1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 06:30:57.52 ID:VSFp+fMCO
動物の皮をかぶって変身!


3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 06:32:41.33 ID:VSFp+fMCO
浩二は仕事用のナタを研いでいた。

明日も明後日も、彼には牛の皮を剥ぐ仕事が待っている。


ふと襖の方へと目をやる。
隙間の奥の暗い部屋には、一人息子の眠る姿が見えた。

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4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 06:33:35.27 ID:VSFp+fMCO
苦悶を浮かべた寝顔。
おそらくは学校での出来事でも思い出しているのだろう。

息子は被差別部落出身であることを理由に、酷い差別を受けていた。

浩二のなけなしのお金で揃えた勉強道具。しかし鉛筆、消しゴムは全て捨てられ、学習帳には隙間なくびっしりと差別の言葉が書き込まれていた。


5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 06:35:39.89 ID:VSFp+fMCO
時刻は夜の十二時。

浩二は研いでいたナタを砥石の上に置くと、壁に掛けてある牛の頭の剥製に手を伸ばした。

「変身!」

そう叫び、彼はその剥製を頭からすっぽりと被った。
そして再びナタを手に持つと、川沿いの傾斜地にある平屋建ての自宅を後にした。


7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 10:21:07.32 ID:FrQDI/eKO
>>5
なにこれかっこいい





その後やることがいただけないが


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 12:03:39.95 ID:VSFp+fMCO
浩二はとある邸宅の前で足を止めた。息子を苛めた主犯格の児童がいる家である

庭に回り、躊躇なく窓をぶち破る。夜の静寂をガラスの割れる音が切り裂く。

余りの音に目を醒ました母親が懐中電灯を片手にやってくる。
そして、その異様な侵入者に向かっておそるおそる光を照らす。

母親は息を飲んだ。

「ミノタウロス…!!」


13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 12:11:49.37 ID:VSFp+fMCO
そう言葉を発するや否や、浩二は素早く詰め寄り女の左胸にナタを突き立てる。母親は口から血を吹き出しその場に崩れ落ちた。

「何をしているか!!」
続いて起きてきたのは児童の父親である。
浩二は牛の冷徹な眼でしばらく彼を眺めていた。が、睨み合いにしびれを切らした父親が飛びかかってくると同時に、素早く懐に入り込み彼の身体を袈裟斬りにする。

男もまた血を噴出しその場に倒れ込む。

牛の皮に比べれば、浩二にとって人間の皮を切り裂くことなど容易かった。


14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 12:17:02.93 ID:VSFp+fMCO
階段を登り、ドアを蹴破り児童の部屋へと侵入する。
しかしそこに児童の姿はない。

浩二は部屋をしばらく見渡した後、ベッドへと視線を定める。

じわじわと近づくと、手に持ったナタで力強くベッドを突き刺す。
かすかな断末魔が聞こえたのち、ベッドの下の床に血の海が広がった。

全てが終わったのち、浩二は携帯電話を取り出しどこかへ一本の電話を入れた。


16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 12:23:05.57 ID:VSFp+fMCO
一家惨殺事件のテレビでの報道は一切無く、新聞の地域欄に小さく事件のことが載ったのみであった。
浩二が電話をかけた『組織』の圧力によるものだろう。


浩二は今日も牛の皮を剥ぐ。川沿いの傾斜地の作業場で皮を剥ぐ。
その日々に、終わりはない。



『ミノタウロスのナタ』



17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 12:24:32.51 ID:5vlGJXa10
立て逃げかと思ったらまさかのSSwww
津山事件みたいで面白い


20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 13:45:02.95 ID:VSFp+fMCO
浩二は鎌を手に河原の草刈りに勤しんでいた。向こう岸を歩く親子が、部落民に侮蔑と嘲笑の眼差しを向けるが、浩二は意にも介さない。

浩二の汗が夕陽を反射して光る。

「ちょっと、浩二さん」

浩二は背後に女の声を聞いた。


21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 13:51:37.65 ID:VSFp+fMCO
声をかけたのは最近夫を迎えたばかりの妻であった。無論、浩二と同じ被差別部落民だ。

部落民には一般人との通婚は許されない。地域内で血の近いもの同士の結婚を繰り返した結果、子供には多くの奇形、白痴が産まれた。

女は思い詰めた顔で言った。
「浩二さんに頼みたいことがあるの」


22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 13:54:14.97 ID:VSFp+fMCO
浩二は家に戻ると、壁に掛けてある牛の頭の剥製に手を伸ばした。

「変身!」

そう叫び、彼はその剥製を頭からすっぽりと被った。
そして再び鎌を手に持ち、川沿いの傾斜地にある平屋建ての自宅を後にした。


23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 14:01:54.38 ID:VSFp+fMCO
非人と言えど人の心を失ったわけではない。牛の仮面は人であることを忘れるための手段であった。

新妻夫婦の住む小屋に着くと、夫が神妙な面持ちで待ち構えていた。

奥に案内された浩二が見たものは、手の指が全てくっつき、片足の欠損した赤子だった。

「浩二さん、お願い」
女は悲痛な声が響いた。


24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 14:08:09.55 ID:VSFp+fMCO
「お帰りなさい」

帰宅した浩二を息子が迎える。
浩二の身体に染みついた牛の血と臓物の臭いに親しみすら感じ始めている息子だったが、今日はいつもと違う血の臭いを嗅いだ。

息子は何か言おうとして父の顔を見たが、その切なげな目に言葉を失った。


浩二は明日も牛の皮を剥ぐ。川沿いの傾斜地の作業場で皮を剥ぐ。
その日々に、終わりはない。



『死神の鎌』



26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 14:50:21.85 ID:VSFp+fMCO
浩二は息子をバイクに乗せ学校へと向かっていた。彼らの住む河川敷は小学校からは遠く離れており、徒歩での通学には時間がかかった。

何より通学の途上で息子が嫌がらせを受けるのを防ぐ目的もあった。

貧しい身なりの息子は一見して被差別部落民だとわかるものだった。


27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 14:56:28.00 ID:VSFp+fMCO
ある朝浩二は運悪く子供をはねてしまう。
幸いにして子供の怪我は軽く済んだが、現場に駆けつけた警官たちは浩二の免許証の住所を見るや否や、醜く顔を歪ませる。

「こいつ、『えた』や」


28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 15:03:18.70 ID:VSFp+fMCO
取り調べという名の私刑は三日三晩に渡って続いた。気絶しそうになると水をかけられ無理矢理意識を保たされた。

「ええか、お前みたいな『えた』もんが人間様に迷惑かけるなんて百年早いんじゃ」


解放された頃には浩二の身体はぶくぶくに膨れ上がり、まるで別人のようであった。
署を出ると浩二は一本の電話をかけた。


29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 15:07:17.57 ID:VSFp+fMCO
ようやく自宅に戻った浩二は、壁に掛けてある牛の頭の剥製に手を伸ばした。

「変身!」

そう叫び、彼はその剥製を頭からすっぽりと被った。
仮面の下から、血と、涙が伝った。


30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 16:00:45.62 ID:cdmHoBkR0
なにこれこええええええ


31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 16:06:14.41 ID:VSFp+fMCO
それからしばらくして後、浩二の取り調べに関わった警官の変死が相次いだ。しかし不思議なことにどの事件に関しても上層部から捜査の打ち切り命令が下っていた。

ある夜、浩二を痛めつけた警官の内の一人が警邏に出た。仕事場で焼酎をあおりほろ良く酔っていた彼は鼻歌混じりに自転車を運転していた。
暗い横丁を抜け、街灯のない通りに出ると前から猛然と車が襲いかかってきた。

警官が最期に見たのは、錆び付いたワゴン車と、それに乗る牛の仮面のドライバーだった。



『ヘルズ・チャリオット』



33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 16:44:46.91 ID:VSFp+fMCO
屠殺場での収入だけでは立ち行かなくなった浩二は、学生時代のつてを辿り飲食店での仕事にありついた。

「浩二くんは相変わらず真面目なのね」
そう言ったのは葉子である。彼女は浩二の同級生でこの飲食店の娘だった。浩二は葉子の言葉には応えず無言で皿を洗う。
彼女は部落民ではない、一般人であった。しかし彼女とその家族は浩二の境遇に同情し、普通の人と分け隔てなく接していた。

「こうしていると高校時代を思い出すわね」
浩二の皿を洗う手が止まる。
「あの頃は久美も一緒にいて…」
久美は浩二の前妻の名だった。


34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 17:01:59.37 ID:cdmHoBkR0
重い重い話が重すぎる


38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 17:15:06.40 ID:VSFp+fMCO
「久美ったら…あの子を産んですぐに逝ってしまうんだもの」
浩二は黙って下を向いていた。
「ねえ知ってた?久美より先に、私の方が浩二くんのこと好きだったのよ」

静かな食堂に蛇口から水の流れる音だけが響く。
浩二は、瞬きとともに揺れる葉子の長い睫毛を見つめていた。二人が唇を重ね合わせようとしたその時。

「葉子ちゃん!おるか!?」


40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 17:30:22.82 ID:VSFp+fMCO
静寂を破ったのは健吾だった。彼も高校時代の同窓生ではあったが葉子とは違い部落民を激しく嫌悪していた。

「なんや、この店は畜生を飼うとるんか」
健吾は浩二を見るなりそう言った。
「畜生の作った餌なんぞ食えるか。アホらし」
食堂を出て行こうとした健吾の肩を葉子が掴み、顔に激しく平手打ちをかました。

「何すんねんこのアマ!!」


41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 17:39:36.12 ID:VSFp+fMCO
「ええか、こんなしけた店の一つや二つ、儂がその気になればすぐ潰せるんや」
「ちょうどええ。この店は、畜生が作った餌を出してるて儂がぎょうさん宣伝したる」
「客足が楽しみやのう。ガハハ」
そう言って健吾は下駄を鳴らし去っていった。

「どうしよう浩二くん、私…」
うろたえる葉子を後目に浩二は無言で店を出て行く。


42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 17:41:41.11 ID:VSFp+fMCO
浩二は河川敷の斜面にある自宅に戻ると、壁に掛けてある牛の頭の剥製に手を伸ばした。

「変身!」

そう叫び、彼はその剥製を頭からすっぽりと被った。


43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 17:44:36.70 ID:6xhwT5uG0
>>1がどうしてこれを書くに至ったのかを知りたい


46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 17:50:46.68 ID:VSFp+fMCO
「…ん、どこやここ」
健吾はどうやら気を失っていたらしい。それまでの記憶を探る。確か道を歩いていたら、後頭部にいきなり衝撃を受けて…

気を失った経緯を思い出しながら顔を上げる健吾の目に映ったのは、月を背に野犬の群れを従える牛の仮面の男だった。

「畜生の餌は、どっちかな?」

男の悲鳴と野犬の遠吠えがこの町の夜をいっそう暗く彩る。


翌日、飲食店に浩二が姿を表すことは無かった。


『贖罪のための食材』



52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 18:37:09.84 ID:VSFp+fMCO
「鬱病…ですか?」
浩二は絶句した。少し前から息子の様子がおかしいとは思っていた。
常に自信なさげに下を向き、ぶつぶつと何か呟いていた。布団で横になっていることも多かった。
心配した浩二が医者に見せたところ、鬱病との診断が下ったのである。


58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 20:53:55.07 ID:VSFp+fMCO
なけなしの金をはたいて浩二は医者へと通った。そして息子にあらゆるカウンセリングを施した。しかし病状は一向に改善する気配を見せなかった。

三ヶ月が過ぎた頃、息子は虚ろな目で空を見つめるだけの廃人と化した。


59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 21:06:04.71 ID:VSFp+fMCO
それでも浩二は、医者に通い続ければ光明も見えてくるはずと自分に言い聞かせた。
とにかく金が要る。浩二は今まで以上に多くの牛を捌いた。



そんな生活が続いたある日。浩二が飯屋で定食にかじりついていると、息子を診てもらっている先生が友人を伴い入ってきた。
浩二の存在には気付いていなかったらしい。

医師は得意気に切り出した。
「実は、面白い話がありましてね」


72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 01:05:31.03 ID:VSFp+fMCO
「『えた』の息子の診察をしているという話はしたでしょう」
浩二の箸が止まる。

「実はね、カウンセリングと称してますます病状が悪化するような処置をとっているんですよ」
医師は笑いながら続けた。
「無力感を煽るんです。カウンセリングの節々で、『なぜこんな簡単な問いにも答えられないのか』と。時折怒気を混ぜるのがコツなんです。」
「自分を途方もない無能者のように思わせるんです。何をしても無駄だと思わせるんです。すると人の心はみるみるうちに摩耗していく」
医師の顔は愉悦に満ちていた。
「普段善人面を装っていると心労が溜まっていけない。相手は『えた』なんです。何をしたって誰も咎めやしないでしょう」
「ハハハ先生もお人が悪い」
「ところで一つ賭けをしませんか」
「ほう。と言うと?」
「『えた』の息子がいつ首を吊るかです。私はあと一ヶ月と見ていますな」


73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 01:08:01.54 ID:VSFp+fMCO
浩二は家に戻ると、壁に掛けてある牛の頭の剥製に手を伸ばした。

「変身!」

そう叫び、彼はその剥製を頭からすっぽりと被った。
そして息子の抗鬱剤を手に、川沿いの傾斜地にある平屋建ての自宅を後にした。


78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 01:22:23.35 ID:VSFp+fMCO
「次の患者の方どうぞ」
医師が促すと、牛の仮面の男が姿を表した。絶句する医師に浩二は言い放つ。
「今からお前を監禁する。そしてこの抗鬱剤を不規則に投与する。抗鬱剤は定期的に服用してこそ効果を発揮するもの。医者のお前なら、それがどれほど精神に悪影響を与えることか分かるだろう」

「誰か、誰か助けてくれ!」
叫ぶ医師のみぞおちに拳を叩き込む。

「さあ、これから私の秘密の小屋へ案内しよう。そこでお前にできることは、何一つ無い」
うずくまっている医師を抱え上げ、浩二はこう呟いた。
「日頃、『えた』ツラをしているとな。恨みと憎しみばかりが溜まっていくのさ」


79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 01:27:57.56 ID:VSFp+fMCO
一ヶ月が経った。
息子は未だに虚空を見つめているが、時間がゆっくりと彼の心を癒すだろう。


とにかく金が要る。


浩二は明日も牛の皮を剥ぐ。川沿いの傾斜地の作業場で皮を剥ぐ。
その日々に、終わりはない。



『サイコ・クラッシュ』



84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 02:30:06.67 ID:VSFp+fMCO
「何もこんな悲惨な死に方をしなくてもな」
浩二は四散した息子の身体を拾い集めながら呟いた。
この町には、飛び降りて死に至るほどの高い建物は無かった。
息子が選んだのは列車への飛び込みだった。

『えた』の死の処理に鉄道も警察も関わるはずがない。
住民たち有志による後処理作業だった。

「あったよ、右腕だ!」
若者の声が夕闇にこだまする。


86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 02:39:12.70 ID:VSFp+fMCO
通夜は地元の寺で執り行われた。
その式に葉子の姿があった。黒い喪服と彼女の白い肌のコントラストは儚い美しさをかもし出していた。
伏目がちのその表情に長い睫毛が映えた。

葉子に見とれていた浩二は我に返り己の不徳を恥じた。


87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 02:53:43.62 ID:VSFp+fMCO
「なんですかこの戒名は」
浩二は坊主に詰め寄った。
戒名とは人間が死後に与えられる名前である。
息子に与えられた戒名は『屠畜非男』であった。
明らかな差別戒名である。

「旃陀羅(せんだら)の分際で、うるさいんじゃ。
死後を弔ってもらえるだけありがたく思わんか」

「息子は、もう穢れからは解き放たれたはずだ」

「何を言うか」

それを聞いて坊主は鼻で笑う。

「『えた』は生まれ変わってもずーっと『えた』じゃ。
未来永劫、ずーっと『えた』じゃ」


人間の死後すら辱める。それがこの国の仏教であった。


88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 02:55:26.90 ID:VSFp+fMCO
浩二は家に戻ると、壁に掛けてある牛の頭の剥製に手を伸ばした。

「変身!」

そう叫び、彼はその剥製を頭からすっぽりと被った。
そして一本のナタと、恐ろしく長い紙切れを手に、川沿いの傾斜地にある平屋建ての自宅を後にした。


91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 03:16:55.44 ID:VSFp+fMCO
最近坊主の周りでは事件が頻発していた。
彼の近親者や知己たちが次々とその行方をくらませていたのである。

「あの『えた』の仕業や」
坊主はそう直感した。
危機に直面しても坊主は仏に救いを求めなかった。
ボストンバックにありったけの札束を詰め、寺の裏口に回ろうとしたところ、
牛の仮面の男が立ち塞がった。

浩二は、巻物のような紙切れを坊主の前ですーっと広げた。
その紙には人の名前がビッシリと書かれていたが
その大半には朱筆でバツが引かれていた。

「これはな、お前の名を知る者の全てだ」
「これらをすべて葬ったそのとき、この世にお前の名を知る者はいなくなる」

「名前は、人の存在の証明だ」

「お前は殺さない。だがお前を知った者は殺していく」
そう言うと牛の仮面の男は何処かへ去っていった。

仏の鎮座する、だだっ広い講堂に、坊主はただ一人取り残されていた。


『ネイムレス・モンスター』



95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 04:21:36.84 ID:VSFp+fMCO
ある日浩二の町に朝鮮人の一家が越してきた。
腫れぼったい瞼、張り出したエラ、細い髪の毛、薄い体毛。
一目見て朝鮮人と分かるその風貌を快く思わない者もいた。

一家は地区の屎尿処理の仕事についた。
卑しい職業に就く者の多いこの町でも最下層の仕事だった。


96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 04:26:46.93 ID:VSFp+fMCO
肥えを運ぶ朝鮮人。
そこへ自転車に乗った部落民がわざとぶつかる。
肥えが朝鮮人の身体にかかる。

「どこ見て歩いとんのじゃこのバカチョン!」
「チュミマチェン…」

朝鮮人は肥えの入った桶を拾い直し、再びトボトボと歩き出す。
その光景を遠くの丘の上から浩二が苦々しく見つめていた。


98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 04:32:37.08 ID:VSFp+fMCO
ある日、町会費が盗難される騒ぎが起こる。
犯人は町内の部落民であったが、
彼らは殊もあろうに朝鮮人の一家が犯人であるとの噂を流布し、住人もまたそれを信じた。

だが浩二だけは違った。


100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 04:44:34.91 ID:VSFp+fMCO
浩二は朝鮮人一家の潔白を証明するため奔走した。
そして決定的な証拠を手にし、後はそれを町の名主に突きつけるだけであった。

名主の家へと向かう途上、浩二は木刀を持った三人の男に囲まれる。
彼らは豚の仮面を被っていた。彼らもまた、人の心を捨てているのであろう。

正面の二人と間合いを測る。


103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 04:53:16.06 ID:VSFp+fMCO
敵の一人が背後で刀を振り上げたのを察知した浩二は、
その木刀を掴み、前へと背負い投げる。
そしてすかさずその男に馬乗りになり、懐から取り出した匕首で左胸を貫く。

一人を絶命させた浩二は、匕首を抜く時間も惜しみ素早く跳びのけぞると、そのまま逃亡した。

男たちが後を追う。


109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 05:02:43.29 ID:VSFp+fMCO
男たちは二手に別れた。
街灯のない暗い夜道を行く方の男は、注意深く辺りを見渡しながら歩を進めていた。
民家の垣根からはみ出す、大樹の下を通りかかった瞬間だった。

男に何かがのしかかり背中に鋭い痛みが走る。
樹から降ってきたのは浩二で、男の背中に刺さったのは樹の枝だった。
枝は正確に心臓を貫いていた。男はその場に崩れ落ちる。


111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 05:12:58.48 ID:VSFp+fMCO
最後の男は川べりを探索していた。
木造のボロ橋を通りかかったとき、ふと川の夜風に安らぎを覚える。
空には無限の星が瞬いていた。被差別部落といえど空に輝く星の美しさは変わらない。

刹那、下半身に激痛が走る。
足元の板の裂け目から、木刀が彼の"戸渡り"を突き刺した。
先回りした浩二が橋の下に潜伏していたのである。


113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 05:16:26.21 ID:VSFp+fMCO
男に抵抗する力は残されていなかった。
浩二は男を川へ投げ捨てると急いで駆け出した。

朝鮮人一家が危ない。

直感でそう感じた浩二は一家のバラック小屋へと向かった。


114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 05:24:49.67 ID:VSFp+fMCO
そこにあるはずのバラック小屋は、炭のかたまりへと姿を変え、
もうもうと白い煙を上げていた。

「焼け跡から、盗まれた町会費が見つかったそうよ」
「やっぱりチョンには泥棒しかいねえな」
「家族はみんな焼けちまったよ」

周囲の人々は口々に騒ぎ立てた。


結局人は同じことを繰り返す。
いくら自分がひどい差別にあっていても、
より下の者を見つければその者を差別する。

浩二の心に沸々と黒い感情がわき上がる。


『カタストロフ 前編』



119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 05:51:26.63 ID:SGp8ceuvO
こんなに血なまぐさいライダーバトルがあるなんて…


149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 12:20:18.60 ID:VSFp+fMCO
浩二は壁に掛けてある牛の頭の剥製に手を伸ばした。

「変身!」

そう叫び、彼はその剥製を頭からすっぽりと被った。

今までこの仮面を身につけるのは、人の心を忘れるためであった。
しかし今回は違う。牛の頭が表すのは、浩二の怒りのみである。
浩二は人の理性を以ってこれからの行動を実行に移す


151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 12:25:11.28 ID:VSFp+fMCO
22:44
南 浩二は息子の遺影に手を合わせたのち、川沿いの傾斜地にある自宅を出る。
自動小銃に銃剣、散弾銃、拳銃、弾薬、手榴弾、ナタを携行。

22:49
隣家の紀田宅の呼び鈴を鳴らす。紀田家は祖父、祖母の二人暮らし。
出てきた祖母のヨネを散弾銃で撃ち抜く。ヨネは衝撃で廊下の奥まで吹っ飛ぶ。即死。
南はそのまま家の奥へと進み、寝室で就寝していた祖父の廉を、布団の上から銃剣で突き刺す。およそ15分後に出血多量にて死亡。
一家全滅。


152:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 12:29:40.77 ID:VSFp+fMCO
22:57
さらにその隣家の東堂家を襲撃。東堂家は母、長女、次女の三人暮らし。
玄関が施錠されていなかったため難なく侵入。便所のドアを蹴破り、用便中の母節子の頭を拳銃で撃ち抜く。即死。
居間へ行き、抱き合う長女凛子と次女茜をまとめて散弾銃で吹き飛ばす。即死。
一家全滅。

23:09
滝家を襲撃。滝家は男の単身世帯。
南は玄関をぶち破り侵入。滝芳雄は窓からの逃亡を試みるが、背後から自動小銃で蜂の巣にされる。2分後に出血多量にて死亡。
一家全滅。


153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 12:37:36.65 ID:VSFp+fMCO
23:16
大宮家(分家)を襲撃。父、母、長男、長女の四人暮らし。
庭に回り自動小銃の掌底で窓ガラスを割り侵入。
その場に居合わせた母棟子と長女礼子を自動小銃で射撃。礼子は8分後に、棟子は13分後に出血多量にて死亡。
銃声を聞いて駆けつけた父幸助が飛びかかってくるが、小銃の掌底で殴り倒した後、頭を拳銃で撃ち抜く。
窓の外に、逃げる長男幸太郎の姿を見る。自動小銃で追撃。左腕に命中するも、南から逃げ切る。

23:31
大宮家(本家)を襲撃。祖母、父、母、長男、次男、長女の六人世帯。
先ほどの分家での銃声を聞き庭に出ていた母登美子を散弾銃で射殺。即死。
縁側に出ていた次男幸一と長女智子は雨戸を閉めバリケードを造ろうとするが、
雨戸を閉める最中に散弾銃による射撃を受ける。即死。
続いて南は長女智子を同じく散弾銃で射撃。下半身に命中。6分後出血多量にて死亡。ここで散弾銃の弾が尽きたため投棄。
父幸三郎と長男幸太が刃物をもって襲いかかる。自動小銃で応戦し、幸三郎の腹部に弾を命中させるが、幸太の攻撃により右腕に切り傷を負う。
至近距離で幸太の胸を撃ち抜く。即死。うずくまり這い回る幸三郎の頭部を拳銃で射撃。即死。


155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 12:42:41.34 ID:VSFp+fMCO
23:46
土間へ向かうと祖母トミが即身仏を手に持ち隅で震えていた。
一言二言会話を交わした後、拳銃にて射殺。即死。
彼女の持っていた即身仏を拾いポケットに入れる。
一家全滅。

23:48
大宮邸を後にしようとしたところ、庭に逃げ込んできた分家の幸太郎と鉢合わせ。
命乞いをする幸太郎に拳銃を発砲。即死。
一家全滅。

この頃から町に響きわたる悲鳴と銃声に住人たちが異様な気配を察知し始める。


156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 12:45:05.85 ID:VSFp+fMCO
23:53
坂田家を襲撃。坂田家は女の単身世帯。
ドアを蹴破り侵入すると、坂田芳江は黒松家の長男の俊と情交中であった。
両面を布団の上から自動小銃でめった撃ちにする。即死。
一家全滅。


住民が警察に通報するも、警官は『えた』の殺し合いには関知しない。
住民たちは即席の自警団を組織、独自に武装をする。
異常事態を示す鐘楼の鐘の音が町中に響き渡る。



『カタストロフ 中編』



160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 13:31:09.07 ID:VSFp+fMCO
町の中心部にある広場、通称『牛の胃袋』
そこで浩二と住民は対峙していた。

「気でも違ったんか、浩二!」
「僕は正気だ」
牛の仮面を被ったまま、冷然と言い放つ。

「最近のお前はおかしかったで。やれ町のモンを殺したり、やれチョンの肩を持ったり」
「僕は部落差別を社会悪として憎んでいた。しかしそれは社会悪ではない。人間悪だ」
「なにを分けわからんことを言うとるんや」
「わからないだろう。非人にはな。…いや、非人なのは僕か。人間を悪とすれば」


163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 13:41:05.72 ID:VSFp+fMCO
「被差別部落は社会制度上設けられたもの。しかし実際に差別を行うのは、人だ」

「人に差別の心がある限り、部落差別はなくならない。おまえたちの朝鮮人一家に対する仕打ちを見て確信したんだ」

「気違いや!浩二は気が触れてしもたんや!」

「僕は正気だ」
浩二は再度言い放つ。


164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 13:46:25.54 ID:VSFp+fMCO
「なぜ人は、他人を見下さないと生きられない?なぜ優越感がないと生きられない?」
「なぜ人は劣等感ゆえに命を断つ?なぜ人は…」

仮面の下を涙が伝う


166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 14:00:25.00 ID:VSFp+fMCO
「それは、人が生き物だからよ」
住民の中から一人の女が歩み出る。
葉子だ。

「騒ぎを聞いてね、駆けつけたの。きっと浩二くんじゃないかって」
「差別は何も人間だけのことじゃない。猿にだって、蛙にだって、蟻にすら餌にありつけないものが存在する」
「命が平等だったことなんて、この星が生まれてから一度だってありはしないわ」
「…受け入れなきゃ、浩二くん」
涙が葉子の睫毛を濡らす。


170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 14:07:38.53 ID:VSFp+fMCO
「でも葉子ちゃん。君は僕を差別しなかった…」

「それはね、私が浩二くんのことを好きだからよ」
「この場にいる誰よりも、浩二くんが好き。ここの男たちなんて、どうなっても私には関係ないわ。私はね、貴方を差別してるの」
浩二は手に持ったナタを落とす。

「そう言われて心地よいでしょう?心地よさを感じてしまったのでしょう?」
「差別はね、時に人の心に暖かみを生み出すの。生きる原動力にもなり得るの」

浩二は呆然と立ち尽くす。


172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 14:15:08.35 ID:VSFp+fMCO
場を静寂が支配する。

やがて浩二は微笑みを浮かべると、拳銃をくわえた。
葉子が駆け寄るよりも先に銃声が広場に響く。

倒れ込む浩二が最期に見たもの、それはポケットから転がり落ちた即神仏と、道端に生える雑草だった。

「次は植物に生まれますように」

浩二は即神仏にそう祈り目を閉じた。



『仮面ライダー部落』



178:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 14:22:22.48 ID:ZLU3EsA6O
乙でした


179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 14:25:35.10 ID:yV+aSQExi
ディケイドはどう反応するだろう


182:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 14:50:04.71 ID:wEj/XJjAO
まさに怪奇




183:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 15:08:46.36 ID:Tt6pdNPh0
ぞわぞわきた



185:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 15:23:06.21 ID:VSFp+fMCO
読んで下さった皆さん、保守して下さった皆さん、本当にありがとう
軽い気持ちで立てたスレのはずがまさかこんなに長く続くなんて俺自身が一番ビックリしてる

普段「おまんちんwwwwww」とか言って喜んでる俺でも
このSSを読んだ人に何かを感じさせることが出来たならば、生まれた価値があったんじゃないかな

糞スレを量産する作業に戻るとするよ
みんな本当にありがとう


187:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 15:28:50.84 ID:wEj/XJjAO
>>185
乙まんちんwwwwww


207:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 16:58:37.72 ID:jglRoljGO
携帯を使ってるから最近の設定なんだろうけど70年代の映画の様な雰囲気


209:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 17:08:14.16 ID:wEj/XJjAO
>>207
絶えず夕方な印象


211:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 17:25:48.63 ID:yw9K9M93O
これは受け継がれていくエンドかと思ったら…なんて考えさせられるエンドなんだ…
面白かった


76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 01:11:06.96 ID:L2MxlYnO0
石ノ森先生に謝れw

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元スレ
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