転載元:魔法少女をレンタルしたんだが、魔法が使えない子だった…

1: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:32:24.46 ID:ZABX0Iny.net

 初めて魔法少女がレンタルできるという話を聞いたとき、
頭の中の記憶から引っ張りだされたものは、小学生の時に見た
魔法少女のアニメだった。
 俺には姉がいて、姉はいつも日曜の朝になると魔法少女のアニメを
テレビで見ながら歓声を上げており、俺も興味本位で
横からテレビを覗きんでいた。

 テレビの中の魔法少女は悪者が現れると、必ず変身して魔法を使い、
戦っていた。派手な魔法で倒されていく悪者たち。
魔法少女はいつも正義の為に戦い、人々を助けていた。

 その時は魔法少女よりも戦隊ものやヒーローが好きだった。小学生の男は
大抵、魔法少女のアニメよりこちらに興味を惹かれるだろう。
変身し、ピンチになると巨大なロボットに乗って戦う正義の味方。
巨大ロボットが怪物を倒すシーンは当時、いつ見ても刺激的だった。
いつでも正義の為に戦い、人々を守るという点では、戦隊ものも、
魔法少女も同じだったんじゃないかと思う。

 そして、この二つにはもう一つの共通点がある。それは両方とも、
架空の存在だということだ。

 でも、俺は後に知ることになる。魔法少女は実在するということに。
 ただし、俺の知る魔法少女は正義の為でも、人々を守る為にも
存在する訳ではなかった。





 


【流出画像】奥菜恵(34)フルヌード&フ●ラ画像の高画質で公開!⇒これが押尾学のリベンジポルノ…
【gif】突然スカートめくりされたJCの反応wwwwwwwww(※画像あり)
【※GIFあり※】 地上波でJKが生ケツを披露してしまうという放送事故wwwwwwwwwwww...
【エ□GIF】騎乗位を連想させる、もの凄い腰振りダンスの動くエ□画像
【エ□GIF】挿入部分がよく見える騎乗位GIFがエ□抜ける15枚
【GIF画像】身内のセッ●スに感化されてオナ●ーしちゃう女たちwwwwwwwwww(19枚)
マ●コもア●ルも同時責め!?GIF画像にしたら想像以上のエ□さだったwww
男が悶絶するほどの腰使いでいかせてくる騎乗位GIF
ドジな女の子たちの「痛い」GIFが笑える(25枚)
彼女にいろんな場所でフ●ラさせた時の話
【画像あり】加護亜依(28)「こんなオバサンでいいの…?」
確信犯!?桐谷美玲のポロリ癖に撮影現場の男性スタッフはキツリツもの!?
【悲報】なーにゃ 逆ライザップ 披露・・・・・・・・・・
女性器見えそう…。ビーチに「とんでもない水着」を着てる女性がいると話題に
【画像】 マ ジ か よ ……っ て な る 画 像 gif く だ さ い【65枚】他

2: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:33:12.49 ID:ZABX0Iny.net

 俺はアルバイトを二つ掛け持ちしている。
大学二年なのだからアルバイトではなく、
勉強をするべきだという事は分かっていたが、
将来の為に貯金をしておきたかった。

 今の世の中は酷く不安定だ。人生がどう転ぶかは分からない。
成功するやつと失敗するやつ。勝利者と敗北者は必ず存在する。
俺はもし敗北者になってもどうにかなるよう、金を貯めることにした。
金さえあれば、人並みの人生に返り咲きする可能性を見出すことができる。




3: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:33:54.26 ID:ZABX0Iny.net

 一つ目のアルバイトは深夜のコンビニだ。特にこれを選んだことに大きな
理由はない。ただ、昼間より時給はいいから深夜を選んだ。
深夜のコンビニには様々な人が訪れる。
 サラリーマン風の人、スウェットにサンダルでくるカップル、
酒とつまみを買っていく中年の男、ひたすら雑誌を立ち読みし続け、何も
買わずに帰っていく人など。
昼間とは客層に大きな違いがあるだろうと思う。

 深夜は昼間と違い、あまり客は多くない。当然、仕事はレジ打ちよりも
商品の棚卸しが多くなっていく。
ある日、俺がいつものように、商品の棚卸しをやっていると、アルバイトの
先輩が話しかけてきた。

「なあ、お前なんか悩んでいる顔してるぞ。なにかあったのか?」
 そんな風に俺の顔は見えているんだろうか。よく、無表情だとか、
無愛想だとか、何を考えているのか分からない、といったことは
いわれてきたが、「悩みがありそう」といわれたのは初めてだった。




4: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:34:23.03 ID:ZABX0Iny.net

 俺は、「特に何もありませんよ」と答えた。
それでも先輩は納得していない様子で、こういった。
「もし、だれにもいえないような悩みがあるならいい話がある。
この街には魔法少女をレンタルできる店があるんだ。
そして悩みなんて魔法ですぐに解決出来る」

「魔法少女?」俺は聞き間違いではないかの確認の意味を込めて、
そう訊き返した。

 この先輩はアニメが大好きで、いつもその話を俺に聞かせる。
ついに現実と創作の違いが分からなくなるまでになってしまった
のだろうか。気持ちが分からなくはない。俺だって現実逃避を
いつだってしたいと思っているし、現実から逃げて架空の世界に
いけたらと思うこともある。




5: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:34:53.14 ID:ZABX0Iny.net

「そう、魔法少女だ。ただし魔法少女を雇うにはそれなりの金がいるらしい。
お前、アルバイト掛け持ちしてて、結構貯金あるんだろ? だったらいって
みるといい」

 先輩はそういうと、地図を描いたメモを渡してくれた。
ここにあるビルにその店が入っているのだという。
俺は当然信じられなかった。魔法少女と魔法。
どちらも非現実的だ。架空のものとしか思えない。
そんなことよりも先輩の頭の方が心配だ。
他人に魔法少女がいるなんて真顔で語る彼に同情してしまう。

 しかし、俺に悩みがあるということを先輩は見抜いていた。
あの時は、悩みなんてないといったが、実際にはある。
誰にもいえない深刻な悩みが。




6: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:35:26.81 ID:ZABX0Iny.net

 でもそれは、誰かに相談してどうなるものではないと思う。
俺自身の問題だからだ。

 俺は昔から上手く人に馴染めない性格をしていた。今でもそうだ。
クラスでは必ず浮いていた。別にいじめられていたとか、
そういったことではない。まるで存在しないかのように
扱われていたのだ。
人はみんな、自然と人と接する方法を身に着けていく。
母親や父親、兄弟、親戚、近所の子供たち。
そのような人々と接していくうちに、人とどう接すればいいのか、
どう関わればいいのか、そういったことを学んでいく。

 ただ、どういうわけかそれを学ぶことが出来なかった。理由は
分からない。生まれつきそういう普通の人間には備わって然るべき
機能が存在しなかったのかもしれない。

 その結果、俺はいつも一人だった。クラスに打ち解けられず、一人ぼっち。
なにかを話す相手なんて一人もいなかった。
授業で二人組みを作れと教師にいわれたときは、いつでも最後まで
余った。そして余った者同士で組む。お互いバツの悪そうな顔をしながら。
修学旅行のグループ行動では置いて行かれた。俺がいると居心地の悪い
空気になるのだろう。




7: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:37:58.40 ID:ZABX0Iny.net

 それでも俺は人が嫌いではなかった。むしろ憧れていた。
友達同士で仲良く話したり、一緒に食事をしたり、遊びにいったり。
俺もいつかはそんなことがしたいと思っていた。

 大人になれば変わると思っていた。自然に変わっていき、俺もみんなと
同じようになれるのだと。
 でも、大人と子供に明確な境界線なんて存在してなかった。俺はいつしか
二十歳になり大人と呼ばれる年齢になった。それなのに、なにも変わらずにいた。
大人も子供も変わらないのだ。二十歳という年齢は社会的に大人になるという
一つの目安であって、急に大人になる訳じゃない。徐々に成長し大人に
なっていく。
――果たして俺はいつか大人になれる日が来るのだろうか。


 深夜のアルバイトを終えて家に帰ってきた俺は、もし魔法少女が本当に
存在したら俺の悩みんて魔法で解決できるんじゃないか、
なんて事を妄想しながら眠った。




8: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:39:26.48 ID:ZABX0Iny.net

 あの魔法少女の話を聞いてから数日、今日は派遣のアルバイトだった。
そこでもコンビニの先輩と同じようなことを中年の男にいわれた。

 その中年の男とは今日初めて会った。派遣の仕事は基本的に毎回
違う現場に派遣される。今日は倉庫内でのピッキング作業が主な仕事だった。
そして休憩時間にたまたま隣同士で食事をする機会があったのだ。
食事をしながら男はいった。「あんた、なにか悩みがあるだろ? 
そう顔に書いてあるぜ」と。
 その後、「俺にも悩みがあってな」と続いた。
そんな話をしている時に魔法少女の話になったのだ。
内容はコンビニの先輩と同じだった。ただ違う点として、この男は
実際にそのビルを訪れたらしい。
 しかし、男の手持ちの金では足らず、断られたそうだ。
そして男も地図を描いて渡してくれた。「もし金があるならいってみろ」
といわれた。




9: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:42:35.49 ID:ZABX0Iny.net

 世間では魔法少女が流行っているのだろうか? それにしても
こうも続けて同じ話を、接点のない二人から聞かされると、
少し信じてしまいそうになる。
結局、俺は次の休みの日にそのビルへと向かうことにした

 その日は気持ちのいい秋晴れの日だった。空はだんだんと高くなって
きており、空気も澄んできている。もうすぐで冬がやってくるのだと
感じさせられた。

 そのビルへは俺の家から歩いて行ける距離にあった。陽気な日中の中、
散歩がてらビルへと向かう。
 途中の銀行で、ほとんどの貯金を下ろした。値段は知らないが、
派遣の男がいうに、なかなか高額だとの話だったので、とりあえず
持っていけるだけの金を用意しようと思ったからだ。
口座には結構な額が貯まっていた。




10: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:43:09.58 ID:ZABX0Iny.net

 地図を片手に例のビルの前についた。どこからどう見ても普通の
オフィスビルだった。ビルは五階建てで、魔法少女がレンタル出来る
店は三階にあるらしい。
 俺はビルの中へ入り、エレベーターのボタンを押した。ビルの中も特別
変わったところはなく、いたって平凡だった。もう少し怪しいビルなのかと
想像していたのだけれど。

 エレベーターに乗り、三階へ。エレベーターの扉が開くと、そこも普通の
フロアだった。長い廊下があり、そこに一つだけ扉があった。
扉の前にいってみるが、看板や表札の類はなにもなかった。

 本当にここがその店で合っているのだろうか、不安だったが、意を
決しドアノブに手をかけた。
 店内はどこかのホテルの受付のようになっていた。小奇麗で、高級そうな
ソファーや椅子、テーブルなどが置いてあり、壁には高そうな抽象画が
飾られていた。そして中心には木製のカウンターがあり、そこに三人の
女が立っていた。




11: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:44:02.26 ID:ZABX0Iny.net

 そのうちの一人の女が俺に気づき、「いらっしゃいませ」といった。
 俺はその女がいるカウンターへ近づく。すると、
「お待ちしておりました、雨宮様。どうぞこちらへ」といわれた。
 俺は来ることも名前も伝えていないのにどうして、俺の名前を
知っているのだろう?
まさか本当に魔法なんてものが存在するとでもいうのか。

「魔法協会へようこそいらっしゃいました。本日はどういった
ご用件でしょうか?」

「魔法少女をレンタルできると聞いたもので」

「そうでしたか。どのようなご理由でレンタルをご希望なのですか?」

「友達が欲しいんだ。魔法でどうにかして欲しいと思ってね」

「承知しました。ではまず料金システムのお話からさせて頂きます。
簡単に申し上げますと、能力の高い魔法少女ほど高額なお値段に
なっております」

「そういう話はいいよ。俺はありったけの貯金を下ろしてきたんだ。
これで雇える魔法少女なら誰でもいい」
俺はそういって、カウンターに金の入った封筒を出した。
女が金を確認している。そして、言いづらそうな表情で俺を見る。

「申し訳ございません。こちらの金額でご用意できる魔法少女はおりません」
なんてことだ。アルバイトでためた貯金二年分だぞ? これでも足りない
っていうのか。俺が思っていたよりも魔法少女を雇うには金が必要らしい。




14: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:47:24.37 ID:ZABX0Iny.net

 俺は、そうかといってその場を去ろうとした。雇えないのだったらここにいても
意味がない。そのとき、

「あ、少々お時間を頂けますか? もしかしたらこちらの金額でご用意できる
魔法少女が見つかるかもしれません」
と、何か閃いたようにいわれた。

「あちらに座ってお待ち下さい」
そういうと、女は奥の部屋に入っていった。

 さっきこの女は能力の高い魔法少女ほど金額も高くなるといった。
つまり、これから紹介される魔法少女はよほど能力が低いのかもしれない。
だが、俺の願いは友達を作ることだ。偉くなりたいとか、大金持ちになりたい
とか、そんな大層な願いじゃない。例え能力が低くても、それぐらいの
願いなら叶えてくれるだろう。

 俺はいわれたままに近くのソファーに腰掛け、待つ事にした。ポケットからタバコ
を取り出して吸おうとしたが、灰皿らしきものは見当たらなかった。代わりに
見つかったものは「禁煙」の二文字。
俺は嘆息も漏らし、大人しく待っていることにした。
 待っている間、客と思われるような人間が何人かこの店――魔法協会とやらを
尋ねてきていた。
中年太りしていて、高級そうなスーツや腕時計を身につけた男。男はカウンター
で話をし、満足そうに帰っていった。
次に現れたのはいかにも冴えない顔をした男だった。その男はカウンターで少し
話をし、無念の表情を残し去っていった。きっと、男の金じゃ足りなかった
のだろう。ここでも勝利者と敗北者の差を見せつけられた気がした。




15: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:48:17.31 ID:ZABX0Iny.net

 三十分ほど待っても呼ばれないので、俺はカウンターに行き、後どれくらいかかりそう
なのか訊いた。答えは「まだ分かりません」とのこと。
俺は外でタバコを吸ってくるといい残し、ビルから外にでた。

 外は夕暮れで赤く染まっており、木も、建物も、電柱も、道を行き交う人々も赤く
染まっていた。
道をぶらぶらしていると、近くに公園があった。公園なら喫煙所があるかもしれない。

 なかなか広い公園だった。真ん中には大きな噴水があり、黙々と水を垂れ流して
いた。端の方には遊具があり、小さい子供たちがはしゃいで遊んでいる。
小さな女の子が魔法少女ごっこをしていた。変身シーンをやってみたり
魔法で適役の男の子をやっつけていたりした。
 やはり魔法少女っていうのはあんな感じで変身したり、魔法を唱えたりするのだろうか。
悲鳴にも似た子供たちの歓声が聞こえてくる。
 自分の子供時代を思い出す。しかし、俺には他の子供たちと遊んだ記憶なんてなかった。
昔から孤独だった。人との接し方が分からないまま二十歳という年齢を
迎えてしまった。




16: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:48:53.21 ID:ZABX0Iny.net

 俺は隅の方にあった小さな喫煙所に行き、タバコにオイルライターで火をつけた。
オイルがもうあまりないのか、何回かフリントを擦らなければ火がつかなかった。
家に帰ったらオイルをいれないとな、そう心の中で呟く。
 二本目のタバコの火を設置型の灰皿で揉み消すと、俺は魔法協会があるビルへと
戻った。時間は十分に潰した。そろそろ呼ばれていてもおかしくはないだろう。

 魔法協会へと続く扉を開けると、先ほどの受付の女が戻ってきていた。
俺の顔を見て、「お待ちしておりました」といった。




17: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:50:00.16 ID:ZABX0Iny.net

「雨宮様のご提示された金額でご用意できる魔法少女が見つかりました」
そういうと、女は奥の部屋へ向かって誰かを呼んだ。
 呼ばれて部屋から出てきたのは少女だった。見た目から察するに、
歳は十六から十八ぐらいだろうか。

「こちらがご用意させて頂きました魔法少女の、渚でございます。ただ、一点
問題がございまして……」
女はそういいながら少女の方を見る。すると少女はうんざりした顔でこういった。

「魔法使えないけどいいですか?」

 俺は魔法少女を雇おうとしたはずだ。それなのに出てきたのは魔法が使えない
魔法少女? どういうことだ? 俺は馬鹿にされているのだろうか。

「この子は魔法がまだ使えないのですが、魔法少女の素質を持っている為、
一応魔法少女です。いかがでしょうか? 魔法は使えませんが雑用など様々な
事にご利用頂けます」

「ああ、この子でいいよ」
 魔法少女という非現実的な存在に触れたせいか、感覚が麻痺していたのだと思う。
それにどうせ俺の金ではまともな魔法少女が雇えないことを知っていたから、
そうぶっきらぼうに答えた。

「ありがとうございます。ではこれからご契約についての詳しい
ご説明をさせて頂きたいと思います。まず、レンタルできる期間は
明日からの三か月間になります。
また、魔法少女を雇えるのは人生で一度きりです――」
 俺は説明を適当に聞いた。こういう面倒な話は苦手だ。

 こうして俺は、魔法が使えない魔法少女の渚に出会った。




20: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:53:31.24 ID:ZABX0Iny.net

 この日コンビニのアルバイトを終えて、
自分のアパートに帰ってきたのは朝の七時ぐらいだった。
シャワーを浴びてすぐに眠った。

 眠りにつくと夢を見た。夢の中では俺はまだ子供で、悪い怪物に
襲われていた。周りから上がる悲鳴。逃げ惑う人たち。
怪物が何か俺に悪さをしようとしているのだ。
為す術もなくただ立ち尽くすしかなかった。
 そこに一人の少女が現れる。少女は華やかな衣装を
身に纏い、勇敢にも、その怪物に戦いを挑む。
戦いは拮抗していたが、少女が派手な魔法を放つと
雌雄を決した。
そして少女は俺に微笑みかけるとどこかに去っていった。

 きっと昨日のことがあったせいだろう。昨日、魔法少女を雇った。
魔法少女なんて非現実的だと思うだろうが、実際に雇ったのだ。
その魔法少女を使って友達を作るつもりでいる。
 だが問題点があった。雇った魔法少女は魔法が使えないらしい。
なんて馬鹿な話だ。
 つまり、俺は大金を払って普通の人間を雇ったということになる。
こんなことをするのなら、何でも屋とかそういう店で人を雇った方が
良かったのかもしれない。たぶんそっちの方が金はかからない。
 だが、俺は魔法少女を雇うことにした。魔法という不思議な言葉で
感覚が麻痺していたのだろう。




21: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:54:06.91 ID:ZABX0Iny.net

 そんな夢を見ながら眠っていると、呼び鈴が鳴った。
重い瞼を開けて時計を見ると朝の十時だった。
眠りについてからまだ二時間ぐらいしかたっていない。
どうせ、宗教の勧誘か集金に決っている。

 無視をして再び眠りにつこうとしたが、呼び鈴が再び鳴らされる。
しつこい奴だなと思っていると三度目の呼び鈴が鳴った。
俺はこのしつこい奴がどんな顔をしているのか見てやろうと
思い、ベッドから起き上がり玄関に向かった。
玄関に向かう最中、すこし目眩がした、寝不足のせいだろう。

 玄関の鍵を外し、扉を開ける。するとそこにいたのは少女だった。
肩ぐらいまで長さのある黒髪、整った顔立ち、物憂げだが透き通った瞳、
華奢な体つき、真っ白な肌。
昨日、紹介された魔法少女だ。名前はなんといったか、よく
覚えていない。




22: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 19:59:17.23 ID:ZABX0Iny.net

 なんの用だろうか。なにか伝え忘れたことでもあったのか。
寝起きでまだ頭が上手く働いていない俺を見て彼女はいった。

「今日からこちらでお世話になる、渚です」

「それでなんの用だ?」

「なんの用と言われましても、あなたが私を雇ったんですよね?
昨日説明で聞きませんでしたか? 雇われた魔法少女は雇用期間内
は、雇い主と一緒に生活するんですよ」

「そんな話もあったかもしれない。あんまり真面目に聞いていなくてな」
 見ると彼女は大きな鞄を両手に重そうにぶら下げていた。

「それでお邪魔してもいいですか?」

「ああ、すまない。大丈夫だ」
 渚は靴を脱ぎ、小声で「お邪魔します」といって部屋に入ってきた。

「では昨日の説明を真面目に聞いていなかったということですので、
改めて、私から説明させていただきます」

「悪いんだが、その話はもう少し後でもいいか?
夜中アルバイトだったから寝ていないんだ」




24: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:00:03.88 ID:ZABX0Iny.net

 渚は、そうですかといい、部屋の隅に座って大人しくなった。
俺はベッドに入り、眠りの続きに入ろうとする。だが、渚の存在
が気になって寝付きにくかった。女の子が同じ部屋にいる状況で
眠ったことなんてない。
 渚はそんな俺の心中を察したのか、「私のことは気にしないでください」
といった。気にするなといわれても気になる。
それでもどうにかして、再び眠りにつくことができた。

 起きたのは夕方の五時ぐらいだった。渚は相変わらず部屋の隅に座っていた。
女の子と部屋で二人きりというこの状態は、あまり喜ばしいものでもなかった。
どうしても意識してしまう。
 俺は出来るだけ渚を意識しないように、生活をしていこうと思った。
とりあえずは夕飯の買い物だ。
近所にスーパーがある。そこで適当に材料を買って料理をしよう。
適当な服に着替える。すると、

「どこかに行くんですか?」
と渚が訊いてきた。
夕飯の買い出しだ、と答える。




26: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:01:08.53 ID:ZABX0Iny.net

 玄関を開け外に出ると、渚がついてきた。

「あんたは留守番してろよ。すぐ帰ってくる」

「いえ、雇用期間中は雇い主と行動を共にする規則なので」
 つまり、これからの三か月はこいつと常に一緒なのか。

 スーパーに着くと、適当に安い野菜と肉が見つかったので、野菜炒め
でも作ろうと思った。それぞれを買い物かごに入れていく。
ついでにビールも買う。

 渚と二人で買い物しているところは周りからどんな風に見えるのだろうか。
兄と妹か、それともカップルに見えるのか。後者に見えるといいな、
なんてことを考えた。

 レジで会計を済ませて外に出ると、すっかり辺りは暗くなっていた。
冷たい夜風が、俺と渚の間を吹き抜ける。風は水気がなく渇いた風だった。




27: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:01:40.26 ID:ZABX0Iny.net

 帰り道、俺は渚に訊ねる。
「なあ、あんた魔法少女なのに魔法が使えないんだろ? 
だったら何が出来るんだ?」

「一般的なことは一通りできますよ。料理や洗濯など家事はもちろんです」

「そうか。俺はやっぱり魔法が使えない普通の女の子を雇ったんだな」
すると、渚は「あの」と小さな声で呟き、こういった。

「あまり人前で魔法魔法いわない方がいいですよ? 規則で魔法少女を雇ってる
ことを他の人にいうことは禁止されていますので」

「そうなのか? どうせいったところでだれも信じないと思うけどな」

「禁止は禁止なので気をつけてください。周りにバレたら雇用関係は
終了になります。まあ、損をするのはあなたなので、ご自由に」
そう突き放すような口調でいった。

 この渚という女の子はどうも冷めた感じがする。基本的に無表情だし、愛想もない。
口調もどこか冷たいし、笑ったところを見たことがない。
魔法少女はみんなこんなものなのだろうか。
俺がイメージしていた魔法少女とえらい違いだ。いつも笑顔でいるもんだと
勝手に思いこんでいた。




28: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:02:24.18 ID:ZABX0Iny.net

 家に着き、俺は早速夕飯の準備に取り掛かろうとしたのだが、
「私が作りますよ」
と渚がいい出した。意外だった。そんな気遣いをしてくるなんて。
だが、俺は断った。

「俺は別に家政婦を雇いたかった訳じゃない。ただ友達が欲しいだけだ。
だからあんたは座って待っててくれ」
 それを聞き、そうですかといって、また部屋の隅に座り始めた。

「暇だったらテレビでも見たらどうだ? もっとくつろいでくれて
いいんだぞ。後三か月も一緒に生活するんだから、お互い気遣いばかり
だと疲れるだろう?」

「お気遣いは嬉しいですが結構です。私にお気遣いは無用ですよ」
 そうか、と俺は頷いた。やはり冷めている。




29: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:03:35.67 ID:ZABX0Iny.net

 二人前の野菜炒めと、炊飯器で炊いた白米をテーブルの上に置いた。
渚は部屋の隅から俺の正面に移動してきた。俺はいただきますといって、
食べ始める。それに続き、渚も小さな声で「いただきます」といって
食べた。

「うまいか?」

「普通です」

「そうか、ならよかった」
 後はお互い無言で食べた。人に料理を振る舞うのは初めてだった。
自分が作ったものを誰かが食べてくれる。存外悪いものじゃないな
と思う。もしかしたら、料理人の適性でもあるのかもしれない。

 夕飯の後片付けをし、シャワーを浴びようと思った。だが、ここは
普通先に女の子に勧めるべきじゃないか。それがマナーというやつだろう。




31: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:06:16.00 ID:ZABX0Iny.net

「おい、あんた先にシャワー浴びてくれよ」

「結構です。私はあなたが寝た後に入りますので」
それは困る。俺はもともと睡眠が浅く、いつも寝ている時は常に夢を
見ているような人間なのだ。寝てからシャワーを浴びられたのでは
絶対に目が覚めてしまう。

「悪いが、それだと俺は目を覚ましてしまうんだ」

「そうですか。仕方ありませんね。では、あなたの後に入ります」

「そうしてくれるとありがたい」
 俺はシャワーを浴びながらこれからのことを考えた
どうすれば友達が出来るのか。魔法が使えない渚にどう協力
してもらうのか。そしてこれからの三か月。雇用期間は
限られている。ということは時間が限れれているのだ。
俺はこの三か月の間にどうにかして友達を作らなければ
ならない。そうでないと、一生友達なんて出来ないだろう
そう考えると焦る気持ちが芽生え始めていた。
時間がもったいない。まずはアルバイトを辞めよう。
アルバイトをしている時間を友達作りの時間に当てる。
シャワーを浴び終わったら早速店長に電話して、
辞める旨を伝えなければと思った。




33: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:07:51.97 ID:ZABX0Iny.net

 シャワーを浴び終えた俺は冷蔵庫にしまってあるビールを
取り出す。それを一口飲む。ビールの炭酸が喉を刺激する。
ビールの苦味が口の中いっぱいに広がった。
夜寝る前に酒を飲むことは友達のいない俺にとって数少ない
楽しみの一つになっていた。
酒を飲みながらテレビのバラエティー番組を見るのだ。
別にバラエティー番組が好きな訳ではない。むしろくだらなくて
嫌いだった。
芸人が面白いことをやって笑うというよりは、そのくだらない
ということを笑った。
しかし、そのくだらなさがいい。
まるで自分の人生みたいだなと思う。




35: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:08:27.24 ID:ZABX0Iny.net

 そして渚に次に浴びるよう促した。
渚は不本意そうな顔をしながらもそれに従ってくれた。

 渚がシャワーを浴びている間、俺はテレビを見ていた。
芸人たちが面白い動作をし、面白いことを話し、
面白い企画を行っている。
最高にくだらなくて笑えてくる。

 それからアルバイト先の店長に電話をした。
辞めさせて欲しいと。
店長は俺の急な話に驚いていた。
当然だろう。電話がかかってきたと思ったら
いきなり辞めたいといわれたのだ。

 俺はもう出勤するつもりはなかったが、店長に後一度だけでも
出勤してくれないかと頼まれた。人手不足なのだろう。
こちらの勝手な都合で急に辞めるのだ。それぐらいは
了承する。その返事に店長は安堵したようだった。




36: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:09:08.83 ID:ZABX0Iny.net

 丁度電話を終えた頃、渚が浴室から出てきた。
石鹸とシャンプーの甘い、いい匂いが部屋中を満たす。
渚は「ありがとうございました」と礼を述べた。

 まだ濡れている渚の髪を見て綺麗だなと内心思う。
渚は俺の視線を察したのか、髪をタオルで一生懸命拭いていた。
そしていつもの部屋の隅に座りだした。




39: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:13:08.10 ID:ZABX0Iny.net

「なあ、そんな隅にいないでもっとこっちにくればいいじゃないか。
別になにもしたりしないさ。少し話がしたいだけなんだ」

「なにもしないのは当たり前です。魔法少女に危害を加えることは
禁止されていますから。話っていうのはなんの話がしたいんですか?」

「もちろん魔法少女の話に決まってる。訊いてみたいことがあるんだ」

「そうですか。それぐらいの話ならば、まあ、いいでしょう」
 そういうと、部屋の隅からテーブルまで移動してきた。

「それで、どんなことを訊きたいんですか?」

「そうだな、まずは……魔法少女はみんな魔法協会に所属しているのか?」

「はい、そうです。必ず所属しています」

「フリーランスの、つまり自営業の魔法少女はいないのか?」

「いませんね」

「なぜいい切れるんだ?」

「魔法少女は魔法協会に所属していないと魔法が使えないんです。
入る前も使えませんし、抜けても使えません」

「じゃあ、例えばあんたが仮に魔法が使えるようになっても、
魔法協会を抜けたらまた使えなくなるのか?」

「ええ、その通りです」

「なぜなんだ?」

「詳しくは私も知りません。魔法協会がなにかしらの魔法を使っている
のかもしれませんね。憶測ですが」

「そうなのか。あんたも早く魔法が使えるようになるといいな」
 俺の言葉が癪に触ったらしく、話はもういいですか? といって、
また部屋の隅に行ってしまった。
やはり魔法少女なのに魔法が使えないっていうのは
よほどのコンプレックスなのかもしれない。




40: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:15:11.72 ID:ZABX0Iny.net

 ビールを三缶ほど空にしたときには、丁度いい眠気がやってきていた。
そろそろ眠ろうと、渚に声をかける。

「俺はそろそろ寝る。あんたは俺のベッドを使ってくれ」

「いえ、私のことは気にしないでください。床で十分です」

「さすがに、そういう訳にもいかないだろ。女の子を床に寝させる
なんて」

「大丈夫ですから。床で眠れるだけマシです」
 そういって頑なに譲らない。
仕方がないので、俺は夏用のタオルケットとクッションを
取り出し、渚に向けて投げた。
それを驚いたようにキャッチする渚。

「いいんですか?」と遠慮がちに訊ねてくる。

「当たり前だろ。ベッドで寝ないならせめてそれを使え」
 俺がそういうと、小さく頭を下げて「ありがとうございます」
と呟いた。

 電気を消して、ベッドに横になる。やはりまだ渚の存在が
気になる。そのうち慣れるものなのだろうか。
 しばらくしても、渚から寝息は聞こえてこない。もしかして
俺が寝るのを待っているのかもしれない。気を使い過ぎだ。
 魔法少女っていうのは本当に大変な仕事なんだな、と思いながら
俺は眠りについた。




41: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:16:35.72 ID:ZABX0Iny.net

 いい匂いが漂ってくる。なにかを焼いている香ばしい匂い。
フライパンで油の弾ける音がする。それにかちゃかちゃと鳴る
調理器具の音。大学に進学する前、まだ高校生だった頃、実家で
よく聞いた音だ。


 俺はまだまどろみの中にいた。なにかの夢を見ていた気がする。
どんな夢だったかは思い出せない。現実と夢の境界。
この境界を漂っている時間が好きだ。嫌なことも嬉しいことも
なにもない。なにも感じない。この境界から抜け出して起きてしまった時、
いつも悲しくなる。目が覚めて、ここは現実だと知らされる。
そして現実での俺は孤独だ。起きて今日も俺は一人ぼっちなんだと
思い知らせれる。


 だんだんと意識がはっきりしてきた。まどろみが終わり現実が迫ってくる。
まだ半分程度しか開かない目を手で擦る。視界もはっきりしてくる。
それと同時に聴覚も。そして五感全てがはっきりしてきた。




42: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:17:55.70 ID:ZABX0Iny.net

 俺はさっきから漂ってくる匂いと音が、キッチンから来るものだとやっと理解した。
その方向に目をやると少女の後ろ姿が見えた。一瞬まだ夢の中なのかと思ったが、
すぐに思い出した。そうだ、魔法少女を雇ったのだった。そしてその魔法少女は
俺の家に居座っている。

 渚はなにか料理を作っているようだった。余計な気遣いをしなくていいのに、と
思う。昨日も渚にいったが、なんでもしてくれる家政婦を雇いたかったわけではない。
自分で出来ることは自分でしたい主義なのだ。もちろん、料理を作ってくれる
のはありがたいし、素直に嬉しいが、なんだか悪い気がするのだ。
友達を作る為に雇ったのに、他のことまでしてもらうなんて贅沢な気がした。




43: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:19:01.94 ID:ZABX0Iny.net

 ベッドから体を起こすと、渚がこちらに気づいたらしく、声をかけてきた。

「おはようございます。今朝食を作っているのでもう少し待っててくださいね」

「余計な気遣いしなくていいのに」

「私が作りたかったんです。迷惑でしたか?」

「いいや、そんなことはないさ。ありがたいと思ってる」

「それはよかったです」
 渚はそういうと、また料理作りに戻った。

 俺はベッドから起きだしてテーブルの前に座り、タバコに火をつけた。
煙を深く肺まで吸い込み、吐き出す。ニコチンが吸収され、脳全体に
行き渡ったようだった。




44: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:19:43.90 ID:ZABX0Iny.net

 丁度タバコを吸い終え、灰皿で火を消したところで、渚が朝食を運んできた。
ベーコンエッグに味噌汁、白米、それにちょっとしたサラダ。

「本当はもっとちゃんとしたものを作りたかったんですけど、冷蔵庫に
あまり食材がなかったものですから、これぐらいしか作れませんでした」

「これで十分だよ」
 こんなまともな朝食を食べるのはいつ以来だろうか。俺は基本的に朝食は
めんどくさいから食べない。食べても、大学に行くときにコンビニに寄って
おにぎりを一つ買うかどうかだ。

 まずは味噌汁から飲んだ。出汁がしっかりとってあってうまい。




46: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:22:15.51 ID:ZABX0Iny.net

「どうですか? 食べられますか?」と渚が心配そうに訊いてくる。

「うん、うまいよ」
 すると、隠し味に魔法を使ってますからと真顔でいってきた。

「あんたでも冗談をいうんだな」

「本当のことです。女の子はみんな、だれかに料理を作るときは魔法を使うもの
なんです」

「そういうもんか」
 渚のいう通り、料理はまるで本当に魔法がかけてあるのかというぐらい、おいしかった。
一人の女の子が俺のために作ってくれたという魔法なのかもしれない。
母親以外の人が料理を振る舞ってくれたのは初めてだった。
だれかの手料理を食べるというのはいいものなんだと知った。

 二人とも朝食を終えると、俺は後片付けをしようとしている渚から皿を奪い、
自分で流し台に持っていった。




47: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:23:02.15 ID:ZABX0Iny.net

「いったろ? 俺は別に家政婦を雇いたかったわけじゃないって。後片付けは帰って
きてから俺がやるよ」

「帰ってきてからって、今日はどこかに出かけるんですか?」

「ああ、大学にな。その後は夜からアルバイトだ」

「大学生だったんですね。それにしても、大学生でよく私を雇えましたね」

「ずっと将来のために金を貯めてたからな」

「将来起業でもするんですか?」

「そういうわけじゃない。不安だったから貯めていただけだ」

「そうですか、随分悲観的なんですね」

「なんとでもいってくれ。不安定な世の中だ。俺と同じような不安を抱えている
やつは多いだろう」

「魔法少女の私にはよく分かりませんね」

「俺にも魔法少女のことはよく分からないね」
 そう渚に返事をしてから、大学へ行く準備を始めた。といっても歯を磨いたり、
着替えたりするだけだが。

 準備を終えて玄関を開ける。すると渚も当たり前のようについてくる。

「やっぱりあんたもついてくるのか?」

「仕事ですから」
 俺は溜め息をつき、大学へと向かった。
 今日は雲一つない快晴だった。気温も丁度いい。だが、この季節は夜冷える。
 大学へは歩いて三十分といったところだ。気持ちのいい天気の中歩くことは
俺の気分を晴れやかなものにしてくれた。




48: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:24:25.77 ID:ZABX0Iny.net

 大学に着くと渚が少しはしゃいだ気持ちを抑えるようにしてこういった。

「ここが雨宮さんの通っている大学なんですね。大学って私初めて来ました」

「魔法少女で大学に通っているやつはいないのか?」

「いないです。魔法少女はみんな専業なんですよ。それが規則ですから。
だから高校に通いながらとか、大学に通いながらとか、そういう人はいません。
私も中学を卒業してすぐに魔法少女になったので高校も通ったことないです」

「魔法少女って色んな規則があるんだな」

「はい。ですからちょっぴりわくわくです」
 いつもの冷めた感じとは違って嬉しそうにしている。意外な一面だ。
そう考えると、渚はごく普通の女の子なんだなと思った。




49: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:25:11.72 ID:ZABX0Iny.net

 大学の構内に入るとちらちらと視線を感じた。おそらく渚を見ているのだろう。
渚の容姿は整っている。正直にいって可愛い。もし、他の男が渚を連れて
歩いていたら、俺も視線を送ってしまうだろう。
こんな可愛い女の子を連れて歩ける、そしてこの周り、つまり少なくとも大学構内
では、俺が渚に一番近しい存在だ。そんな気持ちが俺に優越感を与えた。
だが、普段視線に慣れていない俺にとって、この視線は緊張を強いる。
目立つということは俺の人生において今までなかったことなのだ。

 その視線に晒されつつ教室へ入る。やはりここでも渚への視線は止まなかった。
俺は教室の窓際の一番後ろの席へと座る。ここがいつもの定位置だ。
渚も自然と俺の隣に座る。
昔から目立たなかったことで、自ずと自分がいるべき場所が分かるようになっていた。
ここの席はだれからも視線を送られずに済むのに最適の場所だった。




50: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:26:43.75 ID:ZABX0Iny.net

 本来、ここの学生ではない者が講義を受けることは当然禁止されているし、
バレれば即、叩きだされるだろうが、大学の講義を受ける学生の人数はとても多い
何百人なんてザラだ。つまり、渚が一人が増えたところで、大学教授が気付くとは
到底思えない。
講義が始まっても、案の定、渚が咎められることはなかった。

 友達と一緒に講義を受ける。それは俺の憧れの一つだった。今隣にいるのは、
友達ではなく魔法少女だが、もし友達がいたらこんな風なのだろうかと思いながら
講義を受けた。その間、眠そうに気だるげに講義を受けている俺とは裏腹に、
渚は真面目に大学教授の話を聴いていた。
中学までしか通っていないといっていたからもの珍しいのだろう。話を理解している
のかどうかは疑わしいが、じっと黒板を見つめ、時折こくこくと大学教授の話に
頷いていた。




51: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:27:52.83 ID:ZABX0Iny.net

 講義を二つ受け終え、昼休みになった。俺はいつも昼は学食で済ませている。
いつも通り学食へ行き、食券機のメニューを眺める。五百円硬貨を食券機に投入し、
適当にラーメンのボタンを押す。そして出てきた食券を取った。
隣を見ると、なにやら渚が真剣に表情で食券機を見つめている。

「そんなに悩むことか?」

「私、学食っていうものも初めてなんです。お昼を学食で食べるっていうのは、
憧れの一つだったんですよ。悩まないわけがないじゃないですか」

 うーんと唸りながらついに食べるものを決めたらしい。俺は千円札を投入してやる。
魔法少女の食費などは全て雇い主負担になっている。渚は、ありがとうございますと
いって、オムライスのボタンを押した。出てきた食券を嬉しそうに握りしめている。
俺たちはそれぞれの食券を持って、学食のカウンターにいる職員へ手渡した。
食券と引き換えに料理が出てくる。




52: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:28:43.67 ID:ZABX0Iny.net

 出てきた料理を手に、空いている席を探した。お昼時の学食は生徒たちで賑わって
いて、なかなか空いている席が見つからない。二人してきょろきょろと探していると、
奥にある席が空いた。つかさずそちらに向かって席を確保する。これでやっと昼食に
ありつける。

 席に座って、ラーメンをテーブルに置く。渚は俺の正面に座ってオムライスを置いた。
ラーメンを啜る。不味くもなく美味くもなく、ありふれたどこにでもある味だった。
正面に目をやると、渚がオムライスに熱い視線を注いでいた。

「そんなにオムライスが珍しいのか?」

「オムライスぐらい当然知ってますよ。馬鹿にしないでください。
学食で食べられることがいいんです。
いつも学食で好きなメニューを食べられる雨宮さんとは違うんですから」




53: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:29:30.89 ID:ZABX0Iny.net

 昼食を食べ終え、午後の講義を受ける。午後は一つしか講義がない。
講義では午前中と同じように渚は真剣に教授の話を聴いていた。

 今日の全ての講義が終わり、大学を去るとき、渚は名残惜しそうな様子だった。
俺はそんな渚に、大学なんてまたすぐ来ることになるからといってやった。
渚は無表情ながらもどこか嬉しそうな顔で頷く。

 家に帰って来てからは夜まで仮眠をとろうと思っていた。
今日の夜は最後のアルバイトだ。
アルバイトは夜から朝までなので今のうちに仮眠をとっていないときつい。
渚にその旨を伝え、俺は布団に潜り込んだ。渚はいつもの部屋の隅へ。そこがもう定位置
になっていた。目覚ましをセットし、カーテンを閉め、部屋を暗くし、寝る体勢に入る。
渚は暇そうに体育座りをしながら、膝に顔を埋め、自分のつま先を見つめていた。




54: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:30:03.63 ID:ZABX0Iny.net

 目覚まし時計が鳴り、目を覚ます。三時間ほど眠れただろうか。
まだ渚が部屋にいることに馴れてないせいで緊張しながら眠ったからか、
体のあちこちが凝っていた。伸びをし、体をほぐす。

「やっと起きましたね」

「あんたは俺が寝てる間なにしてたんだ?」

「なにもしてませんよ。おかげで暇でした」
 そういうと渚は俺にアルバイトの準備を促した。よっぽど暇だったんだろう。
今度暇つぶしになる本かなにかでも買ってやるか。

 着替えて荷物を持ち、準備を整え外に出ると、冷たい風が吹いていた。
まだ秋といっても、もう十月の末だ。気温は低く体が凍えそうになる。
渚は相変わらず俺についてきた。




55: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:30:53.06 ID:ZABX0Iny.net

 アルバイト先のコンビニの入り口で、急に渚の足が止まった。
「私は雨宮さんがアルバイト終わるまで外で待ってます」

「終わるのは朝の六時だぞ? 今から八時間もある。こんな寒い中外にいたら
風邪引くだろ」

「でも、店内にいるのは邪魔ですし、厚着してきたので大丈夫です。
私のことは気にせず、労働に励んでください」
 その後も何度か店の中にいてはどうかといったのだが、渚は「雇い主に迷惑を
かけるのはいかがなものかと思うので」といって譲らなかった。
仕方がないので俺は渚を外に残し店内に入った。

 今日は魔法少女のことを教えてくれた先輩と一緒だったが、渚のことは黙っていた。
他の人間に雇っていることをいうのは禁止らしいからな。




56: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:31:31.10 ID:ZABX0Iny.net

 アルバイト中、店内から渚を見てみると一人ぽつんと立っていて、微かに震えている
ようだった。無理もない。寒い中ずっと外にいては体も冷える。
休憩時間になり、俺は廃棄のおにぎり二つと温かいお茶を渚に持っていった。

「休憩時間ですか?」

「ああ。あんたに飯とお茶を持ってきた」

「いいんですか? 貰っちゃって?」

「どうせ捨てるもんだ。かまわないさ」
すると渚は、「どうもです」といって小さくお辞儀をした。

「お茶温かいですね。雨宮さんって最初会った時はこういうことしない人かと
思ってたんですけど、結構優しいところもあるんですね。なのに、なんで
友達いないんですか?」

「俺が訊きたいぐらいだな」




57: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:32:08.38 ID:ZABX0Iny.net

 それから朝の六時まで働いた。先輩に最後の挨拶をして店を出ると、ちょこちょこと
渚がこちらに寄ってきた。

「お仕事お疲れ様でした」

「あんたも疲れただろ。ずっと立ちっぱなしだったんだ」

「これぐらい平気です。さ、帰りましょう」

 俺たちは家に帰り、シャワーを浴びて眠りについた。
起きたのはもう日が沈む時間だった。
 夕飯の買い出しにスーパーへ行って適当な惣菜とビール六缶、
それにつまみを買ってくる。

 二人で惣菜を食べ、俺はそれからビールを飲み、タバコを吸った。




58: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:32:51.99 ID:ZABX0Iny.net

「お酒好きですね」

「ああ、数少ない趣味の一つなんだ。あんたも飲むか?」

「結構です」

「そうか。せっかくだれかと酒が飲めるかと思ったんだが」

「それは友達ができてからの楽しみにしてください」

「なあ、なんで俺には友達がいないんだと思う?」

「そんなの知りませんよ。でも、昨日の大学での雨宮さんを見るに、
人と全く関わりがありませんでしたね。挨拶すらだれにもしていなかったですし」

「俺は昔からこうなんだ。人との接し方が分からない。なにをいつ、どんな
タイミングで話せばいいのか、その術を知らない」

「もっと積極的に自分から交流するべきですよ」

「頭では理解しているんだができない。上手く言葉が出てこないんだ」

「私とは普通に話せてるじゃないですか」

「いわれてみればそうだな。それは俺があんたを雇ってるって気持ちがあるから
かもしれない」

「そういう関係だったら問題ないんですね」

「みたいだな」
 溜め息をつきながら答えた。それから渚に祈るようにこういった

「俺は友達を作るためにあんたを雇った。だから協力してほしい」

「もちろんです。仕事ですから。でも私、魔法が使えないから普通のことしか
できませんよ?」

「それで十分さ」
 俺はそういって、わずかに残っているビールを喉に流し込んだ。




59: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:36:23.69 ID:ZABX0Iny.net

 今日は大学の講義がない日だ。大学の講義は基本的に自分の受けたい講義を
受講するという方式で、云わば自分で時間割が決められる。
それはつまり、どの講義も休みである土曜、日曜以外にも休日を作れるという
ことだ。
 そして俺はその休日を平日に一つ設けてある。それが今日というわけだ。

 いつもなら朝早くに起きて大学へ行かなければいけないのだが、今日は
ゆっくりと気の向くまま寝ていることができる。アルバイトも辞めた俺にとっては、
完全に自由な一日。




60: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:36:50.99 ID:ZABX0Iny.net

 微かに雨音が聞こえる。二度寝か三度寝ぐらいしただろうか、
俺はまたまどろみを楽しんでいた。
寝ているときと起きているときの狭間。なんと表現したらいいのだろう。浮遊感、
幻と現実、それがたまらなく心地いい。

 それをたっぷり堪能してから、ベッドの上で体を起こし目を窓の外へと向ける。
どんよりとした灰色の雲が空全体を覆い、そこから水の雫が
しとしとと降り注いでいた。

 二階の部屋から下の道路を眺めると、色とりどりの傘が見えた。それはまるで
白い画用紙に水彩絵の具をいたずらに垂らしたようだった。赤、黄色、青、黒、緑。
それぞれの絵の具が垂らされている。見ようによっては少々幻想的かもしれない。




61: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:37:37.50 ID:ZABX0Iny.net

 外を見てから部屋の隅を見た。少女はいつもの格好、いつもの姿勢で座っていた。
渚は俺の方を一瞥し、

「ずいぶん遅い起床ですね」といってきた。

「今日は休みだからな。今までは大学が休みでもアルバイトがあったりで、丸一日
休みっていう日はあまりなかったんだ」

「じゃあ今日はなにするんです?」

「今後、いったいどうすれば俺に友達ができるか考える」

「なるほど。やっと本格的に考え始めたわけですね」

「そういうことだ。だが、まずは飯を食わないとな。カップ麺でいいか?」

「私は構いませんけど、もっとちゃんと栄養あるもの食べた方がいいと思いますよ?」

「今冷蔵庫の中は空だ。それに起きた直後にこの雨の中買い物にいきたいとは
思えない」

「そうですね。ではカップ麺が遅めの朝食っていうことにしましょうか」

 それから俺は湯を沸かし、カップ麺に注いで三分待ち、部屋の真ん中にある
テーブルに、二人向かい合わせになって食べた。




62: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:38:21.13 ID:ZABX0Iny.net

 空腹を満たしたところで、今後のことについて考えることにした。
かといって俺一人で考えても今までとなにも変わらない。
ここは渚の力を借りるべきだろう。
 俺は「さてと」と切り出し、渚に対して率直にこう訊いた。

「なぜ、俺に友達ができないんだと思う?」

「随分、直球な質問ですね」

「他に訊き方を知らなくてな」

「そうですね……雨宮さん、昨日の大学で他の人と全く関わろうとして
いませんでしたよね?」

「そうだな」と相槌を打つ。

「あなたは別に容姿が悪いわけでも清潔感がないわけでもないんです。
他人に不快感を持たせるようなことは、見た目に限ってはありません。
だから、普通に挨拶して、普通に話しかける。それだけでいいんですよ」




63: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:39:08.40 ID:ZABX0Iny.net

「その普通ってやつが問題なんだ。俺にはその普通な能力が備わってないんだ。
備わってたらあんたを雇って問題を解決しようなんて思わない」

「なるほど、一理ありますね。でも、まず話しかけないことにはなにも始まりません。
まずは挨拶をしましょう。人間の会話というものは、挨拶に始まり、挨拶に終わる
ものなんです。挨拶ぐらいする知り合いぐらいならいるでしょう?」

「たしかにそれぐらいのやつならいる」

「では明日、その人に挨拶をしましょう」

「どう挨拶すればいいんだ?」

 はあ……と渚が嘆息を漏らす。

「挨拶というのは、おはようとか、こんにちはとか、そんなのでいいんです。
あくまで話すことのきっかけなんですから」

「わかった。『あくまで話すことのきっかけ』」俺はその言葉を反芻する。

「そうです。そして挨拶が済んだら、いよいよ会話です。話すんです」

「それはなにを話せばいいんだ?」

「そんなの天気の話でも、勉強の話でも、最近なにがあっただの、そんな程度の
ことでいいんですよ。簡単じゃないですか」

「挨拶をしてから会話だな。そして天気とかの話をする、と」

「はい、その通りです。雨宮さんの場合まずは挨拶の練習からした方がいいかも
しれませんね。今日から毎日私に、『おはよう』と『おやすみ』の挨拶をしてください」

 なんだか照れくさいと思ったが、その提案に承諾した。俺は今日から毎日、
渚に「おはよう」と「おやすみ」をいう。まるで同棲している男女みたいだなと
思った。

 それから俺たちは雨が止んで曇り空だけとなってからスーパーへいき、買い物をした。
その後、本屋に寄り、渚が読みそうな本を適当に数冊買った。
これで少しは暇つぶしになるだろう。いつも部屋の隅で暇そうにしているからな。
帰り道の空気は水分で満たされ、雨上がり独特の匂いがした。




64: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:43:57.17 ID:ZABX0Iny.net

 夕飯を食べ終わりいつものように晩酌をする。渚は相も変わらず部屋の隅に座っていて、
なんだかこの光景が落ち着くようになってきたと思う自分がいた。
そして暇そうにしている渚にこう話しかけた。

「なあ、渚」

「なんでしょう? お酒は飲みませんよ」

「そうじゃない。あんたにプレゼントがあるんだ」
 俺はそういって先ほど本屋で購入した本数冊を渡した。

「なんですかこれは?」

「いつも暇そうにしてるだろ? いい暇つぶしになるんじゃないかと思ってな」

「こんなに貰っていいんですか?」

「構いやしないさ。協力してもらってるお礼だと思ってくれ」

「すでに雨宮さんは魔法協会にお金を払ってるじゃないですか。受け取れませんよ」

「じゃあチップだとでも思ってくれればいい」

 渚は少し悩みつつも本を受け取ってくれた。

「ではいただきます。ありがとうございます」
 そういうと、早速一冊目の本を手に取り、読みだした。
俺はその光景をながら酒を飲んだ。
渚がページをめくる音だけが聞こえる。

 酒を飲み干した後、ベッドに横になる。
そして電気を消そうとしたとき、渚が「挨拶はないんですか?」
といってきた。
俺は少し照れながら「おやすみ」といった。渚は「おやすみなさい」
と答えた。




65: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:44:28.48 ID:ZABX0Iny.net

 布団に入ったものの、なかなか寝付けなかった。明日、大学で知り合いに挨拶
をし、会話をすると考えると緊張したのだ。
こういうときはどうすればいいのか、それは経験的によく分かっていた。
 電気スタンドを点け、棚からCDとウイスキーを取り出す。
眠れない夜にはジャズを聴きながらウイスキーを飲むのが一番だ。
CDをプレイヤーにセットし、ヘッドフォンをつける。
それはジャンゴ・ラインハルトのCDだった。
ウイスキーをグラスに注いでストレートで飲む。
 軽快だけれども、どこか心に染みるピアノとギターの音が眠れない夜には似合いだ。
しばらく酒を飲んでいたら眠気が訪れた。
俺はその眠気に身を預け、そのまま眠りについた。




66: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:46:03.82 ID:ZABX0Iny.net

 窓を叩く雨の音で目が覚めた。窓の外を見るまでもない。今日も雨らしい。
渚は先に起きていたようで、本を読んでいた。

「おはようございます」

「おはよう」

「よく挨拶できました。今日はこの調子でいってくださいね」

 渚のいい方はまるで小学生を相手にしているようないい方だった。
まあ、俺のコミュニケーション能力は小学生レベルなのかもしれない。
いや、小学生程度あればいいが。

 ベッドから起き上がり、洗面所へ向かい顔を洗った。鏡を見ると、いかにも
冴えない男が写っている。試しに挨拶をするときのために、笑顔を作ってみる。
だが顔が引きつり上手くいかない。今まで表情筋をつかってこなかった弊害
だろう。目はぱっちりと開かず、広角もうまく上がらない。
こんなので大丈夫なのか不安になってくる。そこで、俺は渚に訊いてみることにした。




67: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:47:01.67 ID:ZABX0Iny.net

「笑顔ってどうやればできるんだ?」

「はい? 笑顔ですか? 普通に笑えばいいと思いますが」

「ここ最近笑った記憶がないんだ。どうすれば笑顔になるのか教えてくれ」

「それは難しいですね。私もあまり笑う方ではないので。急にどうしたんですか?」

「挨拶をするときに表情も大事だと思ってな」

「いいところに気づきましたね。ですが、すみません。私は力になれそうに
ありません」

「そうか、ならしょうがないな」

「落胆の表情は得意なんですね」
 と渚は皮肉をいってきた。だが、渚のいう通り、落胆の表情、失望の表情、
絶望の表情、悲しみの表情などはよくしている気がする。

 俺は笑顔を作ることを諦め、朝食の準備をした。昨日スーパーで買った
食材を適当に調理した。朝食を終えると俺は大学へいく用意をした。
今日の講義は午後からなので、時間はまだまだあるのだが、昨日渚に本を
買ったとき、俺の読書欲が掻き立てられ、久しぶりに大学の図書館にいこうと
思ったのだ。




68: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:52:05.13 ID:ZABX0Iny.net

 いつもより自分なりにおしゃれだと思う服を選んだ。もしかすると、今日
挨拶をし、会話をし、友人ができるかもしれないのだ。
 渚はそんな俺を見て、

「昨日もいいましたけど、雨宮さんは別に見た目は悪くないので、普通の
格好をしていればいいんですよ?」といってきた。

「そうだとしても最大限の努力はしないとな」


 鞄を持ち、玄関を開けたとき家には傘が一本しかないことに気づいた。

「すまないが、途中のコンビニまで、俺と一緒の傘でいいか?」

「別に構いません」

 家を出て傘を開く。俺は渚と自分の中心に傘がかかるよう、左手で傘を持った。
渚がそこに入ってくる。自然と二人の距離は近くなり、肩と肩が触れ合う。
心臓の鼓動が速くなる。今まで相合傘なんてしたことがないのだ。
しかも、相手は可愛いと思っている渚。どうしても緊張してしまう。
心臓の音が渚に聞こえないか心配だった。




69: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:52:39.09 ID:ZABX0Iny.net

 途中にあるコンビニに差し掛かる。俺はコンビニへ向かい、傘を買おうとしたのだが、

「もったいないから、このままでいいですよ。もちろん雨宮さんが嫌でなければ
ですけど」といわれた。

 正直、このままでいたいと密かに思っていた俺は、結局コンビニには寄らず、大学を
目指した。初めて相合傘の良さを知った。今まで相合傘をしている連中を見て、
なぜ、わざわざお互いが雨に打たれやすいことをするのか理解できなかったが、
今回の件で理解した。
渚と出会ってから、俺が忘れてしまった異性への気持ちというものを思い出しつつ
あるように感じた。




70: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:54:37.16 ID:ZABX0Iny.net

 大学に着き、図書館へ向かう。

「今日は講義を受けるんじゃないんですか?」

「講義は午後からだ。その前に図書館にいって本でも読もうと思ってさ」

「雨宮さん読書するんですね」

「大学に入る前は読書ばかりしていた。入学してからは、アルバイトと講義で
忙しくて読む暇がなかったんだ」

 図書館に入ると、渚は「おお」と感嘆の声を漏らしていた。
うちの大学の図書館は数年前に建て直したばかりで、まだ真新しく、広さもそれなり
だ。
 雨の日の図書館は人はまばらで、ぽつぽつとそこら辺に数名、人がいるだけだった。
俺は適当に図書館を見て周り、色々悩んだ末、ヘルマン・ヘッセの短編集を
選んだ。午後の講義までに読める本がよかったから、短編集は丁度いい。

 渚は俺の隣に座ると、昨日買ってやった本を読み始めた。

「せっかく図書館にきたんだから、他の本を読めばいいのに」
と俺がいうと、

「たしかにそうなんですが、私は雨宮さんが買ってくれた本が読みたいんです。
雨宮さんが買ってくれた大切な本ですから」
 嬉しいことをいってくれる。買ってやった甲斐があるってものだ。

 それから二人で本を読み、お昼になったら学食で昼食を食べた。




71: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:55:07.77 ID:ZABX0Iny.net

 午後になって講義が始まるので教室へ向かう。席へ座って、少しすると、
見知った顔のやつが教室に入ってきた。俺の近くに向かってくる。
これはチャンスだ。ここで挨拶ができればかなりの進展が見込めるかもしれない。
心臓が高鳴る。挨拶をするだけで、人はここまで緊張するものなのだろうか。
唾を飲み込み、声を発声する準備をする。そいつが俺の横を通りかかる。今だ。

「よ、よお」
 震えた情けない声が出た。相手はそれに気づき、こっちを向く。
「よう」
と返された。
 それから俺はどうにか話題を引き出そうと頭をフル回転させる。
しかし、頭の中は真っ白になり、なにをどうやっても話題が出てこない。
そうしているうちに、相手はそのまま行ってしまった。
落胆する俺の隣で溜め息が聞こえた。

 それからまたしばらくして、他の知っているやつが現れた。そいつに視線を向け、
挨拶をするタイミングを見計らう。だが、今度は挨拶の声さえ出てこなかった。
隣でさっきよりも大きな溜め息が聞こえた。

 結局、この日は一人に挨拶をするのが精一杯だった。
我ながら情けない結果に嫌気がさした。




72: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:55:52.73 ID:ZABX0Iny.net

 結局、それ以来俺は碌に挨拶もできなくなっていた。
 そんな俺を見かねて、渚はこういった。

「やはり最初から会話を目指すのは難しかったようですね。
まずは挨拶することだけに集中しましょう。会話は挨拶がちゃんとできる
ようになってからです」




73: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:56:07.21 ID:Wv6k5FtB.net

渚ちゃんかわいい




75: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:57:41.21 ID:ZABX0Iny.net

 それからはとにかく挨拶だけに全集中力を使うことにした。会話を
しようとは考えない。顔見知りを見たら挨拶。これを徹底した。
その結果、一週間後には挨拶ぐらいなら震えずに声を出せるようになっていたし、
あまり緊張せずに声をかけられるようになってきていた。

 もう顔見知りの三人ぐらいならば、顔を合わせたときに挨拶ができる。
それは自信に繋がっていった。まともに挨拶ができる自分。今まで
よりも確実に一歩前進していた。

 そんなある日、俺は大学の構内でいきなり声をかけられた。

「もしかして……雨宮くん?」

 俺はいきなり声をかけられて少し挙動不審になってしまったが、どうにか声の
した方へ目を向ける。するとそこには見知らぬ女の子が立っていた。

 黒くて胸の下まで長さのあるロングヘアーに控えめのメイク、
少し大人びた雰囲気、背は俺より少し低いぐらいで、女の子にしては高い方だと思う。
細身で凛としていて、堂々としている。

 俺にこんな知り合いなどいただろうか。考えようとしたが、俺には女の
知り合いなどいない。考えるまでもなかった。

「やっぱり、雨宮くんでしょ? ほら、覚えてる? 中学のとき同じクラス
だった美鈴だよ」

 記憶の奥底まで潜り、必死に思い出す。そういわれれば、美鈴という名前に
覚えがある。俺の記憶が間違いでなければ、俺が中学のとき、密かに想いを
寄せていた美鈴だ。




76: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:58:20.72 ID:ZABX0Iny.net

 初めて美鈴と出会ったのは俺が中学二年の頃だったと思う。クラス替えで
同じクラスになった。成績は常に学年上位で、運動神経もよく、体育祭
でも大活躍していた。それに性格もみんなから好かれる性格で、その上
容姿もいい。まさに完璧な人間だ。
そんな美鈴はクラスで浮いていた俺にも分け隔てなく接してくれていた。
それは、当人からすれば当たり前のことだったのかもしれないが、俺にとっては
あまりに嬉しいことだった。
 中学のとき、まともに話したことがあるのは美鈴ぐらいだ。そんな美鈴に
俺が惹かれないわけがない。結局、中学卒業のときまでずっと好きだった。
高校が別々だったので、それ以来会ったことはなく、秘めた想いをいうことも
なかった。
俺が初めて人に好意を持った人物だと思う。それぐらい魅力的だった




77: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:58:55.93 ID:ZABX0Iny.net

「もしかして美鈴?」
 俺は本当はすぐに思い出したのだが、それを悟られぬようわざとらしくいった。

「覚えててくれたんだ。嬉しいな。まさか、同じ大学だったなんてね」
 美鈴は本当に嬉しそうにそういった。社交辞令のようには感じなかった。

「俺も嬉しいよ。俺を美鈴が覚えててくれたなんて」
 本心からの言葉だった。

「忘れるわけないじゃない。あ、本当はもっとゆっくり話してたいんだけど、
私次の講義があるの。だから連絡先教えてくれない?」
と俺を急かすようにいった。
俺は慌てて携帯を取り出す。今まで携帯の連絡先に交換なんてほとんどして
こなかった俺がもたついていると、美鈴は「早く早く」といった。
 連絡先の交換が無事終わると、次の講義が始まる教室へと足早に去っていく。

 俺はあまりに突然の出来後に頭が処理落ちしてしまい、しばらくその場を動けなかった。




78: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 20:59:52.99 ID:ZABX0Iny.net

 家に帰ってからもずうっとぼんやりしていた。まさか美鈴と再会し、連絡先まで
交換するなんて。まるで夢を見ている気分だった。

「渚、俺の頬を抓ってくれ」
 渚は思い切り俺の頬を抓りあげた。ちゃんと痛みがある。夢ではない。
これは現実だ。

「雨宮さん、よかったじゃないですか。もしかしたら美鈴さんとこのまま友達に
なれるかもしれませんよ」

「ああ、そうかもしれないな。でも俺はこれからどうすればいいのか全く
分からない。連絡先を交換したってことは、向こうから連絡が来るのか?」

「その可能性は高いでしょうね。美鈴さんから訊いてきたんですから。ちなみに
美鈴さんとはどういうご関係なんですか?」

「中学の同級生だ。あんたに嘘をついてもしょうがないから、正直にいうが、
俺は美鈴のことが好きだった」

「その好きだった人と大学で再会だなんて、すごいですね。
今でも好きなんですか?」

「それは分からない。でも、昔のまま好意を持ってるのは確かだと思う」
 そんな話をしているとき、俺の携帯が鳴った。
携帯が鳴るなんてめったにない。美鈴からの連絡の可能性が高かった。
携帯を開くと、案の定、美鈴からのメールだった。
内容を簡単にいうと、今度食事でもしながら話をしたいというものだった。
俺は喜びの衝撃で呼吸が一瞬止まってしまった。
渚が俺の携帯を覗き込む。




79: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:00:25.19 ID:ZABX0Iny.net

「やったじゃないですか。きっとこれはデートのお誘いですよ。
もしかしたら、友達はできなくても彼女はできちゃうかもしれませんね」
 と渚はいたずらっぽくいった。まるで自分のことのように喜んで
くれているようだった。

 だが、大きな問題が一つあった。それは俺が今まで女の子と二人で遊びに
いったことがないということだ。女の子に限らず、男とも遊んだことなどない。
そんな俺が美鈴と二人で出かけて上手くいくとは到底考えられない。
ついこの前まで挨拶すらできなかったのだ。だから、俺はあるアイディアを
思いついた。




80: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:01:23.16 ID:ZABX0Iny.net

「渚、俺とデートしてくれないか?」

 渚は俺の言葉を聞くと、最初は「なにをいってるんですか?」という
表情だったのだが、要点を察したのかすぐにこういってきた。

「わかりました。つまり、私とデートの練習がしたいってことですね?」

「その通りだ」

「あの、その練習相手に私を選ぶのはあまり得策とは思えません」

「なぜだ?」

「私は今まで男性とお付き合いはおろか、デートすらしたことがないんです。
中学を卒業してからすぐに魔法協会に入ったので、そんな機会はありませんでした。
私と模擬デートをしたってなんの意味もないと思いますよ。普通の女性の気持ちなんて
到底理解できないですし、感覚もずれている可能性が高いです」

「それでもいい。俺だって今までデートなんてしたことがない。だから少しでも
デートっていうものに慣れておきたいんだ。今のままじゃ、美鈴とまともに
会話できるとは思えない。頼む、協力してくれ」
 俺の話を聞くと渚は溜め息混じりに言葉を発した。

「仕方ありませんね。雇用契約に『彼女作り』は含まれていないんですが、
今回は特別です。でも、さっきもいった通り、私のことはあまり期待しないで
くださいね」
「それから」と渚は話を続けた。

「デートの練習の前にそのぼさぼさの髪と、着古したコートをどうにか
した方がいいと思います」




81: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:03:53.95 ID:ZABX0Iny.net

 まずは渚にいわれた通り、髪を切るために美容室を訪れた。髪型は適当に、
「清潔感のあるように切ってください」と美容師に頼んだ。
 髪を切り終えてから、渚と二人で街へ服を買いにいった。
俺は自分にどんな服が似合うのか分からなかったから、コーディネートは
渚に任せた。
 結局、洒落たダッフルコートとチノパンを買うことにした。

「見違えましたよ、雨宮さん。人は髪型と服装でこうも印象が変わるもんなんですね。
どこからどう見ても好青年です。自信を持っていいと思いますよ」

 渚のいう通り、今までの自分とは思えなかった。陰気でぼさぼさだった髪はすっきりし、
服装も清潔感が溢れている。気のせいか、おかげで表情も前より明るくなったように
感じた。




82: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:04:25.60 ID:ZABX0Iny.net

 買い物も終わり、明日への準備が済んだところで、俺は渚を居酒屋に誘った。
デートの前夜祭みたいなものだ。てっきり渚には断られるかと思ったが、
すんなりオーケーしてくれた。
「今日一日、私は雨宮さんの彼女ですからね。いう通りにしますよ」と。

 渚の見た目は完全に未成年なので、大手のチェーン店は避け、俺がいつも
よくいく、個人で経営している店を選んだ。
案の定、店の店員は渚の年齢には触れずに、「可愛い彼女さんですね」
といってくた。

「雨宮さん、私お酒ってほとんど飲んだことなくて、飲んでみたいんですけど、
おすすめとかありますか? できれば甘くて飲みやすいものがいいです」

「そうだな。じゃあテキーラ・サンライズっていうカクテルなんてどうだ? 
オレンジジュースとザクロのシロップが入ってて飲みやすいと思う」

「おいしそうですね。じゃあそれでお願いします」

 俺はビールと唐揚げ、焼き鳥を、渚は先ほどのカクテルと甘いデザート
をそれぞれ注文した。
 料理より、先にビールと渚が注文したカクテルが運ばれてきた。俺たちは
早速乾杯をして酒を飲んだ。

「どうだ? 飲みやすいか?」

「はい、甘くておいしいです。お酒のセンスはあるんですね」

「いつも一人ぼっちで酒を飲んでるからな」

「今日は二人ぼっちですよ」
 渚は普段あまり笑顔を見せないが、このときは少し微笑んで優しそうにいった。




83: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:05:00.98 ID:ZABX0Iny.net

 居酒屋で飲んで二人とも酔っ払った後、俺は渚の手を握りながら歩いた。
寄ってなければこんなこと恥ずかしくてできないが、酒の力は偉大だ。
アルコールは二人の羞恥心を和らげてくれた。渚は手を握られても
上機嫌なままで、「これもデートの練習の一環ですか?」と笑っていた。
それから渚はこういった。

「雨宮さんは変な人です。私をまるで魔法少女としてではなく、
普通の女の子みたいに接してくれます。あなたみたいな人は初めてですよ」

「俺も魔法が使えない魔法少女は初めてだ」と茶化すようにいった。

「前言撤回です。雨宮さんは意地悪な人です」

「冗談だよ。魔法が使えなくても、こうやって俺に協力してくれる。
それだけで十分だ」
 それを聞いた渚は、まったくもうと拗ねたように呟いた。
 そうして俺たちは手を繋いだまま家に帰った。




85: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:07:39.00 ID:ZABX0Iny.net

 美鈴と連絡先を交換してから俺たちは一日に数通、メールのやりとりをしていた。
内容は他愛もない話で、どんな講義をとっているか、テストの勉強はしているか、
単位はちゃんと取得できているかなどだった。
 俺は密かに、美鈴とのメールを毎日の楽しみにしていた。今まで、こんな風に
人とメールなんてしたことがなかったからだ。

 そんな日々が続いた後、ついに美鈴と会う日がやってきた。駅前の時計の前に
十一時に待ち合わせだったのだが、俺は流行る気持ちを抑えきれずに、三十分前には
到着していた。タバコを吸いながら、一分間に五回は時計を見ていたと思う。
これから美鈴に会えると思うと、緊張して吸うタバコの本数が増えていく。
足元には、無数の吸い殻が薬莢のように転がっていた。

 俺と渚が一緒にいるところを美鈴に見られてはまずいと思い、
渚を俺から数メートル離れたところにあるベンチに座らせた。




86: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:08:12.55 ID:ZABX0Iny.net

 目を数十回時計に向けたときだろうか、約束の十一時になった。美鈴はまだ
現れなかった。もしかしたら電車やバスが遅れているのかもしれない。
なに、焦ることはないさ。俺はタバコに火をつけ、心を落ち着かせた。
それからは時計を見る頻度はさらに多くなっていった。気づけばもう
約束の時間から三十分たっている。まさか、と嫌な予感がした矢先、遠くから
走ってくる美鈴の姿が見えた。

「待たせてごめんね。家に忘れ物しちゃって。一応メールしたんだけど」

 俺は焦る気持ちでいっぱいで携帯にメールが届いていることに気がつかなかった。

「三十分ぐらいどうってことないさ。早速飯食いにいこう」

「うん、お店は近場のファミリーレストランでいいかな?」

「俺はどこでも大丈夫だよ」




87: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:08:47.41 ID:ZABX0Iny.net

 美鈴に連れられ、駅前にあるレストランに入った。席は駅が見渡せる窓際の席だった。
渚は俺たちから距離をとりながら同じレストランに入り、俺と美鈴の近くの席に一人で座り、ココアを注文していた。

「とりあえず、なにか食べよっか。私お腹ぺこぺこで」

「そうだな。俺はグラタンにするよ」

「決めるの早いね。もう少し迷わせてね」
 美鈴はメニューを隅から隅までじっくり見て、どれを注文するか迷っていた。
あまり早くにメニューを決めるのはよくなかったかもしれない。
こういうときは女の子に合わせるべきだっただろう。

 美鈴もようやく決めたらしく、「私も決まったから店員さん呼ぼう」と
いってきた。
店員に声をかけ、美鈴はパスタとコーヒーを、俺はグラタンとアイスコーヒー
を頼んだ。




88: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:10:28.71 ID:ZABX0Iny.net

「雨宮くんは中学を卒業してからどうしてたの?」

「普通に地元の公立校に入学したよ」

「高校生活はどうだった?」

「美鈴は俺がどんな性格なのか知ってるだろ? 中学のときと変わらずクラスで
浮いてたよ。友達も相変わらずできなかった」

「そっか……ごめんね。嫌なこと訊いちゃったかな?」

「別に事実だから嫌でもなんでもないさ」

「美鈴は高校生活どうだったんだ?」

「私は生徒会に入って生徒会長やってたかな」

「美鈴らしいよ。中学の時から面倒見はよかったし、リーダーシップもあったもんな」

「そんなことないよ。私なんて普通だよ」

「そうか」
 そんな話をしていると料理と飲み物が運ばれてきた。
料理を食べているとき、話はあまり弾まなかった。
もし、俺が真っ当な人間で、友達がいて、健全な高校生活や大学生活を
謳歌していたなら、話は盛り上がったのかもしれない。
料理を食べ終わった後も、お互い口数は少なかった。
時折、美鈴は窓の外を眺め、つまらなそうにしていた。
なんとか挽回しようとしたが、デートの経験がない俺には無理ってもんだ。
段々と沈黙の時間が増えていき、

「そろそろ帰ろっか」と美鈴が口を開いた。
 俺は、ああと返事をして店を出た。




90: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:11:03.37 ID:ZABX0Iny.net

 美鈴と別れる際、「今日は楽しかったよ。またご飯たべようね」と社交辞令を
いわれた。もう次はないと表情を見ればすぐに分かった。

「それじゃあさようなら」

「ああ、さようなら」

今日の一部始終を見ていた渚が近づいてきた。

「私たちも帰りましょう」
 家までの道のり、俺は始終無言だった。今日のデートは失敗であることは
火を見るより明らかだ。




91: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:12:23.26 ID:ZABX0Iny.net

 あのデートの日から美鈴はあまりメールを返してくれなくなり、自然と
美鈴とのメールは終わった。
 俺の心は後悔でいっぱいだった。こんなはずじゃなかった。
どうしてこうなってしまったのだろう。
デートに向けてやれるべきことは全てやった。
それなのにこの結果だ。俺は自分という人間が心底嫌になった。

 十分嘆いたところで、俺はある日、寝る前に酒を飲んだ。
今までにないくらい体に染みた。酒でしか自分を慰める方法を知らなかった。
渚はそんな俺を見つめながら、

「泣いてるんですか?」と訊いてきた。
どうやら俺は泣いているらしかった。自分の頬に手を当てると
涙が指先を濡らした。
俺は渚に涙を見られないように顔を逸らした。

「泣き虫さんですね」そういって渚は微笑んでから、

「雨宮さんの涙、半分私がもらってあげますよ」といった。

 そして渚はまるで自分のことのように一緒に泣いてくれた。


 渚は俺のために泣いてくれた。それが堪らなく嬉しかった。




92: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:18:14.94 ID:ZABX0Iny.net

 美鈴の一件があってから、俺は家に引きこもりがちになっていた。
友達を作ることの難しさを痛感したからだ。
最初は上手くやっていても、少しのことで関係は簡単に崩れてしまう。
初めに期待がある分だけ、壊れてしまったときが恐ろしかった。

 家に引きこもり色々なことを考えた。もう友達作りは諦めて、渚の雇用期間
が終わるまで渚に擬似的な友達をやってもらおうかとも考えた。
そうすれば刹那的には幸せを感じることができるかもしれない。
それも悪くはない選択の一つだと思った。
 やはり俺みたいな人間に友達を作ることなんて不可能なのだ。

 渚を雇ってから約一ヶ月、俺が変わったことといえば、数人の顔見知りに
ちょっとした挨拶ができるようになっただけだ。会話まで繋げることができない。
俺には人と関わる能力が致命的に欠けている。そう改めて実感した。
俺がこうして家に引きこもっている間にも、他の人間は友達や恋人たちと
上手に関わり合っている。それを考えるだけで虚しくなった。




93: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:19:06.61 ID:ZABX0Iny.net

 そんなある日の朝、俺は渚に叩き起こされた。

「雨宮さん雨宮さん、聞いてください」
 渚は興奮しきった様子で俺に話しかけていた。

「私、ついに……ついに……やったんです」

「どうしたんだ? そんなに興奮して」

「私、ついに魔法が使えるようになったんです」
 渚は今まで見てきた中で一番の、いや、今思えば二番目の笑顔でそういった。

「魔法? 魔法ってそんないきなり使えるようになるものなのか?」

「なんでそんなに冷静なんですか? 魔法が使えるようになったんですよ? 
これで私は正真正銘の魔法少女になったわけです。もっと喜んでくださいよ」

「渚が嬉しがってる気持ちはよく伝わってくるよ。それでさっきも訊いたが、
魔法ってそんないきなり使えるようになるのか?」

「うーん、なんて説明すればいいんでしょう。なにかが体の中に芽生える感じ
なんです。感覚的なものなので、いくらいっても理解してもらえないと思いますけど」

「さっぱり分からないな」

「とにかく、魔法が使えるようになったんですから、これで雨宮さんにも友達を
作ってあげることができますよ」
 渚は心底嬉しそうな表情だった。いつもの冷めた無表情はどこかに消え、満面の
笑みでにこにこしている。




94: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:20:04.81 ID:ZABX0Iny.net

「では、早速魔法をかけてあげます。いいですか? 目を閉じて手を私の方に
伸ばしてください」
 俺はいう通りにした。目を瞑り、右手を渚がいる方へ向ける。
渚は俺の手を握り、なにかを念じているようだった。すると、手からなにかが
俺の体に流れてくるような感触を覚えた。

「はい、もう目を開けていいですよ」

「なにがどうなったんだ? 今のが魔法なのか?」

「そうです。今、雨宮さんには人が慕ってくる魔法をかけました。これで、
相手から挨拶をしてきてくれたり、話しかけてきてくれたり、遊びの誘い
をしてきてくれたりすると思います。ただ、この魔法はあくまで人が慕って
くれるだけであって、実際に友達を作ったり、関係を維持することは
雨宮さんの努力次第です」

「そんなまどろっこしい魔法じゃなくて、俺のことを友達だと思ってくれる魔法
はないのか?」

「あるにはあるんですが、人の心を操る魔法は魔法協会が禁止しているんです。
ですからこれが精一杯ですね」

「魔法協会ってのは禁止が多いな」

「人智を超えた力ですからね。管理も厳しくする必要があるんですよ」

「たしかに使いようによっては危険なものかもしれないな。
それにしてもよかったな。これで堂々と魔法少女と名乗れるわけだ」

「はい、私の長年の夢が叶いました。ずっとずっと魔法が使えないことが
コンプレックスでしたから。憧れであり、夢だったんです」
 渚は感動で今にも泣き出しそうな顔をしていた。




95: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:21:01.07 ID:ZABX0Iny.net

「じゃあ魔法協会を抜けないように気をつけないとな」

「魔法が使えるようになったんですよ? 抜けるわけないじゃないですか。
私はこれからずっと魔法少女として生きていきます」

「それもそうだな。抜けるわけなんてないか。俺が渚の立場だったら
絶対に抜けようなんて考えもしないだろう」
 魔法少女なのに魔法が使えない。それは俺が想像するより遥かに苦痛なものだっただろう。
サッカー選手なのにボールが蹴れない、あるいは水泳選手なのに泳げない、そんな
感じなのかもしれない。

「そんなことより、今日の大学楽しみにしていてくださいね。きっと
友達ができますよ。私の魔法を信じてください」

「楽しみにしてるよ。ついに俺にも友達ができるのか。感慨深いな」
 今までの二十年間の夢がついに叶う日がきたのだ。俺も渚と同じくらい
嬉しかった。

「あと、今日から外ではは私は雨宮さんから少し離れて行動します。
雨宮さんに色々な人が寄ってくるでしょうから、
私が魔法少女だとバレる確率が高くなると思いますので。お互いのためです」

「そうなのか? じゃあ一緒に学食で食べることもできなくなるな」

「もしかして寂しいんですか?」

「俺には友達ができるんだ。そいつらと食べるさ。寂しくなんてないよ」

「そうですか」
 渚は少し口を尖らせていった。




96: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:23:51.11 ID:ZABX0Iny.net

 大学までの道のりでも渚は俺から数メートル後ろを歩いていた。今まで俺の左にいた
渚がいないことに少し寂しさを覚えた。
 大学の構内に入ると、いきなり声をかけられた。

「久しぶりだな。ここ最近大学きてなかっただろ? なにかあったのか?」
 俺に声をかけてきたのは同じ講義を受けている男だった。たしか名前は川谷。
早速魔法の力を垣間見た俺は驚きを隠せなかった。ここまで人の反応が変わるもの
なのか。大学に入学して以来、挨拶をされるのは初めてのことだった。

「ちょっと最近忙しくて、これなかったんだ」
 美鈴にフラれたショックで休んでいたなんていえない。

「そうか。じゃあ今日来たってことはもう落ち着いたのか?」

「ああ、まあな」

「よしよし、今日講義が終わった後、如月と片瀬と三人で遊ぶことになってるんだけど、
よかったら雨宮も来ないか?」
 如月と片瀬というのは同じ講義を受けている女の子だったはずだ。

「もちろんいくよ」

「よかった。前から雨宮と遊んでみたいと思ってたんだ。とりあえず、一緒に講義
いこうぜ」
 ちらっと木陰に隠れている渚を見ると嬉しそうに、でもどこか物憂げに微笑んでいた。




97: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:24:20.29 ID:ZABX0Iny.net

 友達と一緒に受ける講義は楽しかった。教授が話しているときもお構いなしに、
くだらないことを話し、笑い合った。これが友達と受ける講義なのか。
なんて楽しいのだろう。俺の夢の一つが叶った。

 講義が終わり、俺と川谷は如月と片瀬と合流した。それから駅前の
ファミリーレストランで色々な話をした。内容は主に俺に対する質問が
多かった。好きな音楽はなにか、好物の料理はなにか、好きな女の子のタイプ
はどんな人なのか。そんなことをたくさん話した。
 俺は最初はこの状況に戸惑ったが、すぐに慣れることができ、夢中で
喋った。人との会話がこんなに楽しいものだとは知らなかった。
川谷だけでなく、如月も片瀬も好意的でどんどん話が弾んだ。
楽しい時間はあっという間だ、気がつけばもう夜遅い時間になっていた。
今日はもうこれで解散し、今度の休みに買い物に行こうという約束をした。
それから最後にみんなと連絡先を交換してから別れた。
俺にもついに友達と呼べる存在ができたのだ。これ以上嬉しいことはない。
 俺が感慨に浸っていると、渚がやってきた。




98: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:24:50.41 ID:ZABX0Iny.net

「よかったですね。これで雨宮さんはもう一人じゃありませんね」

「全部渚のおかげだ。本当にありがとう」

「自分の仕事をしたまでです。さあ、帰りましょう」
 家までの帰り道でも渚は俺から離れて歩いた。


 家についてから渚はいつもの部屋の隅に座り、無言で本を読み始めた。
もう俺が買ってやった本は全部読み終えたようで、同じ本を何度を
読み返しているようだった。

「なあ、魔法のお礼にまた本を買ってやるよ。今度本屋に行こう」

「ありがとうございます」
渚はこちらには一瞥もせず、そういいながら本を読んでいた。


 今思えば、俺はこのとき、渚との時間をもっと大切にするべきだった。
渚には雇用期限がある。別れのときは着実に迫っていたのだから。




99: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:25:37.70 ID:ZABX0Iny.net

 次の休日になり、俺は川谷たちと約束していた買い物のため駅へと向かっていた。
駅に集合し、そこから電車で二十分ほどの場所にあるショピングモールが目的地だった。
駅に着くと、すでに三人は先に到着していた。

「待ったか? 悪いな」

「お、やっときたな」

「私たちも今きたところだよ。じゃあ出発しよっか」


 買い物の目的は如月と片瀬の洋服だった。新しいコートが欲しいのだという。
ショピングモールの様々な店を見て回った。俺は女もののコートを見て、
渚に似合うかもしれない、なんて考えていた。
 女の子の買い物の付き添いはつまらないと聞いたことがあったが、
そんなことはなかった。俺にはとても新鮮な体験で楽しめた。

 渚は他の買い物客に紛れて、俺達の後をついてきていた。
なんだかここ最近渚とはほとんど話していないような気がする。
家で話しかけても、「そういう話は友達としたらどうですか?」といわれてしまう。
渚のことは気になったが、俺は友達のいる楽しい毎日を謳歌していた。




100: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:26:01.38 ID:ZABX0Iny.net

 買い物を終えて駅に着いたとき、この後居酒屋にいこうという話になった。
俺は渚以外と飲んだことがなかったから、友達と飲む酒はどんなにうまい
ものなのだろうかとわくわくした気分で店へと向かった。

 四人で飲む酒はこれまで飲んできたどの酒よりもうまかった。
ここでもファミリーレストランと同じように色々な話になった。

「雨宮くんは彼女とかいないの?」そう訊いてきたのは片瀬だった。
一瞬、美鈴の件が頭をよぎる。

「実はこの前失恋したんだ」
 俺がそう話すと三人は俺のことを慰めてくれた。これが友達の優しさなのか。
俺は美鈴のことを詳しく話した。中学のときに知り合ったこと、大学で再会して
デートしたこと、そしてそのデートで失敗したこと。
 友人たちは親身になって俺の話を聞いてくれた。
心が晴れ渡っていくようだった。友達の大切さを実感させてくれた。

 ここでふと、渚のことが気になって周りを見渡してみた。ここから少し離れた席に
渚は一人で座っていた。飲んでいたものはテキーラ・サンライズだった。



 居酒屋での飲み会も終わり、みんなと別れた。また渚が近寄ってきてなにかいうのかと
思ったが、近づいてくることはなかった。
俺から渚の方へ近づいていき、こう訊いた。

「テキーラ・サンライズはうまかったか?」

「はい、おいしかったです」
 渚はそれだけいい、また俺から離れていった。


 なぜだか、胸が苦しかった。




101: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:28:13.64 ID:ZABX0Iny.net

 友人たちと過ごす楽しい日々が続いた。俺たち四人はほとんど毎日といっていいぐらい
一緒に遊んだ。
 この毎日は俺にとって夢そのものだった。一緒に講義を受け、学食で昼食を食べ、講義が
終われば、集まってファミリーレストランで駄弁ったり、買い物にいったり、
ゲームセンターにいったり、カラオケにいったり、酒を飲んだり。
おかげで俺は以前と比べて人と話すことが自然にできるようになっていた。
人生で至上の日々。なんの不満もない毎日。これは俺が願った夢の世界そのものだった。

 しかし、心のどこかに虚無感を感じていた。それがなんなのかは深く考えずともすぐに
理解することができた。




102: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:29:10.21 ID:ZABX0Iny.net

 いつものように四人で遊び家に帰ってきてから、俺は渚と話そうと考えていた。
渚は家に帰ってくるとまた部屋の隅に座り、無言で本を読み始めた。
最近はこのままお互い無言のまま過ごし眠るのだが、俺は渚に訊きたいことがあった。

「なあ、渚」

「なんでしょう?」

「なんで最近、俺と話してくれないんだ?」

「話す必要がないからです。あなたにはもう友達ができました。私の役目も終わりです。
なにか話したいことがあるなら、もう少しでいなくなってしまう私より、友達と話した
方が建設的だと思います」

「そんな悲しいこというなよ。今度二人でどこか遊びにでもいこう」

「結構です」

「なんでだよ?」

「私に構わないでくださいよ」

「だからどうして?」
俺は少し語気を強めていった。
すると渚は膝を立て、その間に顔を埋めながらこういい出した。




103: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:29:52.28 ID:ZABX0Iny.net

「私、雨宮さんのこと好きになっちゃったみたいなんです」
 俺はその言葉を聞き、頭の中がフリーズした。
 渚は顔を俯かせながらこう続けた。

「今までの雇い主の方々は私のことを道具のように扱ってきました。ただ黙って
指示に従っていればいいと。お前は雇った道具なのだから人間ではないって。
だから色んなひどい扱いを受けてきました。食事は残飯だったり、寝るときは外だったり、
仕事以外の話もしたことなんてありませんでした。でも、雨宮さんは変な人で、
私を魔法少女や道具としてではなく、普通の一人の女の子として接してくれましたよね。
一緒に色々なことを話したり、私のためにご飯を作ってくれたり、暇だろうからって
本を買ってくれたり、一緒に学食でご飯を食べてくれたり、デートで居酒屋にも連れて
いってくれました。こんな風に扱われるのは初めてだったんです。優しい雨宮さん。
雨宮さんと過ごす毎日が私にとってはすっごく幸せでした。でも、もう少しで雇用期限
が切れ、お別れです。だから、これ以上雨宮さんを好きになりたくないんです。
お別れの時が辛すぎるから。そんな思いはしたくないです」

 気づけば俺は渚を抱きしめていた。感じていた虚無感の正体、それは渚のことだ。
俺は友達と遊ぶことばかりに夢中になって、渚との大切な時間をないがしろに
してしまっていた。俺のために協力してくれた優しい女の子。
俺は自分の想いを、俯いて涙声になっている渚に伝えようと思った。

「俺は渚が好きだよ。友達よりも大切だ。渚、これからはずっと一緒にいよう。
友達と遊ぶときも一緒だ。俺は少しでも渚といたい」

 すると渚は俺の背中に腕を回してきて強く抱きしめてきた。
俺も渚を抱きしめる腕に力を入れ、強く抱きしめ返した。




104: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:30:21.38 ID:ZABX0Iny.net

 ――魔法少女を雇えるのは人生で一度きり、そして雇用期間は三か月。それが過ぎれば
もう永遠に会うことはできない。
 俺は残りの三週間を出来るだけ渚と共に過ごそうと誓った。

 その晩から渚とは一緒にベッドで眠ることにした。俺が一緒に寝ようというと、
「最近寒いですからね。夏用のタオルケットじゃ凍えちゃいます」と
照れながらいって、ベッドに潜り込んできた。向き合ってお互いの顔を見ながら、
おやすみをいって眠った。




105: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:31:08.75 ID:ZABX0Iny.net

 次の日から渚は以前みたいに俺の隣を歩くようになった。もちろん手を繋ぎながら。
 大学に行くと、川谷たちいつもの面子に声をかけられた。

「雨宮、その隣にいる子はだれなんだ?」

 俺は堂々とこう答えた。
「俺の彼女だよ」

 隣では渚が照れくさそうに頬を赤く染めていた。

「雨宮さんとお付き合いしている渚です」
 恥ずかしそうに自己紹介をする。

「ずいぶん可愛い彼女だなあ。おい、どこで捕まえたんだよ?」

「捕まえたんじゃない。魔法で出会ったのさ」

「はあ? 魔法? なんだそりゃ」

「あのさ、今日から遊ぶとき、渚も一緒に連れていってもいいか?」

「俺は構わないぞ。むしろ大歓迎だ」
 如月も片瀬も笑顔で頷いてくれた。




106: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:31:45.58 ID:ZABX0Iny.net

 それからの毎日はこれまで以上に楽しかった。川谷がいて、如月がいて、片瀬がいて、
そして渚が一緒にいて。

 それからしばらくの間、俺たちは五人で遊んだ。五人で講義を受け、講義が終わったら
帰りにファミリーレストランに寄りたくさん話をした。渚は大勢で遊んだことがないから
とても楽しそうでいつも笑顔だった。
服を買いにいったときは、渚に似合いそうな真っ白のコートを買ってやった。
渚はすごく気に入ってくれて、それから毎日そのコートを着ていた。
居酒屋にいったときは、毎回テキーラサンライズを飲んでいた。

 気づけば季節はもう十二月になっていて、渚と一緒にいられる期間はもう残すところ
一週間になっていた。俺はその最後の一週間は渚と二人だけで過ごしたかったから、
川谷たちからの誘いは適当な理由をつけて断ることにした。


 ――渚と一緒にいられるのは残り一週間。俺はこの一週間を永遠に忘れないだろう。




107: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:41:23.57 ID:ZABX0Iny.net

 最後の一週間は渚がいきたいところにいき、やりたいことをやろうと決めた。

 渚にどこかいきたいところはないかと訊ねると、
「私、遊園地にいってみたいです」とのことだった。


 今の季節は冷えるから、しっかり厚着をして遊園地に向かった。
休日の遊園地は家族連れやカップルで溢れていて、俺たちもその中の一組なんだなと
思うと、幸せだった。
 渚は遊園地に来るのは初めてだったようで、様々なアトラクションを見て目を輝かせて
いた。
 渚の目にまず留まったのは、ローラーコースターだった。
ローラーコースターを見るなり、あれに乗りたいといい出し、
俺たちは乗り場の列に並んだ。寒くて手がかじかんだから、手を繋いで俺の
コートのポケットに渚の手を入れて温め合った。
 三十分ほど待って俺たちが乗る番になった。渚は少し不安そうな顔をしながらも
楽しそうだった。ローラーコースターが一番高いところまでゆっくり上がっていき、
一気に加速する。隣から歓喜の悲鳴が聞こえてくる。

 乗り物を降りると、渚の足は少し震えていた。

 大丈夫かと訊くと、

「平気です。ちょっと怖かったけど、楽しかったです」




108: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:41:50.88 ID:ZABX0Iny.net

 次は少し大人し目の乗り物に乗ろうということになり、メリーゴーランド
に乗ることになった。これならば足が震えることはないだろう。
隣同士の馬に乗り、愉快な音楽が流れ始め、回転し始める。
ここでは悲鳴の代わりに楽しそうな歓声が聞こえてきた。
俺たちが乗る馬は上下に動き、周りの景色がどんどん変わっていく。

「私、小さい時からメリーゴーランド乗ってみたかったんです。でも、今まで
遊園地にいく機会がなくて。小さな夢が叶いました」




109: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:42:27.31 ID:ZABX0Iny.net

 それからいくつかのアトラクションを堪能した後、最後に観覧車に乗ることにした。
観覧車のゴンドラがやってきて、乗り込む。扉が閉められ、俺たちはゴンドラに
揺られ始めた。
 ゴンドラから見える景色は徐々に小さくなっていった。

「雨宮さん見てください。私たちの街があんなに小さく見えますよ。こうやって
高いところから見ると本当に小さいですね。ちっぽけな街ですが、私が雨宮さんと
出会えた大切な街です。この三か月色んなことがありましたね。雨宮さんと出会って、
友達作りを手伝って、デートの練習もしましたね。それから私が魔法が使えるように
なって雨宮さんに友達ができて、今では私も川谷さんたちと友達になれましたけどね。
そして雨宮さんと付き合って……まるで夢のようです。私はこの三か月で一生分の
幸せを手にすることができました。全部雨宮さんのおかげです。
どんなに感謝しても感謝しきれません」

 それは俺も同じ気持ちだった。俺もこの三か月で一生分の幸せを得ることができた。
友達、それになによりも大切な人と出会えた。


 ゴンドラは頂上に達し、ゆっくりと下りていく。さっきまで小さくなっていた
景色が徐々に大きくなっていく。
ゴンドラを降り、観覧車を後にして家に帰ろうとしたとき、渚はこういった。

「今日は本当にいい思い出ができました。ありがとうございます。
きっと私にとってはこれが最初で最後の遊園地です。
一緒に来れた相手が雨宮さんでよかったです。これから先、
遊園地っていう言葉を耳にする度に今日の事を思い出して泣いたり
笑ったりするんだと思います。ずっと絶対に忘れません」




110: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:42:52.06 ID:ZABX0Iny.net

 それからは二人で映画館にいったり、水族館にいったり、たくさん出かけた。
家ではずっと寄り添い合っていた。きっとこれを幸せというんだろう。
大切な人と過ごす時間、それを上回る幸せなど存在するのだろうか。




111: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:43:43.91 ID:ZABX0Iny.net

 そしてついに最期の日、十二月二十四日がやってきた。俺たちは駅前にある商店街
でケーキとチキン、それにシャンパンと、渚が飲めるように甘いノンアルコール
のシャンメリーを買った。
この日は二人のお別れパーティーをしようという話になったのだ。
ケーキに蝋燭を立て、火をつける。それから部屋の電気を消して、明りは
ケーキの蝋燭だけになっていた。とても幻想的で、まるで夢の世界のようだった。
渚が勢いよく火を吹き消す。

「火を消すの一度やってみたかったんです。やったことなくて。なんだか
悲しいような楽しいような不思議な気持ちになりますね」

 部屋の電気をつけ、俺はシャンパンとシャンメリーの栓を抜き、それぞれのグラスに
注ぎ乾杯をした。二つのグラスが鳴る。

「初めて飲みましたけど、これすごくおいしいです。アルコールが入ってないのは
知ってますけど、本物のシャンパンを飲んだような気分になりますね」

 シャンパンを何杯か飲んでいると、涙が頬を伝ってきた。こんなに幸せなはずなのに。

「なんで泣いてるんですか? パーティーの最中ですよ」
 渚は口ではそういいながら、自分も目から光る雫を流していた。

「雨宮さんは本当に泣き虫さんですね」

 俺は黙って渚を抱きしめた。渚のこの感触を未来永劫忘れないように、何年たっても
思い出せるように、心に深く深く刻みつけた。


 買ってきたものを全て片付け、部屋の電気を消し、二人でベッドに入った。
手を繋ぎながら、その手が離れないよう強く握って目を閉じた。




112: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:44:42.43 ID:ZABX0Iny.net

 眩しい陽の光で目が覚めた。時計を観ると朝の十時頃だった。
まだ頭がぼんやりしている。体を伸ばし、目を開ける。
ベッドの隣にはだれもいなかった。部屋の隅にもだれもいなかった。
もう「おはよう」をいう相手もいってくれる相手もいない。

 俺は顔を洗い、歯を磨くと外に出る準備をした。この部屋には思い出が
残り過ぎている。とても一人で部屋にいられる気分ではなかった。

 コートを着て、駅の方へ向かった。別に目的地があるわけではない。
ただ部屋にいたくなかっただけだ。
 駅の近くにある商店街ではクリスマスソングが流れていた。すれ違う人たちは
俺と対照的にみんな幸せそうな顔をしていた。
ここに来たことを失敗したと思った。今日がクリスマスだということを忘れていた。

 街のクリスマスムードから少しでも離れようと、人や店が少なそうな場所を
探した。するとちょうどいいところに小さな公園を見つけた。駅からそんなに
遠くない割に、静かだった。
 公園の端に設置されていたベンチに座り、タバコに火をつけた。
それからどれぐらいの間こうしていただろう。
俯きながらタバコを吸っていると、人影が視界に入った。




113: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:45:15.86 ID:ZABX0Iny.net

「雨宮じゃないか。なにしてるんだこんなところで。それに渚ちゃんは
どうした?」

 姿を現したのは川谷だった。

「渚とは別れたんだ」

「あんなに仲よかったのに、喧嘩でもしたのか?」

「初めから別れる運命だったんだ」

「理由はよく分からないけど、元気出せよ。そうだ、
今から如月と片瀬と飲みにいくんだけど、お前も来ないか?」

「悪い。今はそういう気分じゃないんだ。また今度誘ってくれ」

 川谷は心配そうな顔をしながら、そうかといって去っていった。

 俺はまた俯きながらタバコに火をつけた。少し風が出てきて、体が冷えた。
それでもずっとこの場から離れなかった。
 気がつくと、目から涙が零れていた。クリスマスに一人、公園で泣くなんて
どれだけ惨めなことだろう。
 涙はなかなか止まらなかった。むしろ余計に多く溢れてきた。




114: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:46:17.73 ID:ZABX0Iny.net

 涙でぼやけた視界にまた人影が入ってきた。
もしかしたら俺を心配した川谷が如月と片瀬を連れて
戻ってきたのかもしれないと思った。
しかし、



「どうしたんですか、泣き虫さんの雨宮さん」



 聞き慣れた声が聞こえてきた。
 忘れられるわけがない声。
 だが信じられない。まさかそんなはずはない。
 俺は顔を上げ、声がした方向を向いた
 そこには少女が立っていた。


「どうしてここに……?」
 俺は状況が飲み込めなかった。
 幻なのではないか、そんな思いがした。


「魔法協会抜けてきちゃいました。これで私は魔法少女じゃない普通の
女の子です」

「でもそれじゃ、せっかく魔法が使えるようになったのに……」
 俺がそういうと、その少女は笑っていた。

「いいんです。私には魔法よりも大切なものがありますから」



 そして少女は今までで一番の笑顔でこういった。



「魔法使えないけどいいですか?」




115: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:48:18.60 ID:ZABX0Iny.net

これでおしまいです
ちなみにこの小説、某大手小説投稿サイトに投稿しているのですが、
周りが異世界ものばかりの中、頑張ってランキングに入る事ができました。
孤軍奮闘中です

意見や感想等もらえると嬉しいです




116: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:51:49.42 ID:+LlGi3VW.net

胸キュンしたよ
良かったぜ




119: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 21:54:52.51 ID:pxW1/Rw2.net

つい夢中になって読んでしまった
めっちゃよかったよ




121: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/12(火) 22:02:29.82 ID:Wv6k5FtB.net

よかったわ〜ほっこりしました




130: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/13(水) 00:41:57.35 ID:j6bdARJN.net

最後がセリフで終わる話大好物

やられたーと思いつつなんか満足感ある




131: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/04/13(水) 01:09:07.12 ID:RC/Fic95.net

ついつい読み進めちゃった
面白かったよ!渚ちゃんも主人公くんもかわいい




・ニュース速報VIP+@2ch新機能実験場に投稿されたスレッドの紹介でした
 魔法少女をレンタルしたんだが、魔法が使えない子だった…
管理人 のオススメSS(2015/07/04追加)
【流出画像】奥菜恵(34)フルヌード&フ●ラ画像の高画質で公開!⇒これが押尾学のリベンジポルノ…
【gif】突然スカートめくりされたJCの反応wwwwwwwww(※画像あり)
【※GIFあり※】 地上波でJKが生ケツを披露してしまうという放送事故wwwwwwwwwwww...
【エ□GIF】騎乗位を連想させる、もの凄い腰振りダンスの動くエ□画像
【エ□GIF】挿入部分がよく見える騎乗位GIFがエ□抜ける15枚
【GIF画像】身内のセッ●スに感化されてオナ●ーしちゃう女たちwwwwwwwwww(19枚)
マ●コもア●ルも同時責め!?GIF画像にしたら想像以上のエ□さだったwww
男が悶絶するほどの腰使いでいかせてくる騎乗位GIF
ドジな女の子たちの「痛い」GIFが笑える(25枚)
彼女にいろんな場所でフ●ラさせた時の話
【画像あり】加護亜依(28)「こんなオバサンでいいの…?」
確信犯!?桐谷美玲のポロリ癖に撮影現場の男性スタッフはキツリツもの!?
【悲報】なーにゃ 逆ライザップ 披露・・・・・・・・・・
女性器見えそう…。ビーチに「とんでもない水着」を着てる女性がいると話題に
【画像】 マ ジ か よ ……っ て な る 画 像 gif く だ さ い【65枚】他
【激写】 性器が丸見えの女子体操選手(21)にクレーム殺到wwww (画像あり)
広瀬すず(17)、過激ビキニ姿がドスケベ過ぎるwwwwこんなエロい体だったのかwwwww
【マジキチ注意】僕「人間洗濯機でーす!」チノちゃん「この下着をお願いします」
「おま○こバリケードは張り終えたか!?」「はいッ」「しかし、チ○ポチ○ポーは我々の予測よりはるかに上の速度で移動しています!」
俺「…(体育座り)」 女子達「俺君がプール見学してるwww男の子の日なんだwww」
ダークエルフ「男の尻尾をモフモフしたい」
【画像】ヌーディストビーチにこんな可愛い子来たらダメだろ・・・
【速報】 任天堂NX、本体の画像がリークされる
このGIF画像で笑わない奴wwwwwwww



 

最新記事50件