転載元:幼馴染「ボクだって女の子らしい格好したら可愛いんだからな」

関連記事
【第一話〜三話】

122: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 21:50:54.13 ID:B8s60EJWo

 

第四話<お泊り>




幼馴染「アッキー〜?」

男「なんだよ」

近頃ナツキは俺のことをアッキーと呼ぶようになった。
それは俺たちがまだ幼い子供だった頃の懐かしい呼び名だ。
もうナツキくらいしか覚えていないだろう。


幼馴染「ねー、あった?」

男「んー…いま探してるだろ」

幼馴染「氷準備できてるよ〜〜」

男「わかってる…去年どこにしまったかな」

扇風機にひきつづき、ナツキに出せ出せとせがまれたのはかき氷機。
確かペンギンのような生き物の頭に取っ手のついた形をしていたはずだ。


男「あれぇ、ないんだよ何故か」

幼馴染「なんで?」

男「いつもならこの辺りの棚にしまってるんだけど」

幼馴染「まだかなまだかな。シロップ何味にする?」

男「実はそれ、色は違っても味は全部同じらしいぞ」

幼馴染「え〜〜? これどうみてもメロンじゃん。メロンって書いてあるし」ペロ

男「まじまじ。ほんとに見た目の思い込みで味がかわるらしい。人間の脳みそって適当だよな」

幼馴染「ふ〜ん?」

ナツキの声はどうにも訝しげだ。
振り返るとスプーンに2種類のシロップを交互に垂らして怪訝な表情で味を比べていた。
俺もTVでやっていた実験の受け売りでしかないので、いま家にあるシロップ達が本当のそうなのかどうかは正直わからない。







稲村亜美、赤外線カメラでスケスケ神パ●ティ!不意打ちで撮られちゃった…【画像27枚】
【エ□注意】『ポケモンGO』でさっそくおふざけ悪ふざけ自画撮りエ□画像SNS大量流出wwwww
【抜き専用】ピストン中のエ□GIFを体位別に貼っていくwwwwwwwwwwwww(24枚)
【ドン引き】海やプールでオシッコする女wwwwwwwwwww(画像あり)
海外で ”ビッチ” と呼ばれるギャルの裸がエ□すぎる・・・(画像)
【口リ 無修正】JKのオナ●ーしてる自撮りで抜きたい奴こっち来いw
Twitter民「ポケモンを追いかけてる小学生が飛び出してきた!」成歩堂「異議あり!!!」
彡(●)(●)「ファッ!?赤紙届いとるやんけ!」
【画像あり】B98・W59・H92。Hカップの重量感が凄まじい美女がAVデビューwww
稲村亜美、赤外線カメラでスケスケ神パ●ティ!不意打ちで撮られちゃった…【画像27枚】
9/1 元芸能人がAVデビュー!モデルでCDデビューも果たした美形タレントがこちらwww
みほ「会長のだいしゅきホールドの腰の感触が忘れられない」
リツコ「できたわシンジ君。幸福感と快楽を数値化する機械よ」
【画像】乳首ポロリしてるのに気付いてない可愛い子がエ□すぎる
【※閲覧注意※】生理中のおま●こ汚すぎワロタwwwwwwwwwwwワロタwwwwwwwww...
【XVIDEOS】新田恵海のAVが再流出www 削除される前に見ておけwww
レギンズ履いてるからって油断しまくりのお姉さん…普通のパ●チラよりエ□いんですがwww
元ジュニアアイドルの星野美憂がヌードになってた件
ポッポ「グエー、捕まったンゴー」
【画像】すごくエッチな美人市職員が見つかるwwwww
サキュバス「は〜い♡お姉さんとHなコトしたい子はおいで〜」男の子達「わぁ〜い」
女の子「わわっ、何で俺くん裸なの!?」俺「裸に見えるだけ……さっきのケーキに透視薬を盛ったのさ」
彡(●)(●) 「ナイフで刺したことは間違いない」
男「新入部員か!?」女「入れてください…////」


123: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 21:52:32.31 ID:B8s60EJWo


幼馴染「それよりかき氷探してよ!」

男「あぁそうだった」

去年の記憶を辿ってみる。
たしか去年もナツキが使うからと物置から出して、何度かかき氷をつくって、最後は……。

男「あーー、お前がぶっ壊したんじゃねぇか!」

幼馴染「え゙……え〜? そうだっけ…」

男「お前ぇぇ! 勢い良くやりすぎてペンギンの頭のぐるぐるバー壊したろ」

幼馴染「……そうだったかもしれない…」

幼馴染「あれ、でもアッキー簡単に直せるって言って…」

男「……」

その時のナツキがあまりにしょげた顔で謝るものだから、
そんなものすぐ直せる、俺に任せろ、と安請け合いして慰めたことも思い出した。

結局そのシーズンはもうつかわないからと修理を先延ばしにして今年の夏を迎えている。


男「悪い…壊れたままだ」

幼馴染「…ボクもごめん」

男「よ、よしじゃあもう出かけるか。かき氷器は新しいの買おうぜ」

幼馴染「そうだね。ボク縁側の戸閉めてくる!」




124: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 21:54:50.68 ID:B8s60EJWo


今日は昼から一緒に出かける約束をしていた。
出かけるといってもいつものように近所のスーパーやコンビニをぶらつくわけではない。
電車に乗って2駅のショッピングモールだ。

遡ること数日前。

  幼馴染「じゃあさ…今度水着買いに行こ」
  男「えっ」
  幼馴染「海いくなら要るでしょ。さすがに学校の水着じゃ、近所のプールまでしか行けないよ」
  幼馴染「ボクのチョイスがださいっていうなら、アッキーのセンス見せてよ」
  男「そ…うだな。買いにいくか」
  幼馴染「うん! えへへ、絶対ボクよりセンスないよ」 

といった具合に、俺は暇で暇でしかたないナツキとあちこち出かける約束をしてしまった。
同性の仲の良い友達もおらずに暇をもてあましているナツキに同情している側面もある。


幼馴染「あ、これデートだ!?」

男「断じて違う」

幼馴染「うんうん! ささー行こー行こー」

もちろん男女で連れ添うからといってもなんでもかんでもデートではない。
仮にデートだったとしたら、ナツキの女らしさのかけらもない服装に俺はドタキャンしているところだ。

男「……」

カジュアルなボーイッシュスタイルのせいで後ろ姿ならその辺の元気な少年とかわらないし、
日射病対策に帽子をかぶるのはいいが、いつまでたってもそれが謎の英文字のキャップなのもいただけない。
足元を飾るサンダル履きなんて明らかにメンズ製品だ。




125: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 21:57:57.88 ID:B8s60EJWo


男「…お前さ」

幼馴染「…なに?」

特になにも気にしていないきょとんとした表情。
つい飛び出そうになったナイフのような鋭い言葉をぐっと飲み込む。


男「……そうだよな。だから買い物にいくんだよな」

幼馴染「……いくよ? なぁに? あんまりさ、人のこと品定めするみたいにジロジロ見るのやめようよ」

男「あ、悪い…そういうつもりじゃ」

幼馴染「今日ボクどっか変なとこあるかな? あっ、帽子のツバってU字にしたほうがかっこいいと思う?」

幼馴染「ボクの好きな投手がさ〜いつもマウンドに立つ前に―――――」

男「……玄関に姿見でも置くか」


この夏、このどうしようもなくズボラで自覚のない幼馴染を改造しようと心に決めた。



  ・  ・  ・



【ショッピングモール】



幼馴染「アッキー何か欲しいものある?」

男「いや。別に」

幼馴染「じゃあずっとボクの買い物つきあってくれるの?」

男「ほうっておくとひどいことになりそうだから」

幼馴染「…む」




126: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 22:00:01.95 ID:B8s60EJWo


男「水着だけじゃなくて服も買っておこうぜ」

幼馴染「それボクの普段着がダメってこと?」

男「そうは言ってねぇけど…」

男「いつ見ても似たようなのばっかり着てるだろ。それも数年前からずっとセンスが一緒」

幼馴染「だって楽だし。動きやすいし」

男「今日はその楽だという考えを捨てて選ぼうな」

幼馴染「う〜ん…気にいればね」

男「お前は何も成長していないのか?」

幼馴染「え〜、してるよ?」

ナツキは不意に俺の真正面に回りこんで立ち、手の平を自らの頭の上においた。
そして勢い良く水平に手刀を繰り出して二人の背を比べる。

男「…」

幼馴染「あれ?」

ナツキの小指が何度もこつこつと鼻っ柱にあたってうっとうしい。

男「なにやってんだよ。やめろ、痛いって。何回やっても俺のほうがでかいに決まってるだろ」

幼馴染「う〜〜、結構背のびたとおもったのになぁ。背伸びしてない?」

男「してないし、お前は俺には勝てないの。てか、近いんだよっ、離れろ!」

両手でナツキの肩を押し返す一瞬、ふわりとゆるんだシャツの胸元から白い膨らみが垣間見えた。
確かに全く成長していないわけではなさそうだ。
身体つきを見て誰がどう見ても女の子と呼べる程度にはナツキは成長している。
しかしせっかくの女性らしさを打ち消すこのファッションと性格はどうしたものか。




127: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 22:03:03.72 ID:B8s60EJWo


幼馴染「ごめんごめん」

幼馴染「帰ったらアッキーの家の柱で身長測ってみる」

幼馴染「まだあの柱あるよね?」

男「大黒柱を取り替える家はないとおもう…」

頭のほうは成長しているのか非常に怪しい。
暑さで脳みそがとろけているだけなら良いが、こいつの場合季節を問わずこんな具合だ。


幼馴染「じゃ、気を取り直して行こっか」

男「俺がこんなことしなくてもお前に女友達がいれば色々選んでもらえたのにな」

幼馴染「それは禁句!」

それからしばらくナツキの買い物につきあった。
ナツキはそれなりにアクティブに店に入っては、値札を見て逃げ出す。の繰り返しだった。

当然アルバイトもしておらず小遣い制で生きる学生身分なので今日の軍資金は乏しく、
買うことが唯一決まっている水着代を差し引くと、セレクトショップでじっくり物を選べる状況ではなかった。

結局、普段どこででも目にするような安めのカジュアルブランドに足が吸い寄せられていく。




128: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 22:05:43.63 ID:B8s60EJWo


幼馴染「このシャツ涼しそうじゃない? ど?」

幼馴染「こっちのハーパンとか、ど?」

男「……そういうのたくさん持ってるだろ」

幼馴染「じゃあアッキーはどれがいいと思う? 選んでくれるんだよね?」

男「そうだな…」

レディースコーナーの少し奥まった場所に俺はずけずけと入っていって、一着の水色デニムスカートを手にとった。

男「スカートでも試着してみようぜ」

幼馴染「えっ、やだ。似合わないもん」

男「似合うって。じゃあこっちのワンピースは?」

幼馴染「似合わないもん」

男「…ならこっち?」

幼馴染「それもボクに似合わないもん」

の一点張りだ。
あまりその気がない物を無理やり着させても仕方ない。
とくれば是が非でも着させたいのが心情。
電車に乗ってまでここまで来た以上手ぶらでは帰れない。


男「お前なぁ。あれもいやこれも嫌で俺にどうやって選べっていうんだ」

幼馴染「…むぅ」

男「それに、女の子らしい格好したらどうこうって言ったのお前だろ」

幼馴染「い、言ったけどさぁ…いまはそんなつもりないっていうか」

幼馴染「…ボク、ひらひらしたの苦手だもん」

男「こいつは……。はぁ、いいから着ろ!」

幼馴染「やだっ」

強攻策、失敗。




129: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 22:08:11.71 ID:B8s60EJWo


男「…試着したらあとでシロクマアイス」

幼馴染「いらないー。そんなの自分で買うし」

男「うぐ……いつもならほいほい言うこと聞くくせに…」

男「2本、いや3本」

幼馴染「…かわんないよ」

物で釣る作戦も失敗。
となればもう頼んで見るしかない。
このままなにもチャレンジせず、いつも通りの夏を過ごすのはもうごめんだ。
ナツキと買い物に行くと決めて以降、俺の決心は固かった。


男「ナツキ。俺は結構可愛いと思うぞ…これ…」

先ほど手にした水色のデニムスカートを広げて、ナツキの腰にあてがう。
なんとなく、ナツキに似合う気がした。

幼馴染「…むー…変だよ絶対。ボクのイメージと違う」

男「履いてみよう。食わず嫌いはよくないだろ」

幼馴染「そうだけど…」

男「似合ってたら俺が買ってやる」

その言葉にナツキはずいぶん驚いた顔をしていた。
俺も驚いた。なぜそんなことを言ってしまったのか自分でもわからない。
ただ無性にナツキのスカート姿がみたくて、俺の選んだ服を着て欲しくて、衝動的なものだった。




130: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 22:10:04.69 ID:B8s60EJWo


幼馴染「ボク、キミがこういうの薦めるとおもわなかったな…」

男「本気で嫌なら別に着なくていい…」

幼馴染「ううん…着てみるよ」

幼馴染「ぃ、一応聞くけど、からかってないよね? ドッキリでした!みたいなの無しだよ?」

男「からかってない。あとこれも」

マネキンがスカートと合わせて着ていたブラウスも渡す。
渋々受け取ったナツキは口元を尖らせて、重たそうな足取りで試着室へと向かう。

それから長い時間が経った気がした。
試着室からなかなか出てこない。
ずっとレディースコーナーにつっ立っているため、周りの女性客の視線がやや痛くなってきた。

店員「あの、大丈夫ですか? ご一緒の方、お体の具合でも」

男「いえ、大丈夫だと思います…着替えるの手間取ってるみたいで」

店員「何かありましたらお呼びください」

男「はい」

幼馴染「……」

男「ナツキー。もう履いてるだろ? あんまりそこ占領してんなよ」

幼馴染「…わかってるケド……」モニョモニョ

弱々しい声がかすかに聞こえる。
他にも何か言ってるようだが聞き取れない。




131: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 22:11:23.44 ID:B8s60EJWo


男「カーテン開けていいか?」

幼馴染「だ、ダメぇっ!」

カーテンがわずかばかり開かれて、ひょこっとナツキが顔だけをのぞかせる。
唇をぎゅっと真一文字に結び、こちらを睨みつける。実に不満気な表情だ。
しかしナツキがこんがり日焼けしててもわかるくらい、頬が赤く染まっていた。

男「あ、わかった。お前見せるの恥ずかしいんだろ」

幼馴染「〜〜〜っ! そうっ、だけどっ!」

男「なぁみせるくらいいいじゃん。スカートなら学校の制服でも履いてるだろ」

幼馴染「あれは…下にスパッツ履いてるし…」

男「なぁ頼むって、10秒でいいから見せろよ。もう俺ずっとここにいてまわりの視線がいてーよ」

幼馴染「…う、うーん…」

ナツキは視線を泳がせて考えこむ。

幼馴染「アッキー…笑ったらあとでぶん殴るから」

男「笑わないって」

幼馴染「ほんと?」

男「んー。はやくしろよ」

そしてようやくカーテンが開かれる。

幼馴染「……10秒だけだよ」




133: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 22:13:56.45 ID:B8s60EJWo


試着室から現れた鮮やかなブルーのスカートを履いた少女。
どことなく緊張した面持ちでうつむいて視線を泳がせていた。
内股気味の立ち方も妙にぎこちなく、全く様になっていない。マネキンのほうがまだ自然だ。
いつものナツキらしい無駄に明るい笑顔も、いまはシュンとしおらしく姿を潜めている。

男(こいつもこんな顔するんだな)

ナツキのそんな姿をじっと眺めていると、妙に心臓の鼓動が速くなる。
俺の知ってるナツキがナツキでないようだ。
スカートとブラウスを変えただけでここまで雰囲気がかわるものなのだろうか。

スカートの丈から伸びる健康的な太ももがいつも以上に眩しい。

幼馴染「…7、8、9…おしまい」

男「しっかり数えてんのかよ!」

ナツキはべーっと憎たらしく舌をつきだし、さっとカーテンを閉める。
次は数分もしないうちに再びカーテンが開かれて、元のボーイッシュスタイルに戻ったナツキが手で顔を仰ぎながら出てきた。

男「中暑かった?」

幼馴染「うーーまぁね…」

男「服は」

幼馴染「はい。両方元の場所もどしといてー。ボクにはやっぱり似合わなかったよ。えへへ」

男「…そんなことないって」

幼馴染「いいっていいって。欲しいものあったらしばらく見てていいよ。外の椅子すわってジュースでも飲んでるね」

男「…あぁ。わかった」

ナツキは逃げるように外へと去っていった。




134: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 22:15:34.37 ID:B8s60EJWo




  ・  ・  ・



幼馴染「…あれ、結局なんか買ったんだ。いいのあったー?」

男「ん。自分で持て」

幼馴染「な、なんでボク荷物持ちっ! 試着で待たせたのやっぱり怒ってる?」

男「お前のだから。これ…」

幼馴染「え」

ナツキは品無くがさがさと袋をあさり、中身の青い生地をみて目を丸くして素っ頓狂な声をあげた。

幼馴染「なっ、なんで買ったの!? ボクべつに…っ」

男「似合ってたら買ってやるって言っただろ…セットでもそんな高くねーし…一応、約束だし」

正直言って試着を頼むときに軽はずみな約束をしたのを少しだけ後悔していた。
金銭的な問題じゃない。
他人にまともにプレゼントするなんて初めてなので、どういうテンションで渡せば良いのかよくわからなかったからだ。
ナツキが試着室の中でいつまでも着替えを躊躇していたように、俺もレジへ持っていくかどうか悩んで長い時間店内をぐるぐると右往左往してしまった。

男(これじゃまるで彼女へのプレゼントだ…絶対そう思われた)




135: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 22:17:37.38 ID:B8s60EJWo


男(…でも本当に似合っていたんだから仕方ない)

少なくとも俺は一目見てそう感じた。
いつもは暑苦しい幼馴染でしかないナツキ。
異性という感覚でなく、まるで男同士でつるんでいるかのような一緒にいて心地の良いナツキ。
気の置けない親友という奴だ。

しかしあの瞬間の彼女は涼やかで可憐で、まるで別世界の女の子に見えた。
俺がどんなに恥ずかしくても、そんなナツキの姿に嘘だけはつけなかった。


幼馴染「…ぁ、アッキー…」

男「別に無理して着なくてもいいって。お前がスカート好きじゃないことは知ってるから」

幼馴染「…うん」

男「あとな、俺がお前のスカート姿を見たがってるとかそんなんじゃねぇから勘違いするなよ」

幼馴染「うん。ありがと!」

男「おう。即リサイクルショップに売るのはやめてくれな」

幼馴染「そんなことしないってば…」




136: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/01(火) 22:19:51.31 ID:B8s60EJWo


幼馴染「でもさ、こういうのは彼女にすることじゃないの?」

ナツキのくせに痛いところをつく。

男「…」

幼馴染「ねぇ?」

手荷物紙袋をわざとらしくみせつけて、イタズラな表情で白い歯を見せる。
こいつにからかわれるのは結構屈辱的だが、不思議と嫌な気分はしない。

男「うっせー!! ぉ、俺も一瞬そうおもってな、レジ前でやめようかとおもったんだよ!」

男「プレゼントですか? ラッピングしますかなんて言われてな、丁重に断ったんだよ!」

幼馴染「あはは。わかってるよー」ツンツン

男「……」

幼馴染「わっ、顔赤っ」

男「なぁ、やっぱり返却するか! 全部なかったことにッ。いらないなら返せ!」

幼馴染「やーだよ。もうもらったもん。くふふふ」

ナツキは紙袋を抱きかかえて次の店へ向かって通路をパタパタと走っていく。

男「お、おいっ」

幼馴染「ちゃんと履くってば。ボクの気が向いたらね!」

振り返った笑顔は酷暑の太陽にも負けないくらい俺を身体の芯からあつくさせた。

ナツキとの長い一日は続く。



第四話<お泊り>つづく




150: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:06:08.25 ID:16WlYG5zo

第四話<お泊り>つづき



【レディース水着売り場】


男「ほら、決めたなら早く試してこいよ」

幼馴染「うーー…」

男「着てみないとわからないだろ」

幼馴染「そうだけどさ…やっぱりビキニは…挑戦的すぎるんじゃないかなぁ」

男「何言ってんだよ。お前何歳だよ」

幼馴染「普通だとおもう?」

男「さっき店員さんもそう言ってたじゃん」

幼馴染「……」

水着選びは服以上に難航した。
はじめナツキはセパレートを嫌がり、キャミソールのような形をした比較的露出の少ない物を選ぼうとしていた。
普段俺の家ではみっともない無防備な姿でゴロゴロしているくせに、人前で肌を晒すのは抵抗があるらしい。
しかし現在手にもつビキニのデザインはそこそこ気に入ったようで、どうしようかと迷いながら店内をウロウロしている。

幼馴染「ビキニ着たらお腹だけ真っ白で変じゃん…カッコ悪いじゃん!」

男「じゃああらかじめ焼いていけば。腹だして縁側で寝てたらすぐだろ、アハハ」

幼馴染「でも、いま真っ白じゃん」

男「気にすんなよ試着くらい。誰も見てないだろ」




151: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:07:17.94 ID:16WlYG5zo

 
幼馴染「…へんてこでも笑わないでね」

男「え?」

男(あぁ試着して見せてくれるつもりなのか。律儀なやつだなー)

男(自分でサイズ確認するだけでいいのに)

男(見せてくれるなら見るけどな…)

幼馴染「着てくる」

男「スカートん時みたいに待たせるなよ? あの店よりよっぽど居心地悪いんだからな」

幼馴染「わかってるよ」

なにぶん色とりどりのレディース水着に囲まれている上に客はすべて女。
俺にとっては下着屋とほとんどかわらない針のむしろだ。
なるべく余計なことを考えないように、ナツキの入っていった試着室の扉を凝視し続けた。

そして数分後。

カラフルなボーダーラインの入ったビキニを着たナツキがのそのそと扉の向こうから現れた。

幼馴染「……」




152: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:12:05.73 ID:16WlYG5zo


ナツキはスカートを履いた時以上に顔を赤くして黙りこくったまま、俺の言葉が返ってくるのを待っていた。

男「おい、何照れてんだ」

幼馴染「ゔぅ…照れてないし。で、どうかな…」

男「サイズは」

幼馴染「たぶんぴったり。フィットしてると思う」

男「上も下も? お前上半身にくらべ下半身がちょっと太いけど」

幼馴染「うるさいなぁ! ぴったりなの!」

幼馴染「でぇ、どうなのさ!」

ナツキは怒気を含んだ視線で俺を睨みつける。
そこでようやく意図を察した。

男「どうって…あぁ」

感想がほしいらしい。
尋ねられてまじまじとナツキの全身の観察をはじめた。

昔にくらべるとずいぶんと女の子としての成長を遂げた体。
上半身はやや痩躯だが、胸元は膨らみがはっきり分かる程度には盛り上がっている。

腹筋は軽く浮いていても見たものに硬そうな印象を与えない綺麗なすべすべのお腹。

すこし太めだが決して贅肉ではないぷりんとしたうまそうな太もも。
健康的に焼けたすらりと長い足。

足首はキュッとしまっていてモデルのようなかっこよさすらある。
ショートな髪型もあいまって全体のバランスがとても整ったスポーティな体だ。
しかし顔はまだあどけなさが残り、大人の女とは到底言いがたい。

男(俺そんなとこばっかり見てるな。水着みなきゃいけないのに)




153: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:14:14.31 ID:16WlYG5zo


男「ナツキ。あっちむいて」

幼馴染「…ん」

俺の手をひねる動きにあわせてナツキがくるりと半回転する。
つんと上向いたやや大きめのお尻がビキニに包まれて窮屈そうだ。
ビキニ紐しかない背中と肩甲骨から肩にかけてのラインが同じ人間とは思えないくらい、ぞっとするほど美しかった。


男「いいんじゃないか」

幼馴染「ほんと!?」

男「いますぐビーチバレーの選手になれそうだ。目指してみないか」

幼馴染「むぐ…そうじゃなくて」

男「わかってるって。すごく似合ってるから心配すんなよ」

幼馴染「うん。じゃあボクこれにしよっかな…えへへ」

男「お前にしてはまともなの選んだな」

男「俺はてっきりあっちのスイカみたいな色のを選ぶとおもった」

幼馴染「ボクも最初あれいいなーっておもったけど、アッキー絶対変な顔するの予想できるから…」

男「流石だな」

幼馴染「アッキーこそ、ボクの好きそうなのよくわかったね」

男「長い付き合いだからな親友」

こつんと拳をあわせた後、ナツキは水着を脱ぐために再び試着室の扉を閉めた。
中からごそごそと衣擦れの音が聞こえる。




154: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:18:34.14 ID:16WlYG5zo



男(いまちょうど裸か? いや、さすがに下着の上から試着するよな…)

男(あれ…でも下着なんて水着の下につけてなかったような…)


一度考えだすと止まらないのは俺の悪い癖だ。
キャッチャーをしていた頃、配球のことばかり考えて打席でよく上の空になって失敗した。
対してナツキはなにごとも頭を一度すっからかんにリセットして臨めるので、なんにでも結果がついてきやすく飲み込みも早い。
そういえば、今日はどこでなにをしててもナツキの事を考えているような気がする。

男(俺もいい加減何か趣味らしい趣味もったほうがいいなこれ…)



幼馴染「おまたせー」

男「なぁ、もしかして全裸になって直接試着したのか?」

幼馴染「……え゙? な、なに!? 下に着てたよ、何言ってるの常識でしょ」

男「まじ? あれ着てたのか」

幼馴染「じゃんっ、これをつけてたんだよ」

そう言って手渡してきたのはベージュ色をしたサポーターのようなババ臭い薄い下着だった。
ほのかにあたたかみを感じる。

男「あぁ…いわゆるアンダーショーツってやつね…持ってきてたんだな」

幼馴染「お母さんに水着選びにいくって言ったらもっていけって。よかったー」

男「…ってこんなもん俺に渡すな!」

幼馴染「えへへっ、とりあえず荷物全部もっててー♪ これお金はらってこよーっと」

ナツキの天然には時々頭を悩まされる。
俺はぬくもりの残ったショーツを握りしめた後、周りの視線を気にしながら
いそいそと紙袋にしまい、ナツキが会計の列に加わるのを見送った。




155: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:21:10.73 ID:16WlYG5zo



【フードコート】


幼馴染「…」モグモグ

男「これで欲しいものは揃ったよな」

幼馴染「んぐっ、あとペンギン!」

男「ペンギン?」

幼馴染「ペ!ン!ギ!ン!!」

ナツキはフォークをもったまま腕を皿の上でぐるぐる回す。

男「ああ…かき氷器か」

幼馴染「いま本気で忘れてた?」

男「…ここで買わなくてもいいだろ。いまの時期ならわりとどこでも買えるし」

幼馴染「ボク帰ったらかき氷食べるって決めてるのに」

男「えー…このあとほんとにうち来るのかよ」

幼馴染「なんのためにシロップ買ってきたとおもってるの」

男「そこの売店でコーンアイスでも買って満足してくれよ」

男「クレープ、パフェ、チョコバナナ、なんでもあるぞ」

幼馴染「……」チラ

幼馴染「だめっ、今日はもう使えるお金ないもんっ」モグモグ

幼馴染「あれ食べたら電車賃たりなくて帰れなくなっちゃうよ」

男「そんなにギリギリか。しゃーねぇ」

幼馴染「買ってくれるの!? さすが〜〜〜」

男「散財する前に帰ろうぜ」

幼馴染「…………」




156: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:23:29.06 ID:16WlYG5zo


【帰り道】


男「そんな恨めしそうな目で見るなよ」

幼馴染「…ずっとデザートのお店見ないように我慢してたのに」ジトー

幼馴染「ボクだってアッキーと同じのたべたかったのに、違う安いので我慢したのに」

男「かき氷たらふく食っていいから。腹壊すまでくっていいから。もう隣でブツブツ言うのやめてくれ」

幼馴染「…」

男「帰ったらキャッチボールするか」

幼馴染「するする! じゃあ早く帰ろ!」

男(簡単な奴…)

幼馴染「ボク一旦荷物置きに家戻るね!」

男「おう」


そして家の近所で解散して各々帰路につき、気がつけば夕刻。

帰宅した俺はいの一番に部屋の窓と縁側の戸をあけてムッとした部屋の空気を換気する。
エアコンがこわれているためこうして少しでも涼しくしておかなければまたナツキが文句を垂れる。
今日は午後から少し曇って比較的すごしやすい気温になってありがたかった。

男「思ったより金つかっちゃったなぁ。夏休みはまだこの先やりたいことあるのに」




157: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:26:20.72 ID:16WlYG5zo


吹き込む風に揺れる風鈴の音を聞きながらゆっくり麦茶でも飲もうかと思った矢先、
勢い良く玄関を開ける音がしてナツキが早々にやってきた。

男「はやすぎだろ」

きしむ渡り廊下をドタバタとかけぬけて、あっという間に俺のくつろぐ縁側まで滑り込んでくる。

男「いまこけたのごまかしたよな」

幼馴染「そんなことよりっ、時間は有限だから。ほら、暗くなる前に! ボールとグラブもってきて!」

男「ちょっと休ませて…一服したい」

幼馴染「そんなお年寄りみたいなこと言わないでよ〜!」

男「あれ…お前荷物置きに行ったんじゃねぇの。結局持ってきたのかよ」

幼馴染「それがさー」

幼馴染「お母さん達夕方から急に出かけることになったんだって。さっきメール入ってるの気がついた」

男「へぇ、それで」

幼馴染「家あいてなかったー」テヘー

男「あ、そう…夜には帰ってくるんだよな」

幼馴染「ううん。今日は帰らないってさ。よくはしらないけど仕事のトラブルみたい。会社にとまるかもって」

男「そうか…じゃあお前どうすんの。例によって鍵もってないんだろ」

幼馴染「泊めてー♪」

男「えーー。急に言われてもなぁー?」




158: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:32:51.00 ID:16WlYG5zo


特に嫌なわけではないのだが、こうも毎度あっさりと承諾していては、
いずれほんとに居付かれてしまう気がした。

男「どーしよっかなー。俺やりたいことあるしなー」

幼馴染「いいじゃんいいじゃん。お母さんも泊めてもらえって、ほら」

得意気に携帯を開いて画面を見せつけてくる。

男「夕日反射しててなんも読めん」

幼馴染「あ、ごめんごめん」

ナツキはそっと俺の隣に腰掛け、画面を見せてくれた。
確かにそこには泊めてもらうようお願いしなさいと書いてあった。
おばさんが後でこちらに電話をくれる手はずにもなっているようだ。

男「おばさんにメール送るからそれ貸してくれ」

幼馴染「う、うん」

男「…」

幼馴染「なんて送るの?」

ナツキから隠すように背をむけてメールの文面を考える。
肩越しに覗き込もうとしてくる邪魔な頭をアイアンクローで抑えて、
俺はおばさん宛に返信した。

男(ナツキは俺が責任をもって預かりますので、心配しないでください…っと)

男(おばさんに送るにしては堅いか? まぁいいか)

幼馴染「いいもーんどうせあとでみるからーー! ボクの携帯だし」

男「送信履歴消しとこ」

幼馴染「あほーーーあほーーー」ジタバタ

幼馴染「あっ、アッキーよりって最後に書いた?」

男「…忘れてた。まぁわかるだろ」




159: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:34:21.35 ID:16WlYG5zo


幼馴染「で、結局とめてくれるんだよね?」

男「しかたないだろ。蹴りだしてもお前宿泊費なんてもってないし」

幼馴染「やったー。お泊りは久々だね」

男「…だな。寝るの姉ちゃんの部屋でいいか?」

幼馴染「えーそれはさすがに悪いよ」

幼馴染「ボクはその辺で雑魚寝でいいよー」

男「そうはいかないだろ…一応女なのに」

幼馴染「一応ね!」

男「確か来客用のというか、ほぼお前専用となった布団があったはずだけど…」

果たしてこの無駄に広い家のどこにしまってあるのか。
ナツキが泊まっていた頃はすべて俺の母親が準備をしていたので完全に俺の管轄外だ。
この時間から家中の捜索を考えると、もはやキャッチボールどころではなくなってしまった。

男「悪いナツキ、ちょっと探すから遊ぶのはあとで」

幼馴染「うん! いいよ」

幼馴染「ねっ、ねっ、泊めてくれるんだからボクなんでも手伝う!」

幼馴染「なんかやることない!?」




160: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:36:00.01 ID:16WlYG5zo


男「そうだな…じゃあ風呂でも洗っておいてくれるか」

男「風呂場にスポンジと洗剤スプレーあるから」

男「浴槽だけじゃなくて蓋もな。できれば洗い場の床も」

幼馴染「結構がっつり頼むね」

男「浴槽だけでもいいけど」

幼馴染「いいよ。ボクにお任せあれ」

男「探すのにそれくらい時間かかりそうなんだよ。悪いな」

幼馴染「いってらっしゃーい」



【風呂場】

ゴシゴシ

幼馴染「広い家って大変だなぁ」

幼馴染「んしょ…んしょ…。ふぅー…アッキーは毎日これやってるのかぁ」

幼馴染「ちっちゃいころから思ってたけどお風呂ふるすぎーひろすぎー」

ゴシゴシ




161: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:39:24.48 ID:16WlYG5zo


幼馴染(アッキーの家でシャワー借りるくらいはあったけど、泊まってお風呂入るのはひさしぶりだなぁ…)

幼馴染(昔よく一緒に入ったなぁ…)

幼馴染(たしかボクがバタ足の練習はじめて、お姉ちゃんに怒られたんだっけ)

幼馴染(なつかしいなー)

幼馴染(もう何年一緒に入ってないんだろう)

幼馴染(子供だったら3人入っても余裕の広さだなー)

幼馴染(大人になったボクたちならどうなんだろう…さすがに無理かな?)

幼馴染(…って、入るわけないじゃんっ!)ブンブン

ゴシゴシ

幼馴染「…ここにボクが浸かって、こっちにアッキーで…」

幼馴染「あぁぁあぁッ、入らないってば。もういい大人なんだから恥ずかしいよ」ブンブン

幼馴染「…ぅ」

幼馴染(今日のアッキー…なんだかいつもより優しかったな)

幼馴染(ううん、ここ最近ずっと優しい…気がする。なんでだろ)

幼馴染「えへへへへ」

ゴシゴシ♪




162: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:41:00.29 ID:16WlYG5zo

 


   ・   ・   ・

 
ゴシゴシ

幼馴染「あ゙ーー暑っ」

幼馴染「ここ蒸し蒸ししすぎ…窓開けても風入ってこないじゃん!」

幼馴染「うー、目に汗が……痛っ、いたた」

幼馴染(…まだ時間大丈夫だよね。結構かかるとか言ってたし)

幼馴染「…」スルリ

幼馴染(さっぱりしたいし、浴槽洗うついでにシャワー借りちゃお)

幼馴染(服は…まぁこの辺に置いといたら濡れないかな)

キュッ
シャアアアア……

幼馴染「あーーきもちーー♥」

幼馴染「やーーサイコー♥」

幼馴染「汗をかいたあとの冷たいシャワー…幸せ〜♥」

幼馴染「あがったらかき氷たべよーーっと♪」


シャァァァァ―――




163: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:45:00.01 ID:16WlYG5zo

 
その頃、俺は使っていない物置部屋の押入れの奥深くに封印されたナツキ布団セットをようやく見つけ出した。
特にほこりもかぶっておらず、おかしな臭いもしない。
シーツを付け替えれば今日からでも使えそうだ。

男「問題があるとすれば…」

どう見てもジュニアサイズなことだ。


男(そうか。もう使わないからこんなとこにしまっていたのか…)

男(小さい…よな…うん)

男(まぁちょっとくらいはみ出てもいいか。夏だし…どうせナツキだし…)

最悪腹さえ隠して寝れば風邪ひくことはないだろう。
足りない部分にはタオルかクッションでも敷いておけばいい。

男「よし、報告報告」

半日歩いて疲れていたわりにはやけに足取りが軽かった。
布団をみつけた達成感に満たされている。

それに加えて、もしかしたら俺は内心、ナツキが泊まることを楽しみにしているのかもしれない。
なんていったって久しぶりのことだ。
夏休みなので当然明日も休みで夜通したくさん遊べる。


男(今晩なにすっかなー。そうだ、去年ユウジと買ったあのゲームやらせたらあいつ絶対おもしろいことになるな)

男(晩飯は冷蔵庫にあるものでつくるなら生姜焼き? 冷しゃぶでもいいな、キュウリあったっけ)

男(どのみち2人分なら買い物いかなきゃな)




164: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:48:27.24 ID:16WlYG5zo


ちいさくて軽い布団セットを抱えたまま浴室へ向かう。
おもいっきり広げてナツキに見せてやろう。

男「あいつの反応予想」

男「あーーそれなつかしーー。よくのこしてたねー」

男「だな。間違いない」

きっと笑顔で喜ぶだろうと期待を込める。
そして浴室の扉を開いた。


ガラガラッ
シャァァッァァ――


男「おいナツキ! あったぞ見つかった……ぞ」

男「あ゙……」

幼馴染「……ふぇ?」

視界に映ったのは風呂掃除に励むナツキの姿ではなかった。
そこにいたのは一糸まとわぬ姿で立ちつくし、シャワーを浴びる少女。
濡れた肌が水を弾き、なまめかしく光を反射している。

こちらに気づいたナツキは目を丸くして固まってしまっていた。


男「うわっ!」

男(やっちまった! な、なんでシャワー浴びてんだよっ!)

幼馴染「うぎゃああああっ! ばかエッチ!!」

男「ナツキっ、やめ―――――」

そして扉をしめるよりも早く、シャワーによる激しい水流の攻撃が飛んできた。

男「うあっ」

幼馴染「うああああああっ!!」

結果、布団はぐっしょり。俺はげっそり。
ナツキは怒りながら半泣きといった誰も喜ばない悲劇を生んでしまった。

 




165: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:53:15.14 ID:16WlYG5zo

 
【居間】



男(俺が悪かったのか?)

男(いや…まさか中で服を脱いでるなんておもわないだろ…)

男(普通シャワー浴びるなら外に服をだして……くそっ、もう何を考えても後の祭りか!)

幼馴染「…」シャクシャク

男「ナツキ、うまい?」

幼馴染「…」シャクシャク

男「練乳もつくってみたから…ほしかったら好きなだけかけろよな。あっ、晩飯お前の好きなもんつくってやるぞ」

男「それ食ったらキャッチボールするか? まだ日が落ちるまで少しはできるぞ?」

幼馴染「…」シャクシャク

男「そうだ布団濡れちゃったから今晩どうしようか」

男「いまからじゃ乾かないよな……やっぱり姉ちゃんの部屋借りるか」

幼馴染「…」シャクシャク

男「なぁ悪かったって…見てないからほんと、湯気とか腕でかくれてたし」

幼馴染「…」シャクシャク

男「ごめん。口きいてくれ」

幼馴染「…ふーんだ。アッキーのエッチ。ボクが暑くなってシャワー浴びたくなるの計算してたんでしょ」

男「するかっ!」


俺は脳裏に焼き付いたナツキのヌードをふりはらいながら、メロン味のかき氷をちびちびと口に運ぶ。
時々ナツキの様子をうかがうと、普段の呆けた様子からは考えられない剣幕で睨みつけられた。
その後しばらく彼女の機嫌が治ることはなかった。




166: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/02(水) 22:56:12.77 ID:16WlYG5zo

 


   ・    ・    ・



幼馴染(なんだろ…たべてもたべても体の芯が熱いな…)

幼馴染(風邪ひいちゃったのかな?)

幼馴染(はぁ…今日だけでスカートも水着も裸も見られちゃった…)

幼馴染(なんとも思ってない…んだよね…?)

幼馴染(アッキーにとってボクは兄弟みたいなもんだもんね…)

男「にしてもお前さ、その…」

幼馴染「!」

男「上半身のわりにずいぶん脚ふとくなったよな。脚というかケツ周り?」

男「なんていうかすごく安産がっ―――」

幼馴染「きーーっ!」ボカッ

男「いだだだっ」

男(褒めようとおもったのに)

幼馴染(…アッキーのバカバカバカ)シャクシャクシャクシャク


ナツキとの長い一日は続く。


第四話<お泊り>つづく

  




181: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:03:05.16 ID:p2E8hmJ2o

第四話<お泊り>つづき




幼馴染「ごちそうさま〜♪」


日が暮れるまで軽くキャッチボールをした後、わざわざ買い出しに行って夕食で好物を振る舞うと、
ナツキはすっかりごきげんに戻って笑顔を見せてくれた。
機嫌が直ってよかったと思いつつも、俺は精神的にも肉体的にも疲労困憊だ。


幼馴染「はーおいしかった」

幼馴染「また作ってね」

男「んー。食器洗ってくれるか」

幼馴染「オッケー」

下手くそな鼻歌を歌いながら台所で食器を洗うナツキを尻目に、俺はある準備を始める。

男「今日は夜更かしできるからな」

居間のテレビの前にゲーム機をつなぎ、起動してソフトを挿入する。
昨年の夏にユウジと金を出し合って買った人気のホラーゲームだ。
俺たちは買ったその日に徹夜でクリアしてしまったが、ナツキの前でプレイしたことは一度もない。




182: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:05:41.39 ID:p2E8hmJ2o


洗い物を終えたナツキを手招きして、自分の隣に敷いた座布団に座らせる。

幼馴染「ん? 何かするの?」

男「おう。じゃ電気消すぞ」

幼馴染「え…?」

部屋を暗くし、コントローラーのボタンを押すと、おどろおどろしいBGMとともにハイクオリティな3D技術で作られた真夜中の廃村が映しだされた。

幼馴染「い゙っ!? こ、これ…ホラービデオ?」

男「ゲームだって。ほら」

幼馴染「ゲーム!?」

スティック型のコントローラーを手渡す。
プレイヤーはこのコントローラーを懐中電灯に見立て、主人公視点で薄暗い廃村をさまよう体感型ホラーゲームだ。

ゲームシステムはリアルな不気味さでプレイヤーの心の底の恐怖心を煽る作りになっている。
よくありがちな化物がびゅんびゅん飛び出してきて撃退していくような、ホラーと称したアクションゲームではない。

プレイヤーはほとんど無抵抗なまま幽霊から逃げまわり、時には謎をときながら物語の真実へと迫っていく。


幼馴染「やっ、やだよこんなの!」




183: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:07:17.02 ID:p2E8hmJ2o


幼馴染「ぜっっっったい怖いじゃん!」

男「怖かったぞ」

幼馴染「ずるい!アッキープレイ済みなの!?」

男「一年前に一回やっただけだからあんまり内容は覚えてない」

男「ほら。コントローラーの先っちょにセンサーついてるから、画面に向けて」

男「ゲームスタートの所にカーソル合わせてAボタン」

幼馴染「…!」フルフル

男「なぁにぃー? お前びびってんのー? ナツキちゃんびびってんのーー?」

幼馴染「いやっ…そういうわけじゃないケド」

テレビの灯りに映しだされたナツキの顔はあきらかにひきつっていて、誰がどうみてもビビっていた。
さきまであぐらをかいてどっしりと座っていたのに、なぜかいまは座り直してぴっちり膝を閉じてあひる座りしているのも滑稽だ。

男「とりあえずやってみようぜ。おもしろさは保証するからさ」

幼馴染「う、うん…」




184: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:10:47.80 ID:p2E8hmJ2o


男「カーソルぷるぷるしてるぞ」

幼馴染「うるさいなぁ」

男「スタート」

オープニング映像とともにゲームがはじまった。
プレイヤーは廃村に迷い込んだ主人公になって、薄暗い林の中を懐中電灯一本を頼りに進んでいく。

幼馴染「あぁぁぁ…歩く音がリアルすぎるよぅ」

枯れ葉を踏みしめる音や、木々のざわめき、音響に定評がある。
数歩歩くたびにゲーム内で左右をキョロキョロと見渡して、恐る恐る前に進む。

幼馴染「怖いよ…ほんとにボクが歩いてるみたい…」

幼馴染「ひゃっ、いまなんかいなかった?」

男「鳥」

幼馴染「……この声なに…」

男「カエル」

幼馴染「…お化け、いるの…? どこ…」

このように細かい演出で没入感を増すようにリアルにつくられているのがホラーゲームファンにウケている。
真っ暗な部屋で遊ぶのが醍醐味だ。




185: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:13:19.73 ID:p2E8hmJ2o


幼馴染「ここまっすぐ…?」

男「…」

幼馴染「違うの? まっすぐでいいの…? わかんない」

男「…」

幼馴染「えーなんで何も言ってくれないの…」

幼馴染「ここまっすぐで合ってる? いきなり死んだりしない?」

男「なぁ探索ゲームなのに答えおしえちゃっていいのか? あちこちさまよって探すのもゲームの楽しみの一つだぞ?」

幼馴染「いいよぉ…だってボクゲームあんま得意じゃないもん」

男「見ろよ背景よく出来てるだろ? 蜘蛛の巣すげぇリアル」

男「懐中電灯で照らしていろいろ観察するのが楽しいんだよ」

幼馴染「そういうのいいってばぁ…」

男「じゃあその民家入って」

幼馴染「えーー。やだよ…」

男「そこ進まないと次行けない」

幼馴染「うーー…あーやだ、開けたくない。ほんとやだ。許して〜〜〜」


もうすぐ霊との初遭遇になる。
最初の霊は好戦的ではなく、こっちの目の前を横切り、あとはただジーっと恨めしそうに見つめているだけだ。
プレイヤーはその男性の霊の側まで自ら歩み寄り、彼のつぶやく言葉を聞き取らなければならない。
それをヒントに屋根裏部屋への階段を見つけ出し、隠された手記を探しだす。

だがその手記を手に入れると…。




186: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:15:56.19 ID:p2E8hmJ2o


ナツキが意を決して民家の戸をあける。
なぜか片手を顔の前にもってきて、片目を隠すようにテレビと距離をとっている。


カチャ…キィ…


幼馴染「…うわぁ…ボロボロ…」

幼馴染「外より暗い…」

幼馴染「こんにちは…おじゃまします…」

幼馴染「誰もいませんか…入っていいですか…」

俺はつい吹き出しそうになった。
どこまでこいつは感情移入しているのか、何度か挨拶して返事がないことを確かめるとようやく室内の探索をはじめた。

男(あくまでゲームだぞナツキ! がんばれ)


幼馴染「ええっと…」

幼馴染「なんも調べられそうなとこない…」

ナツキは恐る恐る1階の部屋を調べていく。
1階の一番奥の部屋を調べ終えるとフラグが立ち、居間に幽霊が現れるのだが、
ナツキはゲームに疎いので、どういう行動を取ればゲームが進展するのかあまり検討がついていないようだ。

かれこれ3度も同じタンスを開いてやっぱりないなぁなどと言ってトンチンカンな行動をとり続けている。
あげくの果てにはなにもないと言い切り、家から出ていこうとする。




187: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:18:01.31 ID:p2E8hmJ2o



男(鈍いやつのプレイみてるとイライラしてくるな…)

男(まだ調べてない部屋あるだろ!)

幼馴染「何もなかったよぉ…ちがうんじゃないの…」

男「ナツキ、民家の中全部見て回ったか」

幼馴染「えーー? たぶん」

男「一応風呂やトイレもあるんだぞあの家、あと奥に寝室」

幼馴染「あー。そっか…見逃してた。でもまた入るの嫌だなぁ…」

男「ちなみに俺とユウジはここまで十分もかからなかった。お前はもう三十分以上経つぞ」

幼馴染「むぐ…」

幼馴染「しかたないなぁ…ていうか幽霊でないじゃん」

幼馴染「ほんとに怖いのかなぁ?」

幼馴染「気味がわるいだけで、怖いという感じではないんだけど……」

男(最初めちゃくちゃびびってたくせに)

だんだんナツキは余裕をぶっこきはじめる。
これが罠だ。
プレイヤーがだんだん操作に慣れてきて、なんだこのゲーム実は怖くないんじゃないかと高をくくるタイミングで恐怖が訪れる。




188: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:21:05.79 ID:p2E8hmJ2o


幼馴染「ここトイレだよね。うわ古っ、和式じゃん」

幼馴染「…アッキーの家のトイレっぽいね」

男「うるせえこんな汚くねぇよ」

幼馴染「お風呂は…っと、うーんなんもない…」

男「じゃあ後一部屋だな。って教えちゃってるじゃん」

幼馴染「いいじゃんいいじゃん。協力してプレイしよ」

男「俺クリア済みです…」


それから奥の部屋になにもないことを確認する。

幼馴染「あれぇなーんもないよ…? ほんとにここ最初に来る場所であってたの?」

男「そうだなー。じゃあ戻るかー」

男(よし、振り返れ)

幼馴染「うん、そうし―――ふぎゃああっ!」

振り返ると視界を一瞬青白い影が横切った。
その影はふらふらと室内を漂い、最終的に入り口近くに立ち尽くす。

男(わかってたのにちょっとビビった)

幼馴染「あ…あ…アレ……いま…青い影が…ぁぁ、ぁ…」

幼馴染「アッキーも見えてる…? いまね、一瞬青い影が…ボクの前に…」

幼馴染「見た? ボク霊感つよいから…」

男(これはゲームだぞナツキ!)




189: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:24:24.88 ID:p2E8hmJ2o


幼馴染「ゆ、幽霊…かな? こっち見てる…」

幼馴染「え〜〜、なにあの人…こっち見てるって…」

幼馴染「…帰れっていってるのかな? 勝手に入ったからかな…もうやだぁ…」

男「わかったわかったから操作しろ」

幼馴染「ちょ…そこにずっといたら…ボク帰れないんだけど…」

男「帰らせないために塞いでるんじゃないのか」

幼馴染「早くどっかいってくれないかなぁ…」

男「……」

ナツキは霊と一定の距離を保ったままうろうろする。
時々青い姿が視界に入ってしまい、キャッと小さく悲鳴をあげる。

もちろんその行動では何もフラグは発生せずゲームは進展しない。
近づかなければならないのだ。
実に察しが悪い。


男(だめだこいつ向いてないわ…)

ナツキのおもしろい反応でも見ようかとはじめたことだが、1時間足らず見ているだけの俺のイライラはピークを迎えそうだ。
しかし幽霊に会釈したり恐る恐る声をかけたりするナツキのバカな姿はすこしだけ可愛く思えた。

幼馴染「キミどうして死んじゃったの?」

幼馴染「なんかやなことあったのかなぁ……」

男(だからゲームだってば)

男「ちゃんと相手の話を聞くならもっと近づいたほうがいいんじゃないか」

幼馴染「う、うん…」




190: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:28:13.58 ID:p2E8hmJ2o


幽霊に近づくと、コントローラーについたスピーカー部から霊がしゃべる声が流れる仕組みになっている。

幼馴染「ひゃあっ!」

案の定ナツキが飛び上がるように驚き、固まってしまった。

幼馴染「……あ、あ…」

男「大丈夫。そういうゲームってだけだから」

男「コントローラーに耳あてて聞いてみ」


幼馴染「……。あ…風呂の天井っていってる!」

幼馴染「…ねぇ聞いた? お風呂の天井になにかありそう!」

男「ようやく進展したか」

幼馴染「お風呂こっちだよね…」

幼馴染「ええと…あーここの天井の蓋開きそう」

男「いいぞ」

幼馴染「部屋があるよ。なんで? こんな蓋一枚じゃこの部屋湿気るよ」

男(それは知らん)

幼馴染「んと…暗いなぁ…」

幼馴染「日記帳みたいなの置いてある」

幼馴染「これかな!」

ナツキはゲーム攻略の鍵となる手記をようやく見つけた。
しかしそれと同時に屋根裏部屋の奥から、髪の長い女がゆっくりと浮かび上がる、

幼馴染「え…」




191: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:29:37.07 ID:p2E8hmJ2o


そしてその女は恐ろしい形相でプレイヤーめがけて這うように迫ってきた。

幼馴染「あああーーっ!!!!」

幼馴染「いや〜〜〜っ!!!」ガバッ

男「おわっ」


ナツキはゲーム内で逃走することを忘れて、コントローラーを放り投げて俺の胸元に抱きついてきた。
むにゅりとしたやわらかい感触。
突然目の前にナツキの頭が現れたこの状況に俺は一瞬混乱した。

男「なっ、ナツキ…!」

幼馴染「ああああっ〜〜っ! あああっーー!」

顔をうずめたままテレビ画面を指さしてナツキは泣き叫ぶ。

男「おいうるさいって…てか逃げなきゃやられるぞ」

幼馴染「あ゙ーーもう無理ぃーー!!」

男「まだ一章だぞっ、おいナツキっ」

結局逃げることもなくプレイヤーは霊に追いつかれてGAMEOVER。
タイトル画面に強制的に戻されたゲームを俺はそっと消す。
心臓がばくばくとうるさい。


幼馴染「……ゔっ、う…」

男「電気つけるから、ちょっと離れてくれるか」

幼馴染「うっ…うう…」

男「悪かったって。こんなにビビると思わなかったんだよ」

幼馴染「…ぐす」




192: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:31:56.51 ID:p2E8hmJ2o


男「お前ならケラケラ笑いながら遊ぶかとおもったのに…」

予想を遥かに超えてナツキは怖がっていた。
長年一緒に過ごしてきたが、ここまで怖がりだとは思わなかった。
いまだすすり泣く声が聞こえ、ぎゅうっと背中にまわされた腕の力が弱まることはない。
ナツキの体温が伝わって、体がのぼせたように熱くなってくる。

男「ごめん」

幼馴染「…うう…うう…」

男「まじごめん」

幼馴染「ボクもごめん」

男「なんでお前があやまるんだよ」

幼馴染「ぐす…鼻水ついちゃった。だから…顔あげたくない…」

男「……そのまま俺のシャツで拭いていいから。どうせ洗濯するし…」

男「とりあえず立っていいか。いつまでも暗い部屋にいないで電気つけようぜ」

目の前の黒髪を2,3回撫でた。
頭はやや汗ばんでいて、撫でるとふんわりとナツキの匂いがした。

幼馴染「ゔん……ずぴっ」


部屋が明るさを取り戻す。
ナツキはティッシュで鼻と目元をぬぐいながらバツの悪そうな顔をしていた。

幼馴染「びっくりした」

男「俺もびっくりした…ゲームよりびっくりした…」

幼馴染「ごめんね急にだきついちゃって」




193: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:34:13.95 ID:p2E8hmJ2o


幼馴染「……」

ナツキは座り込んだまま何も話さない。
これまでナツキと会話がなくなっても気まずいと思ったことはあまりなかったのだが、いまは妙に空気が重い。

男「…お互い変な汗かいちゃっただろな」

幼馴染「…うん」

ナツキが抱きついてきた時の匂いが蘇る。
確かにあのとき、すごく女の子の甘酸っぱい匂いがした。
ナツキの汗の匂いは俺は昔から結構好きかもしれない。


男「風呂沸いてるから先に入ってこいよ」

幼馴染「……やだ」

男「俺が先でいいのか?」

幼馴染「だめ」

ナツキは立ち上がろうとした俺のジャージをぎゅっと掴んで制止した。

男「なんだよ…」

幼馴染「アッキーの家のお風呂……ボク怖くてひとりで入れない…」

男「………へ?」

幼馴染「だ、だって! あんな怖い思いしたあとに、ここのおんぼろのお風呂だよ!?」

幼馴染「絶対お化けでるじゃん!」

男「出ないって…ゲームと現実ごちゃまぜにするなよ」




195: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:37:14.16 ID:p2E8hmJ2o


幼馴染「やだボクお風呂入らないっ」

男「あっそ。じゃあ俺入ってくるから」

幼馴染「…」ガシ

男「なん…なんだよ…」

幼馴染「こんな広い家にひとりにしないでよぉ……」

男(こいつは……)

なんとも情けない。
それとも俺が慣れてしまっているだけで、我が家はそんなに薄気味悪くて怖いのだろうか。
確かにいわれてみれば、使っていない部屋や納屋の寂れ具合はあのゲームに登場してもおかしくない。


男「じゃあどうしろっていうんだよ。夏場に風呂入らないなんて俺絶対嫌だからな」

男「お前もだぞ。汗だくなままでうちの布団で寝るなよな」

幼馴染「……ぃ、いっしょに…」

幼馴染「一緒に入って…ボクと…」

男「…」

耳を疑った。
ナツキはかすれそうなほど小さな声をふりしぼって一緒に入ってと言った。
幼馴染とはいえ年頃の男女が一緒に風呂なんて発想は普通は無い。
しかしナツキはそうしなければならない程、俺にすがりつくしかない程に精神的に追いつめられているようだ。

そうしてしまった原因はもちろん俺だ。
俺としては悪ふざけのつもりは一切なく、純粋にゲームを遊びたかっただけだが、ナツキの怖がり方があまりに誤算だった。




196: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/04(金) 22:40:47.40 ID:p2E8hmJ2o


男「あのなぁ…俺とお前何歳だよ…ありえないだろ」

幼馴染「うん…だよね…」

男「却下」

幼馴染「…」シュン

男「ていうか恥ずかしくないのかよ」

幼馴染「恥ずかしいけど…、どうせ夕方にアッキーに見られちゃったもん」

男「ゔ…」

唐突にグサリと胸に杭が打ち込まれる。
数時間前のことなので、まだしっかりと覚えていたようだ。

幼馴染「い、いやだよね…ボクとお風呂なんていまさら」

幼馴染「最後に一緒に入ったの…ちっちゃい頃だもんね…」

男「いやじゃねーけど…」

幼馴染「ほんと…?」

男「あっ…」

つい本音が漏れてしまった。
恥ずかしいことを除けば、ナツキと風呂に入るのはそこまで嫌じゃない。
しかしそれ以上に後ろめたさがあった。


男(幼馴染の成長した裸を見ちゃっていいのか?)

男(俺たちは裸のお付き合いをするような関係なのか!?)

幼馴染「ボク、今日買った水着きる…それで入る」

幼馴染「だから一緒に入ってほしいなぁ…ダメ?」

男「あ…それならいいか」


よくない気もするがナツキとの長い一日は続く。


第四話<お泊り>つづく

 




208: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 22:21:31.28 ID:TYbJ54zoo

第四話<お泊り>つづき




  ・  ・  ・




男「じゃ俺先入るから、お前も水着に着替えたら入ってこいよ」

幼馴染「うん」

シャワーでさっと身体を流し、湯船に浸かって待つ。

浴室ドアに映るナツキのぼやけたシルエット。
いままさに服を脱いで水着へと着替えている様子が影となってはっきりとわかる。

男(我慢できっかなー…)

心配なのは自分の下半身だった。
本当は海パンを部屋までとりにいきたかったが、怖がるナツキを一人にすることが躊躇われたので、結局諦めていまはタオル一枚巻いているだけだ。
隆起してしまったらごまかしようもない。
まさかナツキ相手に反応はしないだろうとおもっていたが、さきほど抱き付かれた時は理性を保つのがぎりぎりだった。

そして悶々とした気持ちで待っているとようやく二つ折りのドアがカタカタと開かれる。


幼馴染「あ…もうつかってるー」

男「俺は水着きてないからな」

幼馴染「えへへ、大丈夫見ないから。だからボクのこともジロジロみないでね」

男「入浴剤いれたからみえねーよ」




209: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 22:23:40.57 ID:TYbJ54zoo


幼馴染「……」キョロキョロ

男「なにも出ないって。ゲームだろゲーム」

幼馴染「でも、水場には霊が集まるってよく言うし…」

男「お前そんなオカルト信じてるのかよ」

幼馴染「アッキーの家古いから、いっぱい住み着いていそう…」

男「…失礼な。早くシャワー浴びたら」

幼馴染「…う、うん…」

水着姿のナツキが椅子に腰掛けて蛇口をひねる。
うちのシャワーの水栓はレバー1つでお手軽にお湯を出せる混合水栓タイプではない。
古い銭湯にありがちな、水と熱湯の栓を2つ同時にひねって自分で温度を調節する昔ながらの物だ。
ちょうどいい温度にするにはすこしだけコツがいる。


幼馴染「んー…」

男「お前シャワー浴びるときやってんじゃないのか」

幼馴染「いつも水だよ」

男「そういえばあの時冷たかったな」

幼馴染「〜〜〜っ! お、おもいだしちゃだめ! また水かけちゃうよ」

男「あ、あぁ悪い……」

幼馴染「ねー、これどうやっても熱くなりすぎるんだけど…昔は出来たのになぁ…」キュッ キュッ




210: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 22:25:38.92 ID:TYbJ54zoo


苦戦してようやくナツキはぬるま湯を浴びて身体を流すことに成功した。
そしていよいよ湯船の縁へと脚をかける。
水に濡れたむき出しのむっちりしたふとももがいやらしい。


幼馴染「いいの?」

男「おう…入れよ」

ナツキが湯船にゆっくり入ってきた。
2人分の体積でお湯が大量にあふれて排水口へと流れていく。

幼馴染「わはー…! もったいなー」

男「……」

幼馴染「みてー…すっごいあふれる」

男(水着だから大丈夫水着だから大丈夫水着だから―――)

幼馴染「…?」

目の前にいる女はただの幼馴染だと自分に言い聞かせて、俺はそっぽを向いた。
夕方にみた衝撃的な姿がどうしても脳裏に蘇ってしまう。

幼馴染「なーんか狭いね」

男「…当たり前だろ。ガキじゃねぇんだから」

幼馴染「足のばせない」

男「文句言うなよ」




211: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 22:28:45.46 ID:TYbJ54zoo


幼馴染「…えへへ。懐かしくてなんか嬉しくなっちゃった」

男「あ、そう」

幼馴染「……むぅ。えい」パシャッ

男「…っ。なにすんだよ」

幼馴染「なんでそんなにふてくされてるの」

幼馴染「ボクやっぱり迷惑だった? そんなに一緒に入るの嫌?」

男「ち、ちが……わかんねぇかなぁお前…」

幼馴染「…?」

男「照れくさいからに決まってるだろ!」

手の平で濁り湯を掬い、ナツキの顔面にお返しする。

幼馴染「わぷっ…やったなぁ」

男「お前が先にしかけてきたんだろ」

幼馴染「…せっかく久しぶりなんだし、勝負する?」

男「溺れさせてやる」

幼いころ一緒に風呂に入った時によくやっていたどちらかがギブアップするまで続くお湯のぶっかけあい。
騒ぐたびに、母さんが飛んできて「お湯がなくなるでしょ!」とよく雷が落ちたものだ。

成長して大きくなった手で繰り広げられる戦いは以前とは比べ物にならない程激しかった。。

 




212: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 22:33:32.95 ID:TYbJ54zoo



男「げほっ、げほ…鼻入った。タンマ」

幼馴染「はいタンマしたからボクの勝ちー!」

男「手加減…してやったんだよ!」

本音を語ると、ナツキが水を飛ばすたびに水面で跳ねる胸元や、つるつるで綺麗なわきに目を奪われていた。
そんなに暴れたらポロリしてしまうのではないかと気が気でなかった。

男(いくらうちが広い湯船でも、これをするには流石にもう狭いな…今後はやめておこう)

またナツキと入る機会があるかは不明だ。おそらくないだろう。

幼馴染「ふー、そろそろ体あらってシャンプーしよ」

幼馴染「負け犬さんお先にどうぞ」

男「…いやお前が先でいいぞ」

幼馴染「なんでー」

男「客だから。なにごとの優先させるのがうちのしきたり」

幼馴染「へー。はじめて聞いた」

男(お前のせいで上がれないんだよ!)

濁り湯の入浴剤がなければ一発で気づかれるほど、俺の本能は荒ぶっていた。
ナツキ相手にどうしてという困惑と、敗北感が渦巻いている。

考えてみれば、いくらナツキが色気のない性格であっても、体つきは立派な女子校生だ。
お互いほとんど裸のような格好で、肌のふれあいそうな距離にいたらこうもなってしまうのは自然なことだった。 




213: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 22:37:17.82 ID:TYbJ54zoo


洗い場でナツキが石鹸をスポンジネットでくるんで泡立てている。
みるみるうちにふわふわの泡だらけになり、それを身体にまとってゆっくりと手足をこすり始めた。

幼馴染「〜♪゙ 〜♪゙」

男(へったくそな鼻歌。つうか体から洗うのかよ。普通頭だろ)

幼馴染「〜♪゙  あ……!」

男「何だよ。べ、別に見てないからな」

幼馴染「違うよ〜、ここハンドタオルないの?」

男「は?」

幼馴染「ボク背中、タオルないと洗えない」

男「あ、あーー…手で洗えば?」

幼馴染「うーん…肩痛めてから後ろうまく届かなくなっちゃって…」

男「…そうか。すまんタオルは水カビ臭くなるから風呂場には置いてない…」

男「お前の分も持って入ったらよかったな」

幼馴染「ならしかたないかー」

ナツキはリトルリーグ時代ピッチャーとして活躍しすぎて、肩を壊した。
それがきっかけで大好きな野球を続けることが出来なくなった。
最近は少ない球数限定で普通にキャッチボールをしているから、とくに大きな心配はしていなかったのだが、
怪我はおもわぬ形で後遺症となっていたようだ。


男(ナツキをとめてやれなかったのは俺の責任だ……)

幼馴染「背中ながしてー」

男「えぇ…」

男(とんでもないことをあっけらかんといいやがって)




214: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 22:42:15.06 ID:TYbJ54zoo


幼馴染「だめ?」

男「…」

ナツキは一生懸命背中に手をのばしながらわずかに顔をしかめる。
肩関節の可動域がせまくなって、無理に伸ばすと痛みが走るのかもしれない。

男「む、無理すんな!」

勢いよく湯船から上がった俺は、ナツキの背後に膝を立てて座る。
背中越しにスポンジネットをうけとって、すくった泡をゆっくりと綺麗な背中にふわりと乗せた。
大きな泡の塊が重力に従って、ずりずりと背中のラインを滑り落ちていく。
やがてビキニパンツとお尻の隙間にすぅっと溶けるように入り込んでいった。


幼馴染「うひっ。変なとこはさわらないでね?」

男「泡のっけただけだろ。お前こそ変な声はだすなよ!!!」

幼馴染「ご、ごめ…。えへへ」


試着室で見た背中にすらドキッとしたのに、それがいま濡れたことにより艶めかしさを遥かに増して目の前にある。
ナツキは異性に対しての警戒心を持っていないのだろうか。
俺が欲望のままに腕をのばせば、背中だけでなく胸や脚、ナツキの大事な部分にだって触れることができる。


幼馴染「…アッキー? どうしたのー」

ナツキが早く早くと体を揺らし、それに伴って目の前でぷらぷらとビキニ紐の結び目が左右に振れる。
この結び目を説いてしまえば、ナツキは簡単にむき出しになってしまう。


男(俺男なんだからな…お前無防備すぎるぞ)

相手に信頼されているという心地よさとは裏腹に、全く男扱いされていないのではという不安がよぎった。

男「ほんとに洗うからな。後悔すんなよ」

幼馴染「いいよーはやくして」




215: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 22:46:29.08 ID:TYbJ54zoo

 
いよいよ手のひらでナツキの素肌に触れる。
腕をつかんだり肩をタップしたり尻を蹴ったりというボディタッチはたまにあるが、
こうして手のひらでじっくりと触れる機会などない。

男(別にやましいことなんてない…身体あらうだけなんだから)

しかし俺は男で、目の前の幼馴染は女。
それも一般的にみて可愛い部類……だと思う。

男(昔から人気あるもんな。うん…)

肌はこんなにつやつやですべすべで、水を弾く張りがある。
こんな危険なものを直接触っていてはあっというまに理性が限界を迎えそうだ。

細い背中を撫でるように全体に泡を行き届かせる。

幼馴染「んひっ」

男「変な声ださないって約束したよな?」

幼馴染「うひっ、あはは、なんか…っ、思ったよりくすぐったいから……ねー」

男「こっちみるな!」

振り返ろうとしたナツキの後頭部をつかんで強引に前を向かせる。
俺のいまの姿を見られるわけにはいかない。

俺は深呼吸を繰り返しながら、無心でナツキの背中を洗い続けた。


幼馴染「ん…ん…?」

幼馴染「あのさアッキー、背中の紐邪魔なら外していいよ…?」

男「え」

幼馴染「さっきから何回かひっかかってるでしょ」

男「いや…そんなことないけど」

幼馴染「ボク前おさえてるから大丈夫!」




216: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 22:49:53.88 ID:TYbJ54zoo



男「…」

思わず生唾を飲み込んだ。

男(なにをしていいって?)

男(これか? これをほどいていいのか?)

それは魅力的な提案だった。

幼馴染「………と、とらないならいいけど」

男「わかった。とる」

一生に一度あるかないかの機会だ。
俺はためらいなく目の前に垂れ下がる結び目に指をかけて、ひっぱった。
するするりと紐が解かれて、左右にわかれる。

幼馴染「はうっ」

はらりと紐が垂れ下がると同時に、ナツキは胸をかばいながら少し前かがみに背中を丸める。
丸まった背中からわずかに背骨が浮き出ている。
ナツキのしぐさも相まって先よりもずっといやらしく見えた。




217: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 22:51:53.22 ID:TYbJ54zoo


男「ほんとにほどいてよかったのか」

幼馴染「い、いいから…ボクがイイって言ってんだからいいの!」

男「あ、そう」

ペタッ

幼馴染「あぁぅ…んぅ…」

スリスリ…

男「つーかもうだいたい洗えてるんだけどな」

男「こんないつまでも背中洗う意味あんのかよ」

幼馴染「だっていつもはボク、タオルでゴシゴシするから、泡だけじゃすっきりしないんだもん」

男「じゃあもうちょい強めに? あんまりこするのは肌によくないんだけどな」

ごしごし

幼馴染「…っ、あぁ…うぅん…くすぐったい」

ナツキの肌はすべすべでもちもちだった。
このままずっと触っていたいと思った。
背中だけでなく、もっといろんな場所に触ってみたい。
ナツキがどんな反応をするのか、いちいち確認したい。

叶わない欲望を押しとどめて俺は洗い続ける。

 




219: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 22:56:17.58 ID:TYbJ54zoo


 

  ・    ・    ・



幼馴染「ありがとー。すっきりした」

男(よく耐えた。俺偉い…)

幼馴染「じゃあ交代!?」

男「え…」

幼馴染「ボクも背中ながしたーい」

男「…まじ?」

幼馴染「? 洗ってもらったお返しにね♪ 一緒にお風呂の醍醐味じゃん」

男「…」

幼馴染「ていうか最初からアッキーがそのタオル貸してくれたらこんなことしなかったんだけど」

男「これはいま俺にとって水着代わりだからだめです」

幼馴染「…ねー反対むいてよ。はーやーくー」

男「…おう」

男(もうどうにでもなれ)


ナツキのテンションに流されるがままに俺はくるりと背を向ける。
目の前の鏡には股間でタオルをふくらませる自身の情けない姿が映った。

一方でナツキの姿は俺の体に隠れてしまってほとんどみることができない。

幼馴染「ちょっとそのまま待っててね。すぐだから」

男「?」

幼馴染「んしょ」

鏡に映る俺の身体の背後から、焦げた腕が真横に伸びる。
手になにか持っている。布だ。
ナツキはカラフルな布を浴槽のふちにひらりと掛けた。

男(お、おいおい…)

くもりかけた鏡でもはっきりと分かる。
それは間違いなく、さきほど俺が紐を解いてやった水着だった。

 




221: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 23:01:33.78 ID:TYbJ54zoo


男(脱いでしまったのか!? バカなのか!?)

余談だがナツキはテストで80点以上をとったことがない。


幼馴染「そのままねー。振り向かないでね」

おそらくいまナツキは水着で覆われていた部位、胸と股間を洗っているのだろう。

男(そりゃ洗ってないもんな。洗うよな…)

幼馴染「はいオッケー。じゃあ背中洗うよー」

そして唐突にナツキの泡だらけの手がべしゃりと背に押し当てられ、上下に動き始めた。
こいつは間違いなくいましがた胸を洗った流れで俺の背中を洗っている。
鏡の隅を確認すると、水着はいまだにそこに掛けられたままだった。

男(ぜ、全裸……?)

男(こいつ…恥ずかしくないのか?)

ナツキの無防備さに軽くめまいがする。

男(夕方はあんなに怒っていたのに。いまはお互い裸だからセーフ?)

男(わからねぇ…こいつがわからない)


幼馴染「アッキー背中ひろいねー」

男「いや…な、ナツキ…あの、お前いま」

幼馴染「…んぅ? なに?」

幼馴染「あ、絶対振り返っちゃダメだよ! えへへ。ごしごし」

男「わかってるっ」

おそらくナツキは水着を脱いだことが俺に気づかれていないと思っている。
だらりとかけられた水着が鏡にばっちり映り込んでいることなど露知らずなのだろう。




222: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 23:04:14.46 ID:TYbJ54zoo



幼馴染「ごしごし」

幼馴染「強さこんなもん?」

男「あぁ…適当でいいんだぞ。物足りなかった自分で洗うし」

幼馴染「わざわざ一緒に入ってもらったお礼だからー。これくらいかなー」

ナツキの手の平が思った以上にやわらかい。
何度も血豆をつぶしているはずなのに、俺とのこの差はなんなのだろうか。


男「そんなお礼いらないんだけどな」

俺の中では悶々とした気持ちが激しさを増していた。
いま真後ろでナツキは一糸まとわぬ素っ裸で俺の背中を洗っている。
だが肝心のその姿は鏡に映ることはなく、俺の自身の体によって遮られてしまっているのがもどかしい。

振り返るなり、体をずらすなりすれば、簡単に見ることはできる。
しかしナツキは俺に全幅の信頼を寄せるからこそ、いつも無防備で無邪気でいられる。

一過性の欲求でそんなナツキを裏切ることはできない。




223: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 23:07:36.56 ID:TYbJ54zoo


男(だけどこんなの生殺しだろ…)

男(お前は悪魔なのか?)

幼馴染「ごしごし。かゆいところはー…ってそれは頭あらうときかーー」

幼馴染「あったら言ってねー」

必死に目をつぶってもナツキの妙に優しい手つきの感触が襲ってくる。
明るくて楽しそうな声が洗い場に響く。
脳裏に一瞬焼き付いた夕方の光景がフラッシュバックする。

男(なんでお前は追い詰める…。なんか悪いことしたか)


からかわれてるだけならいくらかマシだ。
ナツキの場合はそうではないのだろう。
天然なのか底なしのアホなのか。あるいはその両方か。
ナツキは頼んでもないのに脇腹や脇の下をさすったり、尻の上の方まで手を滑らせて俺の体を洗い続けた。

男「……」

幼馴染「〜♪゙ 〜♪゙」

これってカップルでやることなんじゃないのか等と疑問に思いながら、
小さな手で身体をなでられるくすぐったさと気持ちよさに俺はしばらく酔いしれた。




224: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 23:11:58.90 ID:TYbJ54zoo


幼馴染「はいおしまい♪」ペチン

男「…ッ」

男「どーも。すっきりしたよ」

幼馴染「あ、まだ振り向かないでね。ボクがいいっていうまで! 絶対にね!」


無闇に指摘して、ナツキを恥ずかしがらせる必要はない。
俺はあたかも気づいてない振りをして、ナツキが水着を再び着用するのを座して待つのみだ。

男「わかってるから。早く頭洗ってあがろうぜ」

幼馴染「うん!」

だがナツキの天然っぷりは俺の予測を遥かにうわまわっていた。

幼馴染「じゃあついでに頭も洗ってあげるね。くふふ」

男「え、いや…頭ってのは俺のことじゃなくて…」

男「あっ、ばかっ、立つな!」

おそかった。
ナツキはシャンプーボトルを手に、立ち上がってしまった。

鏡に映る俺の頭上に突如現れたナツキの上半身。
日焼けしていない張りのある白い胸。
流れかけの泡をわずかにまとってテラテラと艶めかしく光っている。
もちろんなにも隠すものはないので、胸の先端にある血色の良いピンク色の突起までばっちり映ってしまった。




225: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/06(日) 23:17:16.50 ID:TYbJ54zoo



男「おそかったか…」

幼馴染「……? あ…」

そしてナツキはここでようやく鏡の存在に気づいたようだ。

幼馴染「あれ……?」

鏡ごしに裸の少女と目があう。
まんまるな目をパチクリとさせて、口がぽかんと開かれている。
状況を理解して、あどけない顔があっというまに羞恥に染まっていく。


幼馴染「あ…あ……」

男(やばい…叫ばないで…)

俺は諦念しつつも、見てないですと精一杯首を振る。

幼馴染「〜〜〜〜っ!!?」

その後、言葉にならない叫び声とともにシャンプーボトルが頭上から勢いよく俺の頭めがけて振り下ろされた。



  ・    ・    ・



男「俺が悪いのか?」

幼馴染「むーーーっ」ブクブクブク

男「すいません……」

幼馴染「む〜〜〜〜っ!!」ブクブクブク

男(今日はなんて日だ…)

幼馴染(また見られちゃった…ボクもうお嫁にいけないじゃん…)




第四話<お泊り>つづく

  




228: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/06(日) 23:25:44.86 ID:9gpbfRh5o


生唾飲んだわ




231: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/07(月) 06:35:40.64 ID:zi/rlSWk0

おバカだなぁ…
かわいいなぁ…




237: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 21:26:50.86 ID:i9AKzMDto

第四話<お泊り>つづき



風呂あがり、ナツキは頭をタオルでわしゃわしゃと拭きながらバラエティ番組を見ていた。
何か飲むかと呼びかけても反応はなく、ずっと画面に向かったまま黙りこくっている。

男(いくらなんでもあれはショックだったか)

ナツキのあられもない姿を見てしまった。
いつもの際どい姿ではなく、何も隠すもののない丸出しのヌードだ。
思い出そうとすると殴られた後頭部が痛む。


男(胸綺麗だったなー…)

男(って…俺最悪だな…)

男「おーいナツキ…長風呂したんだから水分とれよ」

男「聞いてんのかー」

幼馴染「……むぅ」

男「俺が悪かったから。そんなに怒るなよ」

幼馴染「……むー」

男「一緒に入った時点でああなる可能性はあっただろ…」

男「お前もそれをわかった上で、俺を誘ったんじゃないのか」

幼馴染「つーん」

男「つーんじゃなくて…」




238: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 21:29:01.25 ID:i9AKzMDto


幼馴染「元はといえばアッキーがあんな怖いゲームさせるからだもん」

男「ぐ…」

俺に非があったのは間違いない。
真っ暗な部屋で、仮にも女の子にやらせるゲームではなかった。
ナツキのメンタルが思ったより軟弱だったのも誤算だった。

男(マウンドでは強気なくせに…)

男(意外とギャップのあるやつなんだな)


長年幼馴染をしていても、いつもすることが同じではお互いの本当の内面は見えてこない。
今日は普段やらないようなことにたくさん挑戦した。
だから、ナツキのいろんな一面を見た気がする。

男(…のはいいんだけど、機嫌が戻らないのは厄介だな)

後ろ姿はあからさまに不機嫌なオーラを放っている。
急に泊まることになったナツキは替えの服を持っておらず、風呂あがりは俺が貸したぶかぶかのシャツを羽織っている。
姉の寝間着を借りてもよかったが、勝手に部屋に侵入してタンスをひっかきまわす勇気はなかった。

男(こうしてみてるとノーパンみたいでちょっとエロいな)

男(あー違うっ、俺がこんな目でナツキをみてるからきっとあいつは怒ってんだ)

男(いつも通りをこころがければいいんだ)




239: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 21:31:14.38 ID:i9AKzMDto


男「ナツキー…ゲームしようぜ」

幼馴染「……やだ」

男「怖いやつじゃないから…」

幼馴染「やだ」

ナツキはこちらに振り返ろうともせず、テレビのザッピングを始める。


男(こうなったら切り札だ)

男「あー、そういえば冷凍庫に1つだけアレがあったなぁ」

幼馴染「…!」ピク

男(この反応…おそらく知ってるなこいつ)

男「あれぇ、なかったっけなぁ。もう食っちゃったんだっけなぁ」

幼馴染「…」ソワソワ

俺のわざとらしい独り言にナツキは露骨に反応して、こちらの様子をチラチラと伺いはじめた。

男(わかりやすいやつ)

そう、いま我が家の冷蔵庫には一つだけ、買い置きしていた高級カップアイスがある。
俺と姉の好物で、ナツキも大好きな抹茶味だ。
いつもナツキの食べているシロクマバーなんて目じゃないくらい高い。

ナツキはここ数日散々うちの冷蔵庫を荒らしまわったのだから、必ず見つけているはず。
見つけてもほしいほしいと言い出さなかったのは、これが俺にとって大切なデザートだとわかっていたからだろう。

 




240: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 21:34:48.32 ID:i9AKzMDto

 
男「おーあったあった。まだ食ってなかったかー」

ナツキの様子伺う。。
一瞬目が合うと、慌ててテレビのほうに向き直した。


男(そりゃほしいよなー)

男「お前の麦茶ここにおいてるからな!」

幼馴染「……ぅ〜〜」

男「あぁかき氷したかったらしてもいいぞ。氷つくってあるから」

幼馴染「…う〜〜」

男「さて、風呂あがりのお楽しみといったらこれだよな〜♪」

幼馴染「うううう!」

カップアイスのいかにも高級そうなプラスチックの蓋をあけて、さらにその下でしっかりと封をしてあるビニール製の蓋を剥がす。
裏側にはアイスが薄く付着していた。

男(あいつだったら全部舐めそうだな)


男「カチカチだなぁ。もうちょっと溶けるまでまつかなー。うまそー」

本当にうまそうだ。一度に2個食べても飽きないうまさだ。
当初の予定ではナツキを釣りだす餌にするはずが、すこしだけ勿体無く思えてくる。


幼馴染「あっ、あっ…」

男「何」

幼馴染「ボクの……ぶんは…」

男「え、これ一個だけど? お前が泊まりにくるなんてしらねーし」

幼馴染「…夕方買い物いったのに」

男「これ買ったの結構前でな。さっきたまたま残ってるの思い出したんだよ」




241: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 21:37:03.24 ID:i9AKzMDto


幼馴染「…」

男「何。ほしいの」

幼馴染「…」コク

男「夕方あんなにかき氷くったのにまだ甘いもん食うの」

幼馴染「…」コク

男「じゃあ機嫌なおしてくれるか?」

幼馴染「うんうん! もう忘れた!」

男「ならしかたないなー。ほら」


ナツキの側に寄ってカップアイスとスプーンを手渡す。
ナツキはご褒美をもらう子供のような晴れやかな笑顔でうけとった。


幼馴染「おー、カチカチ」ツンツン

幼馴染「全部くれるの?」

男「いいよ。俺はまた今度買うから」

幼馴染「ありがと〜♥」

これ一つで機嫌が元通りになるなら安いものだと思うが、この程度で懐柔されるうら若き乙女の存在に少し不安になった。

男(仮にもお前、裸みられて怒ってたんだぞ…)

男(知らない人にお菓子もらってもついていくなよ?)




242: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 21:39:40.66 ID:i9AKzMDto



何事も物で解決しようとするのはよくないことはわかっている。
きっと口の回る男なら言葉だけで女を上機嫌にできるのだろう。
口下手な俺にはそれが出来ない。

男(まぁいっか…)


幼馴染として、ナツキが笑顔でさえいてくれたらそれ以外はどうでもよかった。
俺がぶっきらぼうでガサツな事なんてナツキはとっくにわかっているだろうし、
いまさら女性を相手にするような気取った態度を取る必要もないのだろう。

いままでもこれからも俺たちの付き合い方がかわることはない。
ナツキと一緒にいると出費はかさむし、時には気疲れすることもある。
だけどそれ以上に楽しい。
だから楽しみにしていた抹茶アイスが食べられなくなっても、俺は今満足している。


男(それにしても甘やかしすぎかなぁ)

幼馴染「〜♪ もうちょっとかなー」

ナツキはカップを手のひらでこねくり回しながら食べごろまで溶けるのを待っている。
頭を乾かしている途中であることなどすっかり忘れてしまったようだ。

 




243: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 21:42:03.02 ID:i9AKzMDto


男(どうせ甘やかすならもうこの際だ)

俺はナツキの背後にあぐらをかいて座り、首にかけてあるタオルをひったくった。

幼馴染「?」

男「頭拭いてやるから、食ってていいぞ」

幼馴染「え? ほんと? サービスいいね」

男「ゲストサービスだ」

幼馴染「くふふ。王様みたい」

男「いいから前向いてろ」

幼馴染「はぁい。よろしくー」

ナツキは俺の胸元に背をあずけるようにもたれかかってくる。
目の前の丸い頭からシャンプーの匂いが漂って鼻孔をくすぐる。
またも思いがけないナツキの行動に俺の心臓はついつい高鳴ってしまう。

男「おい…」

男「まっすぐ座ってろよ…」

幼馴染「…ん? だってこのほうが楽だもん。アッキーも拭きやすいでしょ」

ナツキは足を伸ばしてすっかりだらけきっている。

男「こら……しかたないな」

幼馴染「はむ……んー、冷たくて甘くておいしい」

男(これじゃ子供か妹を相手にしているようなもんだな)

余談だがナツキは夏うまれで俺は同年秋うまれ。
納得いかないがナツキのほうがわずかにお姉さんだ。


 




244: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 21:46:22.47 ID:i9AKzMDto




わしゃわしゃ

男「髪の毛ちょっと伸びてきたんじゃないか」

幼馴染「うーんそうだねー。暑いしもうそろそろ切ろっかなー」

幼馴染「あーでもまだダメ」

男「なんで。いつももっとさっぱりしてるだろ」

幼馴染「いいの。いまはボクこの長さが気に入ってるもん」

幼馴染「スポーツやってるわけでもないし、ちょっとくらいおしゃれしたっていいじゃん」

男「そうだけど」

幼馴染「短いほうが好き?」

男「好きっていうか……乾くのおもったより遅くてめんどくさくなってきた…」

わしゃわしゃ

幼馴染「あはは。最後までちゃんと拭いてね〜、はむっ」

男「贅沢しやがって…」

アイスも髪の毛の件も俺自らすすんでやっておきながら、だんだんと恨めしい気持ちが沸いてくる。
他人の頭を拭くのは意外と重労働で、じんわりと全身に汗をかいてきた。
ナツキがもたれかかっているのも地味に暑い。


王様気分のナツキの手元のアイスを覗きこめば気づけばもう半分以上を平らげていた。
それとは別に、ぶかぶかでゆるい胸元から覗く二つの白い膨らみが目にとまった。
あきらかになにも付けていない。

男(なんでブラしてないんだ?)

男(あ……、洗濯機に入れてたっけ)

男(さすがに姉ちゃんから借りるわけにはいかないしなぁ…サイズ違うだろうし…)

男(あ゙ーー見てない見てない!)




245: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 21:49:54.96 ID:i9AKzMDto



俺は意識を必死に目の前の頭頂部に向ける。
それでも年頃のオスとしてのスケベ心はおさえきれず、視線はチラチラとナツキの胸元へと向かってしまう。

自然と風呂場での出来事が脳内をかけめぐる。
あのときのナツキの恥ずかしそうな顔は年に何度も見られるものじゃない。
うちにたくさんあるアルバムをどれだけめくっても、写真には残っていないだろう。
幼馴染の俺にとってもかなりのレア顔というやつだ。


幼馴染「手とまってるよー?」

男「あ、あぁ…ちょっとテレビ見てたんだよ!」

幼馴染「家来のくせにさぼるでない」

男「お前…してもらってる立場で文句いうな! このっ」

わしゃわしゃわしゃ!

幼馴染「えへへ。そんなにするのやーめーてーよー」

胸元を隠す様子はない。
ナツキはあまりにも無警戒無防備すぎて、わざとやっているんじゃないかと勘ぐってしまうほどだった。


男「よし、もうこんなもんでいいだろ」

ナツキの髪の毛を何度か手でさわって撫でる。
湿り気はあまり感じない。

幼馴染「おわった?」

男「んー、まぁいいんじゃないか」

男(こんな時間かかるならドライヤー使えばよかった…)


幼馴染「はい。おつかれさま」

幼馴染「そなたに褒美をとらせよう」

そういってナツキはスプーンをこちらに向かって突き出す。
先には溶け始めたアイスがたっぷりと乗っかっている。


 




246: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 21:51:59.59 ID:i9AKzMDto

 

男「え…なに、くれるの」

幼馴染「うん!」

男「……」

幼馴染「褒美じゃぞ〜」

男(いやぁこれ…アレだよな)

ナツキはぐいぐいとスプーンを俺の口元へと持ってくる。
幼い頃から回し飲みや間接キスの類なんて二人の間で当たり前のようにしてきた。
意識なんてしてないはずなのに今日は妙に気恥ずかしい。

ナツキのぷるんとした唇につい視線が向かってしまう。

幼馴染「…?」

この唇でくわえて、やわらかそうな舌で何度も舐めたあとのスプーンを口に運ぶことがためらわれる。
おまけにこれは俗にいう『あーんしてあげる』という行為だ。
普通はカップル同士か、相当気を許した相手にしかできない。

男(お前さ、ほんとに俺のことどう思ってるんだ)

幼馴染「ほらほら〜。はやくしないとボクが最後まで全部たべちゃうよ〜。んあー」

男「わ、わかったよ」

意を決してスプーンにかぶりつく。
冷たくてとろける食感。
強烈な甘さの中にあるわずかな抹茶の渋み。




247: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 21:54:01.92 ID:i9AKzMDto


男「甘……」

幼馴染「でしょ? ごちそうさま〜♪」

幼馴染「お母さん安いのばっかり買うからこれ滅多に食べられないんだよねー」

幼馴染「またボクが来る時に買っておいてね!」

男「……あぁ。って毎日来てんだろ!」

ナツキの本当の心のうちはわからない。
だけど俺達の間柄は決して悪くなく、むしろ良好だと思う。
何度喧嘩したって、不機嫌になったって時間が解決してくれて、またこうしてじゃれあうことができる。

冷たいアイスが喉を通って胃にすべりおちても、体温はちっとも下がらずにむしろ上昇していった。

男(暑い…エアコン買わなきゃな…)



   ・    ・    ・



幼馴染「ふあーー」

男「そろそろ寝る準備するか」

幼馴染「ボクどこで寝るのー。まだ別に眠くないけど…」

男「んーっと」

幼馴染「ボクの布団かわかないねー…どうしよ」

男「なら…俺の布団?」

幼馴染「わー大胆!」

男「一緒なわけねぇだろ! 貸してやるって言ってんの!」




248: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 21:55:43.48 ID:i9AKzMDto


幼馴染「えっへへ。じゃあアッキーはどこで寝るの?」

男「俺は親父の部屋で」

ガシ

男「…」

幼馴染「ここに居てクダサイ」

男「…怖いのか」

幼馴染「…!」コクコク

男「じゃあ俺は座布団敷いて寝るよ。夏場でよかった」

幼馴染「ごめんね。今日だけ布団借りるね」

男「あぁ。その代わりおねしょとかすんなよ」

幼馴染「す、するわけないじゃん! 何歳だとおもってんの」

男「とりあえず準備する…」



  ・   ・    ・



シャコシャコシャコシャコ

寝る前、ナツキは歯を磨いていた。

男「なんだその歯ブラシはどうした」

幼馴染「? ぼふの」

男「あ?」

幼馴染「洗面所の棚から新品の見つけたから開けました」シャコシャコシャコシャコ

男「当たり前のように生活に侵食してくるお前が怖いっ!!」

幼馴染「そう? ボクのほうが怖いよ(?)」




249: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 21:59:49.62 ID:i9AKzMDto


ナツキには昔から遠慮という感覚があまりない。
冷蔵庫は勝手に開けるし、何か備品を使うにしても断りを入れることもない。
もちろんそれを咎める人間はうちには誰一人いないし、俺自身もさほど気にしない。
うちにとってほとんど家族の一員ような存在だ。


幼馴染「使った後どうすればいい?」

男「そうか、じゃあこの空いてるコップにでも立てかけとけな」

幼馴染「うん、ほうする」シャコシャコシャコ


昔は泊まりの時はナツキは必ずおばさんにお泊りセットなるポーチを持たされていたことを思い出す。
旅行用のコップ付きの歯ブラシやタオル、ミニサイズのボディーソープなど必要最低限のものが詰まってる。
今日は突然の決定だったのでもちろん持って来ていない。


幼馴染「歯磨き出きてよかったー」シャコシャコ

幼馴染「今日甘いものいっぱいたべたからさー」シャコシャコ

男(……いやおかしいぞ? 俺は一度ガツンと言うべきなのか?)

あまりに慣れすぎて感覚が麻痺している。
一般的な友人関係なら、おそらく怒るのが正しい…と思う。
なにせ人の家の新品の歯ブラシを勝手に開封して自分専用にしているのだ。
ユウジがうちで同じことをしたら多分怒る。


幼馴染「くちゅくちゅくちゅ…ぷぇ」




250: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 22:02:39.38 ID:i9AKzMDto


男「……」

幼馴染「あのさぁ。ボクの歯磨きなんて見て楽しい?」

男「…あっ、俺そんな見てたか」

幼馴染「心配しなくてもちゃんと綺麗に磨いてるよ」イー

幼馴染「ね?」

男(そんな心配はしてない)

男「歯綺麗だな」

幼馴染「歯医者さんにも言われたー」

ナツキはめちゃくちゃ歯並びがいい。
おまけにつやつやで白い。甘いモノが好きなくせに虫歯の経験はない。
昔はかみ合わせが少し悪かったそうだが、小学生の頃に1年ほどかけて矯正してからしっかり踏ん張れるようになって球の威力がぐっとあがった。


幼馴染「ねぇところでさ、そこにある歯ブラシのような歯ブラシじゃないような、先っぽが平べったい歯ブラシは何?」

男「?」

またわけのわからないこと…を思った矢先、ナツキは洗面台に立てかけられたある物にむかって指をさす。

男「あぁそれは俺がこないだネットで評判見て買った舌ブラシだ」

幼馴染「した? ベロ?」

男「ベロ。変な形だけど、これがうまく舌の形にフィットして、舌苔を取るんだぜ」




251: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 22:05:35.89 ID:i9AKzMDto


普通の歯ブラシで舌をこするのは、刺激がつよすぎて舌の細胞が死んでまうそうだ。
なので舌にやさしいが効果絶大の舌ブラシが近年話題となり、俺と姉は評判にのせられて購入してみた。


男「これが結構気分爽快で、例えば牛乳とか飲んだあとでも舌がきれいなピンク色に〜」

幼馴染「なんだ使い方あってた」

男「……」

男「は? お前何言って……おいナツキお前まさかッ」

幼馴染「………はぅっ!? う、うそだよ!? つかってないよ?!?」

男「こら。こっち見ろ」

幼馴染「……ぅ」

男「俺今日つかってないのになんでブラシの部分湿ってんだ」ピトッ

幼馴染「ああああっ、ちっ、違うの! どんなもんかなーって気になって…」

幼馴染「濡らしてみただけだから!」

男「使ったんだな…」

幼馴染「……」コク

なかなか嘘はつけないタイプだ。
勝手に使うにしてもこうして時々度が過ぎたことをする。

男(普通使うか? 曲がりなりにも口につっこむ物だぞ)

本当に脳みそがアイスのように溶け出しているのではと心配でたまらない。
年頃の女の子として、異性の私物を使う抵抗はなかったのだろうか。
それ以上に未知への興味が勝ってしまったのだろうか。




252: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 22:09:11.75 ID:i9AKzMDto


男(はぁ…高いもんでもないし買い替えるか…)

男(このまま使ったら俺が変態だよな…)

幼馴染「怒ってる…?」

男「興味本位で人の物に手を出さないこと」

幼馴染「ごめん……使う前と後にちゃんと洗ったから…」

幼馴染「アッキーの物っぽかったし、いいかなって思っちゃったんだよ…」

男「…はぁ。使ってしまったものは仕方ない」

幼馴染「でもボクのベロ綺麗になったでしょ! んえーっ」

男「…ッ見せなくていいから! つーかそんなしっかり磨いてんじゃねぇよ」

幼馴染「れろれろ♪」

男「バカにしてんのか! そうなんだな!?」

ナツキは健康的なピンクの舌をつきだして見せつけてきた。
歯をみがいて口をゆすぐだけでは不可能なほどに綺麗になっている。
抹茶アイスを食べたあとだとは到底思えない。

幼馴染「気に入ったからおんなじの買おっと♪ あー口の中スッキリ」

男「お前が来るたびに謎の出費にさいなまれている気がする」

幼馴染「弁償しようか…? ごめんねボクのささやかな貯金からで良ければ」

男「いらねーよ…」




253: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 22:11:10.40 ID:i9AKzMDto





   ・   ・    ・




男「電気消すぞ」

幼馴染「あ、待って…豆球にして」

男「……おやすみ」

幼馴染「ねーアッキー…」

男「……寝るから」

幼馴染「何か話しようよ」

幼馴染「泊まるの久しぶりじゃん。夜更かしできるじゃん」

男「…俺今日疲れた」


体力的にも精神的にも過酷な一日だった。
今日だけでどれだけナツキに振り回された事か。
頭の中で今日起きた出来事が巡る。

ナツキがスカートを履いて、
ナツキが水着になって、
ナツキが裸でシャワーあびていて、
ナツキと風呂に入って、
ナツキの全裸を見ちゃって、
ナツキがもたれかかってきて……。

男(あぁ…なんでだ。エロいことしか浮かんでこない…寝よ寝よ)

幼馴染「しりとり、しよ。アッキーから」

男「しない」

幼馴染「い……イップス!」

男「しないから…寝てくれ」

幼馴染「むーーつまんな……ねーもう寝た? ねーー…」

幼馴染「……ゔっ」ブルッ




254: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 22:13:49.05 ID:i9AKzMDto


ナツキのボソボと呼びかける声を聞きながら意識が薄らいでいく。
庭から聞こえる虫の大合唱もだんだんと遠のいて聞こえなくなった。
まぶたが重い。


男(おやすみ…)

ようやく寝付ける。

幼馴染「ねぇ…ねぇってば…アッキー…」ユサユサ

男(と思ったらこいつは…!)

幼馴染「ねぇってば…ちょっとだけ起きて…困ったことがおきて」

男「遊ばないって言ってんだろ」

思わずナツキの脳天に手刀を振り下ろしてしまった。

幼馴染「ぎゃっ、痛いっ! 出ちゃう」

男「なんだよ…早く寝ろよ…まだ何かあるのかよ」

幼馴染「あ、あのね…」

薄暗がりで表情はよく見えなかったが、ナツキは内ももをこすり合わせるように揺すってもじもじしていた。
その動きだけでなんとなく要件の見当がつく。

しかし俺は眠気のピークで不機嫌極まりなく、薄いタオルケットを頭まで被ってそっぽを向いた。
何を言おうとしてるのかわかるだけに付き合うのがめんどうだ。

幼馴染「あーん、だめ寝ないでっ」




255: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 22:16:23.27 ID:i9AKzMDto


ナツキは諦めずにしつこく俺の体を揺さぶってくる。


男「……何。安眠妨害だぞ。うちでは死罪と決まっている」

幼馴染「おしっこ」

男「…んなもん一人でいけよ何歳だよ…」

幼馴染「こ、こわい…漏れそう」

男「……」

男(本当にホラーゲームなんてするんじゃなかったな)

男「ったく…せめて寝る前に行っとけよ…」ムクリ

俺は眠い体を半分起こして、ナツキに手を差し出して立たせてもらう。

幼馴染「電気つけないの?」

男「まぶしいし、虫…」

縁側の長い渡り廊下を歩く。
古い板張りの廊下は2人分の足音でギシギシと軋んだ音を立てた。

真っ暗で視界が悪い。
暑さ対策に庭側の戸をすべて開け放っているので、この時間に灯りをつけると虫がわんさか家の中に入ってしまう。

男(こんなときに古くて広い家はめんどいな)

ナツキの歩みはすこぶる鈍く、つい置いていきそうになる。

男「早く来い。お前が我慢してるんだろ」

幼馴染「だってぇ…」




256: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 22:20:07.12 ID:i9AKzMDto


わずか数10mの距離だが、ナツキは俺のシャツの裾を掴んで、背中に寄り添うように歩いていた。

男「ついたぞ」

幼馴染「あっ、あっ」

ナツキは急に駆け足になって慌ててトイレに駆け込む。
おそらく間に合ったようだ。
最悪漏らしそうになったら庭にでも蹴りだしてやろうかと思っていた。


男「…戻っていいか。帰りはお一人で」

幼馴染「だ、だめっ、すぐだから」

扉の前で眠たい目をこすって待っていると、中から勢いの良い水音が聞こえた。

男「…」

幼馴染「…! あっ、ああ」

幼馴染「あ、あのね! ボク家ではちゃんと夜中一人でトイレいけるし、全然怖くなんてないんだけど」

幼馴染「この家古いし絶対お化け住んでるし、それにあんなゲームしたあとだしこのトイレ超広いし電気つけても暗いし―――だからねっ」

ナツキはトイレの中から焦ったような早口でまくし立てる。


男(わかるよ。お前の気持ちはわかるけど…)

男「ナツキちゃんさぁ、そういう時は普通トイレ流しながらするよね」

幼馴染「あっ! あーあーあーっ、聞かないで…あっちいって」

男「いいのか戻って」

幼馴染「あ゙ーーーだめそこにいて。あっ、でも聞くのはだめっ」 

男(アホだ…)




257: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 22:23:16.24 ID:i9AKzMDto


男「よ。結構我慢してたんだな」

幼馴染「……」

男「2リットルくらい出た?」

幼馴染「うるさいなぁ…っ!」

女にかける言葉ではなかったかもしれないが、どうせナツキ相手だし、寝付こうとしていた所を無理やり叩き起こされた恨みもある。
早足で居間へ戻ろうとしたら、ナツキは再びぴったりと張り付いてきた。


男「そんなに怖いか?」

幼馴染「こんな時間までいるの久しぶりだもん…」

男「なにも出ないって。幽霊なんて本当にいるわけないだろ…あんなのゲームゲーム」

幼馴染「雰囲気が怖いの!」

幼馴染「こんな家によく住めるね」

男「ならこんな家によく泊まろうと思ったな」

ナツキがぎゅっと手をつかんでくる。
トイレで手を洗ったあとちゃんと拭いていないのか微妙に濡れていた。




男「じゃあ俺寝るから。もう起こすなよ」

幼馴染「……」

男「何。次は大きいほう行きたくなったとか言うなよ」

幼馴染「…あ、あのね…」

ナツキが小声であのねという時は大抵言いづらいことを言い出す時だ。
俺は次は何が飛び出すのかと身構える。




258: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 22:26:54.09 ID:i9AKzMDto


男「なに。もう付き合わないぞ」

幼馴染「天井になんかいる…気がする」

男「……たぶん虫だろ。蛾でも入ったのが飛んでるんじゃないか」

幼馴染「変な音する」

男「冷蔵庫だって。古いから…いつも深夜帯に唸るんだよ」

幼馴染「ううう…」

男「いいかげん離せよ」

手を振りほどこうとしてもナツキは頑なに離そうとしなかった。
ついには俺の手をひきよせて、胸元でぎゅっと抱きしめる。

幼馴染「一緒に寝て…ボクが寝るまででいいからさぁ…」

男「…え゙」

幼馴染「……」

暗がりでよくは見えなかったが、ナツキはきっと不安げな顔をしていたのだろう。
握りしめてくる小さな手から少しだけ震えが伝わった。


男「わかったよ…もう俺も眠いから、寝かせてくれるならなんでもいいや…」

幼馴染「!」

そしてやむなく折れた俺はナツキと背中合わせに同じ布団に寝転がって、一枚のタオルケットを一緒に被った。

男(俺ってなんなんだろうなぁ)

男(普通異性相手にこんな事頼まないよな…)




259: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 22:29:45.75 ID:i9AKzMDto


今日一日を思い返す。

男(やっぱナツキの中ではただの兄弟って感じなんだろうな)

男(なら俺にとってナツキは…?)


俺にとってナツキはなんなのだろう。
夏休み前にユウジに言われた事がもやもやと渦巻く。
今日一日この言いようもない焦燥感に苛まれていた。

家族のような存在と言わればそうかもしれない。
しかしナツキと姉は明らかに違う。
実の姉の裸を見てもなんとも思わないし、見たくないものを見てしまったような嫌悪感すらあった。

だけどナツキの裸は違った。
あの時とても綺麗だと思えて、できることならずっと眺めていたかった。
シミ一つ無い背中に触れた時はドキドキしたし、胸の先端がちらりと見えた程度でいままでにないくらい興奮した。


男(やっぱ…好きなのかな)

背中ごしにナツキの体温が伝わってくる。
すでに吐息を立てていて、怖がっていたわりには案外あっさりと眠ってしまったようだ。
俺は慎重に寝返りをうって、ナツキの後ろ姿をじっと眺める。

綺麗なうなじに汗がうかんでいた。

男(暑いのか)

あせもにならないようにタオルで首筋をぬぐってから、枕元に投げ捨ててあったうちわを拾ってゆっくりと風を送る。
ナツキは微風に少しくすぐったそうに身を丸めた。
こちらの気苦労など知りもしない幸せそうな顔で眠っている。

男(怖い夢見なけりゃいいな)

男(おやすみナツキ)

 




260: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/09(水) 22:32:37.39 ID:i9AKzMDto


翌朝。

強烈な痛みと蝉の大合唱とともに俺は目覚める。
まぶたをひらくとナツキのかかとが喉元につきささっていた。

男「……げほ、お゙い」

幼馴染「zzz」

ナツキはそんなこと知る由もなく爆睡している。
寝ている間に天地がひっくりかえったのかと思うくらいに布団も枕もめちゃくちゃで、
俺は布団の外に蹴りだされてむき出しの畳の上に倒れこんでいた。


男(これだよ…だから嫌だったんだ…)

幼馴染「zzz」

男「お前とはもう絶対に一緒に寝ない…」

そう胸に誓って俺はナツキの尻を蹴飛ばした。

幼馴染「ふぎゃっ!?」

男「起きろバカ」

幼馴染「あ…ふぁ…朝…? ん〜〜〜っ!」

幼馴染「そうだ、昨日泊まったんだった!」

男「…最初に言うことはそれか? なんか他にあるだろ」ジンジン…

幼馴染「えへ、おはよー♪」

男「…おはよ」


今日もナツキとの暑い一日が始まる。



第四話<お泊り>おわり


 




262: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/09(水) 22:34:51.96 ID:AO8PjmnZ0


くふふって笑い方がかわいくてすき




268: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/10(木) 13:17:46.81 ID:vE5VQ+jT0

素晴らしい
夏の雰囲気が伝わってくるな
冬なのに




272: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/11(金) 22:15:11.24 ID:9HBl8Tvxo


 

第五話<助っ人>




幼馴染「あー宿題終わる気しない〜〜」ヘナッ

男「……」カリカリ

幼馴染「ねーもうキャッチボールしよーー。アイスたべていいー?」

男「…お前がそのページ解きおわるまでどっちもダメだからな」

幼馴染「じゃ適当に答え書いちゃお」

男「そしたら飯抜き」

幼馴染「も〜〜〜、いじわる!」

幼馴染「ボクの頭じゃこの大問は解けないよ……」

男「…はぁ」

幼馴染「解き方教えて?」

男「お前そんなんで夏休み明けのテストどうすんだ」

幼馴染「…うう。勉強したくない……頭いたい頭とける」

男「ちょっと最近なまけすぎなんじゃないか」

男「毎日ダラダラだらだら……お前ここ来てもアイス食いながら甲子園みてるだけじゃねぇか」

幼馴染「お母さんじゃないんだからお説教やめてよぉ…一応体は動かしてるもん」

男「俺はお前の将来が不安…」

幼馴染「ボクはその時はその時でなんとかなると思ってるよ!」

男「なんだそれ。甘やかしてくれる優しい人にでも拾われるつもりか?」




273: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/11(金) 22:16:42.84 ID:9HBl8Tvxo



幼馴染「将来かぁ…なんになるんだろ」

男「いまはやりたいことないのか?」

幼馴染「うーん…」


ナツキが背筋をのばしてぐるりと肩を回す。
ナツキにだってもちろん夢や憧れはあった。
だけどそれはもう叶わない。
ピッチャーとして一番大切な場所を故障してしまった。


幼馴染「アッキーは?」

男「俺は進学してから考えるかな…まぁ普通の就職でいいよ」

幼馴染「…む」

男「なんだよ。いいだろ、別に父さんみたいな仕事したいわけじゃない」

男「こんなにずっと家を空ける仕事、将来子供が出来た時可哀想だろ」

幼馴染「寂しいんだねぇアッキー。よしよし」

頭にむかって伸びてくるナツキの邪魔な手を払いのけて、俺は再び問題集に向かう。
自分の将来。
まだ少し遠い未来のような気がして、具体的なビジョンが浮かばないでいた。




274: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/11(金) 22:19:11.79 ID:9HBl8Tvxo


男「お前このままの成績じゃろくなとこ行けないぞ」

幼馴染「うーん…」

幼馴染「キャッチボールしよ♪ ほら、ちょっとだけ曇ってるうちに!」

男(ごまかしたな…)

 

   ・     ・     ・



バチっとミットが乾いた音を立てる。
いまのナツキはもう全力でたくさん投げることができない。
その日の調子をみてすぐに打ち切ることもある。
それでもナツキは飽きずに毎日俺に向かって投げ続けている。


男「お前毎日なげるのな」

幼馴染「うん! だってこれが習慣だから!」

好きなことが自由に出来なくなるのはやっぱり辛い事だろう。
ナツキは玉の汗を額から流しながら、一球一球丁寧に投げ込む。
俺はそれをがっちりと受け止めて、一言二言感想を添えてナツキへと返球する。

幼馴染「えへへ。いまのいい感じのとこ行った」




275: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/11(金) 22:21:20.32 ID:9HBl8Tvxo


幼馴染「あと5球いい?」

男「いいよ。無理すんなよ!」

幼馴染「うん! ふぅ……」

幼馴染「…ッ!」ビュンッ


バチン!
ナツキの球筋は綺麗だ。
女の子の球とは思えないくらい重力に抗いながらまっすぐ飛んで、力強くミットにおさまる。

野球を辞めてもこれほどの球質を維持し続けているのは、ひとえにナツキの努力の成果だ。
時々シャドーピッチングをしている姿も見かける。
もしかしたら、ナツキは割りきったようでまだ夢と決別できていないのかもしれない。


男「はいおわりー。おつかれ」

幼馴染「あっつーーい。シャワー!」

男「行ってらっしゃい」

幼馴染「……ノゾカナイデネ」

男「…なっ! の、覗くか! あほっ」

幼馴染「やーだー思い出してるーーー」

男「お前が言うからだろ…」

どうやら先日の一件はいまだに尾を引いているらしい。
といってもナツキが俺を恨んでいるわけではなく、単にからかっているだけだ。
ナツキはぺろりと舌をだして風呂場へと一目散に走っていった。




276: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/11(金) 22:23:17.20 ID:9HBl8Tvxo





    ・    ・    ・




幼馴染「ふーーいい水だった」

男「携帯何回か鳴ってたぞ」

幼馴染「ほんと? 出てよ」

男「出るわけねぇだろなんで俺が…」

幼馴染「あはは、アッキー以外でボクに電話してくるなんて誰だろ」

男「知ってる番号ならかけなおしてやれば」

幼馴染「ん、見てみる」

幼馴染「あー着信履歴のこの子、去年クラス一緒だった子だ」

男「ふーん…? 仲いいの?」

幼馴染「まぁまぁ。話合うし」

男「お前と話が合うなんてどんなやつだ」

幼馴染「シー…! あ、もしもし。うん、さっき電話くれたー?」


なんとなく気になってナツキの電話口に耳を傾ける。

男(相手は男か…? 女か…?)

まさかとは思いながらも盗み聞きがやめられない。




277: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/11(金) 22:27:18.64 ID:9HBl8Tvxo


幼馴染「うん…うん。へーーそっか」

男(全然聞き取れん…相手の声低いな…)

幼馴染「わかった! 行く行く! ホントにボクでいいの!?」

幼馴染「わー楽しみになってきたなぁ」

幼馴染「だったら当日晴れるといいねぇ。久しぶりですっごい楽しみ」

男(何…? 久しぶり? 何の話だっ)

あらぬ想像が何パターンも頭の中をめぐった。
どこに? なにをしに? 相手は誰?

男(まさかデート…? 嘘だろ…)

ナツキに男がいるとは思えない。
だけどこのはしゃぎっぷりはよくテレビドラマで目にするような、
恋人と大事な約束事にしか思えなかった。

ナツキはその後もハイテンションで相槌を打ちながら電話相手と談笑している。


幼馴染「じゃあねー。またねー」

男「なんだったんだ!」

電話を置いた途端ナツキに詰め寄ってしまう。
ナツキは一瞬驚いた顔をみせるが、すぐに目を細めてほくそ笑んだ。


幼馴染「え? くふふ…知りたい?」

男「お、おう…」

そして俺の目の前で立ち上がり、バットをもったふりをしたポーズをとってブンブンと素振りをはじめた。

幼馴染「助っ人外国人!」

男「…は? 助っ人? 野球すんの? いやお前外国人じゃねぇし」




278: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/11(金) 22:29:45.25 ID:9HBl8Tvxo


幼馴染「やっほぅ! ひっさしぶりだなぁああ、あはははは」

男「な、ナツキ。ちゃんと説明して。俺聞いてたわけじゃないからよくわからない」

保護者でもないのになぜだか俺はナツキを追求してしまう。
事情が事情だけに放ってもおけない。
それとは別に、ナツキが自分以外と簡単に約束したことがショックで、仄かに嫉妬心が芽生えていた。


幼馴染「あのね、来週グラウンドで練習試合するんだって!」

男「それで?」

幼馴染「ボクもいくんだって! やったー!」

男「……お前関係ないじゃん」

まったく要領を得ないナツキの語り口にイライラしながらも、話をなんとか聞き出そうと試みる。


幼馴染「いま電話してた子、うちの学校の女子野球部の子なんだけどね」

幼馴染「大会負けちゃって3年生が引退しちゃったでしょ? だから人数足りなくなっちゃったんだって」

幼馴染「それで練習試合できないから、野球がわかる人さがしてみたい」

男「…で去年クラス一緒だったお前に白羽の矢が立ったのか」

幼馴染「うん! 野球の話ちょこちょこしてたからね」

男「でもお前まともにプレーできるのか? もうだいぶブランクあるだろ」

幼馴染「ルールしってるだけでもいいんだってさ」

男「あぁ、戦力ではなくてただの頭数ってことね…」

幼馴染「そうそう♪」




279: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/11(金) 22:32:30.83 ID:9HBl8Tvxo


男「そっか。じゃあピッチャーやるわけじゃないんだな」

幼馴染「うん」

それを聞いて一安心した。
もしナツキが無理をして怪我でもしてしまったらとおもうと気が気でない。
それと、電話の相手が異性じゃなくて本当によかったとおもってしまった。

男(なんで俺がこんなに冷や冷やしてんだ)

幼馴染「打って走って守るだけ!」

男「無茶しないならいいか。いいぞ」

幼馴染「なんでアッキーが決めるの。ボクが行くって返事したんだから何言われても行くよ?」

男「う…そうだけど…」

幼馴染「大丈夫だよ。守備はレフトに立ってるだけでいいんだってさ」

幼馴染「…だめ?」

男「いいよ。とりあえず熱中症に気をつけて楽しんでこいよ」

幼馴染「ってことで、バット出して」

男「え」

幼馴染「持ってるでしょ?」

男「あるけど……もしかして守備練? え、俺つきあわされんの? このクソ暑い中で?」

幼馴染「公園いこ♥」

男「……お前いまシャワー浴びたとこだろ」




280: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/11(金) 22:36:00.61 ID:9HBl8Tvxo


そして自転車を漕いでまんまと公園まで連れてこられる。
そこそこの広さの園内には全面土のグラウンドもあり、土日休みにもなるとキャッチボールをする親子やサッカーをする少年たちであふれかえる。
今日は夏休み平日なので、人気はまばらだった。


男「ぶつかる心配もないしここでやるか」

幼馴染「ノッカー! ばっちこい!」

男「とりあえず軽くフライあげるから取れよー」

男(といっても俺もバット振るのはひさしぶりなんだよなぁ…)

カキンッ

幼馴染「あっ、へたくそ!」

男「悪い…」

案の定、わけのわからない方向へふらふらとボールは飛んで行く。
高さも距離も方向もめちゃくちゃだ。

幼馴染「もー…ボール拾いにいくのボクなんだからさぁ…」

男「勘とりもどさないとな…」


それからしばらくノックを行い、ナツキは犬のようにボールをあちこち追いかけ続けた。


幼馴染「あーもうバテバテ…ボクフライキャッチの練習したかっただけなのに、左右に振り回し過ぎだよ」

男「すいませんねへたくそで!」

俺達はグラウンドを出て、公園内の木陰のベンチに座って缶ジュースを開ける。
ナツキはあっという間にぐいぐいと飲み干してしまった。

幼馴染「ぷはーー。なんかちょっとだけ勘がもどってきたかも」

男「この後もすんの?」

幼馴染「うん! やるやる!」




281: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/11(金) 22:40:06.19 ID:9HBl8Tvxo



立ち上がって移動しようとすると、俺達の前に一台の宅配バイクが止まった。


男「ん?」

友「よぉ。なにしてんだこんなとこで」

幼馴染「あ、ユウジ君だ。びっくりしたー。誰かとおもったよ」

友「ありゃ、ナツキちゃんもいたのか」

友「……ははぁ、デートにもいろんな形があるんだな」

男「なにがデートだ。どーーみても、俺がこいつに付き合わされてるだけだろ。見ろこの汗」

幼馴染「えへへ、デートじゃないよ。ちょっとフライ捕る練習してただけ。見てこの土」

友「…さいですか。なんでまた急に? お前ら万年帰宅部じゃん」

幼馴染「今度ねーうちの女子野球部が練習試合するから、ボク助っ人で呼ばれたんだ」

友「なるほど。うちはどの部も人数やべぇからな」

男「お前は?」

友「見ての通り、バイトで宅配の途中」

男「途中!? はやくいけ」シッシ

友「おう。じゃあまたな。あ、そうだ! …あ、いまもってねぇや今度渡すわ」

男「?」

幼馴染「アッキー、練習続きしよ」

友「うんうん、俺の言ったとおり青春してるな!」




282: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/11(金) 22:42:12.40 ID:9HBl8Tvxo



幼馴染「ユウジ君いつの間にバイクの免許とったんだろうね」

男「原付きだからすぐ取れる」

幼馴染「乗ったらすずしそー」

男「あいついつも忙しそうだな…そんな金稼ぎばっかりしてどうすんだ」

幼馴染「ボクも今日から忙しいよ! トレーニングだ!」

男「そんなに本気で臨むものか? たかが練習試合の数合わせだぞ」

幼馴染「ボクはなんにでも全力投球なの!」

幼馴染「それに久しぶりの試合なんだもん! やー気合入っちゃうなぁー」

幼馴染「ねぇねぇこれおわったらバッセンね! バッセン!」

男「ええ…疲れるだろ」

幼馴染「むーー」

男「…はいはい。もうどこまで付き合うって」

幼馴染「うん、アッキーはユウジ君と違って暇だもんね♪」

男「……」イラッ


それから俺は練習試合の日までナツキのトレーニングに付き合い続けることとなった。



第五話<助っ人>つづく

 




292: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/13(日) 22:14:49.70 ID:IfJTifz0o

第五話<助っ人>つづき



練習試合当日の朝。
俺はひどい金縛りにあっていた。
体がずっしりと重い。何かが真上から俺を拘束しているような感じがする。
寝苦しくても寝返りをうつことができない。


男「暑い……たす…けて…」

男「暑いぃ…やめろぉ…」

幼馴染「おーい…おきろー」ツンツン

男「うう…」

幼馴染「アッキー? 朝だよ。おーーい」

男「う……ん?」

俺に呼びかける声は、金縛りの元凶である霊の類だろうか。
おそるおそる目を開くとドアップで見慣れた顔があった。


男「うわあぁっ!」

幼馴染「うぎゃっ! びっくりした」

男「俺のほうがビビった! お、お前…なんなんだよ…!?」

幼馴染「おはよー!」ニコッ

男「…なんで乗っかってんだよ」

妙な寝苦しさの原因はどうやらナツキだったようだ。
俺の腹にまたがって、呑気に腕を伸ばしたり首をまわしたりとストレッチをしていた。

 




293: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/13(日) 22:18:33.35 ID:IfJTifz0o


幼馴染「だってなかなか起きないし」

男「……暑いから早く降りろ」

男「お前も暑いだろ…尻に汗疹できてもしらねーぞ」

幼馴染「はいはーい!」

ナツキがでかい尻を退ける。
スパッツにつつまれたみずみずしいふとももが朝っぱらから目に毒だ。
座られていた場所はお互いの汗でわずかに湿っていた。

幼馴染「ねぇもう八時だよ? 寝すぎじゃない?」

男「八時…? いやまだ八時かよ! 夏休みだぞふざけんなよ」

幼馴染「遅いよ! メールしても返ってこないからこうして起こしにきたんじゃん!」

男「あれ…練習試合何時からだっけ」

幼馴染「昼の一時からだよ、顔あわせでお昼前には集まるんだってさ」

男「ふーん…ってそれならなんでこんな時間に起こすんだよ」

男「だいたいお前どっから入ってきた」

幼馴染「まぁいいじゃんいいじゃん。ねー練習つきあってよー」

男「えー…今日も?」

幼馴染「試合までは付き合ってくれるって言ったじゃん!」

男「う…言ったけど昨日までのつもりだった…」

眠たい目をこすって庭をうかがうと、この夏すっかり見慣れた光景となった日射光線がギラギラと降り注ぎ、蝉達が騒音を撒き散らしている。
今日も雲ひとつない快晴だった。




294: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/13(日) 22:21:06.25 ID:IfJTifz0o


男「…一段と暑そう」

幼馴染「晴れてよかったねーー!」

幼馴染「ボク今日5時に目がさめてさー! もうご飯食べるの二回目だよ」

男「あっそ」

朝一のナツキの笑顔は太陽よりもピカッと照りつけて眩しい。
元気なのは結構だけど朝から付き合いきれるテンションではない。

幼馴染「ねーキャッチボール! バッセンいこ! ねー」

ナツキはまだ半分眠っている俺の体をゆさゆさと容赦なく揺する。
助っ人参加が決まってからのこの数日間、散々練習に付き合わされて、俺の鈍った体は疲労の色を隠せなくなってきていた。


男「…眠い」

幼馴染「じゃあいいもん。壁当てしてくるから。ふーんだ」

男「わかったわかった。起きるからさ」

幼馴染「…♥」

男「にしてもひどい暑さだな。日射病には気をつけろよ」

幼馴染「アッキーもね」

男「俺は大丈夫だよ…家ん中にいるし」

幼馴染「え、観戦来てくれないの?」

男「は?」




295: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/13(日) 22:23:41.92 ID:IfJTifz0o


幼馴染「は?って……はぁ?って……なにさー?」

ナツキはきょとんとした顔で俺を見つめる。

男「……へ?」

男「俺、試合観に行くのか?」

幼馴染「違うの? え?」

どうやらナツキの中では俺が今日観戦にくるという手はずになっていたそうだ。
しかし顔も名前も知らないメンバー同士の試合なんて観戦に行ってもあまり楽しめない。
ましてや学校のグラウンドで行われる女子野球部の平凡な練習試合だ。

しかもこの地面も湯だつような炎天下。
間違いなく溶ける。

男「…遠慮しておく」

幼馴染「なんで〜〜。来てよ〜」

男「…俺はリトルの父兄か」

幼馴染「……む」

男「いかねーよ。あ、俺甲子園みるから」

テレビをつけるともう今日の第一試合目が始まっていた。

幼馴染「ううううっ! 裏切り者ぉ!」

男「お前は仲間と楽しんでこいって。俺がいっても何もできることねーし、暑いだけじゃん」

幼馴染「ちぇっ。久々のボクの大活躍を見れないなんてかわいそ」




296: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/13(日) 22:26:39.08 ID:IfJTifz0o



それからしばらくナツキのトレーニングにつきあって、一緒に少し早い昼をとった。


男「そろそろ時間じゃないか」

幼馴染「うん。そうだね。うーー楽しみっ」

男「好きなだけ暴れてこい。数年ブランクがあってもきっと体がしっかり覚えてるさ」

幼馴染「うん!」

幼馴染「約束通り1本ヒット打ったらシロクマバーで、2本うったら高級カップアイスね!」

男「…そんなのしたっけ?」

幼馴染「したしたした! したよ!」

男(記憶にない…)

幼馴染「地獄の特訓つきあったんだから、それくらいご褒美!」

男(地獄? 付き合った? お前が勝手にやっただけだろ…)

幼馴染「ね♥ がんばるから」

男「わかったわかった。はよ行って来い。集合遅れるぞ」

幼馴染「それじゃあ行ってくるよ」

幼馴染「じゃあねー」

そしてナツキは白い歯を見せて玄関から出て行った。



男「…たまには静かに過ごすか」



 
    ・    ・    ・



 




297: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/13(日) 22:30:03.56 ID:IfJTifz0o



蝉の声とテレビの中継の音だけになった居間。
ナツキがいないと無性に広く感じた。


男「うわーワンサイドゲームかよ…容赦ねー」

テレビの中で繰り広げられる白球の激闘は、前年の優勝校が初進出の地方高校を叩き潰すという凄惨な試合だった。
あまりに退屈で見ていられない展開に思わずテレビを消して寝転がる。


男「…」

男「…」

男「……やっぱ暇だな!」ムクリ

男「…そろそろあいつの試合はじまるころかな…」

男(初めて会う人も多いだろうに、あいつ仲良くやれてんのかなぁ…)


ナツキは天真爛漫で脳天気に見えるがあれで案外人見知りするタイプだ。
どうにも年をとるに連れて周りのテンションとの差を本人は感じてしまうらしい。
いまもクラスの女子の間ではやや浮いた存在となっている。

中学高校とナツキが女同士でべったりと親しげにしている姿はあまり見かけたことがなかった。
俺にはそれが少し気がかりに思える。

男(今日は野球するだけだから、何か起きるってわけでもなさそうだけど…)

男「…よし」

冷凍庫から凍らした麦茶のペットボトルを取り出して、タオルでくるんでかばんの中に詰めた。

男(別に暇になったから行くだけだし…)




298: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/13(日) 22:32:09.15 ID:IfJTifz0o

 


学校めざして自転車を漕ぐこと数分。
信号待ちの路上でばったりと嫌な奴に遭遇した。


友「よぉアキ。なに急いでんだ」

男「おう、ちょっと用事な」

友「あれ? 今日って確か例の助っ人試合だったよな。ナツキちゃんは?」

男「もう行ったよ。ていうか俺がいつもナツキと一緒だと思うなよ」

友「はぁ? お前はなにやってんだ見に行ってねぇのかよ」

男「行くんだよいまから、わざわざ! このクソ暑い中で! 見ろこの熱中症対策一式」

友「ハハハ、なんだ行くのか。そりゃ行くよなーお前のことだもんな」

男「ユウジ暇? 暇っぽそうだな」

友「んー、バイトまでは時間あるからいまから中古ゲーム屋行く途中だった」

男「よし、なら一緒に来い!」グイッ

友「え、なんだよ。俺もかよ」

男「お前でも観戦がてらの暇つぶしくらいにはなる」

友「はぁ? ちょっ、強引ねあなた」




299: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/13(日) 22:34:52.47 ID:IfJTifz0o



【学校】


友「おー、やってるやってる」

男「この辺りで見ようぜ」

グラウンド一面が見渡せる校庭前の階段に並んで腰を下ろす。
もうすこし近くで観戦することもできるが、あまり距離が近いと女子目当てだと誤解されて不審がられる可能性もある。


友「オッケー」

友「いやぁしかし女子の試合を観に来るなんていいのかほんとに。他に誰も観戦客なんていねぇぞ」

男「いいんじゃないの。うちの学校だし…」

試合はまだはじまったばかりで1回の裏だった。
ついナツキの姿を探してしまう。


男「ナツキ……あ、いた」

友「どれ? みんなユニフォーム一緒だとわかんねぇな」

男「あのレフトで突っ立ってる奴」

友「あー、いま守備か。おーい!」

ユウジは立ち上がってなぜか俺に向かって指をさしながら声を張り上げて叫んだ。
気づいた生徒のプレーが一瞬止まり、視線が一斉に俺達に向かって注がれる。


男「恥ずかしいからやめろよッ。迷惑行為は禁止な」

友「はははっ悪い、ばっちり見つかっちまったな」

男「…」

再びナツキに視線を戻すと、ナツキは遠くから呆れるくらいに元気よく手を振っていた。

男(集中しなさい)




300: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/13(日) 22:36:58.38 ID:IfJTifz0o



それからはおとなしく座って、ユウジにプレーを解説しながら時間を潰した。
お互いヒットすらろくに出ず、照りつける暑さで気だるそうな雰囲気がグラウンドやベンチから漂っている。


友「お、次ナツキちゃんの番じゃねぇ?」

男「だな」

友「なぁ、せっかくだしもっと近くで応援しようぜ」

男「え……お、おいユウジ。まずいって…女子部だぞ…」

友「中学上がりたてのピュアボーイじゃあるまいし、今更そんなこと気にすんなよ」

友「彼氏が近くで応援するってなりゃナツキちゃんもやる気全開だろ」

男「そういうのじゃねぇし…そんなことしなくてもあいつはやる気爆発してるって」

男「俺がこの数日どれだけ付き合わされたか…今も腰が痛いんだよ」

友「いいからいこうぜ。俺はお前と違って豆粒みててもおもしろくねぇんだよ」




301: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/13(日) 22:41:10.59 ID:IfJTifz0o


ネクストバッターズサークルの中でナツキはぶんぶんとバットを振り回し、気合十分といった面持ちでその時を待っていた。
そしていよいよ、初打席を迎える。
いつになく真剣な眼差しに、ふと懐かしい気持ちになった。

男(いまでもあんな顔できるんだな)

それは俺がよく知っているかっこいいナツキの一面。
好戦的でギラギラとした競技に生きる者の顔だ。


友「かっとばせー!」

男(がんばれナツキ)


1球目。

幼馴染「……ッ!」

空振り。まったくタイミングがあっていない。


2球目。

幼馴染「……あッ!!?」

ボール球を空振り。釣られてしまった。


3球目。

幼馴染「……うぐっ!」

低めのストレートをファウル。少しはタイミングがあってきたが惜しくもバットはボールの上っ面を叩いた。


4球目。

幼馴染「うげっ」

どまんなかのゆるい変化球をとんでもない空振り。簡単にひねられてこれで三振。


友「だめだったな…」

男「あちゃー…やっぱこんなもんか」




302: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/13(日) 22:45:17.32 ID:IfJTifz0o


男「ドンマイ」

俺の声はどうやら届いてはいないようだ。
ナツキは気付かずにすこし俯いたまま仲間の待つベンチへと引き下がっていった。



幼馴染「あーだめだ…こんなはずじゃ…」ブツブツ

部員A「どんまいどんまい。ファウルした球おしかったよ」

部員A「打てなくてもしかたないよ。相手は県大会まで進んでるエースだもん」

幼馴染「うー…」

部員A「わかるわかる。彼氏の前で良いカッコしたいもんね」

幼馴染「か、彼氏!? なんで」

部員A「ほら後ろのほう」

幼馴染「……? わっ、アッキーいつのまにあんな場所で観てたんだろ…」

部員A「どっち? 少しチャラいほう? 真面目そうな方?」

幼馴染「えっと…、右の…腕くんでて超怒ってそうなほう…」

部員A「日差しが眩しいだけじゃない?」

幼馴染「えーーあれ絶対怒ってるよ。なんで打てないんだこのバカ野郎!って心の声が聞こえてくるよぅ…」

部員A「いいなぁー、彼氏が観に来てくれるなんて。あたしのなんて大会ですら一度も観に来てくれたこと無いよ」

幼馴染「だから彼氏じゃなくてただの幼馴染!!」

幼馴染「最近ちょっと練習につきあってもらってたから…」

幼馴染「来ないって言ったくせに、こっそり成果を確認しに来たんだよ…」




303: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/13(日) 22:49:33.11 ID:IfJTifz0o


部員A「幼馴染ねぇ…わざわざ来るかなぁ。優しいね」

部員B「いいなー彼氏。てか結構イケてるかもー。3年の先輩?」

部員C「なにさっきからいるあの二人組、誰かの知り合い?」

部員A「右のほうがナツキちゃんの彼氏なんだってー」

ざわざわ

幼馴染「ほ、ほんとにそんなんじゃないってばぁー!」



友「おおう、さっきからなにやら女子の視線が熱いぜ」

友「おい! 夏真っ盛りだけど俺達にも春の到来ってやつかもしれないですぜ」ゴスゴス

男「……」

男「あの相手ピッチャーの女子…」ゴクリ

友「あぁん? お前ナツキちゃんというものがありながらそれはダメだって」

男「俺、ナツキの打席からずっと観察していたが…なかなか良い投手だな!」

友「あ?」

男「下半身がどしっとしててなおかつ上半身はとてもしなやかだ」

男「見ろよ。びゅんと腕がしなってリリースポイントのわかりづらそうな良い球を投げてる」

男「女子にしては結構球速も出てるんじゃないか?」

男「コントロールはアバウトだけど、ナツキの時の決め球といま投げた変化球のキレは良かった」

男「しかも変化球の腕の振りがほぼストレートと一緒なんだ!」

男「そりゃ、あいつもバットが出るはずだ。一巡目見た感じうちの部の打線じゃどうにもならないな…」

友「……」


男「…あれリードしたら楽しいだろうな…」ゴクリ

男「まぁ…本気だしたナツキのほうがレベルとしては上だろうけど…」

友「あ、わかったお前バカだろ」

男「…?」



第五話<助っ人>つづく


 




316: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 21:52:59.97 ID:bp0VSboto

第五話<助っ人>



カキンッ

幼馴染「あっ…」


ナツキはニ打席目も凡退した。
ナツキどころか他のチームメイトもまともに打てていない。
やはり見立て通りこの試合での攻略はむずかしそうだ。


友「おいアキ、おもったよりつまんねぇよ」

男「抑えられているからな。あとは暑さであの先発の子がバテるかどうかだな…」

友「いやそうじゃなくってよ。こう、なんていうか、観てて全然男心をくすぐらないというか」

男「くすぐるだろ! 確かに男子に比べて競技レベルは多少落ちるかもしれないけど、いままでも目を見張るプレーは――」

友「そうじゃなくってよぉ!」

友「バレーにしたってテニスにしたって、見てて眼福な一面はあるだろうが!」

男「がんぷく?」

友「同世代の若い女の子がみずみずしいお肌をさらして、ぽよんとしたエロい体ではつらつとプレーする姿は俺達男子を魅了するだろ!」

男「あ、あぁそういうことか…」

友「…あーあ。いいよなお前はナツキちゃんで見慣れてるもんな」

男「見慣れて……ない」

友「今の微妙な間で危うくぶん殴りそうになったぜ」






317: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 21:55:25.43 ID:bp0VSboto


男「ナツキは関係ないだろ」

友「最近どうよ。うまくいってんの」

男「なんだよいきなり。うまくもなにも……」

思い返してみると、この夏休みに入ってからはいつも以上にナツキと親しくした気がする。
あれれもない姿まで蘇って、一瞬よろけそうになった。


友「シーワールド行った?」

男「いや…まだ。ていうかお前よく覚えてたな」

友「なにやってんだよ! 連れて行ってあげなさいよ!」

男「う…考えてはいるけど」

友「考えるだけかよ!」

男「…そういえばこないだ水着買いに行ったんだ」

友「おお!? 一緒にか!?」

男「あ、あぁ…プールか海にでも行こうと思ったんだけど、あいつ着れるのスク水しか持ってなくて」

男「だからしかたなく、電車でショッピングモールまで」

友「しかたなくねぇ…まぁいいか。へへ」

ユウジは何が嬉しいのやら歯を見せて俺の背中を何度か大きく叩いた。

男「いたいっ、痛い…汗かくから止めろ」

友「プールか…プール。うん、定番だな! いいぞいいぞ。他には?」

男「他…? いや、特には…シーワールドは遠いし」

友「まだ夏休みはたっぷりあるだろ」







318: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 21:57:46.51 ID:bp0VSboto


男「お前…俺とナツキになに変な期待してるんだよ」

男「幼馴染だってば」

幼馴染で親友だ。
それ以上でもそれ以下でもない。

だけどあいつが異性であることはとっくにわかっている。
俺の中で、言葉にしがたいもやもやとした気持ちが募っていく。


友「はいはい、それ耳にタコができるくらい聞いたぜ」

友「お前さぁ、このままずっとナツキちゃんと幼馴染でいいわけ?」

男「……」

友「そりゃ長年一緒だと兄弟みたいな感覚が抜けないのかもしれないけどよ」

友「このままなーんもせずにほうっておくと、突然現れた誰かにひょいっと取られちゃうかもよー?」

男「な゙っ、お、お前」

友「いやいや。俺はいまバイト先のイケてるお姉さんに超夢中だから。そんな怖い顔すんな」

友「ふへへ、今日もこのあとシフト重なるんだぜ。ま、そうなるようにわざと入ったんだけどな」

友「なんの香水つけてんのかしらねぇけどいい匂いでさぁ…あれがオトナの色香か…」

男「…つ、付き合ってんのか」

友「いや全然? 攻略中ってとこ」

友「彼氏いないっぽいから来週の夏祭り誘いたかったんだけどよー、俺今年は地元の青年団の当番で会場スタッフやらなきゃだめなんだわ」







319: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:00:25.58 ID:bp0VSboto


男「そうか、もうすぐ祭りか…」

友「おぉ、思い出した。いいもんやるよ」

ユウジは尻ポケットから長財布を取り出して散らかったレシート入れをがさがさと漁り始めた。

友「あっれぇ、お前にやろうと思ってここに入れたんだけど」

男「ナツキの財布よりひどいな…」

友「あったあった♪ ほら」

手渡してきたのは6枚綴りになった黄色い割引券。
50円引きと書かれている。
いかにもお手製を印刷しただけのような、見た目はぱっとしない簡素な作りだった。
小さくたこ焼きと花火のイラストが添えられていた。

友「町内会でもらったんだよ。夏祭りの出店で使えるぞ」

男「もらってもいいのか?」

友「誘う口実にはちょうどいいだろ。なんてな。ニ人で行ってこいよ」

男「二人……ナツキのこと言ってる?」

友「あとで姉ちゃんと行ったなんてぬかしやがったら絞め上げるぞ」

男「ナツキとお祭りか…」

ユウジに無理やり握らされた券を見つめながら考えてみる。
きっとナツキはいろんな出店を満喫したがるだろう。

腕にはヨーヨーや金魚の入った袋をぶらさげて、頭にはヒーロー物の仮面。
手に持ったわたあめにかぶりついて顔をべたべたにして、笑顔で人混みを走りまわっている。
そんな光景を昔見たことがある。






320: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:02:53.18 ID:bp0VSboto


男(いまなら、浴衣きたりするのかな…)

男(あいつ…浴衣なんて似合うかな…走りづらいとか文句いいそう)

勝手な想像をめぐらして、ふっと苦笑する。

カキン!

男「!」

友「お、すげーあがった!」

グラウンドから響いた小気味良い音で我に返って、空を仰ぐと、白球が左翼に向かってまっすぐに打ち上がっていた。。

レフトを守るナツキは全力で走ってボールの落下点に入りグラブを掲げる。
気づけばいつのまにか試合は動いていたようで、相手チームの3塁ランナーはホームへのタッチアップに備えていた。

友「あーこれでようやく点入るか」

男(ナツキ…お前の肩なら刺せる)


幼馴染「帰らせる…もんかぁっ!」

ボールを捕ったナツキは素早い動きでホームへと鋭い返球をした。
投じられた球は男子顔負けの球速でぐんぐんと伸び、あっという間にキャッチャーミットに突き刺さった。
当然スタートを切っていた三塁ランナーは滑り込んでも間に合わずにタッチアウトでチェンジ。

誰も予想だにしない助っ人の見せた強肩っぷりに相手チームがどよめく。
ナツキはハイタッチで仲間に迎えられていた。







321: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:04:27.67 ID:bp0VSboto


友「はーーすげぇな」

男「だろ。肩壊す前ならもっとすごかったかも」

男「あいつ、あんなに嬉しそうな顔しちゃってまぁ…」

ナツキはすごい奴だ。
いつもバイタリティにあふれていて、見ているだけでワクワクする。
ああして生き生きとした本当の姿を見せれば、誰しもを簡単に魅了してしまう。


友「人気あるわけだわ」

男「え?」

友「ナツキちゃんだよ。結構クラスの男子でナツキちゃんの事好きって奴多いと思うぜ」

男「冗談だろ」

友「バカ言え。ナツキちゃんの魅力をリストアップしてみろ、ほらほら」

男「……元気。明るい…運動神経抜群…意外と優しい?」

友「おまけに健康的な美人だ。まぁ美人って呼ぶにはちょっと幼げだけど、それもある意味プラスだろ」

男「う…」

友「そう思わねぇか?」

男「わかんねーけど…まぁ…知ってる奴の中では…」

友「だろ? ってことで、俺の見立てではクラスでは1,2を争う人気だと思うぜ」






322: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:06:17.67 ID:bp0VSboto


男「そっか…」

男「……」

ナツキが他の男にそんな風に見られていると思うと、心がざわめいた。
心臓を締め付けられるような痛みがおさまらなくて、ユウジの言葉を素直に飲み込むことが出来ない。
呼吸も荒くなって、うだるような暑さとのダブルパンチでまたも一瞬足元がよろける。


友「アキ? 日陰移ろうぜ」

男(ナツキが美人……モテる…そうなのか…)

考えたことなかった。
というよりも長年気づかないようにしていただけかもしれない。
ナツキの存在があまりに近すぎて、逆に見えなくなっていた。

目の前のグラウンドではナツキ達の攻撃が始まっている。
先ほどのビッグプレーの興奮冷めやまぬナツキは、意気揚々と打席に向かい、またしてもカーブに手を出して凡打で終わった。

がっくりとうなだれた横顔が目に焼き付いて離れない。


男(俺はどうしたい? ナツキとどうなりたい)

男(もしナツキが他の男に告白されて…つきあったら…)

男(ナツキが、俺の知らない誰かと楽しそうに…)

そんな仮定を想像するのですら、いまの俺には苦しかった。






323: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:11:30.65 ID:bp0VSboto


友「大丈夫か? 水のんだほうがいいんじゃね」

男「い、いや…大丈夫」

友「悪いな。ちょっと煽って発破かけるだけのつもりだったんだけど」

友「予想以上にショックだったようで……」

友「でも、ナツキちゃんがひっそり人気あるってのは確かだから、お前も幼馴染ってポジションにいつまでも甘んじてぼやぼやしてられねぇぞ」

男「なぁユウジ…正直に答えてくれ。俺とナツキは…釣り合ってる…のかな?」

友「…釣り合うだぁ?」

男「俺あいつほど運動神経抜群じゃないし、かといって自慢できるくらい頭いいわけでもない」

男「人付き合い良いほうでもないし、モテたためしもない。バレンタインなんて女のナツキの方がたくさんもらってるくらいだ」

男「なんだか自分で言ってて情けなくなってきた」

友「アキ君よぉ」

ユウジは隠すこともなくため息をついた。
そして俺の肩を軽く叩いてから、ナツキの方を指差した。
俺はベンチに座って仲間と話をしているナツキをぼんやりと見つめながら次の言葉を待つ。


友「恋愛って、釣り合ってるとか対等の能力だとか、そんなんじゃねぇだろ」

友「お前がナツキちゃんの一番の理解者で、お前がナツキちゃんを一番笑顔にできる自信があれば」

友「それでいいんじゃねぇのか」

男「…」

友「少なくとも、数年近くから見てて、お前らがお似合いじゃないなんて思ったこともないぜ」

友「ほら」

こちらの視線に気づいたナツキが手を振りながら駆け寄ってきていた。







324: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:13:40.12 ID:bp0VSboto


幼馴染「大丈夫?」

男「え?」

幼馴染「さっき立ちくらみしてなかった? 日射病気をつけろって言ったのアッキーじゃん」

幼馴染「木陰座ってたほうがいいよ……あ、それともベンチくる?」

男「いや…大丈夫。それよりお前、もうカーブ捨てろ」

男「絶対に最初のカウントはストレートで取ってくるから、早めに振っていった方がいい」

男「タイミングはそろそろ掴んできただろ?」

幼馴染「…! うん! 絶対ヒット打ってアイス買ってもらうんだ!」

男「よし」

幼馴染「行ってくるね! 暑いから気をつけて!」 


友「…さてと、俺はそろそろバイトの時間だな」

友「ナツキちゃんのかっこいいとこは見られなかったが、かわりにいいもんは見れた」

友「じゃあなアキ。臆病になんなよ」

友「ナツキちゃんは三振怖がらずにあんだけガンガンスイングしてんだ」

友「お前だって、バット振ってみなきゃ何が起きるかわかんねぇだろ」

男「あぁ、サンキュ。お前誘ってみてよかったよ」

友「おえーきもちわるっ。じゃ俺にも今度アイスおごってねー」







325: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:16:23.02 ID:bp0VSboto


ユウジは荷物を肩にさげ、帰っていった。
試合はすすみ、終盤へと差し掛かる。

スコアは0対2
お互いのピッチャーが酷暑に負けずに粘投して、ヒットや四球は出つつも結局ろくに点が入らず終いだ。
このまま順当にアウトを積み重ねていくと、ナツキの打席は9回表に巡ってくる。


球審「ボールフォア!」

部員A「やった! ランナー出たっ! ナツキちゃんあとよろしく!」

幼馴染「…うん!」

さすがの鉄腕女子(勝手に命名)も9回のマウンドはかなりハードなのか、終盤は球威が落ち、コントロールも乱れ始めた。
1アウトとった次の打者にストレートのフォアボールを与えてしまう。

これでランナー1塁。
2点差だがナツキも打てばまだ勝てる可能性はある。

男(練習試合で同点延長は無しだとするとラストチャンスか…)

男(がんばれ…ゲッツーはダメだぞ)

ナツキは大きく深呼吸して打席に入る。
真剣なまなざしでじっと投手を睨みつけ、好球必打の気構えでバットを揺らしてタイミングを計っていた。

ピッチャーはランナーを気にしながら、小さいモーションで1球目を投じた。






326: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:19:38.33 ID:bp0VSboto


幼馴染「…ッ!」

男(危ねっ)

1球目はナツキが胸をそらして回避するような体に近いボール球。
当たればデッドボールで出塁できるが、ナツキの研ぎ澄まされた反射神経は自然と直撃を回避した。


2球目。

幼馴染「うっ」

男(よく我慢した)

いままでの打席でナツキがぶんぶん振っていた外側のストレート。
今度はちゃんとバットを出すのを我慢して、ボール2。
ナツキは再び呼吸を整える。


そして3球目。


男(甘い!)

予想通り、ストライクカウントを取りに来たどまんなかの甘いストレート。
ナツキの動体視力と反射神経で見逃すわけがない。
体が綺麗に回転し、どんぴしゃのタイミングでバットに乗せてふり抜いた。

幼馴染「…ッ!」

鋭い金属音と共にひっぱった打球はぐんぐんとレフトに向かって伸びる。

男(まずい、レフト正面か!? いや…)

幼馴染「あぁっ」

男「ナツキゆるめるな走れ!!」

思わず熱の入った大声が出ていた。

レフトの捕れる範囲かと思った打球は、グラブの先をかすめ、守備をくぐりぬけてポーンポーンとフェンスまで転がっていく。
強烈なライナーに目測を誤ったようだ。







327: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:22:09.13 ID:bp0VSboto


幼馴染「はっ、はっ」

快足を飛ばして2塁を蹴る。
先に出ていたランナーはホームへ生還。1点追加。
レフトはフェンス際まで転がっていった打球の処理にもたついている。プレーを見る限りナツキほど肩もつよくない。
ナツキは全力で走り続けてついに3塁も蹴った。ようやくレフトがバックホーム。もう間に合わない。

そしてナツキは大粒の汗をたくさん吹きながら、晴れやかな笑顔でホームベースを駆け抜けた。


幼馴染「〜〜〜っ! やったー♥」

部員A「ナツキちゃんすごい! ランニングホームラン!」

部員B「足速っ!」

またもハイタッチでチームメイトに迎えられるナツキ。
ナツキの1打でゲームは2対2の同点に追いついた。


男「ナツキーーー! ナイスラン!」

俺もおもわず声援を送る。

幼馴染「えへへっ、みてた〜〜〜?♥」

汗だくのナツキは腕が千切れそうなほど嬉しそうに手を振り返してくれた。
玉の汗が跳ねる。
ナツキは俺が手を振り返すまでずっとそうしていた。

心の中でもやもやと立ち込めていた暗雲なんてあっという間に吹き飛んでしまうほどの、青空のように澄み切った美しい笑顔だった。


男(ナツキ。やっぱり俺…お前のこと、大好きだよ)

男(お前といるといつもこんなに楽しくて、うれしいんだ)

男(だから俺は)

ユウジにもらった券の入った財布をぐっと握りしめる。
俺の心はもう決まった。






328: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:23:46.44 ID:bp0VSboto





   ・    ・    ・



結局ゲームはあのまま引き分けで幕を閉じ、俺達は自転車をおして雑談しながら帰路へつく。
あの話を切り出さないとと思いつつも、会話の流れは自然と今日の試合のことばかりになってしまう。
タイミングがつかめない。


幼馴染「あー楽しかったなぁ。やっぱ試合だよねー」

幼馴染「アッキーも女の子だったら一緒に出来たのに」

男「…」

幼馴染「最後気持ちよかったなぁ。あんなに本気で走ったのひさしぶり。帰ったらマッサージしなきゃ」

男「あれはうまく取られてたらレフトライナーだな。飛んだ方向がよかった」

幼馴染「んもう! 素直に褒めてよ」

男「…すごかったよ。めちゃくちゃかっこよかった」

幼馴染「えへへ…ほんと?」

幼馴染「なーんか助っ人のボクがこんなに活躍しちゃって申し訳ないって感じ」

男「お前、部活勧誘されたろ」

幼馴染「うん。新学期からでもいいから入ってって言われたー」

男「どうするんだ?」

幼馴染「とりあえず保留したよ。野球できるのは楽しいけどさ」

幼馴染「この肩じゃあんまり無理できないしねー」







329: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:26:28.17 ID:bp0VSboto


男「バッターならいけるいける。お前センスあるよ。あのチームなら即クリンナップだ」

幼馴染「そ、そうかな…まぁもともとボクはリトルの4番だもんね」

幼馴染「でもねぇ…ボクが部活入っちゃうと」

男「なにか問題あるのか」

幼馴染「アッキー暇になっちゃわない?」

男「…!」

ナツキは歩みを止めてじっと俺を見つめる。
先までの笑顔全開とはうってかわって、どこか寂しそうな表情に見えた。

男「どうして?」

幼馴染「ううん、なんとなく、そう思ったの」

よくみたらナツキのほっぺたになぜか薄く土がついていた。

男「ちょっとそのまま」

幼馴染「? え?」

俺は自転車のスタンドをおろして、土を払ってやろうとそっと頬に向かって手をのばす。
ナツキは一瞬ピクリと身をすくめたが、すぐに俺の意図を察したのか顔を差し出した。

男「とれた。いつのまに土ついたんだ。お前スライディングしたっけ?」


幼馴染「…ありがと。びっくりした」

男「あぁ悪いな急に触って」

幼馴染「…チューされるかとおもった」


男「え…」

夕暮れに染まったナツキのはにかんだ顔と、思いもよらないセリフにドキリと心臓が跳ねた。








330: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:28:35.57 ID:bp0VSboto


幼馴染「…うそうそ! なんで赤くなってるの」

男「いやぁ…夕日だろ?」

幼馴染「くふふ、わかってるよ。ボクも機嫌がよければ冗談くらい言うってば!」

幼馴染「ねー帰りにアイス買って〜」

幼馴染「あ、ホームランだから極上のやつね。ランニングだけど! ヒット2本よりも価値あるでしょ?」

男「……」

幼馴染「聞いてる? 約束をやぶる人にはチョーップ」ビシビシ

男「な、ナツキ…」

幼馴染「んえ?」

男「今度さ…夏祭、り…いかない?」

男「ユウジに割引券もらって、300円分…だけど…」

男「もし暇なら…お、俺でよければ一緒に。どうかな」

柄にもなく真面目な態度で誘ってみた。
何回も心の中で反復練習したはずなのに、いざとなるとうまく声が出なかった。
ちゃんといまので伝わっただろうか。ナツキの反応を見るのが怖い。





331: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:31:16.87 ID:bp0VSboto


幼馴染「……行く」

幼馴染「絶対行く」

数秒経ってからナツキは俺と同じくか細い声で返事した。
聞き取りづらかったが、決して聞き間違えではなく、確かに行くと言ってくれた。


男「まじか…じゃあ……約束…ってことで…」

幼馴染「…うん」

男「……楽しもうな」

幼馴染「…うん。ねぇアッキーそれってさ。こんどこそ…デート…なのかな?」

男「……」

男「……たぶん」

幼馴染「…そっかぁ。デートかー…」


俺達はそのまま言葉もかわさず、顔を見合わせることもなく並んで自転車をおしつづけた。
血が沸騰したみたいに恥ずかしさが急激にこみ上げてきて、いま自分でもわかるくらい俺の顔は赤いのだろう。

男(夕暮れ時でよかった…こんなの見られたら絶対からかわれる)

ナツキはどうだろう。表情を伺うことはできない。
俺からこんな誘いをうけて迷惑? 驚き?
拒絶されなかったから悪くは思われていないと信じたい。








332: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/15(火) 22:34:38.38 ID:bp0VSboto



男(デート…か…)

男(デート! うわぁ…どうしよ!)

男(ユウジ、俺誘っちゃった! ナツキを!)

口元がにやけるのをこらえきれほど、嬉しさがこみあげてくる。
人生ではじめてのデートの約束を、いま隣を歩く幼馴染のナツキとした。

きっかけを与えてくれたのは親友であるユウジだ。
最初は俺とナツキの関係性に無闇に踏み込んできてかき回す迷惑な奴だと思っていた。
俺の心に太い棘を突き刺して苦しめたこともある。

だけどいま思えばすべて俺を心配して焼いてくれたおせっかいだ。
おかげで俺は自分の気持ちに気づいて、ようやく一歩前進することが出来た。

男(助っ人サンキューな)

男「…なぁ、帰りウチよってく?」

幼馴染「ボクシャワー浴びたいから…」

男「あ、そっか。じゃあ今日は解散して」

幼馴染「だから寄ってく…借りるね。家開いてなかったらやだし」

男「そ、そうか……わかった」

幼馴染「今日は暑かったねー…」

男「そうだな。まだこの時間でも暑い」

幼馴染「うん。帰って一緒にアイス食べよ」

男「…おう」



第五話<助っ人>おわり



  




334: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/15(火) 22:38:46.69 ID:x+dH0kL50

乙!
この感じたまりませんな




335: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/15(火) 23:08:04.31 ID:ecQB0DRdo

いいねええ




351: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 21:39:18.47 ID:3dDDihlyo




第六話<夏祭り>



幼馴染「よかったぁ。今日は一日晴れそうだね」

男「そうだな。夕立こなければいいけどな」

幼馴染「うん…せっかくのお祭り……デ、デートだもんね」

男「……ぉ、おう」


ナツキを誘って数日経った。
あれから日を追うに連れて緊張の度合いが高まっていく。
そしてついに迎えた当日。

ナツキはいつも通り朝っぱらからうちに顔を出したが、
アイスをたかることもなく、勝手にかき氷をつくりだすこともなく、
ちゃぶ台の前に座っていたっておとなしくテレビを見ていた。

幼馴染「あ、そうだ」

特にやることのないナツキはおもむろに財布を机の上にひっくり返して、手持ちの小銭を数えはじめる。

幼馴染「いくらもってたかなぁ」

男「おいおいここで数えるのかよ」




352: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 21:40:55.18 ID:3dDDihlyo



幼馴染「ぎゃっ、873円しかない!」

男「ユウジからもらった300円分の券もあるぞ」

幼馴染「それでも少ないよ…あーいろいろ食べまくる計画が…」

男「それ全財産? お前また無駄遣いしたな」

幼馴染「無駄じゃないもん……」

男「あーあアイス我慢しないから。せっかくのお祭りなのに金欠はやぁねー」

幼馴染「うう…」

ナツキは食欲旺盛なのであまり食に関して我慢することはない。
特にアイスバーやキャンディ等、口唇的な欲求の満たされる食べ物が好きだ。
放っておけば食べ終わった後の棒をずっと噛んだり舐めたりしている。
昔から自身の欲求に対してストレートな奴だ。


男「食べてばっかりなのによく太らないな」

幼馴染「その分いっぱい運動してますから、てへへ」

男「今日もやる?」

幼馴染「うん!」

そう言って炎天下の庭に出て日課となったキャッチボールをはじめる。
今日も肩の調子は良さそうだった。

 




353: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 21:44:10.01 ID:3dDDihlyo

 


   ・     ・     ・



幼馴染「あっつい! 退散退散!」

男「あー今日はやばい…座ってるだけで汗だく」

幼馴染「シャワー借りるっ」

男「俺もいますぐ浴びたい…お前自分ちで入ってこいよ…」

幼馴染「こっちくるまでにまた外で汗かいちゃうじゃん!」

男「知るかよ! あ、こらっ…待―――」

ナツキは早い者勝ち上等とばかりに、替えのシャツとバスタオルの詰まったかばんを拾い上げて風呂場に向かって走っていく。
いつもこの調子で俺は熱気がむんむんとした室内に取り残される。

運動後で体の芯から熱されたような暑さは、扇風機や風鈴で紛らわすこともできない。
汗ばんだシャツが肌にはりついて気持ち悪い。


男「はぁ…あれでも一応女だししかたないか…」

男「エアコン業者まだかよ…」

先日父親を電話で説得してようやく我が家にも新型のエアコンが取り付けられることになった。
がしかし、この時期業者はかなり込み合うようで、肝心の取り付け作業にくるのはまだしばらく先のようだ。

ひさびさに帰宅して顔を見せた姉はあまりの暑さに不満たらたらで、
「よくこんな家で過ごせるね」などと吐き捨てて、友人の下宿先へと逃げていった。





354: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 21:45:54.48 ID:3dDDihlyo




  ・   ・   ・




俺がシャワーからあがって居間に戻ると、ナツキは俺の布団の上で寝転がっていた。

男「おーい?」

男「お客さーん、なに勝手に寝てんだ」

幼馴染「…スゥ」

男「あ……まじで寝てんのか」


扇風機の微風でナツキの生乾きの前髪がゆれる。
暑さにまいったように四肢をのばしてぐったりとしていて、動物園のシロクマみたいだ。

寝返りをうつとふとましいお尻がぐるんとこちらを向く。
ショートパンツからあふれた張りのある太ももが眩しい。

幼馴染「んぅ……ぁ…」

男「……」

男「日射病ってことはないだろうけど…」

男(デート当日だってのにこの緊張感のなさ……)

ナツキはあまり今日のことは気にしていないのだろうか。
ここ最近お互いの間でややギクシャクした雰囲気はあったが、俺がそうだっただけかもしれない。
ナツキのあまりに代わり映えのない姿に一瞬不安を覚える。

男(本当に今日デートなんだよな?)






355: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 21:48:46.00 ID:3dDDihlyo



幼馴染「…ふぁ…」

男「眠いのか?」

幼馴染「んー……」


どうやら半分起きているようだ。
ナツキはうにゃうにゃと唸りながらゴロゴロ寝返りで布団を行ったり来たり。


男(俺の布団なんだけどな…)

布団カバーを毎日まめに洗濯しているわけではない。
夏場ということもあって多少俺の匂いが染み付いていると思うのだが、あまり気にしていないらしい。

こうも抵抗なく異性の布団に寝転がることが普通できるだろうか。
ナツキが考えなしと言えばそれまでだが、
こうした態度を見る限り、俺に対して異性という意識をもっているのかどうかがはっきりしない。

好きだからデートを受けてくれたというよりは、俺の頼みだから聞いてくれただけ、だと邪推してしまう。

男(お前ほんとは俺のことどう思ってんだ?)

男(もし今日のデートがダメだったら…俺達の関係はどうなるんだ)

ただの親友で幼馴染のままでいるのか。
それとも気まずくなって顔を合わさなくなるのか。
後者は考えづらいが、可能性として有り得ないことではなかった。





356: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 21:51:25.88 ID:3dDDihlyo

 

男(逆にデートが楽しくて関係が今以上に進んだら?)

ナツキと手をつなぐ。
ナツキと腕を組む。
ナツキとキス。
ナツキと……。

男「……」

目の前で寝転がる柔らかそうな体をみていると、あらぬ想像が溢れ出しそうで必死に頭を振った。
うちわで顔を何度も扇いで熱を冷ます。

シミュレーションするにはまだまだ早い。
俺はナツキに面と向かって好きだとも告げていない。
せめてそういうことを考えるのはお互いの気持ちを確認しあってからにしようと心がけた。


男「じゃあ昼飯つくっとくから。いい加減に起きてこいよ」

幼馴染「ふぁぅ……」

聞いてるのか聞いてないのかはっきりしないあくびのような返事をしてナツキは眠り続ける。
ついには布団の外で鎮座していたクマゴロー(ナツキ命名)を抱き寄せて、枕かわりにして本格的に眠りはじめた。


男「……」

デート前にこんなぐうたらした態度をみせられては、せっかくここ最近で高揚した気持ちも冷めてしまいそうだ。
異性だと思うにはあまりに可愛くない態度にため息が出る。


男(どうせ祭りに行ってもいつもの調子と変わらないんだろうな)

男(ま、それでもいいけどさ…)

俺はナツキに女子らしさを求めるのを半ば諦め、なるべく考えないようにして炊事に励んだ。




357: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 21:54:20.65 ID:3dDDihlyo

 


   ・    ・     ・




男「できたぞ」

昼のメニューは夏野菜と鶏肉のグリルに付け合せでインスタントのかぼちゃの冷製スープ。
毎日遊びに来るナツキのために、飽きないように栄養が偏らないように考えて用意している。
いまよりずっと雑に扱っていた頃はそうめんの5連投もよくあることだった。


男「おーいおきろ」

幼馴染「うぅん、ゆ…」

スプーンでだらしなく緩んだ頬をぺちぺち叩いても、むずがるだけで起きる気配がない。

男「ご飯できてるぞー」

幼馴染「ん……んー?」

男「…んーじゃなくて、昼ご飯」

男「……しかたない」

揺すっても叩いても起きないナツキにムッときて、俺は下卑た笑いを浮かべ冷蔵庫から氷をひとつとりだす。
そしてナツキのシャツの背中側の襟のつまんで広げて、中にひょいと滑りこませた。


幼馴染「んひゃあ! つめたっ」

男「おきろよ」

幼馴染「なっ、なぁっ、なにが!?」

幼馴染「あ〜〜〜ひどい!冷たい冷たいっ!」

男「おはよう」

幼馴染「こいつかー…はむ…」ボリボリ

幼馴染「……」ボリボリ

男「食うなよ。昼飯できてるぞ」

幼馴染「…んっぐ。あ、ほんと? わーい」






358: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 21:56:15.99 ID:3dDDihlyo


幼馴染「いただきまーす」

幼馴染「わー鳥肉だ…。なにこれ焼いたの?」

男「味付けしてオーブンでグリル。野菜も全部食えよ」

幼馴染「うん! この味好きだから全部食べれる。なーんか最近豪華だよね」

男「そう?」

幼馴染「だってさ、お前なんかこれでも食っとけー!って鍋とそうめん渡されたりしたことあるよ」

男「…」

幼馴染「くふふ、アッキーの心境の変化ってやつだね。ボクをもてなす気になったんだ」

男「いや、おばさんからお前の食費もらっただけだから」

幼馴染「え゙っ!? そうなの!?」

男「うん。お前が泊まった日の翌日くらいな。すこし多めにくれたから、それ充てただけ」

幼馴染「なーんだ。じゃあ遠慮なく食べれるじゃん」

男「お前いままで生きてきて遠慮したことねーだろ!」

幼馴染「ってことはぁ、そのお金でアイス買ってくれる?」

男「もうないです」

幼馴染「ちぇー。デザートもないの?」

男「どうせ夜に甘いもん食うだろ」

幼馴染「そっかぁ…わたあめとか…ラムネとか、チョコバナナとかねー♪」





359: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 21:57:52.82 ID:3dDDihlyo


幼馴染「あ、でもボクお金が……なんてことだ」

男「小遣いもらえないのか?」

幼馴染「毎月はじめにちゃんともらってるもん…」

男「祭りの時くらいっておねだりしても無理?」

幼馴染「無理だよぉ…最近さぁいろいろ必要なもの買ってもらったもん」

男「じゃあ、えっと手持ちの800円?そこそこでやりくりするしかないな」

幼馴染「うん……あーいろいろ食べたかったのに」

幼馴染「金魚すくいもしたいし射的もしたいし…お化け屋敷もお金とるし…」

男「時には我慢も必要だぞ」

幼馴染「デートなのに……」

ポツリと漏らすナツキの言葉に心臓が跳ね上がり、スプーンを落としそうになった。
たしかにデートだ。それもお互いにとって人生初の。
しかし、だからといって無い物ねだりするのはよくない。








360: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 22:01:54.72 ID:3dDDihlyo

 
男「あくまで花火大会が目的だし、腹いっぱい食べなくてもいいだろ」

男「それにお金が無いなら無いなりに、どれにしようか迷うのも楽しいと思うぞ」

幼馴染「…そっか!」

幼馴染「アッキーと一緒ならきっと楽しいよね」

悩みが吹っ飛んで無邪気に笑いかけてくるナツキ。
そんなこと言われては気恥ずかしくてはっきりと目を見ることができない。

男「お、おう……あのさ、スープ口元ついてるぞ」

幼馴染「…?」

ナツキは舌をぺろりとだしてそれを舐めとった。

ここ最近そんな何気ない仕草ひとつひとつにドキドキしてしまう。

男(うわぁ俺って……)

なんだかんだ言いつつもナツキのことが好きすぎると自覚していた。




361: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 22:03:56.90 ID:3dDDihlyo



昼食後はテレビで甲子園をみたり、二人で宿題をしながら過ごした。
そしてようやく涼しくなり始めた夕刻。

男「もうちょいしたら祭りいくか…」

幼馴染「じゃあボク1回家帰るね」

男「なんで」

幼馴染「んー、荷物置きに行く。あと、もしかしたらお母さんお小遣いくれるかもしれないし!」

男「そうか…じゃあまた」

幼馴染「うん!」

ナツキは荷物をかかえて慌ただしく帰っていった。

男(てっきりこのまま行くかと思ったのにな)

男「さてと……俺も用意するかな」



   ・   ・   ・



男「……来ねーな」

それから20分ほど待ってもナツキは戻ってこなかった。
家は目と鼻の先なのでいつもなら5分もかからずに戻ってくるが、今日に限って遅い。

男「何してんだ…」

メールを送っても返ってこない。
小遣いをもらうのに必死でおばさんの説得を続けているのだろうか。
あるいはトイレにこもっているか、もう一度シャワーでも浴びているのか。
事故の線はない。外で大きな物音がすればすぐわかる距離だ。

男「おせぇ…」

俺は居ても立ってもいられなくなり、ナツキの家を訪ねることにした。

 





362: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 22:07:40.84 ID:3dDDihlyo


ナツキの家のチャイムを4回連続で鳴らす。
昔から登校時の日課になっているので特に抵抗はない。
ナツキの家族にとってこれは俺が来たという合図にもなっている。

「はぁい」

ナツキの母親はいつも上機嫌な少し高い声で返事する。


男「おばさん、ナツキいる?」

「アキくん? ごめんねー、ちょっと待ってね。ほらナツキ」

男「おいナツキーいるのか」

「ナツキ。アキくん待ってるよ」

幼馴染「うー…」

男「…?」

ナツキはどうやら家にいるようだが、何故出てこないのだろう。
うーうーと唸り声が聞こえるだけで、なにがあったのか検討がつかずもやもやする。

男「どうかした? 腹痛くなった?」

「それがねぇ。くすくす、恥ずかしいんだってさ」

おばさんが笑いをこらえたような調子でそう告げると、
玄関の戸が少しだけ開いて、ナツキがひょっこりと頭だけを外に出した。

男「お前遅い。何してんだよ」

幼馴染「……」





363: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 22:11:36.28 ID:3dDDihlyo


男「祭り行くんだろ?」

幼馴染「…行く、けど」

男「どうしたんだよ? なんかあった?」

幼馴染「ううん…そうじゃないんだけど…」

あれだけ楽しみにしていたはずなのに、こうして怖気づいたように出てこないのは何故だろう。
押し入って引っ張りだそうとした矢先、ナツキは首を振ってもにょもにょと呟いた。

幼馴染「アッキー笑わないでね」

そして扉が大きく開かれて、ナツキがようやく姿を現した。
それと同時に鮮やかなオレンジ色が視界に飛び込んできた。

男「ナツ…キ…それ…」

幼馴染「……えへへ」

見たこともない美しい姿だった。
ナツキは橙色の浴衣を身にまとい、水色の涼しげな帯を巻き、足元はいつものランニングシューズではなくしっかりと下駄を履いている。
頭には可愛らしいかんざしまで付けていた。


男「お前…」

男(浴衣…着てたから遅かったのか)

男(ナツキの…‥浴衣……)

俺はナツキの新鮮な格好に、言葉を失って玄関前に立ち尽くす。
ナツキもうつむいたまま動きだす気配がない。

そんな俺達を見かねたのか、おばさんがナツキの背後に立ってトンと肩を押し、いってらっしゃいと手を振った。





364: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 22:15:07.46 ID:3dDDihlyo


横に並んで祭り会場までの道のりを歩き出す。
15〜20分も歩けばついてしまう近場だ。
しかしナツキの足元は歩き慣れない下駄履きで、いつもと同じペースで歩くことは出来なかった。

男「……」

幼馴染「……」

無言が続き、ナツキは少しうつむき加減に時々こちらを探るような視線を投げかけてくる。

男(やべっ、こういう時なんか言わなきゃな。ええと、ええっと)

祭りに行くことを決めたあの日からたくさん脳内でシミュレーションしたのに、これは俺にとって不測の事態だった。
まさか、まさかナツキが浴衣を着てくるとは思わなかった。
ムードもへったくれも無いいつも通りのカジュアルなボーイッシュ風で行くものだと思い込んでいた。
それだけに、この眩しいほど綺麗な姿を見てパッとうまい言葉が出てこない。

男(褒める…褒める…ええっと)

男「……。に、似合ってる。浴衣。色も綺麗で」

幼馴染「…うん」

結局そんなありきたりなことを小さな声でしか言えない自分にうんざりした。

男「お前オレンジとかおいしそうな色好きだもんな」

幼馴染「ううん、アッキーが好きかなって思ってこの色にした…」

男「え……あぁ、そうなんだ…」

男(俺のために?)

男「買ったのか、それ…全部」

幼馴染「うん……」

幼馴染「この前アッキーとお祭り行くって言ったら…買ってくれた…えへへ」

男「……よ、よかったな」






365: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/18(金) 22:18:44.00 ID:3dDDihlyo



あのナツキが俺のために浴衣を着て来てくれた。
こんなにうれしいサプライズがあるとは思わなかった。

それだけに俺はひどく動揺してしまい、恥ずかしくて顔を上げることすら出来ない。
体温がじりじりと上がっていくのは夏の暑さのせいではない。
ナツキは俺のそんな雰囲気を察してか、くすくすと上機嫌に笑った。


幼馴染「どう? びっくりした?」

男「…うん。びっくりした。誰かとおもった」

幼馴染「…ね? 言ったでしょ」

男「え?」

幼馴染「ボクだって女の子らしい格好したら可愛いんだからな」

はにかんだような笑顔で俺を見上げる。

男「……そうだな…可愛い、と思う」

男「可愛いよ…ナツキ」

間違いなくそれは俺の本心だった。
歩いたまま、ナツキの目の前に左手の平を差し出す。
ナツキはその上に自身の右手の平をそっと重ねて、何度かすりあわせたあと、おそるおそる指を絡めてきた。
俺もきゅっと握り返して、ナツキの手の暖かさを感じ取る。


幼馴染「アッキーの手、おっきいね」

男「お前のはちっちゃいのによくあんな球投げられるな」

幼馴染「…えへへ」

幼馴染「お祭り…楽しみだね」

男「…あぁ」

お互いのすこし汗ばんだ手のひらをぴったりとくっつけて、俺達は夕暮れの河川敷をゆっくり歩き続けた。



第六話<夏祭り>つづく


 









386: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:14:05.49 ID:25a8zhFco

第六話<夏祭り>つづき



幼馴染「ついたついた」

男「おー結構人来てるな」

幼馴染「…ボクお腹空いてきちゃった」

男「何か食うか…あ」

祭り会場の入り口では、はっぴを着て鉢巻を締めた若い男が会場のパンフレットを配っていた。
どうにも見覚えのある横顔にギクリとする。
そして彼は俺達を見つけるや否や、笑顔で駆け寄ってきた。

友「よぉアキ!ナツキちゃん」

幼馴染「あれーユウジ君何してるの」

友「何って、俺今年は当番なんだよ。あーめんどくせぇったらありゃしねぇよ」

男「楽しそうにナンパしてたように見えたけど」

友「なーそれよりアキ」

ユウジは馴れ馴れしく肩を組んできていたずらっぽく笑う。

友「やるじゃん…もちろんお前から誘ったんだよな?」

男「…!」

そこでようやくナツキと手をつないでいたことを思い出して、
カァっと瞬時に体が熱くなり、ふりほどいてしまった。
ナツキもそそくさと離れてあたふたしている。




387: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:15:24.47 ID:25a8zhFco


男「こ、これはな」

幼馴染「…そ、そう、ちょっとはぐれそうになったから」

友「あれあれぇ、まだこの辺りはごった返してるわけじゃないのになぁ」

幼馴染「うう…」

男「からかうなって」

友「冗談。にしても、ナツキちゃんも浴衣を着れば変わるもんだなぁ。へーあのナツキちゃんがねぇ…」

幼馴染「えっへへ、そお? 買ったんだよ」

男「馬子にも衣装ってやつだろ?」

友「その言い方はないんじゃないか? こんな奴が独り占めなんて世の中間違ってる」

客「すいません、パンフレットくださーい」

友「あいよ! ……ま、ふたりとも俺の分まで楽しんでこいよ、で・え・と♥」

幼馴染「ち、ちがっ……ちがわないけど! で、デートっていうか、い、いやぁこれはねっ」

男「なに取り乱してるんだ。こっちまで恥ずかしくなるだろ」

友「あははは今年の夏は例年以上にアチーなぁ」

男「お前やっぱり冷やかしたかっただけだろ!」

友「はいはいもう行った行った! 俺は仕事があるんでね」

幼馴染「そだ、ユウジくん割引券ありがとねー」

友「おう!」

そして俺達はユウジに手を振って別れ、混雑した屋台通りへと入っていった。





388: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:17:06.25 ID:25a8zhFco

 

幼馴染「ねぇねぇ…」

男「ん?」

幼馴染「もう一回手握って欲しいな」

今度はナツキが遠慮がちに手を差し出してくる。
今日は慣れない下駄履きに、他人との接触に気を使う新品の浴衣姿。
こちらが思っている以上に人混みは歩きづらいのかもしれない。

はぐれても面倒だと思って再び手をつなぐ。
ナツキの手はさっきよりも更に汗ばんでいた。


幼馴染「デートだもんね」

男「うん…デートな」

幼馴染「ユウジくんに…見られちゃったね…」

男「あいつの思う壺だったわけだ」

男(感謝はしてるけど)

ナツキは受け取ったパンフレットをうちわ代わりに必死に顔の熱を冷ましていた。
パンフレットには花火大会開始の時刻と場所の詳細、祭りの屋台の簡単な地図が記載されていた。

男「えっと、お前なにから食べたい?」

幼馴染「まずはたこ焼き!」

男「たこ焼きね。じゃあこっちか」






389: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:20:00.06 ID:25a8zhFco


こうしてナツキの手を引いて祭りを回るなんて夢にも思わなかった。
いつもなら人混みをかきわけてでもあちこち突っ走っていくナツキが、俺の隣をゆっくりと歩いているのが新鮮だ。

最初に見つけたたこ焼き屋で1パック8個入りを買ってナツキに手渡す。


幼馴染「わー。おいしそ。あつあつだね」

男「歩きながら食べるなよ?」

男「もしぶつかって落としたら、せっかくのが汚れちゃうだろ」

まわりを見渡すと来場客はみんな立ち食いや歩き食い、または植え込みの石に腰掛けたりと思い思いの場所で食べている。

幼馴染「どうするー?」

男「ベンチは流石に空いてないしなぁ…」

幼馴染「ボク立ったままでもいいよ」

男「じゃあそうするか」

通りの邪魔にならないようすこし外れた場所に立って、ナツキと向い合ってたこ焼きをつつきはじめた。


幼馴染「はふっ、あちゅ…」

男「がっつくから…冷まして食えよ」

幼馴染「うう…あひゅ、あふい」

男「麦茶ならあるけど」

幼馴染「ちょうらっ……んぐ、んぐ」

幼馴染「はーー、口のなか火傷しそうになった」





390: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:22:30.87 ID:25a8zhFco


幼馴染「なかトロットロであつすぎるから食べる時気をつけてね」

男「…爪楊枝一本しか入ってないんだけど」

幼馴染「あ、ほんと? くふふ」

男「なんだよ……しかたない、もう一本もらってくるか」

幼馴染「待って。はい、あーーん」

男「しないしないしないっ。見られるから」

幼馴染「みんなやってるし、ボクたちのことなんて誰も気にしないよ〜」

男「…」

幼馴染「アイスの時は食べてくれたのに。今日はデートって言ったのに…」

男「…わかった。いただきます」

表情の曇るナツキをみて観念して大口をあける。

男(こういうこと積極的にするやつじゃないとおもうんだけどなぁ…)

しかしこみ上げてくる恥ずかしさ以上の嬉しさは抑えられない。

幼馴染「あ、このままじゃ熱いよね…ふー、ふー…ふー」

ナツキは吐息で一生懸命たこ焼きを冷ましてくれる。
ナツキのことを意識しはじめてからというもの、仕草や行動のひとつひとつが可愛く思えて仕方がない。






391: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:25:06.54 ID:25a8zhFco


幼馴染「おいしい? 中あつあつトロットロでしょ?」

男「うまい。たこちょっと小さいけど」

幼馴染「おいしいね。もう一個どうぞ。あーーーん」

男「ナツキさ…お前恥ずかしくないのか」

幼馴染「ん…恥ずかしい…ヨ。でもこれが定番だって書いてあったから」

男「え?」

幼馴染「え、あっ…うーんなんでもない!」

男「あつっ、あつっ冷まして、あひぃ」

幼馴染「ああ〜ごめんねっ! お茶っお茶飲んで」


その後数分かけてゆっくりたこ焼きを楽しんだ。


幼馴染「たこ焼きおいしかったねぇ…次何たべよっかなー」

男「ナツキナツキ。口元にソースついてる」

幼馴染「ん? れろ…」

男「まだついてる」

とりだしたティッシュでナツキの口元を拭う。
するとソースだけでなく、薄桃色の何か別のキラキラした物がわずかに付着していた。

男「あれ? お前口紅してた?」

幼馴染「あ…う、うん…口紅じゃなくてリップだけど」

幼馴染「浴衣着せてもらう時に、お母さんがちょっとだけつけて行きなさいって…塗られた」

男「そっか…」





392: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:29:34.70 ID:25a8zhFco


ナツキの唇をじっと見つめる。
ぷるんと張りのある形の良い唇は、確かにいつもと比べて少しつややかさを増しているように見える。
といっても普段あまり注視する部位ではないので、何をどれくらい塗ってあるのか男の俺には検討もつかなかった。


男「ナツキも化粧するんだな。すっぴんしか見たことないな」

幼馴染「お化粧ってほどじゃないけど…ていうか自分でしたわけじゃないってば…」

男「……」

幼馴染「アッキー…なに?」

ナツキがキョトンとした表情でこちらを見つめ、首をかしげた。
思わぬ感慨深さについジーっと観察しすぎたようだ。


男「い、いや…次行こうぜ」

幼馴染「うん」

本音では触ってみたいと思った。
どんな感触なのだろうか自分の物とはやはり違うのだろう。
いろんな想像が頭のなかを巡る。

男(もし…キスしたら…どんな感じなんだろう。柔らかいのかな…)

男(ナツキはしたことなんてないよな…?)

俺の知る限りでは、ナツキは異性との交際を経験したことがない。
俺もそうだ。
いつも二人で一緒にいたため、他の誰かが深く入り込む余地なんてなかった。

だから実はお前たちは付き合っているんじゃないか、いつ籍を入れるんだなどと散々周りにからかわれ続けた。
それでもからかわれる鬱陶しさよりも、俺達はお互いに親友で居続けることの楽しさを選んだ。

ナツキは心の底から親友だと誇ることができる。
むしろ幼馴染や親友等と言葉で形容するよりも、ナツキは俺にとって『ナツキ』というひとつの存在でしかない。






393: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:32:22.38 ID:25a8zhFco


男「俺焼きそばでも食べようかな。お前はあと何だっけ」

幼馴染「ゲソ焼きでしょ。チョコバナナでしょ。あとラムネとー…リンゴ飴も欲しいなぁ」

男「そんなにか……あったらな」

幼馴染「あとねー、ヨーヨー釣りと射的! これはやらなきゃ!? でしょ?」

男「金ないくせに。結局おばさんにもらえたのか?」

幼馴染「ちょっとだけねー♪ かわりに家の手伝いするって約束したんだ」

男「そっか、それなら良かったな」


屋台の連なりを一軒一軒注視しながらゆっくりと歩いていく。
規模の大きい花火大会なので、屋台の数は短時間では見て回れないほどたくさんある。
その中からナツキはめぼしいものを探しては、強く手をひっぱって連れて行こうとする。


男「おいおい、下駄で走ろうとするなよ」

幼馴染「アッキー! これっ、これっ!!」

やや興奮気味のナツキが何を見つけたかとおもえば、指差す先にあったのは的当て屋だった。
しかしそれはコルク銃を使って景品を撃ち倒す射的ではない。

かなり広くて奥行きのあるテントの最奥には丸いボードが立っていた。距離は目算で15mくらいだろうか。
そしてパイプ椅子に腰掛けた店員の側のカゴには、使い古した野球の球がたくさんつまっている。





394: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:34:40.57 ID:25a8zhFco


男「げ……ピッチングゲーム…」

幼馴染「これやろうよ〜〜♥」

的当て屋「的当てやっていくかい? 1回300円だよ」

幼馴染「アッキーこれこれ」

・3球共どまんなかに当てた方には1等最新の携帯ゲーム機プレゼント!

と書かれていた。


幼馴染「ほしいなぁ〜〜、とっていい?」

的当て屋「お嬢ちゃん自信あるのかい? まだ今日は取れた人いないよ」

幼馴染「うん! やるやる」

男「やめとけって、お前浴衣だぞ」

幼馴染「あー…うん…」

なんだか納得してないふてくされた表情。

的当て屋「そうだねぇ。女の子にはちょっと遠い距離だよね」

的当て屋「じゃ、連れのお兄さん、彼女にイイトコ見せていくかい」

初老近くに見える髭面の店員はにこやかな笑顔で俺に軟式ボールを渡してくる。

男「彼女って…」

幼馴染「取ろうよ。絶対とれる!」

男「わかったわかった。じゃあ300円…」

的当て屋「どうぞ。3球ね」






395: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:37:23.69 ID:25a8zhFco


男「自信あってもこういうのって案外あたんねぇんだよなぁ…」

幼馴染「実際のマウンドからホームよりも近いよ。行けるって!! よゆーよゆー」

傍観するだけのナツキが隣でぎゃーぎゃー騒ぐのを聞き流して、俺は呼吸を整えて1球目を軽くなげた。


ひゅっ

男「あれっ」

カツンッ

幼馴染「う〜ん……なにそのへなちょこボール」

丸いボードになんとかあたりはしたが、ど真ん中から程遠い端っこだ。
店員を伺うと首を振って惜しい残念と言われた。
残り2球。


男「よっ……あ、あれ」

次は暴投。的にすらあたらず手前でワンバンしてしまった。

男(やば…力みすぎた…なにやってんだ)

やはり人相手にキャッチボールで投げる時とは感覚が違う。
自分のコントロールはこんなにアバウトだったのかと知って落胆してしまう。

幼馴染「どこ投げてんだよー。へったくそー。やめちまえー。ぶーぶー」

男「野次ってんじゃねぇ」







396: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:40:37.27 ID:25a8zhFco


これではナツキにいいとこ見せるどころか、笑われてしまう。
的の後ろに備えられたネットにはたくさんのボールが転がっていた。
きっと女の手前ムキになった男たちがたくさんリトライしたのだろうとなんとなく予想がつく。

男(なんであたんねぇんだ…)

ラスト一球。

男(頼む…!)

神にも祈る気持ちで投げたボールは良いノビでビュンとまっすぐに的へと向かっていく。
そして、的のどまんなかの赤いマークからやや右上をうまく射止めて跳ね返った。

男「あたったか!?」

幼馴染「やたっ!」

的当て屋「残念少しはずれていたね」

幼馴染「えーー。ギリギリあたったように見えた」

男「あれあたってないの?」

的当て屋「あたっていればボールに赤い塗料がつくんだ」

店員は転がっているボールを確認しに行く。
しかしやはりだめだったようだ。

的当て屋「的にはあたったからこれ4等のおもちゃね」

男「…」

手渡されたのは名称不明の振れば紙がしゅるしゅると伸びるおもちゃだった。

男(いらねぇ…)

頭を上げながらナツキに差し出すとむっとした顔でうけとり、何度か頭をばしばしと伸ばした紙で叩かれた。

男「すまん」





397: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:43:57.05 ID:25a8zhFco


幼馴染「もーー、そんなへたっぴで恥ずかしくないの」

男「結構難しいんだからな!」

ウォーミングアップで肩をつくった状態でもなく、いきなり軟式球をぽいぽい投げて全部どまんなか必中となれば、
やはりそれは難しいことだと思った。
店員の男はそれをわかってやっているため、効率よく見栄っ張りの男たちから金を回収しているようだ。

男(くそ…)

的当て屋「もう一回チャレンジするかい?」

幼馴染「やる」

男「お、おい…もう次いこうぜ。俺3球も真ん中当たる気しない」

幼馴染「ボクがやるの! おじさんお金っ」

的当て屋「えぇ!? お嬢ちゃんが?」

男「できるわけないだろスパイクもないのに…おいおい」

ナツキは金を払うやいなや、下駄を脱ぎ捨て裸足で敷かれた土の上に立った。


幼馴染「見ててよね」

ナツキは浴衣のまま綺麗なワインドアップを見せる。
さすがに足はいつもみたいに高くあげることはできなかったが、綺麗なフォームだ。
鮮やかな浴衣を身にまとい裸足で振りかぶる少女、非現実的な光景に見えた。

そして放たれた1球目。

幼馴染「あれっ」

人のことを笑えないようなとんでもない暴投でボールは的の上を過ぎ去っていく。

的当て屋「す、すごいボールなげるね…君女の子だよね?」






398: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:45:56.29 ID:25a8zhFco


幼馴染「くそぅっ、もう!」

2球目。
先よりもまともなボールだったが、それでも的の端っこをかすめただけで後ろのネットに収まってしまった。

幼馴染「えぇ〜〜!? おっかしいなぁ」

男「言っただろ。踏ん張れないって」

幼馴染「ゆ、浴衣のせいだ! きぃー」

男「わーまてまて、早まるな。お前中に着てんのか! 着ててもだめっ!」

とっさに帯に手をかけて浴衣を脱ぎそうになったナツキを全力で制止してなだめる。
どうやら頭に血がのぼっているようだ。


男「落ち着け。だから今日は出来ないって言ったろ」

幼馴染「むぅ…」

男「お前なんであんなすっぽぬけた」

幼馴染「うう…なんかアッキーが構えてないとコントロールつけにくかった…」

男「…もう振りかぶらずに手投げでいいからゆっくり投げろよ」

幼馴染「ううー…」

また納得してない表情。
こいつは昔からマウンド上でピンチになるとよくこんな顔をしていた。
しかし結局最後は俺の言うことを聞く。めちゃくちゃに打たれても試合が終わったあとはいつも爽やかな笑顔を見せてくれた。





399: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:49:35.41 ID:25a8zhFco


男「いいか、俺が的の後ろに座ってるとおもって、赤い印は俺のミットだ」

男「どまんなかのまっすぐ。それがこの打席のお前の勝負球。投げられるか?」

本当はそんな球を試合のなかで指示することはない。
それはバッターにとって絶好球であって、ピッチャーは本能的に恐れを抱いて避けてしまうコースだ。
基本は外角。ナツキが1球目に当てたコースは、ピッチャーにとって決して悪くはなかった。
だから野球を模したこの的当ては、俺以上にナツキのほうが難しく感じるのではないかと思っていた。


幼馴染「…」

ナツキは俺の指示を黙って聞いて、小さく頷く。
いつもの真剣な表情が戻ってきた。
しかしキャップをかぶっているわけでもないのになぜかかぶり直す動作をしようとして空振っていた。

幼馴染「見ててね。ボクのいま投げられる最高のボール」

最後の一球。
ふりかぶって、前に強く足を踏み出して体が前傾し、浴衣がめくれる。
風切音とともに腕がしなり、土を蹴りだす。

ナツキはとても浴衣女子が投げるとは思えないような勢いの良いボールを投げた。
ボールは重力に抗ってまっすぐ飛び、赤い印と白塗りのちょうど境目辺りに叩きつけられて、勢い良く跳ね返った。


男「ど、どっちだ…あたったか?」

的当て屋「……!」

幼馴染「…」

ナツキは跳ね返って戻ってきたボールを裸足のまま拾いに行く。
そして。

幼馴染「……にひっ、あったりー♪」

満面の笑みで拾い上げたボールをつきだして、わずかに付着した赤い塗料を見せた。







400: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:52:57.36 ID:25a8zhFco


的当て屋「いやぁすごいもの見せてもらったよ」

的当て屋「女の子の挑戦者は届く事すらなかなかむずかしいんだけどねぇ」

確かに肩の弱い人が無理やり的まで届かせようと思うと、普通はかなり山なりのボールになるだろう。
しかしそれだと狭いテントの天井に引っかかってしまう。
おそらく直球で射抜いた女なんてナツキが初めてだろう。
俺は少しだけ誇らしく思えた。

的当て屋「はいこれ景品ね。また来年も来てね」

3球中1球を赤い印に当てたので、結果は3等。
ナツキはお菓子の詰め合わせを屋台の店員から受け取っていた。

幼馴染「あー楽しかった」

男「これでしばらくお前の菓子をかわなくてすみそう。1000円分くらいあるんじゃないかそれ」

幼馴染「えー、これボクが自分の家で食べるもーん」

男「なにっ。俺の分の元も取れたと思ったのに」

幼馴染「…えへへ。ちゃんと見てたよね?」

男「え……うん…お前、すごいな。カッコ良かった」

ナツキはすごい子だと常々思う。
浴衣や裸足というハンディを抱えながら、俺には出来ないことをやってのけた。
悔しいけど、ナツキのほうがカッコイイ。昔からこいつが女の子にモテるのも納得だ。

男「おじさんもあんなの投げる娘みたことないってびっくりしてたぞ」

幼馴染「いやぁそれほどでも…わざわざ浴衣で挑戦する子がいないだけだよ」

男「それはそうだな……足の裏も土だらけだし…ほんと何やってんだか」




401: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/21(月) 22:58:26.02 ID:25a8zhFco


幼馴染「あーあ、ここまでしたんだから1等ほしかったなー。でもせめて当てることが出来てよかった♥」

幼馴染「これでボクとアッキーのメンツは守られました…えへへ」

男「さすがだな。伊達に何年もやってない」

幼馴染「アッキーのおかげだよ♥」

男「え? いや俺なんて…なんもしてないし、逆にカッコ悪いとこ見せちゃったな」

幼馴染「そんなことないよ」

男「でも…ほんとは俺が景品取ってやりたかったのに」

幼馴染「ううん、いいんだ」

幼馴染「だってね。いつもね…いつもボクはアッキーに勇気をもらってるんだ」

ナツキはそう言ってそっと身を寄せて腕にからみついてきた。

男「お、おい…」

幼馴染「…だからありがとね」

幼馴染「ボクが笑ってる時も、怒ってる時も、困ってる時も、泣いちゃってる時も」

幼馴染「ずっと…一緒にいてくれてありがとう♥」

男「ナツ…キ…?」

幼馴染「楽しいね…ボクこんなにお祭り楽しいのはじめて」

幼馴染「くふふ♥」

男「俺もだよ。次は何しようか」


ナツキに抱きつかれたまま再び屋台通りを歩き始める。
もう周りの視線なんて全く気にしていなかった。

ナツキとこうして過ごせることが俺も楽しいし、嬉しい。
ナツキは俺のことをどう思っているのだろう。
答えが出る時は近い気がした。

日は暮れてすっかり辺りは暗くなり始めた。
もうすぐ待ちに待った花火大会が始まる。



第六話<夏祭り>つづく










411: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:08:16.03 ID:Cx4GSGczo

第六話<夏祭り>つづき



しばらく屋台を物色してナツキと祭りを楽しんでいると、スピーカーから放送が流れて、まもなく河川敷で花火大会がはじまることが告げられた。
ごった返していた来場客が一斉に移動を始める。


男「会場あっちだぞ」

幼馴染「う、うん」

男「どうした、早く行かないとよく見える場所取れないぞ」

幼馴染「そう…なんだけど」

前を行く人々に付いて進む途中、ナツキの足取りはずいぶんと重たそうに見えた。
俺の腕にひっつきながらずりずりと下駄をひきずるように歩き、時々立ち止まってはじっとうつむく。

男「ナツキ?」

男「どうした? 腕組んで歩きづらいなら普通に歩けば…」

そこまで言ってようやく気づいた。

男「お前…足痛い?」

幼馴染「…」

ナツキは何も言わないし、表情を変えることもなかった。
しかし態度からして下駄の花緒で靴擦れをおこしているのは明らかだった。

男「痛いんだな…。なんで言わないんだよ」

幼馴染「ゆっくりなら歩けるかなって思ったんだけど…」

男「それでくっついてたのか」

男「とりあえず…ここじゃ邪魔だからそっちまで行けるか」


俺達は通りに沿って設置してあるベンチにひとまず腰掛けた。
たくさんの客が楽しそうに目の前を過ぎ去っていく。





412: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:09:32.24 ID:Cx4GSGczo


幼馴染「ごめん…」

男「いや…俺の方こそごめん。」

男「下駄なの忘れてた。歩きづらいよな」

幼馴染「えへへ…やっぱり、慣れないことはするもんじゃないね」

ナツキの足元に屈んで、下駄を脱がせて足先を手に取る。
やはり鼻緒に触れていた箇所が痛々しい擦り傷になっていた。

男「痛そうだな……我慢してたのか? するなよ…」

幼馴染「だって…せっかくデートだもん」

男「……ちょっと待ってろ。絆創膏もらってくる」

俺はひとまずナツキをベンチに残して、向かってくる人混みをかき分けて祭り会場のスタッフテントまで走った。
何かあった時のためにと絆創膏なら一枚だけ財布に入れていたが、両足で合計6箇所も擦れてしまっているので今回は数が足りない。
あれだけ痛々しく腫れているなら、消毒もしくは水で洗うくらいしてあげたかった。

閑散としはじめた会場内でゴミ拾いをしているハッピ姿を見つける。

男「ユウジ」

友「おー? どうした、花火いかないのか。はじまるぞー」

友「え、まさかナツキちゃんとはぐれちゃったり? ばっかやろー」

男「違う、あいつ花緒で靴ずれしちゃって。テントに絆創膏とかないかな」

友「…わかった。もらってくる」




413: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:10:51.99 ID:Cx4GSGczo


友「これ持ってけ」

ユウジはポーチサイズの救急セットを差し出した。
表には町内会Г判颪れたバッジが貼られていた。
どうやら使いきりの消毒液やガーゼなど救急一式が入っていて、たくさん貸し出しているようだ。


男「ありがとう。これあとで返しに…」

友「いいから早く戻ってやれよ」

男「おう」

ベンチへ駆け戻るとナツキはぽけーっと空を眺めていた。
まだ花火の打ち上げは始まっていないが、ここからでは木々や建物に邪魔されてあまり見えないだろう。

男「待たせたな」

幼馴染「早かったね。おかえり」

男「とりあえず消毒するぞ」

幼馴染「ん…ありがと」

ぷらぷらと投げ出されたナツキの足を再び手に取り、冷水で洗う。

幼馴染「んひゅ…冷た〜い。あはは。なんで水キンキンなの」

男「途中の屋台でミネラルウォーターあったから買ったんだよ」

男「おぉい、足動かすなぁ」

幼馴染「ごめんごめん」





414: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:12:32.94 ID:Cx4GSGczo


男「お前の足の裏…なーんか土だらけだな…汚ぇ…」

幼馴染「だって裸足で投げたもん」

男「雑菌が入ったらどうするんだよ」

幼馴染「その時はまだ怪我してなかったもーん」

足の裏まで綺麗に流して洗ってから、薬を噴きかけたガーゼで患部を消毒。
最後に絆創膏を6枚とも丁寧に靴ずれの上に貼った。


男「はいおわり」

ナツキの焼けた小麦色のふくらはぎをぺちぺちと叩いて起き上がる。

幼馴染「…ありがと」

男「でも…結局歩けないよな。どうすっかなー」

幼馴染「そうだねぇ…あー花火見れなくてごめんね…」

男「いいって。ここからでも空が明るくなる事くらいはわかるだろうしさ。でも音だけじゃちょっと寂しいか?」

幼馴染「ボクはそんなことないよ」

男「ん?」

幼馴染「アッキーが一緒だから、ボクは寂しいなんて思わないよ。えへへ」

男「ナツキ…」


周囲にはもう誰も見当たらなかった。
俺はナツキの隣に深く腰掛ける。


 





415: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:14:34.62 ID:Cx4GSGczo


幼馴染「……」

男「……‥…」

しばらく沈黙が続いた。
ふたり並んでぼーっと空を眺める。
そこに気まずさは欠片もない。



俺達は昔から言葉なんてなくてもわかりあえる間柄だ。
うちに来てもたいした会話すらなく、ひたすら練習だけして解散した事もある。

だけど、だからこそ俺は今日はっきりと伝えたい。
ナツキに俺の秘めた想いを知ってもらいたいと思っていた。
幼馴染や親友腐れ縁といった関係を打破したかった。


ペットボトルの底に余った水を一口飲んで深呼吸。

男「……ふー」

それでもやはり緊張はほぐれない。

少しだけ胃がずきずきして、脈拍が速まっているのが自分でもわかる。
さきほど全力で走って火照った体の熱も、いまの一口で引いていく気配はなかった。






416: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:16:50.50 ID:Cx4GSGczo


男(言える…かな)

告白どころか、恋愛すら俺にとって初めての事。
少しずつ顔を覗かせる不安な心。

ちゃんと声が出るだろうか。
いつもみたいに恥ずかしさを誤魔化すために茶化してしまわないだろうか。
もし断られたら、もしナツキが俺のことなんて――――


男(あぁ俺って…)

思わずぐっと天を仰ぐ。

幼馴染「……」


俺の昔からの悪い癖だ。
リトル時代、監督は俺のネガティブな考え方を良い捕手の条件だとほめてくれた。
しかし今は違う。必要ないことだ。

なのに長年の生き方には抗えず、次第によくない考えが脳内を支配していく。

その時、ふんわりと俺の手の甲になにか温かい物がかぶさってきた。

男(ナツキ…?)

それはナツキの手だった。
まるでエールを送るように、ゆっくりと手の甲をさすってくる。
思わぬことに驚いて隣を振り向くと、ナツキはとても穏やかな顔で俺を見つめて微笑んでいた。


男(そっか……)

きっと、想いは一緒だ。


 




417: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:18:49.57 ID:Cx4GSGczo


 
俺は手を裏返しナツキと指をからめ、揺れる瞳をじっと見つめ返した。
そして、固く閉じられていた唇をはがすようにゆっくりと開く。

男「俺、ナ――――」


幼馴染「!!」

しかしタイミング悪く始まってしまった打ち上げ花火の大きな音にかき消される。
東の空が次々と打ち上げられる花火の閃光で、夜明けのように明るく輝いている。

男「……っ」

男(なんで…いませっかく言えたのに。こんな時に)

空の明るさとはうってかわって、俺の心は仄暗くなっていく。
ナツキは再びぎゅっと手を握ってきた。

幼馴染「なーにー!? いまなんか言おうとした?」

男(このやろー…)

いたずらっぽく笑うナツキの顔をみて俺はヤケを起こしたような大きな声をあげた。
今度は花火の音に負けないくらいに。

男「好きだよナツキ! 大好きだ!」

幼馴染「ボクも。大好きだよ♥」


そして瞬く夜空の下、どちらからともなく顔を近づけて、唇が重なった。

 




418: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:20:44.34 ID:Cx4GSGczo


幼馴染「ん……んぅ、んー♥」

ずっとくっつけていたいほどとても柔らかな感触。
ナツキの想いが伝わってくる。

言えた。
そしてナツキは、俺のことを大好きだと言ってくれた。


男(ナツキの…唇…)

数十秒ほどの長い時間がたって、ようやく顔を離して目を開ける。
てっきりしおらしい照れた表情をしているのかと思いきや、ナツキはいつもとあまりかわらないにこやかな笑顔だった。

男「…」

幼馴染「……しちゃった♥」

男「…だな。ナツキのファーストキスもーらい」

幼馴染「え? はじめてじゃないけど? 何言ってるの…」

男「……は? え? 嘘…誰」

幼馴染「えー忘れちゃった? 5歳くらいの時にふたりで家の押入れの中でチュってしたよ」

男「え、俺?」

幼馴染「うん」

幼馴染「だから久しぶりだねー。ほんとに忘れてた?」

男「……びびらせんな。はぁ〜〜」

男「なんだよすっげぇ昔のことかよ。ノーカウントだろそんなの!」

幼馴染「あはは。そだね」

幼馴染「じゃあ、今のが…ボクのはじめてのチューだよ♥」






419: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:22:18.47 ID:Cx4GSGczo


幼馴染「ね、どんな味した?」

男「えっと…お前最後に何食った」

幼馴染「リンゴ飴!」

幼馴染「最後に食べたのたこ焼きじゃなくてよかったねぇ…あーよかったー」

男「確かにキスしてソースついたら台無しだな…」

幼馴染「じゃあ今ならいっぱいしても大丈夫ってことだね」

男「え゙…」

今度はナツキから。
俺の肩を強くつかんで、体を少しだけ倒して襲いかかるように唇を求めてきた。

男「んぐ…!?」

幼馴染「ん…んぅー…」

幼馴染「んぷ…えへへ、2回目ー」

男「なっ、ナツキ……大胆すぎ。びっくりした」

幼馴染「味しないね」

男「ただのキスで味がしてたまるか」

幼馴染「最後に食べるものに気をつけましょうってのはなんだったんだろー。騙されたー?」

男「はぁ?」

幼馴染「ボクもはぁ?って言いたいよ」

男「知るか。何の話だよ」





420: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:25:15.36 ID:Cx4GSGczo


男「…いつも通りすぎて逆に調子が狂うな」

幼馴染「えへへ。それがボクたちのいいとこじゃん」

男「お前さ…もっと、こう、何かあるだろ!」

幼馴染「? ? ?」

男「照れるとかっ、恥ずかしがるとか……きゃーん!とか」

幼馴染「きゃーん? …え…ボク、全然かわいくない…かな?」

男「可愛いよっ、可愛い可愛い! もーめちゃくちゃ可愛いから黙ってろぉ」

幼馴染「えへ……えへへ、アッキーも結構いつも通りじゃん」

男「くそぅ…」

ナツキはどこまでもマイペースだ。
そんなナツキだから、俺は可愛く思えて大好きなんだろう。


幼馴染「もう一回可愛いって言って」

男「か、可愛い」

幼馴染「んぅ…ちゅ♥」

男(ナツ…キ…こいつ)

キスは思ったよりナツキにとって軽いものだったのかもしれない。
しかし想いを確認し合えたのは純粋に嬉しかった。
ナツキが俺のことを好きでいてくれたことだけで心が満たされて、幸せだった。

それから抱き合って何度もキスを繰り返し、気づけば夜空に静寂と暗闇が戻ってきていた。

 




421: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:27:26.17 ID:Cx4GSGczo


幼馴染「花火おわっちゃったー」

男「また来年一緒に来よう。な?」

幼馴染「うん! 今度は靴ずれしないように運動靴で来る」

男「いやいや…そこは浴衣との相性考えて…」

男「靴ずれは予め対策したら大丈夫だからな?」

幼馴染「そう? でも的当てもリベンジしたいし、動きやすい服装の方が…」

男「ナツキぃ〜〜……」

幼馴染「わかったよぉ。これが好きなんだよね♪」ヒラヒラッ

男「せっかく買ってもらったんだから着ないとさぁ」

幼馴染「うん♪」

男「…ふ。それじゃ、人が戻ってくる前に帰るか」

幼馴染「どうやって? 家に電話したら車で迎えに来てくれるかも!」

男「今日は交通規制だからこの辺り車通れないぞ」

幼馴染「あそっかー…絆創膏したし歩けるかなー」

男「ん」

ベンチから降りた俺は、下駄の花緒をベルトに通して落ちないように固定し、
ナツキの目の前に屈んで背を向けた。

幼馴染「えーーうそ、結構遠いよ」

男「大丈夫だって。足腰のトレーニングになる」

幼馴染「そう? じゃあ乗っちゃおうかな…」


 




422: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:30:18.89 ID:Cx4GSGczo


ナツキが俺の両肩に手をついて、背にのしかかる。
張りのある太ももをがっちりつかんで俺は立ち上がった。

男「よっ、おっ」

幼馴染「わー。すごい。重たくない?」

男「もうちょっとべたーっとくっついてくれるほうが重さ感じないかも」

男「接地面増やす感じで」

幼馴染「うんっ! えへへ。こう? ぎゅーーっ」

男「それ痛いし。胸あたってます」

幼馴染「くふ」

男「よし帰ろう」

幼馴染「ありがと。途中で倒れないでね?」

男「か、彼女連れて帰るくらいできるって」

幼馴染「えへへ…かっこつけちゃってー、このこのー」

男「顔触るなって…お前ふざけてないでちゃんと乗ってろよ」

幼馴染「オッケー。ゴーゴー」

ナツキの体の柔らかさを背中に感じながら一歩一歩歩いて行く。
途中で立ち寄ったスタッフテントにユウジの姿は見当たらなかったので、机の上に借りた救急ポーチを返しておいた。



  ・   ・   ・



  




423: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:31:37.51 ID:Cx4GSGczo

 

幼馴染「ねぇアッキー」

ナツキが少し低いトーンでつぶやく。

男「何。お前全然重くないから気にしなくていいぞ」

幼馴染「ううん」

幼馴染「あのね…今日、来てよかったね…」

男「そうだな。楽しかった」

幼馴染「ボクも超楽しかったし、嬉しかったな」

男「……そっか。良かった」

幼馴染「いつからボクのこと好きだった。最近?」

男「……」

幼馴染「いつ?」

男「…っ」

幼馴染「ねぇ教えて。ボクも教えてあげるから」

男「昔から。かな…」

幼馴染「だからそれっていつ」

男「…捨ててくぞ」

幼馴染「耳赤いよ。ぐにー」

男「うるせー。ちょっと坂道で息あがってきたんだよ」

 




424: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:34:10.48 ID:Cx4GSGczo


男「お前のも教えろよ。俺にだけ言わせるのずるいぞ」

幼馴染「えへへ…いいよー」


ナツキはなまめかしい手つきで俺の首筋や鎖骨を撫でながら、耳元で吐息をふきかけるようにつぶやく。

幼馴染「ずっと…ずぅっと大好きだったよ♥」

幼馴染「初めてチューするより前からずっと…♥」

男「……っ」

男「…お前それ天然でやってんの?」

幼馴染「……? くふふ、ねー帰りにコンビニ寄ってアイス買ってー。両想い記念アイス」

男「ダメ。なんでこの状況で寄り道するんだよ」

男「連れて帰るからな」

幼馴染「ちぇーー」


 
   ・   ・   ・



亀のような歩みでナツキの家の前まで連れて帰って呼び鈴を3度押す。
しかし何も返ってこない。
家の中の灯りも消えていた。






425: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:36:17.89 ID:Cx4GSGczo


男「あれ、おばさんたちいないの? 車あるみたいだけど」

幼馴染「あっ、花火いってるのかな? どこか寄り道デートしてるかも」

男「しかたない。じゃあうちで時間潰すか」

幼馴染「そうだね。おじゃましよっかな。彼氏のお家♪」

男「……」


あっという間にウチへ。

幼馴染「なんかここ最近ずっと入り浸ってるからこっちが我が家って感じがするね」

幼馴染「もうおろしていいよ」

男「…」

幼馴染「アッキー?」

俺はナツキの太ももを持ち上げたまま、居間へと連れて行く。

幼馴染「ボクもう歩けるよ?」

男「うん」






426: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/23(水) 22:40:58.08 ID:Cx4GSGczo


幼馴染「…? どうしたの」

幼馴染「なぁに? まだくっついてたいの? ぎゅ〜〜」

幼馴染「あ、ごめんまたおっぱいあたっちゃった」

男「ナツキ。あんまりそういうのはね、俺はおすすめしないぞ」

幼馴染「?」

男「お前が悪いんだからな」


俺はナツキを浴衣のまま仰向けに布団の上に転がした。
そして体をまたいで膝を立てて座り、逃げられないように枕元に手をついて覆いかぶさった。

幼馴染「え…あ、え…? 何…」

男「ナツキ。お前があんなことするから我慢するの無理っ」

幼馴染「……ふぇ?」


まんまるなナツキの瞳に真剣な表情をした俺が映っていた。
そのままじっと心の内を探りあうように見つめあっていると、ナツキは首を小さく縦に振る。

そしてそれを皮切りに、今度は俺のほうからナツキの艶やかな唇を奪った。

幼馴染「ん……んぅ……」

幼馴染「…うん。いいよ♥」



第六話<夏祭り>つづく

 




462: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 21:45:31.36 ID:DyTEcboao

第六話<夏祭り>つづき




男「ほんとにいいんだな」

幼馴染「ぼ、ボク…はじめてだから優しくね」

男「わかってる。俺もだから、ゆっくりゆっくりな」

幼馴染「うん…」

男「浴衣汚しちゃダメだから脱がしていい? えっと、帯簡単に解けるのかこれ」

幼馴染「…寝転んだままじゃ脱げないよ。ボクがする」

男「わかった」

一度体を起こし、ナツキはいそいそと帯を解き始める。
じっと見ていると怒られたので、俺は縁側の戸を開いて涼しい風を室内に取り込んだ。
気づかれないように深呼吸してこれからの出来事に備える。

男(そういえば、コンドームなんて持ってないな…俺段取り悪…)

幼馴染「うーん、うーんと…」

男「暗い? 電気つけようか」

幼馴染「だ、だめ…つけなくていいよ。つけるなら豆球にして…」





463: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 21:47:02.97 ID:DyTEcboao


月明かりしかない薄暗がりの中で衣擦れの音がして、ナツキは帯を解いていく。


幼馴染「ね…解いたよ…」

男「おう…って脱いでない」

幼馴染「だ、だって…うう」

ナツキは帯だけ外して、浴衣を羽織ったままペタンと布団に座り込んでいた。
眉がハの字に垂れ下がった困り顔でこちらを見つめる。

男「下着つけてるんじゃなかったのか」

幼馴染「上はつけてない…」

男「そ、そうなのか」

つまりこの着物を取り去ればパンツ一枚ということだ。
浴衣をぎゅっと握りしめて必死に体を隠すナツキの見たこともない色香におもわず生唾を飲み込む。

男「シワになっちゃうから。ほら脱いで」

幼馴染「…うん、そうだけど」

そっとナツキの肩に手を置き、浴衣の襟にゆびをかけてするすると滑るように下ろしていく。

幼馴染「あっ…」

最初にのぞいたのはスクール水着の日焼けあとの残る鎖骨と肩。
そしてさらにずり下ろすと、二の腕とともに、まっしろな肌をした胸がふるんとこぼれた。

男「お」

幼馴染「や…見ちゃダメ」






464: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 21:48:00.93 ID:DyTEcboao



ナツキは反射のような素早さでさっと手を袖からひきぬいて、両胸をしっかり覆い隠す。


男「うわっ、隠すなよ。見たい…」

幼馴染「だめだよぉ…ボクだけなんて…」

男「じゃあ俺も脱ぐから」

俺は汗ばんだシャツを目の前で脱ぎ捨てた。

幼馴染「…」

男「なにじっくりみてんだよスケベ」

幼馴染「え、や…見てないよ!」

男「ほら、脱いだからナツキも見せて」

幼馴染「…ぅ。フェアじゃないよ…」

ナツキはかたくなに手をどけようとしない。隠し続けたままいやいやと首を振る。

男「なんで? 恥ずかしい?」

幼馴染「…うん…だってボクのおっぱい…人に堂々とみせられるようなものじゃないもん」

幼馴染「かたち変だし…おっきくないし…乳首だって…変かも」

男「そんなことないって」

まっすぐ目を見つめて、そっと手首をつかむと、
ナツキは観念したように口元を尖らせたままおずおずと手を退けた。

 




465: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 21:49:34.27 ID:DyTEcboao


やや控えめのふくらみが顔を覗かせる。
張りがあって、つんと上向いていて愛らしい形をしている。
ぷっくりとした乳輪の上にちょこんと乗っかった乳首も可愛かった。

いまは暗くてわからないが、以前風呂場で一瞬見た限りでは色だってとても綺麗だったはずだ。

ナツキの胸をこんな至近距離でまじまじと見たことはなかったため思わず凝視してしまう。

幼馴染「や…あ…だめ」

再び覆い隠そうとする手を俺は強く捕まえる。

幼馴染「だめだよぉ」

男「なにがダメなんだよ。心配しなくても綺麗だよ…ナツキのおっぱい」

幼馴染「う…ボク…おっぱいには自信なくて」

男「こんなにかわいいのに」

幼馴染「だってせっかく今日は女の子っぽい格好したのに、これ見たらまた男っぽく思われるんじゃないかとおもって」

男「そんなことない。ナツキは可愛い女の子だよ。胸だってほら」

幼馴染「う…」

俺は掴んでいた手首を離して、ナツキの胸をすくいあげた。
汗ばんだ白い素肌が手の平に吸い付き、すこし力を加えると柔らかさと弾力を感じた。

幼馴染「あっ…なにして…」

男「触っちゃった」





466: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 21:51:16.31 ID:DyTEcboao


幼馴染「あう…アッキーにおっぱい…触られちゃった…」

男「ちゃんと揉めるくらいの大きさはあるじゃん」

男「ほら、寄せれば谷間だってできる」

幼馴染「やぁ…だめっ、ボクのおっぱいで遊ばないで」

男「ここもこんなにかわいい」

乳頭に指先でちょんとふれる。
それだけでナツキはひきつった顔でぴくっと背筋を伸ばした。
先端はすでに主張しはじめているのか、かすかに固くなっている気がした。

男「ナツキ興奮してる?」

幼馴染「し、してないよ…」

幼馴染「ボク…そこ敏感だから…さわるとそうなっちゃうの」

男「へぇ。自分で触ったりするんだ」

幼馴染「っ!? ち、ちが…お風呂で洗ったりするときだよ!」

男「そっかー」

ナツキの嘘はわかりやすい。
すぐに取り乱して大きな声をだしたり、あからさまに不自然な態度をとるからだ。
顔にもかなり出やすい。

男(ナツキもオナニーするのか…そりゃするよな)

ナツキだって年頃の女の子だ。
普段のボケっとした様子からすると、性欲なんて物とは縁が無さそうに感じるが、思春期はしっかりと訪れているようだ。
その事実を知って興奮するというよりも、感慨深く思えてしまうのは長年のよしみだろうか。






467: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 21:53:07.41 ID:DyTEcboao


ナツキのオナニーのやり方に思いを巡らしながら、固くなり始めた乳首を指でこねる。

幼馴染「うぎゅ…あっ、あっ、あっ」

男「なに? 乳首擦るの好き? いつもどんな風にしてるんだ」

幼馴染「ちがうびっくりしただけ! ていうかしてないよボクっ」

男「こんなに硬くしちゃってさ。エロい声まだだしてそれはないだろ」

幼馴染「うう…なんでいじわるするの」

男「ナツキが好きだから」

幼馴染「! うう…」

ナツキは暗がりでもわかるくらい顔を赤くしてうつむいた。

おとなしく胸をさしだして俺に良い様にされるがままになっている。
普段見たこともないような幼馴染のいじらしい姿をみていると、俺の欲望はさらに駆り立てられてナツキの弱みを攻め立てた。
すでにズボンははちきれそうになっていた。

幼馴染「あっ、あ…ん…あんまり、きゅうってしちゃだめ」

男「きゅうってしてほしいんだな」

元気に勃起した乳首をつまんだり、ひっぱったり、指でこすったり、いろいろ試しながらナツキの快感を引き出していく。

幼馴染「あ…あ…くぅぅ…んんぅ」





468: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 21:55:20.88 ID:DyTEcboao


幼馴染「乳首とれちゃうよぉ…」

男「取れない取れない」

ひっぱりあげると胸の柔肉がついてきてふるんと揺れる。

幼馴染「あぁぁ…やぁぁ…それしないで」

男「可愛いなぁお前…乳首弱点だったのかよ」

 すりすり すりすり

しつこいほどこすりあげるとナツキの声がだんだんと甘くなってきた。
息遣いも荒く、余裕がなさ気に見える。


幼馴染「あぁ、ああっアッキーだめっ♥」

男「ほらほらナツキ。気持ちいいなら気持ちいいって言えよ」

そして調子にのってしばらく続けていると。


幼馴染「〜〜っ!♥ ああっ、ひうっ」

まぬけな甲高い声とともに、ナツキの体がピクンとはねる。
どうやら胸だけで達したようだ。

幼馴染「あ…ぁあ…♥」

男「イッた…?」

幼馴染「はぁ…はあ……アッキーのばかぁ」

ナツキは恨めしい声を漏らしながらどこかうつろな目で俺を見つめる。
口元がだらしなく開いて油断だらけだったので、俺は断りもなく吸い付いた。

幼馴染「んんぅ!? んぅ〜〜〜っ」

幼馴染「んっ、んぅ」

男「はぁ…ナツキっ」







469: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 21:57:44.36 ID:DyTEcboao


俺もいよいよ理性の糸が切れてしまいそうだ。
ナツキのこんな可愛い声といやらしい表情をみていていつまでも我慢が続くはずもなかった。

幼馴染「アッキ…んぅ、んぅ…! ちゅ…はぁ…はあ」

幼馴染「ボク…もう」

男「わかってる」

何度も唇を貪ったあと、肩を押してゆっくりと布団の上にひっくり倒す。
大きめの枕にナツキの後頭部がぼふんと埋もれるように収まった。
ナツキはこの先どうなるか十分わかっているだろう。
半脱ぎの浴衣を抜き取って、広げたまま側に置いて、いよいよ下着一枚となったナツキと対面する。

幼馴染「……やっぱりこの格好はずかしい」

壮観な光景だった。
大好きな女の子が半裸で俺を誘うように待っている。

いつもだらしなく勝手に寝転がっているあのナツキとは明らかに違ってみえた。
素肌のどこに触れても、暖かくてぺったりと手に吸い付く。
なのに撫でてみるとすべすべで、自分の物とはまるで違う神秘的な手触りだった。

この子を俺の好きにできる。
嬉しくて嬉しくて飛び上がってしまいそうだ。


男「いいんだよな?」

幼馴染「……」

ナツキは吐息を漏らして小さく頷く。

男「怖くない?」

幼馴染「怖くないよ…アッキーと一緒ならいつも怖くない…えへへ」





470: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 22:00:05.68 ID:DyTEcboao


男「すこしだけ足開いてくれるか」

幼馴染「…うん」

ナツキはか細い声とともに足を開いた。
当然勝負下着なんてわけでもなく、至って地味なショーツだけどそれがいかにもナツキらしい。
いつもは短パンやジャージで阻まれて見ることが叶わなかったナツキの下着。
女の子としてのおしゃれに無頓着だからすこし子供っぽいが、そこがまたそそられる。


幼馴染「あんまりみないで…」

男「暗くてよく見えてない」

幼馴染「…アッキー脱がないの」

男「ごめん脱ぐ」

俺もナツキに合わせて下着姿になった。
もうごまかしようもなく股間部は膨らんでいて、その時が来るのをいまかいまかと待ち望んでいる。

幼馴染「…なんか、すごいね…そんな風になっちゃうんだ」

男「あぁ…しかたないだろ。ナツキが好きなんだから」

男「好きな子こんなにエロい格好にして、勃たないわけないだろ…」

幼馴染「えへへ…エロいんだボク…良かった」

男「エロいよ。お前の体ほんとにエロいと思う」

幼馴染「いつもそんな目で見てたの? エッチ」

男「……」

俺は神妙に深く頷いて、ナツキのショーツに指を近づける。
そして人差し指をショーツ越しの割れ目に這わせた。
すでに上からでもわかるくらいにじっとりと湿っていて、分泌された汁が指の腹に付着する。






471: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 22:01:03.11 ID:DyTEcboao


幼馴染「んっ、んぅ…」

男「濡れてるな」

幼馴染「…うん。だって乳首さわったもん」

男「イッたもんな」

幼馴染「…それにチューしたし。いっぱい好きって言ってくれたし」

幼馴染「ボク…エッチな気分になっちゃうよ…」

男「いいんだよ。ここもっと触っていいか?」

幼馴染「いいよ…アッキーの好きにして…もうなんでも好きなことしていいから」

幼馴染「ボクのこと、大事にしてね♥」

男「ナツキ…」

割れ目の上で指を往復させるたびに、じゅくじゅくととろみのある粘液が下着を濡らしていく。
かなり染みだしてきていて、指を離すとつぅーと糸を引いた。

幼馴染「あっ、あっ…んあっ。そこ…」

男「きもちいい?」

幼馴染「うんっ、いつもよりきもちよくなっちゃう、アッキーの指がこすれて…」

男「やっぱりいつもしてるんじゃん」

幼馴染「あ…ち、ちが…わないけど……うう…」





472: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 22:02:39.80 ID:DyTEcboao


男「何を想ってひとりでしてるんだ?」

幼馴染「……アッキーに…エッチされる想像で…♥」

男「うわお前…まじかよ」

幼馴染「えへへ…だってそうしたら気持ちよかったんだもん…」

男「……脱がせる。そんなこと言われたら俺もう我慢できない」

幼馴染「…いい、よ」

肌に張り付いたショーツのゴムに手をかける。
ゴムがすこし緩んでいたことから長年大事に履き続けている物であろうことがわかった。
ナツキにとってはある意味勝負下着と言えるのかもしれない。

腰をすこしだけ持ち上げてもらう。
そしてショーツを大きめのお尻から引き抜く。
むっちりとした太ももを通って、更にすらりとした足首を通過して、最後は一気に抜き取った。
これでナツキの身を覆うものは何もなくなった。

俺も下着を脱いでナツキと同じように一糸まとわぬ姿となる。








473: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 22:04:27.81 ID:DyTEcboao


幼馴染「暗くて、あんまりよくみえないけど…アッキーのすごい反り返ってるね…」

男「俺もよくみえない。ナツキのここどうなってるかすげぇ見たいのに」

足を開いたナツキの恥裂が目の前にある。
しかし窓や庭から差し込む光だけでは室内は薄暗く、観察することは出来なった。
ふわっとした恥毛が綺麗に整っていることはわかった。

男(意外だな…ズボラにしてるかとおもった)

幼馴染「あんまり見ようとしないで…」

ナツキは手で隠してしまう。

男(じっくりみるのは今度でいいか)

男(あ、そうだ。避妊)

ここにきてようやくその必要性を思い出した。
親や姉の寝室を漁れば出てくるかもしれないが、いまからバタバタしたくないし見つかる保証もない。

男(ダッシュでコンビニ? うーん)

どちらにしてもここまで高まった熱が冷めそうだ。

男(買っとけばよかった…俺のバカ)





474: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 22:06:15.86 ID:DyTEcboao

男(ナツキがもってるわけないよな…やばい)

男(いや…待てよ…)

ふとあることを思い出した。
昨年、クラスの男子の間ではくだらない願掛けが流行っていた。
コンドームをお守り代わりに財布にいれておけば彼女ができるという、全国どこにでもありそうなくだらないお遊びだ。

もちろん最初は馬鹿げたことだと無視を決め込んでいたが、ついにはユウジ経由で半強制的に参加させられて、
必要でもないものを財布のポケットに入れられてしまった。

俺は傍で転がるズボンから長財布を取り出し、中身を漁る。
思った通りまだ捨てていなかったようで、しっかりと封のされた銀色の正方形の包みが奥から出てきた。

男(……これのおかげとは思いたくないけど…)

幼馴染「どうしたの…」

男「あの…ナツキ」

幼馴染「…?」

男「アレつけるからちょっと待って…」

幼馴染「アレって?」

男「…ゴム」

幼馴染「ゴムって???」

男「避妊具! …つ、つけないとダメだろ。保健で習うから知ってるだろ」

幼馴染「あっ! もってたんだ」

男「無しはまずいし。えっと…どっちが表なんだっけな…」

幼馴染「ま、待って!」

男「どうした? 大丈夫これ新品だから」






475: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 22:07:54.22 ID:DyTEcboao


幼馴染「ううんそうじゃなくて。ソレつけなきゃいけないのはわかってるよ…でもね…」

幼馴染「…ボクはじめてだから…」

幼馴染「最初はアッキーがいいな…」

男「え? どういうこと」

幼馴染「だからね…初めてはなにも付いてないアッキーのままがいいなぁ……なんて思ったり」

男「ナツキ…?」

どうやらゴム無しでしたいということらしい。
俺も内心では薄々そう思っていた。

やっぱりナツキを直接感じたいし、ナツキの大切な初めてを俺の物でしっかりと奪いたい。
まさかそれをナツキ側から提案してくるとは思わなかった。


幼馴染「だめ…?」

男「…お前もそういう事考えるんだな」

幼馴染「だって…やっと、やっとボクたちの距離が…なくなったんだもん」

幼馴染「来て…♥」


ゴムを置いてナツキと向かい合い、いまにも破裂しそうな程大きくなったペニスを濡れた秘所に手探りであてがう。

幼馴染「ん……アッキーのあたってる……アツアツだね」







476: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 22:10:58.05 ID:DyTEcboao


男(ここであってるのか?)

膣穴を探ってぐにぐにと押し付けても依然中に入っていく気がしない。
どれくらい力を入れたらいいかもわからない。

男(予習たりねーよ……)

幼馴染「あ、ちが…もうちょっとだけ下…」

男「ごめん…はじめてで」

男(やっぱり電気つけなきゃ無理か…)

焦る気持ちを落ち着けるために途一度立ち上がろうとした時、ナツキがふんわりと手をのばしてきた。
ナツキのしなやかな指が俺のたぎった竿に触れて誘導する。

幼馴染「ここらへん…」

男「あ…ここか」

幼馴染「えへへ…おちんちんさわっちゃった…こんなに熱くて堅いんだね」

幼馴染「これがいまからボクの中に…」

男「入るかな。自分でいじったことある?」

幼馴染「ないよ…ここはちょっと怖くて」

男「大丈夫かな…とりあえずいれるぞ」

幼馴染「…うん♥」

ナツキの太ましいふとももを掴んで、腰を前に進める。
くにゅりと膣口を開いて中に潜り込んだ亀頭が、温かさと柔らかさに包まれた。


幼馴染「うっ…うぐ、あっ」

男「ごめん。痛い?」

ナツキの膣内は俺の想像以上に狭かった。
ナツキだからなのか、女はみんなこうなのかは俺にはわからない。
入り口はきゅうっと締まっていて、異物の侵入を阻害するかのように押し返してくる。
まさにこじ開けるという表現が正しい。

ナツキは顔をしかめて耐えていた。

 




477: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 22:12:35.58 ID:DyTEcboao


幼馴染「そのまま…あっ、あ」

幼馴染「い゙っ、あっ」

男「ナツキ……痛ければやめたほうが…」

幼馴染「んっ、んっ、いいから…そのまま」

男「リラックスして」

幼馴染「う、うん…すーはー…すーはー…」

どうやら俺と同じくかなり緊張しているようだ。
ナツキの体に気を使いながらぎちぎちと狭い膣道を開いていく。
ペニスが少しづつ前に進んで、ナツキの膣内に飲み込まれていく。
その度にナツキの表情が崩れて悲痛な声があがった。

幼馴染「い゙っ!? あ゙っ」

だんだんとその姿が可哀想になってきて、やはりまだ早かったのではと後悔の念が生まれる。

幼馴染「うぐ、ぁぁあ゙、い、痛…」

男(ごめん…)

しかし痛みを感じるナツキとは裏腹に、俺は快感に満たされていた。
明らかにナツキの中は狭くてきついのに不思議とやわらかさを感じる。

このまま一気に突き入れたらどれだけ気持ちいいだろうか。
むしろ一気に終わらせたほうが良いのではとすら思う。

はじめての経験に理性は綻んでいて、いますぐナツキの膣で竿全体を擦り上げたい気持ちに傾いていた。
ナツキへの愛情だけがかろうじて雄の欲望を食いとどめていた。






478: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 22:13:48.73 ID:DyTEcboao


男「ナツキ…痛い? 我慢できないなら無理しなくていいんだぞ」

欲望を押し殺し、顔をよせて出来る限り優しくナツキの頬や頭を撫でる。
ナツキは歯を食いしばって浅く息づいている。
目尻には涙の粒が浮かんでいた。

幼馴染「こんなのへっちゃらだよ…」

幼馴染「だって、アッキーがしてくれてるんだもん」

幼馴染「ボク…うれしくて…だから…」

幼馴染「最後までエッチしたいよ…もっときて。強く…していいから」

ナツキは俺の背に腕を回し体を抱き寄せてきた。
ナツキの健気な姿に若干申し訳ない気持ちになる。
それ以上にナツキのことが愛おしかった。
俺達は再び抱き合って深いくちづけを交わした。

そして――

幼馴染「…っ、あっ」

ナツキの膣内の一番狭まったひだをぷつんと貫いて、膣の奥までペニスを深々と突き挿した。

幼馴染「うぎっ、あ゙ああっ―――んんぅ、んむ」

痛がって身悶えするナツキをあやすように何度もくちづける。
背中をぎゅっと抱きしめられ、何度も爪を立ててひっかかれた。
きっとナツキはこれよりずっと痛い思いをしているのだろう。







479: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 22:16:15.72 ID:DyTEcboao


男(ナツキごめんごめん…痛いよな。がんばれ)

幼馴染「あぁぁ、あ゙っ、アッキーごめん…なさ…」

男「気にしなくていいって。俺はこんなの全然痛くないから」


ややあってお互い落ち着いてからナツキの顔をみる。
ナツキはがんばって笑顔をつくって笑いかけてくれた。


幼馴染「はぁ…はぁ…あ」

男「奥まで入ったよ…おめでとうって言うべきなのか?」

幼馴染「…うん♥ アッキーの…入ってるのわかる。かたくてあつくて…びくびくしてる」

幼馴染「ボクたち…大人になっちゃったね♥」

男「そうだな。しばらくこのままにしておこうか」

幼馴染「うん…♥」







480: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/26(土) 22:18:32.09 ID:DyTEcboao


幼馴染「優しくしてくれてありがと。ごめんね、引っ掻いてごめんね」

男「もういいってば。あんなに必死にぎゅってされて嬉しかった」

幼馴染「大好き♥ …ちゅ」

男「まだ終わってないぞ。俺としてはこれからがいいとこなんだからな」

幼馴染「そっか…これで終わりじゃないんだ!」

幼馴染「ボクのなかで…いっぱいおちんちんゴシゴシするんだよね…♥」

幼馴染「中で精子だしたら赤ちゃんできちゃう…」

男「ナツキのはじめてはちゃんともらったし、その時はゴムつけるから」

男「だからいまはこのまましばらくナツキの中を感じてたい」

幼馴染「エッチ…♥ じゃあボクも、アッキーのことぎゅううううって感じてるね♥」


ナツキとの結合部からは破瓜の証がたくさん滴り落ちて、真っ白な布団を赤く染めていった。
きっと想像も及ばないほどの、文字通り体が裂けるほどの痛みだっただろう。
それでもナツキは俺も拒むことなく受け入れてくれた。

今日この場所でようやく、俺とナツキはひとつになれた。



第六話<夏祭り>つづく

 

 




492: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/28(月) 22:02:47.97 ID:GIsTGVQJo

第六話<夏祭り>つづき



幼馴染「そろそろ…」

男「動いていい?」

幼馴染「うん…アッキーいつまでもそのままじゃくるしいでしょ」

男「一度抜いてゴムつけるからな」

幼馴染「抜く前に…もう1回チューして」

男「ん」

幼馴染「ん…♥ …いっ…あ」

ナツキの表情をうかがいながら慎重に膣内から肉棒を引き抜く。
いまのだけでも痛かったのだろうか。一瞬表情を歪めたような気がした。

付着した鮮血が痛々しく思える。
しかしナツキを手に入れたという達成感に心が満たされた。


男(俺があのナツキを大人にしたんだな…)

男(あと俺もようやく大人になれた…)

男(ナツキに捧げられてよかった)

感慨深く思いながら慣れない手つきでコンドームを装着。
隙間なくぴったり収まる。
ほんの僅かに締めつけ感はあったが、あまりつけていることを感じさせない薄さだった。





493: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/28(月) 22:04:30.84 ID:GIsTGVQJo


幼馴染「つけた?」

男「つけたよ」

幼馴染「来て…ボクの中で気持よく―――んんぅ♥」

ナツキの言葉を最後まで待たずに、再び俺はペニスをナツキの穴へと挿入した。
きつきつに締まった膣穴を押し広げながら、奥へと進んでいく。

どろどろの粘液で満たされたナツキの中は先よりもスムーズに俺を迎え入れた。
無数の柔らかいひだが陰茎を撫でつけて、一度の挿入だけで達してしまいそうになった。


幼馴染「んぁぁっ、あっ」

男「ごめっ、痛い?」

幼馴染「ん……い、痛くない。ピリピリするだけ」

男「まだ痛いよな…よしよし」

幼馴染「大丈夫だから…動いて。ボクのなかで…アッキー」

男「…うん」

汗ばんだ頭をゆっくり撫でながら、恐る恐る腰を前後に動かしはじめる。





494: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/28(月) 22:06:54.08 ID:GIsTGVQJo


 じゅっぷ じゅっぷ 

結合部から淫らな水の音が少しだけ漏れ、俺の興奮は高まっていく。
汗っかきのナツキはこっちも濡れやすい体質なのだろうか、たくさんの保護液が穴の奥から溢れ出て俺のペニスに絡みついた。


幼馴染「んぅ、んぅっ」

男(やばっ…ナツキとHしてる。ナツキとッ)

男「ナツキっ。俺ッ俺…」

生まれてはじめて感じる蕩けるような刺激にうわずった声がでてしまった。
恥ずかしいけど、ナツキの中は本当に隠しようもなく気持ちが良かった。

こんな可愛い女の子と愛し合って、柔らかい襞にペニス全体を包まれて、理性が壊れないほうがおかしい。

男「はっ、はぁっ…」

幼馴染「ん…えへへ…アッキーがきもちよくなれるとうれしい」

幼馴染「んっ、あっ…」

幼馴染「痛く…ないからね…そのままっ、ボクで」

痛いくせに強がっている幼馴染を前に、腰の動きはとまらなかった。
きゅうきゅうと締まった狭い膣内で生まれる官能が俺をどこまでも誘う。

男(俺いま情けない顔してるんだろうなぁ)

幼馴染「♥」





495: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/28(月) 22:10:19.29 ID:GIsTGVQJo


男「うっ、あぁ、ナツキぃ」

幼馴染「んっ、んっ…んっ♥」

 じゅっぷ じゅっぷ

いやらしい水音は絶え間なく繰り返される。

心と体が自然とナツキを求める。
強引に唇をうばったり、胸を触ったり、ナツキの名前を何度も呼んだ気がする。

すでに自分が何をしているかはっきりとわからないくらい頭の中はぐちゃぐちゃになっていて、
無我夢中にナツキと体を重ねた。

幼馴染「んんぅ、あぁぁ♥ アッキぃアッキぃ…」

ナツキの甘えた声が脳髄まで染みてくる。
気持ちいい。

もうナツキのことしか考えられない。

そしてやがて興奮はピークに達し、至福の快楽が俺を襲った。


男「あっ…ナツ…キ――」

男「あぁっ!」

幼馴染「んんぅっ」


思い切りナツキの奥を突く。
視界が明滅して脳がしびれて、快楽が一気に溢れ出る。
体がビクンと跳ねて、同時にたくさんの精を吐き出した。






496: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/28(月) 22:12:31.34 ID:GIsTGVQJo


男(ナツキの中で……あぁ)

ややあって、呼吸を落ち着ける。


男「はぁ…ハァ」

幼馴染「きもちよくなれた…? エッチな声出てたよ」

男「こんな風に声でるの…はじめて。すごかった…」

幼馴染「そっか。そんなに気持ちよかったんだ」

幼馴染「なんか泣きそうな顔で、びくびくーってしてた♥」

男「……ぅ」

幼馴染「アッキーかわいかったよ」

男「う、うるさいな……というかごめん。俺だけ気持ちよくなっちゃって」

幼馴染「ううん。ボクも気持ちよかった。優しくしてくれて幸せな気分だったよ」

男「そっか…良かった」

幼馴染「ボクたち…えっちしちゃったね♥」

男「…おう」

なんだか無性に恥ずかしさがこみあげてきてまともに顔をみることができなかった。
ナツキはおそらく今ので達してはいない。だけどいつまでもニコニコと嬉しそうにしていた。






497: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/28(月) 22:14:59.58 ID:GIsTGVQJo


幼馴染「ねー出したの見てみたいな」

男「はい」

外したコンドームの口を縛ってナツキに渡す。
真っ白で濃厚な精液が液溜めを膨らませてたっぷりと詰まっていた。


男(すげぇ量…動物かよ俺…)

男(ナツキとしたからかな…)

それは自分でも初めてみる量だった。

男(こんだけ出しても破れないんだな…)

幼馴染「うわー…これ?」

ナツキは使用後のゴムを手の平に置いてぷにぷにとつつく。

幼馴染「くふふ。なにこれほんとに白いんだ。おもしろ」

男「……見たことないのか」

幼馴染「ないよ。だって初めてだもん」

男「いや……AVとか」

幼馴染「?」

男「なんでもない」

幼馴染「こんなのがボクの中で出るんだね…アッキーのあそこから出てきたんだね…♥」

男「もう捨てろってぇ」





498: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/28(月) 22:17:35.28 ID:GIsTGVQJo


幼馴染「宝物にする!」

男「だーめ。何言ってんだバカか」

幼馴染「だってはじめての記念だもん! やだやだ捨てたくない」

男「あのなぁ…」

幼馴染「やだ」

男「腐るからそれ」

幼馴染「そ、そうなの…」

男「それにさ」

幼馴染「?」

男「その……これから先…いっぱいすればいいだろ。俺達、恋人同士なんだから…な」

男「ほしけりゃいくらでも出すよ。何回でも。ナツキのために」

幼馴染「…そっか♥」

幼馴染「そうだよね…くふふ…ボクたち…えへへ」

幼馴染「恋人同士で、毎日エッチできるんだよね!」

男「ま、毎日かはわからねーけど…まぁ…気が向いたら」

幼馴染「毎日だよね?♥」






499: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/28(月) 22:19:01.16 ID:GIsTGVQJo


男「毎日…かもね。お前がうち来るなら」

幼馴染「やったぁ。来る来る!」

ナツキは唐突に抱きついてきて、俺の唇を奪った。
汗でべたつく体でぎゅーっと力強く抱き合って、お互いの背中をさする。


男(こんなに可愛いナツキとこれから毎日…)

夏休みはまだ半分近く残っている。
これからのことを想像しただけで幸せだ。

ナツキの柔らかい部位が体にぺったりとくっついて、またしても俺の欲望は膨れ上がっていった。


男「あ…」

幼馴染「…? んふふふ、またエッチしたくなっちゃった?」

男「いや、今日はもうしない」

男「お前だって初めて終わったばっかりなんだから、あんまりすると痛いだろ」

幼馴染「…へっちゃらなのに」

男「ていうかこれ一つしかゴムないし…」

幼馴染「じゃあさ…明日一緒に買いに行こ? ね?」

男「な、ナツキ…その誘い方はやばいって…下品だぞ」

幼馴染「だってぇ」







500: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/28(月) 22:20:42.65 ID:GIsTGVQJo


幼馴染「好きな人とエッチしたいっておもうのは普通だもん」

幼馴染「ようやく…叶ったから。ボク舞い上がっちゃってるんだ」

幼馴染「ボク…メロメロかも♥」

男(やばいやばいやばい)

男「この体勢…我慢できなくなるから一旦離れようぜ」

男「これはやばいって…ナツキ…服着よう。貸してやるから」

男「シャワー浴びよう? 暑いだろ」

幼馴染「やーだ」

男「やだじゃねぇよぉ」

ナツキはますます腕のちからを強め、胸や太ももを押し付けるように抱きついてくる。

幼馴染「くふふ。明日から楽しみだね」

幼馴染「いっぱいしようね。ずっと一緒に楽しい夏休みをすごそうね♥」

幼馴染「ちゅ…♥ ん…」

男「んぐ…っ」

幼馴染「んぅー……。えへへ」

幼馴染「何回しても良いね、ボクかなりチューすきかも。アッキーは?」

男「……すきじゃないわけないだろ」

幼馴染「ちゃんと言って?」

男「ナツキが好き…です」

幼馴染「わーんボクも大好き〜〜♥ ちゅーー♥」

男(あーダメだ。ナツキに溶かされる)





501: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/28(月) 22:23:14.99 ID:GIsTGVQJo




  ・   ・   ・



男「ほら、いい加減シャワー行って来い。暑いんだよ」

幼馴染「やーだー…もっとべたべたしてたいよぉ」

男「俺汗かいてるし…」

幼馴染「うん…ボク汗の匂い好き。アッキーのお布団みたいな匂いする」

男(こいつはまったく…)

男(俺に犯されたいのか。危ない奴)

男「そういえば花火買ってあるんだけど、庭でしないか?」

幼馴染「えっ、花火?」

幼馴染「するっ! するするするッ♥」

男「はい行ってらっしゃい。入る前に水分とっとけよ」

幼馴染「……一緒にお風呂は?」

男「我慢できなくなるからダメ。俺の理性をなめんな。意外と脆いぞ」

幼馴染「ボク怖いなぁー。この家お風呂こわいなー」

男「つべこべ言わず行って来い〜〜! 怒るぞこの野郎」グニグニ

幼馴染「いひゃっ、わかっ、わかっひゃからぁ…怒らないれ」




502: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/28(月) 22:25:35.25 ID:GIsTGVQJo

 

その後ずっとナツキとじゃれあいながら恋人同士の初めての夜は更けていった。

幼馴染という長い年月を経て俺達はようやく一つに繋がった。
周りの人達からみたらやはり予定調和だったのかもしれない。
だけど俺達当事者たちからしたら、まるで一夜にして世界がひっくり返ったかのような出来事だ。


幼馴染「また来年もお祭り行こうね」

男「おう。……おんぶしないからな」

幼馴染「やっぱり疲れた?」

男「ちょっと腰痛い…かも」

幼馴染「エッチのせいじゃないの?」

男「ちげーよ!」

幼馴染「どうかな〜。アッキーあんなに必死に…ぷくくく」

男「明日キャッチボールなし!」

幼馴染「あ゙ーーそんなぁ。揉んであげる! 全力でマッサージするからぁ!」


何も後悔や不安はない。
この先もずっと毎日楽しく過ごせる自信がある。
どんな些細なことでも笑い合って過ごしていける。
世界で唯一、心を許しあったナツキとなら。



第六話<夏祭り>おわり






503: ◆PPpHYmcfWQaa 2016/03/28(月) 22:26:26.82 ID:GIsTGVQJo

本編終わり
当初全七話予定が六話で締まりました
次回以降はアペンド(R-18メイン)です
明日か明後日予定





504: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 22:27:58.82 ID:3jDzI2cyO

乙乙〜
アペンドっていうのが何かは知らんけど、楽しみや




505: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 23:04:33.98 ID:TIVvToV3O

アペンド知らんのか
あ、これはハッピーエンドだな、が訛って短くなったスラングだそ




506: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 23:08:36.87 ID:3jDzI2cyO

>>505 ほえ〜、そういうのがあるんか
サンガツ




509: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 00:50:57.97 ID:GTu/R3iE0

>>506
ワロタ




512: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 01:12:37.29 ID:f00YsDKa0

どうしよう>>506が可愛いんだがwww




幼馴染「ボクだって女の子らしい格好したら可愛いんだからな」【第七話〜九話】へつづく


・SS速報Rに投稿されたスレッドの紹介でした
 【SS速報R】幼馴染「ボクだって女の子らしい格好したら可愛いんだからな」
稲村亜美、赤外線カメラでスケスケ神パ●ティ!不意打ちで撮られちゃった…【画像27枚】
【エ□注意】『ポケモンGO』でさっそくおふざけ悪ふざけ自画撮りエ□画像SNS大量流出wwwww
【抜き専用】ピストン中のエ□GIFを体位別に貼っていくwwwwwwwwwwwww(24枚)
【ドン引き】海やプールでオシッコする女wwwwwwwwwww(画像あり)
海外で ”ビッチ” と呼ばれるギャルの裸がエ□すぎる・・・(画像)
【口リ 無修正】JKのオナ●ーしてる自撮りで抜きたい奴こっち来いw
Twitter民「ポケモンを追いかけてる小学生が飛び出してきた!」成歩堂「異議あり!!!」
彡(●)(●)「ファッ!?赤紙届いとるやんけ!」
【画像あり】B98・W59・H92。Hカップの重量感が凄まじい美女がAVデビューwww
稲村亜美、赤外線カメラでスケスケ神パ●ティ!不意打ちで撮られちゃった…【画像27枚】
9/1 元芸能人がAVデビュー!モデルでCDデビューも果たした美形タレントがこちらwww
みほ「会長のだいしゅきホールドの腰の感触が忘れられない」
リツコ「できたわシンジ君。幸福感と快楽を数値化する機械よ」
【画像】乳首ポロリしてるのに気付いてない可愛い子がエ□すぎる
【※閲覧注意※】生理中のおま●こ汚すぎワロタwwwwwwwwwwwワロタwwwwwwwww...
【XVIDEOS】新田恵海のAVが再流出www 削除される前に見ておけwww
レギンズ履いてるからって油断しまくりのお姉さん…普通のパ●チラよりエ□いんですがwww
元ジュニアアイドルの星野美憂がヌードになってた件
ポッポ「グエー、捕まったンゴー」
【画像】すごくエッチな美人市職員が見つかるwwwww
サキュバス「は〜い♡お姉さんとHなコトしたい子はおいで〜」男の子達「わぁ〜い」
女の子「わわっ、何で俺くん裸なの!?」俺「裸に見えるだけ……さっきのケーキに透視薬を盛ったのさ」
彡(●)(●) 「ナイフで刺したことは間違いない」
男「新入部員か!?」女「入れてください…////」


きみとえっち (GOT COMICS)[アダルト] よいこといけない放課後 (メガストアコミックス)[アダルト] いやらしいこ。 (WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL)[アダルト]

 

SS宝庫最新記事50件