1:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 21:41:06 ID:bihKnwh2

第1話 ドーナツの世界

〜エルグの城〜
王様「勇者はまだか」

勇者「遅れて申し訳ありません」

王様「勇者よ、よくぞ参った」

王様「お主もうわさには聞いておろう。はるか南の大地に、日が昇らぬ夜の世界があることを」

勇者「はい」

王様「近年は魔物の活動も激しさを増し、極南の村が魔王に支配されたと聞き及んでおる」

王様「このままではやがて世界は闇に呑まれ、光を失ってしまうだろう」

王様「その前に女神の加護を受けし若者よ、そなたに魔王の討伐を任命したい」

勇者「かしこまりました」

王様「おぉ、さすが勇者だ。よい報告を期待しておるぞ」





元スレ
SS深夜VIP
勇者「ドーナツの世界?!」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1380458466/


 
 
2:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 21:49:12 ID:bihKnwh2


〜城下町〜
勇者「はぁ、魔王なんているわけないのに……」

勇者「とりあえず成功報酬はかなりの額だし、派遣センターで女僧侶を誘うことにしよう」

勇者「もしかすると、もしかするかもしれないし♪」

局員「勇者さまですね。王様より伺っております。どの方を雇いますか?」

勇者「怪我や病気をしたら困るので、女僧侶をお願いします」

局員「えっ、戦士や魔法使いは・・・」

勇者「費用がかさむので、無駄な人員は必要ありません。だめですか?」

局員「い……いえ、大丈夫ですよ」

女僧侶「勇者さま、はじめまして。私は僧侶です。よろしくお願いします」えへっ

勇者「僕は勇者。これからよろしくね。では僧侶さん、装備を整えて行きましょうか」

僧侶「はいっ」





3:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 22:01:15 ID:bihKnwh2


〜北の大地・フィールド〜
僧侶「勇者さま、私たちの旅の目的は極南の地なのですか?」

勇者「そうです。兵力を集めて討伐隊を組織し、極南の地に向かわせることは困難なのです」

勇者「だからといって、何もしないでは隣国の目がある。そこで僕たちが精鋭部隊という名目で、魔王の討伐に向かうわけです」

僧侶「わわわ、私たち二人だけなのに精鋭部隊なんですか」アセアセ

勇者「二人だけで充分だから、精鋭なんだよ。まあ、気楽に行こうよ」

僧侶「はい、勇者さま」

勇者「僧侶さん、ストップ。魔物の気配だ」チャキ

魔物「ガルルル……」

勇者「野犬か。僧侶さんは僕のサポートをお願いします」

僧侶「はい!」





4:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 22:05:19 ID:bihKnwh2

鉄の剣を構え、野犬と向き合った。
殺気を感じたのか、牙をむいて唸り声を上げる。
そして地面を蹴り、飛び掛ってきた。


勇者「はあぁぁぁ!!」

キュィーン

野犬「ばうッ!」


野犬はすばやく身をかわし、さらに飛びついてくる。
しかし、それがあだになる。
振り下ろした剣を反し、風をまとわせて振り上げた。


勇者「疾風斬り!」

野犬「キャイン……」

勇者「よし、とどめだ!」

ザスッ!
肉をえぐると、野犬は力つきた。





5:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 22:08:44 ID:bihKnwh2

僧侶「勇者さま、すごいです! 今、回復しますね」

勇者「ありがと」

僧侶「いえいえ、お仕事ですから♪」

勇者「はは……、そうだね。獣たちが血の臭いを嗅ぎつけたみたいだし、僕たちはここを離れようか」

僧侶「はい。野犬さんの命、みんなに繋がりますように」ペコリ





6:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 22:25:15 ID:bihKnwh2


〜西の村〜
僧侶「勇者さま〜。村が見えてきましたよ」

勇者「馬なら1時間程度なのに、歩くと半日もかかるのか……」

僧侶「日が暮れてきたし、宿を探さないとですね。あそこなんてどうですか?」

勇者「民宿って感じだな。今夜はあそこにしよう」

主人「これはこれは勇者さま。王様より伝令が来ております」

主人「特別料金で、お二人120Gになりますが、いかがされますか?」

勇者「割引きとは助かります」

主人「では、こちらのお部屋にお願いします」





7:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 22:43:57 ID:bihKnwh2


僧侶「山に沈む夕日がすごくきれいですよ。なんだか、自然に囲まれていると癒されますね」

勇者「そうだね。ここがもう少し城下に近ければ、住みたいんだけどな」

僧侶「ところで勇者さまぁ……。わ、私たちは同じ部屋なのですか?」

勇者「ごめん、やっぱり男性と同じ部屋なんて困るよね」

僧侶「は、はい……」

勇者「でも、これから長い旅をするわけだし、お互いに信頼関係を築いていかないといけないと思うんだ」

勇者「部屋を分けると金銭的に苦しくなるし、無理にとは言わないけど理解してほしい」

僧侶「そ、そうですよね。私のほうが意識していたみたいで、恥ずかしいです//」

勇者「とりあえず、旅の計画を立てようよ。この村は何がおいしいか知ってますか?」

僧侶「旅の計画って、食べ物ですか?!」

僧侶「今の季節は冬野菜がおいしいですよ。この村は冬になると白菜の収穫が盛んなので、お鍋がおすすめです」

勇者「そうなんだ。じゃあ、今夜は温かいものを食べよう」

僧侶「はいっ。夕食も勇者割引きが付きますかねえ」ジュルル





8:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 22:47:56 ID:bihKnwh2


勇者「えっ、白菜なべを食べられないんですか?」

主人「はい。近頃、魔物が山から下りてきて畑を荒らすようになったのです。先日は農夫が襲われて怪我をしまして、みな困り果てています」

僧侶「勇者さま、残念でしたね」ショボン

勇者「僧侶さん、明日、その魔物を退治しに行きましょう!」

僧侶「本当ですか?! さすが勇者さまです。村の方も困ってらっしゃるようですし、人を襲うようになっては見過ごせませんよね」

勇者「その通り! 食べ物の恨み、思い知らせてやりましょう」

僧侶(あ、そっちなんだ……)





9:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 22:51:37 ID:bihKnwh2


〜翌朝〜
村長「勇者殿、お待ちください」

勇者「あなたは?」

村長「私はこの村の村長です。宿の主人から勇者殿が魔物退治に行かれると聞きましたが、それは本当ですか?」

勇者「はい。畑が荒らされてはお困りでしょう」

村長「おお、それは助かります。それではぜひ、この娘も連れて行ってはくれないでしょうか? 魔物退治の話を聞き、志願されまして」

僧侶「あの、村長さん。お言葉ですが、年端も行かないお嬢さんを一緒に連れて行くのは、大変危険だと思います」

村長「いえいえ、こう見えても彼女は、この村で一番の魔法使いです。勇者殿といれば安心ですし、よい経験になるでしょう」

魔法使い「魔法使いです。お願いします」ペコ

勇者「分かりました。無事に連れて帰ります」





10:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 23:02:49 ID:bihKnwh2


〜裏の山〜
僧侶「へぇ〜、魔法使いちゃんは来年からお城で研修することが決まってるんだぁ」

魔法使い「はいっ!」

僧侶「ということは、6歳下なんだね。城下の人でも入学できない狭き門なんだよ」

魔法使い「私、勉強がんばりました。あっ、勇者さま、その洞窟です」

勇者「これはグリズリーの巣になってるね」

僧侶「ひえぇぇ、グリズリーですかぁ」

勇者「とりあえず、魔法使いちゃんは僕について来て。外で待っててもらっても、逆に危ないかもしれないから」

魔法使い「はい」

勇者「で、魔法使いちゃんは、どんな魔法が使えるの?」

魔法使い「魔術書は一通り目を通しているので、精霊魔法をすべて使えます」

僧侶「そうなんだ。私が同じ歳のときは、毎日怒られてばっかりだったよぉ」テヘッ

勇者「じゃあ、魔法使いちゃん。洞窟の深部では、火炎魔法と爆発魔法は禁止だから。酸欠したり崩落が発生すると、僕たちも危ないからね」

勇者「とりあえず、命大事にで無理をしなければいいから」

魔法使い「はい、分かりました」





11:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 23:06:43 ID:bihKnwh2


僧侶「うぅ……、勇者さま。うす暗くて怖いです」ビクビク

勇者「しっ、いたぞ」

魔物「ガルルル……」

グリズリーは大きく立ち上がり、威嚇した。

勇者「そうとう気が立っているな。僕が引き付けるから、僧侶さんは回復。魔法使いちゃんは、必要に応じて支援魔法。それでお願いします」

勇者は下段で剣を構える。そして駆け出した。
繰り出される熊パンチを避け、足元にもぐりこむ。

勇者「大地斬っ!」ザシュッ

右足を斬りつけると、グリズリーは倒れた。
怒りの咆哮を上げ、再び立ち上がる。

魔物「グオオオォォっ!」ブンッ

熊パンチが直撃し、勇者は壁に激しく叩きつけられた。





12:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 23:09:28 ID:bihKnwh2

勇者「くそっ!!」

僧侶「勇者さま! 回復魔法!」

魔法使い「伏せてください! 凍結魔法、行きます」

大気中の水分が凍りつき、グリズリーは氷付けになった。
しかし、動きを完全に封じるほどの力はない。
だがその一瞬の隙は、勇者にとって十分なものだった。

勇者「兜割り!」

刀身を全力で振り下ろす。
そして中段から畳み掛けると、グリズリーは力尽きた。

僧侶「やりましたね、勇者さまぁ」

勇者「魔法使いちゃん、ありがとう。あそこで凍結魔法とは、すごいね」

魔法使い「勇者さまの指示がなければ、きっと火炎魔法で攻撃してました」テレ

勇者「いい判断だったよ。さて、今夜は熊なべだ〜。後で農夫に運ばせて、振舞ってもらおう」

僧侶「わぁい。グリズリーは、熊パンチの手が美味らしいです♪」





13:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 23:21:16 ID:bihKnwh2

魔法使い「えっ……食べるんですか」

僧侶「この熊さんは、生きるために畑を荒らしていたんだと思います。そして私たち人間は、その熊さんを狩りました」

僧侶「ならばその死は、命を繋ぐものでなければなりません。決して、命を無駄にしてはならないのです」

魔法使い「命を繋ぐ……か」

勇者「さすが、僧侶さん。いいことを言いますねえ」

僧侶「えへへ。当たり前ですよぉ」





14:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 23:23:41 ID:bihKnwh2

10
魔法使い「何だろ? この気配は……」

勇者「魔法使いちゃん、どうかしたの?」

魔法使い「いえ、この奥から魔力を感じるんです」

僧侶「言われてみれば、かすかに感じますね。行ってみますか?」

勇者「そうだな。気をつけて進もう」

魔法使い「魔力のもとは、これみたいですね」

魔法使いは、たくさんの数字が書かれたプレートを手に取った。

僧侶「この数列は……」

魔法使い「ユピテル魔方陣です」





15:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/29(日) 23:38:17 ID:bihKnwh2

勇者「ユピテル魔方陣?」

魔法使い「はい。縦横斜め、それぞれの列の合計が、いずれも女性数の最初の素数2と男性素数17を掛け合わせた34になるものです」

魔法使い「しかもこれ、完全方陣ですよ」


6、12、7、9
15、1、14、4
10、8、11、5
3、13、2、16


勇者「ちょっと貸してみて」

勇者が手に取ると、魔方陣が光に包まれた。

僧侶「勇者さま、16が消えましたよ! 魔法使いちゃん、これって、15パズルじゃないかな」

僧侶「ほら、開いた空間に隣の数字を動かすことができるし」サッサッ

勇者「あ、おい。勝手に触るなよ。まだ分かってないことも多いのに」

僧侶「ごめんなさい」シュン





17:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 00:15:46 ID:/OBZxBP2

魔法使い「でも僧侶さん。これが15パズルだとしたら、大変なことになりますよね」

僧侶「そうだね」

勇者「それはどういう?」

僧侶「15パズルは神の遺産なんです。その昔、この世界はひとつの巨大な大陸だったと言われています」

僧侶「だけど神様の力により、その巨大なパンゲア大陸は少しずつ動いて割れてしまい、海や島ができて今の世界になったとされています」
勇者「パンゲア大陸? 何だか、すごく壮大な話だな……」

僧侶「それが15パズルの伝説として、この世界に伝えられているのです」





18:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 00:17:28 ID:/OBZxBP2

魔法使い「この15パズルは順番に並んでいませんよね。しかも、完全なユピテル魔方陣を形成して、魔力を放っています」

勇者「つまり、世界が闇の力に包まれようとしている……ということか」

魔法使い「はい。15パズルは世界の在り方に関わる神聖な神具だから、誰も作ろうとしないし、まして動かそうなんて恐れ多くてできることではないんです」
魔法使い「うわさ通り、世界に異変が起きつつあるのではないでしょうか」

勇者「ふぅん。世界の在り方か。で、僧侶さんはこれを気軽に動かした……と」

僧侶「あわわ、すみません。とっさに、戻さないといけない気がして」アセアセ

勇者「じゃあ、明日までに戻しておいて。僧侶は神に仕える者だ。その職につく僧侶さんが戻すべきと思ったなら、それが正しいのかもしれないね」

僧侶「はい、がんばります!」





19:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 00:34:34 ID:/OBZxBP2

今日はここまでにします。

勇者たちが地球で言う南極点を目指しつつ、パズルネタを扱う勇者SSになる予定です。





20:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 07:30:54 ID:czU5UORg

乙おーつ!





21:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 20:52:29 ID:/OBZxBP2

11
〜西の村〜
勇者「村長さん、ただいま戻りました!」

村長「おぉ、勇者殿。魔物はいかがなさいましたか」

勇者「見事、退治してまいりました。農夫を派遣して肉を持ち帰り、今夜はみんなで熊なべにいたしましょう」

村長「そうですな。今から農夫を向かわせます」

勇者「それにしても、魔法使いちゃんは素晴らしいですね。的確な判断で、逆に助けられてしまいましたよ」

村長「そうでしょう。この子は村一番の期待の星ですからな」

魔法使い「えへへ//」

勇者「ところで村長さん。明日ですが、馬を一頭借りることはできませんか? 城に戻り、王様に報告しないといけないことができまして」

村長「分かりました。用意させます」





22:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 21:11:27 ID:/OBZxBP2

12
〜宿、夜〜
僧侶「勇者さまぁ、熊なべ、おいしかったですね〜」

勇者「ほんと、どうやって臭みを消したんだろ。やわらかくて、こってりで」

僧侶「熊パンチ、とろとろでしたね。明日はぷるぷるになっちゃいますよ」

僧侶「勇者さまぁ、ぷるぷるおっぱい触りたいですか//」

勇者「えっ、マジで!?」

僧侶「……。冗談に決まってるじゃないですか。そんなことをしたら、本気で怒りますからね」

勇者「あぁ……、そうだよね」

勇者(はぁ、釘を刺されたな)





23:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 21:22:28 ID:/OBZxBP2

トントン

勇者「どうぞ。開いてますよ」

魔法使い「こんばんは」ペコ

勇者「あぁ、魔法使いちゃん。こんばんは」

僧侶「いらっしゃい♪ 遊びに来たの?」

魔法使い「いえ……、あの、僧侶さん。15パズルは完成しましたか?」

僧侶「できましたよ。ほらっ」

勇者「16の数字、また出てきたんだ」

僧侶「はい。完成したら、結界が張られて動かせなくなりました。もっと遊びたかったのに……」ショボン

勇者(動かすのは恐れ多いものじゃなかったのか? これって……)





24:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 22:13:34 ID:/OBZxBP2

魔法使い「ところで勇者さま。完全なユピテル魔方陣について、思い出したことがあるんです」

勇者「思い出したこと?」

魔法使い「はい。普通の魔方陣は縦横斜めが34になるだけですが、完全方陣はそれだけではないのです」

魔法使い「端と端をつなげて筒状にしても、その斜めの合計が34になるんです」

勇者「筒状に?」

魔法使い「はい。上下を繋げて、さらに右と左を繋げると、その平たいプレートはどんな形になると思いますか?」

勇者「上と下を繋いで、右と左を繋いだらドーナツ型になるね」

僧侶「!! それって……」

魔法使い「まずいですよね」

勇者「?」





25:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 22:25:22 ID:/OBZxBP2

僧侶「世界は球形をしていますよね。神様が大陸を移動させるときに反対側が見えなかったので、世界を平面的に捉えることができる地図を創造しました」

僧侶「それが世界地図で、この15パズルだと言われています」

勇者「ということは、魔方陣は球形の世界がドーナツ型に歪められることを暗示している?」

魔法使い「……かもしれませんね」

勇者(しかし仮に魔王がいたとして、世界を歪めることができるのか?)

勇者「わかった。今日は本当にありがとう。きみは立派な魔道師になれそうだね」

魔法使い「ありがとうございます//」

魔法使い「それでは、おうちに帰ります。おやすみなさい」





26:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 22:53:39 ID:/OBZxBP2

13
〜翌日、エルグの城〜
勇者「というわけで、世界に何かが起こりつつあるのは間違いないようです」

王様「なるほど。して、その神具に掛けられた闇の力は僧侶が解放してくれたのだな」

勇者「はい。仮結界のようなので、正規の封印を施すほうが良いと言っておりました」

王様「承知した。極南の闇にばかり目が向けられていたが、極北でも異変が起きているやもしれんな」

王様「極北の地への調査団は別に出すゆえ、勇者は引き続き任務を頼む」

勇者「かしこまりました」





27:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 23:01:48 ID:/OBZxBP2

14
〜西の村〜
勇者「というわけで、褒美が出ましたよ」

僧侶「わ〜い。山の向こうに都があるはずだから、お買い物が楽しみです。魔法使いちゃんは、都で何が欲しい?」

魔法使い「新しい魔術書が欲しいです」

勇者「えっ、それって、どういうこと?!」

魔法使い「私も勇者さまに付いて行くことにしました♪」





28:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 23:05:02 ID:/OBZxBP2

勇者「子供の遊びじゃないんだ、僕は認められない!」

僧侶「妹ができたみたいで、私はうれしいな〜」

勇者「いやいや、それは違うでしょ!」

村長「うちの村から勇者殿のパーティーに入れるものが出るとは、とても光栄です。彼女は村で一番の魔法使いです。よろしくお願いします」

勇者「魔道師が必要ならば、城下で人材を選びますし……」

父「まあ、そうおっしゃらずに。勇者さまが魔王を倒せたならば、娘を差し上げてもいいですよ」

勇者「何だか、腹黒い思惑が見え隠れしてますが……」

魔法使い「勇者さま! お邪魔にならないよう、がんばります!」





29:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 23:11:44 ID:/OBZxBP2

第1話 おわり

・魔方陣
・15パズル
・トーラス





30:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/30(月) 23:34:11 ID:/OBZxBP2

キリが良いので、ここまでにします。


第1話が完結したということで今後の方針ですが、深夜はアダルトOKなのでR仕様にします。


スプラッター描写やアダルト表現を含む予定なので、悪しからずご了承ください。m(_ _)m





31:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 20:36:02 ID:CG33jvDA

第2話 バラバラの絆

〜山道〜
魔法使い「♪」

僧侶「魔法使いちゃん、ご機嫌ですね」トテトテ

勇者「はぁ、結局押し切られちゃったよ」

僧侶「でも実力は申し分ないし、楽しいじゃないですか」

勇者「はぁ(二人旅の予定だったのに……)」

勇者「ん? 魔法使いちゃん、ストップ。誰かいるみたい」

山賊A「おうおう、てめえら。痛い目に遭いたくなかったら、金目のもんを置いていきなっす!!」

山賊BC「そうだぜ、置いていきな!」





32:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 20:41:38 ID:CG33jvDA

魔法使い「爆発魔法!」


ドーーーンッ!!


山賊ABC「ぐおーーーっ」ピクピク


魔法使い「勇者さま、都が見えましたよ♪」

勇者「そ……そうだね」

僧侶「山賊さん、これに懲りて悪いことはやめてくださいね」ニコッ





33:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 20:47:23 ID:CG33jvDA


〜山すその都〜
魔法使い「僧侶さ〜ん、お洋服のお店がありますよ」

僧侶「あ、その服、サラマンダーに祝福された繊維を織り込んであるみたいだよ。魔法防御が上がるから、魔法使いちゃんにぴったりなんじゃない?」

魔法使い「こっちの光のドレスもかわいいです♪ でもちょっと高いな……」

防具屋「きっとすごくお似合いだと思いますよ。試着だけでもなさいますか?」

魔法使い「えっ、いいんですか?」

僧侶「じゃあ、私もこのワンピースを」キャッキャッ

勇者「……先に宿を探しましょうよ。もうすぐ日が暮れるし、部屋がなくなるかもしれません」

魔法使い「え〜〜、この服、着たかったのに」ブーブー

僧侶「また後で来ましょ」

防具屋「ありがとうございました。またお待ちしております」

僧侶「宿屋、宿屋〜♪ 勇者さま、ガイドブックに山菜料理がお勧めと書いてあるし、あのホテルにしませんか?」

勇者「山菜かぁ。それじゃあ、そこに泊まりましょう」





34:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 20:53:44 ID:CG33jvDA


主人「ご家族連れの方ですか? それでしたら、一泊200Gになります」

勇者「家族連れというより、勇者なんだけど」

主人「エルグ王の紋章ですね……。少々お待ちください」





35:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 20:57:43 ID:CG33jvDA

・・・
・・・・・・


僧侶「いい部屋ですね、街を一望できますよ。あっ、お城も見えますね」

勇者「そうなんだ。ここは同盟国だし、そちらの王様にも挨拶しておこうか」

僧侶「はいっ」

魔法使い「あのー、勇者さまと同じ部屋なのですか? 普通は殿方と女性は分かれるものかと……」

勇者「魔法使いちゃんは正式な部隊メンバーじゃないから、資金が出ていないんだよね」

勇者「それにこれから長い旅をするわけだし、お互いに信頼関係を築いていかないといけない。だから無理にとは言わないけど、我慢して欲しいかな」

魔法使い「……障壁魔法!!」パァァ

勇者「えっ、何これ?」

魔法使い「光のカーテンです。こっちは私と僧侶さんの部屋だから、勝手に入らないでくださいね♪」

勇者「あー、うん」





36:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 21:04:37 ID:CG33jvDA

魔法使い「それでは、魔術書を探しに行ってきます」

僧侶「迷子にならないように気をつけてね」

魔法使い「は〜い」

勇者「あの子は光属性の魔法も出来るんだ……」

僧侶「勇者さま」スッ

勇者「うわぁ、びっくりした! このカーテン、向こうが見えないだけで普通に通れるのか」

僧侶「そうですよ。でも何度も出入りしたら、光の粒子が散って消えちゃいますけどね」

勇者「あの子が戻ってきたときに消えていたら、すごく怒られそうだね。ははっ」





37:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 21:12:56 ID:CG33jvDA

僧侶「やっぱり連れてくるのは良くなかったですかねえ」

勇者「まあ、村長さんや本人の意向もあるし、僧侶さんは話し相手が出来てうれしいんでしょ?」

僧侶「……はい。魔法使いちゃんがいてくれると、妹が出来たみたいでうれしいです」

勇者「彼女は年頃の女の子だし、多感な時期だから気難しいこともあるんじゃないかな。それは仕方ないよ」

僧侶「そうですね……」

勇者「とりあえず日が暮れる前に、僕たちも買い物に行きましょうか」

僧侶「はい」





38:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 21:20:32 ID:CG33jvDA


魔法使い「やっぱり、都の書店は大きいな〜」トテトテ

山賊A「親分、あいつっす」

盗賊「あいつって、どう見ても女子供じゃないか。そんなロリっ子にやられたのかい?」

山賊B「それがいきなり爆発魔法で攻撃されまして……」

盗賊「情けないねぇ。子供の魔法使いなんて、児戯に等しいだろ」

山賊A「それがどうやら、あの歳で勇者一行のメンバーみたいっす」

盗賊「なるほど。勇者一行なら、王家の紋章を持っているはずだよな。宿を突き止めて、頂戴するよ!」ビシッ

山賊A「了解っす!」

盗賊「気配消去魔法」スサッ





39:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 22:17:22 ID:CG33jvDA


〜街中〜
僧侶「勇者さまぁ。私たちが泊まっているホテルからすべての橋を一度だけ通って、街の観光とお城への訪問をして、ここに戻ってくることは出来ると思いますか?」

勇者「一筆書きの問題?」

僧侶「はい。さっき部屋から街並みを見てて、行けるかな〜って思って」

勇者「うーん、出来ないかな。気に入ったお店には何度も行きたいから!」ビシッ

僧侶「!!」

僧侶「あぁ、そっか。私たちに一筆書きはできませんね。ふふっ」トテトテ

勇者「で、結局、答えは何なの?」

僧侶「観光マップを見てみたけど、あの橋だけは渡れないみたいです。街から外れるので、行く必要はないですけど」

勇者「ふうん、そうなんだ」





40:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 22:38:47 ID:CG33jvDA

僧侶「一筆書きと言えば、ケーニヒスベルクの橋の問題が有名ですよね」

僧侶「ケーニヒスベルクの街を流れているブレーゲル川に、七本の橋が架けられています。その七つの橋を二度通らずに、すべて渡って元の場所に戻って来ることが出来るか」

僧侶「そのような問題ですが、ご存知ですか?」

勇者「聞いたことがあるな。それって、出来ないんだったよな」

僧侶「そうです。でも実は、すべての橋を渡って、元の場所に戻ってくる方法があるんですよ」





41:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 22:49:07 ID:CG33jvDA

勇者「まさか川を泳ぐとか言うんじゃないだろうな」

僧侶「いいえ、違います。川の上流を目指して歩いて、源流をぐるっと迂回するんです」

勇者「街から出たら駄目だろ」

僧侶「でも、『街を出てはならない』という条件はないですから。面白いと思いませんか?」

勇者「うぅん、そうかな……」

僧侶「この面白さに共感してもらえないなんて、勇者さまと一緒に旅をする自信がなくなりました……」

勇者「大げさだな……。あっ、あそこのお店、溶けないアイスだって。食べてみようよ」

僧侶「はいっ! 溶けないのにアイスって、面白そうです」

勇者「食べ物の好みは合いそうだね」

僧侶「えへへ、そうかもですね」





42:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 23:01:25 ID:CG33jvDA


勇者「あー、うん。まさか本当に溶けないとは思わなかった」ゲンナリ

僧侶「ですね……。なんか、いつまでもジャリジャリしてましたよ」ショボン

勇者「アイスじゃなくて、砂だろって言いたくなった。まあ、こういう経験も観光の醍醐味かな」

僧侶「ですね……。地元の人、食べているのかなぁ」

勇者「外は寒いし、食べるのは観光客くらいじゃないかな。とりあえず気を取り直して、道具屋に行こっか」





43:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 23:14:58 ID:CG33jvDA

道具屋「いらっしゃい。何にするんだい?」

勇者「薬草と聖水を三つずつください」

道具屋「全部で100Gだよ。他に何か買っていくかい?」

僧侶「民芸品を見せてもらっていいですか」

道具屋「うちでは、こういうものが有名だよ」

僧侶「道具屋さん。木の温もりって、いいですよね〜」

道具屋「お嬢さん、分かってるねぇ。うちは都だけど、山すそで川もあるから、昔から林業が盛んでね」

僧侶「そうらしいですね。ここの木材は品質が良いと聞いています。あっ……、その組木パズルが欲しいです」

道具屋「今日は機嫌が良いから、少し値引きしてあげるよ」

僧侶「ありがとうございます♪」





44:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 23:28:16 ID:CG33jvDA


〜宿〜
僧侶「いい買い物ができましたね」

勇者「それ、経費で落とすつもりなの? 王様、怒らないかな」

僧侶「大丈夫♪ 私たちには必要なものだよ」ニコッ

勇者「あっ、魔法使いちゃん、帰ってたんだ。ただいま」

魔法使い「お帰りなさい」ペコ

僧侶「魔術書は何か面白いのが見つかった?」

魔法使い「精霊魔術関連の研究論文がいっぱいありました。僧侶さんが喜びそうな魔法医学の本もありましたよ」

僧侶「そうなんだ。明日、お城に挨拶行ったら、一緒に本屋さんに行こっか」

魔法使い「はいっ♪」

トントン

勇者「どうぞー」

宿の主人「勇者さま、夕食の準備が整いましたがいかがなさいますか?」

勇者「ありがとう。温かいうちに食べさせてもらうよ」





45:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 23:42:24 ID:CG33jvDA


〜盗賊さん〜
山賊A「ついに勇者たちの宿を突き止めたっす」

盗賊「よくやった」

盗賊「お前たち、人が一番無防備になるのは、いつか分かるか?」

山賊A「宿にいるときっす」

盗賊「いや、欲求を満たしているときだ。食欲、排泄欲、睡眠欲、性欲。だからこそ地位の高いものは、食事に毒を盛られるのを恐れ、枕を高くして眠ることが出来なくなる」

山賊B「仲間に僧侶がいる時点で、毒は効果がないですよね」

盗賊「そうだな。だから、俺たちは寝込みを襲撃する」





46:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/01(火) 23:53:04 ID:CG33jvDA

盗賊「やつらは今日、山を越えたばかりだ。相当、疲労しているだろう」

山賊B「そうですね」

盗賊「それでまず、全員で女子供を拘束して無力化する。そして気配を消して、勇者の寝込みを襲撃する」

山賊たち「なぜ、女が先なんですか?」

盗賊「この国が派遣した先発隊を見て分かるとおり、あいつもただの衛兵だろう。ならば、俺たちにとって恐ろしいのは、剣術よりも魔法だ」


山賊A「確かに、爆発魔法でのされたっす」





47:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 00:05:34 ID:qtvigy82

盗賊「それでだ、寝込みとはいえ魔法対策をしなければならない」

盗賊「破魔の腕輪を二つ使って、僧侶と魔法使いの魔力を封印する」

山賊A「えぇっ! それって、今あるお宝でも高価なものじゃないっすか!」

山賊B「そうです! 口を塞げば、詠唱できないはずです! もったいないです!」

盗賊「そんな考えだから、山賊からスキルアップできないんだよ、お前たちは」

盗賊「いいかい、王家の紋章にはそれだけの価値があるんだ。元を取れるなら出し惜しみをせず、ベストの状態で戦える作戦を考えろ」


山賊たち「了解っ!!」





50:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 20:16:11 ID:qtvigy82


〜宿、勇者の部屋〜
僧侶「お肉と山菜の煮物、味付けが絶品でしたね♪」

勇者「ふきのおひたしも、だしを吸ってて美味しかったな〜」

魔法使い「二人は、いつも食べ物の話ばっかりですね」ニコ

僧侶「だって、おいしかったじゃない。ねえっ」

魔法使い「僧侶さん、今日はもう疲れました。眠たいです……」ネムネム

僧侶「慣れない旅が、初日から山越えだったもんね。それじゃあ、一緒にお風呂に入ろっか」

魔法使い「はい……」ネムネム

勇者「じゃあ、明日の行動は朝になってから打ち合わせだな」

僧侶「ですね。では、行ってきます♪」





51:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 20:22:14 ID:qtvigy82

10
〜深夜、宿〜
盗賊「勇者は寝静まった。お前たち、行くぞ!」

山賊たち「了解!」

盗賊「気配消去魔法! 良いか、見えなくなったり物音を消せるわけじゃないから、絶対に油断するなよ」

サササ・・・

山賊A「この部屋っす」カチャカチャ

ガチャ

盗賊「入るぞ」クィッ

山賊B(よく寝てますね。こっちが女の部屋みたいです)


僧侶「zzz」
魔法使い「スヤスヤ」


盗賊(女の装飾品は、見つけても絶対に触るなよ。どんな魔法が込められているか分からんからな)

盗賊(よし、女の口を塞げ!)

盗賊の指示で、山賊たちは飛びかかった。





52:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 20:32:05 ID:qtvigy82

僧侶・魔法使い「?!」

山賊A(魔法は使わせないっす)


すかさず、破魔の腕輪を装備させる。
僧侶たちの魔力が吸われ、霧散していった。


魔法使い「むぅむぅ(魔道具?! 魔力がなくなる……)」ジタバタ

山賊C(こら、暴れるな)ボスッ

魔法使い「むぐぅ」

僧侶(魔法使いちゃん!)


破魔の腕輪は魔力を吸い取り、粉々に砕け散った。





53:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 21:09:31 ID:qtvigy82

山賊AB(親分、腕輪が壊れました)

盗賊「よしっ。気配消去魔法! これで女たちが発する恐怖心も、勇者に気取られん」


僧侶(気配消去魔法? もしかすると、この4人以外にも仲間がいるのかも……)

僧侶(勇者さま、気付いて)エイッ

勇者「……痛っ」

山賊AB(!!)

山賊C「大丈夫です。こっちには気付いてません」

盗賊「だが勇者は起きた。プランBに変更だ。女を縛って運び出すぞ!」

魔法使い「むぅむむぅ……」

僧侶(……)





54:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 21:16:15 ID:qtvigy82

11
勇者「zzz」

トスッ、コロコロ

勇者「……痛っ」

勇者(これは僧侶さんが買っていた民芸品)

勇者(はぁ、今日は寝相が悪いなぁ)チラッ


・・・
・・・・・・ドンッ

勇者(物音? 扉が開いてる)トコトコ

勇者「僧侶さん、魔法使いちゃん、起きてるんですか?」

!?

勇者「荒らされた跡! くそっ、女を狙った人売りか」

勇者「装備品が盗まれてる……。急がないと二人が!」

山賊A(くくっ)





55:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 22:27:00 ID:qtvigy82

12
勇者「二人はどこに連れて行かれたんだ……」

勇者「確か、僧侶さんが街のはずれに行く橋があると言ってたっけ。とりあえず、そこに行ってみよう」


・・・
・・・・・・


勇者「橋を渡ると寂れてきたな……。とりあえず、あの廃屋を覗いて見るか」


シュッ……


唐突に、闇から刃物が伸びてきた。

勇者「ぐっ!」

盗賊「上手く避けたな。やはり、さすがは国の衛兵ということか」

勇者「何者だ!」

盗賊「俺は盗賊だ」





56:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 22:46:24 ID:qtvigy82

勇者「盗賊? 女二人を攫ったのはお前か!」

盗賊「あぁ、そうだ。王家の紋章を渡せば、二人は返してやる」

勇者「紋章? お前みたいな人売りが、何に使うつもりだ」

盗賊「紋章を複製し、衛兵を襲う。そうすれば戦争が始まり、国が争う。その混乱に乗じて市場を握れば、莫大な利益を独占することができるって寸法だ」

盗賊「さあ、大人しく紋章を渡しやがれ!」

勇者「それを聞いて渡すわけがないだろ。二人はどこだ!」

盗賊「交渉は決裂だな。ではお前を倒した後で、ゆっくり探すとするか」

勇者(近くに仲間がいる気配はない。こいつを倒して、二人の居場所を吐かせるしかないようだな)


僧侶「……」
魔法使い「むぅむぅ(勇者さま!)」

山賊B「騒いでも無駄だ。俺たちのことは、そうそう気付かねえよ。さて、丸腰の勇者が親分に勝てるかな?」ガハハ





57:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 23:08:57 ID:qtvigy82

13
盗賊は、おもむろに勇者に歩み寄った。
まったく警戒心を抱かせず、歩いてダガーの間合いへと入り込む。
そして、腹部へとダガーを突き出した。


勇者「?!」


勇者はすんでの所で身をかわし、次の斬撃を手でいなす。
それと同時、腹に拳が飛んできた。


勇者「ぐっ!」


さらに、ダガーが勇者のわき腹を掠める。
盗賊はダガーを鞘に収めると、改めて構え直した。


盗賊「勇者ってのは、この程度の体裁きも受けられないのかい」

勇者「こんな奴、初めてだ……。動きを読めない」





58:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 23:13:23 ID:qtvigy82

それもそのはずだった。
戦いでは攻める側も受ける側も、相手の動きを見て一瞬の隙を探っている。
その一瞬の隙を見つけたとき、人はわずかに感情が変化する。

そう、殺気が高まる――。

しかし盗賊は、気配を隠す魔法を使って戦っている。
感情の変化を悟られることなく攻撃し、また反撃することができるのだ。

相手の感情を読むことができないことは、必殺の一撃を捉えることが出来ないことに等しい。





59:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 23:22:16 ID:qtvigy82

盗賊「おらおら!」

勇者は斬撃をいなし続ける。
攻撃の手が休まったところで、強引に中段蹴りをねじ込んだ。

勇者「あまいっ!」ドスッ

盗賊「くそっ!」

勇者「殺気を感じられないだけなら、キラーマシンと同じだな。しかし機械と違って、人間には一拍の間がある。それを見切れば、受けられないことはない」

盗賊「はははっ。さすがだよ、勇者。だけどな、俺を機械人形と同じだと思わないほうがいい」

盗賊「はぁっ!!」シュッ

勇者「何度やっても同じだ。諦めて、二人の居場所を教えろっ!」

盗賊「加速魔法!!」ギュゥン


思いもよらない急激な加速に反応が遅れた。

勇者「ぐあぁぁっ!」





60:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 23:33:30 ID:qtvigy82

盗賊「急所を狙ったつもりだったが、この状況でとっさにかわせるとはたいしたもんだ」

盗賊「そら、もう一丁!」シュシュッ


勇者はダガーをいなす。
しかし、身体がしびれて避けきれない。

勇者「ぐっ! 何だ、そのナイフは……」

盗賊「どうやら、効いてきたようだな。こいつには特製のしびれ薬が塗ってある」

勇者「しびれ薬だと……」

盗賊「そうだ。残念だけど、お前とはもうお別れだな」

勇者「くそっ……」





61:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 23:41:26 ID:qtvigy82

盗賊はダガーを鞘に収め、再び構え直した。
それにより、しびれ薬が刃に塗られる。


盗賊「死ねっ! 加速魔法っ!」ドギュンッ


ぼこぉっ!
勇者の放った渾身の拳が、盗賊の鳩尾にめり込んだ!


盗賊「がはぁっ……」

ドサッ

勇者「加速をすればするほど、自分への打撃のダメージも大きくなる。詰めを誤ったな」


盗賊は倒れた。
勇者は完全にしびれて、立っていることが出来なくなった。





62:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 23:47:31 ID:qtvigy82

14
山賊BC「お、親分っ!」

魔法使い「むうっむぅ!(勇者さまぁ!)」

山賊B「くそっ! 加勢して勇者をやっちまえ! 行くぞ、山賊C」

山賊C「おうっ!」

僧侶「行かせませんっ!」バッ

山賊B「なにっ?! お前、どうやって縄をほどいた!」

僧侶「えへへ、緩かったんじゃないですか?」

山賊B「ちっ! 魔力のない僧侶なんて、たいしたことねえ。やっちまうぞ!」

僧侶「くすっ。即死魔法♪」

魔法使い(!!)ビクッ





63:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/02(水) 23:52:42 ID:qtvigy82

山賊B「ぐあああぁぁぁぁああっっ。や、やめてくれえっ……」


山賊Bはもがき苦しみ、全身が激しくけいれんしている。
やがて動かなくなり、事切れるように力尽きた。


山賊C「ひ、ひいぃぃぃっ」

僧侶「今日、悪いことは止めるように言いましたよね。私、すごく怒っています。いっぱい、反省してくださいね」


僧侶「即死魔法!」ニコッ


山賊Cは力尽きた。





65:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/03(木) 19:39:46 ID:9tit5JYw

15
魔法使い「そ、僧侶さん。ふ、二人とも殺しちゃったの……?」ブルブル

僧侶「大丈夫よ、気を失っているだけだから。殺めるということは、相手の未来の可能性を奪うことなの」

魔法使い「未来の可能性を奪う……ですか」

僧侶「そうだよ。だけど、人も魔物も命で命が繋がっている。だからこそ、無益な殺生で命を無価値なものにしてはならないの」

魔法使い「……」

僧侶「魔法使いちゃん、山賊さんが逃げないように手足を縛ってて」

魔法使い「は、はいっ」

僧侶「勇者さま、勇者さまぁ!!」

勇者「無事……だったんだな」

僧侶「はい、魔法使いちゃんも無事です。ひどい怪我……。今、回復しますね」





66:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/03(木) 19:40:54 ID:9tit5JYw

・・・
・・・・・・


山賊A「親分〜。紋章、見つけたっすよ〜」

勇者「ご苦労様。じゃあ、返してもらうよ」ニコ

山賊A「げっ、勇者っす……」





67:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/03(木) 20:40:36 ID:9tit5JYw

16
〜帰り道・早朝〜
勇者「盗賊たちは番所に届けたし、一件落着ですね」

魔法使い「あの、僧侶さん。どうやって、魔法を使ったんですか?」

僧侶「あの程度の魔道具だと、私の魔力を空っぽにする前に壊れちゃうの。それに縄に使われる植物の組成は理解しているから、回復魔法の応用で破壊できるしね」

僧侶「ただ、山賊たちが気配を消す魔法を使っていたから、魔法使いちゃんがいるし、慎重にならないといけないなと思って……」

魔法使い「じゃあ私……僧侶さんの足手まといになっていたんですね。熊退治を一度したくらいで思い上がっちゃって、私、私……」

勇者「僕と僧侶さんは、王様に仕えるために修行してきた。だから、未熟な魔法使いちゃんとはレベルが違う。策にはまって簡単に魔力を空っぽにされるようでは、足手まといになるに決まってるだろ」

魔法使い「うわぁぁん.....」

僧侶「勇者さま、それは言いすぎです」

勇者「でも才能があると確信したから、キミを連れて行くことを了承したんだ。まだ一緒に来るつもりがあるなら、僧侶さんからいろいろ学んで経験を積んでほしい」

魔法使い「勇者さま、私、もっと頑張ります……。一緒に行きたいです……」

僧侶「魔法使いちゃん、宿に戻りましょう」





68:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/03(木) 20:45:32 ID:9tit5JYw

17
〜宿・勇者の部屋〜
僧侶「私たちの荷物は大丈夫みたいだけど、勇者さまの荷物は部屋中に荒らされてますね……」

勇者「魔導師の装身具は危ない物も多いから、警戒したんだろ。はぁ、まずは片付けか」

勇者「この民芸品は、僧侶さんのだな。頭にぶつけてきたやつ」

僧侶「あわわ、頭に当たったんですか。狙い通りです!」

魔法使い「狙い通りって……」クスクス





69:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/03(木) 20:54:19 ID:9tit5JYw

僧侶「魔法使いちゃん、組木パズルは、みんなの絆を表しているんです」

魔法使い「みんなの絆……ですか」

僧侶「はい。ただの木の球体に見えるんですけど、実はここのパーツが抜けるんです。すると、次々とパーツが外れるようになる」

僧侶「私がいて、魔法使いちゃんがいて、勇者さまがいて……」ヌキヌキ

僧侶「街の人がいて、王様がいて、みんなで世界を支えているんです。だから絆を失い、誰か一人でも欠けてしまうと、全部のパーツがバラバラになって世界を支えることが出来なくなってしまうのです」

勇者「絆……か。これも神の遺産なの?」

僧侶「今、思いつきました」ドヤッ

勇者「即興かよ!」





70:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/03(木) 21:07:43 ID:9tit5JYw

魔法使い「あの、勇者さま。このカーテン、外そうと思います」

勇者「年頃の女の子だし、別に無理はしなくていいんだよ」

魔法使い「また襲われたときに気付いてもらえないと怖いし、その、勇者さまや僧侶さんとの絆を大切にしていきたいから……。魔法解除!」


パアアァァァッ


魔法使い「私もお片付け、手伝います」

魔法使い「あれ? この本は……」

勇者「あっ! ちょっと待って」


ペラペラ……


魔法使い「え、エッチな本です// 火炎魔法!!」ゴーーッ

勇者「だあああっ、家から持ってきたお宝本がぁ!」

僧侶「あれっ、バラバラになったまま戻せません〜」





71:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/03(木) 21:20:04 ID:9tit5JYw

・・・
・・・・・・


作戦会議の結果、障壁魔法で男女別々に更衣室を作ることになりました。

そして燃やしたエッチな本は、みんなで魔術書を買いに行ったときに新しく買うことを許してあげました。


僧侶「ゆ、勇者さま。エッチなことは、私たちがいないときになさるようお願いします//」

勇者「すみません。ご理解、感謝します……」ペコペコ

僧侶「ところで、そのいやらしい書物も経費で落とすのですか? 王様、怒りませんかねぇ」

勇者「大丈夫! 僕たちには必要なものだよ」キリッ

僧侶・魔法使い「あわわ//」





72:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/03(木) 21:30:09 ID:9tit5JYw

第2話 おわり

・一筆書き
・組木パズル





74:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 19:56:31 ID:F8nr.j7M

第3話 命の作り方

〜山すその街〜
〜宿、女湯〜

魔法使い「何だか、すっかり居付いちゃってますね」

僧侶「そうだね。でも山菜は美味しいし、温泉は広いし、魔術書にも困らないし、良いこと尽くめだよぉ」

魔法使い「そうですよね。勇者さまの推薦で、お城の魔道師さまからご指導を受けることが出来るし、それはうれしいです」

魔法使い「今日は帰り道に、僧侶さんが言ってたアイスを食べてきましたよ」

僧侶「ええっ、あれを食べたの?!」

魔法使い「あれ、冷たい砂ですね」

僧侶「でしょ、でしょっ!」

魔法使い「あれは駄目です!!」

僧侶「ガマラ砂漠をイメージしてたらしいけど、あれは失敗だよね」





75:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 20:19:54 ID:F8nr.j7M

魔法使い「ところで、勇者さまは今夜はエッチなことをなさっているのでしょうか」

僧侶「わわ、いきなり猥談?!」

魔法使い「ごめんなさい」アセアセ

僧侶「今さらだけど、私たちが一緒にお風呂に入るのは、そのためだよ//」

魔法使い「で、ですよね……」

僧侶「だから、今日はしているんじゃないかな」

魔法使い「でもそれをしたら、いつもゴミ箱に終わった後のものが捨ててありますよね……。それがどうしても嫌なんです」

僧侶「……」

魔法使い「やっぱり、エッチな本を禁止することは出来ないでしょうか」





76:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 20:30:33 ID:F8nr.j7M

僧侶「何かに悩んでいるのは気付いていたけど、そのことだったんだ……」

魔法使い「はい。私、エッチな本を許すことが、そういうことを許すことだったなんて思いもよらなくて……」

魔法使い「気持ち悪いので、もう止めてほしいです」

僧侶「でもそれを禁止すると、勇者さまだけに我慢をさせることになるんじゃない?」

魔法使い「今は、私たちが我慢しています!」

僧侶「勇者さまも我慢して、私たちを気遣ってくださってますよ」

魔法使い「私には、そうは思えません」





77:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 20:35:18 ID:F8nr.j7M

僧侶「う〜ん、魔法使いちゃんは知らないでしょ。宿の奥様の計らいで、私たちが避妊具を受け取っていることを」

魔法使い「えぇっ……、避妊具ですか//」

僧侶「そうだよ。それを今までずっと知らないでいられた事は、勇者さまが魔法使いちゃんを気遣ってくれている証拠にならないかなあ」

魔法使い「あの、でもそれって僧侶さんと勇者さまが……//」アセアセ





78:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 20:42:40 ID:F8nr.j7M

僧侶「勇者さまは、『私たちの信頼を失うことはしない』とおっしゃいました。避妊具もあるので交わりたいでしょうけど、それを気取られないように配慮してくださっています」

僧侶「そのことがあって、私は信頼できる方だと思いました」

魔法使い「全然知らなかったです……」

僧侶「勇者さまと部屋を分けるのが一番良いのだけど、先日のように夜襲されると困りますしねぇ……。殿方には必要なことだし、禁止をせずに許してあげることは出来ませんか?」

魔法使い「分かりました、もう少し我慢します。殿方と暮らすって、とても難しいですね」





79:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 22:39:05 ID:F8nr.j7M


〜部屋〜

僧侶「勇者さま、入ります」トントン

僧侶「居ないみたいですね」ガチャ

魔法使い「あわわ、やっぱり今夜はなさってます//」

僧侶(無理にゴミ箱を見なければ良いのに……)くすっ

魔法使い「わ、私がエッチだから覗いたわけじゃないもん!」プイッ





80:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 22:43:50 ID:F8nr.j7M

僧侶「じゃあこうしましょ。いつもゴミ箱に布をかぶせていれば、勇者さまが一人でなさっていても、それをしていた証拠は分からなくなるでしょ」

僧侶「こうすれば、あまり気にならなくなるんじゃないかな?」

魔法使い「あっ、そういえば家のゴミ箱も、布をかぶせているものがありました」

僧侶「じゃあ、それでいい?」

魔法使い「はい、そうします」





81:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 22:53:35 ID:F8nr.j7M


魔法使い「あの、ところで僧侶さん。避妊具って、どのようなものなんですか?」

僧侶「あー、そうか。話しちゃったもんね……」

ガサゴソ

魔法使い「こ、これですか//」

僧侶「そうそう。これを殿方の陰部にかぶせて、ここで精液を受け止めるの。そうすれば、女性の中には入ってこないでしょ」

魔法使い「……」ちらっ

僧侶「な、何?」アセアセ





82:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 22:56:57 ID:F8nr.j7M

魔法使い「僧侶さんは、『命を殺めることは未来の可能性を奪うことだから、無益な殺生で命を無価値なものにしてはいけない』と言ってましたよね」

僧侶「そうだね」

魔法使い「だけどその、勇者さまがなさっているエッチなことや避妊することは、未来の可能性を奪っていることにはならないのでしょうか?」

僧侶「ん〜、何て言えば良いのかなぁ。命を繋ぐことと、命を宿すことは違うことなの」

ガサゴソ

魔法使い「それは、創世神話の書物ですね」





83:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 23:12:35 ID:F8nr.j7M

僧侶「えっとね、女性が新しい命を宿して出産するためには、約十ヶ月の妊娠期間が必要でしょ」

魔法使い「はい」

僧侶「だから子孫を増やしたい殿方は、妊娠期間中に別の女性と交わって命を宿せるように、いつでも射精できる身体を神様からもらったの」

魔法使い「えっ、ひどい!」

僧侶「うん、ひどいよね。だから愛する殿方だけを受け入れたい女性は、どうすれば良いか考えました」





84:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 23:18:43 ID:F8nr.j7M

魔法使い「女性は何をしたのですか?」

僧侶「女性は神様に頼んで、一ヶ月に一度だけ命を宿すことが出来る身体にしてもらったの。そのせいで殿方は、女性がいつ命を宿せるのか分からなくなりました」

魔法使い「あっ、それが生理ですね」

僧侶「そうそう。じゃあ女性に生理が来るようになって、殿方はどうしないといけなくなったと思う?」





85:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 23:20:53 ID:F8nr.j7M

魔法使い「同じ女性と何度も交わらなければならなくなったと思います」

僧侶「そうだね。そして殿方は一人の女性と交わっているうちに、愛する心が芽生えたのです」

魔法使い「殿方が女性を愛するまでに、そのような神話があったのですね」

僧侶「そこで終わればいい話だけど、まだ続きがあるんだよ。一人の女性を愛するようになった結果、殿方はどうなってしまったと思う?」





86:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 23:27:35 ID:F8nr.j7M

魔法使い「えっ、どうなってしまったのですか?」

僧侶「いつでも射精できる身体を持て余すようになってしまったの」

魔法使い「あっ……。だから殿方は、一人でしなければならなくなったんだ」

僧侶「そういうことです。だけどそればかりでは、愛する殿方が不憫ですよね」

魔法使い「……そうかも」

僧侶「だから避妊する方法を考えて、二人の愛情を深め合うために交わるようになりました。その方法のひとつが、この避妊具です」

魔法使い「……」





87:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 23:35:33 ID:F8nr.j7M

僧侶「今話した神話が、魔法使いちゃんの疑問への答えになってますか?」

魔法使い「つまり神様から与えられた身体の仕組みだから、必ずしも未来の可能性を奪っていることにはならない、ということですか?」

僧侶「うん。宗教によって違いはあるけど、私はそう考えています」

魔法使い「勇者さまが頻繁に一人でなさるのは、殿方として必要なことなんですね。神話を知ると、それもなんだか面白いです」





88:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/04(金) 23:41:56 ID:F8nr.j7M

魔法使い「僧侶さんのおかげで、勇者さまの性欲を理解できた気がします。だから、一人でする事を許してあげたいと思います」

僧侶「魔法使いちゃん。新しい命を宿すのは素敵なことだし、私たちも愛し合える殿方と出会って授かりたいものですね」

魔法使い「はいっ!」





90:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/05(土) 20:49:50 ID:lv8KAiIc


勇者「二人とも、何を読んでるの?」

僧侶・魔法使い「!!」ビクッ

勇者「そんなに驚かないでくださいよ。逆にこっちが驚きます」

僧侶「えっと、創世神話の書物です」

勇者「相変わらず勉強熱心だね。僕も見習わないと」

僧侶「ところで、勇者さま。そこのゴミ箱なのですが、今後は布をかぶせることにしました」

勇者「えっ、なんで?」

僧侶「その……私事ですが生理の日が近くて……」アセアセ

勇者「あぁ、そっか。気が回らずにすみません」

僧侶「魔法使いちゃんもそれでいい?」

魔法使い「えっ? あっ、はい……」





91:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/05(土) 21:17:52 ID:lv8KAiIc

勇者「そうそう、今のうちに二人に話しておかないといけないことがある」

勇者「今週でお城へのお勤めが終わるだろ、その後ここの都を出て港町に向かうわけだけど、草原を抜けたら砂漠を横断することになるんだ」

僧侶「魔法使いちゃんのことを考えると、夏の砂漠は避けたいですよね。草原を抜けて赤道を越えると、季節が夏になりますから」

勇者「かといって、迂回をすると熱帯雨林を通ることになるんだ」

ガサゴソ

僧侶「砂漠は一週間くらいで越えられそうですね。その後は、大河を船で下るのですか?」

勇者「ああ。川を下って、海に出るつもりだ。草原や砂漠にも街があるから、それを拠点にしながら進めば子供がいても無理なく行けると思う」





92:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/05(土) 21:22:13 ID:lv8KAiIc

僧侶「勇者さまは、夏の砂漠の横断経験はありますか?」

勇者「この国とは同盟関係だし、その関係で何度か遠方訓練をしていたから提案したつもり」

僧侶「そうなんですね」

魔法使い「あの、私は水精霊の魔法を使えますよ」

勇者「知ってる、凍結魔法を使っていたもんね。期待してるよ」

魔法使い「はいっ!」





93:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/05(土) 21:29:29 ID:lv8KAiIc


〜草原−ガマラ砂漠〜
一週間後、勇者たちは山すその都を後にした。

二週間ほど歩いて草原を抜けると、次第に足元が砂へと変わってくる。
草原の街で宿を取り、装備を整えて砂漠へと繰り出した。





94:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/05(土) 21:36:43 ID:lv8KAiIc

灼けた砂と厳しい日差しが、勇者たちを襲う。
熱風は砂を巻き上げ、容赦なく吹きつける。
それは子供に対しても遠慮をしてくれない。

魔法使いが着ているローブには、木製の鈴を付けることにした。
歩くたびに、カランカランと大きな音がなる。

半日ほど歩いたところで、それが少し遠くから聞こえるようになった。
立ち止まり、追いつくのを待つ。


勇者「少し休もう」

魔法使い「……まだ歩けます」カラコロ

勇者「だめだ、もう日が高い。日が傾いたら、また歩こう」

魔法使い「……はい」





95:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/05(土) 21:51:21 ID:lv8KAiIc

勇者「魔法使いちゃん、こっちにおいで」


勇者は座り込み、右腕を上げてローブを広げた。
少し戸惑いつつ、魔法使いは身体を預ける。
日差しと風をさえぎることの出来る場所は、この中だけだ。

勇者「ほら。恥ずかしがらずに、もっと隣へ」

魔法使い「……はい」





96:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/05(土) 22:12:54 ID:lv8KAiIc

僧侶「勇者さま。一度、魔法使いちゃんに水の魔法を見せてもらいませんか?」

勇者「そうだね。見せてもらっておこう」

僧侶「じゃあ、この水筒を満タンに……」サッ

勇者「まさか、もう全部飲んだのか?」

僧侶「のどが渇いたので、つい。でも、空っぽはこれだけです」アセアセ

勇者「はぁ、僧侶さんを注意深く見てないといけなかったのか」

魔法使い「あの、やってみます。水精霊召喚!!」


空気中の水分が凝縮し、水筒へと向かう。
勇者はそれを持ち上げて振ってみた。


勇者「う〜ん、グラス半分くらいかな」チャプチャプ

魔法使い「すみません。砂漠がこんなにも水精霊の力が弱まるなんて、思いもよらなかったです……」

僧侶「そんなこと無いよ。この半分が貴重なんだから」ゴクゴク

勇者「僧侶さん、また飲みすぎだって……」

僧侶「魔法使いちゃん、ありがとう」





97:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/05(土) 23:28:45 ID:lv8KAiIc


〜ガマラ砂漠、夜〜
僧侶「勇者さま、まだ起きていたのですか? 魔物の気配もありませんし、お身体に障りますよ」

勇者「そうだね。それにしても、魔法使いちゃんはすごいよ。この乾燥した砂漠で水を出せるとは、正直思ってなかった」

僧侶「並みの魔道師なら、水一滴すら出せないと聞きます。旅の途中で魔道師の街に立ち寄ると、きっと喜んでくれると思いますよ」

勇者「魔道師の街か。通り道だな」

僧侶「あの、勇者さま。もし魔法使いちゃんが居なければ、私のことを……」

勇者「んっ?」

僧侶「いえ、何でもありません。早く寝ましょう」





98:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/05(土) 23:32:35 ID:lv8KAiIc


〜砂漠の街〜
魔法使い「勇者さまぁ、街に着きましたよ!」カランカラン

勇者「これで、砂漠は折り返し地点だな」ふぅ

魔法使い「ねえねえ、僧侶さん。ここの名物はタジン鍋ですよね」

僧侶「うんうん。オオトカゲの肉とたっぷりの野菜! ヘルシーで美味しいらしいよ」

魔法使い「オオトカゲの肉ってはじめてです」

僧侶「私もだよ。楽しみだね〜♪」

勇者「鍋は逃げないので、先に宿を探しましょう」





99:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/05(土) 23:41:28 ID:lv8KAiIc


〜宿〜
勇者「ローブを着ていても、体中が砂まみれだな」

魔法使い「あの、ここにはシャワーなどはないのでしょうか?」

勇者「近くにオアシスがあるから水は豊富だけど、それでも貴重な資源なんだ」

勇者「今から水を買ってくるから、濡れタオルで身体を拭くといいよ」

魔法使い「あっ、水が豊富にある場所なら、買わなくても精霊魔法を使えますよ」

僧侶「街でそのようなことをするのは、ずるいんじゃないかな。皆さん、井戸で水を買っているのですよ」

魔法使い「そ、そうですね……」

勇者「では、行ってきます」

魔法使い「待ってください、私も一緒に行きます」カランカラン

僧侶「ふふっ、何だか仲のいい兄妹みたいですね」





100:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/05(土) 23:55:57 ID:lv8KAiIc


〜宿、翌朝〜

トントン

宿の主人「おはようございます、勇者どの」

勇者「おはようございます。朝食ですか?」

宿の主人「いえ、勇者どのに客人が訪ねて来られています」

勇者「客人? 今、開けますね」ガチャ

??「おはようございます。あなたがエルグの国の勇者ですかな?」

勇者「そうですが、どなたですか?」

富豪「おぉ、これは失礼。私はこの街一番の成金で、富豪という者です」





101:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/05(土) 23:58:07 ID:lv8KAiIc

勇者「は、はあ……。それで、この街一番の富豪さん? 一体どのようなご用件で……」

富豪「実は娘が病に臥しまして、勇者殿ならば治すことが出来るのでは思い訪ねたしだいです」

勇者「我々は医師ではありません。申し訳ありませんが、お引取りください」

富豪「パーティーに僧侶殿がいらっしゃるでしょう。この街の医師では治せんのです」

富豪「どうか、一度診ていただけないでしょうか。謝礼ならば、いくらでも払います。お願いします!」





102:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 00:02:45 ID:PiCE.oRw

僧侶「勇者さま、お話だけでも聞いてみませんか」

富豪「おぉ、僧侶殿ですね。なんと美しい」

僧侶「えへへ、美しいだなんて照れてしまいます//」

富豪「そちらのお嬢様もかわいいですな」

魔法使い「えっ、私? あわわ//」

僧侶「勇者さま、参りましょう!」

魔法使い「そうです! 病気の人を放っておくなんて出来ません」

勇者「はぁ……、分かりました」





103:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 10:10:41 ID:PiCE.oRw

10
〜富豪邸〜
僧侶「この娘さんですね」

富豪「どうか娘をお願いします」

娘「ゼイゼィ、僧侶……ゲホッゲホッ……さま」

僧侶「ひどい熱、それにこの炎症は――。治癒魔法!」

娘「ゼイゼイ……、スゥスゥ」

富豪「おおっ、娘の呼吸が楽になった。娘、娘ぇっ!」

僧侶「あ、あのっ」

富豪「僧侶殿、ありがとうございます!」

僧侶「いえ、この病。私では治すことが出来ません。炎症を治癒したので治ったように見えますが、また再発するでしょう」

富豪「やはり、駄目か……」





104:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 10:38:22 ID:PiCE.oRw

僧侶「私たち僧侶は、対象とする生物の組成や毒物の構造を理解することで、治癒魔法や解毒魔法を行使することが出来ます」

僧侶「特に治癒魔法は一般的に人を対象としているので、組成を理解していない生物や、生物ではないものには魔法の効力が届かないのです」

富豪「つまり、魔法が効かない何者かが娘に取り付いているせいで、完治させることが出来ないということですか?」

僧侶「おっしゃる通りです」

僧侶「抗菌作用の強い薬草があれば治せるのですが、私たちが今持っている薬草は抗菌作用が弱い種類なのです。その病にはあまり効きません」





105:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 10:42:59 ID:PiCE.oRw

執事「旦那さま。やはり泉に行って、薬草を摘んでくるしかないのではないでしょうか」

執事「どなたに診せても、薬草と答えるばかりです」

富豪「しかし、あそこは魔物が出るようになった。今は誰も近づけんぞ」

執事「ですがこの方々は、勇者殿一行ではありませんか」

富豪「おお、そうだったな。勇者殿、ぜひ薬草を摘んできてはくれまいか」

勇者「そうですね、依頼ならば受けましょう」





106:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 11:14:31 ID:PiCE.oRw

11
〜オアシス〜
僧侶「この辺りは野菜畑になっているみたいですね」

魔法使い「ここで街に必要な薬草を育てれば良いのに……」

勇者「畑で作物以外のものを育てると、自給率が下がるだろ。薬草は自生しているものだし、薬師相手でない限り栽培する農夫は少ないよ」

魔法使い「そうなんですね」

勇者「畑を抜けると、富豪さんが言っていたポイントだ。気を引き締めよう」

僧侶・魔法使い「はいっ」





107:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 11:18:55 ID:PiCE.oRw

シュシュシュシュッ!

畑を抜けると、砂地から何かが飛んできた。
勇者は前に出て、それを剣で叩き落とす。

勇者「骨?」

僧侶「あ、ああ……。こんなの不合理です」





108:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 11:28:47 ID:PiCE.oRw

前方の砂地から、白骨化した人間の骸骨がわらわらと湧き出てきた。
骸骨がおのおの剣やヤリなど、武器を手にして隊列を組む。


魔法使い「あの人たち、死んでるんですか。それとも、生きているのですか……」


一体の骸骨が駆け出し、ヤリを突き出した。


勇者「くそっ」


勇者はヤリの剣先を払い上げ、同時に切りかかる。
脊椎が吹き飛び、骸骨は崩れ落ちた。

それを合図に、ヤリを持った骸骨たちが構え、勇者へと一斉に駆け出してきた。
剣では、とても捌ききれる数ではない。





109:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 11:44:47 ID:PiCE.oRw

僧侶「!! 防御魔法」


一時的に強化された鎧が、受け損じたヤリを受け止めた。


勇者「疾風斬り!!」


カラカラと音を立て、骸骨たちが崩れ落ちる。
その骨の山を飛び越え、剣を構えた骸骨が切りかかってきた。

勇者はそれを剣で受ける。
つばぜり合いを繰り広げていると、足元で骸骨たちが再び立ち上がらんとしていた。





110:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 12:01:47 ID:PiCE.oRw

僧侶「魔法使いちゃん、戦うわよ!」

魔法使い「は、はいっ!」

僧侶「行きます……、破壊魔法!!」


骸骨たちがさらさらと粉になり、風に舞う。
人体の組成を理解している僧侶は、回復魔法を応用することで、人体を破壊することが出来るのだ。

わらわらと沸いていた骸骨は、すべて砂中に消えてしまった。


勇者「うわぁ。ある意味、魔道師で一番怖いのは僧侶じゃないのか?」





111:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 12:18:11 ID:PiCE.oRw

ドオォォーーーン!!

突如、砂塵が巻き上がった。
まるで竜のごとく意思を持って、僧侶に襲い掛かる。


僧侶「ええっ……、防御魔法!」アセアセ

魔法使い「爆発魔法!!」


砂の竜が爆発し、一帯にはじけ飛んだ。


魔法使い「僧侶さん、大丈夫ですか?」

僧侶「……ありがとう」


舞い散った砂が、ザザァと地面に落ちる。
すると今度は、三つ首の砂竜が現れた。

その砂竜は、骸骨が武器にしていた剣やヤリを取り込み、全身に携えている。
もし爆発魔法を使うと、全身の刃物が飛び交うことになるだろう。


勇者「こんな魔物、今まで見たことないぞ!」





112:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 12:42:55 ID:PiCE.oRw

僧侶「魔法使いちゃん、倒せないなら動きを止めることは出来ない?」

魔法使い「か、考えてみます」


三つ首の竜が牙をむき、鋼の刃を向けて襲い掛かる。


勇者「させるかっ! 大地斬」


勇者が斬りかかろうと構えた瞬間、一本のヤリを飛ばしてきた。
かろうじて身をかわし、斬撃を加える。
しかし砂の体は、ヤリを回収して復元してしまう。


魔法使い「勇者さま、退いてください! 土精霊召喚! 石化しろっ!!」


その言葉に砂竜が土となり、石となる。
やがて石像のように固まり、動かなくなった。


魔法使い「や、やった……」

勇者「魔法使いちゃん、よくやった! 今のうちに薬草を摘みに行こう。ここの魔物は何かが異常だ」

僧侶「そうですね。先を急ぎましょう」





113:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 19:20:19 ID:PiCE.oRw

12
魔法使い「あの、僧侶さん。魔力を感じませんか?」

薬草を袋に詰めながら、魔法使いが口を開いた。

僧侶「そうね……」

勇者「行ってみよう。何か掴めるかもしれない」

魔法使い「多分、この辺りだと思うのだけど……。あ、ありました!」

僧侶「これはタングラムですね。あの不合理な魔物たちは、もしかしてこれが原因ではないでしょうか?」





114:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 19:37:56 ID:PiCE.oRw

勇者「えっ……、タングラムは子供のおもちゃだろ」

僧侶「はい、子供のおもちゃです。だけど、これには魔力が宿っていますよね」
僧侶「実はタングラムは、以前の15パズルと同じく、神の遺産なのです」

勇者「神の遺産だって?! じゃあ、これにはどんな意味が……」

僧侶「タングラムは大中小の三角形5片と、正方形が1片、平行四辺形が1片の計7片で構成されているパズルですよね」

僧侶「この7片には意味があって、木火土金水と太陽、月を表しているのです」

勇者「それって、もしかして占星術?」

僧侶「はい、そうです」





115:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 19:41:26 ID:PiCE.oRw

僧侶「占星術は人や国の運命、天変地異を予見するための魔術です。それを占うためには、人や世界を理解する必要があります」

僧侶「それは、占星術以外の魔術も同じです。だから様々なものを形作ることが出来るタングラムは、魔術の基本元素を学ぶおもちゃとして利用されることが多いのです」

勇者「なるほど……。で、そのタングラムが要求していたシルエットは?」

魔法使い「ハートのシルエットが添付されていました」

僧侶「つまり、魔術で新しい命を生み出そうということです。そんなことあり得ません!」

勇者「とりあえず、街に戻りませんか。あの魔物たちが、また襲ってくるかもしれない。そのパズルの謎を解くのは、宿に戻ってからにしよう」





116:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 19:51:46 ID:PiCE.oRw

13
〜富豪邸〜
富豪「おおっ、さすが勇者殿。大量の薬草をありがとうございます。手強い魔物が多数わいていたでしょう」

勇者「ええ。動きを封じておきましたが、安全になったとは言いがたいです。今後も危険が伴うかと思います」

富豪「わしの都にあのような魔物など、本当に口惜しいわい」

僧侶「それでは、この薬草を煎じて飲めば娘さんも三日ほどで完治することでしょう。薬があれば、この街の医師でも変わらず治療することが出来ると思います」

僧侶「治癒魔法で出来ることと出来ないことがあることを、めいめいご承知下さい」

娘「僧侶さま、勇者さま、本当にありがとうございました」

富豪「本当に娘を助けてくれてありがとうございました。これは謝礼です」

勇者「確かに受け取りました。娘さん、お大事になさってください」

娘「はいっ。私も、勇者さまのご武運を祈っております」





117:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 19:56:39 ID:PiCE.oRw

14
〜宿〜
勇者「魔法使いちゃん、ただいま〜」

僧侶「ただいま♪」

魔法使い「お帰りなさい」ニコ

勇者「どう? このシルエットは完成しそう?」

魔法使い「全然だめです……。どうしても、ピースが余ってしまいます」

勇者「タングラムパラドックスかな? ちょっと貸してみて」





118:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 20:12:55 ID:PiCE.oRw

魔法使い「一体、誰が何の目的で、このようなものを仕掛けたのでしょうか?」

勇者「魔王が暗躍を開始したのかもしれないな」

僧侶「そうですね。タングラムでハートが完成しないことこそ、あの魔物を操っていた力が不合理なものであることを示しているのではないでしょうか」

僧侶「魔術で命を作り出すことは、絶対に出来ないのです」

魔法使い「うわさでは、極南の地に魔王がいるんですよね……」

勇者「対外的には、そういうことになっている」

魔法使い「そのような者が仮にいたとして、なぜ砂漠の都に魔力を込めたタングラムを用意したのでしょうか」

勇者「どういうこと?」

魔法使い「15パズルが示していたドーナツ世界が目的ならば、砂漠に用事はないはずですよね」

僧侶「確かに……」





119:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 20:39:39 ID:PiCE.oRw

勇者「話は変わるけど、僧侶さん。魔術で命を作り出すことが出来ないなら、教会が蘇生魔法で死者を蘇らせることも出来ないはずだよね」

僧侶「それは違いますよ。蘇生魔法は新しい命を作る魔法ではなくて、生きようとする力を取り戻す魔法なんです」

勇者「生きようとする力を取り戻す?」

僧侶「はい。ですから、病気で亡くなった方や天寿を全うされた方、肉体の欠損が激しく死を受け入れてしまった方などは、教会でも蘇らせることは出来ません。それが運命だからです」

勇者「そうなんだ、それが蘇生魔法か……。僧侶さんは使えるの?」

僧侶「はい、もちろんです!!」

勇者「それは頼もしいね」

僧侶「でも実はですね、簡易な事例ならば魔法を使わなくても、心肺蘇生法という技術で誰でも蘇生術を行うことが出来るのです」

勇者「へぇ、魔法を使わずに蘇生か。興味深い話だね」

僧侶「勇者さまも、ぜひ教会の講習会に参加して、蘇生術を学んでみてください」





120:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 20:46:04 ID:PiCE.oRw

勇者「ところで、このシルエットはやっぱり完成しないね。どう考えても、ピースが1片余るんだよな……」

魔法使い「ですよねえ」

僧侶「いやいや。勇者さまは話してばかりで、ほとんど考えてなかったじゃないですか」

勇者「うっ……」

魔法使い「じゃあ、僧侶さんも挑戦してみてください。すごく難しいですから」

勇者「はい、やってみて」

僧侶「ん〜っ、確かに1片余りますね……」

勇者「だろ? これ、答えがないんじゃないか?」

僧侶「勇者さまぁ、ひらめきましたよ!」





121:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 20:59:15 ID:PiCE.oRw

僧侶「魔術で新しい命を作り出すことは出来ません。なぜなら、命を宿すことが出来るのは女性だけだからです」

僧侶「殿方と愛し合い、そして結ばれて、私たち女性は新しい命を授かります。だから……」


そう言いつつタングラムを組み替えて、平行四辺形のパーツを手に取った。


僧侶「これを矢に見立てれば、ほらっ♪ ハートに矢が刺さって、とても素敵ではないですかぁ//」

勇者「いやいや、素敵とか関係なくて、重ねたらタングラムにならないだろ」

僧侶「でも、シルエット内に収まってますよ」





122:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 21:10:54 ID:PiCE.oRw

そう言った次の瞬間、ハートが輝きだした。


魔法使い「あっ、魔力が解放されました!!」

勇者「ということは――」

僧侶「えへへ、これが正解ですっ!」

勇者「マジか!! あの魔物たちはもう出現しなくなったのかな。後で確認しておこう」


・・・
・・・・・・


僧侶(魔法使いちゃん。新しい命を宿すのは素敵なことだし、私たちも愛し合える殿方と出会って授かりたいものですね)

魔法使い「恋愛のタングラム……か。私は――」チラッ

勇者「魔法使いちゃん、どうしたの?」

魔法使い「い、いえ、何でもありません//」





123:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/06(日) 21:13:48 ID:PiCE.oRw

第3話 おわり

・タングラム





126:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/07(月) 21:39:29 ID:cF/CTLzM

第4話 魔法はいらない

〜港町〜
魔法使い「大河って、すごいですね。川の向こう岸が見えないです!!」

僧侶「あっ、あそこ見てみて。泳げるところがあるみたい」

魔法使い「本当だぁ。砂まみれだし、私も泳ぎたいです」

僧侶「勇者さま、みんなで泳ぎに行きませんか?」

勇者「いいねぇ。でも、二人は水着を持ってるの?」

僧侶「あっ……。出発したときは冬でしたし、水着を持ってないです」

魔法使い「私も持っていません」

勇者「まあ、そうだよな……」





127:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/07(月) 21:48:35 ID:cF/CTLzM

勇者「じゃあ、今日は準備をして、泳ぎに行くのは明日にしようか」

僧侶「それが良いですね。後で水着を買いに行ってきます」

魔法使い「僧侶さん、一緒に選びましょう」

僧侶「そうだね、一緒に行こっか。勇者さまも、水着を準備しておいてくださいね」

勇者「了解っ。じゃあ、サクッと宿を決めましょう」

僧侶「はい。ガイドブックによれば、あの宿は鯉料理が絶品だそうです」

魔法使い「草原に放牧しているヤギさんも名物ですよ」

勇者「ずっと干し肉ばかりだったからなぁ。今夜は魚を食べて、明日は肉を食べに行こう!」

僧侶「新鮮なコイ、楽しみです♪」





128:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/07(月) 22:47:34 ID:cF/CTLzM


〜宿・女湯〜
魔法使い「久しぶりのお風呂、気持ち良いな〜」

僧侶「水が貴重な土地があれば、砂漠に囲まれながらも水が豊富な土地もある。何だか、考えさせられますね」

魔法使い「はい。なぜ皆さんは、こちらに来ないのでしょうか?」

僧侶「魔法使いちゃんも私たちと出会わなければ、エルグの城や村から出ることはなかったでしょ。それと同じじゃないかな」

魔法使い「そっか、そうかもしれないですね」

僧侶「ところで魔法使いちゃんは、勇者さまのことをどう思ってるの?」

魔法使い「えっ……」ドキッ

僧侶「何だか、山すその都にいた頃と比べて変わったよね」





129:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/07(月) 22:56:56 ID:cF/CTLzM

魔法使い「えっと、その……。山すその都にいた時は、エッチなことばかりしているのを見て、嫌になっていました」

僧侶「そうだよね。悩んでいるのが、目に見えて分かったくらいだしね」

魔法使い「それで帰りたいって思っていたんだけど、僧侶さんのおかげで許せるようになったから」

魔法使い「砂漠や草原でたくさん気遣ってくれたし、それをすごく感謝していて、今はまた勇者さまに憧れています」

僧侶「そっか。憧れの人なんだ……」





130:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/07(月) 23:20:04 ID:cF/CTLzM

魔法使い「僧侶さんは、勇者さまのことをどう思っているんですか?」

僧侶「わ、私っ?! 私が一緒に居るのは、仕事仲間だからだよ」

魔法使い「私にだけ言わせて、僧侶さんは誤魔化すんですか?」

僧侶「う〜ん、聞きたい?」

魔法使い「はいっ//」

僧侶「何て言えば良いかな……。勇者さまって食べることが好きでしょ。そういうところが、一緒にいて気が合う人だなと思ってる」

魔法使い「一緒にいて気が合う人か……」

僧侶「それくらいで許してくれるかな?」

魔法使い「今日のところは、これで許してあげます」

僧侶「じゃあ、そろそろ上がって、水着を買いに行きましょうか」

魔法使い「はいっ。可愛い水着が欲しいです♪」





131:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/07(月) 23:25:18 ID:cF/CTLzM


〜街〜
魔法使い「港町って、お店がたくさんありますね〜」キョロキョロ

僧侶「貿易の拠点になっている街ですからね」

魔法使い「僧侶さん、これを見てください。ビンの中に船が入ってますよ」

僧侶「ほんとだ。えっ、どうやって入れたんだろ?」

魔法使い「転移魔法ですかねぇ。でもそれ、かなりの高等魔術ですよ」

古物商「お嬢ちゃん方。これはボトルシップと言って、小さい部品を一つ一つビンの中で組み立てて作るんだよ」

魔法使い「えっ! すごいです!! 魔法かと思いました」

古物商「人間は魔法に頼らなくても、工夫をすれば色んなことが出来るものさ。どうだい、ひとつ記念に買っていくかい?」

僧侶「私たちは旅の途中なので、壊れやすそうなものは買えなくて……」

古物商「それは残念だね。また帰りに寄っておくれ」

僧侶・魔法使い「はい」

魔法使い「旅に出ると、発見もたくさんありますね」

僧侶「ふふっ、そうだね。あっ、水着屋さんですよ」





132:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/07(月) 23:39:17 ID:cF/CTLzM

・・・
・・・・・・


魔法使い「そ、僧侶さん。ここのお店の水着、過激すぎませんか//」

僧侶「あわわ、入るお店を間違えたかも//」

婦人「いらっしゃいませ。ここは素敵な水着が揃ってますよ」

僧侶「あ、あの……。私が知っている水着は、ワンピースタイプの繋がった水着なんですが……。これって、どう見ても下着ですよね」アセアセ

婦人「あら、旅のお方ですか?」

僧侶「はい」

婦人「この地域は、砂漠に囲まれていますよね。だから、身体に付いた砂を洗い流すために、生地がどんどん小さくなっていったのです」

僧侶「そ、そうなんですね……」

婦人「はい。この街では、ビキニタイプが普通なんですよ」

僧侶「……どうする? やめる?」

魔法使い「わ、私は挑戦します! ぶ、文化の違いを受け入れます」

僧侶「えぇぇっ!」





133:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/07(月) 23:49:53 ID:cF/CTLzM

婦人「お年頃のお嬢様には、こちらのかわいい水着がおすすめです」

婦人「ビキニタイプや、パレオの付いた水着など、オーソドックスなものが人気ですよ」

魔法使い「// 下着みたいだけど、どれもデザインがかわいいです」

僧侶「あ、あの、私は……」

婦人「そうですねぇ。適齢期の女性は、どなたもこちらの水着を着用します。当店はラインナップが充実していますよ」

婦人「V字水着やモノキニ、紐ビキニはいかがでしょうか。大変似合うと思います!」

僧侶「これなんて、は、裸じゃないですかぁ。無理です、むりっ!」

婦人「では、こちらの透ける水着はいかがでしょうか。生地が多いものもありますよ」

僧侶「あ、ほんとだ。ワンピースもありますね。それなら着られそうです♪」

魔法使い「僧侶さん、それもあぶない水着です!!」





134:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/07(月) 23:54:18 ID:cF/CTLzM


〜宿〜
魔法使い「はぁ、お買い物楽しかったです」

僧侶「ねえ、まさか試着させてくれるとは思わなかったよぉ〜//」

魔法使い「僧侶さん、途中から変なスイッチが入ってましたよ」

僧侶「ふふっ♪ 勇者さまぁ、これを見てください」

勇者「えっ、ちょっ、何ですかそれ!!」

僧侶「ボトルシップというものです」

魔法使い「なっ、いつの間に買ったの?!」

僧侶「えへへ、帰りにふらっと」

魔法使い(あー、旅の帰りじゃなくて、買い物の帰りに買っちゃったんだ)





135:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/08(火) 00:12:30 ID:gqBAfkEc

勇者「僧侶さん。この船、ビンの口よりも大きいですよ。どうやって入れたんだろ」

僧侶「ビンの中で、一つ一つ組み立てたそうですよ。他にも、トランプが箱のまま入っているものがあったり、とても不思議でした」

勇者「へえ、面白いなぁ」

僧侶「ですよね! ここの民芸品で、不可能物体や不可能ボトルと呼ばれるそうです」

勇者「ボトルシップか……。この民芸品は、魔法がなくても工夫をすれば成し遂げられる。そんな事を教えてくれるのですか?」

僧侶「店の主人が、そのようなことをおっしゃっていました。ビンの中に船を入れようだなんて、土地柄が現れていて素晴らしいです」





136:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/08(火) 00:17:45 ID:gqBAfkEc

魔法使い「ところで僧侶さん、壊れるかもしれないから買わないって言ってませんでしたか?」


僧侶「ふふんっ、防御魔法を常時展開しておけば、船が壊れないことに気付いたのです!」ドヤッ

魔法使い「あぁ、なるほど……」

勇者「で、それと水着を経費で落とすのですか?」

僧侶「水着は装備品です! ボトルシップは、私の趣味だから必要なものです!」

勇者「まぁ、いつものことか」

勇者「ところで次の出立ですが、3日後に海を渡る客船が出るようです。それの予約を取ってきました」

僧侶「3日後に船ですね、分かりました。それでは、鯉料理を食べに行きましょう♪」





137:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/08(火) 00:26:38 ID:gqBAfkEc


〜夕食〜
勇者「鯉の洗い、から揚げ、鯉こく。どれも美味しそうだなあ」

魔法使い「!! 僧侶さん。この大皿のお刺身、鯉の口がパクパクしてますよ」

僧侶「それは活造りだって」

魔法使い「活造りですか……。生きたまま食べるなんて残酷です」

僧侶「私たちが殺めてから食べる料理でしょうか?」

勇者「生きたまま食べるみたいだよ」

僧侶「生きたまま?!」

魔法使い「あ、暴れてますよ。それに、私を見ているみたいです」ビクビク

僧侶「本当に生きたまま食べるのですか」

勇者「食べないなら、僕が全部食べてしまいます」

僧侶「えっ、それはずるいです。鯉さん、命をいただきます」

魔法使い「い、いただきます……」





138:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/08(火) 00:30:37 ID:gqBAfkEc

・・・
・・・・・・


魔法使い「はぁ、一時はどうなるかと思ったけど、美味しかったです」

僧侶「この地域の方は、毎日あのようなものを食べているのでしょうか?」

勇者「活造りは腕のいい職人しか作れない、最高のおもてなし料理みたいだね」

僧侶「えっ? じゃあ、鯉専用の治癒魔法を施して調理しているわけではないのですか?」

勇者「治癒魔法って、それこそ残酷じゃないか」

僧侶「ですよね。食文化にこれほどの違いがあるとは、とても驚きました」

魔法使い「明日はヤギさん、楽しみです♪」

勇者「魔法使いちゃん、ヤギは暴れて蹴ってくるらしいから気をつけるんだよ」

魔法使い「えっ!?」

勇者「ははっ、冗談だよ。今夜は早く寝て、明日に備えましょう!」





139:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/08(火) 21:16:30 ID:gqBAfkEc


〜翌日・河原(砂浜)〜
魔法使い「勇者さまぁ〜」トテトテ

勇者「えっ、魔法使いちゃん?! それって……」

魔法使い「ビキニという水着です。どうですか?」クルッ

勇者「か、過激すぎじゃないかな……」

魔法使い「この街では、これでも控えめだそうです//」

勇者「そ、そうなんだ」

僧侶「あ、あのぉ」

勇者「えっ、僧侶さん! なにっ、その紐みたいな水着は!」

僧侶「お店の方が、あぶない水着ばかりすすめてくださって……。試着しているうちに、いつの間にか買ってました」

僧侶「あの、いかがですか//」ポヨンッ

勇者「うっ……//」





140:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/08(火) 21:25:42 ID:gqBAfkEc

僧侶「えっ、どうして黙るんですか」

勇者「ちょっと一人にさせてください……」

僧侶「あわわ// 勇者さまの妄想で、私たちが脱がされてしまいます」

魔法使い「ええっ、私も脱がされるんですか」

僧侶「今頃は、ビキニの肩紐をほどいているところですよ」

魔法使い「きゃ〜っ」ギュッ

僧侶「魔法使いちゃん、殿方がものすごく興奮しています。川に逃げましょう!!」

魔法使い「あはは、勇者さまのえっち〜」タッタッタ

勇者(まさか、こんなに際どい水着姿を拝めるとは!)





141:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/08(火) 21:57:10 ID:gqBAfkEc


僧侶・魔法使い「きゃっきゃっ」ジャブジャブ

勇者「うわぁ、みんなあぶない水着で泳いでるし……。あの美女、上を着てないっ。何だ、この楽園は!!」チラチラ

僧侶「勇者さま、どこを見てるんですか。全部、聞こえてますよ!」イラッ

勇者「うわっぷ、水を掛けるなって」

僧侶「えいえいっ」ジャブジャブ

勇者「おおっ! そのアングル、エロすぎてヤバイ//」

魔法使い「むかっ。水精霊召喚、いっけ〜!」

勇者「いや、それはちょっと待て!」


ゴオォォォ・・・
ザバァァンッッ!!


勇者「うごぉぉっ……」げほっげほっ

僧侶・魔法使い「……」





142:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/08(火) 22:06:44 ID:gqBAfkEc

勇者「おいっ、お前ら。覚悟は出来てるんだろうなあ」

魔法使い「はっ、逃げましょう!」ダッシュ


僧侶「うふふ、捕まえてごら〜ん♪」
魔法使い「捕まえてごらん〜」キャッキャッ


勇者「待て〜っ!」


僧侶「うふふ」
魔法使い「あははは」タッタッ


勇者「ほらっ、僧侶さん捕まえた。次は魔法使いちゃん」ぎゅっ

僧侶「いやぁん……捕まりました」

勇者「あっ……//」





143:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/08(火) 22:20:02 ID:gqBAfkEc

魔法使い「あわわ// 僧侶さん、水着がずれてます!」


ぽろん♪


僧侶「きゃああぁぁぁっっ」アセアセ

魔法使い「目隠し、目隠し!!」ささっ

僧侶「勇者さま、見ました?」

勇者「いえっ、何も見ていません」フルフル

僧侶「お身体に変化があるようですが……、勇者さま、見ましたか?」

勇者「見ました」

僧侶「ま、まあ、今回は許してあげます。ここでは皆さん、それが普通のようですし……」プイッ

勇者「ふうっ、助かった。あの、ところで魔法使いちゃん。背中に柔らかいものが当たってますが……」

魔法使い「ええっ?! す、すみません//」





144:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/08(火) 23:06:59 ID:gqBAfkEc


魔法使い「僧侶さん、その水着で走るのは止めたほうがいいですね」

僧侶「ふふっ、魔法使いちゃんは子供だね//」

魔法使い「えっ?」

僧侶「この水着は、殿方を興奮させるための水着ですよ」

魔法使い「……!!」

僧侶「勇者さまぁ、遊び疲れてお腹が減ってきたし、あの『川の家』というお店でお昼を食べませんか」

勇者「そうだね。あそこは、焼きそばというものが食べられるんだって」

僧侶「焼きそばですか? 楽しみです♪」トテトテ





145:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/08(火) 23:12:35 ID:gqBAfkEc

魔法使い「あの……、勇者さま//」

勇者「ん?」

魔法使い「砂漠ではありがとうございました。無事に渡ることが出来て、とても感謝しています」

勇者「僕が魔法使いちゃんを守るのは、当たり前のことだろ」ニコッ

魔法使い「ありがとうございます。それでお礼というか、勇者さまを癒してあげたいなと思って、頑張ってビキニを着てみました//」

勇者「魔法使いちゃん、ありがとう。そのビキニ姿、すごく可愛いよ。一緒に旅をしていて、魔法使いちゃんが笑顔でいてくれることが僕はうれしいな」

魔法使い「えへへっ」ギュッ





146:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/08(火) 23:19:58 ID:gqBAfkEc

勇者「ほら、恥ずかしいから、そんなにくっつかない//」

魔法使い「でも、砂漠ではもっと隣に来るように、いつもおっしゃっていましたよ」ムニュッ

勇者「いやいや、砂漠と砂浜は違うから」

魔法使い「勇者さま……」

勇者「ん?」

魔法使い「私のこと、これからもお願いします。僧侶さ〜ん」タッタッタ

僧侶「あれ、もういいの?」

魔法使い「か、感謝の気持ちを伝えていただけですから//」

僧侶「そっか。じゃあ、焼きそばとやらを食べましょう!」

魔法使い「はい」





147:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/09(水) 00:01:48 ID:3SLPXBo.


魔法使い「あっ、この焼きそば、キャベツが入ってますよ」

僧侶「魔法使いちゃん、苦手だったっけ?」

魔法使い「いえ……。今夜はヤギさん料理だし、ふと川渡り問題を思い出しました」

勇者「川渡り問題?」

魔法使い「はい。狼とヤギ、キャベツを川の向こう岸に運ぶ問題です」

僧侶「ロケーションにぴったりだね。続き続き♪」ニコッ

魔法使い「川を渡る船を漕げるのは、農夫だけです。だけどその船はとても小さくて、一種類ずつしか向こう岸に運ぶことが出来ません」

魔法使い「さて、農夫がいなければ、狼はヤギを襲ってしまい、ヤギはキャベツを食べてしまいます。どうすれば、すべて向こう岸に運ぶことが出来るでしょうか?」

勇者「狼は檻に入れておくべきだし、キャベツも箱に入れておけば食べられないだろ」

魔法使い「それを言ったら、お仕舞いじゃないですか。魔物の事件にはパズルが関わっていたし、細かいことを気にせず考えてください」





148:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/09(水) 00:13:37 ID:3SLPXBo.

勇者「とりあえず、最初はヤギを連れて行くだろ。そして戻ってきて、キャベツを運ぶ」

勇者「そのまま戻るとキャベツを食べられるから、ヤギを連れて戻る。次は狼を連れて行って、最後にヤギを連れて行けば正解かな」

魔法使い「ピンポーン♪ それを期待してました。最短手順は7手です」

勇者「それくらいなら簡単だな」ドヤッ

僧侶「じゃあ、次は私から出題するね。浜辺にちなんで、カァカァと賑やかなからす算もいいけど、リンド・パピルスのパズルなんてどうかなぁ」

魔法使い「おおっ、由緒正しいパズルじゃないですか!」





149:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/09(水) 00:20:09 ID:3SLPXBo.

勇者「どんなパズルなんですか?」

僧侶「最古の数学パズルと呼ばれていて、算術の面白さを教えてくれるパズルです」

勇者「へぇ、算術の面白さか」


僧侶「それでは問題です。長いので、よく聞いてくださいね」

僧侶「この街には水着屋さんが7店舗あって、それぞれ7種類のあぶない水着を取り扱っています。各種類のあぶない水着は、それぞれ7人の美女に販売されました」

僧侶「その美女たちは家に衣装ケースを7箱ずつ持っていて、その衣装ケースにはそれぞれ7枚ずつエッチなランジェリーが入っています」

僧侶「さて、これらの数を合計するといくつになるでしょうか?」





150:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/09(水) 00:23:42 ID:3SLPXBo.

魔法使い「ええ〜っ、どうしてそんなアレンジをするんですか?!」

僧侶「勇者さまのいやらしい妄想が捗るかなって思って//」

魔法使い(うわぁ、やっぱり昨日みたいに舞い上がってるんだ……)

勇者「単純に35じゃないんだよね?」

僧侶「それだと数ではなくて、数字を足したことになります」



勇者「あぁ、そっか」





151:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/09(水) 00:25:17 ID:3SLPXBo.

勇者「ところで、僧侶さんが着ているあぶない水着は、他にはどんなバリエーションがあったの?」

僧侶「色んな水着がありましたよ。その中でもこの水着が特に巧妙で、勇者さまがとても喜ぶと思いました//」

勇者「水着からあふれる膨らみと曲線が、かなりヤバイ感じ。そのおっぱいの突起も気になるんだけどなあ//」

魔法使い「勇者さまっ、胸ばっかり見てないで考えてください!!」ムカッ





152:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/09(水) 20:05:12 ID:3SLPXBo.

勇者「この問題、紙とペンがないと計算できないからパス」

僧侶「答えてくれたら、もう少しサービスしますよ//」

勇者「今日の僧侶さん、何だか乗り乗りですね!」


魔法使い「7店舗のお店がそれぞれ7種類の水着を取り扱っているから、水着は49種類あることになります。その水着はそれぞれ7人の女性に販売されたから、購入した女性は343人です」

魔法使い「そのように考えて足し算すると、合計19607になります」


勇者「あっ、考える気になったのに」

魔法使い「次っ! 次に行きましょう!!」プイッ





153:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/09(水) 20:12:48 ID:3SLPXBo.

10
「きゃぁぁっ……」
ガヤガヤ

勇者「なんだか、外が騒がしいな」チラッ


「しびれくらげだ! 人が溺れているらしいぞ!!」

「みんな浜に上がれっ!」


僧侶「勇者さま。私、救助を手伝ってきます!」

魔法使い「あっ、待ってください!」


・・・
・・・・・・


女「遊泳範囲にくらげが来るなんて」

男「魚を追いかけて来て、迷っただけだろ。無事に助かるといいんだけど……」


僧侶「魔法使いちゃん、あそこみたいですね」

魔法使い「私、行ってきます!」





154:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/09(水) 21:39:07 ID:3SLPXBo.

僧侶「行ってくるって、勝手なことをすると逆に……」

魔法使い「水精霊さん、風精霊さん、力を貸してください!!」ペチョペチョ


水の上を走り、溺れている女性の所まで走る。


魔法使い「もう少し頑張ってください!」


声を掛けると、女性が必死にこちらを向いた。
しかしたどり着く前に、女性は力尽きて沈んでしまった。


魔法使い「そんな……」


周辺には、しびれくらげの脚が伸びている。
水上に攻撃してくることはないが、迂闊に水中に手を入れることは出来ない。





155:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/09(水) 21:55:06 ID:3SLPXBo.

魔法使い「しびれくらげを倒さないと! 爆発まほ――」


爆発魔法を行使しようとしたが、慌てて詠唱を中断した。

こんなところで爆発を起こせば、女性を巻き込む恐れがあるだけではなく、巨大な波が砂浜を襲うことになる。
しびれくらげを倒すことが出来ても、さらなる惨事を招くだけだ。

だからといって、別の攻撃手段を考えてみても、妙案は思い浮かばない。

水精霊の力を借りて攻撃すると、水流が変化して女性が流されてしまう。
風の魔法は水面で砕けてしまうし、火精霊では女性も茹で上がってしまう。


魔法使い「どうしよう、しびれくらげを倒すことができない……」





156:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/09(水) 22:03:47 ID:3SLPXBo.

迷っていると、ライフセイバーが泳いでくるのが見えた。
それを見て、考え方が違うことに気が付いた。

優先することは、しびれくらげを倒すことではなくて、溺れた人を助けることだ。


魔法使い「水精霊さん、お願いします」


水中から川面へと、水泡が湧き起こる。
そのあぶくに乗って、女性が浮かび上がってきた。
ぐったりとしていて、ぴくりとも動かない。

やがてライフセイバーが到着し、女性を抱えると砂浜から浮き輪が投げ込まれた。





157:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/09(水) 22:25:42 ID:3SLPXBo.

セイバー「ぜぇぜぇ……、意識がないようだ、頼む」


救助された女性は意識がなく、砂浜に仰向けに寝かされた。人々が集まり、不安そうに見つめている。


セイバー2「呼吸なし、脈なし。心肺停止を確認」

魔法使い「えっ、そんな!」

僧侶「私、蘇生魔法を……」


名乗りを上げようとしたところで、ライフセイバーは心肺蘇生法を始めた。
気道を確保し、呼気を送る。
続いて、胸部を何度も圧迫した。
しびれくらげの毒が気になるが、訓練を積んでいるようなので息を吹き返すだろう。


魔法使い「キスをして何を……、えっ、えっ?」

女性「げほっ、げほっ……」

セイバー2「蘇生確認。急いで医務室に運んで、毒消しの準備を!」

セイバー「了解!」





158:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/09(水) 22:57:06 ID:3SLPXBo.

僧侶「あのっ、私は国に仕える僧侶です。解毒魔法を使えます」

セイバー2「!! ぜひお願いします。くらげ毒です!」


僧侶「分かりました。解毒治癒魔法!」

女性「うっ、うぅん。あれ、ここは……」

僧侶「ここは砂浜です。溺れていた所を私たちに救助されました。どこか痛い所はありますか?」

女性「いえ、特には……」

僧侶「それは良かったです。それでは私は、これで失礼させていただきます」

セイバー「お二人とも、ご協力感謝します。ありがとうございました」ビシッ

女性「ありがとうございました」ペコリ

僧侶「魔法使いちゃん、戻りましょうか」

魔法使い「はい……」

警備員「警備の船より、水域の安全が確認されました。なお――」





159:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/10(木) 22:04:00 ID:ls3.YtYA

11
〜宿〜
魔法使い「今日は遊び疲れました〜」クテー

僧侶「勇者さま、私たちの水着姿はそそりましたか?」

勇者「それはもう、最高でした。僧侶さんはセクシーだし、魔法使いちゃんは可愛いし、今までで今日が一番幸せだな」

僧侶「ふふっ、楽しんでいただけたみたいで嬉しいです//」

勇者「明日も行きませんか?」

僧侶「明日は旅支度の買い物です」

勇者「だよね……」

魔法使い「もう泳げないなら、一度僧侶さんの水着を着てみたいです!」

僧侶「ええっ。魔法使いちゃんにはまだ早いって……」

魔法使い「でも一度、大人用の水着も着てみたいです//」

僧侶「仕方ないわねえ」

魔法使い「では、挑戦してみます♪」





160:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/10(木) 22:12:34 ID:ls3.YtYA

勇者「背伸びをしたい年頃かな。ところで僧侶さん、今夜は一緒にバーに行きませんか」

僧侶「期待しても、私はまだまだ駄目ですよ。それに避妊具は、砂漠の暑さで駄目になっています。ちゃんと捨ててくださいね」

勇者「……はい」ガックリ

僧侶「でも次にここに来るときは、シーズンオフですよね……。それならば、もう一度みんなで泳ぎに行くのも悪くないかもです」

勇者「そうだね、そうしよう」

僧侶「では明後日は船が出るまで時間があるし、そのときにまた水着姿を楽しんで下さい。それで良いですか?」

勇者「身体の方も許してくれると嬉しいんだけど……」

僧侶「それは妄想で我慢してくださいね//」

魔法使い「もう二人とも、大人の会話が更衣室の中まで聞こえてますよ」

勇者「あ……」

魔法使い「どうですか、勇者さまぁ。私にこの水着は似合いますか?」クルッ





161:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/10(木) 22:21:44 ID:ls3.YtYA

僧侶「わぁぁっ! 魔法使いちゃん、更衣室に戻る戻る!!」アセアセ

勇者「う〜ん。かわいく魅せようとしている時点で、魔法使いちゃんにはやっぱり少し早いかも。ビキニのほうが、すごく似合ってたよ」

魔法使い「そうですか……、やっぱり大人の水着は難しいです。来年こそは着こなして、魅了してみせます!」

僧侶「それじゃあ、魔法使いちゃん。服を着て一緒にお風呂に行きましょうか」チラッ

魔法使い「そうですね。ヤギさん料理も楽しみです」





162:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/10(木) 22:30:55 ID:ls3.YtYA

魔法使い「では着替えてきます」トテトテ

僧侶「勇者さま、魔法使いちゃんのこと、ありがとうございました。勇者さまを、また少し信じられるようになりました」

勇者「また少しって、今はどれだけ低いんだよ……」

僧侶「あの、これはお昼に話していたサービスです」ピトッ

勇者「……//」

僧侶「勇者さま、これからも私たちのことをお願いします」

勇者「ああ、分かった」


魔法使い「僧侶さん、着替え終わりました〜」トテトテ

僧侶「じゃあ、お風呂に行こっか。それでは勇者さま、私たちの水着姿を妄想してお楽しみください♪」

魔法使い「楽しんでください//」

勇者(もう押し倒してもいいよな、絶対――)





163:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/10(木) 22:41:41 ID:ls3.YtYA

12
〜宿・女湯〜
魔法使い「はぁ、いいお湯ですね。明後日も遊びに行けるのですか?」

僧侶「船が出るまでの間だけね」

魔法使い「楽しみです♪」

僧侶「それにしても、慣れない水着は疲れるね」

魔法使い「はい……。でもそれで勇者さまも楽しんでくれたなら、私もうれしいです」

僧侶「何だか、積極的に誘惑してたね」

魔法使い「だって、ずっと僧侶さんの胸ばっかり見てるんだもん。私も負けません!」

僧侶「ふふっ、ちょっと刺激が強すぎたかなぁ?」

魔法使い「きっと今頃は、私たちの妄想でなさってますよ//」

僧侶「妄想だけなら自由だし、それは私たちで勇者さまを癒すことが出来たってことだよね」

魔法使い「はい、そうですね//」





164:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/10(木) 23:00:08 ID:ls3.YtYA

魔法使い「ところで、僧侶さん」

僧侶「何?」

魔法使い「魔法は本当に必要なのでしょうか……」

僧侶「どうして?」

魔法使い「今日、川で女性が溺れたとき、私はしびれくらげを追い払えずに、女性を浮かせることしか出来ませんでした。そのせいで、女性は亡くなってしまいました」

魔法使い「でもその後で、ライフセイバーの方が蘇生魔法を使わずに、女性を生き返らせたんです。とても衝撃的でした」

僧侶「そのような蘇生術があることは、砂漠にいたときに話したでしょ」

魔法使い「はい……。でも魔法を使える私は、何も出来ませんでした」

僧侶「魔法使いちゃん、それは間違ってるよ」





165:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/10(木) 23:06:00 ID:ls3.YtYA

僧侶「ボトルシップを買ったお店の主人が、何と言っていたか覚えていますか?」

魔法使い「たしか、『人間は魔法に頼らなくても、工夫をすれば色んなことが出来る』と言ってました」

僧侶「そういうことです。ではなぜ、ライフセイバーさんは心肺蘇生術を学んでいると思いますか?」

魔法使い「魔法を使えないから……ですか」

僧侶「いいえ。魔法を使えないけど、誰かを救いたいからです。だから彼らは教会で学び、努力をしているのです」





166:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/10(木) 23:21:33 ID:ls3.YtYA

僧侶「それでは、魔法使いちゃんはどうして魔術の勉強を始めたの?」

魔法使い「それは……、村を困らせる魔物から、みんなを守りたかったからです」

僧侶「魔術ではなくて、剣術やナイフ術では駄目だったの?」

魔法使い「私は、体術が全般的に苦手です……」

僧侶「それが答えですよ。魔法は誰かを守るための手段のひとつなのです」

僧侶「もし、魔法使いちゃんが魔法を使えなかったら、どうやって村の人を守るつもりでしたか?」

魔法使い「そんなの困ります……」

僧侶「ねっ、魔法は必要なんです。魔法使いちゃんがいたから、溺れた女性は流されなかった。だからすぐに救助することが出来て、ライフセイバーさんの蘇生術で一命を取り留めた」

僧侶「お互いに出来ることをして女性が助かったんだから、それで良いじゃありませんか」

魔法使い「そう……ですね」

僧侶「私は魔法使いちゃんがとても良い判断をしていて、すごくうれしかったですよ」





167:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/10(木) 23:29:15 ID:ls3.YtYA

魔法使い「あの……、もし僧侶さんが魔法を使えなかったら、何をしていましたか?」

僧侶「う〜ん、薬師になっていたかも」

魔法使い「薬師かぁ……。私、回復魔法も勉強してみたいです」

僧侶「ふふっ、頑張ってね。そろそろ部屋に戻りましょうか」

魔法使い「はい。僧侶さん、いつもありがとう」





168:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/10(木) 23:31:38 ID:ls3.YtYA

第4話 おわり

・ボトルシップ
・不可能物体

・川渡り問題
・からす算
・リンド・パピルスのパズル





169:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/11(金) 00:16:04 ID:pRId0q7A

今回はここまでです。

不可能物体はパズルではないけど、
作り方を考えるという意味でパズルに含めました。


次の5話で折り返しの予定です。





170:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/11(金) 22:03:10 ID:pRId0q7A

第5話 忍び寄る闇

〜海・客船〜
魔法使い「水平線が丸いです! この世界って、本当に球体なんですね!」

勇者「そうみたいだね。僕もはじめて見たよ」

魔法使い「私たち、一ヶ月後には南の大地に着くわけですよね。極南の地が闇に覆われているといううわさは、本当でしょうか?」

勇者「それを確認して来るのが、僕と僧侶さんの仕事だよ」

魔法使い「私は思うのですが、極夜ではないでしょうか。自転軸が傾いているので、日が昇らない世界があるのは当然のことです」

勇者「それだと話が簡単で良いんだけどな。今は夏だから、日が沈まない白夜のはずだ。パズルの意味とか、行けばすべて分かることだよ」

魔法使い「そうですね」





171:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/11(金) 22:07:20 ID:pRId0q7A

勇者「ところで魔法使いちゃん、髪が伸びてきたんじゃない?」

魔法使い「はい。前髪を切りたくて、気になっているんです」

勇者「そうなんだ。もうすぐ補給で街に停泊するから、美容室に行くといいよ」

魔法使い「はいっ。あの、勇者さまはどんな髪型が好きですか//」

勇者「う〜ん、ツインテールという髪型が似合いそうだと思う」

魔法使い「ツインテールですか? 参考にします♪」





172:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/11(金) 22:36:17 ID:pRId0q7A

僧侶「二人とも見ないと思ったら、甲板にいたんだ。仲良くデートですか?」

魔法使い「えへへ//」

勇者「ちょっと風に当たろうと思ってね。それより、それはもしかして……」

僧侶「そうです、釣竿です!! 海に入ったんだし、美味しいお魚がいっぱい泳いでますよ!」フフッ

魔法使い「私もやりたいっ!」

僧侶「そう言うだろうと思って、もう一本持ってきたよ」

魔法使い「たくさん釣って、新鮮なお魚が楽しみです♪」

勇者「マイペースだな、この二人は――」





173:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/11(金) 22:41:47 ID:pRId0q7A

僧侶「ところで勇者さま、豪華客船と海に相応しいシチュエーションパズルに挑戦しませんか?」

勇者「シチュエーションパズル?」

僧侶「出題者が問題を出して、回答者が出題者に『はい』または『いいえ』で答えられる質問をしながら、答えを推理するパズルです」

勇者「なるほど、了解」

僧侶「では問題です。ある日、水兵の男がレストランに行き、ウミガメのスープを注文しました。しかし、船で食べたスープとは味が違います。怒った男はシェフを呼び、問いただしました」


『何だこれは!』
『ウミガメのスープでございます』


僧侶「その日の夜、ショックを受けた男は自殺してしまいました。なぜでしょうか?」

魔法使い「うわぁ……」ゲンナリ

僧侶「知ってても、答えを教えてはいけませんよ。では勇者さま、質問タイムです」





174:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/11(金) 22:46:48 ID:pRId0q7A

勇者「なぜショックを受けたんだろ?」
僧侶「それを推理してください」

勇者「船とレストランではシェフが違うのだから、味が違うのは当然だと思うけどなあ」

僧侶「はい、そうですね」

魔法使い「勇者さま。シェフによる味の違いは、美味しいか不味いかですよね。もっと別の理由があると思いませんか?」

勇者「あっ、なるほどね。男が船で食べたのは、ウミガメのスープですか?」

僧侶「いいえ」

勇者(ウミガメ以外の肉をウミガメとして偽る理由か。それが自殺の原因だ)





175:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/11(金) 22:56:33 ID:pRId0q7A

勇者「何の肉か知っていれば、男はスープを食べましたか?」

僧侶「いいえ。彼なら食べなかったと思います」

勇者「船で食料が不足しましたか?」

僧侶「はい」

勇者「その肉は人間ですか?」

僧侶「はい」

勇者「つまり自殺した理由は、船で人間の肉を食べていたことに気付いたからだ!」





176:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/11(金) 23:03:30 ID:pRId0q7A

僧侶「惜しいけど不正解です。その答えでは、人間の肉を食べることになった理由が分かりません」
僧侶「正解は『乗っていた船が遭難してしまい、そのときに食べていた肉が自分の仲間の肉だったことに気付いてしまい、男はショックで自殺した』でした」


勇者「ちょっと待て。これのどこが豪華客船と海に相応しいんだよ!」

僧侶「えへへ。そうならないように魚を釣りましょう♪」

魔法使い「あの、僧侶さんなら人の肉を食べますか?」

僧侶「どうするだろ……、消えた命を無価値なものにしないために、極限状態にあれば食べるかもしれないです。その極限状態を経験した人にしか分からないこともあるだろうし、難しい質問だよね」

魔法使い「そう……ですね」





177:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/12(土) 20:00:01 ID:/6tJWevM


〜翌日・海の都〜
魔法使い「やっと次の街に着きました」

勇者「船はまた明後日に出航だから、それまでこの街でゆっくりしよう」

僧侶「そうですね。海の幸を堪能するぞ〜っ!」

魔法使い「この都は『うに』を使った海鮮丼がおすすめだそうですよ」

勇者「じゃあ、お昼は海鮮を食べに行こうか」

僧侶「あっ、そうそう。この都には、ダブルスキルの支援施設があるみたいです」





178:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/12(土) 20:03:00 ID:/6tJWevM

勇者「やっぱり、この国は底が知れないな。本格的な訓練施設は城下にあるのだろうけど、その施設の一部が他国の人も集まる場所に建設されているってことは、総合的な軍事力が高いことを知らしめることにもなる」

僧侶「そうですよね。だけど今は各国が協力体制をしいているので、私たちも利用できるはずです。行きませんか?」

勇者「行きませんかって、一日二日で修得できる技術なんて何もないだろ」

僧侶「そうですが、ちょっと欲しいものがありまして……。それを買いたいのです」

勇者「そういうことなら、まあ寄ってみるか」





179:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/12(土) 20:11:53 ID:/6tJWevM


〜支援施設〜
僧侶「お〜、ありました! 私の暇つぶし」

勇者「受付を素通りしてどこに行くかと思えば、欲しいものってパズルかよ!!」

僧侶「これはポリオミノの一種で、ペントミノというものです。正方形5個の辺同士がくっつきあって出来る、全12種類の形をピースとした詰め込みパズルです。ここでは立方体のものも販売されていました〜」


魔法使い「これって、神の遺産ですよね」

勇者「へえ、そうなんだ」





180:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/12(土) 20:24:16 ID:/6tJWevM

僧侶「ペントミノは、この6×10の長方形の枠に隙間なく詰める方法が、約2000通りあります。それが人間の能力の可能性を表しているのです」

勇者「人間の可能性か……」

僧侶「はい。でも本来の意味は、神様は世界を破壊して創りかえることが出来るという、絶対的な存在を畏怖するためのパズルだったんだけどね」

勇者「いくら何でも、変わりすぎだろ」

僧侶「でもそういう訳で、支援施設には必ずペントミノが置いてあるんです」


魔法使い「勇者さま。ちなみに正方形6個を使ったヘクソミノは、世界の扉を表しているそうですよ」

勇者「世界の扉……。たかがパズルなのに、壮大だな」

僧侶「あ、そうだ。1日体験入学みたいなことってしてないかなあ。魔法使いちゃんにとって、プラスになると思うし」

魔法使い「私、やってみたいです」





181:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/12(土) 20:46:19 ID:/6tJWevM

??「エルグの城の衛兵……おっと、勇者じゃないか」

勇者「奇遇だな。こんな所で何をやってるんだ?」

僧侶「あの、勇者さま。この方はどなたですか?」

勇者「山すその都でお世話になっていた、バロックの城の兵士だよ。バトルマスターで、なかなかの腕前だよ」

僧侶「そうでしたか。こんにちは」

魔法使い「こんにちは」ペコ

バトマス「おうっ。こいつがうわさのロリっ子魔法少女か。なかなか可愛いじゃねえか」

魔法使い「……//」

バトマス「一丁前に照れやがって。ガハハ……」





182:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/12(土) 20:54:04 ID:/6tJWevM

勇者「ところで、ここで何やってんだよ。まさか、パズルでも買いに来たのか?」

バトマス「何、馬鹿なこと言ってんだ。船旅ばかりだと身体が鈍るだろ。だから、郊外の施設で身体を動かしてきたんだよ。お前も行っといたほうがいいぞ」

勇者「そんなものがあるのか。考えてみるよ」

魔女「バトマスさん、お待たせしました」

剣士「勇者、久しぶりだな」

賢者「あら、エルグの皆さん。お城でのお勤めが終わったのですね。ご苦労様です」

勇者「どうも、お疲れさまです……」





183:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/12(土) 21:01:00 ID:/6tJWevM

魔法使い「魔女さん、こんにちは」

魔女「こんにちは。ちゃんと精霊魔法の練習してる?」

魔法使い「はいっ!」

魔女「うんうん、偉いね」なでなで

賢者「あたしたちは明日出航なんです。よろしければ、今夜は親睦を兼ねて食事に行きませんか?」

僧侶「いいですね。それなら気になる料亭があるので、そこに行きませんか!」

勇者「そんなことまで調べてるんだ」

僧侶「えへへ、当たり前です」ブイ

バトマス「お前らは家族旅行かよ、いい気なもんだな。まあ店は任せたから、財布は俺たちに任せろ」

勇者「それは助かるよ」

バトマス「じゃあ日没にここで落ち合おうか。また後でな」

勇者「おうっ!」





184:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/12(土) 21:20:01 ID:/6tJWevM


受付「1日体験入学ですか? 僧侶コースでしたら、明後日に講座がございます。そちらに参加なさいますか?」

魔法使い「出航の日ですね。残念です……」ショボン

僧侶「残念だったね」

魔法使い「はい……」

勇者「あの、先ほど知人から郊外の施設を使えると聞いたのですが、それは大丈夫ですか?」

受付「それでしたら、明日の午後に予約が空いております。実戦形式で行われるアトラクションとなりますので、装備を整えてご利用ください。予約されますか?」

勇者「じゃあ、お願いします」

受付「それでは技量に応じた登録が必要ですので、利用される方は適正検査をお願いします」

勇者「二人はどうする?」

僧侶「魔法使いちゃんは実戦経験が少ないし、私たちも参加しておきます」

勇者「そっか。じゃあ、三人で利用しよう」

受付「では、そちらのフロアにお願いします」





185:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/12(土) 21:26:57 ID:/6tJWevM

・・・
・・・・・・


大神官「勇者殿、来られよ」

勇者「はい」

僧侶「占星術師の方みたいですね」

大神官「勇者殿は魔法剣士のようですな。しかも女神の加護を受けているようだ」

勇者「ま、まあ、女神から神託をもらっているので……」

大神官「あなたもまた、真の勇者になりうる可能性のある方でしょう。己が信じる道を進みなされ」

勇者「一応、真の勇者に『なりうる』のか」





186:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/12(土) 21:32:11 ID:/6tJWevM

大神官「続いて、僧侶殿」

僧侶「は〜い」

大神官「僧侶殿は、現在の魔法医学を極めておられるな。多くの才能に恵まれており素晴らしい」

僧侶「光栄です」

大神官「ただしその力ゆえ、闇に飲まれぬよう心されよ。さすれば、すべてを滅びへと導くこととなろう」

僧侶「!!」





187:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/12(土) 21:37:58 ID:/6tJWevM

大神官「では、魔法使い殿」

魔法使い「は、はいっ」

大神官「魔法使い殿は、精霊魔法を使いこなせているようですな。賢者となる資質も備えているようだ。可能性にあふれておる」

魔法使い「ありがとうございます。頑張ります!」

大神官「しかし、あなたには陰が見える。それを乗り越えてくれることを、わしは期待しておるぞ」ナデナデ

魔法使い「は、はい……」


受付「登録が終わりました。明日、係りの者が誘導しますので、そちらで説明を受けて下さい」





188:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/12(土) 21:41:17 ID:/6tJWevM


〜街中〜
勇者「アトラクションって、どんなことをするんだろ。楽しみだね……って、僧侶さん?」

僧侶「うぅっ、すべてを滅ぼすと言われてしまいました」

勇者「魔法で命を預かる職業だから、心せよってことだろ」

僧侶「はい、心します……」

魔法使い「私は期待していると言われましたよ。もっと魔術の勉強を頑張りたいです」

勇者「とりあえず、この後どうする? 約束の時間まで、まだあるみたいだけど」

僧侶「私はお店に予約してきます」

魔法使い「私は美容室に行ってきます」

勇者「そっか。じゃあ、一度解散しましょう」





189:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/12(土) 22:55:54 ID:/6tJWevM


〜待ち合わせ〜
魔法使い「勇者さま、遅いです!」

勇者「あっ、髪型変えたんだ。ツインテール似合ってるよ」

魔法使い「ありがとうございます。勇者さまが好きだと言うから、この髪型にしたんですよ//」

勇者「そうなんだ。可愛らしくなったね」

魔法使い「えへへ// うれしいです」

僧侶「褒めてもらえて良かったね」

魔法使い「はい//」

勇者「それでは行きましょうか」





192:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/13(日) 19:42:05 ID:HEkQYNWI


〜料亭〜
バトマス「――それで、魔物どもを叩き斬ってやったんだ。あの模擬戦は、本気でやらねえと逆に殺されるんじゃねえかってくらいハードだったぜ」

剣士「あんな設備で訓練しているのかと思うと、この国の衛兵は敵に回したくないと考えるのも頷けるというものだ」

勇者「そんなにきついのか。大丈夫かな……」

バトマス「最初のフロアで全滅するんじゃねえか?」

勇者「いやいや、それはないから」





193:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/13(日) 19:49:55 ID:HEkQYNWI

バトマス「でもお前んとこの魔法使いは、うちの魔道師連中が気に入ってたみたいだが、所詮はまだ子供だ。ろくに魔法を使いこなせないだろ」

勇者「それが中々の使い手で、最近は手のひらで転がされている感じだよ」

バトマス「情けねえな、女なんか力を誇示して、押さえつけちまえばいいんだよ」

勇者「ははっ……。うちでそんなことをしたら、僧侶さんに瞬殺されるぞ」

バトマス「はあ? 女僧侶なんて、精霊魔術の才能がなくて治癒しか出来ない、賢者になれなかった能無しだろうが」

勇者「僕も最初はそんなイメージがあったけど、彼女は規格外なんだ」

バトマス「ちっ、へたれだなぁ。ずっと見てたけど、やっぱりお前ら、三人兄妹の旅人にしか見えねえぞ。家族旅行をしてるんじゃねえぞ」





194:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/13(日) 20:09:31 ID:HEkQYNWI

勇者「まあ、いいじゃないか。うちの国のメイン部隊は、別に動いてるから」

剣士「聞いた話では、北に進めているらしいな」

勇者「ああ、西の村……、エルグの村で神の遺産が発見されたんだ。それでどうやら、世界をドーナツ状にすることが魔王の目的じゃないかと分かったんだ」

剣士「ドーナツ世界か。そういえば草原の洞窟で、賢者が神の遺産を見つけていたな」

勇者「一体、どんなパズルを見つけたんだ?」

剣士「いや、魔術には通じてないから、詳しくは聞いてない」

勇者「そうか……。まあ、そんな訳で極北を調査する事になったんだ。エルグの国は、極南より極北のほうが近いからな」

剣士「なるほど。それで、南は申し訳程度にやる気のないメンバーなのか」

勇者「ま、まあ、調査だけなら何とかなるだろ」





195:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/13(日) 20:29:05 ID:HEkQYNWI

・・・
・・・・・・


魔法使い「賢者さんは、どんな魔法が使えるんですか?」

賢者「あたしは治癒魔法がメインで、精霊魔法と電撃魔法を補助的に使える感じかな。魔女っ子ちゃんも賢者になりたいの?」

魔法使い「はい。魔女さんみたいな魔道師になって、僧侶さんみたいに治癒魔法を使えるようになりたいです」

魔女「うわぁ、それはもう賢者じゃなくて聖人クラスじゃない。それが実現できたら、歴史に名前を残せるかも」

魔法使い「そうなんですか?! 大変そうです」

賢者「そうだよ。両方メインで張るなら、頑張らないと中途半端な実力になっちゃうよ」

魔法使い「そっか、頑張らないといけないですね」





196:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/13(日) 21:06:29 ID:HEkQYNWI

僧侶「ところで、話が変わるんだけど……。そっちのメンバーでは、殿方の性欲をどのように処理しているのですか?」

魔女「な……、何言っちゃってんのよ//」

僧侶「だって、そちらは殿方が二人もいらっしゃいますし、生理現象ですから避けて通れないですよね」

魔女「そんなの知る訳ないでしょ//」

僧侶「あれ、どうしているのか知らないんですか?」

魔女「そっちはどうなのよ」アセアセ

僧侶「定期的に勇者さまと話し合って、一人でしやすいように工夫しています」

魔女「ええっ?!」

賢者「そちらは性に対して、親和的な姿勢なんですね」

僧侶「そうですか? 他のメンバーの方と話す機会は中々ないですし、普通はどうなのかなって思って」

魔女「そんなことを一緒に話し合うとか、絶対有り得ないわ」





197:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/13(日) 21:31:48 ID:HEkQYNWI

魔法使い「えっ……、じゃあ我慢させているんですか? そんなの可哀想です」

魔女「可哀想って言われても、あたしには関係ないし。自分たちで、勝手にしてるんじゃないの?」

魔法使い「一緒にいれば、関係ないなんてことはないと思います」

賢者「どうやら慰安所を利用して、そこで遊んでいるみたいですよ」

僧侶「慰安所……ですか?」

賢者「費用がかさむけど、仕方がないので容認してあげています」

魔女「うわっ、そんな所に行ってるんだ。あいつら最低ね」

賢者「あたしたちに迷惑を掛けるよりも、その方が良いじゃない」

魔女「はぁ……、それもそうね」

僧侶「それが普通なんですかねぇ」

賢者「それが普通かどうか決めるのは、僧侶ちゃんの気持ち次第じゃないの?」

僧侶「そうですね、参考になりました。ありがとうございます」





198:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/13(日) 21:51:48 ID:HEkQYNWI

魔法使い「あの、僧侶さん。慰安所って何ですか?」

僧侶「殿方が金銭を支払って、公娼登録された女性と交わることが出来る施設です」

魔法使い「あわわ// お金を払って女性と交わるんですか?!」

僧侶「そうですよ。そういう施設も、時には必要なんです」

魔法使い「そんな所、勇者さまには行かせたくありません!」

僧侶「そうだね。また海に行って、私たちの水着姿で満足してもらいましょうか」

魔法使い「は、はいっ!!」

賢者「あなたたち、海で遊ぶ余裕があるなら訓練しなさいよ」

魔女「そうやって遊んでばかりだから、バトマスさんに家族旅行って揶揄されるのよ」

僧侶「ははっ……」





199:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/13(日) 22:58:53 ID:HEkQYNWI

・・・
・・・・・・


バトマス「おい、女ども。酒を注ぎに来い!!」

賢者・魔女「はいはい……、噂をすれば何とやら」

バトマス「お前らもだ! 女なら男をもてなせ!」

僧侶「もう少し言い方があるんじゃないですか?」

バトマス「女の癖に、口答えするな!」

僧侶「むかっ……。睡眠魔法!」

バトマス「zzz」

僧侶「あらあら、飲み過ぎですよ。さっ、食べましょ」

賢者・魔女(僧侶ちゃん、よくやった!!)

剣士「確かに瞬殺されそうだな。今ならひと突きだ」ククッ

勇者「はあ……、仕方ない奴だな」





200:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/13(日) 23:22:57 ID:HEkQYNWI


〜翌日・訓練施設〜
勇者「どうやら、この塔みたいなものが施設みたいだね」

僧侶「私たちはどの建物でしょうか?」

勇者「あれじゃないかな」

案内人「お待ちしておりました。勇者殿」

勇者「はい」

案内人「当アトラクションは実戦形式となっておりまして、各フロアで戦いながら、最上階を目指すことが目的となります。最上階の出口には回復の魔法陣もあるので、ご自由にお使いください」

勇者「勝ち抜き方式ということですか?」

案内人「そうですね。各フロアの者が結託して、総力戦を仕掛けるようなことはありません」

勇者「なるほど」

案内人「それでは、皆様には身代わりの腕輪を支給します」





201:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/13(日) 23:34:40 ID:HEkQYNWI

僧侶「強力な蘇生魔法が込められた魔道具みたいですね」

案内人「さすが僧侶殿。この腕輪には転移魔法も込められていますので、必ず装備してください」

僧侶「最上階まで行けた場合、この魔道具はいただけるのですか?」

案内人「差し上げることは出来ません。その場合は返却していただきます」

僧侶「そうなんですね。良いものなのに残念です……」

案内人「もう宜しいですか? 装備しなかったことによる損害は、一切責任を持ちません。こちらが、その契約書になります」

勇者「どうする、魔法使いちゃん。この訓練、冗談抜きで危ないみたいだけど」

魔法使い「あ、あの、頑張ります」

勇者「そっか。じゃあ、頑張ろうか」

魔法使い「はいっ」





202:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/14(月) 17:36:38 ID:jnI.Pdpo

案内人「それでは扉を開けますので、中にどうぞ」


ギイィィッ
ガチャン


魔法使い「うわあ、広いですねぇ」トテトテ

僧侶「魔法使いちゃん、迂闊に歩き回ると危ないわよ」

魔法使い「あ、はいっ」

勇者「ちっ!!」


ザシュッ


案内人「ぐおぉおぉぉっ!」





203:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/14(月) 18:14:54 ID:jnI.Pdpo

唐突に、勇者さまが案内人を一閃した。
胸から血を噴き出し、悶絶しながら案内人が崩れ落ちる。


僧侶「ゆ、勇者さま、何を……」


そう口にした瞬間、案内人の身体に得体の知れない変化が起きていることに気が付いた。
生体エネルギーが血流に乗って収束し、生体エネルギーと魔力が激しく融和している。

これは自爆魔法だ!





204:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/14(月) 18:27:35 ID:jnI.Pdpo

即死魔法を使えば、収束している生体エネルギーを霧散できる。
しかし魂も消滅させてしまうので、即死魔法を行使すると案内人は蘇生できなくなる。

唯一存在する蘇生の方法は、賢者の石を代償にすることだ。
従って、案内人に即死魔法を行使することは出来ない。
以前、山賊たちに行使したときと違い、気絶させる程度では意味がないからだ。

エネルギーを爆発的に解放させずに無力化する方法は、一つしかない。
その魔法だけは、魔法使いちゃんに見せたくなかった……。





205:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/14(月) 18:45:28 ID:jnI.Pdpo

僧侶「破壊魔法!!」


その魔法が発動した瞬間、案内人の体組織が破壊された。
脳や内臓が潰され、次々と血管や神経が切断されていく。

ボキッ
グチャッ……

骨が砕ける音。
その砕けた骨で、人肉がかき混ぜられる音。

全身の体細胞が破裂して、身体中の孔や斬られた胸部から、赤い肉塊がぐちゃぐちゃと流れ出す。

自爆魔法を発動するためのユニットが破壊され、まるで汚物のようになっていく案内人。
どろりと溶けて、自爆することなく絶命した。

その直後、悲鳴が聞こえた。


魔法使い「いやあぁぁぁっ!!」





206:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/14(月) 19:03:20 ID:jnI.Pdpo

たった今まで普通に話していた人が、一瞬で殺された。

村の畑が魔物に襲われて、隣に住む農夫の人が殺されたことがある。
たくさん血を流して、苦痛に悶えながら死んでいった。
病気や寿命で亡くなった人も見たことがある。
村での生活は、ときどきそのようなことがある。

だけど、溶けて崩れ落ちていく死体は見たことがない。
人が人ではない、どろどろの赤黒い肉塊になっていく。
骨が皮膚を突き破り、肉をかき混ぜながら砕けていく。

そんな無残な姿にして、人が人を殺せるなんて、
普通じゃない――。





207:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/14(月) 19:10:06 ID:jnI.Pdpo

なぜそこまでする必要があったのか、その理由は分かる。
分かるけど……。

無意識が魔力を感じた。
案内人が着けていた魔道具が、死んだことを感知して発動したのだ。
それは強力な爆発魔法だった。


みんな死ぬ――。


魔法使い「火精霊っ!!」


条件反射的に火精霊を召喚した。





208:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/14(月) 19:38:57 ID:jnI.Pdpo

僧侶「全体防御魔法!!」

勇者「伏せろっ!!」


ドゴーーーォォンッッ

勇者が魔法使いをかばった瞬間、爆風に吹き飛ばされた。
頭をかばいつつ、壁に激しく叩きつけられる。


勇者「ぐっ……」


防御魔法で強化された鎧やローブが、衝撃を和らげる。
そして爆炎のほとんどは、召喚された火精霊が相殺してくれた。
激しい炎が渦を巻き、虚空に消えていく。

やがてすべてが収まり、静寂が訪れた。





209:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/14(月) 19:44:54 ID:jnI.Pdpo

案内人が装備していた二つ目の魔道具が発動し、肉塊が蘇生されて人を成す。
そして、外に転移された。


勇者「くっ……、魔法使いちゃん、大丈夫?」

魔法使い「……はい」

僧侶「今、回復します」





211:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/14(月) 20:09:55 ID:jnI.Pdpo

勇者「何だよ、これ……。こんなことが許されるのかよ!」

魔法使い「人が、人が……」

僧侶「魔法使いちゃん、ありがとう。よく頑張ったね」ギュウッ

魔法使い「僧侶さんっ、うわあぁぁぁん......」


僧侶「勇者さま、どうしますか。魔法使いちゃんはショックを受けています。私もまさか、非人道的な手段で襲ってくるとは思わなくて……」

僧侶「こんなの、つらいです。この魔法だけは、魔法使いちゃんの前で、攻撃魔法として人に向けたくなかったのに――」


だから以前、山賊たちには即死魔法を行使したのだ。
人の身体を傷付けない魔法だから……。


勇者「この塔から出る方法は3つある」

僧侶「3つ、ですか」





212:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/14(月) 20:29:57 ID:jnI.Pdpo

勇者「こんなに強力な爆発魔法を使うくらいだ。この塔の建築材は、魔法に耐性が強いものだと思う」

僧侶「それが関係あるのですか?」

勇者「ああ。塔を壊して出ることが出来ないから、3つなんだ――」


1、最上階の出口から出る。
2、予約時間が過ぎるのを待つ。
3、魔道具が発動する条件を満たす。


僧侶「予約時間が過ぎるのを待ちましょう!」

勇者「僕は上に行くことも考えている」





213:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/14(月) 20:39:42 ID:jnI.Pdpo

僧侶「案内をしてくださっていた方が、いきなり自爆魔法を行使してきたんですよ! それを防いだら、爆発魔法の魔道具が発動したんですよ!」

僧侶「魔法使いちゃんが頑張ってくれなかったら、みんな死んでいたかもしれません。こんなの異常です! 私は反対ですっ!」

勇者「だから、実戦形式なんだろ。残念だけど、実戦は命の奪い合いだ」

僧侶「確かにその通りです。だけど、こんなやり方は実戦訓練とは言いません。今のなんて、人間爆弾じゃないですか!」

僧侶「しかも蘇生魔法と転移魔法が、魔道具で発動するんですよ。生き返るなら、自爆をしてもいいんですか?! そんなの戦争だとしても、非人道的で常軌を逸しています」





214:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/14(月) 21:21:44 ID:jnI.Pdpo

勇者「僧侶さんの気持ちも分かる。だから、少し落ち着いてほしい」

僧侶「……はい」

勇者「昨日バトマスたちは、『本気でやらないと殺されそうだった』と言っていたけど、一応それを模擬戦と表現したんだ。何か印象が違いすぎると思わないか?」

僧侶「昨日、私たちの技量を測っていましたよね。レベルに応じた結果が、この仕打ちかもしれません」

勇者「そうかもしれないし、そうではないかもしれない」

僧侶「どういう事ですか?」

勇者「それが分からないから、上に行って確かめておきたいんだ」





215:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/14(月) 21:28:55 ID:jnI.Pdpo

僧侶「ルール上、ここはもう安全です。上に行くことは反対です!」

勇者「もし異常事態が起きているならば、そのルールが守られる保障はないだろ」

僧侶「それは……。でも1フロア目が騙し討ちなら、この先も卑劣な罠がありますよ。訓練ではなくて、殺し合いです! それでも行くのですか?」

勇者「ああ。とりあえず、一人で2階の様子を見てくるから」

僧侶「それは危険です。だって、私たち三人で戦う前提になっているんですよ!」

勇者「大丈夫、二人を残して死んだりしないよ。僧侶さんは、魔法使いちゃんを頼む」

僧侶「……。勇者さま、必ず戻ってきてくださいね」





217:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/16(水) 22:36:11 ID:7KqjtCnc


魔法使い「僧侶さん……」

僧侶「どう? 気持ちは落ち着いた?」

魔法使い「あの……、どうして、あんな無残な殺し方をしたのですか?」

僧侶「それは……」

魔法使い「……ごめんなさい。それは分かっています。それ以外の手段がなかったことは分かっているけど、その……」

僧侶「魔法使いちゃん、聞いてくれる? 以前、魔法は必要なのかなって言ってたでしょ。本当は、魔法なんてないほうがいいのかもしれない。だって、魔法は戦争で人を殺すための武器だから」

魔法使い「……」





218:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/16(水) 22:53:29 ID:7KqjtCnc

僧侶「今は魔王のうわさのおかげで国同士が協力しているけど、昔は魔族と人が殺し合い、国と国が戦争をして人々は殺しあっていたの」

僧侶「職業として僧侶を選んだ人は、精霊魔術を学んで賢者になる人が多い。それはどうしてだと思う?」


魔法使い「……分かりません」


僧侶「攻撃する手段を持たなければ、敵兵に殺されてしまうからよ。だから私も、殺めるための魔法を身につけた」

僧侶「教会でも蘇生させることが出来ない、即死魔法を――」

僧侶「そして敵兵に捕まっても逃げられるように、拘束具の組成を研究したり、金属を破壊するために錬金術を学んだの」





219:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/16(水) 23:12:11 ID:7KqjtCnc

魔法使い「僧侶さんは、賢者になろうとは思わなかったんですか?」


僧侶「私は人を殺めるために精霊魔術を学ぶよりも、人間のこと、命のことをもっと深く知りたかったの」

僧侶「さっき見せた破壊魔法は残酷な魔法に見えるけど、正しく使えば命を救うために必要な魔法なんだよ。それは分かってほしい」


魔法使い「やっぱり、僧侶さんは僧侶さんなんですね」


僧侶「もう何が言いたいのか分からなくなってきたけど、精霊魔術を得意とする魔道師は、治癒魔法を覚えて賢者になろうとはあまりしないの」

僧侶「だから魔法使いちゃんは、今の気持ちを大切にしてほしいと思う」





220:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/16(水) 23:16:30 ID:7KqjtCnc

魔法使い「はい……。でも、僧侶さんは一つだけ間違っています」

僧侶「間違ってる?」

魔法使い「魔法がなくても、剣やナイフがあります。魔法は攻撃手段のひとつでしかないのです」

魔法使い「魔法が必要ないのではなくて、魔法を使う人の心が間違っているんです」

僧侶「そうだよね……。私が教えたことなのに、何言ってるんだろ」





221:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/16(水) 23:31:19 ID:7KqjtCnc

魔法使い「僧侶さんは今まで、私に命の大切さを教えてくれました。さっきのことはショックだったけど、今の話と合わせて、自分なりに受け止めたいと思います」

僧侶「魔法使いちゃん……」

魔法使い「それにここは、私たちの技量に応じて設定されているんですよね。ならば、逃げずに上りたいです」

僧侶「本当にそれでいいの?」

魔法使い「僧侶さんは、勇者さまが心配ではないのですか?」

僧侶「そんなの……、心配に決まってるでしょ。勇者さまを追いかけましょう」

魔法使い「はいっ」





222:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/16(水) 23:40:02 ID:7KqjtCnc

10
勇者「二人とも、どうしてここに……」

僧侶「私たちも上ることにしました。2階の様子はどうなっていたのですか?」

勇者「それが、人の気配がないんだ。何かトラップが仕掛けてあるのかもしれないと思ったけど、そういう物もないみたいだ」

僧侶「奇妙ですね……」

勇者「本当に、二人も上に行くのか? 何があるのか分からないぞ」

魔法使い「私は上ってみたいです」

勇者「そうか……。それじゃあ、慎重に上っていこう」

魔法使い「3階にも人の気配がないです。魔力も感じません」トテトテ

僧侶「勇者さま、次で最上階ですね。このまま、何も起きなければいいのですが……」





223:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/16(水) 23:58:25 ID:7KqjtCnc

勇者「二人共、気をつけろ。中に誰かいるぞ」

僧侶「まさか総力戦を仕掛けるつもりでしょうか」

魔法使い「それって、ルール違反じゃ……」

勇者「1階のことがあるし、何が起きるか分からない。警戒を怠らないようにしよう」

僧侶・魔法使い「はい……」


ギィィィッ
ガチャン


??「待っていたよ、勇者ご一行さん」

勇者「お前が最上階の相手か!」

??「そうです。自ら降りていこうかと思うくらい、待ちくたびれましたよ」

魔法使い「ね、ねえ、勇者さま。あの人、翼が生えていますよ」

僧侶「もしかして、魔族……堕天使なんですか?!」

天使「失礼ですね、僕は天使です」





225:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/17(木) 22:21:04 ID:8Jtis6nY

僧侶「神の使いが、どうしてこんな所に……」

天使「女神さまの加護を受ける者と、それが選んだ者。その実力を見せてほしくて、ここに来た次第だ」

勇者「どういうことだ! つまり自爆のことは、すべて女神の意志なのか?!」

天使「今は問答をするつもりはない。まずは、実力を見せてくれないかな」

僧侶「魔法使いちゃん、戦える?」

魔法使い「はい、大丈夫です!」

勇者「よし、来るなら来い!」





226:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/17(木) 22:31:36 ID:8Jtis6nY

天使「では始めるよ。ここにいた、ゴーレムとサイクロプスだ。二体まとめて倒してごらん!」


ゴーレム「ユウシャ、コロス……」
サイクロプス「ウガアァァッ」


二体の魔物が、どこからともなく召喚された。
巨体にもかかわらず、俊敏に駆け出す。


魔法使い「ゴーレムは任せてください!」


魔力で命を与えられた魔物は、すでに砂漠で戦闘済みだ。
岩石か砂か、所詮その程度の違いしかない。





227:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/17(木) 23:12:09 ID:8Jtis6nY

魔法使い「土精霊、召喚!! 砂になれ!」


土精霊にゴーレムの身体に干渉してもらうと、ゴーレムは一瞬で砂に変化した。
そして崩れ落ちた砂を石板にして、床に固定する。
これでもう、復活して動くことは出来ないだろう。

ゴーレムだったものを見やり、勇者さまに加勢した。





228:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/17(木) 23:20:42 ID:8Jtis6nY

勇者「疾風斬りっ!」ヒュッ


勇者さまが剣に風をまとわせ、サイクロプスの右足に斬撃をくわえる。
サイクロプスが体勢を崩した瞬間、水精霊で攻撃した。


魔法使い「勇者さま! 凍結魔法、行きます!」


大気中の水分が凍りつき、サイクロプスが凍結した。
港町なので水分は十分にあり、完全に凍りつく。

その隙を突いて、勇者さまがとどめを刺した。
断末魔の悲鳴が耳をつんざき、砕けた氷が血で赤くなる。

魔道具が発動すると、サイクロプスは蘇生して転移した。





229:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/17(木) 23:36:55 ID:8Jtis6nY

天使「うわぁ、瞬殺だし。すごいすごい!」

天使「しかもゴーレムを土精霊で強引に破壊する人間なんて、はじめて見たよ。さすが、勇者ご一行の魔法使いは一味違うねえ」

魔法使い「これは喜んでいいのでしょうか……」

天使「そうだね、褒めているつもり。なかなか出来ることじゃないからね」

魔法使い「あ、ありがとうございます!」


天使「でもねえ、人間でなければ殺しても良いのかい? ゴーレムの身体を破壊するのは、下で彼女が見せた破壊魔法と同じじゃないか。サイクロプスだって、殺されて可哀想に――」

魔法使い「そ、それは……」

勇者「僕たちの実力を見たかったんじゃないのか! 殺すつもりで襲わせておいて、言えることか!」





230:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/17(木) 23:51:42 ID:8Jtis6nY

天使「どんな理由があろうとも、命を奪うことは未来を奪うことだ。魔法使いちゃん、ただの村娘に過ぎないキミに、その犠牲を背負う覚悟があるのかい?」

魔法使い「無益な殺生で命を奪うことは、絶対にするべきではないです。だけど身を守るために、やむを得ない場合もあると思います。私は、奪った命を無価値なものにするつもりはありません!」

天使「そうか、それがキミの答えなんだね」

魔法使い「はい」





231:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/17(木) 23:54:56 ID:8Jtis6nY

天使「じゃあ、自分の身を守ってみせてよ。魔法使いちゃんに、本当の魔法の使い方を教えてあげるよ」

魔法使い「えっ……?」

天使「土精霊は、興味深い使い方だった。でもね、水精霊での攻撃は駄目だったよ」

天使「人間は誰もが、空気中の水蒸気を凍結させようとする。もっと思い切らなくちゃ。凍結魔法!」


魔法使い「あぁっ……、いやぁぁぁぁっ!!」





232:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/18(金) 00:20:42 ID:YbzwCgdU

強大な魔力を感じた瞬間、右腕に激しい痛みが走った。

筋肉と皮膚、血液、骨。
肩から指先に至るまで、『右腕そのもの』が完全に凍結している。
そして、肩の関節から折れてぼとりと落ちた。

その衝撃で落下した腕が肘で割れ、指先が砕ける。
腕が落ちた右肩から血が溢れ出し、耐え難い激痛に襲われた。


魔法使い「あがあぁぁあっ、やあっいやあぁぁっ……」

天使「ほらっ、次は風精霊の攻撃方法を、その身に教えてあげるよ」





233:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/18(金) 01:00:11 ID:YbzwCgdU

天使「人間は刃物のように攻撃するのが好きみたいだけど、そんな不確実な方法は駄目だよ。生物なんだからさあ、他にすることがあるでしょ」

魔法使い「うぐぅぅっ……」


口と鼻から、大量の空気が押し込まれる。
吐くことは許されず、次々と肺に空気が詰め込まれていく。
胸が膨らみ、叫ぶことも許されず、あっという間に肺が破裂した。

さらに空気の刃が心臓を切り裂き、食道から多量の空気が送り込まれる。
胃や小腸に侵入した空気が暴れ、次々と消化管を破裂させていく。
さらに切断された血管から、気泡が入り込む。


空気の塊に、体内が蹂躙されていく。
意識が朦朧として、
もうどこが痛いのか分からない……。

吐き出される空気とともに血を噴き出しながら、人形のように崩れ落ちた。





234:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/18(金) 01:10:45 ID:YbzwCgdU

僧侶「魔法使いちゃん!!」


何が起きたのか把握できないくらい、あっという間の出来事だった。
凍結魔法で右腕が砕かれ、さらに内臓も破壊されているようだ。

苦悶の表情を浮かべたまま、定まっていない視線。
ごぽごぽと噴き出してくる鮮血が、顔と床を赤く染めていく。

幸いにして、脳が無傷なので、まだ生きてはいる。
しかし、間もなく機能が停止するだろう。

魔法使いちゃんは、実質的にもう死んでいる。





236:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/18(金) 22:06:21 ID:YbzwCgdU

勇者「僧侶さん! 早く魔法使いちゃんをっ!」

僧侶さん「はいっ!」


魔道具により蘇生することは分かっているが、賢者の石と同様の効果があるとは思えない。
欠損した右腕の再生は、恐らく無理だろう。


僧侶「今、楽にしてあげるからね。鎮痛魔法、蘇生修復魔法!!」

天使「へぇ、そんな高度な魔法も使えるんだ」

天使「凍結して砕けた腕や指を再生して繋ぐなんて、人間の域を超えた荒技だね。キミは、その域まで達しているのか」





237:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/18(金) 22:19:05 ID:YbzwCgdU

勇者「このやろうっ! 疾風斬り!!」

風の魔法を宿した斬撃。
天使はその風を反転させて、軽々といなす。


天使「駄目だよ。そんな剣では、僕に勝てないよ。土精霊!」


その言葉と同時、ゴーレムだった石板が、勇者へと飛び掛かった。
後ろに飛び退き、石板に向かって剣を振り下ろす。


勇者「大地斬!!」


剣に宿った魔力が石板を砕く。
砕けた石板は石のつぶてとなり、軌道を変えた。


天使「さて、次はよけられるかな?」


その言葉を受けて、石のつぶてが加速した。
目に留まらないスピードで、勇者に襲い掛かる。
初弾が鎧に当たり、砕け散った。

その直後、石つぶてが次々と手足に被弾した。
肉を貫き、反対側へ貫通していく。





238:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/18(金) 23:04:23 ID:YbzwCgdU

勇者「ぐあぁっ!」

天使「手足が使えなければ、もう剣を振るうことも出来ないだろ」

僧侶「ゆ、勇者さまぁ!」


手足が血まみれになり、床に膝を付く。
このままでは、勇者さまも――。


魔法使い「ゼエゼェ……僧侶さんは勇者さまを……」

僧侶「……分かった。魔法使いちゃん、まだ全快じゃないから無理をしないでね」

魔法使い「はい……爆発魔法!!」


ドオォォォンッ!

激しい爆発が天使の翼を吹き飛ばした。
しかし見る間に回復してしまい、余裕の表情はまるで消えない。


魔法使い「……そんな」





239:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/18(金) 23:15:40 ID:YbzwCgdU

天使「良かった、無事に蘇生したんだね。少しやりすぎたかなって、心配したよ」

天使「殺されても、怯えずに攻撃する精神力。想い慕う力は強い――か」

魔法使い「ゼェゼェ……」

天使「ところで、キミたちはさあ、どうして魔法を使えると思う?」

魔法使い「それは……」

天使「どう考えてもおかしいだろ。燃焼には三つの要素が必要だし、空気中の水蒸気を凍結させて物質の三態を操作している」

天使「さらには致命傷を一瞬で治癒したり、蘇生までしてしまう。それらを可能とするエネルギーは、一体どうやって調達しているんだろうね」

魔法使い「どういう意味……ですか」

天使「世界の扉を閉めさせてもらうよ。封印魔法!」





240:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/18(金) 23:32:55 ID:YbzwCgdU

僧侶「治癒魔法!」
しかし、効果はなかった。

僧侶「えっ?!」


天使の魔法が発動した直後から、不思議な感覚に包まれている。
全身が魔力で満たされているのに、それを根こそぎ奪い取られたかのような虚脱感。

以前、魔術書で読んだことがある。
魔族との戦争時、堕天使が魔術を封じる魔法を使っていたそうだ。

神の遺産である、ヘクソミノ。
そのパズルは、ピースを敷き詰めても長方形にはならず、凸形になる。

その形が示す、世界への扉。
その道が閉ざされたとき、魔法を失うと言われている。

ただし堕天使のみが使っていた魔法だからか、経験則だけで研究は進んでいない。





241:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/18(金) 23:48:51 ID:YbzwCgdU

勇者「大丈夫だ、これくらいなら問題ない……」

僧侶「勇者さま、大丈夫な訳がないじゃないですか! この装身具を使えば、治癒魔法が発動します。今から、それを解放します」


治癒魔法が発動し、装身具が崩れていく。
回復用の装身具は、あと2つだ。
破壊魔法を発動できる装身具も身につけてはいるが、相手が人間ではないので使えない。

ちらりと魔法使いちゃんを見ると、彼女も困惑した表情を浮かべていた。
魔法を封じられたことに気付いたようだ。





242:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/18(金) 23:55:07 ID:YbzwCgdU

天使「さて、最後は火精霊だ。人は皆、火を熾すことに満足して、最も効率よく燃焼させる方法に気付かない」

天使「魔法使いちゃん、キミの炎は橙色なんだよね。火炎魔法を使うなら、風精霊も組み合わせないと。それが本当の火炎魔法なんだよ」


魔法使い「あ、青白い炎?」


今まで炎は赤いものだと思っていた。
強い炎ほど、黄色く輝きが増すものだと思っていた。

それなのに天使の火炎魔法は、青白い炎が鋭利に輝いている。
この炎が具現化したとき、なすすべもなく焼き尽くされてしまうのではないか――。
そんな想像が脳裏をよぎる。

以前の盗賊騒動で反省して、四大精霊の魔法をそれぞれ装身具に込めて身につけている。
しかしそれでは、格が違いすぎて防ぐことは出来そうにない。





243:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/19(土) 00:22:16 ID:yaa41MzQ

勇者「させるか!!」

天使「おやおや、飛んで火に入る夏の虫だよ」

勇者「虫かどうか試して見ろ。全力の斬撃を見せてやるよ! 雷神斬りっ!!」

天使「なにっ?!」


勇者には女神の加護があるので、状態異常の魔法は効果がない。
刀身に電撃をまとわせると、天使に振り下ろした。

放電現象と斬撃により、上半身を両断する。
具現前の炎は消失し、さらに崩れ落ちる天使を斬りつけた。


勇者「はぁはぁ、どうにか倒せたか?」

魔法使い「勇者さま、すごいです!!」





244:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/19(土) 21:25:30 ID:yaa41MzQ

崩れ落ちた天使の身体が、光に包まれた。
その光が集まり、まばゆい輝きを放つ。
そして光の繭が霧散すると、何事もなかったかのように天使が立っていた。


天使「痛ててて――。ひどいなあ、死に掛けたじゃないか。さすが、女神さまに加護されているだけあるよ。あの魔法は天使にはきついか……ふぅ」

勇者「蘇生した……。くそっ、もう一撃!!」

天使「もう良いよ、僕の負けだ」

勇者「勝った……のか?」





245:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/19(土) 21:27:48 ID:yaa41MzQ

天使「勇者ご一行の実力は分かったから、もう十分だ。魔法使いちゃん、苦しい思いをさせてごめんね」

魔法使い「……」

天使「命が命で繋がっていることは、絶対的な真実だ。だからこそ命を奪う重さ、奪われる苦しみを知っておいてほしかったんだ」

魔法使い「は、はい……」

天使「キミの魔法の使い方は、力強くて興味深い。でも、魔法防御が課題かな。あの程度で死ぬようだと、人間止まりだよ」

魔法使い「……もっと頑張ります」

天使「そうだね、期待しているよ」





246:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/19(土) 21:53:43 ID:yaa41MzQ

僧侶「魔法使いちゃんを殺しておいて、『命を奪われる苦しみを知っておいてほしかった』とか、勝手なことを言わないでください!」

天使「そのナイフでは殺せないから、脅しにならないよ。キミは、人間以外には無力だ」

僧侶「どうして、あんなことをしたのですか! 1階の案内人も、自爆させましたよね!」

天使「目的のために犠牲は付き物だ。とは言っても、結果的に蘇生しているんだから問題ないだろ」
僧侶「そういう問題ではありません。それが女神の意志なんですか?!」





247:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/19(土) 22:10:56 ID:yaa41MzQ

天使「彼が自爆したことで、キミたちは命の大切さを考えた。そして彼女も殺されることで、命の大切さを深く知っただろう」

天使「それだけでも、大きな意義があったと言えるんじゃないかな?」

僧侶「そうでしょうか。私には、その必要があったとは思えません!」

天使「大局が見えていないから、そう思うだけだよ。この塔で、4つの命が消えた。それを価値のある犠牲に出来るかどうかは、キミたち次第だ。違うかい?」

魔法使い「そう……ですよね。私は誰の命も、無価値なものにしたくないです」

僧侶「魔法使いちゃん、あなた……」

魔法使い「まだ苦しいけど、ここに来て良かったです」





248:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/19(土) 22:14:05 ID:yaa41MzQ

勇者「大局がみえていないと言うなら、教えてもらおうか。女神はなぜ、僕に神託を下したんだ。こんな茶番をした目的は何なんだ!」

天使「キミたち三人に期待しているからだろ。それ以外に、どんな理由があるというんだい?」

勇者「くっ……」

天使「それでは、試練を乗り越えたキミたちにメッセージだ」


天使はそう言うと、パズルを押し付けてきた。


勇者「メッセージ?」

天使「ああ。試される者よ、キミたちが成し遂げてくれることを期待しているよ」





250:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/19(土) 22:30:46 ID:yaa41MzQ

11
〜支援施設〜
受付「大変申し訳ありませんでした」ペコペコ

勇者「つまり本来の担当者が襲われ、訓練施設を占拠されていたんですね」

受付「はい。担当者が向かったのですが、強力な結界で救助することが出来ませんでした」

勇者「まあ、無事に帰れたから良いものの……」

受付「しかし、天使ですか。神の使いが興味を持たれるとは、よほど腕が立つお方なのですね」

勇者「はは、それはどうだろ」

魔法使い「そんなことないです。勇者さま、格好よかったです!! 僧侶さんも、本当にありがとうございました!」

僧侶「……、そろそろ戻りませんか?」

勇者「そうだな」

受付「それでは、こちらは無料サービス券となっております。またの機会にご利用ください」





251:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/19(土) 22:43:27 ID:yaa41MzQ

12
〜客船〜
勇者「天使が残したこのパズルは、どういう意味なんだろ」

僧侶「長方形が4つ又は5つ繋がったピースが11個、きれいに枠の中に納まっていますよね」

勇者「それは分かるけど、この小さいのは?」

僧侶「恐らくですけど、この枠外にある1単位の長方形1ピースが、この中に入るのではないでしょうか」

勇者「いやいや。いくら何でも、それは無理だろ」





252:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/19(土) 22:53:13 ID:yaa41MzQ

僧侶「正方形を切り分けて並べ替えることで、面積が増減する不思議なパズルがあるんです。これも図形消失パズルの一種かもしれません」

勇者「へぇ、そういうパズルがあるんだ」

魔法使い「面積ではなくて、板を並べ替えることで、描かれた人の数が変わる面白いパズルもありますよ」

僧侶「だけどこれはポリオミノ系で、枠の大きさが固定されているんだよね……」

魔法使い「とりあえず、試してみましょう」バラバラ

勇者「これ、長方形の向きを統一しないと段違いになるな」

僧侶「そうですね」

魔法使い「なかなか納まりませんねえ……」カチャカチャ





253:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/19(土) 23:00:10 ID:yaa41MzQ

・・・
・・・・・・

魔法使い「は、入りました!」

勇者「枠にきれいに入っていたのに、さらにもう一つ入っちゃったぞ。すごいな……」

魔法使い「ですよね、興味深いです。最初に少しだけ余裕があったけど、それが利いているんでしょうね」

勇者「だけどこれに、どんなメッセージが込められているんだ?」

僧侶「昨日、ペントミノを『神様は世界を破壊して創りかえることが出来ることを示すパズルだ』という話をしましたよね。ポリオミノ系のパズルにとって、枠は世界なんです」

勇者「そういえば、そんなことを言ってたね」

僧侶「つまりですよ、このパズルは『何者かが世界に侵入している』ことを示すものではないでしょうか」

僧侶「そして私たちに、その何者かを倒してほしいのではないでしょうか」





254:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/19(土) 23:39:35 ID:yaa41MzQ

勇者「なるほど、それがメッセージかもしれないな」

僧侶「だと思います。でも、腑に落ちないことがあって……」

勇者「腑に落ちないこと?」

僧侶「はい……。方法はどうあれ、天使は命の大切さを強調していましたよね」

勇者「魔王を殺さずに倒すことが、目的なのかな」


僧侶「分かりません。具体的なメッセージが欲しいですよね……」





255:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/19(土) 23:43:32 ID:yaa41MzQ

魔法使い「とりあえず天使さんは、『期待している』と言ってくれました」

魔法使い「今日起きたことを肝に銘じて、もっと頑張ろうと思います。魔法医学も本気で勉強したいです」


勇者「そうだね。詳しいことは、向こうに着けば分かるだろう。神の使いが来たんだし、何かが起きている事は間違いない」

勇者「今日のことを生かして、三人で頑張って行こう」


僧侶・魔法使い「はいっ!」





256:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/19(土) 23:45:25 ID:yaa41MzQ

第5話 おわり

(シチュエーション・パズル)
・ウミガメのスープ

(ポリオミノ)
・ペントミノ
・ヘクソミノ

・図形消失パズル





257:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/20(日) 00:43:52 ID:LTZ6xAAk

ようやく終わりました。
支援などのレス、ありがとうございます。


物語は折り返して、次から後半。
いよいよ南極圏、南の大地に上陸です。


ちなみに天使から受け取ったパズルは、『ワンダーパズル』というものです。





勇者「ドーナツの世界?!」【後編】へつづく


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