1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 21:32:53.45 ID:P9CUzjkd0.net

「だから、付き合ってくれないかな」

「はぁ」たかしはため息をついた。
「無理だよ。お前、マコトと付き合うとか」

「……どうして? 服装もたかし君の趣味に合わせたし、
 苦手だったお化粧だって、たくさん頑張ったのに」

マコトは食い下がった。

「はぁ」再びため息をつく。
「お前の見た目は完璧だよ。非の打ち所がない。でも、無理なんだよ」




元スレ
美少女「わたし、たかし君のことが好き」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1405168373/


 
4: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 21:34:40.93 ID:P9CUzjkd0.net

伏し目がちにそう言ったたかしに、マコトは掴みかかった。

「なんでよ!? 悪いところがあったら言って!
 わたし全部直すから!」

両肩をしっかりと掴むと、乱暴に前後に揺らす。

「やめろよ」たかしは冷たくそう言い放ち、それを振り払った。
「直すとかそういう次元の話じゃねぇだろ」

そこでいったん言葉を区切り、大きく深呼吸をした。

「だってお前、男じゃねぇか」




6: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 21:36:49.24 ID:P9CUzjkd0.net

明日、学校行くの嫌だなぁ。
自室のベッドで横になりながら、マコトはそんなことを考えていた。

『だってお前、男じゃねぇか』

たかしの言葉がまだ頭の中で反響している。
どうやって家に帰ってきたのかも曖昧だった。

「はぁ」

体を反転させ仰向けになると、右手を目の前にかざした。
真っ白の細い指先が目に映る。

「どう見ても、女の子の手なのに」

そう呟くと、言いようのない悔しさがこみ上げて来て、
涙が溢れて止まらなくなった。




8: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 21:39:00.86 ID:P9CUzjkd0.net

翌朝。マコトは教室の扉に手をかけたまま固まっていた。
普段通りなら、たかしはもう登校しているはずだ。
顔を合わせることが躊躇われたが、
意を決して扉を横にスライドさせる。
カラカラと、いつもより大きな音がした。

「……」

無言のまま席に着く。スカートの裾が、ふわりとなびいた。
先程まで騒がしかった教室が数秒静まり返ったあと、
好奇のざわめきが熱を帯び始めた。

「なぁマコト。お前、たかしに告ったの?」

お調子者のクラスメートの言葉が、胸に突き刺さった。




9: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 21:41:19.66 ID:P9CUzjkd0.net

マコトが振り返り声のした方を見ると、
口元を歪めたクラスメートが目に入った。
瞬間。心臓が大きくはねた。
言葉を発さず正面へ向き直り、そのまま俯く姿勢を取る。

「やめろよ。お前」

たかしの声が教室に響いた。

「だってさぁ。マジなのかな、って思うじゃん」

次いで、クラスメートの下品な笑い声。

「男が男に告るって、まともじゃねーだろ」

「だからやめろって」

教室でのそんなやり取りが、
マコトには遠い世界で起こっていることのように感じられていた。




11: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 21:43:50.22 ID:P9CUzjkd0.net

「おいブス」

突然降ってきた声にマコトは顔を上げた。

「ブスだって自覚してるんだ? だったらたかし君に告ってんじゃねーよ」

不快感に顔を歪めた女生徒が目の前に立っている。
たかしのことが好きだと、以前から噂になっていた生徒だった。

「なんとか言えよ、このブス!」

「痛い!」

肩の下まで伸ばした髪の毛を鷲掴みにされ、
そのまま力任せに引っ張られた。

「何してんだよ、お前ら!」

たかしの声が教室の後方からすると同時に、
こちらへ駆けてくる足音が聞こえてきた。




12: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 21:46:42.03 ID:P9CUzjkd0.net

「また君か」

マコトは生徒指導室にいた。
教員の呆れたように言った言葉が室内に響く。

「なんで君は問題ばっかり起こすの?」

ため息交じりにそう続ける。
マコトは顔を上げ反論しようとしたが、言葉を飲み込んだ。
今目の前にいる人間は、自分の意見に聞く耳など持たないだろう。
そういう確信めいた思いがあった。

「君が女生徒用の制服で登校したいって言い出した時も、
 散々揉めたのを覚えているよね?
 最後はマスコミがしゃしゃり出てきて全国ニュースにまでなってさ。
 差別だなんだって言って学校側がひどいバッシング受けたじゃない。
 まったく、君みたいな変態のせいでこっちはいい迷惑だよ」

教員は腕を組み椅子に深く座りなおすと、深く息をついた。
マコトは青ざめた顔で、膝の上で握った拳を悔しさに震わせていた。




15: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 21:49:37.33 ID:P9CUzjkd0.net

「大丈夫かよ、マコト。お前顔真っ青だぞ」

教員のネチネチとした嫌味を聞き終わり部屋を出たマコトを、
たかしが出迎えた。

「……うん。平気」

胸に手を当て、深呼吸を繰り返す。

「たかし君。昨日はごめんね。
 わたし、ちょっと浮かれてたみたい」

青ざめた顔のままそう言った。
たかしは少しばつの悪そうな表情を浮かべる。

「ああ。……俺の方こそ悪かった。
 別に広めるつもりはなかったんだけど」

マコトは首を横に振った。

「ううん。全部わたしが悪いから」




16: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 21:52:11.21 ID:P9CUzjkd0.net

「ちょっと来いよ。ブス」

昼休みにマコトは、件の女生徒に呼び出された。

「何? 話って」

滅多に人の来ない校舎裏で、お互い向かい合う。

「ブスのくせにあんま調子づくなよ」

女生徒は口元を歪めながら言った。

「おーい! 出て来いよ!」

そして校舎の陰に向かって、声を張り上げた。




17: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 21:56:02.01 ID:P9CUzjkd0.net

「なんなのよ、こいつら」

マコトは青ざめた。
校舎の陰から現れた、十人ほどの男子生徒に取り囲まれていた。

「マジでこいつ男なの? 今だに信じらんねーんだけど」

男子生徒の一人が言った。

「そうだよ。キモいでしょ。
 こいつ問題児だし、男だから好き勝手やっちゃっていいよ。
 何されても人に言えないからね」

「へぇ。この見た目で男ねぇ」

男子生徒が一様に、嘗め回すような視線を這わせてきたので、
マコトは反射的にスカートの裾を手で引っ張った。

「はぁ」その様子を見て女生徒がわざとらしくため息をついた。
「そういうリアクションがキモいって言ってんだよ」




18: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 21:59:26.36 ID:P9CUzjkd0.net

殴られて、蹴られた。
必死に顔だけは腕でかばう。

「こうして見ると、マジで女みてーだな」

倒れたマコトのスカートをめくりながら男子生徒が言った。

「胸もパット入れてんのか、これ」

後ろから鷲掴みにされる。
もう抵抗する力も残っていなかった。

「お、お願いだから。もうやめて」

マコトは必死に上体を起こすと上目づかいでそう懇願したが、
それは思春期の男子高校生にとって、全く逆の効果しか与えなかった。

「……男だとかどうでもいいわ。俺もう我慢できねぇ」

一人がそう呟くと、全員がいっせいにマコトに襲い掛かった。




19: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:03:35.45 ID:P9CUzjkd0.net

「じゃあねー、マコトちゃん」

女生徒は満面の笑みを浮かべながら、
マコトの顔の前でひらひらと手を振った。
マコトは醜く歪んだその顔に向け、
何か罵声でも浴びせてやりたかったが、
呻くような声が漏れるだけでそれは叶わなかった。

「あんたらも物好きだねぇ」

下品な笑い声が、校舎裏から遠ざかっていく。
マコトはしばらくそこから動けずに、
ただ悔しさと苦しさと、体を這いまわる汚らわしい感触に、
その身を震わせ嗚咽を漏らしていた。




20: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:07:56.45 ID:P9CUzjkd0.net

プール横に備え付けられているシャワールームで汚れを落とすと、
マコトはジャージに着替えそのまま早退した。
家に着いてからも震えと吐き気はおさまらなかった。

「会いたいよ。たかし君」

たかしに慰めてもらえれば、少しは気が楽になるだろうか。
ダメもとでメッセージを送ってみる。
昨日のこともあるし、もしかしたら返事来ないかもな。

「……」

考えを巡らせながらベッドで横になっていると、
スマートフォンのLEDが明滅するのを視界の端でとらえた。
永遠に思われるほど長い時間が過ぎたような気がしたが、
ディスプレイに表示された時間を見ると、まだ5分しか経っていなかった。
震える指先でメッセージを表示させる。

『大丈夫? 放課後お見舞いに行くからね』

マコトはそれを見て、安堵のため息を漏らした。




21: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:12:23.61 ID:P9CUzjkd0.net

室内にいると息苦しさを感じたので、
マコトは思い切って外へ出ることにした。
たかしのセンスに合わせた服を選ぶ。

「体の方はもう平気なの?」

貸倉庫が並んでいる港のヘリに腰掛けて海を眺めていると、
たかしがやってきた。昼間でもあまり人も来ない、
マコトのお気に入りの場所だった。

「うん、大丈夫。まだ少し気分が悪いけど」

微笑をたたえてそう言った。
たかしも笑顔で返す。

「そう。それなら良かったね」




23: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:14:48.21 ID:P9CUzjkd0.net

「何してんの? お前ら」

二人が他愛のない雑談をしていると、後ろから声をかけられた。
振り返るとガラの悪そうな三人組がこちらを見下ろしている。

「え? いや、別に……」

言いかけたたかしが、突然大きく体を仰け反らせた。
三人組の一人が顔面に蹴りを食らわせたためだ。
そのまま海に落ちそうな勢いだったので、マコトが慌てて支える。

「な、何するんですか!」

そう言ったマコトの横では、たかしが顔を押さえてうずくまっている。
地面に血がしたたった。

「ガキがチャラチャラしてんじゃねーよ。目障りだからさぁ」




24: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:17:25.45 ID:P9CUzjkd0.net

そのまま二人は貸倉庫の陰まで引きずられてきた。

「やめてぇくださいぃぃ」

たかしが血まみれになりながら涙声で懇願する様を、
マコトは呆然と見つめていた。

「やめてくれだって?」

たかしの顔面に足をめり込ませながら一人が言った。

「ひゃ、ひゃめて、ほしいですぅぅぅ」

地面にうずくまりながらたかしが叫ぶ。
苦しそうに咳き込むと、しぶきに血が混じっていた。

「そうか。やめてほしいか」

男がたかしの髪の毛を掴み、無理やり顔を起こす。
そして口元を歪めて言った。

「愛しの彼女を置いていけば、お前は見逃してやるよ」




25: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:20:27.44 ID:P9CUzjkd0.net

「は、はい! 分かりましたぁ!」

たかしが弾かれたように振り返る。
目が合うと、マコトは体をビクリと反応させた。

「マコト! そういうことだから!」

最初はたかしの言っていることがよく分からなかった。
その言葉の意味がじわじわと染み入ってくるまで、
マコトは放心状態で立ち尽くしていた。

「何を、言っているの……?」

ようやく言葉を発した。喉がカラカラに乾いている。

「薄情な彼氏だねぇ。マコトちゃん」

ガラの悪い三人組は、一様に口元を歪めていた。




27: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:23:48.63 ID:P9CUzjkd0.net

「嫌だ……。たかし君。わたし、嫌だよ」

マコトはたかしに縋り付いた。
昼間の出来事がフラッシュバックする。
あんな思いはもう二度としたくなかった。

「俺だって殴られるのは嫌だ。お前ならそうひどいことにはならないだろう?
 だから、頼むよ。なっ」

たかしも必死だった。
なぜわたしならひどいことにはならないのだろうか。
マコトはその発言の意図を理解する。
この場だけ凌いで、自分だけ逃げられればそれでいい。
たかしはそう考えているのだろう。

「お前俺のこと好きって言ってただろ。
 ここで助けてくれたら、俺もお前のこと好きになるかもしれないぞ」

マコトはたかしの目を見た。
余裕がかけらも感じられない、血走ったまなこだった。

「……分かった、よ」

それでもきっと。わたしはこの人が好きなんだと思う。
マコトの顔には諦観の色が浮かんでいた。




29: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:27:07.06 ID:P9CUzjkd0.net

「おら。じゃあお前はもう行っていいぞ。腰抜け」

三人組の一人がたかしのお尻を蹴り飛ばした。

「ひぃ」短い悲鳴が上がる。
「すいませんでした! ありがとうございます!」

腰をぺこぺこと折り曲げながら、
転がるようにしてたかしはその場から退散した。
その後ろ姿を見つめながら、マコトは覚悟を決めた。
拳を握りしめ、必死に体の震えを押さえつける。

「さて」

三人組がいっせいにこちらへ向き直ると、
嫌らしい笑みを浮かべて距離をつめてきた。
マコトはぎゅうっと、固く目を閉じた。




30: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:30:13.87 ID:P9CUzjkd0.net

「なんだよ、こりゃあ」

散々体をなぶった後に、違和感を覚えた男たちは、
マコトに下半身の衣服を脱ぐよう命じたのだった。

「うええ……。こいつ男だったのかよ」

一人がぺっぺっと唾を吐く。

「なめてんのかよ。お前は!」

「……っ!」

突然襲った鋭い痛みにマコトは地面に突っ伏した。
必死に痛みに耐えていると、体の深部から徐々に鈍い疼きが広がり、
吐き気がこみ上げてくる。

「そんな思いっきり蹴り上げたら、潰れちまうだろ」

一人が眉根をひそめて言うと、それを受けて男は口元を歪めて笑った。

「むしろ潰した方が喜ぶんじゃねーのか。こいつは」




31: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:33:39.07 ID:P9CUzjkd0.net

そのあとはもう地獄のようだった。
三人組に執拗なリンチを受け、
解放された頃にはあたりは完全に夜の闇に染まっていた。

「次会うときは体もちゃんと改造しておけよ。
 そうしたらもっと優しくかわいがってやるからな」

醜い笑い声が空に吸い込まれていった。
マコトはひとり、暗闇の世界に取り残された。
そのまま地面に突っ伏していると、
胃袋から上がってくるものがあった。

「う、うぇぇぇ……! げほっ、ごほっ」

したたか嘔吐した。
暗くてよく見えないが、
吐しゃ物は真っ赤に染まっていることだろう。
鈍い痛みだけが、マコトの体を支配していた。




34: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:37:37.13 ID:P9CUzjkd0.net

マコトは地面に倒れたまま、自分の股間に手を伸ばした。

「いっ……たぁ」

異様なほどに腫れ上がっているのが、手に伝わる感触で分かった。

「どうして、こんなものがついてるんだろう」

体の芯を貫く言いようのない感情と同時に、目から涙が溢れ出た。

「どうして私だけ、こんなに苦しまなくちゃいけないんだろう」

胸が締め付けられ、呼吸が止まってしまいそうだった。

「どうして。私だけ」

マコトはひとり、暗闇の世界に取り残されていた。




37: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:40:54.63 ID:P9CUzjkd0.net

街灯の心細い光が照らす道を、
マコトは俯いたままゆっくりとした足取りで歩いていた。
あまり肌の露出していない服装で良かった。
マコトは場違いにもそう思う。
顔についた傷は、髪の毛を下ろして隠していた。

「君。大丈夫?」

正面から歩いてきた人にそう声をかけられた。
人目に付きたくないのに。
心の中で舌打ちをする。

「大丈夫ですよ」

顔を上げて表情を変えずに言う。
声をかけてきたのは、整った顔立ちの青年だった。

「大丈夫って……。君、よく見たら傷だらけじゃないの」

青年は目を見張った。
はぁ。マコトはため息をつく。すべてが面倒くさくなった。

「わたし……。俺、男だから。大丈夫です」




38: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:44:19.23 ID:P9CUzjkd0.net

「ええっ、男なの?」

青年は甲高い声で聞き返した。
マコトは再びため息をつく。

「ええ。だから変な下心で話しかけないでください。
 はっきり言って迷惑ですから」

精いっぱい低い声を出す。
男の声を出すのは何年振りだろうか。

「……そっか。ごめん」

青年は驚いたような顔で、マコトをまじまじと見つめていた。




41: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:48:37.89 ID:P9CUzjkd0.net

「それじゃあ」
「ちょっと待って」

マコトは立ち去ろうとしたが、青年に呼び止められた。
足を止めると、マコトは窺うような視線を這わせた。
青年が口を開く。

「僕にできることがあるなら、何か手伝わせてほしい」

「はぁ?」マコトは困惑した。
「何度も言いますが、俺、男ですよ。おかま野郎の変態なんです。
 あなたもそういった、頭のおかしな趣味があるんですか」

わざと自らを卑下するように言う。
今のマコトにとって、この世の全てが煩わしかった。

「そうだよ」

青年はその言葉に笑顔で頷く。マコトは呆気にとられた。

「僕は女だから。君とは逆だけどね」




42: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:51:54.56 ID:P9CUzjkd0.net

包帯はまだ取れないが、怪我の具合もだいぶ良くなったので、
マコトはようやく外へ出る決心をした。
結局、学校はあのままやめてしまったが、
後悔は少しも無かった。
たかしともあれ以来連絡を取っていない。

「マコトちゃん。久しぶり」

「お久しぶりです」

マコトが待ち合わせたカフェにつくと、
青年はもう席についていた。
カップに半分ほど残ったコーヒーが湯気を立てている。

「どう? 少しは落ち着いた?」

「ええ。おかげさまで」

マコトのコーヒーが配膳されるのを待って、
青年は話題を切り出した。
あれからマコトは一歩も外へ出ていなかったが、
青年とはメールでやり取りを続けていたのだった。

「あなたがいなかったら、
 わたしは世界にひとりぼっちでした」




43: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:55:42.70 ID:P9CUzjkd0.net

「そんな大げさな」

青年は笑ったが、マコトは首を横に振った。

「いいえ。わたしにとって、
 あなたはそれくらい大きな存在です」

言って、真剣な目を向ける。青年は相変わらず笑っていた。
理解者が一人あらわれただけで、
こんなにも世界は華やかになるものなのだろうか。
思いを伝えたマコトは、コーヒーに口を付けた。

「今日はいい天気だし、このあとどこかへ行こうか」

青年が窓の外を見ながら言う。
マコトもつられて外を見た。




46: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 22:59:09.19 ID:P9CUzjkd0.net

「本当ですね。雲一つない」

突き抜けるような青が、空一面に広がっている。
まるで今のマコトの心を表しているようだった。

「どこへ行こうかな。行ってみたいところとか、ある?」

青年の言葉に、マコトは「うーん」と考え込んだ。
しばし俯いてからパッと顔を上げる。

「どこでもいいですよ。お任せします」

顔中に満面の笑みを浮かべてそう答えた。

「あはは。それはプレッシャーだね。
 コーヒーを飲み終えるまでに、考えておくよ」

青年も笑ってそう返した。




49: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 23:03:24.78 ID:P9CUzjkd0.net

「どうしたの? さっきからずっとニコニコしちゃって」

青年が笑顔で尋ねる。

「んー。どこ連れてってくれるのかなぁ、って」

「あんまり期待しないでよ」

青年が困ったような表情を作った。

どこでもいいですよ。あなたと二人だったら。
マコトは、喉まで出かかったその言葉を飲み込んだ。

「じゃあ、期待しないです」

「いじわるだなぁ」

二人は顔を見合わせて笑った。
ふと、どちらともなく窓の外を見る。
ガラスの向こう側では、相変わらず夏の太陽が照り付けていた。
さて。この人はわたしを、どこへ連れていってくれるのかな。
胸の高鳴りと溢れる感情を、マコトは抑えきれずにいた。

終わり




50: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 23:04:50.81 ID:RfWvkFdv0.net






51: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 23:05:56.09 ID:P9CUzjkd0.net

ここまで読んでくれた方、レスくれた方、ありがとうございました。




52: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 23:05:57.36 ID:bVzowG1zO.net

乙!最初はオカズ小説期待して開いたけど、すごいおもしろかった!ありがとう!




53: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/07/12(土) 23:14:05.68 ID:7tvWdOEl0.net







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