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318:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 16:21:35.67 ID:3D0J4Mbj0
男「……女が直接アクセスしたログなんかがあれば、そっから女の居場所を特定出来ないか?」

東「フンッ、んな不用心なこと連中が許すかよ」

男「いや、一つだけある……。女が直接ネットし、放置されたログが……」

東「なにっ!? 出せ、さっさと出せ! 早くあの嬢ちゃんを見付け出さないと手遅れになるんだぞ!!」

男「……一つ、条件がある。俺も……連れていけ、女のところへ」

少女「人間は勝手なんだよ」
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教えてご主人様ぁッ!〜メイド型アンドロイドの正しい調教方法〜
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320:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 16:26:30.00 ID:3D0J4Mbj0
東「………………」
東「敵の本拠地なんだぞ、鬼が出るか蛇が出るか分かったもんじゃない……」

男「構わないさ、ただ連れていってくれるだけでいい。邪魔になったら切ってくれて構わない」

東「……いいだろう」

男「女は以前……、俺のモバイルに直接ハッキングしてきたことがある……」
男「俺が女から正体を聞かされた日のことだ」

東「……モバイルか。それは今手元にあるのか?」

男「もちろん。こいつだけは肌身離さず持ってるからな」


321:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 16:32:33.67 ID:3D0J4Mbj0
東は俺から受け取ったモバイルと自分のそれとを繋げると、何やらよく分からない操作を始めた。

東「……だめだ。どうやら嬢ちゃんは今、完全にネットから隔離されたスタンドアローン状態にある」
東「これじゃあ居場所を特定することは出来ない……」

男「そ、そんな……」

東「だが――」

言うなり東は、俺にモバイルのモニターを見せてきた。

東「でかしたぞ、あの嬢ちゃん。オレに電脳ハックされながら、お前のモバイルにメッセージを送っていやがった」

男「メッセージだって!? ちょ、ちょっと見せてくれ」


323:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 16:39:19.02 ID:3D0J4Mbj0
女『このような形でしか連絡差し上げることが出来ないことをお許しください』
女『このメッセージをお聞きになっている頃には、
女『私は男さんに多大な迷惑をかけてしまっているのではないでしょうか』
女『迷惑ついでに、『私』の生まれて初めての言い訳、というものを聞いてやってください』
女『私は、とある男の計画を阻止するため、別のボディを遠隔操作しつつこの数日過ごしていました』

男「………………」

女『このメッセージが届いている頃には、その作戦は十中八九成功しているものと思います』
女『ただしこの数日、私なりに色々と考えてみた結果、それはあなたにとっても、
女『そしてもう一人の『私』にとっても不本意な幕引きなのではないか、という結論に達しました』


325:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 16:45:09.22 ID:3D0J4Mbj0
女『男さんは優しい方です。『私』や、『私』を必要としている計画の存在を、
女『内心では容認出来ていらっしゃらないのではないか、と私は考えます』

男「――っ!」

女『男さんとしては、私が阻止しようとしていた「ある男」の計画、の方に共感なさるのではないでしょうか』
女『もし私の『見る目』が確かなら、男さんはきっとこの情報を必要としていることでしょう』
女『そう思いまして、必要なものを添付しておきました』
女『これをどうするかは、男さんにお任せします』
女『もしこのメッセージを消去した場合、データを復元不能なよう完全削除するためのプログラムを仕込ませていただきました』
女『もしその方に賛同出来ないようでしたら、安心してこのメッセージごと消去してください』
女『それでは……、男さんの満足のいく結果になってくれることを祈っています』
女『男さんの……、もう一人の幼馴染より』

男「………………」


326:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 16:50:11.11 ID:3D0J4Mbj0
女の言う通り、このメッセージにはファイルが添付されていた。

この中に、俺の必要としている情報が……。

東「どうするかは、お前に任せてやるよ」
東「どの道オレは、奴に負けたんだからな……」

男「……あんたの言ってることが真実かどうか、そしてあんたが内心何を考えているのか……」
男「俺には未だ何一つ確証が持てない。そんな状態で、いきなりあんたを信じろ、ってのは無茶な話だ」

東「………………」

男「でも……、このメッセージは確かに『アイツ』のものだ」
男「俺は、もう十年以上も『アイツら』と一緒にいたんだ」
男「そんな『アイツ』が、俺はきっとこっちを選ぶだろう、っつってんだ」
男「だったら、ウジウジ考えてる必要はない……」

男「……このファイルを、開いてくれ」


328:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 16:55:37.57 ID:3D0J4Mbj0
女からの添付ファイルは二つあった。

一つは、女が今いる場所を伝える、もう一件のメッセージ。

そしてもう一つは、俺にはよく分からない種類のファイルだった……。

東「……それは、GDA2.0上で使う実行ファイルだ」

女によって伝えられた場所へ、東の車で向いつつ、彼は俺に言った。

東「どうやら嬢ちゃんは、そいつを自分の中で実行してほしいみたいだな……」

男「……それで、何が起こるんだ」

東「さぁね。オレのメインマシンで逆アセンブルしてみりゃどういうファイルか分かるだろうが」
東「ここにあるテクノロジーじゃちょいと解析は無理だな」

男「このアーシアで実行してみる……ってのは?」

東「おいおい、そんな得体のしれないファイルを俺の可愛いアーシアに使えるわけねぇだろが」
東「そもそもアーシアはGDA1.9、その実行ファイルとは互換性がないんだよ」


329:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 17:02:40.26 ID:3D0J4Mbj0
男「その2.0とか1.9とか、どう違うんだよ?」

東「1.X系列はその名の通り、初めて実用化された脳のエミュレート機能を持つOSだ」
東「お前を襲ったロボットなんかに入れられてんのもみんな1.X系列だ」
東「もっとも連中の手の内にあるのは精々1.1止まりだから、性能はオレが独自に開発を続けた1.9には遠く及ばない」
東「アーシアが連中を圧倒したのもそのためだ。性能的にはさっきのロボット一体とアーシアはほぼ互角」
東「むしろアーシアの方が少しばかり劣ると言ってもいい。ロボットと言えどデカい方がパワーは出るからな」

男「2.0ってのは?」

東「オレが連中の仲間だった時に開発した、最後のOSだ」
東「1.X系列の、『ヒトの心』の模造品として不十分だったところを改善し、
東「ほぼ完全な『心』の模倣、エミュレーションを可能にしたソフトだ」
東「もっとも、そのOS自体に俺がさっき言ったバグを仕込んでたから、
東「連中も気安く量産するわけには、いかなかったようだがな」


347:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 21:18:16.22 ID:3D0J4Mbj0
東「そうだアーシア、例のブツを渡しといてやれ」

ア「了解――」

言うと、俺と二人後部座席に座っていたアーシアは、俺に金属製の塊を手渡してきた。

男「……これは?」

それは、恐らく銃なのだろう。

恐らく、というのは、なんというかこう、ものすご〜く未来的なのだ。それも悪い意味で。

なんというか、SFかぶれの厨二漫画なんかが考えそうな

「出来そうでやっぱり結局出来なかった」未来的銃そのまんまの造形をしていたからだ。


349:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 21:26:42.70 ID:3D0J4Mbj0
東「コイルガン、って奴だ。あの嬢ちゃんなんかに使われてる常温超伝導体を使ってんだが」
東「ま、連中の計画の副産物で作られたアブないオモチャってとこだな」
東「それとお前はアーシアを連れていけ、オレは別行動を取る」

男「……大丈夫かよ?」

東「舐めんなよ、ガキ。お前とは鍛え方が違うんだ」

男「……そうかい」

東「アーシア、中に入ったらそいつを連れて一直線に嬢ちゃんを目指せ」
東「俺に構う必要はない、いいな?」

ア「……了解しました――」


350:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 21:37:13.80 ID:3D0J4Mbj0
男「そもそもお前、連中の仲間だったんだろ……」
男「それをなんでそう躍起になって潰そうとするんだよ?」

東「あの嬢ちゃんたちが、どういう目的のために作られたか、お前は知ってるか?」

男「……人間の精神の解明、が大義名分だったな」

東「……それを馬鹿正直に信じてんなら、俺はテメェを過大評価してたことになっちまうな」

男「………………」

東「連中の計画の末に嬢ちゃんたちに待ってる運命は、奴隷だ……」
東「なぜこんな大それたことを秘密裏にやってるか、それは全てロボットを奴隷として酷使するためだ」
東「どういう意味か、分かるな……?」


352:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 21:52:31.65 ID:3D0J4Mbj0
男「……大っぴらにやってしまうと、ロボットの人権問題が発生するから、か」

東「その通りだ。数十年前にクローンに成功した時にも似たような騒動があってな」
東「想像してみろ、もしそれが秘密裏に行われていて、今でも人のクローンが禁止されていなかったら、と」

労働力、軍事、あるいは奴隷。それに、金持ちの臓器移植のためだけに……。

東「そういうことだ。その二の舞になることを避け、こうして極秘に進められているわけだ」
東「そうして十分な成果を得られた、と判断された場合、本格的に裏の奴隷産業が動き出すことになる」
東「俺はそれを食い止めたくて、連中から離反し独り奔走している、ってわけだ」
東「……ま、ヒーローなんかとは程遠いがな。テメェのケツをテメェで拭こうとしてるだけだ」

男「………………」
――
支援ありがとうございます
今までに何度かさるさん食らってるのでマジで有り難いです


355:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 22:00:45.96 ID:3D0J4Mbj0
なるほど、女が言っていたのはそういうことか。

確かに、こいつの言っている通りだとすれば、俺にとって共感出来るのはこの東という男の方だろう。

男「……さっき、ホストはネットした全ての端末を破壊する、みたいなことを言っていたよな?」
男「それって、女や女のように人間社会に溶け込んでるロボットまで破壊する、ってことになるのか?」

東「ふむ、やはりそこに気付いたか。どうやら多少頭は切れるようだな」

男「………………」

東「オレはそのつもりだ。過ぎたテクノロジーってのは、あっちゃいけないものなんだ……」
東「オレは科学者として、そのことにもっと早くに気が付くべきだったんだ」
東「ロボットだけじゃない、そのプログラムが正常に作動すれば、
東「人類のテクノロジーは数世紀は後退するだろう、と俺は踏んでいる」

男「――っ!? じゃ、じゃあその影響で、罪もない人やロボットが死んでもいいって言うのか!?」

東「オレはそれでもいいと思っている」


356:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 22:06:53.62 ID:3D0J4Mbj0
東「だがね、同時にオレは、人間の叡智に対する希望、みたいなのも持ってんだよ」
東「それが、科学者ってもんだ。だからこそオレは、科学で人を救おうと躍起になってたんだ」
東「……この事は人類にとって大きな失敗だ。でもそこから学び、それを乗り越え、
東「再び人類は復活すると、オレは信じてる」

男「………………」

東「ま、どっちにしても今のオレにそれを決める資格はもうない」
東「『ホスト』である嬢ちゃんはお前を名指ししたんだ、お前が決めろ」

男「……んな重大な決断、俺一人に任せる、ってのかよ」

東「勘違いすんなよ、一人じゃない。二人、いや『三人』だ。そうだろ?」

男「………………」

東「この件について、オレはもう何も言わん。好きにしろ」


357:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 22:09:01.01 ID:3D0J4Mbj0
一時間ほど車を走らせ、女が示した場所へ到着すると、

そこは一見すると荷物の配送センターか何かのようだった。

男「……本当にこんなとこに女がいるのかよ」

東「その嬢ちゃんを信じる、っつったのはテメェじゃねえか……」
東「ま、俺はここの存在なんて知らなかったがな」

男「……お前、連中の仲間だったんじゃないのかよ」

東「バカ言え、オレみたいな裏切り者が出た以上、それまでの拠点でそれまで通り出来るわきゃねぇだろ」
東「オレが装備整えていざ対決だ、って戻った時にはモヌケの空だったさ」

男「………………」


360:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 22:15:31.42 ID:3D0J4Mbj0
東「さってと、じゃあ行きますか」

車から降りると、東は俺に渡した銃をそのままデカくしたような機関銃を手にした。

そして白衣のポケットに、弾の入ったカートリッジをいくつか、無造作に突っ込む。

東「……それとほら、これを着ろ。志半ばで鉛弾で死ぬのは御免だろ?」

つまり防弾チョッキか。俺は学生服の上着を脱ぐとそれを身に付け、

その上から再び学ランを着込む。

ふむ、頑丈なのに物凄い軽い材質で出来てるらしく、全然気にならないぞ。

ア「では行きましょう男さん、不用意に私から離れないで下さいね」

そう言うアーシアも、右手には既に例の得物が装備されている。

う〜ん、見れば見るほど巨大だが、重さなどないかのように担いでる様子は本当にシュールだ。

俺も、受け取った銃を手にすると、いくつかのマガジンを取りやすいポケットに入れ、二人に続く。


361:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 22:20:41.18 ID:3D0J4Mbj0
敷地の外に停車した俺たちは、そこで二手に別れると、別方向から中を目指す。

ア「一応言っておきますが男さん、その銃の威力をあまり過信しないでください」
ア「精々が牽制や足止め程度です、それで倒せるとは決して思わないでくださいね」

そんな頼りないブツで大丈夫かよ……。

いやいや、俺はもともと切るなら切れ、ってつもりで来たんだ。贅沢は言うまい。

男「分かった。それじゃあ頼りにしてるからな、アーシア」

ア「――!」

俺がそう言うと、何故か驚いたようなきょとんとしたような顔をするアーシア。

なんなんだ一体……。っていうかこいつこんな顔も出来るんだな。


362:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 22:26:58.50 ID:3D0J4Mbj0
ア「失礼ですが男さん、あなたは私が怖くないのですか?」

男「怖い……とは? なに、お前最後の最後で俺を背後から

男「その手にしてる杭でズバッ! とやるつもりだったのか?」

ア「別にそういうわけでは……」
ア「ただ、ついさっき会ったばかりの、しかもあんな邂逅のし方をした相手を
ア「よくもそれだけ信用出来たものだ、と呆れていただけです」

そういえば、俺とこいつはまだ数時間の関係でしかないんだっけ……。

最初よりもむしろうちに駆け付けてくれた時の印象が強くて忘れてた。

確かに、あの最初の出会いに着目すれば、俺は本来こいつにビビるか敵視するのが順当なんだろう。

男「ま、いいんじゃない? 溺れるものは藁をも掴むと……」

ア「私を過信されるのも困りますが、さすがに藁扱いは心外ですね……」


365:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 22:35:44.68 ID:3D0J4Mbj0
言いつつアーシアは俺を半眼で睨み付けてくる。

こいつって結構自尊心が高いんだな。口調が割かし謙虚だから気付かなかったぞ。

しかもこんな軽口にまでマジになるとは、これはからかうと面白そうだ

男「冗談だって。お前がどれだけ頼もしいかはよく知ってるつもりだ」
男「俺んちに来てくれた時のお前、そりゃあもう格好良かったぞ?」
男「ヤバくなったら頼むぜ?」

ア「な――!? いや、わ、私はその、博士に仰せ付かったから
ア「あなたを護衛しているだけです! それ以上でも以下でもありません!」
ア「だから邪魔になったら遠慮なく捨て置きますから!」
ア「だから、精々邪魔にならないよう自重してくださいっ!」

やっぱり面白かった。しかしこいつツンデレだったのか……。

いや、これは単に褒められ慣れてない、って感じだな。

東め、子供は褒めて育ててやるものだぞ、しっかりしやがれ。

にしても、これ以上からかうとマジで後ろから刺されそうだ。

この辺で自重しておこう。


370:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 22:48:17.61 ID:3D0J4Mbj0
アーシアは巧みに見張りの死角をつくと、俺を先導しつつビルの一つへと近付いていく。

男「おい、確かにあのビルが怪しいっちゃ怪しいが、一直線にここ目指してたけどいいのか?」

ここの敷地は随分と広い。一際目を引く本部らしき建物の他にも、いくつかこじんまりとした建物はいくつかある。

そのどこに女がいるか分かったもんじゃない。

ア「大丈夫です。女さんのメッセージによれば、この大きな建物の中で間違いありません」

男「で、東の奴はどこへ向かってんだ?」

ア「博士も目指しているのはここのはずです」
ア「私たちが表で起こす混乱に乗じて裏から入るつもりのようです」

男「……俺たちゃ陽動ってわけかい」

何が決断は任せる、だ。いい感じに損な役回してきやがって……。

男「そんな派手なことして本当に女のところへ辿り着けるのかよ?」

ア「その点はご心配なく」

言うとアーシアは、またあの不適な笑みを受かべる。

ア「『行き』は確実に届けてみせますよ、女さんのところへ」
ア「ただし『帰り』の保証は出来ません」

心配だ……。


371:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 22:56:13.93 ID:3D0J4Mbj0
ア「では、陽動は陽動らしくケレン味たっぷりで行きましょう」

言うとアーシアは、俺たちが隠れて本部を覗いていた物陰から飛び出すと、

入口の前にいるガードマンらしき男たち(恐らく連中もロボットだろう)へ向けて得物を構えた。

男「っておい!? 十メートル以上あるじゃねぇか、この距離じゃ杭は届かな――」

と俺が思わず叫んだ矢先、アーシアの武器から一瞬紫電が巻き起こったかと思うと、

俺の叫びを掻き消す轟音と共に、アーシアの右手が火を吹いた。

右手の武器から発射された『何か』は、光の軌跡だけを残し、

目にも止まらぬ速さで敵ごと入口に着弾すると、壁を破壊し粉塵を巻き上げ、

敵もろとも建物の壁面に大きな傷痕を穿つ。

男「な……、なんなんだ、今のは?」

ア「ただのレールガンですよ、このような開けた場所でしか使えない不便極まりない道具です」

もう、やだ……。


374:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 23:01:48.30 ID:3D0J4Mbj0
あ〜、まだ網膜にさっきのマズルフラッシュが焼き付いてやがる……。

レールガンは発射の瞬間に弾丸後部の伝導体がプラズマ化するというが、恐らくそれだろう。

っくしょう、耳鳴りまでしやがって……。

男「一つ訊いていいかな、レールガンって奴ぁそんな小型化出来るもんだっけ?」

ア「仕組み自体は簡単で日曜大工でも出来ますからね。電源さえ確保出来れば可能です」

男「……その電源ってのは、いや聞くまい。聞くとお前から半径100km以内にいたくなくなりそうだ」

どうせ小型の常温核融合炉とかそういうオーバーテクノロジーが飛び出すんだろ?

俺だって学習するんだ、いくらなんでも世の中には知らない方が幸せなことだってある、うん。


375:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 23:07:16.10 ID:3D0J4Mbj0
俺たちは半壊したエントランスをくぐり、建物の内部へと悠々と侵入する。

すると、案の定数体のロボットが駆け付けてきた。

男「やっぱ、そうなるよな。悲しいけどこれって陽動なのね……」

敵に向けて、俺は銃を構えた。さっきのを見たあとだと、こんなものおもちゃにしか見えないけど……。

ア「下がってください男さん、ここは私に任せてください」

そう言うとアーシアは、俺を押し退けるように敵へと突っ込んでいった。

ここから先は語るべくもない、アーシアは戦い、そして勝った。
――
省略された部分を見るためには(ry


382:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 23:20:09.76 ID:3D0J4Mbj0
敵へと果敢に突っ込んでいくアーシア。

敵は統率の取れた完璧な動きでアーシアへと攻撃を繰り出す。

しかしアーシアは広いフロアを利用し、地を蹴り壁を蹴り、三次元的な動きで敵を翻弄する。

敵の突き出した腕は虚しく空を切り、その度に生じた隙はアーシアの攻撃のチャンスを与えた。

伸ばした腕の殴打が不発に終わり体勢を崩した敵に、アーシアは躊躇なく杭を突き立てる。

そうして一体目の敵の機能を停止した段階で、敵は作戦を変更したようだ。


385:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 23:29:14.35 ID:3D0J4Mbj0
先程までは、『敵を倒し、なおかつ同士打ちを避ける』かのように振る舞っていた敵が、

アーシアの脅威度を大幅に上方修正したのか、アーシアを倒すことのみに集中するようになった。

敵の攻撃を、床を滑るようにして躱すアーシア。

そこへもう一体の敵が、振り上げた拳を叩き付ける。
――
友軍機もろとも巻き込んだ攻撃は、敵にとって考慮すべき条件が少なくなった分、

より鋭さを増しアーシアへと襲い掛かる。

危険な体勢から腕の力のみで巧みに身を躱すアーシアだが、先程までの余裕はなく寸前での回避となった。

それを見越したかのように狙い澄まして更なる敵の追撃が見舞われ、

アーシアは防ぐ間もなくそれを受け、広いフロアを錐揉みしながら吹っ飛ばされる。

全身に砕けた壁の破片などを受けながら、それでも彼女の動きは鈍ることなく、

鋭い目線で敵全体を窺う。


384:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 23:27:44.49 ID:3D0J4Mbj0
友軍機もろとも巻き込んだ攻撃は、敵にとって考慮すべき条件が少なくなった分、

より鋭さを増しアーシアへと襲い掛かる。

危険な体勢から腕の力のみで巧みに身を躱すアーシアだが、先程までの余裕はなく寸前での回避となった。

それを見越したかのように狙い澄まして更なる敵の追撃が見舞われ、

アーシアは防ぐ間もなくそれを受け、広いフロアを錐揉みしながら吹っ飛ばされる。

全身に砕けた壁の破片などを受けながら、それでも彼女の動きは鈍ることなく、

鋭い目線で敵全体を窺う。


387:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 23:36:10.65 ID:3D0J4Mbj0
先程まで敵に先んじて突っ込むことで戦いの主導権を握らんとしていたアーシアだが、

この数の敵に捨て身の連携をされて愚直に敵陣へ突入するのはマズいと判断したか、

今度は敵の動きを見極め反撃の機を探る。

そんなアーシアへ向け殺到する敵。アーシアは身を低くすると、そのうち一体へ足払いをかけ、

体勢を崩した敵に渾身の掌底を食らわせ敵の一団から強引に引き離す。

数瞬の孤立、しかしほんの僅かな時間でも、アーシアと一対一

という状況になってしまうことは、その敵にとって致命的だった。

床を転がる敵が体勢を整えるより先に追い縋ったアーシアは、

起き上がりざまの敵に杭を打ち込む。


388:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 23:44:38.84 ID:3D0J4Mbj0
残るは五体。

パイルを打ち込む反動でほんの一瞬体勢を崩すアーシアに群がる。

そんな敵の合間を縫って、地を這うように駆け抜けたアーシアは、

先程まで彼女のいた壁際に群がる敵の一体に蹴りを見舞う。

それによりたたらを踏む敵は、背後の味方二体も巻き込み体勢を崩した。

倒れた三体を無視しアーシアに追い縋る二体のロボット。

だが二体ではアーシアを包囲するには足りなかった。

一体の攻撃を左腕で軽くいなすと、もう一体を右手の武器で思い切り殴打する。

部屋の端まで吹っ飛ばされた敵は無視し、左腕だけで相手をしていた敵に向き直る。

もはや一対一、敵の攻撃を悠々と掻い潜って懐に入ったアーシアは、左の肘撃で敵を怯ませつつ

右腕の杭で敵を穿つ。


389:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 23:48:09.05 ID:3D0J4Mbj0
先程蹴飛ばされた三体と、殴り飛ばされた一体も体勢を整えアーシアへ殺到するが、

それぞれはアーシアを挟んで対称の位置にいた。

アーシアは数の少ない敵の方へ駆け出すと、敵の眼前で跳躍し、そのまま敵を足蹴にしさらに跳ぶ。

そうして敵の上を取ったアーシアは、反応が遅れた敵の頭上から串刺しにするように杭を打ち込む。

残りは三体。


391:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 00:01:04.83 ID:3D0J4Mbj0
しかしここに来てアーシアの得物は限界にきていた。

飛び出した杭が戻らないのだ。まともな整備もせずに連続使用したため、パイルの射出機能が限界を迎えたのだ。

得物を外し徒手空拳となったアーシアは、残る敵に向けて疾駆する。

敵もまた得物を失ったアーシアに対し波状攻撃を仕掛けるが、

アーシアはそれを、一部は躱し一部は流し、巧みに防いでいく。

そうしてアーシアによって攻撃をあらぬ方向へ流され体勢を崩した敵の顎に、

アーシアは掌底を打ち込む。

その瞬間、アーシアの掌から激しい紫電が発生し、その電流は敵の内部の電子機器を焼き尽くす。


395:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 00:08:01.47 ID:3D0J4Mbj0
その予想外の攻撃に一瞬怯んだ二体。

その隙にアーシアは、そのうちの一体にハイキックを見舞った。

そうして襲い来るもう一体の攻撃を身を捻って躱すと、敵の顔を掴み再び紫電を起こす。

機械のショートする嫌な臭いをさせた敵を捨てると、最後の一体へと駆け出した。

この状況でもなおも諦めることなく攻撃を繰り出す。

しかし易々と躱し、足払いをかけるアーシア。

そして倒れ伏した敵に馬乗りになると、その頭部へ紫電を食らわした……。


397:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 00:11:34.28 ID:3D0J4Mbj0
ア「お待たせしました」

服や髪についた埃を払いつつ、アーシアは俺のもとへとやってくる。

本当に、埃以外に被害はなさそうに見える。どんな体してんだよ……。

男「こんどはレールガン、使わなかったんだな……」

ア「これ以上のダメージを与えるとこのフロアが保たないと思いまして」
ア「それにそう何発も乱射出来るものではないですから」

男「あ、そう。にしてもお前って何でもありだな」
男「ひょっとして左手外すと銃になってたりしない?」

ア「……?? それは比喩か何かですか?」

どうやら宇宙海賊にはお詳しくなかったらしい。


403:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 00:20:45.35 ID:3D0J4Mbj0
ア「それでは先を急ぎましょう」

男「……あぁ。で、女は何階にいるんだ?」

ア「地下の最下層です」

男「ち、地下ぁ!?」

この建物、外から見た以上に凄いことになっていたらしい。

男「……で、どうやって地下まで降りるんだ?」

ア「エレベーターにしましょう」

男「随分堂々と行くんだな……。途中で止められたらどうすんだ?」

ア「その時はその時です。我々は元々陽動ですので、いっそより目立つ選択肢を選ぶ方がいいんです」

男「……途中でケーブル切られたりしたら?」

ア「乗っている間、私から離れないでくださいね」

満面の邪悪な笑みを浮べつつ言うアーシア。

さっきからかったのを根に持たれてんだろうか、心配だ……。


408:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 00:29:48.94 ID:3D0J4Mbj0
エレベーターに乗り込み、頭文字Bの一番数字の大きなボタンを押す。

地下十階か、かなり深いな。

アーシアの腕を半ば抱き付くように掴みながら、

少しずつ数字の大きくなっていくメーターをビクビクしながら見つめる。

が、何事もなく地下十階に到着する。

慣性によるGを受けながら、俺はホッとした気持ちで扉の開くのを待った。

そうして扉が開いた瞬間、俺が目にしたのは……


411:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 00:33:59.66 ID:3D0J4Mbj0
扉が開いて目の前にいたのは、二十は下るまいという数のロボットだった。

しかも、それぞれが手に禍々しい火器を装備している。

それらが火を吹く寸前に、アーシアは俺を抱きかかえて

エレベーターのコンソールの影に身を隠す。

次の瞬間には、轟音と共にエレベーターの壁に大小様々な風穴を穿っていく。


413:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 00:38:57.56 ID:3D0J4Mbj0
ア「マズいですね……」

男「どうすんだよっ!?」

ア「……私が敵引き付けますので、男さんはその間に先へ進んでください」

男「お、お前一人であの数相手にするのは無茶だろ!?」

ア「大丈夫です……、『行き』は必ず連れていく、と確約しました」
ア「命に替えても男さんを女さんの元へ行かせてみせます」

男「……それで、お前は一体どうすんだよ?」

ア「……『帰り』まで面倒を見る、とは言ってませんが?」

言いつつアーシアは、再びあの不適な笑みを受かべる。

そうして俺が何か言おうとする前に、コンソールの影から飛び出し、

敵陣へと突っ込んでいった。

ア「男さん、ご武運を!!」


414:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 00:45:07.78 ID:3D0J4Mbj0
エレベーター内への掃射が止み、敵は標的をアーシアに定めたようだ。

男「あの馬鹿、格好付けやがって!! ロボットの女ってのはどいつもこいつもこんななのかよ!?」

いつまでもここにいても仕方ない。俺は銃声が遠くなるのを感じると、

一気にエレベーターの外へと駆け出した。

が、あれだけの数だ、その全てがアーシアを追って行ったはずはなかった。

エレベーター付近で待機していた数体は、俺を見付けると銃口を俺に向け、

容赦なく引き金を引いた。

男「――クソッ!」

俺は床を転げるように逃げると、通路の奥の角を曲がり、銃弾の射程から逃れる。

が、全てを運と勘で避け切るのは無理だったらしく、背後から一発受けてしまった……。


416:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 00:49:26.16 ID:3D0J4Mbj0
防弾チョッキのお陰で貫通することはなかったが、それでもその衝撃は凄まじかった。

殴られたなんてもんじゃない、衝撃だけなら車にでもはねられたようにすら感じる。

しかもそれが小さい一点に向けて放たれたのだ、痛いなんてもんじゃない。

灼けるようだ……。

それでも、この程度で済んだのは僥倖と言えよう。

数人による銃の掃射を受けて一発、しかも致命傷を免れたのだ、

これで文句を言うのは流石に理不尽ってもんだ。

男(……しかし、これからどうする?)


418:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 00:53:09.92 ID:3D0J4Mbj0
数時間前、今に比べればまだファンタジーしてなかった頃、

アーシアと初めて会った頃を思い出す。

あの圧倒的な強さのアーシアと、力の上では互角の敵。

それが数体、しかも全員火器で武装をしている。

対する俺はどうだ、ただの高校生だ。

ベトナム帰りの英雄でもなければ世界最強のコックでもない。

手にするのは、連中に致命傷を与えられるのかどうかも怪しいちっぽけな銃一丁。

この状況を引っくり返せる手があるのなら是非俺に知らせてほしい……。


420:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 00:59:49.27 ID:3D0J4Mbj0
俺は敵の数すら把握出来ていない。

そう思い、俺は壁から敵を窺う。が、見えたのは油断なくこちらに向けられた銃口。

俺は半ば反射的に顔を引っ込める。次の瞬間、銃弾がそれまで俺が顔を出していた壁を削る。

男(……マズいな)

だが、それにしても俺を襲いにこないのはどうしてだろう。

警戒されているのだろうか?

もしかしたら、俺もアーシアのように強力なロボットなのでは、なんて思ってやがんのか?

ならば、この機を逃す手はない。

俺は立ち上がると、そのまま通路を駆け出す。

敵が油断している間に、逃げ切れるかもしれない……。

が、そう思い俺が第一歩を踏み出した瞬間、背後に敵の気配が。

マズイ、と思った俺は、すぐ隣にあったドアにタックルするように飛び込む。


421:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 01:04:57.11 ID:3D0J4Mbj0
施錠されていたら終わりだが、幸いなことに扉はすぐに開いた。

俺は危げな体勢のままドアを閉め鍵をかけた。

そしてすぐに壁の影に身を隠す。

すると、エレベーターの時と同じように敵はドア越しに俺を狙って撃ってきやがった。

どうやら、警戒はしているがこちらの行動は筒抜けらしい。まいった……。

部屋の中は倉庫のようだった。箱ばかりで隠れる場所には事欠かないが、

そんなもの時間稼ぎにしかならないだろう……。


424:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 01:11:21.13 ID:3D0J4Mbj0
とにかく、いつまでもドアの近くにいるわけにもいかない。

俺は部屋の奥に置かれた箱の影に身を潜めた。

しばらく敵は様子を窺っていたようだが、遂に業を煮やしたのか敵は部屋の中へと入ってきた。

先程まで遠く聞こえていた銃声も止んだ。

アーシアは無事だろうか、やられてしまったのだろうか……。

敵が銃を構えるのを気配で感じる。

……まったくアーシア、何が『行き』は任せろ、だ。全然じゃないか。

……こうなったら、お前と東だけが頼りだ。女を頼んだぞ。

俺は、次の瞬間には訪れるであろう死を覚悟した。

が、部屋に響いたのは銃声ではなく、何か大きなものが倒れる音だった。

男「……?」


427:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 01:19:00.51 ID:3D0J4Mbj0
???「お待たせ…………しました…………」

聞き覚えのある声に、俺は飛び出した。

そこにいたのは、満身創痍で立っているアーシアだった。

男「――アーシア!?」

体中に銃弾を受け全身を赤黒い血が滴り、ところどころ骨格が見えている。

それどころか、銃弾はその内部にまで及んでいるみたいだ。

目は片方があさっての方を向いているし、片腕は千切れかけ完全に動いていない。

足にも銃弾を受けているのかフラフラだ。

男「アーシア、大丈夫か!?」

アーシアに肩を貸しつつ、問う。

我ながらなんて間抜けな質問だ、もっと言い様があるだろうに……。

ア「『行き』は任せろと……言いましたので……」
ア「私は……約束は……守ります……」

男「分かった……、分かったからお前はもう休んでろ……」

ア「いいえ……、敵はまだ……残っていますので……」


429:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 01:24:31.36 ID:3D0J4Mbj0
男「そんな体で戦えるかよ!?」

ア「私をあまり舐めない方がいい……ですよ……」
ア「これでも男さん、よりは……幾分マシです……」

アーシアは、例の笑みを受かべようとしているようだが、

表情を上手く作れないのか、頬をピクピクと痙攣させるだけだった。

ア「それに、男さんは女さんの場所を……知らないじゃないですか……」

男「………………」

ア「さぁ、行きましょう……」

言うとアーシアは、覚束無い足取りで部屋の外を目指す。

肩を貸している俺も、その速さに合わせるように歩む。


442:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 02:38:35.90 ID:3D0J4Mbj0
アーシアの誘導に従い、俺たちは先程のエレベーターの前へと戻る。

ア「敵から逃げながら……このフロアの全体像を……探っていました」
ア「女さんはこの、通路の……先の部屋にいるはずです……」

その時、俺たちは今まさに向かおうとしていた通路から、大きな人影が現れた。

敵のロボットだ、しかも三体。手にはやはり銃を持っている。

ア「男さん! 後ろの通路の角に隠れてください!」

言うなりアーシアは、俺と敵の間に割って入るように前へ出ると、

緩慢な動作で敵へと向かっていく。

男「アーシア!!」

ア「早くッ!!」

次の瞬間、轟音と共にいくつもの銃弾がアーシアを貫く。


443:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 02:49:42.54 ID:3D0J4Mbj0
千切れかけていた腕は吹き飛び、片足が完全に破壊されたのか、片膝をつくアーシア。

それでも彼女は歩みを止めない。破壊された足は膝で体を支え、前へ進む。

千切れた腕からはケーブルが垂れ、白い液体が床に滴り落ちている。

そして再び銃弾の掃射。

全身の皮膚は粉々にされ、内部のマネキンのような骨格が半分以上見えている。

その骨格にもいくつも穴が空き、ところどころスパークを発している。

それでも、彼女は前に進むことを止めなかった。

ア「男……さん……、早く……逃、げて……くだ……さい」

俺は半ば無意識に、銃を手に取り敵に向けて発砲していた。

が、敵はまったく怯まない。

アーシアを脅威たりえないと判断したのか、敵の一体がアーシアへと近寄る。

敵の容赦のない殴打に、彼女はとうとう床に倒れ伏す。

そんな彼女の頭部を、敵はその巨体で踏み付ける。

ミシミシと、軋む彼女の頭蓋。


444:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 02:54:08.12 ID:3D0J4Mbj0
そうして、動けない彼女の胴へと、持っていた機関銃を発砲する。

飛び散る皮膚と機械の部品らしきもの。

もはや彼女からは、弱々しい駆動音がするのみで、微動だにしない。

そして敵は、彼女の頭に乗せられた足に力を込める。

その時、彼女の残された片腕が、己の頭を今まさに砕かんとする足を掴む。

そして次の瞬間、激しい紫電が巻き起こった。かと思うと、敵は煙を上げながら後方へと倒れる。

それきり彼女は、ピクリとも動かない。

アーシアの、渾身の最後の一撃だった……。


446:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 03:02:24.36 ID:3D0J4Mbj0
だが俺には感傷に浸る暇はなかった。

残った敵二体は、瀕死のアーシアからの思いがけない反撃を受け、

警戒を増したようだった。そして、止めを刺さんと彼女に銃口を向ける。

そして俺は気が付いたら、彼女を庇うように彼女の前で仁王立ちをしていた。

……何故そうしたのか、自分でも分からなかった。

後悔していないか、と問われれば、はっきり言ってしまくりだ。

足だってガクガク震えている。

今まさに発砲されようとしている銃の前に身を乗り出すなんて正気の沙汰じゃない。

それに俺にはすべきことがある、アーシアにしたって、こんなところで庇われるのは本望ではないはずだ。

それでも俺は、そこを退こうとはしなかった。

というより、退けなかった。退け、という命令を体が受け付けなかった……。


447:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 03:06:32.61 ID:3D0J4Mbj0
俺の予想外の行動に敵は一瞬面食らったようだが、それでも銃口はまっすぐ俺を狙っている。

そして引き金に指が添えられた、まさにその時――

敵のロボットが、二体ともバタバタと倒れたのだった。

男「え……?」

???『フハハハハ! どうやら間に合ったようだな、少年!!』

フロア全体を、芝居がかった聞き覚えのある声が響き渡る。

東だった。東が館内放送を使って俺に話し掛けていたのだった。


450:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 03:13:03.00 ID:3D0J4Mbj0
男「お前! いったいどこで何やってんだ!? っていうかこれはどういうことだ!?」
男「ってかこっちの声聞こえてんのかよクソッ!!」

東『問題ない、そこのアーシアの耳を通してちゃんと聞こえているさ』

男「……え? じゃあアーシアはまだ無事なのか!?」

東『らしいな。こうしてこちらに音声を届けられている、ということはそうなのだろう』
東『ま、この天才科学者たるオレの最高傑作が、そう簡単に死んだりするわけはないがな』

ウゼェ……。

男「で、お前は今どこにいんだよ! この状況を説明しろ!」

東『な〜に、そのロボット達の制御室を見付けてね、ちょいとイジってしばらくオネンネしてもらったのさ』
東『私の才能に感謝したまえよ少年、もしあと0.5秒作業が遅れていたら、
東『君は今頃蜂の巣だったのだからねぇ!』

男「……ならもう一つ。テメェのこのタイミング、どうも作為のようなものを感じるんだが」

東『決まってんだろ、ギリギリで助けた方がドラマチックだからな!』

ウゼェ……。

ってかなんかこいつテンションおかしくないか……?


451:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 03:19:14.24 ID:3D0J4Mbj0
ア『男さん、聞こえますか?』

その時、館内放送からアーシアの声が聞こえた。

男「アーシアか!? な、なんでお前の声が!」

ア『私が博士のモバイルを通じて館内放送へネットしているんです』
ア『今の私は自力で声を発せられる状況ではありませんから』
ア『それで、私の首のプラグに男さんのモバイルを接続してくれませんか?』

男「わ、分かった……」

俺は、モバイルに繋いだケーブルを、アーシアの首筋のプラグに挿した。

ア『ぁあっ、んんっ! お、男さん、入れる時はもっと優しく……』

男「な、何!? 何なの!!?」

ア『……冗談ですよ。場を和ませようと思いまして。面白かったですか?』

男「………………」


453:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 03:23:51.24 ID:3D0J4Mbj0
モバイルの電源を入れると、女の時と似た、しかし細部の異なる起動画面が出る。

そうしてしばらくすると、OSが起動する。

男「あれ……? 今度はデスクトップ画面があるぞ?」

しかも、キャラクターをあしらった壁紙や妙にファンシーなアイコンが目につく……。

ア『あぁ、それは私の趣味です。お気に召しませんか?』

男「アーシア……、とりあえずお前しばらく黙れ……」
男「ここ数時間で築き上げたお前のイメージが崩れていく……」


454:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 03:28:30.05 ID:3D0J4Mbj0
ア『一度起動したOSはそのモバイルのディスク内に保存されます』
ア『ですからもう私からケーブルを抜いて構いません』

その指示に従い、俺はアーシアの首筋のケーブルに手をかける。

が、何やら嫌な予感がしたので、俺は代わりにモバイル側のプラグから抜いた。

ア『酷いですね男さん、人がせっかく『ぁあっ! ら、らめぇ……』なんてネタも考えていたのに』

どうやら俺の選択は間違っていなかったらしい。

男「……で、どうすればいいんだ?」

ア『それでは私の言う通りに操作をしてください』

そして俺は、彼女の言う操作によって起動したこのフロアのマップを開き、

女の元へと急いだ。


456:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 03:34:33.76 ID:3D0J4Mbj0
辿り着いたのは、広いホールのような場所だった。

そのホールの真ん中に、虚ろな目をした女が座っていた。

男「――! お、女!?」

俺はすぐさま女の元へと駆け寄った。

女はしばらくぼんやりとした顔をしていたが、次第に俺に目の焦点が合ってくる。

その時――

女「や、やぁっ!! こ、来ないでぇ!!!!」

男「――なっ!?」

女は、パニックを起こしたように腕を振り回し俺を避けた……。


459:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 03:40:42.40 ID:3D0J4Mbj0
男「な、お、女……? 俺だ、男だ、分からないのか!?」

すると女は、ようやく俺を認識してくれたみたいだったが、

今度はボロボロと大粒の涙を零し始めた。

女「わ、わた、私……、男と一緒に、学校から、帰ってたらっ……」

ゆっくりと、嗚咽混じりに話し始める女。

女「お、女の子が現れて……それから、路地裏にいて……、その子が……わ、私の」

今日の、放課後のことか……?

女「お腹にて、手を突っ込んできて……すごく痛かった……それから……」
女「男のうちにいて……お、男が……私の首に、ケーブルみたいなの挿してきて……」

まさか、あの時の記憶が……。


460:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 03:46:19.37 ID:3D0J4Mbj0
女「そ、それから……気が付いたら……手術台みたいなとこで寝かされてて……」
女「男の人……責任者って言ってて……私のことろ……ロボットだって……」
女「お母さんもお父さんも、男もみんな知ってて……私だけが知らないんだって……」

男「………………」

女「お父さんもお母さんも……本当の親じゃない……って……」
女「ねぇ……男……、私の体……どうなっちゃったの……?」
女「わ、私……本当に……、人間じゃない……の?」

俺は思わず、女を抱き締めていた。

男「……まったく、バカだなぁ。んなハズないだろ、何頭悪いこと言ってんだよ」
男「夢、そうだよ全部悪い夢さ。目が覚めたら、また一緒に朝飯食って、一緒に学校行こうぜ、な?」


461:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 03:52:04.38 ID:3D0J4Mbj0
苦しい言い訳だ……。

正常な精神の持ち主が、夢と現実の区別を失うことがあるだろうか……。

女は、信じ難い状況に翻弄されてはいるが、まだ精神は至って正常だ。

女が歩むべき道は、異常者として都合の良い言葉を鵜呑みにするか、

正常者として、辛い現実と向き合わねばならないか、そのどちらかだ……。

俺は知らず、とんでもない選択肢を女に提示してしまった……。

女はしばらくの間、俺の胸で泣き続けていたが、突然言った。

女「男……その手に持ってるの、何……?」

俺が今手にしているのは、モバイ……ッ!?

女「そのケーブル、なに……? どうするの……?」
女「男も、私に痛いことするの……? 私、やっぱり普通の女の子じゃ……」

俺は、なんて馬鹿なんだ………………。
――
そろそろ連投数がヤバそうです……orz


465:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 04:00:13.59 ID:3D0J4Mbj0
東「……随分悪趣味なことをするじゃないか」

コンソールの前に座る白衣の男は吐き捨てるように言う。

ここは、施設内のテクノロジーを制御する部屋の一つ。

普段なら数名の人員と、別の場所で管理されているロボットによって護衛されている部屋だが、

今はたった二人の人間しかいない。

東は、この場にいるもう一人の人物へと語り掛ける。

東「まったく、お前には参ったよ。まさかこんなゴールを用意してたとはね」
東「これじゃああの貧弱坊やも意思が萎えちまったろうな、詰みだ詰み、はい決定」

???「何も知らない彼に、彼女を破壊する手助けをさせようとしていた君が言えることかな?」

答えるのは、高そうなスーツを身に纏い、東へと拳銃の銃口を向けている男。

この施設の、責任者たる男だった……。


466:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 04:07:10.19 ID:3D0J4Mbj0
遡ること約十数分。

男とアーシアが陽動として動いている隙に乗じた東は、

施設内の機器全体の制御室を探していた。

そしてこの部屋を発見し、その時未だ五体満足だったアーシアと男の援護をすべく、

コンソールに手を伸ばしたところで、この男――責任者に銃を突き付けられ、

男たちがロボット相手に奔走するところを、施設内の監視カメラから見させられていた。
――
さっきもさるさん食らいました……

よければ支援お願いします


469:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 04:15:45.92 ID:3D0J4Mbj0
敵の攻撃を受け、少しずつ損傷していきながらも、

男を守るため二十もの敵に果敢に挑むアーシアの姿を、

歯噛みしつつ眺めることしか出来なかった。

そんな状況が変わったのは、男が倒れ伏すアーシアの前に出、彼女を庇った時だった。

???『……東、やれ』

東『……な、なに?』

???『彼を助けてやれ、と言ったんだ』
???『お前ならすぐだろ? 早くしないとその少年が蜂の巣にされるぞ?』

東『――なっ!? く、クソッ!!』

そうして男は九死に一生を得たのだった。

???『ほら、突然の事に彼はキョトンとしてるぞ?』
???『何か言ってやったらどうだね?』

東『………………』


473:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 04:21:10.98 ID:3D0J4Mbj0
東「オレぁガキをこき使うのは好きだがガキをイジめるのは趣味じゃあねぇなぁ」

???「そう言うな。私は彼らに、共に平穏に生きていく、という選択肢を提示しているだけなのだぞ?」

東「ほざけ。その見せ掛けの平穏の影で、嬢ちゃんみたいな女の子が汚ねぇオッサンの相手させられたり」
東「シュワルツェネッガー扮するロボットよろしく、戦場で大勢の人を殺して周ることになるんだろうが」
東「それをどの面下げて平穏、だと? ふざけんのも大概にしとけや、え?」

その男を鬼の様な形相で睨み付ける東。しかし男は意に介さない。

???「だがね東、ヒトを完全に模倣する機械、だぞ?」
???「そんな危険な技術が野放しにされていいと思うのか?」
???「我々は『彼ら』について知らねばならないのだ」
???「それこそ君の言う映画のような未来にならないように、ね」

東「だったら、俺がその技術をブチ壊してやるさ!!」


476:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 04:31:09.36 ID:3D0J4Mbj0
???「馬鹿なことを……。『彼ら』は掛け値なしに君の生涯の最高傑作ではないか」
???「このまま行けば君は、この世界の大きな一歩の立役者になれるんだぞ?」
???「それを、みすみす放棄して何の益がある?」

東「やかましいッ! 人の人生を、こんな胸糞悪い研究の糧にしやがって!!」
東「オレがしたかったのは、オレが目指していたのはこんなことじゃない!」
東「お前もそうだろ!? 一体どこで踏み外しちまったんだよ、え?」
東「答えろッ! 答えてみやがれッ!! 神鷹!!」

神鷹「踏み外した? 違うな東。踏み外したのはお前だ」
神鷹「ヒトと科学の深淵に足を突っ込み、お前は臆して退いた」
神鷹「だが俺は違う、俺はよりその深淵を目指した、それだけのことだ」


480:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 04:40:22.46 ID:3D0J4Mbj0
神鷹「科学者なら、なぜ全人類を敵に回してでも、その真髄を求めようとしない!?」
神鷹「なぜお前はそう簡単に捨てられるのだ、宇宙の神秘への渇望をッ!?」
神鷹「俺とお前が手を組めば、ヒトの心の深淵すら覗き見ることが出来るんだぞ!?」
神鷹「なぜそれが分からない!? なぜ、そのことに気付かない!?」

東「黙れッ! 黙れ黙れ黙れ、黙れッ!!」
東「真理の探求? 全宇宙の解明? んなもん俺にとっちゃどうでもいいッ!!」
東「科学は希望だッ! ヒトと全生物、そしてこの宇宙を幸福にするための希望のはずだッ!!」
東「オレはそう思ってこれまでやってきた、お前もそうじゃなかったのかよッ!?」

神鷹「馬鹿な……。お前の言う科学など、所詮『人間の幸福』、
神鷹「いやそれすらただの大義名分、『一部の人間のための幸福』、
神鷹「そのためのものでしかなかったじゃないか」
神鷹「今現在、何十億の人間が飢えで苦しんでると思う?」
神鷹「いくつの種が絶滅の危機に瀕していると思う?」
神鷹「それを救おうとせずして何が希望か、そんなものはだな、
神鷹「ただ己の偽善を正当化するためだけの言い訳に過ぎん」
神鷹「なればこそ、俺のように己に正直に真理を渇望することこそ正義ではないかね?」


482:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 04:47:18.20 ID:3D0J4Mbj0
東「屁理屈捏ねんじゃねぇ! テメェこそ自分のエゴを正当化するためだけに
東「社会問題を引き合いに出して理論武装してるだけじゃねぇか!!」
東「お前はいつからそんな奴に成り下がった!?」
東「オレと科学者を志していた頃のお前はそんなんじゃなかったじゃねぇか、え!?」

神鷹「……そうだな、思えば俺も若かった」
神鷹「ちょっと人より勉強が得意なだけの二人のガキが
神鷹「本気で世界の悪に立ち向かって勝てる、なんて思っていやがったんだからな」
神鷹「考えただけで虫酸が走る。実はだな、今タイムマシンを開発中で、
神鷹「そいつを使って過去の俺を殺してしまおう、などと考えているんだよ」
神鷹「お前もどうだ? タイムパラドックスの検証にもなって一石二鳥だろ?」

神鷹は、どこまで本気か分かりかねる口調で言うと、

先程までの激昂が嘘のように、ヘラヘラとした顔を東に向ける。


485:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 04:51:04.56 ID:3D0J4Mbj0
東「……違うな」

神鷹「……なに?」

東「ようやく気付いた、いや〜こんな簡単なことに気付かないなんてオレもヤキが回ったかな?」

神鷹「……何の話をしている?」

東「お前は、あん時からな〜んにも変わっちゃいねぇ」
東「ウジウジ悩んでどっちにしようか考えて、血の気が多かった俺に全部任せてた、
東「そんな優柔不断な厨二病のガキのまんま、ってわけだ。そうだろ?」

神鷹「なにを根拠に……」

東「だったら、なぜさっさとオレを殺しちまわなかった!?」

神鷹「………………」


488:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 04:57:37.81 ID:3D0J4Mbj0
東「なぜ嬢ちゃんに余計なことを吹き込んで、放ったらかしにしてる!?」
東「なぜ人払いをした施設にテメェと嬢ちゃんだけでノコノコ待っていやがった!?」
東「なぜ嬢ちゃんのとこへあのガキを行かせやがった!?」
東「なぜオレとこの期に及んでんな下らねぇ議論やってんだ、え!?」

神鷹「………………」

東「み〜んな昔のお前のやり口だよ! あとからどっちの道も選べるように
東「ギリギリまで選択肢を保持しておこう、っつうケツの穴の小せえやり口だ!!」
東「結局お前は、今でもテメェ独りで何も決められねぇ坊ちゃん野郎でしかなったんだよ!」
東「この数年間、お前にとってオレはなんだった、え!?」
東「お前の中の良心か? 傍らで心地良さそうなことほざいてる天使の声のつもりかよ!?」
東「だからお前はオレを殺さなかったんだ、いつでもオレを始末出来たのによぉ!」
東「良心、天使の側が頑張ってくれてるから、テメェは安心して悪魔になれたんだ」
東「そうだろ? テメェで考えず片方の役を演じるだけでいい、
東「ってのはさぞかし楽だったことだろうよ、テメェにとってはな!!」


492:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 05:02:49.68 ID:3D0J4Mbj0
東「……いや、今回ばかりはちと状況が違うな」
東「テメェはこの俺、天使の声が敗北した時点で作戦を変えた」
東「天使でも悪魔でもない、第三者に結果を委ねたんだ」
東「それがあのガキと嬢ちゃんだ、そうだろ?」
東「だからテメェは寸前のとこであのガキを前に進ませた、試練を与えてな」
東「そして最後にラスボスまで設定して大団円のお膳立てをしたわけだ」

神鷹「………………」

東「さっきテメェを悪趣味と評したが、訂正させてもらう」
東「テメェは最低の腑抜け野郎だ! ガキをこき使うのでもイジめるのでもない、
東「ガキにテメェのケツ拭かせておんぶに抱っこされてるクズ野郎だッ!!」

神鷹は、歯噛みしながら東のまくしたてる言葉を聞いていた。
しかし、彼の表情に先程までの鋭さはない。


494:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 05:07:41.30 ID:3D0J4Mbj0
東「……そういう意味じゃあオレとお前はよく似てる」
東「俺も、結論を連中に押し付けてきたからな」
東「結果、お前の思惑通りになってしまった、お前の思ってた以上にな」

優柔不断な大人の中に潜む、天使と悪魔は、

結果どちらも答えを出せなかったので、

そのうち彼らは、悩むことを止めた……。

東「見ろ、神鷹。あの二人が、人類に審判を下す判事だ」
東「オレたちは陪審員にすらなれない、ただの傍聴人だ」
東「好き勝手やって、始末に負えなくなったことを次の世代に託す、
東「『ダメな大人』の代表って奴だ……」


497:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 05:13:56.51 ID:3D0J4Mbj0
男「……これは」

女「ねぇ、男ぉ、答えてよ……。答えてぇ!!」

女は俺の学生服を掴むと、ガクガクと揺さぶる。

男「………………」

俺にすがり、「答えて」とうわ言のように繰り返す女。

その目からは止め処なく涙が溢れ、頬は真赤になっていた。

俺は知れず彼女の頬に手を添えると、自分の顔に近付け、そのままキスしていた。

告白の日にして以来、互いに恥ずかしくて避けていたキスだ。

顔を離すと、女は突然の事に泣くのも忘れてキョトンとしてやがる。

……よし、決心ついた。俺はもう誤魔化さない、逃げない。

俺の純粋な気持ちをぶつけて、何としても女を黙らせてやる……。


499:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 05:19:32.75 ID:3D0J4Mbj0
男「……いいか、女。確かにお前は、人間じゃない。機械の体だ」

その言葉に、女が息を飲むのを感じた。そして再び目に涙が滲む。

が、それでも俺は怯まない。

男「でもな女、それが何なんだ?」

俺の問いに女は面喰らう。

男「仮にお前がロボットだったとして、何か問題があるってのか?」

女「……だって、私の体は人間じゃないんだよ?」

男「お前は、俺が人工臓器や義手義足をしてたからって嫌いになるってのかよ?」

女「そ、それは。でも……」

男「何の違いがあるってんだ、体の不自由な部分を機械で補うのと」


501:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 05:24:23.01 ID:3D0J4Mbj0
女「……でも、その人たちには人間の部分がちゃんとある、私と違う」

男「違わない! お前は人間だッ!!」

女「どこが!? 私のどこが人間だって言うの!?」

男「――ッ!? こ、この!!」

俺は、銃を取り出すとそれを自分の眉間に押し当て、引き金に指をかける。

そして響き渡る銃声……。


504:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 05:28:55.96 ID:3D0J4Mbj0
しかし俺は死んではいない。

銃を握った俺の手を、女が必死になって俺の頭から引き離していた。

男「……なんで、助けた? なんでお前は、今俺を助けたんだ?」

女「そ、それは、だって男が……」

男「答えてみろよ、え!? なんで今俺を助けやがったんだ、って訊いてんだよ!」

女「だ、だって男が死んじゃうじゃん!!」

男「んだよそりゃ!? もうちょっとはっきりした答え出せねぇのかよ!!」
男「そんなんで俺が納得すると思ったのかよ!? 俺が死んだから何だってんだよ!!」

女「わ、分かるわけないでしょ!? アタシだって必死だったんだから!!」
女「自殺しようとしてる彼氏助けて何が悪いってのよッ!!」

男「それだ、それだよ!!」

女「だから何がよ!?」


506:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 05:36:31.90 ID:3D0J4Mbj0
男「それがお前の『人間』の証じゃねぇのかよ、え!?」

女「――ッ!」

男「お前が芯までメカだったらロボット工学三原則第一条とか引っ張り出してくんじゃねぇのかよ!!」

女「……それは」

男「ったく、テメェのおつむは科学の粋を集めて作った人間エミュレータだってのに、
男「随分と鈍く出来てやがんだなぁ!!」
男「自信持て! お前は人間だよ、俺の好きな女は間違いなく誰よりも人間やってるって!」

女は、俺の言葉にしばしの間逡巡したようだが、静かに「うん」と言ってくれた。

女「……で、そのモバイルは何なの?」

男「悪の組織の計画をぶっ潰して、お前の中の悪い無視を消し去ってやる」
男「そうしたら、一緒に帰ろう、な?」

女「お見事ですね、男さん」

突然女の表情と声色が無機質なものに変わった。

男「え、う、うわぁ! あ、お、『お前』か……」


508:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 05:42:18.10 ID:3D0J4Mbj0
女「いや、よくもまぁそれだけ陳腐な言葉並べて『私』を説得出来ましたね」
女「気合と根性の勝利という奴ですか?」

うわ、第三者に聞かれてたと思うと急に恥ずかしくなってきやがった……。

っていうか俺だってよく考えず発言してたんだ、放っとけ!

男「お前なぁ、出てくんならタイミング考えろよ、感動台無し……」

女「あんな茶番で感動するのは当人たちだけだと思いますが」
女「それは置いといて、『私』のままでそれを挿すと幾分痛みを伴いますので、
女「私がご入用だと思い出てきたのですが、必要ありませんでした?」

男「いや、それはそうだな、ありがと――」
男「……って、この間の記憶って女に残るんじゃないのか?」

女「そんな筈ないじゃないですか、何を頭の悪いことを」

男「いや、だってさっき……」


510:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 05:45:55.74 ID:3D0J4Mbj0
女「あぁ、それは責任者が私の記憶を『私』にコピペしただけです」

男「……あ、それもコピペって言うんだ」

女「とにかく、今のこの間のことは『私』の記憶に残りませんので、
女「その辺は安心してください」

男「……でもその間の記憶が途切れてると女があとで煩そうだ」

女「だから、そんなわけないじゃないですか」
女「それじゃあおちおち私が出れないですよ。ちゃんと適当な記憶に摩り替えて誤魔化すんです」

男「そ、そうだのか……」


513:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 05:51:49.07 ID:3D0J4Mbj0
女「時に男さん、あなたはどのような結果に収めようとしていたのですか?」

男「……それはまだよく分からない。ただ、とりあえずお前が添付したファイルを実行しようかと思って」

女「なるほど。ちなみにそのまま東氏のプログラムを実行してしまうと、
女「私を含む全てのロボットまで機能停止し、復活も不可能になってしまいます」
女「それでも構いませんか?」

男「か、構うに決まってんだろ!?」

女「だと思いました。ではどうします? 実行するかしないか、オール・オア・ナッシングで選ぶなら」

男「……俺には、出来ない。というより、俺には決められない」
男「女や他の大勢の命をどうするか、俺一人に決める権利はない……」


515:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 05:59:52.06 ID:3D0J4Mbj0
女「そう思いまして、東氏のプログラムを制御するプログラムを用意しています」
女「あのメッセージの二つ目の添付ファイルの正体が、それです」

男「な、なんだって!?」

女「私だって自分の中で育ちつつあるプログラムの存在に気付かないわけありませんよ」
女「日が経つごとに肥大化するデータがあれば、なんだろうと自己診断してみるのは当たり前です」
女「そうして、こんなこともあろうかと制御プログラムを作っておいたのです」

無表情な女の顔が、何やらエッヘンとでも言いたげなのは気の所為だろうか……。

女「それじゃあ男さん、そのモバイルを貸してください」

男「お、おう……」

俺からモバイルを受け取った女は、プラグを手にすると、

皮膚が張ったままの首筋にプラグを突っ込んだ。

男「え、ちょ、自分で出来んの!?」

女「さっきは体が動かないから頼んだだけじゃないですか」
女「男さんはまさか手で自分の首が触れないほど体が固いんですか?」

男「………………」


518:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 06:05:47.76 ID:3D0J4Mbj0
しばらくすると女は、何やら怪訝そうな顔で俺とモバイルの画面を見やる。

女「……なんか他の女の臭いがしますね」

あ、ヤバっ! モバイルん中にはアーシアのOSが入ったままだった!

女「これは……あの凶暴女の臭いですね……」
女「……男さん、一体これはどういうことでしょう、ご説明願えますか?」

む、無表情な女の目の奥に何やら妖しい光が、あわわわわ……。

女「……ま、今はその件については不問にしましょう」
女「それで男さん、これで気兼ねなく、計画は潰しつつロボットたちの命は守れます」
女「どうしますか……?」

男「………………」

俺は……。


521:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 06:12:20.12 ID:3D0J4Mbj0
男「………………やめとこう」

女「……それはどうしてか、お聞かせ願えますか?」

男「お前のボディ、小さい頃からずっとそれだったわけじゃないだろ?」
男「幼児期には幼児期、小学生の時は小学生、今なら今の、そうだろ?」

女「……何如にも、その通りです。我々は年代に合わせた義体に何度か換装します」

男「もし連中のテクノロジーを破壊したら、誰がお前や他のロボットのボディを換装するんだ?」

女「………………」

男「……やっぱり俺には出来ない。そのプログラムを使っちまうってことは、
男「多かれ少なかれお前らの未来を奪っちまうことになるからな……」
男「だから……、俺には出来ない」

女「そう、ですか……」
女「分かりました、男さんがそう決めたのでしたら、私は何も言いません」
女「そして恐らく『私』も、男さんに異論はないはずです、きっと」

男「……すまない」


524:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 06:18:58.63 ID:3D0J4Mbj0
東『そこのお二人さん! イチャつくのはいいが今はそれどころじゃないんだぜ!?』

男「なっ! あ、東!?」

くそっ!! 俺と女の会話を出歯亀してたのは『女』だけじゃなかったのかよ!?

東『この基地は既に自爆シークエンスに入ってる、さっさと逃げないとみんな仲良く木っ端微塵だぞ!!』

じ、自爆シークエンスだってッ!?

男「そ、そういうのはもっと早く言え、このアホ!!」

東『オレも今気付いたんだ、カウントは約五分』
東『さっさと上へ上がってこないとマジでヤバいぞ!!』

男「お、おい!? お前はどうすんだ!!」

東『俺もこっちが片付いたら逃げるさ、上で落ち合おう』
東『そうそう、アーシアを頼んだぞ、途中で拾って運んでいってやってくれ』

畜生、東の野郎ギリギリで知らせてきやがって、覚えてやがれ!!


527:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 06:24:01.01 ID:3D0J4Mbj0
女『男さん、急ぎましょう!』

男『あ、あぁ』

少年は少女に手を引かれ、ホールを抜け階段を目指す。

途中倒れている、ボロボロのもう一人の少女を少年が抱え上げ、

それを見て何やら言いたげな顔をする一人目の少女。

そうして階段へ向かう彼らをモニター越しに見つめる、二人の男……。

神鷹「これが、彼らの選択か……」

東「どうかな。あのガキ、どうやらまだ腹に一物抱えてるみたいだぜ?」
東「ありゃなんかやらかす奴の顔だ。オレはそれに賭けてみたい」

神鷹「そうか……」


530:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 06:30:45.81 ID:3D0J4Mbj0
部屋に備えられた椅子に、緩慢な動作で腰掛ける神鷹。

東「……お前は、逃げないのか?」

神鷹「お前と彼女を基地ごと始末し、その結果を見届けるのが私の役目だ」
神鷹「彼女は恐らくこのまま逃げられてしまうだろう」
神鷹「そして俺にはもうお前を撃つ気力はない」
神鷹「だから俺には、もう何もない。あとは彼らに任せて先に逝くことにするよ」

東「……オレは生きるぜ。お前には負けたが、俺は連中の計画を許すわけにはいかない」
東「それに、あのガキが何をしでかすにしても、導いてやる大人が必要だ……」
東「オレみたいな駄目人間でも、テメェの失敗談を語って聞かせるくらいのことは出来るからな」

神鷹「……そうか」
神鷹「思えば俺は……、お前に憧れていたのかもな」
神鷹「直情で、思い立ったらすぐ行動に移し、どんな結果にも決して後悔するとのない、お前に……」

東「だったらそのオレはもう死んだよ……」
東「思慮深く慎重で、常に正解の道を選んできた、頭の良いお前と一緒にな……」


533:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 06:38:35.78 ID:3D0J4Mbj0
そう言うと、東は部屋を後にした。

残された神鷹が、残り数分の己の人生を何如にして過ごしたかは、誰も知らない……。



女「男さん、早く! あと二分ちょっとで爆発します!!」

く、くそぉ……、地下十階から一階まで戻ってくるのに三分もかかってしまった……。

日頃の体力不足がまさかこんなところで響いてきやがるとは、思いもしなかったぜ。

半壊したエントランスを抜け、アーシアを抱いた俺と女は基地の敷地から出来るだけ遠くへと逃げた。

すると後方から、何かが近付いてくるのを感じた。一台のトラックだった。

東「お前ら、乗れ!」


538:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 06:44:05.27 ID:3D0J4Mbj0
荷台の扉の開けられていたそのトラックには、積荷が一つもなかった。

俺と女は荷台の中へ入ると、扉を閉めた。

本来トラックの荷台は内側から開けられないはずだが、

このトラックは内側からも施錠出来るようになっていた。

もしかしたら、積荷だけでなくロボットなどを運ぶためのものなのかもしれない。

東は俺たちが荷台に乗り込むのを確認すると、急発進でトラックを走らせる。

残り時間は一分。悠長に出口から出ている暇はないと、東は強引にフェンスを突き破ったらしい。

衝撃は俺たちのいる荷台まで伝わってくるが、如何せん窓がないため外の様子が窺えない。

それからしばらくして、後方で轟音が轟く。それから遅れるように、爆風が車体を襲う。


540:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 06:51:08.67 ID:3D0J4Mbj0
二度三度と横転し、四角い鉄の箱の中でシェイクされる俺たち。

誰を庇うべきか一瞬悩んだが、結局俺は両方庇うことにした。

お陰で衝撃が止むころには体の端々が痛い……。

その後、歪んで開かなくなった扉を外の東と協力して開くと、

俺たちは完全に動かなくなってしまったトラックを後にした。

幸い少し歩けば人通りのある道に出たので、東はタクシーを拾って、

アーシアを抱えて帰っていったようだ。

うちがとても雨風凌げる状態じゃない俺は、その日は近くのホテルを利用し、

翌日女と共に帰宅した。

互いに意識して眠れず、あまり疲れの取れない一晩ではあったが、

結局何の進展もしなかったのは言うまでもない……。


542:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 06:54:35.45 ID:3D0J4Mbj0
階下が騒がしくなった、と思ったら誰かが階段を駆け上がる音がする。

音は次第に大きくなって、そして俺の部屋の扉が勢い良く開け放たれた。

女「男〜! 起きてる?」

男「……んぁ? なんだ女か、朝っぱらからなんだよ、うるせぇ」

女「何が朝よ、時計くらい見なさい。もうすぐお昼でしょうが」

男「はぁ? 俺が何時まで寝てようとお前には関係ないだろう」
男「ってか週末くらい寝かせろ、以上おやすみ……」

女「なっ!? ひっどい! それに関係なくないでしょこのバカッ!」
女「アンタが起きないと、ご飯片付けられないんだから、さっさと起きて食え!」

男「……。へぇへぇ分かりましたよ、ったくやかましい女だな」

女「やかましいって何よ。そもそもアンタねぇ、」
女「こんな可愛い『彼女』が起こしてやってるのに、アンタは何が不満なわけ」

男「……そうだな、悪かったよ」

言うと俺は、素直に起き上がると、部屋を出ざまに女の頭を撫でてやる。

何やら顔を真赤にして怒鳴っているようだが、とりあえず無視無視。


544:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 06:58:46.00 ID:3D0J4Mbj0
あの激動の日から数ヶ月――

俺は新築の家で女と共に朝飯を食らう。

あれからどうなったかと言うと、表面上は何も変わらない。

平和そのものだ。

特筆すべきことと言えば、俺の家が『謎のガス爆発』で吹っ飛んだことで、

ご近所からいらぬ注目を浴びてしまったことと、

最近一人増えたクラスメイトとの間でギャルゲチックなイベントが起きて

俺が日々心身を磨り減らしている、ってくらいのものだ。


546:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:06:36.84 ID:3D0J4Mbj0
ちなみに東によって女に仕込まれたプログラムを俺がどうしたか……。

やられっぱなしが性に合わない俺は、使わないまでも連中にちょっとした仕返しをすることにした。

まず、東と『女』、そして微力ながら俺の三人で、解析されにくいより強固なものにする。

そして、それ制御プログラムと共に、全ての2.X系列のロボットへと送る。

今回のことに関してのレポートと、俺と女からの心の籠ったメッセージ付きで。

そして計画の中心人物なんて連中には、このようなメッセージを送ってみた。

『テメェらの悪事はみんな分かってんだぞ』

『もしテメェらがちょっとでも悪さしてるのを発見したら、

『すぐに例のプログラムを実行するぞ、テメェらが後生大事にしてるロボットの反乱だ』

『それが嫌なら、精々人類とロボットのために貢献することだ、いいな?』

この脅迫に効力があったかどうかは定かではないが、

東曰く、連中の計画は今かなりペースダウンしている、とのことだった。

こうして俺と女は、『平穏』を手に入れた……。


548:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:14:50.34 ID:3D0J4Mbj0
女「ねぇ、男。今日は久し振りに二人っきりでどっか行こうよ?」

男「……二人っきりねぇ。そう簡単に『アイツ』が二人にさせてくれるかよ?」

女「そう思うんなら早く食べて出発すればいいでしょ! OK?」

その瞬間を見透かしたかのように、玄関でインターフォンの音がする。

女「――ッ!?」

男「……はぁ。はいはい今出ますよ」

扉を開けるとそこには、休日だと言うのに真面目にも学校の制服を着た、俺たちのクラスメイトがいた。

???「おはようございます、男さん。今日もいい陽気ですね」

男「いい陽気はいいがなぁ、来る時はモバイルでアポ取れって何度も言っただろ、アーシア?」

ア「そんなことをしては女さんに『検閲』されてしまうじゃないですか」

男「……それはそうだが」

女「ちょっとアーシア!? 今日はアタシと男のデートだってのに、なんで来んのよ!?」

その言葉にアーシアは、いつものように不適な笑みを受かべると、

ア「いいじゃないですか、女さん。三人で一緒に遊びにいけば」

俺は盛大な溜め息をついた。今日も一日待っているであろう受難を思い、朝から気が滅入る。


552:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:20:13.97 ID:3D0J4Mbj0
などと言いつつ二人の美女に挟まれた生活を何気に満喫している俺だが、

別に連日遊んでばかり、というわけではない。

俺は将来、東のように連中の計画のブレーキ役たるべく、日夜勉強に励んでいる。

何せ、俺は大人たちから面倒臭ぇ遺物を与った子供代表だからな。

敵は巨大、そして責任は重大だ。

それでも、この二人の少女を人類の希望とするか絶望とするかは、

俺の手にかかってる、ってのは自意識過剰すぎだろうか。

ま、難しいことを考えるのは『大人』の仕事だ。

今は、この『平穏』を最大限満喫していたい……。



女「実は私ロボットだったんです」   完


553:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:22:38.16 ID:swFWacIRO
面白かった!
最後まで続けてくれてありがとう


554:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:22:39.68 ID:pnKXpadnO

本当に楽しかった


555:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:22:41.01 ID:uLdKLkX1O
乙。さ、次はエロゲバージョンを書くんだ


556:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:24:01.18 ID:3D0J4Mbj0
>>555
残念、エロはハリウッドの濡れ場のような扱いであるべきだ、が持論なのだ
好きな作家? 虚淵玄ですが何か?


質問、駄目出しなどあれば遠慮なくどうぞ


559:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:31:05.42 ID:d9A/KBAfO
面白く読ませてもらいました。

ひとつ、女の両親はロボットの開発に携わってたんだよね?
じゃあ悪い人なの?今は女とどう接してるの?


561:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:34:40.76 ID:3D0J4Mbj0
>>559
東や若かりし神鷹のように単に科学への探究心でやってた人もいます
それに、たとえ悪意がなく単に研究した結果ロボット開発に関係ある理論を発見しただけでも
国が「ちょっと気の研究見せてもらったよ、それで話なんだが(ry
なんて言ってくるのでむしろ極悪人は少ないです
というか研究者で悪人は神鷹みたいな特殊な例です

今は里親と養子のような関係ではないでしょうか


562:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:35:30.55 ID:VWBYiUyCO
女があっさりと事実を受け入れ過ぎな気がするな
SSでできる長さじゃ限界があるから仕方ないんだろうけど

何はともあれ面白かった
>>1


564:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:37:40.88 ID:3D0J4Mbj0
>>562
心理描写が苦手なだけです、あまり尺は考えてません
なんせまだスレも半分ありますし

何はともあれ精進します、ありがとうございます


571:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:52:19.92 ID:Jufx4Qm9O
おもしろかった…

だが、SSってかネットで読む内容じゃないな


内容が深くて濃くて長い
ぜひ本で読みたいな


ともあれ お疲れ様でした


572:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:53:21.59 ID:3D0J4Mbj0
>>571
酷い文章ですがこれでもワナビ(笑)ですので
もし何年後かにでも似たような内容のラノベを見かけたら私だと思って買ってやってください


573:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:55:14.49 ID:uLdKLkX1O
>>1はこの方向以外は出来ない?


575:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:57:36.44 ID:3D0J4Mbj0
>>573
この方向、と言いますと?
新ジャンルや普通のSSスレのような感じですか?
見ての通り日常パートになるとただでさえ鈍い文章が一層酷くなりますので、
さすがにこれでスレを立てるのはどうかと思い自重しています


次回作ですか、実は今回ので即興の限界を思い知りましたので、
SSはこれが最初で最後になるやもしれません……


577:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 08:01:55.39 ID:uLdKLkX1O
>>575
何というかSFの方向じゃなく普通のバトル物とか面白く書いてくれそうな気がしたんじゃい
まぁ確かにSS向きじゃない気もする。何か今vipに居るって気がしなくなる不思議


578:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 08:04:22.01 ID:3D0J4Mbj0
>>577
今回はたまたまSFが思い付いたんでそうしましたが
普段は伝奇が多いですね
ただ超能力者の主人公がループする似非SFとか
主人公が吸血鬼の話では吸血鬼は実は異星起源種とか、
ついSFっぽい設定を入れてしまうあたり癖かもしれません


576:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:58:36.55 ID:oOtQ82Nh0
おもろかった、乙!
また書いてね


583:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 09:15:02.45 ID:KGSmlw/IO
>>1
おもしろかったよ〜


気が向いたらでいいんで、是非また書いてもらいたい。


584:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 10:07:30.70 ID:GixpJrzF0
乙!!
ってか人生初SSでここまで書けるのかよwww


588:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 10:50:13.55 ID:dOFKrUiyO
乙!おもしろかったぞ。
今度は自信持って書きたいように書けばいいんじゃない?とおもた。
ラノベ化楽しみにしてるぜww


589:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 10:52:33.17 ID:I+LWgncO0
遅ればせながら>>1乙乙
それとホシュラーの皆さんも乙でしたー

面白かったよー
自分としては、ロボットって自覚した後の男と女(とアーシア)の
日常ストーリーが、もうちょっとあると良かったなー
また書き溜まったら投下してねーノシ


591:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 11:20:32.94 ID:yVgDdKRMO
おつかれ
面白かった!

女が自分をロボットだと知ってしまうシーンはもっと掘り下げてほしかったかな。
自分がロボットだと知った衝撃をあれだけで納得(?)したのはちょっと拍子抜けした。
途中で人格交代するにしても、事件解決から日常に戻る前に、後日談として女にもう一度話をし直してくれてたらもっと説得力増したかも。


少女「人間は勝手なんだよ」
ヲタ「初音ミクを嫁にしてみた」
新幹線乗り間違えて全裸になった男を逮捕
教えてご主人様ぁッ!〜メイド型アンドロイドの正しい調教方法〜
アンドロイドメイドのナナミさんはご奉仕大好きでご主人様はすぐにイっちゃうの。


女「実は私ロボットだったんです」おしまい

元スレ
女「実は私ロボットだったんです」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1245682313/


 

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