことがない。

未知であるとの覚悟も相まってだろうか。覚悟だけでどうにかなるのか。
何が起きても、もう驚かないはずだ。それにしてもこの違和感はなんだ。
どこへ繋がっていても、不可思議とは思わない。不可思議なのはわたし達だ。

わたしはモララーを慎重に支えながら、ドアノブに手をかけた。




57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:41:07.36 ID:Nb39fhgI0

ドアを強引に押し開けて目を見開く。
その先は、鉄と錆びにまみれた、救いのないような「遊園地」だった。

ξ゚゚)ξ「遊園地、ね」

(メメ ∀・)「チケット、が、なくても、入場できる、よな」

もとよりチケット売り場は鉄格子で閉め切っており、無人なのは言うまでもないことだ。
入場ゲートですら鉄柵が鎖で固められており、出入りは叶わない。出たい。ここを出たい。
進むしかない。進みたくない。

ξ゚゚)ξ「行きましょう」

道の向こう側に、ピンク色のウサギが一体立っている。
マスコットキャラクターのロビーだ。

狂ったような笑みに、青い赤い白のオーバーオールは黄色だ。
頭は空を飛び、回転しながら火の粉を降らしていて、少し不気味だ……。

わたし達は園内へと続くレンガ造りのアーケードの下を「先に向かって戻っていった」。




58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:44:32.07 ID:Nb39fhgI0

(メメ ∀・)「な、※※ああうぇいあ※あ¥じゃあ※わ」

全てが全てを否定する音色にわたしは耳を疑った。

ξ゚゚)ξ「え? ごめんなさい、もう一度言って」

(メメ ∀・)「だから――」


そして、目前に閃光。


ξ◎ ゚)ξ「?」

(メメ   ∀  ●)「どうした、は、はやく、進もう」

ξ◎ ゚)ξ「……※お」

目前にあるのは、間違いなく、地階で開かずの間となっていた扉のひとつ。
病院に勤めてきて、その向こうを垣間見たことは何度かあった気がする。

助けて。
何が起きても、もう驚かないはずだ。それにしてもこの違和感はなんだ。
どこへ繋がっていても、遊園地に着くのだろうか。不可思議だ。

モララーがわたしを慎重に支えながら、ドアノブを捻っていく。




60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:48:23.64 ID:Nb39fhgI0

ドアを強引に押し開けて目を見開く。
その先は、「遊園地」だった。

ξ ◎ ゚)ξ「※」

(メメ ο  ∀  ●)「チケット、が、なくても、入場できる、よな」

もとよりチケット売り場は鉄格子で閉め切っており、無人なのは言うまでもないことだ。
入場ゲートですら鉄柵が鎖で固められており、出入りは叶わない。出たい。ここを出たい。
進むしかない。進みたくない。どうしたらこれは終わる。

ξ ◎ ゚)ξ「※」

道の向こう側に、ピンク色のウサギが八十六体立っている。
マスコットキャラクターのロビー達だ。

狂ったような笑みに、オーバーオールが被さり、顔が分からないのに笑顔だと分かる。
一体が殺されると次の一体が生贄になり、その連鎖は止まない。

連鎖は止まらない。
鎖が切れない。
抜け出せないのは誰だ。

園内へと続くレンガ造りのアーケードの下を、車椅子に乗ったわたし達が笑いながら競争していく。




61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:53:11.65 ID:Nb39fhgI0

(メメ ο  ∀  ●)「※」

隕石にモララーの顔が吹き飛ばされるので、しかたなくわたしも舌を空に突き出して月を待った。

ξ ◎ー ο)ξ「皆おいで」

(メメο ∀ Ξ∴:.「ヒュゥ――」


爆裂する世界に真理が溶け合い愛に満ち溢れる。


「―――――」

「―――――」

「―――――」

扉。
その向こう。

既視感。
不可思議。

ドアノブ。




63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:55:24.50 ID:Nb39fhgI0

「遊園地」。

「※」

「※」

無人。
出入り不可。

「※」

ウサギが一体。
マスコットキャラクター、ロビー。

笑顔。
素敵な笑顔。

だからわたしはそれでいいと思った。
隣の誰かもそう言った。




64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 22:57:35.78 ID:Nb39fhgI0

ξ ◎ ゚  )ξ

「え   ? な 
            あ  に?」

              (メメ ゚     ∀   ●メメ)

 「いや、                 でも  な   い  」
           な―――ん


                   ξ(ο   ー〇 ξ

  「    なら          よ  か っ    た   」


  もららー「あああ、だいじょうぶうぶうぶ」



      つん
    「 そうねえ  」


【     】




68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:08:18.04 ID:Nb39fhgI0

×【1 警察署内 (パラレル)】
(この程度でパロったと言えるのか)

×【2 道路・病院前 (ボツ)】
(こんな恥ずかしい作戦を本投下で使う予定だった自分が怖い)

【3 病院・二階通路 (▲)】

◎【4 遊園地・入り口 (∞)】
(幸せは歩いてこない。気付けば一身に受けているもの)

×【5 遊園地・メリーゴーラウンド (サイコ)】
(二人はプリキュア)

【6 ? (?)】


120秒規制すごいね!
やる気が見る見る落ちてくよ!
あと二つ、ゆっくり投下してくでがす。




69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:11:42.00 ID:Nb39fhgI0

【3 病院・二階通路】

ξ゚゚)ξと( ・∀・)はそれぞれの罪悪感を強く認識し、各々の過去を悔いる。
世界は変調し、病院は鉄錆び、金網に囲まれた異なる空間へと姿を変える。

二人は自らを罰する存在を潜在意識下で求めた。
罪を赦すのは、被害者、あるいは裁きの刃。

現れる断罪人の姿は半ば現実的で、しかし、非現実的でもあった。
赤く染まった金属の被り物、巨大といってよい大鉈、それらを持つ人型の「何か」。

断罪人たる存在は、大鉈を振り上げ、二人を襲う。
ξ゚゚)ξは( ・∀・)を助けようとする。

が、そこで彼女がひとつの結論を出してしまった場合のストーリー。




70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:15:01.71 ID:Nb39fhgI0

三角頭は左半身を前へ進めた。
遅れて右腕が一旦後ろへと引かれる。
振り下ろすための溜めが完了、そして、静止。

「斬り殺すため」の予備動作が、十二分に完遂された。

何故わたしはそれを傍観している。
座り込んでいるのはどうして?

「む……」

ここで、見上げている三角頭が、正確には四角錐の形をしていることに気付く。
自分の膝や掌に、金網の形通りの跡がついていることに気付く。
モララーの拳銃が三角頭の裸足の足元に近いことに気付く。

そして、それらが全て現実逃避からの思考であると、気付く。

全身に震えが走っている。
歯がぶつかりあう。
喉、喉が、喉が、からから、だ。




71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:17:11.00 ID:Nb39fhgI0

三角の被り物の動きをも停止させた。
ぞっとする。

その完全なる停止は一つの事柄を示唆していた。
すなわち、斬り付ける対象の決定。

(メ;・∀・)「!」

ξ;゚゚)ξ「――――っ」

ひどく緩慢だが滑らかな太刀筋が斜めに走ろうとする。
標的は。
より近くにいたモララーの、投げ出されていた両脚。

閃光のようにイメージが湧く。

両の膝から下が分断され、悲鳴を上げるモララー。
金網から零れ落ちる多量の赤。
生命の象徴、鮮血を流す彼の姿。

ぶうん。

軌道上にあるのはモララーの右足、脛。

わたしは全力で彼の衣服を掴んでいた。




72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:19:24.81 ID:Nb39fhgI0

間に合うか……?

大振りの動作に似つかわしい、鈍い風切り音。

モララーの服が金網に引っ掛かる。
彼の服は血まみれで、錆びに覆われた床面との摩擦抵抗がひどく大きい。
わたしは半ば立ち上がりかけて、腕だけでなく全身で彼を引く。

引け、引け、引け。

ξ;゚゚)ξ

ξ゚゚)ξ

はた、と刹那、わたしは考える。

『どうしてモララーを助ける必要があるのか』




73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:21:34.88 ID:Nb39fhgI0

モララーはわたしを仇と思い、銃口を向けた。
今さっきまで泣きじゃくっていたとはいえ、彼はわたしを殺そうとしたのだ。
何故そんな男を助けなければならない。

大鉈の動きが止まって見えるほど、その一瞬は長かった。

例えばここで救命したとしよう。
モララーはわたしに感謝するだろうか?
そうすれば……そうすれば……。

ちゃんと、『彼の子供を殺してしまったこと』を赦してくれるのだろうか?

目の前の敵は強力で、殺すことをなんとも思っていないように見える。
事実、その動きに「行為の意味を反芻する」類の戸惑いなどはない。

わたしの後方は行き止まりで、逃げ場はこれ以上ない。
一時、モララーを後ろに逃がすことに、果たして――

ξ゚゚)ξ(得は、あるのだろうか)




74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:25:45.31 ID:Nb39fhgI0

モララーの衣服を掴む手が緩む。
襟の後ろ辺りが握ったままの形に固まっていた。
よれたワイシャツ、汚れきった白。

被害者の父親、モララー。
あるいは、被害者である父親、モララー。
わたしを憎んでいた男。

ξ゚゚)ξ

彼の中で、わたしは悪で在り続ける可能性がある。
同時に、彼自身も殺人を犯した罪人だ。
三角頭を処刑人として、わたしがすべきことは。

確かにわたしがマタンキ君を屋上から落とした「かもしれない」。
でも、あの時は風が強かったし、誰も現場を見ていない。
今現在、処刑人が明らかに罪人であるモララーを罰しようとしている。

なら、いっそ――




75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:28:03.74 ID:Nb39fhgI0

どん。

(メメ・∀・)「え」

間の抜けた声を出して彼は前のめりに倒れていく。

がしゃん。

金網の床の上で、上半身を脚に付けるように身体を折りたたむモララー。

大鉈は下りてくる。

まるでモララーは自分から斬られにいったように見えた。

妙にわたしは冷静だ。

ξ゚゚)ξ「あ」

わたしがその背中を蹴り飛ばしたのに。




76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:31:43.81 ID:Nb39fhgI0

見る見るうちに刃は迫る。

もう少しだ。

それ、もう少しだ。

上半身の肉は切られ、骨は断たれる。

はらわたは潰され、破れた。

その軌跡は綺麗に背中を断ち、モララーの左肩から右腰までを斜めに裂く。

ξつ-)ξ「わっ」

いつの間に時間はまた流れ始めたのだろう。

一気に飛んできた血飛沫を受けて、わたしは思わず目を瞑る。




77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:34:37.75 ID:Nb39fhgI0

「くふううううぅうううううぅうぅ」

ああ、これはモララーだった物から漏れている音なのだろうな。
肺には結構な空気が溜め込まれていたらしい。
タイヤがしぼむような音だ。

ξつ゚)ξ「ん」

血が入ったのか、片目だけがぼやける。
曖昧な視界の中で、三角頭の怪物は金網に食い込ませた大鉈を引っ張って抜こうとしていた。

今なら脇を抜けられるはずだ。

ξ;-゚)ξ「急がなくちゃ」

斜め切りの死体をちらりと見て、こうはなりたくないなと思いながら駆け出す。
三角頭はまだ大鉈と格闘している。
いける、いける、いける。




78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:37:00.57 ID:Nb39fhgI0

脇を抜ける。
三角頭は一瞬だけわたしに気がついたようなそぶりをした。
遅い遅い。

このまま逃げ切ればいい。

ひとまず、あいつが鍵を握っているのならば不意打ちすれば良いのだ。
ここは勝手知ったる元職場だ。
多少内部構造が変わっていても、わたしの方が三角頭より有利に動ける。

そんな考えもあってか、わたしの足取りはいつに無く軽かった。
何より、わたしを責め立てる唯一の男が今しがた亡き者になったのだ。
肩の荷も少しは軽くなっているということだろう。

背後に風斬り音が鳴る。

遅い遅い。
もうわたしはお前から逃げ切れた。
バッグにはまだ拳銃がある。

モララーが囮になったおかげで活路が見出せた。




79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:39:45.17 ID:Nb39fhgI0

ξ゚ー゚)ξ「ふふふ、ふ」

ふふふふ。

ふふふふ。

ふふふ、ふ?

ξ゚゚)ξ「か、は」

背が熱い。
おかしい、地面がせりあがってくる。
力が抜けていく。

顔から金網に突っ込む。
当然、かなり痛い。

あれえ?

わたし、なんで、こんな。
なんで?




81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:44:14.03 ID:Nb39fhgI0

下半身に力が入らない。
手もふるふると揺れるばかりで動かせない。
目ぐらいか。

なんだろうこの状況は。

三角頭は――あ、今度は壁に大鉈食い込ませてる。
また当分時間が稼げそうだ。
急がなくっちゃ。

でも、動けない。

ああ……なるほど。
あっちに倒れてるのがわたしの下半身か。

胸から下が無いじゃないか。
そっか、動けるはずないね。

なんだ。
結局、ろくなことにならなかったな……。

息ができない。
横隔膜まで下半身に持っていかれちゃった。

あははははははは。




84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:47:22.45 ID:Nb39fhgI0

ξ;;)ξ「ヒゥ――……。ゲロ」

笑えもしないんだ。
ちょっと吸えてもすぐにち、ち、血がこみ上げ

ξ;;)ξ「ゴプ」

あかぁいあぶくがぷくっとしてる。
綺麗かも。
あはははははは。

わたし、何しにきたんだっけ。

なにかわるいことした、きがする。


ざぐ。




87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:53:46.41 ID:Nb39fhgI0

――――サイレントヒルから車で二時間ほど離れた土地。

( ^ω^)「新聞配達の小僧、さすがに僕も我慢ならん」

霧の日にガレージに投げられたら新聞がしっとりするだろう。
常識的に考えて。

ばさ。

( ^ω^)「ツンもまだ帰ってこなさそうだし、暇だ……」

気になる記事は特にない。
ローカル面に近所の中学野球チームの戦勝報告。
あそこ強いな。

飼い犬が膝の上に頭を乗せてくる。
いつまで経ってもデカイ子犬だ。

コール。

( ^ω^)「お?」

こんな時間に電話だなんて。




89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/21(木) 23:57:38.71 ID:Nb39fhgI0

( ^ω^)「ハロー」

――――?

(;^ω^)「いや、まさか。いや、はあ。うちの車ですが」

馬鹿な。
ありえない。
そんな。

(;゚ω゚)「止めてくれ、冗談だろう?」

冗談にしては笑えない。
どこにも笑う要素がない。

(;゚ω゚)「……いえ、いますぐ向かいます」

信じられない気持ちのまま、僕はもう一台の車を駆る。




90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 00:01:21.95 ID:Nb39fhgI0

焦った時に限ってエンジンのかかりが悪かった。

(;゚ω゚)「ウソだって言ってくれツン」

き、君が、そんな。

(;゚ω゚)「だって、君は僕なんかより安全に車を」

誰か、夢だと言ってくれ。

(;゚ω゚)「ふざけるな、ふざけるな、信じないぞ、僕は信じない」

エンジンが唸りだすと、電話越しの冷静な声が甦った。

(;゚ω゚)「くそっ、くそっ、くそっ!」


 『奥様が交通事故で亡くなりました』




91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 00:04:55.41 ID:pZosxD/+0

(;゚ω゚)「馬鹿なことを言うなお!」


 『ガードレールを突き破って車ごと転落。木々がフロントガラスを突き破り――』


(;゚ω゚)「信じない!」



――僕が絶望に面したのは、それから丁度二時間後くらいだったと、記憶している。


【Retribution end】




92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 00:07:47.23 ID:pZosxD/+0

×【1 警察署内 (パラレル)】
(この程度でパロったと言えるのか)

×【2 道路・病院前 (ボツ)】
(こんな恥ずかしい作戦を本投下で使う予定だった自分が怖い)

×【3 病院・二階通路 (▲)】
(結局、▲を見るということは自らの罪を認めているということである)

◎【4 遊園地・入り口 (∞)】
(幸せは歩いてこない。気付けば一身に受けているもの)

×【5 遊園地・メリーゴーラウンド (サイコ)】
(二人はプリキュア)

【6 宇宙 (電波)】




93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 00:10:38.34 ID:pZosxD/+0

【6 宇宙】
no title

 \うんう〜ん!/  \飽きてるよー!!/ \SEXした〜い!/




99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 00:14:36.81 ID:pZosxD/+0

no title
参考 「サイレントヒルのうた」
http://www.youtube.com/watch?v=VRL4dwoam9w



今から即興で書くからこれでも聴いて勉強してやがれ




100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 00:17:36.59 ID:pZosxD/+0

no title




101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 00:21:04.93 ID:pZosxD/+0

no title




103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 00:26:18.87 ID:pZosxD/+0

no title




104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 00:30:07.67 ID:pZosxD/+0

no title




105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 00:34:22.46 ID:pZosxD/+0

no title




106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 00:34:48.75 ID:uw7ouCtr0

いかん……
作者が狂ってしまった……




107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 00:43:39.57 ID:cFPuvi1u0

どうしちまったんだよ…




108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 00:46:53.72 ID:KL3S4T1w0

悲しいけど、これ原作通りなのよね




110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 01:04:48.93 ID:pZosxD/+0

no title




112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 01:08:09.23 ID:pZosxD/+0

no title




115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 01:12:32.08 ID:pZosxD/+0

no title




116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 01:14:44.61 ID:pZosxD/+0

no title




117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 01:16:34.57 ID:cFPuvi1u0






119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/22(金) 01:18:38.67 ID:UesJgpIrO

おつ





・ニュース速報(VIP)@2ちゃんねるに投稿されたスレッドの紹介でした
 ξ゚゚)ξはサイレントヒルで看護婦をやっていたようです
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