転載元:少女勇者「エッチな事をしないとレベルがあがらない呪い…?」


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後日譚
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幼女「キモヲタに誘拐された時の話をしよう」
勇者「終わりだな」魔王「まぁまて世界やるから」
ダンブルドア「ハリー、君は最近勃起をしているのかのう?」ハリー「えっ?」

474: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 22:39:56.72 ID:gb2QxbLno



第21話<懐かしい味>



マナによる衝撃の告白から一夜。
俺はすっかり落ち込んでいた。
いまは潮風にふかれながら遠い水辺線をぼうっと眺めている。

傭兵(俺は劣等種…俺は劣等種…俺はもはや出来損ないのオス)

傭兵(いやオスですらない…俺は無性別のスライムです)

どんよりした俺の心うちとは裏腹に、からっと晴れ上がった上空では海鳥達がナンパに励んでいた。
俺をあざ笑うかのような甲高い鳴き声をあげて、周囲を飛び交っている。

傭兵「…くそっ」

しかしこれで合点がいった。
どうりであれだけ中で出したユッカやヒーラちゃんが妊娠しないわけだ。

そう、俺の精子はそこらの凡夫にも劣る類まれなる雑魚だったのだ!

傭兵「ははっはははは!!」


勇者「ねぇかわいそうだよ…教えなきゃよかったのに」

魔女「私の責任ではない」




475: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 22:46:06.80 ID:gb2QxbLno

勇者「慰めてあげようよ!」

僧侶「こればっかりはそっとしておいたほうが…。とってもデリケートな問題ですよ」

勇者「ボク行ってくる!」

僧侶「あぁぁ…絶対余計なこと言っちゃいますよ」


勇者「そ…ソル」

傭兵「どうしたユッカ。情けない男を笑いに来たか」

勇者「元気だして!」

傭兵「出るかよ…こんなショックなことは久しぶりだぜ…」

勇者「ソルの…ぉ、おちんちんは立派だよ! 精子は死んでるけど…」

傭兵「…海に放り投げるぞ」

勇者「あわわわっ」

勇者「で、でも考えようによってはいつでも好きなタイミングで女の子を妊娠させられるってことだよ!」

傭兵「…」




476: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 22:51:54.31 ID:gb2QxbLno


勇者「えっと、ボクが魔力を貸すでしょ、それでソルがびゅーって中で出すでしょ?」

勇者「そしたらソルの精子も魔力を得て、赤ちゃんできるかも! すごくない!?」

勇者「ね!? マナもきっとそういうことを考えてボクに強くなれって言ったんだよ!」

傭兵「…はぁ」

傭兵「じゃあいますぐ魔力貸せ。船室でお前を犯しまくってほんとに孕むか実験してやる」ガシッ

勇者「ふええやめてよぉ落ち着いて!」

勇者「あれ…泣いてる?」

傭兵「泣いてない」

勇者「…よしよし」なでなで

傭兵「ユッカ…」

勇者「いい子いい子…」なでなで

傭兵「…薄々感じてはいたんだ。俺はお前たちを幸せにできないんじゃないかって」

勇者「そんなことないよ! ボクはソルと一緒にいて楽しいし、十分幸せだよ!?」

傭兵「だが、オスとして責任を俺は果たせない……終わりだぁ!」

勇者「あ゛ー待ってぇ! 飛んじゃだめだよぉ何やってるの!」がしっ

傭兵「はなせぇ! 魚の餌になれば俺の血肉はまわりまわって後世に伝わるんだよぉおお!!」




477: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 22:57:36.65 ID:gb2QxbLno


勇者「自分の役目をおもいだしてよぉ!」

傭兵「役目…! はっ! すまん…そうだ俺はまだ死ねない」

勇者「ほんとだよ」

傭兵「なら魔王の復活を阻止したら、こんな役立たず切断して…」

勇者「ちがうちがう!!」ぼかぼか

勇者「はぁ…困ったちゃんだなぁソルは」

勇者「ボクの手を焼かせないでよ」

傭兵「それお前に言われるとすっごいムカつくな」

勇者「よし待ってて。ボクが傷心のソルのためにお昼作ってあげるよ」

傭兵「お前料理作れるのか?」

勇者「作れるよ! オクトピアにつく前に約束したでしょ? ソルのためにご馳走するって」

傭兵「したっけか…したような、してないような」

勇者「むー…まぁ見ててよ。ソルの舌をうならせてあげるからね」

勇者「厨房かりてこよーっと」

傭兵「頼むからヒーラちゃんか船のシェフに手伝ってもらってくれ」

勇者「ひとりでできるもん!! ばんのうな勇者を侮るな…」

傭兵「お、おう…?」




478: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 23:04:23.94 ID:gb2QxbLno



  ・  ・  ・


<昼>


僧侶「楽しみですね」

魔女「不安でいっぱい」

傭兵「俺もだ。ユッカが飯ねぇ…」

傭兵「念のため船のコックに注文しておくか」

僧侶「失礼ですよ! ご飯をつくってあげたいとおもう乙女の気持ちを汲んでください」

傭兵「ヒーラちゃんはいつもそういう気持ちでつくってるのか?」

僧侶「ソル様たちの笑顔を思い浮かべながらつくってます」

傭兵「うまいわけだ」

魔女「おなかすいた」

勇者「おまたせ〜〜〜♪」


ユッカがニコニコしながら大きな鉄鍋をもって甲板にやってきた。
テーブルに配膳された食器からすると、カレーかシチューであろうことは予測できる。

傭兵(カレーなら失敗しないだろうな)




479: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 23:09:01.22 ID:gb2QxbLno


僧侶「お疲れ様ですユッカ様!」

魔女「はやく」

勇者「じゃじゃ〜ん。蓋あけるよ〜♪」

そうしてユッカは勢い良く大鍋の蓋を開いた。

僧侶「わぁ…」

魔女「黄色い」

傭兵「これは…」

中からは黄金に輝くドロリとしたスープが現れた。
やや甘い匂いが鼻孔をくすぐる。
とてもうまそうに感じたが、よく観察すると野菜はゴロゴロと不揃いに切られていた。

僧侶「おいしそうですね! ですが、ちゃんと煮えていますか?」

勇者「大丈夫だよ! 味見したもん」

傭兵「…」

勇者「どうしたの?」

傭兵「い、いや…一応聞いておくがこれってなんのスープだ」

勇者「もうっ! 匂いでわかるでしょ!」

勇者「パンプキンスープだよ!」

勇者「 か ぼ ちゃ !」

傭兵「かぼちゃ……」

傭兵(これを…ユッカが…?)




480: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 23:14:11.59 ID:gb2QxbLno


取り分けられた皿からスプーンですくい、その黄金色のスープをおそるおそる口元へと運んだ。

口の中に濃厚すぎるかぼちゃの味が広がる。

傭兵「……」

勇者「どうしたのソル?」

勇者「美味しくなかった…? 美味しいよね?」

僧侶「お、おいしいです〜!! すごいユッカ様すごいです!」

魔女「おいしい」ずるるっ

勇者「えへへ〜、実はこれ得意料理。なぜかパンプキンスープだけうまく作れるんだぁ」

魔女「おかわり」

勇者「いっぱい食べてね。で、ソルはどう? ボクのこと見なおしたでしょ?」

勇者「ちゃんと料理だってできるんだよ!」

ユッカは得意げに無い胸をはった。
コックから強引に借りたであろう背の高い白い帽子が風に揺れていた。

勇者「ソル…? まだ落ち込んでるの? ボクのスープたくさん食べて元気だしなよ」

傭兵「あ、あぁ…」




481: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 23:21:22.13 ID:gb2QxbLno


胸の中でざわめく奇妙なひっかかりの原因はすぐにわかった。

俺ははっきりとこの味を知っていた。

覚えていたんだ。

気づいた時には食器を置き、隣の席で微笑むユッカを抱き寄せていた。

水の入っていたコップが1つカシャンと勢いよく倒れて机を濡らした。

勇者「ちょっ…ソル…? どうしたの」

僧侶「ソル様…?」

傭兵(お前だって……小さな体のどこかで、この味を覚えていたんだな)

勇者「んぅ…? い、痛いよぉ…なんなの?」

スープを舌で味わいユッカのぬくもりを腕に感じながら、俺は遠くに置いてきた在りし日に想いを馳せた。

そう、それは俺が魔力を失うきっかけとなった出来事。
そして、いまに続く運命が始まった日。



<およそ8年前>


【雪の降る森】


傭兵「くっ…う…」

傭兵「ここは一体どこなんだ…もう3日も歩き続けてる…」


当時、10代の俺は傭兵業を日々の糧に世界中を転々としていた。

幼いころから少年兵としてずっと血で血を洗う戦いに身を置いてきた。
しかし、忠義を尽くし一生を捧げたいと思えるほどの人物に出会うことがなかった。




482: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 23:27:25.09 ID:gb2QxbLno


生まれつき根無し草が性に合っていた。
そうして常に場所を移らなければ、恨みを買った者に昼夜問わず命を狙われるだろう。
あてもない旅が唯一の生き延びる術だった。

だがそれもここまで、悪運と食料は尽き、俺はいよいよ生命の危機を迎えていた。


傭兵「寒…い…」

傭兵「腹…へった…」

傭兵「こんな名前もしらない森で…俺は死ぬのか」

傭兵「くだらない人生だったな…親の顔も知らない…仲間もいない…」

傭兵「来る日も来る日も殺して…また殺して…」

傭兵「俺は…なんのために生まれてきた」

吹雪く闇夜の空を見上げても俺を導いてくれる星ひとつみえやしない。
もはや自分がどっちへ向かって歩いているのかもわからなかった。

俺は死を覚悟して、側にある大木に背を預けて座り込んだ。

傭兵「朝には…きっと死んでるな」

傭兵「ざまぁないぜ…これが俺への罰なら…お似合いだ」

己の身を守る魔力もいよいよ薄くなりはじめ、寒さが身を突き刺す。




483: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 23:33:12.62 ID:gb2QxbLno


傭兵「死ぬ前にせめて……」

その先何を言おうとしたのかわからない。
会いたい人はいない。行きたい場所もない。やりたいこともない。
未練はこれっぽっちもないはずだった。
地獄へおちてもかまわないと思いながら、日々殺生を繰り返してきてはずだったのに。

なのに今際の際の俺の口をついて出たのは現世への未練だった。

欲しかったのは暖かい食べものか、心穏やかに眠れる家か、それとも愛する相手か。
俺は何ひとつ持っていない。
天涯孤独だった。

傭兵(まぶたが重い…)

傭兵(別れを告げる相手すらいないなんて…本当にくだらない人生だった)

傭兵「……――」

全てを諦めた時、ぼやける視界の中になにか動く物が見えた。
それは降り積もった雪をかき分け、ザクザクと足音をたてながら、俺に近づいてくる。

そしてそいつは身動きとれない俺をなにか棒のようなものでつついた。


???「ねーねー。おにいさんなにしてるの」




484: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 23:36:54.29 ID:gb2QxbLno


???「ここでねたらさむくてしんじゃうよ」

傭兵「……――」

???「ねむたいの?」ツンツン

傭兵「……――」

???「ママ! ねてるひとがいるー」

傭兵(子供…か……――)

やがて俺は意識を失った。



  ・  ・  ・


傭兵「!」

傭兵「…? ここは…」

気が付くと俺は見知らぬベッドに横わたっていた。
小さな家の中で暖炉が勢い良く燃え盛り、寒さに凍えた俺の身体を温めている。

窓の外は激しく吹雪いていて、強い風が小窓を打ちガタガタとうるさく震えていた。




485: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 23:42:05.52 ID:gb2QxbLno


傭兵(一体どこだ…)

傭兵(俺は死んだはずじゃ…助かったのか?)

子供「ママー! おきた!」

傭兵「…!」

ベッドの脇で活発そうな見た目の子供がジーっとこちらを覗いていた。
さきほどぼんやりとした意識の中で見えた子供と同じだった。

部屋の奥から、1人の女性がお盆を持って出てくる。
栗色の長い髪をしたとても美しい人だった。
ずいぶんと若く見えるが、どうやらこの子供の母親のようだ。

その人は優しい笑顔で俺に歩み寄り、手にしたスープを差し出した。

母親「飲んで。温まるよ」

傭兵「…俺を助けて…くれたのか」

母親「ユッカがキミのことを見つけたんだよ。あ、ユッカっていうのはこの子ね」

子供「えへへー。ボクもスープほしー」

傭兵「…」スッ

母親「それはあなたにあげた分。ユッカはこっちでしょ」

子供「はーい」




486: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 23:47:26.94 ID:gb2QxbLno


母親「さ、早く飲んで」

傭兵「…いただ…き…ます」

子供「いただきまーす!」

その黄金色に輝くかぼちゃのスープは、心身ともに疲弊した俺をまたたく間に癒してくれた。
いまだ凍える体を芯から温めてくれた。
スプーンがとまらない。
舌と喉をやけどしても俺は懸命にすすり続けた。

母親「うふふ」

子供「ずずずっ、ずずっ」

母親「もう、ユッカ。綺麗にたべなきゃだめだよ。またお口の周り汚して」

子供「ごめんなさーい。ねーママのスープおいしーでしょ」

傭兵「…」

母親「どう? お口に合う? 田舎くさい料理でごめんね」

傭兵「とても…うまい…。俺…こんなスープ飲んだこと無くて」

母親「お腹まだまだ空いてるでしょ。おかわりあるからね。たくさん食べて温まって」

子供「おかわりー!」

母親「あなたはいいの」

傭兵「…」

見ず知らずの他人にもてなしてもらったことは初めてだった。
誰かの優しさに触れたことすらなかった。
不思議と、なにか熱いものが頬を伝っていた。

傭兵(俺は…生きている…)




487: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 23:52:56.46 ID:gb2QxbLno


母親「よっぽど疲れてたんだね」

母親「あなたが倒れているところを見つけてびっくりしちゃった」

傭兵「礼を言ってなかった…助けてくれてありがとう」

母親「いいよ気にしないで。困った時はお互い様でしょ」

母親「んーと、でもあなた村の人じゃないよね。旅人さん?」

傭兵「…あぁ」

母親「そっか! 体力が回復して、外の吹雪がやむまでゆっくりしていって」

母親「何にもない家だけど、ここは安全だからね?」

子供「おなまえなんていうの!?」

傭兵「俺は……ソル」

子供「ボクはユッカ!」

ユッカと名乗った少女は口元を黄色でベタベタにしながらニッコリと歯を見せて笑った。

母親「私はユッカの母親のユイ。よろしくね」

傭兵「ユッカ…。ユイ…さん…」

ユイさんは優しく微笑みながらそっと俺の手に触れた。
まるで知りもしない母親のぬくもりのように感じた。

それから数日間、天が俺をここに足止めするかのように大雪の日が続いた。




488: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/22(月) 23:59:48.76 ID:gb2QxbLno



  ・ ・ ・


母親「そっかぁ! ソル君は剣が得意なんだね」

傭兵「ま、まぁ…いちおう傭兵やってるから」

母親「…んー」

傭兵「ユイさん、火。鍋吹いてる」

母親「あわわっ、危ない危ない。お料理中にお話しちゃだめだね? えへへ」

傭兵「雪、すこしおさまってきた…きましたね」

傭兵「俺、明日にはここを発ちます」

母親「えっ」

傭兵「見ず知らずの人の家に世話になりっぱなしにはいかない」

母親「気にしなくていいのに。見ず知らずだなんて、もうこうして知り合いでしょ」

子供「ねーソルー。かたぐるまかたぐるま」

母親「ユッカすっかり懐いちゃったね」

傭兵「……」

子供「しゃがんでよー」

傭兵「しかたねぇな…」


俺は誰かに一方的な施しを受けることは好きではない。
しかしこの家は、決して居心地は悪くなかった。




489: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/23(火) 00:05:36.49 ID:NPM7dZFGo



ガチャッ


???「おお、ユイ。雪がおさまってきたので様子を見に来たぞ」

母親「パ……司祭様!」

子供「あーおじいちゃーん」

傭兵「…?」

突然家に中に豊かなヒゲを蓄えた中年の男が入ってきた。
ユッカはその男のことをおじいちゃんと呼び、俺の肩の上で激しく手を降っている。
ということはユイさんの父親にあたる人物だろう。

しかしその男は俺を見かけるやいなや、眼光を鋭くし大きな声で吠えた。

司祭「なんじゃ貴様は!」

司祭「ユッカを離さんか!!」

傭兵「…!」

母親「あっ…違うのパパ…この人は」

司祭「またユッカを付け狙う賊どもか…ええい。許さん…」


男は詠唱とともに手の中で魔力を練り始めた。
敵意は確実に俺へと向けられている。


傭兵「ユッカ。降ろすぞ」




490: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/23(火) 00:10:55.40 ID:NPM7dZFGo



傭兵「いますぐ出て行く。ここで魔法を使わないでくれ」

司祭「…消え失せろ!」

母親「待ってパパ。違うの!」

司祭「なんじゃユイ。こいつはお前たちを狙って」

母親「先日の大雪で遭難しているところを私が助けたの」

司祭「む…」

傭兵「お世話になりました」

母親「あ…」

子供「あーソルやだよー」トコトコ

司祭「なっ! これユッカ。得体のしれぬ男に近づくでない」

司祭「やはり成敗せねばならぬか! きぇえ!!」

傭兵「…」

家の扉をくぐった俺の背後で、男は魔法弾を発射した。
俺はそれを目の端で捉え、振り向くと共に抜刀し軽く弾き飛ばした。

司祭「なにっ!」

母親「すごい…パパの魔法をあんな簡単に…」




491: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/23(火) 00:20:25.30 ID:NPM7dZFGo


傭兵「もうここには近づかない。それで許してほしい」

傭兵「そうだ。これ、少ししかないが、宿代として受け取ってくれ」

俺は腰につけた路銀の入った巾着を玄関に置いて、しんしんと降る雪の中を歩き始めた。

司祭「…」

母親「待ってソル君!」

しかしなにをおもったかユイさんによって背後から抱きとめられる。
いつのまにか足元にはユッカがしがみついていた。

母親「あのね…」

母親「ソル君がよければ…もうすこしここにいてほしい」

司祭「何を言っとるんじゃ! そやつは見るからに怪しい男で…」

母親「パパの馬鹿! わかるでしょ!」

母親「ユッカがこんなに懐いてるのに悪い人なわけないじゃない! この子の魔覚を侮らないで!」

司祭「む、むぅ…しかしだな。用もなく男をお前たちに近づけるわけには…」

母親「用ならあります」

母親「前からパパ言ってたよね。ガードをつけなさいって」

司祭「ま、まさか…ユイお前」

母親「私はソル君を我が家の、ユッカのガードとして雇います」

司祭「ひぇ〜!?」

傭兵「え……?」

母親「いいでしょ? ね? 傭兵は、お金で仕事をするんだよね?」ニコリ

傭兵「えぇ…金がもらえるなら」

母親「なら契約成立! これからよろしくね!」


こうしてひょんなことから俺のガードとしての仕事が始まった。



第21話<懐かしい味>つづく




493: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/23(火) 00:37:16.71 ID:QXkt0mnK0

一番気になっていた過去がついに来た





494: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/23(火) 00:48:39.47 ID:KHBaQTHg0


いよいよか…




506: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 22:06:35.99 ID:XI8FMvWTo

第21話<懐かしい味>つづき



司祭「ガードを務めることは許す」

司祭「しかし、この家で寝泊まりすることはゆるさーん!」

傭兵「!」

司祭「貴様のような若い男が、可愛いユイやユッカと共に暮らしてなにもせんわけがない」

母親「もう…パパったら何言ってるの」

傭兵「たしかに」

母親「ええ!? ちょっ…ソル君何言ってるの」

傭兵「家事を手伝うくらいはする」

司祭「そういうことをいっとるんじゃないわ!」

司祭「貴様には村の宿を貸し与える」

司祭「この丘の家と村とを毎日毎日毎日雨だろうが風の日だろうが往復してもらう」

傭兵「丘? ここは丘に建っているのか?」

司祭「なんだ知らんのか」

母親「だからねパパ、私が遭難して倒れてるソル君をずるずるひっぱってきたんだってば」

母親「ちょうどここから見えるあの森だよ」

ユイさんが指さした先には小さな森があった。
その森を抜けた先にはポツポツと灯りが見える。おそらくそれがこの男の来た村だろう。




507: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 22:12:14.48 ID:XI8FMvWTo


傭兵「家族なんだろ? なぜ離れて暮らしている…んですか」

司祭「ふんっ。貴様に話す筋合いはないわ」

母親「パパ…これからガードになってくれる人にそんな態度よくないよ」

司祭「人前では司祭様とよばんか!」

母親「ごめんねソル君。ほんとは怖い人じゃないんだよ?」

母親「ただ最近、この辺りに不審な人が出るから気が立ってるの」

司祭「お前たち親子のことが心配で心配で、こうして見回りにきたというのに」

司祭「どこの馬の骨ともわからん男なんぞ連れ込みよってからに!!」

傭兵「そういえば、旦那さんは」

母親「…」

傭兵(聞いちゃまずかったか)

子供「パパいないのー」

母親「この子が生まれるよりも先にね…体の弱い人だった」

傭兵「そう…ですか」

母親「この丘は、あの人との思い出の場所なんだ。だから私は多少不便でもここに住み続けるの」




508: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 22:17:24.61 ID:XI8FMvWTo


司祭「一度言い出したら聞かん頑固娘でな」

司祭「近頃は物騒だから村へ住めと口を酸っぱくして言うとるのに」

司祭「家のなかで貴様がユッカを抱えているのをみて卒倒しそうになったぞ…」

傭兵「誤解を与えてすまなかった」

母親「謝らなくっていいよ。パ…司祭様のただの早とちりだもん。恥ずかしいよ」

母親「それに、これからは危ない人が来てもソル君が守ってくれる。でしょ?」

傭兵「全力で守ります。腕には自信がある」

司祭「ふん、ぬかしおる」

母親「えへへ。頼りにしてるからね」

子供「わーい」

司祭「まだ実力は眉唾ものじゃ。一度村へ来てもらう」

母親「もうっ! 私が頑固なのはパパ譲りだよ」

司祭「村一の使い手と手合わせして、もし貴様が負けるようなら…」

司祭「かねてからの約束通り、そっちの男をユッカのガードにつける事とする」

母親「私あの人苦手。それにあのおじさんもう良い歳でしょ。毎日往復してもらうの大変だよ」




509: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 22:20:29.65 ID:XI8FMvWTo


子供「おうちいてくれるのソルがいい…」ぎゅ

傭兵「…」

司祭「むぐ…ユッカよ、これはとても大事なことだからな?」

子供「ソルいじめるおじいちゃんきらーい」

司祭「!」グサッ

母親「私もパパきらーい」

司祭「ひぇぇえ許してくれ。きらいにならんでくれ」

母親「くすくす」

傭兵(娘を持つ親は大変なんだな)

傭兵(手合わせか…誰が相手でも問題ない)




510: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 22:25:42.03 ID:XI8FMvWTo



【小さな村】


司祭「ここは太陽の村と言う」

傭兵「太陽?」

司祭「そうじゃ。貴様は魔王と勇者の話を知っておるか」

傭兵「おとぎ話に興味はない」

司祭「遥か数百年前、闇を照らす太陽の勇者はこの地で生まれ、古の災厄である魔王を討ったとされている」

司祭「ゆえに伝説の勇者様にあやかって太陽の村だ」

傭兵「そうなのか」

斧男「おお、司祭様。その若造は誰です」

司祭「良い所に来たな。手はあいておるか」

斧男「ええ、まぁ。もしかして例の話うけてくれたんですか!」

斧男「俺、ユイちゃんのこと全力で守りますよ!」

斧男「四六時中、片時も離れることもなくガードするぜ!」




511: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 22:32:45.89 ID:XI8FMvWTo



ちょび髭を生やした恰幅の良い大男が司祭に向かって何度も頭を下げていた。
表情を伺うとずいぶんと鼻の下を伸ばしている。


傭兵「例の村一番の使い手か?」

斧男「あぁ? で、誰なんです」

司祭「ユイのお気に入りの男じゃよ…はぁ」

斧男「なな、なんだと!? こんなやつ見たこともねぇぞ。城下町から来たのか!?」

傭兵「流れの者だ。この辺りの人間じゃない」

斧男「んなやつにユイちゃんとユッカちゃんを任せられるか!! ユイちゃんは俺が幸せにしてみせる!!」

司祭「どれ1つ手合わせしてみろ」

司祭「勝者をユッカのガードとする」

傭兵(ユッカの…? まぁなんだっていい)


村の広場で一騎打ちが始まった。
ぐるりと俺たちを取り囲うように村民の人だかりができている。


村人「なにがはじまるってんだ? あの小僧はなんだ」

村女「ほら、ユッカちゃんのガードがどうたらって話あったろ」

村人「あぁ…にしてもありゃ知らない顔だ」

村女「大丈夫なのかねぇ。村の真ん中で血なまぐさいことはごめんだよ」




512: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 22:36:59.52 ID:XI8FMvWTo


俺は腰の錆びた刀剣を抜き、ゆらりと構えた。

斧男「なんだそのボロい剣は。若造、尻尾巻いて逃げるならいまのうちだぜ」

傭兵「来い」


決して戦いが好きだったわけじゃない。
俺は戦いに身をおくしか日々の糧を得る術を知らなかった。
物心ついたころからずっとそうして生きてきた。

武の才を与えてくれた顔もしらない両親に感謝しなくてはならない。
俺の体は戦いとなると自然と血がたぎり、躍動し、地を蹴って宙を跳ねた。

傭兵(まず一撃)

空中で横一線になぎ払う。

手加減して打ち込んだその斬撃を斧男はかろうじて受け流した。

傭兵(動き悪くないな。手練というのは本当のようだ)

次は少し距離をあけ、相手の攻撃をあえて受けてみる。
大きく振りかぶられた斧がビュンと風切音と共に眼前に迫った。

細い刀身に魔力を張り巡らし、振り下ろされた重撃を受け止める。

傭兵「!」

しかし、すでにボロと言っていい俺の剣はダメージに耐え切れず、
金属の破片をまき散らしながら真っ二つに砕け散った。




513: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 22:42:56.95 ID:XI8FMvWTo


傭兵「やるな!」

大男はその巨躯に見合わず正確無比な攻撃を繰り出してくる。
当たれば即死とはいかずとも深い傷を負うだろう。
そう、彼は自らの力を証明するために、よそ者である俺に対して容赦する必要などない。


斧男「ははは! 直撃はしなかったが得物は奪ったぞ!」

斧男「どうしたどうした! 避けてばっかりじゃつまらねぇぞ」

斧男「さぁ痛い目見る前に諦めろ若造。ユイちゃんは俺がまもるぜぇ」

傭兵「護る…」

誰かを護るのは誰かを殺める以上の力がいる。
俺は依頼されるがままに殺すことしかしてこなかった。
俺に出来るのだろうか。俺に彼女たちを護れるのだろうか。

傭兵(いや、やるしかない)

傭兵(なぜなら、俺はまだ救われた恩を返していない!)

折れた剣を放り投げ、男相手に再び向かい合う。
たとえ丸腰であろうと戦いにおいて恐れを感じたことはない。
危機は幾度となく乗り越えてきた。
俺の中で熱く魔力が燃え上がった。



  ・  ・  ・


<数分後>


司祭「これは…」

村女「なんてことだい信じらんないね」




514: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 22:47:44.76 ID:XI8FMvWTo


村女「村一番の戦士をあっという間にのしちまった…」

村男「ほとんど目で追えなかったぞ…」


母親「司祭様」

司祭「おお、ユイにユッカ。何しに来た。家で待っとれといったのに」

母親「お買い物。家はちゃんと閉めてきたから」

母親「あれ、ソル君」

子供「ソルとおのおじちゃんだー」

傭兵「…」

俺の足元には斧男が泡を吹いて倒れていた。
自慢の斧は無残に砕け散り、俺の折れた剣以上に見る影もない。

斧男「 」

司祭「ふぅむ…まさか素手でここまでやるとは」

母親「も、もしかして決闘!? もーやめてよパパぁ」

司祭「なんという力……」

司祭「身体能力、魔力ともに、あの青年に天が二物を与えたというのか…」




515: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 22:53:57.24 ID:XI8FMvWTo


子供「おのおじちゃーん。げんきー」ペチペチ

母親「こらユッカ」

斧男「う……げほ」

傭兵「…悪い。もっと手加減するはずだったが、抑えられなかった」

斧男「…ぐ、げほっ…なんつーやつだ」

傭兵「起き上がれるか」ガシッ

斧男「すまねぇ……はっユイちゃん!? きゃー恥ずかしいとこを見られちまったぁ!!」ドタドタ

傭兵「なんだ…? まぁ元気そうでよかった」

司祭「…決まりだな。小僧、暫くのあいだ村の護り手としてユッカたちを頼んだ」

母親「ありがとう司祭様! よかったねソル君!」

子供「わーい」

傭兵「金と部屋さえもらえればなんでもやるさ」

母親「そうだ怪我はない!?」

傭兵「平気です」

母親「手から血でてるよ…すぐ手当しなきゃ」

傭兵(斧を砕いた時か。たいしたことなさそうだな)ペロリ

子供「こっちのてもついてるよー。ぺろぺろ」

傭兵「!!」ビクッ




516: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 22:58:50.84 ID:XI8FMvWTo


母親「だめでしょユッカ。ソル君びっくりしちゃう」

司祭「うおおん! おじいちゃんにもぺろぺろしてくれたことないのに! なんでこんな小僧にぃ!!」

司祭「ユッカおいで。おじいちゃんが高い高いしてやろう」

子供「ソルーかたぐるましてー」

司祭「…」ガクッ

傭兵「なんだか悪いな」

司祭「加齢臭だろうか…」

母親「ユッカったら。ほんとソル君来てからべったりなんだから。えへへ」

司祭「いいか小僧。くれぐれも、くれぐれもユイとユッカに間違ったことをせんようにな」

傭兵「しない。俺は雇い主や護衛対象に対して特別な感情をもったことはない」

司祭「ならええが…親としては年頃の娘に男を近づけるのは心配でたまらんのだ…」

母親「年頃って…私とっくに一児の母なんだけど…それももう20も半ばなんだけど…」

司祭「親にとって娘はいつまでたっても娘なの!!」




517: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 23:04:49.35 ID:XI8FMvWTo


村女「やれやれだよこの男は。こんなんでもうちの村長なんだよ」

村人「君これからよろしくなぁ。ソルで合ってるか?」

傭兵「傭兵のソルだ。しばらく世話になる」

村人「困ったことがあったらなんでも聞きな。へっへせっかく外から若い男が来たんだ。逃がしゃしねぇぜ」

傭兵「…?」

傭兵(なんとかやっていけそうだ)

傭兵(ユイさんに引き止めてもらえなければ、またあてもなくこの雪景色を彷徨い歩く羽目になっていたな)


傭兵「それで、俺は何から2人を護ればいい」

司祭「すべてだ。魔物、野盗、暴漢。ユイとユッカに近づくすべてを排除してくれ」

司祭「ここらは比較的平和だからあまり剣を抜く機会はないかもしれんがな」

傭兵「仕事を受ける身でこういうのもなんだが、ずいぶんと過保護だな」

司祭「……」

表情を見るに、ただの子煩悩というわけではなさそうだった。
雇われ兵ごときには言えない何か深い事情があるのだろう。
だがそこを詮索することはしなかった。

傭兵「了解した。俺は俺の任務をこなすだけだ」

司祭「それでいい。お前の寝泊まりする宿舎に案内しよう」

母親「よろしくねソル君!」




518: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 23:09:34.39 ID:XI8FMvWTo




  ・  ・  ・



それから季節がひとつ過ぎ、太陽の村にも春がやってきた。

俺の任務は朝はやくおきることからはじまる。
寝泊まりしている村の宿舎はおんぼろだが、これまでの戦場生活に比べれば決して寝心地は悪くない。
多少手をいれて、外観も内装もずいぶんマシになった。


司祭「おおソル。おはよう。今日も早いな」

傭兵「おはよう。ユイさんの所にこれから向かう」

司祭「ならこれをもっていけ。いましがた畑で穫れた作物だ」

斧男「若造! これももっていけぇ。ユイちゃんは俺の作った豆が大好きなんだ」どさっ

傭兵「こんなにか」

斧男「おめぇさんも食うんだろ? ならこれくらいはないとな!」

傭兵「…助かる」

斧男「ユイちゃんたちと毎日ランチを一緒できるなんてうらやましいぜこのー」

傭兵「側に立っているだけだ」

斧男「んだつまんねぇ男だなぁ」




519: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 23:15:51.24 ID:XI8FMvWTo


村女「あらソルくん、この魚ももっていきなさい。ユッカちゃんにうんと食べさせなきゃね」

村女「タコはきらいだったかねぇ。まぁいいか一緒に入れちゃえ」

傭兵「…ユイさんが喜ぶ」

村女「あぁそれと、うちの椅子の足が一本折れちゃったんだけど、ソルくん直せないかしら?」

村女「あのボロ宿の修理してるのってソルくんでしょ?」

村女「あたしの旦那ったら、日曜大工なんざてんでだめでねぇ。何度直してもぽきぽき折れちまうんだよ」

斧男「おめーが太りすぎだっての」

村女「なんだって! それが女に対していうセリフかい!」

村女「だからあんたユイちゃんにきっぱりフラレんだよ」ブツブツ

司祭「ユイは誰にもやらんぞ」

斧男「そんなぁ…」

傭兵「……。まだ時間があるのでいまから見に行く」

村女「あら悪いねぇ。忙しいのにいろいろ村のやつらの面倒みてもらっちゃって感謝しきれないよ」

傭兵「感謝しているのは住まわせてもらっている俺の方だ。ありがとう」

傭兵「…」

村女「どうしたいんだい?」

傭兵「いや…なんでもない」

傭兵(自分の口から感謝の言葉が出るなんてな)




520: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 23:21:15.18 ID:XI8FMvWTo


村女「なんせ若いもんがみーんな城下町に仕事さがしにいってしまうもんだから、村にはじじばばしか残ってないのさ」

斧男「俺はまだまだ若いぜ!」

司祭「私もそこまで歳を食ったおぼえはないぞ」

村女「40、50をこえたおじんに用はないよ。ささ、ソルくん行きましょ♪」

傭兵「あぁ」

斧男「なははコイツは文句1つ言いやしねぇ。だったらどんどんコキつかってやるか!」

斧男「春になったんだ! やることは山積みだぜ」

司祭「この調子じゃそのうち契約金の見直しをせんといかんな」

傭兵「…」


住み心地のよい村だった。

みんなよそ者の俺のことを暖かく迎えてくれる。

ひとえにこれもユイさんとユッカのおかげだ。
それと彼女の父であり村の有力者でもある司祭の根回しも効いている。

俺は用事を済ませたあと村を出て、森を抜けた先のユイさんの住む丘の家へと向かった。




521: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 23:26:35.80 ID:XI8FMvWTo



【丘の家】


母親「ソル君!」

傭兵「おはようござ…なにしてるんですか」

母親「急いで急いで!」

子供「むぅー…」もぐもぐ

傭兵「どこか出かけるのか?」

母親「そ、それがね! 今日午前中に先生のとこに行く日だったのにすっかり忘れてたの!」

傭兵「先生?」

母親「ユッカはやくたべて。ごっくんして」

子供「ねむいよぉ…」もぐもぐ

母親「ごめんねソル君来てもらったばっかりなのに! この後一緒に村に戻って!」

母親「そこから馬車に乗って王宮に向かうからね」

傭兵「王宮…どうして王宮なんです」

母親「そ、それは…」

傭兵「…?」

母親「ずっとガードをしてもらっていたキミに、私まだ内緒にしてることがある。ごめんなさい」

傭兵「言えないことがあっても問題ないですよ」

母親「馬車のなかで…話すよ」




522: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 23:32:56.91 ID:XI8FMvWTo



【太陽の村】


司祭「そうか。城にソルを連れて行くことにしたか」

母親「うん。だってソル君はユッカのガードだから」

母親「隠し事をするのはよくないと思うの」

司祭「なら、私の代わりに行ってもらうか」

母親「いいの?」

司祭「母親のお前が決めたことだ。それに私達はこの数ヶ月で小僧のことを信頼しておる」

司祭「ええな。村の代表として付き添ってやってくれるか」

傭兵「それが任務なら同行する」



 ・  ・  ・


傭兵「それで、話って」

傭兵「なぜユイさんたちが王宮へ向かうんです」

母親「…」

雪解けとともに開通した山道を駆ける馬車の中で、ユイさんは神妙な面持ちでポツリポツリと話しはじめた。




523: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 23:40:48.92 ID:XI8FMvWTo



母親「今から向かうのは、ユッカの魔法の先生のところ」

傭兵「魔法…? ユッカが魔法の訓練をうけているのか」

子供「うん! まいとしせんせーにまりょくおしえてもらってる」

傭兵「そうなのか…」

母親「この子は特別なんだ」

傭兵「ユッカが?」

母親「ユッカはね…太陽の勇者の血を引いているの」

傭兵「太陽の勇者?」

母親「ユッカは選ばれた勇者様…なんだよ」

母親「この子の魔覚の鋭さは知ってるでしょ。これは勇者に代々発現する能力なんだって」

傭兵「へぇ…。たしかに常人とはかけ離れているとは思ったが…そうだったのか」

傭兵「ならユイさんや司祭にも?」

母親「…」フルフル

母親「勇者の血は私ではなくて父親の方」

母親「あのね、驚かずに聞いてソル君。ユッカの父親はね…この国の王族なの」




524: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 23:47:08.89 ID:XI8FMvWTo


傭兵「王族…勇者…」

母親「だから春になったら週に数回王宮に行って」

母親「魔導師の先生や騎士の先生とお稽古をするの」

傭兵「なぜ王家の人間があんな辺鄙な村のそれも離れの丘に、護衛もつけずに住んでいるんですか」

母親「……」

傭兵(言えないことなのか?)

母親「続きはユッカがお稽古してる間に話すよ」

傭兵「わかりました…」



【王宮】


傭兵「これがこの国の城か」

母親「大きいでしょ! 中はもっとすごいよ!」




525: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/24(水) 23:54:02.80 ID:XI8FMvWTo



王子「む。義姉さん」

勇者「あーおうじさまー」

王子「やぁユッカ。よく来たね」

母親「! グレイス王子…ご無沙汰しておりますっ! 遅れて申し訳ありません」ペコッ

王子「そう固くならなくていいですよ。あなたは我が兄の最愛の君だ」

母親「…」

王子「おや、そっちの者は」

傭兵「ユイさんとユッカのガードをしているソル…です」

王子「そうか。なら通れ」

兵士「ユイ様とガードの方はこちらの別室にどうぞ」


魔導師「おおユッカ。待っておったぞ」

魔導師「魔覚は昨年よりさらに育っておるようじゃな。これも大自然に囲まれた太陽の村のおかげじゃ」

魔導師「さて、稽古をつけてやろう」

勇者「はーい!」




526: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 00:01:16.65 ID:CFTm/eYmo



【王宮・談話室】


傭兵「もしかして、あの王子とやらに嫌われているんですか」

母親「…っ」

傭兵「すいません…」

母親「私は…グレイス様のお兄様であらせられるフレア第一王子の専属のメイドをしていたの」

傭兵「そうなんですか」

傭兵(この話題はあまり立ち入らないほうが良さそうだな)


コツコツ

王子「我が兄は生まれながらに病弱で、ベッドから起きることもままならなかった」

傭兵「!」

王子「だが兄上は勇者としての資格である優れた魔覚と才覚を持ち、正当な後継者であった」

王子「私ではなく、兄上にはあった!」

母親「グレイス様…」

王子「様づけで呼ぶのはやめてもらおう」

母親「いえっ、たかがメイドの私なんかが恐れ多いです…」

王子「恐れ多いだと、ふ。兄上との間に子をもうけておきながらどの口が言うのです」




527: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 00:11:17.65 ID:CFTm/eYmo


傭兵「勇者とは…なんだ? 何をするために存在する」

王子「なにもしらないガード風情が…まぁ良い教えてやろう」

王子「勇者とはこの世の災厄である魔王を打倒した古の英雄」

王子「勇者はこの地に国を興し、我々一族はその血を受け継いできている」

王子「そして、代々最も優れた才覚を持つものを、魔王復活を阻止するために旅立たせてきた」

王子「兄上はその役目に就くはずだった」

傭兵「…なら、あんたの兄の娘であるユッカが…」

王子「そうだ。ユッカには魔覚が発現している。大人になった暁に勇者の役目を継いでもらうこととなる」

王子「そのための英才教育だ」

傭兵「ユッカが…旅に…」

王子「だが兄上はもっと優れた血を残すべきだった。村娘のメイドではなく…もっと優れた血をな」

傭兵「この野郎!」

母親「まってソル君! ほんとに私が悪いの!」

傭兵「だが、黙っていられるか」

王子「見たところ私と同じくらいの歳のようだが、やはりただのガード。頭の巡りは悪そうだな」

王子「こい。王家の力をお前にみせてやろう」




528: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 00:19:28.18 ID:CFTm/eYmo


【王宮・中庭】



王「グレイス。何をしておる。なんじゃこの騒ぎは…」

王子「父上。躾のなっていない蛮族が王宮に紛れ混んでいる」

大神官「しかし王子。このようなことは…お控えください」

大神官の娘「お父様…何がはじまるのですか…私怖いです…」


王子「ソルと言ったな。お前が本当に王族であるユッカのガードとしてふさわしいか…」

王子「私が試してやる!」ニヤリ

傭兵「…あぁ」

母親「ダメよソル君! やめて、王子様に剣を向けちゃダメ」

王子「かまいませんよ」

王子「これは私からの決闘だ。断ることは許さん」

傭兵「受けて立つ」

傭兵「ユイさんを侮辱されたまま引き下がれるか」


そして俺は剣を抜き、王族や神官たちの見守る中で王子へと斬りかかった。



第21話<懐かしい味>つづく




531: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/25(木) 00:38:34.94 ID:bl0kWQmAO

乙!
おおっ!ついに語られなかった秘密が明らかになるのか…




532: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/25(木) 00:57:47.63 ID:JOILXyKEO

乙です
こっそりヒーラもいるな




548: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 22:23:28.71 ID:CFTm/eYmo

第21話<懐かしい味>つづき




鋼鉄がぶつかりあい激しく火花が散る。

軽装の王子はマントをひるがえし、軽い身のこなしで俺の攻撃をいなしていた。

何度剣を薙ぎ払っても思うように命中しない。


傭兵「くっ」

傭兵(速い…! 腕力は俺より下だが素早さでは分が悪いか)

王子「どうした。口だけか」

王子「これで我が姪のガードを務めるだと?」

王子「笑わせる! その鈍重な剣で何を護れるというのだ!」


ギィン…

傭兵(強い…ただの武芸者じゃない)

王子「口惜しいよ。私の武の才に加えて兄上の魔覚が備わっていれば、さっさと旅に出て本懐を遂げてやったというのに!」

ギィン!

傭兵「くっ」

傭兵(防戦一方になってしまう…!)




549: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 22:28:28.46 ID:CFTm/eYmo


王「…変える気はない。我々は先祖代々、優れた魔覚を持つものを真の勇者として旅立たせてきた」

王「ワシの代でそれを歪めるわけにはいかん」

王子「ふっ…くだらないしきたりだ」

傭兵(これがエリートというやつか…)



王子「我がレイピアが繰り出す刺突の嵐からは逃れられん」

王子「消えろ!」

兵士A「まずい! 王子があの技を出すぞ! 後ろで見てる奴らは退避しろ!」

兵士B「あーあ。あのガキ死んだな…」

母親「ソル君…」

王子「殺しはしない。だが、私1人どうにもならんようなら貴様にガードの資格はない!」

王子「秘技:サウザンドスピア!」

傭兵「!」

かなり相手との距離をとっていたはずが、目の前にはあっという間に無数の斬撃が迫っていた。
まともに直撃すれば全身がズタズタにされてひき肉になってもおかしくない。




550: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 22:34:34.48 ID:CFTm/eYmo


傭兵(回避を…!)

傭兵(速い! 間に合わない…!)

そして斬撃は辺り一体の植え込みを切り裂き、地を削り俺に降り注いだ。
激しい土煙が巻き起こり、周囲を視界を奪う。


王子「……手応えありだ」チャキ

母親「そん…な…」

兵士A「さすがです王子!」

兵士B「こりゃあのガキ、血煙になって消え失せたな」

王子「観衆の皆様。ご観覧いただきありがとうございました」

王子「父上。これでも私が旅立つことは反対なのですね」

王「う…むう…いかん。いかんぞ」

母親「ソル君! ソル君返事をして!!」

王子「無駄だ。我が一撃をかわした者はいない」

王子「残念だが、新しいガードを探したほうが良――」

王子「!」

傭兵「手応えがなんだって」

王子「何!!」




551: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 22:39:30.44 ID:CFTm/eYmo


母親「ソル君!」

王「おお…グレイスのあれを避けたか」

兵士A「どうなってんだ?」

兵士B「あのガキどんなトリックをつかって避けやがった…」

大神官「いや…少年は避けたわけではない…」

王子「私の…千の突きを、すべて弾いたのか…?」

傭兵「全てじゃない…少しくらってしまったな」ズズ

王子「!」

血がたぎる。
まるで炎のように燃え盛って、俺の真っ赤な魔力が底なしに溢れ出す。

体を伝って高音に熱された剣の切っ先が、地を焦がした。
腕や頬から流れでた血は一瞬のうちに気化する。
気づけば深いと思っていた傷口はふさがりはじめていた。
じわじわと周囲の温度が上昇していき、中庭を取り囲んでいた兵士達は城内へと引き下がっていく。


王「ぬぅ! この魔力…!」

王子「な、なんだこの魔力量は…」




552: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 22:45:15.51 ID:CFTm/eYmo


傭兵「撤回しろ。ユイさんは高潔な人だ」

傭兵「ユイさんがいたから、いまのユッカがある」

王子「ふざけるな…勇者の一族たるものより強い血を求めるのは至極当然のこと!」

傭兵「体は強くなくても、心は誰よりも強い」

王子「兵士の分際で綺麗事を言う。生半可な力では魔物共に対抗できんのだ!」

王子「失せろ! 次は直撃させる!」

傭兵「来い」

大神官「いけません! このまま2人を戦わせては大怪我じゃすまない」

大神官の娘「お父様!なんとかしてください」

大神官「間に合うか…結界を――」

魔導師「バカ者ども!」

傭兵「!」

王子「!」


突然の怒声とともに俺と王子の体はぴくりとも動かなくなった。
よく目を凝らすと、魔力で作られた白い茨のようなもので全身をガチガチに縛られている。

傭兵「ぐ…あ…なんだこれは」

魔導師「緊縛の魔法じゃよ。暴れたら痛いぞ」




553: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 22:51:28.03 ID:CFTm/eYmo


魔導師「やれやれ…膨大な魔力の爆発を感じて、何事かと思って来てみれば」

魔導師「…」

俺を魔法で拘束した張本人である老人は、厳しい目つきで俺をじっと観察した。
つい睨み返すと、そろ老人の足元にへばりついたユッカが不安そうに瞳をうるませてこちらを見ていた。


魔導師「グレイス王子。決闘などと、またくだらんことをしておったのか」

王子「くっ、離せ。無礼だぞ」

魔導師「そのままふたりとも頭に登った血を冷ましておれ」

魔導師「なんなら氷魔法で頭をぶんなぐってやろうか」

王子「や、やめろ…」

勇者「ソルとおうじ…こわい」

傭兵「ユッカ…すまない。ユイさんも…」

母親「無事で良かった…ほんとに心配したんだから…」

魔導師「この場はワシが引き受ける。よろしいかな、王よ」

王「う、うむ。わしは政務にもどるとしよう」イソイソ…

王「グレイス。反省するのじゃぞ。壊した花壇の修理はお前がせい」

王子「…」




554: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 22:58:18.87 ID:CFTm/eYmo




 ・  ・  ・


王子「非礼を詫びよう」

傭兵「…いや、こちらこそ申し訳ない…です」

王子「熊をも一撃で仕留める私の一撃を耐えたのは君が初めてだ」

王子「私に一撃こそ与えていないが、君が強者であることはわかった」

王子「名をソルと言ったか」

傭兵「…ああ」

魔導師「1つ気になったことがあるのじゃが、お主はどこで生まれ育った」

傭兵「なぜそんなことを聞く」

魔導師「いや、聞いておきたいだけじゃ」

王子「どこから来た。答えよ」

傭兵「北のほう…としか言い様がない」

王子「大雑把だな。もっとどこの国の出身など、相応の答えがあるだろう」

傭兵「言っておくが俺については何もかも不詳だ」

傭兵「俺自身知りはしない。気づいた頃から戦争の真っ只中だった」

傭兵「ずっと戦場を転々として、死にかけていたところをある日ユイさんに拾われた。それだけだ」




555: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 23:05:42.86 ID:CFTm/eYmo


傭兵「やはり俺みたいな血統書付きでない野良犬に勇者のガードは出来ないか」

傭兵「ならば契約を終えて立ち去るのみだ」

傭兵「俺はただの傭兵。上のやり方に従う」

傭兵「俺の方こそ、一国の王子に不躾に剣を向けてすまなかった。処分でもなんでも好きにしてくれ」

王子「勘違いするな。ガードに必要なのは血統ではない」

王子「力だ! 私は直々にそれを試したにすぎん」

王子「これからも我が姪のガードを頼む」

傭兵「!」

王子「あの子はおてんばでな、目を離すとすぐどこかへ行ってしまうのだ」

王子「体が不自由でどこへも行けなかった兄上の代わりとでも言わんばかりにな…」

タッタッタ

母親「あ、あの…王子様。大変大変失礼をいたしました」ペコペコペコ

母親「この罪は私が身を持って」ペコペコペコ

王子「全く。そろいもそろって勘違いも甚だしい。たかが村娘のあなたの身で何を償えるというのですか」

母親「あぁう…申し訳ございません」

王子「あなたに唯一できることは、ユッカが大きく強く育つようにたくさん食べさせることです」

母親「!」




556: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 23:10:50.16 ID:CFTm/eYmo


王子「もっとも。小娘と見間違えるようなあなたの娘が、そこまで大きくて強い体になれるとも思わないが…」

母親「…うう」

傭兵(この野郎…またユイさんをいじめやがって!)

王子「だが兄上は、そんなどうしようもなく凡庸なあなただからこそ好きだったのでしょうね」

母親「…あ」

王子「城を抜けだして、あなたと太陽の村の近くの丘に出かけたことがあったでしょう」

王子「その時描いた風景がを後生大事に部屋に飾っていましたよ。父上にバレて怒られることもいとわずに…ふふ」

母親「王子…」

王子「私はわけあってしばらく城を離れるが、またいずれ兄上の話を聞かせてもらいます」

王子「その時までお元気で、義姉上」

母親「は、はい!」




557: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 23:16:47.19 ID:CFTm/eYmo


魔導師「話はついたようじゃな」

魔導師「ソルよ。ユッカのことを頼んだぞ」

傭兵「任せろ」

魔導師「じゃが1つ、ワシからのおせっかいを聞いてくれんか」

傭兵「なんだ」

魔導師「どんなときも心を強くもて。ここで魔力を制御するのじゃ」

そういって老人は俺の左胸を杖の先で小突いた。

傭兵「…わかった。心に留めておく」

魔導師「さぁ。今日の稽古はおしまいじゃ。気をつけて帰るのじゃぞ」

勇者「せんせーさよーなら」

魔導師「さようなら。また来週」

勇者「はーい」

勇者「ママ、ソル。おうちかえろー」

母親「ありがとうございました魔導師様」

母親「グレイス王子、これで失礼いたします」ペコッペコッ

勇者「おうじー。もうママとソルいじめちゃだめだよ」

王子「ん? はは、怖がらせて悪かった。またおいで」

勇者「ばいばーい」




558: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 23:23:05.51 ID:CFTm/eYmo


王子「そうだ、ガード。ソル」

傭兵「なんだ。なんです」

王子「いつかまた手合わせ願おう。同世代には私を満足させる相手がなかなかいなくてな」

傭兵「あなたを怪我させると打ち首になるんじゃないか」

王子「ははは! なるほど、次は私に一発くらわせるとでも? ならばなおさら楽しみにしておこう」

王子「それまでユッカを頼む。兄上の最後の宝で、私の大切な姪だ」

傭兵「あぁ、任せろ」



【城下町】


傭兵「世の中には強いやつがいるもんですね」

傭兵「俺もまだまだ力不足だな…」

傭兵(まさかあの状態を見られてしまうとは思わなかった)

母親「ソル君はとっても強いよ」

勇者「こわいソルはおうじよりつよーい!」

傭兵「何言ってる。一方的にやられただけです」

母親「ううん、そんなことない。とってもかっこよかった」

母親「私なんかのために怒ってくれてありがとう…」きゅっ

傭兵「! お、往来ですよ」

母親「あはは、ごめんね」




559: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 23:28:10.21 ID:CFTm/eYmo


母親「ん…ちょっと汗のにおいするね。そうだ、お風呂屋さん寄っていこっか」

勇者「わーいおふろおふろ! ボクまちのおふろやさんすき!」

傭兵「風呂屋があるんですか」

母親「ここは天下の城下町だからなんだってあるよ」

勇者「あめかってー。あめー。あめたべたーい」

母親「はいはい。帰りに一袋だけね」

勇者「わーー」ピョンピョン



【大衆浴場】


勇者「ソルとおふろー」

母親「がいいの? じゃあ今日はソル君にいれてもらおっか」

勇者「うん! ソルといっしょにはいるー」

母親「ごめんねユッカのことお願い」

傭兵「いいですよ。ユイさんは思う存分羽を伸ばしてください」

母親「そうさせてもらおっかな♪ じゃあ後でここで待ち合わせね!」

傭兵「はい」




560: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 23:33:19.97 ID:CFTm/eYmo



【脱衣所】


傭兵「ほら両手あげろ」

勇者「あー」

傭兵「ちゃんとあげろ。引っかかってるぞ…よし脱げた」

勇者「あはははおとこのひとのほうはいるのはじめてー」タタタッ

傭兵「こらっ、走り回るな」

傭兵「ちゃんと下も脱いでからじゃないと入っちゃだめだからな」

傭兵「こい」

勇者「うん」

傭兵(ほんと手が焼けるな…ユイさん苦労してるんだろうな)

傭兵「脱がすぞー」ズルッ

傭兵「ん……?」

勇者「んぅ?」

傭兵「ゆ、ユッカ…あれ……あ゛?」

傭兵「ひぃっ!」ダダッ

勇者「どこいくのー」


傭兵「大変だユイさん! ユッカのアレがない!」

母親「キャー!ソルくん! なんでこっち来てるの!! 女湯だよっ!!」

傭兵「うわっ、す、すいません!」




561: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 23:38:45.75 ID:CFTm/eYmo


母親「他のお客さんいなくてよかった…もうっ」

傭兵「見てません。見てませんので」

母親「で、なに?」

傭兵「ユッカのアレがないんです…男にとって大切なアレが」

母親「……」ジトー

母親「もしかして、おちんちんのこと言ってる?」

傭兵「…!」コクコク

傭兵「なんてことだっ…どこで落としたんだ」

母親「あのさ。ユッカ女の子だよ…」

傭兵「…はぁ?」

母親「だからぁ、ユッカは女の子だってば。え゛…もしかして気づいてなかった!?」

傭兵「おんな…のこ…女の子!」

勇者「あーここにいた。ママのはだかんぼみたらめーっだよ」ぎゅっ

傭兵「お前女の子だったのか…」

勇者「うん」

傭兵「…言ってくださいよ」

母親「うわ本気で男の子だとおもってたんだ。ひどいねーソル君」

勇者「ひどーい」




562: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 23:44:12.19 ID:CFTm/eYmo


傭兵「だ、だってこいつ自分のこと僕って!」

傭兵「それに服装だって少年っぽいし、髪も伸ばしてないし…」

傭兵「俺はてっきり男だと……はは、は」

母親「勇者だから男の子として育てなきゃだめだって言われたんだぁ」

傭兵「…」ガク

母親「はい、ちゃっちゃとお風呂行きなさい!」

母親「そこで突っ立ってたら他のお客さん来た時また叫ばれちゃうよ」

傭兵「行ってきます…」


【風呂場】


勇者「ボクおんなのこだけどだめだった?」

傭兵「ダメじゃない…ダメじゃないけど今日は衝撃的な事実ばかり打ち明けられて疲れた」しゃかしゃか

勇者「んぅ…せっけんめにはいった。いたいよぉ」

傭兵「あ、悪い。こんなことはじめてだからうまくできなくてな…流すぞ」

勇者「ボクもソルのおせなかをながしてあげるー」




563: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 23:50:21.79 ID:CFTm/eYmo


勇者「ごしごし」

傭兵(あたりまえだけど力ないなぁ)

勇者「ここがきもちいですかー」

傭兵「おーう」

勇者「ごしごし。あははソルのからだきずだらけだねー」

傭兵「いいだろ?」

勇者「かっこいー」ぺたぺた

勇者「つぎはまえをあらいまーす」

勇者「…! なんかへんなのある」

傭兵「しらない…よな」

勇者「おーー。これおちんちんでしょ」ぺちぺち

傭兵「やーめーろ」

勇者「あはは! おちんちんだー! ソルのおちんちーん。ぷらぷら」

傭兵「だー! でっかい声出すな! ユイさんに聞こえるだろ!」

<なにしてるのー?

傭兵「なにもしてません! すぐ洗ってあがります!」

<ユッカー。ソル君のいうこと聞いておとなしくしなさいね。

勇者「は〜〜い! くふふふ…これおちんちん…あははは」

傭兵(なにがおもしろいんだ…)




564: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/25(木) 23:58:53.20 ID:CFTm/eYmo



  ・  ・  ・


傭兵(風呂に入ったのにどっと疲れた…子供って大変だな)

勇者「…」うとうと

傭兵「おーい寝るのか。お前も疲れたか」

母親「おまたせ。あれ、ユッカ寝ちゃった?」

傭兵「稽古もあったし、寝かせてあげましょう。俺がおぶさります」

母親「ごめんね。じゃあちょっとだけ夕飯のおかずとかユッカのおやつを買い物してから帰りましょ」

傭兵「はい」

母親「くすくす。なんだかこうしてると夫婦みたいだね」

傭兵「え?」

勇者「…zzz」

母親「ううん。なんでもない!」

母親「今日はありがとう。これからもよろしくね」

傭兵「こちらこそ。お役にたてて嬉しいです」

母親「もうっ、真面目なんだから!」

母親「ま、それがキミのいいとこだよね」


その日俺はユッカにまつわるいろんな事をしった。
ユイさんは長年ずっと1人で、過去の重荷を背負っていたこともわかった。
それでも笑顔をたやさず生きてきた。

俺はすこしでも、この人の役に立ちたい、俺もずっと分けあって背負っていきたい。
そう思える春の暖かい夕暮れ時だった。


第21話<懐かしい味>つづく




580: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 22:08:36.84 ID:jU0ApZ0yo

第21話<懐かしい味>つづき



あっという間に季節は過ぎてゆく。

暖かい春の日は山へ3人でピクニックへ出かけ、
雨の日はユイさんの編み物を横目にユッカと勉強し、
夏の暑い日は湖で水遊び。
秋には庭や森で実りをたくさん収穫した。

俺は相変わらず村と丘を往復する日々を過ごしていた。

ただユイさんの父親である司祭や村人達が俺を見る目は、昔にくらべてずいぶんと甘くなり、
大雨の夜は村の宿舎へ戻らずにユイさんの家への宿泊を許してくれた。



【太陽の村】


司祭「ソル。出かける前に、今日はお前に話がある」

司祭「少しだけ時間をくれ」

傭兵「なんだ」




581: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 22:15:45.02 ID:jU0ApZ0yo


司祭「の前に…今日は何の日かしっておるか…」

傭兵「いや? 村で祭りでもあるのか?」

司祭「いんや…知らぬなら良い良い。忘れてくれ」

傭兵「話はそれだけか」

司祭「あー待て。いまのは雑談だ。では単刀直入に聞く!」

司祭「娘のことをどう思う」

傭兵「ユイさん? 雇い主だ。いや、直接の雇い主はあんたになるのか?」

傭兵「ならユイさんとユッカは俺にとって重要な護衛対象だ」

司祭「そういうことじゃないこの唐変木め」

司祭「お前は1人の女としてのユイのことをどう思う」

傭兵「おかしなことを聞くんだな。彼女は有能な女性だ」

司祭「…」

司祭「これで単刀直入にきいたつもりだったが、もっと噛み砕かんとダメか…」

司祭「お前はユイのことは好きか」

傭兵「!」




582: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 22:21:42.94 ID:jU0ApZ0yo


傭兵「好きか嫌いかなら、好きだ」

司祭「それは愛か」

この老人が言おうとしていることは俺にでもわかった。
ユイさんは気立てがいい。
鍋を焦がしたりと、すこし抜けたとこもあるが、そこもかえって女性として魅力的だとおもっている

傭兵「…」

司祭「どうなんだ…身内の欲目でなくとも、ユイは可愛いだろう?」

確かに若々しくて小柄な見た目は、10代と言っても誰も疑わないくらい愛らしい。
見ようによってはユッカの姉に見えないこともない。
俺はあの人の眩しい笑顔が好きだ。しかし――

傭兵「ユッカがいる」

司祭「やはりそこか…」

傭兵「ユイさんは義理堅い人だ。きっと、ユッカの父親である第一王子のことを今でも愛しているはず」

司祭「むぅ…。愛している…か」




583: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 22:26:29.63 ID:jU0ApZ0yo


傭兵「愛か…。俺には無縁な話だな」

司祭「聞いてくれ。ユッカはこの村での成人の儀を終えていずれは旅立つ」

司祭「勇者の宿命だ。あとたった7〜8年後の話よ」

司祭「ユイはきっと寂しい思いをする。その頃はもういくつだ、30過ぎほどか」

司祭「若者すらろくにおらんこの村で貰い手を探すとなると…絶望的だろうな…」

傭兵「な、何が言いたい」

司祭「一度でいいから親としてユイに花嫁衣装を着させてやりたかった」

傭兵「結婚…してないのか?」

司祭「身分不釣合いというものだ。私は司祭とはいえ、片田舎の村長役でしかない」

司祭「ユイはユッカを身ごもってから、城を追い出させるようにメイドを辞めた」

司祭「そして相手の王子はその後まもなくして持病により天に召された」

司祭「生まれてくる娘の顔すら見られずにな…」

司祭「だからユッカは生まれてから一度も父親の愛を知らん。かわいそうに」

傭兵「そう…か…」




584: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 22:31:39.79 ID:jU0ApZ0yo


司祭「ここ一年、私がユイとふたりきりで会った時、あいつはお前の話ばかりするのだよ」

司祭「本当に楽しそうに…思春期の恋する乙女のようにな…」

傭兵「…」

司祭「ソル。もしお前がその気なら」

傭兵「…しばらく考えさせてくれ」

司祭「本当か!」

司祭「おおい聞いたかお前たち」

斧男「おうよ!」

村女「よかったねぇ。はりきってユイちゃんの花嫁衣装をつくらなくっちゃ」

傭兵「っ!? どこから出てきやがった」

村男「ユイちゃんまだ若いんだから、ばばーんとあと2人3人とユッカちゃんの弟妹をこしらえちまおうぜ」

村男「そしたらユッカちゃんが旅に出てもきっと寂しくねぇ」

傭兵「何言ってるんだ…考えるだけだ。まだ決めたわけじゃ…」




585: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 22:38:26.42 ID:jU0ApZ0yo


村女「とかいいつつあんただってまんざらでもないんでしょう? あんないい子の側にいられるんだからさぁ」

傭兵「ぐっ…」

斧男「おおんユイちゃんが取られるのは悔しいが、相手がおめぇなら仕方ねぇ。幸せにな」ガシッ

傭兵「なっ…」

司祭「快い返事を待っているぞ」

村男「それ、お祝いに肉でも持っていけ」

傭兵「……。もらえるものはもらっておくが、いいのか?」

傭兵「この時期に備蓄を減らすのはよくない」

村男「かてぇこと言うなって。村の若い男と女がくっつくんだ。こりゃお祭りだな」

司祭「ははは、さぁはやく行って来い。お前の女房が家で待っておるぞ」

司祭「なんなら2〜3日帰ってこなくていいぞ!」

村女「今夜は冷えるから親子3人抱き合って眠るんだよ!」

 
 ・  ・  ・


傭兵(なんなんだみんなして…)

傭兵(いつの間にかそれだけ信頼を得ていたということだろうか…)

傭兵(俺としては毎日任務についているだけなのにな)

傭兵(ユイさんと結婚…結婚とはどういうものなんだ)

傭兵(今日は顔を出しづらいな)




586: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 22:43:29.56 ID:jU0ApZ0yo



ガチャ


母親「あ、ソル君。おはよう。今日は寒いね」

傭兵「おはようございます」

母親「外冷えたでしょ。入って入って。暖炉焚いてるからね」

傭兵「ユッカは」

母親「台所。珍しく早起きしたんだよ」

傭兵「台所でなにをしているんだ…」

母親「あーだめだよ入っちゃだめ」ぎゅっ

傭兵「!」

母親「あっ…ご、ごめんね。びっくりしたよね」

傭兵「いえ…大丈夫です」

母親「……えへへ」

ユイさんは俺の腕をつかんだまま照れくさそうに笑った。
司祭のいうとおり、その姿は年頃の少女のように俺の目に映った。




587: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 22:50:24.18 ID:jU0ApZ0yo



それからしばらく家のなかですることもなく、ユイさんの話相手を続けた。
ユッカは台所からなかなか出てこない。
ときどきガツンガツンと何かをまな板に叩きつける音がする。


傭兵「大丈夫なんですか」

母親「う、うーんどうだろ…」

母親「でもソル君のおかげでユッカは包丁さばきは上手になってるから!」

母親「包丁で怪我をすることはないと思うんだけど…あはは」


俺はこの半年ほど、ユッカに稽古をつけていた。
といっても俺の剣術は我流なので、王宮の剣の先生の妨げにならない程度にだ。
さすが勇者の血をひくだけあって、幼い子どもとは思えないほどにユッカは腕を上げた。
魔力の扱いも上手い。
大人になる頃には俺や王子ではかなわないほどの剣の達人になるかもしれない。

母親「なに考えてるのー?」

傭兵「あ、いえ…」

ユイさんは相変わらず笑顔で俺の顔をのぞきこんでくる。
俺は今朝司祭にされた話題を切り出すことが出来ずにいた。




588: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 22:55:19.58 ID:jU0ApZ0yo

 

<できたーー!


母親「うふふ。出来たって。ほんとかな」

母親「ちょっとだけ様子みてくるね」

母親「ソル君はダイニングのテーブル拭いといてくれる」

傭兵「分かりました」

傭兵(何ができたんだろう)


勇者「んしょ…んしょ」

母親「落とさないように気をつけてね」

しばらくしてユッカが大きな鍋を持ってきた。
腕を震わせながらそれを机の真ん中に置き、ユッカはご満悦な様子で俺の正面の席に座った。

傭兵「ユッカが作ったのか」

勇者「ママにちょっとてつだってもらったけどー」

勇者「あとはボクがつくった!」

母親「よくできましたー」なでなで

勇者「えへへへ。ふたあけてみて!」




589: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 23:01:51.24 ID:jU0ApZ0yo



恐る恐る鍋の蓋をひらくと、そこには黄金に輝くスープがあった。
食材はいつもにくらべて大きめに切られてゴロゴロとしたものが浮いている。

しかしその匂いはまごうことなく、ユイさんの得意料理であるパンプキンスープだった。


傭兵「よく作れたな」

勇者「ほめてほめてー」

傭兵「…すごい」

母親「今日のためにずっと内緒で練習したんだよね」

勇者「うん!」

傭兵「しかしなぜ急に…」

母親「ユッカがどうしても作りたいって言ったから」

勇者「ねー♪」

傭兵「…そうなのか」

続けてユイさんが奥から別の皿を持ってきた。
それにはケーキが乗っていた。

ユイさんとユッカは顔を見合わせてニッコリと笑った。




590: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 23:07:07.83 ID:jU0ApZ0yo


傭兵「ケーキ…何かあったんですか」

ユイさんは時々趣味でケーキを焼くことはあったが、これほど大きいものはユッカの誕生日以外で見たことがなかった。

俺は頭をひねって今日がなにかの記念日だったのではないかと記憶を掘り起こす。
しかしそれらしい答えは出てこなかった。

傭兵(そういえば司祭も今朝何か言おうとしていたような…)

母親「あ、わからないんだ」

勇者「ぶぅー」

傭兵「うーん…すいません。大事な日でしたか」

母親「うん! 今日はね――」

勇者「あーママ言っちゃだめぇ。ボクが言うんだよ」

勇者「ソル、おたんじょうびおめでとー!」

傭兵「は?」

母親「えへへ。びっくりするよね」

母親「ソル君自分の誕生日わからないっていうから、ここにきてちょうど一年目の今日を記念日にしたんだぁ」

勇者「そうなの!」

傭兵「一年…」

母親「もしかしてほんとに忘れてた?」




591: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 23:13:59.07 ID:jU0ApZ0yo



あの日、俺は吹雪く森をさまよって行き倒れているところを2人に救われた。

どうやらユッカの人並み外れた鋭い魔覚が、消えかかっている俺の魔力を拾ったらしい。

あの日あの時間にあそこを通りかかったのが、ユッカじゃなければ俺は死んでいた。

そしてユイさんが俺を救ってくれた。


母親「たべよ!」

勇者「ソルいっぱいたべてね!」

傭兵「あぁ。いただきます」

傭兵「それと、ありがとう…」


2人はまた顔を見合わせておかしそうに笑った。
あなたたちは、俺の運命の人だ。



  ・  ・  ・


勇者「おいしかったー」

傭兵「げぷ…あぁおいしかった。ごちそうさま」

勇者「まだまだあるよ! おかわりいれてあげる」ドバー

傭兵「ぐ……もう4杯目だぞ」

母親「こらこらユッカ。そんなにたべさせたらお腹こわしちゃうでしょ」




592: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 23:19:34.27 ID:jU0ApZ0yo



勇者「でもさー…じゃああしたたべよっか!」

傭兵「おう。そうしてくれ…」

勇者「ふぁぁボクねむたくなってきちゃった」

傭兵「まだ昼だぞ」

母親「朝早起きしてがんばったもんね。寝かしてくるね」

母親「あ、そうだ…ソル君。あとで…すこし話があるんだけど」

傭兵「さっきの続きですか? ちょうどいい、俺はもう少しユッカの装備の選定について説きたかったんです」

母親「あぅ…そうじゃなくて」

母親「大事なお話…ね?」

傭兵「はい…かまいません。どうせ、することがないので」

傭兵(なんだろう。まさか…)

いつの間にか外は一年前のあの日のように吹雪いていた。
窓がカタカタと鳴っている。

ふいに窓の外を何か黒い影が通りかかったような気がした。


傭兵「!」




593: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 23:25:02.23 ID:jU0ApZ0yo


コンコン

玄関から聞こえるノック音。
誰かが訪ねてきたようだ。

傭兵(こんな場所に?)

司祭は合鍵をもっているし、他の村の者だとしたらこんな吹雪く日にわざわざ訪れるのはありえない。
この一年間でそういったことは滅多になかった。


母親「はぁーい。ちょっとお待ちくださいね」

勇者「むにゃむにゃ…」

傭兵「ダメだ。出るな!」


ガチャ

母親「どなた…――」

野盗A「すんません。この雪でちっと迷っちまって」

野盗B「家をみかけたんでお邪魔させてもらいたい」

野盗C「へへへ。寒いんだからさっさと入れろ!」

母親「あ、あの…」


扉の外には数十人の野盗とおもわしき薄汚れた格好の奴らが、頭に雪をつもらせて立っていた。

すでに何人かは刃物をちらつかせている。




594: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 23:31:52.15 ID:jU0ApZ0yo


男の1人がユイさんに腕に触れようとした瞬間、俺は電光石火の如く家の中を駆け抜けた。

相手の腹を肘で打ち抜き、遥か後方へと吹き飛ばし、即座に抜刀して構える。

あっという間に灼熱のような戦意が体の底から湧いてくる。


野盗A「げはぁぁああ!」

母親「ソル君!」

傭兵「去れ。てめぇらの来ていい場所じゃない」

野盗B「んだこの野郎」

野盗C「しかしこれでここが噂の家ってことは確定ですぜ」

野郎の頭「へへへ。ってことはここに例のお宝ちゃんがいるのか」

野盗の頭「勇者の血族なんてマニアにゃ高く売れるぜ…」ジュルリ

野盗C「ボス。こっちの女も別嬪だ。もらっちまおうぜ」

野盗の頭「それもいいな。そこのガキ、通してくれるか」

傭兵「てめぇら!」




595: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 23:37:42.99 ID:jU0ApZ0yo



相手の力量から察して、束でかかられようと蹴散らすことは容易いだろう。

しかしユイさんの目の前で皆殺しになんて出来やしない。

この人は本来戦いとは無縁の存在なんだ。

それにこんな薄汚れた奴らの血で家の中を汚したくない。

傭兵「ユイさんは中に。外に決して出ないように」

傭兵「俺と勝負しろ」

野盗B「このガキ。女の前でいいかっこしようとしてますぜボス!」

野盗の頭「ハハハ! よぉーし外に出ろクソガキ」

野盗C「リンチにして、瀕死のてめぇの目の前で大好きな女をいたぶってやるよ」



俺は後ろ手に扉を閉めた。

傭兵「12人か…」

傭兵「全員でかかってこい」




596: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 23:43:41.50 ID:jU0ApZ0yo



斧や棍棒、ナイフなどさまざな武器をてんでちぐはぐな構えで野盗達は構えはじめる。

俺の発した気迫に気圧されて、じりじりと後ずさる者もいた。

明らかに戦闘経験の浅い烏合の衆だ。

寒い時期になると必ずこんな奴らが出てくる。

いままでの人生でいくらでも見てきた。

野盗A「いっつつつ…思っきりぶっ飛ばしてくれやがって…」

野盗B「血祭りにあげろ!!」

野盗C「こいつの剣も奪っちまえ!」


自ら何も生産性をもたないこいつらは人から奪う事しか知らない。

俺もそうだ。

俺も、戦うことでしか己の存在意義を見出だせない。くだらない人間だ。

だが今はこいつらとは違う。

傭兵(俺は…もう無闇に奪うことはしない)

背後にあるこの暖かい家に住む2人を護りたい。

傭兵(護ることは、殺すことよりも難しい…やってみせる!)




597: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 23:50:40.65 ID:jU0ApZ0yo



  ・  ・  ・


野盗の頭「ひぃやああっ…バケモンだ!」

野盗B「こいつ…素手で俺たち全員を…」

野盗C「鎌が蹴り折られちまった…」


傭兵「なぜこの家のことを知っていた。答えろ」

野盗の頭「へ、へへ…言うかよ」

傭兵「答えろ。俺はただの傭兵上がり、殺すことに躊躇はしないぞ」

野盗の頭「ひぃっ」

野盗の頭「く、くそ……クソぉ!!」

野盗の頭「なんてな、馬鹿が!」


ガチャ


傭兵「!」


勇者「むぐっ…むぐぅ」

傭兵「ユッカ!」

背後の扉の開く音に振り返ると、男がユッカを腕に抱えて人質にとり、首元にナイフを突きつけていた。


野盗の頭「俺たちが何人いるって? ははは、12人じゃねぇ。13人だ」




598: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/26(金) 23:55:24.49 ID:jU0ApZ0yo



傭兵(油断した…?)

傭兵(いや、戦闘前に魔覚で確かに探ったはず)


最後に出てきた男はローブのようなものを身にまとっていた。
戦場で何度か見たことがある。
それは魔法使いが時々己の存在を隠すために使う、魔隠しのローブだった。


傭兵(察知できなかったのか…ク…こんなくだらない手で)

野盗の頭「ガキを殺されたくなければ剣を捨てろ。抵抗するなよ」

野盗の頭「さぁリンチのはじまりだ」

野盗の頭「っと。その前に、そのチビの母親がいるはずだろ」

野盗の頭「ここに連れてこい」

野盗A「へい! やるんすね!」

野盗の頭「このガキには痛い目あわされたからなぁ。責任をとってもらわねぇよ」

傭兵「…」

野盗の頭「なんだその目は。オラァ!」

ガッ

傭兵「…ッ!」




599: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 00:01:10.38 ID:cJSyG5qUo



野盗の頭「蹴っても殴っても大して聞いてねぇなこりゃ。つまらねぇ」

野盗の頭「さすが国の雇ったガードとやらだ。だがこうなっちまえばただの無抵抗なガキ」

野盗の頭「こいつをいたぶるより、どうやらこの親子をなぶったほうがこいつにゃダメージが入りそうだなぁ」

野盗B「ですね!」


勇者「んぐぅ、んぐぅ!」ジタバタ

母親「ソルくん…」

野盗A「へへ、おとなしくしろよ」

傭兵「…やめろ」


体が熱く燃え上がる。

とっくに冷静でなんていられなかった。

いままで死地には幾度も立ってきた。目の前で同僚を失ったこともあった。
だがここにきて俺はなぜ自分を見失う?


魔導師『どんなときも心を強くもて。ここ【心臓】で魔力を制御するのじゃ』


傭兵「魔力…俺は…」




600: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 00:09:08.28 ID:cJSyG5qUo



野盗の頭「さてどうしてくれるか」

野盗の頭「最初は俺でいいよな。女なんて久しぶりだ。それもこんなに美人」

傭兵「触るな」

野盗の頭「何ぃ…てめぇ自分の立場が」

傭兵「ユッカ。ユイさん。目をつぶっていてくれ」

傭兵「すぐ、終わらせるから」


悪党にこれ以上の手加減なんていらない。

俺はユイさんたちが目をぎゅっとつぶったのを確認して、体を一気に燃え上がらせた。

自分でも恐ろしい量の真っ赤な魔力が溢れだして、周囲の雪が一気に溶け出し地面がむき出しになる。

俺を取り囲んで蹴ったり殴ったり好き勝手していた野盗達はたまらず俺から距離を取った。


傭兵「俺の炎は、死ぬより痛いぞ」


ふっと野盗の1人に向けて手をかざすと、魔力が激しい熱線となり、相手にまっすぐ襲いかかった。
俺の魔力はまたたく間に捉えた男を焼きつくす。

男は声ひとつださず、消し炭となって地に還った。




601: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 00:15:28.95 ID:cJSyG5qUo



野盗の頭「……は?」

野盗の頭「お、おい…何が」

傭兵「次はお前だ。」

野盗の頭「ま、まてこっちには人質が…」

傭兵「なら先にそっちからだな…」


俺はユッカとユイさんを抑える2人の野盗に同時に両手のひらを向けた。


野盗の頭「や、やめ…そんなことをしたら人質まで」

傭兵「俺の炎は悪人しか燃やさない」

そして念じるとともに熱線が激しい光をまき散らしながら飛んだ。

輝く炎はユッカとユイさん、そして男2人を包み込む。
そして男2人の肉体のみを瞬時に焼きつくした。
装備していた武具がガシャン足元に落下する。

勇者「…?」

母親「…??」

傭兵「まだ目をつぶっていてくださいね。俺がいいって言うまで絶対に」




603: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 00:22:20.50 ID:cJSyG5qUo


野盗の頭「なんなんだお前はよぉおお!!」


これは俺が生まれた時から背負った呪いのような力。
なにかがきっかけで能力が解放されると、辺り構わず全てを焼きつくす。
王宮で王子と構えた時は危なかった。

だがそんな俺にも唯一燃やせない物がある。それが善の存在だ。

しかし人間の善悪はなにが基準になっているかはいまでもわからない。

ひとえに俺の持つ心象だけなのかもしれない。

だから俺はユッカとユイさんを燃やさない自信があった。
2人なら俺の炎に耐える自信があった。
そして目論見通り2人には毛ほども通用しなかった。


   ・   ・   ・


傭兵「あとはお前1人だな」

野盗の頭「! ま、まって…嫌だ…」

野盗の頭「死にたくないっ! お願いだ、もうここには来ない!」

野盗の頭「助けてくれぇ…」

傭兵「俺の炎で天地に還ればいい」

野盗の頭「いやだああああ!!」

母親「ソル君…」

傭兵「!」




605: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 00:28:35.05 ID:cJSyG5qUo


母親「もういい。もういいんだよ」

傭兵「……」

野盗の頭「ひ、ひいいいい!!」バタバタ

傭兵「くっ」

母親「平気?」

傭兵「すいません…俺がいながら2人を危険な目にあわせました」

母親「ううん。大丈夫、私達は怪我してないよ」

母親「ソル君のほうこそ、大丈夫なの?」

傭兵「…傷は勝手に治るんです…変でしょ」

母親「お家、戻ろ」

傭兵「俺は…危険な人間なんです。凶暴で、凶悪で…いつもこうだ」

母親「そんなことない」

母親「ソル君がなにをしたかわからないよ。けど、あの時一瞬キミの想いを感じた」

母親「優しいキミに包まれた気がした」

勇者「たくさんのソルがね、ぶわーってボクのとこにきてね、あったかかった」

勇者「だからソル…なかないで」ペタペタ

傭兵「ごめん…2人とも」




606: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 00:32:45.68 ID:cJSyG5qUo



その晩さらに雪は激しく降り注ぎ、太陽の村にも本格的な冬の訪れを告げた。

俺はユイさんの家に泊まることにし、寝支度していた。


母親「ユッカ寝ちゃった。朝からいろいろあって疲れちゃったみたい」

母親「ソル君も今日は大変だったね」

傭兵「近年ここらをウロウロしてた奴らってのはあいつらのことなんでしょうね」

傭兵「ひとり逃がした…」

母親「…」なでなで

傭兵「! な、なんです」

母親「がんばった。えらいぞ」

傭兵「やめてください。そんな母親みたいな…」

母親「母親かぁ…うーん」

母親「ぎゅっ」

傭兵「! ゆ、ユイさん!」

母親「しー。ユッカが起きちゃうでしょ」




607: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 00:37:53.18 ID:cJSyG5qUo


母親「お話、聞いてくれるって約束したよね」

気づけばユイさんの顔が間近にあった。
すこし複雑そうな表情で眉を下げて、じっと俺のことを凝視している。

母親「あのね。今日ではっきりわかったの」

母親「私…」

傭兵「待っ――」

母親「言わせて」

傭兵「…はい」

母親「ソル君のこと好きだよ」

母親「…大好き」

傭兵「…そ、そうですか」

母親「ねぇ。ソル君は、ずっとここにいたいと思う?」

傭兵「…他に行く宛なんてありませんし、俺は生まれてからずっと根無し草でした」

母親「じゃあ、ここにいたらいいんじゃないかな」

傭兵「けど、俺はユイさんたちを危険な目にあわせてしまった…ガード失格だ」

母親「…」フルフル

ユイさんは再び俺を抱きしめた。
それはいままで経験したこともない熱い抱擁だった。
お風呂あがりのユイさんのいい匂いを間近で感じて、頭が溶けそうなほどにクラっとしてしまう。




608: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 00:43:09.88 ID:cJSyG5qUo


母親「ガード、やめちゃうの?」

傭兵「国には俺よりもっと優秀な人がいると思う」

母親「ガードやめちゃおっか」

傭兵「…」

母親「かわりにユッカのパパになって」

母親「それでこの家にいてくれたらいいよ」

傭兵「…それは」

母親「私と結婚しよ」

傭兵「でも、俺は…」

俺は生まれてからずっと血にまみれた手をしている。
それは決して拭うことは出来ない俺の過去の業である。
そんな手でユイさんたちを抱くことなんて出来ない。

手の置きどころに困ってあたふたと視線を泳がせていると、ユイさんが肩を震わせているのに気がついた。
耳元では微かにすすり泣く声が聴こえる。

母親「やっと言えた…」

母親「一年間もこんな素敵な子がそばにいて、なにもできないなんてつらかったよ」

傭兵「ユイさん…」




609: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 00:48:05.40 ID:cJSyG5qUo



母親「ソル君。私と一緒になろ」

母親「キミのことが好き。何度でも言うよ」

母親「大好き…」

傭兵「お、俺も…好き、です」

傭兵「ユイさんのこと敬愛してます」

母親「ただの敬愛?」

傭兵「………好きです」

傭兵「愛してます」

そう、俺の心はとうに決まっていたんだ。
はっきりと告げると彼女はますます強い力で俺の首元に抱きついた。
俺はそっとその小さな背に腕を回した。

傭兵(そうか。こんな小さな体でずっと1人でユッカを守ってきたのか…)

傭兵(なら俺のすべきことは…)

傭兵「ユイさん。これからもよろしくお願いします」

母親「うんっうんっ! ありがとうソル君…」




610: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 00:56:12.18 ID:cJSyG5qUo



その夜、俺は生まれてはじめて雇い主と床についた。

いや、もう雇い主と傭兵という関係ではなくなる。

俺たちはもうすぐ家族になる。

ベッドの中でユイさんは少女のように愛らしかった。



  ・   ・   ・


母親「ねぇ、ソル君」

傭兵「どうしました?」

母親「いつにしよっか。いまは冬だから、春がいいかなぁ」

傭兵「なんのことです」

母親「なにって…もうっ、式だよ式!」

傭兵「う、うーん…どうしましょう」

母親「やっぱり私じゃ嫌…? 子持ちだもんね」

傭兵「いえっ、そんなことはないですけどっ!」

母親「まさか…ユッカをお嫁さんにしたいとか!?」

母親「でも私とユッカなら私のほうがソル君と歳近いよ!? ねぇどうなの!?」

傭兵「……何言ってるんですか」

母親「冗談冗談♪ ソル君の気持ちはさっきいっぱい受け取ったよ…」

傭兵「あなたって、可愛い人ですよね…」

母親「いまさら? …きゃっ、ソル君大胆…♥ だめだってばぁあんまりおっきい音立てたらユッカが起きちゃうよぉ…」

傭兵「ユイさん…愛してます」

母親「私も…♥ えへへ」




第21話<懐かしい味>おわり




613: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/27(土) 01:00:22.80 ID:x4L25Rn20

乙です。
これが現在につながるのか………




629: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 22:30:46.92 ID:cJSyG5qUo



第22話<ユッカ>



その日、俺は午後から雪降る森の奥でユッカに剣の稽古をつけていた。



勇者「えいっ、やああっ!」

傭兵「いいぞ。ちゃんと踏み込め」

勇者「えいい!」つるっ

勇者「うぎゅ!?」

傭兵「おっと危ない。大丈夫か」

勇者「うん…へっちゃら。ねーおなかすいたー」

傭兵「ん、そうだな。おやつにするか」

勇者「わーい! おやつー」


俺は太陽の森の神樹と呼ばれる大木に背を預け、ユイさんから預かった包みを広げた。
中の弁当箱には色とりどりの具を挟んだサンドイッチが小さく切られてかわいらしく詰まっていた。
その横には丸っこい字で『夕飯までに帰ってきてね♥』と書かれたメモが添えられている。


勇者「あーおいしそ!」

ユッカはピョンと俺の膝に飛び乗って、そのサンドイッチを食べさせてとせがんで大きく口を開いた。

傭兵「あまえんぼだな」なでなで




630: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 22:39:02.22 ID:cJSyG5qUo



一年前に比べて少しだけ背が伸びただろうか。
それでも相変わらず小さくてくりくりしたユッカは可愛かった。
目元は特にユイさんに似ている。
大人になればユイさんのような見た目になるのだろうか。

傭兵(ユイさん…)

ユイさんと想いを重ねて数日、俺は村に帰ることを忘れて毎夜ユイさんのベッドで寝泊まりを繰り返していた。
その度に彼女の普段とは別の可愛らしい表情や声が、記憶の中に新たに刻まれていった。


勇者「どうしたのー」

傭兵「あ、いやなんでもない」

勇者「ソルはさいきんニコニコだね」

傭兵「そ、そうか?」

勇者「うん!」

勇者「でもよるはわるいこ…ママのことなかせてる」

傭兵「え……」

勇者「ママ、あーんあーんってないてる…ママいじめちゃいや」

傭兵「いや…あれはだな虐めてたわけじゃなくて…うーん、というかお前起きてたのか?」


俺ははぐらかすようにユッカを抱きしめた。
少女特有のミルクっぽいふんわりとした香りと、稽古を終えたばかりの汗っぽさが混ざった匂いが鼻をつき、妙な気分になった。




631: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 22:46:16.75 ID:cJSyG5qUo


勇者「?」

傭兵「いつかユッカもお嫁にいくんだよなぁ」

すっかり父親気分に浸った俺はユッカの未来を想う。

傭兵(ユッカはどんな奴と付き合うんだろう。うわぁ考えたくねぇ)

勇者「??? あーん」

傭兵「はいよ」

勇者「むぐむぐ♪」

傭兵(やっぱ可愛い)なでなで


神は残酷だ。
こんなに小さくて、か細い1人の少女に過酷な宿命を背負わせる。


傭兵(家族3人で旅立つのもありかもしれないな)

そんなことを漠然と考えていると、ふいにユッカが落ち着き無くあたりをキョロキョロと見渡し始めた。

傭兵「どうした?」

勇者「ッ! っ! !?」

なにかを探っているように見える。

勇者「やだ……」

勇者「こわいの……くる」




632: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 22:53:17.70 ID:cJSyG5qUo



傭兵「怖いモノ…?」

勇者「うん……こわいの…」

俺も周囲を探ってみる。
魔覚に触れるものはなし、殺気もなし。
間違いなくこの神樹近辺には俺とユッカしかいないはず。

なにがなんだかわからないままに、しだいにユッカは目を閉じて腕を抱きすくめカタカタと震え始めた。


傭兵「ユッカ? 寒いのか?」

勇者「…」フルフル

尋常じゃない様子に、俺は心臓がどきりと脈打った。


そしてその数秒後、

全身を覆うような激しい悪寒が日の沈む方角からぞわりと押し寄せた。
それは間違いなく膨大な魔力だった。俺でもわかるほどに明らかな悪意を孕んでいる。

傭兵「!!」

勇者「ああああああ!!」


ユッカは半狂乱になり、頭を振り乱しながらイヤイヤと泣き叫ぶ。
このままではユッカの敏感な魔覚が壊れてしまうかもしれない。




633: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 22:58:22.05 ID:cJSyG5qUo



傭兵(なんだ! 何が起きている…!)

傭兵(まずい、ユッカをなんとかしなくては)

俺はユッカを抱きかかえて、神樹の幹に空いた大きな穴の中に押し込んだ。

傭兵「ここにいろ!!」

傭兵「行って様子を見てくる!」

勇者「あう…あう…あああっ」

傭兵「大丈夫。この中にいれば神樹の魔力がお前を護ってくれるさ」

傭兵「な、へっちゃらだろ?」

勇者「…」コク

傭兵「いいか。俺が迎えにくるまでここにいるんだぞ。いいな!」

勇者「うん…」


事は一刻を争うかもしれない、俺は邪悪な魔力が押し寄せる方角に向けて走った。


傭兵(何かが…何かよくない者達が太陽の村にやってきたんだ)

傭兵「そうだ、ユイさんは!」




634: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 23:04:25.44 ID:cJSyG5qUo



ユイさんは今朝から1人で太陽の村へ出かけていた。

夕刻には帰るといっていたから、いまはちょうど帰路についている頃だろう。


傭兵「どこにいる…」


神樹の森を抜けて、足早に小高い丘の上に出て、さらに背の高い木の上にかけ登った。
そこから見渡す景色は想像を絶するものだった。

傭兵「なんだ…あれは…」


西の空をうめつくす程の黒い影。
その1つ1つがおぞましい邪気を携え、周囲の村や森に下降していった。

間違いなく、魔物だ。


傭兵「うそだろ…」

俺は呆然とその光景を眺めていた。

あっという間に村からいくつも火の手があがる。

傭兵「まずい…!」




635: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 23:10:53.18 ID:cJSyG5qUo



俺は木の枝を大きく蹴って宙を舞い、太陽の村へとつながる林道に入った。


傭兵(何が、何が…!)


いくらで戦場暮らしでも、一度にここまでの数の魔物を見たことはなかった。
膨大な魔力の暴力に気圧されて、俺の魔覚はめちゃくちゃにされ、思わず手足が震えた。


傭兵(頼む…無事でいてくれ!)


走り続けること数分。


得体のしれぬ魔力を察し、その方向を振り向くと、大男が四つん這いのような奇妙な体勢で地に寝そべった何かを喰らっていた。

男は俺の方へ振り向き、ニタリと笑う。

その姿はどうみても人間ではなかった、丸で狼のような顔に、毛むくじゃらの体。
巨大な爪からは激しく血が滴っていいる。


傭兵「狼…人間…」




636: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 23:16:23.72 ID:cJSyG5qUo


狼魔人「ああん? 誰だオメェは。ま、人間なんざ誰でもいいが」

狼魔人「オレの食事の邪魔すんじゃねぇ」

傭兵「何を食っている」

狼魔人「これか?」


魔獣の足元では大柄の男が無残な姿で息絶えていた。
応戦したのだろう、側にはへし折られた斧が転がっている。
俺はそいつのことをよく知っていた。


傭兵「貴様!」

狼魔人「んだよ」

狼魔人「オメェもくわれてぇのか」

狼魔人「人間の男がオレに勝てるとでも思ってんのか」

傭兵「お前達は何をしに来た…!」

狼魔人「何って。狩りだよ」

狼魔人「獣が餌を狩るのはあたりまえだろう!! ハハハ!!」

狂気を孕んだ高笑いとともに魔獣から強い魔力が発せられた。

傭兵「ぐっ…」




637: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 23:21:56.16 ID:cJSyG5qUo



狼魔人「いいか人間のガキ」

狼魔人「長い歴史においてオメェらはオレたちの餌でしかないんだ。オレたちに従え!」

狼魔人「そして血肉を差し出せばいいんだよ!!」

魔獣がギラリと爪を向ける。
あれで引き裂かれるとひとたまりもないだろう。

そして筆舌に尽くしがたいのはその魔力。
やはり人間とは比べ物にならない量で、凶暴性が色濃く現れている。

傭兵(勝てるのか…)

俺は戦場で恐れを感じたことはない。
だが、いま感じているこの感覚は、間違いなく恐れそのものだ。

剣の柄を握る手が自然と震える。
冷や汗がこめかみを伝う。
そして小さく息を飲んだ瞬間、目の前の魔獣は跳躍した。


狼魔人「あばよ! 死ねぇ!」




638: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 23:29:06.22 ID:cJSyG5qUo


敵の前腕から一度に5本の太い斬撃が繰り出される。

かろうじてそれらを刀身で弾きとばすも、次は空いた逆の腕から同じ攻撃が続けざまに放たれる。

傭兵(手数が違いすぎる!)

傭兵(これが魔物の戦いかた!)

剣を構えた人間相手とは違い、魔物には太刀筋など存在しない。
特にそれはこいつのようなしゃべることの出来る知性のある魔物になると顕著だ。

そこらのスライムや動物のバケモンとは違い、こいつらは本当の化け物だった。
格が違うと言える。
自身の性質をよく理解し、魔力を巧みに扱うことができる。

ゆえにこいつらは個々がそれぞれ突出した戦闘力をもっていて、たった1体相手とは言え攻略は並大抵ではなかった。

過去の任務では1体の魔獣を駆除するのに丸1ヶ月かけたこともあった。

ギィンと鈍い音がして、俺は遥か後方に吹き飛ばされる。


傭兵「うあっ…!」


狼魔人「この程度か。さて、食っちまうか」




639: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 23:35:47.05 ID:cJSyG5qUo



傭兵「ううう…」

傭兵(なぜだ。うまく力が出せない)

傭兵(俺が怯えているのか…)

魔力をうまく扱うにはまず呼吸を整えて、発動条件を満たさなければならない。
戦闘中の土壇場に強大な魔力を上手く扱うのは、長年訓練していてもなかなか難しいとされている。


傭兵(やれるかどうかじゃない。やらなきゃ殺される!)


血がたぎる。
体から赤い魔力が噴き出て、木の枝や地面につもった雪をじわじわと溶かしていった。


狼魔人「さっきの野郎よりはやれるようだな」

狼魔人「クンクン…ん?」

狼魔人「でもやーめた」

魔獣はからかうようにぶらんと爪を降ろし、何かを嗅ぎまわっている

傭兵「なに」

狼魔人「どこからかいい匂いがするぜ。メスだ…」

狼魔人「うまそう!」

傭兵「! まさか」

そして魔獣はぴょんと飛び跳ねたあと、四つ足でかけていった。
本物の狼を越えるほどの駿足で、あっという間に視界から消えてしまった。




640: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 23:41:25.26 ID:cJSyG5qUo



  ・  ・  ・


俺は木々の合間を飛ぶように駆けた。

傭兵(ユイさんならこの道を通って帰ってくるはず…!)

傭兵(やつより、やつより早く…!)


そして俺はついに見慣れた女性の姿を視界の端に捉えた。
いつもと変わらぬ様子で、買い物帰りの大きな包みを抱えて歩いている。


傭兵(良かった…無事だった)

安堵して、ユイさんの名前を呼び駆け寄ろうとした瞬間。

俺の背後からとびだした何かが、俺をはるかに飛び越えて、まっすぐに彼女の元へと向かっていった。

そして制止の間もなく振り下ろされる凶爪。

俺の目の前で、愛しい人の鮮血が跳ねた。


母親「え……?」




642: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 23:47:25.59 ID:cJSyG5qUo


血は激しく飛び散って、辺りの雪を真っ赤に染めた。

長年の戦場暮らしの経験から、俺はそれが助からない傷だという事がひと目でわかってしまった。



傭兵「……ぁ?」

母親「…?」

ユイさんは目をぱちぱちとさせて、倒れこんだ。
紙袋からたくさんの食材がこぼれて、ゆるやかな斜面を転がっていく。


狼魔人「フフフ…ひゃっほう! 丁寧に案内ありがとよ!」

狼魔人「んじゃ、いっただきま〜す」

傭兵「貴様…」


心臓が痛い。
いままで目の前で誰か死んでも、心は冷徹にすぐに戦闘態勢に切り替えることができた。
なのにいまは…。
血が熱い。
ドロドロとした感情とともにマグマのような魔力が噴き出してくる。

俺は無意識に、目の前の凶獣めがけて容赦なく熱線を放っていた。




643: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/27(土) 23:52:44.84 ID:cJSyG5qUo


熱線は敵の肩口を貫く。

狼魔人「ぐがああああ!!! あああああ!!」

狼魔人「いだあああああ!!」

狼魔人「グルルルル…あががああ」

狼魔人「なにを…しやがったあああ!」


先までへらへらとしていた魔獣は一変、飢えた獰猛な獣ようなおぞましい目つきで俺を睨みつける。
牙をむき出しにし、巨大な爪はさらに膨れ上がり鋭さを増した。

傭兵「消えろ!」

そんなこともお構いなしに俺は続けざまに熱線を放ち、駆けながら相手との距離を詰めた。

傭兵「ユイさんから離れろ!!」

狼魔人「グルルル!!」

斬りかかるもすんでのところで逃げられる。

狼魔人「てめぇは後で食ってやる! おぼえてやがれ!」

そして魔獣は駿足をとばして場を去った。

残された俺の足元には、血に染まったユイさんが横たわっていた。




644: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 00:00:03.57 ID:cJSyG5qUo



傭兵「ユイ…さん…」

母親「……ぁ、あ」

抱きかかえると、なにか伝えようとユイさんは口を小さく動かしていた。

傭兵「どうして…こんなことに」

母親「ソル…く…」

傭兵「ユイさん! しゃべっちゃだめだ。いま医者に…!」


頭ではわかっていた。
傷が深くすでに手遅れだということ、村の医者が生きているかもわからないこと。
そして、もう永遠のお別れだということ。

ユイさんは最後のちからを振り絞って、俺の頬に手を添えた。

傭兵「あなたを…護るって…誓ったのに…」

母親「ユ…カ…を」

傭兵「!」

母親「おねが…ソルく……ユッカ…を…まもっ…て」

母親「あのこは…わたし…たちの…希、望…」

母親「おねがい…だよ…ソル…く」

ユイさんは青ざめた顔でうっすらと微笑んだ。
そして間もなく、細く白い手がはらりと力なく落ちた。




645: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 00:08:55.25 ID:mngPimV2o


なぜだ。どうしてこうなってしまった。

誰のせいだ。

俺のせいだ。

ユイさんを死なせてしまった。失ってしまった。

俺はこの先どうすればいい。

そんなの決まっている。

傭兵「ユッカを…護らないと」

俺は最後に、小さな手を握りしめた。

ユイさんの亡骸は道を少し外れた樹の根元に寝かせた。

不思議と涙は出なかった。

さきほどまでと打って変わって、恐ろしく冷静に現実を直視できている。

傭兵「ユッカ…待っていろ」

強い決心を胸に、徐々に雪の勢いを増す林道を走った。



第22話<ユッカ>つづく




656: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 21:10:30.28 ID:mngPimV2o

第22話<ユッカ>つづき



  ・  ・  ・


林道を抜け、丘の中腹に差し掛かった辺りまでたどり着くと、数匹の魔物が徘徊していた。

程度の低そうな人型でない魔物だ。

燃えたぎる剣で両断し、あっという間に駆け抜けていく。

ユッカの待つ神樹の森は、この丘を超えた反対側に位置する。

奴らはもうここまで迫ってきている。

傭兵「こんなところにもたくさん…まずい」


魔物達は海の向こうから翼を持った魔鳥の背にのって突然やってきた。

また一匹また一匹と俺の前に姿を現しては、頭を叩き潰されていく。

油断していると中にはとても生命力の強い個体もいる。

しっかりと止めをささなければならない。


傭兵「邪魔だ!!」

いまはただユッカのことだけが頭にあった。
きっと怯えて泣いているだろう。
はやくユッカの元へ駆けつけたい。その一心だった。

だが駆けつけたその時、俺はユッカにどんな顔を向ければいい。

なんて伝えればいい。




657: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 21:15:03.21 ID:mngPimV2o



【丘の頂上】


ザッ ザッ…

狼魔人「よぅ。また会ったな」

狼魔人「どこへ向かうんだ。人間共の村はこっちじゃねぇぞ」

狼魔人「それともなにか。この先にお宝でもあんのか」

傭兵「……」

狼魔人「怖い顔すんなよ。この肩の穴の礼をしに来ただけだ」

狼魔人「イテェんだよ。いつまでも焼け付くような痛みが残ってやがる…」

狼魔人「オメェのツラむかつくぜ…なぶり殺しにしなきゃ気がすまねぇ」

狼魔人「それからあの女を…そういやあの女はどうなった。オレの爪であっけなく死んだか。ははは」

狼魔人「真っ二つにしねぇように、かな〜り手加減したんだが、人間ってのはもろいもんだな」

傭兵「…」




658: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 21:19:55.44 ID:mngPimV2o


狼魔人「おっと、激昂しねぇんだな。思ったより冷静だ」

狼魔人「いいぜその目つき。オレと同じだ。ただ冷静に獲物の性質を見極め、攻撃の瞬間を伺っている目だ」

狼魔人「種族は違えど、オメェはオレと同類だな」

傭兵「そこをどけ。いや、お前を殺してからじゃないと意味が無いか」

こいつは俺がいままで出会った魔物の中でも明らかに異質で危険だ。
狼の特性が色濃いこいつは、ほんのわずかな臭いから足取りをたどることだってできるだろう。

ユッカのもとへむざむざ案内するわけにはいかない。

ここで俺が始末する。

狼魔人「やる気かよ」

傭兵「その前に、口の聞けるお前にひとつだけ聞いておく」

狼魔人「あん?」

傭兵「お前たちは何をしに来た」

狼魔人「…狩り♪ というのはオレの趣味で、あーっと、なんだったか」

狼魔人「とにかく探しものだぜ。探しもの」

狼魔人「オレの仕えるお方があるものを探していらしてな」

傭兵(やはりユッカが狙いか)




659: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 21:24:32.18 ID:mngPimV2o


傭兵「そうか」

狼魔人「ま、オメェには関係ねぇよ。今からここで死ぬんだからな!!」

あの凶爪が俺に向けられた。

あれが、ユイさんの命を刈り取った。

傭兵(仇は討ちます)

抜刀。

狼魔人「どうした! さっきのわけわからねぇ火は使わねぇのか!!」

狼魔人「なら好都合!! 死ね!」


魔獣の体術は明らかに俺より上だった。

速度も腕力も手数も、何一つ人間である俺は奴に及ばない。


傭兵(だが、魔力なら)

俺の全身を纏う豪炎の魔力に、魔獣は今ひとつ決め手をかいているようだった。

傭兵(肩を撃ちぬかれた痛みと熱さを覚えているな)

傭兵(近接では勝ち目は薄い。このまま距離をとって迎撃する)




660: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 21:30:57.62 ID:mngPimV2o



狼魔人「チッ…近づくだけで肌がチリチリしやがる」

傭兵「お前が邪悪であればあるほど、この炎は威力を増す!」

狼魔人「なんだこいつ…」

狼魔人「だったやりかたってのがあるぜ!」


魔獣が5本の鋭い爪で空を裂くと、斬撃がかまいたちとなり俺に降り注いだ。

傭兵「!」

狼魔人「おらおらどんどんいくぜ!」

奴は攻撃の手を休めることなく、腕を何度も振り、無数のかまいたちを放ち続けた。

一本の剣で防げる量などたかが知れていて、俺は全身を浅く切り裂かれ、血しぶきをあげながら後退した。

傭兵「あっ…ぐ」

狼魔人「ズタズタだな。ハハハ!」

狼魔人「どうだ。自慢の魔力でもガードしていいんだぜ」

狼魔人「だが、それがどこまで持つかな…」

傭兵「…」

敵は遠距離戦にもかかわらず魔力をほとんど消費していない。対して俺は身を護るだけで精一杯だ。

傭兵(推しても退いても俺の不利はかわらないか)




661: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 21:38:41.96 ID:mngPimV2o



その後、奴の懐に飛び込んで何度も切りつけたが、致命打を与えることは出来なかった。


傭兵「…」

狼魔人「ハァ…ハァ」

だが消耗はしているようだった。

狼魔人「ムカつくんだよその魔力…! チリチリ焼き焦がしやがって」

傭兵「お前と持久戦をしている暇はない」


こうしている間にも続々と魔物は集まってくるだろう。
他の魔物が神樹の森へ侵入したかもしれない。
ユッカのことを考えると気が気でなかったが、俺は現状を打開しなければ、自身の命すら危うい。

傭兵(魔力をどれだけつかってでもこいつを仕留めるしかない)

しかし熱線はすでに一度放っている。
奴は神がかった反射と身のこなしで直撃を避けて、肩を撃ちぬくだけで終わってしまった。

発動の所作を見られている以上、膨大な魔力を消耗するあれを次に回避されたら終わりだ。

傭兵(だがもう時間がない!)

傭兵(懐に飛び込んで…焼き払う)




662: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 21:47:04.93 ID:mngPimV2o



狼魔人「来やがれ赤毛! オメェの体をバラバラにしてやる!!」

傭兵「…!」

同時に地を蹴って相手に向かって突撃した。
腕の振りは奴のほうが遥かに速い。
そして奴の場合、腕2本による攻撃で即座に二撃目を加えることができる。


狼魔人「オラァ!」

一撃目。
魔獣は右腕を目視不可能なほどの速度で振りぬいた。

俺は予め構えていた剣で、なんとかそれをはねのける。
しかし宙で体勢が崩れ、天地を失ってしまう。

そして寸分の隙もなく放たれる二撃目。
左腕の爪が俺に斬りかかった。
しかし撃ちぬかれた肩のダメージせいか、わずかに動きが遅い。
俺は攻撃を目で捉え、魔力を存分に寄せ集めた右足で応戦した。


狼魔人「何っ。足で」

傭兵「ぐあっ」

足に深々と5本の凶爪が突き刺さる。

狼魔人「勝った! このまま足をぶったぎって――」

傭兵「これで逃げられねぇ」




663: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 21:54:45.91 ID:mngPimV2o



狼魔人「あぁ、お前はもう逃げられねぇよ! ぐちゃぐちゃにして」

傭兵「逃げられないのはお前だといったんだ」


俺は瞬時に魔力を練った。
痛みが頭をクリアにしてくれる。

そして、両手の平を奴の毛むくじゃらの胸に押し付け、至近距離でありったけの熱線を浴びせた。

狼魔人「!!!」


魔獣の胸は俺の手の形に焼き消え、そこから真っ赤な浄化の炎が全身へと伝っていく。

狼魔人「!!!」

魔獣は声をだすことも出来ず、後ろにのけぞった。

俺は剣で魔獣の左腕を切り落とし、右足に突き刺さった爪を痛みとともに引き抜いた。

傷が深く、再生が始まらない。


傭兵「う…ぐぁ…」


狼魔人「あ…が……が!?」


傭兵「ユッカの元へ向かわなくては…」




664: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 22:02:42.73 ID:mngPimV2o



ユイさんの敵は取った。

俺はのたうち回る魔獣を背に、ユッカの待つ森へと入った。



【神樹の森】


神樹の森に群生する木々は強い魔力を帯びている。

ここなら魔覚を用いて正確な位置を把握することが出来ない。
ゆえにユッカの魔力を隠すにはちょうど良かった。

だがそれは俺にとってもリスクがある。
今仮に敵に背後から近づかれても、気づかない可能性があるからだ。

もはや走ることすらできない俺は、辺りに細心の注意をはらって少しずつ歩みを進める。

傭兵(あの狼男と同格の魔物に出くわしたら終わりだな)



傭兵「ここだ…ユッカ」

幹に空いた大きな穴の中で、依然ユッカはおとなしくしていた。

傭兵「よかった…無事だったか」




665: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 22:08:24.22 ID:mngPimV2o



ほっと胸をなでおろすと、全身の痛みが回ってきた。


傭兵「ユッカ」

勇者「ソル……」

勇者「けが…してる」

ユッカは俺をみるやいなや、大きな瞳からボロボロと涙をこぼし、声をあげて鳴いた。

こんな森にひとりにされて、ずっと不安だったのだろう。

いまだ村の方角からはおぞましい魔力の源が微かに感じ取られる。


俺はそんなユッカの姿をみてどうしたら良いかわからなかった。

ユイさんを死なせてしまった。

それは腹を切っても贖罪なんてできないほどの失態だ。

傭兵「…ユッカ」

そしてこの先のこと。

傭兵(俺たちはこの状況をどうやりすごしたらいい…)

傭兵(奴らはユッカを見つけ出すまで手当たり次第破壊を続けるのか、それとも頃合いを見て退却するのか)

俺には何もわからない。

血にまみれた手で泣き続けるユッカを抱きしめた。




666: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 22:13:28.90 ID:mngPimV2o



勇者「ソル…ぐすっ…うえええん」

傭兵「ユッカ。ここに隠れていよう」

傭兵「きっと、神樹が俺たちを護ってくれるから」

傭兵「奴らは見つけることなんてできないさ」

傭兵「奴らがいなくなるまでずっとここにいよう…ずっと」


ユッカは頭をふった。
そして、泣きながら、俺のやってきた方向をゆっくりと指差す。

勇者「こわいの…こわいのくる」

傭兵「!」

勇者「こわいのが…くる…」

傭兵「そん…な……」


そいつはまだ俺の遥か後方にいる。

だが気配をはっきりと察知できた。

魔覚ではない。俺程度の魔覚ではこの魔力まみれの森で何かを探し当てることはできない。

ならなぜわかったか。

それは、そいつから放たれる尋常ならざる殺気が、ただ一点俺に向いていたからだ。

傭兵「生きている…?」




667: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 22:19:24.34 ID:mngPimV2o



俺は絶望に打ちひしがれた。

いましがた刃を交え、止めを刺したと確信した相手が、再び立ち上がりこちらへ向かっているのだ。

傭兵(手負いの俺で勝てるか…?)

傭兵(奴は鼻が効く…)

傭兵(なら俺はこれ以上ここにいるわけにはいかない…)


俺は立ち上がり、ユッカに背を向けた。

勇者「やだぁ…いっちゃやだぁ…」

勇者「ここにいて…よぉ…ソルぅ」

傭兵「またお前のもとへ戻ってくるよ。約束する」

そうだ。俺はユッカを護りつづけると約束した。

ここでユッカが奴にみつかったら、守り切ることはできない。
奴はいのいちばんにユッカの命を摘むだろう。


傭兵「行ってくる」

泣きじゃくるユッカの頭を5回6回と繰り返しなでた。




668: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 22:26:48.52 ID:mngPimV2o



【神樹の森・入り口】



狼魔人「ちったぁ学習したな」

狼魔人「だが…この森のなかに…いることはわかった…ぜぇ、ぜぇ」

傭兵「なぜ生きている」

狼魔人「オレたち魔人種はよぉ…呪われてるんだ。だから、ちょっとやそっとじゃ死なない」

傭兵「なんだと」

狼魔人「おっと、これ以上教えてやる義理はねぇや」

狼魔人「手負いの狼同士、ラストバトルと行こうぜぇ」

傭兵「…なぜ、こんなことをした」

狼魔人「全てはオレたち魔族の再興のため…」ニヤリ

狼魔人「邪魔立てするやつは全員殺す!」


そして俺は、再三に渡って狼魔人と対決した。




669: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 22:33:23.75 ID:mngPimV2o




  ・   ・   ・


斬りつけ合って数分が経った。

最初に悲鳴をあげたのは俺の剣だった。

小気味の良い音と共に、刀身が破砕し、切っ先が彼方へと飛んで行く。


狼魔人「終わったな」

狼魔人「人間の剣士。いい線いってたぜ」

狼魔人「最期に名前を聞いといてやる」

傭兵「…ソル」

狼魔人「あばよ赤毛」

狼魔人「オメェは俺が生涯戦った中で一番強かった」

狼魔人「安心しな。オメェのことは髪の毛一本残らず食ってやるから、オメェはオレの血肉となってオレの中で永遠に生き続ける」

狼魔人「寂しくないぜ」

狼魔人「さぁ…トドメだ!」


傭兵(ユッカ…すまない…どうかそのまま隠れ続けていてくれ)

傭兵(絶対に出てくるな。震えているだけでいい…)

傭兵(ごめん…俺はもう戻れない…今ここで…死ぬ)




670: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 22:39:40.77 ID:mngPimV2o


傭兵(ユイさん。あなたとの最期の約束を違えてしまいました)

傭兵(俺に力がなかったから…あなたを救えませんでした)


狼魔人は俺の目の前で大きく右腕を振り上げた。


傭兵「…」

狼魔人「サクっとやってやるからよ。ハハハ!!」

狼魔人「……クン。ん?」

傭兵「…え」

背後から、雪をかきわける小さな足音が聞こえた。
それと、俺の名前を呼ぶ愛らしく甲高い声。

傭兵「どう…して…」

狼魔人「ハハハハハ!! そうか、ガキだったのか!! やっと見つけたぜぇ!!」

傭兵「ユッカくるなぁああ!!」

勇者「ソル! ソルぅ…! ボクを…ひとりに…やだ…よぉ」


狼魔人は振り上げた手を降ろし、ニタリと笑って跳躍した。
もはや俺のことなど歯牙にもかけていない。
同時に俺もユッカの元へ駆け出していた。

傭兵(ユッカ…なぜ来てしまったんだ…!)

傭兵(お前は神樹の中にいればよかったのに…!)




671: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 22:46:50.51 ID:mngPimV2o



狼魔人「さっき殺った女とおんなじ臭いだ!!」

狼魔人「あたらずとも遠からずだったってことか!!」

傭兵「やめろ…!」


ユッカは固まって身動きひとつとらなかった。
いや、恐怖で取れなかったのだ。
このままでは暴虐性を孕んだ邪悪な魔力にユッカの鋭敏な魔覚が粉々に破壊されてしまう。
それ以前に小さな肉体が割かれ、ユッカは死ぬ。

魔獣は宙で大きく腕を振りかぶり、迷うことなく一撃を放った。

狼魔人「手柄はオレのもんだ!!」


鋭い斬撃音と飛び散る血潮。

そして俺の背中に激しい痛みが襲った。


傭兵「あぐっ…あ゛っ!」

狼魔人「!」

俺は気がつけばユッカを抱きしめるように、魔爪の盾になっていた。

背中を深々と切り裂かれ、もう、自分が助からないことを悟った。




672: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 22:51:45.07 ID:mngPimV2o



狼魔人「オメェはよぉ、性懲りもなく!」

狼魔人「邪魔しやがって!!」

傭兵「……」

勇者「ソ…ル」

傭兵「守るから…お前のこと…」

勇者「…」フルフル

勇者「ち、が…」

傭兵「平気だよ。こんなの痛くない」

傭兵「ちっとも、痛くない」


俺は残された魔力で命を燃やした。

ユッカを護って死ぬならそれでいい。

魔力は真っ赤に燃え、ドロリとしたマグマのように狼魔人の右腕に絡みついた。

狼魔人「お、おわっ…ああああ!!」

狼魔人「熱いっ…なんだ…!? 腕が溶ける…! あああああ!!」

そして浄化の炎は俺とユッカ2人を包み込む繭のように形を変えていく。




673: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 22:55:17.41 ID:mngPimV2o


狼魔人「あちぃ…アチぃぞ…なんだこの焼けつく炎はッ」

狼魔人「雪でも土でも消えねぇどうなってやがる!!」


ザク…ザク…

ローブの男「何をやっている」

狼魔人「! 呪術師様…!」

狼魔人「あぁちょうどよいところにおいでくださいましたよぉおお!」

狼魔人「このドロドロの炎を! 俺の腕の炎を消してくれぇええ!! 次こそ死んじまうよぉお!!」

ローブの男「これは…」

狼魔人「あちぃんだよぉ…死ぬほどいてぇ!」

狼魔人「あの野郎! 八つ裂きにして…内蔵食い散らかしてやる…!」

狼魔人「それでも気がすまねぇ…! ガキもろとも肉団子にして…!! ぐあああああ!!!」

ローブの男「見せてみろ」

狼魔人「あぁぁ…熱いんだよぉ…死んじまうよぉ」

ローブの男「闇を晴らす浄化の炎…」




674: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 23:00:29.40 ID:mngPimV2o


ローブの男「あの小娘にまんまとしてやられたのか」

ローブの男「ならばあの娘が我らに仇なす一族の末裔というのは間違いないようだな」

狼魔人「いでぇえ…腕がなくなる…助けて」

狼魔人「あ、魔術師様…ち、近づいたらやべえです…全身がこうなっちまうよぉおお」

狼魔人「うおおおん痛い…痛い…体が擦り切られていくみてぇだ助けてくれぇ」

ローブの男「……撤退するぞ」

ローブの男「ああなってしまうと手に負えん」


傭兵「……」

勇者「ぐすっ…ぐすっ…」


狼魔人「それよりこの痛みをおおお!!」

ローブの男「あとで私の魔封陣でなんとかしてやる」

狼魔人「覚えてやがれクソ野郎! 次あったらぶち殺してやるからな!」


罵声と足音が遠ざかっていく。

傭兵(助かった…のか…)




675: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 23:05:07.55 ID:mngPimV2o



やがて俺とユッカを包み込んでいた炎の繭は音もなく消え去った。
それとともに全身へ痛みや疲れがどっと押し寄せてきて、俺の意識は朦朧とする。

ユッカは大きく目を見開き、俺の腕の中でわなわなと震えていた。

勇者「ソル…ちが…。せなかからいっぱいち…が…」

傭兵(さすがに回復しきらないか…)

勇者「あ……あ……。ち…が…」

背中の鋭く深く切り裂かれた傷口が熱を帯びている。
おびただしい量の血が噴き出て少女の小さな手を汚し、膝元に血だまりを作った。

傭兵(そんな顔をするなユッカ…)

傭兵「お前が生き延びただけで…俺は…」

いまの俺だと、撃退できただけでも十分だ。

傭兵(俺は死ぬのか。あぁ頭がボーっとしてなにも考えられない。死ぬのか…でも死んでしまったら)

傭兵(ユイさんすまない。俺、約束…守れ――な――)

俺は真っ赤に染まった雪の上に崩れ落ちた。


勇者「あああああっ! ソルぅ! いやああああ!!」




676: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/28(日) 23:12:57.40 ID:mngPimV2o



俺は死ぬのだろう。全身の感覚がなくなって、今は痛みすら感じない。
光も音もだんだんと閉ざされ始めた。
唯一、ユッカの泣き声だけが微かに頭の中に響いた。


  「かみさま! だれでもいいからソルをたすけて!!」

  「おねがいします…かみさまだってあくまだって、だれでもいいから…ソルを…たすけて…」

  「だれでもいいから…たすけてよぉ…っ」

  「おねがいします…うわあああああん、あぁぁぁあああ!!」


耳元で少女の泣き声が聞こえる。

ユッカ、泣かないでくれ。

お前の泣いている声なんて聞きたくない。

笑って強く生きて…立派な勇者になってくれ。


  『ほんとに悪魔でいいの?くすくす』

  『じゃあ、助けてあげよっか?』

  「なんでもおれいします…おねがい…します…ソルを…」
 
  『そうねぇ。だったらお礼がわりにあたしの言うこと1つ聞いてもらおうかなー』

  「ボク…なんでも…ぐすっ…」
 
  『大人になったらあなたの体を頂戴♪』

  『いい? 約束よ、約束。はい、契約完了♪』


誰だ。そこに誰かいるのか。
誰でもいいユッカを安全なところに…――

俺の大切な…ユッカを―――


――――


――



第22話<ユッカ>つづく




694: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 22:21:31.12 ID:u1oD7jJIo

第22話<ユッカ>つづき




気づいた時、俺は見慣れた天井を見ていた。
ここ一年以上ずっと寝泊まりを繰り返してきた、おんぼろの宿舎だ。
なぜ俺はここにいるのだろう。


傭兵「…夢だったのか…? いッ…」

この背中の痛みは夢ではない。

あれが全て夢なわけがなかった。

俺は失ったんだ。大切なユイさんを死なせてしまった。

護ることができなかった。


傭兵「……どうなったんだ…俺は…」

傭兵「…切り裂かれて死んだはずじゃ」

背中や手足に痛みは走るが、動けないほどではない。
五体満足で、間違いなく俺は生きている。

金髪の少女「…むにゃzzz」

美しい少女がベッド横の椅子に座り、俺の腕を枕にするように眠りこけていた。




695: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 22:27:23.59 ID:u1oD7jJIo


傭兵「誰だ…っけ」

ユッカと同じくらいの歳だろうか。
そういえば、何度か王宮内で見かけたことがあるかもしれない。

金髪の少女「…むぅ…? はっ! 起きてる!」

金髪の少女「おとうさま! おとうさまー!」

少女はいきなり起き上がり、口元を一拭いすると慌ただしく部屋の外へとかけていった。
しばらくして父親と思われる男と共に部屋に戻ってきた。

大神官「目を覚ましたのですね」

傭兵「あんたは…」

大神官「おや、自己紹介はしたことがありませんでしたか」

大神官「私は城下町の神殿にて大神官を務めています」

大神官「この子は娘のヒーラ。この子があなたを一週間看病していたのですよ」

金髪の少女「めをさましてよかったです…」

傭兵「いっ…週間」

傭兵「俺は一週間もねむっていたのか」

大神官「そうです。さて、どこから話したものか」




696: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 22:35:38.35 ID:u1oD7jJIo


傭兵「ユッカは」

こっちから食いかかるように尋ねようとしたら、大神官は優しく頷いて俺を制止した。

大神官「まだ起き上がってはなりません」

金髪の少女「横になりましょうね」

大神官「聞きたいことはたくさんあるでしょうが、まずは冷静になって私の話を聞いてください」

大神官「ヒーラ、あなたは他の患者たちの様子をみてきてくれますか」

金髪の少女「はいお父様」

金髪の少女「おだいじに」ニコッ

傭兵「あ、あぁ…ありがとう」



  ・  ・  ・



大神官「まず最初に。あなたたちは事件の翌朝、魔隠しの陣の中でみつかりました」

傭兵「…なぜ、そんなところに」

大神官「あなたが施した陣ではないのですか?」

傭兵「俺はそんな高等な術は使えない…」

大神官「そうですか…。ではあれは一体…?」

傭兵「続きを聞かせてくれ」

大神官「事件発生後、王国騎士団は早馬の一報を聞いてすぐに駆けつけたのですが、すでに被害は甚大でした」

大神官「近隣の村々は焼かれ、多くの村人が犠牲になりました」

大神官「私はいま人々の手当と供養をするためにこの太陽の村に滞在しています」




697: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 22:40:55.26 ID:u1oD7jJIo


傭兵「守れなかった…。ユイさんが、俺のせいで」

大神官「あなたのせいではありません」

傭兵「だけど…っ」

大神官「あなたはこの世界を未来をつなぎました。我々の唯一の希望の火は、無事生きています」

傭兵「…ユッカ」

大神官「魔物の軍勢の侵入をこうも簡単にゆるしてしまうとは…情けないのは我々国の人間です」

大神官「今回の聖地侵攻をきっかけに、国境の警備が殊更に厳重となることでしょう」

傭兵「魔物は…どうなった」

大神官「全て撤退、あるいは残党を騎士団が殲滅しました」

大神官「ですが被害は大きい。私達はあまりに多くのものを失いました…」

傭兵「……」

俺は、なぜのうのうと生きているんだろう。

ユイさんを護れず、ユッカを危険な目にあわせて…。




698: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 22:45:46.13 ID:u1oD7jJIo


大神官「この村の者に聞きました。あなたは元は流れの傭兵だそうですね」

大神官「一年ほど前にこの村にやってきたとか」

傭兵「あぁ……ここよりずっと北の国で生まれ育った……」

傭兵「戦うことしかできなくて、幼い頃から戦場を転々として生きてきた」

傭兵「殺すことしかできないくせに…なにが、なにがガードだ…」


傭兵「俺は、なんのために……?」

なんのためって。

そんなのとっくに決まっているじゃないか。

 
 『おねがい…だよ…ソル…く――――』


傭兵(ユイさん…)

ユッカを、護るためだ。

傭兵「ユッカはどこにいる!」




699: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 22:52:01.52 ID:u1oD7jJIo


大神官「こうなった以上、今彼女は王宮で騎士たちに周囲を固められ、手厚く保護されています」

傭兵「…」

傭兵「もう起きられるのですか」

傭兵「ユッカに…会いにいかなきゃ」

傭兵「俺は…ガードなんだ」

大神官「おやめなさい。もはやあなたが行って出来ることはありません」

大神官「さぁ横になって、傷にひびきます」

大神官「私の魔法とて、あなたの傷が完全に癒えたわけではありませんよ」

傭兵「それでも…行かなきゃいけないんだ。俺はユッカのガードなんだ」

傭兵「残されたたったひとりの家族なんだ…」

大神官「…あなたという人は」

大神官「…はぁ」

大神官「以前、あなたが王子と決闘をしている場面に出くわしたことがあります」

大神官「信念の強さは、どんな状況でも変わらないのですね」

傭兵「ユッカに会いに行く。痛っ…つぅ…」

大神官「…馬の手配をしましょう」

傭兵「!」




700: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 22:59:48.92 ID:u1oD7jJIo


大神官「どう諭しても、あなたを納得させることはできないのでしょう」

大神官「それまで食事にしましょうか。スタミナのつく食事があればよいですが」

傭兵「なにからなにまですまない…。本当にありがとう…ございます」

傭兵「あんたがいなければ、俺は死んでいた」

大神官「いえ、すべては神のお導きのおかげです」

大神官「私は魔法陣の中で倒れていたあなたを拾い、ここへ連れてきただけ。礼なら後ほどヒーラに」

傭兵「あの子にずいぶん世話になったみたいだな…」

大神官「ところで、あの陣についてもう一度伺いますが、本当にあなたが作りだしたのではないのですね?」

大神官「かなり精巧な物で、見慣れない印字がなされていました」

傭兵「俺には出来ない」

大神官「…そうですか。なにかわかれば御一報を」

傭兵(誰かが俺を生かした…?)

傭兵(だが心当たりがない。そんな芸当できる知り合いなんていない)

傭兵(そういえば、薄れゆく意識のなかで誰かの声を聞いたような…)

傭兵(あれは、天使だったのだろうか)




701: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 23:04:01.97 ID:u1oD7jJIo




  ・  ・  ・



金髪の少女「お兄さんもう平気なのですか?」

傭兵「ありがとうな。包帯かえたり、変なドロドロ飯を食わせたりしてくれたんだろ?」

金髪の少女「それが私のつとめですので」

傭兵「いい子だ。将来が楽しみだ」

金髪の少女「え? えへへ…」

大神官「この手紙をお持ちなさい」

傭兵「これは?」

大神官「紹介状のようなものです。あなた一人では王宮へ入れないでしょうからね」

傭兵「ありがとう。行ってくる」

金髪の少女「行ってらっしゃい!」

大神官「神よ。どうかこの若者の行く末に幸あらんことを」


そうして俺は痛む背をかばいながら王宮に向けて馬を走らせた。




702: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 23:10:25.74 ID:u1oD7jJIo



【王宮・入り口】


兵士A「誰だ」

兵士B「ほら、勇者様のガードの…」

兵士A「役立たずのガード風情が、何をしに来た」

傭兵「ユッカに会いに来た。通してくれ。紹介状ならある」

兵士A「よくもぬけぬけと! 貴様のせいで…!」

騎士「よせ」

兵士A「はっ」

騎士「手紙を拝借……ホーリィ大神官と会ったようだな」

傭兵「ユッカがここにいると聞いてきた」

騎士「入城は許可する。ただし、勇者様のいらっしゃる部屋には通さん」

傭兵「な、なに…!」

傭兵「ユッカになにかあったのか…!?」

騎士「ふん。お前にそれを語る必要はない」




703: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 23:18:17.89 ID:u1oD7jJIo



騎士「城内もばたついていてな、お前をもてなしている暇はない」

傭兵「必要ない。ユッカに会えればそれでいい」

騎士「これは王による厳命だ」

騎士「いま勇者様は貴様ではなく、我らの庇護下にある」

騎士「何人たりとも、面会させることはできん」

騎士「まだ悪魔がこの国に潜伏している可能性も捨てきれんのだ」

騎士「お前とて例外ではない、悪魔が貴様に化けていることもありうる」

傭兵「ユッカに会えば俺が悪魔じゃないことはわかる」

騎士「ハハハ。ふざけたことを言うじゃないか」

騎士「まぁ、俺はそこまで疑っていないがな。建前だよ」

傭兵「何?」

騎士「今回の奇襲をうけて、誰もがふがいなく思っているのさ」

騎士「お前のような小僧ひとりに勇者様を護らせていたのは事実」

騎士「いまさら恥ずかしい話だが、我々は本当に護るべき存在を知ったのだ」


王子「そして、義姉上をあの地へ追いやったのも、私達王族の意固地さが端を発している」

傭兵「グレイス…王子」




704: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 23:25:02.90 ID:u1oD7jJIo


王子「ユッカに会いに来たんだな」

傭兵「あぁ…」

王子「包帯だらけじゃないか」

傭兵「……」

王子「話は、聞いている」


普段から仏頂面の王子はその顔をしかめいつも以上に神妙な顔をしていた。

ユイさんの事はこの王宮の人間はみな知っているのだろう。

なら俺の醜態だって伝わっているはずだ。

俺の不手際でユッカを危険にさらしたと認識されてもおかしくはない。


王子「お前には、苦労をかけた」

傭兵「え…」

王子「姪の身の安全は保証する。お前の役目は王国騎士団が引き継ぐ」

王子「ソル。よくやった、お前に暇を与える」

傭兵「そう…か…」


それは俺への解雇通告だった。

傭兵(当たり前だよな…)




705: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 23:31:51.06 ID:u1oD7jJIo



俺は流れの人間だ。
縁もゆかりもない地でうまれ、たまたまここへ来ただけの、なんの関係もない人間。
この国の内部に深く関わることは出来ない。

それはわかっていた。
だけど、ユッカは俺にとって…。
俺は踵を返そうとした。

傭兵「…」

王子「だが、いままでの働きに免じて最後に顔を見るくらいならかまわん」

王子「3階の貴賓の間だ」

騎士「し、しかし…」

王子「私の権限で面会を許可する。連れて行ってやれ」

騎士「御心のままに」

傭兵「グレイス」

王子「私はまたしばらく王宮を離れる。最後に、友人の願いを聞いてやるくらいわけもない」

王子「また会おうソル。会えるかはわからんがな」

傭兵「…ありがとう」




706: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 23:38:22.75 ID:u1oD7jJIo



【貴賓の間】



通された部屋は豪華な装飾が施されていた。

大きなベッドの真ん中には少女が眠っている。

その脇の椅子には、ユッカの魔法の師である魔導師がゆったりと座っていた。


傭兵「ユッカ」

魔導師「おや。誰かと思えばおぬしじゃったか」

傭兵「ユッカは…なぜ面会謝絶なんだ」

傭兵「怪我…したのか…?」

魔導師「いんや、体は至って無事健康じゃ」

魔導師「じゃが、心に深い傷を負っておる」

魔導師「深い深い傷をな…」

傭兵「!」

傭兵「そう…か…」

魔導師「起きていると錯乱してしまうので、今はワシの魔法で眠っておる」




707: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 23:45:44.63 ID:u1oD7jJIo



魔導師「この子の容態についてはワシに一任されておる」

傭兵「だけど、いつまでもそうしているわけにはいかないだろ…」

魔導師「うむ…そこでじゃ」

魔導師「ワシはおぬしを密かに待っておった」

傭兵「俺を…?」

魔導師「おぬしに悔いが残らんようにな、最後に会わせてやろうとおもってな」

魔導師「おぬしが来るこの日を待っていた」

傭兵「最後だと…? 確かに、俺はいまさっき首になったが」

魔導師「この子の心の傷を塞ぐために、ワシは禁術を使う」

傭兵「禁術…」

魔導師「記憶を、封印するのじゃよ」

魔導師「この子は今回の騒動にかかわる全てを忘れ、平穏な生活を取り戻す」

傭兵「封印だと!」

魔導師「そしてその記憶の中には、母やおぬしのことが数多く含まれている」




708: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 23:51:53.40 ID:u1oD7jJIo


傭兵「俺を…忘れるのか…」

勇者「…すぅ、すぅ…zzz」

勇者「んぅ…う…う゛…」

勇者「ソル…やだ…しなな…いで…や…だ」

勇者「ぐすっ…zzz」

傭兵「ユッカ!」

魔導師「苦しんでおるのじゃよ。この一週間、何度も何度も夢の中でおぬしの名前を呼んでいる」

魔導師「なにがあったかは察しがつく」

傭兵「俺が…ユッカにトラウマを植えつけてしまった…?」

魔導師「いや、決しておぬしのせいではない。自分を責めるな」

魔導師「決しておぬしのせいではないのじゃ…」

魔導師「だから、こうなってしまったことをすまぬと、謝っておく」

魔導師「そして、ワシがこれからすることを許してほしい」

傭兵「……」

傭兵「それでユッカがまた笑顔で暮らせるなら…」

傭兵「俺は…かまわない」

傭兵「俺のことも、あの家で暮らしたことも全部忘れても…ユッカは強くならなくちゃいけないから!」

傭兵「勇者だから…ユッカは強く育ってほしい! 俺の願いだ!!」


俺はいつの間にか声を荒らげていた。
背中以上に、心臓が痛かった。




709: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/29(月) 23:56:44.29 ID:u1oD7jJIo



魔導師は椅子から立ち上がり、眠るユッカの頭の上にそっと手のひらをかざした。

魔導師「目覚めよ」

勇者「んぅ……?」

勇者「…ふぁ…」

傭兵「ユッカ!」

勇者「ソル…? あ、あ、あ…」

魔導師「術の詠唱に入る。最後におぬし自身のために言葉を交わしておけ」

傭兵「!」

傭兵「ユッカ。俺だ。俺は生きてる…」

勇者「ソル!」

ユッカは起き上がるやいなや、俺に激しく抱きついた。

傭兵「いたっ、いたた…」

勇者「ごめんね…ごめんねソル…ボクのせいなのっ」

勇者「ボクがわるいこだったの。ソルのいうこときかなくて…うわあああん」

傭兵「違うんだユッカ。お前は悪くない」

傭兵「だから泣かないで」

傭兵「俺、お前のこと護れてよかったよ。こうしてまたお前の声を聞けた」

傭兵「俺は…それだけで十分なんだ…」

ユッカを抱きしめる手に自然と力がこもった。

そして俺の中で、熱く魔力が燃えたぎり始める。




711: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/30(火) 00:04:53.33 ID:5KLsPeEuo


傭兵「ごめんなユッカ」

傭兵「これからもずっと護りたかった。けど、俺は…弱い傭兵でしかないから」

傭兵「お前の側にいてやることができないんだ」

勇者「…え…? ソル…?」

勇者「やだ! やだよ! もうどこにもいかないで!」

勇者「ボクをひとりにしないで…ママ、ママ…っ! うあああん! ママぁー!!」

傭兵「これが、お前がどんな悪い奴にも立ち向かえるような、力と勇気になりますように」

魔力が全身からあふれ出て、ユッカの魔力と同調し、溶け合っていく。

勇者「あったかい…なにこれ…」

勇者「ソルが…ボクのなかに…はいってくるよ…ん…」

傭兵「ユッカ…お前のことを、離れていても護るから」

傭兵「だから強く生きて…立派な勇者になってくれ」

傭兵「俺の想いが、お前をどんな災厄からも護るから…」

傭兵「愛してるよ…ユッカ」


魔術師「忌まわしき記憶よ、眠れ…心の奥底で」


魔導師の発した言葉とともに、部屋中を光が包み込んだ。




712: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/30(火) 00:11:40.85 ID:5KLsPeEuo



  ・  ・  ・


勇者「んぅ……あれ」

傭兵「……あぁ、あ…ごほ、ゴホ…」

勇者「おにいさん、誰…? ボク、ここで…なにしてるんだろう」

勇者「ここ…どこかな」

勇者「んぅーくすぐったいよ、離してぇ」

魔導師「…おぬし、今何をした!」

勇者「あれ、なんだかからだがぽかぽかしてあったかい…えへへ」

魔導師「なんということを…」

傭兵「…ぁ…ぁ」


力が出ない。
立ち上がることもままならなかった。
まるで病床の老人ともいえるほどの恐ろしい体力の低下。

魔力は練られない。体の中に毛ほどもその感覚を感じとれない。
魔力を失うとどうなるんだったか。
たしか、死ぬのか。


傭兵「へ、はは…できるもんなんだな…ゴホッ」

魔術師「そんなことはありえぬ……おぬし、自分がなにをやったかわかっているのか」

傭兵「あぁ…この子に…全部たくした」

傭兵「元気でな…」なでなで

勇者「??? えへへ、ばいばいしらないおにいさん!」




713: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/30(火) 00:19:41.23 ID:5KLsPeEuo



魔導師「ワシは…長年魔法の研究をしてきた」

魔導師「じゃが、ありえんのだよ。おぬしがいま行ったのは、魔移しと呼ばれる守護魔法じゃ」

魔導師「おおよそ、死にゆく母が子を護るほどの強い想いがなければ決して発動せぬ」

魔導師「赤の他人のおぬしに適正はない。習得不可能なのじゃよ」

魔導師「魔力が…結びつくはずがない…なぜじゃ…」

傭兵「子供…か」

傭兵「ごほっ、ゲホっ…ゴホ…」

魔導師「尋常ならざる想いが、超越したのか…」

魔導師「だがおぬしは…」

傭兵「かまわない…希望は残せた」

傭兵「あとはユッカ次第だ」

魔導師「こい。そのままでは死んでしまうぞ」




714: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/30(火) 00:26:36.97 ID:5KLsPeEuo



  ・  ・  ・


【王宮・入り口】


魔導師「いまはワシの魔力を少し貸し与えているが、じきに貰い物の魔力は尽きる」

魔導師「新しい魔素として体に定着することはない」

傭兵「わかっている」

魔導師「生きているのが信じられんくらいだ。普通は衰弱しきってそのまま死ぬ」

魔導師「神がおぬしを生かしたのかもしれんな」

傭兵「そうは思わない」

傭兵(この世に神様がいたら、ユイさんとユッカは…)

魔導師「して、これからどこへゆく」

傭兵「傭兵をクビになったんだ。生きる糧を探して彷徨うさ」

魔導師「…国境防衛部隊が新兵を募集しておった」

魔導師「こんな事になった以上、国境を強化するのじゃろう」

魔導師「なにも側にいることだけが守護ではない」

魔導師「おぬしにできることはまだあるはずだ」

傭兵「…あぁ。訪ねてみる」




715: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/30(火) 00:33:50.18 ID:5KLsPeEuo


傭兵「俺が無事生きているうちはユッカの成長を陰で見守るさ」

傭兵「世話になったな」

魔導師「……」

魔導師「ふとしたきっかけで、魔法の枷は外れ記憶はよみがえる」

魔導師「深い関わりのあったおぬしは十分にそのきっかけとなりうる」

傭兵「わかっている。近づかない」

魔導師「ゆめゆめ忘れるでないぞ」

傭兵「…あぁ」

魔導師「達者でな」

傭兵「またいつか会おう」

魔導師「うむ…」

傭兵「くたばるなよじいさん。後は頼んだ!」


そう、これは俺が魔力を失うきっかけとなった出来事。
そして、いまに続く運命――


―――――――

――――




【船上】


勇者「うー、ソル苦しいよぉ…!!」

勇者「なんなのさ、いきなりぎゅーってして!!」




716: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/30(火) 00:37:52.09 ID:5KLsPeEuo



勇者「ボクのスープおいしくなかった!? それで怒ってるんでしょ!」

傭兵「……」なでなで

勇者「うん? ほんとにどうしたの…変だよ」

傭兵「なぁーユッカ」

勇者「うん」

傭兵「食べ終わったら一緒に昼寝でもしないか」

僧侶「わっ大胆発言!」

勇者「な、何言ってるの!? ばかばかバカソル」ぺしぺし

魔女「……」

傭兵「ダメか?」

勇者「う、うーん……。う…えっと、いいよ♥」

勇者「だってそんな目で見られるとさ…う、うずうずしてきちゃうじゃん…」ヒソヒソ

僧侶「はぁ…どうぞごゆるりと」

魔女「スープがまずい」




717: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/30(火) 00:46:04.06 ID:5KLsPeEuo



【船室・ベッド】


勇者「やれやれぇ。お昼からこんなにおちんちんおっきくするなんて、いい大人がみっともないよ」

勇者「それとも、ボクの手料理でボクのことますます好きになっちゃった?」

傭兵「ま、まぁな」

勇者「あれっソルが素直なんて珍しいね。えへへー」すりすり

傭兵「…」

勇者「やっぱり変だ! 難しいこと考える顔だ」

傭兵「そんなことないぞ」

勇者「そうかなぁ。ボクソルのことならなんだってわかるんだよね」

傭兵「あーそう、敏感な魔覚で結構!」ぐりぐり

勇者「ううん。魔覚じゃないよぉ、なんかね、えへへ…わかっちゃうの」

勇者「こうしてぎゅーってしてると…なんだか懐かしい気分になるんだ。どうしてだろう…?」

傭兵「ユッカ…」なでなで

勇者「ねぇ早くしよ! おまたのうずうず止まらないよ…いっぱい中にちょーだい♥」チラッ

勇者「ほら、赤ちゃんできないから安心でしょ?」

傭兵「……」むにゅ

勇者「ぎゃっ…ご、ごめんなさいっ…! やーんえっち! どこつかんでるの!」

傭兵(ここはやっぱなかなか大きくならないな…)

傭兵「ははっ」

勇者「なんで笑うの!! いじわる!」


ユイさん。

必ずこの子を幸せにします。
ずっと護り抜きます。
だから、見まもっていてください。

ユイさん、ありがとう。


第22話<ユッカ>おわり




737: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 22:24:19.62 ID:mD/5xlxwo

第23話<将来の夢>



勇者「んぁうっ♥ あぁっ♥ あああっ♥」

勇者「イクっ…♥ イッひゃう…♥」

 ぱちゅっ ぱちゅっ ぱちゅっ
  ぱちゅっ ぱちゅっ ぱちゅっ


勇者「やんっ、あああっ♥」


その日、ボクは昼間っからソルと船室でレベル上げに励んでいた。

今日のソルはどこか様子がおかしくて、ボクの振る舞ったスープを食べるやいなや、ボクの手を引いてこの薄暗くて狭い船室へと連れ込んだ。
そしていまにいたる。

イチャイチャはほどほどに、ボクはかえるみたいにベッドの上にひっくりかえされて、彼のおっきくなったおちんぽを受け入れていた。


  ぱちゅっ ぱちゅっ ぱちゅっ
   じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷ

勇者「んひゅっ、ひぃっ♥ どうしたのっ、ああんっ」

勇者「今日のソルっ、やっぱりへんだよぉ…っ!」




738: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 22:31:02.11 ID:mD/5xlxwo


傭兵「ユッカ…ユッカ…」


ソルは何度もボクの名前呼びながら、頭をなでてくれたり唇を奪ったりして、腰を振っていた。

勇者「なんれっ♥ あああっ♥」

勇者「あんっ、あんっ♥ ソルぅ♥」

勇者「おちんぽ…おっき♥ あああっ」


硬くておっきいおちんぽが何度もボクのおまんこの奥にたたきつけられる。
もう今まで何度もエッチしてきたからソルはボクの気持ちいい所なんて全部知ってる。

一番おまんこがかゆくなるのは赤ちゃんをつくるお部屋。
とその入口あたり。

ソルはそこをおちんぽのさきっぽで何度もついた。


部屋のなかにはボクの恥ずかしい声と、ボクらのエッチなお汁がぐちょぐちょ絡み合う音が響いていた。


傭兵「はぁ…うっ」

勇者「あんっ、んぅ…ああああっ、出てるっ…出てるよぉ♥」

ソルは短い間で3度も射精していた。
ボクも6回くらいイッちゃって、お互い息も絶え絶えに唇をチュッと重ねあわせた。




739: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 22:37:17.80 ID:mD/5xlxwo


  
  ・  ・  ・


エッチな事がおわったあとはお楽しみの経験値の確認。


勇者「…どれだけ入るかなぁ」

傭兵「700」

勇者「えー今日はきもちよかったからボクは1000予想!」

傭兵「じゃあ800…」


▼勇者は867の経験値を手に入れた。


勇者「ソルのほうが近かった…ちぇっ」

傭兵「途中一回外に出したちゃったからな」

勇者「えーなにやってるの。もったいない…」

傭兵「…」なでなで

勇者「おちんぽまだおっきいね…もういっかいしたい?」

傭兵「しようか。おいでユッカ」

勇者「うん…♥」




740: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 22:43:42.09 ID:mD/5xlxwo



勇者(今日はソルがあまえんぼだぁ♥)ぎゅー


ボクたちはときどき激しいエッチの後にこうしてゆっくりエッチもする。


その時はお互いあまり腰を動かさずに、体を優しくくすぐるようにさわりあって、頭が溶けちゃうみたいな深いチューをして性感をたかめていく。

2人きりでゆっくり話もできるし、ボクにとってそれはすごく楽しいエッチの時間だった。


勇者「んっ…ちう…♥」

勇者「れろ…ちゅぷ、ちゅる…♥ えへ」

勇者「ソルくすぐったいよ」

勇者「おっぱいふにふにするの好き?」

勇者「いっつもおっぱいさわるよね。こんなちっちゃいのに楽しい?」

勇者「ねー何か言ってよ。ヒーラのおっぱいとどっちがすき?」

ふにふに
 きゅっ

勇者「んひゃっ!? あ、うう…こりこりするのはダメ♥」

ソルはイタズラな顔でボクの乳首をつまんだりこすったりしていじめてきた。




741: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 22:50:58.65 ID:mD/5xlxwo



勇者(なんだか子供っぽいな)

ソルはボクより10も年上なのに、なんだかこうして楽しくしている時の顔は幼く見えて、つい甘やかしてしまう。

勇者(母性本能ってやつなのかな?)


もう何度も射精したおちんちんは、いまだボクのおまんこの中で熱く堅いまま時々ビクビクって脈打っている。

勇者「きもちいい…」

勇者「こうしてぎゅーってしながらつながってるの幸せだよ…」

勇者「すっごく落ち着く…キミもでしょ」

勇者「また射精したい? じゃあちょっと動こうよ」

 ちゅぷ…ちゅぷ…

  ちゅぷ… ちゅぷ…

勇者「んっ、はぁ…♥ ハァ♥」

勇者「いったん動かしはじめると、我慢できなくなっちゃうよね」

勇者「ソルを感じてたらおまんこの奥でまたじゅくじゅくお汁が止まらないよぉ」

勇者「おっぱいもっとさわって! チューもして! はぁ、はぁ好きぃ♥」


ソルは呆れた顔をしながらボクとエッチし続けてくれた。




742: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 22:57:59.39 ID:mD/5xlxwo



<夕方>



僧侶「おかえりなさい」

僧侶「お昼寝にしては長かったですね」

勇者「う……そ、そうかなぁ」

僧侶「あ、レベルあがってる」

勇者「えへへ…22になりましたー!」

傭兵「…それって本当に強くなってるのか疑問だな。よし、甲板の空いてるとこで稽古するぞ」

勇者「えーー。いまから?」

傭兵「剣の腕は日々精進」

勇者「魔法の練習がしたいんだけどなー」

魔女「行こ、私が教えてあげる」

傭兵「お、おい! 戻ってこい!」

傭兵「なんだよ」

僧侶「ユッカ様はやることが山積みですね…」




744: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 23:04:42.65 ID:mD/5xlxwo



傭兵「どっちかにしたほうがいいとおもうんだけどなぁ」

僧侶「魔法か剣かですか?」

傭兵「あぁ。どっちつかずになるよりは将来を見据えていまから絞っておいたほうがいいんじゃないかと俺は思うんだ」

傭兵「だけど勇者にかかる期待ってのは大きくてな」

傭兵「なんでもやらせようとあれでも国から英才教育うけてるんだぜ」

僧侶「そうですね。ユッカ様が王宮内で剣の先生と魔法の先生に追い掛け回されているところをよくお見かけしました」

僧侶「よく遊ぼうよーって私の家まで逃げてきたりしてたんですよ。うふふ」

傭兵「あいつらしいな」

傭兵「将来はどうなることやら」

僧侶「ユッカ様の将来ですか…」

僧侶「…」

傭兵「なぜ俺を見る」

僧侶「…い、いえ。これといった意味はないですけど…」

僧侶「ソル様は…旅がおわったらどうなさるおつもりですか?」




746: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 23:10:05.90 ID:mD/5xlxwo



傭兵「考えたことなかったな」

僧侶「え? 将来の夢はないんですか?」

傭兵「夢を思い描ける歳にもどりたい」

僧侶「あっ…ごめんなさい」

傭兵「ガキの頃から戦いっぱなしだったしなぁ」

傭兵「明日の糧を得るのに精一杯だったからあんまり漠然とした未来のことは考えなかったな」

傭兵「唯一叶えたい夢はあった」

僧侶「えっ、それってなんですか!?」

傭兵「…内緒♪」

僧侶「ど、どうして内緒なんですか…」

傭兵「じゃあヒーラちゃんの将来の夢を教えてくれたら、教えるかも」

僧侶「えっ!?」

僧侶「ええっと……」もにょもにょ

僧侶「およめ…さん…です」

傭兵「聞こえない。あそこを飛ぶカモメに聞こえるように」

僧侶「もうっ! お嫁さんですっ! 悪いですか!」

傭兵「悪くないよ。ヒーラちゃんなら素敵なお嫁さんになれると思う」




747: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 23:17:10.75 ID:mD/5xlxwo


僧侶「…でも、ほんとは帰ったら大神殿を継がなきゃいけないんです」

傭兵「あーヒーラちゃんの実家の」

僧侶「はぁ…気が重いです」

僧侶「私に国の大神官なんて務まるのでしょうか。世襲よりもっと実力を考慮して…」ブツブツ

傭兵「けど帰る家があるのはいいことだと思うぞ」

僧侶「すいません。ソル様はおうちが無いんでしたね」

傭兵「俺はどうすっかなー」

傭兵「またどこかふらふら彷徨うことになるのかな」

僧侶「えぇええ! ダメですよ!」ガシッ

僧侶「そしたら私の夢かなえられなくなっちゃうじゃないですか!!」

僧侶「…あ゛」

僧侶「あう…聞かなかったことにしてくれませんか」

傭兵「…わかってる。ヒーラちゃんたちを置いてどこにもいったりしないよ」なでなで

傭兵「旅がおわったらちゃんと話合おう」




748: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 23:21:52.75 ID:mD/5xlxwo



傭兵「さて、ユッカの様子でも見に行くかな」

僧侶「私そろそろ晩御飯の仕込み手伝ってきます」

僧侶「お昼にユッカ様が厨房にご迷惑かけてしまった分の謝罪もありますし」

傭兵「あー悪いな」

僧侶「いえ、ほんとはソル様とお話してたいたかったですけど」

傭兵「船旅は長いから時間はたっぷりあるぞぉ、それこそ暇で暇でしかたなくなるくらいにな」

僧侶「……あ、あのっ」

傭兵「?」

僧侶「お話だけじゃなくて、お、おひるね…もしてくれますか?」

傭兵「心配しなくてもちゃんとヒーラちゃんのことも見てるよ」

傭兵「約束な」

僧侶「はいっ! 荷物から耳かき出しておきますね!」

傭兵「そりゃ楽しみだ」




749: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 23:26:40.26 ID:mD/5xlxwo




傭兵「ユッカは…っと。お、いた」


勇者「ああうう…でないー」ぷすっ ぷすっ…

魔女「意識を集中して」

魔女「頭のなかに鮮やかに炎をイメージする」

魔女「魔力を練り上げて、一気に放出」

勇者「はぁ!!」ぷすっ ぷすっ…

勇者「くんくん。それっぽい臭いはするんだけどね」

魔女「…おかしい。才能は十分にあるはずなのに…」

勇者「こんな海のどまんなかで炎のこと考えるの無理だよぉ」

魔女「…問題は集中力」

勇者「晩御飯まで釣りでもしようよ! タコつるぞー」

勇者「そしたらカリカリに焼いてたべよう!」

魔女「…そしてこの危機感のなさ」


傭兵(なかなか難航しそうだな)




750: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 23:31:58.06 ID:mD/5xlxwo


傭兵「よぉ。釣りなら俺も混ぜろ」

傭兵「晩飯のおかず増やそうぜ」

勇者「いいよ! 勝負しよ!」

魔女「どうやるかわからない」

勇者「餌をつけた釣り糸をたらして、食いついたら竿をぴゅーんってあげるだけだよ!」

魔女「…そう。餌はどれ」

勇者「ここの箱に入ってるよ。はい、餌!」ぱっ

虫「キィ!」ぴょこ

魔女「!!」

勇者「これを針に刺して」ぐさっ

虫「  」

魔女「!!!?」

勇者「海にポーイ」

魔女「〜〜〜っ!?」

傭兵「顔ひきつってるぞ」

勇者「なにが釣れるかなー」 ちゃぽん

魔女(魔法で釣る方法を考えなきゃ…)




751: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 23:39:42.65 ID:mD/5xlxwo



<数十分後>


傭兵「かかんねーな」 

勇者「ふぁ…ご飯まだかな」

傭兵「見ろ。マナがたそがれている…」

勇者「ルアーにしたらよかったね」

魔女「…あ、竿がなにかひいてる」

勇者「きた!? ひいてひいて!」

魔女「ど、どうすれば…」

勇者「手伝うよ! えいっ」

魔女「…!」

ちゃぷ

勇者「なんだークラゲがひっかかっただけか」

魔女「…魚?」

勇者「どうみても魚じゃないよ!」

魔女「これはどうしたらいい」

勇者「海に返したら?」

魔女「…ぷにぷにしてる」




752: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 23:45:51.46 ID:mD/5xlxwo



僧侶「あら、仲良く釣りですか」

僧侶「なにか釣れました?」

傭兵「マナがクラゲひっかけただけだ」

魔女「…おもしろい。魚より好き」ぷにぷに

勇者「毒針もってるやつもいるから気をつけて!」

魔女「そうなの。気をつける」

魔女「せっかく釣れたし、バケツで飼ってみる」

傭兵「飼うようなもんじゃないが…まぁいいか気に入ってるし」

魔女「クラゲ…素敵な生き物」ジー

勇者「タコ釣りたかったなー」

僧侶「嫌いじゃなかったですか」

勇者「オクトピアで最後に食べたタコはあんまりブニブニしてなくておいしかった!」

僧侶「では夕ごはんも安心ですね」ニコッ

勇者「え、もしかしてタコ?」

僧侶「お刺身でふるまわれるみたいですけどね」

勇者「ええ……」



勇者「…」もぐもぐもぐ…

勇者「うう。うえ……ソル、口あけて」もぐもぐ…

傭兵「絶対嫌!!」




753: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 23:50:58.14 ID:mD/5xlxwo




<深夜>

【船室・一人部屋】



カチャ


傭兵「どうした。またうずいてきたか…ってなんだマナか」

魔女「空いてる?」

傭兵「空いてるって、あぁ、俺ひとりだけど」

魔女「ユッカもヒーラもこない?」

傭兵「もうこの時間だからな。一緒に寝てたんじゃないのか」

魔女「寝てる」

魔女「けど深夜にとりつかれたように起き上がって出て行くことは何度かあった」

傭兵「今日はさすがにこないだろ。新月でもないしな」

傭兵「そういや満月が近いな…」

魔女「また、大きな目が開かれる」

傭兵「不安なのか? 前もそんなこと言ってたな」

魔女「窓を閉めていても、高まる魔力からは逃れられない」




754: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/01(水) 23:56:32.33 ID:mD/5xlxwo



魔女「というのは、置いといて」

傭兵「あん?」

魔女「本当はあなたを求めに来ただけ」

傭兵「おい…」

魔女「不思議と眠られなかったから」

魔女「相手になって」もぞもぞ

傭兵「お、おい入ってくんな」

ぎゅっ

魔女「それとも、ユッカとしすぎてもう無理…?」

魔女「なら私特製のこのお薬で」

傭兵「あーわかった、わかったからそれは勘弁してくれ。それ翌日辛いんだよ」

傭兵「要はセックスしたいんだな?」

魔女「…」コクン

傭兵「ムラムラしてんの?」

魔女「わからないけど。3号じゃ物足りない」

傭兵「え、いま入ってんのか…?」

魔女「あれ以来かかさず入れてるけど……」

傭兵「え……。お前…ゆるくなるぞ」

魔女「…」ぼかっ



第23話<将来の夢>つづく




766: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 22:18:05.14 ID:D4lOXt07o

第23話<将来の夢>つづき



マナは下着をずり下ろして、俺に恥部をみせつけるように足を開いた。
股の間にはずっぽりと木棒が突き刺さっている。
むわっと辺りにマナの匂いが拡がった。


傭兵「ほんとに入れてるんだな…」

傭兵「抜くぞ?」

魔女「…」コクン

傭兵「よ……っと」

ずちゅ…ちゅ…ぷ…

魔女「…ぁ…っ、うっ」


傭兵「すげぇぬるぬる…だいぶマナの汁吸ってるな」

魔女「机に置いて。あとで乾かす」

傭兵「おう…」

魔女「…?」

木棒を抜いた後、マナの膣穴は閉じることなくぽっかりと開いていた。
赤く染まった陰唇と、膣内がいやらしくヒクついていて、俺は誘われるように顔を近づけた。

魔女「…!」




767: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 22:24:48.41 ID:D4lOXt07o


魔女「や…舐めるのはダメ」

傭兵「マナのエッチなお汁が垂れるのはもったいない」

魔女「な、何を言ってるの!」

魔女「んっ…はァ…」

俺はマナの膣穴に下をねじ込んで、膣内を舐めた。
いつにも増して、濃厚な匂いが鼻をかすめる。

魔女「や…そんなことしてほしくない」

傭兵「…マナ。エッチっていうのはただ単に挿入して射精しておわりってわけじゃないんだぞ」


腰をもぞもぞさせて俺の愛撫から逃げようとするマナを捕まえて、ベッドへと押し倒した。

次は足を大きくひらかせて、未発達の性器をよく観察できるようにする。
ランプを近づけるとマナは顔を真赤にして抵抗した。


傭兵「ここ、ちゃんと洗ってるか?」

魔女「…洗ってる」

傭兵「…ほんとに? またマナのここに小さい白いのついてるぞ」

魔女「や、やめ…っ」

ちゅ ちゅむ

魔女「う…あぁぁ…」




768: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 22:31:45.19 ID:D4lOXt07o


傭兵「おまんこ綺麗にしような」

俺は陰唇や陰核のまわりにこびりついたマナの塊を下で丁寧に舐めとった。
芳醇な匂いがする。
一日入れっぱなしだったということは、かなりの分泌液がたれていたのだろう。

それが時間ともに乾いて固まって、マナの膣を飾っていた。


魔女「ぁ…あぁっ。そこは…嫌。恥ずかしい」

傭兵「ばっちぃままセックスしにくるほうが悪いんだぞ」

傭兵「こんなことされたくなきゃちゃんと洗って綺麗にしておけよ。ちゅむ」

魔女「ごめんな…さい」

傭兵「まぁ俺は歓迎だけどな」

傭兵「こんなに濃厚なマナを味わえるなんてめったにないからな」

魔女「ううう…」


マナは口では平気でペニスセックスと卑猥な単語を連呼するくせに、いざ行為になると萎縮してしまって俺にされるがままだ。
もう全く抵抗する意思もみせず、俺が舐め終わるまで彼女は顔を赤らめてじっといた。




769: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 22:38:10.09 ID:D4lOXt07o



傭兵「こんなものかな」

傭兵「おっと」

俺は淡い色の包皮に護られたマナの陰核に目をつけた。
これを剥いたらもしかしたらまだ汚れカスが残っているかもしれない。


傭兵(剥いてみるか)

皮の上からちょんと触るとマナは過敏な反応をみせた。

魔女「…あうっ。なにをしたの」

傭兵「どうした」

魔女「体に電撃がはしったみたいな…」

傭兵「敏感なんだな」

俺は指先にたっぷりと愛液をぬりたくってから、マナのぷっくりとした萌芽をすりすりと挟むように擦った。

魔女「ああああっ! なにっ!」

傭兵「むくからじっとしてろよー」

魔女「え? え……ああっ」

くにゅり

魔女「んっ…♥ ふっ…うう」

傭兵「やっぱりちょっとだけついてる」




770: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 22:44:33.21 ID:D4lOXt07o


小指の先ほどもないとても小さくて敏感なクリトリスを舌先でつついていると、
マナは声を漏らしながら短く鳴いた。

傭兵「マナのここはほんとにおいしいな」

傭兵「もしかして俺に味あわせるためにわざと綺麗にしてないのか?」

魔女「…っ」フルフル

傭兵「おしっこしたくなってきたか? また俺に飲ませてみるか?」

魔女「し、しない!! すませてきた…」

傭兵「どうりで」

魔女「!!」

傭兵「おしっこくさいとおもった」

 ちゅむ…ちゅぷ…ちゅう…


魔女「〜〜〜っ!」

魔女「あっ、ああっ…頭がじんじんする…」

傭兵「俺に汚いおしっこくさいおまんこ舐められて気持ちよくなっちゃってるんだろ」

魔女「ぅぅ……あああっ♥」




771: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 22:51:42.52 ID:D4lOXt07o



俺は陰核をしつこくなめつづけながら、膣内にも指をもぐりこませた。
トロトロのそこから更に愛液がこぼれて、ベッドのシーツを汚した。


傭兵「あーあ。こんなに汚して。俺今夜ここで寝るんだけどなー」

魔女「…うっ」

傭兵「ごめんなさいしろよ。エッチなおまんこ汚くてごめんなさいって」

魔女「ご、ごめんなさ…いっ」

傭兵「ちゃんと何がごめんなさいなのか言え」

ちゅくちゅくちゅくちゅく 

魔女「んぅっ…ふ…う♥」

魔女「私の…エッチなおまんこきたない…から。ごめんなさいっ」

傭兵「それと綺麗にしてくれてありがとうは?」

魔女「…!」

傭兵「言えないなら…やめちゃおうかな。残念だなもうちょっとでイケそうなのにな」

ちゅく…ちゅく…

魔女「い、いうから…途中でやめちゃいや…」

魔女「お、おまんこ…きたないおまんこきれいになめてくれて…ありがと…う…。ううう…」

傭兵「最後におねだりできるよな?」

魔女「え…。あっ、あ…きもちよくしてっ」

魔女「私のおまんこにあなたのペニスいれて…気持ちよくしてほしい…っ」




772: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 22:58:00.58 ID:D4lOXt07o


傭兵「ほんとにエッチなやつだな」

傭兵「まぁ自分から誘ってきたんだし、お前はそういうやつだよな」

俺は下を全て脱いでいきりたった肉棒を取り出した。
マナは期待と不安のまじったような複雑な表情でそれをじっと凝視している。

愛撫で蕩けきった膣はずっとヒクついていて、俺が入り込んでくるのをずっと待っているかのようだった。


傭兵「いくぞ。今日はきっと痛くないからな」

魔女「…♥」コクコク

傭兵「力ぬけよ……ん」

じゅぷ…じゅぷ……


拡張してもいまだ狭いマナの膣内にペニスはすんなりと沈んでいった。
未発達の肉襞をかきわけて、陰液を混ぜあわせながら最奥へと突き進んでいく。

魔女「んぅ〜〜〜っ♥♥」

魔女「あぁぁあう♥♥」

執拗な攻めですでに限界近かったマナは、たったそれだけで達してしまった。
それもそのはず。
こいつは俺のペニス欲しさにずっと日夜恥部の拡張を続けている。
精神的にもずいぶん満たされている、というのは俺のうぬぼれだろうか。




773: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 23:02:48.62 ID:D4lOXt07o



 じゅぷ じゅぷ じゅぷ じゅぷ


魔女「あっ…あっ…ううっ♥」

魔女「きもち…いい…はっ、あっあっ♥」

魔女「あなたの…ペニス…奥までとどいて…」

魔女「3号入れるよりずっと♥ きもちいいっ♥」

傭兵「当たり前だろ。女を気持ちよくさせて孕ませるためにあるんだからな」

魔女「孕む…」

魔女「射精…中でしてっ♥ 孕みたい♥」

傭兵「言われなくても中でだすよ」


 じゅぷ じゅぷ じゅぷ じゅぷ
   じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷ

魔女「ああぁあっ♥」

魔女「孕むっ、あなたの赤ちゃん妊娠しちゃう…♥」

魔女「子宮の入り口に…ごちゅごつあたってる♥」

魔女「あっ♥ ああっ♥」

魔女「だめ…イクっ、イク…♥」




774: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 23:09:32.47 ID:D4lOXt07o



マナの膣内が食いちぎられそうなほどぎゅうぎゅうに締め付けられる。

どうやら上側が弱いようで、そこをカリでえぐるようにこすると、
マナは普段聞けないような甲高い声をあげながら何度も絶頂した。 


魔女「イク…またイク♥」

傭兵「何回もイケて羨ましいな。そろそろ俺も出すよ」

魔女「ほしい…っほしい!」

傭兵「どこに出してほしいって」

魔女「おまんこの中…っ♥ 私の子宮のなかにいっぱい流し込んで」

魔女「赤ちゃんつくるっ♥」

傭兵「よく言えたな。ほら、イッちゃえ」

 じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷ
  じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷ
 じゅぷんじゅぷんじゅぷん

魔女「う…く…ああああ〜〜〜っ♥♥」

魔女「あたま…おかしく…な♥ るぅ…♥」

魔女「ああっ♥ あああっ♥」

魔女「イクっ…イク!! う…ああああああ♥」


マナはひときわ大きな嬌声をあげて俺をしぼりとった。
吐き出された欲望がマナの中に流れ込んで、2人の結合部を真っ白に汚していった。




775: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 23:16:16.17 ID:D4lOXt07o




  ・   ・   ・



魔女「よくよく考えたらあなたの弱い精液では妊娠しない」

傭兵「…」ぼかっ

魔女「!」

傭兵「おまえってやつは…なんつーこと言いやがるっ!! ううう…」

魔女「で、でも平気…きっといつか、あなたも魔力に目覚める日が来る」

傭兵「そうかい…」

魔女「それに妊娠したら旅が続けられない」

魔女「すごく得心が行った。これはきっと私とあなたの運命」

傭兵「お前いつも俺に運命感じてるな」

魔女「…」コクコク

魔女「あなたに抱かれると嬉しい気持ちになる。こんな人に出会ったのははじめて」

魔女「私の薄暗くじめじめしていた未来は、あなたと出会ってからずっと輝いている」

傭兵「お、おう…?」




776: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 23:21:22.19 ID:D4lOXt07o


魔女「将来は決まった。子を宿してあなたに責任をとってもらう」

魔女「そのためにあなたが魔力を手に入れる方法を探さなくちゃ」

魔女「次の街に図書館があれば嬉しい…たくさん調べることが溜まっている」

傭兵(なんだかなぁ)

傭兵「そのさ、ユッカの魔力貸与じゃやっぱダメなのかな」

魔女「あなたは借り物の魔力で私を孕ませるの?」

傭兵「はい。すいません」

魔女「…」ピトッ

傭兵「そろそろお眠か?」

魔女「もっとあなたを知りたい」

魔女「私は自分のことをよくわかっていないから。せめてあなたを知りたい」

傭兵「俺もだよ。俺も、自分がなんなのかわからない」

魔女「私達はよく似ている」

傭兵「そうだな」なでなで

魔女「だから体の相性が良い」

傭兵(それはどういう理屈だ…)

傭兵(そもそもようやく出来るようになったばっかりなくらいちぐはぐな体格差だが……)

魔女「どうして何も答えないの」




777: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 23:26:34.98 ID:D4lOXt07o



傭兵「寝ような。俺と一緒なら満月も怖くないんだろ?」

魔女「明日も一緒じゃなきゃだめ」

傭兵「分かった。夜はマナと一緒にいるよ」

魔女「んぅ…」チュッ

傭兵「…自分からしてくるなんて珍しい」

魔女「キス。きもちいい…♥」

魔女「いっぱいキスして寝たい」

傭兵「やらしーやつだな」

傭兵「おいでマナ」


その晩マナを抱きしめて眠りについた。

船は洋上。まだしばらく陸地を踏むことはない。

窓の外では月がいよいよ満ちようとしていた。

今夜のマナは、とてもおだやかな顔で眠っていた。




778: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 23:31:19.35 ID:D4lOXt07o



<翌日>



魔女「弱っている…」

勇者「それどうするの?」

魔女「なぜ…」つんつん

クラゲ「…」

勇者「釣り糸ひっかけたときからこんな感じじゃなかった?」

船員「お、昨日釣りしてたお嬢ちゃん達だな」

魔女「弱っている」

船員「魚か?」

勇者「クラゲが死にそうなんだけどどうしたらいいの?」

船員「クラゲなら海に返してやったらどうだ?」

魔女「…」フルフル

魔女「少しの間でいいから飼いたい。船の中は暇」

船員「そうかぁ。けどそのちっこいバケツじゃなぁ。もっとたくさん海水をいれねーとな」

船員「もしかしたら船内で生け簀が余ってるかもしれないから見てきてやるよ」

勇者「ありがとー」




779: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/02(木) 23:39:37.08 ID:D4lOXt07o



魔女「ジェリー。元気だして」

勇者「じぇりーって名前?」

魔女「…そう」

勇者「クラーゲンがいいよ! クラゲのクラーゲンにしようよ!」

魔女「ややこしい」

魔女「ジェリー、もうすぐ広いところに移れる」

勇者「こんな狭くて暗い器の中じゃ息苦しいよね」


ローブの男「そうなのです!」

勇者「え? 誰」

ローブの男「そう。せまくて暗い器のなかでは存分に力を発揮することはできない」

魔女「?」

ローブの男「あぁわが主よ。あなたの器を探して私は果てしない海へ〜」

勇者「お茶碗でもさがしてるの?」

ローブの男「そうそう少女たちよ。水槽なら物置にありましたよ」

ローブの男「ぜひ、移してあげるとよいでしょう」

ローブの男「ではまた」


勇者「…? あんな人乗ってたっけ」

魔女「知らない。取りに行こう」

勇者「うん!」


第23話<将来の夢>つづく




793: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 22:11:27.52 ID:GoTkWH2Lo

第23話<将来の夢>つづく




【船室・一人部屋】



僧侶「ふぁ〜、船旅って暇なものですね」

傭兵「そうだな」

僧侶「持ち込んだ本、読みつくしちゃいました。もっとオクトピアで買っておけばよかったです」

傭兵「どんどん本増えていかないか?」

僧侶「いえ。読んだ分は買う時についでに売っちゃってます」

僧侶「あんまり荷馬車の中を私の荷物で占領するわけにはいきませんので」

傭兵「へぇ。読んだだけで覚えられるなんてヒーラちゃんはやっぱり賢い子だな」

傭兵「俺にも何か本貸してよ」

僧侶「そうですねぇ。魔導書なんて読まないですよね…えっと、じゃあ」ゴソゴソ

傭兵「暇つぶしになればなんでもいいけどな」

僧侶「んーっと…こ、これなんてどうですか」

傭兵「ずいぶんとくたびれた本だな」




794: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 22:17:30.52 ID:GoTkWH2Lo


僧侶「昔からよく読んでるので」

ヒーラちゃんはニコニコと表紙をめくった。
背表紙の一部は剥げていて、別の紙で補修した名残がある。
きっと幼いころから大事にしている本なのだろうと察した。


傭兵「ええっと…『箱庭姫』っていうのか、童話か?」

僧侶「はい」

僧侶「よければ読んでさしあげましょうか?」

傭兵「え、いいよ。子供じゃあるまいし…」

僧侶「…」

傭兵「あーわかった。読んでほしいな〜」

僧侶「ではこちらへ」

そういってベッドの上で正座をし、膝をぽんぽんとはたく。

傭兵「…いいのか?」

僧侶「どうぞ」




795: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 22:24:55.39 ID:GoTkWH2Lo



僧侶「えへへ…」

傭兵(読み聞かせがしたいんだな)

いまはユッカもマナもいない。
せっかくふたりきりなのだから、これくらいはしても大丈夫だろうと思った俺は、遠慮無くヒーラちゃんの膝の上に頭をのせた。
視界がたぷんとした大きな膨らみでさえぎられる。


僧侶「あ、あの…横向きで。耳かきするときみたいな姿勢でお願いします」

傭兵「あぁ悪い」ゴソッ

僧侶「はうっ…頭を動かす時は、一度首をもちあげてくださいねっ」

傭兵「それも悪い」

僧侶「それじゃあ読みますよ。あんまり長くないので、聞いててくださいね」

僧侶「むかーしむかし…」



   ・   ・   ・




796: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 22:31:49.12 ID:GoTkWH2Lo




僧侶「そして2人は末永く幸せに暮らしました」パチパチ

傭兵「…」


本当に短かった。
中身はよくある恋愛劇で、王宮で小間使いをしていた少女が
王子に見初められて恋に落ちるというものだった。

しかし、身分不釣合いがゆえに2人は人目のない小さな箱庭のような庭園で密会することしかできなかった。

やがて王子は隣国の王女と政略結婚をすることになる。
時を同じくして少女もまた、とある貴族と婚約を交わしていた。
話の結末は、少女への愛を想いを捨てきれない王子が国を捨て、彼女の手を取って逃避行にでる、というものだった。


僧侶「どうでしたか」

傭兵「なんというか…メルヘンチックだな」

僧侶「ですよね! 素敵ですよね…」

傭兵(その後国がどうなったのか気になって仕方ない…)




797: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 22:39:49.64 ID:GoTkWH2Lo



傭兵「ヒーラちゃんこういうのに憧れてたんだ」

僧侶「そ、そんなことないですよ?」

傭兵「話を聞きながら、境遇が少しだけ似てる気がしてたんだ」

僧侶「…」

僧侶「私、ずっと箱庭の中で暮らしていたんです」

僧侶「だからこうして広い世界に出られて、いろんなことを知れて良かったです」

僧侶「ソル様とユッカ様に感謝しなくっちゃいけませんね」


大きな胸で表情はよくみえなかったが、ヒーラちゃんはくすくすと笑っていた。


僧侶「さて、このまま耳かきでもしましょうか」

傭兵「なんだか俺ヒーラちゃんの子供になった気分だ」

僧侶「ふふ。そうですか?」なでなで

僧侶「ソル様が小さいころはきっと可愛かったのでしょうね」

僧侶「まぁ、いまでもも可愛いですけどね!」なでなで

傭兵「この強面のどこが可愛いんだ」




798: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 22:45:31.36 ID:GoTkWH2Lo




 カリ… カリ…

  カリ カリ カリ


僧侶「どうですか。ここら辺がきもちいですか」

傭兵「あぁ。もうちょっとだけ奥でも大丈夫」

僧侶「カリカリ♪ うふふ、だんだんと眠たそうな表情になってるんじゃないですか?」

傭兵「ヒーラちゃんのやわらかい膝枕と耳かきの連携がきもちよくて…」

僧侶「このままおやすみになってもいいんですよ」なでなで

傭兵「うあ…」

僧侶「うふふ…」


ガチャ

勇者「ここ空いてるよ! この机に置こうよ!」

魔女「うん」

勇者「よいしょ」ゴトッ


僧侶「ユッカ様とマナちゃん…」

勇者「あー! ヒーラとソルイチャイチャしてる!」

傭兵「な、なんだお前ら! 船内探検してるんじゃなかったのか」

勇者「クラーゲンのおうちをさがしてたんだよ」

魔女「ジェリーだから」




799: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 22:53:14.08 ID:GoTkWH2Lo



ユッカは大きな水槽を机の上に設置し、そこにマナがバケツから海水とクラゲを流し込んだ。


傭兵「なぜ俺の部屋でやる」

勇者「だってボクたちの部屋は荷物でいっぱいだもん」

魔女「ここに置かせて」

傭兵「それはかまわないが…どうしたんだその水槽」

勇者「借りてきた」

傭兵「はぁ…クラゲかよ…どうせなら魚入れろよ」

魔女「私達は静かにしてるから。気にしなくていい」

勇者「うん。クラーゲン見てるだけだから」

魔女「ジェリー!」


僧侶「すいませんソル様…お騒がせしました…」

傭兵「あ、ああ…」


ユッカとマナは水槽の前に座ってじーっとクラゲが漂う様を眺めていた。

魔女「へんな足」

勇者「こうしてみると結構おいしそうに見えるね」

魔女「食べちゃダメ」

勇者「生ではたべないよぉ。絶対こいつブニブニしてるもん」




800: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 23:01:16.80 ID:GoTkWH2Lo



僧侶「どうしましょう…中途半端におわっちゃいましたね」

傭兵「ほんとあいつらときたら…」

勇者「おかまいなくー」

傭兵「おかまいなくじゃねぇよ!」

魔女「私たちもインテリアの一部だとおもっていい」

傭兵「…」

勇者「ほらヒーラ。ソルをまたせてるよ」

僧侶「は、はいっ」


そして言われるままに耳かきを再開するものの、どこか気持ちは上ずったまま俺たちに安らぎは訪れなかった。


僧侶「ごめんなさい」

傭兵「ヒーラちゃんは謝らなくていい…」

勇者「ふぁ…クラゲみてると眠たくなってきちゃったよ」

勇者「ねーボクもそっちいっていい?」

傭兵「え? うおっ」

どさっ

ユッカが横になって、俺の腕の中にすっぽりと収まってくる。

勇者「いいなーヒーラ。ボクもソルに耳かきしたいなー」




801: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 23:08:58.52 ID:GoTkWH2Lo



僧侶「えっ、だめですよ。これは私のお仕事なんです!」

僧侶「不慣れな人がやると鼓膜に傷がついちゃったりする大変危険な行為なんですよ!」

勇者「…へーーー」

勇者「まぁいいや。おやすみー」

傭兵「お、おいここで寝るな! 部屋にもどれ」

勇者「ボクはここがいいなー…zzz」

傭兵「はぁ。なんなんだ」

僧侶「ユッカ様ったら困ったちゃんですね?」


マナはというと、水槽を挟んでずっとこっちの様子を伺っていた。

傭兵「お前もくるか」

魔女「…!」

呼ぶと勢い良く立ち上がり、トコトコと近づいてきてベッドに飛び乗った。
そのまま俺の背中側にしがみつく。

傭兵「俺うごけない…」

魔女「…おやすみなさい」すりすり

傭兵「せまいからせいぜい落ちないように気をつけろよ…」

傭兵「ヒーラちゃんごめんな。反対側の耳かきできなくなった」

僧侶「えぇ。でしたらまた今度」なでなで




802: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 23:15:33.07 ID:GoTkWH2Lo




<夕方>


傭兵「ん…何時だ。真っ暗だ」


どうやらずいぶん長く4人で眠っていたようだ。

体が動かない。

傭兵(そうだ…ユッカとマナにしがみつかれているんだった)

俺はいつのまにか仰向けに眠っていて、両腕には2人の少女が思い思いに抱きついて眠っているのだろう。
がっちりと挟み込まれて動かすことができないでいた。

しかしそれにしても視界が暗い。そしてなにやら顔が暖かい。

傭兵(なんか重くてやわらかいものがのっかっているような…)

勇者「ふぁ〜〜〜っ」

勇者「ん…ゆ…あれ、もう夕方?」

傭兵「夕方? バカ言え真っ暗だぞ」

勇者「あ……ぷくく」

傭兵「なんだよっ。俺が寝てるうちにアイマスクでも勝手につけたのか」


やや苛立った俺は視界をふさぐ何かをわしづかみにした。




803: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 23:21:42.06 ID:GoTkWH2Lo



僧侶「ひゃうっ!!」ガバッ

素っ頓狂なヒーラちゃんの声とともに視界がひらけた。
たしかに夕方だ。小窓から赤々とした夕日が差し込んでいる。
そして目の前には例の膨らみ。
この角度から見るのはこれで何度目だろうか。


勇者「あーあ。そのままがおもしろかったのに」

僧侶「な、なんですか!?」

僧侶「…胸触ったのユッカ様ですか」

勇者「ううん」

傭兵「胸…! まさか」

たぷん…

傭兵「なるほど…」

僧侶「あっ! もしかして私、このまま寝ちゃってました!?」

勇者「ヒーラがね、ソルの顔におっぱいむぎゅって押し付けて…ぷくく」

勇者「ソルったら真っ暗だーなんて言っちゃって馬鹿みたいでおもしろかったよ」

僧侶「ごご、ごめんなさい〜〜〜息苦しくなかったですか!」

傭兵「いや…別に」

傭兵(そうか、これが原因だったのか…)

傭兵(また今度してもらおうかな)




804: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 23:29:15.57 ID:GoTkWH2Lo


傭兵「ヒーラちゃんこそ大丈夫か。足しびれてないか」

僧侶「うーんと…イタタ。ちょっとしびれちゃってます」

勇者「えいえい」つんつん

僧侶「ひゃっ。もうっ、ユッカ様ぁ!」

魔女「…zzz」

傭兵(こうしてると平和だなぁ)


俺たちにとって、この船旅はつかの間の休息だった。
海賊事件も解決し、海の魔物に襲われる気配もなく、全てが順風満帆に思えた。

しかし大陸につくとすぐさま新しい旅と『奴』が待っている。


傭兵(いまのうちにたくさん触れ合っておかなきゃな)

傭兵「のどかわいたな。何かもらってくる」

勇者「ボクは果物のお酒!」

傭兵「ジュースと。ヒーラちゃんは何する」

僧侶「お水でお願いします」

傭兵「おう」

ちちくりあう2人を横目に俺はベッドを降りて扉へと向かった。


傭兵「ん?」

扉の隙間に一枚の紙が挟まっていた。




805: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 23:35:40.06 ID:GoTkWH2Lo


勇者「なになにー? どうしたのー」

魔女「…眠い」ゴシゴシ

傭兵「手紙だ」

僧侶「船の上で手紙ですか? 一体どなたからですか」

傭兵「差出人の名前はどこにも書いてないっぽいが。とりあえず読んでみる」

傭兵「……」

勇者「なんてかいてあるのー?」ピョンピョン

傭兵「ん。夜になったら甲板でパーティをするから是非参加してくださいってさ」

勇者「ほんと!? パーティ!」

僧侶「私達がお昼寝してたので手紙で教えてくださったのでしょうか」

傭兵「天気もいいし、楽しそうだから行ってみるか」

勇者「行きたい! ごちそうあるかも!」

傭兵「マナ、お前も行くか? 眠たいか?」

魔女「…行く。けど」ぎゅっ

傭兵「?」

魔女「今日はあなたの隣から離れないようにしておく」

勇者「そっかぁ。満月の日だもんね」

魔女「他の人に近づくと危険かもしれない」




806: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 23:44:48.99 ID:GoTkWH2Lo



部屋を出てから甲板に向かうまで誰ともすれ違うことがなかった。
広い客船にはたくさんの人がのっていて、みんな暇つぶしにと船内を徘徊したり備えられた遊戯室に寄り集まったりしている。
今日は客達はすでに甲板に集まっているのだろうか。


【甲板】


傭兵「なんの準備も出来てねぇな」

僧侶「机の1つすら用意されて無いですね…」

僧侶「本当にパーティがあるのでしょうか」

傭兵「こんだけ人は集まってるのにな…」

勇者「ねぇ。なんだか変だよ」

傭兵「妙だな。聞いてみるか」

勇者「うん。甲板に出てからずっと何かの魔力を感じるんだ…」

魔女「私も」

傭兵「あの、すいません」

船員「……」

乗客「……」

魔女「気をつけて。様子が変」




807: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 23:51:31.48 ID:GoTkWH2Lo



傭兵(なんだこいつらの目…まるで意思を感じない)

勇者「あのっ、パーティがあるって聞いたんですけど…」

船員「……」

勇者「おじさん?」


傭兵「まずい!」

ユッカの話かけた大柄の男は突然拳を大きく振り上げ殴りかかってきた。

勇者「うわっ!」

ユッカはそれをとっさに後ろに飛んでかわした。
子供とはいえさすがの身のこなしで、素人の攻撃が当たることなどまずないだろう。

勇者「な、なにするの!」

船員達「……」

乗客達「……」

勇者「…この人たち…」

魔女「魔力の流れが変。誰かに操られている可能性がある」

傭兵「何」

そして甲板の上の俺たち以外の大勢の人間は、そこらの物を手に取り、一斉に俺たちに向かって襲いかかってきた。

傭兵「敵の罠だったのか!」

僧侶「どうしましょう!」




808: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/04(土) 23:58:37.34 ID:GoTkWH2Lo



次々と襲いかかる攻撃を俺たちはひたすら避けたり受け流していたが、それではらちがあかない。
取り囲む人数が次第に増えていく。
中には剣や刃物を人間も現れだした。


傭兵「反撃しなきゃまずいぞ」

僧侶「いけません! この人達は一般の方です」

傭兵「魔物の手先って可能性もあるだろ」

勇者「ううん違うよ。悪い人たちじゃない! ボクはわかる」

傭兵「お前がそういうなら…けどよ」

傭兵「マナなんとかなんねーか」

魔女「どうやって操っているのかわからない」

魔女「【マリオネット】のように魔力で無理やり身体をあやつっているわけではなくて、精神系の操作を受けているのかもしれない」

魔女「私にはどうにもできない」

傭兵「く…まずいな。囲まれてしまう」

傭兵「ヒーラちゃん結界は?」

僧侶「ダメです。私の進化した結界は邪な心を持たない人は弾けませんし、弾けたとしても大怪我を負わせてしまいます」

傭兵「ダメか…なら浄化してみたら!」

僧侶「や、やってみます!」




809: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/05(日) 00:07:19.03 ID:FboJWA0do


勇者「お願いヒーラ!」

僧侶「はいっ! 浄化のシャワー!!」

▼僧侶の杖先から水流が上空へと立ち上った。

▼水流は細かい雫となりキラキラと甲板全体に降り注ぐ。


船員達「……」ジャキン


僧侶「ダメです…効果がありません」

傭兵「俺はともかく、マナやヒーラちゃんが攻撃を避け続けるのは限界が近い。蹴散らすしかねぇか…」

傭兵「…!」


解決策を探しながらも入り乱れる中で、俺は一人不審な人物を見かけた。
そいつは群衆を遠巻きに立ちつくしていて、こちらを様子をただ伺っているだけだ。
闇夜に漆黒のローブを身にまとうその姿は異様だった。

睨みつけるとそいつはおどけたように笑った。そして。


ローブの男「なかなかしぶといですね」

ローブの男「やはり勇者の一味はそうでなくては」

傭兵「この騒ぎはお前のしわざか!」

勇者「あっ、あの人…」




810: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/05(日) 00:15:20.53 ID:FboJWA0do


ローブの男「お初にお目にかかります」

ローブの男「いえ、子どもたちには昼間お会いしたのですがね」

勇者「水槽教えてくれた人だ!」

ローブの男「…ふ」

男がすっと手をあげると、俺達を切りつけていた船員達はみな一同に動きを停めた。

僧侶「あなたが操っているのですね!」

ローブの男「…ほぉ。なかなか良い魔力をお持ちで」

ローブの男「あなたも我が主の器にふさわしい逸材だ」


男はニタリと笑い、不愉快な視線でヒーラちゃんをジロジロと眺め回す。


傭兵「器だと」

ローブの男「おっと口を滑らせるところでした」

傭兵「お前は何者だ」

ローブの男「フフフ…」

ローブの男「覚えていないのですか。そういえば、あなたは私のことを知りませんでしたか」

傭兵「何…?」


男はローブを脱ぎ捨てた。
中からは陰気な面をした長い髪の男が現れた。

その途端ユッカ達が短く声をあげた。

勇者「あぅ…なんだこの魔力…気持ち悪い」




811: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/05(日) 00:25:27.83 ID:FboJWA0do



闇呪術師「私は魔王様の眷属。三魔人のうちの一人」

闇呪術師「名前はクロノ。おもに闇の呪術を担当する者です」


僧侶「闇の呪術師…! あなたが…」

勇者「ソル…この人…魔族じゃないよ」

傭兵「何っ」

闇呪術師「ほぉ。すばらしい魔覚をお持ちだ。さすがは勇者」

闇呪術師「いかにも。私は人間です」

傭兵「人間が魔族に肩入れするのか」

闇呪術師「はい。魔族でありながら人間に力を貸す者もいますしね」

勇者「どうしてそんなことをするんだ!」

闇呪術師「お互いの野望のためと言ってしまえば、なにもおかしいことはありません」

闇呪術師「フフフ…」

傭兵「ここにいる全員操れるってことは、たいした魔力を持っているようだが」

傭兵「姿を現したのがうかつだったな。戦闘に関しちゃ素人だろ」

闇呪術師「お察しの通り武闘派ではりません。このように軟弱な身体でしてね」

闇呪術師「ですが、あなたたちを屠るのに力などいらないのですよ」

闇呪術師「この私の禁術があればね!」




812: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/05(日) 00:33:22.89 ID:FboJWA0do



闇の呪術師が腕を振り上げたと同時に、俺達の足元が輝き出した。


勇者「!」

傭兵「何!」

闇呪術師「彼らはあなたたちをそこへ誘い込むために利用したにすぎません」

魔女「これは…魔法陣…!」

僧侶「どうして!?」

闇呪術師「勇者という存在そのものを、この世から抹消してあげましょう!」

男は聞いたこともない言葉を詠唱する。
と同時に俺は焼け付くような身体の痛みに襲われた。

傭兵「あ…ぐぁっ…」

勇者「ソル!?」

僧侶「ソル様!!」

激しい頭痛とともに視界が薄れていく。

傭兵(せめてこの子たちだけでも逃さなくては…)

傭兵「が…ユッカ……」

勇者「ソル!」

そして俺は意識を手放した。




813: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/05(日) 00:39:12.36 ID:FboJWA0do




  ・   ・   ・



勇者「そん…な…」

僧侶「ソル様が…」

魔女「……」


闇呪術師「どういうことだ…確かに小娘の存在を抹消するほどに時を巻き戻したはず」

闇呪術師「なぜあの男にしか効いていない…」

闇呪術師「ぐふっ…満月の夜でも私にこの術は重すぎたか…がはっ」

闇剣士「脆弱な人間が禁忌を扱うなど笑止千万」

幼竜「ぎゅるるっ」

闇呪術師「おお…迎えにきてくれましたか」

闇剣士「ふん…お前とて我が同志。我らが悲願のためここで失うわけにはいかないのでな」

闇呪術師「では、その前にあなたの力で奴らにトドメを」

闇剣士「……」


勇者「ソル…! ソル!」

赤毛の少年「――」

僧侶「ソル様…どうして」

魔女「小さくなった」

勇者「うわああああんソルぅー!! 死んじゃやだよー!!」ギュッ




814: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/05(日) 00:47:35.36 ID:FboJWA0do


闇呪術師「ですが戦力は奪った。さぁ、剣士殿奴らにとどめを!」

闇剣士「私は奴と決着をつける時を待っている」

闇剣士「このような結末に興味はない」

闇呪術師「…くっ、なにを悠長なことを」


勇者「お前!! ソルに何をした!! 答えろ!!」

闇呪術師「なぜだ…なぜ小娘3人に私の呪いが効いていないィィィ!」

闇呪術師「確実に呪術の発動範囲に入っていたはず…なぜだ。わからない」

サキュバス「そ・れ・は♪」ぬっ

勇者「!」

闇呪術師「!」

闇剣士「…くだらんな」

サキュバス「あたしが先に唾つけちゃったから♪」

闇呪術師「何…?」

サキュバス「残念♪ 呪いは上書きできないの。くすくす。って知ってるわけよね」




815: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/05(日) 00:51:20.52 ID:FboJWA0do


闇呪術師「貴様ァ…裏切り者が!」

勇者「サキュ…」

勇者「ねぇソルが…ぐすっ。ソルが死んじゃった…」

サキュバス「はぁ? 死んでないわよ。ほら」

勇者「えっ」

赤毛の少年「う…? あ……」

僧侶「ソル様!」ぎゅっ

勇者「ソル!」ぎゅっ

赤毛の少年「! 何だ!?」

僧侶「ソル様! 生きててよかったです…」

赤毛の少年「ここは…おれは一体…さっきまでおれは」

勇者「え…」

赤毛の少年「ていうかお前…だれだ…? おれにさわんじゃねぇ!」バシッ

勇者「ソ…ル…?」



第23話<将来の夢>つづく




829: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 21:45:48.99 ID:DJ9ZVebKo

第23話<将来の夢>つづき




勇者「どうして…ボクのことがわからないの」

僧侶「まさか…これはソル様の身体が縮んだわけではなくて…」

勇者「子供の頃にもどっちゃった……?」

傭兵「はなせって言ってんだろ!」

勇者「あ、暴れないで…」


闇呪術師「フフフ…」

闇呪術師「思わぬ邪魔が入ったが、これでやつらの戦力は大きく削ぎましたよ…」

闇呪術師「さぁ剣士殿! 戦いの矜持など捨てて早く奴らを!」

闇剣士「…」

サキュバス「ちょっと待ちなさい! あの子たちへの以上の手出しは許さないわよ!」

サキュバス「あの子たちはあたしが先に唾つけたんだから!」

闇呪術師「フッ…全天を光に覆われたこの夜に、貴様ごとき浅ましい生き物になにができる」

闇呪術師「見上げてみろ! 魔眼が貴様を監視しているぞ」

サキュバス「…」ギリッ

サキュバス「それでも力使い果たしてぜぇぜぇ言ってるあんたをしめあげるくらいできるわよ!」




830: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 21:53:42.70 ID:DJ9ZVebKo


闇呪術師「ぐっ…剣士殿! この聞き分けのない淫魔ごと切り捨ててください」

闇剣士「……退くぞ。乗れ」

幼竜「ぎゅるるっ」

闇呪術師「なぜです! この絶好の機会を逃す手はない」

闇呪術師「せっかく我が呪術によって…奴らを貶めたというのに…」

闇剣士(このような下劣な人間を三魔人に引き入れたのは過ちだったか)

闇剣士(だがこの魔力と呪術。まだ利用価値はある)

闇剣士「置いていくぞ」

闇呪術師「……くっ」

闇呪術師「フフフ…だが二度はありませんよ」

闇呪術師「私の魔力が戻り次第、次は火力を持ってあなたたちを屠ってあげましょう」

闇呪術師「それまでその子どもと仲良くしていることです」


勇者「お前! ソルを戻せ!!」

僧侶「戻しなさい!」

闇呪術師「フフフ…諦めることです。いいじゃないですか、レディ達に囲まれてもう一度新しく人生を歩みなおせるのですからね」

闇呪術師「まぁそれも短い命でしょうがね」

闇呪術師「では…また会いましょう」




831: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 21:59:17.79 ID:DJ9ZVebKo


闇剣士「……」

傭兵「……」

闇剣士(ふっ当たり前だがやつにも少年の頃があったのだな


闇剣士(研いだばかりのナイフのように鋭く尖っている。
戦いしか知らない美しく精悍な目つきだ)

闇剣士(貴様と再び刃を交える日を楽しみにしていたのだがな)

闇剣士(これで終わる運命なら、この程度の男だったというわけだ)

闇剣士「…飛べ」

幼竜「ぎゅるるるっ」


勇者「逃げるな!!」

勇者「くそぅ!!」

僧侶「どうしましょう…」


船員「いつつ…あれ、俺達こんなところで寝っ転がってなにしてんだ」

船員「おおい全員仕事場にもどれぇ!」

乗客「あれぇ、なんでこんなもの持ってんだ俺。ふぁー部屋戻って寝るか」


勇者「みんな正気を取り戻してる…」

傭兵「…」ギロ

勇者「でもソルは…ぐすっ」

勇者「うぇぇえんソルぅー」ぎゅ

傭兵「さわんじゃねぇ…」

サキュバス「とりあえず一度部屋に戻ったほうがいいんじゃない。頭いたくってさ」




832: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 22:06:59.02 ID:DJ9ZVebKo



【船室】



勇者「サキュ、ありがとね。ボクたちのために来てくれたんでしょ」

サキュバス「はぁ? べ、べつにそんなんじゃないけどさ」

サキュバス「ああいう陰湿な男がムカつくだけよ!」

勇者「でも、サキュの呪いがなければ。ボクも子供になってたよ」

僧侶「私もです…この呪いはすっっっごく腹が立ちますけど。おかげでなんとか助かりました」

魔女「私はどうして無事だったの。やっぱりこの力のせい…?」

サキュバス「そうなんじゃないの。あたしはおチビには何もしてないもの」

サキュバス「あーそうそう。ちなみにあんたらがあれ食らってたら、子供になるどころじゃすまなかったわよ」

勇者「え?」

サキュバス「あれはね、時戻しの魔法。魔法陣の中の対象の時を一定時間巻き戻す魔法よ」

サキュバス「陣に描かれていた時間はおよそ16年分。あんたたちはおたまじゃくしと卵ちゃんにもどってるわよ」

勇者「え、えう…」ぶるるっ

勇者「じゃあこのソルは…16年前の姿なの?」

サキュバス「そういうことね。記憶も頭の中も当時のものよ」

サキュバス「でしょ?」

傭兵「…悪魔たちがおれになんのようだ」

傭兵「おれをもとの場所にもどせ…おまえら全員殺してやる…」

サキュバス「こわっ」




833: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 22:13:51.07 ID:DJ9ZVebKo


サキュバス「ま、そういうわけ!」

勇者「どうしたらいいの…。呪いなんだから解く方法があるんだよね」

サキュバス「うーん。すっごく強力な類だから解ける人なんて術者以外にいるかしら」

サキュバス「そこに関してはあたしはどうでもいい!」

勇者「えぇ!? なにいってるの」

サキュバス「だって、あたしそいつの大人版嫌いだもん♪」

サキュバス「すぐズバズバ斬りかかってくるしぃー、おっかないじゃない」

サキュバス「この姿なら何かされても子犬に噛まれるようなもんでしょ」なでなで

傭兵「さわるな!!」

勇者「あばれちゃだめだよぉ…」

傭兵「おれはいま任務の最中なんだ」

勇者「任務…?」

傭兵「依頼された敵を殺さなきゃいけない」

傭兵「こんなところでお前たち悪魔と遊んでいられない」

勇者「でもここ船の上だよ…どこにも行けないよ」

勇者「それにサキュ以外は悪魔じゃないんだけど…」

傭兵「なぜ俺はここにいるんだ。お前たちはさっきから何の話をしている…!!」




834: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 22:19:14.45 ID:DJ9ZVebKo


勇者「どうしよう…」ヒソヒソ

僧侶「ほんとのこと伝えてもきっと理解できませんよ…」

魔女「黙っていたほうがいい」

勇者「あのねっ、キミは…そうだ。キミはここに突然瞬間移動してきたんだよ!」

勇者「だからすぐには帰れないの!」

勇者「船を降りたらキミを元の場所に返す方法を探してあげるから、それまで辛抱して!」

傭兵「…」

勇者「ね?」

傭兵「あと何日くらいだ」

勇者「3〜4日だよ」

傭兵「……わかった。だがこの格好はなんとかしてほしい」

勇者「服ブカブカだね…そりゃそうか」

勇者「じゃあボクの服かしてあげるよ。着替えよ! こっちの空いてる部屋においで」

勇者「そゆことで、ボクがソルの面倒みるから!」

僧侶「えっ?」

サキュバス「……」

魔女「2人きりになるのは危険だとおもう」

勇者「まかせてまかせて!」

勇者「ほら行こ」

傭兵「…あぁ」




835: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 22:27:30.18 ID:DJ9ZVebKo



<船室・一人部屋>


勇者「ここがソルが使ってた…じゃなくて、キミがこれから使う部屋だよ」

傭兵「……ッ」

ボクが少年になったソルを部屋に連れ込んだ瞬間、
ソルは怖い目つきでボクを一瞬見てから、お腹におもいっきり肘打ちをくらせてきた。

勇者「うぎゅっ!」

傭兵「…はっ」

そして畳み掛けるように拳を何発も叩きつけられて、ソルは崩れかけたボクの背後に回って腕をひねった。

勇者「あっ…」

傭兵「…俺をこどもだとおもって油断したな」

傭兵「俺はこれでも傭兵。たとえ年上でもおお前のような子供ひとり…」


しかしボクにはそれらの攻撃はほとんど効いていなかった。
やれやれと息をついてから簡単に足を払って転ばせて、驚いた顔のソルを抱きかかえてベッドに放りなげてやった。

傭兵「なっ…! なんだこいつ」

勇者「ふぅ…あのね」

勇者「だめだよこんなことしちゃ。ボク女の子なんだから」

傭兵「女…?」

勇者「どうみても女でしょ」

傭兵「…人型のゴリラの魔物」

勇者「うるさいよ!」




836: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 22:34:43.39 ID:DJ9ZVebKo


勇者「一応…勇者だから強いの」

傭兵「…」

勇者「まぁいいや。はい服」

勇者「これ着てね」

勇者「あとボクが監視につくから」

傭兵「…」

勇者「ボクにはともかく、ヒーラやマナにあんなことされたらたまらないからね」

勇者「片時も目を離さないよ」ジー

傭兵「なっ…クソ」

勇者「…えへへ。にしても10歳かぁ。昔っからすごいねソルは」

傭兵「なんの話だ」

勇者「ううん。なんでもー」ニコニコ

傭兵「お前のほうが強いだろ…くそっ、女の悪魔にまけるなんて拘束されるなんてみじめだ」

勇者「ソルってさ、いまは何してるの?」

勇者「傭兵業って何?」

傭兵「お前に言う必要はない」

傭兵「俺は任務にしたがって、殺すだけだ」

勇者「……そっか」


ボクは着替え終わったソルをぎゅっと抱きしめた。
ソルは抵抗したけど、少年の力じゃ勇者であるボクの拘束を解くことはできない。

無性に寂しい気持ちになった。
ソルがあまり戦歴手帳をみせてくれないのと、昔のことを話さない訳がわかった。

勇者(ほんとにキミはこんな小さい頃から戦っていたんだね…)




837: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 22:39:56.87 ID:DJ9ZVebKo


勇者「…くんくん。ボク汗くさいかな」

傭兵「…」

勇者「ねぇ聞いてるんだよ」

傭兵「う、うるさいな」

勇者「…?」


ソルは決して目を合わせてくれなかった。
突然こんな見知らぬ環境で、見知らぬ相手にこんなことをされて警戒するのはあたりまえだ。
だけどそのあまりにとげとげしい態度はなにか別の意味をもっている気がした。

勇者「?」

傭兵「…」

間近で顔を覗きこんでもソルはすっと顔を逸らして、唇を噛み締めた。
わずかに頬が赤い気がした。

勇者「あっ…えへへ。そっかぁ」

勇者「キミ…女の子にぎゅってされて照れちゃってるんだ?」

傭兵「…ちがう」

勇者「そうだ、自己紹介。ボクユッカっていうんだ」

勇者「ユッカお姉さんって呼んでね」

傭兵「呼ばない」




838: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 22:45:56.14 ID:DJ9ZVebKo


勇者「そんなツンツンしちゃう子は嫌いだなー」

傭兵「好かれたくない」

傭兵「船が港についたらおれをもとの場所に戻す約束をしてくれたらそれでいい」

勇者「えー…うーん…」

勇者「ボクがタダでそんなことしてあげる義理があるのかなぁ」

勇者「ボクにとっても、キミはしらない子供なんだけど? くすくす」

傭兵「…くっ」

傭兵「じゃあどうしろっていうんだ」

傭兵「海に捨てる気か」

勇者「そんなことしないよ! じゃあねぇ、ボクと仲良くしよ」

傭兵「…おれは仲間も友達もいらない」

傭兵「仲良くなれば、そいつが死んだときかなしいおもいをするんだ」

勇者「…ボクは死なないよ」ぎゅうう

傭兵「…く、くるしい」

傭兵「おれは永遠に孤独でいきていく…! 仲間なんていらない」

勇者「なでなで。ソルはひとりぼっちじゃないんだよ」

勇者「ボクがついてるからね…」

勇者「あ、しまったお風呂使える時間すぎちゃう。ソルも来るでしょ? 小さいけど一緒に入れるよ」

傭兵「はぁ!?」




839: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 22:49:49.47 ID:DJ9ZVebKo



【船内・簡易風呂】


勇者「ほらぬいでー」グイグイ

傭兵「や、やめろー」

勇者「お風呂入らなきゃ寝ちゃだめ」

傭兵「なら寝ない」

勇者「そんなわけにはいかないでしょ! ほらっ」グイグイ

勇者「ボクの服貸してるんだからボクの言うこときけー」

傭兵「やめろぉ…」


傭兵「くそっ」

勇者「…えへへ。ソルのお肌つるつるだね」

勇者「じゃあボクも脱ごっと」ぬぎぬぎ

傭兵「うわあっ。あ、あっちいけ」

勇者「…。お姉さんの裸みたくないの」

傭兵「うるさいなにがお姉さんだちんちくりんめ」

勇者「む…」

勇者「いーから入るの!」ぎゅっ


ざぷん

勇者「あはは、2人で浸かるとせまいねぇ」

傭兵「ひぃぃ…なんなんだこの女」




840: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 22:55:38.85 ID:DJ9ZVebKo


勇者「100数えるまであがっちゃだめだよ」

傭兵「ふざけるなっ…」

勇者「いーち…にーぃ」

傭兵「100! 上がるぞ!」

勇者「さーん…しーい」ガシッ

傭兵「悪魔め…」ギリリッ

勇者「えへへ。背中スベスベ…この頃は傷跡なんてないんだねぇ」

勇者「お風呂あがったらボクと一緒に寝ようね」なでなで

傭兵「……とんだ災難だ」

傭兵「おれはいったいどうしてこんなところに飛ばされたんだ…」

勇者(すっかりボクの嘘を信じてる…自分が若返ったなんてまさか思いもよらないよね)

勇者(にしてもどうしようかなぁ。この呪い解ける人いるのかな)

勇者(あいつを締めあげて戻させるしか方法ないのかな)

勇者「うーん…」

傭兵「数字続きかぞえろよ…」

勇者「あっ、ごめんごめん。わかんなくなっちゃったから最初からね」

傭兵「は?」

勇者「いーち…にーぃ…さーん」

傭兵「ふざけるな!!」バタバタ

勇者「だめだよぉ」むぎゅっ

傭兵「なっ…」

勇者「あーあ耳まで真っ赤にしちゃって。お姉さんとぎゅーできて嬉しいね」




841: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 23:01:06.11 ID:DJ9ZVebKo



【船室・一人部屋】


勇者「はぁさっぱりした」

傭兵「…」

勇者「飲む? はい」

傭兵「…」ゴクゴク

勇者「ソルいい匂いする」くんくん

傭兵「お前なんなんだ」

勇者「頭ふいてあげるからおいでー」

傭兵「おれは子供じゃない」

勇者「子供じゃん! ボクより5つも年下のくせに!」

傭兵「もう自分でかせいでる。大人の経験はつんだ」

勇者「ふぅーん……そっかぁ…」

うずうず…

勇者「んっ…♥ う…あ」

傭兵「? どうした」

勇者「い、いやなんでも…」

勇者「はぁ…うっ…く、どうして…」

勇者「満月で呪いが弱まってるはずなのに、来ちゃうなんて…♥」




844: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 23:07:31.01 ID:DJ9ZVebKo



傭兵「くるしそうだな…」

傭兵「誰か呼んでくるか」

勇者「い、いいよっ、ここにいて。ボクの側に来て」

傭兵「え…」

勇者「はやくぅ」

傭兵「頭は自分でふける」

勇者「えへへ…ソル。ソル

傭兵「? やっぱり様子が変だな」

勇者「ソルはさ、大人の経験はつんだっていったよね」

傭兵「あぁ。おれはもう立派な大人として自立している」

傭兵「…お前たちに助けられる筋合いもない」

傭兵「迷惑をかけて悪かった。お前たちこ、そおれが突然やってきて邪魔だったろ」

傭兵「元の場所に戻るほうほうは自分で探す。地図をよこせ」

勇者「きにしなくていいのに」

勇者「それよりさ♥」


ボクは無性に沸き立つ性欲をおさえきれず、大人としてやっちゃいけないことをしようとしていた。
目の前に立つ髪を濡らした少年のソルがあまりに美しくて、ボクは彼を手に入れたくなったんだ。

気づけば、ソルの腕をつかんでベッドに引き寄せていた。

ソルは驚いた顔でボクを見つめている。

まだ少年のあどけなさの残る、可愛らしい顔だった。




845: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 23:14:23.33 ID:DJ9ZVebKo



勇者「あのね…ソルの言ったとおり、ボク悪魔なんだ」


ボクはこれから起きることを正当化するための言葉を探していた。
どんな手を使ってでも、少年になった純真無垢で綺麗なソルと、エッチがしたかった。

決して捉えられないソルの過去に、自分を刻みつけたかった。


勇者「だからね。ソルにいたずらしちゃう」

勇者「ごめんね…えへへ」

勇者「おいしそう…」

ついを口をついて出た言葉にボクはびっくりした。
これじゃもうサキュとたいして違わない。
着々と呪いで淫魔化しつつある身体を心が認め始めてしまっていた。

勇者(だって、こんなの我慢できないよ♥)

勇者(目の前にこんなに可愛い子がいるのに…大好きなソルがいるのに)

ボクのおまんこはあっという間にじゅくじゅくに湿って、意味を成さなくなったパンツをさっと脱ぎ捨てた。
ソルはぎょっとしてボクを突き飛ばそうとしたけど、その力は及ばず、逆にベッドに押し倒してやった。

傭兵「な、なにを…」

勇者「ユッカお姉さんにまかせて…ソルにほんとの大人をおしえてあげるよ」

もうボクの性欲は止まらない。
理性はあっという間に崩壊して、ソルの下着に手をかけていた。




846: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 23:19:03.89 ID:DJ9ZVebKo



勇者「するする〜♪」

傭兵「うああっ」


ソルは声にならない声をあげて抵抗する。
だけどボクの押さえつける力を知って、体がすこし恐怖を覚えたのか、
やがておとなしくなった。

視線の先ではソルの子供おちんちんがピンとたっていた。

お腹にまでくっつきそうなくらいに元気なそれに目を奪われる。


勇者「これが…子供ソルの…」

傭兵「み、みるな…」

勇者「あんまりエッチな形はしてないけど…すごいね」


いつものように大きなカリが露出しているわけではなくて、皮が半あまりでさきっちょが見えずに苦しそうにしている。

ボクはそのおちんちんをそっとつまんだ。


傭兵「ひぃ」

勇者「大丈夫だよー。ボクにちょっとみせてねー」

勇者「えへへ…ソルのおちんちん…かわいいおちんちん」

勇者「はむっ」

傭兵「うああっ」

勇者「んぐ…ちゅっ、ちゅる…んふ、えへ♥」

勇者「かたいねー。カチカチなっちゃったねー」




847: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 23:24:53.91 ID:DJ9ZVebKo


傭兵「ずるいぞ…こんなむりやり」

勇者「そうだね。ソルだけ裸にするなんてずるっこだよね」

勇者「…えへへ」

傭兵「…!」

勇者「お風呂ではあんまり見てもらえなかったから、今度はじっくりみせてあげるね」

そういってボクはソルの目の前で脱衣をはじめた。
するりするりと衣擦れの音がして、ボクの全身が空気にさらされていく。

ソルは顔を真赤にして顔をそらしつつも、警戒した様子で何度かボクの裸をちらちらと盗み見ていた。

勇者「どう…? おっぱいだよ」

わざと胸をよせて見せてあげた。

傭兵「……」

勇者「見て? 女の子の裸だよ?」

傭兵「…」

勇者「エッチなソルは大好きだよね。いっつもおっぱいふにふにするもんね」

勇者「あ、ちがうちがう。忘れて」

勇者「えへへ。ボクの裸にさわってごらん」

勇者「こことか、こことか…ココも♥」

ソルの手を無理やり取って、胸やふとももやおまたを触らせていく。
おちんちんがピクピクと震えていた。

勇者(元気だなぁ…♥)




848: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 23:29:27.58 ID:DJ9ZVebKo



勇者「ソルはこんなことしたことないんだね。そりゃそうだよねー」

勇者「あんっ、そんな手つきでさわったやだめぇ♥」

傭兵「し、してない! なにもしてない!」

勇者「くすくす。冗談だよ。遠慮せずにさわって」

勇者「ボクの肌、もちもちしてるってよく言われるよ」

勇者「手に吸い付くでしょ?」

勇者「ほらおっぱいももう一回。むにゅむにゅー」

勇者「あはは! おちんちんがぴくっぴくってなってるよ」

傭兵「な、なんだよこれぇ…」

勇者「勃起っていうんだよ。ねぇねぇいつから勃起してたの? 教えて?」

傭兵「…っ」フルフル

勇者「悪い子。お姉さんにぎゅーされて興奮しちゃってたんだね」

勇者「はむ…ちゅっ。れろれろ」

傭兵「あっ…そ、それ…はっ」

勇者「おひんひん、はむっ…ちゅうう…」

勇者「おいひ♥ 精子でるかなぁ」

勇者「でたことある?」

傭兵「な…なにが」

勇者「あっ、しらないんだぁ…えへへへ。じゃあ試してみよっか」

勇者「ボクのココで♥」くにゅり




849: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 23:35:57.49 ID:DJ9ZVebKo



ボクは仰向けに倒れるソルの上ののしかかった。
おちんちんがおしつぶされて、濡れたおまんこにぴたりとくっついている。


勇者(これがいまから…)

勇者(ソルはどんな顔するだろう)

傭兵「なにを試す気だ…っ」

勇者「ソルが、ほんとに大人かどうかだよ」

勇者「ま、こんだけ勃起してたら精子くらいでるよね」

勇者「だから、ボクが大人にしてあげるね♥」

勇者「どんな姿になっても好きだよソル…大好き」

勇者「い、いくよ」

ボクはおちんちんの根っこをつかんでまっすぐに立てて、それめがけてゆっくりと腰を下ろしていった。

おまんこの割れ目がひらいて、おちんちんが穴にちゅっと触れる。

傭兵「!!」

勇者「キミの勃起おちんちんがボクのヌレヌレおまんこに入るよー。よく見ててね♥」

じゅぷ…

傭兵「…ぅああ」


そして小さな子どもおちんちんはおまんこのひだひだをかき分けながらあっという間に姿を隠した。

じゅぷんっ!

勇者「あああっ♥」

傭兵「くぅぅ…っ!!」

勇者(童貞っ♥ ソルの童貞っ♥ やったあああ♥♥)




851: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 23:41:25.25 ID:DJ9ZVebKo


勇者「うれしい…」

傭兵「あ…くっ、うっ」

勇者「きもちいい?」

傭兵「…」コクッ

ソルは顔をまっかにして力なく頷いた。
その様子がかわいくってかわいくって、ボクは腰を激しく動かしたい欲望にかられる。

勇者(だけどはじめてさんだから優しくしてあげなくっちゃ!)

そう思いわずかに腰を動かすと。


びゅっ…びゅびゅるっ

勇者「!!」

ボクの中で熱いものがはじけた。

傭兵「あううっ…くあっ…〜〜〜っ!!」

勇者「あ…イッちゃった? えへへ…もう、ソルったらぁ」

勇者「おめでとう。ボクの中で精液だしちゃったね♥」


しかしその時ボクはとある違和感に気づいた。
お腹のなかに貯まる精子の感じがいつもと違う。
その違いというのは、決して出た量の話ではなくて、
妙に力を感じるというか、精子そのものがボクのおまんこの奥の奥をきゅんきゅんと刺激する。


勇者(なんだろう…?)




852: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 23:48:38.31 ID:DJ9ZVebKo



傭兵「あ…くあ…はなれ…ろ」

勇者「ソル…?」

傭兵「…おれからはなれろ…」


様子のおかしいソルを見て、ボクはようやく感じ取る事ができた。

勇者(これ…ソルの魔力…? うそ…)

魔覚を鋭敏にしてみると、確かにソルに灼熱のような赤い魔力の流れがうまれている。

勇者「え…」

勇者「じゃあいまボクの中にでた精子は魔力をまとっていたのかな…?」

勇者「でもどうして…」

傭兵「はなれて…あんたを…もやしてしまう」

傭兵「おれは…自分であやつれないんだっ…だからっ…おさえてたのに…っ」

傭兵「にげてくれっ」


ボクは悲痛に叫んだソルの幼い唇を唇で塞いで、真っ赤な頭をなでてあげた。
そしてボクの魔力をたくさん送り込んだ。

傭兵「!?」

やがて燃え盛るような魔力はゆるやかに収まっていく。

傭兵「……?」

勇者「ぷはっ。いい子だね」

傭兵「お、おれ…」

勇者「いい子いい子。がんばって抑えたね」




853: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/07/06(月) 23:53:35.51 ID:DJ9ZVebKo



傭兵「……」

勇者「じゃあ続きしよっか」

傭兵「…は?」

勇者「だってぇ♥ まだボク途中だもんっ」

勇者「それに…ソルのおちんちん。ボクの中でまたおっきくなってるよ」

勇者「若いんだから、2回目がんばろ!」

勇者「それともこのちっちゃい玉玉じゃあんまり精液つくれないかなぁ」

勇者「えへへ」

傭兵「な、なんなんだほんとにお前…」

勇者「ボクはユッカ。元気が取り柄の勇者な女の子」

勇者「将来の夢は、とある素敵な人のお嫁さんだよ♥」

傭兵「そんなやつがこんなことしていいのか…」

勇者「はむっ…ちゅっ。いまは内緒♪」


勇者「それじゃあ動くよ〜〜♥♥」じゅぷじゅぷ

傭兵「あっ、悪魔め!!」

勇者「えへへへ」


第23話<将来の夢>おわり




856: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/07(火) 00:27:27.51 ID:WF1u+1q1O

おつ、エロとシリアスの融合とはこのことか




862: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/07(火) 07:15:48.77 ID:5Onqw61mO

「そんなやつがこんなことしてていいのか」
まんざら無知でもないのだな少年




【R-18】少女勇者「エッチな事をしないとレベルがあがらない呪い…?」【24〜26話】へつづく

>>1さんの過去作はこちら
幼馴染(♂)「くす、僕が女の子なら君に1回くらいヤラせてあげたのにな…w」

・SS速報VIPに投稿されたスレッドの紹介でした
 【SS速報VIP】少女勇者「エッチな事をしないとレベルがあがらない呪い…?」
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