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353: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 01:14:56.57 ID:dxDLgvSzo
〜城の最深部〜

コツッ コツッ コツッ…

ギギギギ…

ウオオオオオン…

「あと少しだ…あと少しで新勇者が来る…」

ウォオオオオン…

「新勇者よ…早く来い…その時こそ…」



----最も優秀な我が民族が世界を治めるために----




354: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 01:15:33.96 ID:dxDLgvSzo
〜〜大臣の回想〜〜

  俺は以前、この城の清掃係だった頃、サボるために身を隠す場所を探していて、最深部に迷い込んだことがある

  そこには結界に守られた扉があった

  俺がその扉にもたれかかりサボりの言い訳を思案していたら急に景色が変わり…目の前にはこの武具があった

  武具が長い歳月を掛けて作り上げた結界の綻びに俺は落ちたのだ

  武具は俺の頭に直接話しかけてきた

  ---魔力をよこせ---と




355: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 01:16:11.19 ID:dxDLgvSzo
  俺は寝ぼけているんだと思った

  夢なら何があっても怖くないと思った俺は尋ねた

  魔力と引き換えに、何をしてくれるのかと

  武具は俺に力をくれると約束した

  武具は剣を取れと

  言われるままに剣を取った

  そのとき武具全体が鳴動した

  すると魔力を全て吸われた

  目眩がして倒れそうになったが、元々持っている魔力が微々たるものだったこともあり、何とか意識を保っていた

  ---力を与えよう---




356: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 01:16:37.51 ID:dxDLgvSzo
  俺は体中に力がみなぎるのを感じた

  武具から力をもらったのだ

  そのとき俺は、今までの出来事が夢ではなく現実だと知った

  そして…俺の中の野心に火がついた

  この国を…この世を支配したいと

  我が民族を虐げてきた者共を見返し、支配したいと

  優秀なる我が民族がこの世の全てを牛耳るのだと




357: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 01:17:22.02 ID:dxDLgvSzo
  俺は武具を元に戻し、封印を避けるようにして抜け道を作ってその部屋を出た

  封印を破ったり武具を持ち出したりすると騒ぎになるからだ

  そして野望の実現のために軍に志願した

  最初は馬鹿にしていた将校達も俺の剣捌きを見て黙り込んだ

  俺は軍で力を見せ付け、過激な発言で注目を集めた

  腑抜けた連中を尻目に俺はトントン拍子に出世した

  気がつけば過激派と言われ、軍の中でもそこそこ大きな勢力になっていた




358: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 01:18:10.73 ID:dxDLgvSzo
  そして反乱軍ごっこなどと生意気なお遊びをしている連中をからかうつもりで進軍したら…魔王たちが居た

  奴らは強かった

  いや、奴等の特技がすごかったのだ

  魔王は一瞬で多くの群集を洗脳し、魔法使いはその強大な魔力で数々の強力な攻撃魔法を繰り出した

  俺は思った

  “これを利用しない手はない”と…

  奴らを隠れ蓑にして俺の野望を実現してやるのだ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

大臣「…もう少しだ…もう少しで我が悲願が達成する…ふふふふ…ふはははは…ははははは!!」




378: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:05:49.85 ID:dxDLgvSzo
〜碧眼の国〜

男「…見事なまでに青い髪と目だな…」

魔娘「でも、それ以外はわたし達とほとんど変わらないわ」

くの一「そうね。ここではわたし達のほうが珍しいんだけどね」

魔娘「それで…どうするの?」

くの一「わたしは情報を集めてくる。だから…夜に宿屋に戻るわ」

魔娘「別行動ね。分かったわ」




379: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:06:24.67 ID:dxDLgvSzo
くの一「じゃあ」

シュン…

男「…で、俺たちはどうするんだ?」

魔娘「そうね、とりあえず…町をブラブラしましょ?」

男「…買い物か?」

魔娘「そう。必要なものを買い揃えなきゃね。市場はどこかしら?」
  ・
  ・
  ・




380: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:06:51.50 ID:dxDLgvSzo
〜数日後・路地裏〜

くの一「こっちよ」

男「薄暗くて不気味なんだけど」

魔娘「変な臭いもするし…」

くの一「文句言わないの」
  ・
  ・
  ・




381: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:07:18.28 ID:dxDLgvSzo
くの一「ここよ」

魔娘「ここって言われても…」

男「…廃墟?」

くの一「…入るわよ」

ギギィ…

男「真っ暗だな…」

魔娘「やっぱり変な臭い…」

ガタッ

魔娘「ちょっと!」

男「悪い、足元が見えないから…」




382: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:07:44.63 ID:dxDLgvSzo
?「…誰だ」

一同「「「!?」」」

くの一「…ある人を探してるの」

?「…ここには私しか居ない…帰りなさい」

魔娘「!?」

男「どうした?」

魔娘「その声…喋り方…側近なの!?」




383: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:08:11.32 ID:dxDLgvSzo
?「…側近など知らない。帰りなさい」

魔娘「…じゃあいいわ。回復魔法と変化魔法と解毒呪以外使えないような封印をわたしにかけた側近かと思ったけど…」

?「っ!?」

魔娘「帰るわね」

男「え?マジで帰るのか?」

魔娘「ええ。あとはよろしくね、くの一さん」

くの一「…」




384: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:08:41.09 ID:dxDLgvSzo
?「…お、お待ちください!!」

カッ コツッ カッ コツッ…

男(この人…足が悪いのか?杖を突いて…)

?「…すみません。フードを取ってお顔を見せてください」

魔娘「…」

パサッ

魔娘「…これでいい?」




385: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:09:07.60 ID:dxDLgvSzo
?「おおぉ…姫様!御無事で!!」ギュッ

魔娘「やっぱり側近なのね?」

?改め側近「はい!」

魔娘「…ごめん、ちょっと離れて」

側近「え?」

魔娘「臭いが…ね?」

クンクン…

側近「…身支度をしてきますので今しばらくお待ちください」
  ・
  ・
  ・




386: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:09:36.44 ID:dxDLgvSzo
側近「そうですか…ご苦労をされたのですね…すみませんでした」

魔娘「もういいわ。それに…」チラッ

男「…へ?」

魔娘「そのおかげで男に会えたんですもの」

側近「姫様…」

男(この人…さっきはわかんなかったけど…髪をちゃんと梳かしたら優しそうなおばさんだったんだ…)

魔娘「じゃあ…今度は側近のことを聞かせて?あの後…わたしを人間界に送った後、何があったのか」




387: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:10:27.86 ID:dxDLgvSzo
側近「…主王様のことではないのですか?」

魔娘「お父様のことは…もういいわ」

男「俺たち、白竜人の菩提所も行ってきたんですよ。そこで前主王の亡骸と…」

側近「そうでしたか…申し訳ありません。私がもっと警戒をしていれば…」

魔娘「それはしょうがないことよ」

側近「しかし…」

魔娘「しょうがないことなのよ…」

側近「…申し訳ありません」




388: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:10:54.12 ID:dxDLgvSzo
魔娘「それで、どうして側近はこんなところに居るの?どうやって暮らしていたの?」

側近「はい。今は代書屋などをして暮らしております」

魔娘「え?なんで?側近ならもっと他に仕事があるんじゃ…」

側近「…姫様、私の左目を見てください」

魔娘「左目?…眼帯?」

側近「あの反乱で…主王様とともに戦っているときに矢が刺さりまして」

側近「それ以来、魔法を使おうとすると頭の芯が痺れて…魔法が使えなくなってしまったのです」

魔娘「そうだったのね…」




389: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:11:20.56 ID:dxDLgvSzo
側近「それに…矢が刺さって倒れている間に、足に毒を喰らってしまい…」

側近「何とか解毒はしたのですが…思ったように動かなくて…」

魔娘「それで私を探しにこれなかったのね」

側近「申し訳ありません!必ず迎えに行くと言っておきながら!!」

魔娘「もういいわ。謝らないで」

側近「しかし!」

魔娘「側近が人間界の一番いい場所に飛ばしてくれたから…わたしはこうして戻ってこれたの。だからもういいのよ」ニコッ

側近「姫様…」




390: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:11:46.82 ID:dxDLgvSzo
男「ところで、どうやって主王城からここまで逃げてきたんですか?」

側近「…姫様。こやつは?」

魔娘「わたしの伴侶よ」

側近「…はい?」

男「魔娘の夫です」ペコッ

側近「…いやいや!姫様にはもっと相応しい伴侶をですね!!」

男「俺じゃダメだってんですか?」

側近「当然です!姫様は主王様のお血筋!!それがこんなわけの分からないオトコとなんて!!」




391: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:12:15.86 ID:dxDLgvSzo
魔娘「まあ、確かに大馬鹿者ね」

側近「やっぱり!」

男「フォローする気もないの!?」

魔娘「お人好しでマザコンで、わたしのために命さえ投げ出そうとするような大馬鹿者よ」

男「えらい言われようだな…」

側近「し、しかし…このような貧弱な身体では…」

魔娘「男はね、クラーケンを撃退したことがあるのよ?」

側近「クラーケンを!?」

魔娘「ええ」

男「いや、あれは腹が減ってたから食おうとしただけだって。結局逃げられたし」

側近 アゼーン




392: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:12:59.01 ID:dxDLgvSzo
男「…って、ちょっと待った。話が逸れてる」

魔娘「そうね。どんな話してたっけ?」

男「側近さんはどうやってここまで逃げてきたんだ?って」

魔娘「そうだったわね」

側近「…主王様です」

魔娘「え?」

側近「矢が刺さり…毒に犯された私を主王様は…転移魔法で碧眼の国まで転移してくださいました」

魔娘「そう…」




393: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:13:25.16 ID:dxDLgvSzo
側近「私は…主王様をお守りすることも出来ず…姫様をお助けすることも出来ず…申し訳ありません!」

魔娘「もういいってば…」

側近「ひ、姫様ぁああ…」グスッ

魔娘「ちょっと!いい大人が泣かないの!!」ナデナデ
  ・
  ・
  ・




394: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:13:56.50 ID:dxDLgvSzo
くの一「〜〜〜と、こっちで調べたのは大体こんなものね」

側近「分かりました。では、こちらの情報ですが…大体同じようなものです。すみません…」

魔娘「ううん。側近は良くやってくれたわ。そんな身体なのに…」

側近「勿体無いお言葉…ありがとうございます」

男「…ちょっと気になったんだけどさ」

魔娘「なあに?」

男「俺たち、魔王や従者のことばっか調べてるけど、他に気になることって…ないのか?」

くの一「他にって?」

男「いや、なんとなく言ってみただけなんだけどさ」

魔娘・くの一・側近「「「…」」」




395: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:14:23.54 ID:dxDLgvSzo
魔娘「何かあるのかと思ったら…」ジトー…

くの一「ただの思いつきだなんて…」ジトー…

男「うぅ…視線が冷たい…」

側近「…」

魔娘「側近も呆れて言葉が出てこないみたいだわ」

側近「…いえ。実は…気にかかることがありまして…」

魔娘「どんなこと?」




396: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:14:49.45 ID:dxDLgvSzo
側近「はい…実は…獣の国にレジスタンスがいるとの情報が」

魔娘「レジスタンス?」

くの一「あ、それはあたしも聞いたわ。軍がゲリラに攻撃されてるって」

男「ゲリラ?」

側近「それで獣の国に軍が移動しているんです」

男「それって…チャンスじゃないのか?」

くの一「そうでもないわ。王の国の軍隊は移動していないもの。移動しているのは周辺の国の軍隊だけよ」

魔娘「じゃあダメね…」




397: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:15:16.86 ID:dxDLgvSzo
側近「そのことに関連して…憂慮していることがあるのです」

魔娘「どんなことかしら?」

側近「はい。軍を動かすと費用が発生します。先の反乱で国庫の資金はかなり減っているはずなのですが…」

くの一「資金源が分からないってこと?」

側近「はい。それで憂慮しているのは…城内のものを売却しているのではないかと」

魔娘「装飾品とか?」

側近「いえ、装飾品であればそれほど気にすることはないのですが…」

魔娘「じゃあ…なあに?」




398: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:15:43.70 ID:dxDLgvSzo
側近「はい…わたしが憂慮しているのは武具…“呪いの武具”のことなのです」

くの一「“呪いの武具”だって!?」

男「物騒な名前だな…」

くの一「ホントにあったのね…」

魔娘「くの一さん、知ってるの?」

くの一「あくまで噂だけどね」

側近「姫様が御存知ないのも無理はありません。あれの話は忌諱に触れますから…」

魔娘「…どういうことかしら?」




399: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:16:09.58 ID:dxDLgvSzo
側近「…姫様」

魔娘「なあに?」

側近「姫様は…“エルフの悪夢”をご存知ですよね?」

魔娘「え、ええ…」

側近「しかし、どうやって事態が収束したか…御存知ないですよね?」

魔娘「それは…ええ。知らないわ」




400: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:16:39.48 ID:dxDLgvSzo
側近「あの時のハーフエルフは…その寿命を魔力に換えて、無差別に攻撃していました」

側近「そこで当時の主王様が、“呪いの武具”を身に纏い、ハーフエルフの魔力を吸収して倒したのです」

魔娘「すごい武具じゃない。それがどうして“呪いの武具”なの?」

くの一「噂では…“呪いの武具”は魔力を“力”に換えるって聞いたわ」

魔娘・男「「…え?」」

側近「そうです…“呪いの武具”は相手の魔力だけでなく、それを纏ったものの魔力までも貪欲に吸い取ってしまうのです」

側近「そのため、ハーフエルフを倒した当時の主王様は武力は上がったものの…二度と魔力が回復することはありませんでした」

男「恐ろしい武具だな…」

魔娘「ホントね…一体誰が、何の目的で作ったのかしら…」

くの一「噂では人間が作ったって話だけど…」




401: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:17:18.32 ID:dxDLgvSzo
側近「…その噂は正しいです」

一同「「「え!?」」」

側近「“呪いの武具”は今から遙か以前…勇者が身に纏っていた武具なのです」

男「勇者様が!?」

側近「…その頃の勇者は魔法を使えなくて、主王様の魔法に対抗するために人間達が生み出したのが“呪いの武具”だと聞いています」

男「人間が…」

側近「“呪いの武具”は兜、鎧、盾、剣の4つです。しかし、魔力を吸収しなければ普通の武具と変わりはありません」

側近「結局、当時の主王様は魔法を使わず剣での戦いになり、勇者は討たれました」




402: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:17:51.58 ID:dxDLgvSzo
側近「それでもその武具は近づくものの魔力を吸い取ろうとしたと…ですので、主王様は“呪いの武具”として城の奥深くに封印していたのです」

男「なるほどなぁ…」

魔娘「お城の奥には近づいちゃいけないって言われてたけど…そういうことだったのね」

側近「私の懸念は、彼らがその“呪いの武具”に手を出していないか…ということなのです」

魔娘「…でも、封印してるのよね?」

側近「それは…はい。結界でおいそれとは近づけないはずです」

魔娘「じゃあ大丈夫じゃない?王家の結界ならちょっとやそっとじゃ解けないでしょ?」

側近「そうなのですが…なにやら胸騒ぎがするのです…」

魔娘「え?」




403: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:18:17.68 ID:dxDLgvSzo
側近「王家の結界は生半可な魔力では解けません。それこそ全盛期の私の様な術者でないと…」

側近「しかし…もし魔王側に力を持った術者がいたら…」

魔娘「そ、そんな術者はそうそういないわよ。ね?」

側近「そうですね…それにもし結界を破ったとしても、部屋の中に入った途端、“呪いの武具”に魔力を吸い取られるでしょうし…」

側近「…私の杞憂であればよいのですが…」

一同「「「「…」」」」




404: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:18:43.72 ID:dxDLgvSzo
男「あの〜」

魔娘「なあに?」

男「もしさ、元々魔力を持ってない人が“呪いの武具”に近づいたら…どうなるんだ?」

魔娘・くの一「「え?」」

側近「それは…なんともなりませんね」

魔娘「どういうこと?」

側近「“呪いの武具”は近づくものの魔力を吸い取り、力に換えます。ですので魔力のないものが近づいても…」

くの一「何にも起こらないって事ね…」




405: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:19:42.57 ID:dxDLgvSzo
側近「ですが…主王国の民でそのようなものは殆んどおりませんし…」

側近「それこそ杞憂だと思いますよ?」

男「そっか。じゃあさ、魔力を吸い取られたらどうなるんだ?」

側近「…一瞬で魔力を吸い取られるため、気を失ったり動けなくなったり…最悪、死ぬこともあります」

男「物騒だな…」

魔娘「そんなものを持ち出されたら…大変ね…」




406: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:20:23.94 ID:dxDLgvSzo
男「…まあ、“呪いの武具”については封印してあるってことで後で考えるとして…」

魔娘「そうね。今は…出来ることを考えましょ?」

側近「そうですね…もし術者がいたら、すでに結界は解かれているでしょうし…」

魔娘「そうよ。だから今ここで悩んでたって仕方ないもの」

男(もし結界が解かれていたら…魔法は使えない上に接近戦もダメってことだよな…)

側近「では…これからどうするか…ですね」

魔娘「ええ…」




407: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:20:49.87 ID:dxDLgvSzo
側近「その前にお聞きしたいのですが…姫様はどうなさるおつもりですか?」

魔娘「わたしは…」チラッ

男 コクッ

魔娘「…お父様の仇を討ちたい。このままじゃ…お父様がかわいそうだもの」

側近「そうですか…では…どのようにいたしますか?」

魔娘「え?」




408: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:21:17.12 ID:dxDLgvSzo
側近「仇を討つとして…相手は過激派を中心とする屈強な軍を持っています」

側近「主王様の仇を討つためには、その軍を相手にすることを念頭に置かねばなりません」

魔娘「そんなもの!わたしの魔法で蹴散らして!!」

側近「それに、首尾よく仇を討ったとして…反乱軍が残っていれば、混乱が生じると思われます」

側近「姫様は反乱軍を全滅するおつもりですか?」

魔娘「そ、それは…」

側近「…仇を討つのであれば、そのあとのことも考えるべきです。混乱が生じれば…苦しむのは民なのですから」

側近「主王様は…民の幸せを第一に考えておられました。ですから姫様も…」

魔娘「…」




409: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:21:43.03 ID:dxDLgvSzo
くの一「あたしはレジスタンスのことを調べたほうがいいと思うよ?」

魔娘「え?」

男「俺もそう思う」

魔娘「なぜ?」

くの一「レジスタンスの目的が分からないからね」

男「それにさ、レジスタンスってことは魔王に反発してるってことだろ?もしかしたら味方になるかもしれないじゃないか。な?」

くの一「それはどうかわからないけど…場合によってはレジスタンスも相手にする可能性があるわけだし…」

男「え?なんで?」




410: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:22:08.97 ID:dxDLgvSzo
くの一「もしレジスタンスの目的が、自分達が王になることだったら?」

男「あ…」

くの一「だから、情報を集めておいて損はないと思うわ」

側近「ふうむ…私もそう思います」

魔娘「…そうね」

男「じゃあ決まりだな。次の目的地は…」

魔娘「ええ。獣の国よ」




411: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:22:45.68 ID:dxDLgvSzo
〜獣の国・小さな町〜

ジロジロ…

男「なんか…見られてるな…」

魔娘「ええ…」

男「初めて“辺境の港”に行ったときみたいだ…」

くの一「気をつけたほうがいいわね…」

ザザッ

男「!?」チャキッ




412: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:23:12.78 ID:dxDLgvSzo
馬人「お前ら、この国のもんじゃねえな」

牛人「怪我したくなかったら有り金全部置いて行けや」ニヤニヤ

くの一『二人とも、逃げるわよ』コソコソ

馬人「おっと。逃げようったってそうはいかねえぞ?俺ぁ脚が早いんだぜ?」ニヤニヤ

牛人「俺ぁ力はあるぜえ?」ニヤニヤ

男「頭悪そうな連中だな…」

馬人・牛人「「なに!?」」




413: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:23:41.87 ID:dxDLgvSzo
牛人「てめぇ!」ブン!

男「おっと」ヒョイ

馬人「せいっ!」グワッ!

男「よっ」ヒョイ

馬人「…俺のけりをかわすたぁ…やるじゃねえか」

男「大したことないな。動きが遅い」

牛人「…てめえ」ジロッ

馬人「俺たちを本気で怒らせたようだな…」ジロッ




414: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:24:08.60 ID:dxDLgvSzo
魔娘「何やってんのよ!」

男「いや、だってこいつらが…」

くの一「もう!どうするのよ!!もう逃げられないじゃない!!」

モブ獣人 ゾロゾロ…

くの一「ほら!仲間が出てきたじゃない!!」

魔娘「何とかしなさい!」

男「何とかって言ってもなあ…」ポリポリ




415: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:24:39.27 ID:dxDLgvSzo
「お前ら何をやってる!」

馬人「…ち、牙狼族の奴らだ」

牛人「引き揚げだ」

ゾロゾロ…

狼男1「大丈夫か?」

男「ああ。ありがとうございます」

魔娘「助かったわ。あいつら、いきなり絡んできたから」

くの一「あなたたち…さっきの連中が“牙狼族”っていってたけど…」

狼男2「ああ。一応、この町で自警団をやっている」

男「自警団?」

狼男1「ああ」




416: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:25:05.43 ID:dxDLgvSzo
魔娘「さっきの連中はなんなの?」

狼男1「…軍の兵士だ」

魔娘「今のが!?確か軍は規律が厳しかったはずよ?あんな連中がいるなんて…信じられないわ!」

狼男2「…魔王軍は今、軍を大きくしようとしている」

狼男2「それで傭兵だけじゃなくゴロツキどもも取り込んでいるんだ」

くの一「どうりで。ところで…あなたたちは大丈夫なの?」

狼男1、2「「ん?」」




417: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:25:31.66 ID:dxDLgvSzo
くの一「わたしたちを助けたら、貴方たちがあいつらに狙われるんじゃない?」

狼男1「その心配はいらない。自警団は族長直属の組織だからな。たとえ魔王軍と言えど、風紀を乱すものは遠慮なく罰する」

男(族長って…確か各国を統治している人だよな?)

男「あの…それで軍と対立したりしないんですか?」

狼男2「…軍の中にも我等の同族はいるのだ」

魔娘「そうね。自警団に反抗すると軍内部の同族が黙っていないものね」




418: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:26:06.36 ID:dxDLgvSzo
狼男2「そう言うことだ。それよりお前達、旅人のようだが…この町に留まるのか?」

魔娘「そうね。少なくとも今夜はね」

狼男2「そうか。なら、この通りの三つ目の十字路を左に入って3件目の宿に泊まるといい」

くの一「安いの?」

狼男2「値段は普通だが、俺の同属がやっているから少しは安全だ」

男「そうですか。ありがとうございます」

狼男1「早くいけ。また面倒なことに巻き込まれないうちにな」

魔娘「わかったわ。助けてくれてありがとう」

くの一「…さ、急ぎましょう」




419: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:26:32.67 ID:dxDLgvSzo
〜宿の部屋〜

男「わりといい部屋だな」

魔娘「その分ちょっとお高いけどね」

男「このダブルベッドも毛がついてるかと思ったけど、そうでもないし」ポン

魔娘「獣人は他の種族の体毛には敏感なのよ。だから丁寧に掃除してるのよね」

男「そうなんだ」

コンコン

男「!?」チャキッ




420: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:26:58.49 ID:dxDLgvSzo
くの一『あたしよ。入ってもいい?』

男「あ、はい。どうぞ」

ガチャ

くの一「一応周りも確認したけど、とりあえず安心していいわ」

魔娘「そう。ありがとう」

くの一「もう少ししたらあたしは情報を集めてくるわ。あなた達は?」

男「あ、そうですね…道具とか買い物してこようかと」

魔娘「あと保存食もね」




421: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:27:24.61 ID:dxDLgvSzo
くの一「気をつけてね?さっきみたいに自警団の人が助けてくれるとは限らないから」

男「いざとなったら逃げますよ」

くの一「そうね。それがいいわ。それじゃ」

シュン

男「…くの一さん、頼りになるなあ」

魔娘「男も十分頼りになるわよ?」

男「そうか?」

魔娘「トラブルも多いけどね」

男「ははは…」

魔娘「…さ、わたし達もそろそろ行きましょ?」

男「そうだな」




422: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:28:04.36 ID:dxDLgvSzo
〜町中〜

オラオラネーチャンアソンデコウゼ サワンジャナイヨ ツレネエナー ワハハハ

男「…ガラが悪いなぁ…」

魔娘「何処も彼処もチンピラだらけね…」

男「さっさと買い物を済まして帰ろう」

魔娘「ええ」
  ・
  ・
  ・




423: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:29:15.92 ID:dxDLgvSzo
男「これで大体のものは買ったかな?」

魔娘「えっと…そうね、早く帰りましょう」

男「よし。じゃあ荷物を抱えて…」

魔娘「あ…男…」

男「どうした?…ん?」

兵士1「へっへっへー」ニヤニヤ

兵士2「よお姉ちゃん。俺たちといいことしようぜぇ」ニヤニヤ

兵士3「俺たち似蛇族は血交じりはできねえからよぉ、中に出しても安心なんだぜぇ?」ニヤニヤ




424: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:29:43.15 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…」ジリジリ

兵士4「おっと。逃げようったって無駄だぜ?おい!」

ゾロゾロ…

男「なんだなんだ?いっぱい出てきたぞ?」

魔娘「…鬱陶しいわね…」

兵士‘s「「「「へっへっへー」」」」ニヤニヤ

男「…どうする?逃げるか?」




425: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:30:08.30 ID:dxDLgvSzo
兵士1「おい、お前」

男「ん?俺か?」

兵士2「さっきから目障りなんだよ!消えろ!!」

男「…と言われてもなあ…」ポリポリ

兵士3「…おい」

ザザザ

魔娘「…取り囲まれたわね」

男「そうだな」




426: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:30:34.58 ID:dxDLgvSzo
兵士4「なに余裕こいてんだゴルァ!てめえら気にいらねえ!!」

魔娘「あら、奇遇ね。わたしもあなた達のことが大嫌いよ?」

兵士1「っんだとお!」

魔娘「それに臭いわ。似蛇族特有の臭いね、これは」

兵士2「…てんめぇ!」

魔娘「あ、そうそう。似蛇族が血交じりが出来ない理由って知ってる?種が根本的に違うかららしいのよねえ」

兵士3「それ以上言ったら許さねえぞ!」

魔娘「どんな風に許さないのかしら?種が違うのはあなた達が元々…ミミズだからなのよねぇ」

男(魔娘のヤツ…よっぽどこいつらのことが嫌いなんだな…)




427: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:31:00.65 ID:dxDLgvSzo
兵士4「やつらを捕まえろ!!女はみんなで姦すぞ!オトコのほうは遣っちまってもかまわねえ!!」

一同「「「おるぁ!」」」ドドドド

男「一斉に押し寄せてきたな…“転移”」

シュイン

兵士1「え?ちょっ!と、止まれー!うわあぁぁぁ!!」グシャ ペキッ
  ・
  ・
  ・




428: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:31:26.94 ID:dxDLgvSzo
〜宿の前〜

シュイン トサッ

男「周りの様子は…」キョロキョロ

魔娘「…どう?」

男「…大丈夫みたいだ」

魔娘「そう。良かった」

男「早く宿に帰ろう」

魔娘「ええ」




429: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:31:55.73 ID:dxDLgvSzo
〜宿の部屋〜

ドサッ

男「買い物もとりあえず終わったな」

魔娘「そうね。荷造りしておきましょう」

男「ああ。それにしても…魔娘って似蛇族が嫌いなのか?」

魔娘「似蛇族が嫌いっていうか…弱いものには強く出るけど強いものには媚び諂う奴は嫌いなのよ」

魔娘「そういう奴に限って、ひとりじゃ何もできないくせに大勢集まると傍若無人な振る舞いをするの。さっきもそうでしょ?」

男「あー、確かにな」

魔娘「あれなら、この町で最初に絡んできた馬人や牛人のほうがマシだわ」

男(いや、どっちもダメだろ…)




430: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:36:15.87 ID:dxDLgvSzo
魔娘「ついでに言っておくと、似蛇族を軍に登用することはないわ。だってすぐに逃げるし寝返るし…身勝手なんだもの」

男「え?でもさっきの連中って…兵士じゃないのか?」

魔娘「ええ…正規軍の兵服を着ていたわ…」

男「ってことは正規軍の兵士だろ?」

魔娘「そうね…何があったのかしら…」

コンコン

魔娘・男「「!?」」チャキッ




431: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:36:42.11 ID:dxDLgvSzo
くの一『あたしよ。入っていい?』

男「なんだ…どうぞ」

ガチャ

くの一「帰ってきてたのね」

魔娘「ええ。買い物も終わったし」

くの一「なんだか通りのほうが騒がしいけど…何かあったの?」

男「あー、ちょっとね」

くの一「ちょっとって?」




432: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:37:23.18 ID:dxDLgvSzo
魔娘「似蛇族の兵士に絡まれただけよ。なんてことないわ」

くの一「あら。それはちょっと厄介かもね…」

男「なんで?」

くの一「この町の軍のトップがじじゃぞくらしいのよ」

魔娘・男「「はあ?」」

くの一「そうだよねー。あたしも思わず耳を疑ったわ」

魔娘「まあ、大丈夫でしょ。この宿屋の主人は牙狼族だもの」

くの一「そうね。でも、気をつけるに越したことはないわ」




433: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:38:10.81 ID:dxDLgvSzo
くの一の台詞が…orz

○くの一「この町の軍のトップが似蛇族らしいのよ」

×くの一「この町の軍のトップがじじゃぞくらしいのよ」




475:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/01/21(月) 00:00:25.69 ID:wrz0zD77o
似蛇の読み方がやっと分かった




479:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/01/21(月) 00:48:53.03 ID:JPw3/Lcx0

「にだ」じゃなくて「じじゃ」だったんだな・・・




480:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/01/21(月) 01:23:32.43 ID:NXg5AEdqo
俺もニダ族って読んでた




481:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/01/21(月) 01:40:54.31 ID:MSaFBjEFo
名前も特徴からもニダと読むと思っていた




485:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/01/21(月) 11:53:20.50 ID:ux9czCuuo
<丶`∀´>クックックッ




434: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:38:50.87 ID:dxDLgvSzo
魔娘「それより、何か情報はあったの?」

くの一「ええ。信じられないことが起こってたわ」

男「どんな?」

くの一「ここ何年かの間にね、軍の幹部や兵士が大量に解雇されたらしいの」

魔娘「…え?」

くの一「どうやら現魔王は自分に都合のいい軍隊を作ろうとしているらしいわ」

魔娘「どういうこと?」




435: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:39:17.15 ID:dxDLgvSzo
くの一「解雇された人たちは…親主王派だったのよ」

魔娘「!?」

くの一「魔王の目的は人間界への侵攻。そのために自分達の言うことを聞こうとしない人達を解雇したのね」

男「うわあ…」

魔娘「…解雇された人たちは?」

くの一「それが今のレジスタンスよ」

魔娘・男「「え?」」




436: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:39:44.28 ID:dxDLgvSzo
くの一「それで…レジスタンスの幹部にコンタクトを取ったんだけど…」

魔娘「今日一日でそこまで出来たの!?」

くの一「あたし達ニンジャは単独で行動するけど、情報は共有するようにしてるの」

くの一「まずはこの国に居るニンジャにコンタクトを取って、会って来たの」

くの一「この国に居るニンジャは優秀な人でね。レジスタンスの幹部にコネクションを持っていたのよ」

男「すごいんだなニンジャって…」




437: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:40:13.53 ID:dxDLgvSzo
くの一「…どう?会ってみる?」

男「また唐突だな…大丈夫なのか?」

くの一「それは分からないわ」

男「おいおい…」

くの一「コネクションを持っているからと言って、そこまで深い付き合いじゃないの」

魔娘「…」




438: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:40:39.57 ID:dxDLgvSzo
男「どうする?嫌なら辞めてもいいんだぞ?」

くの一「でも、会ってみないと分からないでしょ?敵なのか、味方なのかは。ね?」

男「そりゃそうだけど…」

魔娘「わたしは…6:4で会ったほうがいいと思うわ」

男「また低い割合だな…」

魔娘「だって、相手がどんな人か分からないのに手放しで信用はできないでしょ?」

男「…そうだな」

くの一「じゃあ決まりね。連絡してくるわ」

シュン




439: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:41:05.64 ID:dxDLgvSzo
男「…ホントに大丈夫なのか?」

魔娘「ここまで来たらやるだけやってみるわ。行動しないと何も変わらないもの」

魔娘「それに…いざとなったら男の転移で逃げれるでしょ?」

男「魔娘って…ホントに割り切るのが早いな。さすが姐さん!」

魔娘「どういう意味よ!」




440: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:41:34.91 ID:dxDLgvSzo
〜夜・レジスタンスの隠れ家の近く〜

魔娘・男「「…」」

くの一「どうしたの?」

男「いや…すごい森だな…」

魔娘「…ねえ、ホントにここなの?」

くの一「ええ」

男「でもさ…建物も何もないじゃん!」

魔娘「しかもいろんな魔物の匂いがするわよ?」




441: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:42:01.14 ID:dxDLgvSzo
くの一「ここで間違いないわ。あなた達、エルフの結界って知ってる?」

魔娘「ええ、知ってるわ」

くの一「この森はエルフの結界で守られてるの。見た目はただの森だけどね」

くの一「そして隠れ家に行くためにはエルフの結界を抜けなきゃいけないの」

男「でもさ、森に火を着けられたら一発でばれるんじゃ…」

魔娘「そんなことをしたら族長が黙ってないわね」

男「なんで?」




442: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:42:27.21 ID:dxDLgvSzo
魔娘「獣の国の民にとって森は狩りや山菜なんかを得るために重要な場所なの。だからむやみに手出しできないのよ」

魔娘「そして軍の兵士の半数ほどが獣人族よ。だから獣の国の族長を怒らせるようなことはしちゃいけないの」

男「なるほど」

くの一「…こんなところで長居したら危険だわ。さ、行きましょ」

男「そうだな。じゃあ…」

くの一「待って。そっちじゃないわ」

男「え?でも道はここしかないんじゃ…」




443: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:43:07.05 ID:dxDLgvSzo
くの一「入口はこっちよ」

男「え?そこって茂みじゃ…あれ?あそこ、なんか揺らいでるような…」

くの一「あなた、見えるの!?あたしは“エルフの目薬”で何とか見える程度なのに…」

男「ええ、まあ…」ポリポリ

魔娘「男はハーフエルフだからね」

くの一「そうだったわね…ほら、手を繋いで」

男「じゃあ…魔娘を真ん中にして」

魔娘「…ありがと」

男「俺は後ろを警戒する」

くの一「そうね。じゃあ…行くわよ」
  ・
  ・
  ・




444: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:43:33.21 ID:dxDLgvSzo
男「ずいぶん歩くんだな…」

魔娘「もう15分ぐらい歩いてるわ…」

くの一「もうすぐ出口よ」

パァアアア…

くの一「…着いたわ」

男「ここが…」

魔娘「レジスタンスの隠れ家ね…」

男「すごい…ちょっとした村だな」

「とまれ!」

魔娘・男 ビクッ




445: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:44:00.24 ID:dxDLgvSzo
熊男「…お前ら、どうやってここまで来た?」

くの一「“エルフの目薬”を使ってきました」

熊男「“エルフの目薬”だと!?お前ら…誰から手に入れた?」

くの一「わたし達、地元ニンジャさんの紹介で来たんです。これが紹介状です」

熊男「紹介状だあ?貸してみろ…ふん、確かに。軍師に会いに行くのか」

くの一「ええ。それじゃあ」

熊男「おっと、その前にお前達の匂いを嗅がせてもらう」

男「…匂いフェチ?」




446: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:44:27.07 ID:dxDLgvSzo
熊男「誰がだ!お前らが武器や毒なんかを持ってないか調べるんだよ!!」

男「そう言うことですか」

くの一「じゃあ、あたしから行くわね」
  ・
  ・
  ・




447: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:44:53.64 ID:dxDLgvSzo
熊男「…よし、行っていいぞ」

くの一「ありがとう。さ、行くわよ」

熊男「妙なマネはするなよ?女子供を牙に欠けるのは性に合わないからな」

男「女子供って…」

魔娘「あなたが子供に見えるってことでしょ?見た目だけじゃなくて中身も」

男「おいどういう意味だそれ」

熊男「騒ぐんじゃねえ!」

魔娘・男 ビクッ




448: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:45:20.11 ID:dxDLgvSzo
くの一「はぁ…ごめんなさい。さっさと連れて行くわ…」

熊男「ああ、そうしてくれ。軍師はここをまっすぐいった先のでかいテントの中にいる」

くの一「ありがとう。あなたたち、ちゃんと付いてきなさいよ!」

魔娘・男「「はーい」」
  ・
  ・
  ・




449: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:45:46.33 ID:dxDLgvSzo
くの一「…ここね」

魔娘「軍師って言ってたけど…どんな人なの?」

くの一「さあ?」

男「おいおい…」

くの一「とにかく、会ってみないと分からないでしょ?行くわよ」

魔娘「…そうね」

男(なんだろう…くの一さん、なんか焦ってるような…)




450: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:46:14.63 ID:dxDLgvSzo
〜軍師のテント〜

バサッ

ラミア「失礼します。軍師さんにご面会ですわ」

軍師「相変わらず艶っぽいなぁ♪こっちにおいで♪」

ラミア「うふふ。だぁめ。ちゃんとお仕事してくださいな」

軍師「ははは。ラミアちゃんは真面目だなぁ。ところで…誰だ?」

ラミア「こちらの方々ですわ」




451: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:47:21.83 ID:dxDLgvSzo
くの一「あ、くの一といいます。地元ニンジャさんの紹介で…」

軍師「ああ、話は聞いている。立ち話もなんだし、そこの椅子に座ってくれ」

くの一「ありがとうございます」トサッ

男(なんか…軽そうな黒豹だな…)

魔娘「…」トサッ

軍師「…そこの人、顔が見えないからフードを取ってくれないか?」

魔娘「…」

パサッ




452: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:47:48.91 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…これでいいかしら?」

軍師「…その角、まるで先代の主王様みたいだ…名前は?」

魔娘「魔娘よ。あなたはおと…先代の主王様を見たことがあるの?」

軍師「…あるよ。俺はこう見えても城での作戦会議に出たこともあるんだぜ?」

魔娘「そう…」

軍師「そうそう。城には姫様がいてなあ。俺を見かけると声をかけてくれたんだよなあ」チラッ

魔娘「…“黒猫”」ボソッ

軍師「猫じゃねえ!豹だってーの!!」

魔娘「…やっぱり“黒猫”なのね」




453: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:48:15.24 ID:dxDLgvSzo
スチャッ

軍師「お久しぶりです、姫様」ヒザマヅキー

魔娘「ちょっとやめてよ。もう姫じゃないんだもの。さっきみたいに普通に話をしましょ?」

軍師「はい…では、失礼して…なんでここに来たんだ?」

男「変わり身すごっ!」

くの一「まさに豹変ってやつね…」

魔娘「そのほうが話しやすいわ」クスッ




454: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:48:42.05 ID:dxDLgvSzo
軍師「まあな。いつもこんな感じで話してたもんな。で、目的は?」

魔娘「レジスタンスの目的を探るためよ」

軍師「レジスタンスの目的かぁ。それを知ってどうするんだ?」

魔娘「どうもしないわ」

軍師「…へ?」

魔娘「わたし達に敵対するのかどうかが知りたいだけよ。どう?レジスタンスはわたし達をどう扱うの?」

軍師「…」




455: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:49:08.51 ID:dxDLgvSzo
魔娘「どうかしら?」

軍師「…まず、我々の目的は軍の傍若無人な振る舞いによって苦しんでいる民を救済することだ」

くの一「今の軍の兵士は殆んどゴロツキだものね」

軍師「…そのために障害になるものであれば敵対する。たとえそれが姫様であってもな」

魔娘「そう…ならいいわ。わたし達は軍にもレジスタンスにもつかないから」

軍師「…何を考えてるんだ?」




456: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:49:35.59 ID:dxDLgvSzo
魔娘「なんてことない、ただの仇討ちよ」

軍師「仇討ち!?…3人で?」

くの一「あたしは違うわよ?」

軍師「それじゃあ…」

魔娘「…わたしと男の二人でね」

軍師「馬鹿な!死ぬつもりか!?」

魔娘「死ぬつもりはないわ」




457: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:50:20.58 ID:dxDLgvSzo
軍師「魔王の城には常時衛兵が居るんだぞ!?」

軍師「竜人ならともかく、そこの優男なんか姫様の足手纏いになるだけだろ!!」

男「えらい言われようだな。もう慣れたけどさ」

くの一「あなた、見た目は普通だものね」

魔娘「…男はね、黒竜に勝ったことがあるの」

軍師「…はあ?」

男「いや、あれは引き分けだって」




458: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:50:49.06 ID:dxDLgvSzo
軍師「…いやいやいや、さすがに嘘だろ…黒竜って言ったら竜人の中でも一番の強さじゃないか!」

くの一「クラーケンを撃退したり黒竜と引き分けたり…さすがハーフエルフね」

軍師「ハーフエルフだと!?」

男「はあ、まあ…」ポリポリ

軍師「…なるほど。そういうことか。“エルフの悪夢”の話は俺も聞いたことがある」

魔娘「わたしにとって仇は魔王ひとり。他の人とは戦いたくないの」

魔娘「だから男と二人で魔王のところに行くわ」

軍師「そうか…何かできることがあったら言ってくれ」




459: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:51:22.23 ID:dxDLgvSzo
魔娘「ううん。これはわたし個人の問題なの。だから他の人を巻き込みたくないのよ」

軍師「いや、そういう訳には行かないだろ」

魔娘「なぜ?」

軍師「…もし仇討ちが成功したとしよう。そうすると主王国は混乱するだろうな」

魔娘「え、ええ…」

軍師「いきなりトップが居なくなるんだ。秩序は乱れ、法は破られ、民は苦しむことになるだろう」

魔娘「…」

軍師「そうなったとき、誰が民を守る?姫様一人で守れるか?」

魔娘「そ、それは…」




460: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:51:58.02 ID:dxDLgvSzo
軍師「…軍のほうは俺たちで抑えることはできる」

軍師「けど、混乱を沈めるためにはカリスマが必要だ。それも、誰もが認めるような…カリスマがな」チラッ

魔娘「…」

バサッ

ラミア「失礼します。森の中に侵入者を確認しました」

軍師「軍の兵士か?」

ラミア「いいえ。4人組の人間のようですわ」

軍師「またあいつらか…」

男「あー…」




461: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:52:24.48 ID:dxDLgvSzo
軍師「ん?あいつらを知ってるのか?」

魔娘「たぶんね。新勇者一行だと思うわ」

軍師「新勇者だって?なんでまた今頃…」

魔娘「現魔王のせいで人間界にも影響が出ているみたいよ?」

軍師「それでか…まあ、新勇者のほうは放っておいてかまわないだろ」

魔娘「どうして?」




462: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:52:51.31 ID:dxDLgvSzo
軍師「この森は“エルフの結界”で守られてる。この隠れ家に近づいたら迷ってもとの場所に戻るだけだ」

ラミア「もう2回もこの森で迷ってるのに、また来るなんて…御馬鹿な人たちねえ」

魔娘「それは否定しないわ」

男「ひでえな…あ、そう言えばさ」

魔娘「なあに?」

男「ここに来るまでの間エルフ族を見てないんだけど、誰がこの結界を張ってるんですか?」

魔娘「そんなのエルフ族に決まってるでしょ?」




463: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:53:17.92 ID:dxDLgvSzo
軍師「…いや。この結界を張ってるのは…鬼子族だ」

魔娘・くの一・男「「「え!?」」」

軍師「元々俺の部隊にはエルフ族がいたんだ。そいつは優秀で…いろんな魔法が使えたんだ」

軍師「しかも人格者だったからな。そいつを慕う奴は大勢いた」

軍師「今、この森に結界を張っているのはそいつの弟子だ。エルフ族とほとんど同じ結界を張ってくれている」

男「その…エルフ族の人は…」

軍師「…反乱の時にな、死んじまったよ」

男「そうですか…」




464: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:53:44.17 ID:dxDLgvSzo
魔娘「男…もしかして…」

男「うん、たぶん…」

軍師「それがどうした?」

男「あ、いや…なんでもないです」

魔娘「…」

男「ありがとうございました」ペコッ

軍師「…変なやつだな」

男(お爺さん…すごい人だったんだ…)




465: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:54:10.62 ID:dxDLgvSzo
〜夜・宿の部屋〜

ドサッ

男「よし。これで荷造りは完了っと」

魔娘「…」

男「…どうした?」

魔娘「え?う、ううん。なんでもないわ」

男「そうか?腹でも減ってるんじゃないのか?」

魔娘「そ、そうね!早く行きましょ!?」

男「そうだな」

ガチャ
  ・
  ・
  ・




466: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:54:44.25 ID:dxDLgvSzo
〜食事中〜

モグモグ…

魔娘・男「「…」」

男(魔娘…さっきのことを考えてるんだろうな…)

魔娘(カリスマ…か)

男(軍師さんは魔娘にカリスマになれと言ってるんだ…)

魔娘(軍師の言ってることは分かるわ…でも…わたしは…)

男(軍師さんの言っていた条件に合うのは魔娘だけだろうな…)

魔娘(わたしは…男と一緒に…しがらみを捨てて…)

男(誰が考えても…やっぱり魔娘がカリスマになるべきだろうな…)




467: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:55:12.21 ID:dxDLgvSzo
くの一「…あなたたち暗いわよ?」

男「あ…食べるのに夢中になってたよ。あはは…」

魔娘「そう言うくの一さんも最近暗いじゃない?どうしたの?」

くの一「…なんでもないわ」

魔娘「そう言えば…鬼の国を出てからそろそろ一カ月になるわね」

くの一「…」




468: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:55:38.57 ID:dxDLgvSzo
魔娘「くの一さんはよくやってくれたわ」

くの一「それは…最初の依頼が中途半端になったから…」

魔娘「もう十分だわ。あとはわたし達の問題だもの」

くの一「そりゃそうなんだけど…」

魔娘「…くの一さん。今までありがとう」

男「ありがとう」

くの一「…うん」




469: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:56:08.92 ID:dxDLgvSzo
〜翌朝〜

くの一「じゃあ、出発するわ」

男「今までありがとうございました」ペコッ

魔娘「ありがとう。おかげで随分助かったわ」

くの一「いいのよ。全部契約のうちなんだし」

魔娘「ううん。くの一さんは契約以上のことをしてくれたわ。調査期間だって随分と延びちゃったし」

くの一「それはあたしがちゃんと仕事を終わらすことが出来なかったからよ。ごめんね?」




470: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:56:35.24 ID:dxDLgvSzo
魔娘「謝らないで。すごく感謝してるんだから。ね?」

男「そうだよ。俺たちだけじゃここまで出来なかっただろうし」

くの一「でも…」

魔娘「口入屋さんが心配してるわよ?とっくに契約期間は過ぎてるのに、あなたが帰ってこないから」

くの一「あ、知ってたんだ…」

魔娘「ええ」ニコッ

男「…あ、そうか!それでくの一さん、焦ってたんだ」

くの一「焦ってたって言うか…ちょっとイラついていたのは確かね」

魔娘「だから、早く帰って安心させてあげて。ね?」

くの一「…分かったわ。それじゃ…」

シュン




471: ◆doBINqA5W6:2013/01/20(日) 23:57:03.42 ID:dxDLgvSzo
男「…行っちまったな」

魔娘「ええ…」

男「これからが本番だ」

魔娘「ええ、そうね」

男「それじゃ…俺たちも行きますか!」

魔娘「…ええ!王の国に向けて!!」




491: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:08:58.29 ID:dxDLgvSzo
〜王の国と獣の国の国境・関所〜

番兵1「…よし!次!!」

男「あ、はーい。俺です」

番兵1「うむ。では、鞄の中のものを全て出せ」

男「はいはい。えっと…」ゴソゴソ

番兵1「ん?」

白スライム(魔娘)「ぴい?」

番兵1「…くくく」

プークスクス…




492: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:09:24.36 ID:dxDLgvSzo
男「な、なんですか?」

番兵1「くくく…お前、そのスライム…」

男「…コイツが何か?」

白スライム プルルン

番兵1「そ、そんなに白くなるまで…この好きモノめ!わははは!!」

ワーハッハッハ!ワカイッテイイヤネエ!

男「え?…え?」




493: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:09:54.63 ID:dxDLgvSzo
番兵1「わははは!…スライムとヤルのもいいが、さすがにこれはヤリ過ぎだぞ」

番兵2「スライムは体内に取り込んだものの色に染まる。こんなに白くなるまでヤルとは…このスケベ!わははは!!」

男「…あ」

番兵1「この先の町に娼館がある。そこで抜いてもらえ。ほら、さっさと行け!わははは!!」

男「あ、はい…」コソコソ…
  ・
  ・
  ・




494: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:10:22.99 ID:dxDLgvSzo
男「…おい」

白スライム『なあに?』

男「お前、知ってたんだろ!白スライムの意味!!」

白スライム『ナンノコトダカ?』

男「とぼけんな!おかげですんげえ恥ずかしかったんだぞ!!」

白スライム『あながち間違いじゃないでしょ?。するときは最低でも3回はするくせに』

男「そ、それとこれとは別だろ!?」




495: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:10:50.26 ID:dxDLgvSzo
白スライム『いいじゃない。おかげで大した検査も受けずに関所を通れたんだから。ね?』

男「そういう問題じゃねえ!!」

白スライム『しょうがないわねえ。今夜はサービスしてあげるから機嫌を直してよ。ね?』

男「………ふ、ふん!誤魔化されないぞ!!」

白スライム『一瞬、間があったけど?』

男「…サービスかぁ…確か荒縄があったよな?」

白スライム ヒキッ




496: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:11:19.66 ID:dxDLgvSzo
〜数日後・王の国・首都の手前の小さな村〜

魔娘「今日はここで休みましょ?」

男「え?まだ日は高いし、夕方には首都につくだろ?」

魔娘「…ちょっとね…気になることがあるの」

男「気になること?」

魔娘「…魔王はわたしを探しているわ」

魔娘「だから…一旦この村に拠点を置いて、男に調べてきてほしいの」

男「調べる?」




497: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:11:46.16 ID:dxDLgvSzo
魔娘「そうよ。首都の雰囲気とか、街の様子とか…軍の規模や城の警備なんかもね」

男「…ちょっと用心しすぎじゃないか?魔娘も人間に変化してるし、見つからないと思うぞ?」

魔娘「…ここまで来てミスはしたくないの。用心するに越したことはないでしょ?」

男「…まあ、魔娘がそう言うなら…わかった」

魔娘「そうと決まれば今日はここでのんびりしましょ?きっとこの先はのんびりなんてしてられないでしょうし。ね?」

男「のんびりか…夜もか?」

魔娘「…綿ロープ買ってくれる?荒縄だと跡が付くし擦れて痛いのよ」

男 ヒキッ




498: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:12:16.11 ID:dxDLgvSzo
〜朝〜

男「そろそろ行ってくるわ」

魔娘「無理はしないで、危険だと思ったらすぐに帰ってくるのよ?」

男「俺は子供か!信用ねえのな…」

魔娘「男のことは信用してるわ。だからこそ無事に帰ってきてほしいのよ」

男「…うん。分かった。じゃあ行ってくる。帰るのは夜中になると思う」

魔娘「…うん。気をつけてね」




499: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:12:50.09 ID:dxDLgvSzo
〜首都・魔王城の近くの広場〜

ガヤガヤ…

男「…」

ガヤガヤガヤ…

男「…なんなんだこの人混みは…」

リンゴーン リンゴーン…

男「鐘の音?」

ガヤガヤ シーン…

男(急に静かになった!?)キョロキョロ




500: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:13:15.37 ID:dxDLgvSzo
聴衆 シーン

男(みんな城のベランダを見て動かない…どうなってるんだ?あそこに何が…あ、誰か出てきた)

『魔王様だ!』

マオウサマー! ワレラガマオウサマー!!

男(あれが…魔王か…)

魔王「…」スッ…




501: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:13:54.16 ID:dxDLgvSzo
大臣「…偉大なる我らが魔王様に忠誠を誓う民よ」

大臣「優秀なる我らが民よ」

大臣「貴公等の忠誠は確かに魔王様に届いておる」

大臣「新たなる勅命が下るまで、日々精進せよ」

大臣「魔王様は貴公等と共にあるのだ。魔王様、万歳!」

ウォオー! マオウサマー! マオウサマー!!

マオウサマバンザーイ! マオウバンザーイ! マオウバンザーイ!…

魔王ノシ

男(なんなんだこいつら…目が死んでる…気持ち悪い!)




502: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:16:02.35 ID:dxDLgvSzo
〜夜・小さな村の宿〜

男「…と言う訳でさ、とにかく気持ち悪くて…」

魔娘「そう…」

男「ちょっと町の人にも魔王について聞いてみたんだけどさ、“魔王様ばんざーい!”って感じでな?まともに話にならないんだ」

魔娘「話を聞いてるだけでも気持ち悪いわね…」

男「ああ。だから町中で情報を手に入れるのは難しいな…」

魔娘「じゃあ…どうするの?」




503: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:16:42.16 ID:dxDLgvSzo
男「うん、考えたんだけどさ…魔王城に侵入してみる」

魔娘「え!?それは危険よ!!」

男「まあ、大丈夫だろ。いざとなったら転移で逃げるし」

魔娘「ダメよ!城の中で迷子になるだけだわ!!」

男「くの一さんに見取り図をもらってるから、それはないって」

魔娘「ダメだってばぁ…男に何かあったらどうするのよぉ…」




504: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:17:10.30 ID:dxDLgvSzo
男「危ないことはしないって。それに情報を集めるためには必要なことだろ?」

魔娘「でも…男に万が一のことがあったらわたしは…」

男「無理はしないから大丈夫だって。明日の夜にでも行ってくる」

魔娘「…絶対、無事に帰ってくるのよ!でないと許さないんだから!!」

男「ああ、分かってるって」




505: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:17:39.92 ID:dxDLgvSzo
〜翌日の夕刻・魔王城〜

警備兵1「うぅ…寒くなってきたな…」

警備兵2「そうか?そんなことないだろ」

警備兵1「お前はアヒルだから自前の羽毛のおかげで温かいんだろ?…いいよなぁ。ちょっとモフらせろよ」

警備兵2「ちょっ!おまっ!!猫の癖にそんな趣味があったのか!?」

警備兵1「ちげえよ!温そうだからモフらせろ!」

警備兵2「こっちくんな!」

ヤイノヤイノ




506: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:18:06.58 ID:dxDLgvSzo
男「…隙だらけだな。簡単に城内に進入できたぞ」

男「えっと…くの一さんにもらった見取り図によると…あっちか」

コソコソコソ…
  ・
  ・
  ・




507: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:18:36.45 ID:dxDLgvSzo
男「…ここが魔王と従者が住んでる離れか…警備兵は…」

警備兵3「…」

男「入口を見張ってるのか…けど変だな。何で離れのほうを向いてるんだ?」

警備兵3「ん?」

男(やばっ!)

警備兵3「…誰かいるのか?」ガタッ

コツッ コツッ コツッ…

男「…」




508: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:19:07.16 ID:dxDLgvSzo
ガサガサッ

スライム「ぴい!」

警備兵3「なんだ、お前か。よしよし」ナデナデ

スライム「ぴいぃ…」

警備兵3「…ちょっとぐらいならいいだろ。来い。トイレでスッキリしよう」

スライム「ぴい♪」

男「…助かった…今のうちに離れの中に…」

コソコソコソ…




509: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:19:33.42 ID:dxDLgvSzo
〜離れの中〜

男「見取り図によると…奥が寝室みたいだな」

ミシッ ミシッ…

男(ナニの最中に出くわしたりしないだろうな…)

カ…チャッ ソー…

男(…誰も居ないみたいだな…他の部屋に行って見るか)

ミシッ ミシッ…




510: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:20:04.32 ID:dxDLgvSzo
男(手前はリビングって書いてあるけど…)

ガチャッ

男(中から人が出てきた!?)

魔法使い「っ!?誰!?」

男「あ、怪しいものではないんで!すぐに帰りますんで!!」アタフタ

魔法使い「…大雷げk」

キラッ




511: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:20:34.38 ID:dxDLgvSzo
魔法使い「え?…それは!?」

男「ははは、はい!?」

魔法使い「その鉈についているのは…盗賊のお守りでは!?」

男「え?…あ、はい。そうですけど…」

魔法使い「あなた…盗賊と知り合いなの?」

男「はい。盗賊さんは俺のお師匠さんで…父親代わりなんですけど…なんで盗賊さんのことを?」




512: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:21:01.62 ID:dxDLgvSzo
魔法使い「…わたしは魔法使いよ」

男「…へ?あなたがあの“生意気な小娘”さんですか!?」

魔法使い「…小雷撃呪!」バチバチバチ!

男「あ痛!しびびびれるううぅぅ!」

魔法使い「まったく…そんなことを言うのは賢者ね?あなた、賢者とも知り合い?」

男「は、はい。賢者様は俺の母親代わりですが…」

魔法使い「賢者が!?…あなた、性格が捻じ曲がってない?大丈夫?」

男(えらい言われようだな…)




513: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:21:35.35 ID:dxDLgvSzo
魔法使い(賢者と盗賊…あの二人はきっとわたしには協力しない…でも…)

魔法使い「…ねえ」

男「なんですか?」

魔法使い「…久しぶりに賢者と盗賊に会いたいわ。連れて来てくれないかしら?」

男「…はい?」

魔法使い「だってもう20年ぐらい会ってないんだもの。どうかしら?」

魔法使い(このオトコ…お人好しっぽいからたぶん大丈夫…)




514: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:22:08.92 ID:dxDLgvSzo
男「は、はあ…あ、その前に聞いておきたいことがあるんですけど…」

魔法使い「どんなことかしら?」

男「はい。あの…魔法使い様は何でこんなところに居るんですか?」

魔法使い「…賢者達に会えたら話すわ。それを言うなら…あなたはなぜここに居るの?」

男「はあ。それはちょっと複雑な事情がありまして…時間があるときに説明します」

魔法使い「そう…」




515: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:22:53.15 ID:dxDLgvSzo
男「それで…魔法使い様は賢者様たちに会いたいんですよね?」

魔法使い「ええ。…どう?」

男「とりあえず…一旦帰って聞いてみます。俺だけじゃ判断できないんで…」

魔法使い「…そうね。それじゃ、建物の外まで送ってあげるわ」

男「あ、いえ。勝手に帰りますんで」

魔法使い「警備兵に見つかると厄介でしょ?」

男「あー…そうですね。お願いします」

魔法使い「…ふふふ」




516: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:23:31.02 ID:dxDLgvSzo
〜小さな村の宿〜

魔娘・男「「…」」

男「俺は…正直言って、これは俺たちだけの問題じゃないと思うんだ」

魔娘「…そうね。これは賢者様たちに相談する内容だわ」

男「そうだな…」

魔娘「賢者様達と別れた魔法使いがなぜ魔界へ行ったのか。魔界で何をしていたのか。そして…」

男「なぜ今、魔王城に居るのか…」




517: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:24:12.64 ID:dxDLgvSzo
魔娘「それらを知ることはきっとこの先、わたし達がとるべき行動を決める手がかりになると思うの」

男「うん…」

魔娘「…わたしも男も、魔法使いのことは詳しいことは知らないから…よく知っている人に聞くのが一番だわ」

男「そうだな」

魔娘「だから…明日、わたしの転移魔法で賢者様達のところに行きましょ?」

男「ああ。そうしよう」

魔娘「それと…今夜は用心したほうがいいわね」

男「なんで?」




518: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:24:41.41 ID:dxDLgvSzo
魔娘「魔法使いがなにをしてくるかわからないもの」

男「いや、その心配はないんじゃないか?魔法使い様は賢者様達に会いたいって言ってるんだし」

魔娘「念のためよ。ここまで来て何かあったら…今までの苦労が水の泡よ?」

男「魔娘がそう言うんなら…そうするか」

魔娘「ええ。じゃあ私は先に寝るわね」

男「あ!おい!!」




519: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:25:07.98 ID:dxDLgvSzo
〜翌日・賢者たちの家〜

賢者「なるほど…」

男「魔法使い様は賢者様達に会いたがっています。目的は分かんないですが…」

盗賊「…怪しいなぁ。こりゃあ罠の可能性が高いぜ?」

賢者「…」




520: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:25:34.48 ID:dxDLgvSzo
魔娘「ちょっといい?」

盗賊「ん?なんだ?」

魔娘「魔法使いってどんな人だったの?」

盗賊「一言でいやあ…ガキだな」

男「ガキって…」

賢者「身も蓋もない言い方ですね。純粋と言うこともできます」

魔娘「純粋…なの?」




521: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:26:04.45 ID:dxDLgvSzo
賢者「ええ。あの小娘は…もういい大人でしょうが、思い込んだら一直線なところがあります」

賢者「ですから今の小娘の状況は大変危険だと言うこともできます」

男「危険?」

賢者「…ええ。あの小娘には目的があり、そのために今現在、魔王城に居ると考えるべきでしょう」

魔娘「目的って?」

賢者「それは分かりません。ですが…魔界の権力の中枢にいることで可能になる目的…」

賢者「私にはそれが良いこととは思えないのです」

盗賊「そうだな。そう考えると…俺たちに会いたいってのもその目的のためってことになる」

魔娘・男「「…」」




522: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:26:38.62 ID:dxDLgvSzo
賢者「…会ってみましょう」

魔娘・男・盗賊「「「え!?」」」

賢者「あの小娘の目的が分からない以上、ここで議論をするのは時間の無駄だと思います」

賢者「であれば、会って直接聞くほうが早いと…そう思うのです」

賢者「魔娘、男。私達を連れていってください。小娘のところに」

魔娘「…はい」




523: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:27:18.11 ID:dxDLgvSzo
盗賊「へへっ。久しぶりの魔界だな」

男「…なんか楽しそうですね…」

盗賊「最近刺激がなかったからよ、久しぶりに血が騒ぐぜ」

賢者「盗賊。戦いに行くわけじゃないですよ?」

盗賊「分かってるって。こちとら旅行気分なだけだ」

賢者「まったく…暢気ですね、盗賊は…」




524: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:27:45.81 ID:dxDLgvSzo
盗賊「鬼が出るか蛇が出るか、行ってみなきゃ分かんねえんだ。それに魔界の中心ってのも見てみたいしな」

賢者「…まあ、それぐらいリラックスしているほうがいいでしょう。では、今から準備をしますので、明日にでも出発しましょう」

魔娘「はい」

男「じゃあ俺はちょっと出てきますね」ガタッ

魔娘「あ、わたしも行くわ」




525: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:28:12.11 ID:dxDLgvSzo
賢者「どこへ行くのですか?」

男「お墓と…村の様子を見に行ってきます」

賢者「お墓はいいですが村まで行くのは…もうすぐ日が暮れます。またの機会にすればいいのでは?」

男「最後に…いえ、なんでもないです」

盗賊「…おい賢者」

賢者「…あまり遅くならないようにね?」

魔娘・男「「はい」」




526: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:28:39.85 ID:dxDLgvSzo
〜ダークエルフの墓〜

男「お母さん…俺、エルフ母さんに会って来たよ」

魔娘「…」

男「エルフ母さんはエルフの村でさ、俺のこと待っててくれるってさ」

男「俺…すごく嬉しかったんだ…エルフ母さんは今でもお母さんのこと忘れずにいてくれててさ…」

男「お母さんのことも…いっぱい教えてもらったんだ…」




527: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:29:20.85 ID:dxDLgvSzo
男「…あ、そうだ。これ…」

男「お母さんが作った転移符。エルフ母さんにもらったんだ」

男「これ…お母さんだと思って大事にするよ」

男「それからシスターにも会ってきたよ」

男「元気にしてたよ。子供も居たんだ。かわいい子だったよ」

男「…じゃあ、また来るからね。お母さん」スッ…

魔娘「男…もういいの?」

男「ああ」




528: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:29:47.88 ID:dxDLgvSzo
魔娘「じゃあ…私にもお参りさせて?」

男「いいよ」

魔娘「…お母さん。出来れば御存命のうちにそう呼びたかった…」

魔娘「わたしは…あなたの大切な男を危険な目にあわせてしまうかもしれない…」

魔娘「もしもの時は…私も死んでお詫びをします。だから…」

魔娘「男のこと…見守っててください」スッ…

男「魔娘…」




529: ◆doBINqA5W6:2013/01/21(月) 23:30:15.11 ID:dxDLgvSzo
〜近くの村〜

男「…この村、相変わらず誰もいないんだな…」

魔娘「そうね…ひっそりしてて寂しいわ…」

男「もうあそこの家なんて壊れ始めてる…」

魔娘「人の住んでいない家はすぐに壊れちゃうものね…」

男(これで見納めになるかもな…)

魔娘「…そろそろ帰る?」

男「…そうだな」




533: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:33:33.70 ID:dxDLgvSzo
〜王の国・首都の近くの小さな村〜

シュイン ドサドサッ

盗賊「…ここが王の国か…あれは?」

魔娘「あそこが宿のある村よ」

賢者「…見た目は人の町と変わりませんね」

男「じゃあ、行きますよ」
  ・
  ・
  ・




534: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:34:01.21 ID:dxDLgvSzo
〜小さな村・宿の部屋〜

盗賊「荷物も置いたし…そろそろ行くか?」

賢者「待ってください」

盗賊「なんでだ?」

賢者「そうやってすぐに動こうとするのはあなたの悪い癖ですよ?盗賊」

盗賊「じゃあ…どうすんだよ」

賢者「まずは段取りを決めましょう」

盗賊「段取りだあ?」




535: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:34:32.68 ID:dxDLgvSzo
賢者「はい。男、小娘のところへは簡単に行けますか?」

男「あ、はい。けど、4人となると…番兵に見つかる可能性が高いです」

盗賊「番兵だって!?あいつ、どんなとこにいんだよ…」

男「魔法使い様は魔王と一緒に離れに住んでます。番兵はその警護をしてます」

盗賊「あー、そういやそう言ってたな。魔王と一緒だって」

賢者「…男だけなら問題ないですか?」

男「あ、はい。一回行ってるし大丈夫です」

魔娘(魔王の従者…仇の一人…)




536: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:35:14.91 ID:dxDLgvSzo
賢者「魔娘」

魔娘「…」

賢者「魔娘?」

魔娘「…あ、は、はい!」

賢者「どうしたのですか?」

魔娘「う、ううん。なんでも…」




537: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:35:41.32 ID:dxDLgvSzo
賢者「…小娘と争うことも予想しておかなければなりません。魔娘、近くに多少暴れても迷惑にならないようなところはありませんか?」

魔娘「それなら…首都の近くに湖があるわ。そこなら人も居ないと思うけど…」

賢者「なら、そこにしましょう。男、小娘をそこに連れてきてください」

男「分かりました」

盗賊「じゃあ、移動するか」

賢者「そうですね」

魔娘「…」

男(魔娘…難しい顔してるな…)




538: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:36:11.74 ID:dxDLgvSzo
ポン

魔娘 ビクッ

男「大丈夫か?」

魔娘「…ええ」

男「…具合が悪いんだったら宿に居ていいんだぞ?」

魔娘「…ううん、わたしも行くわ。相手の顔も拝んでおきたいし」

男「そうか…無理するなよ?」

魔娘「…うん」




539: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:36:38.78 ID:dxDLgvSzo
〜首都近くの湖畔〜

シュイン スタッ

男「っと。着きました」

魔法使い「ありがとう」

男「えっと…あ」

魔法使い「…あっちにいるのね」

男「ええ。行きましょう」
  ・
  ・
  ・




540: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:37:05.70 ID:dxDLgvSzo
男「連れてきました」

魔法使い「…」

賢者「…久しぶりですね」

魔法使い「そうね…」

盗賊「ちったあ大きくなったか?」モミモミ

魔法使い「…」

賢者「…」

魔娘「…」

男「…えっと…」

モミモミ




541: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:37:36.82 ID:dxDLgvSzo
魔法使い「…ちょっ!なにすんのよ!!」ジタバタ

盗賊「いい具合に膨らんだじゃねえか。へへっ」

魔法使い「このスケベ親父!あんた全っ然変わってないじゃない!!」ブンッ

盗賊「ふん。そうそう簡単に変わるかよ」ヒラリ

魔法使い「もう!賢者!ちゃんと躾けなさいって言ったでしょ!!」

魔娘・男「「…」」

男「…俺の中の盗賊さんのイメージが…」

魔娘「粉々に砕け散ったわね…」

賢者「コホン…盗賊?」ニッコリ

盗賊 ビクッ
  ・
  ・
  ・




542: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:38:08.31 ID:dxDLgvSzo
盗賊 ペチャンコー

魔娘「だ、大回復呪!!」パァアアアア!!

盗賊「かはっ…はっ…はっ…はあ…サンキュー。助かった…」

男「よかった…賢者様が竜になって盗賊さんを踏み潰したときはどうなることかと思ったけど…」

賢者「これに懲りたら大人しくしてなさい」

魔法使い「…あ、相変わらず怒ると怖いわね。賢者は…」

賢者「どういう意味ですか?」

魔法使い「言葉の通りよ」

賢者「まったくあなたと言う人は…」

魔法使い「ふん」




543: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:38:35.21 ID:dxDLgvSzo
賢者「…ところで…元気そうですね」

魔法使い「ええ。あんた達もね」

賢者「心配していたんですよ?」

魔法使い「…」

賢者「懐かしいですね…旅をしていた頃を思い出します」

魔法使い「…回りくどいことはやめましょ?」

賢者「…」




545: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:39:02.18 ID:dxDLgvSzo
魔法使い「以前の賢者だったらすぐに本題に入ったはずよ?」

賢者「…それだけ年を取ったと言うことです」

魔法使い「…それで?」

賢者「…魔法使い。あの頃のあなたは目的に向かって真っすぐに突き進む純粋な子でした」

賢者「あなたは今…魔王城に住んでいますね?」

魔法使い「ええ」

賢者「では、率直に聞きます。あなたの目的はなんですか?」




546: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:40:06.37 ID:dxDLgvSzo
魔法使い「…目的は二つ。一つは魔王討伐。これは実現したわ」

魔娘 ギリッ…

魔法使い「わたし達勇者パーティーの旅の目的よ?わたしはそれを実現したわ。反乱軍を使ってね」

男「…魔娘。ちょっと…」

魔娘「…大丈夫。ここにいるわ」

男「けど…すごい顔になってるぞ」

魔娘「平気よ」

男(魔娘が何かしようとしたら一緒に転移で移動しよう…)




547: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:40:44.00 ID:dxDLgvSzo
賢者「…」

魔法使い「みんな勇者と一緒に誓ったでしょ?魔王を倒すんだって」

魔法使い「だからわたしはそれを実現した。感謝してよ?」

盗賊「…で?もうひとつは?」

魔法使い「…あんた達、悔しくない?」

賢者・盗賊「「…」」




549: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:41:17.10 ID:dxDLgvSzo
魔法使い「わたし達は国王に頼まれて魔王討伐に向かった。でも…魔王の軍に…」

魔法使い「わたし達は全力で戦った。なのに…勇者ひとりを魔界に置いてきた責任を押し付けられて…」

魔法使い「人間界を追われたわたしは一人魔界に来て勇者を探した…」

賢者「魔法使い…勇者は死んだのです」

魔法使い「分かってるわよそんなこと!」

魔娘・男 ビクッ




550: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:43:35.84 ID:dxDLgvSzo
魔法使い「なぜ勇者は死んだの!?なぜわたし達は汚名を着せられて逃げ回らなきゃいけないの!?」

賢者「魔法使い…あなた…」

魔法使い「…そうよ。もうひとつの目的は国王の討伐。そのために魔界で準備をしているわ」

盗賊「なるほどねぇ。人間界に喧嘩を売るんだ。魔王に取り入るのも当たり前か」

魔法使い「…ええ、そうよ」

魔娘 ギリッ




551: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:44:07.35 ID:dxDLgvSzo
賢者「…勇者はそんなことは望んでいません」

魔法使い「それで?」

賢者「勇者は極力戦いを避けようとしていたではありませんか。それなのにあなたは戦いを始めようとしている」

魔法使い「…関係ないわ」

賢者「あなたは…自分の復讐のために戦争を始めようとしているのですよ?」

魔法使い「それの何が悪いの?」

賢者「…復讐をするのなら、他人を巻き込むのはやめなさい」

魔法使い「…」




552: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:44:40.10 ID:dxDLgvSzo
賢者「あなたがしようとしていることは魔族や人間を巻き込んだ戦争です」

賢者「あなたは…戦争で犠牲になる民のことを考えたことはありますか?」

魔法使い「…やっぱりね。あんた達には分からないのよ」

盗賊「なにがだ?」

魔法使い「…わたしは人生の半分以上をこのために費やしてきたの。それを無駄に出来ると思う?」

賢者「間違っていることはやり直すべきです」

魔法使い「当事者じゃなければなんとでも言えるわ!」

賢者「わたし達は当事者ではないと?」




553: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:45:13.03 ID:dxDLgvSzo
魔法使い「…最後通告よ。あんた達とは戦いたくない。だから黙って見てなさい」

賢者「どうあっても辞めないのですね…」

魔法使い「今更…あとには引けないわ」

賢者「…」

盗賊「…お前、やっぱりガキだな」

魔法使い「スケベ親父に言われたくないわ。それじゃ」

ピラッ シュイン

盗賊「あいつ…転移符使って帰っちまいやがった…」

賢者「もう…わたし達も宿に帰りましょう」

魔娘・男「「…はい」」




554: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:45:39.73 ID:dxDLgvSzo
〜魔王城〜

シュイン シュタッ

魔法使い「…」

トテトテトテ ガチャッ

魔王「魔法使い!」

魔法使い「ただいま帰りました」

ダキッ




555: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:46:06.26 ID:dxDLgvSzo
魔法使い「…どうしたんですか?急に抱きついたりして」

魔王「何も言わずに居なくなるから…心配してたんだ…」

魔法使い「そうですか…」

魔王「ああ…お前が居なくなったら俺は…」

魔法使い「…大丈夫ですよ。わたしはあなたについて行くと決めたのですから…」

魔王「魔法使い…」

魔法使い「…大臣はどこ?」

魔王「今は仕事中だと思うけど…」

魔法使い「魔王を討伐しようとする連中が来るわ。準備をしなきゃ」

魔王「…え?」




556: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:46:33.73 ID:dxDLgvSzo
〜小さな村・飯屋〜

ガヤガヤガヤ…

店員「お待ちどう。人食い魚のバター焼きだよー」ドンッ!

盗賊「お、来た来た。うまそうな匂いだぜ」

店員「これで注文の品は全部そろったかい?」

賢者「魔牛の串焼きに怪鳥の唐揚げに野菜サラダに…はい。来ています」

盗賊「あとは綺麗どころがいりゃあいいんだがな」




557: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:47:01.86 ID:dxDLgvSzo
店員「あら、二人も連れてるのに?」

盗賊「どんな御馳走でも毎日だと飽きるだろ?」

店員「あははは。じゃあ化け猫族のあたしでよけりゃ相手しようか?」

盗賊「あと10年若けりゃあな」

店員「あははは。言ってくれるじゃないか!じゃあね」

魔娘・男「「…」」




558: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:47:28.71 ID:dxDLgvSzo
賢者「ふふふ。ではいただきましょうか。…おや?二人とも、どうしたんですか?」

男「あ、いや…」

魔娘「さっきまで深刻な話をしてたっていうのに…」

盗賊「腹が減ってたら碌なこと考えねえからな」

賢者「そうですね。それだけは盗賊の意見に賛成します」

男「そうですね」

魔娘「じゃあ…いただきます」
  ・
  ・
  ・




559: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:47:56.42 ID:dxDLgvSzo
〜小さな村・宿の部屋〜

盗賊「さて、腹もふくれたし…そろそろこれからのこと考えるか?」

賢者「そうですね…魔娘」

魔娘「はい」

賢者「貴女は…これからどうするつもりですか?」

魔娘「…お父様の仇を…討ちたい」

賢者「と言うことは小娘と対峙する…と言うことですか?」

魔娘「…」




560: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:48:59.52 ID:dxDLgvSzo
賢者「出来れば…争いは避けてほしいのですが…」

魔娘「…わたしの目的はお父様を殺した仇討ちよ。もし魔法使いがお父様を殺したのなら…そうなるでしょうね」

賢者「そうですか…しかしあなたは封印が…」

魔娘「もう封印は解けてるわ」

賢者「え?」

魔娘「あの封印は私の魔力を使うようにできていたの。でも…魔力が無くなったことがあって…」

魔娘「その時に封印も解けたの」




561: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:50:27.47 ID:dxDLgvSzo
賢者「そうですか…白魔法だけ使えるようになっていたのはそう言うことだったんですね」

賢者「魔力を使い切ってしまうほどの出来事…それはすなわち魔娘の危機と言うことですからね」

賢者「しかし…魔法が使えるようになったから仇討ちをする…それでは魔法使いと同じではないですか?」

魔娘「…でも!」

男「…魔娘と魔法使い様は違います」

盗賊「どういうこった?」




562: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:50:59.33 ID:dxDLgvSzo
男「はい。魔法使い様は目的のために軍を動かそうとしています。それは大きな犠牲を生みます」

男「でも魔娘は…犠牲は最小限にしようとしています」

盗賊「ふーん。で、お前はどうすんだ?」

男「…俺は魔娘のサポートをするつもりです」

賢者「…でもそれでも犠牲は発生しますよ?」

男「…賢者様たちは魔王を討伐するために勇者様と旅をした。そうですよね?」

賢者「ええ…」

男「魔娘の仇討ちも同じじゃないですか?」

賢者「!?」




563: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:51:30.85 ID:dxDLgvSzo
男「魔娘の目的は仇討ちですけど、魔王を倒すっていうところは賢者様達と同じだと思うんです」

男「そう考えれば勇者様と同じことをしようとしてるって考えられますよね?」

盗賊「ははは。こりゃ一本取られたな。なあ、賢者?」

賢者「男。あなたはそんなことを考えていたのですか…」

男「そりゃあ…魔法使い様と戦うことになるかもしれないけど…それは俺の役目だと思ってます」

男「俺は魔娘と魔王の戦いに邪魔が入らないようにする…それだけです」

魔娘「男…」




564: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:51:59.65 ID:dxDLgvSzo
男「それでいいよな?」

魔娘「ええ…ありがとう、男」

盗賊「…よし!男、ちゃんと魔娘を守るんだぞ?」

賢者「盗賊!あなたはまた無責任なことを…」

盗賊「…なあ賢者」

賢者「なんですか?」

盗賊「なんかよぉ…変だと思わねえか?」

賢者「変?」




565: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:52:30.85 ID:dxDLgvSzo
盗賊「そうだ。そりゃあ魔法使いは強え。けどな、あいつ一人でここまでやるって考えるのは…いささか無理があるんじゃねえか?」

賢者「それは…きっと協力者がいるのだと思いますが…」

盗賊「いや、そう言う意味じゃねえ」

魔娘・男「「?」」

賢者「…どういうことですか?」

盗賊「…さっきあいつと会ったとき、あいつは昔のまんまだったろ?」

賢者「…ええ」

盗賊「ってことはだ。あいつが何年もかけてこんなまどろっこしいことなんかするはずがねえ。そうだろ?」

賢者「!?」




566: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:53:33.47 ID:dxDLgvSzo
盗賊「あいつの性格だったら…ひとりで魔王城に切り込んでいきなり魔王と対決ってのが一番しっくり来るだろ?」

賢者「…確かにそうですね…」

盗賊「だからよ、なんかこう…得体の知れねえ何かが俺らを動かしてるような気がするんだ」

魔娘・賢者・男「「「…」」」

盗賊「だからよ…俺ぁこいつらについて行くわ」

魔娘・男「「え!?」」

賢者「…そうですね。私もついて行きます」

魔娘・男「「ええっ!?」」




567: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:54:00.46 ID:dxDLgvSzo
賢者「私も何か違和感を感じていたんですが、盗賊に言われて気がつきました」

盗賊「へへっ。これで4人だな」

男「…へ?」

賢者「そうですね。あの頃を思い出します」

盗賊「勇者…じゃなくて魔娘パーティーだ。よろしくな」

魔娘「あ…」

賢者「そうですね。しっかり導いてくださいね。魔娘」

魔娘「…はい!」




568: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:54:57.85 ID:dxDLgvSzo
〜2日後・王の国・首都〜

盗賊「道具の準備を済ませて来てみりゃあ…なんだこりゃ?」

賢者「軍の兵士でしょう。バリケードを築いていますね…」

男「すごい数だな…何人ぐらい居るんだろ?」

魔娘「そうね。ざっと見たところ…三千ってとこかしら?」

盗賊「けっ。こっちは4人だってえのによぉ」




569: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:55:24.69 ID:dxDLgvSzo
賢者「魔娘、あそこ以外に街の入口はありますか?」

魔娘「あるけどどこも一緒でしょう。兵士が居ると思うわ」

男「じゃあ、一気に飛び越えますか」

賢者「そうですね。とりあえず街に入りましょう。“竜変化呪”」

ボワン

男「すごい…シスターが竜になったときとそっくりだ…」

賢者『わたしの竜変化は赤竜を模写していますからね。そっくりなのは当然です』




570: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:55:51.46 ID:dxDLgvSzo
魔娘「男、早く背中に乗りましょ?」

男「そうだな」

ワーワー! ドドドドド…

盗賊「お、あいつら出てきやがったぜ」

男「“転移”」

シュイン

魔娘「盗賊さんも早く!」

盗賊「“お土産”渡してからだ。そらよっ!」ポイッ

シュン




571: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:56:19.48 ID:dxDLgvSzo
盗賊「よし。いってくれ!」

賢者『では、行きますよ』

バッサ バッサ バサバサバサ…

ドゴォオオオオン!!!

盗賊「もういっちょ!」ポイッ ポイッ

ヒュー… ドゴォオオオン!! ドゴォオオオン!!

盗賊「これでちったあ足止めできるだろ」




572: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:56:46.37 ID:dxDLgvSzo
賢者『弓や魔法攻撃が来る前に出来るだけ城に近づきます。しっかり掴まってなさい』

ギュオオオン!

賢者『城が見えてきました』

ヒュンヒュンヒュン!

男「!?」

盗賊「弓矢だ!男!!」

男「はい!“念動”!!」

ピタッ




573: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:57:13.54 ID:dxDLgvSzo
賢者『出来るだけ城に近づきます!』

ピカッ!ゴロゴロゴロ!!

盗賊「ちぃ!魔法か!!」

賢者『あの広場に降ります!』

バサッバサッ バサァ

盗賊「よっと」ピョン

男「“転移”」

シュイン スタッ

男「大丈夫か?」

魔娘「ええ」




574: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:57:50.45 ID:dxDLgvSzo
ボワン

賢者「…ふぅ。城まであと少しです」

盗賊「周りから近付いてくるぞ!」

魔娘「“氷壁呪”!」

メキメキメキ!

盗賊「氷の壁か。こりゃいいや」

魔娘「これで少しは時間を稼げるわ」

賢者「魔娘、貴女はこの先で大仕事があるのですから、あまり魔法を使ってはいけませんよ?」

魔娘「はい」




575: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:58:18.92 ID:dxDLgvSzo
男「で、どうするんだ?城のほうからも出てきてるぞ?」

盗賊「へっ、楽しめそうだなこりゃ」

賢者「何を呑気なことを…」

ピカッ!ドドドドォオオオン…

「うわぁああああ!!」

「雷だあ!!」

一同「「「「!?」」」」




576: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:58:52.67 ID:dxDLgvSzo
黒竜人「姫様!」

魔娘「黒い小父様!」

ゴォオオオオ!!

「あああ熱いぃいい!!」

「水を!水をくれぇええ!!」

赤竜人「ここは我々が引き受けます!」




577: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 22:59:26.52 ID:dxDLgvSzo
ヒョォオオオ…

カチコチコチコチ…

白竜人「一言ぐらいおっしゃってくれればいいのに」

魔娘「赤兄さんに白姉様も!」

「堀の水が押し寄せてくる!?」

「お、溺れるぅう!!!」

青竜人「久しぶりの戦闘じゃわい」

魔娘「青爺まで!」




578: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:00:19.96 ID:dxDLgvSzo
青竜人「今回は間にあった様じゃの。ふぉっふぉっふぉっ」

盗賊「でけえ竜が4頭も…すげえ眺めだなおい」

賢者「彼等は味方ですか?」

魔娘「ええ!」

青竜人「あんたらが姫様を預かってくれておったのか?」

賢者「はい。魔娘はわたし達の子供も同然です」

青竜人「そうか。姫様が世話になったの」

賢者「いいえ」ニコッ




579: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:00:46.19 ID:dxDLgvSzo
青竜人「おっつけ竜兵たちもつくじゃろう。ここはワシら竜人族が引き受ける。さ、早くいきなされ!」

魔娘「え?で、でも!」

黒豹「俺達もいるぜ」

男「黒豹さん!?」

子淫魔「わたしもー!」パタパタパタ

魔娘「子淫魔!?なぜあなたがここにいるの!?」




580: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:01:13.89 ID:dxDLgvSzo
子淫魔「あたし達淫魔族は町民を安全な場所に避難させてます!」

魔娘「どうしてそんなことを!?」

子淫魔「黒豹さんにお願いされたの。ね?」

黒豹「ああ。俺たちレジスタンスの人数じゃ兵隊を逃がさないようにするのが精一杯でな」

黒豹「それで、淫魔族に町民の誘導を頼んだんだ。みんな洗脳されてるみたいだったからな」

子淫魔「『町民を傷つけずに避難させるには”淫魔の魅惑“しかない』って言って…ね?」

黒豹「広場への道は俺達が封鎖した。混乱した兵隊が町中にいかないようにな。これで戦場はこの広場だけだ」




581: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:01:42.27 ID:dxDLgvSzo
魔娘「みんな…どうして!?これはわたしの仇討ちなのよ!?」

シュン

くの一「あら、余計なことだったかしら?」

男「くの一さん!」

黒豹「…俺達は民を守るためにここに来たのさ。先代主王様ならそうしただろうしな」

子淫魔「わたしはお姉ちゃんや男さんから受けた恩を返したかったから…」

青竜人「ワシら竜人族一同、主王様の時に失った誇りを取り戻したいのですじゃ。どうかわがままを許して下され」




582: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:02:59.61 ID:dxDLgvSzo
魔娘「みんな…馬鹿よ!」

黒豹「ああ。姫様のために命をかけられる大馬鹿野郎たちが集まったんだ」

青竜人「ワシらは姫様が大好きなんじゃ。その気持ちを汲んでくだされ」

男「魔娘…みんなの気持ち、わかってやれ」

魔娘「…ありがとう。頼んだわよ。でも!決して無理はしないで!!」

子淫魔・くの一・青竜人・黒豹「「「「御意!」」」」

魔娘「それと!無益な殺生はしないこと!!」

黒豹「元よりそのつもりだぜ!」

子淫魔「じゃあわたしは町のほうに行ってきます!」パタパタパタ…

くの一「わたしも一緒に行くわ!」




583: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:03:26.52 ID:dxDLgvSzo
青竜人「さーて。一波乗ってくるかの?」ヒュン

黒豹「俺も行くぜ!」タタタタ…

賢者「竜達のおかげで攻撃が分散しました。男、城門の上まで転移できますか?」

男「あ、はい。あれぐらいなら」

賢者「では、出来るだけ兵士を引きつけてからお願いします」

男「分かりました」

盗賊「よし!男!!」

男「はい!“転移”!!」

シュイン




584: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:04:51.31 ID:dxDLgvSzo
〜城門〜

シュイン スタッ

賢者「兵士が向かってきますよ」

ゾロゾロゾロ…

男「衝撃波!」

ブォン!

「うわあああ!!」

盗賊「ほらよ」ポイッ

「ば、爆弾だああ!!」

「さがれ!さがれぇええ!!」

ドォオオオオン…




585: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:05:57.00 ID:dxDLgvSzo
賢者「道が開けましたね」

魔娘「あそこが城の入り口よ!」

盗賊「男!転移だ!!」

男「はい!」

シュイン




586: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:06:24.67 ID:dxDLgvSzo
〜城の入り口〜

シュイン スタッ

賢者「“氷壁呪”!」

ピシピシピシ…コチーン

賢者「入口を凍結しました。もう外からは入ってこれません」

盗賊「今のうちに回復しておけ」

賢者「はい。“全体回復呪”」

パァアアア…

男「魔娘、玉座はどっちだ?」

魔娘「こっちよ」

盗賊「よし、行くか」

賢者「はい」

タタタタ…




587: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:06:51.66 ID:dxDLgvSzo
〜大広間〜

魔娘「ここを抜ければ玉座のある謁見の間よ」

タタタタ

盗賊「っ!待て!!」

男「え?」

盗賊「おい。そこの柱の陰に隠れてるやつ。出て来い」

? ユラァ…




588: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:07:18.48 ID:dxDLgvSzo
盗賊「…てめえ、何もんだ?」

?改め大臣「…初めまして。私はこの国の施政を担当している大臣です」

男(なんだこいつ…戦いの最中だって言うのにまったく戦意が見られない…)

魔娘「大臣ですって!?」

大臣「初めまして姫様。それに皆さんも」

魔娘「あなた…似蛇族ね?」

大臣「お察しの通りです」ニヤッ




589: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:08:10.34 ID:dxDLgvSzo
賢者「あなたは…丸腰みたいですね」

大臣「まさかこんなに早くここまで来るとは思ってなかったですからねぇ」

賢者「逃げるなら追いません。ですが…」

盗賊「邪魔するんなら…」

大臣「おおこわ。私は今、戦闘モードじゃないのでね、ここはひとまず退散しますよ」

賢者「…」




590: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:08:47.90 ID:dxDLgvSzo
盗賊「…てめえ…また来るってのか?」

大臣「ふはははは。では、失礼」

バッ

賢者「…急ぎましょう。盗賊、後ろを警戒してください」

盗賊「任せろ」




591: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:09:16.16 ID:dxDLgvSzo
〜謁見の間〜

バタン!

魔王・魔法使い「「…」」

魔娘「…あなたが…魔王?」

魔王「…」コクッ

男(やっぱり…威厳も威圧感もまるでない…)




592: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:09:46.14 ID:dxDLgvSzo
魔娘「あなたのせいで…お父様が!“大火炎呪”!!」

ゴォオオオオ!!

魔法使い「“対魔壁呪”」

シュゥウウ…

魔娘「っ!?」

魔法使い「ふふふ。慌てないで。時間はあるんだから。ね?」




593: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:10:13.24 ID:dxDLgvSzo
賢者「魔法使い…あなたの相手はわたし達です」

魔法使い「…結局こうなるのね。覚悟はしていたけど」

シュン

盗賊「ん?寸胴だったのに括れが出来てるじゃねえか」サワサワ

ウゾゾゾゾ…

魔法使い「やめなさい!このスケベ親父!!」ブン!

盗賊「おっと」ヒョイ

魔娘・賢者・男「「「…」」」




594: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:10:46.56 ID:dxDLgvSzo
魔法使い「まったく…雰囲気が台無しじゃない!」

魔王「だ、大丈夫か?魔法使い」

魔法使い「…ええ。平気よ」

賢者「ごめんなさい。あとで煮るなり焼くなり、好きにしていいですから」

魔法使い「今すぐ引き裂いてやりたいわ!」

盗賊「…お前ら、分かったか?」

男「あ、はい」

魔娘「…ええ。一瞬空気が変わったわ」

賢者「…え?」




595: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:11:14.53 ID:dxDLgvSzo
盗賊「よう寸胴」

魔法使い「寸胴じゃない!」

盗賊「おめえ…自分で変だと思わねえか?」

魔法使い「何がよ!」

盗賊「おめえは昔から猪突猛進娘だったろうが」

魔法使い「む、昔のことはどうでもいいでしょ!?」

盗賊「おめえ…いつからこんなまどろっこしいことするようになったんだ?」

魔法使い「…え?」




596: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:11:41.19 ID:dxDLgvSzo
賢者「小娘、昔のあなたはいつも目的に真直ぐだったではありませんか」

賢者「こんな風に何年も計画的に進めていくなんて…貴女らしくないとは思いませんか?」

魔法使い「わ、わたしだって何時までも子供じゃないわ!」

賢者「盗賊が空気を変えるまで…わたし達は互いに戦うことしか頭になかった」

魔法使い「当然じゃない!わたし達は敵対してるのよ!?」

賢者「…私はここに来る直前まで、どうすれば小娘と戦わずにすむか考えていたんです」

魔法使い「小娘言うな!」




597: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:12:19.55 ID:dxDLgvSzo
賢者「それが…この部屋に入った途端、戦うことしか考えていなかった。盗賊が空気を変えるまでは」

魔法使い「わたしたちは戦うしかないのよ!」

賢者「…そちらの人は戦意は無いようですが?」

魔法使い「え?」

魔王「…」

魔法使い「…大丈夫よ。あなたはわたしが守ります」




598: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:12:46.85 ID:dxDLgvSzo
魔王「…違う」

魔法使い「何が違うの?わたし達は奴等を倒して世界を統一するのよ。勇者」

魔娘・賢者・男・盗賊「「「「勇者?」」」」

魔王「違う!」

魔法使い ビクッ

魔王「…もう止めにしよう。俺は勇者じゃない」

魔法使い「…」




599: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:13:55.42 ID:dxDLgvSzo
魔王「…俺はハーフエルフだ。洗脳しか能がない…無力なオトコだ」

魔王「俺は君を洗脳して勇者だと思い込ませた。でもそれは全部嘘なんだ!」

魔王「俺が嘘をついたせいで魔法使いが仲間と争うなんて…」

魔法使い「…それがどうしたの?」

魔王「…え?」

魔法使い「あなたが誰であれ、私にはあなたが必要なの。だから…」

魔法使い「…そんなこと言わないで。ね?」ニコッ

魔王 ゾクッ




600: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:14:39.10 ID:dxDLgvSzo
「ほっほっほ。間にあったようですねぇ」

男「誰だ!?」

カチャン カチャン カチャン…

大臣「一度お会いしましたよねぇ」

魔娘「誰!?」

大臣「先ほどは失礼しました。丸腰でしたのでねえ」

男「…さっきの奴か?」

賢者「あの武具の文様…」

盗賊「ああ…“勇者の紋章”だ…」

男「勇者の!?」

魔娘「まさか…」




601: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:15:05.33 ID:dxDLgvSzo
魔法使い「大臣…来てくれたのですね」

大臣「ええ。たまたま奴等を見かけたものですから」

男(また空気が変わった…嫌な空気だ)

大臣「さあ、奴等を仕留めるのです!」

魔法使い「ええ。最大の攻撃魔法でね」

ゴゴゴゴゴ…




602: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:15:45.60 ID:dxDLgvSzo
盗賊「なんだありゃあ!?」

賢者「黒い靄が魔法使いから出ています…あんな魔法は見たことがありません!」

男(あの靄…魔娘が菩提所で出してたのと同じだ!)

魔娘「みんな気をつけて!あの靄に近づくといろんな魔法で攻撃されるわ!!」

魔法使い「ふふふ。これは近づくものすべてを攻撃する魔力のきr」

ドスッ

魔王「…え?」

魔娘・賢者・男・盗賊「「「「!?」」」」

大臣 ニヤッ




603: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:16:18.14 ID:dxDLgvSzo
魔法使い「…なにこれ?」

魔王「え?…え?」

魔法使い「…なんで剣が刺さってるの?」

魔王「何をするんだ大臣!!」

大臣「力を得るためですよ」

魔王「力を!?どういうことだ!」




604: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:16:44.78 ID:dxDLgvSzo
大臣「わたしは若い頃、この城の奥に封印されていたこの武具に出会ったんですよ」

大臣「武具は魔力を与える代わりに、わたしに力をくれました」

大臣「そしてわたしは手に入れたんですよ」

大臣「…優秀な我が民族がこの世を支配するための力を…ね」ニタァ

魔王 ゾクッ




605: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:17:29.25 ID:dxDLgvSzo
大臣「魔族も!人間族も!!全ての頂点に優秀な我が似蛇族が立つんだ!!」

大臣「この世の全ての富と名声は我が似蛇族のものになるんだ!!」

大臣「全てはこの武具が!俺を導いてくれるんだ!!」

オオオオオン オオオオオン…

魔王「な、なんだ!?」

大臣「武具の声だ。魔力を吸って喜んでいるのだ」

魔法使い「力が…抜けて…もう…だめ…」




606: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:18:00.75 ID:dxDLgvSzo
大臣「そうだ!一滴残らず吸い取るんだ!!少しでも多く魔力を吸い取るために、わざわざ魔法使いが魔力を開放する瞬間を狙ったんだからな!!」

魔王「あああ…」

魔娘「あれが…“呪いの武具”…」

男「封印は解かれていたんだ…」

盗賊「見ろ!黒い靄が!!」

賢者「消えていきます…」

魔法使い「…ま…お………」

ドサッ

魔王「魔法使い!」ガバッ!




607: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:18:27.36 ID:dxDLgvSzo
大臣「…もうお前らは用済みだ」

ブンッ

魔王「うわぁあああっ!?」

男「片腕でふたりを投げ飛ばした!?」

ヒュー…ドサドサッ

魔王「うぅ…魔法使い…」

魔法使い「ひゅ………ひゅっ………」

盗賊「ちぃっ!男!!あいつらを連れて来い!!」

男「は、はい!」

シュイン




608: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:18:55.53 ID:dxDLgvSzo
魔王「しっかりしろ!おい!!おいぃいい!!!」

男「一緒に来い!」

魔王「え?」

男「魔法使い様をしっかり抱えてろ!」

魔王「な、なんで…」

シュイン ドサドサッ

魔王「くぅ…腰打った…」

賢者「魔法使い!最大回復呪!!」パアァアア!!!

魔法使い「ひゅっ…ひゅっ…はっ…はっ…はあ…はあ…」




609: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:19:22.37 ID:dxDLgvSzo
賢者「…一命は取り留めたようですね…よかった…」

盗賊「ああ…けど安心はできねえ」

魔王「あんたら…なんで…」

盗賊「…仲間を見殺しにするのは…もうたくさんだ」

賢者「そうです」

魔王「でも…俺は…俺達は…」




610: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:19:48.91 ID:dxDLgvSzo
賢者「貴方には戦意はありません。であれば、争う理由はないです」

盗賊「ああ。“無益な殺生はしない”。それが俺達勇者パーティーの掟だからな」

魔娘「…」

魔王「…俺は姫様の仇だ。この首を差し出してもいい。だから…魔法使いだけは助けてくれ!」

魔娘 ギリッ…

男「魔娘…」




611: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:20:15.96 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…男」

男「なんだ?」

魔娘「あなただったらどうする?このオトコの命を奪う?」

男「…俺ならまずあいつを倒す」

魔娘「…え?」

大臣「ふはははは!力だ!!力が漲ってくるぞ!!」

男「あいつが来た途端空気が変わった。あいつは危険だと思うんだ」

魔娘「…」




612: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:20:49.96 ID:dxDLgvSzo
男「いつか魔娘が言ってたろ?優先順位を間違えるなって」

男「このオトコは戦意はない。魔法使い様は動けない。だったら一番最初にやることは…」

賢者「魔娘…私もそう思います」

魔娘 チラッ

魔王「…」

魔娘「…あなたへの仇討ちは後にするわ。まずはあいつを倒す!」




613: ◆doBINqA5W6:2013/01/22(火) 23:21:20.00 ID:dxDLgvSzo
盗賊「よしきた!賢者!!」

賢者「はい!」

盗賊「そのオトコと魔法使いは頼んだぜ!」

賢者「任せてください」

盗賊「へへっ。頼りにしてるぜ。男!魔娘!!行くぜ!!」

魔娘・男「「はい!」」




632: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:32:55.93 ID:dxDLgvSzo
〜玉座の前〜

オオオオン…オオオオン…

大臣「すごい!すごいぞ!!体中に力が湧いてくる!!」

盗賊「魔娘。あいつはどんな魔物だ?」

魔娘「ミミズよ」

盗賊「弱点は?」

魔娘「火に弱かったはずよ?」

盗賊「んじゃまずはコイツだな」ポイッ!




633: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:34:52.64 ID:dxDLgvSzo
大臣「ふははは…ん?」

シュー…ドォオオオン!!!

男「爆弾が直撃した!」

魔娘「やったの!?」

盗賊「…いや」

「ふふふ…ははははは!」

盗賊「無傷だ」




634: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:35:19.15 ID:dxDLgvSzo
大臣「なんだ今のは?そよ風か?」ニヤニヤ

魔娘「なっ!?」

盗賊「あの武具が爆風を無力化しやがった…なんてヤロウだ」

魔娘「くっ!“大雷撃呪”!」

バリバリバリ…シュゥウウウ…

魔娘「魔法がっ!」

盗賊「吸い取りやがった…」




635: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:36:12.42 ID:dxDLgvSzo
大臣「無駄無駄無駄あ!魔法は全てこの武具が吸収する。魔法では俺に傷ひとつつけられない!」

男「なら…“衝撃波”!」

ブォン ドォオオオン!

大臣「うおっ!?」ヨロッ

盗賊「お!?」

大臣「…きさまぁ…」ジロッ

男「魔法がダメなら魔法以外で戦えばいいんだろ?」

大臣「…ふふふ。確かにな。だが…果たしてそううまくいくかな?」




636: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:36:49.02 ID:dxDLgvSzo
ブォン!

男「なっ!衝撃波!?“転移”!」

シュイン

大臣「…ほう?今のを避けるか」

盗賊「背中がお留守だぜ?」ヒュンヒュンヒュン!

大臣「なんの!」カンカンカン

盗賊「ほう?そんなナリのくせに結構いい動きをするじゃねえか」

大臣「ナイフごときでやられるか!」ブィン




637: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:37:56.03 ID:dxDLgvSzo
盗賊「おっと!」

大臣「この…チョロチョロと鬱陶しいやつめ!」

ブォン

盗賊「おっと」シュン

男「せいっ!」ブンッ

大臣「なんの!」ガキィン

男「盾で防がれた!?くっ…」ギリギリギリ…

シュゥウウウ…

男(ま、魔力が吸い取られる!一旦離れて…)バッ

大臣「隙あり!」チャキッ

男「っ!?」

ザクッ

男「ぐっ!あ、足が…」




638: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:38:26.36 ID:dxDLgvSzo
大臣「ふんぬ!」ブンッ

男「て、“転移”!」

シュイン

魔娘「男!」

男「はあ、はあ…回復してくれ」

魔娘「はい!“大回復呪”」パァアアア…

男「…よし。ありがとな」

魔娘 ギリッ




639: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:38:52.90 ID:dxDLgvSzo
男「どうした?」

魔娘「だって…悔しいじゃない!私は魔法でしか攻撃できないのに、魔法を使えば使うほどあいつを強くしてしまうのよ!?」

男「仕方ないさ」

魔娘「わたしの仇討ちなのに!わたしは何も出来ない!!悔しい!!」

男「…何もかもが俺たちの都合のいいように運ぶことなんて無いんだ」

魔娘「でもっ!」




640: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:39:19.15 ID:dxDLgvSzo
男「それに攻撃だけじゃないだろ?魔娘に出来ることは。な?」

男「こうして俺たちを回復してくれる。すっげえ助かってるんだぞ?」

魔娘「でも…」

男「…あいつ、防御力も攻撃力も、スピードだってハンパじゃない。一体どれだけの魔力を吸い取ったんだ?」

魔娘「…直接攻撃ならできるのよね?」

男「ああ」

魔娘「…“変化呪”」ボワン

ゴーレム(魔娘)『これならどう?』

男「おお!なるほど」




641: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:39:50.38 ID:dxDLgvSzo
ゴーレム『行ってくるわね』

男「あ、おい!ちょっと待てって!!」

大臣「ふんっ!」ブォン!

盗賊「うおっ!?」

ゴロゴロッ ドスン

盗賊「うぅ…」

賢者「盗賊!」




642: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:40:27.40 ID:dxDLgvSzo
大臣「とどめだ!」チャキッ

ゴーレム『…せいっ!』ブンッ!

大臣「っ!?」ガキィ!

シュゥウウウ…

ゴーレム『…え?変化が…解けてく!?』

大臣「…ひぃいめぇええ!」ヒュン!

魔娘「っ!?」

ガキィイイン!!

大臣「…貴様」

男「間に合ったな」




643: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:40:53.56 ID:dxDLgvSzo
大臣「邪魔をするなぁああ!!」キィイイン!キンッ キンッ

男「そうはっ!いかないっ!っての!!」キンッ キンッ キィイイン

大臣「がぁあああ!!」ブンッ!

男「っ!?盾を投げた!?」

大臣「はっ!!」ブンッ!

男「蹴りが!?」ベキッ

ゴロゴロ ドスン

男「ごふっ…」




644: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:41:19.92 ID:dxDLgvSzo
魔娘「男!“最大回復呪”!!」パァアアアア!!!

男「…ふぅ。手強いな」

盗賊「ああ。魔法使いの魔力ってぇのはどんだけすげえんだよ…」

魔娘・男「「…」」

大臣「ふふふ…もう終わりか?ふははは…は?」メコッ

男「誰が!!」グッ




645: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:41:46.11 ID:dxDLgvSzo
魔娘「待って!何か変よ!?」

男「なんかってなんだよ」

大臣「うがっ…はうっ!がはっ!!」メコッ メコッ バキッ

男「…苦しんでるみたいだぞ?」

大臣「うぅう…うがぁああああ!!!!」メキメキメキメキ…

盗賊「…なんだありゃあ?」

化物(大臣だったもの)「ぐるるるる…」




646: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:42:12.74 ID:dxDLgvSzo
魔娘「おそらく…武具の肉体強化に大臣の身体が耐え切れなかったんだと思うわ…」

男「武具ごと巨大化してる…」

魔娘「まるで竜人並ね…」

化物「ぐるるる…」ギロッ

盗賊「来るぞ!」

バターン!




647: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:42:53.16 ID:dxDLgvSzo
戦士「ふははは!魔王!!覚…悟!?」

女魔導師「…なにあれ…」

僧侶「すごく…大きいです…」ゴクリ

男「新勇者様!?」

新勇者「み、みんな!一旦体勢を立て直して…」

化物 ブォン!

新勇者・僧侶・女魔導師・戦士「「「「うわぁああ!!…」」」」

バタバタバタッ!

新勇者「み、みんな!くそお!!」




648: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:43:20.34 ID:dxDLgvSzo
魔娘「下がりなさい!“大睡眠呪”!」

新勇者「え?あ!あんたら…は…」バタッ

魔娘「弱いくせに…邪魔よ!」

化物 ブォン!ブォン!

盗賊「くっ!衝撃波の連続攻撃かよ!!」

男「おわっ!」

ドゴォオオオン ガラガラガラ…




649: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:43:48.29 ID:dxDLgvSzo
魔娘「城が崩れてる!」

盗賊「このままじゃやばいぞ!」

賢者「天井が落ちてきますよ!」

男「早くケリをつけないと!」

化物「ぐぁおおお!!」ブォン ブォン

ドゴォオオオン ドゴォオオオン ガラガラガラ…

盗賊「あんにゃろ…近づこうにもめちゃくちゃに暴れてやがる…」

男「迂闊に近づけない…」




650: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:44:14.61 ID:dxDLgvSzo
盗賊「ちっ…何とか懐に飛び込めりゃあ武具の内側にコイツを放りこめるのによぉ」

男(…内側に?そうか!)

男「二人とも!」

盗賊「なんだ!」

男「少しだけでいいんです!あいつの気をそらして下さい!!」

魔娘「何をするつもり!?」

男「いいから!」




651: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:44:44.18 ID:dxDLgvSzo
盗賊「…なんか知らねえが、気をそらしゃあいいんだな?」

男「はい!」

魔娘「わかったわ」

盗賊「行くぜ!」シュン

男「魔娘、無理はするなよ?」

魔娘「分かってるわよ」

盗賊「…おらっ!こっちだ化物!!」ポイッ

ドォオオオン

化物「ぐるるるる…」ジロッ

ブォン!

盗賊「おっと!」




652: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:45:11.50 ID:dxDLgvSzo
魔娘「“少火炎呪”!」

化物「ぐる?」

魔娘「ほらほら!こっちよ!!」

ドスッ ドスッ

魔娘「魔力が欲しいんでしょ!?“少凍結呪”!!」トテテテテ…

化物「ぐああああ!!」ドスッ ドスッ

男「今だ!“念動”!!」

化物 ピタッ

男「くっ!き、きつい…“転移”!!」

シュイン

ドクン ドクン

魔娘「…え?」




653: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:45:48.24 ID:dxDLgvSzo
盗賊「心臓!?………………まさか!!」

化物「ぐあおおお!!!」ドスン ドスン

ドクッ…ドクッ………ドックン!

化物 ユラァ…ドシーン!

賢者「…倒したのですか?」

魔娘「あ…」ヘタリッ




654: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:46:14.93 ID:dxDLgvSzo
盗賊 ハッ!

盗賊「男!!」シュン

ザクッ ザクッ

盗賊「男!男!!ちきしょう!!どこだ!!」

魔娘「盗賊…さん?」

賢者「まさか…おとこぉ!!」ダッ!

盗賊「腕が見えた!賢者!!魔力を吸い取られるぞ!!そこで止まれ!!」

賢者「は、はい!」




655: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:46:41.65 ID:dxDLgvSzo
盗賊「引っ張り出すぞ!せえの…てりゃあああ!!」

ズルズル…ドサッ

男「はっ…はっ…」

盗賊「賢者!」シュン

スタッ ドタッ

男「はうっ…はっ…はっ…」




656: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:47:08.37 ID:dxDLgvSzo
盗賊「賢者!回復呪だ!!」

賢者「はい!“大回復呪”!!」パァアアア!!

男「はっ…はっ…はあ…はあ…た、助かった…」

魔娘「男!あなた一体何をしたのよ!!」

男「はあ…はあ…ちょっ…ちょっと待って…はあ…」

盗賊「まったく…とんでもねえ事を考えやがるぜ」

賢者「盗賊…あなたは男がなにをしたのか分かっているようですね」

盗賊「ああ。こいつ、化物の心臓の位置に転移しやがったんだ」

魔娘・賢者「「え!?」」




657: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:47:40.23 ID:dxDLgvSzo
盗賊「忘れたか?男の“転移”は物質入れ替えだ。ほれ、そこにある肉塊が化物の心臓だ」

魔娘「…これが!?」グニュッ

盗賊「ああ。無茶な野郎だ。いくら魔力を使わないからって、一歩間違えりゃ化物の中で窒息死だぜ」

魔娘「本当なの!?あなた…転移で…」

男「ああ…思ったより疲れたよ…魔娘、もうちょっと回復してくれないか?」

魔娘「え、ええ…“大回復呪”」パァアアア!!

男「…ふぅ。よし、仕上げをしよう。盗賊さん、手を貸して下さい」

盗賊「ほれ」グイッ




658: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:48:09.17 ID:dxDLgvSzo
男「すいません。よっと」

賢者「仕上げと言っていましたが…何をするんですか?」

男「盗賊さん、化物の首を取ってきてください」

盗賊「なんでだ?」

男「新勇者様に持って帰ってもらいましょう」

盗賊「…なるほど。コイツを“魔王”だってことにしようってか。よっと」

ザシュッ

盗賊「ホレ、男」

男「はい。魔娘」




659: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:48:36.03 ID:dxDLgvSzo
魔娘「いや!そんな気持ち悪いもの近づけないでよ!!」

男「そうじゃなくてな?新勇者様の目を覚ましてくれないか?」

魔娘「え?」

男「頼む」

魔娘「男がそう言うんだったら…“覚醒呪”」パァア…

新勇者「zzz…ん…ん?…ここは?」

男「新勇者様」

新勇者「…あ!さっき魔王と戦ってた!!」

男「えっと…魔王は倒しました。これが首です」

ドサッ

新勇者「…え?」




660: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:49:02.28 ID:dxDLgvSzo
男「これを持って王都にお帰りください」

新勇者「…いやいや!ちょっと待てって!!これはあんたらが倒したんだろ!?あんたらが持って帰るべきだ!」

男「いえ。これは新勇者様のおかげで倒せたんです。ですから新勇者様が持って帰ってください」

新勇者「俺は何もできなかった!それぐらい覚えてる!!」

男「新勇者様がヤツの気をそらしてくれたから倒せたんです。だから新勇者様のお手柄です」

新勇者「…そ、そうなのか?」

魔娘・賢者・盗賊 コクッ




661: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:50:13.86 ID:dxDLgvSzo
新勇者「そ、そういうことなら…じゃあ…もらうよ」

男「はい。ところで新勇者様はどうやってこの城に入ったんですか?」

新勇者「いや…この街に入ったら竜と軍が戦ってたから…その隙をついて城壁を上ってきたんだ」

新勇者「城内には魔物はいなかったから、この部屋まですんなり着いてさ、ドアを開けたらこの化物がいて…」

魔娘「…運がいいわね」ボソッ

新勇者「…あ!俺の仲間は!?」

賢者「そこで寝てますよ」




662: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:51:31.61 ID:dxDLgvSzo
新勇者「え?あ、ホントだ…」

盗賊「呑気なもんだぜ」

新勇者「…あ!あんた達!竜が出た村に居た人じゃないか!!」

賢者「そうです。私は賢者です」

新勇者「賢者だって!?あの手配書の!?」

盗賊「俺ぁ盗賊だ。で、あそこで気を失ってんのが魔法使いだ」

新勇者「手配書の三人が揃い踏みじゃないか!あんたらがこの化物にとどめを!?」




663: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:51:58.12 ID:dxDLgvSzo
賢者「それはもうあなたのものです。どうぞお持ち帰りください」

新勇者「でも!あんたらがこれを持って帰れば…手配書も取り消せるだろ!?」

賢者「…どうでもいいのですよ。そんなことは」

新勇者「け、けど…」

盗賊「それより早く帰ってくれねえか?そいつらが目を覚ますとややこしいことになりそうだからよ」

新勇者「それは…はい。そうですね…」




664: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:52:25.63 ID:dxDLgvSzo
賢者「転移呪で送りましょうか?」

新勇者「あ、いや。転移符があるから…」

男「じゃあ、ここでお別れしましょう」

新勇者「う、うん…いまいち釈然としないんだけど…」

魔娘「…わたしはまだそこの戦士に襲われたこと、忘れてないわ」

新勇者「そ、そうだったな…じゃあ、帰るとするよ」

男「はい。気をつけて」

新勇者「ああ。“転移”!」

シュイン




665: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:52:52.30 ID:dxDLgvSzo
男「…行ったな」

魔娘「ええ…」

男「面倒なことならなくてよかった…」

魔娘「ねえ、男?」

男「ん?」

魔娘「今すぐ抱きしめてキスをしたいところだけど…とりあえずその血だらけの体を洗ったら?」

男「あー…そうだな。どこかに風呂かなんか無いか?」

魔娘「大丈夫よ。“降水呪”」ザー!

男「おわっ!」




666: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:53:19.08 ID:dxDLgvSzo
魔娘「とりあえずその雨の中で体を洗いなさい」

男「ちょっ!降り方が激しすぎるだろ!!」

魔娘「水も滴るいい男になってね?」クスッ

魔王「…」

賢者「落ち着きましたか?」

魔王「ああ…」

盗賊「…おめえ、どうすんだ?魔娘に殺られちまうのか?」

魔王「…」




667: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:53:45.81 ID:dxDLgvSzo
賢者「こういう言い方は卑怯なのですが…貴方がいなくなると悲しむ者がいますよ?」

魔王「しかし…俺が姫の父親である主王様を殺したことには変わらない」

魔娘「いい覚悟ね」

賢者・盗賊「「魔娘!?」」

魔王「…魔法使いはまだ意識を取り戻していない。殺るなら今のうちだ」

魔娘「そうね。それじゃ…」

賢者「魔娘!」

男「まあまあ」




668: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:54:12.35 ID:dxDLgvSzo
賢者「男!貴方からも言ってください!!無益な殺生は…」

男「見てましょうよ。魔娘を信じて…ね?」

賢者「…え?」

盗賊「へっ。一端の口を利くようになったじゃねえか」

魔娘「…“大雷撃呪”!」

ピカッ!ゴロゴロゴロ…バチバチバチッ!!

魔王「っ!?」ギュッ

バチバチ…シュゥウウウ…

魔王「…え?」




669: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:54:53.56 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…」

魔王「…なぜ止めた?」

魔娘「止めたわけじゃないわ」

魔王「じゃあなんで!」

魔娘「…あれよ」

魔王「え?」

オオオオン…オオオオン…

魔娘「さっきのわたしの魔法はあの武具が吸い取ったわ。つまり、あの武具が近くにある限り破壊力のある魔法は使えない」

魔娘「そしてわたしには魔法以外に貴方を殺す手段がないわ。だから…」

魔王「…」

魔娘「…悔しいけど…貴方を殺すのは諦めるわ」ギュッ

賢者「魔娘…」




670: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:55:20.50 ID:dxDLgvSzo
盗賊「これで一件落着かあ?」

魔娘「…まだよ」

男「そうだな。コイツを何とかしないと」

オオオオン…オオオオン…

賢者「そうですね…全ての原因はこの武具のようですし…」

バタン

黒豹「お?静かになったんで見にきたら…終わったのか?」

黒竜人「…なんだその醜い肉塊は?」

魔娘「大臣の成れの果てよ。叔父様、黒猫」




671: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:55:47.36 ID:dxDLgvSzo
黒豹「猫言うな!これが大臣だと?」

黒竜人「して、魔王は?」

魔娘「そこにいるわ」

黒豹「なに?」

魔王「…」

黒竜人「…姫。こやつは討たないのですか?」

魔娘「…ええ。もう仇討ちは終わったから」

黒豹「へ?いや…まだ魔王は生きてるじゃないか…」

魔娘「全てはそこにある武具のせいなの。その…“呪いの武具”のね」

黒竜人・黒豹「「呪いの武具!?」」




672: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:56:14.00 ID:dxDLgvSzo
黒竜人「…どういうことですか?」

魔娘「簡単に言うと、“呪いの武具が大臣を操ってお父様を…そして人間界にも侵攻しようとしていた”ってところかしら?」

黒豹「なんでそんなことに…」

賢者「…その武具はおそらく何代も前の勇者が身につけていたものでしょう。古い勇者の紋章があります」

黒豹「お前は誰だ?」

賢者「申し遅れました。私は賢者と言います。こちらは盗賊。私の夫です」

盗賊「へっ」




673: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:56:49.33 ID:dxDLgvSzo
魔娘「このふたりが人間界でわたしの面倒を見てくれたの」

黒竜人「そうですか…姫がお世話になりました」

賢者「いいえ。私たちのほうこそ魔娘のおかげで楽しい時を過ごせましたから」ニコッ

黒豹「で、そろそろ謎解きしてくれないか?」

魔娘「そうね。その武具は賢者様の言うとおり、随分昔の勇者が身に着けていた武具よ」

魔娘「その武具は魔力を吸い取って力に変える…そういうものなの」

黒豹「魔力を力に?そんなことできるのか?」

黒竜人「いや、それ以前に…武具が魔力を吸い取るなどという話は聞いたことがない」




674: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:57:17.61 ID:dxDLgvSzo
魔娘「でもそうなの。この武具は勇者が死んだ後もなお、近づく者の魔力を吸い取ろうとしたと聞くわ」

魔娘「だから城の奥深くに封印されていたのよ」

黒竜人・黒豹「「…」」

魔娘「…あなたたち、“エルフの悪夢”は知っているわよね?あれはどうやって収束したか知ってる?」

黒竜人「聞いた話では…そのハーフエルフは10日後に老衰で死んだと…」

魔娘「…当時の主王がね、この武具を纏ってハーフエルフの魔力を吸い取ったからよ」

黒豹「なんだと!?これがか!?」

黒竜人「…“エルフの悪夢”ではハーフエルフは500年の寿命をわずか10日で消費したと…」

黒竜人「それだけの魔力をこの武具は…」




675: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:57:46.20 ID:dxDLgvSzo
魔娘「そう。ここからは私の推測だけど…」

魔娘「そのあと何百年も城の奥深くに封印されたこの武具は…何らかの方法で大臣をおびき寄せて操った」

魔娘「大臣は武具の命ずるままお父様を…そして人間界に侵攻しようとしてた」

黒豹「ちょっと待った。それだと大臣側にしかメリットがない。武具側のメリットはなんだったんだ?」

魔娘「これも推測だけど…存在意義の明確化ね」

男「???」

盗賊「…おい、もうちょっと簡単に説明してやってくれ。男が…」




676: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:58:13.19 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…魔力を吸収して力に換える…それがこの武具の存在意義よ」

魔娘「なのに封印されて碌な手入れもされないまま何百年も…このままじゃ何もせずに朽ち果ててしまう」

魔娘「だから戦乱の世になれば、この武具も役割を果たせる。それが武具側のメリットよ」

黒豹「なるほどなあ」

魔娘「だから…わたしの仇討ちは…この武具を破壊すること。でも…」

魔娘「魔力を持ったものが近づくとこの武具は…魔力を吸い取ろうとするわ」

魔娘「だからこの武具に近づけるのは…」チラッ

賢者・男「「…」」チラッ

盗賊「…な、なんだよ…」




677: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:58:39.69 ID:dxDLgvSzo
賢者「…確かに。この中で魔力がないのは貴方だけですね、盗賊」

盗賊「俺か?俺なのか!?」

男「他の人はみんな魔力があるから…」

盗賊「…わーった。わーったよ!おい男。その鉈を貸せ」

男「はい」

盗賊「よっと…相変わらずクソ重てえ鉈だな。せーのっ!」ブン!

バキィ!

盗賊「固えな…こりゃ骨が折れそうだ。せ−のっ!」ブン!
  ・
  ・
  ・




678: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:59:07.57 ID:dxDLgvSzo
賢者「“回復呪”」パァア…

盗賊「はあ…ありがとな」

賢者「いいえ」ニコッ

魔娘「もう魔力も吸い取られないわ」

盗賊「ったりめーだ。こんだけ粉々にしたんだからな」

ボロボロ…

男「お疲れ様でした」

魔娘「これで…」

男「ん?」




679: ◆doBINqA5W6:2013/01/23(水) 23:59:34.36 ID:dxDLgvSzo
魔娘「これでようやく終わったのね…」

男「そうだな…魔娘…」ダキッ

魔娘「男…」ギュッ

黒竜人「うぉっほん!」

黒豹「お取り込み中悪いんだが…」

魔娘「…無粋ね」ボソッ

黒豹「…なんか言ったか?」

魔娘「なにも?」




680: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:00:02.48 ID:dxDLgvSzo
黒豹「…まあいい。今度はこっちのほうを何とかして欲しいんだが」

魔娘「なんとかって?」

黒竜人「外では未だ魔王の軍が抵抗しているのです」

黒豹「こっちの希望としては魔王の敗北声明と姫様の勝利宣言で十分なんだが…」

魔娘「勝利宣言?」

魔王「…いいよ」

魔娘「え?」

魔王「敗北声明を出そう。どこに行けばいい?」

黒豹「そこのテラスでいいだろ。広場にいる連中に向かって言ってくれ」

魔王「分かった」

魔娘「…」




681: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:00:28.24 ID:dxDLgvSzo
〜テラス〜

魔王「…皆のもの」

オオ!マオウサマダ!ワレラノオウ!!マオウサマー!!

魔王「…私はもう魔王ではない」

エエ!?ナンダッテー!?

魔王「私は戦いに敗れた敗者である。よってこれからは一魔族として生きる」

ソンナー!ドウスルンダ!コレカラドウスレバイインダー!!

魔王「これからは新しい王の下で力を発揮してほしい」

魔王「…今までわたしについて来てくれたものたちよ…心から礼を言う。ありがとう」

シーン…

魔王「…“洗脳解除呪”」

…ザワザワ…オレハイママデナニヲ…?ナンデコンナコンナトコロニ?…

魔王「…」バッ

スタスタスタ…




682: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:00:55.40 ID:dxDLgvSzo
〜謁見の間〜

黒豹「…まあ、こんなもんだろ」

魔王「…もういいか?」

黒竜人「我々としてはお主の罪についても追及したいところだが…」チラッ

魔娘「もういいでしょ?魔王も“呪いの武具”の被害者ですもの」

黒竜人「…ということだ」

黒豹「…じゃあ次は姫様だな」

魔娘「え?」




683: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:01:23.43 ID:dxDLgvSzo
黒豹「“え?”じゃねえよ。姫様の勝利宣言だよ」

魔娘「それは別に…」

黒竜人「先ほどの魔王の敗北声明で兵や民は動揺しています。彼らの不安を取り除くためにもお願いします」

男「ほら、行って来いって」

魔娘「え?で、でも…勝利宣言をわたしがしたら…わたしが新しい王になってしまうのよ?」

魔娘「わたしに施政や統治が出来るわけないわ!勉強も殆んどしてないのに!!」

魔娘「それでまた混乱が起こったら…そうなったら…二人でのんびり過ごすことができなくなるのよ?そんなの嫌よ!!」

男「…お前の父親は民のための政治をしてたんだろ?お前も戦争になると民が巻き込まれるから嫌だって言ってた」

男「もし魔娘が民のことを思うんだったら…不安な民のためにも、やっぱりちゃんと勝利宣言するべきだと思うんだ」

魔娘「で、でも!」




684: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:01:52.26 ID:dxDLgvSzo
男「施政や統治に不安があるなら、協力者に頼めばいいんだ。何もかも一人でやろうなんてしなくていいんだって」

魔娘「でも…」

男「だから、勝利宣言しろって。な?」

男「それにさ、王になったからってプライベートが無くなるわけじゃないだろ?」

魔娘「それは…そうだけど…」

男「だったら…ほら、テラスに出るんだ」

魔娘「…うん」




685: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:02:51.69 ID:dxDLgvSzo
〜テラス〜

魔娘「…」

ザワザワ…ダレダ?…オンナ?…

魔娘「…わたしは先代主王の娘…魔娘です」

魔娘「わたしはここに…魔王に勝利したことを宣言する!」

ザワザワ…センダイサマノムスメ?…ヒメサマ?…ヒメサマダ!ヒメサマー!

魔娘「…わたしの父は主王国を争いの無い国にしようとしました」

魔娘「そのためにすべての国を同じ法で統治しました」

魔娘「…でもそれは…歪みを生みました」




686: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:03:18.90 ID:dxDLgvSzo
魔娘「それぞれの種族で文化や習慣は異なるもの…」

魔娘「それらは決して同じ価値観で測れるものではありません」

魔娘「わたしは…各国に自治権を認めます!」

魔娘「これからは各族長の下、それぞれの種族に合った法を整備し」

魔娘「各国の問題などは各国の代表が集まる評議会を開き解決することとします」

魔娘「これを新主王国の方針とします」

魔娘「…みんな、力を合わせて頑張りましょう!」

オォオオ!ヒメサマー!ガンバリマショウ!バンザーイ!バンザーイ!!…

魔娘 ノシ




687: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:03:45.31 ID:dxDLgvSzo
〜謁見の間〜

魔娘「…ふぅ。慣れないことはするものじゃないわね」

男「いい演説だったぞ」

賢者「ええ」

盗賊「やっぱおめえは王の器だな」

魔娘「…そ、そうかしら?」

黒豹「にしても…とんでもねえ事をかましやがったな」

黒竜人「“各国に自治権を認める”とは…これは各族長の慌てる姿が目に浮かびますな」

魔娘「今までが無理を押し通そうとし過ぎてたのよ。それこそ人魚族に“ベッドで寝ろ”って言ってるようなものよ」

黒豹「ははは。ちがいない」




688: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:04:14.65 ID:dxDLgvSzo
黒竜人「これから忙しくなりますな。我々もですが」

魔娘「みんな、協力してくれるかな…?」

黒豹「ああ」

黒竜人「何事も新しく始めるときは問題が出るものです。それらを一つずつ解決すれば、自ずと良い方向に進みます」

賢者「そうです。焦りは禁物ですよ?」

魔娘「…はい」

男(…これでホントに一件落着だな)




689: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:04:42.59 ID:dxDLgvSzo
賢者「ところで…貴方達はどうしますか?」

魔王「…え?」

盗賊「お前らはどこで、何をするつもりかって聞いてんだ」

魔王「…俺達は…」

賢者「行くところがないのなら…私たちといっしょに来ませんか?」

魔王「え?」

賢者「小娘の身体が回復するのに、まだしばらくはかかります」

賢者「その間だけでも私たちの家で休めばいいでしょう」

魔王「し、しかし…」




690: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:05:18.02 ID:dxDLgvSzo
賢者「小娘が元気になったら…その後のことはそれから考えればいいでしょう」

盗賊「すぐに出て行きたがると思うがな。へへへ」

賢者「…盗賊?」ニッコリ

盗賊「…へ?」ビクッ

魔王「…行くなら早いほうがいい。魔法使いを早く休ませたいんだ…」

賢者「そうですね。では…」

魔娘「え?もう行くの?」

賢者「ええ。もうやるべきこともないですし」

魔娘「そう…」




691: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:06:47.99 ID:dxDLgvSzo
男「またいつでも会えるって」

盗賊「それにだ、早く帰ってゆっくり休みたいってのもあるしな」

魔娘・男「「…」」

盗賊「…ってことで、元気でな」

男「はい…」

賢者「ふふ。それじゃ…“転移呪”」

シュイン

男「…行っちまったな」

魔娘「ええ…」




692: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:07:14.47 ID:dxDLgvSzo
黒豹「んじゃまあ、こっちもやることやらないとな!」

黒竜人「うむ。宴の準備だな」

男「え!?それ!?」

黒豹「当たり前だろ?敵も味方も戦いの後は飲んで騒いで、諍い事を忘れるもんだろ?」

黒竜人「頭の悪い飲み方ではあるな。」

黒豹「ほっとけ!」

魔娘「…ふふっ」

男(やっと魔娘が笑った…よかった)




693: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:08:44.13 ID:dxDLgvSzo
〜数ヵ月後・主王城・執務室〜

男「…」

妖精従者1「ツギノショルイデス」

バサッ

魔娘「はいはい。これは…評議会に掛けましょう。こっちは…側近にまわしておいて」

妖精従者2「コレハ?」

魔娘「どれ?…堤防の補修ね。これは軍にやってもらいましょう」

妖精従者2「ハーイ」

魔娘「んーっ!やっと終りが見えてきたわね。みんな、あと一頑張りよ!」

妖精従者‘s「「「ハーイ」」」

男「…」

パタン




694: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:09:10.90 ID:dxDLgvSzo
〜鍛錬場〜

黒豹「打ち込み始め!」

セイッ!ヤアッ!トオッ!

男「ここはいつ来ても活気があるなぁ」

黒豹「お?誰かと思えば旦那じゃないか」

男「“旦那”はやめてくださいよ」

黒豹「じゃあ王様でいいか?」

男「もっと嫌です!第一この国の王は魔娘でしょう?」




695: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:09:38.05 ID:dxDLgvSzo
黒豹「あんたはその旦那だろ?だったら姫様が女王でお前は王様じゃないか」

男「頼みますから“男”って呼んでくださいよ…」

黒豹「何言ってるんだ。さすがに名前を呼ぶ訳にはいかないだろ?“王様”」

男「…旦那でいいです…」

黒豹「観念したか。ははは。で?今日は何の用だ?」

男「…分かって言ってるでしょ…」

黒豹「まあな。お前、暇そうだもんな」

男「…」




696: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:10:05.27 ID:dxDLgvSzo
黒豹「…姫様にはお前が必要だぞ?」

男「え!?」

黒豹「お前、何考えてるか分かりやすいな」

男「…」

黒豹「…ま、お前の気持ちなんて俺には分からないからな」

黒豹「とりあえずあそこの白熊族の連中と手合わせしてみるか?体を動かせばちょっとはすっきりするだろ」

男「…そうですね」
  ・
  ・
  ・




697: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:10:31.92 ID:dxDLgvSzo
黒豹「…ま、分かっちゃいたけどな…」

白熊族‘s ボロボロ…

男「ちゃんと手加減はしましたよ?」

黒豹「とりあえず回復魔法をかけといてやってくれ」

男「はい」

黒豹「あ、それからこれを側近さんに渡しておいてくれないか?練習用のヒノキの棒の領収書だ」

男「あ、はい」




698: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:10:58.86 ID:dxDLgvSzo
〜財務室〜

コンコン ガチャ

男「お邪魔します」

側近「こっちにこれだけの金額を振り分けると…これは後回しにして…」

側近「まったく…粉飾決算だらけじゃないですか!これでよく国家運営が出来てましたね…」

側近「巨人従者、そっちの収支はどうなってますか?」

巨人従者「これです」

側近「ありがとう。あら、珍しいですね」

男「これ…黒豹さんからの預かりものです。ヒノキの棒の領収書だそうです」

側近「わざわざありがとうございます。にしても…あなたは王様なんですから、こんな雑用しなくても…」

男「いえ、俺に出来ることならしますから、なんでも言ってください」

側近「ふふふ。こんな王様、他にはいないでしょうね」

男「はあ…」ポリポリ




699: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:11:25.51 ID:dxDLgvSzo
〜食事中〜

モグモグ…

魔娘「あ、そうそう。人間界に送った“草”からの情報だけど」

男「ん?…ああ、ニンジャか?」

魔娘「ええ。賢者様達の手配書、取り消されたらしいわ。さっき報告書が届いたの」

男「そっか…よかったな。でも誰が…」

魔娘「新勇者みたいね」

男「新勇者様が?」

魔娘「ええ。“先代勇者パーティーの3人と協力して魔王を倒した”って報告して、王様が手配書を取り消すことにしたらしいわ」

男「そうなんだ。やっぱりあの新勇者様はいい人だったんだな」

魔娘「そうね。連れの3人は残念だけどね」

男「ははは…」




700: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:11:53.80 ID:dxDLgvSzo
魔娘「それから…」

男「ん?」

魔娘「…魔王と魔法使いは“封印の島”にいるって…」

男「え?なんでまた…」

魔娘「やっぱりね、魔王のことを許せない人たちもいるのよ。それで…魔王自ら“封印の島”に行くことにしたらしいわ」

男「それで魔法使い様もついて行ったのか?」

魔娘「ええ…」

男「大丈夫か?魔王は初級魔法しか使えないし、魔法使い様はあれ以来魔法が使えなくなったし…」

魔娘「そうね…でも、自分たちで決めたことなんだし…わたし達がとやかく言うことじゃないわ」

男「そっか…」

魔娘「黒竜たちと仲良くしてくれればいいんだけど…」

男「え?」




701: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:12:20.29 ID:dxDLgvSzo
魔娘「なあに?」

男「いや…魔娘は魔王のこと…」

魔娘「…許したわけじゃないわ。でもね…いつまでも憎んでても仕方ないでしょ?」

魔娘「それに…あれは“呪いの武具”のせいなんだし…ね?」

男「…やっぱ魔娘は男前だな!」

魔娘「なんでそうなるのよ!」




702: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:12:46.77 ID:dxDLgvSzo
〜深夜・魔娘と男の寝室〜

魔娘「スー…スー…」

男「…」ムクッ

ソロリソロリ…ゴソゴソ…

男「…魔娘…ごめんな」

カチャ ソー…パタン

魔娘「ん…スー…スー…」




703: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:13:16.46 ID:dxDLgvSzo
〜テラス〜

ドサッ

男「エルフ母さんから貰った転移符はっと…あったあった」

男「…これでこの景色も見納めか…」

男「…はぁ…」

男「魔娘はやっぱり王の器だな。最初は不安がってたのに…今じゃすっかり王として仕事をこなしてるし…」

男「それに…みんなに好かれて…」

男「みんな、魔娘の下で生き生きと仕事してるもんな…」

男「それに比べて俺は…」




704: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:13:43.10 ID:dxDLgvSzo
男「なにも出来なくて…城の中をうろつくだけで…黒豹さんの言うとおり暇を持て余してるだけだもんな…」

男「このままじゃ…魔娘にも迷惑かけるから…」

男「だから…これでいいんだ…」

男「…さて!そろそろ行きますか!!“転移”!」

シュイン

黒豹「…馬鹿が」




705: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:14:13.31 ID:dxDLgvSzo
【エピローグ】

〜3年後・水の国のとある村〜

女「あ、そこの人」

鰐村人「ん?あたいかい?」

女「ええ。わたし、人を探してるんだけど…この人を知らない?」

鰐村人「ん?…ああ。この人ならあの森の中の一軒家に住んでるよ」

女「そう…ありがとう」




706: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:14:39.85 ID:dxDLgvSzo
鰐村人「この人に何か用かい?というか、一目で分かるねそりゃあ」

女「…ええ」

鰐村人「人は見掛けによらないってことかねえ」

女「…あの人は優しすぎるのよ。大馬鹿の癖にね」

鰐村人「…あんたも結構辛辣だねえ」

女「ふふっ。それじゃ」

鰐村人「ああ。気をつけて行ってきな」




707: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:15:06.92 ID:dxDLgvSzo
〜森の中の一軒家〜

女「…ここね」

コンコン

ガチャ

?「…あら?」

女 ペコッ

?「久しぶりですね。どうぞ中に」

女「ええ。お邪魔します」




708: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:15:33.71 ID:dxDLgvSzo
女(綺麗に整理されて…落ち着いた部屋だわ…)

?「どうしました?」

女「…なんだか甘い匂いがするわ…」

?「ふふふ。今クッキーを焼いていたんですよ。後でお持ちしますね」

女「…あ!そ、そういう意味じゃ…」

?「お茶を入れてきますね。ふふふ」

女「…」
  ・
  ・
  ・




709: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:16:04.82 ID:dxDLgvSzo
女「このクッキーおいしい…」

?「ふふっ。ありがとう」

女「お茶のおかわりをいただけるかしら?」

?「はい」

コポポポポ…

?「…そろそろ来る頃だと思っていました」

女「え!?」




710: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:16:43.00 ID:dxDLgvSzo
?「はい。どうぞ」ニコッ

女「あ、ありがとう」ニコッ

?「もうそろそろ帰ってくると思います」

女 ギュッ

バタン

女「!?」

?「…帰ってきたみたいね」

女 ドキドキ…

ドタッ ドタッ ドタッ ガチャ

男「ただい…ま?」

?「お帰りなさい。お客さんが見えてるわよ?」




711: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:17:10.97 ID:dxDLgvSzo
女「…おかえり男」

男「ま、魔娘!?」

女改め魔娘「そうよ!」

トテテテテ バチコーン!

?改めエルフ母「あらあら」

男「いってぇ!?」

魔娘「当然よ!男!!」

男「は、はい!」




712: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:17:38.84 ID:dxDLgvSzo
魔娘「あなたねえ!何にも言わないで突然いなくなって…どんなに心配したと思ってるのよ!!」

魔娘「今まで行ったことのあるところを全部探して!それでもいないから使い魔をいっぱい放って!!それでも見つからなくて!!」

魔娘「旅商人から聞いた噂を頼りに!ようやくここまで来たのよ!?」

エルフ母「お茶を入れ直しましょうね」

魔娘「い…今まで!…ヒック…ホントに…ヒック…心配したんだからねっ!!」

男「魔娘…」ナデナデ

魔娘「さ…さびしっ…かった!…ひ…ひとりはっ…もう嫌だって!!…ずっと…一緒に居てって!!」

男「…ゴメンな?」

魔娘「うわぁあああん!うわぁああああん!!…」
  ・
  ・
  ・




713: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:18:06.33 ID:dxDLgvSzo
男 セイザー

魔娘「ホントにもう!どれだけ探しまわったと思ってるの!!」

男「すいません…」

魔娘「朝起きたらいなくなってて…どこかに出かけたのかと思ったけど夜になっても帰ってこなくて…」

魔娘「心配で心配で…ホントに…寂しかったんだからね!」

男「いや、書き置きしようかと思ったんだけどさ」

魔娘「そう言う問題じゃないの!」

男「はい…」




714: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:18:32.90 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…ねえ…」

男「…」

魔娘「どうして…いなくなったの?」

男「…」

魔娘「わたし、男に何かした?もしそうなら謝るわ」

男「そうじゃないよ」

魔娘「じゃあどうして?」

男「…居場所がなかったんだ」

魔娘「…え?」




715: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:19:10.23 ID:dxDLgvSzo
男「魔娘も他のみんなも…毎日すごく生き生きして働いててさ…」

男「けど…俺、何もすることがなくて…それで毎日ブラブラしてたんだけどさ…」

魔娘「…それで?」

男「そしたら魔娘と旅をしてた時のことばっかり思い出して…あの事もさ…」

魔娘「あの事?」

男「ほら、封印の島で話したことがあったろ?仇討ちをして、二人でのんびり過ごすって」

魔娘「え、ええ…」

男「けどさ、魔娘は…やっぱり主王国に必要な人だし…魔娘を一人占めしたいって言うのは俺の我儘だって思ってさ…」

魔娘「そんなことないわ!」




716: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:19:38.60 ID:dxDLgvSzo
男「それで…毎日やることもなくブラブラしてるだけの俺が城に居てもさ…悪い噂が立つだけだろ?」

魔娘「悪い噂?」

男「“女王様の旦那は毎日遊んでるだけのゴクツブシだ”って…そう言う噂」

魔娘「誰がそんなことを!」

男「…このままじゃ魔娘に迷惑かけてしまうってさ…そう思うようになって…」

魔娘「迷惑なんかじゃない!わたしには男が必要なの!!」

男「…ありがとう。そう言ってくれるのは素直に嬉しいよ。けど…」




717: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:20:22.70 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…あのね、男」

男「…」

魔娘「…わたしのお腹にはあなたの子供がいるの」

男「…へ?」

魔娘「あなたは父親になるの。わかる?」

男「俺に…子供が!?」

エルフ母「あらあら。わたし、曾お婆ちゃんになっちゃうのね」

男「…い、いや!ちょっと待て!!最後にしたのは…3年ぐらい前だろ!?」

魔娘「わたしの妊娠期間は4年半なの!」




718: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:20:49.52 ID:dxDLgvSzo
男「え?魔族はそれが普通なのか?」

魔娘「寿命の長い種族はね。ねえ、エルフ母さん?」

エルフ母「ええ。わたし達エルフ族も同じぐらいよ」

男「そ、そうなのか…」

魔娘「だから男はわたしの傍にいなさい!」

男「え?けど…」




719: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:21:15.69 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…エルフ母さん。この家に空き部屋はある?」

  ---小さい頃、友達はいなかった

エルフ母「ええ、あるわよ」

  ---ある日、友達が出来た

魔娘「じゃあ、わたしもここに住むわ」

  ---ずっと一緒だった

男「ちょっ!おまっ!…城のほうはどうするんだよ!仕事は?」

  ---成長しても一緒だった

魔娘「もう施政は落ち着いたわ。これからは評議会なんかの会議の時だけ城に戻ればいいようにしてきたの」

  ---あるときから異性として意識しだした

男「…え?」

  ---目的があった




720: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:21:42.58 ID:dxDLgvSzo
魔娘「今は各族長がそれぞれの国を統治して、王の国は各国間のもめごとの調停ぐらいしか関与しないわ」

  ---実現するために旅立った

魔娘「王の国の施政だって、側近や妖精従者たちだけで出来るようにしたし…」

  ---困難があった

魔娘「だから今はそれほど忙しくはないの」

  ---けれど、いろんな人が助けてくれた

男「お前…すごいな」

  ---目的は達成した

魔娘「そりゃあね。だって…わたしだって男といっしょにのんびり過ごしたいもの。だから頑張ってきたのよ?」

  ---することがなくなった

男「そうだったのか…ゴメン。俺、自分のことしか考えてなかった…魔娘がそこまで考えて頑張ってたなんて…」

  ---いたたまれなくなった




721: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 00:22:12.04 ID:dxDLgvSzo
魔娘「だって…男と約束したもの。仇討ちをしたあとは二人でのんびり過ごすって」

  ---ひとりになった

魔娘「それに…この子もこれから大事な時期になるわ」

  ---追いかけてきた

魔娘「だから落ち着いた環境で過ごしたいって思ってるの」

  ---もう心配することはない

魔娘「精神的にも落ち着いた環境で…そのためにはね、男がいないとダメなの…」

  ---これからはずっと一緒だ

男「…へ?」

  ---もう離れない

魔娘「だから…」

  ---だから…

魔娘「ずっとわたしと一緒にいなさい!」

男「は、はい!」


〜END〜




724:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/01/24(木) 00:24:17.40 ID:kRpSLERdo
最後までいい話だった!
乙乙

後日談マダー?




726:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/01/24(木) 00:24:57.53 ID:X5uw7yhyo
おつつ
後日談期待




727:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/01/24(木) 00:27:23.87 ID:MUKqMLmLo

今までのとは毛色が違ったけど良かったよー
後日談待ってる




729:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/01/24(木) 00:29:20.27 ID:XeCiZv1AO
乙です

後日談待ってます




745: ◆doBINqA5W6:2013/01/24(木) 23:01:04.36 ID:dxDLgvSzo
>ALL ありがとうございます

おまけ行きます

男「…へ?」 魔娘「だから…」【おまけ】へつづく


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