1: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:29:41.05 ID:DgFLnKxf0

死神「こんばんは」

男「……君は誰だい?」

死神「俗に言う死神です」

男「小さな死神さんだ」

死神「よく言われます」

男「僕に、何か用かな?」

死神「死を告げに来ました」

死神「あと3日です」

男「そうか」






 
 
2: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:30:33.85 ID:DgFLnKxf0

死神「信じるのですね」

男「うん、そのくらいで自害しようと思ってね」

死神「自害ですか」

男「色々、嫌になってしまった」

死神「生きることは嫌ですか」

男「うん、嫌だね」





3: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:31:43.50 ID:DgFLnKxf0

男「君はどうして僕に死を告げに来たの?」

死神「あなたが寂しそうだったから」

死神「それだけです」

男「寂しそうだからか」

男「僕はどんな死に方をするんだい?」

死神「言えません、死を告げても方法は言えません」

男「そうか、残念だ」





4: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:32:44.53 ID:DgFLnKxf0

死神「夜空、綺麗ですね」

男「綺麗だね」

男「僕はね、ここで天体観測するのが日課だったんだ」

死神「素敵な趣味ですね」

男「うん、誇れる趣味だよ」

男「そうか……僕も、3日後にはあの空に輝く星になるんだね」





5: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:35:29.22 ID:DgFLnKxf0

死神「どんな動物も、死んでも星にはなりません」

死神「ただの肉塊になるだけです」

死神「タンパク質の塊です」

男「うん、知ってるよ」

男「そう思わなきゃ、死んでも救われないよ」

死神「……」





6: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:36:06.40 ID:DgFLnKxf0

男「冷えるね」

死神「もう冬になりますから」

男「死神さんでも寒がるんだね」

死神「死神はそういう名前の生き物ですから」

男「へぇ、生き物なんだね」

死神「はい、生き物です」

死神「人間とさほど変わりはありません」





7: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:36:49.61 ID:DgFLnKxf0

男「僕はそろそろ家に戻るよ」

死神「そうですか」

男「君はどうするんだい?」

死神「寝泊りする場所がありません」

死神「お邪魔します」

男「うん、いいよ」





8: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:37:41.44 ID:DgFLnKxf0

男「ここが、僕の家だよ」

死神「片付いてますね」

死神「何もありません」

男「持っていかれてしまったからね」

死神「持っていかれてしまったんですか」

男「うん、怖いお兄さんたちにね」





9: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:38:25.56 ID:DgFLnKxf0

男「お腹は好かないかい?」

男「パンと牛乳くらいならあるよ」

死神「いただきます」

男「はい、どうぞ」

死神「…………」

死神「あなたは食べないんですか」

男「僕には必要ないよ」

死神「必要ないんですか」

男「うん、もう食べないからね」





10: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:39:23.84 ID:DgFLnKxf0

男「お風呂はいいかい?」

男「水も出ないけどね」

死神「いいです、必要ありません」

男「そうだよね」

男「でも、3日間も君はどうするつもりでいるんだい?」

男「娯楽もないし退屈だろう」

男「お風呂も入れない、食事もろくに出来ない」

死神「構いません」

死神「あなたの死が確認できればそれでいいです」





11: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:40:19.21 ID:DgFLnKxf0

男「それじゃあ、僕は眠るよ」

男「お腹が減り始めたら嫌だからね」

男「それで死ねたらいいのだけれど」

死神「3日後までは死にません」

死神「多少前後はしますが、これは絶対です」

男「そうか、残念だ」





12: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:41:47.95 ID:DgFLnKxf0

男「……」

死神「……」

男「君は眠らないのかい?」

死神「襲われるのは嫌なので起きています」

男「僕はそんなことはしないよ」

死神「冗談です、今眠る必要がないだけです」

男「夜更かしかい?」

死神「はい、夜更かしです」





13: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:42:41.77 ID:DgFLnKxf0

男「……」

死神「……」

男「……」

死神「眠りましたか」

男「……」

死神「おやすみなさい」


――――――
―――






14: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:43:11.79 ID:DgFLnKxf0

男「……」

男「……朝か」

死神「おはようございます」

男「おはよう、夢じゃなかったんだね」

死神「はい、夢ではなかったです」

男「それなら仕方ないね」

死神「出かけるのですか」

男「ご飯を買いにいこう」





15: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:43:46.17 ID:DgFLnKxf0

死神「もう食べないのではないですか」

男「食べることにしたよ」

男「いつ死ぬか分かったからね」

男「どうせ死ぬなら我慢してても仕方がない」

死神「仕方がないですね」

男「何か食べたいものはあるかい?」

死神「特には」





16: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:44:35.60 ID:DgFLnKxf0

男「着いてくるんだね」

死神「はい、着いていきます」

男「君は他の人には見えていないの?」

死神「よく見えていません」

死神「あなたにだけ見えて、あなたにだけ声が聞こえます」

男「そうか」

死神「でも、あなた以外でも触れることは出来ます」





17: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:45:11.17 ID:DgFLnKxf0

男「着いたね」

死神「コンビニですか」

男「うん、お金そんなに持ってないしね」

死神「私の分はいいですよ」

死神「必要になれば、自分でどうにかしますから」

男「いいよ、大した物は買えないけど」





18: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:45:44.93 ID:DgFLnKxf0

男「どれがいい?」

死神「シャケで」

死神「他は嫌いです」

男「うん、わかったよ」

男「飲み物は、また牛乳で」

死神「はい、大丈夫です」





19: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:46:38.83 ID:DgFLnKxf0

男「結構買ってしまったね」

死神「買ってしまいましたね」

男「今開けるよ」

死神「お願いします」

男「ずいぶん美味しそうに食べるんだね」

死神「はい、美味しいです」

死神「あなたの分は少ないですね」

男「君の分で手一杯だったみたいだね」

死神「ごめんなさい」





20: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:47:04.76 ID:DgFLnKxf0

男「夕方になってしまったね」

死神「夕方ですね」

男「そろそろ行こうか」

死神「どこへ行くのですか?」

男「夜空を見に行くよ」

死神「そういえばそうでしたね」





21: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:48:23.77 ID:DgFLnKxf0

死神「寒いですね」

男「今日は一段とね」

死神「何か見えますか?」

男「今日は曇ってるや」

男「帰ろうか」

死神「帰りましょうか」





22: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:49:05.96 ID:DgFLnKxf0

死神「あと2日です」

男「うん、そうだね」

死神「遣り残したことはないですか?」

男「色々あるよ」

死神「あるんですか」

男「うん、でもやりきるのは無理だね」

男「たくさんありすぎる」





23: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:49:41.05 ID:DgFLnKxf0

男「ご飯がなくてごめんね」

死神「朝の残りがありますから」

男「ちゃっかりしてるね」

死神「ちゃっかりしてます」

男「僕はそろそろ眠るよ」

死神「おやすみなさい」





24: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:50:22.49 ID:DgFLnKxf0

――――――
―――


男「朝……」

男「……あと2日」

死神「……」

男「……おはよう、眠っているのかい?」

死神「……」

男「朝は弱いみたいだね」

死神「今起きました」

男「大丈夫かい?」

死神「大丈夫です」





25: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:50:55.86 ID:DgFLnKxf0

男「今日は何をしようか」

死神「何をしますか?」

男「そうだ、手紙でも書こう」

死神「手紙ですか」

男「両親に書くよ」

男「先立つ不幸をお許しください」

男「親不孝者だね」

死神「親不孝者ですね」





26: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:51:33.33 ID:DgFLnKxf0

カタン

死神「何か来ました」

男「手紙だね」

死神「変な封筒」

男「借金の通知だ」

死神「借金ですか」

男「逃げた恋人の連帯保証人だからね」

死神「大馬鹿ですね」

男「うん、知ってる」





27: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:52:07.34 ID:DgFLnKxf0

男「これが原因だね」

死神「どうしようもないですね」

男「うん、どうしようもない」

男「僕が選んだことだから仕方がないよ」

死神「……」

男「夕方になるね」

男「お腹は減らないかい?」

死神「あれば食べます」

男「残念何もないよ」

死神「残念」





28: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:52:51.34 ID:DgFLnKxf0

男「今日はよく晴れているね」

死神「夜空が一層綺麗ですね」

死神「あ、猫がいますね」

男「チョコチョコ動いて、まるで君みたいだ」

死神「私みたいですか」

男「うん、可愛いよ」





29: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:53:49.45 ID:DgFLnKxf0

男「ここから見る景色はやっぱりいいね」

死神「いい場所ですね」

男「猫座はないかな?探してみるよ」

死神「猫の星座はありません」

死神「昔はあったみたいですけど」

死神「今は無いです」

男「うん、知ってる」





30: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:54:17.34 ID:DgFLnKxf0

男「最後の夜だから、新しいものでも見つけたかったんだ」

死神「明日のこの時間です」

死神「あなたが死んでしまいます」

男「死に方は?」

死神「教えません、そのときになったら分かります」

男「そうだよね」

男「そのときまで楽しみにしているよ」

死神「……」





31: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:54:59.23 ID:DgFLnKxf0

死神「明日のこの時間だったら」

死神「また夜空は見えます」

死神「見ないのですか」

男「明日は見ないよ」

男「もう空っぽだからね」

死神「空っぽですか」

男「うん、僕の心が空っぽ」





32: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:55:44.85 ID:DgFLnKxf0

男「帰ろうか」

死神「帰りましょう、寒いです」

男「寒がりだね」

男「おいで、暖めてあげるよ」

死神「はい、暖めてください」

男「それじゃあ行こうか」





33: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:56:13.71 ID:DgFLnKxf0

男「最後の夜だね」

死神「最後の夜ですか」

男「眠るのはこれで最後」

男「……」

死神「……」

男「……」





34: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:57:27.37 ID:DgFLnKxf0

男「……」

死神「……」

男「泣いているのかい?」

死神「泣いてはいません」

死神「泣いているのは」

死神「あなたです」


――――――
―――






35: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:58:14.20 ID:DgFLnKxf0

男「……最後の朝か」

死神「……」

男「おはよう」

死神「……」

男「……なんとか」

男「……なんとか言ってくれよ」

死神「……」





36: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:58:43.58 ID:DgFLnKxf0

男「眠っている分けではないよね?」

死神「……」

男「ご飯は食べる?」

死神「……」

男「気に入らなかったかい?」

男「それじゃあ遊ぼう!」

男「僕と遊ぼうよ!」

死神「……」





37: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:59:17.45 ID:DgFLnKxf0

男「おい……」

男「何とか言えよ!!」

男「何が気に入らないんだよ!!」

死神「……」

男「……何か話そうよ……」

男「寂しいよ……辛いよ……」

男「嫌だよ……やっぱり死にたくなんてないよ……」





38: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 02:59:57.80 ID:DgFLnKxf0

男「……1日」

男「……無駄に過ごしたな」

死神「……」

男「もう嫌だ……死のう……死ねるかな」

死神「……」

タッタッタ

男「え……?」

男「どこへ行くんだい?」

男「まってよ……」

男「僕を一人にしないでよ……」





39: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 03:01:34.89 ID:DgFLnKxf0

死神「……」

男「待ってよ……待てってば!!」

死神「……」

男「ここは道路だよ?」

男「こんなところに飛び出したら危ないじゃないか」

男「さぁ、帰ろう」

男「帰って、僕が死ぬところを見ていてくれるんだろう?」

死神「……」





40: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 03:03:33.13 ID:DgFLnKxf0

死神「……」

死神「最後くらい」

男「え?」

死神「最後くらい、自分で決めたらどうですか?」

男「……」



ズッ





41: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 03:05:49.95 ID:DgFLnKxf0

「キャーーーーーー!!」


「人だ!人が轢かれたんだ!」


「何やってる!早く救急車呼べ!」


「運転手!逃げるなよ!」





42: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 03:08:25.45 ID:DgFLnKxf0

死神「馬鹿みたいですね」

男「ウゴ……ガ……ア……ア」

死神「最後に私を庇って轢かれて」

死神「あなたが選んだことですよ」

死神「やっと……あなたが、ちゃんと死ぬことを決断したんですよ」

男「……アガ……」





43: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 03:11:02.79 ID:DgFLnKxf0

男(そうか……)

男(そうだよね)

男(今まで何やってたんだろう)

男(借金背負って誰にも頼れずダラダラ生きて)

男(明日死のう、また明日死のうと何日も何日も)

男(結局最後は自分に3日の期限なんて付けて)

男(死ぬ気なんて、さらさら無かったのに)





44: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 03:13:40.39 ID:DgFLnKxf0

男「バカ……みたいだ……な」

男「最後の……最後に……善行のつもり……か?」

男「猫相手に……ずっと一人で……喋りかけて……」

死神「……」

死神「ニャー」

タッタッタ

男「……ホント……」

男「……」





45: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 03:16:22.38 ID:DgFLnKxf0

男(嫌だな……)

男(お父さんとお母さんに会いたいな……)

男(まだ生きていたかったな……)

男(死にたくない……)

男「……あ」

男「空……綺麗……だな」

男「……」

男「……」





46: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 03:24:07.46 ID:DgFLnKxf0

――――――
―――



死神「空ろな心のあなたが最後に見た景色は何色ですか?」

死神「猫の私に話しかけて、寂しさは紛らわせることが出来ましたか?」

死神「結局、私との会話は全部あなたが妄想した出来事でした」

死神「私は、あなたが創造した猫の皮を被った虚空の存在でした」

死神「だから付き添いましょう」

死神「あなたが作り出した私という存在は」

死神「あなたが満足するまで、ずっとそばにいましょう」

死神「あなたが寂しくないように」

死神「あなたが夜空の星になるまで」

死神「ずっと」



男「夜空の色は」死神「空ろ色」 終わり





47: ◆cZ/h8axXSU:2013/10/19(土) 03:26:01.65 ID:DgFLnKxf0

終わった
突然思いついたネタ書きなぐったらスーパー電波になった
でも楽しかったからいいや

流石に今回はいないと思いますが、お付き合いしていただいた方がいましたら、どうもありがとうございました





次作
天才少女「魔王軍開発室!」

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