転載元:【Elona】勇者「ノースティリス?」【魔王勇者】


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246: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/16(木) 22:53:19.90 ID:auY+eYoYo



勇者「何の話してたんだ?」

少女「二番目の引き出しは呪われているので触らないでくださいとのことです」

勇者「なんじゃそりゃ……で」


少女「あ、続きですね」


少女は荷物を置いて続きを話し始めた。



〜〜〜〜〜〜〜〜


少女父『それじゃ、行ってくる』

幼少女『お父さん次はいつ帰ってくるの?』

少女父『そうだなぁ……』


王都パルミアの隅にある小さな安い借家に住まう事にして5年が過ぎた頃。
いつものように少女の父は依頼を受けにでかけるのであった。




248: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/16(木) 22:58:59.66 ID:auY+eYoYo


少女父『ノイエルへの届け物だから、次に帰ってくるのは2週間後くらいかな』

幼少女『ノイエル!?』

少女母『あら』


ノイエルと聞いて少女は歓喜した。最後に故郷に帰ったのは2年前であるからだ。


幼少女『行く行く!!』

少女父『だめだ』

幼少女『なんでー!?』

少女父『……1週間後はエーテルの風が吹く』

幼少女『…………ならお父さんも危ないじゃん……』

少女父『今月の税金がまだ未納なんだ。働かないわけにはいかない……俺なら大丈夫だ。ヴィンデールクロークがあるから』


ヴィンデールクローク。エーテルの風を防ぐ特殊なマントである。

少女の祖父の遺品であった。




249: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/16(木) 23:00:04.39 ID:auY+eYoYo



少女母『クレア、今日と明日は栽培の勉強よ』

幼少女『うぇぇ……』


またかと言わんばかりに苦い顔をした。


少女父『はは、お母さんの言うことちゃんと聞くんだぞ』

幼少女『むー、パエルちゃんに会いたかったなー』

少女父『クレア、そろそろ12歳の誕生日だろう?帰ってきたらお祝いをしよう』ニコ

幼少女『あっそっか!じゃあ早く帰ってきてね!!』

少女父『ああ。またな。』

少女母『行ってらっしゃい。無理せずシェルターに入ってもいいんですからね』

少女父『うん、なるべくそうするよ。そっちも、風が吹く前にシェルターに入っておけよ』

少女母『ええ』


都市ではエーテルの風が吹く頃にシェルターが開放される。
この間の食糧は税金により賄われるので、市民であれば無料で利用することができる。




250: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/16(木) 23:00:32.51 ID:auY+eYoYo


〜〜〜〜〜


少女「父の元気な姿を見たのは……これが最後で」

少女「この後の話は、母から教えてもらいました」


〜〜〜〜〜




251: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/16(木) 23:25:45.12 ID:auY+eYoYo


少女父『こんちはー』

行商人『……こんにちは』


少女の父はノイエルへあと1日といった所で、正面から馬で荷車を引く行商人達に出会った。

荷車はとても大きかった。人が10人は入りそうな。しかし巨大な布で覆っており、中身は見えない。

行商人の他に護衛だろうか、5人ほどの剣や弓などの武器を持った者が荷車の周囲を囲っていた。


少女父『えらく大きな荷物ですね。どちらまで行くのです?』

行商人『ポート・カプール辺りまでですよ』

少女父『そんな遠くへ!?数日経てばエーテルの風が吹くのでは!?』

行商人『ええ。ですから途中パルミアでシェルターを借りようかと』

少女父『間に合いますか?』

行商人『あはは、こう見えて足早いんですよ、ご安心を』

少女父『へぇ……』



ダンッ!


行商人『!!!』


突如音がした。行商人は少し大げさに驚いた。




252: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/16(木) 23:26:17.00 ID:auY+eYoYo



少女父『あれ?今何か荷車から音しませんでした?』

行商人護衛『ああすいません、ちょっとぶつけてしまいまして』

少女父『あらら気を付けてください』

行商人『……』ほっ


行商人は護衛の機転に、安堵した。


行商人『ああそうそう、ノイエル南の林に大量のプチが湧いていますので気を付けて』

少女父『あ、ありがとうございます』

行商人『では』



そう注意して、行商人達は荷車を進め始めた。


少女父『……あの人らも大変なんだな』


少女の父もノイエルへの足を運び始めた。




―――悲劇への足運びとも知らず。





253: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/16(木) 23:34:41.53 ID:auY+eYoYo


……


男『ちっなめたマネしやがって!!』

ガンッ!


薄暗い、巨大な布で隠された荷車の中、男が金髪の女を殴る。


男『次やったら……娘を殺す』スッ

女『っ!!ごめんなさい!もうしません!しませんからその子だけは!!』


女の娘であろう子供の首にナイフが当てられているが、子供はぐったりしていて動かない。


……






254: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/17(金) 00:55:53.67 ID:oZ1BBoK0o




ノイエル市民『あ!これですどうもご苦労様です〜』



少女父『……よっし!これですぐ戻れば風が吹く前に帰れるかな?…と、その前に』


ノイエルに着いた少女の父はとりあえず依頼を完遂させ、リリィ達の住む家に向かった。

元々少女達が住んでいた家だが、ノイエルからパルミアへ引っ越す際に二人の夫婦に家を貸したのだった。

その夫婦も、ノイエルに移ってひと月もたたぬ内に3人家族となり、今や5歳になる娘がいた。



少女父『久しぶりだなこの家……』コンコン


少女の父はかつて住んでいた家のドアを叩く。


……が。


少女父『……あれ?留守かな?』コンコンコン


普段なら、ここで引き返すのだが……






255: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/17(金) 01:30:13.42 ID:oZ1BBoK0o


少女父『………』スッ


妙な胸騒ぎに、手が勝手にドアのノブを回す。


ガチャ

少女父『……開いてる!?』


すでにまた引っ越ししていた……わけではない。何故なら……


家の前に作りかけの雪だるまが、転がっていたからだ。


バッ!

少女父『っ!!』


慌てて中に入ると、そこには散乱した小物、倒れた洋服掛け…一目見て、事件に巻き込まれた事が分かる。






258: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/17(金) 08:16:53.55 ID:oZ1BBoK0o



少女父『くそっ!!!ガード!!!』


少女の父は慌ててガードを呼びにいった。


ノイエルガード『このような………すぐにガードを集めてノイエル周辺を捜索します』

少女父『頼みます』

ノイエルガード『しかし……』


ノイエルのガードは目線をそらす。


少女父『……ええ』

ノイエルガード『…申し訳ありません……私たちが動けるのは、おそらく明後日までです。それ以降は…エーテルの風がいつ吹くかわかりませんので』

少女父『いえ、それでもお願いします』

ノイエルガード『……』コクッ


ガードは頷き、他のガードに指示を出す。




259: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/17(金) 08:23:53.85 ID:oZ1BBoK0o



ここでふと、ある可能性が浮かび上がる。


少女父『そうだ、あの行商人……何か知ってるかもしれない!』

ノイエルガード『行商人?』

少女父『はい、ここへ来る途中大きな荷車を引く行商人に出会いまして。おそらく昨日ノイエルを出発した感じで、何か知っているかなと』

ノイエルガード『……行商人……』

少女父『今からちょっと追いかけてみます。最低限の食糧を持って軽くすれば追いつけるはずですから』

ノイエルガード『その行商人、どこが目的地と?』

少女父『ポート・カプールです。途中パルミア辺りで風を防ぐそうで』

ノイエルガード『ポート・カプール……?あの西端の港ですよね?』

少女父『そうですね』





ノイエルガード『……そのような依頼ここ一週間無かったはずですが』




少女父『…………!!!!!』




260: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/17(金) 08:24:28.11 ID:oZ1BBoK0o



かすかに感じていた予想が、


――ドン!

――『ああすいません、ちょっとぶつけてしまいまして』



確信へと変わる。


10人も乗れそうな、巨大な布で隠された不自然な荷車。


行商人の驚きよう。


あの音は。あの音はまさか。


必死で自分に求めた……





エスオーエス。




261: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/17(金) 08:25:04.98 ID:oZ1BBoK0o



少女父『くっそおおおおお!!!!』ダッ!!

ノイエルガード『あっちょっと!?』



どうして気づかなかった。あのSOSに。

もし荷車の中があの家族ならば。


行先はポート・カプールではなく……


人身売買が平気で行われる無法都市……ダルフィだ。

ダルフィには盗賊ギルドもある。おそらくその一味。

エーテルの風が吹きそうな時期に移動しているのは、ガードが追ってこれないようにするため。

おそらくあの者達はどこかにシェルターを展開している隠れ家があって、そこで風を凌ぐつもりだ。

パルミアなど寄れるはずもない。


少女の父『くそっ!くそっ!!!』タタタタタタ……


もうすぐエーテルの風が吹く。ガードはあてにならない。

自分が、やるしかない。



はらはらと降り出した雪の中へ、少女の父の姿が溶けていった。




265: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/20(月) 09:34:17.27 ID:P5lsSjqAO

*ブチュッ*




266: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/25(土) 13:34:13.35 ID:CeVnYXGbo



少女父『はぁっ!はぁっ!』ざっざっ


積もった雪の中を進むということは凄まじく体力を使う。

しかし荷車を置いてきているから、ノイエルに向かった時の倍以上のスピードは出ている。

ならば食糧が無いという話だが、とても栄養価が高いストマフィリアというハーブを食べてなんとか食いつないでいた。



そして。


少女父『荷車の跡……』


ようやく、追いついた。


少女父『……見つけた!!!』



護衛『はーやっとついた』

行商人『休んでるヒマ無ぇぞー、急げー。』




267: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/25(土) 13:35:17.85 ID:CeVnYXGbo



コソッ

少女父(……シェルターに入られる前に助けないと……エーテル的に安全を考えるならシェルターの中がいいんだが……)

少女父(……いや、自分を信じろ……いざとなれば……)


盗賊団はダルフィで人身売買するつもりなのだろうが、シェルターに入っている間何もされないとは思えない。



護衛A・B『うっしじゃあ俺らは馬つないできやす。餌あったっすよね?』

行商人『確か一週間分の藁くらいあったと思うが』

護衛A・B『うぃっす』


行商人『…さーて俺は商品を中に入れるか』



少女父(……2人離れた……よし、今がチャンス!)ポイッ!


ガサササッ!


少女の父は石を遠くに投げて、茂みに放り込んだ。




268: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/25(土) 13:36:11.56 ID:CeVnYXGbo



行商人『誰だ!!』バッ!

護衛C『見てきましょうか?』

行商人『ああ。場合によっては……』

護衛C『……了解っす』チャキ


これで、3人の護衛がいなくなり、残り3人となった。


少女父『すぅ……はぁ…………っっ!!』スッ


荷車の近くに残るは頭領と思わしき行商人と、2人の護衛。

うまく注意を引き付ける事ができた。全員茂みの方を見ている。

死角ができた位置から、荷車へと駆け寄る。


バサッ


荷車の中を覗くと……


リリィ『!!!』


居た。




269: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/25(土) 14:07:06.65 ID:CeVnYXGbo



少女父『……』チョイチョイ



身振り手振りで音を出さぬよう来るように伝えると、もう一度外を見てまだこちらに気づかれてない事を確認して、

リリィはパエルを抱きかかえ、荷車の外に出た。


……荷車の中は割と暖かかったのだが、外の出た瞬間に冷気が襲い掛かる。

それは、パエルにとっては厳しいものだった……


パエル『くしっ』

リリィ『!!!』

少女父『!!!』


行商人『ん?……あ!?おい!!!!!』

護衛D・E『っのやろぉ!!』チャキ

少女父『走れっ!!』

リリィ『っ!!』ダッ!


ダァン!ダァン!


後方から発砲音が聞こえる。しかしすでに、雪に姿をくらませた三人には当たるはずもなかった。



……




270: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/25(土) 14:07:44.15 ID:CeVnYXGbo


1・2時間経っただろうか。追いかける盗賊団達の足が止まった。


行商人『……ちっ、ここまでだな』

護衛D『まだ追いつけます!』

行商人『馬鹿かお前は。向こうの空を見ろ』


明らかに雪雲ではない、光の帯が迫っていた。それを見て護衛Dは息をのむ。


行商人『エーテルの風にさらされた奴など売れん。こんな雪道のど真ん中でシェルターも無しにどうするつもりなんだか』

護衛E『ちっ』

護衛D『上玉だったのになぁ〜』


隠れ家に戻る盗賊団。少女の父は正しかった。明らかに護衛の方は少女の父の予想通り、シェルターの中でのお楽しみを期待していた。



……




272: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/25(土) 15:07:41.33 ID:CeVnYXGbo


少女の父は、既に盗賊団が追ってきてないことに気づいていた。

しかし、その足は止まらない。

追ってこないということがどういうことかも分かりきっていた。


ザッザッザッ


少女父『……すまない』

少女父『あのままシェルターに居れば、エーテルの風に当たらなかったかもしれないのに』

リリィ『そんなことありません!』


無言で少女の父について走ってきたリリィが数年ぶりに交わした会話は、謝罪だった。


リリィ『あのまま居れば……私とこの子は、死ぬよりも辛い道を歩かされる事になっていましたから……それに』

リリィ『パエルにヴィンデールクロークを貸してくださって……あなたこそ私たちがこんなことにならなければ……』


防寒と"風"を防ぐために、ヴィンデールクロークをパエルに巻きつけて抱えていた。

少女の父が頑としてヴィンデールクロークを貸し付けたのだ。






273: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/05/25(土) 15:09:18.18 ID:CeVnYXGbo




―――雪は止んでいた。




―――代わりに、光る胞子が辺り一面に流れ始めていた。




―――神々しくも思えるその光景と裏腹に、クロークにより守られているパエル以外の二人は。




―――非情にもエーテルが体内に蓄積されていく他なかった。






281: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/07/21(日) 15:24:34.80 ID:w1TfbICNo



なんとか町に戻った三人が見たものは、人ひとり居ないノイエルだった。

少女父『まぁ……そうだろうな』

リリィ『エーテルの風が吹いてる時の町ってこんな感じなんですね』


二人は初めてエーテルの風が吹いている時の街の様子を知った。

エーテルの風に吹かれると少し体が軽くなり、移動速度が上がる。よって普段よりも早くノイエルに帰ることができた。

しかし早く帰れたからといってエーテルの蓄積は毛ほども和らいだ事にはならない。


そして――

――既にリリィの腕は鱗のようなものに覆われ、少女の父の足は蹄へと変化していた。




少女父『とりあえず、早くシェルターに入ろう』

リリィ『でも……私たちはもう……』

少女父『確かに、シェルターの中にいる他の人達には避けられちまうな……』

少女父『それでも、その子の為だ。ヴィンデールクロークは完全にはエーテルの風を防げないからな』

リリィ『…わかりました』






282: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/07/21(日) 15:25:30.01 ID:w1TfbICNo



ーシェルターの中ー



がやがや……


少女父『ローブを深めに被っとけば大丈夫だろ……勝手に家から取ってきたが構わなかったか?』

リリィ『ええ、ありがとうございます……』キョロキョロ

少女父『……旦那…か?』

リリィ『……はい……』

少女父『妻と娘が誘拐されたってのにのんきにシェルターに居るわけねぇよな……探してくる』

リリィ『あの…無理に行かなくても……あの人なら、どこかでエーテルの風をやり過ごしてます……きっと』

少女父『……ならいいがね……』



――行商人『南の森に大量のプチが湧いているので気を付けて……』


少女の父の勘。行商人は盗賊だった。あの言葉が引っかかる。



少女父『……なんだ、この胸騒ぎは……』

リリィ『大丈夫ですか?』

少女父『……やっぱり行ってくる!』ダッ!

リリィ『あ!ちょっと!?』


リリィとパエルは既にシェルターの中。ヴィンデールクロークは返してもらっていた。





283: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/07/21(日) 15:26:20.13 ID:w1TfbICNo


ザッザッザッ!

少女父『……南の森……』


エーテルの風の中を、少女の父は南の森へと向かう。





少女父『ふぅ、ふぅ……確かにプチが群がってる……』


もぞもぞと動くプチの群れを発見。少女の父は……


少女父『っ!!!!!!』


プチが"何"に群がっているのかを見て……最悪の予感が当たっていた事に落胆した。




ザシュッ!!ザシュッ!ザシュッ!!!



プチを駆除、そして少女の父が見つけたのは―――――。






少女父『…………………くそっ』








284: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/07/21(日) 15:27:21.99 ID:w1TfbICNo




……


エーテルの風が止んで数日。リリィと少女の父は、リリィの家に隣接する、雪の重みに耐えているモミの木の前に居た。


木の根元にあるのは、ただ石を積み上げただけの、墓。




リリィ『…………』




少女父『……俺はもう行くよ……よかったら、ウチへ来るか…?』


リリィ『……いえ……私はパエルと……この人と共に、この町を過ごします』



盗賊団がリリィ達を誘拐する際に、邪魔となったリリィの夫に傷を負わせ、南の森に捨てて行ったのだった。

弱った彼は、大量のプチに捕食されるしかなかった……。






285: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/07/21(日) 15:30:45.14 ID:w1TfbICNo


少女父『……本当に、大丈夫か』

リリィ『…ええ……大丈夫……』

少女父『……じゃあ、お元気で』

リリィ『さようなら……』



そうして、少女の父はノイエルを後にした。



……


少女父『……エーテル病、か』


少女の父は、リリィ達のこれからを考えて鬱になりながらも

自分の今後についても悩まなければならないことに、パルミアまであと数マイルの所で気づいた。




クロークで蹄になった足を隠し、我が家のドアを開ける。





286: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/07/21(日) 15:31:26.29 ID:w1TfbICNo



ガチャ

少女父『ただいま』

……タッタッタッ

少女母『おかえりなさい!』

少女父『あれ、クレアは?』

少女母『訓練所。今安いのよ』

少女父『ほー』


少女母『服脱いで。洗うわ』


少女父『…………』

少女母『……どうしたの?』

少女父『……クレアがいなくてよかった』バサッ


クロークを脱いで、足を見せる。



少女母『………………あれほど、シェルターに入ってと言いましたのに……』


少女の母は蹄になってしまった足を見て顔を伏せる。


少女母『……何が…あったんですか』

少女父『……実はな……』


少女の父は、ここ2週間の出来事を話した。




290: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/01(木) 08:40:46.74 ID:zEOG+EC2o



少女母『リリィさん達が……!!』

少女父『俺がもう少し早く異変に気付いてりゃ……』

少女母『そんな、あなたは自分を犠牲にしてまで……』

少女父『俺は…………』






〜〜〜〜〜〜〜


少女「父はその後も、エーテルの病を隠して働き続けていました。」

少女「そして……」


〜〜〜〜〜〜〜






291: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/01(木) 08:41:13.44 ID:zEOG+EC2o



少女はいつも通りに起きると、家がいつもと違う雰囲気であることに気付いた。


幼少女『おかあさん?』


不穏な空気を感じながら家のドアの方を見ると……


そこに居たのはパルミアのガード。そしてその前で、少女の母が泣き崩れていた。


幼少女『おかあさん!?』タッ



パルミアガード『心中、お察しします……』

幼少女『おかあさん!何があったの!?おとうさんは!?』



少女母『クレア……おとうさん、ね……』



〜〜〜〜〜〜〜


少女「父は……ある依頼を受けていたら、ハリねずみの集団に出くわしたそうです」

少女「単なるハリねずみならよかったんですが……その中の数匹がエーテルを持っていて」

少女「大量にエーテルの針が刺さり、急激にエーテル病が悪化……結果、命を落としたそうです」






292: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/01(木) 08:42:29.86 ID:zEOG+EC2o



勇者「……そっか……エーテル……」

少女「だから、エーテルの風の発生源……異形の森が……エレアが、憎いんです」ギリ

勇者「なるほどね……」


勇者は、最初に出会った二人を思い出していた。

異形の森の真実。エレアの真実。


勇者(でも、話からしてエーテルが人々に害をなしているのは事実……)

勇者(そして、そのエーテルは異形の森から出ている…というのも、おそらく事実……)

勇者(あの二人は、"真実"と言った。……なんだろう、このモヤモヤした感じは……)

勇者(事実に隠れた真実……二人は―)


少女「勇者さ〜ん?」

勇者「んあ!?」

少女「すみませんこんな暗い話になっちゃって」

勇者「……なあ、レム・イドを滅ぼした災厄…って知ってるか?」

少女「メシェーラのことですか?」

勇者「メシェーラ?」




293: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/01(木) 08:43:14.24 ID:zEOG+EC2o



少女「またの名を星を食らう巨人、前の文明レム・イドを滅ぼした病魔でしたかね。訓練所で習いました。どうしたんですか?」

勇者「……病魔…ね。その病の症状については?」

少女「それは知らないですよう。なんかこんな事があって滅んだっぽい、的なノリで教わりましたから」

勇者「ふぅ…ん」


少女「もう!なんなんですか教えてくださいよー!」


「うっせー何時だと思ってやがる!!!」ドンッ!!


壁ドンを食らう二人。大声をあげた少女が悪いのだが。

時計を見た勇者は確かに、こりゃ怒るなと思った。


勇者「とりあえず、もう寝るか」

少女「……そうしますかね」



…ふと、少女はとんでもないことに気付く。





294: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/01(木) 08:44:47.49 ID:zEOG+EC2o



少女「……あれ?ベッド一つなんですけど」

勇者「みたいだね。まあいいか」

少女「え…ちょ……良くはないと思うんですけど……」

勇者「んだよアレか?近くに人が居ると眠れないタイプか?それとも枕か?」

少女「いやいやいやそういう問題では無くてですね……」

ドサッ


少女が言い終わると同時に、勇者は床に倒れこんだ。

勇者「安心しろ、ベッドはお前が使え」

少女「あの」


勇者「ぐー」


少女「……ばからしくなっちゃった……寝よ……」ボフッ

少女「もう……男の人と泊まるなんて……でも私に興味は無さそうだし……嬉しいやら悲しいやら……はぁ」


複雑な気持ちで目を閉じる。


少女「……明日は、何をしようかな……」




この夜二人は夢を見た。




295: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/01(木) 08:50:23.56 ID:zEOG+EC2o



勇者の夢。それは別世界での過去。


王様の前で片膝をついている自分。

???『勇者よ、……を……に行くのじゃ』


逞しい男が暑苦しく自己紹介。

???『俺は……だ!』


杖を持ちローブを纏った女が

???『……………。……こと……でね』


そして元気な女の子が

???『私は…………です!……をよろしくお願いします!』



勇者(こいつら誰だ…?何か、懐かしいような……安心するような……)



勇者(………誰だ……)



記憶の欠片が一つ、埋まった。




296: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/01(木) 08:52:02.39 ID:zEOG+EC2o



少女の夢。それは少女の話の続き。

勇者に話さなかった過去。



タッタッタッタッ!


幼き少女は街灯に照らされた道を走る。

向かうところは街の噴水。少女はある言い伝えを信じて走る。


幼少女(井戸や噴水の水を飲んではいけないって、大人の人たちは言ってた……でも)

幼少女("願い"の神様は、水のあるところに現れる……ノイエルで歌を歌ってた人から聞いた!)


ザッ!


噴水の前にたどり着く。夜は危険。そんなことはわかっている。



幼少女『はぁ、はぁ……』


噴水の水。この世界の水は結構汚い。ちゃんとした水は、然るべき機関を通して信用を得、売り場に出されているものでないと危険である。

ある乞食が噴水の水を飲み、苦しんで死んだ事を少女は見たことがあった。


その上で、覚悟を決める。


幼少女『お願い!!!!』ゴクッ!




297: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/01(木) 08:53:35.93 ID:zEOG+EC2o














???『何を望む?』













幼少女『え…?』










奇跡は起こった。




302: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/02(金) 01:34:09.20 ID:0qCjlMt8o



???『何が欲しい?』

幼少女『え、え……え!』


姿は無いが聞こえてくる謎の声。


???『願いを叶えてやろう』

幼少女『………』


少女は冷静になる。そして、願う。



幼少女『おとうさんを生き返らせて!!』




しかし――


???『それはできない。』


幼少女『そんな……かみさまなんでしょ!?』


???『何を望む?』



神が現れたというのに、叶えてほしかった願いは拒否された。




303: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/02(金) 01:43:15.95 ID:0qCjlMt8o


幼少女『っ!!……じゃあえーてる病を無くして!』


父を亡くす事になった元凶の消滅を願う。しかしこれも――



???『それはできない。』

幼少女『なんでよっ!何も叶えてくれないじゃない!……ひどいよ……』

???『何を望む?』

幼少女『もうダメだよぅ……誰か……』

幼少女『誰か助けて…………この世界を、救ってください……』フラッ



絶望した少女はおぼつかない足のまま家へ向かう。そして……



幼少女『……いつか、救世主が現れますように……』



つぶやいたこの一言が。




???『承知した』




この世界を大きく変えるとも知らず……





307: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/21(水) 21:10:32.08 ID:41lQjlb2o




……




少女「…あふ……あの夢か……」


すっかり寝癖がついてしまった髪の毛も気にせず上体を起こして目をこする。


勇者「どんな夢だよ」

少女「うひゃっ!?」


不意に声を掛けられ変な声を発する少女。


少女「起きてたんですか」

勇者「ああ。なんか息苦しくてな、実は1時間前に起きた」

少女「1時間前って…6時ですか……はっ!まさか私に何か」バッ

勇者「ちょっと外の空気吸いに行ってた」

少女「…はい」

勇者「腹減った、宿の飯食おうぜ」

少女「はいはい!」

勇者「何怒ってるの?」

少女「怒ってません!!」


荷物を持って部屋を出ると、他の宿泊客に混じって空いているテーブルを確保する。





308: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/21(水) 21:16:26.02 ID:41lQjlb2o


勇者「すみません、朝食お願いします。」

店主「はぁい、二人分で、280金貨です!」

勇者「やっす……おい」

少女「えーと荷物の確認確認……大剣よーし!」

ガシッ

少女「はう!」

ギギギ……


勇者は少女の頭を鷲掴みにして強制的に顔を向けさせる。


勇者「昨日のあの飯はいくらだった?ん?」

少女「だだだだって宿の食事は朝と夜しかでませんしぃ……あの時はまだお昼でしたしぃ……」

勇者「今度から飯は宿屋な」


勇者は青筋を立てた笑顔でそういった。




309: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/21(水) 21:29:11.17 ID:41lQjlb2o


……


勇者「さて、掲示板に行くか!」


朝食を食べ終えた二人は席を立つ。


少女「ネフィア探検もしましょうよ〜」

勇者「…そうだな、今日はそうするか」

少女「やった!」

勇者「君は探検好きなの?」

少女「そりゃもう!ゲットしたアイテムを鑑定してもらう時のあのドキドキ感はたまりませんね!ぐへへ」

勇者「ぐへへ言っちゃったよこの子」


勇者「ちなみにどの辺いくか決めてんのか?」

少女「ここから南西にある洞窟です。なんか鍵のかかった扉があって気になるんですよね〜」

勇者「ふぅん……おっけ。でもそれだと日が暮れるんじゃないか?」

少女「あー…寝袋買いましょう!あ、ちなみに私は持ってます!」

勇者「野宿前提かよ……いいけど」




310: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/21(水) 21:34:17.46 ID:41lQjlb2o



少女「野宿嫌いですか?」

勇者「いや慣れてる」

少女「あっそうなんですか……」

勇者「……あれ?慣れてるのか?」

少女「なんで私に聞くんですか……」


思わず即答してしまった勇者だった。


???『さて、今日はここで野宿だな』

???『勇者、今日は俺が見張ろう』

???『すまんな。ありがとう…士。』


勇者「……んん?」



記憶の欠片がまた一つ、埋まった。






311: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/21(水) 21:48:23.64 ID:41lQjlb2o



……


雑貨屋「8百金貨頂きます!まいど〜」

勇者「よし……残りの手持ちがなんか頼りないな……」

少女「依頼でもやります?」

勇者「そうしよう。即時依頼がいいな」

少女「となると、魔物討伐あたりか、収穫依頼か……」

勇者「とりあえず掲示板見に行こうか」

少女「そうですね」



コソッ

???(奴がアジトを潰した……くく、盗賊を怒らせた罪は重い……)

…タッ!


先日叩きのめしたはずの盗賊団員が二人の会話に聞き耳を立てていた。

二人が気付かなかった理由は二つ。

まず変装していたからという理由が一つ。

もう一つは、大胆に近くで聞き耳を立てていただけだったから、買い物に意識を向けていた二人は特に気にしていなかったのだ。


この男の向かう先は、掲示板。




312: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/21(水) 21:57:39.94 ID:41lQjlb2o



盗賊「……急げ」


二人が来る前に数々の依頼に目を通し、そして……


盗賊「これだ」


最適な依頼を発見した。

盗賊は懐から依頼文を出し、掲示板にある依頼内容の"ある部分"を似せて書き……


ビリッ…ピトッ

盗賊「……よし」


ガードが見ぬ間に入れ替えたのだった。





313: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/21(水) 22:10:37.98 ID:41lQjlb2o


勇者「こんちわー」

盗賊「!!」ビクッ!!

盗賊(見られたか?)

少女「こんにちは!何受けるんです?」

盗賊(……大丈夫だ。怪しまれてはいない。)


遅れて、掲示板の前に立つ二人。


盗賊「あはは、そうですね……僕はこの、星1の収穫依頼をやろうかなって」

少女「あ!いいなあ!勇者さん先越されてますよ!」

勇者「まじか」

盗賊「……あの、即時依頼が良いなら…ほらここ、星2の魔物討伐依頼がありますよ」


入れ替えた偽の依頼文を指差す。





315: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/21(水) 22:29:09.91 ID:41lQjlb2o



少女「星2つ!勇者さんこれ!これベストですよ!!」

勇者「……なあ、星1とか星2ってなんだ?」

盗賊「え?」

少女「あー、単純に難易度とか、危険度って思って頂ければいいです」

勇者「基準がわからんのだが」

少女「うーん……星3の魔物討伐は、私は万全の状態で戦ったらギリギリいけますね……4つは無理です」

少女「5つはもう自殺行為ですね。ってか、そもそもガードさんが受けさせてくれないかもです」

勇者「なるほど……」


ガード「こんにちは!」


掲示板の前で話している3人にガードが加わる。




316: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/21(水) 22:35:55.34 ID:41lQjlb2o


ガード「確か勇者…さんでしたね。動物の骨ありがとうございました!」

勇者「…ああ!そういえばそうでしたね!」

ガード「それで、その依頼受けられますか?」

勇者「ええ、お願いします」


盗賊(かかった!!!)ニヤ


盗賊「それじゃお二方、頑張ってくださいね」

少女「どうもありがとう!」

勇者「さて、ちゃっちゃと終わらせようか」



盗賊は、早足でその場を去る。

…笑いを堪えるのに、限界が来たからだった。





317: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/21(水) 22:52:20.72 ID:41lQjlb2o



盗賊「……く」


盗賊「あっははははははははは!!!!!」

盗賊「やった!やってやったぜ!!くはははははは!!」


盗賊がやった事。それは……星の数をいじったのだった。


盗賊「じゃあな!自殺しろ!あはははははははは!!」







ガード「さて…あれ?掲示板に星5の討伐依頼があったはずだけど……取り下げたのかな?」





318: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/21(水) 23:08:31.59 ID:41lQjlb2o






勇者「ここが討伐区域か」

少女「そうですね……さ!気合いれて……って……」

勇者「どうした?」

少女「サウンドハウンド……ストーンゴーレム……デスゲイズ……嘘でしょ……」


少女「この依頼、明らかに星2つじゃありません!見つかったら殺されます!逃げましょう!!」

勇者「見つからなかったらいいのか」

少女「だから早く逃げ」

勇者「広域雷撃呪」

ドガアアン!ドガン!ドゴォン!ガァアン!ドォォオオオオン!!!


エリアを制圧した!


少女「えーと」

勇者「よし帰ろう」


少女「…………はい」






319: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/21(水) 23:48:35.87 ID:41lQjlb2o


……


盗賊は、変装が崩れる前に買い物をすまし、

奴らを始末できたことを伝えに新アジトへ向かおうと街を出ようとした……が。


前から歩いてくる二人組を見て思考停止してしまった。



少女「あのぅ、広域雷撃…呪?教えてくれませんか?」

勇者「ん、いいけど俺もどうやってやってるのか分かってないよ?」

少女「えー」


盗賊「なっ……」


勇者「お?そっちも収穫依頼終わったんですね!」

盗賊「ばか…な……」

勇者「いやーなんか依頼ミスだったとかで4千金貨もらえました!」

盗賊「そ、そう…ですか……」




320: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/22(木) 00:01:27.38 ID:rcIDHLPDo


まさか無傷で帰ってくるとは思いもよらなかった盗賊は、ここで時間をくってしまった為に……


少女「……あれ?なんかほっぺ剥けてますよ?」

盗賊「え?」


ポロッ


変装が解けた。


少女「……あ!?」

盗賊「ちっ!!」ダッ!


ガード「あれ、どうしまし……指名手配中の盗賊だ!捕まえろ!!!!」


盗賊「く、くそっ!!」





321: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/22(木) 00:01:56.08 ID:rcIDHLPDo



勇者「……なんだったんだ?」

少女「今の見たことありますよ。昨日の盗賊団員でした。……あ、なるほど」

勇者「何が分かったんだ?」

少女「要するにですね、高難易度の依頼を低難易度に見せかけて依頼を受けさせ」

少女「事故死を狙った悪質な依頼文操作です」

勇者「依頼文操作されてたのか?星2ってあんなもんなんだよな?」


少女「……あは!できなかったんでしょう!それよりネフィア探索行きましょう!」


少女は勇者に説明することを諦めた。





323: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/22(木) 00:57:22.08 ID:rcIDHLPDo


……


ザッザッザッ…


少女「勇者さんの、その強さの秘密って何ですか?」

勇者「ん?」


ヴェルニースから、少女の言う南西の洞窟へと向かう道中。

不意に少女は勇者に尋ねた。


勇者「うーん……」


〜〜〜〜

ロミアス『君、あまり本気を出さない方が良いかもしれない。』

勇者『どうして?』

ロミアス『おそらく、利用される。国に。』

〜〜〜〜





324: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/08/22(木) 00:58:17.74 ID:rcIDHLPDo



勇者「そう……だな……俺自身も、知りたいよ。だから……記憶を取り戻」

少女「プチだああああああああ死ねえええええええええ!!」


プチッ


少女「っしゃあああ肉ゲットぉおおお!!ふふーん♪持ってて良かった携帯調理道具♪」


勇者「……」ぷつん


少女「あ、そういえば何か言いました勇者さ」

ヒュバッパクッ

勇者「あーうめぇ。さて行こうか」


少女「ああああああああああああ!!!!」






328: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/08(日) 15:12:51.31 ID:3EKsMTK/o



そして少女は足を止める。目の前には灰色に染まった洞窟。


少女「さて、着きましたよ勇者さん。ここの4階への扉に鍵がかかってるんですよねー」

勇者「……っ!」ゾクッ!


勇者は、背筋が凍るような……まるでこれから、最後の敵が居る城へ入るような……

そんな感覚に襲われた。



少女「3階には危ない部屋がありましたし……勇者さん?」

勇者「……あれ?」


が、その気配も一瞬で消え去った。


少女「ほら、行きましょって」

勇者「ん、ああ」


そして二人は、洞窟へ入る。






329: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/08(日) 15:14:04.68 ID:3EKsMTK/o


ー謎の洞窟・1階ー


勇者「あれ、てっきりモンスターがいっぱい居るのかと思ったんだが」

少女「あー…私、この洞窟の地下3階くらいまで探索済みなんですよ。だからもうこの辺は討伐しきってます」

勇者「そうなの」

少女「さ!行きましょう!目指せ最奥部!!」

勇者「…おー」


少女「…テンション低くないですか?」

勇者「逆に君のテンションの高さはなんなんだ……?」


少女「ちょっとちょっと!」バッ!


少女は"止まれ"をするがの如く手を前に突き出す。

そして、不思議なダンスを踊り始めた。





330: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/08(日) 15:15:01.28 ID:3EKsMTK/o


少女「私たちはッ!」バッ!


少女「冒険者ですよ!!?」ビシッ!


少女「ネフィア探索でッ!!」サッ!


少女「テンション上がらなくてッ!!」クルッ!


少女「どうします!!??」ビシィッ!!!


少女(決まった!!!)



少女「……」チラッ


しかし目前には勇者の姿は無く、なにやらおかしなポーズを決めている少女の絵だけが、そこにはあった。


少女「…あれ?」

「はやくこーい」


地下への階段から、勇者の声が響く。


少女「ああっ!待ってくださーい!!」ダッ!


マヌケとは今の少女の事を言うのだろう。





331: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/08(日) 15:15:40.28 ID:3EKsMTK/o


そして、地下2階も通り過ぎ、地下3階へ。

ここで適当に歩いていた勇者が、開いてない扉を見つける。

1階・2階はすべて探索済み、つまり開いてない扉は無かった。

つまりこの先は未探索という事だった。


勇者「…ん?この扉はなんだ?」

少女「あ!?だめですそっちは!!」

勇者「なんでだ?」

少女「なんでじゃありません!扉に耳を付けてみてくださいよ!」


言われた通りにする勇者。…扉の向こうからは、


グルルル……
グルルルル……
ガルルル……
アオーーン!……





332: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/08(日) 15:16:09.27 ID:3EKsMTK/o


勇者「あー、うじゃうじゃいるなこりゃ」

少女「でしょ!?所謂モンスターハウスです!しかも鳴き声からして、ハウンドですね……」

勇者「ハウンド?」

少女「はい、犬みたいなやつなんです。本当に犬だったら全然楽なんですけど……」

少女「これがもし属性ブレスをするハウンドだったりしたら……」

少女「そりゃー1匹なら勝てますけど、多分この中は10匹以上いますね。生きて帰れません!」

勇者「属性ブレス……犬の……あ、あの時の犬か!」


勇者はサモンモンスターの杖を振ってしまった時に出現したファイアハウンドの事を思い出した。


勇者「なんだあの程度か」ガチャ

少女「ええええええ!!!」


勇者のなんの躊躇いもない扉の解放に少女は思わず叫んだ。




333: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/08(日) 15:17:44.87 ID:3EKsMTK/o


アイスハウンドの群れ「「ガルッ!!」」


そこに群れていたのは、薄く青がかった毛色をしたハウンド……アイスハウンドだった。


少女「うわ!うわわわ!」

勇者「あわてんなって。扉は一つ、出てきたハウンドを1匹ずつ叩くんだ」

少女「あ、な、なるほど!」サッ!


二人は空いた扉の両端に移動し、扉から出てくるハウンドを挟み撃ちにする。


「ガルッ!」バッ!


入口が狭いため、勇者の作戦は悉く思い通りに進むのだった。



 そして、10分後。



勇者「な?こうすれば一人でもいけただろ?」

少女「ふぅー、なるほどなるほど!」


少女は戦術スキルの上達を感じた!




339: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/10(火) 14:42:48.09 ID:c40gDedvo

ちょっと小ネタ。




340: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/10(火) 14:43:25.67 ID:c40gDedvo


タッタッタッタッ!


幼き少女は街灯に照らされた道を走る。

向かうところは街の噴水。少女はある言い伝えを信じて走る。


幼少女(井戸や噴水の水を飲んではいけないって、大人の人たちは言ってた……でも)

幼少女("願い"の神様は、水のあるところに現れる……ノイエルで歌を歌ってた人から聞いた!)


ザッ!


噴水の前にたどり着く。夜は危険。そんなことはわかっている。



幼少女『はぁ、はぁ……』


噴水の水。この世界の水は結構汚い。ちゃんとした水は、然るべき機関を通して信用を得、売り場に出されているものでないと危険である。

ある乞食が噴水の水を飲み、苦しんで死んだ事を少女は見たことがあった。


その上で、覚悟を決める。


幼少女『お願い!!!!』ゴクッ!




341: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/10(火) 14:44:22.73 ID:c40gDedvo


少女は水の中に金貨を見つけた。


幼少女『やった!おこづかい増えた!』

幼少女『じゃない!もう一回!!』ゴクッ!


この水は清涼だ。


幼少女『おいしい!』

幼少女『違う!!!もう一回!!』ゴクッ!


少女は変容した!少女の腕の贅肉が増えた。


幼少女『ふぇぇ……じゃなくて!もう一回!』ゴクッ!


少女は墨を浴びた!少女は盲目になった。


幼少女『うっ……もう一回!!』ゴクッ!


金貨を見つけた。




342: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/10(火) 14:45:09.67 ID:c40gDedvo



幼少女『もう一回!』ゴクッ!


金貨を見つけた。


幼少女『っ!』ゴクッ!


この水は清涼だ。


ゴクッ!


ひどい頭痛におそわれた!

ゴクッ!

少女は痺れた!

ゴクッ!

少女は変容した!少女の皮膚は冷たくなった。

ゴクッ!

『何を望む?』

幼少女『q!!』




幼少女『……あっ』




小ネタ「q!!」終わり




343: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/10(火) 15:22:13.42 ID:KmjGUmv1o

あれほどq→aか井戸をショートカット登録しろと……




349: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/22(日) 23:44:42.19 ID:Pwqf+0ako



少女「しかしよくもまあたくさん出現しますねぇ……ん?」


……と、少女はモンスターハウスだった部屋の奥で、何かがうごめくのを見た。


勇者「どうした?」

少女「何かが……うっ!!!」


そこには、アイスハウンドに体を喰われ…下半身が無い男の死体があった。


勇者「……あれだけのハウンドに囲まれて…力尽きたんだな……」

ハァ…ハァ…

少女「うわ!まだ息してますよこの人!!」


――まだ、死体では無かった。





350: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/22(日) 23:46:01.39 ID:Pwqf+0ako



瀕死の男「ぼ、冒険者…か?」

勇者「……ああ、そうだ」

少女「い、生きてる…の?」

瀕死の男「はは、重傷治癒のポーションで痛みを和らげてた甲斐があったよ」

勇者「…すまんが、その状態じゃ助けられないぞ?魔法使いが居りゃ望みはあったが」

少女(……魔法使い?)

瀕死の男「いやいいんだ、そんなことは……それより頼みがある…私はパルミアの斥候…王の命令でレシマスに潜んでいた者だ…」

瀕死の男「詳しく説明する体力はもう無い……王に…ジャビ王にこの書簡を届けて頂きたい……」スッ

勇者「ああ、わかった……」

瀕死の男「二つの大国の衝突を……シエラ・テールの危機を防ぐために……」

瀕死の男「そ、そこにある私の所持品は好きにして構わない…だからこの知らせを……パルミア……に……」



そういって男は、二度と喋ることは無かった。





351: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/22(日) 23:47:31.67 ID:Pwqf+0ako



勇者「……ジャビ王…か。パルミアに行けばいいんだな」

少女「……そうですね……あ、この人の所持品…どうします?」

勇者「何言ってんだ」

少女「そ、そうですよね!埋めた方が良」


勇者「もらっていく」


少女「あれ?」


少女は初めて会った時を思い出し、死体漁りを咎められていた故に意表を突かれた。


勇者「この人が死ぬ前に、所持品は好きにして構わない……と言ってたろ?つまりこれは遺言だ」

勇者「この人の意思を無駄にするわけにはいかねーよ」

少女「……そっか」

勇者「……ああ」





352: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/22(日) 23:49:54.28 ID:Pwqf+0ako


書簡と所持品を受け取った勇者は、意を決して少女に告げる。


勇者「なあ」

少女「なんです?」

勇者「もういいよ、ついてこなくても」


突然の縁切りだった。


少女「…ほほぅ、これで私は晴れて冒険者に戻れるってわけですか」

勇者「ああ」


少女「……なぜです?」

勇者「この人の背中を見てみろ」グイッ


少女「堂々と可憐な少女に死体を見せますか…………って、この傷は……」

勇者「ああ、明らかに人為的な傷だ。これが致命傷だったんだ」

少女「つまり、この人はアイスハウンドにやられたんじゃなくて……」



勇者「そう、殺されたんだ。口封じの為にな」





353: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/22(日) 23:53:16.15 ID:Pwqf+0ako



少女「っ……」

勇者「犯人はこの男に致命傷を負わせた後、どうやったか知らんがこのアイスハウンドの群れの中に送ったんだ。そうすれば勝手に食ってくれるからな、ハウンドに食い殺されたという状況が出来上がるというわけだ」

少女「あ、それはたぶん……テレポートの杖を使ったか、テレポートアザーの使い手……でしょうかね」

勇者「テレポート?転移呪の類……か?」

少女「私にとっては転移呪ってなんですかって感じなんですけど……まあ、たぶん合ってますよ」


勇者「そうか…ま、つーわけで……君はこれ以上首を突っ込まない方がいい。命を狙われる事になるかもしれない」

少女「……」




少女は答える。





少女「わかりました」






354: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/22(日) 23:54:04.75 ID:Pwqf+0ako


少女「私の身を案じてって事ですよね?」

勇者「当たり前だ。……ありがとうな、ここまで」

少女「……いえいえ」

勇者「まあ、短い間だったが楽しかったよ」

少女「んふふーそうですか♪私もです♪」


勇者「……洞窟の外までは送るよ」

少女「いえいいですよ。私はこの洞窟を探検しに来たんですから!」

勇者「そうか……じゃ、元気でな!」

少女「はい!また会いましょう!3分後にでも!」

勇者「俺はラーメンかよ」

少女「あはは!…よっ!」

*ガサッ*

勇者「あっおい!?」


勇者からある巻物を一つ奪い、逃げる。




355: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/22(日) 23:56:58.53 ID:Pwqf+0ako



少女「気になる巻物があったので貰っていきますねーーー」タタタタタ……


そうして少女は洞窟の奥へと消えていった。


勇者「くそっ泥棒娘め……まぁいいか。俺には分からねーし」



このとき勇者は、その巻物の知識さえ知っておけばと、すぐに後悔することになる。

……少しだけ。



勇者「……さて行くか」


こうして勇者はパルミアへ、少女は洞窟の奥へと進むのだった。






356: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/23(月) 00:01:06.68 ID:Qdollogko



10分後。

勇者は洞窟の外へ出たはいいものの、そこから一歩も進めずにいた。なぜなら……





勇者「……パルミアってどこだ……?」





勇者「うわああああ!パルミアの位置だけでも教えてもらえばよかった!!」

勇者「はあ……とりあえずヴェルニースに戻るか……」



とそこへ、まるで待ち伏せていたように勇者を見つけた冒険者が歩み寄る。



???「おやおや冒険者さん!洞窟から出るの遅いですよ!ラーメンだったらもうふにゃふにゃにのびてます!!」

???「あっ!もしかしてパルミアへの道が分からないんですか!?案内してあげましょか!?」





357: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/23(月) 00:04:04.56 ID:Qdollogko


勇者「……一度も抜かれてないはずだ」

???「当たり前です!脱出の巻物を読みましたから!」

勇者「……そうか、あれは洞窟から脱出できる巻物だったのか……」

???「それで、どうします〜?」

勇者「そっちこそいいのか?危ない旅になるかも知れないんだぞ?」

???「どんとこいです!あっ!」

勇者「……なんだよ」


少女「そのかわり、プチのお肉は優先的にくださいね!!勇者さん!!」



こうして、勇者と少女は共に旅をすることになるのだった。




363: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/26(木) 14:52:28.46 ID:VKpAJckKo



勇者と少女は、王都パルミアへ向かう……はずだったのだが。



ザアアアアアアアアア!!


勇者「のわあああああ!」バチャバチャ

少女「ひーーー!!」バチャバチャ



洞窟を離れた直後、二人は突然の雷雨に見舞われていたのだった。



勇者「くっそー!どうすりゃいいんだ!?」

少女「とりあえずさっきの洞窟に戻りましょうよ!」

勇者「いや!そのはずなんだがな!!」

少女「まさか……」

勇者「うるせぇ!!こんな雷雨じゃ方向感覚なんぞわかんねぇよ!!」


二人は豪雨のせいで前が全く見えず、適当に走り回っていた。






364: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/26(木) 14:54:22.91 ID:VKpAJckKo



少女「へっくし!」

勇者「おい、大丈夫か!?」

少女「…平気ですよ!慣れてますからー!」






―――うみみゃ






勇者「何か言ったかー!?」

少女「慣れてると言ったんですーー!勇者さんこそ大丈夫なんですかー!」

勇者「ああー!!こんなの平気……ぶえっくし!!」

少女「あーもー!!……あ!!勇者さん!!」

勇者「何だー!?」

少女「あれ見てください!明かりです!!」

勇者「でかした!!」





366: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/26(木) 15:00:15.77 ID:VKpAJckKo



少女「……なんだか奇妙な建物ですね……」

勇者「そうだな……へっくし!あー」

少女「…とりあえず入りましょう……といっても……入るところが無いんだけど……」


ウィーン


少女「ふおっ!!」

???「ひどい雷雨…って!あなたたちずぶ濡れじゃない!」


突然、壁と思っていた所から、緑色の軍服に赤のアーミーベレー帽を被った女性が現れた。


少女「何今のすごい!」

???「は?」

勇者「おい…何でもいいから入らせてもらおうぜ」

少女「あ、ああそうでした!」

???「えと、冒険者さんね?とりあえず中でゆっくりしていきなさいな」

勇者「すいません、お言葉に甘えます」






367: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/26(木) 15:02:56.54 ID:VKpAJckKo



???「あ〜、この雷雨で方向感覚がわかんなくなっちゃったのね」

勇者「そうですね。いやー助かりましたよこうしてブランケットも頂いちゃって」

勇者(この部屋はこの人のなのかな?棚と……よくわからん機械?があるだけだな)

勇者(それと隅にある鉄の棒っぽいのはなんだろう……あぶない気配がする……)


助けてもらい、ブランケットも貰っている以上あまり口に出さない勇者。


???「ふふふ……誰が無料だと言いました?」

勇者「……あー、いくらです?」ゴソッ


バックパックを開け、持ち金を確認する。


???「あ、お金はいいのよ?代わりに私のお願いを聞いてくれればいいの」

勇者「はあ……お願い…ですか」

???「そ。お願い」

勇者「えと、全然構わないんですけど、まずここってどこですかね?随分ヴェルニースとは違った雰囲気ですね」





368: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/26(木) 15:13:59.33 ID:VKpAJckKo



???「あー…あなたここ初めて?」

勇者「はい」

勇者(ここどころか全部初めてだよ……)

???「えっとね、ここはアクリ・テオラ。科学の街よ」

勇者「街ですか?街というよりハウス」

???「黙りなさい」

勇者「ドー…もすみません」


???「私はここの…そうね、科学者よ」

勇者「はあ……わかりました。じゃあ、科学者さん。話戻りますど、お願いってなんですか?」

謎の科学者「それは……あら?お連れの女の子は?」

勇者「……あれ?」






369: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/26(木) 15:27:29.14 ID:VKpAJckKo



ウィーン…ウィーン……

セールスマン「ちょっと困るよお嬢ちゃん……」

少女「だってこれ面白い!うぃーん!!うぃーん!」


ドアを開け閉めして遊んでいる少女の姿が映った。


勇者「……」

謎の科学者「……えっと」


勇者はやっぱり縁を切ったほうがよかったかなと本気で思った。


勇者「ちょっと待っててくださいね」

謎の科学者「はあ…」



「あ、君はこの子の連れかい?いい加減にして欲しいんだけど……」

「え、これ?1000金貨だが」

「……毎度」


「あははは!うぃーん!うぃー……あっ」

「いやあの…あはは……なんですかその紐……」

「なな何するんですか勇者さ、アン!」


謎の科学者「……」





370: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/26(木) 15:39:21.24 ID:VKpAJckKo



少女「……」

勇者「さっきの続きお願いします」

謎の科学者(ペットになっちゃったわね)


謎の科学者「ええと、リトルシスター……って知ってる?」

勇者「いえ」

少女「あ、私見たことあります!たしかビッグダディっていうすごく強い機械の肩に乗ってる小さい女の子ですよね!見た目アレですけど」

謎の科学者「(首に紐つけられてるのに元気ね)…その通り。……ちなみにその時あなたはどうしたの?」

少女「特に何も。アレって、こっちから何か仕掛けない限り何もしてきませんよね?」

謎の科学者「……そうよ。良かった」

少女「?」


謎の科学者「よく聞きなさい。もしあなたたちがいつかリトルシスターに出会ったら、あの子達に救いの手を差し伸べてあげて。見た目こそ化け物のように映るかもしれないけど、彼女たちがまた元の可愛らしい笑顔を取り戻せるように、私は研究を続けている。だから、お願い。この道具を使ってリトルたちを私の元へ運んで。あなたへのお礼は、いつか必ず。」


謎の科学者は紫色のボールを差し出した。





371: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/26(木) 15:45:46.85 ID:VKpAJckKo



勇者「これは?」

謎の科学者「私が開発した、リトル捕獲玉よ」

勇者「捕獲玉……」

謎の科学者「ああ、そんな物騒な物じゃないわよ?これを投げつければ、玉が壊れて中の気体がリトルの神経に作用、"敵"という概念を失くすの」

勇者(ずいぶん物騒な気がするがな……)

謎の科学者「そうすれば、おとなしくついてくるようになるわ。」


少女「……でもそういえば、リトルの肉って……」

謎の科学者「……そう……リトルたちを、終わりのない苦痛から解放するべきだという人もいる。でも大抵の人間はあの子たちの力が欲しくて殺すのよ。」

勇者「まてまて!それってどういう事なんだ!?」


少女「リトルシスターの肉…それを食べると……」

謎の科学者「そう、確かにリトルの肉は人の肉体を進化させる」

勇者「…それで狙う奴が居るのか……」

謎の科学者「ええ……それでも、私はあの子たちを救う別の道があることを信じているの。…そして覚えておいて。もしあなたたちがリトルの命を奪うようなことがあれば、いつかその酬いを受けるときがくるから。」






372: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/26(木) 16:10:37.49 ID:VKpAJckKo



謎の科学者「ああ、ちなみにその玉はリトル専用よ。リトル以外には何の効果も無いから」

勇者「……わかった。とりあえずそのリトルシスターを見かけたら連れてきたらいいんだな」

謎の科学者「そうよ」

勇者「ちなみに、そのリトルシスターを肩に乗せてる、ビッグダディ?ってやつは何なんだ?」

謎の科学者「…アレは言わば、リトルシスターと共生の関係にある機械よ」

勇者「へぇ……ん?共生なら別に放っておいてもいいんじゃないのか?」

謎の科学者「……確かに共生と言ったけど、その関係は崩れつつあるの」

勇者「……リトルシスターとビッグダディについて、もう少し詳しく頼む」


少女「これを解いてくれたら教えてあげなくもないですよ勇」

謎の科学者「分かったわ」

少女「……」





373: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/26(木) 16:19:43.03 ID:VKpAJckKo



リトルシスター。周囲から特殊な栄養素を溜め込む性質を持っている。故にその肉を食べると人の肉体に進化をもたらす。

ビッグダディ。リトルシスターを肩に乗せる機械。リトルシスターからその栄養素を貰い受け、駆動する。そのかわり、リトルシスターを誠実に守っている。


謎の科学者「ここで気を付けるのは、肉を食べると進化するという部分。"栄養素を溜め込んだ肉"ではなく、"栄養素を溜め込むその性質を持った肉"を食べることで進化できるの」


勇者「……読めた。言っていいか?」

少女「えっわかったんですか!」

謎の科学者「…どうぞ?」


勇者「さしずめ、その"栄養素"とやらが無くなってきたんだろ?"栄養素"が無くなればビッグダディは動けない。するとリトルを守る者が居なくなる。"栄養素を溜め込むその性質を持った肉"…という事は栄養素を溜め込んでいるいないに関わらず、単純にリトルの肉を食えばいい話だ」

謎の科学者「……」

勇者「そのリトルを守る機械が動かないなら、恰好の餌食だろうな。だからその前に保護する。そういう事だろ?」


謎の科学者「……大正解よ」






374: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/26(木) 16:31:39.74 ID:VKpAJckKo



勇者「分かった。協力しよう」

謎の科学者「……ありがとう。玉が無くなればまた来るといいわ。結構重いし、リトルはそんなに居るものじゃないから」


少女「あれ?でもさあ、ビッグダディはリトルを守ってるんでしょ?どうやってリトルを捕獲するの?」


謎の科学者「……アレに心は無い。ただリトルを守るという命令だけを忠実に守る、ただの機械。遠慮はしないで」

少女「力ずくって事か……でもビッグダディは滅茶苦茶強いって聞くんですけど」


謎の科学者「そうね、無理しなくていいわ。話を聞いてビッグダディと戦闘して返り討ちにあうなんてよくあることだから」

勇者「肉が欲しくて?保護しようとして?」


謎の科学者「……どっちもよ」





375: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/26(木) 16:56:37.54 ID:VKpAJckKo


ゴロゴロゴロ……


謎の科学者「…雷雨がひどいわ。今日はここで泊まっていきなさい」


ようやく話は終わったが外は雨、それに話し込む内に、とっくに日は落ちていた。日など見えないが。


勇者「……そうっすね。じゃそれもお言葉に甘えて」

少女「ベッドあるんですか?」

謎の科学者「案内するわ」


少女(ん?なんか嫌な予感)




的中。






少女「だからなんでダブルベッド……」






379: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/29(日) 14:17:14.07 ID:fwwsKA81o



勇者「おお、でけーベッドだ」

謎の科学者「あら?あなた達ってそういう関係じゃないの?」

少女「違っ!勇者さんも反論してください!」


勇者「ん、ああ…すまん、今日は疲れた…悪い、先に寝る……」ボフッ

少女「あーもー!」


謎の科学者「…そだ、お風呂入る?」


少女「あ、お願いします……ん?」

スルッ


少女の足元に黒い物体がすり寄っていた。


「みゃあ」


少女「うおわっ!」




380: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/29(日) 14:19:55.01 ID:fwwsKA81o



謎の科学者「あら、ふふっあなたも一緒に入りたいの?」

少女「…びっくりした……猫ちゃんか……あれ?この猫どっかで……」

黒猫「うみみゃぁー」

少女「この鳴き声……毛並の良い綺麗な黒毛……あのときの黒猫ちゃん?」


ヴェルニースの宿屋に住み着いていた黒猫。盗賊団の件があった時にどこかへ行ってしまったらしかった。


黒猫「うみみゃ♪」

謎の科学者「この子知ってるの?」

少女「はい、ヴェルニースの宿屋で見かけたんですよ。そのあといなくなっちゃったんですけど……こんな所に居たんですね」

謎の科学者「居たというか…この子が迷い込んできたのよここに。雷雨になる少し前にね」

少女「そうなんだ……もしかしてついて来てたのかな……ってそりゃないか!」

黒猫「うみみゃ?」

少女「ふふ、一緒にお風呂入る?」

黒猫「うみみゃぁ!」






381: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/29(日) 14:20:46.92 ID:fwwsKA81o


*ちゃぷっ*


謎の科学者「湯加減どうー?」


少女は部屋の隅にあるバスタブに使っていた。
顔が真っ赤なのはお湯が熱いからではなく……


少女「あ、いい感じです…けど…あの」

謎の科学者「どうしたの?」

少女「仕切りとか…無いんですか」


目線の先には、ベッドで寝ている勇者。


謎の科学者「無い!」

少女「ぐ……」


少女達の居る部屋はなぜかベッドと浴槽が一緒になっていた。
それというのも、勇者がアクリ・テオラで遊んでいた少女を縛るために使った紐のせいである。

少女の首につけられた紐の先は、勇者が下敷きにしていたのだ。
よって少女は一定以上の距離をおけず、なくなく部屋に付属していたバスタブに浸かる事になったのであった。






382: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/29(日) 14:21:20.93 ID:fwwsKA81o



少女「うう……起きませんように起きませんように……」ぶつぶつ…

黒猫「うみみゃ♪うみみゃ♪」チャパチャパ

少女「……猫ってお湯嫌いなもんだと思ってましたけど、そうでもないんですね」


少女は黒猫が溺れてしまわないように抱いて風呂に浸かっていた。


謎の科学者「大抵の猫は嫌いだと思うけど?」

少女「そうですか…ふふっ、君は風呂好きなんだね♪」ザパッ


少女は黒猫を正面に向ける。


少女「あ、女の子なんだ」


少女は黒猫の下腹部を見て、判断する。





383: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/29(日) 14:22:19.36 ID:fwwsKA81o




少女「ぅうん……」


少女は悩んでいた。どこで寝ればよいのかを。
勇者はダブルベッドの片隅で寝ているため、一応隣は空いている。

黒猫は風呂が終わり、少女に体を拭いてもらうのが終わるや否や、またどこかへ走り去っていた。
謎の科学者は「お楽しみに♪」と言ったまま自分の部屋へ戻ってしまっていた。

よってここには勇者と少女二人きり。勇者は既に睡眠中だが。

他の部屋にもベッドはあると科学者は言っていた。しかし首にかかっているこの紐が、それを許さなかった。



少女「……うう」ギシッ


恐る恐る勇者の隣に入る。ヴェルニースの宿屋では、勇者は床で寝てくれていたが、今回は全く違う状況なのだった。







384: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/29(日) 14:23:07.88 ID:fwwsKA81o


……


ムクッ

少女「……朝だ」


悶々と考え事をしているうちに、いつの間にか意識を失い、朝を迎えていた。


少女「ふあ……二回目かぁ……もう……ちょっとは意識してくれてもいいのに……」


ちらりと、隣で寝ている勇者の顔を覗く。





少女「……え」


そして少女は、ふざけている場合では無いと気づく。



勇者「……はぁ、はぁ……」



勇者の顔はほんのり赤く、荒い呼吸をしていた。






385: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/29(日) 14:23:40.73 ID:fwwsKA81o


謎の科学者「うーん、昨日の雷雨のせいかな……でもあなたも同じようにびしょ濡れだったし、こりゃあなたの方が馬…元気だったみたいね」

少女「ちょっと今馬鹿って言おうとしませんでした?」

謎の科学者「そんな馬鹿な」

少女「ぬぅ……」

謎の科学者「ま、あんな強風にずっと当たってたんなら無理もないやね」

少女「え?昨日ってそんなに風強かったですか?」

謎の科学者「……何言って……そういう事か。あんた、この人に感謝するこったね」

少女「え?……あ」


少女は、昨日勇者がいつも少女に対して少しでも風が当たらないよう風上に居た事に気づく。


少女「……ばか」


熱を発している勇者の顔を見て、少女の胸は熱くなった。





386: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/29(日) 14:27:56.90 ID:fwwsKA81o



パチッ

勇者「……」

少女「あ、起きた」

ムクッ

勇者「あー………くそ、風邪ひいちまったのか」


上体を起こした勇者は体の気だるさを感じ、自身の状況を把握する。


謎の科学者「もう…しばらく泊まっていきなさい。悪化されたら私がお願いした意味が無くなっちゃうわ」

勇者「いや、そういうわけにはいかない」ギシッ

スタッ

謎の科学者「ちょ、ちょっと!?」

勇者「これくらいはどうって事ないさ。外はまだ雷雨なのか?そんなに音は聞こえてこないが」

謎の科学者「えっと、嵐は過ぎて今は単なる雨が降ってるだけよ。でも本当にその状態で出発するの?」

少女「そうですよ勇者さん、あんまり無理しないほうが……」


勇者「書簡」


少女「…あ」





387: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/09/29(日) 14:31:02.69 ID:fwwsKA81o


謎の科学者「え?」


勇者「すみません、本来急いでパルミアへ向かう所だったんです。嵐が止んで進めるのなら、行きたいんです」

少女「そうでした……」

謎の科学者「えっと、そんなに急ぐの?」

少女「…はい」

勇者「お世話になりました。この恩は、リトルの件で返そうと思います」

謎の科学者「…ありがとう。本当に、無理しないでね…」

勇者「ええ、それでは。」ガサッ

少女「ありがとうございました!」ガチャッ


勇者と少女は荷物をとって、アクリ・テオラを出るのだった。





395: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 18:34:45.61 ID:2nq3Lgzao




時は勇者と少女が、ネフィア探索へ乗り出すべくヴェルニースを出発した時刻。

ヴェルニースの町は体の弱いザナンの皇子『サイモア』率いる軍に宿営所を提供していた。


一人の伝令兵が、報告すべくサイモアの居るドアの前に立つ。



伝令兵「サイモア様、酒場であの《白き鷹》を捕えたと、ロイター様はおっしゃられてますが」



サイモア「確かなのか?」ガチャ


安全確認もせず堂々とドアを開けた。確かにこの伝令兵の声は既にサイモアに記憶されているのだろうが、サイモアはザナンの皇子なのだ。安全確認もせずドアを開けたということは、その伝令兵を信用しているから…

ではなく。


その内容《白き鷹》の情報のおかげだった。


伝令兵「…昔の面影はあるのですが、風貌も違い、尋問をしても一言も……私は別人のように思えます…」

サイモア「ふふ、変わったか…そうだろうな。昔のままでいられるわけがない。……捨て置け」バタン


伝令兵は初めて、サイモアが笑った所を見たのだった。ゆえに返事が少し遅れてしまった。


伝令兵「……御意」








396: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 18:35:33.44 ID:2nq3Lgzao





サイモア「皮肉なものだ。ザナンを出て以来行方を捜させていたが、今になって見つかるなんて」


サイモアの側近、青い髪の青年ヴァリウスが答える。その風貌は……勇者が出会った緑の髪の男と似ていた。否、髪の色以外は全く同じ雰囲気を醸し出していた。


ヴァリウス「ザナンの白き鷹…今更あの男に何を期待しておいでで?」

サイモア「期待などしていない。ただこれから起こる喜劇の証人になってくれればいい。あの男がいないと、私の物語は完結しないのだから。」


サイモア「さて、そろそろジャビ王の所へ出発するか?」

ヴァリウス「残念ながら、嵐が来るそうです。出発するのは明日か明後日にしましょう」

サイモア「そうか……まぁ、1日や2日くらいどうってことないな」






サイモア「世界の終わりは、もうすぐそこまでせまっているがね」





…ザナン軍がヴェルニースを出たのは、嵐が止んだ朝だった。






397: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 18:36:13.97 ID:2nq3Lgzao



そして現在。


サアア……


少女「ん〜!蒸れるー!」


二人はアクリ・テオラで買ったローブで小雨を凌ぎつつ、勇者と少女はパルミアまであと少しの所まで来ていた。


勇者「ちゃんと深くかぶっとけよ、風邪ひくぞ……コホッ、俺みたいに」

少女「どーせバカなので風邪ひきませんよーだ!」

勇者「そんなこと言ってないが……」

少女「……パルミアについたらちゃんと、休んでくださいよ?」

勇者「ああ、そうするよ」


少女「…そだ!魔法使いって誰です?」

勇者「え?魔法使い?」


――『…すまんが、その状態じゃ助けられないぞ?魔法使いが居りゃ望みはあったが』

勇者と瀕死の男との会話を思い出す。





398: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 18:37:57.49 ID:2nq3Lgzao



少女「勇者さん言ってたじゃないですか。瀕死のあの人に向かって、魔法使いが居たら望みはあったって」

勇者「そんなこと言ってたっけ……?」

少女「言ってましたよ?勇者さんの知る魔法使いってすごいんですね、あの状態から助けられるなんて」


勇者「魔法使い……魔法使い……」


目をつぶって記憶と辿る。…もっとも、その記憶が喪失しているからこそ今の今まで困っているのだが。

しかしきっかけというのは重要だ。些細なことでも……


――『私は魔法使いよ。変なことしないでね?』

――『……よろしく、勇者さま』


記憶を呼び覚ますトリガーとなる。



勇者「……そうだ、俺が旅をしてきた仲間に魔法使いが居たんだ」



勇者は記憶の欠片を拾った。





399: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 18:57:00.84 ID:2nq3Lgzao




少女「旅?」

勇者「ああ、俺は前にもこうして旅をしてきた……していたんだ」

少女「ふむふむ」

勇者「そのパーティーの一人に、魔法使いっつーのが居たはずだ」

少女「パーティーの一人って事は、他にも居るって事ですかね?」

勇者「……そう、そうだ……確か……あと二人……居たはずなんだ」

勇者「誰だ……何故俺は思い出せない……げほっ!げほっ!」

少女「……無理しないでください。いずれ必ず、全部思い出しますよ」


勇者「……さんきゅな」ニコ

少女「っ!」カアア…

勇者「あれ?顔赤いぞ?もしかして風邪を…」

少女「ひいてませんってば!っもう!いきますよ!!」スタスタ





400: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 19:08:28.08 ID:2nq3Lgzao



熱がこもっているからと自分に言い訳して、足を速める。


勇者「ぬ……」スタスタ


それに合わせて、勇者も歩幅を大きくする。


勇者「……そういやパルミアまでどんくらいだ?っとわぁ!」ドンッ!

少女「…………」


しかし少女は、急に足を止めるのだった。思わずぶつかる勇者。


勇者「おい急に止まるなよ……どした?」


少女は目の前を凝視して、動かない。


否、睨みつけている。

二つの人影を。





401: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 19:10:13.34 ID:2nq3Lgzao



少女「……」チャキ


少女は無言で、背中に携えている大剣に手をかける。視線は、相手から外さない。


勇者「おいどうした!?」

少女「敵ですよ勇者さん。そんなことも分からないほどやられてます?」

勇者「な……」


先ほどとは一変した少女の態度に、勇者は既視感を覚える。


勇者「つっても……どう見たって人なんじゃ……!」

少女「んなわけ無いじゃないですか。あの青髪と、緑髪……そして雰囲気……」




少女「エレアです」ギロッ!





402: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 19:10:39.17 ID:2nq3Lgzao




勇者「あの"異形の森の民"…か?」

勇者「って待てよ、こっちには気づいてないじゃないか!後ろから切りかかるつもりか!?」

少女「……勇者さんがどんな世界に居たかは知りませんが……正々堂々なんて、アリーナでの決闘でしかあり得ませんよ……!」ダッ!

勇者「おいっ!」

少女「……お父さんの、仇ッ!!!」タタタタタ!


走りながら大剣を構え、父の仇である"エレア"を討とうとする。


???「……敵か!?」バッ!


冷静さを失い、一直線に走る少女の殺気と足音に当然二人は気づく。

こちらを向いたその顔。


勇者「あ、あいつらは!!」


勇者は知っていた。





403: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 19:13:47.95 ID:2nq3Lgzao



ロミアス「やれやれ、困ったものだな……どうするラーネイレ?」

ラーネイレ「正当防衛よ、悪く思わないで」スラ


またか、という顔をしながら素早く腰の短剣を抜き、向かってくる敵に対して臨戦態勢をとるラーネイレ。


その二人はかつて、勇者を助けてくれた恩人だった。


勇者「く、くそっ!!」


ロミアスとラーネイレは、あの倒れていた自分を介抱してくれた。

少女は、ボケたりツッコミしたり…明るく元気に、一緒に旅をしてくれた。


その恩人と恩人が。




殺しあおうとしている。




404: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 19:25:22.97 ID:2nq3Lgzao



ロミアス「そっちはまかせたラーネイレ」バッ!


ロミアスは素早くその場を離れ、少女の片割れ…つまり勇者に向かって弓を番う。
フードを深く被っていたため、かつて自分たちが助けた勇者だと気づくことは出来なかった。


勇者「やめ……げほっ!!」


風邪のせいで叫べない。



少女「わあああああ!!」タタタタタッ!

ラーネイレ「悪く思わないでね」ユラッ


勇者「!!!」


染みついた元の世界の経験則から感じ取ってしまった。

対峙する二人の強さが。





圧倒的に、ラーネイレの方が強いという事。


そしてその眼は……


少女を殺す眼をしている事を。






405: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 19:32:48.77 ID:2nq3Lgzao



勇者「っ超加速呪!!!」ポウッ!

ロミアス「何だ!?」バシュッ!


ロミアスは矢から手を離し、弓が矢を打ち出す。しかしその矢は空を切っただけであった。


ロミアス「ッ!ラーネ……」


ロミアスは、ラーネイレの方に少女の片割れが向かった事を伝えようと顔を向けた時には……





既に終わっていた。







406: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 19:34:18.66 ID:2nq3Lgzao




少女とラーネイレが衝突、少女は大剣を振りかざし、ラーネイレは大振りな攻撃の隙間から少女の首を狙った………



瞬間。



ガキィン!!!


少女「いっだ!」

ラーネイレ「っっ!?」


少女の大剣はいつの間にか宙を舞い、ラーネイレは短剣を持つ手を勇者に握られ、そのまま首元に短剣を押し付けられていた。




勇者「二人とも動くな!!!」


ロミアス・ラーネイレ「「っな!!」」


普段の温厚な勇者の眼ではなく……目が合えば思わず怖気づいてしまうような、鋭い眼をしていた。



……ザクッ!!


ようやく落ちて地面に突き刺さった少女の大剣は、今までの滞空時間からかなり打ち上げられていた事が分かる。





407: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 20:19:04.87 ID:2nq3Lgzao




ロミアス「っ貴様!!」バッ


即座に弓矢を勇者に向ける…が、ラーネイレの首元に短剣が突きつけられている事と……
フードが取れてあらわになったその顔を見て、踏みとどまる。


ロミアス「……君は……」

ラーネイレ「あなたは……!」

勇者「どーも、また会ったね。こんな形で会うとは思いもよらなかったけど。」

ラーネイレ「……離して、くれるかしら」


未だ首元に突き付けられた短剣からの解放を、願う。


勇者「……」パッ


短剣ごと握られていた手をほぐして、短剣をしまいながら訴える。


ラーネイレ「……でも、襲いかかってきたのはそっち、こっちは正当防衛だとは思わないかしら?」チラ

少女「……」


茫然自失としている少女に目線を向ける。




408: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 20:27:29.31 ID:2nq3Lgzao



少女「どう、して……」


蹴り上げられてジンジンと痛む右手を庇いながら、少女はぐるぐると考えていた。




何故、勇者がエレアなんかと話をしているのか。




勇者「……すまん、この人らは俺の命の恩人なんだ。雷雨の中倒れていた俺を安全な洞窟まで運んで、介抱してくれたんだよ」

少女「そん、な」

勇者「まさか、エレアだとは思わなかったけど」チラ


ロミアス「……黙っていた事については、謝るさ」

ラーネイレ「……私たちはこの通り、エレアというだけで迫害されてきた。だからいつもは隠していたのよ」







409: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/10/22(火) 20:39:39.44 ID:2nq3Lgzao



勇者「こいつがエレアを憎むのは、異形の森から発するエーテルで、こいつの父が死んだからなんだよ」

ラーネイレ「……」

勇者「なあ、エレアとエーテル、関係あるのか無いのかハッキリしてくれるか?」


少女「っ何言ってるんですか!!エーテルはエレアがっ」

勇者「クレア!!」

少女「っ!」ビクッ!


ラーネイレ「……わかった。本当の事を言いましょう」

ロミアス「ラーネイレ!?」

ラーネイレ「黙って、ロミアス。この人達には真実を知っていてほしいと思うの」





415: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/12/18(水) 14:37:44.15 ID:9fRBAiYVo



ラーネイレ「まず大前提として信じて欲しい事がある」



ラーネイレ「私達エレアは……レム・イドなんて滅ぼしていない」



少女「馬鹿な!」

勇者「……」ペシッ

少女「あたっ…」


チョップをして黙らせる。
しかし、それでも発言する。今度は感情を抑えて。


少女「……では何故、エーテルの風なんて起こしているの?」

少女「エーテルを利用し、他の種族を滅亡させようとしているのは何故?」


ロミアス「ふん、これだから…」

ラーネイレ「ロミアス、刺激させないで!」

ロミアス「……」





416: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/12/18(水) 14:38:12.59 ID:9fRBAiYVo



ラーネイレ「私達エレアはね、"何もしていない"」



少女「っ!!!!」



どうしてそんな事が言える。異形の森に住みエーテルを発生させておきながら――

父を殺しておきながら――どうしてそんな事が。

また怒りでどうにかなってしまいそうな所をどうにか抑える。



ラーネイレ「エレアは、ただ住んでいるだけ。エーテルに対して抵抗があるだけ」

ラーネイレ「ただ、それだけ。」


少女「ふ、ふ、ふざけ――」

ラーネイレ「そもそも!」

少女「っ……」





417: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/12/18(水) 14:38:54.25 ID:9fRBAiYVo



ラーネイレ「……エレアがエーテルを発生させたなんて、どこに確証があるというの?」

少女「そんなの!ザナンの皇子、サイモア様が」

ラーネイレ「あなたはエレアがエーテルを発生させようとしている所を見たの?」

少女「な…」

ラーネイレ「エレアが、エーテルの発生源である異形の森の民だからというだけで掃討されようとしている」


ラーネイレ「もう一度言う。エレアはただ単に、エーテルに抵抗を持っているだけの種族なのよ」

少女「そんなの――」

ラーネイレ「信じて欲しい」


少女「……いきなり襲ってくるエレアは?」

ラーネイレ「……元々エレアは非戦的な種族。そういう好戦的なエレアは、酷い仕打ちを受けてきた恨みで動いているに過ぎないのよ」

少女「……こっちから仕掛けたとでも言いたいの」


ラーネイレ「その通りよ。私達は普通に過ごしてきただけなのに、勝手に決めつけ、勝手に同胞を殺した」





418: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/12/18(水) 14:39:47.64 ID:9fRBAiYVo


ラーネイレ「エレアが非戦的でなければ、とっくに戦争になっているわ」


少女「……どうやって、信じろと」

ラーネイレ「……」スッ


ラーネイレは収めた短剣を再び抜き――


少女「何を……え」


刃先を自分の眼の前数ミリの所に置く。


ロミアス「ラーネイレやめろ!!」

勇者「お、おい!?」


ロミアスと勇者の静止を聞き流し、少女へ近づく。


少女「な……」

ラーネイレ「これが覚悟。私の本気。あなたが私の腕を少しでも押せば、私の眼は潰れる」

少女「ちょっ…と」

ラーネイレ「どうぞご自由に。私は片目を失うかわりに、あなたの信用が欲しい」





419: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/12/18(水) 14:43:27.45 ID:9fRBAiYVo


ラーネイレ「……なんなら、両目でも構わない。光を失っても、希望の光は見失わない」


勇者「何もそこまで…!」

ロミアス「やめろラーネイレ!そんな事になったら俺はそいつを攻撃するぞ!!」バッ!

勇者「!!」バッ!


再び矢を番い力を込める。
それに対し勇者もまた、戦闘態勢を取る。


ラーネイレ「お願い。信じて……」


片目は短剣に隠れて見えないが、もう片方の目はラーネイレの心の中を映し出すように

真っ直ぐ、ひたすら真っ直ぐに少女を見つめていた。


少女「……」スッ


少女は、短剣を持つ手に向かって手を伸ばす。







420: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/12/18(水) 14:47:12.84 ID:9fRBAiYVo






ラーネイレ「…え?」




ラーネイレは、"両目"で少女の顔を見る事ができていた。

少女の手は、目を貫かんとする短剣を持つ手を掴み、

やさしく下へ降ろしていた。



少女「……分かった。もういいよ、信じるから……」

ラーネイレ「……ありがとう」


ロミアス「…はー…」

勇者「…ふぅ」


二人の緊張は解け、勘弁してくれと言わんばかりに脱力する。





421: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/12/18(水) 14:50:40.78 ID:9fRBAiYVo


少女「……あなたの言っていることが本当なら、サイモア様の言っていることが嘘だというの?」

ラーネイレ「……そうよ」

少女「それこそ、サイモア様は何か証拠があってエレアを――」

ラーネイレ「そもそもあの人の演説、本当に聞いたことあるの?」

少女「や、それは……あまりに有名でよく聞く事だから……」


ラーネイレ「まあ私はエレアだから先入観はあったかもしれないけど、そういうの抜きで私が初めて見た時……そうね…」

ラーネイレ「ただ音を発しているだけの言葉、そんな風に感じたわ」

少女「……本心では無いって?」

ラーネイレ「…多分ね。」

少女「そんな事分かるの?」

ラーネイレ「まぁ、人の嘘っていうのは、よく注視すれば分かる事だからね」

勇者「じゃあ演説の時に違和感を覚えた奴って、それなりの実力者なら結構いたりするんじゃ?」

ラーネイレ「…そうかもしれないわね」





422: ◆0n5oW5RoIa9K 2013/12/18(水) 15:25:24.49 ID:9fRBAiYVo




ラーネイレ「これから私達はパルミアの王・ジャビ王に、エレアの民とシエラ・テールのために異形の森の使者として力を貸してくれるよう頼みに行くんだけど」


ラーネイレ「…よかったら、ついてくる?」

少女「……行きます。いいですよね?勇者さん」

勇者「ああ。ちょうどパルミアの王には用事があるところだしな」


ロミアス「用事?」

勇者「ああ。とある洞窟で、パルミアの斥候にこの書簡を王まで届けてくれと頼まれたんだ」

ラーネイレ「…興味深いわね」

勇者「シエラ・テールの危機を防ぐために…って言ってたかな」


ラーネイレ「シエラ・テールの危機……その人は何を知ったのかしら……それ、見せてくれない?」


勇者「うーん……破って開くタイプだから、そうすると王の信用を得られなくなるぜ?」

ラーネイレ「……そうね、じゃあお互いに、ジャビ王との謁見に同行しましょう」



こうして、ロミアス・ラーネイレと共にパルミア王宮・ジャビ王の下へ向かう事になった。




429: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:21:25.33 ID:2advZFS6o



ー同刻ー



――場所はパルミアから東へ60マイルほど離れた所。ちらほらと雪が舞う。

――人が通るゆえに草の生えていない道より、さらに外れた平野。
――そこから見えるさらに東の山は真っ白で、ここが地形の変わり目であることを醸し出している。


その平野に洞窟が顔を出している。ネフィア。自然発生した魔物の巣窟である。



そしてその洞窟から出てきたとある集団が、荷車に戦果を積み込んでいた。




盗賊団頭領「流石名声高い冒険者。あのビッグダディを捕えるなんて、雇った甲斐がある」

ビッグダディ「ォオオ……オオオオ……」


ロープで縛られた金属の塊が、荷車の上に鎮座していた。


高名冒険者「まあな。それでも脆弱のポーションと麻痺のポーションをかけ続けてないとロープなんぞ引きちぎられるから気をつけろよ」

盗賊団員A「了解っす」


荷車の中には大量のポーション。盗賊団員は一定間隔でビッグダディにポーションを浴びせ続けていた。






430: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:22:43.37 ID:2advZFS6o



高名冒険者「それより分かってるだろうな?」

盗賊団頭領「ああ……おい!」

盗賊団員B「へい!……どうぞ!」ジャラッ

高名冒険者「…よし、ちゃんと5万金貨あるな。それと……」

盗賊団頭領「分かってるって」グイッ!


リトルシスター「…Mr.……Mr.Bubbles……動、いて、お願い……」ブツブツ


盗賊団の乱暴な扱いに何の抵抗もしない…いやできない、この小さな少女がリトルシスター。
勇者達が依頼された保護の対象だ。


高名冒険者「あれ、まだ生きてるのか」ザクッ!

リトルシスター「死、死にたくない……いやぁ…ぁ……」


躊躇なくリトルシスターの胸にナイフを突き立てる。
既にいくつものリトルシスターの血肉を食らってきたこの冒険者に、この行動はもはや作業になっていた。


ビッグダディ「ォォオオオオオ!!!!オオオオオオオオ!!!!」ガチャガチャガチャ!!


ビッグダディが怒り狂っているが、どうしようもなく雑音を響かせるだけだった…。


盗賊団頭領「うわっ!殺すなら言ってくれよ!血が付いちまった……」

高名冒険者「はは。…俺はあんたらにビッグダディの生け捕り、報酬はリトルシスターと金貨…これで依頼完遂かな」

盗賊団頭領「いやー、ある貴族がビッグダディを欲しいっつーもんだからねぇ…ま、あんがとさん」





431: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:23:30.98 ID:2advZFS6o



盗賊団頭領「いやしかし、あんたが強い理由ってのがリトルシスターの乱獲って、ファン減るんじゃねぇのか」

高名冒険者「……」

盗賊団頭領「有名なアンタがこんな裏稼業してるとわかればどうなるか……」


高名冒険者「死にたいのか?」


盗賊団頭領「……わ、悪い。俺たちゃアンタみたいな奴にしか依頼なんてできねぇから、これからもよろしく頼むぜ」

高名冒険者「ふん、まあ困ったときはお互い様だな。裏の顔がバレそうな時にゃ、逆にあんたらに暗殺を依頼することもあるしな」

盗賊団頭領「はっは、違いねぇ」






盗賊団員C・D「…誰だ!!」

盗賊団頭領「ん?」



見張りをしていた盗賊団員CとDが少し離れた木の陰に人が隠れていたことを発見する。
……というのも、その者が何故か自分から身を現したからだった。




432: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:24:09.13 ID:2advZFS6o


高名冒険者「……あらら」


「……」


フード付きローブに身を包んでいて、顔は見えない。
しかもそのローブは身の丈に合っていないようで、余った袖は腕を完全に隠し、裾は大分地面を擦っていた。



高名冒険者「だっぼだぼだなぁ……小せぇ……身長150冖気い鵑犬磴覆い?子供?」

盗賊団頭領「てか見られちまったな…どうする?俺らは別に気にしないが、あんたは名声に響くんだろ?」

高名冒険者「とか言いながら始末報酬もらおうとしてるだろ。気にしないとか嘘くせぇ、どうせ捕まえるくせに」

盗賊団頭領「はっは、バレバレだな……うおっ!!」


ビュウウウゥゥウ!!


突如強風が吹き荒れる。地形の境界ではよくあることだ。


……パサッ


しかしこの強風で、盗賊団を見ていた人物のフードが外れ、顔があらわになった。






433: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:24:39.14 ID:2advZFS6o



盗賊団員C「おおっ!!女だ!!!」

「……」


小柄な少女は完全な敵意を持って睨み付けている。が、盗賊団は興奮して意にも介さない。


高名冒険者「あーあ、絶対に捕まえるだろ……ん?」

盗賊団頭領「当たり前だ!はぁああどうしようか、犯そうか売ろうか……」

盗賊団頭領「まあとりあえず……捕まえろ!!!」

盗賊団員C・D「よっしゃあっ!!!!」ダッ!




盗賊団員CとDが小柄な少女に襲い掛かる。





高名冒険者「………………待てッ!!!!」


……完全に相手を見誤っていたことを認識したのは、この冒険者だけだった。






434: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:25:36.38 ID:2advZFS6o



――おかしい。この距離だと声も聞こえるはず。しかもリトルシスターを殺害した所も見られている。






――何故逃げない。





――さらに盗賊団は見逃していたが、先ほどの強風であらわになったのは顔だけではない。

――脚が見えた。しかし重要なのはそこではない。その脚と一緒に見えたもの。

――鞘。それも両側。

――つまり、双剣。



――そして、明らかな敵意。




その不安は、的中した。





435: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:26:04.05 ID:2advZFS6o


小柄少女「……」バサッ!!


盗賊団員CとDが目前まで迫った時、少女はローブを投げつけた。


盗賊団員C・D「うわっ!なんだこの……」


視界を遮られた二人はそのローブをはたき落とす……が、十分すぎる隙だった。


ズンッ!!!


盗賊団員C「あがっ!!!」

盗賊団員D「……う、そだろ」


既に後ろに回り込んでいた少女は、いつ抜いたか分からない二つの剣を

無慈悲に、リトルシスターにやったように、



貫いた。







436: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:26:30.37 ID:2advZFS6o



ズボッ!!

ドサッ……


小柄少女「……」シャッ!

ビチャッ!


剣をすぐに抜き、付着した血を払うさまは、手慣れた暗殺者の様。


盗賊団頭領「な…な……」


ようやく全身が目に入る。

数々の行商人を襲い色んな着物を見てきたが、今までで見たことの無い服装をしていた。
だがかなり動きやすそうであることは分かる。それはまるで絵本に出てくる――

――勇者のようだった。






437: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:27:07.86 ID:2advZFS6o



小柄少女「……」スタ、スタ


次はお前だというオーラを出しながら、盗賊団員に近づく。


盗賊団員B「こ、この野郎!!」スチャッ!


パンッ!

ビシッ!

小柄少女「…!」ピタッ



盗賊団員が取出し、撃ったのは拳銃。引き金を引くだけで簡単に命を奪える代物。



だが。



焦りから初弾を外してしまったのはミスだった。





438: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:27:35.28 ID:2advZFS6o


小柄少女「飛び道具…?へぇ」


この少女、拳銃を知らなかったのだ。ゆえに初弾だけは絶対に当てるべきだった。



小柄少女「……ふふ」ダッ!

盗賊団員B「う、うわああああ!!」パンッ!パンッ!!


シャッ!シャッ!


少女は超スピードでジグザグに走り徐々に近づく。
かろうじて目では追えるが、拳銃を向ける頃には既にそこにはいない……

やはり、初撃が盗賊団員の運命を分けた。


小柄少女「当たらないね」ザンッ!!


…ボトッ

盗賊団員B「うっぎゃあああああああああああ!!!!!」


拳銃を落とす。


腕ごと。





439: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:28:07.41 ID:2advZFS6o



盗賊団員A「ひ、ひいいいいいっ!!」


ビッグダディにポーションをかけていた盗賊団員は荷車から飛び降り、そのまま逃げ出した。


小柄少女「……」スッ


特に追いかけるわけでもない。しかし、逃げる盗賊団員に向かって手をのばす。


小柄少女「……魔弾」ボッ


ドゴォンッ!!!

盗賊団員A「ぐぇあっ!!!」


見逃す事は無かった。

だがこの隙を狙って――


盗賊団頭領「らあっ!!」ブンッ!


戦斧を少女に向かって振り落とす。
かなり重い武器だが、筋肉をつけている盗賊団頭領にとっては扱いやすい自慢の武器だ。





440: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:31:19.59 ID:2advZFS6o


―しかしこの少女にとっては


小柄少女「ふっ」ひらっ


ザンッ!


盗賊団頭領「っぎぃぃいいああああ!!」


振り落ちるまでに脇腹を斬りぬけるほど、鈍すぎる攻撃だった。



高名冒険者「……な、なんなんだこいつはっ!」


この一連の間に、結構な距離をとり、帰還の巻物を起動させていた。
発動するのには時間がかかるが、なんとか時間さえ稼げばこの場から脱出できると踏んだ。

やはり堕ちても冒険者、格の違いはわかってしまうのだ。


――圧倒的に、上だと。




441: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:31:46.30 ID:2advZFS6o


リトルシスター「……ぅ……」

小柄少女「……!」スッ


少女は足元に倒れて血を流しているリトルシスターを抱きかかえる。


リトルシスター「Mr.Bubbles……」


意識があった。しかし既に助からない状態であることは明白だった。


小柄少女「……」ギシッ


少女は荷車の上の物体がリトルシスターと親密であることを勘で理解し、リトルシスターをビッグダディの前へ移動させる。


リトルシスター「Mr.Bubbles……ごめんなさい……」

ビッグダディ「ォォォォォ……ォォォォォォォ……」

小柄少女「っ……」


最期の会話を交わしているということは、なんとなくではなく確実に分かる。
それほどに会話の哀悼を感じさせた。





442: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:32:17.76 ID:2advZFS6o


リトルシスター「………ありがとう」


一番最後に少女に向かって礼を言って、絶命した。


ビッグダディ「オオオオオオオ!!」

小柄少女「……悔しい?」

ビッグダディ「オオオオオ!!」

小柄少女「……魔法使いさんほどじゃないけど……“解呪”“退痺”」ブゥン

ビッグダディ「オオオオオ!!!」ブチブチッ!!


ポーションの効果を打ち消す事に成功。当然力が戻ったビッグダディの怒りの矛先は当然――


高名冒険者「うっ……だ、だがビッグダディならっ」


この冒険者はビッグダディよりは強い。でなければビッグダディを捕えられるはずがない。

――そのままのビッグダディだったなら。





443: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:32:43.18 ID:2advZFS6o


小柄少女「“加速付与”“烈撃付与”」ブゥン!

ビッグダディ「オオオオオオオッ!!」ダッ!!!


ビッグダディの素早さが格段に上昇し、薄青いオーラを纏う。


高名冒険者「なっ速……」

ビッグダディ「オオオッ!!」ブンッ!


ドゴォン!!!


急速に間合いを詰められるが、間一髪で"直撃"は免れた。

…が、少女の支援魔法により上昇した攻撃は、地面を軽く抉り、石つぶてが冒険者を襲う。


高名冒険者「ぐああっ!!」どさっ!


体勢が崩れる。それをビッグダディは逃さない。


ビッグダディ「オオオオオオオオ!!!!」グワッ!

高名冒険者「帰還しろよっ!!早く早く早く早……」





―――グシャッ



バシュンッ

今更になって帰還の巻物が発動。死体だけが町へ転送された……






444: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:33:14.14 ID:2advZFS6o







小柄少女「お墓、こんなのでいい?」

ビッグダディ「オオォ……」

小柄少女「いい…のかな」


割と意思疎通できるものだ。


小柄少女「……じゃね。私、探してる人いるから」


その場を去ろうとする。しかし…


ガシャッガシャッ


小柄少女「……つ、ついてこられてもなあ……」

ビッグダディ「ォォオオ!」ガシャ

小柄少女「……え、乗れって?」


大きな手のようなものを差し出され、そう理解する。


ビッグダディ「オオオ!」

小柄少女「……じゃあ」スッ





445: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:33:42.56 ID:2advZFS6o



ぐいっ!すとんっ


小柄少女「おお、高い」

ビッグダディ「ォォオオオ!」


肩に座らされる少女。優しい生き物なんだと感じる。


小柄少女「お供してくれるの?」

ビッグダディ「ォォオ!」

小柄少女「……ありがとう。よろしくミスターバブルス……だよね?」

ビッグダディ「オオォ!」

小柄少女「……ふふ」




少女は人探しを再開する。



――緑色のツインテールをなびかせて。






446: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/01/05(日) 14:34:11.41 ID:2advZFS6o

*保存*




451: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/08(水) 18:31:52.94 ID:YgTyOgWZo

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455: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 15:09:25.35 ID:tIi6w1gdo



ーパルミアー


ガードA「身元確認急げ―!」

ガードB「うわ、ぐっちゃぐちゃだな……うっぷ」

ガードC「とりあえず市民の目に入らないようにしないと……」

清掃員「……帰りてぇ」



勇者「なんか慌ただしいな……」

少女「そうですね…何かあったのかな」

勇者「聞いてみるか?すいま…ごほっ!」


先ほどの戦闘により、勇者の風邪が悪化していることは明らかだった。


少女「大丈……」

ラーネイレ「本当に大丈夫なの?」


ラーネイレに先を越されてしまう少女。


勇者「んあ、気にしないでくれ……ありがとう」

ラーネイレ「ならいいけど」


少女(なんか、むかむかする……)






456: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 15:13:51.75 ID:tIi6w1gdo




少女「あの!」

ガードA「…なんの用だ?」

少女「何かあったんですか?」

ガードA「……死体だよ、見ない方がいい。原型を留めてなか……おえええ!!!」ダッ!

勇者「…物騒だな」

ラーネイレ「どの町にも危険な人物は居るものよ……気を付けてね?」

勇者「ああ……にしても、そんなに姿隠さなくても……」


そういうラーネイレとロミアスは、正面からよく見ないと顔も見えないようにフードを深く被っていた。


ロミアス「どこぞのお嬢さんみたく、エレアというだけで襲われかねんからな」

少女「なっ…」

ラーネイレ「ロミアス!」

ロミアス「事実だ」

勇者「ちょ、ストップストップ!」


もしかしてこのロミアスという男は、すごく扱いにくい性格の男なのではと思う勇者だった。





457: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 15:23:35.52 ID:tIi6w1gdo



勇者「あ、そう!そういえば俺に、国に利用されるって言ってなかったか?」


なんとか話を逸らす。


ラーネイレ「そうね…パルミアなら大丈夫よ。いえ、パルミア以外信用しないで。特にザナンは。」

勇者「……パルミアに対しては好意的なんだな」

ラーネイレ「…そうね。ジャビ王は……昔から良くしてくれていたから」


ラーネイレは哀愁ある記憶を懐かしみ、曇った空を仰ぐ。


ラーネイレ「私は幼いころから、友好の使者としてパルミアに訪れていたの」

ラーネイレ「だからジャビ王は少なからずエレアに対して理解してくださっている」

ラーネイレ「…実際、あの方がヴィンデール掃討に反対しているからこそ、エレアはまだ存続できている」

少女「ジャビ王が…ヴィンデール掃討に反対?」

ラーネイレ「ええ。ジャビ王だけは私たちの事を信じてくれている。だから私たちもそれを裏切りたくないから、エレアの真実を伝えようと躍起になってるの」



ロミアス「それももう限界だがな」

勇者「……どういう事だ?」





458: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 15:30:42.20 ID:tIi6w1gdo



ラーネイレ「イルヴァの東部に位置するイェルス国と、イルヴァの南部に位置するエウダーナ国が戦争しているのは知っているわよね?」

少女「まあ…」

勇者「俺は初耳だが」

ラーネイレ「でも今は停戦状態で、二大国間に歯止めをきかせているのがこのパルミア国」

ロミアス「三竦みとなっているからこそ、未だ戦争は再開されていない」

ラーネイレ「そう。ただ……ヴィンデール掃討の問題だけは、共通してどの国もザナン皇子の論に賛同しているの」

ラーネイレ「特にヴィンデールの森がすぐ東にあるイェルス国はね」

少女「つまり、パルミア国がその問題に対して異論をたてたら…」

勇者「なるほどね、パルミアは諸国を敵に回すことになる……」

ロミアス「ああ。様々な国から集中砲火など受けたらひとたまりもないだろう」

勇者「……パルミアが滅ぼされ三竦みが解かれれば、この世界はまた戦火にまみえるというわけか」

ラーネイレ「その通りよ。そうなる前にヴィンデールの森の真実を示せればいいんだけど……」





459: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 15:46:51.05 ID:tIi6w1gdo


勇者「それでその、ヴィンデールの森の真実が明らかになったとして……どうやって国々に伝えるんだ?」

ロミアス「それで、これからジャビ王のところへ行って、まあ、演説だな。そういう場を設けて欲しいということだ」

少女「……そこらへんで勝手に演説すればいいんじゃ」

ラーネイレ「私たちはエレア。そんなの信じてくれるわけが無いわ……」

ロミアス「だから、ジャビ王公認の下で演説できれば、ちょっとは信憑性が増すというものだ。無駄かもしれないが。」

ラーネイレ「一言余計なのよロミアス」





勇者(待てよ?確かあの男……)


――瀕死の男「二つの大国の衝突を……シエラ・テールの危機を防ぐために……」


勇者(もしかしてこの書簡……めちゃくちゃ重要なんじゃ……)

勇者(…とにかく、早くジャビ王に会わないとな)



そうこうしている間に、王宮の前にたどり着く。
門は無いのだが、ここから先は王宮であるという雰囲気を醸し出すように、二人のガードが道を挟んで立っていた。






460: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 16:11:52.97 ID:tIi6w1gdo



勇者「で、どうやって謁見するんだ?」

ラーネイレ「簡単よ、あのどっちかの門番に申し込んでOKされれば謁見できるわ」

勇者「へぇ」

少女「じゃあ……」


片方は強面の老ガード、もう片方は若く真面目そうな青年ガードだった。


少女「う…怖い……あっちのガードさんに話しかけましょう……ってぇ!?」


しかしラーネイレは迷うことなく老ガードの方へ近づく。


勇者(だ、大丈夫なのか……?)


ラーネイレ「あの」

老ガード「…何用だ?」





461: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 16:20:50.12 ID:tIi6w1gdo



ラーネイレ「……」パサッ


深く被っていたフードを取り、顔をあらわにする。
すると老ガードの強面が破顔し……


老ガード「……これはこれはラーネイレ殿。またジャビ王への謁見ですかな?」ニコ

ラーネイレ「ええ」

老ガード「しばらくお待ちを」スタスタスタ…


奥に引っ込む老ガード。
勇者と少女は老ガードのギャップに少し驚く。


少女「おお……」

勇者「見かけに騙された……顔見知りなのか?」

ラーネイレ「まぁ、パルミアに来てジャビ王に謁見するまでに、必ずガードには顔を見せないといけないから」

ラーネイレ「何回も来るうちに、あのガードには覚えられてるの」

勇者「なるほどね…」






462: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 16:44:03.02 ID:tIi6w1gdo



10分後。


老ガード「お待たせしました」


「久しぶり、ラーネイレ」

ラーネイレ「…あ」


紺色の髪の大人びた女性がガードの後ろから現れる。


「久しぶりね」

ラーネイレ「はい、お久しぶりです」


「えっと、私はエリステアと申します。城の応接と図書館の司書を努めております」

エリステア「あなたがたは付き添いかしら?それならすいませんがここで待っていただく事になるのですが」

勇者「あ、俺は別件でジャビ王に謁見を申し込みたいんだ。たまたま話が合って同行してただけで」

エリステア「分かりました。では名前をお願いします」

勇者(げっ……)





463: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 16:59:53.54 ID:tIi6w1gdo


勇者「……二つ名は…だめかな?」

エリステア「まあ構いませんが……」

勇者「じゃ、"勇者"で」

エリステア「はい……ではお二方、ついてきてください」

少女「あれ、私はダメなの?」

エリステア「また別件ですか?」

少女「勇者さんと同じなんですけど」

エリステア「すいません、要件一つにつき一人と決まってますので……」

勇者「すまん、ちょっと待っててくれ〜」

少女「あ、ちょっ!」


エリステアの後を勇者とラーネイレがついていく。



すると必然、残ったのは……




ロミアス「……」

少女「……」




少女(き、気まずい……)





464: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 17:17:23.53 ID:tIi6w1gdo


ー王宮内部ー



エリステア「とりあえず武器をお預かりします」

ラーネイレ「……はい」カチャッ

勇者「あー、俺は持ってないよ。ほら」

エリステア「分かりました」



エリステア「既にジャビ王には話は通っていますから、そのままラーネイレは王の間へ」

ラーネイレ「はい、案内ありがとうございます。では」


何度も訪れている故に、迷うことなく廊下を進んでいった。


エリステア「…よし、じゃああなたはこちらの部屋へ」ガチャ

勇者「……図書館?」

エリステア「ええ。ラーネイレはほとんど顔パスだからいいけど、あなたの素性は調べさせてもらいますからね」





465: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 17:27:17.24 ID:tIi6w1gdo


勇者「あ」

エリステア「…どうしました?」

勇者「いや、なんでもない。どうぞ」


好都合だった。もし何かしらの名簿に登録されていたら。
もしかしたら、"自分"が見つかるかもしれない。

……その場合、ブラックリストでないことを祈りたいが。



エリステア「…あら?どこにも載ってないですね」

勇者「……そうですか」


期待していただけに、少し落胆してしまう。


エリステア「……困りましたね……それでは謁見を認められないんです」

勇者「うーん……クレアに頼めば良かったな……」ゴソ

エリステア「それは?」




勇者「ヴェルニースから南西の洞窟で、パルミアの斥候だっていう人から預かった書簡なんだけど」





466: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 17:51:36.06 ID:tIi6w1gdo



エリステア「なんですって!!??」

勇者「うおわ!」

エリステア「レシマスに行ったのですか!?」

勇者「レシマス??」

エリステア「……すいません、取り乱してしまいました」

勇者「あ、はい…」


エリステア「失礼、お借りしますね」

勇者「ええ」スッ


ピリピリ……カサッ


勇者(あ、開けちゃった)


エリステア「……確かにこれはスランの字………っっ!!」


食い入るように書簡を読むエリステア。


勇者「えと、何が書いてあるんです?」

エリステア「………」

勇者「あのー?」

エリステア「分かりました。特例としてあなたのジャビ王への謁見を許可しましょう」

勇者「おお…」






468: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 18:10:02.80 ID:tIi6w1gdo



ー同刻・王の間ー



ジャビ王「よくぞ参った、ラーネイレよ。この時勢、そなたの立場では楽な旅路ではなかったろう」

ラーネイレ「お久しぶりです、陛下。われら異国の民でさえ、このように傷一つなく王都に辿り着けたのは、ひとえに陛下の御威光の賜物」

ラーネイレ「異形の森の使いとして参じたのも、今一度エレアの民とシエラ・テールのためにその御力を貸して頂けないかとの願いからです」



ジャビ王「…ラーネイレよ、残念だがその期待には応えられぬ。エレアの民にふりかかる災難については、わしも心を痛めておる」

ジャビ王「しかしそなたも知っておろう、イェルスとエウダーナの肉薄した力関係とその天秤のバランスを保つパルミアの役割を」

ラーネイレ「では、二つの大国のために、エレアは犠牲になれと仰せられるのですか。罪無き異邦の民の血により築かれた、ひと時の脆い平和のために」


ここで奥から、青い髪の青年が現れた。


ヴァリウス「……罪がないとは心外な。あなた方の異形の森が、そしてエーテルの風が我等にもたらした損害を知らぬわけでもありますまい?」


ラーネイレ「いらしたのですか、ヴァリウス閣下。確かに、エーテルの風により森に異変が起きているのは事実」

ラーネイレ「しかし、シエラ・テールの有史以来何事もなく共存してきたヴィンデールの森が、今になってなぜエーテルの風を呼び起こしているのか、その原因を調べずにして糾弾するとは、異質なものに対する偏見ではないでしょうか」

ラーネイレ「森の異変も、エーテルの風も、かの災厄とは違う現象です。陛下、よくお聞きください。もしザナンの皇子の主張が間違っているとしたら…」

ジャビ王「それ以上申すな、ラーネイレ。」

ラーネイレ「陛下、しかし真実は…」

ジャビ王「やめるのだ。続きは明日聞くことにしよう。今日の宿はわしが手配させる。今は…話をする時ではないのだ。わかってくれ。」



ラーネイレ「陛下…わかりました。しかし明日また参ります。陛下の決断が最後の希望です。」


そういってラーネイレは出て行った。





469: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 18:17:33.77 ID:tIi6w1gdo



ジャビ王「……」


奥からさらに肌の白い皇子が現れる。


サイモア「最後の希望とは恐れ入る。…まさか、あの娘の戯言を信じてはおりますまい、ジャビ王。」


サイモア「私は、幼い頃から災厄の研究を進めてきたのだ。《メシェーラ》は、またの名を星を食らう巨人と言う」

サイモア「大地を蝕み、不浄の根を広げる異形の森こそ、まさにそれではないか」

サイモア「たとえ娘が言ったように災厄とは違った現象だとしても、我らの土地を奪い、醜い怪物を生み出す事実は変わらぬ」

サイモア「ジャビ王、あの娘は私に預けるのが賢明だぞ」


ジャビ王「ふん、ラーネイレが真実を握っているからか?」

サイモア「私の見解こそ真実だ。あの娘に対する関心は別にある。それに王よ、ザナンあってのパルミアであることをお忘れではないかな?」

ジャビ王「ラーネイレは大事な客人。ザナンの皇子の頼みでも聞けぬ」


ジャビ王「…まだ用事がある。今日はもういいだろう?」


サイモア「ふふ、ではまた」



次いで、サイモア達も城を出る。





471: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 18:29:37.62 ID:tIi6w1gdo



ー王宮前ー



少女「……」


ロミアス「……」


少女「……」ウロウロ


ロミアス「……」


少女「……」ウロウロ


ロミアス「……落ち着きが無いな」


少女「……っ」ピタッ


何か言い返そうかと思ったが、それも癪なので黙ってロミアスとは逆の方向を眺める。


少女(は、早く帰ってきて!!!)イライラ


ロミアス「……」


少女はこれほど時間が経つのが遅く感じた事は初めてだった。





472: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 18:35:58.59 ID:tIi6w1gdo



ロミアス「君は」

少女「!」ビクッ


意外にも、緑髪のエレア・ロミアスから話しかけられる。


ロミアス「どうして勇者と共に居るんだ?」


少女「え、あー、まあ……成り行き?」

ロミアス「ほう、手の早いことだな。酒には気をつけろと教わらなかったのか」




少女「……ん?」



少女「ち、違う!そういうんじゃない!!」

ロミアス「そうなのか?まあどうでも良いが」

少女「どうでも良くない!!!」

ロミアス「うるさいぞ。目立ってしまったらどうする」

少女「こっ、の……」


この緑髪のエレアだけはいつか一発殴ると心に決めた少女だった。





476: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 21:28:13.54 ID:tIi6w1gdo



ラーネイレ「…行くわよロミアス」

少女「わあ!!」


いつの間にかラーネイレが背後に立っていた。


ロミアス「む、もう終わったのか。結果は……まあ、聞かないでおこう」


ラーネイレの醸し出す雰囲気から結果は明らかだった。


少女「あれ、勇者さんは?」

ラーネイレ「順番があるから、もうちょっとかかると思うわ」

少女「そうですか……」

ラーネイレ「頼りにしてるから。もしかしたら、エレアを救えるのはあなたたちかもしれないもの」

少女「はあ……」

ラーネイレ「じゃあ私たちは今日はこれで。また会うことがあれば、次は名前を聞くわ」

少女「は、はい」



少女(次は緑色抜きでお願いします)






477: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 21:50:23.95 ID:tIi6w1gdo



ー王の間ー


エリステア「失礼します」

ジャビ王「ふう……何用かね」

エリステア「この者が、スランから書簡を受け取ったそうで」

勇者「……どうも」

ジャビ王「ふむ」



……



ジャビ王「…なるほど、恐れていたことが現実になったというわけだな」

ジャビ王「知らせにあるよう、悪しき者がレシマスに眠る秘法を狙うのであれば、パルミアの王の名誉にかけてそれを阻止せねばなるまい……」

ジャビ王「勇者とやら、大儀であった。直ちに謝礼を用意させようではないか。少将!コネリー少将!!」

コネリー「へい!」


ジャビ王の護衛らしき武装した中年の男・パルミア少将が荷袋を用意する。


コネリー「ほら、褒美だ。中身は城の外で確認……っておい!?」


勇者に褒美を手渡そうとした…が。




478: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 22:05:06.55 ID:tIi6w1gdo



勇者「うう……王…様……?」ヨロッ


ジャビ王「む、どうした!?」



勇者の脳内で、何かを思い出そうとする働きが強くなる。



――『勇者よ、……を倒しに行くのじゃ』

――『このままだと世界が滅ぼされてしまうであろう』



勇者「はあっ!はあっ!!!」ズキンズキン

エリステア「ちょ、ちょっと!?」



――『仲間と共に』



勇者「っ頭……が!!」ズキンズキンズキン



――『魔王を倒すのだ!!!』



ドサッ……




〜〜〜〜



少女「……遅いなぁ……」





479: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 22:21:03.08 ID:tIi6w1gdo



ぐぅ〜

少女「……おなかすいた…絶対昼過ぎてるよ……」


曇っており正確な太陽の位置はわからないが、腹の具合と明るさからそう推測する。


とそこへ、城の中から慌ただしい足音が聞こえてくる。


タタタタタ……


エリステア「っいた!!」


城から飛び出し、すぐに少女を見つける。


少女「あれ?……勇者さんは?」

エリステア「急に倒れてしまったの!!すぐに来て!!」ダッ!

少女「え!!??っはい!!!」ダッ!


唐突過ぎて何が何やらわからぬままエリステアを追いかけた。






480: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 23:10:40.74 ID:tIi6w1gdo



ー王室ー




少女(……状況整理をしようと思う)


少女(勇者さんが倒れたと聞いたので急いでエリステアさんについて行ったのはいいですけど)


勇者「はぁ……はぁ……」


少女(なんで王様のベッドで寝てるんですか!!!???)

少女(ちゃっかり王宮の見ちゃいけない所まで来てしまったような……)



エリステア「急に倒れちゃって……熱もあるみたいで……」



少女(そ、そして……極め付けはぁぁああああ!!!)

ジャビ王「何か持病はあるのか?」

スターシャ王妃「替えのタオル持ってくるわね」


少女(ジャビ王とっっ!!!スス、スターシャ王妃がこんなに近くに!!!)

少女「じゃ、じゃジャジャビ王!!ええええっと!!ささ最近は風邪気味のような気ぎゃっ、気がしました!」


ジャビ王「……少し落ち着け」


少女「そんにゃっ!わ、私のような一介の冒険者風情がこんな所に来てしまい大変申し訳なく思っておりああ武器着けたままだぁただ今外しますのでっあああ引っ掛かった!!」ガチャガチャガチャ


軽く、いやかなりのパニック状態に陥ってしまっていた。





481: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/10(月) 23:42:07.15 ID:tIi6w1gdo


スターシャ王妃「一応聞きますけれど、あなたとこの男の子、どういう関係かしら」

少女「ええっと!え〜〜〜〜〜っと……」


――少女『ちょっと勇者さん!そろそろ首輪外してくださいよぉ!!』


何故かアクリ・テオラでの出来事を思い出す。



少女「ペットです!!!」



スターシャ王妃「………もう一度聞くわね?どういう関係かしら?」

少女「あれ!?ああ!!ええっと……」


少女(ペットじゃない!……そう!付き添い!付き添いつきそい……)



少女「 付 き 合 っ て ま す ! ! ! 」



スターシャ王妃「あら〜、やっぱり。じゃあ明日は流石に一般の宿屋に移ってもらうから、付き添ってあげてね?」

少女「はい!!!付き添いです!!」



少女がここでの発言を思い出すのはかなり後になってからだった。





488: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 16:40:29.86 ID:lBhloin7o


ーパルミア・ザナン軍宿営ー


サイモア「……"奴"に感謝しておかなくてはな」


ヴァリウス「しかし安易に信用しては……」

サイモア「"奴"の目的は知らんが、腕は確かだ。聞けば見たことも無い術を使うらしいが」

ヴァリウス「……"奴"の、サイモア様に対する無礼に怒った大佐が、ならず者を雇って仕向けたらしいのですが……」



ヴァリウス「後日、全員肉塊となって発見されたそうです」


サイモア「ふ、頼もしいではないか」

ヴァリウス「危険です!」

サイモア「かまわん。"奴"がザナンを利用しようとしているのはわかっている」

サイモア「その上で利用してやるのだ。見張りはつけているんだろう?」

ヴァリウス「ええ……」

サイモア「どちらが利用し、利用されるか……これも面白いものだ」


サイモア「それにしても驚いた。あのエレア、かの娘にそっくりではないか。」

ヴァリウス「白き鷹に続きラーネイレとかいう娘。ようやく運命の歯車が回り始めたのでしょう。」

サイモア「運命など今更信じる気にもならないが、舞台が予想以上に賑やかになったことは歓迎すべきだ」

サイモア「あの二人には、相応の役柄を用意しておいてくれ。君の手腕を信頼しているよ、青い髪のヴァリウス。」

ヴァリウス「…」





489: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 16:41:18.45 ID:lBhloin7o



ーパルミア郊外ー



ラーネイレ「……」

ロミアス「……」


思い通りに行かず…どころか、パルミアにさえ見捨てられそうになっている事を知り重い空気が流れる。


ロミアス「やはりそんなものだろう……エレアに対する扱いというものは」

ラーネイレ「……」


「ラーネイレ様!」タタッ

ラーネイレ「……?」


王の使い「探しましたよ、宿屋の案内をさせて頂きますのでついてきてください」

ラーネイレ「…ああ、そういえば宿屋は手配される事になっていたわね」

ロミアス「やれやれ……」


ジャビ王の話をラーネイレが聞き逃すなど、よっぽどジャビ王との交渉がうまくいかなかった事がショックだったのだなとロミアスは思った。






490: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 16:46:39.22 ID:lBhloin7o



ー宿屋ー


王の使い「こちらの二部屋を手配致しました。どうぞおくつろぎください」

ラーネイレ「ええ、ありがとう」


王の使い「……それとジャビ王から伝言があります」


ラーネイレ「?」

王の使い「"悲愴の戦闘狂"がパルミアに向かっているらしい。用心棒をつけることをお勧めする…と。」


ロミアス「おいおい舐められては困るな。これでも私たちはエレアの中でも」


上位の実力を持っている、と言おうとしたが…


ラーネイレ「"悲愴の戦闘狂"……」

ロミアス「……なんだ?その、悲愴の…とは」






491: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 16:48:53.20 ID:lBhloin7o



ラーネイレ「別名"エレア殺し"……彼は対エレア装備を揃えている上、かなりの実力者よ」

ラーネイレ「そして異名から分かる通り…エレアを中心に狙い、エレアを尋常じゃない程に憎んでいるわ」


ロミアス「ああ、またその類か。どうせまたエーテルの風を受けた身内の敵討ちだろう?」

王の使い「いえ、彼の場合恋人をエレアに直接殺害されているんです」

ロミアス「……」

王の使い「恋人と都市間を移動中、どこからともなく放たれた矢が恋人を貫き」

王の使い「その後奇妙な笑い声が聞こえ、エレアが走り去る姿を見た…と。」


ラーネイレ「…とにかく事情は分かったわ。それでその用心棒とやらは?」


王の使い「はい。酒場にいけば、金次第でどんな任務でも引き受ける者が居ます」

王の使い「ひとまず仲介人のリアナという女性を探してください。これはその経費です」ジャラッ


ラーネイレは金袋を受け取る。


ロミアス「そいつが"エレア殺し"でない理由は?」

王の使い「大丈夫です。彼の行動は見張りをつけてますから。まだパルミアには到着していませんが、今日の夜には着く予定です」

ラーネイレ「分かったわ。ロミアス、早速行きましょう」



二人は王の使いに言われた通り、酒場に向かった。





492: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 16:54:46.64 ID:lBhloin7o




ーとある裏路地ー


建物と建物が作り出す暗闇。そこには用事を終え、王宮に戻らねばならぬはずの人物が居た。





王の使い「……」




そこには対面する形でもう一人。







???「ちゃんと伝えましたか?」


王の使い「……ええ」








王の使い「ヴァリウス閣下」







493: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 17:11:29.26 ID:lBhloin7o


急速にあたりが暗くなっていく。
ただ単に日が山に隠れ始めているだけなのだが、裏路地という場所がさらに光量を削っている。



ヴァリウス「ご苦労」

王の使い「……では」


ヴァリウス「約束通り、あなたの娘は解放しましょう。見知らぬ者にはついて行くなと教育させておきなさい。たとえ女性でも」


王の使い「卑怯者がっ……ヴァリウス……いつか天罰が下る事を覚えておけ」


ヴァリウス「ふっ……、"あなたの娘は"解放すると言いましたが」

ヴァリウス「"あなた"は解放するつもりはありませんよ」パチン


ヴァリウスが指を鳴らした直後


ドスッ!


どこからか放たれた矢が、王の使いに命中する。


王の使い「く……口封じか…」

ヴァリウス「当たり前です。遺言は?」



王の使い「……ラ、ラーネイレ様……どうか……ご無事で……」



ヴァリウス「…………さようなら」





494: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 18:34:24.55 ID:lBhloin7o



ー酒屋ー



普通にフードを被るだけで顔の識別は難しくなっているはず暗さのはずだが二人は深くフードを被り、
ロミアスは自分たちを深く詮索しなさそうな人を探して尋ねる。


ロミアス「リアナという女を探している。心当たりはないか?」

女「…その女に何の用?」

ロミアス「金次第でどんな依頼も受けるとだけ聞いている」

ロミアス「護衛を雇う必要などないのだが、王の使いより通達があってな」


女「金次第でどんな依頼も受ける、か…ふふ、確かにどんな危険なヤマであろうと関係ない」

女「ただし、あの男の場合はね、金次第じゃなくて気分次第なのよ」


ロミアス「……あの男…?もしや」


女「ええ、あたしがリアナよ。二人とも付いて来なさい」


まさか一人目で当たると思っていなかった為に、二人は少し遅れてリアナの後を追った。






495: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 18:38:31.26 ID:lBhloin7o



街道を進むこと10分。


リアナ「……入って」


何の変哲もない一軒家の中へ2人を案内する。


ガチャ


しかしドアを開けた瞬間、中の空気が二人を不快な気分へと誘う。


ロミアス「む……ごほっ!!」

ラーネイレ「ごほっ!ごほっ!!」

リアナ「もう、またクラムベリーの煙を吸って!ほら依頼人に挨拶して、ヴェセル!」


ヴェセル「……」


用心棒とは、かつて"ザナンの紅血"ロイターと肩を並べた"ザナンの白き鷹"……


ヴェセル・ランフォードであった。






496: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 18:44:13.65 ID:lBhloin7o



ロミアス「素晴らしい。我々の頼る剣の主は、薬漬けで意識の朦朧とした病人か」


この男の持つ雰囲気と態度に毒舌を言い放つ。


ロミアス「ラーネイレ、どうやら無駄足だったようだ」

ロミアス「この男がかつてどのような腕を誇っていたかは知らないが、療養に付き合ってる時間はない。」


リアナ「まぁまぁ…そう急かさないで。ヴェセル、気にしないでいいのよ」

リアナ「あなたがどんなに惨めでひどい目にあってきたのか、この人たちは知らないの」

リアナ「あたしは、あなたの悲しそうな瞳を一目見て、すぐに直感したわ」

リアナ「この人は計り知れない苦悩を抱え、断ち切れない過去を引きずった可愛そうな人だって」

リアナ「そして、あたしが付いていれば、きっと全てを乗り越えて一人前の男になれるって」

リアナ「でもね…そろそろ仕事をしないと、食べる物もないのよ!」


ヴェセル「君と飢え死にするのも悪くない。」


リアナ「いやぁん、ヴェセルぅ!!」

ヴェセル「ふふ、リアナ。君にまであの世に付き添ってもらうつもりはない」





497: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 19:14:56.24 ID:lBhloin7o


ラーネイレ「……茶番はいい加減にしてもらえるかしら」


ヴェセル「ああそうだったな。依頼を…」


言いかけた所でラーネイレの顔を見た瞬間、静止する。


ヴェセル「…貴女は…エリシェ…?」

ラーネイレ「エリシェ?」


彼はラーネイレに、自分の中の"彼女"の面影を重ねていた。


ヴェセル「いや、気にしないでくれ。依頼を聞こう」

ロミアス「もういい。こんな男に護衛など無駄なことだ」


そう言ってロミアスは吐き捨てる。






498: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 19:24:43.00 ID:lBhloin7o




ー同時刻・街道ー


とある大柄な男が武器に身を包み、仁王立ちしている。



大柄な男「情報は確かなのだろうな」


小柄な男「もちろんでさぁ!あの家にエレアが二匹潜んでやす!」

猟犬「グルルルルル……」

大柄な男「ふむ、確かにエレアが居るようだな……!!」ギロッ!



狂気に満ちた男の目が、4人の居る一軒家を睨み付ける。



市民A「ちょ、ちょっとあの人って……」

市民B「か、帰ってきてたのか!」




市民B「"悲愴の戦闘狂"ギーラ!!」






499: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 19:27:35.54 ID:lBhloin7o





ヴェセル「……なるほど、護衛か……そうだな。あなたがたは既に血気盛んな"護衛"とやらをつけているようだ」


ロミアス「何を言っている」


ヴェセル「何とは何だ?この家に向けられている殺気からそう推測しただけだが」


ロミアス「何!?」

ラーネイレ「っまさか既に!?」


ヴェセル「どうやら話をしている暇はないようだ…私の背を見失わないように。裏路地から街を出る!」








500: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 19:47:44.08 ID:lBhloin7o




……



バキァアッ!!!


ザッ!

大柄な男「……」

猟犬「ガルルル……」


玄関が派手に破壊され、ギーラとその猟犬が侵入する。が…



大柄な男「……もぬけの殻か……ふ、ふふ……少しはできる奴が居るようだな……」

大柄な男「ん?この匂い…クラムベリーか……ラジ!」

猟犬「ガルッ!」


ラジ、と呼ばれた猟犬が反応する。






501: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 19:58:17.67 ID:lBhloin7o



大柄な男「この辺りの匂いを記憶しろ」

猟犬「……」ウロウロ


小柄な男「既にエレアの匂いは記憶してるのでは?」

大柄な男「いや、考えたのか考えてないのか知らんが」

大柄な男「これだけクラムベリーの煙が充満していたらエレアの匂いは上書きされている可能性がある」

大柄な男「さっきは、ドアの前までの匂いをコイツは拾ったんだ」

小柄な男「な、なるほど……」


猟犬は辺りの匂いを次々と記憶していく。


大柄な男「覚えたか…?よし行けっ!!」

猟犬「ガルッ!」ダッ!


大柄な男「くはは……逃がしゃしねぇ!!!」ダッ!


小柄な男「ああっ待ってくだせぇ!!」ダッ!



"悲愴の戦闘狂""エレア殺し"ギーラに、完全に標的としてロックオンされたラーネイレ一行。


ギーラから逃げ切るのに、3日を要する事となった。





502: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/02/13(木) 20:01:15.29 ID:lBhloin7o

*保存*

さて、このあたりからどんどん原作に手を加えていこうと思います。
最近すごい筆が進むのである程度溜まったらまたすぐ投下します。




506: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/15(土) 08:28:06.33 ID:5EFAM0Pv0

本格的に展開してきたな!
いや面白いわこのスレ
読み物としてしっかりしてて

原作ではブレス吐けない弱キャラの猟犬が大活躍だな
あんまりスポット当たらないMOBが活躍してるのも楽しい




507: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/02(日) 18:35:12.88 ID:K/dI425y0

鼓舞支援だよお兄ちゃん!




523: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 08:19:09.87 ID:SqUJyRGHo



勇者「……ぅ」


勇者の脳は無くした記憶を取り戻そうと必死に整理する。

ジグソーパズルのように少しずつ、しかし確実に埋まっていく。

そのカタチは、勇者の夢となって現れる。




―――


――





そこは王宮。内部の広場に、20人ほどの男女が集められていた。






524: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 08:19:48.70 ID:SqUJyRGHo



『いよいよだな!!』

『ああ!』

『私だったらどうしよ〜〜!』

『なあ、もし君が選ばれたらどうする!?』

少年『…………』

『……んだよ、暗いなあ』


ざわつく人ごみの中に、自分が居た。


初老の剣士『皆の者!静粛に!!』


『来たっ!!』


初老の剣士『陛下…』

国王『うむ……まずは16歳の誕生日おめでとう、皆の衆』


『『ありがとうございます!!陛下!!』』


国王『この制度が始まって三十余年……』

国王『もう魔王の復活も間近だというのに、この"勇者の証"を抜くことのできる者…』

国王『勇者がまだ現れない』


左手には鞘に入った剣。柄を握ろうとすると、バチッ!という音と共に閃光が走り、拒まれる。






525: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 08:20:31.47 ID:SqUJyRGHo



国王『50年前から始まった異常気象・魔物の狂暴化が、暗黒時代の再来・魔王の復活を予期している事は皆知ってのとおり』

国王『先代国王はこの"勇者の証"を探し出し、勇者の力が芽生える年と言われている16歳の若者を集め』

国王『この剣を抜く事の出来る者……すなわち勇者を探し出す制度を作った……が』

国王『この三十余年、未だにこの剣を抜いた者はいない……』


国王『……今年こそ、勇者が現れてくれる……そなたらの誰かが、抜いてくれると信じておる』


国王『では』


初老の剣士『はっ、我こそはと思うものから来るが良い!』


『っしゃあっ!』

『よおしっ!』

『重そう〜〜』






526: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 08:22:24.32 ID:SqUJyRGHo







初老の剣士『……次っ!!もういないのか!!』


『あーあ、勇者なんておとぎ話じゃねーのー?』

『でもあの剣からすごい力を感じるよ、拒まれちゃったけど』

『手がひりひりする……』



初老の剣士『……陛下、やはり今年も』

国王『待て』

初老の剣士『?』

国王『あの少年がまだだ』



少年『……』






527: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 08:24:30.45 ID:SqUJyRGHo



初老の剣士『おいお前!なぜ来ない?』





少年『……』





無言で国王に近寄り、手を差し出す。


初老の剣士『貴様、少しは礼儀を…』

国王『良い』

初老の剣士『陛下…』


対する国王も、少年の持つ何かを感じ…剣を差し出す。



少年『……夢を見ました』


国王『…?』


少年『この世界を、救ってください…と』


少年『女の子が泣きながら、お願いしてくる夢でした』






528: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 08:25:19.00 ID:SqUJyRGHo



少年『だから俺は!!』ガシッ!


初老の剣士『なっ!!』

国王『おお!!』

『うそっ!!』

『えええええ!』



剣は、己を掴むその手を拒まなかった。



少年『あの子を助ける為に!勇者になる!!!』シャッ!


抜いた剣を高く掲げる。


カッ!!


剣は煌めき光の束を放出し、王宮の天井をすり抜け天へと昇る。


その光は、勇者の誕生を世界に知らしめた。






535: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 22:42:50.88 ID:SqUJyRGHo





―――


――






勇者「!!!!!」バッ!!!

少女「きゃっ」びくっ


布団を跳ね除け飛び起きる。


勇者「今のは……ぐっ!」ズキン

勇者「くそ、どうしたんだ俺っ……」グラグラ


少女「まだ熱下がってないんですから安静にしてくださいよ、はいタオル」


額から落ちてしまったタオルをもう一度額に当て、勇者を寝かす。


勇者「クレアか……すまん」ドサッ






536: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 22:43:29.41 ID:SqUJyRGHo



勇者「案外面倒見が良いんだな」

少女「案外って何ですか……まあ、慣れてますから」

勇者「そうなのか……慣れ?」

少女「ああ、お母さんの―」

ガチャ


と、ここでドアが開いて少女の話が遮られる。


スターシャ王妃「あら、目が覚めたのね」


少女「スターシャ王妃」

勇者「……んん!?そういえばここは!?」ガバッ!

少女「ああ、またタオル落ちた……ジャビ王の寝室ですよ」

少女「全く、うらやましい限りですそんなもふもふのベッド……」

勇者「え、ちょっと待て!なんで俺がそんなところに」

少女「はいはい安静にしてくださいねー」ピトッ


またタオルを勇者の額に引っ付ける。





537: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 22:49:26.10 ID:SqUJyRGHo



スターシャ王妃「ふふ、ラブラブねぇ〜あなたも良い子をゲットしたものね〜」

勇者「…はい?」

少女「なっ!?」


スターシャ王妃「どっちから告白したの?私の予想だと女の子の方からかな?」


少女「待ってください!そんな関係じゃないです!!」

スターシャ王妃「あら?でもあなた付き合ってるって……」

少女「つ、付き添いですっ!付き添い!!」

スターシャ王妃「そうだったかしら?でも……」

少女「付き添いなんですぅ!!」


ガチャッ


ジャビ王「こらこら、病人の前ではしゃぐでない二人とも」


スターシャ王妃「あら、ごめんなさい」

少女「ひいごめんなさい!!」


勇者「…はは」





538: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 22:50:02.86 ID:SqUJyRGHo



ジャビ王「少しは楽になったかね?」

勇者「まあ、なんとか……すいません、ベッドお借りしてしまって」

ジャビ王「良い、それよりその状態で旅をしてきたのか?」

勇者「旅の途中から調子がおかしくて……」

ジャビ王「ふむ……君が寝ている間に、医者を呼んで診てもらったんじゃが」

勇者「ああ、本当何から何まですいません……」

ジャビ王「この街の医者が言うには、初めての病状だそうじゃ」

ジャビ王「君……持病は持っているか?」


勇者「……それが……」



勇者は自分が記憶喪失である事、何者かも分からず、途方に暮れている事を話した。






539: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 22:52:09.73 ID:SqUJyRGHo



ジャビ王「なんと……」

勇者「……あ、王様に剣をもらったのを思い出しました」

少女「え?」

勇者「ああすまん、さっき夢で昔の情景を見たんだ。それで少し思い出したんだよ」


ジャビ王「王……ふむ、そなたとは初対面のはずじゃ。となると他の国の王となるが……」

スターシャ王妃「スパイ?」

勇者「…え」

少女「ちょっ!」

ジャビ王「には見えんがね。スパイが正直に記憶喪失などと怪しまれる事をするとは思えん」

ジャビ王「…剣をもらったと言ったな?そなたの持ち物にはそれらしき物は無かったはずじゃが」


勇者「…あ!鞘ありませんでした?思い出したんですけど、その剣を収めていたのがあの鞘のはずです」


スターシャ王妃「……これかしら」スッ


案外近くに勇者の持ち物が置かれていた。
危険なものが入っていなかった為に問題なしと判断されていたからだ。






540: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 22:54:28.06 ID:SqUJyRGHo



ジャビ王「ふむ……ここに"勇者の証"と彫られているな」

スターシャ王妃「…勇者……まるでおとぎ話ね」

勇者「おとぎ…話?すいません、詳しく聞かせてください」

スターシャ王妃「なんて事無いわよ?巨悪があって、勇者がそれを倒しに行く。それだけよ」

勇者「その、巨悪とは?」

スターシャ王妃「ええっと……」


少女「魔王とか?」


スターシャ王妃「そう!魔王!魔王を勇者が倒してハッピーエンド。そんな物語よ」

スターシャ王妃「でもこれ、子供に読ませる絵本レベルよ?」

少女「そうですよね、私も思い出しました。幼い時読んだことありますよ」


勇者「絵本、か……うーん」





ジャビ王「その話、おとぎ話では無いぞ」






541: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 22:55:09.15 ID:SqUJyRGHo












勇者・少女「「……え?」」















542: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 22:56:12.09 ID:SqUJyRGHo



ジャビ王「その話の元となった物語……王族より代々伝承される言い伝えがあるのじゃ」


スターシャ王妃「もしかして、アレが?」


ジャビ王「うむ。アレは空想やおとぎ話ではない、事実なのだ。私はそう信じておる」



勇者「……お願いします」



ジャビ王「……よかろう。心して聞くがよい」









ジャビ王「時は六紀、闘争の時代」






543: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 22:58:43.99 ID:SqUJyRGHo



人間は、神と神が己を主張する争いに振り回されていた。




当時の人間と神との違いは、それぞれ神に従っているかどうか。それだけだった。


神が主、人間が下僕なのではなく。


主が神、下僕が人間。


人間と神との力の差とは、力に長けた人間が束になれば神に勝てる程、個々の力は凄まじいものであった。






人間はいつまでも続く闘争に呆れ果てていた。


ここでとある人間が、別世界の存在を感知した。


イルヴァの地を見限った人間は、世界を移り渡る"ムーンゲート"なるものを創りあげた。


人間たちは神を捨て、新天地へ向かおうとしたのだ。





しかしここで






邪神が現れた。






544: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 23:01:12.15 ID:SqUJyRGHo




神々が争っている間、力を蓄えイルヴァ奪回を企んでいたのだ。


邪神の配下にも4人の負の神が存在し、個々では歯が立たない事を知ってしまった神々は




ついに、永遠の盟約を結ぶのだった。



人間は戸惑いながらも、主達が一致団結したことに歓喜した。

イルヴァの地に希望を見い出し、"ムーンゲート"は無用になったと思われた。





しかし時すでに遅し――





絶大な力を蓄えていた邪神は次々と神を葬り去り、イルヴァの支配まであと少しになってしまっていた。






545: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 23:04:43.47 ID:SqUJyRGHo



そこで神々と人間が結託し、"ムーンゲート"を使用して別世界に追放する計画を立てた。


神々は協力し、負の神達を追放することに成功した。


しかし邪神だけは歯が立たず、神々が敗れそうになった時――





人間の中から、1人の"勇者"が現れた。




神々を見かねた人間たちは、自身の力を、1人の人間に集めたのだ。


これにより人間たちは、個々としては、吹けば飛ぶ存在になってしまったが――代わりに



邪神と同等の力を持った、"勇者"を発現させる事に成功したのだった。






546: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 23:12:31.04 ID:SqUJyRGHo



邪神と勇者の戦いは凄まじく、イルヴァの地は大きな痛手を負ってしまった。


イルヴァの地をこれ以上傷つけるわけにはいかないと考えた勇者と人間たちは――



人間たちの最後の力により"ムーンゲート"を強化――

勇者は邪神を"ムーンゲート"へと誘い込み、人間たちは邪神を道連れにイルヴァの地を去ったのだった。






こうしてイルヴァの地に平穏が訪れた。


人間達を失い、己の過ちを学んだ神々は本来の領域へと去り


闘争の時代は終わりを告げた。






547: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/03/26(水) 23:27:05.69 ID:SqUJyRGHo



ジャビ王「……これが王族に代々伝わる、六紀・闘争の時代の話じゃ」


少女「"邪神"……"勇者"……」


スターシャ王妃「なるほど、この話が徐々に変化して、魔王と勇者という話になったのね」

ジャビ王「うむ。……どうじゃ?」


勇者「……うーん」



ジャビ王「…まあよい、記憶はじきに戻るじゃろう。それよりそなたの病についてじゃ」

ジャビ王「このパルミアより腕の良い医者となると、ルミエストに住む医者しか見当たらん」

ジャビ王「紹介状を出そう。行ってみてはどうかね?」


少女「ルミエスト……」

勇者「遠いのか?」

少女「まあ、それなりに……途中で倒れちゃうかも……」






548: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/26(水) 23:39:21.59 ID:SqUJyRGHo



ジャビ王「心配するな、使いの者を出そう。馬車の荷台に乗ると良い」


勇者「そこまで……本当にありがとうございます」


ジャビ王「……不思議と、おぬしには本当に今の問題を解決してくれる"勇者"のような気がしてな」

ジャビ王「もしその病が治れば、また報告に来てほしい。よいか?」


勇者「はい、もちろんです!!」









こうして勇者と少女は馬車へと乗り込み、ルミエストへ向かう。









581: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/05/04(日) 22:47:34.60 ID:B0jiXpJco





ガタッ…ガタタッ……


二頭の馬が引く薄暗い馬車の中で、2人は隣り合って座っていた。


勇者「……そういえば俺ってどんくらい寝てた?」

少女「大体2日間くらいですねー」

勇者「そっか」






勇者「は!?2日間!!??」

少女「そうですよ。本当は民宿に移動しなきゃならなかったんですけど、あんまり熱がひどかったんでそのまま」

勇者「まじか……本当にジャビ王には迷惑かけたなぁ……」






582: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/05/04(日) 22:50:47.98 ID:B0jiXpJco




勇者「なあ、ルミエストってどんな所なんだ?」

少女「そうですねー、前にも言ったと思いますけど、漁業と音楽の盛んな街ですねー」

勇者「あー言ってたな」

少女「あと魔法師ギルドがありますね。魔法に特化した人達の集まりで、そこでしか入手できない貴重な魔法書やスキルがあります」

勇者「ほほう」


少女「他には、魔法師ギルドとかいう魔法に特化したサンドイッチがとてもおいしくて〜」

勇者「は?」

少女「例えば……掲示板には勇者さんには食べられたかもしれなくて〜」

勇者「…クレア?何言ってるんだ?」」

少女「他にも海の上に像が立ってて、それは食べられないんですよ〜」

勇者「おーい?」






583: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/05/04(日) 22:51:20.23 ID:B0jiXpJco



少女「………」ポスッ

勇者「クレア?」


少女の頭が勇者の肩にもたれかかる。


少女「………すぅ」


勇者「なんだ寝ちゃったのか……ん?」


熟睡してしまった少女を眺めていると、目の下にクマが出来ていることに気付く。


勇者「お前……もしかしてずっと付きっきりで……」


勇者「……」






勇者「ありがとな」







584: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/05/04(日) 22:54:47.27 ID:B0jiXpJco





ー同刻・ルミエストー


普段は賑やかなルミエスト。どこからともなく吟遊詩人の奏でる音色が
市民達のBGMになっている…はずなのだが



市民A「おいっ!見たかアレ!!!」

市民B「何が?」

市民A「っいいから来い!信じらんねぇ事が起きてる!!」

市民B「ああ?なんだってんだよ……」


ガシャッ…ガシャッ…


市民A「あ!見ろ!アレだアレ!!!」

市民B「なん……うわっ!!」







小柄少女「わぁ、人気者だね」

ビッグダディ「ォォオ?」






今だけは、ルミエストを歩く…歩いていた人々はその異常な光景を、
ただただ唖然として見つめる他なかった。






585: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/05/04(日) 23:17:02.58 ID:B0jiXpJco




市民B「あ、ありえねぇ……ビッグダディとリトルシスターが町まで来るなんて…!」

市民A「だろ…?しかもあのリトルシスター、リトルシスターにしてはでかいんだよ」

市民B「特殊な個体ってことか?」

市民A「さあな……なんにせよ、こっちが何もしなけりゃ向こうも何もしてこないんだ」

市民A「見るだけなら俺達の命は保障されてるはずだ」

市民B「…けどここには冒険者が居るはずだ。もしかすると……」

市民A「……無いと思うがね。リトルシスターに関しては、表向きは保護という話でまとまってるはずだ」

市民A「こんなとこで奴らを殺して血肉を得ようなんて、そんなバカな事をする冒険者なんざ居ねぇよ」



小柄少女「ねぇ」


市民A・B「!!!!!!!!」


話に夢中で、いつの間にかビッグダディの肩から降りて近づいていた小柄な少女に気付かなかった。






586: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/05/04(日) 23:25:06.96 ID:B0jiXpJco



小柄少女「げほっ…この辺にお医者さんいない?ちょっと調子悪くてっ」


市民B「ぇええええっと……」


フードに身を包む少女。リトルシスターのイメージとはかけ離れ、笑顔で明るく社交的。

細かな仕草や整った小さな顔から、すれ違った人達を魅了する人物であることが予想できる。




ビッグダディ「ォォォ…」



――――後ろにビッグダディがいなければ。



市民B「え、えっと確か南西の方角にいけば居る…と思います……」

小柄少女「そっか。ありがと」

市民B「いえ……」



小柄少女「…あと」

市民B「ハイッ!!」





587: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/05/04(日) 23:38:09.99 ID:B0jiXpJco







小柄少女「"勇者"を探してるんだけど、知らない?」








市民B「はあ……"勇者"?……それで、特徴は?」

小柄少女(……"勇者"という単語すら存在しない世界かぁ……)


小柄少女「えっと、とても強い人で……」


小柄少女「まるで異世界から来たような人」



市民B「……お前知ってる?」

市民A(俺に振るな!!)





588: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/05/04(日) 23:38:44.15 ID:B0jiXpJco



市民A「えっと…とりあえず情報屋のカハードさんの所へ行けば、冒険者の情報がもらえますよ」

小柄少女「カハード…さんね」

市民A「あとは……アリーナに行けば、人対人、人対モンスター、モンスター対モンスターが見れますんで」

市民A「そこでしばらく観戦するのもありかと……」

小柄少女「そ、ありがとう」


小柄な少女は笑顔を返し、ビッグダディの元へと戻り、去る。



市民B「……」

市民A「チビるかと思った」

市民B「俺はチビった」

市民A「え」






589: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/05/04(日) 23:57:08.90 ID:B0jiXpJco



「し、知らないです……」


「いやっ…き、聞いたことないですね……」



小柄少女(この街には来てない…か……)

小柄少女(仕方ない、先に医者に診てもらお)







医者「うーむ……急に咳が?」

小柄少女「うん」

医者「…もうちょっと具体的でないとどうにも…」

小柄少女「……空気が悪いと思うんですけど」

医者「空気…?このあたりはかなり澄んだ空気だと思うがねぇ」

小柄少女「え…」




助手「……」

ビッグダディ「ォォォ……」


助手(…………助けてぇえ!)






590: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/05/05(月) 00:06:23.69 ID:y2U0q8Zmo



助手「ま、またお越しくださいませぇぇ……」


小柄少女「ありがとうございましたー」



小柄少女(……原因不明なわけない)

小柄少女「げほっ!!」



小柄少女(どうして皆、こんな空気を平気で吸ってるのかな……)







助手「それにしてもすごいですね、あんな状況でも平静を保つなんて」

医者「……」

助手「先生?」

医者「……」




助手「……気絶してる」






595: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/06(火) 11:50:15.16 ID:pvY+H9iN0

あれ、ルミエストにアリーナあったっけ?




597: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/05/06(火) 12:59:52.06 ID:PQQvUSRJO

あるという事にしておいて下さいすいません!




617: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/08(火) 00:01:04.50 ID:wOokVTLio




小柄少女(さてと、次は情報屋ね)



小柄少女(……場所、教えてもらって無かったや)




……




しばらく街の人々に質問し、情報屋カハードの家までたどり着く。

……ここまでも、一度も人々の視線が途切れる事は無かった。



小柄少女「すいませーん」ドンドン


「はーい」ガチャ


小柄少女「……あれ?間違えた?」



少女が思うのも無理は無い。なんせドアを開けて出迎えたのは……

エプロンにオタマ、サンダル。どこからどう見ても夕食の支度をしている主婦だった。






619: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/08(火) 02:24:13.36 ID:wOokVTLio



情報屋「あら?こんにちはフードのお嬢ちゃん、その反応は情報屋としての私に用があるのね」

小柄少女「その反応……って」

情報屋「ふふ、ルミエストの情報屋・カハードとは私の事よ!何か知りたい情……報……は……」


情報屋の目線は小柄な少女と話すため下を向いていた。

しかしチラリと映った異様な脚に気付き、目線を上げると……



ビッグダディ「オオオ…」



情報屋「……変わった仲間をお連れなのね……」






620: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/08(火) 02:36:22.10 ID:wOokVTLio




小柄少女「あの、冒険者の情報を教えてくれるって聞いたんだけど」


情報屋「あ……ああ!そうね!じゃあとりあえず入って」

小柄少女「お邪魔します」


ここで少女が家に入るのを見たビッグダディが、後を追う。


情報屋「え?」

ビッグダディ「オオオォ」ガッ!

情報屋「あー…ごめんなさいね、あなたは外で待っていてくれないかしら?」


ここは情報屋カハードの自宅である。ドアも当然といえば当然だが、人間用だ……しかし。





622: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/08(火) 07:31:56.76 ID:wOokVTLio



ビッグダディ「……オォオオオ!!」メキメキメキ!


ビッグダディは少女についていこうと努力する。



情報屋「ちょちょちょ!!あなたはどう頑張っても入れないサイズ的に!!!やめて!!!」

小柄少女「あっはは!!バブルス!外で待っててくれる?」


ビッグダディ「オオ……?」


小柄少女「んっ?大丈夫だよ!女の人だし!」

ビッグダディ「ォォ……」ズシン…


少女の言葉を信じ、ドアから離れる。


情報屋「……ありがとう、もう少しで家の玄関が強制リフォームされる所だったわ」






625: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 19:54:31.17 ID:UQQYpXq/o


情報屋「ごめんね、わざわざ私の家まで来てもらって……ああ、座ってくれて構わないわ」

小柄少女「…ども」ガタッ

情報屋「……家の中くらいフード取ったらどうかしら?」



少女に対して疑問があった。ビッグダディという注目の的を連れておきながら、自身は身を隠している。

目立ちたいのか、目立ちたくないのか、はっきりしない。



小柄少女「……」


情報屋「……まあいいわ、何の情報が欲しいの?」






小柄少女「……全部」





626: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 19:54:57.32 ID:UQQYpXq/o



情報屋「……ん?」


小柄少女「この地の名前、常識、歴史、世界情勢……あなたの知っている事全て教えてほしい」



情報屋「…………えっ…と……記憶喪失?」


小柄少女「………まあそんなものです」


情報屋「ふうん……ま、詮索はしないでおこうかな」

情報屋「それで、この世界の基本を学べば思い出すと?」


小柄少女(そういう事にしておこう)

小柄少女「…………そうですね」



情報屋「じゃあ、ノースティリスはわかる?」

小柄少女「……ノースティリス?」

情報屋「あー……長くなるけど、いいわね?」

小柄少女「もちろん」






627: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 19:56:31.55 ID:UQQYpXq/o








――――。









628: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 20:02:34.53 ID:UQQYpXq/o





小柄少女「イルヴァ、ノースティリス、パルミア、ザナン、サイモア、ヴィンデール、エーテル、エレア……」


小柄少女「……そしてあの子は、ビッグダディ……」


情報屋「…念のためもう一度聞くけど、あなたはあのビッグダディのリトルシスターでは無いのよね?」


小柄少女「はい……あの子の本当のリトルシスターは……殺されました……」

情報屋「……リトルシスターの肉は肉体を進化させる……よくある事よ」



情報屋「それと知っておいて。動力維持のための供給源が無い以上、あの子はもう永くない」


小柄少女「……」


情報屋「でも、できるだけ近くに居てあげて。……私自身、ビッグダディは所詮機械だと思ってたから、到底信じられなかったけど……一目見て感じたわ。」

情報屋「あの子があなたに寄せる信頼は、リトルシスターと同じ。あなたに危害が及ぶなら、全力であなたを守ってくれるはず」


小柄少女「…はい」






629: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 20:03:09.03 ID:UQQYpXq/o


情報屋「それで、何か思い出した?」


小柄少女(思い出すっていうより、知らなかっただけだけど……)


小柄少女(……次は……)


小柄少女「そういえば、兄……が居ました」


情報屋「おお、お兄ちゃんの存在かぁ!どんな人?」

小柄少女「……とても、強いです」

小柄少女「まるで異世界から来たような人」


情報屋(……なんじゃそりゃ)



小柄少女「……そういえば情報屋さん…あなたは冒険者の情報も扱っているんですよね?」

情報屋「本来はそっちメインなんだけどね」

小柄少女「冒険者の情報を、もらえますか?もしかしたら載ってるかもしれません」






630: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 20:05:11.52 ID:UQQYpXq/o



情報屋「……はい、どうぞ」ドサッ



少女は冒険者の名声ランキング表を渡され、目を通す。



パラッ………パラッ………



小柄少女「……うーん」

情報屋「お探しのお兄ちゃんは見つかった?」

小柄少女「居ないみたいです……これ最新ですか?」

情報屋「そうね……大体最新かな……でも、ここから数百マイル離れた所で新米冒険者が現れても知ったこっちゃないでしょ?」

小柄少女「……確かに」


情報屋「というわけで、定期的に冒険者の名簿に目を通せば、いつかは見つかるかもしれないわ。」

情報屋「その"お兄ちゃん"が冒険者になっていれば、ね」






631: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 20:06:48.07 ID:UQQYpXq/o



情報屋「それで、お兄ちゃんの名前は?」


小柄少女「………"勇者"」


情報屋「……き、聞いたこと無いわ……」


小柄少女「そうですか……」





情報屋「結局の所、これからどうするの?」

小柄少女「とりあえず色んな街を見て、兄を探そうと思います」


情報屋「そう……そうね。それが一番良いかもしれないわ」

情報屋「ああでも、今から次の街へ行くのはやめておいた方が良いわ」


小柄少女「………エーテルですか?」

情報屋「そうよ、3日後には9月。パルミアまでは2日程度で行けるけど、途中で何があるかわからないから」


小柄少女「………盗賊」

情報屋「それもあるし、天候が悪化すれば目も当てられないわ」






632: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 20:10:13.08 ID:UQQYpXq/o



外はすっかり太陽が落ち、街灯が海を照らし、街に神秘的な雰囲気を醸し出す。


ビッグダディ「ォォオオ」

小柄少女「よいしょっと」ストン


すっかり手慣れた動作でビッグダディの肩に乗る。


小柄少女「……今日はありがとうございました」



情報屋「結局そのフードは取ってくれないの?」

小柄少女「……ごめんなさい」

情報屋「そ。じゃあまた会った時、お兄ちゃんに会えてれば…その時は、見せてくれる?」

小柄少女「…………いいですよ」

情報屋「ふふっ!じゃあまたね!!」

小柄少女「…はい」







633: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 20:10:41.17 ID:UQQYpXq/o





バタンッ……



情報屋「ふう、不思議な子だったわね……」



情報屋「あれ?そういえば、あの子のお兄さんが異世界から来た人なら、あの子も異世界から来た人……?」



情報屋「…………この世界の事をまるっきり知らなかったのも、辻褄が合う………」



情報屋「……」



情報屋「……まさかね!!」










634: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 20:31:44.06 ID:UQQYpXq/o







ガシャッ…ガシャッ…


ビッグダディと少女は、街の夜風に吹かれながら"街の外"へと向かう。


小柄少女(さてと……エーテルの風が吹くのは3日後……今からパルミアに向かうと2日……)

小柄少女(………行こう。エーテルは一度起きると数日は続くらしい……もう情報の得られないルミエストに居ても時間の無駄だ)




ガシャッ………



と、不意にビッグダディが停止する。


小柄少女「……?どしたの、バブルス」

ビッグダディ「ォォォ」

小柄少女「……本?」


ビッグダディの目の前に、一冊の本が落ちていた。

少女はビッグダディの肩から飛び降り、手に取る。






635: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 20:42:38.68 ID:UQQYpXq/o



小柄少女「……"これから日記をつけようと思う"……」

小柄少女「あれ、これだけ?」


本は日記だった。但し1行しか書かれていなかった。


辺りを見回すと、道端で座り込んでいる人が目に入る。



小柄少女「………あの〜」


???「……」


少女が話しかけるも虚しく、返事が無い。



まだ薄暗いというのに、闇に溶けてしまいそうな黒紫の髪、

切れ目に赤を使った黒のマントに身を包むその男性は、

虚ろな目をしたその表情が、雰囲気をさらに暗いものにする。






636: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 20:51:56.94 ID:UQQYpXq/o



小柄少女「これ、あなたのものですか?」









「私は…生きている価値があるのかな?」


小柄少女「…え?」


「才能のある者の努力とない者の努力は、果たして同じなのだろうか?」

小柄少女「は、はあ」


脈絡の無い返事に、困惑する。







637: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 21:14:09.76 ID:UQQYpXq/o



「私の妹は、このルミエストの都で絵描きを目指していた。

 彼女は美しいものを愛したが、画家としての才能には恵まれてなかった。

 自分の限界に気付いた彼女は精神を病み、周りの者に当たり散らかした。」


小柄少女「はぁ〜」ザッ


突如語り始めたその男の話などに構っている暇は無い。無視してパルミアへ急ごうと、男に背を向けた……が。



「罵られ、蔑まれ、誰からも理解されないまま、冬のある日、湖に身を投げて死んでしまった……」



小柄少女「っ……」ピタッ


今の話で何を感じ取ったか、少女の足はパルミアへ向かうのをやめた。





638: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 21:20:01.77 ID:UQQYpXq/o



「私は知っていたよ…身体を壊すほどに、妹が絵の勉強に励んでいたこと。

 常人離れした情熱と、名声への憧れ。だが、妹が死んで間も無く、一人の天才がこの都にやって来て、

 何の努力もなしに彼女が望んでいた全てを手に入れてしまった。名声、幸福、富…」



小柄少女「……」スタ…スタ…


少女は男に近づいていく。



「恵まれたもの、恵まれないもの、全ては運命の偶然に過ぎない…何がいいたいかよくわからないか?

 そうだな、私自身、この感情をうまく説明できないんだ。

 ただ、私には人生の意味が分からなくなった…ただそれだけだ。」




話は終わったようだ。男の目の前に立った少女は男を見つめ、そして……






 パアンッ!!!!!!





ルミエストに、強烈な平手打ちの音が響いた。






639: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 21:56:53.47 ID:UQQYpXq/o



「……すまない。迷惑だろうね、君にとってこんなどうでもいい話――」

小柄少女「わかるよ」



「……なに?」



小柄少女「誰からも理解されない……それはとても……とっても、辛い事」


小柄少女「……でもね、あなたお兄ちゃんだったんでしょ?」


小柄少女「どうして理解してあげなかったの?どうして守ってあげなかったの?」


小柄少女「どうして傍に居てあげなかったの!!??あんたはお兄ちゃん失格だ!!!!」



「な……」



男の目に、光が戻る。





640: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 22:14:40.04 ID:UQQYpXq/o




小柄少女「……私の"お兄ちゃん"は、そうしてくれた。"お兄ちゃん"のおかげで、今の私が居る」

小柄少女「だから私は、"お兄ちゃん"の傍に居るって決めたんだっ!!!」


「……はは」ツー…


小柄少女「何がおかしい――あ」



今まで同情、励ましの言葉しかもらえなかった男に


少女の言葉が、男に涙を与えた。




「私の名は『レントン』、魔術師だ。……ありがとう、ここまで罵倒されたのは初めてだよ」スクッ!


レントンという名の男は勢いよく立ち上がる。男を包んでいた暗い雰囲気は消え去っていた。






641: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 22:38:30.80 ID:UQQYpXq/o



レントン「兄失格……ははっ!その通りだ!」

小柄少女「……?」

レントン「何か吹っ切れた気がするよ。…確かにその日記は私の物だ。ありがとう、拾ってくれて」

レントン「だけどそれは君にあげるよ。好きに使ってくれ」


小柄少女「え、あの」


レントン「ありがとう、見知らぬ人。ついでにこれもプレゼントだ」


レントンが何かを唱えると、少女の周りに白い霧のようなものが舞い始める。


小柄少女「これは…?」

レントン「ホーリーヴェイルだ。しばらく君を悪しき呪文から守ってくれるだろう」


小柄少女「はあ……」

レントン「では!」


黒マントを翻し、ルミエストの街へと消えていく。






642: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/10(木) 22:40:45.86 ID:UQQYpXq/o





小柄少女「……なんだったんだろ……それに日記なんていらないんだけどな」





小柄少女「………」





小柄少女「恵まれなかったからなんだ……」





小柄少女「……私なんて……」








小柄少女「"人間"として生まれる事もできなかったのに」






646: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/21(月) 11:01:36.20 ID:uVSKYDyHo






次の日、太陽は姿を現さず、暗雲が空を覆っていた。





「ではごゆっくり」


ザナンの皇子宿営地で、朝食を終えた二人分の皿を家来が片付けた所で
白子の皇子・サイモアとその側近・ヴァリウスは話を再開させる。



サイモア「そういえば、お前は"奴"とは話した事が無いのだったな」

ヴァリウス「ええ……」

サイモア「気になるか?私が"奴"と話した内容を」

ヴァリウス「…………はい」

ヴァリウス「しかし、サイモア様がお気をつかわれる事はありません」

サイモア「良い、話してやろう」

ヴァリウス「……よろしいのですか?」

サイモア「大したことではないのだ。むしろ、私が話をしたい」

ヴァリウス「…では、拝聴致します」







647: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/21(月) 11:13:33.29 ID:uVSKYDyHo



サイモア「ヴァリウスよ、お前は"神"を信仰しているか?」

ヴァリウス「神……ですか。失礼ながら、特に……」

サイモア「ふふ、私もだよヴァリウス。私は神が嫌いだ」

サイモア「信じなければ何も与えない、傲慢な神どもだからだ」



ヴァリウス「……それで、"奴"と何の関係が?」


サイモア「……"奴"は私に、"神"について聞いてきた」


サイモア「今存在する神の名と特徴の全てを教えろ……とな」


ヴァリウス「……」


サイモア「……元素のイツパロトル、地のオパートス、風のルルウィ、
      収穫のクミロミ、癒しのジュア、幸運のエヘカトル、機械のマニ……」


ヴァリウス「……七柱……ですね。神の名など、常識のような気がしますが」

サイモア「ところが"奴"は私が言い終えた後、こう呟いた」







サイモア「『新しい名が2つ』……とね」






648: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/21(月) 11:18:18.52 ID:uVSKYDyHo




ヴァリウス「どういう事でしょう?」


サイモア「……最後に現れたのは機械のマニ、現れたのは600年前とされている」

サイモア「恐らくマニの前は幸運のエヘカトル、少なくともこの1000年以内だろう。」



ヴァリウス「"奴"はこの2神を、"新しい"…と?」



サイモア「……奴は、最も神に近い者の名も教えろ、とも言ってきた」



ヴァリウス「…………"最も神に近い者の名"……とは?」



サイモア「それは信仰心が最も高く、神に愛されている者の事だろう」

サイモア「その者は、信仰している神と交信・さらには神を呼ぶ事もできるらしい」






649: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/21(月) 11:18:59.49 ID:uVSKYDyHo



ヴァリウス「神を?そんな事が――」

サイモア「できる。私は"あの"研究の過程で偶然、1人だけ知り得ることができた」



サイモア「"風の民"ナルレア……彼女はこのノースティリスで最も信仰の高い冒険者だそうだ」



ヴァリウス「……確か名声ランキング37位の中堅冒険者ですね」

サイモア「覚えているのか。流石だなヴァリウス」

ヴァリウス「恐縮です」


ヴァリウス「しかし彼女は……特に変わり種の無い冒険者だった気がしますが」



サイモア「ここからは噂だが……彼女を襲った盗賊が、返り討ちをうけた話だ」


サイモア「逃げ延びた盗賊の話はこうだ」





650: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/21(月) 11:33:44.86 ID:uVSKYDyHo



サイモア「『瀕死まで追い込んだはずなのに、ヤツが祈った瞬間傷が全て回復した』」

サイモア「『そしてさらに突然人が変わったように高笑いを始め、ヤツが消えた』」

サイモア「『俺が次に見たのは血の海だった』」

サイモア「『ヤツは……もう息の無いメンバーをミンチになるまで……』」


サイモア「盗賊がこのあと発狂死して、続きは聞けなかったらしい」


ヴァリウス「……サイモア様は、これを……」

サイモア「うむ。"憑依"と見ている」



ヴァリウス「そんな貴重な情報を……」

サイモア「面白いが、私にとってはどうでも良い情報だ。くれてやった」


ヴァリウス「"奴"はその者を利用して、何……を……」



ヴァリウスは気づいた。





651: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/21(月) 11:41:07.55 ID:uVSKYDyHo



ヴァリウス「ま、まさか"奴"は、神を……!!」

サイモア「できると思うか?」


ヴァリウス「あ……あり得ません!!」




サイモア「……今日は天気が悪いなヴァリウス。」


サイモアは呟き、ニヤリとヴァリウスを見つめる。



ヴァリウス「っ!!……ご…御冗談……を」


サイモアの言わんとする事を理解し、冷や汗が流れ出す。



サイモア「もしこの後嵐になれば……"奴"は本物の……」




……











652: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/21(月) 12:08:32.33 ID:uVSKYDyHo





「へっくし!」


行商人「風邪ですか?ナルレア殿」


とある街道にて、行商人とその護衛が次の街を目指していた。


ナルレア「あら、この"風の民"に向かって"風邪"とは、面白い冗談じゃない」

行商人「はっは、それもそうですなあ」

ナルレア「冗談を言う暇があったらさっさと荷車引いてよね、そろそろエーテルの風が吹くわ」

行商人「手厳しいですな」

ナルレア「ルルウィ様も、エーテルの風までは面倒見切れないとおっしゃっているわ。さあ早く」



妙に高飛車なこの女性。軽装備をマントで覆い、腰には短剣と小さな盾を装備
背中には身の丈ほどもある長弓とその矢筒を掛けている。

……イルヴァにおいて、一般的な冒険者の装備に近い。






653: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/21(月) 13:01:29.93 ID:uVSKYDyHo



行商人「……それなら荷車で寝ているあの子、起こしてくれませんかね?」

ナルレア「……諦めなさい」

行商人「そうは言ってもですね?重量を軽くしないと移動が……」





「おい人間、この私が乗る事で重量が増すと?」




行商人「あ……起きてらしたんで

「さて、どうミンチにしてやろうか……」




行商人が荷車の上を見上げるとそこには



ピンクのツインテールに漆黒の翼を広げ

不敵な笑みを浮かべて見下している美少女がそこに居た。






654: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/21(月) 13:14:09.07 ID:uVSKYDyHo



行商人「……あ」


行商人は何かに気付き、前を向いて馬を引く。


「ふん、怖気づいたか人間め。神の化身であるこの黒天使デイフォード様の恐ろしさが」

ナルレア「フォーちゃん、パンティ見えてるわよ」



「…………」



黒天使と名乗った少女はスカートだ。そして彼女は荷車の上に立っている。

当然の結果だった。







655: ◆0n5oW5RoIa9K 2014/07/21(月) 13:33:43.51 ID:uVSKYDyHo

*保存*

また夜投下します




657: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/21(月) 17:47:16.97 ID:mnZ0NhKHO

脱ぎたてのやつを投げつけるんですねわかります




658: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/21(月) 19:19:41.39 ID:AAJZcQRJo

行商人紳士だなww




【Elona】勇者「ノースティリス?」【後編】へつづく

・SS速報VIPに投稿されたスレッドの紹介でした
 【SS速報VIP】【Elona】勇者「ノースティリス?」【魔王勇者】
管理人 のオススメSS(2015/07/04追加)
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