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ハーミット・パープルは知っている

70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:12:18.07 ID:2FB0APaH0

『ヘブンズ・ドアーは見ないふり』





71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:12:45.18 ID:2FB0APaH0

僕は君を忘れた。

ずっと怖かったのさ。あの日のことはきっと夢だったに違いないと。

本当は分かっていたのに頭の隅っこに放っていたんだ。

そうする内にいつしか記憶の中で『君』という存在はホコリを被り、僕の中に無いものとなっていた。

ふん。勝手だな、僕は。

君は僕を覚えていたというのに。


 
 
72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:14:34.02 ID:2FB0APaH0

M県S市杜王町に……一つだけポツンとある寺。
今日僕は仕事の合間を縫い、その寺の側にある寂れた霊園に来ている。

おっと、先ほど僕は『寂れた』と言ったが別に『いかにも』な場所という訳じゃあない。
むしろ掃除とか手入れはよく行き届いていて、
死者の魂ってモンが実在するならそいつらが眠るにはうってつけの場所と言えるね。
……いや、『実在している』か。なにしろ僕はこの目で見たんだからな。


「これですかァ? 露伴先生。鈴美さんの『お墓』というのは」

「ああ。というかそこにデカデカと彫ってあるだろう。『杉本家之墓』ってさ」


同行者が居ることを言い忘れていた。彼の名は『広瀬康一君』。
最近、僕がマンガをなかなか載せないってんで、わざわざ僕の家にまで文句を言いに来たらしい。

サボってる訳じゃあないんだけどな。ただ、何故か描く気になれないだけだ。
こんなことは今まで生きてきて初めての経験だけれど。

とにかく、そんなこんなで僕が『これから杉本鈴美の墓参りに行く』と言ったら、
康一君はミョーに納得した顔をして『ぼくも着いて行きます』と言い放ち今に至る。

なんだか見透かされているよーな気分で良い気はしなかった。





73:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:15:23.97 ID:2FB0APaH0

「あれ、このマッチ火が点かないぞ。露伴先生、代わりのライターか何か持ってませんか?」


おぼつかない手つきで康一君が線香と花、
そして『これ、ぼくの大好物なんですよね〜っ』と言って道中で買っていた饅頭を墓に供えている。

いつも思うんだが、こーいうお供え物というのは誰かが勝手に取って食っちまわないものなんだろうか?
かといって、動物が出て来て供え物を食い荒らすという話も僕はあまり聞いたことが無い。
動物達も自然と『そういうもの』だと理解しているかもしれないな。

なんてことを考えながら康一君にポケットに入っていたライターを渡す。
今度はちゃんと火が点いたみたいだな。


「お供え物にお饅頭って、ちょっと安直過ぎだったかなあ。
 露伴先生は鈴美さんの好物とか何か覚えてないんですか?」

「記憶に無い。別に良いんじゃあないか? 女の子ってさ、大抵甘いもの好きだろ」


そう、僕は『彼女』のことを何も覚えていない。
僕の知っている『彼女』は『幽霊としての彼女』だけだ。





74:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:16:10.09 ID:2FB0APaH0

「それが……このお饅頭、『ニラ饅頭』なんですよね〜〜〜。しょっぱくて美味しいんですけど」


何故そんなモノをお供え物にチョイスしたんだ康一君。


「幽霊が本当に食うワケじゃあなしに」


『それもそうですね』と康一君は饅頭を墓に供え直す。
そして僕と康一君は、まあフツーに形式的ではあるが『彼女』の冥福を祈った。

しばらくして目を開けると、僕の頬にポツリと滴が落ちた。
目を凝らし見上げるとそこには曇り空が。どうやら雨でも降りそうな雰囲気だ。


「女の子」


康一君までもがポツリと言葉を漏らす。
僕は水に濡れたくないし、さっさと帰ろうと思っているんだが。





75:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:17:12.68 ID:2FB0APaH0

「女の『子』……だったんですよね。鈴美さん」

「ほら、ここの墓誌に『鈴美 十六才』って」


康一君が指差したのは杉本家の墓誌。
その家系の誰それがいついつ亡くなっただとかが刻まれている石碑のことだ。
確かに墓誌には『昭和五十八年 八月十三日 長女 鈴美 十六才』とある。





76:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:17:49.31 ID:2FB0APaH0

「ここに来て改めて思ったんですけど……やっぱりあんまりです。
 ぼく達とそう変わらない若さで殺されてしまったなんて」

「それから十五年ですよ。十五年もの間、ずっと一人と一匹であの小道でぼく達のよーな人が来るのを待っていたんだ」

「……どれだけ辛く苦しかったんでしょうか」

「知るかよ。幽霊の気持ちなんて」

「幽霊の気持ちじゃあありません。鈴美さんの気持ちです。
 露伴先生は鈴美さんの友達だったんでしょ? どーしてそんなぶっきらぼうなんですか……」


『彼女』は……『杉本鈴美』は僕の昔の知り合いだったらしい。
『らしい』というのは僕が当時の記憶をほとんど覚えていないからで、
その時のことを知っている人から少し聞きかじったくらいだからだ。

君達だってそーだろ?
自分のガキの頃なんてすっかり忘れているか、覚えていたとしても断片的だ。
だから仕方無いんだよ。忘れてしまったものは。





77:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:19:25.64 ID:2FB0APaH0

ポツ……ポツポツ……


「うわっ、雨が降ってきたぞ。お饅頭が濡れちゃうな、もったいないから持って帰りましょう」


康一君が饅頭を持ってきた袋に戻している。
僕の予想ではこの後すぐに康一君の胃袋に直行するだろう。


「帰るぞ康一君」


僕は康一君に一瞥をくれてやると、ここまで乗ってきた車へと踵を返した。


「あっ! 待って下さいよォーっ!」





78:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:22:37.58 ID:2FB0APaH0

車にキーを差し込んでエンジンを吹かす。
ワイパーと窓ガラス越しに見えた景色の向こうでは霧さえ出始めていた。


「おかしいなあ。天気予報じゃあ、『この一週間はカラカラの天気』だと言ってたのに」

「……」


ぶつくさ言いつつ慌てて助手席に乗り込もうとする康一君をよそに、
僕は振り返ってもう一度だけ『彼女』の墓を見た。





79:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:23:52.36 ID:2FB0APaH0

今思うと、何故振り返ったのかは分からない。

ただ一つ言えるのはなんとなくで振り返ったんじゃあないんだ。
振り返えらなくちゃあいけないような気がしたんだよ。


「……ッ」





80:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:24:20.87 ID:2FB0APaH0

『露伴ちゃん』





81:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:25:09.37 ID:2FB0APaH0

多分、その時の僕は端から見ればどーかしたように見えていただろう。
後から康一君に聞いた話だと、康一君は何度も僕に『露伴先生』と呼びかけたのに無反応だったそうだ。

ただ一点、『杉本鈴美』の墓をじっと見つめて。


「なんでもないぜ。帰ろう」


五分も経った頃だろうか。
僕はびしょ濡れになりながら思い出したように康一君にそう告げた。





82:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:28:03.22 ID:2FB0APaH0

「……どーしたんですか?」

「なんでもないって言ったんだ」

「あっ!!!」


康一君が急に声を張り上げる。
びっくりしたぞ。康一君こそどーした。


「もしかして露伴先生……良くないものでも『見えちゃった』んですかァ?」


康一君は恐ろしそうに顔をしかめる。


「幽霊は実在するって、この前ぼくらは身をもって体験しましたからね……
 それからとゆーもの、心霊現象とかぼく馬鹿に出来なくって。アハハ……」


心霊現象か。
陳腐な言葉だが、確かに『さっきの』はそうかもしれないな。

いや、そうじゃあないな。絶対に違う。言い切っても良い。
違うと言い切れる理由?
それこそ知るか。 僕がそうだと言ったらそうなんだ。





83:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 05:30:45.66 ID:2FB0APaH0

「見えたんじゃあない」

「?」

「思い出していたんだよ」


降りしきる雨と雲り空の向こうには僅かに太陽が覗いていた。


終わり。





85:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/04/01(月) 08:11:13.10 ID:kR3DavTRO


露伴先生のこういう話読みたかったから嬉しい。感謝





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