NO IMAGE
1
前作
男「好きです」女「私は貴方が嫌いだけれどね」

1: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:17:52 ID:9LqDYtUI
男「サンタさんになにか願う?」

女「貴方が普通になることかしら」

男「またまたー。僕はとっても普通な高校生だよ」

女「貴方が普通なら世界中の人が狂人ね」

男「つまり普通なのは僕と女さんだけになる、と」

女「貴方に同類だと思われていたなんて心外だわ。首を吊りなさい」

男「どれぐらい締めたらいいかな?」

女「……貴方の潔さは絶句ものね」

元スレ
SS深夜VIP
続"女「私は貴方が嫌いだけれどね」"
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1355761072/


 
 
3: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:21:40 ID:9LqDYtUI
男「僕はサンタさんにね」

女「聞いてないわ」

男「女さんが素直になれるようにって願うつもりなんだ」

女「……貴方の妄想を私に押し付けないで」

男「素直な女さん……素敵だなあ」

女「妄想に浸るのは深夜の自室に留めておいてくれないかしら」

男「でもそうやってチクチク言うから素直さが映えるんだよね。ただ素直なだけってのも考えものか……んー」

女「あら、おかしいわね。会話をしている気がしないわ」スッ

男「ごめんごめん。もうしないからその彫刻刀を下ろしてよ、って高校生にもなって彫刻刀持ち歩くのはどうかと思うよ」

女「護身用よ。貴方用の」

男「僕じゃない用もあるの?」

女「催涙スプレーとスタンガンと防犯ブザーがあるわ」

男「物騒な鞄だね」




4: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:23:12 ID:9LqDYtUI
男「そんな女さんに質問なんだけど、クリスマスの予定は? 家族と過ごしたりするの?」

女「両親は仕事柄クリスマスが多忙だから、特にないわね。毎年26日にクリスマスケーキを食べるぐらいよ」

男「ご両親のお仕事って?」

女「居酒屋を経営してるわ」

男「それはすっごく意外だね。女さんと居酒屋が結びつかないよ」

女「そうかしら。たまにウエイトレスならしているのだけれど」

男「女さんの……割烹着姿!」

女「え、ええ、それがどうかしたの?」

男「今度飲みに行こう!」

女「成人しても入店拒否するわ」




5: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:24:16 ID:9LqDYtUI
男「話を戻すね」

女「相変わらずめげないわね」

男「女さん、僕とクリスマスイヴに遊びませんか?」

女「……嫌」

男「!?」ガーン

女「あら、断られるとは微塵も予想してなかったって顔ね」

男「そんなつもりは……いや、そうだったのかな。なんだかんだで女さんは誘ったら必ず受けてくれてたから、慢心してたのかもしれない」

女「必ずってことはないでしょう」

男「必ず、だよ。といっても女さんを遊びに誘ったことはまだ三回しかなかったけど」

女「ちょ、ちょっと」

男「うん?」

女「なに泣いてるのよ」

男「……え?」ポロポロ




6: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:25:00 ID:9LqDYtUI
男「う、うわっ、ほんとだ、涙が勝手に……あっ、見ないでよ女さん」スッ

女「貴方が恥じるなんて珍しいこともあるのね」

男「これでも僕は女さんに弱々しいところを見せたことはないよ」グスッ

女「あら……そうだった、かしら」

男「あー、くそ。失敗した。なんだか気分が凹んじゃったから、今日は先に帰るね」

女「……き、気にすることないじゃない。涙ぐらい」

男「……」

男「女さん。これでも僕は男だよ。男は男らしくなんて時代錯誤なことは言わないけど、好きな子にはカッコつけてたいんだ。そこは譲れない」

女「そう。貴方がそう決意しているのなら、私が口出しすることはないわね」

男「うん」

女「……へえ、そうなの。いや、そうよね。当たり前のことね」




7: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:26:44 ID:9LqDYtUI
男「どうかしたの? 女さん」

女「私は勘違いしていたわ。てっきり貴方は万能だと買い被っていたわ」

男「女さんのためならシャープペンにだってなるよ」

女「そんな学生の常備アイテムになるよりも先に、ここぞというところで人の心を読み違えないようにすることね」

男「女さん?」

女「かつてここまで苛立ったことはないわ。身勝手と批判されようと怒りをあらわにする他無いの。ごめんなさいね」

男「別に構わないけど……どうしたの?ほんと」

女「私は今の貴方がとても嫌い。さよなら」スタスタ

男「……え?」




8: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:27:57 ID:9LqDYtUI
男「ちょ、ちょっと待ってよ女さん」スタスタ

女「待たないわ、即刻消えて」スタスタ

男「ぐっ、ポジティブになれないほど毒舌に辛辣さが含まれてる……」

女「本心だもの」

男「ごめん。謝るから」

女「謝らなくていいわ。そっとしておいて。その内に機嫌も治るでしょう」

男「で、でも……」

女「これが理不尽な怒りだということくらい私でも解っているの。だから今は放っておいて。これ以上私は、自分のことも貴方のことも嫌いになりたくない」スタスタ

男「あ……う……どうしよう」




9: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:28:55 ID:9LqDYtUI
男「なにかが女さんの癇に障ったんだろうけど、なにが原因だったんだろう」

男「ああ、もう、くそ。僕が女さんの機嫌を損ねるなんて……上手くバランスは調整してたはずなのに……」

男「どうしよう、クリスマスまで二週間もないのに」

男「マズいな……僕じゃわからない」

ストーカー「本当に解らないんですか?」ヌッ

男「ストーカーくん! 今日もやっぱり憑いていたんだね!」

ストーカー「妙な変換をされた気がしますがいいでしょう。甘んじて受け入れます。付き人ならぬ、憑き人であると」

男「僕も大概だけど君も突き抜けてるよね」




10: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:29:52 ID:9LqDYtUI
ストーカー「それにしても男くんにはガッカリです。女さんの本心も解らず傷つけてしまうなんて。ちょっと一刺しさせてください」

男「僕の人生にエンドロールが流れてしまいそうだから一刺しは勘弁していただくとして、え、傷つけたの? 僕」

ストーカー「傷ついたから怒っていたのでしょう、女さんは。それに頬の強張りが普段より3mは強まってました」

男「その見解は流石ストーカーくんとしか言いようがないね。にしても、傷ついたから怒るって、そうなのかな?」

ストーカー「大抵の人は悲しいから怒るじゃないですか。ましてやあの感情表現が絶望的な女さんですよ?」

男「悲しいから怒る、か……」




11: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:30:39 ID:9LqDYtUI
ストーカー「裏切られた時に怒るかもしれません。けれど本来は怒りよりも悲しみが勝るでしょう?」

男「人による気がするけどなあ」

ストーカー「僕に言わせれば、そこで怒り続ける人は自分の気持ちに鈍感なだけです。純粋な怒りなんて滅多に存在しない。そう思います。さて、解りましたか?」

男「うん? 女さんのこと? それでも解らないよ。女さんを護ることはしても傷つけようだなんて思ったことないから」

ストーカー「はあ、しょうがない人ですね。これは貸しですよ」

ストーカー「要はこういうことです。男くん、君は独善的なんですよ」




12: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:31:43 ID:9LqDYtUI
男「……ほんとに?」

ストーカー「そこで気を取り乱さない辺り好感が持てますが、本当です。好意というのは対象が存在する以上相対的な代物です。君はあまりにも相手を蔑ろにし過ぎたんです」

男「……女さんのため、女さんのためと思ってたことが裏目に出てる、ってこと?」

ストーカー「いえ、それ自体は多分、悔しいですが女さんは不快に思っていないでしょう。問題は常に相手を考えていなかったということで」

男「そんなつもりは……なかったんだけども」

ストーカー「では聞きますけど、男くんは自分の好意をもし自分にされた場合を想定したことがありますか?」

男「――っ」

ストーカー「つまりはそういうことなんですよ」




13: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:32:20 ID:9LqDYtUI
ストーカー「涙を見られたくない。カッコつけていたい。そう思うのが普通だとしても、それを女さんが男くんにしたらどんな気持ちになりますか?」

男「あ……」

ストーカー「悲しくないですか? 苦しくないですか? 苦しんでいる時があったとしても、君の力は必要ないと宣言されてしまったら」

男「僕は……なんてことを……」

ストーカー「格好をつける、それ自体に問題はありません。けれど知られてしまってはダメなんです。伝えてしまうのは幼稚なんです。まったく……気が緩んでるんじゃないですか?」




14: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:32:49 ID:9LqDYtUI
男「……どうすればいいのかな、僕は」

ストーカー「そんなことは自分で考えてください。少なくとも、コミュ障の極地点である僕に聞かないで下さい」

男「君は充分コミュ障を脱出してるんじゃないかな。僕とこんなに話せてるんだし」

ストーカー「それは第一に、女さんが好きだという共通の軸を持っているからです」

男「女さんの話題が尽きることはないよね」




15: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:33:47 ID:9LqDYtUI
ストーカー「そうですね。朝から晩まで語り続けたこともありましたね。もしも」

男「もしも女さんが深海魚だったらどの魚に似てるか、とか楽しかったよね」

ストーカー「僕はもしも女さんが宇宙人だったらどんな姿かの方が楽しかったですね」

男「最終的に食虫植物を模した氷結植物になった話か」

ストーカー「思い出話はこの程度にしておいて、話を戻しましょう」

男「基本的に僕達の会話は脱線してばかりだ」

ストーカー「それは男くんに責任があります」




16: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:35:06 ID:9LqDYtUI
ストーカー「第二に、仮に今回の君の立場が僕だったとしたら、とてもじゃありませんが立ってられません」

男「それは……コミュ障と関係があるの?」

ストーカー「あります、あるんです、そうなんです。だからコミュ障なんです。些細なことも大きなこともひっくるめて絶大な事件になってしまうから、コミュ障なんです」

ストーカー「まあそもそも、そこまでの事件にたどり着くコミュニケーション能力がありませんけどね」

男「……それはストーカーくんの悪いところだよ。一度決めつけたら考えを改められないっていうのは」

男「ストーカーくん。それはコミュ障じゃなくて、君が純粋なだけだ」

ストーカー「……吐き気がするほど真っ直ぐに人を見て綺麗な言葉をかけないで下さい。君のそういうところは、嫌いです」

男「ははっ、ストーカーくんも女さんと一緒で素直になれない子なんだね」

ストーカー「無駄にホモフラグが立つので僕にツンデレ属性を与えないでください」




17: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:36:04 ID:9LqDYtUI
男「ともかくありがとう。どうすればいいのかまだ解らないけど、考えてみるよ」

ストーカー「君ならどうとでもなんとかしてしまうのでしょうね。少し羨ましいです」

男「……君は……いや、なんでもない。本当にありがとう! それじゃ!」

ストーカー「」ヒラヒラ

男(君は現状が辛くないの? なんて)

男(……きっと僕だけは彼に聞いちゃいけない。危なかった)




18: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:37:06 ID:9LqDYtUI
■翌日

男「女さんっ」ハァ ハァ

女「なにかしら。まだ近くに寄ってこないでほしいのだけれど」

男「ごめん!」

女「話を聞いてなかったの? それとも鼓膜が破れたの? 急いで病院へ行ってらっしゃいな、脳外科の方へね」

男「僕が悩んだ時、苦しんだ時、悲しんだ時、辛かった時、女さんに相談する許可がほしいんだ!」

女「……そう。貴方なりに考えてきたというわけね」

男「ごめん、傷つけるつもりはなかったんだ……」

女「傷つく? 私が? そこまで自意識過剰だとまるで道化よ」

男「いまのは忘れてください」

男(プライドの高い女さんにいまの失言だったなあ)




19: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:38:10 ID:9LqDYtUI
女「相談する許可ね……三十点」

男「うっ……手厳しい」

女「私はこれでも貴方との関係は良好だと思っているの。それなのに許可? 
  貴方は友人に許可を求めるの? 私をなんだと考えてるのかしら」

男「でも、それこそ自意識過剰な気がして、さ?」

女「貴方の売りは馬鹿みたいに愚直なところじゃないの? 
  どうしてそう中途半端なことを言うのよ」

男「ごめん」

女「……お願い、そっとしておいて。今はどれだけ話しても猛毒しか吐けないわ。
  貴方を責めたいわけじゃないの」

男「う、ん……」ショボン

女「……」ハア




20: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:38:59 ID:9LqDYtUI
女「クリスマスイヴ、だったわね」

男「……え?」

女「集合時間や場所はメールで連絡してちょうだい。それまでは一人にしておいて」

男「お、女さん……」

女「当日に百点満点の答えを用意しておきなさい。さよなら」

男「……」

男「……」バチンッ

男「よし! 頑張りどころだ!」




21: ◆mSvgS5v5Fc:<2012/12/18(火) 01:41:01 ID:9LqDYtUI
今日はここまで。
次の更新日がいつかは知らんが、そんなに間は置かない。
なにせクリスマスまでもう……え? 六日? え? え?

……。
……。

クリスマスまでに終わる。これは確実、絶対。だってそういう話だもの。




25: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/18(火) 21:38:46 ID:9LqDYtUI
■自室

女「駄目だわ。本の内容がさっぱり頭に入らない」ゴロン

女「……」

女「どうしてこうなるのかしら」

女(酷い言葉じゃない。あんなこと言われて平気なはずがない。平気な振りをしているけれど……)

女(それに甘えて罵倒して。何様なのよ、私は)

女(素直に、か……)

女(どうすれば素直になれるの? サンタにお願いでもしてみる?)

女「馬鹿馬鹿しいわね」フッ

女(歪曲し続けたこの性格が素直になんて……操られない限り、無理なのよ)

女「ん? 操る?」

女「……そういえばお母さんが妙な本を買っていたわね」

女「……試してみようかしら」




26: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/18(火) 21:39:33 ID:9LqDYtUI
■自室

男「百点満点の解答か……どうすればいいんだろう」

男「クリスマスイヴのデートプランはもう考えてあるからいいけど」

男「はあ……どうすればいいのかな? 聞いてる?」

男友「……ぷぷっ。この漫画面白いな」

男「ゆ う 人?」

男友「ったく、なんだよいいとこだってのに」

男「今日は相談に乗ってくれるって話だよね?」

男友「のろけ話なんか聞きたくねえよ。それよりAV観ようぜ!」

男「何が悲しくて男二人でAV鑑賞しなくちゃならないんだ……」




27: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/18(火) 21:40:36 ID:9LqDYtUI
男友「そもそもあの変わり者の女さんがなにを求めてるかなんて解るはずないだろ」

男「女さんはあれでも常識人だよ。コミュ障だけど」

男友「口調が全て上からになる障害か? 社会じゃ通用しねえぞ」

男「それはそれで友人が何様発言だね」

男友「ともかくよ、AV観ようぜ」

男「そればかりだね。ったく……女さんが求めてる言葉、か」

男「ん?」

男「なにか閃きそうだぞ……」




28: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/18(火) 21:41:37 ID:9LqDYtUI
男「友人、さっき僕はなんて言ったっけ?」

男友「健忘症か? 僕はエロエロ魔人だお、つってたろ」

男「金属バットで健忘症になりたいならそう言ってよ」ニコッ

男友「冗談だ。コミュ障だっつってたな」

男「その前」

男友「あー……あーみえて常識人、ってとこか?」

男「そう! それ! そうだ、なにを思い違いしてたんだろう。女さんは別に変人じゃないんだ」

男友「そうか? 三百六十度変人だけどな」

男「常識人だよ。だから、そうだ。きっとこれが百点満点の解答に違いない!」

男友「解決したみたいでよかったな。さあ、AVの時間だ」ゴゴゴゴゴゴ

男「その前に友人との付き合い方を考えさせてくれないかな」




29: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/18(火) 21:41:57 ID:9LqDYtUI


差出人:男くん

宛先:女

件名:クリスマスイヴに関して

本文:
午後一時に○×駅中央口の庭園広場金時計でお待ちしてます。


女「……メールだと途端に素っ気なくなるのは一種のテクニックなのかしら」




30: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/18(火) 21:42:18 ID:9LqDYtUI


差出人:Lovely 女さん

宛先:男

件名:クリスマスイヴに関して

本文:
遅刻したら拷問するわよ。覚悟していらっしゃい。


男「遅刻するつもりは毛頭ないけど、まさか僕の人生がかかってくるとは……手に汗が滲むね」ジワリ




31: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/18(火) 21:42:58 ID:9LqDYtUI
■X'mas Eve

男「十二時到着、と。うん、一時間前に着けたな」

男「過去二回と同じなら女さんは十分前に来るだろうから、少しのんびりしていようっと」

男「……ん?」

男「……んん!?」

男「あれ!? 女さんもう来てる!? あれどう見ても女さんだよね……は、早いな。どうしたんだろう」

男「っていけない。早く行かなくちゃ」タッタッタッ

男「女さん、ごめん、もう来てたんだね。待たせちゃったかな」


女「」クルッ キラキラキラ

男(な、なんだかすっごい笑顔だ!)




36: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:07:50 ID:9LqDYtUI
女「貴方こそ早いじゃない。まだ一時間前よ?」

男「遅刻はしたくないからね」

女「拷問なんてしないわよ?」

男「それもそうだけど、万が一にも女さんを待たせたくなかったから。でも待たせちゃったね、ごめん」

女「私はただ今日がとても楽しみで、逸る気持ちを抑えられなかっただけ。気にすることないわ」

男「……え、いまなんて?」

女「今日がとても楽しみだと言っているの。聞こえないの?」

男「いや、え? え?」

女「聞こえないなら仕方ないわね」グッ

女「今日をとても楽しみにしていたの」ボソッ

男「//」ドキドキ ドキドキ

男(なんだか女さん、凄く可愛いぞ!?)




37: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:08:26 ID:9LqDYtUI
女「それで先ずはどうするのかしら」

男「う、うん、先ずはお昼ご飯を食べに行こう。近くに静かな喫茶店があるから」

女「行きましょう」

男「……」ジーッ

女「どうかした? 普段よりも三割増で視線が熱いわ」

男「今日の女さんは普段よりも五割増で可愛いな、と思ってさ」

女「可愛い?」キョトン

女「ふふ、嬉しいわ。ありがと」ニコッ

男(こ、この人は誰なんだ!?)




38: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:09:22 ID:9LqDYtUI
■喫茶店

女「雰囲気の柔らかい素敵な喫茶店ね。貴方、こういう場所は探してるの?」

男「うん。落ち着ける場所が好きだからね。たまにぶらっと散策してるよ」

女「一人で?」

男「そうだね。友人いるでしょ? あいつはこういう散策、あまり興味がないみたいでさ」

女「ふうん。どうして誘ってくれないの?」

男「うん、それは女さんに紹介したいから――って、え!? なんて!?」

女「だから、どうして誘ってくれないの? 私もこういう場所を散策するのは好きなのに」

男(おかしい。やっぱり妙だ。
  いつもの女さんなら誘われたいという雰囲気を殺して誘わせるか、
  "一人で散策なんて寂しい男ね。今度からは私が付き添ってあげるわ、首に縄つけて"
  ぐらいのこと言うはずなのに!)




39: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:11:10 ID:9LqDYtUI
女「なにを固まってるのよ。そんなに私と遊ぶのは嫌?」

男「嫌じゃない嫌なわけがないよ。寧ろそれが至高の極みですらあるよ」

女「ふふ、大袈裟ね」

男(ええ!? 今のは絶好の突っ込み所だよ!?
  "その程度が至高なら貴方の人生はたかが知れてるわね"って鼻で笑う所だよ!?
  なにがおこってるんだ、いったい……)

男「女さん、体調は平気? 熱とかない?」

女「今日という日のために完璧な健康管理を行ったの。快調よ」

男「そう……無理はしないでね」

女「相変わらず優しいのね、貴方」

男「」ドキドキ




40: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:12:51 ID:9LqDYtUI
男「料理は美味しかった?」

女「ええ。いい味していたわ」

店員「こちらチョコモダンパフェとストロベリークリームアイスになります」コトン

女「ありがとう」

男(あの女さんが店員さんにきちんとありがとうを言えている……やっぱりおかしい)

女「ふふ、ここはデザートも美味しいわね」

男「うん。こっちのアイスも美味しいよ」

女「本当に美味しそう。一口いいかしら」

男「はい、どうぞ」ススッ

女「」ポカーン

男「お、女さん?」

女「あら、食べさせてくれないの? 残念ね」

男「」ボフッ

男(や、ばい……脳が溶ける……)




41: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:16:30 ID:9LqDYtUI
女「うん、爽やかな味が気持ちいいわね」

男「そ、そう? よかった」

女「チョコパフェも美味しいわよ。食べる?」

男「いただくよ」

女「あーん」スッ

男「!?」




42: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:16:51 ID:9LqDYtUI
女「いらないの?」

男「喉から胃が飛び出るほど欲しい!」

女「色々と混ざった表現ね。はい、あーん」スッ

男「あ、あーん」ドキドキ

女「」スッ

男「」スカッ

男「え?」

女「ふふ、時間切れよ」パクッ

男(これは白昼夢なんだろうか)




43: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:22:19 ID:9LqDYtUI
女「ふう、お腹いっぱいね」

男「それはよかった。さあ次はショッピングに行こう」

女「ショッピング? 構わないけれど、プレゼントをねだる気はないわよ?」

男「プレゼントをねだるのは僕の方だよ、女さん。これから雑貨屋を巡ってプレゼントを買い合おう。高い物は色々とよくないから、千円以内で。どうかな?」

女「素敵な案ね。買い物もできるし後で交換する楽しみもあるし。ちゃんと考えてくれたのね」

男(ベタ褒めだ……後でその分力をつけた恐怖の大王が君臨したりしないよね?)

女「とても可愛い物を選んであげるわ。貴方は犬っころなところがあるから」

男「わんわんっ」

女「よしよし」

男(今のも突っ込みポイントなのに……。いつもなら"輪廻する場所を間違えたんじゃない?"とかくるのに!
 どうしちゃったんだろう……なんか、少し寂しい)




44: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:24:37 ID:9LqDYtUI
■雑貨屋

女「ちょっとこれ着けてみて」

男「どれどれ」スチャ「似合う? 鼻眼鏡サンタver」

女「お洒落よ」アハハッ

男(女さんが屈託なく笑ってる。楽しそうだなあ。嬉しいなあ)

女「次はこれね」

男「似合う? 強盗マスククリスマス仕様」

女「ええ、とても似合うわ」フフッ

男(楽しそうだし、僕も嬉しいんだけど、なにかが違う。なにかが……)




45: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:25:21 ID:9LqDYtUI
女「この時期は愛嬌のある商品が増えるわね」

男「なんてったってクリスマスだからね。そうそう、女さんはサンタの雑学はなにか知ってる?」

女「そうね……サンタの由来は、確か貧しい家庭を救った逸話から来てるのよね」

男「そうだね。貧しくて娘を売らなければならなかった家に、煙突から金貨を放り込んで、
  その暖炉に靴下が下げてあってインしたとかいう話があるよね」

女「詳しいのね。サンタファンなの?」

男「うん、ファンだよ。なにせ僕はサンタに会ったことがあるからね」

女「凄いわね。どんな話?」キラキラ

男(……)




46: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:28:09 ID:9LqDYtUI
男「サンタ協会に公認サンタさんがいてね、昔なにかのイベントで会ったんだ。凄く柔らかい雰囲気の人で、子供ながらに嬉しかったよ」

女「夢があるようなないような、よく解らない協会ね」

男「夢はあるよ。だって、どのみち子供はいつかサンタがいないって知るんだからさ。それまでの夢の補助になる」

女「それもそうね」

男(……まったりとしてるのはいいんだけど……物足りない)

男(僕ってMだったのかな?)

男「ところでなにを買うか決まった?」

女「ええ」

男「それじゃあお互いに知られないためにも、十分間別行動ね。
  十分後に店の入口で待ち合わせとしよう」

女「解ったわ。楽しみにしてなさいね」




47: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:29:03 ID:9LqDYtUI
男「ストーカー君、いるんでしょ?」

ストーカー「呼び止めないで下さい。男くんの知らない女さんを知ることは大きな優越感なのに」

男「ごめんごめん。でもさ、今日の女さんは……妙じゃない?」

ストーカー「妙というより別人ですね。だからどうって訳じゃないですが」

男「それには同意するよ。女さんが女さんである以上、想いは変わらない」

ストーカー「だったら問題ないじゃないですか」

男「いや、問題はあるよ。いきなり人がここまで劇的に変わってしまうっていうのは、重大なことだから」

ストーカー「愛の力が働いたんじゃないですか?」

男「そんなもので女さんが変わるならとっくに変わってたよ。
  うん、ありがとう。僕の思い過ごしじゃなかったみたいだ」

ストーカー「全く、くだらないことで呼び止めないでくださいよ」シュン

男「……忍者?」




48: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:29:25 ID:9LqDYtUI
男「お待たせ、女さん」

女「待ってないわ。それよりプレゼントはいつ交換するのかしら」

男「んー、そうだね。帰りに別れる時なんてどうかな?」

女「家に帰るまでがデートなのね。いいわよ」

男「因みにこの後のプランだけど、ある時間までは白紙なんだ。
  自由時間って言うとおかしいけどさ。だから散歩なんてどうかな?
  街はクリスマスでイルミネーションも綺麗だしさ」

女「ほんと、綺麗な街並よね」

男「それじゃあはぐれないように」キュッ

女「ふふ、ありがとう」ギュッ

男(いつもの女さんなら――ああ、でも可愛すぎて意識が朦朧としてきた……)




49: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:29:52 ID:9LqDYtUI
男(手に触れたのはこれで二度目か。初めて触ったのは不良に拐われて抱きしめた時だもんな)

男(二度目は文化祭で手を取った時)

男(こうして長時間触れるのは初めてになるわけだけど、女さんの手、柔らかいなあ)

女「……」

男「……」

女「……私はね」

男「ん?」

女「こうしてなにも語らずに、心地よさを共有することも好きよ」

男「〜〜っ」ゾクゾク

男(嬉しすぎて涙出そう……こんなに素直な女さん……ん? 素直?)




50: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/19(水) 23:30:10 ID:9LqDYtUI
男(そうだ。なにが妙って、素直過ぎるんだ。
  普段の女さんなら"好き"と言わずに"嫌いじゃない"って言うはずだもの。
  素直……素直……あっ)

男(そういえばサンタに"女さんが素直になりますように"って願ったんだっけ)

男(それが、叶った?)

男(流石にないか。サンタは現実に存在するからこそ、夢なんだから)

男(じゃあ女さんはどうしてこんなに素直に?)

男(……)

女「あのクレープ屋。クリスマス限定クレープ売ってるわ。食べてみましょう?」

男「うん、いいね」

男(僕が女さんにサンタへの願い事を話したから?)




53: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 03:50:45 ID:9LqDYtUI
男「クレープ美味しいね」

女「そうね。あら」クスクス

男「うん?」

女「真っ白なヒゲ生やしてサンタさんになってるじゃない」

男「ふぉっふぉっふぉ」

女「それじゃあバルタン星人よ」

男「その返しができる女の子って多くなさそうだ」

女「取ってあげる」スッ

男「でも手が汚れちゃうよ」

女「いいのよ、こんなの」パクッ「食べ物なのだから」

男(帰りに隕石が頭に直撃しても文句言えないなこれ……)




54: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 03:52:10 ID:9LqDYtUI
男「ん、そろそろいい時間かな」

女「あら、まだなにかあるの? 楽しみだわ」

男「定番だけどさ。マリンパールを見に行こうかな、って。でもかなりの人混みだけど大丈夫

?」

女「マリンパール……クリスマスの一週間前から綺麗な電飾をゲートに施しているあそこね」

男「うん、どう?」

女「一度ぐらいは見てみたいと思っていた場所だわ。行きましょう」

男「よし」




55: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 03:52:34 ID:9LqDYtUI
男「うわあ……流石の人混みだね。交通規制されてるのも関係あるんだろうけど」

女「レミングスの行進みたいね」

男「二重の意味で適した喩えだね」

女「一つは死の行進で、もう一つは作為的な行進かしら」

男「さっすが女さん、物知りぃ!」

女「貴方には及ばないわよ」

男(素直、というか。棘が全部抜けてるんだよなあ……んー……)




56: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 03:52:57 ID:9LqDYtUI
女「ん」ドンッ

男「大丈夫?」ガシッ

女「平気よ。それにしても奥に行けば行くほど混むわね」

男「道が狭まってるって訳じゃないんだろうにね」

女「腕、失礼するわ」ギュッ

男「!?」

女「鳩が猟銃食らった顔してどうしたの?」

男「それじゃただの違法行為だよ。それに、そんな顔もするさ」

男(女さん自ら腕を組んできたんだから)

女「暖かいし、スペースも節約できるし、一石三鳥ね」

男「あれ? もう一羽は?」

女「さあ、なんでしょうね」フフッ

男(女さんが小悪魔とか僕の天敵過ぎる……抗えない)




57: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 03:53:34 ID:9LqDYtUI
男「女さん」

女「なに?」

男「なんだか今日はいつもと違うね」

女「そう? 解る?」

男「僕が知らないのは女さんの未来ぐらいなものだよ」

男(解る? と聞くってことは、意識しているのかな。
  どの道、これは女さんが望んでいること、か)




58: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 03:53:51 ID:9LqDYtUI
女「過去は把握しているのね、貴方らしい」

男「前世もね」

女「へえ、どんな前世?」

男(違う……やっぱり違う。なんか、違うんだ。これじゃ駄目なんだ)

男「女さん」

女「なに?」

男「……っ」




59: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 03:54:12 ID:9LqDYtUI
男「僕は女さんが好きだよ」

女「耳にタコができてるわ、その台詞」

男「心の底から愛してる」

女「……そう、ありがとう」

男「女さんが恥ずかしがり屋なところも。プライドが高いところも。努力家なところも。
  優しいところも。好きだよ」

女「急にどうしたのよ」

男「もちろん、天邪鬼なところだって好きだよ」

女「……なにが、言いたいのかしら」

男「今日の女さんは素直で、とても素敵だね」

女「でしょう?」フフッ

男「けれど僕はそんな女さんのことは、嫌いだ」




60: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 03:55:04 ID:9LqDYtUI
女「……あ、貴方に嫌いだと言われる日が来るなんてね。予想以上に悲しいわ」

男「勘違いしないで、女さん。僕の恋心は冷めてないし、愛も燃えたままだよ。
  だけど、僕が好きなのは女さんなんだよ。いいところも悪いところも、女さんなんだ」

女「私が女よ」

男「違う。なにが起こってるんだか知らないけど、君は女さんじゃないよ。
  女さんがどんな風に変わったって女さんのことが好きだと思ってた。けどそれは違うし、

それじゃ駄目なんだよ」

男「もしも女さんに誰かが乗り移ったりしても愛してしまうことになってしまう。
  そんなことが正解なはずない」

男「だから、二度と言わないけど、だから。
  僕は女さんが嫌いだ」

女「……」




61: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 03:55:23 ID:9LqDYtUI
女「……ひどい、わね」

男「……ごめん。でもなにがあったの? これじゃあ別人だよ?」

女「本当に、最低」

男「……ごめん」

女「私は――最低だ」

男「え?」




62: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 03:55:45 ID:9LqDYtUI
女「こんなに悲しくなることをずっと言い続けてきたのね。
  一言一言が刃のよう。
  耳にする度に心が裂かれてくわ。
  私はこんなことをずっと貴方に続けて……ぅ……」ポロポロ

男「気にしなくていいよ女さん。僕はMだから」

女「そういう問題じゃないでしょう? 貴方に甘えて言い続けた私が最低なことに変わりはな

いの。ごめんなさい」ポロポロ

男「大丈夫だから。気にしなくていいから。ね?」ギュッ

女「……」ドンッ

女「」ポロポロ ポロポロ

女「ごめんなさいっ」タッタッタッタ




63: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 03:56:01 ID:9LqDYtUI
男「しまった……言いすぎちゃった……」

男「って、いけない。追いかけないと――ってうわっ」

ワイワイ ガヤガヤ

男「人が多すぎてっ、進めないっ――女さん! 女さああん!」

ワイワイ ガヤガヤ

男「見失っ、た……?」

男「今日は発信機もつけてないし。そうだ、ストーカーくんは?」

prrrrr pi

ストーカー『死ね』

pi

男「……お怒りだね」


男「ともかく、探さなくちゃ」

男「女さん! 女さああああん!」




68:以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/20(木) 14:53:24 ID:9LqDYtUI
あとこれだけ補足。
マリンパールの電飾イベントだが
神戸にあるルミナリエと告示してると思っててくだせえ。




71: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:36:57 ID:9LqDYtUI
男「はあっ……はあっ……くそっ、一緒に歩きたかったなあ、このゲート」

男「綺麗なゲート。こういうの、女さん好きそうだからなあ。意外にメルヘンなところあるし」

男「でもほんと、どこ行っちゃったんだろう……」

男「……」

男「……そうだ!」

男「見つけられないなら、見つかればいいんだ!」

男「となると……よし、あそこだな!」




72: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:37:29 ID:9LqDYtUI
■ゲート出口 広場

男「よし、時間はまだもう少しあるな」

男「ほんとは女さんと見たかったけど、こうなったらなりふり構ってられないよね」

男「確か……あそこだ。あの時計台」

男「……」

男「……流石に、緊張するな」

男「よくもまあこんなことやる気になるもんだね、僕は。ははっ……足が震えてるよ」

男「……」

男「……」

男「いよっし、やるぞー!」

男「まずは隠れなくちゃね」コソコソ




73: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:38:17 ID:9LqDYtUI
■午後七時

男(午後七時になると電気が一斉に消えて、この時計台から輝きだす。
  女さんに見つかるならこのタイミングは逃せない!)

ファッ

男(よし、暗くなった。今の内に近づいていて、っと……)ホフクゼンシン

パァァッ

男(……)ドキドキ ドキドキ

男(女さん、聞いてくれるかな)

男(もし居なかったら?)

男(……)ブンブンッ

男(弱気になっちゃダメだ! もし居たらどうする!)

パァァッ

男(よし! 登るぞ!)

シャカシャカシャカ




74: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:38:56 ID:9LqDYtUI
男(う……凄い人の数……これじゃここからは女さんの姿見つけられないな)

男(警備員が止めに来ないのはラッキーだね。多分、イベントだと勘違いしてるんだろうけど)

男(よし、ぶら下がっててもラチが開かない。やるぞ!)

男「」スゥゥゥゥゥゥゥゥゥー


男「めりいいいいいいいいいいいいいっ! くりすまああああああああああああっす!」


「メリークリスマスっ!」「メリークリスマーッス!」「めりーくりちゅまちゅ!」
「メリクリっ!」「ふぉっふぉっふぉ、メリークリスマス!」

男(反応は上々っと。ここまでは予定通り)




75: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:39:26 ID:9LqDYtUI
男「みんなああああああああああ! 幸せなクリスマスを過ごしてるかなあああああ!?」


「ったりめーだあ!」「もちろん!」「最高の夜だぜえええ!」「いえーいっ!」


男(さて、勝負はここからだ。女さん! 聞いてください!)




76: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:40:08 ID:9LqDYtUI
男「僕はね、ついさっき、世界で一番大好きな人に嫌いだって言っちゃったあああああ!」


「アホかー!」「謝ってこい!」「なに言ってんだおまえ!」

男(ほんと、大馬鹿者だよなあ僕は)


男「その人、泣きながら逃げちゃったんだ! だから僕はここにいる!」

ザワザワ ザワザワ

男(反応が薄くなったな……イベントじゃないって気づきはじめたかな?)

男(そんなことどうでもいいんだけどね。僕は)

男(女さんの悲しみがちょっとでも拭えるなら)

男(恥をかこうが捕まろうが嘲笑れようがなんだろうと)

男(女さんのためなら)




77: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:41:29 ID:9LqDYtUI
男「僕はね! その人のことが本当に好きなんだ!」

男「髪の毛一本から爪の垢まで余すとこなく好きなんだ!」

男(もちろんそれだけじゃないさ。女さんの唾液から女さんの老廃物まで余すとこなく愛せるよ。けど流石に内緒にしておこう)


男「だけどね! 僕が本当に好きな所は、それは! 彼女が!

男「天邪鬼すぎてとっても素直な子だからなんだ!」

男(要はそこに尽きる、よね)




78: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:42:23 ID:9LqDYtUI
男「可愛いねって言うと『貴方は芋虫でも口説いてれば?』って鼻で笑われたよ!」

男「綺麗だねって言うと『その言葉に重みを付けるために地下3000メートルで重力修行してきなさい』って背中を押されたよ!」

男「好きだよって言うと『私は貴方が嫌いだけれどね』ってばっさり切られたよ!」

男(照れ屋さんなんだよなあ、女さんは)


「ひでえ……」「ままー、恐いよー」
「鬼子じゃ……」「ご褒美じゃないですか」


男(あ、ストーカーくんその辺にいるんだ)




79: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:42:50 ID:9LqDYtUI
男「だけど! だけどね! 僕はそんな風に言われても彼女が好きなんだ!」

男「大好きなんだ!
  これっぽっちも胸が痛まないんだ! 寧ろ楽しくて笑っちゃうんだ!」

男「だから、無理しなくていいよ! 頑張らなくていいよ! そのままでいいよ!
  そのままの君がっ……」

男(好きだよ? 好きです? 好きでっせ? 好っきゃねん? 好いとんで?
  まあ、なんでもいいか)

男(女さんへの想いに不純物は微塵もないわけだし)

男(僕は、純粋に)


男「――っ好きだああああああああああああああああああああああああ!」




80: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:43:18 ID:9LqDYtUI
「おおおおおおお!」「かっこいいー!」
「頑張れえええええしょうねえええええん!」


男「ありがとー、ありがとー」

男(ヒーローになった気分。役得だね)

男「聞いてくれたかな、女さん……」

男「こっちからじゃ見えないしなー」

「兄ちゃん、仲直りできるといいな!」

男「頑張るよー僕は!」


「しもっ!」

男「……ん?」




81: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:44:42 ID:9LqDYtUI
男(誰かが声を張り上げてるようだ。まさか、女さん?
  いやいや、それはないよね。女さんは極度の恥ずかしがり屋さんだし)


「私もっ!!」


男「!?」

男(間違いない、女さんだ!)

男(いる、どこだ、どこ? それに、無理しなくていいんだよ女さん。
  頑張らなくていいんだよ、女さん――いや、違う)

男(そうだね。頑張るべき時は頑張る人だもんね。
  ずっと前からそうだったよね)


男(だから――頑張れ! 頑張れ女さん!)




82: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:44:58 ID:9LqDYtUI
女「私は貴方のことが大ッッッッッ嫌い!」



「「「「えええええええええええ!」」」」


男「はは……はははっ」

男(大好きだよ、女さん)

男(誰にも飾られない、素直な君が大好きだ)

男「」スルスルスル タッタッタッ




83: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:45:15 ID:9LqDYtUI
男「女さん!」タッタッタッ

女「男くん!」

男「女さああああああん!」ギュゥゥゥ ドゴォッ

男「ぐぼぇっ」

女「どさくさに紛れて抱きつかないでくれる?
  貴方に抱かれるぐらいなら二宮金次郎に抱きついた方が心地いいわ」

男「銅像に嫉妬する日が来るとは思わなかったよ。よし、僕も第二のポチになってくる」

女「既にポチじゃないの」

男「わんわんっ」

女「媚びたウケ狙いには純粋な殺意が沸くわ。どうしても続けたいなら三辺廻って閻魔に閲覧を申込みなさい」

男「女さんが閻魔様だったら舌でも魂でも五臓六腑でも捧げるなあ」

女「今すぐ舌を引っこ抜いて言葉を紡げないようにしてあげたいわ」




84: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:45:37 ID:9LqDYtUI
男「女さん、おかえりっ」ギュゥゥゥゥ

女「いったいなんの……いえ、そうね」


女「……ただいま」ギュッ




85: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:45:56 ID:9LqDYtUI
「おおおおおおお!」「よかったよかった」「可愛いカップルさんねえ」

パチパチパチパチ

女「……注目を浴びてとても不快なのだけれど、離してくれるかしら」

男「デジャヴだね、それ。でもダメだよ。今だけは離したくない」

「ふぉっふぉっふぉ。クリスマスの奇跡じゃのう」

女「奇跡……ふふ、とんだ奇跡もあったものね」

男「どうして?」

女「これは貴方が引き起こした純然な努力の結果に過ぎないじゃない。奇跡でもなんでもないわ」

男「そんなことないよ、奇跡はちゃんと起きたよ」

女「そうかしら」

男「うん。女さんがこんなに人が大勢いる前で声を大に叫んだ」

男「それは立派な奇跡……ううん、きっとサンタが女さんに勇気をプレゼントしてくれたんだね」

女「……ふふっ」

女「貴方は、本当に、ずるいわね」




86: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:46:34 ID:9LqDYtUI
■帰り道

男「へえ、自己催眠かあ。女さんって純粋だから凄く嵌っちゃったんだろうね」

女「どうかしらね。記憶にないわ」

男「あ、忘れたフリしてる?」

女「あーあー、聞こえないわそんな黒い歴史」

男「さて、着いたよ」

女「家まで送ってくれてありがとう。少し上がっていけば? お茶くらい出すわよ」

男「遠慮しておくよ。親御さんとの初対面はいい印象を与えたいしね」

女「気の早い話ね。妄想は」

男「深夜の自室で、でしょ? 妄想じゃなくて、これは計画だよ女さん」

女「……解ってるならそれでいいわ」




87: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:46:52 ID:9LqDYtUI
男「はい、女さん、プレゼント」

女「え? ああ、忘れていたわ。プレゼント交換しなくちゃね――って……」

男「どうしたの?」

女「あ、あの、これ、本当に渡さなくちゃ駄目かしら」

男「なんで?」

女「これは、そう。私が私じゃない時に選んだ物だから厳密には私の選んだプレゼントじゃ」ゴニョゴニョ

男「ダメだよ」ニコッ

女「うう……」




88: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:47:17 ID:9LqDYtUI
男「あともう一つ忘れてたよ、女さん」

女「なに?」

男「百点満点の解答」

女「そんな約束もしてたわね。聞かせて貰おうかしら」



男「女さん。結婚を前提にお付き合いしてください」

女「……え?」




89: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:48:24 ID:9LqDYtUI
男「これ、三ヶ月分なんてレベルには遠く及ばないけど」スッ

女「……指輪? というよりどんな思考回路しているのよ。並列と直列を間違えてもそんな答えはでないでしょう?」

男「んー……僕の弱いところもなんでも見せられる相手として最も適しているのは、恋人だと思っただけだよ」

女「……ふう、暑いわね」パタパタ

男「耳も切れる寒空なんだけどねえ」ハハッ

女「ん」スッ

男「?」

女「指輪。折角買ってくれたのだから、はめなさいよ」

男「喜んで」

女「……サイズがちょっと余ってる。でも抜けるほどじゃない……冬にぞっとさせないでよ」

男「冬にサイズがピッタリじゃ夏に入らなくなっちゃうからね。それぐらいにしといたよ」ニコ




90: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:48:53 ID:9LqDYtUI
男「それで、返事はもらえるのかな?」

女「……これ」

男「これ、例のプレゼント交換の?」

女「素直だった私が選んだプレゼントだから、私じゃないけれど、私の素直な選別なのよ」

男「うん。うん?」

女「おやすみなさい」スタスタ

男「うん? おやすみー」




91: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:49:10 ID:9LqDYtUI
■自室

男「んー」

男「結局はぐらかされちゃったのかな?」

男「まあいっか。プレゼントはなんだろうなあ」ワクワク

男「おっ、犬のストラップだ。可愛いね」

ヒラヒラヒラ

男「なんか落ちた? これ、メッセージカード?」




92: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:50:11 ID:9LqDYtUI
『素直だった私が選んだプレゼントだから〜』

男「ははっ、そういうことね」

男「……」ジー

男「これは一生の宝物だ」

男「」ゴロン

男「今日は楽しかったな……でも、ふあ〜あ、ちょっと疲れた、や……」

男「」スゥー スゥー

Zzz...zzz...




93: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:50:22 ID:9LqDYtUI
======================
| .。.:*・゚Merry-X'mas:*・゚。:.*|

|                                  |
|           男くんへ            |
|                                  |
|                                  |
|           大好き。            |
|                                  |

======================



fin.




95: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 17:53:36 ID:9LqDYtUI
思いの外長くなってしまったのかな。

読んでくれてありがとう。
いいクリスマスを過ごせるといいね。

それと……
前作を読んでくれた人なら、このあとどういう展開に走るか解っていることだろう。
といっても、前作よりはマシな展開にしたつもりではあるから、よければ10レスばかりお付き合いくだせえ。

それでは、蛇足編に移行します。
……飯食ってから。




96:以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/20(木) 18:09:44 ID:WBmy9HTo

クリスマスマジックだな
ははは、見てたら鬱になってくるくらい幸せそうでよかった




97: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:11:58 ID:9LqDYtUI
>>96
僕と契約して一緒に欝になろうよ!

では蛇足編、すたーと。




98: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:12:45 ID:9LqDYtUI
女「」トボトボ トボトボ


女(最低……私は最低だわ……)

女「」トボトボ ドンッ

「邪魔だっての」
「なにこの子、クリスマスのマリンパール一人で見に来たの? 寂しいねー」
「おい、ほっとけよ」

女「な――っ……ぁ……ごめん、なさい」

「くすくす」
「おら、行くぞ」

女(今ので……良かったのかしら……)

女(傷つかなかった、かしら……)

女(恐い……恐い……人が、恐い……)




99: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:13:08 ID:9LqDYtUI
女(素直になれたのに)

女(やっと素直に、なれたのに)

女(一日一時間、自己催眠の本)

女(まさかこんなに効き目があるとは思わなかったけど、どうあれ素直になれた)

女(けれど、男くんは喜ばなかった)

女(別人だと射抜いた)

女(自分の力で手に入れなかったから……?)

女(操られでもしない限り……)

女(操られたから、私は私じゃなかった……)




100: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:13:31 ID:9LqDYtUI
女(素直じゃなくていいの?)

女(けれど素直じゃないとまた傷つけてしまう)

女(大切な人を悲しませてしまう)

女(もう……傷つけるのは嫌……)

女「」トボトボ トボトボ

キラキラキラ

女(凄いゲートね……おとぎの国みたい……)

女(彼は私と一緒にここを歩きたかったのよね……)

女(……私だって)




101: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:13:49 ID:9LqDYtUI
女(もう終点かしら)

女(綺麗だったけれど、綺麗なだけ)

女(なんの感動もない)

女(彼ならどう想うのだろう)

女(『凄い輝きだね、でも女さんの方が凄く眩しいや』って褒めてくれるのかしら)

女(いつもの私なら……『人を太陽にしないでちょうだい』なんて照れる?)

女(そしたら彼はきっと『僕の想いはとっくに焦げてるよ』って……)

女(ふふ……)

女(男くん……)

女(会いたい……男くん……っ)




102: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:14:32 ID:9LqDYtUI
自然と足早になっていた。
自分から遠ざかったというのに勝手なものね。
今はこんなにも彼に会いたい。

会いたい、会いたい、会いたい。

けれど恋人の波に呑まれて彼の姿が見つからない。
愛に溢れた地だというのに、奇跡なんて起こるはずもなく。

装飾の煌びやかなゲートを抜けると大きな広場に出た。
人が散らばった隙間を縫って彼の姿を探し続ける。

会いたい、会いたい、会いたい。

けれど彼の髪すら見つけられない。

素直になったことも裏目に出て。
遠ざかったことも裏目に出て。

なんてクリスマスイヴなんだろう。
私はトナカイにぴったりだ。

ピエロの赤鼻が今なら似合う。




103: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:15:02 ID:9LqDYtUI
途端に辺りが暗くなった。
光の全てが消されてしまった。

恋人たちがざわめいた。
私の不安が重なっていく。

私の悲しみに重みが増していく。
自然と涙が伝った。
這う跡が風に凍えて冷えていく。




104: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:15:31 ID:9LqDYtUI
数秒も経たない内に、ある一点だけが輝いた。
そこは広場の中心なのか、背の高い時計が設置されていた。

午後七時を示す赤い線。

時計台を中心に、暗闇が流れて吹き飛んだ。
その中でも一際眩い時計台。
誰もが目を離せないでいる。

女「きっと彼はこれを見せようとしていてくれたのね」

ある時間まではと、彼はそう言っていた。
ロマンチストの彼が考えそうなことだ。

きっと私は言葉を失っただろう。
隣に暖かな温もりを感じていたとしたら。

どうして彼が隣にいないのだろう。
自分の行いに酷く後悔を連ねる。

なにかのイベントでも始まるのか、時計台に誰かが登っていた。
背の高い時計の中間に差し当った所で止まったその人は、一拍置いて、叫んだ。

「めりいいいいいいいいいいいいいっ! くりすまああああああああああああっす!」

私は確かに言葉を失った。
その声は、あまりにも私が知る人に酷似していたから。




105: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:15:56 ID:9LqDYtUI
「メリークリスマスっ!」「メリークリスマーッス!」「めりーくりちゅまちゅ!」
「メリクリっ!」「ふぉっふぉっふぉ、メリークリスマス!」

恋人が、家族が、子供が、老人が。
少年の祝いに熱を持って応えた。

どうして?

「みんなああああああああああ! 幸せなクリスマスを過ごしてるかなあああああ!?」

「ったりめーだあ!」「もちろん!」「最高の夜だぜえええ!」「いえーいっ!」

どうしてなの?

「僕はね、ついさっき、世界で一番大好きな人に嫌いだって言っちゃったあああああ!」

「アホかー!」「謝ってこい!」「なに言ってんだおまえ!」

失笑、苦笑、怒号、声援。
誰もが少年の言葉に耳を傾けていた。

ねえ、男くん。




106: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:16:52 ID:9LqDYtUI
男「その人、泣きながら逃げちゃったんだ! だから僕はここにいる!」

周りの人達もこれがイベントじゃないことに気づき始めたらしい。
当初の熱はどこへやら。
ざわざわと騒々しさが増していく。

男「僕はね! その人のことが本当に好きなんだ! 髪の毛一本から爪の垢まで余すとこなく好きなんだ!」

恥ずかしくないの?
いいえ、恥ずかしいはず。
彼はそこまで馬鹿じゃない。

男「だけどね! 僕が本当に好きな所は、それは! 彼女が! 天邪鬼すぎてとっても素直な子だからなんだ!」




107: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:17:19 ID:9LqDYtUI
ただ、純粋なだけだ。
純粋に私のことを想ってくれているだけだ。
だからこんなことだってできる。
どんなことだってしてくれる。

男「可愛いねって言うと『貴方は芋虫でも口説いてれば?』って鼻で笑われたよ!
  綺麗だねって言うと『その言葉に重みを付けるために地下3000メートルで重力修行してきなさい』って背中を押されたよ!
  好きだよって言うと『私は貴方が嫌いだけれどね』ってばっさり切られたよ!」

「ひでえ……」「ままー、恐いよー」「鬼子じゃ……」「ご褒美じゃないですか」

女「……」ポカーン




108: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:18:07 ID:9LqDYtUI
男「だけど! だけどね! 僕はそんな風に言われても彼女が好きなんだ! 大好きなんだ!
  これっぽっちも胸が痛まないんだ! 寧ろ楽しくて笑っちゃうんだ!
  だから、無理しなくていいよ! 頑張らなくていいよ! そのままでいいよ!
  そのままの君がっ……」

彼が言葉を途切らせたのは、予想の難しくない言葉を叫ぶためなのだろう。
その気持ちに、想いに、私の心が高鳴っていく。

気づけば喧騒が静まり返っていた。
次で締めくくられるであろう言葉に、群衆は耳をひそめて待っている。

胸がぎゅっと苦しくなる。
息をすることを忘れてしまいそうになる。

きっとこの先の人生を含めても。
この時以上の感動は得られないだろう。


男「――っ好きだああああああああああああああああああああああああ!」


自然に頬を伝った涙。
先程とは打って変わって、それはとても暖かい代物だった。




109: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:18:31 ID:9LqDYtUI
「おおおおおおお!」「かっこいいー!」「頑張れえええええしょうねえええええん!」

初めて告白をされた時よりもずっと多い人の中で。
彼の告白は大絶賛された。

けれど、終わっていない。

彼は言葉を言い切れたことに満足している風でもある。
きっと私に届いた確信があるのだろう。

けれど、終わっていない。

だって、私がなにも、応えていない。
彼の振り絞った勇気に、私はもう、甘えるだけなんて嫌だった。

女「わた、しも……」

言葉は群衆にかき消された。
どうすればこんな人ごみの中で声を張り上げられるのだろう。
恥ずかしい。全身が凍ってしまったかのように恥ずかしい。

女「わたっ、し……」




110: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:19:27 ID:9LqDYtUI
ここまで自分を情けなく思ったことはない。
素直になりたいと願って、なったはずなのに。

結局はそういう所とは問題が違っている。

私に足りないのは素直さじゃなくて、勇気だ。

息を目一杯吸い込んだ。
肺が膨らんでいくのを感じる中で、ただ一つのことだけを想った。

彼の想いに応えたい。

きっと彼は私のことを考えてくれている。
だからあれだけの勇気を持てたのだ。

ああ、サンタさん。
どうかいらっしゃるなら、お願いします。

私に勇気をください。

女「私もっ!」

予定以上の音量で発声された主張に、恋人たちが私に振り向いた。




111: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:20:46 ID:9LqDYtUI
女「私もっ!!」

繋がらない。あともう一歩が踏み出せない。
もう一言だけでいいんだ。
あと四文字だけでいいんだ。

嘘偽りのない本心を、彼に伝えたい。
素直な……素直な?

……。
…………。
………………。

『そのままの女さんが好きなんだ』




112: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:21:27 ID:9LqDYtUI
ふと、彼の声が耳に届いた気がした。
すると心がふっと軽くなって、晴れやかになる。

とても不思議な気分。

なぜか自然と笑みが溢れて、流れるように口が開いた。

女「私は貴方のことが大ッッッッッ嫌い!」

私は、貴方が好いてくれた私でいたい。
貴方が好いてくれた私なら、きっと私も好きになれるから。

「「「「えええええええええええ!」」」」

周囲の人達はあまりにもあまりな言葉に驚いているけれど。
これが私達だものね、男くん。




113: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:21:51 ID:9LqDYtUI
■自室

女「渡してしまった……渡してしまったわ……」

女「〜〜っ//」カァー

女「うううううううううっ」バフンバフンバフンッ


女「そういえば男くんはなにをプレゼントに選んでくれたのかしら」

チャリッ

女「あら、これ……」

女「ふふ、可愛いわね」

女「猫のストラップか……」

女「素直だった私、いい判断してるじゃない」

女「……」

女「初めての、お揃い……」

女「〜〜っ//」バフンバフンバフンッ


fin.




114: ◆mSvgS5v5Fc:2012/12/20(木) 18:22:40 ID:9LqDYtUI
ってなわけで蛇足編もおしまい。


改めて、読んでくれてありがとう!




115:以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/20(木) 20:04:38 ID:T2nH/4Q6
女さんかわええ。





116:以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/20(木) 21:29:47 ID:biv2rPhQ
相思相愛じゃないすか
マジ鬱だわ…乙、楽しかった




117:以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/20(木) 21:59:44 ID:w17vxr8U
また、何か書いてね♪




118:以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/21(金) 05:32:18 ID:LaHLSGJI
男熱いなwww
めりいいいいいくりすまああああす!

…はあ。


カテゴリー男「」女「」のSS一覧
管理人のオススメSS
 
電子書籍リーダー Kindle Paperwhite
初音ミク -Project DIVA- F 初回限定特典 オリジナルラバーストラップ 付き
ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち
スーパーロボット大戦UX (初回封入特典:「キャンペーンMAP」&「ツメスパ」をダウンロードできるダウンロードコード 同梱)
メタルギア ライジング リベンジェンス(通常版) 数量限定特典 カスタマイズ用ボディ『サイボーグ忍者』ダウンロードコード 同梱
ソードアート・オンライン -インフィニティ・モーメント- (初回限定生産版)
真・三國無双7(通常版) (初回封入特典 趙雲&孫尚香『三國志12』コスチューム ダウンロードシリアルコード 同梱) 予約特典『真・三國無双7』 特製スマートフォンポーチ 付き
マクロス30~銀河を繋ぐ歌声~ 30周年記念 超銀河箱 (◆初回封入特典 ゲーム内でマーキングバルキリー「VF-25」(シェリル&ランカ)を使用できるプロダクトコード 同梱)
DmC Devil May Cry (ディーエムシー デビル メイ クライ) (数量限定特典 悪魔を蹴散らすDLコードセット&追加シナリオ『バージル ダウンフォール』 同梱)
閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明- 限定版『にゅうにゅうDXパック』
テイルズ オブ ハーツ R (◆初回封入特典 ∞進化2DアクションRPG“テイルズ オブ ハーツ R インフィニット エボルブ"など豪華特典がダウンロードできるシリアルコード! ! 同梱)
 

最新記事50件