1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:24:54.77 ID:XPJbwliF0
兄「……」

妹「ねーちゃん」

兄「っだああああああああああああああああ、なぜだ妹よおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

妹「ねーちゃんねーちゃん」

兄「なぜにーちゃんより先にねーちゃんという言葉を覚えたああああああああああああああああ」

妹「ふえっ、ふえっ……、うえぇぇぇぇええええん」

姉「こら! 阿呆が! 怖がって泣いちゃったじゃない!」

兄「うえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」

姉「阿呆が……」

My妹(マイマイ)


元スレ
妹「ねーちゃん」
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1297531494/
DAT:ここを右クリックして名前をつけてリンク先を保存
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1298222827/
DAT:ここを右クリックして名前をつけてリンク先を保存


2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:26:50.67 ID:XPJbwliF0
兄「殴られました」

姉「殴りました」

兄「我に返りました」

姉「だったらよろしい」

兄「取り乱してしまい申し訳ありませんでした姉上」

姉「うむ」

妹「きゃっきゃ」

姉「どうやら妹も兄上が殴られている様子が面白いようだ」

兄「」




4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:28:37.42 ID:XPJbwliF0
兄「いや、というかこの子誰よ。どこの子?」

姉「知らん」

兄「はぁっ?!」

姉「知らんと言ったら知らん」

兄「知らん……っておい、昨日から当たり前の様に我が家に居てたからあまりの存在感に姉上のご子息かと察していたものを!」

姉「? 私はてっきりお前の隠し子かと思っていたんだが」

兄「……」

姉「……」

兄「え?」

姉「え?」




5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:31:09.23 ID:XPJbwliF0
兄「さて問題です」

姉「うむ」

兄「時に、生命の誕生とはどのような過程を経るものでしょうか」

姉「コウノトリが運んでくるんだ」

兄「カマトトぶるのもええ加減にせい!」

姉「何だ、せっかくノってやったのに」

兄「ええ加減にせい」

姉「君とはやってられんわ」

兄・姉「どうもありがとうございました」

妹「きゃっ、きゃっ」

姉「みろ! やっぱり喜んでいるぞ! 漫才的なソウルがわかるんだなこの子は、天才かもしれん」




7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:34:05.33 ID:XPJbwliF0
兄「あらどうしましょう姉上、でしたら良い学校に通わせて英才教育を施さないといけません事よ?」

姉「うむ……実は知り合いが講師をやっている学校があるんだが」

兄「ほう? なんて名前?」

姉「NSC」

兄「子役って大丈夫なのかな」

姉「さあな、今度聞いてみるよ」

兄「うむ、さすが姉上」

姉「はっはっは、伊達に君の姉をやっとらんよ」




8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:37:35.84 ID:XPJbwliF0
妹「……」スヤスヤ

兄「む? どうやら眠ったようだな」

姉「本当だ」

兄「オムツとかあったっけ」

姉「オムツどころか赤ちゃん用の色々なグッズが圧倒的に足りていないな、私と兄上の分は全て親戚で使いまわしているからな」

兄「という事は」

姉「うむ」

兄「お買い物、ですな?」

姉「だな」

兄「Amazonにする? トイザらスにする? それとも……」

姉「時に兄上よ」

兄「何だ? 今まさに財布に手をかけようとしている私を言葉一つで止めるとはさすが姉上」

姉「トイザらスの「ら」は何故に平仮名なのだ?」




9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:41:15.92 ID:XPJbwliF0
兄「……はっ?!」

姉「何故なのだろうか」

兄「……た、たしかに……! 姉上! それは人類史上稀に見る大発見ですぞ!」

姉「そうだろうか?」

兄「今すぐ論文300P程に纏めて学会誌に提出する準備を始めなくては」

姉「次の学会となると……3ヵ月後か、準備期間としては妥当だな」

兄「早速図書館にて関連論文の検索を」

姉「そうだな、そうしよう」

兄「うむ、では言ってくるぞ妹よ、良い子は寝て育つ、よく眠れ」

姉「私たちの様に強い子に育つのだぞ妹よ」

妹「……」スヤスヤ




10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:43:46.65 ID:XPJbwliF0
兄「では早速タクシーを呼びましょうぞ」

姉「うむ、緑色のだな?」

兄「左様、緑色はサービスが違いますからな」

姉「では私はノートパソコンを持っていくとしよう」

兄「うむ、忘れ物をなさらぬようにな」

姉「何、ぬかりはないさ」

兄「我々に限って忘れ物などありはしませんな、はっはっは」

妹「……」スヤスヤ




11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:46:31.98 ID:XPJbwliF0
ブロロロロロロロロロロロ……

「お客さん、どちらまで?」

兄「図書館まで」

「わかりました」

姉「……」

兄「どうかされましたか姉上」

姉「何か大事な事を忘れている気がするのだが……時に兄上よ。我々は何故図書館に?」

兄「論文の下調べをしに行くのでは?」

姉「いや、その前の会話だ」

兄「知り合いがNSCの講師をなされているので?」

姉「ううん……そうではなくてだな、そもそも我々はなぜ外出を?」




12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:48:11.20 ID:XPJbwliF0
兄「論文を書くためではございませぬか」

姉「そうだな、何の論文だったか」

兄「トイザらスの「ら」が何故ひらがななのか、でしょう?」

姉「そうだ。そうだった、なぜその様な話に……?」

兄「なぜって、それは」

姉「それは?」

兄「……」

姉「……」

兄「運転手さん! 図書館やっぱ辞め!」

「はい?」




13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:50:55.02 ID:XPJbwliF0
兄「いやーーーーーーーーーーはっはっは、俺とした事が大事な事を忘れていた」

姉「普通忘れるかね、我が子だろう?」

兄「ちょっとしたジョークではござらぬか」

姉「そもそもそのござる言葉はいつから始まったでござる」

兄「さあ……もう忘れてしまいましたぞ、推測はかなりの困難を極めるかと」

姉「生命の起源と同じか」

兄「ってか俺の子じゃないよあの子」

姉「うそつけ、君の子だろう。目が君に似ていた」

兄「だったら輪郭は姉上似だったぞ」




14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:53:35.36 ID:XPJbwliF0
姉「私の? 冗談はよせ、私には交際している特定の異性など居ない」

兄「’特定の’異性は居なくてもガキは生まれるぜ?」

姉「怖い事を言う様になったな兄上よ、一体どこの娘を孕ませたんだい?」

兄「ばっか、俺じゃねーって」

姉「ふむ、あくまでシラをきりとおす気か貴様。例えお天道様が許しても君の姉が許さぬぞ、その股間の粗末なモノを成敗してくれようか」

「おきゃくさーん、着きましたよ」

兄「あ、5000円でいいですか?」

「はいどーも、毎度あり」




15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:57:12.77 ID:XPJbwliF0
兄「で、子供に必要なものって何なのよ」

姉「私が知るか」

兄「はぁ? 仮にも母親の身だろ? それくらい知ってろよ」

姉「私が母親なら君は父親か兄上よ」

兄「認知しねーからな! 身に覚えがねえよ!」

姉「ふふふ……ネタはあがっているのだぞ」

兄「な……まさかあの時の……」

姉「そう、あの時の」

兄「あの時の……?」

姉「どの時の?」

兄「その時の」

姉「この時の」

兄・姉「時を〜越えて〜♪」

兄「うむ、見事なデュエットだ」

姉「我ながら惚れ惚れする美声だな」




17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:00:10.08 ID:XPJbwliF0
兄「オムツは紙がいいのか?」

姉「布という選択肢もありだな」

兄「ふむ……、何せ無駄に生きてきたが子育ての経験は無いからな、わからない事だらけだ」

姉「なぜこんなダメ兄上が子供など……身が引き裂かれる思いだ」

兄「だから違うって」

姉「違う……からの?」

兄「違う……からの、違わなくない」

姉「どっちなのかはっきりしなさい」

兄「自分、はっきりしない男ですから」

姉「だと思ったよ」

兄「はっはっは」




18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:02:42.84 ID:XPJbwliF0
兄「ところで姉上よ」

姉「何だ?」

兄「最近おっぱいの調子はどうだ?」

ガン!

兄「いってえ!」

姉「こ、公衆の面前でな、な、なにを言うのだ兄上よ!」

兄「ばか、ちげーよ。ミルクの話だよ」

姉「母乳など出るものか! 言っとくが証拠を見せろと言われても吸わせる事はできないぞ!」

兄「……ち、誘導尋問失敗か」

姉「まったく……油断もスキもない」




19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:04:58.47 ID:XPJbwliF0
兄「まーいっか、適当にミルク買っとくぜ?」

姉「うむ、しかし私財布を忘れたみたいでな」

兄「あー、良い良い。カードで支払うから」

姉「うむ。そうか?」

兄「いいって事よ、なんで俺らの家に居るかわかんねーけど、一緒に居る以上はあいつも家族だ」

姉「そうだな」

兄「大事にしてやらんとな」

姉「ははっ、すっかりお父さんだな兄上」

兄「姉上こそ、すっかりお母さんだな」

兄・姉「はっはっは」




20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:07:19.69 ID:XPJbwliF0
姉「ただいま」

兄「ただいま〜」

妹「……」スヤスヤ

姉「ふむ、よく寝てるな」

兄「だな〜、起きてからお腹すいてもいいように準備しとくぜ。あと代えのオムツも」

姉「うむ、私はどうすればいい?」

兄「隣で寝てれば?」

姉「それでは君ばかり働く事になるではないか」

兄「家事は分担、だろ? 今は休んでろ」

姉「……君を旦那に貰う娘は幸せ者だろうな」




21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:10:09.87 ID:XPJbwliF0
姉「……しかし、誰の子なんだこの子は」

兄「さあな」

姉「出生が判らない事には警察に届けようもない」

兄「迷子……っていうには自分から歩いてくる訳がないしな」

姉「早くも今世紀最大のミステリーになるやもしれん」

兄「まさか宇宙人が」

姉「キャトルミューティレーションとでも言いたいのか? バカな」

兄「いやいや、実際この子がこうして居るわけだし」

姉「ふむ」




22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:12:39.42 ID:XPJbwliF0
姉「私の知り合いに宇宙工学に詳しい者が居るんだが」

兄「交友範囲謎だよな、姉上」

姉「そうでもない、高校の同期だ」

兄「どこの高校に宇宙工学部なんてあるんだよ」

姉「うちだ」

兄「うちだったか……」




23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:15:12.37 ID:XPJbwliF0
妹「ん」

パチリ

姉「おお? 目を覚ましたか」

妹「んーんー」

姉「ははっ、なんだなんだ。可愛いなぁ」

妹「ねーねー」

姉「ねーねーだぞー、んー? おなかすいたかー?」

妹「んー」



姉「で、兄上は後ろで何をやっているんだ?」

兄「カンペを製作しております」

姉「この歳で’にーにーって言いなさい’という文字が読めたらそれこそ天才だぞ」




24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:18:31.27 ID:XPJbwliF0
兄「なぜだ……っ、なぜ姉上ばかり……不公平ではないか! ああ世の中は不公平だ! 不条理で……そして俺は無力だ……」

姉「なにもそこまで落ち込まなくても」

兄「ふふ……いいのだ姉上よ……俺は旅に出る……」

姉「そうか……」

兄「止めてくれるな、当ても無くその日暮らしで生きて行くさ」

姉「いつでも戻ってこい、君の家はここだ」

兄「わかった、二人で達者でな」

姉「ああ」


兄・姉「かた〜い絆に〜思いをよせて〜♪」


兄「なん……だと、思考をトレースされたっ?!」

姉「ククク……単純な兄上の事よ、この場面で長淵が来るとは簡単に予想できる」

兄「腕を上げたな」

姉「伊達に君と生活しとらんよ」

兄・姉「はっはっはっは」




25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:21:33.93 ID:XPJbwliF0
妹「……ん」

兄「ん? 何か様子がおかしくないか?」

姉「本当だな、どうしたんだろう」

兄「オシメでは?」

姉「かもしれん、代えのオムツを」

兄「はっ、ここに」

姉「うむ、大儀であった」

兄「では私はこれで」

姉「待たれよ」

兄「何でしょうか殿」

姉「このオムツ……なぜ暖かい?」

兄「はっ、赤子のお腹を冷やさぬよう、わたくしめの懐で暖めておきました」

姉「そち……なかなか頭が回るではないか」

兄「光栄でござる」




26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:23:12.10 ID:XPJbwliF0
姉「なるほど、このネタをやりたいが為のござる言葉か」

兄「壮大なオチには細かい複線がつき物よの」

姉「私も見習うとしよう」

兄「姉上こそ中々狡猾でござるからの」

姉「もうござるは必要ないでござる」


姉・兄「バザールでござーる」


兄「……なっ」

姉「ふふふ」




27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:24:51.18 ID:XPJbwliF0
姉「ところで複線ではなく正しくは伏線ではなかろうか?」

兄「ククク……」

姉「?」

兄「今考えている事の逆が正解だ。でもそれは大きなミステイク」

姉「6か」

兄「うむ」




28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:26:27.89 ID:XPJbwliF0
姉「さて、オムツも替えたし、そろそろミルクの時間ではなかろうか?」

兄「はっ」

姉「まさか懐で」

兄「さすがにそれはねーよ」

姉「ですよね」

兄「うむ」




29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:27:56.12 ID:XPJbwliF0
姉「おー、よく飲んでるな」

兄「だな、よっぽどお腹が空いていたんだろうな」

姉「……しかし、兄上よ」

兄「なんだ? いつになくシリアスな口調だな」

姉「この子、虐待されたらしい痕が残っている」

兄「なっ?! 虐待だとっ?!」




30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:30:20.53 ID:XPJbwliF0
兄「許せん……! 断じて許せんぞ姉上えええええええええええええ!!!!」

姉「落ち着け」

兄「俺は一方的に社会的弱者を甚振る様なクズは絶対に許せんのだ!!! 絶対にな!!」

姉「君が熱くなっても解決しない、私の母乳でも飲んで落ち着くのだな」

兄「うむ、そうしよう」

ボカッ

姉「落ち着いたか」

兄「どうして殴る」

姉「出ないからだ」

兄「確かめてみるのも一興」

姉「阿呆が」

兄「あれ、俺の頭に虐待の痕が」

姉「そうか、大変だな」




31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:35:20.27 ID:XPJbwliF0
兄「いやしかし冷静になってみると益々怪しいな」

姉「私もそう思う」

兄「虐待の痕……なぜか我が家に現れた赤子、これが意味する事は何だ?」

姉「私は我が家に赤子を甚振る趣味がある者の存在を疑いたくは無い」

兄「俺もだ」

姉「だったらやはり警察に届けたほうが」

兄「それで解決するならば、そうするさ」

姉「というと?」

兄「この子の親を想像してみろ姉上、赤子に暴力を振るう最低な親だ、育児を放棄するような最低な親だ。そんな親の元に還すのが本当に最良の判断と言えるのだろうか? 俺は今猛烈に悩んでいる」

姉「む……確かに」




33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:38:45.37 ID:XPJbwliF0
兄「かと言え、一応はまだ学生の身分である俺らに何ができるのかはわからない」

姉「……そうだな」

兄「こうするのはどうだろうか」

姉「何か良い意見が?」

兄「探すのさ、俺らでこの子の親を」

姉「何故だ? それならば警察に」

兄「もし発見できたとしよう、24時間体勢で張り付いてマトモな親と判断したら笑顔でこの子とはオサラバだ。しかし、もし本当に最低でクズな親だった場合」

姉「どうするというのだ?」

兄「我が家がこの子の新しい家になる」

姉「バカを言うな兄上よ」

兄「?」

姉「もう既にこの子は我々の一員だ」

兄「……ふ、そうだったな」




34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:44:51.87 ID:XPJbwliF0
妹「……」すやすや

兄「ふふ、何も知らずによく眠っているな」

姉「そうだな」

兄「これからはお母さん、と呼べばいいのだろうか姉上よ」

姉「だったら君の事はお父さんと呼ばなくてはな」

兄「……ふむ、育児と研究の両立とはこれいかに」

姉「今まさに君の甲斐性が試されている訳だ」

兄「奨学金を獲ろう、いくつか論文を書けばすぐ集まるさ」

姉「そうだな、兄上と私ならばそう難しい事ではなさそうだな」

兄「子育ての本も買おう」

姉「料理も覚えなくては」

兄「大変だ、どこかへ行くときは車が要るぞ、タクシーだと不便だ」

姉「ふむ……色々と物入りだな、お父さんよ」

兄「何を言うお母さん、二人でこそ乗り切っていくべきだ」

姉「三人で、でしょ?」




35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 04:00:09.21 ID:XPJbwliF0
────────
────
──

数年後。

妹「おとーさーん! おかーさーん! 行くよーー!!」

兄「なんだなんだ? ドコに行くというのだ娘よ」

妹「もうお父さんったら! 今日から小学校って言ったでしょ!」

兄「ああそうだった、今日は入学式だったな。どうりで俺はスーツを着ているわけだ」

妹「うんっ、はやくはやく〜」

姉「お父さん、車の準備は?」

兄「はっはっは、お母さんや」

姉「はい?」

兄「そういえばガソリン切らしてたんだった」

妹「なにぃいいいいいッッ〜〜〜〜?!」

兄「はっはっは、何をしている二人とも。小学校まで走るぞっ」

妹「あ、ちょっと。おとーさーんっ?!」




36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 04:05:23.17 ID:XPJbwliF0
兄「ゼーハーゼーハー……なんとかギリギリ間に合った……」

妹「それじゃあ先にいってるからね!」

兄「ゼーハーゼーハー……う、うむ、私たちは体育館に行ってるよ」

妹「うんっ!」


姉「もう。情けないですねお父さん、この程度の距離で息切れですか?」

兄「母さんどうしよう、俺もう、トシだ」

姉「老け込むには早すぎますよお父さん」

兄「っつーかよ、全然かわってねーなココも。俺らの時と」

姉「学校なんてそんなものでしょう兄上」

兄「お? 久しぶりにその呼び方になったな姉上よ」

姉「あの子の前では呼べませんからね」

兄「だなぁ……アイツももう6歳、小学校入学か、はえぇなぁ。俺もトシとるわけだよ」




37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 04:08:43.42 ID:XPJbwliF0
姉「まだまだ若くありたいものだな、お互いに」

兄「まだぴちぴちの20代だっつーの」

姉「兄上がぴちぴちならあの子はピカピカよ」

兄「俺の頭は黒々だけど」


姉・兄「も〜お〜悩み無用〜♪」


兄「久々だなこの感じ」

姉「鈍ってはいないようだな」

兄「ははっ、お互いにな」




38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 04:13:50.80 ID:XPJbwliF0
兄「この仮面を被り続ける限り、あの子の前では親だからな」

姉「とうの昔に誓った事よ、何を今更」

兄「こうして節目節目には思い出していこうじゃないか。俺たちが兄姉である事を」

姉「ふふ、そうですね。お父さん?」

兄「そうだな、お母さん」

姉「さあ、行きましょう体育館。あの子の晴れ舞台ですよ」

兄「実はゼミの教室から最新式のビデオカメラを拝借してきたんだ」

姉「あら? 学生達が困っているのでは?」

兄「だってあいつら就活とかでゼミに出てこねーんだもん」

姉「寂しがり屋ですか」




39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 04:17:13.00 ID:XPJbwliF0
兄「お! 出てきたぞ!」

姉「本当ですね」

兄「おお、わらわらと、ちんちくりんがいっぱいだな」

姉「ふふ、どの子も可愛いですね」

兄「だけどうちの子が一番だな」

姉「お父さん、いつも言おうと思っていた事があるんですけれど」

兄「何だ?」

姉「親バカですよね」

兄「俺はお前に対してもバカなつもりだぞ?」

姉「そっちは言葉のままの意味ですよね」

兄「あ、バレてます?」

姉「もちろんですよ、お父さん?」

兄「黒い笑顔やめてお母さん、子供達がすげー怖がってる」

姉「あらあら、うふふ」




67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 19:30:10.80 ID:XPJbwliF0
兄「ふふ……撮ってる、撮ってるぞ。永久保存版、娘の小学校入学式ファイル」

姉「Xファイルか何かですかそれ」

兄「ふむ。それもいい。すぐに月面のセットと宇宙人のきぐるみを用意させよう」

姉「やめてください、設定がリアルすぎて子供達の夢を壊してしまいます」

兄「ふむ、残念だ。ところで俺達の入学式のビデオもどこかにあるらしいぞ」

姉「タンスの奥深くじゃないですか?」

兄「意外と天井裏だったりしてな」

姉「ああいうのって一回撮ったっきりで、不思議と見返さないんですよね」

兄「現在進行形でビデオを回してる俺へのあてつけか」

姉「あ、バレました?」




70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:15:48.56 ID:XPJbwliF0
兄「ところでお母さんや」

姉「何でしょうお父さん」

兄「あやつは何組なのか」

姉「む?」


兄「……どこの組織の者かと聞いている。知っているなら答えたほうが身の為だぞ」

姉「ふ……そんなに簡単に仲間を売ると思ってもらっては困るな」

兄「夜は長い、じっくり体にでも聞いてみるさ」

姉「貴様にできるものか」

兄「なに、時間はたっぷりあるんだ。邪魔者は居ない、二人だけで楽しもうか」


兄・姉「アスファールト、タイヤを切り付けながら〜♪」


兄「うむ、息ぴったりだな」

姉「ですな」




71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:19:35.53 ID:XPJbwliF0
姉「えーっと、たしか5組では?」

兄「1年5組か」

姉「ええ、そうですね」

兄「我々と同じだな」

姉「あら、そうでしたっけ」

兄「俺は忘れぬぞ、同じ年のきょうだいで同じクラスという耐えがたき境遇を……っ!」

姉「私はもう忘れましたよ?」

兄「お金って貸した方はずっと覚えてるもんなんですよ」

姉「お金を貸した覚えはないですけどね」

兄「言葉の綾ですぞ」

姉「承知しております」

兄「余計タチ悪いわ」

姉「君とはやってられんわ」

兄・姉「どうもありがとうございました」




72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:24:48.26 ID:XPJbwliF0
エー……

デ、アルカラシテ

ホンジツハ、

トテモメデタイヒデアリマス……


妹「もう……、お父さんもお母さんも子供みたいにはしゃいじゃって」

女の子「ねえ」

妹「うん?」

女の子「あそこで漫才やってる二人、あなたのご両親?」

妹「いっその事……他人のフリをしてみたいかも」

女の子「なんで? 仲が良くてとてもステキだと思うけれど」

妹「そう? でも恥ずかしいなぁ……」




73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:32:10.42 ID:XPJbwliF0
女の子「いつもあんな感じなの?」

妹「そんな事は……あるかも」

女の子「あなたも大変ね、くすくす」

妹「昨日だって二人で夜遅くまで今日何着ていくかで揉めてたんだよ?」

女の子「へぇ?」

妹「それでお父さんが’しまった! スーツをクリーニングに出したままだ!’って言ってさ」

女の子「それは大変ね」

妹「お母さんが’だったらついでにガソリン入れてきてくださいな’って言ったのに、お父さんったらそれ忘れちゃってて、今朝は走って来ちゃった」

女の子「だからあなただけギリギリだったのね」

妹「う……」

女の子「みんなもうちらほらと友達ができてるみたいよ?」

妹「うそっ?」

女の子「ボヤボヤしてると一人取り残されちゃうかもね、くすくす」




74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:35:48.54 ID:XPJbwliF0
女の子「そういえばあなたはどこの保育園だったの?」

妹「行ってないよ? ずっとお家だったから」

女の子「あらそうなの?」

妹「うん、だからがっこは初めてなの」

女の子「そう。だったら私が色々と教えてあげるわ、くすくす」

妹「本当っ?」

女の子「ええ、色々とね」

妹「やったぁ、じゃああたし達、友達だね?」




75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:43:38.45 ID:XPJbwliF0
兄「む」

姉「どうされましたお父さん」

兄「見ろ、娘が隣の子と親しげに談笑の花を咲かせている」

姉「あら本当」

兄「保育園にも幼稚園にも行かせてやれなかったから不安だったが……あの調子だと大丈夫そうだな」

姉「そうですね、きっと大丈夫」

兄「でも」

姉「でも?」

兄「お母さんに似てクラスの委員長になって合法的にムカつく男子を絞めたりしなきゃいいけど……」

姉「時効です」

兄「時効で済ませられる程思い出は甘酸っぱくないのだよ」




76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:48:38.54 ID:XPJbwliF0
姉「それを言うなら」

兄「あん?」

姉「お父さんこそ、随分やんちゃだったじゃないですか」

兄「そんな事はない」

姉「クラスの誰かさんがいじめられてた時、一回りも二回りも大きい相手に立ち向かっていってましたよね」

兄「ふん、男子たるもの女子を守るのが当たり前だ」

姉「あらあら。実はその話には続きがあるってご存知あそばせ?」

兄「続き?」


トイウワケデ

ダイ××カイ○○ショウガッコウノ

ニュウガクシキヲ

ヘイマクイタシマス


姉「あ、終わりましたね」

兄「本当だな」




78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:53:44.09 ID:XPJbwliF0
兄「で、何よ続きって」

姉「?」

兄「あん?」

姉「何の続きでしたっけ?」

兄「ガソリンを入れ忘れてごめんなさい……っていうのは昨日やったか」

姉「帰ったらお仕置きです」

兄「いや、お仕置き2回目よ? さすがに勘弁願いたいなぁ」

姉「だったらもっとちゃんとしてください」

兄「しているではないか、男とは背中で語るものだ」

姉「嫁に背を見せるとは、男としてどうなのですか」

兄「返す言葉もない」




79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:59:10.06 ID:XPJbwliF0
先生「えー……というわけで今日から君らの担任をやる事になりました、どうかよろしくお願いします」

オネガイシマース

先生「それじゃあ名前の順に自己紹介をしてもらいましょうか」


兄「はい、仕事は近くの大学で准教授をやっとります。趣味は娘の観察、最近だと休日に家族サービスでドライブをするのにハマってます。ぞうさんも好きだけど、綺麗なおねえさんはもっと好きです」

姉「はいはい。引っ込んでましょうねお父さん」

兄「なぜだっ! 自己紹介をしろといわれただけなのにっ」

姉「娘の出番奪ってどうするんですか」

妹「もう! 二人とも大人しくしてなさい!」

兄・姉「すんませんでした」

妹「わかればよろしい」

アハハハハハ、ナニアノコ

オモシローイ

妹「はっ?! しまったついいつもの調子で……」

女の子「くすくす」




80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:02:27.98 ID:XPJbwliF0
先生「随分面白いご両親ですね」

妹「すみません……」

姉「ほら、娘が可愛そうじゃないですか?」

兄「はっはっは、元気が無いぞ。どうした娘よ」

妹「あんたのせいだ!」

兄「ぐアァァァぁぁぁああああああああああああああああああああッッ?! なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお?! お、お、……俺のせいだったのかあああああああああああああああ!!!」

姉「君とはやってられんわ」

兄「今本気で言わなかった?」

姉「気のせいですよ、お父さん」




81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:07:28.21 ID:XPJbwliF0
保護者「なんですの、随分賑やかな人がいますのね」

女の子「そうだね、おかあさん」

保護者「……」

女の子「どうしたの?」

保護者「いや、なんでもないですのよ。小学校でも幼稚園みたいに仲の良い友達ができればいいですのね」

女の子「さっきあの子と友達になったよ?」

保護者「まぁまぁ、そうですの?」

女の子「くすくす」

保護者「色々な意味で退屈せずに過ごせそうですのね」

女の子「そうだね」




82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:10:28.65 ID:XPJbwliF0
先生「……と、いうわけで。一年間よろしくお願いします」

ハーイ!

先生「それでは、起立、礼。さようなら」

サヨウナラー!



兄「うーし、帰るか」

姉「帰りましょ」

妹「うんっ」




83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:12:53.07 ID:XPJbwliF0
妹「ね」

姉「うん?」

兄「どうした娘よ」

妹「お父さんとお母さん、この小学校だったんだよね?」

兄「そうだぞー、お母さんは学級委員長で児童会長だったんだからな、えっへん」

姉「あなたが威張る事ですか」

妹「すごいねお母さん!」

兄「お父さんもすごかったんだぞー」

妹「そっかー、すごいねおかあさん!」

兄「オトウサンモスゴカッタンダゾー」

妹「ソッカースゴイネオカアサン」




84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:17:30.58 ID:XPJbwliF0
兄「ぐ……、父としての威厳がっ……今音を立てて崩壊しようとしている……っ」

姉「あらあら、最初からそんなものありましたっけ?」

兄「実質最初から無いわー、実質最初から無いわ、うん」

妹「あたしお母さんみたいな小学生になるねっ」

兄「ちょっとはお父さんみたいな小学生になってもいいんだよ?」

妹「えー、お父さん女の子のスカートめくりばっかりしてたんでしょ?」

兄「なぜそのことを!」

姉「あらあら」

兄「貴様かァぁああああああああああ!!!!! なんて……なんて事を娘に教えているんだああああああああ!!!!!!」

姉「事実です、それに史実です」

兄「ひいいいいいいっっ?!」




85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:21:57.02 ID:XPJbwliF0
妹「もう! バカなお父さん」

兄「娘にまでバカ呼ばわりされる父って一体……」

妹「ふんっ、知らないっ」

兄「おかあさん〜……娘が反抗期だぁ……」

姉「まず自らを省みる必要があるのでは」

兄「いま、娘を子に持つ日本全国全ての父親の気持ちがわかった気がする」

姉「すごいじゃないですか、悟りの境地ですね」

兄「君に対してはサトラレですけどね」

姉「テレパシー的な何かですね、たぶん」


兄・姉「僕らはいつも以心電心♪」


妹「結局、阿呆二人ね……」




86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:23:45.18 ID:XPJbwliF0
兄「以心電信だったっけ」

姉「以心伝心のもじりですからね」

兄「じゃあ以心電心ってのは」

姉「間違いを認めていく強さが我々には必要なのですよ」

兄「なるほど」




87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:26:31.53 ID:XPJbwliF0
妹「二人とも〜、おいてっちゃうよー」

兄「おおう、今行く」

妹「本当、仲いいよねお父さんとお母さん」

兄「当たり前だぞー? 夫婦なんだからな」

妹「ふーん? でも、あたし知ってるよ?」




88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:30:11.70 ID:XPJbwliF0
ギクッ

兄「……」

姉「……」




兄(……おい姉上)

姉(なんだ兄上)

兄(何か悟られる様な事言ったのか?)

姉(さあ、心当たりがない)




90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:34:20.36 ID:XPJbwliF0
兄(……この子の親が我々ではないという事を気づかれてはならない、少なくても今は。ショックを受けて閉じこもりがちにでもなったらどうするのだ)

姉(そうですね兄上)

兄(……だがしかし、この子が事実を知ってしまったというなら……)

姉(やむを得ませんか)

兄(……どうすることもできんだろう。だがしかし、どの面下げて’我々は君の親ではない’と言うのだ?)

姉(いつかは、と。覚悟していた事です)

兄(……そうか)




91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:35:52.16 ID:XPJbwliF0
姉(現実とは往々にして厳しいものですから)

兄(だがしかし、誰もが姉上の様に強くは在れないのも事実)

姉(信じましょう)

兄(ぬ?)

姉(私達の娘を)

兄(母は強いんだな)

姉(お父さんの娘でもあるんですよ?)

兄(ははっ、そうだな)

姉(そうですよ)


※テレパシー的な何か




93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:38:00.59 ID:XPJbwliF0
兄「……」スー

兄「……」ハー

兄「で、何を知っているって?」

妹「何よ、いきなりそんな爽やか笑顔になっちゃって」

兄「私はいつでも爽やかスマイルではないか娘よ、で何を知っているのだ?」

妹「お父さんとお母さんがやってる事なんだけど」




94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:41:22.61 ID:XPJbwliF0
兄(……)

姉(……)

兄(姉上)

姉(どうした兄上)

兄(この子、いつから気づいていたんだろうな)

姉(案外、最初からかもしれませんね)

兄(我々のこの狂言に付き合ってくれていた、というのか?)

姉(入学式は私達にとっても大きな節目でしたけど、この子にとっても大切な節目ですからね)

兄(これを機に……か)

姉(寂しいですか?)

兄(バカをいうな)

姉(背中が寂しそうですよ)

兄(……バカを言うな)




95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:43:11.95 ID:XPJbwliF0
兄「……」しゅん

妹「ちょ、ちょっと。どうしてそんなに落ち込むのっ?」

兄「……いや、落ち込んでなんかないぞ? うん」

妹「そう?」

兄「あはは、元気全快だー、うおおー」

妹「なんかムリしてない?」

兄「してないさ、あははははーーー!!!!」

妹「ふーん?」




96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:46:20.30 ID:XPJbwliF0
兄(……どこまで知っているんだろうな)

姉(自分が虐待を受けていた事も知っているのでしょうか)

兄(さすがにそこまでは覚えとらんだろうが……、記憶の中に浮かぶ本当の両親と我々の違いに、もしかしたら一人苦しんでいたのやもしれん)

姉(後悔、ないですか?)

兄(ないさ)

姉(戻りたいと言っても?)

兄(ああ)

姉(優しいんですね、兄上は)

兄(俺はいつだって弱い者の味方だ)

姉(あらあら)




98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:53:26.33 ID:XPJbwliF0
兄(せっかく買った子供服、どうすりゃいいかな)

姉(ご近所の若い奥様に差し上げては?)

兄(ふむ、それはナイスアイデアだ。この子の件でご近所様には随分助けられたからな、夜泣きの時とか風邪を引いた時とか)

姉(わからない事だらけでしたからね)

兄(今もわからないさ、日本全国の父親・母親は化け物だと思うよ。子育てなんて神業のオンパレードだ、なにせ泣き声ひとつで感情がわかるんだからな)

姉(我々は親らしくあれたでしょうか?)

兄(胸を張れるさ)

姉(そう……、そうですね)

兄(泣くのは早いぞ)

姉(そう……ですね)




99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:55:52.17 ID:XPJbwliF0
兄「……」スー

兄「……」ハー

兄「う〜ん、深呼吸したら気持ちいなぁ。ほら娘よ、お前もやってごらん?」

妹「うんっ」

スー

ハー

兄「それで、私達が何だって?」

妹「ああうん、あのね。お父さんとお母さんね」

姉「うん」

妹「お父さんとお母さんがよくやってるあれ」

兄「アレ?」

妹「うん、アレ」

姉「アレとは?」




101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:58:38.95 ID:XPJbwliF0
妹「ほら、ボケたり突っ込んだり」

兄「漫才かい?」

妹「うんうん」

姉「それがどうかしたの?」

妹「あのね、あたし知ってるんだよ?」

兄「何をだい?」

妹「お父さんとお母さんがやってるのって夫婦漫才って言うんでしょ?」

兄「……」

姉「……」

妹「だからあたしが入ったら家族漫才だねー……って、二人とも、聞いてる?」




102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:01:21.96 ID:XPJbwliF0
兄「……」

姉「……」

妹「お父さん? お母さん?」

兄「……く」

姉「……あははっ」

兄「ははは」

姉「あははははっ」

兄「……そうか、そうきたか娘よ! くそ! こいつは一本とられた! あはははは!!!」

姉「ええ、随分強烈でしたね。さすが私達の娘です!」




104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:03:40.93 ID:XPJbwliF0
妹「ちょっとー、なんで笑ってるのよ? そんな面白い事言ってないよー?」

兄「面白かったさ! ああ面白かったとも娘よ! ドキがムネムネしたぞ!」

姉「ええそうですね、ドキがムネムネでしたよ」

妹「え? へ?」

ギュ

妹「ちょ、二人とも。くるしいよ」

兄「ばかいえ、もっと強く抱いてやる」

ギュウゥウウ

姉「私も負けませんよ」

ギュウウウウ

妹「もう、二人ともどうしたの?」




107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:09:53.74 ID:XPJbwliF0
兄「家族だ。そうだ、私達は家族なんだ」

姉「ええそうですよ、私達は家族ですから」

妹「何言ってんのよ当たり前じゃない、そんなの」

兄「くくく……当たり前、そうか。当たり前か」

姉「ええ、当たり前ですよ。お父さん」

兄「お母さん……当たり前だとよ……こんな俺らなのにな」

姉「ええ、当たり前なんですよ」




108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:13:49.61 ID:XPJbwliF0
妹「ちょっと二人ともどうしたのよ、さっきからヘンだよ?」

兄「うるさいっ、お父さんがヘンなのはいつもの事だろうっ」

妹「あ、それもそうか」

兄「え、納得しちゃうの?」

妹「うん」

兄「ガーン」

姉「あらあら」




109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:21:27.73 ID:XPJbwliF0
兄「うわああああああああああああああああああああああああン!!!! グレてやるううううううううううううううううううううううううう!!!!」

妹「あ、ちょ、待っ……行っちゃった」

姉「うふふ、お父さんうれしかったんですよ」

妹「何が?」

姉「あなたに家族って言ってもらえて」

妹「なんで?」

姉「あなたがもうちょっと大人になったらわかるかもしれませんね」

妹「むー。あのね、お母さん」

姉「はいはい?」

妹「あたし、お父さんみたいな人と結婚したいかも」

姉「あらあら、お父さんに行ってあげたら喜ぶわよ?」

妹「チョーシに乗るから絶対内緒」

姉「うふふ」




110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:23:55.46 ID:XPJbwliF0
姉「お父さんのどこがいいの?」

妹「お母さんと一緒」

姉「私と?」

妹「うんっ」

姉「あらあら、だったら私達ライバルね」

妹「あくまでお父さん’みたいな人’だから。お父さんじゃないもん」

姉「うふふ、可愛いわねっ」

ギュウ

妹「うにゃ」




111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:30:36.45 ID:XPJbwliF0
ブロロロロロロロロロロロロ……

キキー

バタン

兄「ヘイ、そこのキュートなカノジョ達ィ、お茶しない?」

妹「……なにやってんのお父さん……」

兄「いや、お前ら中々帰ってこないからガソリン入れて迎えにきた」

妹「この短時間でっ?!」

兄「愛が成せる業よ! はっはっは!」

姉「あらあら、誰への愛ですか?」

兄「それはもちろんむす」

姉「うふふ」

兄「お母さんに決まってるじゃないか」




113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:41:04.38 ID:fNvmKgO/0
こんなに胸が苦しくなる作品は久しぶりだ




114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:50:09.48 ID:1+Maj5vu0
こんなほのぼのしたSSスレは久しぶりだな




135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 16:04:13.14 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ◇ ◇

兄「……はぁ」

ズズズ

姉「……ふう」

ズズズ

妹「……んー」

チューチュー

兄「お茶がうめぇなぁ」

姉「ですねぇ」

妹「なんであたしだけオレンジジュースなの」

兄「だって猫舌だし」

姉「猫舌ですからねぇ」

妹「そっかー猫舌なのかー」




136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 16:07:27.07 ID:XPJbwliF0
妹「で、ネコジタってなに?」

兄「にゃーん」

妹「うにゃーん」

兄「ふー」

妹「にゃーん」

兄「うー……わんわん!」

妹「それどっちなの」

兄「犬と猫で犬猫」

妹「新発見?」

兄「ガラパゴスだからな」

妹「ガラパゴスって?」

兄「生命の冷蔵庫だ」

妹「保存してるの?」

兄「うむ」




138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 16:11:10.35 ID:XPJbwliF0
妹「んー」

チューチュー

妹「ジュースおいしい」

姉「和歌山のオレンジジュースですからね、有田みかんですよ」

妹「うん、みかん好き」

姉「毎年お隣の奥様からお裾分けしてもらってますものね」

妹「こたつにみかん」

兄「日本人の心だな」


兄・姉・妹「ね〜こはコタツで丸くなる〜♪」


ニャーン

兄「ふはは、息ぴったりだな」

姉「ですねぇ」




139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 16:13:59.01 ID:XPJbwliF0
妹「にゃーん」

姉「にゃー」

兄「ぬー」

妹「ぬーって何よ」

兄「新種」

妹「さっきから新種ばっかり」

兄「ぬー」

妹「猫はそんな鳴き声じゃないよ」

ニャーン

妹「そうそう、こんな鳴き声」

兄「ほう、まるで本物みたいだな。声真似でデビューするか?」

妹「今あたし何も言ってないよ?」

兄「あん?」

ニャーン?




140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 16:15:42.39 ID:XPJbwliF0
姉「あらあら」

妹「わぁ、猫ちゃん」

兄「どうなってんだ我が家のセキュリティは」

ニャーン


兄・姉・妹「セコム、してますか?」


ニャア?




141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 16:20:36.02 ID:XPJbwliF0
姉「三毛猫ですね」

妹「男の子?」

兄「オスだったら珍しいな……だが女の子だな」

妹「女の子っ」

ニャーン

姉「あらあら、あなたに懐いてるわね」

ニャーン

すりすり

妹「わ、くすぐったいよー」

兄「おい猫介、俺にも平伏すのだわははははは」

ぷい

兄「あれ? 家主の俺になつかないの? なんで?」

姉「動物って誰が家の中で一番権力があるか察するらしいですよ」

兄「どういう意味だあああああああああああああああああああああああああああああああっ」




142:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 16:25:35.74 ID:XPJbwliF0
妹「ちょっとお父さん、猫ちゃんびっくりしてるじゃない。威嚇しないでよね」

兄「フーーー!」

姉「人間対猫の仁義無き戦いの火蓋が切って落とされようとしていますね」

妹「猫ちゃん、どこからきたのー?」

ニャー

兄「フーーーー!!!!」

姉「いつまでやってるんですか、お茶なくなったから淹れてきてくださいな」

兄「やだよ、コタツから出たくない」

姉「あらあら?」

兄「……」

姉「うふふ? ばんごはん抜きますよ?」

兄「イヤー、オチャクンデクルワー」




143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 16:27:13.33 ID:XPJbwliF0
兄「ったくなんで俺がお茶など……」

ゴト

兄「ん?」

ゴソゴソ

兄「……んん?」

シーン

兄「あんだあ? 誰か居んのか?」




144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 16:29:34.02 ID:XPJbwliF0
ニャー

姉「可愛いわね」

妹「うんっ」

姉「ちっちゃくてくりくりしてて、食べたらおいしそうね」

妹「だ、だめだよ!」

姉「うふふ、冗談よ」

妹「たまにお母さんの冗談は冗談に聞こえない時があるよ……」

姉「あらあら」




145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 16:33:31.67 ID:XPJbwliF0
ニャーン


妹「ん、可愛いなー」

姉「本当ねぇ」

妹「……」

姉「可愛いわねぇ」

妹「……ねえ、おかあさん」

姉「うん?」

妹「この子、飼っていい?」

姉「だめ」

妹「そんなっ」

姉「あのね。動物を飼うのって大変な事なのよ?」

妹「それは……っ、わかってるけれど」

姉「どんな病気を持っているかわからないし、どれだけ愛情を注いでもある日フラっとどこかへ行ってしまうかもしれない、それに一度飼う事を決めたら責任を持って毎日面倒を見ないといけないのよ? あなたにその覚悟があって?」

妹「……うー……」




147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 17:00:33.56 ID:XPJbwliF0
姉「保健所にはね、毎日沢山の迷子の犬や猫が送られているの」

妹「?」

姉「数週間はそこで保護されるわ」

妹「それが、何なの?」

姉「一定期限を過ぎたら殺処分されるの、わかる? 殺されてしまうの」

妹「……そんな、ひどい」

姉「あなたが今ひどいと感じた事。誰もがそう思うでしょうね」

妹「そんなの当たり前じゃない!」




148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 17:01:48.66 ID:XPJbwliF0
姉「多くの飼い主だってもちろんそう思うでしょうね。だけど責任を放棄する飼い主だって少なからず居るわ」

妹「?」

姉「育てるのが面倒になったから放棄する、鳴き声がうるさいから放棄する、手間が面倒、性格が気に入らない、飼った当時と成長後の姿のギャップが気に入らない……理由を挙げればキリがないわ。結局一番迷惑なのはそんな中途半端な飼い主に飼われたペットちゃんなのよ?」

妹「そんな……そんなのおかしいよ!」

姉「そうね。おかしい事よね。でも、あなたがそうならない保障がどこにあるの?」

妹「ならないもん!」

姉「本当?」

妹「あたしは……あたしはこの子を、ちゃんと育ててみせるもん!」




149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 17:03:57.68 ID:XPJbwliF0
ニャーン

姉「猫の育て方は知っているの?」

妹「う……、そ、それは。わかんねいけど」

姉「躾は? エサは何を食べるの?」

妹「……わかんないけど! ちゃんと調べるもん! この子の親になるんだもん! 当たり前だもん!」




151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 17:05:49.18 ID:XPJbwliF0
ガラッ

兄「話は全部聞かせて貰ったぞ!」

ニー

妹「あれ? もう一匹猫ちゃん?」

兄「リビングでうろうろしてたトコを保護してきた、さすが俺っ」




152:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 17:06:46.07 ID:XPJbwliF0
兄「娘よ」

妹「うん」

兄「猫を飼いたいそうだな」

妹「うん」

兄「大変だぞー? 生き物ってのは予想の斜め上を行く動きをする、何をしでかすか想定できんからな」

妹「それでも」

兄「あん?」

妹「放っておけないよ」

兄「……ったく、誰に似たんだか……」




153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 17:07:43.19 ID:XPJbwliF0
兄「良いだろうっ、飼う事を許可しようっ!」

姉「お父さん!」

兄「お母さん、いいじゃないか。この子が初めて自分からやりたいと言ってきた事なんだ」

姉「ですが」

兄「それにほら、俺だって猫飼ってみたかったし」

ニー

兄「おー、よちよち。可愛いでちゅねー」

ニーニー




154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 17:09:15.59 ID:XPJbwliF0
姉「まさか鳴き声が気に入ったとかいいませんよね」

兄「アハハ、ソンナマサカ」

姉「……はぁ……一度に二匹も、家計が火の車ですよ?」

兄「なに、講義を増やせばいいだけの話だ。それから娘よ!」

妹「うん?」

兄「飼うからには名前をつけねばならん! 子に名前を授けるのは親の特権だ、だからお前がつけてあげなさい」

妹「……いいの?」

姉「はぁ……いいわよ。そのかわり良い名前つけてあげなさい」

妹「やったー! ありがとおかあさん!」

兄「え? 俺は?」

妹「ありがとおかあさん!」

兄「なぁなぁ、俺は?」

妹「アリガトオカアサン」

兄「ナァナァ、オレハ?」




155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 17:10:03.41 ID:XPJbwliF0
妹「じゃあ、こっちのにゃーにゃー鳴く子がにゃーちゃんで」

ニャー

姉「にゃーちゃん、ね」

妹「こっちのにーにー鳴く子がにーちゃん」

ニー

兄「にーちゃん……だと……」

妹「どうしたのお父さん?」

兄「い、いやなんでも! いい名前じゃないかあはは」

ニャー

ニー

妹「よろしくね、にゃーちゃん、にーちゃん!」

兄「ぐはっ」




157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 17:16:21.65 ID:XPJbwliF0
────────
────
──

その日の夜。

兄「この子の親になる……か」

姉「はい、そう言ってましたね」

兄「はっはっは」

姉「うふふ」

兄「最初は反対したけど、あの子がああ言ってくれて、本当は嬉しかったんだろう姉上」

姉「ふ、当たり前だ」

兄「姉上に似て良い子に育ってるじゃないか」

姉「兄上に似て良い子に育っている」

兄「少し、飲もうか」

姉「お酒は辞めたのでは?」

兄「なに、今日くらい良いではないか」

姉「そうですね、お付き合いしますよ。お父さん?」




174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 22:21:17.99 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ◇ ◇



おんなのこは、

おうちでひとりです。

おとうさんと

おかあさんは

おしごとにいってしまいました。


「ろくじにかえってくるから、

いいこでまっててね」

おんなのこはおおきくうなづきました。




176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 22:50:38.24 ID:XPJbwliF0
おひる。

おんなのこはおなかがすいてしまいました。

おかあさんがつくってくれたごはんをたべます。

でんしレンジでチンします。

きのう、やりかたをおしえてもらいました。

ごはんとおかずをあたためます。

おんなのこがだいすきなとうもろこしとたこさんういんなーです。




177:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 22:53:39.28 ID:XPJbwliF0
先生「はい、よく読めました」

妹「はーい」

先生「じゃあ次、読んでもらいましょう」

女の子「はーい」

先生「続きから、どうぞ」

女の子「おんなのこはおとうさんのしょさいを──」




179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 23:00:22.06 ID:XPJbwliF0
男の子「──、ただいま。おとうさんとおかあさんが……?」

先生「帰って」

男の子「かえってきました」


キーンコーンカーンコーン


先生「はい、じゃあ今日はここまで」

男の子「やったー、授業おわったー」

妹「おわったー」

男の子「お前、すげーな。あんなスラスラ読めるなんて天才か?」

妹「えっ、そうかな」

男の子「そうそう。あーもー、俺なんて毎日宿題でひーひー言ってるんだぜ? かーちゃんに宿題できるまで晩飯くわせないとか言われてさ」

妹「あはは、大変だね」

男の子「ほんとだぜ」




180:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 23:06:40.28 ID:XPJbwliF0
妹「宿題、大変だよね」

男の子「漢字練習が一番つらいな、手がまっくろになる」

妹「綺麗に書かないとやりなおしだもんね」

男の子「せんせーきびしーもんな」

妹「あはは」

男の子「お前もう帰るの?」

妹「え、そうだけど」

男の子「ふーん、サッカーやらねぇ?」

妹「サッカー? いいけど」

男の子「お、サッカーできんの?」

妹「やった事無いけど、見たことはあるよ」

男の子「だったらよ! 前のアジアカップ見たか?! 日本優勝したよな〜! すげ〜よなぁ!」

妹「う? うん、そうだね。すごいね」

男の子「やっぱよ! サッカーだよな〜! あーもー授業全部サッカーだったらどんだけ楽しいことか!」




181:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 23:12:46.15 ID:XPJbwliF0
妹「サッカー、好きなんだね」

男の子「おう! ワールドカップが俺の夢だ」

妹「なにそれ?」

男の子「はぁ〜? ワールドカップもしらねぇでサッカーやってんのか?」

妹「えっと、サッカーはやってないけど……」

男の子「ああそうだっけ、まぁとにかくすげーでっかい大会でよ! それから──」

ガン!

男の子「いってぇ!」

女の子「教室で大きい声ださない」

男の子「るせー! 暴力女!」

女の子「なっ」

男の子「へへっ、どうだ、まいったか!」

女の子「まいるわけないでしょ、このサッカーバカ」

男の子「ああん?」




182:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 23:16:49.45 ID:XPJbwliF0
女の子「なによ、やるき?」

男の子「バカって言った方がバカなんだぜ」

女の子「ふ〜ん? でもあんたも今言ったわよね?」

男の子「う」

女の子「バカバカバカバカバカ、バ〜カ」

男の子「くっそ〜、口では勝てねぇ、ひとまず退散だっ」

妹「あ、ちょっと……行っちゃった。ランドセル置きっぱなしだけど……」

女の子「いいのいいの、そのうち戻ってくるから」

妹「いいの?」

女の子「うん」




183:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 23:19:05.68 ID:XPJbwliF0
妹「サッカー誘われちゃった」

女の子「あら、そうなの?」

妹「うん」

女の子「良かったじゃない、友達できて。バカだけど」

妹「それ聞いたら落ち込むよ?」

女の子「いいのよ、だってバカだから」

妹「そうなの?」

女の子「うんうん」

妹「そうなのかなぁ……」




184:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 23:22:24.85 ID:XPJbwliF0
女の子「あいつとは幼稚園が一緒だったのよ」

妹「へぇ」

女の子「よく三人で遊んでたわ」

妹「さんにん?」

女の子「もう一人は今アメリカに居るの」

妹「へぇ、アメリカかぁ」

女の子「うん」

妹「遠いね」

女の子「離れてても友達よ」

妹「そっかぁ……友達って凄いんだね」

女の子「ライバルだからね」

妹「ふぅん? ライバルって?」

女の子「ないしょ」

妹「えぇ〜」

女の子「くすくす、教えてあ〜げないっ」




185:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 23:25:16.87 ID:XPJbwliF0
妹「えぇえぇ、教えてよ〜」

女の子「いいよ」

妹「いいのっ?」

女の子「でもちょっと、話すの……その、ちょっと恥ずかしいから……また今度でいい?」

妹「いいよっ」

女の子「ありがと」

妹「うんっ」




186:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 23:32:15.58 ID:XPJbwliF0
女の子「じゃ、一緒に帰ろ?」

妹「うんっ」

女の子「お家どっち?」

妹「あっち」

女の子「一緒の方向だね」

妹「そうなの? 良かったぁ」

女の子「くすくす、嬉しそうね」

妹「だって誰かと一緒に帰るのって初めてだもん」

女の子「あらそう?」

妹「うんっ」

女の子「だいじょうぶ」

妹「?」

女の子「お母さん以外の人と帰るの、私も初めてだから」

妹「じゃあ初めて同士だね」

女の子「そうだね」




187:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 23:36:09.71 ID:XPJbwliF0
男の子「お? 二人とも帰るの?」

女の子「うん」

男の子「そんじゃ俺のスペシャルフリーキックみてけよ」

女の子「えー」

男の子「いいからいいから」

妹「何がスペシャルなの?」

男の子「それは見てのお楽しみだぜぃ」

妹「ふーん」

女の子「またどうせしょうもないモンでしょ」

男の子「ばか! 今日のはちげーよ、本田もびっくりの超旋風無回転だ」

妹「旋風なのに無回転……?」

女の子「だめ、深く考えたら負けよ……」




188:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 23:39:29.02 ID:XPJbwliF0
男の子「ごちゃごちゃうるせー、黙ってみてろぃ」

女の子「空振りしないでよー」

男の子「しねーよ」

妹「わくわく」

男の子「へへっ、いくぜ。見てろよコジロー!」

妹「コジロー?」

男の子「タイガー……シューーーーート!!!!!!!!」


ぽーん


妹「今タイガーシュートって言ったよね?」

女の子「ほらね? 旋風とかどっか行ったでしょ?」




192:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 00:04:37.96 ID:XPJbwliF0
女の子「たぶんタイガーショットの事だと思うけど」

妹「サッカーマンガか何か?」

女の子「うん」

妹「ふぅん、そうなんだ」

男の子「へへっ、どうだ見たかっ!」

女の子「あーはいはい、見た見たすごいわねー」

妹「すごいすごい」

男の子「次の試合が待ち遠しいぜ、MOMはいただきだな」

女の子「ゴールにボール入れてからいいなさいよ」

男の子「うげっ、バレた?」

女の子「バレるも何もあさっての方向とんでっただけじゃない」

男の子「まだ実験中なんだよ」




193:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 00:06:59.28 ID:XPJbwliF0
女の子「ふーん、実験中、ねぇ……」

男の子「な、なんだよ……」

女の子「実験中、ねぇ」

男の子「みてろよ! 次の試合じゃこれでハットトリックだからな! これが完成したら俺は世界にでる!」



妹「へー、それっていつ完成するの?」




194:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 00:13:33.90 ID:XPJbwliF0
男の子「……」

女の子「……」

男の子「……」

女の子「……」

妹「?」

男の子「う」

妹「う?」

男の子「うおおおおおおおーーーーーーーーー!!!!! 練習だあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

女の子「あー……火がついちゃった……」

妹「え? へ?」

女の子「いいのいいの、放っておいたらそのうち帰るでしょ」

妹「でもほら、すごい走ってるよ?」

女の子「バカだからね、人の3倍練習しないとダメなんだって」




195:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 00:23:15.97 ID:XPJbwliF0
女の子「さ、帰ろ帰ろ」

妹「いいのかなぁ」

女の子「いいのいいの」

妹「うん、じゃ、帰ろっか」

女の子「うんっ」

妹「えへへ」

女の子「じゃんけんしながら帰る?」

妹「なにそれ」

女の子「グーで勝ったらグリコで三歩あるけるの、パーだったらパイナップルで六歩、チョキだったらチョコレートで六歩ね」

妹「うんっ、いいよ」

女の子「じゃあいくよー、じゃーーーんけーーーーん」




196:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 00:33:03.75 ID:XPJbwliF0
────────
────
──


妹「ねーお父さん」

兄「なんだ娘よー、父は今三点倒立の最中だ」

妹「それって楽しい?」

兄「娘に話しかけられて超楽しい!」

妹「倒立関係ないんじゃ……」

兄「細かい事は気にするな、はっはっは!」




197:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 00:39:21.11 ID:XPJbwliF0
妹「じゃんけんってどうやったら強くなるのかな」

兄「なぜにじゃんけん?」

妹「今日友達とじゃんけんしながら帰ってきたの」

兄「ほほう?」

妹「勝ったら進めるの、知ってる?」

兄「知ってるぞー、お父さんもよくお母さんと一緒に戦ったものだ。あれは20年前の事だったか……」

妹「その話長くなる?」

兄「原稿用紙500枚くらいかな」

妹「じゃあパス」

兄「ひどい!」




198:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 00:42:38.71 ID:XPJbwliF0
兄「で、だ。じゃんけんがどうしたのだ?」

妹「うーん、あたし弱いのかな、全然進まなくて」

兄「グーでばかり勝っていたんじゃないか?」

妹「え、なんでわかるの?」

兄「くくく……簡単なトリックよ……まさに子供だましと言ってもいいだろう!」

姉「その子供だましにひっかかってたのはどこの誰ですか」

兄「ここの俺だチクショウ」




199:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 00:47:46.31 ID:XPJbwliF0
妹「どういう事なの、お母さん?」

姉「簡単よ、相手をグーで勝たせればいいの」

妹「? なんで、負けたら進めないんだよ?」

姉「この作戦のミソは勝つ事じゃないの、相手に’あいつにはグーで勝てる’と思わせる事が大切なのよ」

妹「グーで勝てる??」

姉「よーく考えてごらんなさい、グーで勝っても3歩しか進めないんでしょう?」

妹「うん」

姉「それに対してチョキとパーは6歩、倍の違いがあるのはわかるわね?」

妹「わかるよ」




200:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 00:49:29.49 ID:XPJbwliF0
姉「だったら私はチョキとパーしか出さないわ」

妹「……あ」

姉「わかったかしら?」

妹「うん!」

姉「うん、理解が早い。さすが私の子ね」

妹「私お母さんの子供でよかった!」

兄「俺の子でもあるんだぞー」

妹「ワタシオカアサンノコドモデヨカッタ」

兄「オレノコデモアルンダゾー」

ニャー

ニー




201:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 00:52:40.55 ID:XPJbwliF0
ニーニー

ニャー

妹「おなかすいたのー?」

ニー

妹「まっててね、ごはんとってくるから」

ニャー

妹「ぐ・り・こ、パ・イ・ナ・ッ・プ・ル、チ・ョ・コ・レ・イ・ト。ふふ、明日は負けないからねー」

ニー

妹「はい。キャットフードだよー、おたべー」

ニャー




203:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 01:07:06.51 ID:XPJbwliF0
兄「で、お母さん」

姉「はいはい」

兄「晩御飯は?」

姉「何だと思います?」

兄「この匂いは……、から揚げだ! そうだろう!」

姉「おぉ、当たりです」

兄「隠し味に生姜と大蒜を使っているな?」

姉「すごいですね、まるで動物の嗅覚です」

兄「くくく……伊達に一緒に過ごしとらんよ」

姉「なんだか悔しいのでお父さんのから揚げだけ失敗作を乗せておきますね」

兄「えぇっ?!」

姉「うふふ、冗談ですよ」

兄「あ、あぁ……よかった」

姉「あらあら」




204:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 01:23:13.59 ID:XPJbwliF0
妹「んー! おいしー!」

姉「そう言ってもらえると作った甲斐があるというものです」

妹「お母さんの料理だいすき!」

兄「俺もお母さんだいすき!」

妹「あたしの方が好きだもん!」

兄「舐めてもらっちゃこまる! こっちは年季がちげーんだよ!」

妹「むー!」

兄「はっはっは!」

姉「あはは、ありがとうございます二人とも……でも、お食事中はお静かに、ね?」ニコッ


兄・妹「は……はいっ、すみませんでしたっ」




205:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 01:31:02.17 ID:XPJbwliF0
妹「おはよっ」

女の子「おはよ〜」

妹「ねぇねぇ」

女の子「なあに?」

妹「今日も一緒に帰ろう?」

女の子「うんっ、いいよ」

妹「ふっふ〜ん、今日は負けないからね」

女の子「あら? 言ってくれるじゃない?」

妹「あたしに同じ手は二度通じないわよ」

女の子「なっ」

妹「ふっふーん?」

女の子「あなた……ただ者では無いと思ってはいたけれど、流石ね」

妹「あなたもなかなかのキレ者みたいね」

女の子「……」キラーン

妹「……」キラリーン




206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 01:42:44.56 ID:XPJbwliF0
女の子「私とあなた、ライバルになれるかもしれないわね」

妹「そうかもね」

男の子「おお? なんだなんだ、朝から女の戦いか?」

妹「おはよ〜」

男の子「はよ〜」

女の子「おはよ。何が戦いよ」

男の子「絶対に負けられない戦いだな」

女の子「またサッカーのフレーズからとってきたでしょ」

男の子「げ、バレた?」

女の子「バレバレなのよ」

男の子「ちえー、カッコイイ台詞だと思ったんだけどな」




207:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 01:44:04.68 ID:XPJbwliF0
男の子「どうでもいいけどお前ら喧嘩すんなよ〜」

妹「えぇっ、喧嘩なんてしてないよ?」

女の子「そうよ、どこをどうみたら喧嘩に見えるのよ」

男の子「へへっ」

女の子「ったく」


キーンコーンカーンコーン


先生「はーいじゃあ宿題提出してもらうからなー、前にもってこーい」

男の子「……あ、しまった」




208:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 01:46:23.91 ID:XPJbwliF0
妹「どうしたの?」

男の子「何か軽いと思ったらランドセル置きっぱなしだったんだ! やばい! どうしよう! なあ! 写させてくれ!」

妹「え? ぇえ?」

女の子「じごーじとくね、写させちゃダメよ? 一度ラクさせたらずっと頼まれるわよ?」

男の子「そ……そんなぁ……」


先生「どうしたー? 出さないのかー?」


男の子「ひー! ちょっとまって今やるから!」

先生「こらー、今宿題やってどうすんだー」

男の子「ご……ごめんなさーいぃ!!」

アハハハハハ




232:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 17:54:31.83 ID:XPJbwliF0
兄「ほんとのきもちが〜言えない夜〜」

姉「どうしたんですか?」

兄「今俺は奇跡をみた」

姉「?」

兄「なんでもないところで、だ」

姉「はい?」




233:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 17:55:17.36 ID:XPJbwliF0
兄「遠足の下見に行こう」

姉「今何と?」

兄「だから、遠足の下見に行こうと言っているのだ」

姉「なぜ?」

兄「そこに山があるからさ」


兄・姉「口笛はなぜ〜遠くまで聞こえる〜の♪」


姉「どこのアルピニストですか」




234:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 17:56:07.63 ID:XPJbwliF0
兄「いや、だってほら。電車とかで行くんだろ? なんとなく不安じゃないか、どんな危険が待ち受けているやもしれん」

姉「私達が行くわけじゃないんですから。いいんですよそういう事は先生方にお任せしておけば」

兄「俺だって伊達に先生と呼ばれておらん」

姉「たしかに」

兄「一理あるだろ?」

姉「なるほど、盲点でした」

兄「はっはっは、今更気づくとはお主、まだまだ鍛錬が甘いようだの!」

姉「精進致します」

兄「うむ」

姉「して、何の目的で下見など?」

兄「出番が欲しい」ボソ

姉「は?」

兄「遠足の下見だと申しておろう」

姉「ああそうでしたね、下見でしたね」




235:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 17:56:57.72 ID:XPJbwliF0
兄「したみでしたね、ふむ。韻を踏んできたな」

姉「どこのヒップホッパーですか」

兄「最近結婚したらしい」

姉「あらあら、おめでとうございます」

兄「そんな事はどうでもいい、でだ」

姉「はい?」

兄「例えば電車の中を想定するとしよう」

姉「電車の中ですね」

兄「もちろん迷惑をかけずに静かにするのが大人のマナーだ、携帯電話はマナーモードにするのが当たり前だし、電車の中で飲食はもっての他、大きな声で喋るのもよろしくない」

姉「他人への気遣いですね」

兄「そうだな気配り心配りだ、簡単な様でいて難しいものだよ」

姉「深いですね」

兄「そう。よく小学生の集団が電車の中ではしゃいでいるのを目撃するが……たしかに! 日常とは違う遠足で気持ちが高揚しているのも理解できんことはない! しかし、そういう場面でこそ人間の本質というものが露骨に現れるのではなかろうか」

姉「また大袈裟な」




236:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 17:58:15.63 ID:XPJbwliF0
兄「私は思うのだよ」

姉「何をですか?」

兄「つまり、俺も一緒に遠足に行きたいと」

姉「阿呆ですか」

兄「ガーン」




237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 18:03:42.58 ID:XPJbwliF0
兄「く……お母さんよ、校長先生がよく言うだろう?」

姉「はい?」

兄「遠足は! 家に! 帰るまでが! 遠足だと!」

姉「あぁ、はい。そうですね」

兄「という事は、一体いつからが遠足だというのか、遠足の始まりとは一体どこなのか?」

姉「生命の起源はどこ? みたいな顔で語りださないでください」

兄「前日にドキドキして眠れないところから遠足が始まるのか、それとも家を一歩でも出た瞬間から始まるのか、それとも先生方が職員会議で’今年はどこに行きますか?’と話し合いをしている時から始まっているのか!」

姉「またそんなどうでもいい事を……」

兄「俺はいつでも真剣である」

姉「真剣なのはわかってます」

兄「そうかそうか、はっはっは」




240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 18:11:54.39 ID:XPJbwliF0
兄「予算がこれくらいだから近場でいいのではないか」

兄「いやしかしそこは去年も行った場所ですから」

兄「しかし都道府県からはなるべく公共の施設を使用するように言われている……」

兄「悩む現場の教師、限りある予算、音もなく忍び寄る期日、回らない稟議書、押されない判子。ああ大変だ」


姉「何の心配してるんですか」


兄「いや小学校の先生って大変だなーって思ってさ」

姉「たしかに」

兄「国語・算数・理科・社会・保健体育に技術家庭、道徳の授業に授業参観とか家庭訪問、遠足修学旅行運動会や文化祭の準備、……クビがまわんねえよ。そういう意味では大学の方が1000倍マシだと思う」

姉「ある意味好きな事だけやってればいいんですもんね」

兄「ですなー、学生も好きだし。若いヤツはいいね、勢いがあるからなー」

姉「ふふ、少し先生の顔になってますよ?」

兄「あらやだ本当? ってか普段から先生だよ? それじゃあ普段はどういう風にうつってるの?」

姉「あらあら、うふふ」




241:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 18:14:28.88 ID:XPJbwliF0
兄「しかし最近の大学はいかんな」

姉「はい?」

兄「いつから大学は就職予備校になったのだ、どいつもこいつも就活就活就活就活……ゼミに出てこーーーーーーーーーい!!!!」

姉「ヒサンですね」

兄「もう! 卒論手伝ってあげないんだから、ぷんぷん」

姉「娘の真似しても可愛くないですよ」

兄「えへ」




242:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 18:18:01.72 ID:XPJbwliF0
兄「で、何の話だっけ」

姉「遠足では?」

兄「ああそうそう遠足だった、ところでだ」

姉「はい?」

兄「例えばこんな場面を思い浮かべてほしい」

姉「何でしょうか?」

兄「例えば電車の中、ハイヒールを履いた女性に思いっきり足を踏まれたらどうするべきか。非常に悩ましい、痛みをグっと堪えて何もないフリをするのか、それとも痛い! と女々しくも声を上げるのか……それとも第三の選択肢か」

姉「お父さんでしたら紳士的に’大丈夫ですか、お嬢さん?’とかですか」

兄「グーーーーッド、79点を与えよう」




243:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 18:19:23.42 ID:XPJbwliF0
姉「む、優評価ではないのですね」

兄「先ほどの会話の流れにヒントが隠されているのだよ」

姉「さっきの?」

兄「うむ」

姉「はて?」

兄「さて?」

姉「こて」

兄「めん」


兄・姉「どーーーう!!」

兄・妹「一本!!!」


兄「うむ、なかなかのキレであった」

妹「そちらも結構なお手並みで」




244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 18:21:16.76 ID:XPJbwliF0
兄「して、答えは見つかり申したか?」

姉「ええもちろん」

兄「うむ、聞こうではないか」

姉「女性に足を踏まれたら」

兄「うむ」

姉「韻を踏み返す、ですね」

兄「か……カンペキだっ! さすが母は違うな」




245:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 18:24:38.69 ID:XPJbwliF0
兄「ところで遠足って小雨でもやるんだろうか?」

姉「今日は晴れですよ?」

兄「来週の予報は雨だったからな」

姉「なるほど」

兄「小雨なら雨天決行だろうが……。ふむ、照る照る坊主でも作るか」

姉「いいですね」




246:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 18:25:35.93 ID:XPJbwliF0
兄「ところで」

姉「はい?」

兄「千羽鶴をご存知か?」

姉「もちろんですよ」

兄「病気の快復を祈願したり、勝利を祈願したり。色々な願いを込める様だな」

姉「野球部に頼まれてたくさん作りましたね」

兄「徹夜で100羽以上も折ったのはさすがに骨が折れたな」

姉「それで、千羽鶴がどうかしたんですか?」

兄「ふむ、照る照る坊主もやはりひとつだけでは効果が薄かろうと思うのだが」

姉「なるほど」

兄「一理あるだろ?」

姉「科学的根拠は一切ありませんけれど、なんとなく多いほうが良さそうな気がしますね」




247:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 18:26:26.90 ID:XPJbwliF0
兄「うむ、そこで俺は照る照る坊主1000体の製作に移ろうと思うのだが、協力してくれるか?」

姉「もちろんですよ」

兄「はっはっは、では早速ティッシュペーパーを買いに行こうではないか」

姉「夕飯のお買い物もしようと思っていたので丁度良いですね」

兄「うむ、まさに一石二鳥だな」

姉「ですね」

兄「では行こうかお母さん」

姉「行きましょうお父さん」




248:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 18:28:18.31 ID:XPJbwliF0
ブロロロロロロロロロ……


兄「ところで何箱分くらい買えばいいんだろうか?」

姉「そうですね、1箱200枚と仮定して。4枚で1体製作するとすれば20箱程買えばいいかと。それから輪ゴムですね、顔を書くとしたらマジックがあればなお良いかと」

兄「さすがお母さん、頭の回転がはやいな」

姉「ふふ、褒めても何も出ませんよ?」

兄「口が回るようになってくれればそれでいいさ、会話こそ我らの至高の楽しみだからな」


兄・姉「う〜んめいの〜、ルーレット〜、まわして〜♪」


兄「ついでに曲がり角でハンドルまわして〜」

姉「洗濯機もくるくるまわって」

兄「目も回る」

姉「運転中に辞めてください」

兄「ジョークジョーク」




253:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 19:03:08.91 ID:XPJbwliF0
────────
────
──

兄「ふむ、まさか大安売りだったとは」

姉「たくさん買いましたね」

兄「うむ、だがしかしこれで素材は揃ったな」

姉「そうですね」

兄「早速帰って作ろうではないか」

姉「私は夕飯の用意がありますので」

兄「うむ、先だって100体程作っておくさ。なに、折鶴に比べたら製作はさほど難しいものではないからな」

姉「気合入ってますね……、ところで何故照る照る坊主を作ろうと思ったので?」

兄「さて、何故だったか?」

姉「ううん……、謎ですね」

兄「まぁいい、そのうち思い出すだろう」

姉「そうですね」




254:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 19:05:36.59 ID:XPJbwliF0
妹「ただいまー!」

ニー

妹「にーちゃんただいま」

ニャー

妹「にゃーちゃんもー」

ニー

ニャーニャー

妹「あれ? お父さんどこ行ったの?」

ニー?

妹「居間かな?」

ニャー

妹「そっか、ありがと」




256:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 19:09:33.36 ID:XPJbwliF0
妹「うわ! なにこれ! どうしたのこんなにいっぱい照る照る坊主作っちゃって。ちょっとした山みたいになってる……」

ニャー

兄「ふははははー! どうだ娘よー、すごいだろー、ホワイトスノーテルテルマウンテンだ」

ニー

はむはむ

兄「こらお前ら、それは食いモンじゃねえぇぇー!!!」

ニャアァァ

兄「ふーーーーーー!!!!」

妹「威嚇しない」

兄「はい」




257:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 19:13:15.66 ID:XPJbwliF0
妹「で、なにこれ」

兄「照る照る坊主」

妹「みたらわかるよ!」

兄「たしかに」

妹「なんで照る照る坊主?」

兄「それは」

妹「それは?」

兄「うーん、なぜだったか……」

妹「なんでやねん」

すぱーん

兄「ナイスツッコミだ、しかし角度が甘いな、音を鳴らせつつも相手に痛みを感じさせないのが最高の合いの手と言えよう……ぐはっ」

ばたん

妹「あ……ちょっと強く叩きすぎちゃった」




258:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 19:15:35.50 ID:XPJbwliF0
姉「あらおかえり、遠足はどうだった?」

妹「うん、楽しかったよ! シカがいっぱいいた、シカシカ」

姉「煎餅食べさせてあげた?」

妹「うん! いっぱい寄ってきて大変だった」

姉「あらあら後でどんなだったか聞かせてね」

妹「うんっ」

姉「それじゃ晩御飯できてるから、二人とも手を洗ってきなさい」


兄・妹「はーい!」




259:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 19:18:09.43 ID:XPJbwliF0
兄「今夜は何かなー」

妹「この匂い……カレーでござるな」

兄「なぬ、カレーですと?」

妹「シーフード味でおじゃる」

兄「くんくん……たしかにっ」

妹「わーい、海老はいってるかなー?」

兄「インテルはいってるかなー?」



兄・姉・妹「いただきますっ」




260:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 19:20:15.80 ID:XPJbwliF0
兄「ん〜、おいしいなぁ」

妹「おいしー」

姉「シカはどうだった?」

妹「シカっぽかった」

兄「なんだシカって」

妹「遠足だよ」

兄「おお、そうかそうか。シカといえば鹿煎餅だな、あいつら人間が食べさせてくれると思ってるからすかさず寄ってくるからな」

妹「あとね、大仏さんも大きかった」

兄「そりゃそうだろ、大仏さんだからな」

妹「なんかね、こう。手がこんなだった」

兄「こうだっけ?」

妹「それお金のマーク」

兄「なはは、ジョークジョーク」




261:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 19:24:01.41 ID:XPJbwliF0
妹「ところでさ」

兄「うん?」

妹「あの照る照る坊主、結局何なの?」

兄「それはお前に遠足の日にだな、雨が降らない様に願いを込めて作ってたんだ、千羽鶴ならぬ千テルテルだ。あと800体くらいだな」

妹「そっかー、ありがとね」

兄「うむ」

妹「でね、お寺がいっぱいあってね」

姉「うんうん」

兄「ほう?」

妹「れきしてきなところだったよ」

兄「はっはっは、すごい感想だなー、歴史的か」

姉「また皆で行きましょうね」

兄「そうだなー」

妹「うんっ」




262:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 19:27:09.07 ID:XPJbwliF0
兄「ふー、ごちそうさま」

姉「お粗末様でした」

兄「さーて、続き作るか」

妹「あたしも手伝うよー」

兄「ほーそうかそうか、どっちが多く作れるか競争だな」

妹「負けないもんっ」

兄「はっはっは、だがこれは一つ一つに願いを込めて作るんだぞ?」

妹「おねがい?」

兄「そうだ、遠足の日に晴れますようにってな」

妹「今日晴れだったよ?」

兄「そっか、いい遠足日和だったんだな」

妹「うん」




264:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 20:00:50.46 ID:XPJbwliF0
妹「うん、そうだよ」

兄「じゃあ俺もこのてるてる坊主に……」

妹「?」

兄「テルテル坊主に……」

妹「どうしたの?」

兄「ちょっとまて娘よ、いまなんていった?」

妹「え? 負けないよーって」

兄「そのあと」

妹「お願い?」

兄「もうちょっと後だ、いや、俺の台詞だったか?」

妹「とっても晴れて、いい遠足日和だったよーって?」

兄「ああそうそう。それそれ」




265:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 20:04:18.98 ID:XPJbwliF0
妹「うん」

兄「いい遠足日和?」

妹「うん?」


兄「な……な……」

兄「なんだってえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッ!!!!!!!!?????????」




267:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 20:07:20.23 ID:XPJbwliF0
姉「あら? どうしたの?」

兄「お母さん! 遠足って今日だったんじゃないか!」

姉「そうですよ?」

兄「いや、当たり前でしょ? みたいな感じで顔を傾げられてもだな!」

姉「だから作る前に聞いたじゃないですか、今日は晴れですよ? って」

兄「わかるかそんなもんで!」

姉「やだもう、忘れっぽいんですから」

兄「うぅ……何故に今日ももうすぐ終わるというのに今日のためのてるてる坊主を作っていたとは……なんたる不覚ッ」

妹「で、でもほら。今日晴れたし、ね?」

兄「うぅ……慰めてくれるか娘よ」

妹「ほら、元気だして?」

兄「うわああああーーーーん、お前の胸の中で泣くぞーーーー!!」

妹「きゃあああああああああああああ!!!!!」

ばしーん!

兄「いいツッコミだ……、ぐは」




268:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 20:08:56.29 ID:XPJbwliF0
────────
────
──


先生「はーい、じゃあみんなー。遠足の感想文をもってきてくれー」


男の子「お前何て書いたの?」

妹「ないしょ」

男の子「えー、いいじゃん見せろよー俺のも見せてやるからさっ」

女の子「あんたの字、暗号みたいで読めないのよ」

男の子「なんだとーぅ」

女の子「ほら、さっさと持っていきなさいよ。また先生に怒られるわよ?」

男の子「ひっ、それはまじ勘弁! 超特急で出してくるぜ!」

妹「じゃ、あたしもだしてこよーっと」




269:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 20:09:51.24 ID:XPJbwliF0
○月×日

今日はえん足にいきました。

しかと大ぶつとおてらがれきしてきでした。

そのあと広ばでともだちといっぱいあそびました。

いえにかえるとおとうさんが

てるてるぼうずをたくさん作っていました

えん足の日をらいしゅうとかんちがいしていたみたいです

お父さんは

「はっはっは。でもはれてよかったじゃないかー、はっはっは」

わらっていました。

お母さんもわらっていました。

あたしもわらいました。

あたしはそんなお父さんが大すきです!




274:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 22:02:28.04 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ◇ ◇


ニー?

ニャァ

ニー

ニャー?

ニーニー

ニャー


おや?

二匹の猫が何やら相談をしているようです。




275:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 22:05:13.45 ID:XPJbwliF0
ニャー

ニーニーニー

ニャ?

ニー?

ニャーン

ニー

猫の言葉はわかりませんが、

何やら二人……二匹の間で意見がまとまったようです。




276:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 22:07:40.35 ID:XPJbwliF0
ニー

ニャ

ニー

カリカリカリカリ

カリカリ

どうやらドアを開けて外に出たい様子。

しかし大きくて硬い金属製のドアは開きません。




277:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 22:08:31.58 ID:XPJbwliF0
ニー……

ニャー……

残念ながらご主人様は学校。

母上様はお買い物。

しもべのオスは仕事にでかけています。

二匹は半ば諦めようとしていましたが、

ニー!

ニャ?

片方がある事を思い出したようです




278:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 22:12:10.27 ID:XPJbwliF0
ニー
※そういえばおれっち抜け道を知ってるにー

ニャー
※何? 抜け道がある? それは本当かにゃー? 

ニー
※本当だにー、おれっちはそこから入ってきたにー

ニヤー
※私は玄関から堂々と入ってきたのだがにゃー……。ったく、この家のせきゅりてぃはどうなってるんだにゃー

ニー
※なーに、心配する事はない。今はおれっちたちが番人だにー。ご主人様に拾ってもらったご恩は忘れないにー

ニャー
※猫の忠義だにゃー。それにゃー、その抜け道とやらに案内するにゃー

ニー
※がってん承知だにー


こんな会話が繰り広げられているのでしょうか。

アフレコを勝手につけてしまいました。




279:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 22:13:21.36 ID:XPJbwliF0
ニー

小さい方の猫が視線を上げるように促すと

小窓が空いていました。

料理をするときにあけておく小さな窓ですが、子猫が通るには十分な大きさです。

ニー

ニャーニャー

ひょい。

軽く飛ぶと窓のフチに着地する事ができました。

澄んだ空気が伝わってきます。

一回り大きい方の猫は

ニャー

上がってこいよと小さい猫を促します。




280:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 22:16:13.46 ID:XPJbwliF0
よっと。

二人は窓から出ると、

軽い体躯を生かしてぴょんぴょんと塀から塀へと伝っていきます。

やがて目当ての道にたどり着いたのか二匹は塀から道路に降りました。

一体何をするのでしょうか?

ニーニー

ニャー

二匹はなんだか楽しそうです。




281:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 22:19:01.61 ID:XPJbwliF0
じゃれるようにしながら道沿いを歩いていきますが。

ブロロロロロロロロロロロ

あぶない!

二匹の隣を大きな音をたててトラックが通り過ぎていきました。

びっくりしてその場から飛び跳ねるように塀の上へと逃げ込みました。

外の世界は危険がいっぱいです。




283:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 23:25:04.09 ID:XPJbwliF0
〜♪

〜〜♪

ニー?

ニャー?


何やら心地の良い音楽が聞こえてきます。

近所に住んでいる音大生がピアノを演奏しているようです。

二匹はその音を聞いているとなんだがダンスを踊ってみたくなりました。


ニーニー♪

ニャンニャン♪


くるくる。

くるくる。

二匹はメロディーに合わせるようにして舞います。




284:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/15(火) 23:29:54.88 ID:XPJbwliF0
空がオレンジ色になった頃、気がつけば演奏も止んでしまいました。

二匹はすっかり疲れてしまって、へとへとです。

お腹もすいてきました。

ニー

そろそろ帰ろうか。

ニャー

二匹はもと来た道を引き返していきます。

野良の時と違って二匹にはあります、帰る家が。

おうちへかえろう。

おうちへかえりましょう。

おかえりを言ってくれる人の待つお家に。




294:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 03:12:24.07 ID:XPJbwliF0
◇ ◇    ◇

ああこりゃ夢だ、俺は今夢をみている。

夢だってわかってるから夢だ。

なんで夢ってわかるかって?

そりゃあんた、何度も見てるからいやでもわかるのさ。

え?

どんな夢か教えろって?

……やだよ恥ずかしい。

それに「今朝見た夢の内容」そんな話しちまったらシラけて学生帰るっての。

え?

授業よりそっちの方が面白いから夢の話をしろって?

バカいっちゃいけねえよ。




295:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 03:13:21.07 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ◆  ◇

私は夢を見ている。

夢だと認識できるから夢だ。

なぜ夢をみているかわかるのだと?

そんなの簡単だ、何度も見ているからだ。

は?

どんな夢か内容を教えろ?

……察しろ。

それとも「今日の朝こんな夢みちゃったんだけどさー」と女子高生よろしく話し始める私だと思うか?

は?

意外性があるからやってみろって?

阿呆が。




296:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 03:14:33.84 ID:XPJbwliF0
◇ ◇  ◇ ◇

あたしは夢を見ている。

おとうさんとおかあさんの夢だ。

シカと大仏が居る。

お寺の中でお父さんが三点倒立をしていて

お母さんがお茶を汲んできた。

シカ煎餅を三人で食べながら

ニーとニャーがニーニーニャニャー鳴いてる。

その横でお父さんが大仏のポーズをとってる。

でも両手がお金のマークになってる。

間違ってるよとあたしはお父さんの頭をスパコーンと叩く。

すると、とってもいい音がして目が覚めた。




297:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 03:16:06.47 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ぁ  ◇

おれっちは猫である。

名前はニー、ちなみにオスである。

ニーって名前はご主人さまにつけてもらった。

ところでおれっちは最近一緒に暮らしてるニャーってヤツが好きだ。

この前は張り切ってデートに誘ってみた。

自慢のデートコースはあの忌々しいトラックのせいで中断せざるをえなかったけど

偶然迷い込んだ庭でナイスな音楽が聞こえてきたからニャーと一緒にダンスを踊った。

おれっち求愛、あいつの寵愛、愛を頂戴、ちょーだいすき、ちょーだいすき。

ラップ調にしてみたぜ。

え? すべってるって?

いいんだよ猫だから。




298:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 03:17:27.43 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ァ  ◇

我輩は猫である。

名前はニャー、三毛のメスである。

ニャーという名前はご主人様から頂いたものだ。

ご主人様は小学生らしい。毎日規則正しい時間に起きて食事を取り、学校に出かける。

母上様は朝から掃除に選択に大忙し。

ちなみに私は掃除機が大嫌い、この間はシッポをふんづけられた。

掃除機、てき。威嚇するけど効かない、あいつの音はやばい。

けれど一番やばいのは、それをいとも簡単に操る母上様かもしれない。

ご主人様以上に母上様には絶対逆らってはいけない。

それから、あと一人、人間のオスがこの家では暮らしている。

あいつはニーより下だな。

おっと、そろそろ朝ごはんか。

ご主人様の元へと向かわねば。




299:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 03:18:37.50 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ Α  ◇

私、女の子。

隣の幼稚園を卒園して小学校に入学したの。

新しく友達ができるか不安だったけど、入学式で隣になった面白そうな子とすぐに仲良くなっちゃった。

でね……、小学校もあいつと一緒のクラスになったの。

嬉しい反面、すこし悔しい。

あいつはサッカーとあの子の事しか考えてないから、

私の入るスキなんてない。

はぁ……好きなのになぁ。

あいつの前だと、なんか、素直になれないのよねぇ……。

考えると落ち込みそうだからやめとこう。




300:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 03:23:20.37 ID:XPJbwliF0
そうだ。

あの子の事を少しだけ紹介するね。

幼稚園で私と一番仲がよかった女の子なの。

とうもろこしが好きで、太陽みたいに笑ってて、いつも一緒だった。

くだらない事で揉めちゃった事もあったけど、

私達はライバルという名の親友だ。

けど、卒園の少し前にアメリカに行っちゃった。

本当のお父さんとお母さんの下で暮らすためらしい。

今も月に一度は手紙が届く、

元気そうにしている彼女を見ているとこっちまで元気になっちゃうから不思議ね。

アメリカと日本。

いつかまた会える日がくるのかしら。

う〜〜〜……、負けないんだからねっ。




301:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 03:25:34.10 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ А  ◇

俺、男の子。

勉強はあんまり好きじゃない。

かーちゃんも先生も宿題宿題ってうるさいからいやになっちゃう。

でもサッカー大好き。

長友すげー、インテルはいっちゃった。

本田すげー、アジアカップMVP。

岡崎すげー、ハットトリック。

長谷部すげー、日本代表のキャプテン。

川島すげー、守護神。

森脇すげー、日本のムードメーカー。

遠藤すげー、試合の支配者。

内田すげー、日本の翼。

今野すげー、身長なんか関係なくディフェンス。

吉田すげー、ぶいぶいぶいふぇんろー。




302:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 03:26:53.79 ID:XPJbwliF0
いつか日本代表になって俺も世界の舞台で戦いたい。

ワールドカップに出たい。

そしたら、あいつを呼ぶって約束したから。

でも目下サッカーチームでレギュラー争いの真っ最中。

同じ年にめちゃくちゃうまいやつが居て、そいつと同じポジションなの俺。

一回も勝てた事がない。

どんなフェイントをしても抜けないし、どんなシュートを打っても俺よりすごいのがわかる。

悔しいけど、負けそう。

でも負けない。

こんなとこで負けてられないから。

よっしゃー! 太陽も昇ったしランニングしてくるかー!




324:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 19:08:36.70 ID:XPJbwliF0
それぞれがそれぞれ

今日も、

新しい朝を迎える。




325:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 19:11:51.56 ID:XPJbwliF0
トントン

トントン

グツグツ

兄「ふあぁ……おはよ」

姉「おはようございます」

妹「おはよー」

兄「おぉ……今日も可愛いなぁ娘よ、ほっぺすりすりさせてくれー」

妹「ヒゲ痛いから嫌」

兄「ガーン!」

姉「二人とも、朝ごはんできてますよ」

兄・妹「はーい」

妹「お父さん。はい、新聞とってきた」

兄「お? ありがとう」

妹「えへへ、どういたしまして」




326:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 19:18:06.62 ID:XPJbwliF0
兄「ふむ……」

姉「難しい顔してどうしたんですか?」

兄「いや、前期の考査だがな、どんな問題を出そうかと思って」

姉「どんな問題にするんです?」

兄「考えるのめんどくせーんだよな、教務課から早く出せってチクチク言われてる」

妹「だめだよちゃんと提出しないと」

兄「はは、わかってるよ。ところで娘よ、学校の時間はいいのか?」

妹「えーっとね、今日はそーりつ記念日なんだって」

兄「おお、という事は休みか」

妹「うんっ」




327:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 19:20:43.71 ID:XPJbwliF0
兄「いいなー、創立記念日」

妹「大学には無いの?」

兄「今年は日曜日と被ってたからな、有難味がゼロだ」

妹「ふーん、そうなんだ」

兄「ごちそうさま」

姉「コーヒー飲みますか?」

兄「いや、今日はちょっと早く出たいからいいよ、ありがとう」




328:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 19:21:44.43 ID:XPJbwliF0
兄「そんじゃーいってきまーす」

姉「いってらっしゃい」

妹「いってらっしゃーい」

ニャー

ニー




329:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 19:28:05.58 ID:XPJbwliF0
────────
────
──

姉「それじゃあお母さんはお掃除するけれど、あなたはどうする?」

妹「宿題、たくさん出ちゃったから。先に片付ける」

姉「あら大変ね」

妹「がくせーのほんぎょーはべんきょーなんだって」

姉「あら、難しい言葉を知ってるわね」

妹「お父さんが言ってた」

姉「一つ賢くなったわね」

なでなで

妹「うんっ」




330:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 19:34:33.68 ID:XPJbwliF0
姉「このままどんどん賢くなって、あなたは将来何になるのかしらね」

妹「しょーらい?」

姉「そうよ、大人になったら何がやりたい?」

妹「うーん」

姉「?」

妹「友達はお花屋さんとか、ようちえんの先生とか言ってるけど、まだよくわかんない」

姉「そう、まだちょっと難しかったかな」

妹「でもね、お母さん」

姉「うん?」

妹「あたし、お母さんみたいなお母さんになりたいっ」




331:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 19:38:05.41 ID:XPJbwliF0
姉「ふふ、ありがとね。嘘でも嬉しいよ?」

妹「嘘じゃないもん!」

姉「それじゃあお父さんは?」

妹「お父さんみたいな人と結婚するもん、お父さん’みたいな’人だからお父さんじゃないもん」

姉「あらあら」

妹「ふ、ふ〜んだ」

姉「お父さんが聞いたらショックで倒れちゃうかもね」

妹「だっていっつもだらしないし、ぼーっとしてるし」

姉「たしかに」

妹「でしょ?」

姉「でも良い所もあるのよ?」

妹「……うん、わかってるもん」

姉「ふふ、オンナゴコロは複雑ね?」




332:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 19:43:23.44 ID:XPJbwliF0
姉「それじゃあ、さらっと掃除やっちゃいましょうか」

妹「じゃああたしは宿題」

姉「……あら?」

妹「どうしたのお母さん」

姉「あらやだ、お父さんお弁当持っていくの忘れちゃったみたい」

妹「えぇっ」

姉「どうしましょう……、やだわ……ひょっとしたらお父さんお腹を空かせて飢え死にしちゃうかも」

妹「お父さんしんじゃうのっ?!」




333:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 19:44:25.01 ID:XPJbwliF0
姉「ええ、お父さん空腹には人の3倍弱いのよ。ああ今頃どこかで倒れていないといいけれど……私は家事があるから家を空ける事ができないし……、ああ一体どうすれば……」

妹「あたし! 届けてくる!」

姉「だめよ、外の世界は危険がいっぱいなんだから。あなた一人では危険すぎるわ」

妹「でも……行かないと、お弁当がないとお父さんが……」

姉「……そうね、お父さんが大変だわ」

妹「だったらあたし! 行く! お父さん助けるもん!」

姉「そう……それじゃあお願いできる?」

妹「うんっ!」




334:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 20:01:20.35 ID:XPJbwliF0
姉「それじゃあ大学までの道のりを書いたメモを渡すわね」

妹「遠いの?」

姉「近いわ、徒歩とバスで30分もあれば到着できると思う。迷う事はないと思うけれど、もし道がわからなかったらおまわりさんに聞きなさい。わかった?」

妹「ええっと……バス停まで歩いて……それからバスに乗って……終点で降りて……それから……」

姉「そう、バスを降りたら大学の正門に出るからね? お父さんはこの時間だと研究室に居ると思うから、場所はここに書いてあるから」

妹「うんっ!」

姉「大丈夫かしら」

妹「大丈夫! あたしお父さん助けてくる!」

姉「あらあら、頼もしいわね」

妹「……待っててね、お父さん……」




335:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 20:07:57.56 ID:XPJbwliF0
妹「それじゃあいってきます!」

姉「いってらっしゃい、お願いね?」

妹「うんっ」

ニー

ニャー




338:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 21:02:58.22 ID:XPJbwliF0
……………………
…………
……


てくてく

てくてく

てくてく

てくてく


奥様A「あら? お向かいの娘さんじゃない?」

奥様B「本当。一人でどうしたのかしら?」




339:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 21:04:50.05 ID:XPJbwliF0
妹「おはよーございますっ」

奥様A「まぁまぁ、礼儀正しいわね、おはようございます」

奥様B「おはよう」

奥様A「一人でどうしたの? お父さんとお母さんは?」

妹「えっとね、お父さんのお弁当を届けにいくの」

奥様B「まぁまぁ、えらいわね」

妹「じゃないとお父さん……しんじゃうから……」

奥様A「?」

妹「う、ううん。なんでもないよっ」




340:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 21:07:15.04 ID:XPJbwliF0
奥様B「偉いわねぇ、うちの子も見習って欲しいわ本当」

奥様A「ホントねー、うちの子もだわ」

奥様B「それから、ちょっと聞きました? 最近不審者がこの辺りでうろついてるらしいんですよ」

奥様A「あらやだ、襲われちゃったらどうしよう!」

奥様B「襲ってもらえたらまだまだ若いってことかしら?」

奥様A「ちょっとやだ、子供の前ですよ?」

奥様B「冗談ですよ冗談、あはは」

妹「そ、それじゃあ。あたしはこれで」

奥様B「あら、引き止めちゃってごめんなさいね」

奥様A「お父さんにちゃんと会えるといいわね」

妹「うんっ」




341:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 21:13:31.91 ID:XPJbwliF0
……………………
…………
……


てくてく

てくてく

てくてく

てくてく


妹「あ」

男の子「あれ? お前こんなとこで何やってんの?」




342:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 21:16:49.05 ID:XPJbwliF0
妹「そっちこそ」

男の子「俺はランニング!」

妹「ランニング?」

男の子「そ、鍛えてんの」

妹「あ、サッカーだっけ」

男の子「そうそう、来週試合でさ」

妹「へー、がんばってね」

男の子「おう! あっちの河原でいつもやってるからお前も見に来るか?」

妹「いいの?」

男の子「いいよいいよ、見てくれる人がいたほうが楽しいし」

妹「うんっ」




343:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 21:20:24.87 ID:XPJbwliF0
妹「サッカー楽しい?」

男の子「おうよ!」

妹「ふーん」

男の子「プロのサッカー選手になるんだ」

妹「将来のゆめ?」

男の子「夢? 違うな、目標かな」

妹「それってどう違うの?」

男の子「う〜ん? なんか誰かが言ってたけど、夢は不可能っぽいんだけど、目標はゲンジツテキっていうか……、なんかそんな感じ?」

妹「よくわかんない」

男の子「俺もわからん!」

妹「そんなとこで威張らないでよ」

男の子「へへっ。で、お前は何してたんだ?」

妹「お父さんにお弁当を届けにいく途中なの」

男の子「弁当?」




344:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 21:23:12.11 ID:XPJbwliF0
妹「うん、お父さん持っていくの忘れちゃったみたいで。だから届けるの」

男の子「へー! お前偉いなぁ!」

妹「じゃないとお父さん……しんじゃうから……」

男の子「?」

妹「な、なんでもないなんでもない」

男の子「そうかー? 車に気をつけるんだぞー?」

妹「そっちこそ」

男の子「おう! んじゃ俺いくからまた明日な」

妹「うん、また明日。学校でね」

男の子「ばいばーい」

妹「ばいばい」




345:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 21:25:13.01 ID:XPJbwliF0
……………………
…………
……

てくてく

てくてく

てくてく

てくてく


女の子「あら?」

妹「あ、おはよ」

女の子「おはよう。バス停で会うなんて、きぐうね」

妹「あはは、そうだね」




346:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 21:27:36.34 ID:XPJbwliF0
女の子「あなたはどこにいくの?」

妹「お父さんにお弁当を届けに」

女の子「あら、それじゃあもしかして○×大学に?」

妹「うん、そうだよ」

女の子「私とは反対方向ね、それならあっちのバス停よ?」

妹「え? そうなの?」

女の子「そうよ、危なかったわね。くすくす」

妹「う、うん。ありがと」




347:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 21:30:06.30 ID:XPJbwliF0
女の子「でも、さっきバス出ちゃったから、あと15分はこないわね」

妹「そうなんだ」

女の子「そうね……どうしたのキョロキョロして」

妹「う〜ん、一人でこんなところまで来たの初めてだから。わくわく」

女の子「ただのバス停よ、珍しい事なんてないわよ」

妹「ふぅん? なれてるの?」

女の子「まぁね」

妹「おとなだなぁ」

女の子「大人?」

妹「うん」

女の子「ふ〜ん」




350:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 22:26:45.00 ID:XPJbwliF0
妹「あのさ」

女の子「何かしら?」

妹「どこいくの?」

女の子「市内のしょてん」

妹「書店?」

女の子「うん、楽譜を買いに。お母さんに頼まれてね」

妹「へー、おつかい?」

女の子「そうね」

妹「じゃあ一緒だね」

女の子「そうね、くすくす」

妹「うんっ」




351:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 22:29:21.34 ID:XPJbwliF0
妹「そういえばさっきサッカー少年に会ったよ」

女の子「私も会った」

妹「うん」

女の子「何か言ってた?」

妹「来週試合あるから来て欲しいって」

女の子「ふーん」

妹「一緒にいく?」

女の子「なんで私が一緒に行かなくちゃいけないのよ」

妹「だ、だってすごく行きたそうにしてるから……」

女の子「……いく」

妹「うん、行こ」

女の子「うん」




352:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 22:33:10.80 ID:XPJbwliF0
妹「ねぇ」

女の子「なに?」

妹「ばす、こないね」

女の子「そうだね」

妹「はー、あのさ」

女の子「うん?」

妹「しょーらいのゆめって何かある?」

女の子「なんで?」

妹「あたし、お父さんと結婚したいーって言ったんだけど、それってなんだかやりたい事とは違う気がして」

女の子「なぜ? とてもステキな事だとおもうけど、くすくす」

妹「むー、わらうなぁー」

女の子「ごめんごめん、お父さんの事本当に好きなのね」

妹「うーん、……うん」




354:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 22:39:03.99 ID:XPJbwliF0
女の子「私はしょうらい外国に行きたいかな」

妹「へー!」

女の子「あいつも外国に行きたいって行ってるし、あの子もアメリカに居るし。私だけ日本ってわけにはいかないのよ」

妹「あの子ってこの間言ってた子の事? ええっと、ライバルだっけ」

女の子「うん」

妹「へー、どんな子だろ」

女の子「一言で言うと、そうね。不思議な子、かな」

妹「ふしぎ?」

女の子「うん、一緒にいるだけで元気になれるの」

妹「それは不思議だなぁ」

女の子「そうね」

妹「いつか会えるかなぁ」

女の子「こんど日本に帰ってきた時にでも会いにいきましょ、あなたの家のすぐ近くだから」

妹「うんっ」




355:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 22:41:39.73 ID:XPJbwliF0
女の子「あ、来たわよバス」

妹「本当だ、あたし行くね」

女の子「うん、またね」

妹「またねー、ばいばいっ」

女の子「ばいばい」




356:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 22:46:21.50 ID:XPJbwliF0
……………………
…………
……


毎度ご乗車ありがとうございます。

このバスは終点・○×大学正門前行きです。

お降りの際はお手元のボタンをお押しください。

ブロロロロロロロロロロロロ……

妹「……ん、しょっと」

妹「えーっと」

妹「終点までだから」

妹「このまま乗ってればいいんだよね」

妹「財布もあるし」

妹「メモも地図もある」

妹「う〜ん、お父さん大丈夫かなぁ……」




357:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 22:54:38.86 ID:XPJbwliF0
……………………
…………
……

ブロロロロロロロロロロロロ……

妹「わあ……、車がいっぱいだ」

ゴトン

妹「うぅ、なんだかすごく揺れるなぁ……」

お婆さん「……」

妹「……あ」




360:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 23:03:07.23 ID:XPJbwliF0
兄『いいかー、電車やバスを使う時はなー。お年寄りや妊婦さんに席を譲るのが大人のマナーだぞ?』

妹『あたしも大人になれるの?』

兄『もちろんだとも、こういうのは要するに心構えなのだ。社会ってのは支えあいで形成されてると言っても過言ではないからな』

妹『ふぅん……、カゴンって?』

兄『はっはっはー、少し難しい言葉だったか?』

妹『……むー』

兄『よく学ぶのだ娘よ、その疑問は君を育てる種になる』

妹『うんっ』

兄『……』

妹『どうしたの?』

兄『い……いまの台詞かっこよくなかった? すげー父親っぽくなかったっ?! かっこいい父親ポイント4000万点分くらいあったろ?』

妹『もー、しらないっ』




361:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 23:05:32.99 ID:XPJbwliF0
妹「お婆さん!」

お婆さん「はいな?」

妹「ここ、どうぞ」

お婆さん「まぁまぁ……いいんですか? 座らせていただいても」

妹「うん! いいよ!」

お婆さん「お嬢さん、ありがとうね。まだ小さいのに偉いねぇ」

妹「えへへ」

お婆さん「お嬢さんはどこまで行くんだい?」

妹「○×大学」

お婆さん「まぁ、こんな小さいのに大学生だったのかい?」

妹「ちがうよー、お父さんにお弁当をとどけにいくの」

お婆さん「お父さん?」

妹「うんっ」

お婆さん「あらまぁ、いい子だねぇ。お父さんは大学で働いてるのかい?」




362:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 23:10:57.87 ID:XPJbwliF0
妹「うん、えっとね。う〜ん……なんだっけ、なんとかっていう研究室の……ええっと、あ! そうだ!」

ガサゴソ

お婆さん「?」

妹「えっとね、ここに書いてるの」

お婆さん「あら立派な文字だこと」

妹「お母さんがそれ書いてくれたの」

お婆さん「そうかいそうかい、人柄が表れているようだねぇ」

妹「うんっ。あのね、あたしね、お父さんを助けにいくの」

お婆さん「助けに?」

妹「あのね……内緒だけど、お父さんってお腹がすいたら死んじゃうんだって」

お婆さん「まぁまぁ、それは大変だねぇ」

妹「だから、お弁当もっていってあげないといけないの」

お婆さん「そうかいそうかい、一人で大丈夫かい?」

妹「うんっ」




363:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 23:13:16.26 ID:XPJbwliF0
妹「お婆さんはどこまで行くの?」

お婆さん「お嬢さんと一緒さね」

妹「一緒?」

お婆さん「そうそう」

妹「そっか、じゃああたしがお婆さん迷子にならないように見ててあげるね」

お婆さん「ほっほ、頼もしいねぇ」

妹「えへへ」




366:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 00:09:53.34 ID:XPJbwliF0
お婆さん「お父さんは大学で何をしているのか知っているのかい?」

妹「先生ってことしか知らない」

お婆さん「家では何も言ってないのかい?」

妹「うん、家でいつもぐーたらしてるから」

お婆さん「ほっほっほ、そうかいそうかい。だらしないお父さんだねぇ」

妹「でもね」

お婆さん「うん?」

妹「とっても優しくて、いいお父さんだよ」

お婆さん「そうかい、お父さんが好きなんだね?」

妹「うん」

お婆さん「ほっほ、結構結構」




367:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 00:13:41.41 ID:XPJbwliF0
終点、終点です。

傘などお忘れ物がないように……


……………………
…………
……


お婆さん「着いたね」

妹「わぁ……大きい建物だね、れきしてき」

お婆さん「これでも随分こじんまりした校舎なのさ」

妹「そうなの?」

お婆さん「けれど、この校舎には様々な人が携わってきた、色々な人が学び、社会へと羽ばたいていった、それだけ伝統と重みがある……お嬢さんはそれがわかるのかい?」

妹「うんっ、れきしてきだよ?」

お婆さん「ほっほ、良い目をしてるね」

妹「えへへ」




368:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 00:18:27.79 ID:XPJbwliF0
お婆さん「さて、お嬢さんの目的地はどこだったか」

妹「えっと、こっち」

お婆さん「そっちかい?」

妹「お婆さんも来るの?」

お婆さん「私も一緒のとこに用があるんだよ、奇遇だね」

妹「そっか、じゃあ案内してあげるねっ」

お婆さん「それじゃあお願いしようかね、お嬢さん」

妹「うんっ」

お婆さん「ここはいつきても活気があるね」

妹「いつも来てるの?」

お婆さん「そうさね、毎週来てるからね」

妹「そうなんだ」




369:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 00:22:30.76 ID:XPJbwliF0
……………………
…………
……


コンコン

……シーン。

コンコンコン

……シーン。



兄「空いてますよー、どうぞー」

ガチャ

兄「すみませんね教務課さん、テストならまだ──」

妹「おとーさーん!」




371:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 00:24:44.75 ID:XPJbwliF0
どん!

兄「ぶはっ」

妹「お父さん!」

兄「むむ……娘の声がする」

妹「お父さんお父さん!」

兄「ごほごほ、く……くるしい……」

妹「あ、……ご、ごめんなさい」




373:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 00:27:24.22 ID:XPJbwliF0
妹「お邪魔します、お父さんっ」

兄「邪魔するんやったら帰って」

妹「あいよ〜」


……………………
…………
……


妹「なんでやねん!」

兄「おお! このノリ! やはり我が子だな! 偽者ではなかった! 俺の目に狂いはなかったぞ、はっはっは!」




374:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 00:30:14.17 ID:XPJbwliF0
お婆さん「全く……会って早々親子で何をやっているんだい」

兄「あれ? 幻聴かな、天国から声がする」

お婆さん「アホか若造、ボケるのには早いよ」

兄「きょ……教授っ?! お戻りになられたのでっ?!」

お婆さん「ああ帰った、お嬢さんのエスコートでね」

兄「お嬢さん?」

ひょこ

妹「あたしだよっ」

兄「……そうだ、なぜ娘がここに……。まままままま、まさかフルポリゴンっ?! 質量を持った分身っ?! それとも宇宙人的な何かが……」

妹「なんでやねん」

すぱこーん

兄「痛い、夢じゃない」




375:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 00:33:46.68 ID:XPJbwliF0
お婆さん「娘がせっかく来てくれたんだよ、もっと歓迎してやらんか若造」

兄「そ……そうだ、娘よ。なぜ父の職場に?」

妹「えっとね、……お弁当っ」

兄「弁当?」

妹「うん」

兄「おお! これはお母さんがつくってくれた弁当じゃないか!」

妹「はい、お父さん」

兄「……これをわざわざ?」

妹「うん……あのねお父さん」

兄「うむ?」

妹「お父さん、死なないよね?」

兄「は?」




376:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 00:36:12.84 ID:XPJbwliF0
兄「(死ぬ? 一体どういう事だ?)」

兄「(なぜここに娘と教授が一緒に来るのだ?)」

兄「(考えろ俺、このお弁当。そして姉上が託したらしいメモ、それが意味する事は?)」

ポクポク

ポクポク

ポクポク

ポクポク

ポクポク

ちーん

兄「(……ひらめ……いてたまるかアホー!)」




377:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 00:42:12.94 ID:XPJbwliF0
────────
────
──

妹「──、というわけなの」

兄「はっはっは! なるほど! さすが我が娘だ!」

お婆さん「バスで私に席を譲ってくれてここまで案内してくれたのさ。大した子だよまったく」

兄「おお、偉いなぁ! さすが我が娘だ!」

妹「えへへ」

兄「でもまさか教授まで一緒だとは、びっくりした」

お婆さん「私もびっくりだよ、まさかお前に子供が居たとはね。どうして今まで教えてくれなかったんだい?」

兄「え? えぇまぁそれは……えっと。びっくりさせようと思って」

お婆さん「まったく、祝いもできなかったじゃないか」

兄「はぁ、すんません」

お婆さん「まあいい、今日はとびきり良い茶を出そう。お嬢さん、何もない所だけどゆっくりしていくんだね」

妹「うんっ」




378:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 01:02:02.44 ID:XPJbwliF0
妹「お婆さんとお父さんはここで何をしているの?」

お婆さん「私達かい?」

妹「うん」

お婆さん「お前、家では本当に仕事の話をしないんだね。親が何をやっているのかわからないってそいつはどうなんだい?」

兄「仕事とプライベートは分けているんですぅ」

お婆さん「ぶーたれちゃって。これじゃあ一体どっちが子供なのかわかんないねぇ」

兄「ぐぬぬ……」

お婆さん「お嬢さん、私達はここで心理学の研究をしているんだよ」

妹「しんりがく?」

お婆さん「そうさね、お嬢さんにもわかりやすく言うと人の心を研究しているんだ。人が何を感じてどう行動するのか、なぜその行動をするにいたったか、その要因は何なのか……そういう学問さ」

妹「よくわかんない」

お婆さん「ほっほ、少し早かろうて」

妹「むー」

兄「教授……仕事の話はいいじゃないですか、それより学生への期末考査なんですけど、一応チェックお願いしたいんですが」

お婆さん「ふむ、後でな」




380:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 01:12:01.04 ID:XPJbwliF0
────────
────
──


お婆さん「そんじゃ、私はこれで失礼するよ」

兄「え? もうですか?」

お婆さん「元々書類を取りにきただけだからね、後は学長の顔でもみて帰ろうかね」

兄「そうですか」

お婆さん「お前も遅くまで残ってないで今日くらい早く帰ってもいいんだよ」

兄「それじゃあお言葉に甘えさせてもらいますよ、タスクも終わってるんで」

お婆さん「カギ締めよろしくね」

妹「お婆さん、ばいばい」

お婆さん「うん、またねお嬢さん」

妹「うんっ」




381:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 01:15:46.96 ID:XPJbwliF0
お婆さん「ところでお前、姉の方は元気にやってるのかい?」

兄「んん……ゴホゴホ、さ? さぁ? 元気なんじゃないっすかね」

お婆さん「……」

兄「あれー? おかしいな風邪かなー、ゴホゴホ」

お婆さん「……ちょっと顔貸しな」

兄「……はい?」

お婆さん「お嬢さん、ちょっとお父さん借りていくね。良い子で待っててくれないか?」

妹「はーい」

お婆さん「うん、良い返事だ」

兄「え、ちょっと。教授?」

お婆さん「いいからとっとと来なさい」

兄「いてててて、耳! とれる!」




382:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 01:18:31.29 ID:XPJbwliF0
……………………
…………
……


お婆さん「ワケありだね?」

兄「えぇまぁ……、その……なんというか……」

お婆さん「誰の子だい? あんたか、それとも姉の方か……、……! まさかあんたら!」

兄「い、いや。そりゃないですって! きょうだいですよ俺ら!」

お婆さん「そうかい……まぁ、なんだ。私は何があってもあんたらの味方になってあげるから、いつでも相談しなさい」

兄「へっ?」

お婆さん「この若造が、よもや何でもかんでも一人で背負い込むのがカッコイイとか勘違いしてるんじゃあるまい?」

兄「え……ええっと……はい……」

お婆さん「まったく……。しかし、この私に隠し事とはね……まだまだ教育が足りないようだな若造」




383:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 01:21:59.98 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ◇ ◇


姉「へぇ、無事に届ける事ができてよかったですね」

妹「うんっ!」

姉「美味しかったですか?」

妹「あのね、とっても美味しかったよ!」

姉「あらあら、それは良かった」




384:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 01:31:31.98 ID:XPJbwliF0
────────
────
──

その日の深夜。


兄「問おう、お母さん」

兄「近くて安い市バスではなく、少し遠くて高い私鉄のバスを経由を利用させたな?」

兄「そして今日は教授が地方の講演から帰ってくるタイミングだ」

兄「そして、研究室に一緒に現れた娘」

兄「なぜか最初から一人分以上つくってあった弁当」

兄「そして、……あの子の件では、なぜか教授の理解を得る事ができてしまった」

兄「さて、これらが意味する事は一体何だろうか姉上」




387:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 01:41:01.56 ID:XPJbwliF0
姉「すごい偶然があったものですね」

兄「ほう、偶然ときたか。なるほど確かに偶然だな」

姉「ええ、偶然です。あの子と教授がバスで会ったのも偶然、君が弁当を忘れたのも偶然だ兄上」

兄「まったく……、肝が冷えたぞ姉上。一言言ってくれればいいものを」

姉「ふふ。なんの事ですか? はじめてのおつかいですよ? 内緒に決まってるじゃないですか」

兄「そうか、はじめてのおつかいときたか」

姉「ええ」

兄「はっはっは! こいつは一本とられたな! はっはっは!」




385:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 01:35:22.34 ID:XPJbwliF0
兄「そうか……いや、すごいな子供は」

姉「そうですね、大人では不可能な事を簡単に超えていってしまいますからね」

兄「……なんだか、どんどん遠くへ行ってしまうんだな」

姉「……その日までは一緒に居ましょう」

兄「……そうだな」

姉「なんてったって私達は家族ですから」

兄「家族、か」

姉「ええ、そうですよ。お父さん」

兄「姉上にはいつも世話になりっぱなしだな……、とても返しきれん」

姉「家族とは、そういうものですよ支え合っていくものです」

兄「……うむ」




389:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 02:06:03.48 ID:XPJbwliF0
◆ ◆ ● ◆ ◆


世界が真っ黒だった。

あたしは夢をみている。

夢だと思うからたぶん夢だ。

なぜだか電車のホームにいる。

きょろきょろと見渡すと、線路の向かいにお父さんとお母さんが立っていた。

「お父さん、お母さん!」

ふたりはあたしの声に反応して手を軽く振る。

けれど、なぜか悲しそうな顔をしていた。

電車が来る。




390:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 02:11:37.80 ID:XPJbwliF0
すると、どこからともなく現れた知らない男の人があたしを電車に乗せようとして、

「嫌! やめて! たすけて! お父さん! お母さん!」

抵抗するけど、無理矢理乗せられる。

向かいのホームではお父さんとお母さんが何かをつぶやいていた。

「さよなら」

「さようなら」

……え?

そこで夢は終わった。




417:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 19:13:22.73 ID:XPJbwliF0
妹「おはよー」

女の子「おはよ」

妹「雨って嫌だねぇ」

女の子「そうだね」

妹「ジメジメしてるから、せんたくものが乾かない〜ってお母さんが言ってた」

女の子「うちは乾燥機付きだから大丈夫」

妹「なにそれ?」

女の子「機械が勝手に乾かしてくれるの」

妹「へぇ〜! 機械ってすごいんだね」

女の子「そうね、でも凄いのは機械じゃなくて考えた人じゃない?」

妹「ん〜、たしかに」




418:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 19:17:46.13 ID:XPJbwliF0
妹「じゃあコタツを考えた人はやっぱりミカンが好きなのかな」

女の子「さぁ、でも外国にはコタツは無いって聞いたことがあるわ」

妹「そうなの?」

女の子「コタツとミカンが合うっていうのは日本のブンカと何か関係があるのかもね」

妹「う〜ん、ぶんかてきだなぁ」

女の子「でも考えると面白いでしょ?」

妹「うんうん」




419:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 19:20:47.77 ID:XPJbwliF0
女の子「テレビはよくみるけど、実際何で映ってるのかわからないし。不思議な事だらけね」

妹「でもギモンを持つのは良い事なんだって」

女の子「へぇ?」

妹「お父さんが言ってた、疑問はあたしを育てる種になるんだって」

女の子「お父さん、かっこいい事いうわね」

妹「でもあんまり褒めちゃだめだよ?」

女の子「なんで?」

妹「チョーシにのるから」

女の子「ああ……なんとなく、わかるかも」




421:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 19:59:17.70 ID:XPJbwliF0
妹「あ、おはよ」

女の子「おはよー」

男の子「……おう? ……なんだお前らか」

女の子「ちょっと、こっちが挨拶してんだからちゃんと返してきなさいよね」

男の子「……おう」

妹「どうしたの? おなかいたいの?」

男の子「……なんでもねー」

女の子「なんでもないわけないでしょ、あんたわかりやすすぎんのよ」

男の子「うるせーなぁ、なんでもねーよ」




422:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 20:04:49.81 ID:XPJbwliF0
キーンコーンカーンコーン


先生「はいじゃあ宿題集めるぞー」

男の子「せんせー、はい」

先生「お? 今日はちゃんとやってきたのか?」

男の子「うん」

先生「そうか偉いなー、これからもちゃんとやってくるんだぞー」

男の子「……うん」


女の子「おかしい……、そんなバカな……あいつが宿題をやってきた……ですって……?」

妹「そんなにおかしい事かなぁ」

女の子「……明日はヤリでも降るのかしらね」




423:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 20:11:46.57 ID:XPJbwliF0
女の子「授業も真面目に聞いてるし」

女の子「休み時間は教室で座ってるし」

女の子「給食はゆっくり食べてるし」

女の子「午後の授業は体育館だっていうのに、あの大人しさ……」

妹「うん?」

女の子「これは事件ね」

妹「えぇっ?!」




424:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 20:16:11.13 ID:XPJbwliF0
妹「事件って、そんなまさか」

女の子「そのまさか……だとしたら? 少なくともあいつの周りで何かあった事は間違いないと思うわ」

妹「なんでわかるの?」

女の子「カンよ」

妹「カンって」

女の子「あら、女のカンはよく当たるのよ?」

妹「へ、へぇ。そうなんだ」




425:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 20:24:11.80 ID:XPJbwliF0
「……事件?」

「どうしたでやんす? コナソくん」

「いや、なんでも……む? なんだこのオニギリは?」

「それはおいらのでやんす、体育が終わったら食べようと……」

「矢部くん待て、毒が入っているかもしれない、パクッ……、これは……」

「なんでやんす? まさか青酸カリ……」

「おいしい」

「おいらのオニギリ返すでやんす〜!」




427:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 20:34:05.23 ID:XPJbwliF0
女の子「そうと決まれば早速調査ね」

妹「でも調査って何をすれば?」

女の子「そうね、調査の基本は聞き込みってこの漫画に描いてるわ」

妹「あ、それ最新刊?」

女の子「うん」

妹「読み終わったら貸して?」

女の子「いいよ」

妹「やったー」




430:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 20:45:28.59 ID:XPJbwliF0
女の子「どの話が一番すき?」

妹「んー、サッカー選手のやつ」

女の子「お弁当型のFAXが出ていたアレね」

妹「うんっ、あんなお弁当欲しいよね」

女の子「あれってご飯は食べられるのかしらね」

妹「なんだかちょっと怖いよね」

女の子「でもちょっと食べてみたいくない?」

妹「うんうん」

女の子「どこかに売ってないかなぁ」

妹「スーパーで見てみる?」

女の子「普通のスーパーじゃ売ってないと思う、きっと高いスーパーなら置いてるかも」

妹「ふーん……、そっか」




431:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 20:53:59.06 ID:XPJbwliF0
女の子「じゃあ今度お買い物でも行く?」

妹「うん、いくいく」

女の子「決まりね」

妹「やったー」

女の子「それじゃあいつがいい?」

妹「次の日曜日は?」

女の子「うん、わかった、次の日曜日ね」

妹「うんっ」




433:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 21:13:15.09 ID:XPJbwliF0
女の子「って、買い物の話は置いといて、今はあいつの」

妹「あ、それさっき休み時間に聞いたんだけどさ」

女の子「事件を調べ……」

妹「なんか同い年の子にレギュラーとられちゃったみたいで次の試合に出る事ができないんだって」

女の子「ないといけない……」

妹「それでショックで落ち込んでるんだって、さっき言ってた」

女の子「から……」

妹「大変だよねぇ、サッカー少年だもんね」

女の子「……」

ずーん




434:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 21:16:40.19 ID:XPJbwliF0
妹「どうしたの? おかないたいの?」

女の子「頭が痛い……」

妹「保健室、いく?」

女の子「いや、大丈夫」

妹「そう?」

女の子「とにかく原因は突き止めたわね!」

妹「うんっ」

女の子「だったらあとは事件を解決するだけよ」

妹「おおっ、探偵みたい」

女の子「ふふん? そうでしょ?」




435:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 21:23:06.73 ID:XPJbwliF0
作戦その1 思いっきり応援してみよう


女の子「ねぇ」

妹「うん?」

女の子「チアガールの衣装着る必要はあったのかしら?」

妹「気分気分」



男の子「お前ら何着てるの? バカじゃね?」

ゴン!

しゅうぅぅぅうううう

男の子「」

妹「あわわわわわ」




436:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 21:26:46.47 ID:XPJbwliF0
作戦その2 好きなモノで一本釣り


女の子「あいつの好きなモノ……ねぇ、サッカー以外思いつかないけど」

妹「サッカー漫画とか置いてみる?」

女の子「ああそれいいかも」

妹「じゃーん、実は持ってきました」

女の子「手際がいいわね」

妹「えへへ」

女の子「じゃあコレをあいつの机の上に置いておいて……」


「こ……これは!」

女の子「ククク……読んでる読んでる、あいつのサッカー熱を上げるなんて簡単なのよ」

「これは……! おいらまだこの最新刊読んでなかったでやんす〜! やっほ〜い!」

ガン!

しゅぅうううううう

矢部くん「」




438:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 21:44:35.81 ID:XPJbwliF0
作戦その3 食べ物作戦


女の子「古来よりハラが減っては戦は出来ぬということわざがあるのはご存知かしら?」

妹「うん」

女の子「つまりあいつはハラが減ってるのよ」

妹「さっき給食食べたよ?」

女の子「細かい事はどうでもいいの、とにかくこのオニギリをあいつの机に置いて……」


「ん? ……これは……?」

女の子「ククク……食べてる食べてる、あいつの好きな味くらい心得てるのよ」

「さっきの矢部くんのオニギリの方が美味しいな」

ガン!

しゅぅうううううううううう

コナソ「」




439:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 21:50:17.42 ID:XPJbwliF0
女の子「ああもうだめ、これもだめあれもだめ、全部だめ」

妹「まぁまぁ、落ち着いて」

女の子「あいつがあんな調子だからこっちまで調子悪くなるのよ」

妹「そうだね」

女の子「ったく……何やってんだか……」

妹「う〜ん……」




440:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 21:59:16.49 ID:XPJbwliF0
男の子「……はぁ……」

妹「あ、帰るの?」

男の子「……帰る、またな」

妹「サッカーは? いつも練習してるのに」

男の子「……もうだめだ、俺はサッカーはもう辞めたんだ……」

女の子「辞めたってあんた何言ってるのよ」

男の子「だめだ、だめなんだよ俺は」

女の子「だから何がだめなのよ」

男の子「何をどう頑張ってもあいつには勝てない……試合に出られないんならサッカーなんてやってる意味がねーんだよ……」

女の子「一回試合に出られないからって何だって言うのよ、次勝てばいい話でしょ?」

男の子「次なんかねぇよ……あいつは、すげぇ。俺なんか足元にも及ばないくらい……」




441:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 22:03:42.95 ID:XPJbwliF0
女の子「ああぁぁあもう! イライラするわね! 良いわ! だったら勝負しましょう!」

男の子「……勝負だ?」

女の子「あんたの得意なサッカーで勝負してあげるわ。一対一、相手をかわしてシュートを決めたら勝ち、それでいいわね?」

男の子「はっ、何の話をして……」

女の子「勝負の日は1週間後よ、クビを洗って待ってなさい」

男の子「……おい、待てよ」

女の子「負けるのが怖くて逃げださないでよ?」

男の子「……誰が」

女の子「ふんっ。私は帰るわ、あんたと違って練習しないといけないから」

妹「え、あ、ちょっと、待ってよ」




442:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 22:06:26.09 ID:XPJbwliF0
女の子「それから」

男の子「なんだよ」

女の子「私が勝ったら私の言う事何でも一つ聞くこと、いいわね?」

男の子「……へっ、勝手にしてろよ」

女の子「勝手にさせてもらうわ、けれど勝負だけは逃げないでよね」

────────
────
──

妹「ねぇ、サッカーやった事あるの?」

女の子「無いわ」

妹「大丈夫なの?」

女の子「さあ?」

妹「さあって」

女の子「練習あるのみ、よ」

ぽーん




443:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 22:10:38.68 ID:XPJbwliF0
女の子「意外と難しいわね、ただ蹴るだけなのに。全然まっすぐ飛ばないわ」

妹「パスいくよー」

ぽーん

女の子「とっとっと……きゃっ」

どさっ

妹「ご、ごめん。大丈夫?」

女の子「大丈夫よ、ちょっと躓いちゃっただけだから」

妹「でも血が、拭かないと」

女の子「こんな擦り傷へっちゃらよ」

妹「でもっ」

女の子「いいから!」

妹「だめ! ちゃんと絆創膏はらないとヒドい事になるんだから!」

女の子「……っ」

妹「ご、ごめん大きい声だしちゃって」

女の子「ううん、私の方こそごめんなさい。絆創膏おねがいしてもいいかしら?」




444:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 22:16:43.37 ID:XPJbwliF0
女の子「サッカーってこんなに難しいものだったのね」

妹「そうだね」

女の子「テレビで見てると簡単そうなのに」

妹「すごいよね」

女の子「あいつ……こんな難しい事やってたのか」

妹「降参?」

女の子「しないわよ、絶対勝つ」

妹「じゃ、練習。しよっか」

女の子「うん」

妹「うんっ」




445:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/17(木) 22:26:34.57 ID:XPJbwliF0
女の子「じゃあいくわよ」

妹「こいっ」

ぽーん

妹「おお、今のなかなか良かったね」

女の子「そうかしら?」

妹「うんっ」

女の子「それじゃあもう一回っ」

……………………
…………
……

男の子「何やってんだよ……、あいつら。てんでへたくそじゃねーか」

男の子「……なーにが勝負だよ、アホらしい」




477:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 18:16:01.56 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ◇ ◇


僕は旅人。

世界中の人たちにサッカーをする楽しさを教えて回っている。

特に最近行った東南アジア……、タイやスーダンでは子供達がサッカーボール一つで本当に笑顔になれるんだ。

そんな子達を見ているだけで、僕は生きていて良かったと思える。

どんな苦しい事があっても、どんな逆境だろうと、彼ら・彼女らに笑顔を絶やして欲しくは無い。

人生は苦しい事もあるけれど、苦しい事ばかりじゃない。

それを子供たちに自分の力で気づいて欲しい、

僕は少しでもそのお手伝いが出来れば……。大袈裟に言うと、それが僕の使命なんじゃないかとさえ思っている。




478:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 18:17:41.14 ID:XPJbwliF0
久々に日本に帰ってきたら梅雨だった。

なるほど、ジメジメとしていて日本の梅雨らしい。

けれどせっかく日本に帰ってきたのだから、部屋に篭りっきりなのもどうかと思って散歩でもしようかとホテルから傘を借りて少し歩く事にした。

この辺りは小さい頃一度来たことがある。

サッカーの試合だったか学校の行事だったかは覚えていないが、その時も友達とサッカーボールを蹴っていた気がする。

結局現役を引退した今もこうしてサッカーボールを蹴っているわけだけれども。

僕の人生は、それで良いんだと思う。

ふと目の前に大きな水溜りが見えたので、少し避けて歩く。

記憶ではそれほど都会ではないのに、マンションやらビルやらが立ち並び、すっかり近代的な街になってしまっている。

……うん、この国は凄いな。

ヨーロッパ、アジア、オセアニア……色々な国を見てきた、だからこそ思う。日本という国がどれほどの国かという事を。




479:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 18:21:34.91 ID:XPJbwliF0
「いくよー!」

「おー!」

それから少し歩くと雨音に紛れて声が聞こえてきた。

「何だろう?」

おそらく小学生くらいの子供の声だと思う。

こんな雨の中何をやっているんだろうか?

特に予定もなかった僕の足はその声の主達にひかれるように歩いていった。




480:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 18:33:29.31 ID:XPJbwliF0
ポツポツポツポツ。

雨はホテルを出た頃と比べると少しだけ小降りになっていた。

けれどさすがに、傘をさしていないと濡れるのが気になるな。

赤信号で止まる。

おそらくこの交差点を渡った先の河川敷だろう。

交差点の周りには最近立てられたのだろう看板に「香川うどん」の文字がでかでかと表記されている。

すると、その看板の向こう側からH●NDAのハイブリッドカーが颯爽と走り去っていき、

町内の掲示板に貼られていた電車のポスターには「あの島より、川島」というキャッチコピーが踊っていた。




481:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 18:42:22.11 ID:XPJbwliF0
……なんだかユニークな街だな。

そんな印象を残して、僕は交差点を渡った。


ちょっとした坂を昇って見下ろした河川敷では、

小さな女の子二人が雨の中だというのにサッカーボールを蹴っていた。

二人の服はドロドロ、靴はすっかり土色になってしまっている、

ボールも水分を吸って随分と重くなっている事だろう。

僕はいつだったかホンジュラス代表との試合を思い出していた。

あの日の前日も、確か雨が降っていたっけ。

……それにしても今日はサッカーをするにはコンディションが悪すぎるな、

何もこんな日にボールを蹴る事はないだろうと僕は

「小さなお嬢さん達、滑って危ないよ」

そこまで言おうとして、ハっと口を噤んだ。




482:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 18:49:02.95 ID:XPJbwliF0
何があの二人の少女にあったのかはわからない、

なんだろう、二人のあの表情は。

サッカーの技術云々の話ではない。

トラップもめちゃくちゃ、パスは相手に向かって飛んでいかない、

ドリブルをすればボールを置き去りにして走っていってしまっている。

有り体に言うととっても下手糞だ、おそらく初心者なのだろう。

けれど。

……けれど、とっても「楽しそう」だ。

アレはサッカーの神様に魅了された表情だ。

……そうか、ちゃんとあるんじゃないか。

世界を探さなくても、こんな身近に、日本という国にもあったんじゃないか。




483:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 18:52:44.21 ID:XPJbwliF0
その瞬間、何かにうたれたような感覚が全身を襲った。

僕はおそらく間違ってはいなかった。

けれど、大いなる勘違いをしていたのではないかという事だ。

僕が子供が笑顔になるお手伝いをする?

そんなもの、ハナから僕の勘違いだったんじゃないだろうか。

だってほら、あの子達はあんなに楽しそうじゃないか。

雨も気にせず、服が汚れても気にしない。

そこにサッカーがオマケでついてくる。

……きっと、そういう事なんじゃないだろうか。




485:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 19:06:03.09 ID:XPJbwliF0
しばらく二人を見ていると

ぽーん

ころころころ。

足元にボールが転がってきた。

僕は右足軽くボールを止めて、ふわりとしたゆるい浮き球で相手の足元に返してあげると。

「ありがと!」

小さい方の女の子がペコリとおじぎをしてくれた。

とても礼儀正しくて、なんだかこっちが少し恥ずかしくなって話題を探した。

「二人とも、こんな雨の中でどうしてサッカーをやっているの?」

「勝ちたいヤツがいるの」

大きい方の女の子が膝に手を付きながら言う。




486:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 19:16:45.89 ID:XPJbwliF0
「お兄さんも昔ちょっとだけサッカーをやっていた事があってね」

「へー!」

「そうなんだ」

「少しだけ、二人と一緒に蹴らせてもらってもいいかな?」

「うんっ」

「いいわよ」

革靴が邪魔だったので裸足になった。

ジーンズは少し高めのヴィンテージだけど、汚れても気にしない。

傘はゴール代わりにして置いた。

即席のサッカースタジアムの完成だ。

さあ、楽しもうか。




487:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 19:18:23.32 ID:XPJbwliF0
────────
────
──


それじゃあ頑張ってね、言うと二人は大きく頷いていた。

勝負の結果はどうなるかわからないけれど、

きっと良い結果になるんじゃないかな。


見上げるといつしか雨も止んでいた。

太陽が雲間から顔を出す。

差し込む金色の光が眩しくて目を細めた。

勝ちたいヤツがいる。

誰だったか、いつか僕にそう宣言したのは。

生意気な若者が増えたものだ、もっとも、それは僕にとって喜ばしい事だけれど。




488:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 19:24:28.13 ID:XPJbwliF0
帰り道、

行きと同じ場所に大きな水溜りがあった。

僕はそれを気にせず進み、晴れ晴れとした空を揺らす。


例えば空気や水のようなもの、

とても些細な事だけど、中々見つけられるもんじゃない。

そんな当たり前の何かを再認識した魔法の様な時間だった。

僕の人生にロスタイムがあと何分あるかわからないけれど、タイムアップのその瞬間まで、伝えていこう。

僕でしかできない事がまだまだあるはずだ。


小さな先生達にありがとうの気持ちを込めて、

僕は再び歩き始めた。




489:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 19:42:27.81 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ◇ ◇


先生「えーっと、妹さん、女の子さん。二人とも後で職員室に来てください」

妹「何でですか?」

先生「お届けものです」

女の子「お届けもの?」




490:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 19:43:49.00 ID:XPJbwliF0
この間は一緒にサッカーをしてくれてどうもありがとう。

二人のお陰で本当に大切な事に気がつきました。

これからすぐに外国に行かなくちゃいけなくて、ちゃんとしたお礼もできずに御免なさい。

自分の所で作ったボールで申し訳ないですが、よろしければ友達とこのサッカーボールを使ってください。

今度また一緒にサッカーをやりましょう。


                            HIDE.N




491:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 19:45:08.65 ID:XPJbwliF0
女の子「ひ、で……ん? あの人ヒデンさんって言うのかしら」

妹「わー、サッカーボールだ」

男の子「……サッカーボール?」

妹「うんっ、ほらっ、これこれ」

男の子「おま……! これ、NAKATAのサッカボールじゃねえの? どうしたんだよこれ日本じゃ売ってないんだぞっ?!」

女の子「どうしたもこうしたも、突然送られてきたの」

男の子「はぁ?! 誰からだよ!」

女の子「ヒデンさん?」

男の子「ひでん? ひでん……、……ヒデっ?!」




492:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 19:46:37.66 ID:XPJbwliF0
男の子「おい! いますぐ勝負だ! 俺が勝ったら、このボールくれよ!」

女の子「はぁ? 何でよ? あんたもうサッカーは辞めるんじゃないの? だったらボールなんかいらないじゃない」

男の子「サッカー辞めるの辞めるんだよ!」

女の子「……その台詞、嘘じゃないでしょうね」

男の子「男にニゴンはねぇ!」

妹「それじゃこれで皆でサッカーしようよ」

男の子「いいぜー!」

女の子「まったく……調子いいんだから、なんだったのよ。これじゃ心配したこっちがバカみたいじゃない」

男の子「へへっ」




493:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 19:52:01.70 ID:XPJbwliF0
女の子「あんたってやつはいつもいつも……」

くどくど

女の子「だいたいね……」

くどくど

女の子「そんなところがダメ……」

くどくど


妹「そんじゃ行こっか!」

男の子「グランドまで競争な!」

妹「ローカは走っちゃだめなんだよ」

男の子「走ってねぇ、はやあるきだ!」




494:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 19:53:07.75 ID:XPJbwliF0
女の子「めめしいっていうか……」

くどくど

女の子「バカっていうか……」

くどくど

女の子「……ちょっと、聞いてるの?」

しーん

女の子「はっ? 二人とも居ないっ?」


男の子「何やってんだよー、置いていくぜー」

妹「先いくよー」

女の子「ちょっとー! 私も混ぜなさいよー!」




497:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 20:41:20.77 ID:XPJbwliF0
────────
────
──

男の子「ゼェ……ゼェ……」

女の子「ハァ……ハァ……」

妹「あぁ〜、疲れたぁ〜」

男の子「お前らなかなかやるじゃねぇか……」

女の子「ふん、あんたがだらしないだけじゃない?」

男の子「んだと!」

女の子「で、……なんでサッカー辞めるなんて言い出したのよ?」

男の子「忘れた」

女の子「は?」

男の子「忘れちまったもんは忘れちまった、へへっ」




498:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 20:42:34.67 ID:XPJbwliF0
女の子「あんたってヤツは……」

男の子「お?」

女の子「あんたってヤツは…………」

男の子「な、なんだよ?」

女の子「あんたってヤツは……、もうずっと一生ボール蹴ってろーーーーーーーーーー!!」


ドガッ




500:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 20:54:58.33 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ◇ ◇

TV『今年は日本もコパアメリカ杯に参加しますが〜……』

兄「む? コパアメリカはじまるのか」

妹「こぱあめりか?」

兄「この前のアジアカップは覚えているか?」

妹「日本が優勝したあれ?」

兄「それの南米版だな、大陸選手権ってやつだ。その地域の国で一番強い国はどこか決めるんだ。日本は招待国として参加するみたいだな」

TV『日本代表チームは予選ではエクアドル、メキシコと同じグループになりました……』

妹「ふぅん」

兄「ほう……勝てるのかな日本は」

妹「勝って欲しいね」




501:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 20:57:43.87 ID:XPJbwliF0
TV『中田さん、勝つためにはずばり何が必要でしょうか?』

『そうですね、日本が勝利するためには……』

兄「おお中田よ、お前がピッチに居ないのは未だに少し寂しいぜ……」

妹「あれ? このお兄ちゃん……?」

兄「知ってるのか?」

妹「この前一緒にサッカーしたよ?」

兄「ほほう? そうなのか?」

妹「うんっ」

兄「はっはっは、さすが我が娘だな。ところで今日は友達のサッカーを見にいくんだろ?」

妹「うんっ!」

兄「そっか、じゃあそのサッカーボールも忘れないようになー」

妹「はーいっ」




506:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 21:58:12.07 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ◇ ◇


先生「それじゃあ、お父さんとお母さんについて作文を書いてきてください」

はーい

先生「提出は来週の月曜日だから、週末にしっかり書いてくださいねー」

はーい!




507:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 22:09:46.68 ID:XPJbwliF0
男の子「サクブンとかめんどくせーなぁ」

女の子「ちゃんと書いてきなさいよね、さすがに作文丸写しってのはだめよ?」

男の子「うっせーな、ちゃんと書いてくりゃいいんだろ?」

妹「お父さんとお母さんかぁ」

男の子「かーちゃん、怒ると怖いです。これでいいだろ」

ガン!

男の子「いってぇ!」

女の子「ダメに決まってるでしょそんなの!」

男の子「なんでだよ!」

女の子「はぁ……」




508:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 22:14:29.20 ID:XPJbwliF0
男の子「でも作文なんてどうやって書いたらいいんだよ」

女の子「そのままを書けばいいのよ、そのままを」

妹「そのまま?」

女の子「そうよ、仕事は何をしているとか、しゅみは何か、とか。怒ると怖いってのは書かなくてもいいと思うけど」

妹「ふうん」

女の子「例えば小さい時、どんな子供だったのか聞いてみるとか」

妹「へ〜、それ面白そう。お父さんお母さんの子供の時の話かぁ」

男の子「うちのとーちゃんはかーちゃんのシリに敷かれてるからなぁ」

女の子「それ絶対書いちゃだめよ?」

男の子「なんで?」

女の子「なんでもよ、バカ」




509:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 22:20:33.66 ID:XPJbwliF0
────────
────
──

ニー

妹「ねー、お父さん」

兄「んー?」

妹「お父さんとお母さんって結婚してるんだよね」

兄「そうだぞー」

ニャー

妹「二人はどこで出会ったの?」

兄「どこ……って、なんでそんな事聞くんだ?」

妹「ふふふー、ナイショ」

兄「はっはっは! なんだなんだ? もう恋愛話に興味を持つお年頃なのか? いいだろう! 聞かせてやろうじゃないか!」




510:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 22:26:57.25 ID:XPJbwliF0
兄「──、というわけで! お母さんはこの俺にベタ惚れだったのだ! はっはっは!」

妹「へー!」

兄「ぶわっはっはっは!」



姉「あらあら、二人して何の話ですか?」

妹「あ、お母さん」

姉「はいはい、何ですか?」

妹「お母さんはなんでお父さんと結婚したの?」

姉「なんででしょうねぇ、もう忘れましたよそんな昔の事」

妹「お母さんがべたぼれだってお父さん言ってるけど」

姉「あらあら? そうでしたっけ?」

兄「そうだったじゃない」

姉「あなたのベタ惚れの間違いでは?」




511:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 22:27:46.64 ID:XPJbwliF0
兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……お父さん……」

兄「……」

妹「うそつきは泥棒のはじまりなんだよ?」

兄「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!! ゆ……ゆるしてくれぇええええええええええええええええええ!!!!」




512:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 22:30:36.75 ID:XPJbwliF0
妹「ふたりは小学校も一緒だったんだよね」

姉「そうよ」

妹「じゃあずっと一緒だったんだね?」

姉「そうね、ずっと一緒だったわ」

妹「ふぅん」

姉「なぁに? 今日は随分と色々聞くじゃない?」

妹「二人はどんな子供だったの?」

姉「どんな? ……ううん、お父さんはこのまま身長を縮めた感じ……って言ったらわかるかしら?」

兄「おい」

姉「何か間違ってますか?」

兄「反論のヨチが無さ過ぎて笑えない」

姉「あらあら」




513:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 22:38:39.51 ID:XPJbwliF0
妹「なるほど」

めもめも

兄「なんだ〜? 取材か?」

妹「わとそん君には教えないのだよ」

兄「お前……まさかホームズ……」

妹「真実はいつもひとつ」

兄「じっちゃんの名に懸けて」

姉「"驚異の部屋 ヴァンダー・カンマー "をご案内します」


兄・姉・妹「オマエのやったコトは全部お見通しだッ!」


姉「なぜベストを尽くさないのか」

兄「また今度借りてくるか」

妹「わくわく」




514:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 22:44:34.30 ID:XPJbwliF0
妹「あ、それからね。お父さん」

兄「お? なんだなんだ?」

妹「えっとね、土曜日の夜。友達の家にお泊りしたいんだけど、いいかな……?」

兄「……お泊り……」

妹「……」

兄「お泊り……だと……」

妹「え、うん」

兄「お泊り……だと……おぉ……」

妹「う……うん」

兄「いいよー」

妹「そっか……だめなら……いいのっ?!」

兄「うむ、大方今聞いた事を作文か何かにするんだろう。で、書き方がわからないから友達と一緒に書く……そんなところか」

妹「すごーい! なんでわかるの?」

兄「はっはっは! 初歩的なことだよ、ワトソン君?」




515:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 22:45:50.88 ID:XPJbwliF0
妹「お父さんかっこいい!」

兄「はっはっは! そうだろうそうだろう!」

姉「連絡帳に’作文’って書いてあったからですよね」

兄「しー!」




517:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 23:26:46.81 ID:XPJbwliF0
姉「いいですよ、でも相手のご家族にちゃんとご挨拶するんですよ?」

妹「うんっ!」

姉「お泊りだなんて、何か持って行かせた方がいいんでしょうか?」

兄「俺のサインとかどうだろうか?」

姉「焼きます」

兄「焼くのっ?!」

姉「良い火を起こせそうじゃないですか、良かったですね」

兄「や〜〜〜きいも〜〜〜〜〜」

兄・姉「いしや〜〜〜〜〜〜きいも〜〜〜〜〜〜〜〜」

妹「おいもっ」




518:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 23:30:12.32 ID:XPJbwliF0
姉「なるほど焼き芋ですか」

兄「うむ、ホクホクしても美味しいし冷えても美味しい。手土産品には丁度いいのでは?」

姉「いいですね、じゃあ早速作りますか」

兄「うむ、なぜか今日買ってきたサツマイモがここにあるからな」

姉「丁度食べたかったんですよね」

兄「うむ、お母さんの作った焼き芋は格別に美味いからな」

姉「褒めても何もでませんよ」

兄「出るものはあるだr」

姉「それ以上言ったらどうなるかわかりますよね、うふふ」

兄「ご……、ごめんなさい……」




519:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 23:35:11.15 ID:XPJbwliF0
兄「ん〜〜〜〜〜、良い匂いだなぁ」

妹「そうだねっ」

兄「早く食べたいな〜」

妹「うんうん」

兄「まだかな〜」

妹「まだかな〜」

兄「もうちょっとかな」

妹「もうちょっとかな〜」

姉「……そうやってジロジロと見られるとなんだか落ち着きませんね、心配しなくてもあと1時間はこのままですよ?」

兄「焼け加減をチェックするのが良いんじゃないか」

妹「良いんじゃないか」

姉「そうですか、それじゃあたっぷりお楽しみあれ」




520:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 23:38:46.86 ID:XPJbwliF0
姉「……あれ?」

兄「ん〜?」

妹「ん〜?」

姉「にーとにゃーを知りませんか?」

妹「あれ? さっきまで居たよね?」

兄「どっか遊びに行ったんじゃないか? あいつらいつもどこに居るのかわかんねーし」

姉「そうですか。ところで猫って焼き芋食べるんでしょうか?」

兄「いけるんじゃないか?」

妹「でもネコジタだよ?」

兄「冷やせば問題なかろう、俺がじきじきにふーふーしてやるから問題ナシだ」

姉「それじゃあお願いしますねお父さん」

兄「おう、任せろぃ」




521:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 23:42:17.57 ID:XPJbwliF0
姉「……」

兄「……」

妹「……」

姉「……」

兄「……」

妹「……」

姉「……」

兄「……」

妹「……」

姉「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……まだ?」

姉「まだです」




522:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 23:46:28.52 ID:XPJbwliF0
兄「でも、ちょっとくらいなら」

姉「今ナベのフタを空けると美味しさ2割減です」

兄「ぐぬぬ……」

姉「まったく、我慢できない子供ですか」

妹「お父さん、お母さん」

兄「ん?」

姉「何ですか?」

妹「あのね、焼き芋みてるの楽しいねっ!」

兄「はっはっは! 当たり前だろ! 焼き芋なんだからなっ! 焼き芋は焼き始めてから食べ終わるまでが焼き芋だからなっ!」

妹「えぇっ! そうなのっ?」

兄「そうだぞー、だから今こうしてみてるのも焼き芋の一部だ」

妹「わかった!」

姉「ちょっと嘘教えないでくださいよ」

兄「あながち間違いでもあるまい、料理とはこうしてできている事を理解するべきだ」




523:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 23:51:12.26 ID:XPJbwliF0
────────
────
──


兄「……Zzz」

妹「……Zzz」

姉「……全く、出来上がるまで見てるんじゃなかったんですか二人とも?」

兄「……ムニャムニャ……ヤキイモ……ウマイ……」

妹「ヤキイモー……Zzz」

姉「これ同じ夢見てますよね、絶対」

兄「……Zzz」

妹「……Zzz」

姉「まったく、このままでは風邪をひいてしまいますね、何かかぶせておきましょう」




524:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 23:54:44.55 ID:XPJbwliF0
兄「スピー……スピー……」

妹「……スピー……スピー……」

姉「二人とも、起きてください」

兄「ふにゃ?」

妹「うみゃ?」

姉「ほら。出来ましたよ」

兄「お? おぉ、いつの間にかすっかり眠っていた様だな」

妹「わぁ、おいしそう」

姉「食べる前にその涎を洗い落として、ついでに手も洗ってきてください」

兄・妹「はーい」




525:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 23:59:02.28 ID:XPJbwliF0
兄「んー、うまい!」

姉「本当ですね」

妹「おいしいっ」

兄「もう一本!」

姉「まだまだありますからゆっくり食べてくださいな」

兄「うっ……」

妹「お父さんっ?!」

兄「……ぐぐぐ……」

妹「お父さんっ?! 大丈夫っ?!」

兄「う……ううう……うまああああああいいい!!!!!」

妹「ややこしいわ!」

すぱーん

兄「良いツッコミだ……ぐは」

ばたん




526:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 00:02:54.69 ID:XPJbwliF0
────────
────
──


女の子「それで、結局そのまま焼き芋全部食べちゃったの?」

妹「う……うん、ごめんね? 美味しくてつい……」

女の子「いいわよ、くすくす」

妹「本当にごめんね?」

女の子「あなたの家族って本当に面白いわね」

妹「うー……」

女の子「くすくす、次は持ってきてくれると嬉しいわ」

妹「うん! 約束!」

女の子「約束ね」

妹「うん!」




502:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 21:01:47.29 ID:XPJbwliF0
ちょっとひと段落。

※なおこのSSはフィクションであり実際の人物・名義・団体とは何の関係もございません




503:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 21:14:10.24 ID:GafsJHtE0
中田がNAKATAじゃなくなってるんだね




504:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 21:32:05.40 ID:EEXxLFGZ0
フィクションだしこまけえこたぁry




531:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 00:31:20.69 ID:A7Wc6RchO
同じ日にイチローと中田がSSに出演してるなんて




532:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 00:38:10.47 ID:XPJbwliF0
【閑話】 全盛期のイチロー


TV『さあスポーツニュースです、まずはメジャーリーグコーナー。今日のイチローから』

姉「イチローといえば3打数5安打は当たり前、3打数8安打も」

兄「先頭打者満塁ホームランを頻発」

妹「バントでホームランが特技」

カキーン!

TV『イチロー打ちました、センター前ヒットです。これでマリナーズはこの日初めてのランナーを出しました』

兄「おお! ナイスヒット!」

姉「イチロー、すごいですねぇ。今年はこれで何本目ですか?」

妹「わかんないけど……いっぱい!」

TV『なおマリナーズは3-5で……』




534:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 00:41:33.11 ID:XPJbwliF0
【閑話】 shine

兄「shineってのは’あなたは太陽のような人だ’っていう意味だ」

姉「あの話は遣る瀬無かったですね」

妹「嫌な……事件だったね……」




468:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 14:48:58.32 ID:hWavljiN0





469:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 15:38:02.70 ID:ODVPdOAA0





470:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 16:26:09.16 ID:eqwBJJLC0





471:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 16:31:54.90 ID:EPzdYOOV0





472:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 16:57:24.69 ID:8zsOZN3/0





470:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 16:26:09.16 ID:eqwBJJLC0





473:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 17:26:48.19 ID:3UhyvllD0





474:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 17:36:55.44 ID:/0ka41Q9O





475:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 17:38:26.90 ID:T4yAPdIO0





476:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 18:15:25.74 ID:8zod07Kj0
クンカクンカ




536:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 00:47:08.87 ID:XPJbwliF0
【閑話】 >>468-476


姉「ほ」

妹「し」

兄「の」

姉「あ」

妹「き」

兄「ぱ」

姉「ん」

妹「つ」

兄「クンカクンカ」

姉「……」

妹「……」

兄「え? なにその蔑んだ目線」




537:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 00:50:07.16 ID:XPJbwliF0
【閑話】 中田が……


>>503「中田がNAKATAじゃなくなってるんだね 」

兄「中田がなかった」

姉「……」

妹「……」

兄「中田が中田じゃなかった」

姉「……」

妹「……」

兄「中田がなかなかみつからなかった」

姉「……」

妹「……」

兄「中田が……」

姉「……」

妹「……」




288:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 00:54:39.09 ID:DtEbUkoP0





289:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 01:20:33.02 ID:tB0I8sJV0





290:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 01:31:58.99 ID:UvGfe3+K0





291:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 01:49:15.58 ID:2dmL2gRz0





292:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 02:02:06.96 ID:nsW/AxYai





293:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/16(水) 02:47:24.42 ID:Q00kxMh+P





538:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 00:54:31.00 ID:XPJbwliF0
【閑話】 >>288-292


兄「ほ」

姉「……」

妹「……」

兄「の」

姉「……」

妹「……」

兄「うぅ……、すまねぇ……」

姉「反省しましたか?」

兄「はい」

妹「よろしい」




539:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 00:55:19.50 ID:XPJbwliF0
【閑話】 風緑?


妹「ねー、お父さん。カゼミドリって何?」

兄「なんだそれ新種か?」

妹「あの屋根の上に居てくるくる回るトリ」

兄「……?」

妹「?」

兄「そんな事よりコウノトリが運んでくるもんがあってだな──」

姉「何教えようとしてるんですか」




541:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 00:56:13.01 ID:XPJbwliF0
【閑話】 携帯電話


兄「携帯電話欲しいか?」

妹「いらない」

兄「なんでだー? 学校の皆もってるんだろー?」

妹「必要ないもん」


姉「本当は欲しいんでしょ?」

妹「だって……お金、大変だから」

姉「もう、子供はそんな心配しなくてもいいのよ」


兄「……講義増やすか」




542:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 00:57:35.45 ID:XPJbwliF0
【閑話】 野球

TV『打ったー! 大きい、入るか? レフトスタンドへー! 逆転のスリーランホームランですっ!!』

兄「よっしゃー! ホームランだ! はっはっは!」

姉「ねぇお父さん、あの人達って何で野球やってるの?」

兄「決まってるだろ」

姉「あん?」

兄「健康の為だよ」

姉「綺麗な顔してるだろ?」

兄「それは美顔機のお陰だな」

姉「んにゃ」




543:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 00:58:25.24 ID:XPJbwliF0
【閑話】 ブラックデー


妹「しろの反対は?」

兄「ろし!」

妹「ぶっぶー、黒でした」

兄「むむむ、ヒッカケか!」

妹「じゃあホワイトデーの反対は?」

兄「ブラックデー!」

妹「ぶっぶー、バレンタインデーでした」

兄「ちっくしょおおおおお!!!」




544:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 01:01:16.88 ID:XPJbwliF0
【閑話】 箱入り……


兄「ノートPCがぶっこわれた」

姉「随分古いの使ってましたからね」

兄「新しいのを買おうと思うんだが、残念ながら俺はパソコンの知識が無い。どれが良いのかも皆目見当もつかん」

姉「ふむ、困りましたね」

兄「そこでいつも読んでるこの雑誌のプレゼントコーナーに応募しようと思うのだが、1等で最新式のノートPCプレゼントだとさ」

姉「どうせ当たりませんよ」

兄「送ることに意義があるんだよ」

姉「はいはい、切手は自分で買ってきてくださいよ?」




545:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 01:02:35.76 ID:XPJbwliF0
【閑話】 箱入り……

数週間後

兄「当たった……だと……」

姉「一生分の運を使い果たしましたねお父さん?」

兄「なぜか素直に喜べない、ハズれたらそれで笑いを誘おうとおもっていたのに……当たっちゃうなんて……空気の読めない芸人みたいじゃないか……」

姉「まぁまぁ、開けてみましょうよお父さん」

兄「あぁ、そうだな」

パカー

姉「……これは……! お父さん!」

兄「なんだお母さん?」

姉「このノートPC……! ハコだけで中身が入っていません!」

兄「……」キラーン

姉「……」キラリーン




546:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 01:05:19.95 ID:XPJbwliF0
【閑話】 箱入り……


妹「……」

妹「……」

妹「……」

妹「……なんでパソコンの代わりにあたしがダンボールに入ってるの?」

兄・姉「これが本当の箱入り娘」

妹「アホか」




547:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 01:09:01.05 ID:Cscd1HCg0
いいぞもっとやれ





548:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 01:23:54.67 ID:XPJbwliF0
【閑話】 春夏秋……?


兄「春といえば?」

姉「花粉症」

兄「夏といえば?」

妹「うみ!」

兄「秋といえば?」

妹「もみじ!」

兄「冬といえば……」


兄・姉・妹「こなぁあああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜雪ぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」


兄・姉・妹「ねぇ」




549:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 01:28:20.81 ID:0EDf7sTLO
いいぞいいぞ




550:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 01:30:40.31 ID:XPJbwliF0
【閑話】 粉雪といえば?


妹「れみろめん」

姉「レミオロメンですよ」

妹「れみろめん♪ れみろめん♪」

兄「れみおろーめん」

姉「冷やしそーめん」

兄「つたんかーめん」

姉「むしろレミオロメン」

妹「れみろめん♪ れみろめん♪」




551:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 01:34:00.75 ID:XPJbwliF0
【閑話】 お金がない!


兄「トシがバレるぞ」

姉「いいんですよ、20代後半って事になってるんですから」

兄「姉上……?」

姉「あらあら、うふふ?」




552:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 01:36:56.17 ID:XPJbwliF0
【閑話】 猫と猫


ニー

ニャー

ニーニー

ニャーン?

ニー!

ニャァァァ

……ニー

ニャーニャー



ニャ




587:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 21:16:24.53 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ◇ ◇


兄「猫はどこへ消えた?」

姉「チーズを探しているのでは?」

兄「あの本はなかなか面白かったな」

姉「そうですね、ところで」

兄「あん?」

姉「にーとにゃーはどこに?」

兄「そうだな、グリとグラはどこに行ったんだろうな」

姉「そんな安直なボケはスルーですよ?」

兄「なっ」

姉「うふふ」




589:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 21:21:26.21 ID:XPJbwliF0
兄「焼き芋の匂いにも釣られず、あいつらは一体どこへ行ってしまったというのだ」

姉「きっとお腹が空いたら帰ってきますよ」

兄「ふむ、家出少年か」

姉「さて、あの子もお泊りに出かけた事ですし。我々はどうしましょうか兄上」

兄「お母さん言葉と姉上言葉が最近ごちゃ混ぜだな姉上」

姉「む」

兄「慣れとは恐ろしいものよの」

姉「確かに、だがバカにしないで欲しい」


兄「バカにしない〜でよ〜」

姉「そっちのせいよ〜」

兄「ちょっと待って」

姉・兄「プレイバック♪ プレイバック♪」




590:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 21:22:40.41 ID:XPJbwliF0
兄「いま〜の言葉」

姉・兄「プレイバック♪ プレイバック♪」


姉「ほら、鈍ってはおるまい?」

兄「たしかに」




591:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 21:31:38.57 ID:XPJbwliF0
姉「それにしても、グリとグラか」

兄「懐かしいだろ?」

姉「昔兄上が拾ってきたんだったな」

兄「そのわりに俺に全然懐かない猫達だったな、気まぐれな奴等だったよ、結局どっか行っちまったしな」

姉「私には随分と懐いていたが?」

兄「動物の心は謎のヴェールに包まれてるんだ、たぶん」

姉「得意の心理学で解き明かしてみたまえ」

兄「残念だが俺のとは分野が違う、仮説から実証・実験を繰り返すという意味ではある意味近いかもしれんが」

姉「ふむ、久しぶりに大学に戻りたくなったよ」

兄「復職なさるので?」

姉「そうだな、だがあの子の育児が一区切りついてからにしようと思っている」

兄「そういえば教授が’手のかかるお前が残って優秀な姉が離れていったのは残念だ’とか嘆いていたな……」




592:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 21:38:31.94 ID:XPJbwliF0
姉「兄上は教授の懐刀だと思うよ、それはある意味愛情の裏返しだろう」

兄「どうりで面倒な書類を俺におしつけて悠々と地方の講演めぐりをしてるわけだよ」

姉「助手とはそういうものだよ、ワトソン君?」

兄「なるほど、すげー納得だわ。俺ってワトソン君だったのか」

姉「いいじゃないか、教授のおかげで講師の期間が短く済んだんだろう?」

兄「まぁそうなんだけどね、年齢だけで評価しないうちの査定に感謝だよ」

姉「真っ当に研究を続けていれば評価される、ありがたい時代だよ。昔はそうじゃなかったと多々聞くからな」

兄「そうだな」




593:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 21:41:24.10 ID:XPJbwliF0
姉「……ふむ」

兄「どうした?」

姉「実はな、お前にずっと黙っていた事がある」

兄「黙っていた事?」

姉「いや、別にそんな大層な事ではないのだが」

兄「なんだよ改まって」

姉「というか、私の勝手な──」


Prrrrrrrrrrrr......


姉「む? すまん、出てもいいか?」

兄「いいよいいよ」

姉「もしもし?」




594:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 21:48:36.46 ID:XPJbwliF0
ピ

姉「君か、随分久しぶりだな」

姉「私の記憶では君がアメリカに渡ってから初めての電話だよ」

姉「え? 本当か? 今日本に?」

姉「へぇ、それはそれは」

姉「君とは古い仲だからな、いつでも歓迎だよ」

姉「ん? そうか」

姉「まぁ向こうの裁判で忙しいだろうからな、こっちは暇な時で構わないさ」

姉「私か? 私は今、絶賛子育て中だ」

姉「む? そんなにおかしいか?」

……………………
…………
……




595:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 21:51:13.07 ID:XPJbwliF0
兄「ふあぁ……、長電話だな姉上……」

兄「あの子もお泊りに出かけてるし……姉上は電話の真っ最中」

兄「遊ぶ相手がおらーーーーん」

兄「土曜日の午後だというのに、暇すぎる」

兄「というわけで寝るか……」

兄「Zzz……」

兄「Zzz……」

……………………
…………
……




596:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 21:55:12.64 ID:XPJbwliF0
姉「ああ、それではまたな」

ピ

姉「兄上〜?」

兄「Zzz……」

姉「全く……よくこんなソファーで寝られるものだな」

兄「Zzz……」

ファサッ

姉「これでよし、と」

カキカキ

姉「書置きしておけば買い物にいった事くらいわかってくれるでしょう」

姉「さーて、今日の晩御飯は何にしましょうか」

姉「それじゃ、行ってきますよ。お父さん?」




598:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 22:03:47.56 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ◇ ◇



ああこりゃ夢だ、俺は今夢をみている。




夢だってわかってるから夢だ。

なんで夢ってわかるかって?

そりゃあんた、何度も見てるからいやでもわかるのさ。

それは、俺と姉上が小学校の卒業式を終えた夜の話。




599:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 22:12:45.95 ID:XPJbwliF0
4月生まれの姉上に、

3月生まれの俺。

ほとんど1年離れているけど、日本の制度じゃギリギリで同じ学年だ。

入学してから同じクラスに入れられて、児童の数もそれほど多くない学校だったので結局6年間一緒に過ごす事になった。

女子からはいつもいつも弟とか弟くんとか言われて、当時は意味わからなかったけどたぶん面白がられてたんだと思う。

当然、姉弟だから比べられる事もたくさんあった。

例えば姉上はテストというテストでは毎度毎度殆ど満点かそれに近い点数をとってくる。

俺はよくて半分を超えるか超えないか、頭は悪くはないが良くもない。

ならば運動ではとマラソン大会で競争をしたらアッサリと負けてしまった。

俺の姉はスーパーマンじゃないだろうか? という疑問を抱き始めたのはその頃からだった。

よく考えたらスーパーマンじゃなくて、スーパーウーマンだったな。アホか当時の俺。……誰がアホじゃ。




604:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 22:24:40.86 ID:XPJbwliF0
で、何だか悔しくてこの際「姉上より目立ってやろう」と思って学級委員に立候補したら僅差で姉上に負ける始末。

男子20人女子20人のクラスで、姉上に21票、俺に19票だった。……おい誰だ一人姉上に投票しやがった男子。

とまぁ。

こんな具合にいつも俺の前を歩いている存在、それが姉だった。

なんだかんだと俺もそんな関係に甘んじていて、買い物を行くのもいつも姉の後ろを歩いたし、姉の友達ともよく遊んだ。

友達の女子が家に来たら、部屋でゲームをやっていた俺の耳をひっぱって自分の部屋につれていき、何故かママゴトで俺にお父さん役を演じさせる。

「20年会社に勤めたが最近下からは叩き上げられ、上にはゴマをするが見向きもされなくなって、気が付けば窓際に机が配置されているサラリーマン」

とか。

「音楽で一山当てる夢を持って上京してきたが、結局夢が叶わずにCDショップの店員になった男が、ひょんな事から知り合った若手女性アーティスと恋に落ちる」

とか。

毎回毎回謎にリアルな設定を持ち込むもんだから、その度に演じさせられるこっちは大変だった。

あ?

そうだよ、あいつらママゴトがしたいんじゃなくて、困ってる俺の顔を見たいんだよ。




605:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 22:35:06.72 ID:XPJbwliF0
ある日学校へ行くと、同じクラスの男子が泣いていた。

何事かと思ったら隣のクラスの男子に殴られたという。

……だったら、戦争だろうか。

昼休みに体育館裏で繰り広げられる喧嘩。

俺は体が他のヤツより一回り小さかったから、体格差でそもそも不利だ。

10回やったら6回負けた。

けど4回はこっちの勝ちだ。

なんでそんなにいっぱい喧嘩したのか、理由はもう覚えていないけど。

たぶん友達が泣かされるのが許せなかったんだと思う。




606:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 22:36:31.21 ID:XPJbwliF0
けれど、その相手も懲りないヤツだった。

何回も何回もちょっかいをだしてきて、しまいにはクラスの男子総出の喧嘩に発展。

服はボロボロになるわ、鼻血は出るわで大変だった。

さすがに姉も見るに見かねたのか「何があったんだ」と聞かれたので「男の浪漫」と答えたら殴られた、一番痛かった。

なぜかその後に喧嘩相手の男子が俺のクラスに来て

「もう二度といじめなんかしないから許してくれ」

と謝ってきた。

その瞬間、姉を見たが知らないふりをしていたので俺もしらないふりをした。




607:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 22:41:03.58 ID:XPJbwliF0
ああそうそう。

こんなやりとりもあった。


「なあ、ねーちゃん」

「なんだ弟」

「その弟って呼ばれるの、嫌」

「嫌も何もお前は私の弟だろ?」

「でも同じ学年だ、同じ学年で同じクラスなのに弟なのはおかしい」

「へりくつだな」

「へでも理屈だ」

「だったら何と呼べばいいのだ?」

「にーちゃん」

「阿呆」




610:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 22:42:37.61 ID:XPJbwliF0
どうやら日本では姉が俺に対して「阿呆」と言う度に俺の頭にたんこぶができる法律が成立したらしい。

けれど、かくして俺の呼び方は弟から兄上になった。

結局姉から「にーちゃん」と呼ばれた事は、まだ一度もない。

おそらくそれが姉の中で精一杯の妥協だったのだろう。




612:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 22:47:45.46 ID:XPJbwliF0
なんで「にーちゃん」って呼んで欲しかったって?

いや、だってほら。

そっちの方がいいじゃない?

え?

わかんない?

そんな年頃だったんだよ。




613:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 22:53:21.27 ID:XPJbwliF0
もし俺に妹が居たら気軽に「にーちゃん」って呼んでくれるかなーとか思って

親に「妹が欲しい!」って言ったら苦笑いされたよ。



とにかくまぁ。

そんな「普通の小学生」だった俺と姉。

答辞を読む姉の姿が今でも印象に残っている。

先生達と離れ離れになるのは辛かったけど、逆にこれからどんな中学生活が待っているのか

わくわくの方が大きかった。

私立中学に行く人を除けばほぼ全員が同じ中学にスライド入学する。

あまり代わり映えしない面子で、これからもバカをやっていくんだろうな。

そんな事を思っていた。

その日の夜までは。




614:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 22:59:38.53 ID:XPJbwliF0
嵐の前の静けさとはこのこと。

消える猫たち。

音もなく忍び寄る何か。

所詮幸せなんてもんは一瞬にして消えてしまうって事を知った。

沈む船からはネズミが居なくなるという話を聞いた事がある。

もしかして、グリとグラが消えたのはその「何か」を察知したからではないだろうか。

そして、自分の身を隠した。

沈む家から逃げ出したんだ。

動物の心はわかんねぇけど。

たぶん、そうじゃないだろうか。

……勝手な俺の仮説だけどな。




615:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 23:03:22.42 ID:XPJbwliF0
卒業式のその夜。

父親と母親は家に俺と姉上を残してどこかへ行ってしまった。

それから、俺と姉の孤児院での生活が始まる事になる。




625:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 00:43:17.34 ID:XPJbwliF0
────────
────
──


兄「……あん?」

しーん

兄「……あぁ……寝てたのか……」

兄「姉上は……、買い物か」

兄「ふあぁ……もう4時か、結構寝てたなぁ」




626:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 00:45:34.91 ID:XPJbwliF0
兄「まーたあの夢か、しょうもな」

姉「何が夢だ?」

兄「おかえり」

姉「ただいま、随分寝ていた様だな」

兄「おかげさまで」

姉「ふむ、そんな兄上の為に今日はニンニク料理だ。精々体力をつける事だな」

兄「なんのだよ」

姉「ご想像におまかせしよう」

兄「……面白がってるだろ」

姉「当たり前だ」




627:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 00:52:17.49 ID:XPJbwliF0
兄「ところでさっきの話って何だったんだ?」

姉「さっき? はて?」

兄「?」

姉「私は何か話そうとしていたか?」

兄「忘れたんか」

姉「待て、忘れてはいない。思い出せないだけだ」

兄「え? どう違うのそれ?」

姉「そうだな……た〜と〜えば〜♪」


兄「ゆる〜い幸せが〜だらっと〜つづいたとする〜♪」

姉「きっと〜、わるいたねが目をだして〜♪」

兄・姉「さよならなんだ〜♪」




628:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 00:54:17.37 ID:XPJbwliF0
兄「まったく、もうすぐ夜だというのに」

姉「派手なレコードをかけるか?」

兄「ネタフリじゃねえよ!」

姉「ふむ、寝た振りとネタフリをかけるとは……ウデを上げたな?」

兄「え? ギャクを解説されるとすごい恥ずかしいんだけど」

姉「ふふっ」




629:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 00:58:05.21 ID:XPJbwliF0
姉「ふむ」

兄「どったの?」

姉「にーとにゃーはまだ帰ってないのか?」

兄「その様だな」

姉「まったく、どこをほっつき歩いているのか」

兄「探すか?」

姉「そうだな、散歩がてらすこし歩こうか?」

兄「合点承知でござる」




630:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 00:59:54.05 ID:9+VAiXW70
ちょっとまて・・・嫌な予感がするぞ・・・




631:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:02:14.03 ID:XPJbwliF0
兄「おーーーーい、ねこーーーー、どこだーーーー」

姉「鳴き声を真似たら出てくるかも」

兄「ぬーーーーーー」

姉「絶対に出てこないだろうな、むしろ避けるぞ」

兄「ぬーーーーーーー」

姉「まったく、そんな声で出てくるわけが」

ニャオー

兄「お?」

姉「なん……だと……」




633:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:08:12.87 ID:XPJbwliF0
兄「いや、こいつにーでもにゃーでもないな。にゃおーっつったぞ?」

姉「ぶち猫だ」

兄「首輪がついてる、たぶんどっかの飼い猫だろ」

姉「はて、うちの猫に首輪など付けていましたっけ」

兄「……いや、あの子が’首輪なんて苦しそうだから辞めてあげよ?’って言ってたからな」

姉「ふむ、外見だけが頼りですか」

兄「あとはフィーリングだな、あいつら俺のこと超好きだから絶対寄ってくるぞ」

姉「何ですかその自信は」

兄「勘?」

姉「何故疑問系」

兄「勘的な何か」

姉「意味がわかりません」

兄「はっはっは」




634:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:11:12.85 ID:XPJbwliF0
姉「にー、にゃー。出ておいでー」

兄「でてこーい」

姉「ふむ……見つかりませんね」

兄「まだ15分くらいしか経ってないじゃないか、これからだよ。かくれんぼは得意だ」

姉「唯一得意な遊びでしたよね」

兄「あんまり隠れすぎるから姉上が帰った時は泣いたな、そういえば」

姉「時効です」

兄「時効にできる程思い出とは簡単に消えてはくれないものなのだよ」




635:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:16:26.39 ID:XPJbwliF0
姉「児戯ですから」

兄「ジギなんて言葉久々に聞いたぞ、びっくりした」

姉「ふふ」

兄「にしてもあいつらどこ行ったんだろうな」

姉「かくれんぼチャンピオンもこの程度ですか?」

兄「む?」

姉「チャンピオンが聞いて呆れますね」

兄「ククク……ヤツは我々四天王の中でも最弱のチャンピオンよ……」

姉「そうですか、じゃあさっさと移動しますよ」

兄「はい」




636:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:22:32.22 ID:XPJbwliF0
兄「おおーーーい、猫やーーーい」

姉「ねこーーー」

兄「でてこーーい」

姉「でておいでーーー」

兄「ねこーーー」

姉「どこーーー」




637:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:24:54.63 ID:XPJbwliF0
────────
────
──

兄「……アペプー」

姉「どんな声ですかそれ」

兄「ぐうの音だ」

姉「ギブアップですか」

兄「お腹がすいて力がでない……」

姉「おや? もうそんな時間ですか」

兄「アンパンマンはっ、きみっさ〜!」

姉「私は君の姉だ」

兄「つっこむ力も無くなったか姉上」




639:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:31:21.09 ID:XPJbwliF0
姉「仕方ない、今日はそろそろ帰りましょうか」

兄「いや、……俺はもうちょっと探すよ」

姉「…………………………………………、ねぇ」

兄「ん?」

姉「なんだか、あの日を思い出しませんか? 私達、いつの日だったかこれと全く同じ事をしましたよね?」

兄「……」

姉「……もう、忘れてしまいましたか?」

兄「忘れもしないよ」

姉「そうですか」

兄「グリとグラが消えて……」

姉「……」

兄「父親と母親も消えたんだからな」




640:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:34:55.29 ID:XPJbwliF0
姉「例えば、ゆるい幸せがだらっと続いたとするじゃないですか」

兄「?」

姉「きっと、悪い種が芽を出すと思うんですよ」

兄「……うん」

姉「そしたら、さよなら……なんですかね」

兄「だとしても、だ」

姉「?」

兄「少なくとも俺達は、あの日とは違う。あの時は子供で、今は大人だ」

姉「違う結末が待っている……と?」

兄「俺達はどこにも行かない、あの子を置いて消えたりしない。そうだろ? 姉上よ」

姉「……」

兄「姉上?」




642:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:40:36.86 ID:XPJbwliF0
姉「………………」


姉「…………」


姉「……」


兄「ん? どうしたんだ?」

姉「昔の知り合いが警察に所属していたんです」

兄「ほう?」

姉「彼女は今、アメリカに住んでいます」

兄「アメリカとな?」

姉「そうです」

兄「ん? なんで今その話に?」

姉「最後まで聞いてください」

兄「お? おう」




643:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:46:41.63 ID:XPJbwliF0
姉「彼女のツテを頼って、とある調べモノをお願いしたんです」

兄「何を」

姉「あの子の身元です」

兄「──っ!」

姉「……」

兄「わかったのかっ?!」

姉「ええ、わかりましたよ。まさかこんなに簡単にわかるなんて思いませんでしたけどね」

兄「……そうか……、ははは、良かった。良かったじゃないか」

姉「知りたいですか?」

兄「え?」

姉「だから、知りたいですか? と聞いているんです」

兄「どういう意味だ」

姉「言葉のままですよ」




644:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 02:04:58.48 ID:XPJbwliF0
兄「当たり前じゃないか、教えてくれ」

姉「覚悟はいいですか?」

兄「覚悟、一体何の……」

姉「だから、言葉のままですよ」

兄「姉上、さっきから何をそんなに震えて……?」

姉「グリとグラは消えました、それは事実です」

兄「?」

姉「にーとにゃーも、消えちゃったじゃないですか」

兄「まだ消えたと決まった訳じゃ」

姉「そして今度は、今度は……私達です」

兄「……俺たち?」

姉「そうですよ……今度は、私達がっ!! あの子の、前から!! 消えるんですよ!!!!」




645:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 02:11:18.89 ID:XPJbwliF0
兄「どういう事だ姉上、さっぱり話がわからない」

姉「私はっ……こんな! こんなっ、事だっ、とは、思いっ……ません、でした……」

兄「落ち着け姉上!」

姉「こんなっ……人っ、を……バカっ、に、して……」

兄「いかん……過呼吸だ、おい姉上、それ以上喋るな!」

姉「親を……、命を……、なンだと思って……」

兄「姉上……」

姉「……く、……そ」

くたり

兄「……これほど姉上が取り乱すとは……何事だ……」




646:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 02:17:02.90 ID:XPJbwliF0
兄「とりあえず、背負って帰るか、大丈夫か姉上」

姉「ああ……すまない……」

兄「よ……しょっと」

姉「……すまない……、重くないか?」

兄「軽い軽い、日ごろ育児の疲れがたまっているんだろう、ゆっくり休むといい。話ならその後で聞こうじゃないか」

姉「ああ……すまない……」

兄「安心しろよ」

姉「うん?」

兄「猫なら見つける、俺達は消えない。以上だ」

姉「……君の背中は落ち着くな」

兄「ゆりかごから墓場まで」

姉「……?」

兄「人はいつゆりかごから出ればいい? 死ぬ時か? そんな訳あるか。けど、大人がゆりかごを使っちゃいけないなんてルールはどこにもない」

姉「……屁理屈を」

兄「屁でも理屈だ」




647:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 02:20:48.05 ID:XPJbwliF0
姉「君は変わらないな」

兄「変わったさ、少なくとも前よりは賢くなった、本も読むし新聞も読む、小難しいニュース番組も見るしラジオだって聞くぞ?」

姉「根本的には同じだろう、阿呆な所が」

兄「それ言われたら何も言い返せないんですけど」

姉「ふふ、前にも一度こうやって君の背中に乗った事があったな」

兄「そうだっけ」

姉「ああ……私が丁度あの子くらいの時だったか」

兄「もう忘れたよ」

姉「……そうか、ではそういう事にしておこう」




648:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 02:25:24.04 ID:XPJbwliF0
姉「……弟よ」

兄「あんだよ」

姉「お父さんとお母さんの事、今でも恨んでいるか?」

兄「……当たり前だろ」

姉「そうか」

兄「俺らを捨てたんだからな、唯一感謝するならこの世に生んでくれた事くらいか。あとは全部恨みだ」

姉「そうか」

兄「どうしたんだよ、今更。確認するまでもないだろ?」

姉「実は最近夢を見てな」

兄「夢?」

姉「ああ、私が居て弟が居て、お父さんが居てお母さんが居て、グリが居てグラがいる。家族で揃ってカレーを食べていた」

兄「……」

姉「有り触れた光景だよ。まるで、あえて語るまでも無いごく普通の家族だ」

兄「そうだな」




649:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 02:29:40.47 ID:XPJbwliF0
姉「でも……みんな笑顔だった……」

兄「そうかい」

姉「なぁ」

兄「なんだよ」

姉「私は、今でも家族とは良いものだと思っているよ」

兄「何を今更」

姉「……だからこそ」

兄「あん?」

姉「私達は……」

兄「……」

姉「……」

兄「おい? 姉上?」

姉「……」

くー

兄「……ったく、寝ちまったか。どんだけ無防備なんだよ……」




651:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 02:33:17.61 ID:XPJbwliF0
ガチャ


兄「ただいまー」

兄「……って、あの子はお泊りだったなそういえば」

兄「っと、姉上、ついたぞ」

姉「……すー……すー……」

兄「そうだった、一度寝ると大抵の事じゃ起きないんだったな……」

姉「……」

兄「仕方ねぇ、部屋まで……よっと」

姉「……すー……すー……」

兄「綺麗な顔してるだろ……、うそみたいだろ? 俺の姉なんだぜ?」




653:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 02:37:59.84 ID:XPJbwliF0
兄「……ふぃー」

兄「……つかれたなぁ……」


ぐぅううううう〜〜〜〜


兄「……はら、へった……」




655:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 02:42:24.33 ID:XPJbwliF0
ガチャ

兄「ふむ……麺とキャベツとニンジンがある、あとニンニクも」

兄「体力ってこの事だったのかな」

兄「ったく、それで倒れてりゃ世話ねーよ」

兄「ヤキソバでも作るか……」

兄「ふむ」

トントントントン

ジュージュー

テキパキテキパキ

ジュージュー

兄「3分クッキング並の手際の良さで完成だっ」

兄「我ながら良いデキだろう」

パクッ

兄「うまい!」

テーレッテレー




656:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 02:48:52.93 ID:XPJbwliF0
姉「……ん、良い匂いがする」

兄「俺特製のヤキソバだ、食え」

姉「んむ、いただこう」

兄「まず手を洗ってくるんだな、はっはっは」

姉「む……いつもと立場が逆だな」

兄「そうだな」


姉「さて、いただくよ」

兄「……」ごくり

姉「……」

兄「……」どきどき

パクッ

姉「…………。こ……、このヤキソバを作ったのはだれだぁ!」

兄「わ、私です」

姉「……うまい!」

兄・姉「テーレッテレー!」




657:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:00:28.45 ID:XPJbwliF0
兄「ふむ、復活だな姉上よ」

姉「そうだな弟よ」

兄「む?」

姉「ん?」

兄「いや、なんでもない」

姉「そうか?」

兄「ああ」

姉「人生は喜劇、だな」

兄「三島由紀夫か?」

姉「バーナードだ、まぁ、どちらでもいい。人生は一度きりしかない、大いにこの状況を、人生を謳歌しようではないか」

兄「……そうだな」

姉「うむ」




658:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:04:04.61 ID:XPJbwliF0
兄「ところで姉上、話とは?」

姉「うむ? 話とな?」

兄「?」

姉「私は何か話そうとしていたか?」

兄「え、あ。うん。……忘れたの?」

姉「忘れてはいない。思い出せないだけだ」

兄「ちょっと待て……2回目だぞこれ」

姉「繰り返しのギャグを知らんのか」 

兄「ブオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーン!!」

姉「君はアイランドクジラか」

兄「ヒト科の人間です」

姉「そうか、それではヒトヒトの実でも食べるといい」

兄「そして、ヒトと成る……誰がじゃ!」

姉「ははっ」




659:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:10:32.73 ID:XPJbwliF0
さっさと猫達を探してしまおう、きっと近所で油を売ってるに違いない。

あいつらは何だかんだ俺(ついでにあの子)に懐いているから、きっと帰ってくる。

あいつらが帰ってきたら食べ損ねた焼き芋でも作ってやって、また皆で食べよう。

お金はあんまりないけど、家族3人小さい幸せをいっぱいにして生きていこう。

いけるかな? いけるさ。だって俺はあの子の前から消えたりしない。

あの子の親が例え誰であってもそうさ。これからも3人でやっていくんだ。



……そんな。


だらりと続くかのように思われたゆるい幸せは。


俺の意思とは裏腹に、さよならへと続いていくことになる。




661:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:13:40.21 ID:XPJbwliF0
◆ ◆ ● ◆ ◆


世界が真っ黒だった。

あたしは夢をみている。

夢だと思うからたぶん夢だ。


あたしにはお父さんとお母さんがいる。

お父さん、すき。

お母さん、すき。

ふたりとも、だいすき。


あたしにはペットの猫が二匹いる。

にーちゃん、すき。

にゃーちゃん、すき。

みんなみんな、だいすき。




662:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:16:08.27 ID:XPJbwliF0
けれど猫の鳴き声が聞こえないの。

にーちゃん。

にゃーちゃん。

どこ?

どこなの?

どこにいってしまったの?

それともあたし、耳が聞こえなくなっちゃったのかな。

あたしは二匹を探す。

どこにもいない。

学校からの帰り道の途中にある空き地。

土管の中にもいないし。

お隣の庭にも居ない。

花壇の中にも居ないし。

家の中にも当然居ない。




663:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:18:24.41 ID:XPJbwliF0
あれ?

そういえばさっきから目の前が真っ暗だ。

どうしたのかな。

目が見えなくなっちゃったのかな。

光は、光はどこだろう。

真っ暗だ、何も見えない。

何も、何も。なぁーんにも。

お父さんも、お母さんも。

何も、誰も。

にーちゃんも、にゃーちゃんも

みんなみんな、

居ない。

「もーいーかい?」

まーだだよ。

その返事は、無い。




664:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:19:54.66 ID:XPJbwliF0
なんでだろう、みんな、どこに行ってしまったんだろう。

大声で叫ぶ。

あれ?

今度は声がでない。

おかしいな。

もういっかい。

あれ……?

おかしいな。

全然、声が、でない。

声が、でないよ?

こえ、でないよ?

──、────?




666:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:21:45.43 ID:XPJbwliF0
次の瞬間

何かに抱きかかえられる様な感覚に襲われる。

何か、大きい何かに。

ふわりと体が浮かぶのがわかる。

足が地面とばいばいして、誰かに抱えられている。

でも見えない、聞こえない、助けての言葉もでない。

けれどわかる。

わかるんだ、匂いでわかるんだ。

お父さんじゃない、お母さんじゃない。

にーちゃんじゃない、にゃーちゃんじゃない。

誰? だれなの?

はなしてよ、はなして。

はなしてよ!




667:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:24:36.78 ID:XPJbwliF0
────────
────
──


女の子「ちょっと!」

妹「うぅ……はなして……」

女の子「ねぇ? ねぇ、大丈夫?」

妹「やだ……はなしてよ……うぅ……」

女の子「起きなさいっ!!」

妹「……ふぇ?」

女の子「起きた?」

妹「……お母さん?」

女の子「バカ、私よ。寝ぼけないで」

妹「……あ。ご、ごめん」




668:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:27:30.43 ID:XPJbwliF0
女の子「何だかうなされてたみたいだったから」

妹「……うん」

女の子「怖い夢でも見たのかしら?」

妹「ちょっとだけ……」

女の子「どんな夢?」

妹「えっとね」

女の子「うん」

妹「お父さんも、お母さんも、にーちゃんも、にゃーちゃんも……みんなみんな、居なくなっちゃうの」

女の子「うん」

妹「それで、あたし、誰かに連れられて、ううん。……それで……ふぇっ」

女の子「……もう、そんな泣いちゃって。怖かった?」

妹「ふえっ、ふえぇ……ふえぇぇぇええええん」

ぎゅ

女の子「よしよし」

妹「うえぇぇええええ〜〜ん」




670:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:54:43.77 ID:LK3rkGMt0
気になり過ぎて作業が手に付かない




671:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 04:05:38.71 ID:XPJbwliF0
なでなで

なでなで

女の子「うんうん、怖かったね? もう大丈夫だから」

妹「う〜〜〜」

女の子「大丈夫、大丈夫」

妹「……うん」

女の子「落ち着いた?」

妹「……うん、ありがと」

女の子「どういたしまして」




673:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 04:50:09.65 ID:XPJbwliF0
女の子「ねぇ」

妹「うん?」

女の子「今から話す事は、私の友達の話ね?」

妹「うん」

女の子「その子は、理由があって本当のお父さんお母さんとは離れて暮らしていたの」

妹「え?」

女の子「でもね、ずっと楽しそうだった。私は羨ましかった、その時私のお父さんとお母さんは喧嘩してたから」

妹「……そうなんだ」

女の子「でも離れていても家族なんだって、その子は言ってた」

妹「……つよいね」

女の子「ふふ、あの子ったら’畑で取れたものはみんな野菜。スイカもメロンのイチゴも……だからみんな一緒の家族だ’なんて言ってたっけ」

妹「ヘンな子だね!」

女の子「そう、ちょっと変わってるわよね。でもね」

妹「うん?」

女の子「私も、そう思うんだ」




674:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 04:57:13.15 ID:XPJbwliF0
女の子「……ま、よーするに」

妹「うん」

女の子「そんな心配しなくても、あなたのお父さんとお母さんはちゃーんと家にいるから、安心して寝てもいいのよ」

妹「なんだか……おかあさんみたい」

女の子「よろこんでいいのかしら?」

妹「うんっ」

女の子「そ、じゃあ安心したところで寝ましょう」

妹「うん、おやすみっ」

女の子「おやすみー」

妹「……Zzz」

女の子「私ったら何でこんな話……」

妹「……すー……すー……」

女の子「……ふふ、すっかり安心して寝てるわね」

妹「……Zzz」

女の子「あなたとは良い友達……、ううん。ライバルになれそうね」




675:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:15:09.35 ID:XPJbwliF0
◇ ◇ ◇ ◇


姉「ふむ」

兄「うむ?」

姉「私達もそろそろ寝ようか」

兄「む? もうそんな時間か?」

姉「ああ」

兄「そうか、じゃあ歯磨きをして」

姉「ああ、だがその前に」

兄「うん?」

姉「話をしよう、私達の両親の話だ」

兄「……断る、今更話す事なんてないだろ」

姉「そうか、……まぁムリにとは言わないが」




676:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:17:56.59 ID:XPJbwliF0
兄「どうしたんだ姉上、今更両親の話なんか」

姉「いや……その、あの、だな」

兄「?」

姉「実は」

兄「実は?」

姉「……驚かないでくれよ? いや、君の事だからおそらく怒るかもしれないが、とにかく冷静になって欲しい」

兄「ああ、別にいいが?」

姉「来るらしい」

兄「来るって?」

姉「いや、だからな」

兄「?」

ピンポーン

兄「……? こんな時間に誰だろう?」




677:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:20:06.37 ID:XPJbwliF0
姉「……私は奥に行っていていいか?」

兄「あ? あぁ、いいけど?」

姉「頼むよ」

兄「ああ、あれだったら先に寝ててもいいぞ?」

姉「……」

ピンポーン

兄「はいはい、んな呼ばなくても聞こえてますよーっと」




678:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:22:12.45 ID:XPJbwliF0
ピンポーン

兄「はいはい、いま空けますよーっと」

ガチャ

「ただいま」

兄「……」

「……」

兄「……?」

「……」

兄「……」

「……お前、弟か?」

兄「そうですけど、どちら様?」




679:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:26:33.40 ID:XPJbwliF0
「そうかそうか、でかくなったな」

兄「……はぁ」

「お姉ちゃんはいないのか?」

兄「姉は居ますが、寝ています」

「む? そうなのか」

兄「ええ、はい……あの、どちら様ですか?」

「わからないか?」

兄「ええ、すみません」

「私はな」

兄「?」

「お前の父だ」

兄「……はい?」




680:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:31:35.28 ID:XPJbwliF0
父「ただいま、弟。また家族5人で一緒に暮らそうじゃないか」

兄「……誰?」

父「お前の父である」

兄「俺の父親死んだ」

父「感動の再会に何を意地張ってるんだ」

兄「死んだ人間が何を言う」

父「帰ってきた」

兄「そうか、ではお引取り願おう」

父「ちょっと待ちなさい、久しぶりに帰ってきたのにそりゃないだろう」




681:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:34:31.30 ID:XPJbwliF0
兄「何を言っているのか理解できないな」

父「強情だな息子よ」

兄「他人が知ったような口を」

父「信じられない気持ちはわかる、こうして会うのはあの日以来だものな」

兄「あの日とはどの日の事だろうか」

父「お前とお姉ちゃんの卒業式の日だよ」

兄「知らん」

父「知っているだろう」

兄「何の事を言っているかわからないが、とにかく俺の父親は死んだ。だったら貴方はどこの誰だ? お引取り願おう」




682:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:37:17.51 ID:XPJbwliF0
母「弟くん、ただいま」

兄「……おや、こちらのご婦人は?」

父「お前の母親だ、顔くらい覚えているだろう?」

兄「すまないが最近物忘れがひどくてな、1週間前の晩御飯のレシピも思い出せないんだ」

父「それは正常だ」

兄「うるさい」

母「私はあなたの母親ですよ」

兄「俺の? 俺の母は死んだ、10年以上前にな」

母「生きてますよ、ほら。足もある」

兄「だったら俺は新しい幽霊を見ているに違いない、最近は足のある幽霊も出ると聞く」

母「この子ったら照れちゃって」

兄「なっ?! 触るなっ?!」




683:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:39:57.65 ID:XPJbwliF0
父「なあ息子よ、お前がそういう態度をとる気持ちは充分理解できる。ある意味こっちにとっては想定の範囲内だ」

兄「俺にとっては範囲外です」

父「だったらお互い話し合おうじゃないか、時間を埋めるには言葉が必要だ」

兄「ならば」

父「うん?」

兄「壁にでも話しておくといい、その方が文字通り建設的だろう」

父「はっはっは、面白い事を言う様になったな。お姉ちゃんの真似か?」




684:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:44:19.36 ID:XPJbwliF0
兄「……ち、俺らを捨てたその二人が今更この家に何の用だ」

父「久々にお前らの顔が見たくなってな」

兄「……平気でその台詞を吐く神経を疑う、仮に貴方が親であった場合の話だがな」

父「悪かったよ」

兄「安い言葉だな、そんな言葉で俺の心をどうかできるとでも?」

父「思わないさ、だが私達は今日こうして戻ってきた。この意味をわかってほしい」

兄「知るか」

父「ふむ……このままでは一方通行だな」

兄「道があるとでも思っているのか? 平行線だ、交わることはあるまい」

父「揚げ足を取るのがうまくなったじゃないか、やっぱりそれお姉ちゃんの真似だろ? はっはっは、似てるなぁ」

兄「やかましい!」

父「っと……あんま大声だすなよ、もうこんな時間なんだしご近所さんに迷惑だろう?」

兄「貴方は我が家の迷惑は考えないのか?」

父「我が家だ、私の家でもある」

兄「はっ?! どの口がそんな台詞を?」




688:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 06:05:01.46 ID:XPJbwliF0
父「とにかく、また家族5人で暮らそうじゃないか」

兄「やかましい、帰れ。ここは俺の家だ」

父「お前の家じゃない、元は俺の家だ」

兄「借家に出されていたものを借りている、俺の名義だ」

父「金なら出そう」

兄「金の問題ではない」

父「売り言葉に買い言葉だな、冷静になろうじゃないか」

兄「俺は冷静だ!」

父「何をそんなに怒っている、家族なんだから一緒にいるのが当たり前じゃないのか?」

兄「どの口が……そんな台詞を……ッ!!!」

父「私はお前らの顔がみたくて必死で働いてだな」

兄「……?」

父「ん? どうした?」

兄「いや、ちょっと待て。さっき何と言った?」

父「あん?」




690:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 06:06:52.84 ID:XPJbwliF0
兄「答えろ、お前はなぜ戻ってきた?」

父「金がたまった、借金も返した。もうお前らと離れて暮らす理由がないからな」

兄「違う、そうじゃない。さっき話した事だ」

父「さっき?」

兄「いいから答えろ」

父「……ふむ、そんなに知りたければ壁にでも聞いてみてはどうかな? その方が文字通り建設的だろう?」

兄「……いい加減にしろよクソ親父」

父「父と認めてくれたか、はっはっは。いやー、嬉しいなぁ」

兄「っ?! い、今のはっ!」

父「しっかり聞いたからな、忘れずに覚えておこう」




691:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 06:19:50.65 ID:XPJbwliF0
兄「……誘導尋問だ」

父「人聞きが悪いな」

兄「いい事があると思うのか?」

父「あるさ、お前が知らないだけでな」

兄「……くそっ!」

父「はっはっは、昔からお前はツメが甘いからな。ボロが出る、すぐにつけこまれる。会話じゃお姉ちゃんの方が上手だろうに、なぜお前が出てきた?」

兄「……姉は体調が優れなくてな」

父「それは大変だ、お見舞いをしなくては」

兄「悪化させる気か、急に会って一体どうするというのだ。辞めてくれ」

父「急? 今日来る事はちゃんと事前に手紙を送ったのにな」

兄「……手紙だ?」

父「なんだ? 知らずに居たのか?」

兄「……姉上め……姉だからってなんでもかんでも一人で背負いやがって……」




692:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 06:22:24.98 ID:XPJbwliF0
父「なんだ、お前は何も知らされてなかったのか? ふむ、ならばさっきの反応は妥当か。仕方あるまい」

兄「……くそ……、なんなんだ、何だよ……今更帰ってきて……なんのつもりなんだよ……」

父「だから、言っただろう? あの時は仕方なかったんだ、多額の借金でな。ああするしかお前らを生かす道はなかったんだよ」

兄「ああするしか? 俺達を孤児院にぶち込む事か?」

父「そうだ、そうすれば借金のカタにとられることも無いと思ってな。国に喧嘩を売る金貸しは居ない」

兄「……」




693:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 06:24:22.89 ID:XPJbwliF0
父「まぁ私の思惑通り、お前らは無事だった訳だ。私も外国で会社を立ち上げて自分の借金は全て返済した、時間はかかったがな」

兄「……」

父「だから家族5人で一緒に暮らそうと」

兄「……5人?」

父「なんだ? いるだろう妹が」

兄「妹……、俺には同い年の姉がいるだ……け、だ………………?」

父「おかしいな、書置きを頼んだんだがな」

兄「………………………………???????」

父「あん? してなかったっけ? いや、してたような? しなかったような? まあいいや、便利屋くんが届ける途中で何か手違いしたのかな?」

兄「何を……言っている」

父「だから」

兄「何の事だと聞いている!」

父「妹だよ、お前らの妹。どこに居るんだ? もう寝てるのか?」

兄「────ッ。おいクソ親父……俺の妹とは……、一体誰の事を言っている……俺には同い年の姉が一人居るだけだ」

父「だから、えーっと。今6歳か? まぁとにかくその子をな、お前らに預けた子だよ、お前の妹だ」




695:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 06:31:13.96 ID:XPJbwliF0
兄「俺の……妹……?」

父「そうだぞー、お前昔は妹が欲しいって言ってたじゃないか。正真正銘お前の妹だ、喜べ、やったな?」

兄「俺、の……?」

父「うんうん」

兄「あの、子……が?」

父「そうだぞ?」

兄「……ははっ、……ははは。オイ、嘘だろ……?」

父「嘘なものか、信じられなかったらDNA検査でもやればいい、そうすれば数値が証明してくれるさ」

兄「……嘘……だろォ……? なぁオイ、嘘だろ?」

父「本当だ、その時はまだ充分な金が無くてな。少々大変だったがお前らに預けるしかなかったんだ」

兄「……、そんな……ことが……」




697:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 06:48:34.18 ID:XPJbwliF0
兄「そんな事が……あって……、そんな事が……許されて……いいのか……?」

父「許されようとは思って居ない、そんな虫のいい話とは思って居ない。だからこそ一緒に暮らしたいんだ、私達5人は家族だからな」

兄「……どこまで……、どこまで人を怒らせれば気が済むんだ……」

父「お前の怒りはわかる、最もだ。だが私達の事も理解して欲しい、そうするしか──」

兄「いつも……いつもそうなんだな」

父「?」

兄「お前の都合じゃないか! 全部! 子供の幸せなんて一瞬たりとも……1ミリだって考えちゃいない! なにがそうするしかなかっただ?! 子育てってのはな! 責任なんだよ! 当たり前だろうがそんな事!」

兄「例え法律で決まってなくても! 絶対にそうなんだよ! 祝福されようが、されるまいが、親が子供をつくれば親子なんだからよォ! その親が何だ……何なんだよ……自分だけの都合でそんなに軽く子供の運命踏みにじっていいっていう決まりが! どこにあるんだよ!!」

兄「子供は親をえらべねぇ! 絶対! 絶対にだ! だから子供の願いはただ一つなんだ……たった一個しかねぇ……。わかるか? 贅沢な事じゃねぇ、もちろん金でもねぇ、わからねぇってんなら教えてやる! 子供の願いってのはなァ……!!」

兄「親と一緒に居る事なんだよ!!」




698:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 06:52:42.79 ID:XPJbwliF0
兄「それなのに……それなのに……、お前は何を同じ事を繰り返してんだよ!!

兄「俺を……いや、俺たち姉弟はまだ良い! 借金があったんだろ、そうするしか無かったんだろォ?! けどあいつは違う! お前らが、お前らが勝手に生んで! 勝手に預けて! 勝手に大きくなって! 勝手に……どこまで勝手なんだよ……」

兄「そんな勝手……なのに今更……何だよ……全部今更じゃねぇかよ……そうやって何もかも奪っていくのかよ……、俺は……また……失うのかよ……」

兄「昔も今も、……何も……かも」

兄「全部……」

兄「奪っていくのかよ……」

父「……おい」

兄「かえってくれ」

父「……おい?」

兄「帰れ、帰ってくれ」

父「どうしたんだ?」

兄「だめだ、……なぁ頼むよ。あと1分でも一緒に居ると手が出ちまう、なぁ。……頼むよ?」




699:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 06:55:01.07 ID:XPJbwliF0
父「ふむ、ほかならぬ息子の願いとあらば聞こうじゃないか」

兄「……」

父「母さん、帰るぞ」

母「はい」

兄「……」

父「また来るからな」

兄「……」

パタン

兄「……」

兄「……」

兄「……」




700:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 06:57:40.18 ID:XPJbwliF0
────────
────
──


姉「帰った……か」

兄「……ああ」

姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」

姉「すまない……なかなか、切り出せ無くてな」

兄「いいさ、……俺に気をつかってくれたんだろ? ……ありがとな」

姉「いや……」




702:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 07:02:08.96 ID:XPJbwliF0
兄「いつから、知ってたんだ?」

姉「実は最初から、疑いはあった」

兄「最初?」

姉「私達があの子の事を最初に何と呼んだと思う?」

兄「…………………………………………」

兄「…………………………………………」

兄「…………………………………………妹………………………………………………、か」

姉「……ああ」

兄「……阿呆か、俺らは」

姉「……ああ、……最高に阿呆だな」




704:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 07:10:26.96 ID:XPJbwliF0
兄「だったら輪郭が似ていたのは」

姉「目つきが似ているのは」

兄「そういう事だったのかよ……」

姉「灯台下暗しとはこの事だ……」

兄「文字通りの真っ暗闇だ、気づけって方が無理だ」

姉「……実は、いくつかヒントはあった」

兄「あん?」

姉「役所から当たり前の様に届いたあの子の幼稚園の入園書類がコレだ」

兄「……え? だって幼稚園は」

姉「そう、何だかんだと理由をつけて通わせなかった。……黙っていたかったから」

兄「姉上……」

姉「おかしいと思った、すぐに戸籍を調べたさ。そうしたら」

兄「……そういう事だったんだな」

姉「……ああ」




705:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 07:23:33.07 ID:XPJbwliF0
兄「……はぁ……、そうだな。なんで戸籍を見ようと思わなかったんだろうな、俺は」

姉「まさか自分の親族……よもや妹だとは思いまいて」

兄「最初に妹って呼んでおいてそれかよ……阿呆だな」

姉「……」

兄「道理で……調べても調べてもでてこない訳だ……」

姉「そして、裏もとってもらった」

兄「裏?」

姉「予防接種と偽ってあの子の血液と私の血液を鑑定してもらったんだ」

兄「……黒だったんだろ」

姉「ああ、真っ黒だ。姉妹のソレ、だそうだ」

兄「……本当かよ……」




707:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 07:32:13.40 ID:XPJbwliF0
姉「……うん」

兄「……だったら……でも、だからって……」

姉「……」

兄「どうするんだよ……」

姉「……」

兄「……姉上」

姉「なんだ?」

兄「……消えるって、……まさか、こういう事か?」

姉「……」

兄「おい! 辞めろよ! そんなエンギでもねぇ!」

姉「……しかし。親は、私ではない……あの子には権利がある、本当の親と暮らす権利が」

兄「だったら!」

姉「だったら! どうだと言うのだ! 嘘をつかれて一番傷つくのは……我々では、ないのだぞ……」




708:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 07:39:07.56 ID:XPJbwliF0
兄「……ヘンだと思ったんだ、人生は喜劇だ? 状況を楽しむ? それにいきなり両親……昔の家族の話なんかしだして。グリとグラの話まで引っ張ってきてよ」

姉「……」

兄「なんで俺の家の食卓に定番のカレーが並ばないか、それは姉上がカレーが嫌いだからだ。その姉上が……笑顔でカレーを食べる? おかしな話だ」

姉「……」

兄「今でも家族とは良いものだと思っている……それはそうだろう、そうじゃなけりゃこんな家族ゴッコなんて──」

姉「ゴッゴではない」

兄「……」

姉「絶対に、ゴッコなんかではない……」

兄「……そうだな、……ごめん。姉上を責めてもどうしようもない……最低だな俺……、本当にごめん」

姉「いや……いい」




709:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 07:42:06.88 ID:XPJbwliF0
兄「万事休す……か」

姉「私達に、両親と暮らすという選択肢は、」

兄「……それこそ、……ないだろ」

姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」

姉「あの子の、ためなら……」

兄「おい姉上っ?!」




710:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 07:44:36.19 ID:XPJbwliF0
姉「いやだ……私は、あの子と離れ離れになるなんて……いやだ……」

ぽろぽろ

兄「……姉上……」

姉「違うって! 絶対違うって! 何度も調べた! そんなわけがあるのかと!」

姉「あの子が、あんな親の子な訳がない! そう思って! 使える手は全部つかった!」

姉「でも……」

姉「でもね……?」

姉「調べれば調べるほど……全部が、そう言ってくるんだ……あの子は、妹だって……あの人達の、子供だって……」




713:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 07:51:08.29 ID:XPJbwliF0
兄「……だったら、そうだ。まずは教授に相談して」

姉「無駄だ」

兄「なぜ?」

姉「それはもうやった」

兄「姉上……?」

姉「個別の事象に対応するにはまず統計をとってからその後に傾向を判断する、いくつかの仮説・立証を経てそれが通説に変わる。確かに学問の世界はそれでいいのだろう、だが机の上の結論と、現実は往々にして異なる」

兄「……まさか……」

姉「教授は、本当の親と暮らすのが良いだろうと……。あの人の学派ならそう言うのが妥当だったんだろう……、それは君が、一番……わかってることじゃないか?」

兄「……そんな」




716:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 07:53:04.15 ID:XPJbwliF0
姉「私が、いや。私達ができる事はもう……、これ以上。あの子と一緒に暮らすには……」

兄「俺と姉上、あの子と……両親。……一緒に暮らすしかない?」

姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」




718:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 07:55:48.00 ID:XPJbwliF0
姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」




720:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 08:01:19.20 ID:XPJbwliF0
兄「なぁ……ねーちゃん」

姉「……どうした?」

兄「覚えてる? 最後の夜の事」

姉「私は卒業式の後、疲れてしまってすぐに眠ってしまっていたからな、夜に君の泣く声で飛び起きた事しか覚えていないよ」

兄「……そこは忘れてくれよ」

姉「最後の言葉は何だったんだっけ」

兄「……’じゃあな’」




752:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 17:50:14.67 ID:XPJbwliF0
────────
────
──


ゴソゴソ

ゴソゴソ

兄『……んん、お父さん?』

父『ん?』

兄『何、やってるの……?』

父『なんだ起きてしまったのか? もう遅いぞ? よく寝てろ』

兄『……なんで、荷物、そんなにたくさん?』

父『私は遠いところへ行く』

兄『……?』

父『お前の成長をこの目で見れないのは残念だ、だがしかしいつか私はお前の前に戻ってくる。絶対だ』

兄『お父さん、……何を?』

父『じゃあな』

兄『お父さん! まってよ! どこ行くのっ!?』




753:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 17:52:48.50 ID:XPJbwliF0
父『会社が倒産しちまってな、金がない。だから逃げる』

兄『逃げるって、ちょっと、待ってよ! どういう事なの!』

父『今説明した通りだ、方々手は尽くしたがな。結局お前らに迷惑をかけない方法はコレしか思いつかなかった、お父さん、バカだからな』

兄『な、なんだよ』

父『これからつらい事がたくさんあるだろう、その分嬉しいことも多々あるに違いない。現実に絶望する事無く夢を見すぎる事無く、ただ、生きろ』

兄『生きろ、って……』

父『死んだら最低だ、死んだら何もない。だから生きろ、いいか? どんな事があっても生きろ』

兄『なんだよ、それ! どういう事なんだよ!』

父『俺からは以上だ、あんまり長居すると借金取りが追ってくる、それじゃあな』

兄『ちょっと! お父さん!』

父『はっはっは! 強く生きろ息子よ! じゃあな!』




754:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 17:53:54.13 ID:XPJbwliF0
姉『あにうえ……? なにやら騒がしかったがどうしたのだ……?』

兄『……父さんが……父さんが、逃げた……』

姉『……ふえ? ちちうえが?』

兄『借金作って、会社が潰れて、追われて』

姉『兄上、落ち着こう。全く話がわからない』

兄『俺だってわかんねえよ!』

姉『母上はどこだ、母上に聞けば全てわかる』

兄『お母さん、居ない。たぶんお父さんと一緒に逃げたんだ……』

姉『逃げたって……どういう事なのだ……』

兄『そんなの、わかんないよ! わ……かんないよ……』

姉『阿呆が!』

兄『ひっ』

姉『日本男児がこの程度の事で泣いてどうする!』

兄『で、でも……』

姉『とにかく、冷静になろう。こういう時こそ落ち着いて考えれば良い』




755:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 17:54:51.39 ID:XPJbwliF0
兄『……』

姉『……』

兄『……』

姉『……』

兄『……』

姉『……』

兄『……』

姉『……』

兄『……』

姉『……』

兄『……』

姉『……』

兄『……』

姉『……』

兄『……』




756:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 17:56:13.13 ID:XPJbwliF0
姉『……』

兄『……』

姉『……』

兄『……』

姉『……』

兄『……』

姉『……』

兄『……』

姉『……』

兄『……』

姉『……』

兄『……』

姉『……』

兄『あねうえ』

姉『なんだ兄上』




757:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 17:57:03.33 ID:XPJbwliF0
兄『……何か思いついた?』

姉『兄上こそいつもの軽口はどうしたんだ』

兄『……ひっく』

姉『阿呆が、泣いたって何も解決しないだろう』

兄『うえええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん! おとうさああああああああああああん、おかあさあああああああああああああああああああん』

姉『阿呆、泣くな。泣くなったら』

兄『うえええええええええええええええええん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』

姉『泣くんじゃない、泣くんじゃないよ……こっち、まで、泣きたくなってくるじゃないか……』


兄・姉『うえぇぇぇぇえええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん』




758:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:07:34.32 ID:XPJbwliF0
その後。

身寄りの無くなった俺達は行政の指導で孤児院に入所することになる。

そこには俺達と同じ親を失ったもの、育児を放棄されたもの、虐待を受け親と離される事になったもの、親の離婚や再婚等で家庭環境が不良であるものなど。

未成年の子供が多く預けられていた。

それぞれここに居る理由はさまざまだが、ここの子供に共通なものがある。


それは親または親権者から

「要らない子」

の烙印を押された、という事だ。




759:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:09:46.20 ID:XPJbwliF0
親の一方的な都合で邪険に扱われた子供達、つまるところは社会的弱者の集まりだ。

みな表面上は明るく振舞ってはいるが、ふとした瞬間にはどこか闇を感じさせる。

ひとつの小さな施設に4〜50人の子供が収容され、1つの大部屋に10人くらいで住まわされる。

住み慣れた家とは違う。風呂に入るのも時間が決まっているし、テレビやゲームももちろんない。使い古しのおもちゃや人形や積み木が申し訳程度にあるくらいだ。

朝は6時起床、その後ラジオ体操と施設の掃除が始まる。

それが終われば全員で同じ質素な朝食を食べて、制服に着替えてそれぞれの学校へ通う。

学校から帰ってきて7時に晩御飯を食べた後は2時間程度の自由時間が与えられて9時30分には消灯。

そういう事になっていた、規則・規律・ルールで。

親から「生きろ」と一方的に突き放された俺達を待っていたのは、そんな申し訳程度に「生きられる環境」だった。

同年代に比べて体が小さかった俺は、古株の入居者から壮絶ないじめを経験することになる。




760:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:13:24.36 ID:XPJbwliF0
それは晩御飯のささやかなおまけとして配布されるジュースが無くなっていた事から始まり、

靴の中に画鋲が入れられていたり、筆箱の中身が消えたり、

そして次第に、大人の目が見えない死角での暴行へと発展した。

けれど別にどうって事はなかった。

もともと喧嘩っ早い性格だ。

殴り殴られなんて慣れてる、そっちがそのつもりならこっちにもやりかえしてやる。

それくらいの気持ちだった。

だから、制服が泥水で汚れても耐えたし。

教科書がはさみでズタズタにされても気にしなかった。

けれどその度、忌々しい声で「生きろ」の言葉がリフレインしてきた。

……頼まれたって死んでやらない。




761:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:18:45.61 ID:XPJbwliF0
自分は。

こんなところから絶対に這い出てやる。

それしか見えなかった。

そんな場所に居たからだろうか、世の中の仕組みに興味をもった。

なぜ自分はこんな底にいるのか。

勉強をした。

わからない事だらけだった。

学校のテストは下から数えた方が早かったから

姉に教えてもらって必死に勉強した。

近所で一番良い高校に入った。

気がつくとある日、俺へのいじめはなくなっていた。

さらに勉強に打ち込んだ。

わからない事がわかる、それが楽しかった。

学問の探求とか、そんな大袈裟な意味ではなく。




762:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:22:56.96 ID:XPJbwliF0
ただ、

「自分はどうしてこんなところに居るのか」

「どうすればこんなところから出て行けるのか」

それが知りたかった。

高校2年の冬、進路相談を受けた。

「お前の成績なら大学へ行けるだろう」

担任は少し誇らしげに言ってくれた、その時だ、奨学金制度を知ったのは。

今でこそ孤児院で大学進学を目指すのは珍しい話ではなくなったが、それでもそもそも孤児院に在籍しているような子供にはお金が無い。

公の制度を利用するか、自分でお金を貯めるか、親からお金を出してもらうという選択肢を取れない以上は大学進学など夢のまた夢だ。

最も……、学費を出す奇特な親などいないが。

後になって聞いた事だが。当時、俺が所属していた孤児院から大学へと進学したものは居なかったらしい。

ようするに俺が進もうとしている道はそれくらいに難しいという事だ。

さらに勉強をした。

勉強して勉強して勉強して

いつしか姉の成績を少しだけ上回るまでになっていた。




763:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:25:00.03 ID:XPJbwliF0
姉は喜んでくれたが俺には不信感が残った。

姉の成績が伸び悩んでいるのだ。

いつも自分の一歩前を歩いていた姉、同じ学年だが誕生日が11ヶ月違う姉。

勉強にしろスポーツにしろ、常に自分の前に居た姉が今では俺の後ろに居る。

それは強烈な違和感だった。

ただ俺は、忘れていた。

なぜ俺へのいじめがなくなったのか。

そんな、簡単な事を。




765:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:25:45.53 ID:XPJbwliF0
あいつらは。

いや、あの悪党どもは

姉に手をだしていたのだ。

なぜ気がつかなかった?

いじめが無くなって安心していた?

バカな。

あいつらが居る限りそんなもの無くなりやしない。

完璧に俺が甘かった。

いじめは無くなったのではない。

矛先が変わっただけだったのだ。

赤黒く染まった姉の肌を見た、その時。

その事実が、突きつけられた時、

自分の中で何かが壊れる音がした。




766:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:39:41.13 ID:XPJbwliF0
こんな社会の底にすらいじめが存在する。自分達が標的にされるまでそんな事も知らなかった、ゆるい幸せの中で育ってきた俺は。

一度は壊れた、だけど頑張っていれば……生きてさえいればいつか取り戻せると思った。

けれど、本当の幸せなんてのはここにはきっと存在しない。

……いつも姉は大切な事を何も言わない。

普段は何気なく会話している様で、本当は何を考えているのか弟の俺でさえ実はよくわからない。

黙って、俺の知らないところで一人で頑張って、全部が終わった後にしらない顔で笑っている。そんな姉だ、それが姉としての性分なんだろう。

自分の知らないところで姉は、一体何を……。

その度に思い知らされる。世の中は不公平だ、どこまでも不条理で、そして俺は無力だ。

幸せっていう二文字は誰の前にも平等だけど、だからといって皆が平等に幸せになれるわけじゃない。

けれど姉は。

こんな底にまで落ちてなお、俺の姉らしくあろうとしている。

「そうしないと、自分が自分でなくなってしまうから」乾いた笑みで告げる。

思わず抱きしめた、……随分と痩せていた。




767:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:44:58.37 ID:XPJbwliF0
もう、……もういいじゃないか。

二人ともよく頑張ったじゃないか。

なぁ? 頑張ったよ、あんなところでさ。

もう、いっその事……、二人で……、このまま……。

そんな時だ。

『死んだら最低だ、死んだら何もない。だから生きろ、いいか? どんな事があっても生きろ』

まるで見透かされたかのように心の隙間に入り込んでくる忌々しい声。

ハっとした。

自分は……今、一体何をしようと……。

襲ってくる後悔と、先の見えない暗くて重たい不安。

延々と続く何か。

その元凶が、……何の因果か俺の命を繋ぎとめた。




768:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:55:18.02 ID:XPJbwliF0
姉は怖いと言った。

俺も怖いと思う。

思い出に時効なんてない。

辛い時は思い出してしまうのだ、昔の、家族であった頃の事を。

けれど、それは逃げでしかない。

「いつかは」

ここに来た当時ならいざ知らず、そんな事はないと、高校生になっていた俺達はわかっていた。

わかっていたし、理解もしていたし、それより何より……だったらいっその事死んだ事にしようと言い出したのはどちらだっただろうか。

けれど寄り添えば怖くなかった。二人なら、悲劇さえ喜劇に変えられる。

明るく振舞うのが俺の役目であるというなら、甘んじて受け入れよう。

それから一年と少しして、二人で同じ大学へ通い、孤児院を出て同じ家に住んだ。

素晴らしき絶望からの、ハジマリの脱走だった。




770:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 19:08:44.07 ID:XPJbwliF0
────────
────
──

姉「脱走、か。うまい事を言う」

兄「そんなもんだろ」

姉「映画の大脱走を知っているか?」

兄「トム、ディック……なんっだっけ」

姉「ハリーだ」

兄「正解のトンネルだな」

姉「3本中2本はブラフだよ、ハリーが正解だ」

兄「……ふむ」

姉「私がトム、君がディック。だったらあの子がハリーだ」

兄「その先は幸せに続く……ってか?」

姉「詩人じゃないか」

兄「……どうも」




771:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 19:11:20.15 ID:XPJbwliF0
姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」

姉「……」

兄「……」

姉「……なぁ」

兄「……うん?」

姉「ここまでくるのに、随分と回り道をしたな。兄上」

兄「ここまでとは、何の事を指している。姉上?」

姉「全部さ」

兄「そうか、全部か」




772:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 19:15:36.66 ID:XPJbwliF0
姉「私は君の姉でよかったと思っている、それは変わらない」

兄「……」

姉「……けれど、どうしてだろうな」

兄「……」

姉「恨んでも……恨んでも、それと同時に、生んでくれた両親への感謝の気持ちが……私の胸を抉るんだ」

兄「……」

姉「バカな話だと思うか?」

兄「……あぁ、……バカげてる」

姉「生きてこそ人生、死んだら何も無い。だったらそもそも生まれてこなければ、最初から全てが無い。……遠足は生まれた時から始まっているんだな」

兄「だったら死ぬまでが遠足とでも言うのか姉上よ」

姉「スタートは同じだ、ゴールはそれぞれ違うがな」

兄「……言葉遊びだ」

姉「……かまわんさ」




773:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 19:24:27.50 ID:XPJbwliF0
兄「……いや、俺達の話は……とりあえず置いておこうじゃないか」

姉「そうだな」

兄「それより」

姉「……あの子が」

兄「……だな」

姉「幸せって、一体何なんでしょうね」

兄「さあな」

姉「何が、誰に、どこで、いつ、どうすれば幸せなんでしょうね」

兄「そんなもんはいつも主観的だよ、客観視されたらそれこそ宗教や哲学に走ってしまうからな」

姉「だったら」

兄「俺達の幸せはあの子の幸せとイコールではない……って言いたいだろ?」

姉「……はい」




775:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 19:35:49.96 ID:XPJbwliF0
兄「気にしすぎだ。幸せの定義とか、悲しみの置き場とか考え出したらキリがないだろ」

姉「生まれたら死ぬまで、私達はずっと探してるんですよ?」

兄「探すだけじゃないさ、今までみつけたモノは全部覚えてるよ」

姉「……そうですか」

兄「望遠鏡、のぞいて何か見えたか?」

姉「あの子の顔」

兄「親バカだな」

姉「君ほどではない」




777:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 19:41:55.95 ID:XPJbwliF0
兄「なぁ、ひょっとして俺らはさ」

姉「何でしょう」

兄「知らない間に……大袈裟な荷物を、背負いすぎていたのかもしれないな」

姉「……手、震えてますよ」

兄「怖いんだよ」

姉「私も、怖いです」

兄「何が怖いか当ててやろうか?」

姉「はい」

兄「……幸せが、怖いんだよな」

姉「……はい」




779:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 19:48:40.50 ID:XPJbwliF0
兄「背が伸びるにつれてさ」

姉「……」

兄「だんだん、わかってきたんだよ」

姉「……?」

兄「親がさ、どうして俺らを一緒に連れて行ってくれなかった。とか。なんで孤児院に入れたか、とか」

姉「……」

兄「そりゃ辛い思いさせたくなかったってのが一番なんだろうけどさ、それは幸せな事でもない」

姉「……」

兄「けど、自分と一緒に来たら、最悪死ぬかもしれない。どこかの国に売り飛ばされて、文字通り地獄を見るかもしれない」

姉「……」

兄「死ねば最低だ、死んだら何も無い。生きてこそ人生、生きてればいつかどこかからコロっと幸せがやってくるかもしれない」

姉「……」

兄「親父のさ、考え方なんだろうよ、それがさ」

姉「……ただ」

兄「ただ、一つ。イマも思い出すんだ。それでも、それでも一緒に居れてたら……って」




780:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 19:53:52.21 ID:XPJbwliF0
姉「ひとりよりふたり」

兄「ふたりより、さんにん」

姉「3人より……4つ子串だんごですか」

兄「……頭ではわかってるんだよ。ただ、頭と心は同じになってくれないらしい、何より一番許せないのが」

姉「……?」

兄「虐待だ」




786:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 20:57:14.87 ID:XPJbwliF0
兄「俺はな、姉上」

兄「何があっても子供への暴力なんか許さないし、許すつもりも無い」

兄「俺達が一緒に暮らす事と、その事実は、別問題だろう」

兄「あの人達が、また、同じ事を繰り返さないという保障は無いんだし」

兄「この先、仮に、1万歩譲って一緒に暮らすとして。それが行われた事実は消えな──」

姉「ねぇ」

兄「ん?」

姉「あの」

兄「なに?」

姉「すごく……その」

兄「?」

姉「あの……その、だな」

兄「どうしたんだ?」

姉「すごく、本当に、しょうもない事なんだが……。一つ、誤解を解いておこうと思ってな」




787:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 20:58:46.54 ID:XPJbwliF0
兄「ここは1階だぞ?」

姉「大事な話だ」

兄「すまん……、で。何だ?」

姉「私があの子のオムツを代えた時、そのアザを見つけたんだ」

兄「あ? あぁ、そうだったな」

姉「それ、もう消えてるんだよ。今は」

兄「は?」

姉「だから、消えてるんだ」

兄「それはそうだろう」

姉「いや、だからな……」




790:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 21:03:38.15 ID:XPJbwliF0
────────
────
──

妹「ただいまー」

兄「おかえり」

姉「おかえりなさい」

妹「どうしたの? ……二人とも?」

兄「なぁ」

妹「うん?」

兄「お尻、みせてくれないか?」

妹「……」

兄「……」

妹「……えっち」

兄「ばっ!! そういう意味じゃねぇえええええ!!!!」




791:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 21:07:29.69 ID:A2FmhK580
クソワロタwww




792:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 21:08:04.04 ID:XPJbwliF0
妹「やだー、お母さん。助けてっ!」

姉「ふふ、面白いな君達は」

妹「……?」

姉「減るもんじゃないんだ、お尻くらい見せてやってもいいだろう?」

妹「……お母さん?」

姉「な、こうして頼んでるんだ。見せてくれないか?」

妹「う〜? いいけど……あんまりじろじろみないでね?」




793:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 21:09:38.88 ID:XPJbwliF0
兄「……」

姉「……」

妹「……」

兄「……」

姉「見すぎだ、阿呆が」

ボカッ

兄「いてっ」




796:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 21:13:07.77 ID:XPJbwliF0
兄「なんだ……、俺の勘違いだったのか……」

姉「その様だ」

兄「……」

姉「……」

妹「お父さん? お母さん? 二人ともどうしたの?」

兄「……」

姉「……」

妹「?」

兄「いや、なんでもない。……ギョウチュウ検査の予行演習だ」

妹「ギョーチュー?」

兄「うむ、奴等の進行を阻止するためにだな。地球の平和を守っているんだ」

妹「ふーん?」




799:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 21:16:39.68 ID:XPJbwliF0
妹「よくわかんないけど、平和まもってね」

兄「おう、まかせとけ」

妹「あ、後ね。それから」

兄「?」

妹「おーい、入っておいでー?」

ニー

ニャー

姉「これは……」

妹「えへへ、みつけたから一緒に帰ってきたの」

兄「どこに、居たんだ?」

妹「んー? わかんない、でもピアノの音で踊ってた」

兄「踊ってた?」

妹「うん、なんだか楽しそうだったよ?」




800:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 21:23:21.47 ID:XPJbwliF0
兄「……ぬー……」

姉「……ふあぁ」

妹「ど、どうしたの二人とも?」


姉・兄「……気が抜けた……」


妹「もう! だらしないよ!」


兄・姉「だめだ……しばらく動けそうにない……」




802:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 21:26:53.62 ID:XPJbwliF0
兄「阿呆か……色々ありすぎだこの週末で……キャパがおいつかん」

姉「私もだ……すっかり処理落ちだ……」


妹「はい、おちゃ」

兄「おお、ありがと」

姉「ありがとね」


ズズズ

兄「ぷはー、うめー」

ズズズ

姉「おいしいです」

チューチュー

妹「あたしはオレンジジュース」

兄「はっはっは、お子様だな」

妹「いいもーん、子供だもーん」




804:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 21:32:21.14 ID:XPJbwliF0
兄「さて問題です」

妹「?」

兄「トイザらスの「ら」は何故平仮名なのでしょうか?」

妹「しらない」

兄「では第二問、このポーズは何?」

妹「大仏様……だけど何で両手がお金のポーズなの?」

兄「では第三問、……の前にこのビデオを見てもらおう」

妹「ビデオ?」




805:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 21:34:58.27 ID:XPJbwliF0
ピッ


……ザーーーーーーーーーーーーーーーーーー


妹「なにこれ?」

兄「映像問題だ、ちょっとしたら映るから待ってろ」

ザワザワ

ザワザワ

妹「あ、映った」

姉「ふふ、懐かしいな?」

兄「そうだな、俺も見るのは初めてだよ」

妹「これ、何の?」

兄「俺らの入学式のビデオだ」




806:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 21:37:48.15 ID:XPJbwliF0
妹「あ、本当だ。ここって……小学校の体育館?」

兄「おう、そうだ。さて問題です、俺はどこに居るでしょうか?」

妹「ええっ」

兄「制限時間は30秒だ」

妹「えーと……えーっと……」

兄「はやくしろよー、じゅー、きゅー、はーち、なーな」

妹「見つけたっ!」

兄「おおっ? どいつだ?」

妹「この小さいひと!」

兄「小さいのは余計だ……、けど正解っ」

妹「やったー!」




810:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 22:11:58.20 ID:XPJbwliF0
姉「じゃあ私はどこに居る?」

妹「簡単だよー?」

姉「ふふん? そうか?」

妹「隣に居るもん」

姉「おお、正解だ」

妹「やったー!」

姉「はは、すごいな。まんまと見つかってしまった」

妹「ふふん? 真実はいつも一つなんだよ?」

姉「そうか、……そうだな」




812:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 22:14:57.84 ID:XPJbwliF0
兄「真実は一つ……か」

妹「うんっ」

兄「はは……じゃあ最終問題だ」

妹「うん?」

兄「これを撮っているのは誰でしょう?」




815:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 22:20:33.79 ID:7M/6klVo0
おかしいな…
画面がぼやけて…




816:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 22:23:01.33 ID:XPJbwliF0
妹「あれ?」

兄「どうした?」

妹「えーっと?」

姉「どうしたんだ?」

妹「あれ? お父さんとお母さんがそこに居て? 小さくて?」

兄「うむ、……小さいのは余計だぞ」

姉「ふふ」

妹「それで? あれ?」

兄「どうしたんだ? わからないか?」

妹「ええっと……?」




818:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 22:37:30.11 ID:XPJbwliF0
兄「それじゃーヒントをやろう、よく考えるんだな」

妹「うんっ」

兄「俺とおか………………」

姉「……」

兄「俺は誰から生まれたでしょう?」

妹「う〜ん?」

兄「はっはっは! ちょーっと難しかったかー? そうかそうか、じゃあもうクイズ大会は終わりだ」

妹「お父さん」

兄「あん?」

妹「お父さんの、お父さん?」




819:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 22:44:13.22 ID:XPJbwliF0
兄「……半分正解、で、……半分ハズレ」

妹「えー?」

兄「はっはっは! まだまだだな娘よ、世界は広い、もっと精進する事だぶわっはっは」

妹「むー……」

兄「はっはっは……ははは、……うん……」

妹「?」

姉「あのな」

兄「……」

姉「私達が、これから言う事をよく聞いて欲しい」

妹「?」




820:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 22:50:20.22 ID:XPJbwliF0
兄「実はな……」

妹「うん?」

兄「……ジツはだな」

妹「うん?」

兄「……」

妹「なぁに?」

兄「……」

妹「?」

兄「あー……」

妹「あー?」

兄「あー……ダメだ、ダメだなぁ……やっぱり、だめだわ……」




821:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 22:53:18.75 ID:Yqq8jAVK0
あれ?
画面がにじんでなにも見えないや 




822:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 22:53:23.64 ID:byvsUjAK0
がんがれ!




823:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 22:53:28.29 ID:2/3NFd8e0
読んでるこっちまで辛い…




824:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 22:55:01.98 ID:XPJbwliF0
妹「お父さん?」

兄「なぁ、もう一回だけ言ってくれないか?」

妹「え?」

兄「頼む、一回だけでいいから」

妹「お父さん」

姉「私もいいか?」

妹「お母さん」


兄・姉「……ありがとう……」




843:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 23:31:43.62 ID:XPJbwliF0
妹「もー、どうしたの? なんで泣くの?」

兄「ばかやろう! ちがう、これはな……ただの塩水だ」

姉「心の汗だ」

妹「ヘンなの」

兄「俺がヘンなのはいつものことだろう!」

妹「そうだけど二人ともヘンだもん、おかしいもん」

兄「はは、否定しろーこのやろー、ぎゅーっとしてやる! ぎゅー!」

姉「私も」

ぎゅ

妹「わ、わわ。くるしいよー」

ニー

ニャー




844:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 23:34:26.19 ID:XPJbwliF0
妹「なんか、入学式の時みたいだね」

兄「ん?」

妹「ぎゅーって、みんなで」

姉「そんなことも、あったな。そういえば」

妹「うんうん」

兄「ははは、そうかそうか」

妹「ぎゅーって」

兄「ぎゅー!」

妹「むへっ」

姉「私も負けない」




847:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 23:37:47.40 ID:XPJbwliF0
兄「にーとにゃーも来るか?」

ニー

ニャー

兄「はは、来い来い。全員集合だ」

姉「まだ昼前だがな」

兄「最後の晩餐ならぬ最後の昼飯になるわけだな。しまらねぇなオイ」

姉「……私達らしくて良いじゃないか」

兄「それもそうか」

姉「さっきから二人は何を話してるの? わかんないよ」




850:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 23:48:10.86 ID:XPJbwliF0
────────
────
──


兄『……わっかんねぇよ……』

姉『……私にもわかりません』

兄『俺も、わかんねぇよ。どうすれば一番良いかなんて』

姉『……できません、私には。……私には決める事ができません』

姉『ごめんなさい! 知っていながら! 怖かったんです! 失うのが! 私は……私は卑怯な女です……』

兄『よせ! 自分を責めてどうするんだ』

姉『ですが!』

兄『……落ち着こう、また過呼吸にでもなったら大変だ』

姉『…………苦しいんです』

兄『……』

姉『ずっと、さっきから。何もしていなくても、ずっと。おかしいんです、息が、とても……』

兄『わかった……わかったから……うん、そうだな、俺もだよ……』




852:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 23:54:18.70 ID:XPJbwliF0
姉『私は無力です』

兄『人間なんて無力なものだ』

姉『あの子の親の代わりをして、仮初の幸せに浸かって……満足していました』

兄『……俺もだよ』

姉『自分の悲しさを消すために、利用していたんです。私の悲しみの置き場は、あの子だったんですよ……非道でしょ……?』

兄『それでもいいさ、愛情は本物だ、ニセモノなんかじゃない。誰よりも一番俺が見てる』

姉『いいえ、私は……私は、あの子を利用して、自分だけ、自分だけ……』

兄『……もう、言うな……』

姉『私は……』

兄『……姉上……自分を責めすぎるな、誰のせいでもないだろ……』

姉『私は……それでも……』




854:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 00:02:39.77 ID:XPJbwliF0
兄『……』

姉『ねぇ、弟くん』

兄『……なんだ』

姉『これから、……私達どうなるんだろう』

兄『さぁな……ただひとつわかる事は』

姉『……?』

兄『俺達は、あの子の親ではない……って事だ』

姉『っ』

兄『選択肢はいくつかある、例えば雲隠れ、夜逃げ、親に合わさないように墓まで持っていく……そうだろ?』

姉『……えぇ』

兄『だが、おそらく。俺と姉上が考えている事は一緒だと思う、これほど悩んでいるんだ……何を悩む事がある……あの子の事しかないだろう』

姉『……えぇ』

兄『どこかで、一番良い答えを、誰かがもってきてくれるんじゃないか。誰もが笑って暮らせる、そんな最高のハッピーエンドを、誰かが用意してくれるんじゃないかって』

姉『ハッピーエンドは、……一体誰にとってのHAPPYなんだろうな』

兄『物語は主観だ、人の数だけ終わりがある。人生と同じだ』




857:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 00:09:03.14 ID:XPJbwliF0
姉『だが……』

兄『ああ、主観であるからこそ。誰かが終わりを用意してくれる……そんな事はありえない』

姉『……そうだな、……』

兄『主人公は、俺であり、姉上であり、あの子でもある』

姉『……』

兄『今あの人達から逃げたところでどうなる、あの人達が生きている限り永遠に付きまとう問題だ、解決はしない。絶対に』

姉『……随分と、大人な解答じゃないか、弟くん』

兄『俺だって成長したんだよ』

姉『……その点私はだめだな……君を引っ張るどころか、いつしか完全に立場は逆転していたんだな……』

兄『どっちが偉いとか、関係ない。きょうだいだろ俺ら』

姉『……そう言ってくれるか』

兄『当たり前だ』




860:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 00:16:54.54 ID:XPJbwliF0
兄『しかし、もはや俺の小さな脳みそは既にショートを起こしてる、たぶんこれ以上考えてもロクな答えなんざでてこないと思う』

姉『私も、とうの昔に容量を超えたよ』

兄『そこでだ』

姉『?』

兄『簡単なクイズを用意した』

姉『クイズ?』

兄『あの子に決めてもらう、サイコロを他人に振らせる様で一番最低だが一番最高だと俺はそう思う。あの子の人生だ、だったらあの子にも選ぶ権利はあるだろう』

姉『どうするというんだ?』

兄『ビデオだ』

姉『ビデオ?』




861:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 00:21:23.49 ID:XPJbwliF0
兄『ここに俺と姉上の小学校入学式のビデオがある』

姉『そんなものどこから……』

兄『天井裏。全く、バカな場所に仕舞ったヤツが居るもんだよ。どこのどいつだ、顔が見てみたい』

姉『……はは、全くだ』

兄『……泣くなよ? まだ早いぞ?』

姉『保障はできない』

兄『……俺は絶対泣かない、あの子の前では』

姉『君が泣くまでは泣かない』

兄『……とにかく、このビデオで』

姉『ああ、わかった……撮影者は誰か、そう聞くんだろ?』




863:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 00:26:56.41 ID:XPJbwliF0
兄『ああ』

姉『……』

兄『もし正解したら』

姉『私達は』

兄『……うん』

姉『いいのか?』

兄『決めた事だ』

姉『答えるのはあの子だろう』

兄『それしか思いつかなかったんだよ』

姉『実に君らしい、曲がりくねったやり方だ』




864:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 00:30:00.46 ID:XPJbwliF0
兄『曲がりくねった道の先に、一体何があるんだろうな』

姉『この道を行けば、どうなるものか』

兄『危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし』

姉『踏み出せば、その一足が道となり』

兄『その一足が道となる』

姉『迷わず行けよ』

兄『行けばわかるさ……、か』

姉『弟くん』

兄『あん?』

姉『私は、君が好きだ。人間としてな』

兄『そうか、ありがとよ』




869:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 00:39:24.61 ID:XPJbwliF0
姉『こんな時に聞くのもヘンな話だが』

兄『まともな答えを出す自信が無いが聞こう』

姉『愛に形があるとしたら、きっとまるいんだろうな』

兄『形なんてそれぞれだろ、例えば、孤児院にぶち込むとかな』

姉『兄姉なのに妹を娘として育てるとか』

兄『他にもあるぞ』

姉『あん?』

兄『俺も、姉上の事が好きだ、人間としてな』

姉『そうか、ありがとう』




870:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 00:42:51.92 ID:XPJbwliF0
兄『なぁ』

姉『うん?』

兄『このビデオさ、すげー手ブレひどくないか?』

姉『たしかにな』

兄『親父とお袋の声、モロに入ってるし』

姉『たしかに、校長先生の演説が全く聞こえないな』

兄『俺らなんて、こっちをチラチラみて’うるせーぞそこの親二人’とか思ってるんだろうか』

姉『思っているだろうな』

兄『阿呆だな』

姉『阿呆だ』

兄『でも……底抜けに笑顔だな』

姉『もらった笑顔だ、……撮っている人間からな』




875:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 00:51:40.81 ID:XPJbwliF0
兄『そうかも、な』

姉『だったら、決まりだな』

兄『……後は野となれ山となれだ』

姉『さて、出て行くとなればどうする?』

兄『生きていけるさ、孤児院だってその後だってどうにかなった。だからこれからも、きっとどうにかなる。死んだら最悪。何も残らない、生きてこそ人生だ』

姉『どうにかして、いいのか?』

兄『良いに決まってるだろ』

姉『……嘘が下手糞だな』

────────
────
──

妹「……え?」




886:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:31:08.69 ID:XPJbwliF0
兄「……」

姉「……」

妹「……あの、ええと……?」

兄「そういう事だ、今まで黙って……嘘をついて……すまない」

妹「……お父さん?」

兄「お父さんじゃない、俺はお前の兄だ」

妹「……お母さん」

姉「私は、お前の姉だ……今まで騙していて……本当にすまなかった」




887:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:34:39.42 ID:XPJbwliF0
兄「許してもらおうとは思わない、そんな都合の良い話はないからな」

姉「お前の本当のお父さん、お母さんが、もうすぐやってくる」

兄「半分は正解したんだ、俺は……もう」

姉「……強く、生きて……それだけ、が」


妹「なに、言ってるの、二人とも」


兄「……事実だ」

姉「嘘じゃない、本当の事だ」




888:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:36:26.01 ID:XPJbwliF0
兄「俺には父親が居る」

姉「私には母親が居る」

兄「俺と姉は姉弟だ」

姉「私は弟と姉弟だ」

兄「そしてお前は」

姉「私達の、妹だ」


妹「……」


兄「……父親は、俺じゃない」

姉「……母親は、私ではない」




889:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:39:04.91 ID:XPJbwliF0
妹「なんで……なんで、二人が謝るの?」

兄「大人の問題だ」

妹「お父さん、お母さん、ふたりとも悪くないよ!」

姉「もう父母ではない」

妹「そんな……」

兄「だがわかって欲しい、俺達はお前を騙す為にこんな事をやっていた訳ではないんだ」




890:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:40:31.75 ID:XPJbwliF0
妹「お父さんが……おにーちゃん?」

兄「……」

妹「お母さんが……おねーちゃん?」

姉「……」




892:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:46:53.38 ID:XPJbwliF0
兄「……あぁ」

姉「だから……」

妹「ああ、やっとわかった、すっきりした」

兄「……は?」

姉「……え?」




893:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:47:44.59 ID:XPJbwliF0
妹「だってふたり、たまに兄上姉上って呼び合ってたもん、あたし知ってるもん。このことだったんだ」


兄・姉「な”あ”っ?! な、なぜそれを!」


妹「ふふん? きほんてきな事だよ、わとそん君」

兄「おまおまおまおま……お前っ?!」

姉「なん……だと……」

妹「お父さんとお母さんの娘なんだから、これくらい当たり前なんだから」




894:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:49:25.13 ID:XPJbwliF0
兄「いや、だからと言ってだな」

姉「そ、そうだぞ? 私達はお前とは……」

妹「かぞくは」

兄「っ」

姉「……っ」

妹「何があっても一緒だから、離れていても、遠くにいても……かぞくは、かぞくなんだから」

兄「……」

姉「……」

妹「あたしね、夢みたの」

兄「夢?」

妹「うん」




895:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:52:09.23 ID:XPJbwliF0
妹「にーちゃんもにゃーちゃんも、お父さんもお母さんも、みんなみんな、消えちゃって。どこかに行っちゃうの」

兄「……」

姉「……」

妹「でも、にーちゃんもにゃーちゃんも居る。お父さんもお母さんもいる、みんなみんなここに居るもん! かぞくだもん!」

兄「……」

姉「……」

妹「ねぇ、お父さん。あたしもクイズ出すよ、イチゴは野菜だとおもう?」

兄「……果物か?」

妹「じゃあスイカは? メロンは?」

兄「果物だろ……うん」

妹「ぶっぶー、はずれ。答えは野菜でした」




896:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:54:58.87 ID:XPJbwliF0
兄「……」

妹「あのね、畑から取れたものはみんなみんな野菜って言うんだって」

姉「どこかで聞いたが事あるな」

妹「だから、お父さんもお母さんも、お父さんお母さんのお父さんとお母さんも! みんなみんな家族だよ! 一緒なんだよ!」

兄「一緒……か」

妹「だから! どこかに行かないで! 一緒に居て!」

兄「……っ」

姉「……弟くん、私達の負けだよ……」




897:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:56:30.90 ID:qa6UawxIi
いい話だ




898:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:58:06.66 ID:ANCcbWN1O
胸がキュンってする




901:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:00:49.67 ID:XPJbwliF0
兄「……グーで勝って、パーやチョキで負ける」

姉「負けるが勝ち、……教えたのは私だったな。……とても、とても優しい……優しい敗北だ……」

兄「……いや、……だけど」

妹「ねーちゃん」

姉「……ん?」

妹「えへへ、なんだかヘンな感じ」

姉「……そうか、……こんな私を、姉と呼んでくれるのか……」

妹「うんっ!」




905:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:03:41.44 ID:XPJbwliF0
兄「……」

妹「お父さん」

兄「……?」

妹「捨てないよ」

兄「っ!!」

妹「どこに行っても、絶対。探すから」

兄「お前……」

ニー

ニャー

妹「だってほら、にーちゃんとにゃーちゃんも、ちゃんと帰ってきたんだよ!」




906:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:10:49.73 ID:XPJbwliF0
兄「猫は……」

妹「グリとグラじゃないもん! にーちゃんとにゃーちゃん」

兄「っ」

妹「にーちゃん」

兄「兄……だぞ……? いいのか……? それでも」

妹「うん!」




908:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:13:33.54 ID:XPJbwliF0
兄「……ククク……そうか……そうかよ」

兄「……なぁ」

妹「うん?」

兄「それじゃあ言わせてもらうがな……」

妹「うん」


兄「もう一回にーちゃんって言って?」


姉「阿呆が」

ガン!

兄「」

妹「あははっ」




912:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:14:57.82 ID:XPJbwliF0
兄「……ぷ」

姉「……くく」

妹「あははっ」

兄「ククク……はっはっは!」

姉「ははっ」

妹「ふふふ」

兄「ぶわっはっはっは! ぶわーーーっはっはっは!」




913:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:17:10.45 ID:XPJbwliF0
兄「はっはっはっはっは! ははは! はぁー、はぁ、笑った……」

姉「お腹が痛い」

妹「のどいたい」

兄「生きてるって事だ」

妹「そうなの?」

兄「そうさ」




918:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:20:16.60 ID:XPJbwliF0
兄「あー、だめだ。やっぱりだめだな。……シリアスなんて俺のガラじゃねーわ」

姉「そうだな」

兄「似合わない事はつづかねぇ、何事もな」

姉「そうだな」

兄「けど、6年続いたって事はそれなりに似合ってたって事だろうか」

姉「そうだな……弟くん」




32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:45:51.35 ID:XPJbwliF0
兄「はっはっはっはっは! ははは! はぁー、はぁ、笑った……」

姉「お腹が痛い」

妹「のどいたい」

兄「生きてるって事だ」

妹「そうなの?」

兄「そうさ」




35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:47:04.09 ID:XPJbwliF0
兄「あー、だめだ。やっぱりだめだな。……シリアスなんて俺のガラじゃねーわ」

姉「そうだな」

兄「似合わない事はつづかねぇ、何事もな」

姉「そうだな」

兄「けど、6年続いたって事はそれなりに似合ってたって事だろうか」

姉「そうだな……弟くん」




36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:48:29.27 ID:XPJbwliF0
妹「ねーちゃん」

姉「ん? どうした?」

妹「あたし、二人の妹なんだよね?」

姉「ああ、そういう事だぞ?」

妹「耳貸して」

姉「うん?」

妹「妹って、兄と結婚できるの?」

姉「さあな、おにーちゃんに聞いてみたらどうだ?」

妹「えー! おしえてよー! けちー!」

兄「なんだなんだ?」

姉「いや、この子がな」

妹「ねーちゃん!」

姉「ふふっ」

兄「?」




37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:50:47.81 ID:XPJbwliF0
ニー

ニャー

妹「んー? おなかすいたのー?」

ニーニー

ニャー

妹「もう、食いしん坊なんだから、ちょっとまっててね」

トテトテ

ニー

ニャー




40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:55:11.74 ID:XPJbwliF0
姉「必要な事は全て子供から教わる……か」

兄「誰の名言だそれ」

姉「名無しの母親」

兄「だったら名無しの父親の願いは一つだ」

姉「うん?」

兄「’にーちゃん’と呼んでもらう」

姉「……にーが居る限り難しそうだが……」




41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:56:55.64 ID:XPJbwliF0
兄「猫などには負けん」

姉「猫に対抗意識を向けてる事が問題ではないのか」

兄「ふーーーーーー!!!」

姉「やれやれ……」

兄「ふん、どうせやるなら壁は高い方がいい」

姉「そうか、相変わらず君らしくて安心したよ」

兄「ねーちゃんこそ、すっかり口調が戻ったな」

姉「私はもう……母である必要がないからな。そういう君こそ」

兄「姉上、懐でオムツを暖めておきましたでござる」

姉「介護用か」

兄「口の調子も戻ってきたな」

姉「……ふふ」




47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 03:19:01.06 ID:XPJbwliF0
名無しの母親なんて大したことはない。


小学校入学時よりテストというテストでは殆ど満点かそれに近い点数を連発。
5・6年生の時に児童会長を歴任、得票率99%で当選する。
小学校卒業のときに両親が蒸発、行政の指導により孤児院に入居させられるも、
いじける事無くスポーツ・勉学に励む。
孤児院という閉鎖的な環境で周囲からのいじめをうける事があったがこれに屈せず、
同い年に不出来な弟が一人居たがその弟の家庭教師も勤めつつ、自信も中学校・高校もトップの成績を維持。
所属していた陸上部では200mでインターハイ出場を果たす。
実業団、体育大学、地方の陸上強豪大学などからスカウトされたが、
弟と同じ大学に通い、生活費を減らすという名目でワンルームのマンションに二人で暮らす。
大学では心理学を専攻、勉学の傍ら「アルバイトをして生活費を稼がないといけない」という理由で陸上を断念し、
時給720円のスーパーのレジ打ちを始める。老若男女に評判はよく、彼女を目当てにレジに並ぶ客も居たという。
就職はせず院に進学しようとしていたところに、娘(妹)と出会う。
その時母になる事を決断、育児のため学業をスッパリ断念。
娘が夜泣きをすれば一晩中置き続け、背中を優しく撫でるという溺愛っぷり。
母乳で育てられない事に悩むが、弟曰く「研究熱心な性格」が幸いし
独自の製法で作ったミルクを作る事で悩みを断ち切る。
裁縫も得意で、娘の服を作っては着せるという趣味がある。
ご近所との付き合いも良く、近所の奥様の間では「悩みがあれば一番最初に相談したい人」と認識されている。


そんなどこにでも居る名無しの母親、それが姉。




48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 03:37:21.70 ID:hScnV2qb0
良い・・・姉だな・・・




50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 03:49:12.35 ID:UBEza9IJ0
なんでこんなに切なくなるんだ




52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 03:51:29.46 ID:XPJbwliF0
名無しの父親なんて大したことはない。


桜もそろそろ咲こうかという季節に会社経営者の父、良妻賢母の母の元に産まれる。
何をするにもどこに行くにも11ヶ月早く生まれた姉の後をくっつくように歩き、その姿は母おして「カルガモの子供」と言わしめる程。
甘やかされるようにして育った為我慢には弱く、自他共に認める「喧嘩っ早い性格」で、同じクラスの男子を泣かせた隣のクラスの番長と喧嘩をする極悪人。
クラスの女子からは弟とか弟くんとか呼ばれるのが気に入らずに姉に向かって「兄と呼べ」と要求する破天荒っぷり。
結局姉には勉学でもスポーツでも勝てずに、ならばと立候補した学級委員では姉21票弟19票の2票差で破れている。
これは「姉は優秀だ、自分なんかに負けるはずはない」と自分の票を姉に入れたためであり、姉泣かせな罪深い弟である。
しかし、人生もこのまま順風満帆にいくかと思われた矢先、父の会社の経営が立ち行かなくなり倒産してしまう。
小学校卒業のその日、父から別れを告げられ孤児院へと入所させられる。
孤児院では壮絶ないじめに遭うもそれを持ち前の「喧嘩っ早い性格」で跳ね除ける。
父を恨み、その恨みが生きる糧になっていた。その恨みを晴らす方法を模索し、それが勉強にあると勘違いした男は姉に対して
「俺の勉強をみてくれ、頼む」と無茶な要求をする。中学時代は底辺を彷徨っていた成績は嘘の様に上昇カーブを描き、いつしか姉を上回る程になっていった。
さすがに「自分が姉に勝てる訳が無い、これには理由がある」と思ったらしく、その原因が孤児院に入居する他の人間からのいじめである事を特定。
身を挺して姉を守るという偽善者っぷりをこれでもかと発揮する。
その後、姉と同じ大学・同じ学部に通う事になり二回生の時に書いた論文が賞を獲る等、父に対する恨みを昇華させていく。
「生活費を稼ぐ」という名目で工事現場や塾講師等のアルバイトを週8回以上入れるも体だけは頑丈だったため風邪等引くことも無く過ごす。
姉曰く「阿呆は風ひかない」という事らしい。
就職はせず大学院へと進学しようとしていた時期に娘(妹)と出会う。
その時父になる事を決断、勉学の傍ら育児をこなして姉の家事の負担を減らすというセコい男。
仕事では異例の出世スピードで20代最終年にして准教授の立場までのし上がるという野心家。
姉への負担を少しでも減らしたいという思いからか姉に対して「パートには絶対行くな」という命令を下し、自身の稼ぎだけで一家を支える阿呆な男。
趣味は娘の観察、休日は仕事でヘトヘトになっているというのに家族サービスでドライブをする。
「娘が好きだが、綺麗なおねえさんはもっとすき」と公言する下心満点なスケベ男。


そんなどこにでも居る名無しの父親、それが兄。




54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 04:13:07.48 ID:lpq2StR40
兄さんカッコイイじゃないか




55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 04:20:11.94 ID:XPJbwliF0
もぐもぐ

もぐもぐ

兄「なんだなんだ、よく食べてるなオイ」

姉「そうだな」

妹「そだちざかり!」

兄「なにー? それは本当かー?」

妹「うん!」

姉「ふふ、可愛いな」

妹「にーちゃん、にゃーちゃん。好き、ねーちゃんも……ええっと」

兄「?」

妹「にーちゃんと、……にーちゃん?」

姉「ややこしいな弟くん、この際パパとでも呼ばせるか?」

妹「パパ? パパ、パパ」

兄「か……勘弁してくれえぇ」




57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 04:31:13.60 ID:XPJbwliF0
姉「……いつだったか、私がこんな事を言ったのを覚えているか?」

兄「何を?」

姉「間違いを認めていく強さが我々には必要……だと」

兄「さー……、言ったとしてももう忘れたよ」

姉「認めるって事は、強さなんですね」

兄「それはどっちの言葉だろうか」

姉「さあな……もう忘れてしまったよ」

兄「人間と機械との違いをしっているか?」

姉「知っている」

兄「人間は忘れる事ができる、次々とな。それこそ完全記憶能力でも備えて居ない限りな」

姉「記憶も、感情も」

兄「恨みも妬みも」




58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 04:33:17.71 ID:XPJbwliF0
姉「忘れて忘れて」

兄「覚えて覚えて」

姉「その繰り返しです」

兄「毎日な、ただ忘却と記憶の繰り返しだ。でもな」

姉「でも、忘れないものもある」

兄「……家族の顔とか」

姉「お互いの呼び名」




59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 04:39:59.76 ID:XPJbwliF0
兄「……だからと言って、全てを無かった事にするのは……ムリだぞ」

姉「だからこそ、だろう」

兄「ん?」

姉「人間と動物の違いは知っているか」

兄「知っている」

姉「人は意思疎通に言葉を用いることができる、感情のぶつけ合いなら動物にもできるが、おこがましい言い方をすれば言葉というものは人間に許された最高のツールだ」

兄「使わなければ動物と同じ……か」

姉「あるいはそれ以下か」

兄「……獅子の子落とし」

姉「獅子は我が子を谷底に突き落とし、這い上がってくる子だけを育てる……という故事成語だな」

兄「知らなかったな、俺達はライオンだったんだな」

姉「久しぶりにやるか」

兄「ああ」

兄・姉「し〜〜〜〜〜んぱい無いさ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」




62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 04:49:35.57 ID:XPJbwliF0
妹「わ、二人して何やってるの?」

兄「大西ライオンごっこ」

妹「まぜてまぜて」

姉「ふむ……しかしこれには高度なテクニックが必要だぞ? 大丈夫か?」

妹「しんぱいないさー!」

兄「はは、息ぴったりじゃないか」

姉「姉妹ですから」

妹「シマイですから」




63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 04:54:28.16 ID:XPJbwliF0
兄「……やっぱ、なんかこういうのがしっくりくるわ。俺」

姉「奇遇だな、私もだ」

兄「素直が一番ね」

姉「そうだな」

兄「まさか野菜に例えられるとは思わなかったけどな」

姉「私はそれで、……目が覚めたよ」

兄「……そうだな」




64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 04:59:02.47 ID:XPJbwliF0
妹「ねぇねぇ」

兄「うん?」

姉「なんだ?」

妹「もう大西らいおんごっこおしまい?」

兄「いや、だってあの人心配ないさーしか印象ないんだもん」

姉「うむ、そうだな」

妹「しんぱいないさー!」

兄「この世の事は〜」

姉「悩み蹴飛ばす〜生き方〜」

兄・姉・妹「ハクナマタタ〜♪」




65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:01:20.48 ID:XPJbwliF0
ニー

ニャー

ニー

ニャー

ニャニーニャニニニー♪




66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:02:02.90 ID:XPJbwliF0
ピンポーン

妹「あ、誰だろ」

兄「さあ、誰だろうな」

姉「皆目検討がつかないな」

兄「お客さんだ、行ってくれるか?」

妹「うん!」




67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:07:36.60 ID:XPJbwliF0
トテトテ

姉「……いいんですか?」

兄「何を今更」

姉「……そうですね、今更ですね」

兄「そうだよ、お母さん?」

姉「……ここの雪解けには、きっと時間がいりますね」

兄「季節だって巡る、冬が終われば雪も溶けるさ」

姉「大丈夫でしょうか……」

兄「心配ないさ、あの子を見てみろ」

姉「……はい、そうで……そうだな」




68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:09:47.86 ID:XPJbwliF0
兄「後は俺たちの問題だ。だが誰かも言っていたが人生は喜劇だ、ミュージカルだ。ならば楽しもうではないか、そうだろう?」

姉「……そうだな、弟くん」

兄「そうさ、いつだってハッピーエンドは自分達の手で掴むしかない、全員が主人公だからな、筋書きだって変える力を、誰だって持っているんだ」

姉「それを気づかせてくれたのは」

兄「他でもないあの子だ」

姉「……努力しよう」

兄「そうだ。努力しようじゃないか、誰でもない、自分の為に、あの子の為に、そして、家族の為に」

姉「ああ、そうだな。弟くん」


ガチャ




70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:14:43.79 ID:XPJbwliF0
エピローグ




71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:15:37.31 ID:XPJbwliF0
春が来て、夏が過ぎて、秋が深まり、冬が明ける。

いくつかの季節を繰り返して、あたしはこの春、東京の大学に通う事になった。

住み慣れた家とお別れするのは少し悲しいけど、新しい生活への期待も同じくらいは胸の中にある。

引越しをするために部屋の整理をしていると小学校の卒業アルバムが出てきた。

「うわぁ、なつかしいなぁ」

掃除をほったらかして、くすぐったい思い出の欠片がページを捲る手を進める。




72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:23:50.43 ID:XPJbwliF0
この集合写真で「NAKATA」のサッカーボールを片手に笑ってる男の子。

昨日テレビのスポーツニュースに映ってたんだよ?

冬の選手権じゃ国立のピッチに立って、詳しい人によると世代別の代表にも選出されているらしい。

同級生がプロサッカー選手になるなんてちょっと誇らしげだなぁ。

その「NAKATA」のボール、なぜかあたしの部屋にあるんだけどね。




73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:25:31.84 ID:XPJbwliF0
それから、男の子の隣でぷくっと笑っているのは、高校は別々になっちゃったけど今でもよく遊ぶ女の子。

お互いの家に泊まりにきたり泊めてもらったり、

勉強の相談だったり学校の愚痴だったりを言い合ったりする、私の親友だ。

彼女曰く私はライバルらしいのだけれど、ライバルの意味については未だ教えてもらっていない。

この間、恋は実ったのか? と聞くと顔を真っ赤にしていた。

真相は有耶無耶にされたけど。




74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:28:52.19 ID:XPJbwliF0
教えてもらった先生、クラスの友達、古ぼけた校舎。

懐かしい顔がたくさん写っていた。

そこまで見てピンポーン! チャイムが鳴った

「あ、やば? もうこんな時間だ」

大きい荷物だけ先に引っ越し業者にお願いしてる手はずになっていたんだっけ。

あ……、どうしよう部屋の片付けまだ終わってない……。




75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:32:23.69 ID:XPJbwliF0
「もう終わったか? って、うわ。服! いっぱい!」

「ねーちゃん……うぅ……おわんなかった……」

「まったく……どこをどうすればこんな事に……、まってろ、今すぐ掃除要員兼荷物運び要員を連れてくる」

「ありがと、ねーちゃん大好き」

「はいはい、ありがとね」

「本当に大好きだもん」

ぎゅ

「ぐへ、いきなり抱きつくな」

「むふふっ」




76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:34:25.35 ID:XPJbwliF0
「オイオイ……なんだぁこの部屋は……片付けるどころかさっきみた時より散らかってねぇか?」

「う〜……そんな事は……」

「いいか! 掃除の基本はな! 上からなんだよ! ホコリやクズを上から落として! 下で回収する! そして決してベッドは服置き場ではないっ!」

「耳にタコができそうです」

「ほほう? ならば作ってやろうか?」

「うきゃ〜」

「まてこら!」




77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:37:48.02 ID:XPJbwliF0
「なんだなんだ、騒がしいな」

「お父さん助けて! 妖怪掃除マンが襲ってくる」

「なんだと! 我が家に妖怪が! それは大変だ!」

「ぐぬぬクソ親父が……! 俺の掃除の邪魔をするでない! 今すぐその子を渡せ!」

「はっはっは! オマエにくれてやる娘はおらん!」

「ぬわーーーんだとぅ!」

「あらあら、二人とも。ホコリが舞いますから喧嘩なら外でお願いしますよ?」

「は……はい……」




78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:48:39.14 ID:XPJbwliF0
「母上」

「うん? なんでしょうか?」

「何か手伝う事はないか?」

「ううん、今日は買い物ももう終わってますからね……それじゃあ晩御飯の下ごしらえ、やっちゃいましょうか」

「承知した」

「女手があると助かりますね」

「ただ一つ、後悔してる事がある」

「何でしょう?」

「あの子に料理を教えなかった事だ……これでは一人暮らしで苦労するだろう……、どうするべきか」

「まさか通い妻をやるつもりですかお姉ちゃん」

「それも辞さない考えだ」

「あらあら、でも大丈夫。私達の家族なんですから、一人でもやっていけますよ」

「そうだろうか……」

「そうですよ」




79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 06:01:11.72 ID:XPJbwliF0
「おいクソ親父……今何つった?」

「この前の学会でヘマをしたそうじゃないか、プレゼン資料を忘れるとはな、オマエらしいと言っているんだ」

「ぐぬぬ……人のミスを笑うとは貴様! 最低だな!」

「最低で結構! これでもオマエの父だ、はっはっは!」

「……くくく……」

「ほら、笑え。悲しい事があったら笑って誤魔化せ、そうだろう?」

「ああ、そうだな。はっはっは!」

「はっはっは!」

「……でもそれとこれとは別モンじゃ!」

「ぐあぁ! 不意打ちとは貴様卑怯なり!」

「二人とも!」

「ご……ごめんなさい母さん……」




80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 06:03:35.84 ID:XPJbwliF0
「あはははは」

「笑うなー」

「ごめんごめん……面白くて……」

ニー

ニャー?

「おーよしよし、可愛いねーにーちゃん、にゃーちゃん」

「なぁ俺の事」

「さて部屋の掃除でもするかな」

「露骨に無視ですかそうですか」

「ふふ? それじゃあ手伝ってくれる? おにーちゃん?」

「……」

「どうしたの? 先いくよー?」




81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 06:06:12.77 ID:XPJbwliF0
オニーチャン

オニーチャン

オニーチャン

……………………
…………
……

「はっ?! 別世界にトリップしていた様だ」

「ちょっと大丈夫?」

「しんぱいないさー! 掃除くらい俺に任せとらんかあああい!!」

「息子には負けん!」

「年寄りは引っ込んでろ!」

「ぬわあああんだとおお!!!」

「す……すごい……部屋がみるみる片付いていく……」




83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 06:08:28.99 ID:XPJbwliF0
「あらあら? すごいスピードね」

「その有り余る力を地球の為に使えばどれだけ良いだろうか」

「がんばれー二人ともー」

「おうよ!」

「二人とも、それ終わったら晩御飯ですから。手を洗ってきてくださいね」

「はーい」

「今日は何?」

「今日はヤキソバです、それから焼き芋と、それからあとは──」




84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 06:11:08.57 ID:XPJbwliF0
「……ん? これは、小学校の時のアルバムか?」

「うん」

「ほほう? なつかしいなぁ、うわ、お前ちっさいなぁ」

「小さい所はオマエに似たな」

「うるせー! でかく生みやがれ!」

「私に言うな、DNAに文句言え」

「もー……二人ともいっつも喧嘩なんだから、あたしが居なくなっても続けるの?」

「「死ぬまで続ける!」」

「そ……そうですか……」




85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 06:14:23.74 ID:XPJbwliF0
「おい妹、勘違いしてる様だから言っておくぞ?」

「奇遇だな、私も一言言っておきたい事ができた」

「うん?」

「お前は居なくなるわけじゃない、ちょっと遠くへ行くだけだ。離れていても家族なんだからな」

「……うん、わかってる」

「うむ、わかっているなら良い」

「も〜、二人とも心配性なんだから」




86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 06:17:28.44 ID:XPJbwliF0
「……お? 文集か、そういえば何書いてたんだっけ」

「ちょっと! 勝手に見ないでよ」

「減るもんじゃなし、いいじゃないか。昔は尻を見せてくれたんだぞ?」

「いやなもんは嫌なの、恥ずかしいじゃない」

「……ケチ」

「おい、なんだ尻って」

「ナイショだクソ親父」

「ああん?」

「あーーもーー、喧嘩すんなーーーー!!」

ゴン!

「……母さんの一撃より痛い……」

「姉上を超えたな……」




87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 06:20:12.18 ID:XPJbwliF0
「で、結局見せてくれないのね」

「気が向いたらね」

「ならば待とう、いつまでもな」

「諦めてよ」

「ふはは! 俺が諦めるなどあるものか!」

「もう!」




88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 06:27:28.99 ID:XPJbwliF0
私の家族はいつもこんな感じ。

賑やかで、騒がしくて、いつも笑顔だ。

最初の頃は、みんなぎこちなかったけれど、いつしかこんな風になっていった。

きっと戻っているだけなんだと思う。

本当の事は皆、いわないけれど、本当の事は皆、わかっている。

それが、あたしの家族なんだと思う。

卒業文集のタイトルと同じだ。

結局、なんだか恥ずかしくて二人には見せられなかった。




89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 06:29:45.47 ID:XPJbwliF0
────────
────
──

晩御飯を食べた後

一人部屋でこっそりアルバムをめくっていると

ノリか何かでくっついた最後の空白のページに気がついた。

おかしいな、と思ってぴりぴりとめくってみると

そこには見慣れた文字でこう書かれてあった。



妹「ねーちゃん」



おわり。




96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 06:58:51.86 ID:XPJbwliF0
引越し業者「……遅いな、何回も呼び鈴ならしてるんだけどな……」




おしまいおしまい。




98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 07:10:56.89 ID:XPJbwliF0
月曜の朝まで付き合ってくれた皆さんありがとうございます。
>>1スレ立て感謝です。8日ルールひっかかるくらいのダラダラ行進でごめんなさい。

幼女「とうもろこし、いる?」
の続きというか微妙に登場人物が被っているというか。時系列では後になります。
あんまり本編とは関係ないですけれど、よければ合わせてどうぞ。




99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 07:42:57.60 ID:AlRYYlvcP
おつかれー
よかったよ




101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 08:32:21.95 ID:Hz//ppyd0
乙でしたー!




102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 08:36:36.35 ID:2MtansAK0
面白かったよ





104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 09:19:30.89 ID:Qdu65qLH0
いまさらだけどお疲れ様
面白かったよー!!




105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 09:49:43.00 ID:YEyRbaNKO
乙乙

とうもろこしの人だったのか
次回作も楽しみにしてる




110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 10:18:22.19 ID:/bU9+mT+O
とうもろこしも読んできた。

かなり面白かったよー。また書いてねー

1乙




111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 10:48:51.40 ID:hScnV2qb0
お疲れ様です
超名作でした
また見たいです




112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 12:49:06.24 ID:UBEza9IJ0
こんないい作品をありがとう




113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 12:52:04.41 ID:hScnV2qb0
トウモロコシ見たけど初めてパソコンの前で泣きました




116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 15:36:29.18 ID:YIyI9Lim0
乙!
面白かったです。
ちゃんと完結して良かった。




118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 16:11:11.47 ID:UBEza9IJ0
トウモロコシ読ませていただきました!素晴らしかったです!




119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 18:11:49.41 ID:sgoKfNFS0
本当面白かった。機会があればまた読みたい。あーハッピーエンドでよかったー

小説版 魔法少女まどか☆マギカ 初回限定版
テイルズ オブ エクシリア (初回特典:「15th Anniversaryプロダクトコード」&「PS3カスタムテーマ(全10種)プロダクトコード」同梱) 特典 特製「マスコットチャーム(全4種のうち1種)」付き
エースコンバット アサルト・ホライゾン 特典 戦闘機「F-4E PhantomII」がダウンロード出来るプロダクトコード入りカード付き
『カーニバル・ファンタズム』1st Season 初回限定版 (Blu-ray)
DARK SOULS (ダークソウル) 特典「特製マップ&オリジナルサウンドトラック」付き
魔界戦記ディスガイア4 フーカ&デスコ編はじめました。(数量限定アペンド版)
ノーモア★ヒーローズ レッドゾーン エディション (初回同梱特典:「シルヴィア様の18禁パック」無料ダウンロードプロダクトコード同梱)【CEROレーティング「Z」】


 

SS宝庫最新記事50件