1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:51:53.52 ID:3D0J4Mbj0
階下が騒がしくなった、と思ったら誰かが階段を駆け上がる音がする。

音は次第に大きくなって、そして俺の部屋の扉が勢い良く開け放たれた。

女「男〜! 起きてる?」

男「……んぁ? なんだ女か、朝っぱらからなんだよ、うるせぇ」

女「何が朝よ、時計くらい見なさい。もうすぐお昼でしょうが」

男「はぁ? 俺が何時まで寝てようとお前には関係ないだろう」
男「ってか週末くらい寝かせろ、以上おやすみ……」

女「なっ!? ひっどい! それに関係なくないでしょこのバカッ!」
女「アンタが起きないと、ご飯片付けられないんだから、さっさと起きて食え!」

男「……。(チッ)へぇへぇ分かりましたよ、ったくやかましい女だな」

女「やかましいって何よ。そもそもアンタねぇ、」
女「こんな可愛い幼馴染が起こしてやってるのに、アンタは何が不満なわけ」

男(可愛い……ねぇ)

このままこいつに逆らっていても余計うるさくなるだけなので、

俺は盛大な溜め息をつきつつ、渋々ながら黙して従ってやることにした。
 
少女「人間は勝手なんだよ」
ヲタ「初音ミクを嫁にしてみた」
新幹線乗り間違えて全裸になった男を逮捕
教えてご主人様ぁッ!〜メイド型アンドロイドの正しい調教方法〜
アンドロイドメイドのナナミさんはご奉仕大好きでご主人様はすぐにイっちゃうの。




 

2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:53:16.00 ID:3D0J4Mbj0
食卓に並べられたのは、飾り気はないが洗練されているのが窺える

純和食のメニューだ。さすがと言うか、随分と熟れてる感じだ。

なんだかんだ言って俺のメシ使いをやっているのは伊達でないらしい。

が、一口食べてみると、どうやらいつもより味付けが濃い気がする。

男「……お前さ、これうちに持ってくる前に味見したか?」

女「なによ、煮物に醤油入れすぎたのがそんなに気に障るわけ?」
女「ちょっとくらい味が濃くたって白米で中和すればいいでしょ」
女「不満があるなら別に食べてくれなくていいんですけど?」

男「いや……、別にそういうわけじゃないけど……」
男(っていうか訊いただけだろうがよ、一言と言わず余計だぞ)

当たり前のことだが、俺にとって塩辛いものは女にとっても塩辛い。

そして、今はこうして俺のズボラさにプリプリと不機嫌そうにしている。

もちろん嬉しそうにしている顔や、笑顔だって見たことがある。

だが今の俺にとってはそんな、こいつの「人」として当然のことすら、

ともすれば疑わしく思えてくるのだ……


3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:55:14.45 ID:3D0J4Mbj0
西暦20XX年

――企業のネットが星を被い、電子や光が駆け巡っても、

国家や民族が消えてなくなるほど、情報化されていない「近未来」

幸運なことに第三・四次世界大戦は起きていないし、ソ連は崩壊したし、

アメリカは三国時代に突入していないし、日本は核攻撃なんて受けてないし、、

東京壊滅なんてしてないし、犯罪に対し攻性な組織なんて噂にもならない。

機械の体や電子機器埋め込んだ頭脳なんてのも実用化されておらず、

四半世紀、いや半世紀前の人にも思わず「ごめんなさい」したくなるほど、

変わらず進歩がなくつまらない『未来像』を体現した時代。

変わらず人々が、明日を生きるために忙しなく命を削っている時代。


4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:56:32.51 ID:3D0J4Mbj0
ま、車椅子の男の怪しげなソフトを入れると映えそうな携帯用情報端末や、

人間の脳の信号で直接操作出来る義肢、あとは紙みたいに薄いモニターなんかは

実用化されてるから、『未来』を夢みた人達にはそれで手をうってもらいたい。

と、そんな夢も希望もない世界観をこれまで持っていた俺は、

その認識が大きな誤りであったことを知るのだった……


9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:59:11.37 ID:3D0J4Mbj0
一週間ほど前の夜、俺のモバイルに音声通話の着信が届いた。

男(発信者は……女か、なんなんだこんな時間に)
男「もしもし女か? 一体どうしたんだ?」

女「お、男? 今後ろからなんか変な人につけられてて……」

男「っ! わ、分かった。で、今どこにいるんだ?」

女「今は……○○の前通ったとこ」

男「よし、すぐにそっち行ってやる」
男「だから、出来るだけ人通りの多い道選んでブラついてろ」

女「う、うん。分かった……。お願い、早く来て」

男「おう、待ってろ!」

通話を切るなり俺は、モバイルとは別の大型端末の前に座った。

一昔前は「パソコン」などと呼ばれていたものだ。


10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:01:26.81 ID:3D0J4Mbj0
携帯用端末、通称「モバイル」の操作性や電源のキャパシティが向上してから、

個人用としてのパソコンの地位は次第にモバイルにとってかわられた。

もちろん企業や研究機関、あるいは画像や音響など高度な処理能力を要求される

分野では、依然として大型端末の需要が存在しているのは言わずもがな。

ただ、今時分テメエの趣味でこのタイプの端末を所有しているのは、

一部の好事家のみに限られていると言えるだろう。俺もその例に漏れない。

俺はモバイルのGPS情報を管理しているサーバーにアクセスし、

女のアカウントを入力し、モバイルの位置情報を取得する。

普段は本人の家族しか出来ないことだが、事態が事態だ背に腹は代えられない。

取得した位置情報を常時このメインマシンからモバイルに転送させ、

俺はモバイルを手に取り家を飛び出した。


11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:04:26.83 ID:3D0J4Mbj0
男(おいおい、人通りの多いとこ通れ、っつっただろうが……)
男(これじゃあどんどん裏道へ向かっていっちまうぞ)

モバイルに表示された女のマーカーは、俺の指示に反する動きをしていた。

女は、どんどんもといた大通りから離れているようだった。

男(くそっ! あのバカなんでこんな道ばっか選びやがんだ……)

もとの場所近くにいてくれさえすれば、十分も走っていれば追い付けたものを、

女の今の位置は、俺も普段通らないような道の奥なので、

追い付くのにそれなりの時間を要しそうだった。


14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:10:36.90 ID:3D0J4Mbj0
追っては離れられ、先回りしては逆をつかれ、なんてのを

二十分くらいはしていたろうか、うちを出てから合わせて

三十分くらいは経過してるだろう。

そうして女のマーカーに追い付いた俺は、理解不能な状況を目にした。

女は……、いる。そして女のいうストーカー野郎らしき、

いかにも下卑た表情をした、軽薄そうな若い男も……、いる。

まず予想外なのは、その男というのが三人組だったことだ。

が、俺の理解を超えているのはそんなことではない。

その三人を、女が一人で伸してしまっていることだ。


16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:14:33.95 ID:3D0J4Mbj0
俺の知ってる女は、気は強いが別段荒っぽいわけでもなく、

至って普通のか弱い、年相応の少女の姿だ。

それが、よく見ると手からは血が滴り、服もところどころが破れて

あられもない格好になっている。

女「男さん、ですか。どうもお手数をおかけして申し訳ありません」

それは、確かに女の声だった。が、その精気に欠ける声色と、

まるで一切合切の感情というものを置いてきてしまったかのような

表情は、俺の知ってる女のものでは、断じてなかった。

その顔は現在の姿も相俟って、非常に硬質で機械的な印象すら受ける。


17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:19:12.82 ID:3D0J4Mbj0
男「えっと、その、無茶苦茶アホっぽい質問なんだけど……」
男「お前、女……だよな?」

女「はい、何如にもそうです」
女「ただし、あなたが普段「女」と認識している人格サブルーチンには」
女「一時的に休眠状態に入ってもらっている、ということを補足しておきます」

休眠だって? 人間は極度のストレスに長期間晒されると、

その記憶を封印して精神の平衡を保つために、別の人格を形成する、

なんてオカルトな話もあるが、そういうことだろうか……?

男「ようするに、実は女は多重人格で、お前はその別人格、ってことか?」


18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:23:42.42 ID:3D0J4Mbj0
女「あぁ……、言葉が不足していたようで、申し訳ありません」
女「どうやらいらぬ誤解を招いてしまったみたいですね」
女「端的に言ってしまえば、私「女」という人物は、ロボットなんです」

男「………………なんだって?」

ヤバい、頭ん中がハテナマークでいっぱいになりそうだ。

多重人格ってだけでもアブナ気なのに、まさかこいつが

こんな電波ちゃんだったとは……。

だがそんなことでこの俺はくじけはせん……。

あのエロゲにありがちな幼い日の約束に誓って、俺は女が

どんな厨二でメンヘラで電波で空鍋がnice boatでも、

支えてやるって決めたんだ!


20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:31:48.50 ID:3D0J4Mbj0
女「……その顔では、どうやら信じてはいただけてないみたいですね」
女「では、これをやると修理に時間がかかるので避けたかったのですが」
女「背に腹はかえられない、という奴ですね」

言うなり女は、ところどころ血の滲んだ右手の、小指を口に咥えると、

ギリギリと顎に力を込め、そのまま指を引き抜いた!

男「う、うわ! 馬鹿、な、何やってんだお前!?」

女「安心してください、別に噛み千切ったわけではありません」
女「なにか刃物があれば、映画のようにそれを使ったのですが」
女「生憎手頃なものは持っていないので、歯を使ったまでです」
女「それで、これを見てもまだ、信じては頂けませんか?」

女はそう言うと、俺の前に右手を差し出した。

確かに、その小指は繋がっている……。

だが、そこには皮膚がなく、無骨な金属製の細いモノだけがあった……。


21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:36:37.46 ID:3D0J4Mbj0
男「な――ぁ――!」

お、落ち着け、俺……。

現代には見た目には紛い物と分からない、精巧な義手だって存在してる。

いきなりのパフォーマンスに驚きはしたが、きっとそれだ、それに違いない。

女「義手、ではありませんよ?」

言うと女は、突然その右手の人差し指と中指を、俺の舌に突っ込んできた。

男「――!」


25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:44:35.07 ID:3D0J4Mbj0
女は指で俺の舌を、摘んだり撫でたりと弄んでいく……。

女「分かりますか? いくら義手でも敏感な口内を誤魔化せるほど」
女「精巧ではありませんよ? 少しぬるめの体温や」
女「指に刻まれた指紋の皺なんか、感じられせんか?」

女は俺に顔を近付け、至近距離で俺の目を覗き込みながら問うてくる。

男「わ、分かった! 分かったからその妙にエロい仕草はやめろ!」

俺は女の指を口から抜かせると、言った。

心無しかその無表情な顔が名残惜しそうに見えたのは、気の所為だと思いたい……。


26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:49:15.82 ID:3D0J4Mbj0
確かにその指の感触は、人間のものだった。

俺は別に最新の義肢に精通しているわけじゃないけど、

口に咥えても分からないほど本物っぽい、なんてことはないと思う。

そもそも、モノを掴んだり放したり、って程度の事は可能だろうが、

こんな風に精密に人の舌を、その……あれするほど器用じゃないはずだ。

う、別段気持ち良かったわけでもないのに、何故か思い出すと血流が……。

いかんいかん、邪念を捨てて、今は状況を整理するのが先だ。


27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:55:56.22 ID:3D0J4Mbj0
女は俺の唾液のついた指をハンカチで拭いだした。

せ、せめてティッシュにしてくれ、消耗品じゃないのが妙に恥ずかしい。

と、思ったらそのハンカチで小指を縛り始めた。止血、ってことだろうか。

男「おい、その指……」

女「あぁ、お気になさらず。もともと右手は皮膚の損傷が激しかったので」
女「どの道修理をしなければならないところでしたから」

男「いや、その、痛くないのか〜とかそういうことなんだけど」

女「心配には及びません、今の私は一部の感覚と感情の機能を停止していますので」

そういうこと言われると、なんだか本当に人間じゃなく思えてくるな……。



これ読んでる人いるんだろうか


30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 01:02:22.48 ID:3D0J4Mbj0
男「じゃあ、その、お前は本当にロボット……なのか?」

女「はい、そうです」

男「あ〜、それは……いつから?」

女「いつから、と言いますと?」

男「いや、いつそういう風になっちまったのかな、と」

女「あぁ、そういう意味ですか、もちろん最初からですよ」
女「私はサイボーグではなくアンドロイドですから、改造されたわけじゃありません」
女「私の場合は正確にはガイノイドになりますが、ということを補足しておきます」

男「え、ちょっと待て、ってことは生まれた時から?」

女「はい、そうです」

うわ信じらんねぇ、隣に住んでて物心ついた頃からの幼馴染だぞ。

気付かないなんて有り得るかよ……?


31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 01:08:18.26 ID:3D0J4Mbj0
男「まずさ、根本的な問題として、今の人類に」
男「人間そっくりのロボットを作る技術なんてない、ってのが」
男「ある種の共通認識なんじゃないか、と思うんだけど」
男「その辺の矛盾はどう解決してくれんの……?」

女「……ここから先は、他言すると生命に関わる機密を知ることになりますが、」
女「それでも構いませんか? それを覚悟して頂けるなら、お話します」

う、なんか話がスゴい方向へ進んできたな……。

普通なら絶対信じないんだろうけど、なんかこう俺も内心

『これってひょっとしてマジなんじゃねぇの?』とか思い始めてんだよなぁ。

男「……分かった、それについては了承する」

女「では、裏路地とは言え、いつまでもこんなとこへいるわけにもいきません」
女「だから、まずは場所を変えましょう。私のうちでどうでしょうか?」

男「あ、あぁ……」


33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 01:15:35.44 ID:3D0J4Mbj0
女に俺の上着を貸すと、出来るだけ人のいない道を選ぶようにして、

俺たちは女のうちへと向かった。

男「っておい、こんな夜遅くだとお前の両親もいるだろうに、どうすんだよ」

女「問題ありません」

女は施錠されていないことを確認すると、そのまま無言で入っていった。

女母「女! こんな遅くなっていったいどうしたの?」
女母「それに男君まで、なにかあっ……」

女「女母(名前)さん、計画を第2段階に移行することにしました」

女母「――っ! 分かりました……、では私たちは下で待機しています」

女「ありがとうございます。それでは修理キットを持ってきておいてください」

な、なんなんだ、この二人の余所余所しさは……?


34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 01:23:05.49 ID:3D0J4Mbj0
女の部屋に入るなり、女は受け取った修理キットを開きつつ言った。

女「私は『初めから』ロボットだって言ってるんですよ?」
女「だったら、私の両親だって尋常な方々ではない、というのは」
女「想像に難くないと思います」
女「申し上げ難いのですが、男さんはまだ頭が上手く回っておられないようですね」

男「それは……正直そうだな。なんていうか訳分かんなすぎておかしくなりそうだ」

女「分かりました、では少しここで待っていてください、すぐ戻ります」

言うと女は部屋を出ていった。それから五分ほどして、

湯気の立つコーヒーカップの乗った盆を抱えて戻ってきた。

女「男さんはブラック派でしたよね」
女「でもこういう時は糖分を取って頭を休ませてあげるといいですよ」

盆にはカップの他に、角砂糖やミルクの入った器も添えられていた。

男「……そうだな、じゃあ頂くよ」


36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 01:31:04.39 ID:3D0J4Mbj0
俺が甘くしたコーヒーを啜っている間、

女はちょっとしたスプラッタシーンを演じていた。

女の手の傷は手首から下全体に及んでいた。例の男たちを殴った反動だろう。

女はその手全体の皮膚を、メスで切り込みを入れ手際よく剥いでいく。

その下は人肌に似た色にコーティングされた金属の骨格になっていて、

全体は皮膚の赤黒い血で濡れていた。

男「なぁ、その血って……」

女「外側は人間の細胞を培養して作った人口皮膚になっています」
女「当然生きた皮膚細胞ですので、恒常性を保つために人口血液も流しています」
女「少々の傷なら、細胞内のナノマシンがすぐに補修しますが、
女「ここまで酷いと傷口から壊死が始まるでしょう」
女「私の皮膚の恒常性自体は、人間のそれより劣りますから」

ナノマシンとか……、それなんてSFだよ常識的に考えて。


37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 01:35:17.06 ID:3D0J4Mbj0
男「それって、ヤバいんじゃないのか?」

女「いえ、外側の皮膚を貼り替えて縫合するだけですので、大事ではありません」
女「内側の骨格はそれなりに頑強に出来ているので無事でしたし」

男「そ、そうなのか……」

にしても、知り合いが自分の手の皮膚を目の前でベリベリ剥いでる、

ってのは流石に気味のいい景色ではないな……。

@ちゃんねるに転載されてるグロ画像で鍛えておいてよかったぜ。


39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 01:40:23.83 ID:3D0J4Mbj0
女「さて、そろそろ落ち着かれましたか?」

女は修理キットの中から、パック詰めされた人口皮膚とやらを取り出しつつ言った。

男「いや、さっきからそんなのばっか見せられてちゃあねぇ……」

女「大丈夫そうなので本題に入りましょう」

男「……おい」

女「作業自体はそう複雑でもないので、気にせず質問なさってください」
女「ここでなら込み入った話も安心してなさってください」

男「安心しろ、ったって普通の女の子の部屋じゃねぇかよ」

女「見た目はそうですが壁は防音になっていますし、
女「盗聴盗撮などあらゆる電子的な『覗き』にも対策してあります」
女「もちろん、外では数名の人が常に目を光らせているので安心です」

安心ねぇ、普段の女が聞いたら何て言うか……。


40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 01:45:53.71 ID:3D0J4Mbj0
男「一番の疑問はだ、お前の言うことが真実だとすれば、
男「あまりにも現代から見てオーバーテクノロジー過ぎないか、ってことだ」

女「なるほど。では逆に訊かせてもらっていいでしょうか?」

男「ど、どうぞ……?」

女「男さんは、今の科学技術の『何』を知っているんですか?」

……えっ?

女「男さんの知ってる科学の最先端、とはどういうものか、
女「と訊いているのです。ご理解頂けてますか?」

男「分かるけど、どう答えていいか分からないな……」

女「男さんは、確かに平均的な学生と比べれば博識ですし、
女「頭の回転も早い方だろうと思います」
女「しかし、どこかの研究所で研究をしている、というわけでもないし、
女「そんな方々に資金を提供している国の重役、でもないですよね」


44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 01:52:05.14 ID:3D0J4Mbj0
女「そういう人たちが、果たして全ての情報を大衆に開示している、と何故言い切れますか?」
女「かつて、映画やドラマでは凄く時間がかかるような描写をされていた、
女「電話という機械の逆探知、実は当時から数秒で出来るものだ、なんてご存知でしたか?」

あ〜、電話ね。なんだろう、この凄くメタ的な都合の存在を勘繰ってしまいたくなるような、時代錯誤の例は。

現代ならもっといい例えくらいあるだろうに。閑話休題。

女「国の政府とは、えてして情報を出し惜しむものです」
女「それは科学技術でも同じです。たとえば、やれば出来ることを
女「出来ない、と思わせることで犯罪者を油断させたり」
女「逆に、出来もしないことをフィクションでやってみせて、
女「犯罪者への牽制にしてみたり、そのような例は枚挙に暇がありません」


46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 02:01:20.80 ID:3D0J4Mbj0
男「………………」

それは、そうだ。俺が知ってる『最先端』だって、

そんな作られた、思い込まされた最先端だった、ってことも十分有り得る。

女「あなた方大衆が想像されている『最先端』は、実際のソレから
女「およそ一世紀は取り残されている、と考えてもらって差し支えありません」

男「い、一世紀だって!? いや待て、そんなバカなことがあるかよ?」
男「たとえば、そんな進んだ技術があるなら、どっかの研究機関が抜け駆けして
男「製品化なりして大金を得よう、としたっておかしくないんじゃないか?」

女「もし、世界中の国家がグルになって、あらゆる科学技術を管理し隠匿しよう、
女「と考えたとします。はたして、そんな状態で抜け駆けなんて考える組織があるでしょうか?」


47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 02:05:41.32 ID:3D0J4Mbj0
ある訳がない。確かに、今世界は概ね民主主義で統一されている。

国とは国民の代表が運営するものであり、国と民はイコールの存在だ。

だがそんな名目とは別に、民衆を支配し、扇動し、ある方向へと向けさせようとする、

怪物のように巨大で、独自の意思を持った存在としての『国』という主体も、

厳然として存在している。みなそれから目を逸らし、国は自分たち個人によって

作られている、という幻想を信じ込まされている。

そして、そんな『怪物』たちがグルになって、『隠そう』と言っているんだ。

それをちっぽけな『個人』がどうこうしよう、などと無理に決まっている。

有史以来、人間が繰り返してきたことだ。


48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 02:15:23.13 ID:3D0J4Mbj0
女「私の身体に用いられている技術も、そのような『隠された技術』の集合体です」

男「それで、そのお偉いさんどもは一体全体何がしたい、ってんだよ……」

女「私のような人造人間を作り、人間社会に溶け込ませるためです」

男「なんでわざわざそんなことを……?」

女「非常に壮大な計画であるため、その思惑は一枚岩ではなく、一言で表すのは困難です」
女「ただし、名目上の目的としては、『ヒトの精神の解明』が掲げられています」

ヒトの精神の、解明?

女「私の脳、と言うべき部位には、一般にはまだ存在すら知られていない、
女「量子コンピュータが使われています。ご存知ですか?」

男「ビットを1と0の重ね合わせにすることで、両方の値を任意の割合で持たせ、
男「それまでのコンピュータでは不可能な超並列処理が可能な、全く新しい
男「コンピュータ、だったか?」



この辺私は理系ではないので、間違ってたらすみません


50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 02:23:57.55 ID:3D0J4Mbj0
女「そのような認識で結構です。これが実用化されれば様々な分野で活躍するだろう、
女「と言われていました。それだけ画期的なモノだったわけですが、その用途の一つに
女「生物のニューロンのシミュレーション、というものがあるのをご存知ですか?」

男「……聞いたことはあるな」

女「人間の脳は、コンピュータに比べ驚異的な能力を持っていますが、
女「その構造自体は比較的早く解明されています」
女「あとは、それをシミュレート出来るスペックのコンピュータさえあれば、
女「再現自体は可能と言われていました」

男「お前の頭ん中に、そのシミュレータが入ってる、ってのか?」

女「そうです。そして、そのシミュレータ上の挙動を計測することで、
女「ただヒトを観察するだけでは得られない、人間の精神の挙動についても
女「より理解が広まる、というのが、この計画の大義名分とされています」


51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 02:30:43.64 ID:3D0J4Mbj0
なるほど、ただ外から観察するだけでは、内部の処理の結果しか見ることが出来ないが、

内部までシミュレーションしてしまえば、内部の挙動も観察出来るから、

より確かな情報が得られる、ってわけだ。

『きっとこうだろう』みたいに好き勝手言うだけの心理学が、

ヒトの内部の観察によって、真偽を議論の対象にすることが出来るようになるんだ。

これは画期的と言わざるを得まい。だが……

男「あのさぁ、そうやって聞くと、俺からすればそれだけでもスゲェ、って思うんだが」
男「それが大義名分だ、って言うのか? じゃあ、本来の目的ってのはなんなんだよ」


52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 02:37:36.00 ID:3D0J4Mbj0
女「……その前に、一つ質問をしてもよろしいですか?」

男「……あぁ、いいけど。なんだ?」

女「男さんは、私……『女』の味方でいてくれますか?」

男「…………」

これは、軽々しく頷いていい質問じゃあない気がする。

どうする?

……なんて、初めから決まってるんだけどな。

男「当たり前だろ、そんなの?」

女「……ありがとうございます」
女「それでは、分かりました、お話します」


53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 02:44:34.83 ID:3D0J4Mbj0
女「と言っても、それほど意外な話ではありません」
女「時間が経って、冷静になった男さんなら、すぐ思い至るようなレベルの話です」
女「ただ、それを予め言っておくか否か、というのは重要だと思いました、と補足しておきます」

この言い回しはひょっとしてこいつのクセなんだろうか……?

女「人間と寸分違わぬ見た目の機械、これは様々な用途が考えられせんか?」

男「……諜報、軍事、政治家の替え玉や影武者、あんまりいい気分の用途じゃねぇな」

女「概ね正解です。あとは、愛玩用というのも考えられます」

この場合は、単なる『愛でる』、という意味ではないんだろうな……。


54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 02:52:56.09 ID:3D0J4Mbj0
女「スパイとして敵対する組織に送り込むことも出来ますし、
女「単純に量産して兵士として送り込むことも出来ますよね」
女「敵国の政治家を暗殺し、その替え玉としてアンドロイドを送り込んだり、
女「自国の要人の影武者にも出来ます」

女「ただし、その様な用途で扱おうと思うのは資金の豊富な国の政府が主ですが、
女「とはいえアンドロイドは作るだけでもかなりのコストがかかります」
女「だから『ハードへの需要』とは別に、より安価な『ソフトへの需要』も存在しています」

男「ソフトへの需要?」

女「人間の精神がどういうものか、今までとは比べものにならないくらい研究が進むわけです」
女「それだけでも、かなりの価値があると思いませんか?」
女「労働に何一つ文句を言わないようにも出来る、人を殺すことを躊躇わないようにも出来る、
女「核ミサイルの発射スイッチを押すことを躊躇わないようにも出来る、
女「自分の部下に絶対服従を誓わせることも出来る……」

男「…………」


58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 03:02:30.84 ID:3D0J4Mbj0
なるほど確かに、掲げている大義名分とは大違いな、胸糞悪くなりそうな真意だな。

男「で、お前はそんなことのために作られて、今もそのために行動してる、ってのかよ」

女「その通りです」

男「俺に、それを黙認しろ、ってのか?」

女「私はそのような選択肢を提示する気はありません」
女「もしあなたが、この計画に害なす行動を取られるというのなら、
女「その時は、私があなたを始末しなければなりません」

男「――ッ!? な、何だって……?」

女「というより、『私』はそう作られています」
女「たとえ『私』の主人格がどれだけあなたを好いていても、
女「計画の邪魔をするようなら、『私』は直ちに手を下さなければならない」
女「あなたは『私』に、私の『主人格』に、選りにも選ってあなたを手にかけさせたいですか?」


61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 03:11:16.08 ID:3D0J4Mbj0
男(こ、こいつ……)

女「私の見た限り、あなたはそれを良しとはしないはずです」
女「もしあなたが、『私』の『味方』でいてくれる、というのなら、
女「あなたの取るべき行動は一つしかないんじゃあ、ないですか?」

言うなり女は立ち上がると、話している間に縫合の済んだ右手を俺の首にかけつつ、

女「この国で、一年に何人が『交通事故』で命を落としているか、ご存知ですか?」
女「何人が、『飛び降り自殺』で命を落としているか、ご存知ですか?
女「風呂場で『溺死』していたり、突然の『心臓麻痺』で死んでいたり、
女「はたまた、死体すら見付からず、『行方不明』になっているか、ご存知ですか?」

最後に女は、俺の耳に触れるか触れないかまで口元を近付け、

女「……『我々』の手にかかれば、あなた一人くらい訳ないんですよ?」

男「――ッ!」

女「長話で疲れたんじゃないですか? コーヒーを淹れなおして来ますね、フフフ」


65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 03:19:43.52 ID:3D0J4Mbj0
トン、トン、トン、トン、トン……

男「…………はっ! はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

女が階下へ降りていく脚音が聞こえなくなった頃、

俺は知らず呼吸を止めていたことを思い出した。

荒い呼吸で脳に酸素が一気に流入し、軽い眩暈と頭痛に襲われる。

男(……ふざけやがって)

選択の余地なんて、最初からなかったんだ。

今日のことは黙っていろ、さもなくば死あるのみ、かよ。

あれが、あんなのが、十年以上も付き合いのある女だなんて、悪い冗談だ。

だが、さっきから主人格だのなんだの言ってるが、そもそも『アイツ』は

普段俺と接してる『女』とは違うのだろうか……?

そもそも、何故今になって、俺にこんなことを話すんだ……?

こんなことを俺に話したところで、アイツにメリットなんてないんじゃないか?

分からない、これだけ話を聞いても分からないことだらけだ、まったく頭にくるぜ。


67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 03:28:01.85 ID:iHkFc1mxO
なんだか方向が変わってきたな。
おじさん下ネタも好きなんだよ。


69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 03:30:51.43 ID:dhTxFSv+O
>>67
おまえに限らず俺も皆も大好きだがだまっとこうな


68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 03:30:42.95 ID:3D0J4Mbj0
女「どうぞ、新しいコーヒーを淹れてきました」
女「それと、前の週末に『私』が焼いたクッキーもあるんですよ、
女「そのうちあなたに差し上げるつもりだったようですので、
女「折角ですから今食べちゃってください」

男(まるで第三者のことを語っているようだな……)

盆には、先程のようなコーヒー一式と一緒に、

一見すると気が強い『あいつ』から想像も出来ない、

可愛らしい形のクッキーが乗っていた。

あいつのこういう女の子らしいとこを知ってる男って、

俺くらいのものじゃないかな……。

男「……お前、さっきから普段の女と今のお前を、区別して語ってるようだけど、
男「どういうことだ?」

女「あぁ、それについての説明がまだでしたね」
女「普段の私は、自分が生まれた、というより作られた目的なんて知りもしない、
女「極普通の女子高生ですよ。数百グラムの体重の変動で一喜一憂したり、
女「好きな男性と相対してドキドキしたり、そういうどこにでもいる女の子です」
女「当然、自分が人間じゃないなんて夢にも思ってないはずです」

男「で、お前は一体なんなんだ……?」
――
エロも入れようと思えば入れられますが、どうしましょう?


77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 03:44:24.07 ID:3D0J4Mbj0
女「緊急時対応人格サブルーチン、と呼ばれています」
女「端的に言えば、『私』が私の生命を脅かす危機に瀕した時、
女「いらぬ感情に左右されず、最適な方法を選択するために用意された、
女「緊急時の駆け込み寺のようなものです」

男「今日のもそのうちの一つだった、ってのか?」

女「はい、万が一私一人で危機を脱出出来なかった場合のために、
女「あなたにも連絡をしていたのですが、それについては杞憂で終わりました」
女「幸いと言えば幸いですが、お手間を取らせてしまったことは申し訳ありません」

男「……いや、それはいい。ただ、なんであの時あんな面倒な道順を通っていたのか」
男「それが引っ掛かってんだが」

女「あれは私があの道を通ったわけではなく、GPSの衛星にハッキングして、
女「私があの道順で移動している、と見せ掛けただけです」

男「な、なんだって……?」
――
どなたか『緊急時対応人格』をEMHにこじつけくれたら筆者が喜びます
元ネタ分かる人は失笑くらいはしてください


81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 03:53:05.73 ID:3D0J4Mbj0
女「あなたに連絡を差し上げた時点で、私は既にあの場所にいました」

男「いや、訳が分からないんだが……。そもそもなんであんなとこに?」

女「学校の帰りに彼らに目をつけられたらしく、無理矢理あの場所に連れ込まれました」
女「そして暴行されそうになり、顔面を殴打されたところで『私』が起動しました」

男「はぁ!? んな大事なことなんで今まで言わなかったんだよ!」
男「で、大丈夫だったのか!? ってか顔殴られたってそれこそ大丈夫なのかよ!」

女「私のボディの貞操を心配しておられるのですか?」
女「それについては心配は無用です、とりあえずは未遂で片付けることが出来ました」
女「それに仮に完遂されていたにしても、私の主人格からその記憶だけ消し去り、
女「性器から痕跡を消せば傍目には無垢な処女と変わりませんから」

男「………………」

あぁ、頭痛くなってきた……。


83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 04:03:45.46 ID:3D0J4Mbj0
女「それと顔についてですが、どうやらすぐにナノマシンが修復したみたいです」
女「というわけで安心してください。もちろん、仮に痕が残っても修理すれば消せますが」

男「ハァ……。で、一応訊くけど、今までにソレをその、完遂されたことは?」

女「気になりますか?」

このアマ……。

女「幸いそのような過去は『存在しません』のでご安心を」
女「ただし、記憶もない、痕跡もない過去の有無を確認する術を、
女「あなたがお持ちかどうか疑問ではありますが、ということを補足しておきます」

男「いらねぇ補足してんじゃねぇよ、ったく……」
男「って、今それは、その、置いとくとして、じゃああの音声通話の時点では……」

女「はい、『私』です」

男「でもお前ってその時、その、アレだったわけだろ?」
男「でも、俺が聞いた通話の音声ではそんな雰囲気感じられなかったんだが……」

女「それはですね、あの音声は私が合成したものをそちらに送信しただけなんです」
女「こちらの実際の音声ではありません」

もうやだこの世界……。


84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 04:15:21.27 ID:3D0J4Mbj0
男「じゃあお前は、モバイルとかなしで単独でネットに接続が出来る、ってのか?」

女「はい、私の頭部にはそのような機構も埋め込まれていますので」

あ〜、それはちょっと羨しいな、とか思う俺って厨二病かな。

男「じゃあ、俺が駆け付けた時、なんで誤魔化したりしなかったんだよ」
男「こうやって俺に大事な機密情報漏らすことに、何のメリットがあるんだ?」

女「メリット、というものは存在しません。むしろデメリットばかりです」

男「……だよな。じゃあなんでわざわざ」

女「私が作られたのは、一応は研究目的とされています」
女「それは確かに、軍事的な意図は色濃いです。それは否定しせん」
女「でも、純粋な探究心で行われた計画、でもあるんですよ?」

男「…………」


85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 04:17:51.06 ID:3D0J4Mbj0
女「私のような存在が作られた以上、いずれ人間は、
女「機械との関係を見直さなければならない日が来ます」
女「そんな時に、人は機械と、機械は人とどう付き合っていけばいいのか」
女「そこには希望もあり、また恐怖もあります」
女「そんな来たるべき『審判の日』に、人間と機械は何を選択するのか」
女「それを判断する材料として、私とあなたがモデルケースに選ばれたんです」

男「モデルケース……?」

女「紛い物の少女と、ソレを紛い物と知らされる少年」
女「そんな二人の行く末に、興味を持っている人たちもいた、というだけの話です」

男「………………」

女「どうか……、嫌いにならないであげてくださいね、『私』のこと」


87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 04:24:39.21 ID:3D0J4Mbj0
男「……俺にどうしろって言うんだ?」

女「お任せします。ただの友達としてこれまで通り接するもよし」
女「必要以上の接触を避け、今日聞いたことも忘れて、別々の人生を歩むもよし」
女「……こんな話を聞かされてなお、変わらぬ恋慕を傾けるもよし」
女「思うように付き合ってあげてください」
女「それがいずれ、人と機械の関係を決定する判断材料になるんです」

男「それは……、責任重大だな」

女「そう構えなくて結構ですよ。今のところ、それは遠い未来の話です」
女「それに、私の兄弟姉妹はたくさんいる、私のようなモデルケースだって、
女「別に私たちだけ、っていうわけでもないんです」

男「……そうか」


88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 04:27:57.99 ID:3D0J4Mbj0
女「さて、それでは今日はこの辺にしておきましょう」
女「緊急時対応人格は『脳』への負荷が強いので、明日はほぼ一日休眠を取ることにします」

男「え、そうだったのか? それは、悪いことをしたな。長々と話させちまって」

女「お気になさらず。これも必要なことでしたから」
女「それでは、また。おやすみなさい」

男「あ、あぁ、おやすみ……」

ベッドに入り、スヤスヤと寝息を立て始めた女を見届けると、俺は彼女の部屋を出た。

すると、そこには彼女の母親がいた。

女がロボットだったとすると、彼女と彼女の夫は、何者なんだろう?


89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 04:36:26.37 ID:3D0J4Mbj0
女母「今日は、ありがとうございました」

女の家を出ようとする俺に、深々と頭を下げる女母。

男「あ、いえ。えっと、その……」

女母「色々と、あなたを怖がらせるようなことも言ったと思うけど、
女母「『あの子』がこうして打ち明けるのも、それだけあなたを信頼しているから、
女母「と思っていただけると幸いです……」
女母「こんなことを言うのは身勝手だとは思うけど」
女母「今後もあの子と親しくしてやってくれないかしら」

男「……分かりました。ただ、今はまだ頭の中が整理出来てなくて」
男「まだ、今後自分の気持ちどう落ち着くかは、ちょっと分かりません」
男「それでも、あいつへの気持ちがそう簡単になくなる、とは思いません」
男「俺も、前向きにやっていこうとは思っています」

女母「そう。何と言っていいか……、本当に、ありがとう」

男「いえ。ところでその、女母さんも、もしかして?」


91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 04:43:10.98 ID:3D0J4Mbj0
女母「あ、いえ。私はそうじゃないのよ」
女母「私たち夫婦は、あの子の両親役として選ばれた被験者なの」
女母「あの子の兄弟姉妹にも、同じように家族役が宛てがわれてるわ」

男「じゃあ、女のことは、どのように思ってるんですか?」

女母「被験者とは言え、私たちも全くの部外者だったわけじゃないわ」
女母「あの子の開発に関わった技師なの」
女母「最初は、仕事の一環。作ったもののアフターケアのつもりだった……」
女母「でもね、こうして何年も一緒に過ごしてると、あの子が人間じゃないってことを
女母「忘れそうになるのよ。私たちも開発に携わっていた、ってのにね、おかしいでしょ?」

おかしいわけ、あるか……。俺だって、今の今までそんなこと思いもしなかった。

今だって、悪い夢でも見てる気分だってのに……。

女母「今では、あの子が本当に、私がお腹を痛めて生んだ子のように思えてくるの」


92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 04:48:35.23 ID:3D0J4Mbj0
女母「実はね、私、一度子供を流産してるのよ」
女母「それ以来子供が出来ない身体になっちゃってね……」
女母「だから、余計にそう思っちゃうのかしら」

男「………………」

女母「とにかく、今の私たちにとって、あの子は大事な一人娘」
女母「だから、出来ることなら幸せになってもらいたい……」
女母「男くん、あの子を、受け入れてあげてちょうだい」

男「さっきも言ったように、今後俺自身の気持ちがどうなるのか、
男「それは俺にもまだ分かりません」
男「ただ、俺はあいつに問われた時、味方でいてやる、って答えたんです」
男「だったら、その答えの責任くらいは、取るつもりですよ」

女母「……ありがとう、男くん」

男「いえ、それでは。女が目を覚ましたらよろしくお願いします」

そうして俺は、すぐ隣の自宅に戻った。

俺は、寝ようと思っても寝られないので、

そのうち俺は、寝ようとするのを止めた……。


94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 04:53:49.12 ID:3D0J4Mbj0
翌日、俺は寝不足と知恵熱(?)のダブルパンチの頭を抱え登校した。

普段から女と一緒にいることが多い俺は、それまで皆勤だった女の、

欠席の理由を級友たちに必死で誤魔化しつつ、昨日のことをずっと考えていた。

それから今日まで、俺は答えを出せずにいたのだった……。

――

キラークイーン 第三の爆弾! バイツァダスト!!

時は>>2へと戻る!



99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 05:05:05.73 ID:3D0J4Mbj0
時は女に叩き起こされ、一緒に遅めの朝飯を食っている週末へと戻る。

女「なによボーっとして、まだ寝惚けてんの?」
女「それともアタシの可愛さに見惚れてた?」

男「……まぁな」

女「……ハァ。アンタどうやらマジに半分寝てるみたいね……」
女「とりあえず一回冷たい水で顔洗ってきたらどうなのよ?」

男「そうだな、そうするわ」

言うと俺は、緩慢な動作で立ち上がり、洗面所へと向かう。


100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 05:09:54.84 ID:3D0J4Mbj0
あれから、びっくりするほど何もない。

緊急時対応人格サブルーチンとかいう、冷徹バージョンの女が出てくることもないし、

隠匿された未来テクノロジーが俺の平和な生活を脅かすこともない。

まるで、あの日の出来事が全て夢か何かだったように……。

本当に何もない。ただ一人ウジウジ悩んでる俺が、

女にどうにも気の抜けた対応しか出来ない、というだけだ。

それについて女から何か言われることはない。

こういう時にそっとしておいてやろう、なんて選択肢を選ぶあたりも、

あいつの繊細な女の子らしい一面の一つ、と言えるんだろうか……?


101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 05:14:55.89 ID:3D0J4Mbj0
濃い味なのに何故か味気ない食事を終えると、俺は再び自室へと戻った。

男「ぁあ〜、ねむ……」

最近は暇さえあれば寝ているな。何せ寝ている間は悩まなくて済むから。

悩んでいる事柄の夢を見てうなされる、なんて出来過ぎなことも起きないし、

寝ている間だけが俺の平穏な気がするぜ……。

女「ちょっと男、ごはん食べてすぐ寝ると牛になる、って言うよ?」

男「……んな非科学的なことあるわけねぇだろ、バーカ」

科学の子相手に俺は一体何を言ってんだか……。

女「ねぇ、こんな天気いいのに惰眠貪るだけなんて勿体無いよ」
女「アタシが付き合ってあげるからさ、一緒にどっか行こ?」

男「るえぇ、帰れ。俺は寝る……」


102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 05:19:45.37 ID:3D0J4Mbj0
しかし女は引き下がらない。

女「寝過ぎは身体に悪いんだぞ」

男「……あまんじて受け入れよう」

女「そうやって引き込もってると心まで不健全になっちゃうぞ」

男「何をおっしゃる、俺は心も身体も元気ハツラツですよ?」

すると女は、俺が被っている布団をガバッ、と取り去ると、

俺の上に覆い被さって、俺の目を大きめの瞳で見詰めてきた。

その射貫くような視線が、一週間前の女とダブって、

俺は思わず息を飲んだ……。


104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 05:28:53.05 ID:3D0J4Mbj0
女も俺も微動だにしない。というより、俺にはそうするしかなかった。

俺の顔にかかった長い髪の、シャワーを浴びたばかりらしいシャンプーの香りに

ドキリとするが、それ以上に俺は、今の女が、怖かった……。

女「……嘘、ついてるでしょ」

男「え……?」

女「なんか男、何かに悩んでるんだけど誰にも相談出来なくて、自分でも答えが出せなくて」
女「それで仕方ないから丸投げしてふて寝でもしよう、ってそういう顔してる」

男「……どんな顔だよ」

びっくりした。まさかこうも的確に俺の今の状態を言い当てられるとは。

付き合いが長いとそんなことまで分かるもんかね……。

それとも、今の女もまた、女であって女じゃない、とか。なんてね。


105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 05:35:07.01 ID:3D0J4Mbj0
女「ねぇ、なんか悩んでんなら相談してよ」
女「アタシ、男と違ってそんな頭良くないけどさ、ちょっとくらいなら助けになるよ?」
女「最近の男、絶対変だったって」

そうか、今まで触れられずにいたことを、今になって……、と思ったが、

言わなかっただけで気にしてなかったわけじゃないんだな。

腫れ物みたいに扱われてたのは一体どっちなんだか……、情けねぇなぁ、俺。

ただ、いつまでもマウントポジション取られたまま、ってのは気に喰わないので、

まずはそれを取り返すことにしよう。

女「――っ!? キャ!!」

俺は起き上がりつつ女を引き込み、突然のことに動けない女の上に、

先程まで俺がそうされていたように、覆い被さってやった。


108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 05:40:59.81 ID:3D0J4Mbj0
女「い、いきなり何すんのよ、バカ!」

口では気丈に振る舞っているが、目は泳いでるし身体も微妙に震えてるみたいだ。

やっぱこういうの慣れてないのかな。そういや『こいつ』とここまで密着するのって、

ガキの頃以来の気がする。『アイツ』の言葉を真に受けるなら、やっぱ『まだ』なんだろうか。

男「お前さ、結構可愛いな」

女「ハァ!? だからいきなり何言い出すのよ、っていうかさっさと退いてよ!」

男「いや、男に押し倒されて震えてるのって、なんかいかにも処女です、って感じで可愛いなと」


109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 05:53:32.20 ID:3D0J4Mbj0
女「……バカじゃないの?」

男「ひどいな、せっかく俺が素の感想を言ってやったってのに」

女「とにかく、冗談はいい加減にして……」

男「いや〜、これだけ可愛い女の子と密室で二人っきりだと、男としてクるものがあるよなと」

女「…………」

ヤバイ、これ以上やるとマジにシャレにならなくなりそうなのでこの辺で勘弁してやろう。

男「分かったか女〜、ダウナーな♂ってのは何しでかすか分からないんだからな、少しは自重しろ自重」

言いつつ俺は、女の上から退けると、すぐ横に腰掛けた。


112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 05:59:58.90 ID:3D0J4Mbj0
男「俺ってさぁ、そんなにいかにも悩んでますって顔してたか?」

女「……まぁ、アタシが分かるくらいには、ね」

男「それは、随分とご注視してらっしゃることで」

女「別にそんなんじゃぁ……」

男「お! ツンデレのデレが出たな、遂に女も幼馴染キャラの極意を会得したか」

女「……バカじゃないの」

男「それ地味に傷付くんだがなぁ。じゃあ女、一つ質問していいか?」

女「……なに?」

男「お前さ、俺のことどう思ってんの?」

女「………………はぁ?」



113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 06:05:11.57 ID:3D0J4Mbj0
女「アンタ……、まさか今までそんなことで悩んでた、なんて言わないでしょうね」

疑問符をつけずほぼ断定しているのが怖い……。

男「半分正解、かな」

言うと女は盛大な溜め息をつき、

女「ハァ……、アンタやっぱりバカだわ、頭いいけどバカだわ」

男「悪ぅございましたね。そのニュアンスで言うと♂ってのはみんなバカなんですよ」
男「どうだ、開き直った俺に勝てるとでも思うたか!」

女「………………で、もう半分は?」

スルーされてしまった。ヤバい、さっき押し倒した時のアドレナリンのせいで、テンションがヤバい。

男「……俺が、お前をどう思ってるか、かな」

女「――――っ!」


114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 06:11:21.90 ID:3D0J4Mbj0
女「で……、結局どうなわけ?」

男「そっちが先に答えてくれる、って気は?」

女「ない」

即答ですか、そうですか……。

俺は、決心つけるように一息つくと、一気にまくしたてた。

男「はぁ……。はいはい正直好きですよすっごい好きですよ、
どんくらい好きかって言うとそりゃあお前、
お前が第三次世界大戦で核ミサイルの発射ボタン押して人類滅亡させたりしても
構やしない、ってくらい好きだな、例えがよく分からないのは
スルーしてくれとにかくそれくらい好きだ、
これでどうだ満足かえ? おい」

女「…………本っ当によく分かんない例えね」

男「で、お前の返事は?」

女「そうねぇ、じゃあとりあえずキスして」

男「はぁ?」

女「嫌だったら引っ叩く、嫌じゃなかったら引っ叩かない。それでいいでしょ?」

ウゼェ……。


115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 06:16:52.57 ID:3D0J4Mbj0
男「なんだそりゃ、スィーツ(笑)かよ、気取ってんじゃねぇぞ」

女「随分古い単語引っ張ってくるのね」
女「いいじゃん、アタシもテンション変になってんだから」

男「アタシ『も』ってなんだよ、『も』って……」

女「だって声震えてるし、なんかそっちもテンション高そうだな、って」

見透かされてらぁ。

女「いいからほら、ん!」

言いつつ唇突き出してくる女。アヒル顔になっていないのは評価してやらんでもないぞ。

男「ええぃくそっ! こんなの絶対後から思い出して布団被って悶絶したくなるような黒歴史になるってのによ!」
男「よ〜し俺も♂だ、覚悟決めたぞ、やるったらやるぞ、恥ずかしくなって止めてほしいなら今のうちだぞ!」


116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 06:22:31.39 ID:3D0J4Mbj0
それでも引く気配のない女。

仕方ない、こうなったらやるしかないか。ったく、これなんてケータイ小説?

俺はぎこちない動作で、女の肩と後頭部をそれぞれ手で支えると、

そのまま自分の頭を女の頭に近付けていく。

最早目前、というところで、一瞬思い止まる。

が、俺は、軍事用ソルジャーアンドロイドとか諜報ロボットとかセクサロイドとか、

ヒトとマシンの未来を決めるモデルケースだとか、そういうの一切合切を頭から消し飛ばして、

齧り付いた。

いや、自分でもそうとしか言えないくらい、齧り付いた。

ここまでのやりとりよりもこの瞬間が黒歴史になりそう、ってくらい無様だった。

目を閉じて待機していた女も、その瞬間は流石に目を見開いた。目があってしまった……。


117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 06:27:19.75 ID:3D0J4Mbj0
しかし次の瞬間には、女は身を委ねるように目を閉じると、

肩に置いた俺の手を取り、指を絡めるように手を繋いできた。

それから十秒、三十秒、あるいは十分くらいはそうしていたんじゃないか。

マジで時間の感覚がなくなる、ってあるんだな、ビックリだ。

とにかく、それくらい長く感じられる時間そうしていて、

最後にはどちらからともなく身体を離した。

ヤバい、女の顔真赤じゃん、俺の顔もきっとそうだと思うと余計に恥ずくなってくるぜ。

が、それ以上に今の後の『段取り』への期待で胸が踊る!

そんな俺の気配を感じ取ったのか、

女「はい、おしまいっ!」

男「いやなにが!? 俺まだ何もしてないだろうが……」

女「だって目が野獣みたいになってたし……」


118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 06:35:04.71 ID:3D0J4Mbj0
男「んな無体な……」

女「いいのっ! そういうのはもっとお互いをよく知ってからで……」

男「俺よりお前を知ってる男が他にいるのかよ」

女「……とにかくだめ! で、今日はアタシの買い物に付き合うこと! OK?」

男「……はいはい、分かったよ」

女「じゃあさっさと着替えて準備する! 早く!」

まったくやかましい女だ、本当に。

でも、それが異常に心地良く感じちまう辺り、俺はどうやら完全にこいつにやられたらしい。

俺には、世界が今後どうなるかとか、そういう難しいことはよく分からない。

俺に出来ることは、こいつと一緒にいること、ただそれだけだ。

だったら構うもんか、俺は『アイツ』に言っちまったからな。

『こいつ』の味方でいる、って。じゃあ、俺はただそれを全うするだけだ。

まったく、今は手を引かれてばっかだが、いつかは俺がこいつの手を引いてやりたいもんだ……。


119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 06:36:18.17 ID:3D0J4Mbj0
と、こんな感じで前半が終わりました
これで一区切りついたと思います

後半はこっから急転直下ですが、正直疲れました……
しかし寝たら落ちそうだ


120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 06:39:49.54 ID:3D0J4Mbj0
落ちたら立て直して続きを書くべきでしょうか?


121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 06:43:16.16 ID:h28IUOwjO
書いてくれると有難い
けどその前に落とさせやしない


122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 06:44:08.45 ID:3D0J4Mbj0
ありがとうございます。

それでは一度寝ますので、もし落ちてたら同じスレタイで立て直します

よければ見てやってください、それではノ


123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 06:45:38.32 ID:h28IUOwjO
おやすみー


124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 07:00:57.02 ID:Qa6XVldHO
乙!
期待して待ってるぜ。


141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 14:25:32.25 ID:3D0J4Mbj0
深夜、某所。

女の家に立つ、二人の人物。

そのうち一人は、露出の高い服で健康的な肢体を晒し、ギターケースのようなものを小脇に抱えた少女。

そしてその少女を携えた、ヨレた白衣の中年の男。

白衣「ふむ……、ここか。アーシア、ここが何体目の『キャリア』だ?」

白衣の男は女の家を一瞥すると、傍らに立つ少女、アーシアに問うた。

アーシア「238体目だ――、博士」

白「……それで、確か『女』という名前だったかな」
白「果たして彼女に『ホスト』としての適正があるだろうか?」

ア「それは確認してみないことには分からない――」
ア「ただ、今まで220体がキャリア止まり、確率は低いんじゃないか――?」

白「そう言うなアーシア、聞くところによるとここのガイノイドは、何やら面白いことをしてるそうじゃないか」
白「そういう話を聞くと、何か起こりそうな予感がするもんだよ、フフッ」


145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 14:34:42.08 ID:3D0J4Mbj0
そんな二人に忍び寄る影。

派手な服装の軽薄そうな若者だが、その顔には僅かの精気も感じられない。

無機質とも言える表情で、二人に目を据え離そうとしない。

白「……まったく。せっかく『発症』した残り18体に接触しようとしても、
白「すぐこうやって出歯亀がやってきやがる、少しは自重してほしいもんだ」

言うなり白衣の男は、着ている白衣に手を突っ込み、懐から黒光りする鉄の塊を取り出す。

銃だ。ただし、いわゆる火薬を爆発させて弾丸を飛ばす、一般的な銃とは違って見える。

白「アーシアッ! 私が離脱するまでの間ちょっと遊んでやれ!」

ア「了解、マスター。恐らく他にまだ数体いるだろうから、退屈はしそうにない――」


149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 14:43:09.93 ID:3D0J4Mbj0
若い男に向けて発砲しながら、後退する白衣の男。

その発射音は火薬が燃焼する時のそれではなく、消音器が働いているかのように静かだった。

弾丸を受けた若い男は、一瞬よろめくが、倒れる様子はない。

そして、白衣を敵性と判断したのか、一気に間合を詰めるべく駆け出す。

が、白衣を庇うように男の前に立ち塞がるのは、アーシアと呼ばれていた少女だ。

彼女は抱えていたギターケース様のソレを振り被ると、そのまま男に叩き付けた。

それを真正面から受けた男は、およそ人と楽器ケースが出す音とは思えない凄まじい音を発しながら、錐揉みしつつ数メートルは吹っ飛ばされた。


151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 14:54:12.01 ID:3D0J4Mbj0
そうしている間に、周囲を窺いながらジリジリと後退する白衣。

一方アーシアは、抱えていたケースを地面に置き、その蓋を開けた。

中に入っているのはもちろんギターなどではなく、何か巨大な長方形の鉄の『箱』と、

白衣が持っているものより幾分大き目な、短機関銃様の銃だった。

ア「博士、これを」

その銃を白衣に向けて投げ渡すとアーシアは、巨大な『箱』の、

穿たれた二つ穴のうち一つに右手を突っ込んだ。

すると、金属的な音を響かせながら、アーシアの腕と『箱』はガッチリ固定され一体となった。

箱の取っ手を左手で持って提げながら、アーシアもまた周囲を窺う。

すると、先程の男は、緩慢な動作で起き上がると、アーシアへと目を据えた。

そして気が付けば、周囲には他にいくつか、同じような冷たい視線が集まっていた。

ア「機影確認、その全てを敵性と判断、数は五。マスター、命令を」

白「……よし、やっちまえ」

その一言を合図に、六つの『ヒトガタ』は動き出した。


153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:03:03.63 ID:3D0J4Mbj0
もっとも脅威度の高いはずのアーシアには目もくれず、五体は全て白衣に殺到する。

白衣はアーシアから手渡されたばかりの機関銃で牽制しながら後退していく。

またアーシアは、驚異的な速度で白衣のもとへ駆け寄ると、最も手近な敵に箱を叩き付ける。

そして、箱から轟音が響く。箱の先端の穴から飛び出た杭が、敵を穿ち吹っ飛ばしたのだ。

敵の身体には大穴が開き、アーシアの脚を支えるアスファルトが軋む。

先程のケースでの殴打とは比べ物にならない勢いで錐揉みする敵の一人。

そうして彼は、沈黙した。二度と立ち上がることはなかった。


154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:10:02.10 ID:3D0J4Mbj0
残った四体は、どうやら最優先目標を修正したらしい。

四つのヒトガタに囲まれたアーシアは、しかしその巨大な得物すらものともせず、

華麗とさえ言える体捌きでその包囲を抜けると、白衣とは別方向へとかけていく。

役十メートルという高さの跳躍をしつつ、敵を白衣から遠ざけるアーシア。

彼女に飛びかかってきた敵の一人をハイキックで蹴り上げると、落下してきた敵に下から杭を打ち込む。


155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:15:38.95 ID:3D0J4Mbj0
残り三体、しかし敵は怯まない。

三体は同時にアーシアへと襲い掛かる。

アーシアは敵に、左掌底、蹴り、そして右の得物での殴打をほぼ同時に食らわすと、

そのうち一体、民家の塀にめり込むように叩き付けられた敵にむけて、杭を穿つ。

残り二体。

このままでは勝目がないと、敵はここに来て間合を取った。

が、アーシアの圧倒的速力から逃れることは出来ず、後退しているところを足払いをされた敵は、体勢を崩し無様に倒れ伏す。

そうしてアーシアの武器によって、呆気なく沈黙する。


158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:23:57.75 ID:3D0J4Mbj0
残り一体、それは偶然にも最初に彼女らを襲ってきた敵だった。

一対一でありながら、まるで八方塞がったかのように動けない敵。

そして、圧倒的優位に立っていながら、それでも油断せず周囲と敵を窺うアーシア。

敵は最初にアーシアからの殴打を受けたダメージが残っているのか、

他の四体に比べ明らかに精彩を欠いていた。

ヒトガタは、恐怖も諦観もない虚無を湛え、無言のままアーシアへと飛びかかる。

アーシアもまた、そんな敵に無情に止めを刺す。

そうして訪れる夜の静寂、そして、遠くから聞こえるサイレンの音。

付近の住民が通報したのだろう、今日は少し派手に暴れすぎてしまったらしい。

一度周囲に注意を払うが、敵の気配がないことを確認したアーシアは、

白衣の男を追って夜の闇へと消えていった。

閑話休題。


160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:30:26.15 ID:3D0J4Mbj0
女に告白をして数ヶ月が過ぎた。

その間、本当びっくりするくらい何もなかった。

極普通の幼馴染カップルとして、至極平和な日常を送っていた。

その片割れが実はロボットだとか、国家的陰謀が絡んでるとか、

そういうのが全部なかったみたいに、とにかく平和だった。

自分としてはそれなりに悲壮な覚悟をしたつもりだったので、ちょっと拍子抜けだが、

これはこれで悪くない、退屈というのはある意味幸福なのだ、なんて思っていた。

だが、『その日』、俺の日常は崩壊した……。


164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:36:17.86 ID:3D0J4Mbj0
その日の放課後、俺と女はいつものように、他愛ない雑談をしつつ帰っていた。

女「ねぇ、今週末はどこ行こっか」

男「またかよ……。これだけ毎日会ってんだからいい加減デートにも飽きる頃だろ」

女「何言ってんのよ、毎日のように一緒にいるからこそ、
女「生活にメリハリをつけるのが長続きの秘訣でしょうが」
女「まったく恋愛ってもんが分かってないなぁ、男は」

男「そりゃ悪ぅございましたね。どうせ俺はつい最近まで彼女いない歴=年齢の童貞で
男「女心? なにそれ美味しいの? な男ですよ」
男「っていうか俺としては家でゆっくり過ごしたいんだがね」

女「え〜、そんなの詰まんないじゃん」


166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:44:09.93 ID:3D0J4Mbj0
男「そんなことより俺はだな、そろそろ恋人らしい蜜月の時間を過ごしたいのだよ」

女「――! ばっ、ちょっ、突然何言い出すのよ!」
女「そんなんアタシたちにはまだ早い! だから我慢!! OK?」

男「んな無体な。そんなだからクラスで他の女子にいいように遊ばれるんだよ純情チェリーガール」

女「なっ――! ……あ、あんたは、そういうことさせない女の子じゃあ不満なわけ?」

男「その言い方は卑怯な気がするな……。はいはい分かりましたよ冗談ですよ、だからそうマジな顔になるなって」

女「………………」

男「な、なんだよ、本当に怒ったのか? 冗談だって言……」

いや、違う……。

この顔は、『女』じゃない、『アイツ』の時のだ……。


167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:48:29.36 ID:3D0J4Mbj0
この顔は、本当に久し振りだ。あの日から一度も見たことがなかったからな。

あれは全部白昼夢か何かだったんじゃあ、なんて本気で思い始めていた矢先にこれだ。

まったく嫌になるぜ……。

女は俺に目もくれず、じっと正面を見据えていた。

そこには、俺たちと同じくらいか少し上の女の子がいた。

なんか妙に肌を強調した服装で、つい目のやり場に困ってしまう。

女「……下がってください、男さん」

男「……おい、あいつが一体どうしたってんだよ?」

女「分かりません、ですが何か嫌な感じがします……」

嫌な感じ、ねぇ。その物言いは無機質なコイツには不釣り合いに思えた。


168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:54:38.09 ID:3D0J4Mbj0
???「女さん……ですね?」

女「……そうですが、何かご用ですか?」

???「ここでは人の目がありますから、場所を移しませんか」
???「ご安心を。貴女が私の指示に従ってくれている間は、
???「少なくともそこの男性に危害を加えるつもりはありません」

――!?

それはつまり、女がこいつに従わなければ、その時は俺がどうなってもしらないぞ、

ってことかよ、ったくふざけやがって。

男「おい! お前は一体何なんだ!」

???「あなたには関係のないことです、少し黙っていて頂けませんか?」
???「あまり私を煩わせると、力ずくで黙って頂くのもやぶさかではありませんよ?」

男「――っ!」


170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 16:03:13.98 ID:3D0J4Mbj0
女「……分かりました、従います。ですから男さんは解放してあげてください」

???「それは困ります。今ここでその方を逃がしては、貴女への質草がなくなってしまいますからね」

言うにことかいてモノ扱いかよ……。今のお前らの方がよっぽどモノっぽいじゃねぇかおい。

そして俺たちは、人通りのない路地裏へと入っていった。

しかし、こいつは一体何者なんだ……?

女が警戒するくらいだ、もしかしたら生身の人間ではないのかもしれない。

確かにこいつには、今の女と同じ雰囲気を感じるが……。

???「これだけ人の目がなければ十分ですね」

女「……それで、あなたの目的は何なんですか?」

???「目的ですか? そうですね、端的に言えば女さん、貴女に死んでもらいたいんです」
――
さっきさるさん食らった……


171:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 16:08:36.32 ID:3D0J4Mbj0
こ、こいつは今何て言ったんだ……?

死んでもらう? それはつまり、こいつは、女を殺そうとしてる、ってことかよ?

男「な、何ふざけたこと言ってやがんだお前!?」

俺は思わずそう叫んだ。すると、そいつは元いた場所から一瞬消えた、

そう思った次の瞬間、そのしなやかな細腕からは想像も出来ない怪力で、

俺は首を締め上げられていた。

男(なっ! み、見えなかった……、いつの間に近付かれたんだ……)
男「あっ――ぐっ――、は、放せ……」


172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 16:17:06.04 ID:3D0J4Mbj0
???「黙っていてください、と先程も申し上げたはずです」
???「ご理解頂けないようでしたら、実力行使させていただく他ありません」

男「――くっ、クソ!」

すると女はそいつの腕を捕み、俺の首から引き剥がした。

そして、俺を庇うように俺とそいつの間に割って入った。

女「とりあえず、お話は伺います。ですから男さんに手荒なことはしないでください」

……今の『女』がこんなに頼もしく感じるなんて、思いもしなかったな。まったく我ながら情けない。

女「それで、どういう事情があるのかお聞かせ願えますか?」
女「あなたは生身の人間ではないようですが、計画の関係者というわけでもなさそうですね」
女「一体何者で、どういう目的があるのですか?」

???「事情? 貴女に聞かせる事情なんて私にはありませんよ」
???「ただ、貴女の機能を停止させる、それが私の仰せ付かった命令です」

言うなりそいつは、ヒトならば絶対に出せないであろう脚力で、女へと襲い掛かった。


195:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 21:02:04.76 ID:3D0J4Mbj0
突き出された相手の拳を、女は片腕で軽くいなすと、

そのまま無防備な相手のホディへと自分の腕を伸ばす。

が、相手はそんな女の巧みな体捌きにも難なく反応し、

女の腕を躱すとその勢いを殺さず、そのまま女の胴へと蹴りを見舞った。

女「――ぁぐっ!」

敵の蹴りをまともに食らってしまった女は、薄汚れたビルの壁面に

半ばめり込むように激突し、そのまま地面にうずくまった。

ヤバいぞ……、女の動きも達人じみてるが、敵はそもそも動きが桁違いだ。

女「男さん!! そこを……、動かないで下さい……」

俺が思わず動きだそうと脚に力を込めたのを、女は見逃がさなかったらしい。

俺は、何かしなければ、と思いながらも、それ以上動けなくなってしまった。

そりゃそうだ、俺がここで何かしたところで、事態は悪い方向にしか進まない……。


199:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 21:11:56.68 ID:3D0J4Mbj0
???「それでいいんですよ、男さん。あなたはそこでじっと見てるしかないんです」

男「――っ!」

女「……ご心配なく、私はこのくらいのダメージでは何ともありませんから」
女「それよりも貴女、見ての通り私と貴女の実力差は歴然です」
女「それなら、わざわざ人質などいなくても、その実力で私を圧倒すればいいのではないですか?」
女「もし男さんをこのまま逃がしてくれるというなら、私は逃げも隠れもしない、と確約します」

男(――!? こ、このバカ、何考えてやがる!)

???「自分でおかしなことを言ってる、とは思いませんか、女さん?」
???「この場で最も優位に立っているのは私なんですよ、貴女に交渉の余地があるとでも思ってるんですか?」

女「なら、一つ聞かせてください。私を破壊したあと、男さんをどうするつもりなんですか?」

???「さぁ、それを貴女に聞かせる義理は私にはありません」

それを聞いて、心無しか女の表情が険しくなったように感じられた。

それは『今の』女としては少々違和感のある顔に思えたが、果たしてどういう意図なのだろうか。

かと思えば、女は突然相手に向かって跳んだ。

それまでの受け身からは考えられない、渾身の跳躍だった。


202:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 21:22:59.88 ID:3D0J4Mbj0
女「男さんっ! 私が時間を稼ぎますので、その間に人通りの多いところまで逃げてください!」

言うなり女は相手に掌底を打ち込む。

敵は易々とそれを回避するが、それでも怯むことなく女は追撃をかけるべく敵の脚を払った。

敵は後方へ退くことでそれも躱すが、女は足払いの勢いのまま一回転し、今度は敵にハイキックを見舞う。

が、それを完全に見切っていた敵は、高く掲げられた女の足を掴むと、それを軽々と投げ飛ばした。

女「ぁうっ!!」

再びビルの壁に叩き付けられた女は、そのまま崩れ落ちた。

今度ばかりはダメージが蓄積されすぎたのか、すぐには起き上がれない。

男「女っ!」

???「黙ってみていてください、死にたいんですか?」

その一言に俺は思わず怯んでしまった。

敵は倒れ伏す女に向かって悠々と近付いていくと、女を地面に仰向けに寝かせ、

そして腕を高く振り被った。

男「!? や、やめ――」

勢い良く振り下された腕が、女の胸に突き立てられた。


204:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 21:30:18.86 ID:3D0J4Mbj0
その瞬間、女の体から機械の駆動音のようなものが響いたが、

次第に弱々しくなっていき、そしてすぐ沈黙した。

男「お、女……」

???「まだ終わっていません、静かにしてください」

そいつはぐったりした女の体を引っくり返すと、女の長い髪を避け、うなじの部分を露にする。

そうして女の首の後ろの皮膚を、勢い良く引き千切った。

男「――なっ!」

何を、やってやがんだ、こいつは……。

内部の露になった女の首にはケーブルを挿すプラグのようなものが備わっていた。

そいつは自分の首の、同じ辺りに手を伸ばすと、そこから一本のケーブルを手繰り寄せた。

そして、それを女の首のプラグに挿入する。

すると女は、口から白っぽい液体を吹きながら、目を見開き痙攣しはじめたのだ。

男「お、おいっ! 一体何やってんだテメェ!!」

???「黙りなさいっ! 気が散ります!!」
???「この子の『脳』が完全に焼けてしまっても構わないんですか!?」

男「――っ!?」


206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 21:37:27.28 ID:3D0J4Mbj0
しばらくして女の痙攣が収まると、そいつは女からプラグを抜き、自分の首へと収納した。

???「終わりました……。あとは煮るなり焼くなりどうとでもしてください」
???「ただネクロフィリズムを満たすのはやめておいた方がいいですよ」
???「この状態でも多少は外部の様子を窺っていますから」

男「だ、誰がんなことするかよ!」

???「しばらく待てば『彼ら』が回収にやってきて修理に回されることでしょう」
???「あなたとの記憶は恐らく無事ですから、安心してください」

男「おい、お前の目的は何なんだ……」

???「それは今は言えません。いずれ分かることです」
???「ただこんな時、私のマスターなら『歌でも一つ歌いたい気分』とでも言うんでしょうね」
???「それでは、ご機嫌よう」

それまでずっと無表情を貫いていたそいつは、ここに来て突然不適な笑みを受かべつつ言うと、

そのままツカツカと去っていった……。


209:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 21:44:54.90 ID:3D0J4Mbj0
そいつの姿が見えなくなった頃、女から再び駆動音のような音が聞こえた。

女「…………男、さん?」

男「――!? 女っ!」

急いで女のもとへ駆け寄ると、女は目だけで俺の方を見ると、弱々しい声で言った。

女「どうも……見苦しいところをお見せしてしまって……」

男「このバカ! んなのどうでもいいんだよっ! それよりお前、大丈夫なのか?」

向こう側が覗けるくらいの大穴を胸に穿たれた奴に、大丈夫かはない気もしたが、俺は訊かずにはおれなかった。

女「はい……、致命的な損傷は免れましたが……、先程ウィルスか何かを入れられたらしく、」
女「駆動系が制御出来なくて体が動けません……」
女「まことに申し訳ありませんが、私をうちまで送っていただけますか?」

そして俺は、胸に風穴空いた女の子を背負って帰路に付くことになってしまった……。


211:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 21:49:49.32 ID:3D0J4Mbj0
とりあえず女には俺の上着を着せ、おぶって連れて帰ることにした。

これなら傍目にはそれほど変には見えな……ヤバい俺も色々と麻痺してきたかも。

人間社会に溶け込むのが目的である以上当たり前のことだが、

女の体はロボットである、という先入観に反して軽かった。

そして、あんなことがあった後でこんなことを思うのも何だが、柔らかかった。

あんな大立ち回り演じてたのが嘘みたいに、極普通に女の子していた。

それ以上その感覚に意識を向けていると、邪念に取り憑かれてしまいそうだったので、

俺は先程までの出来事を反芻しながらひたすら意識を女の体から遠ざけた。


213:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 21:54:04.82 ID:3D0J4Mbj0
俺が女の家に上がろうとした時、女は突然こんなことを言った。

女「あ、すみません。よければ男さんのうちに寄っていただけませんか?」

男「ん? それは別にいいけど、なんでだよ?」

女「男さんの部屋には、大型の端末がありましたよね。あれを少しお借りしたいんです」

それは別に構わないが、あんなもので一体何をするんだろう……。

とにかく俺は女を背負って自宅へと入っていった。

普通の家なら、こんな状態の女の子を連れて入っては家族に心配されるだろうが、

その点に関しては幸いなことに心配ご無用なのだ。


214:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 21:58:12.71 ID:3D0J4Mbj0
俺の両親は数年前に亡くなっている。

最初は親戚のうちに引き取られることになっていたのだが、

このうちへの愛着と、あとは隣家の誰かさんのために、俺はこのうちに残ることを望んだ。

幸い隣には都合のいいことに家族ぐるみの付き合いのある一家がいたので、

近しい親戚のいなかった俺は比較的あっさりと今の生活を手に入れた。

女が俺のメシ使いなるものをしていた背景がそれなのだが、

こうも都合良くことが進んだのも、もしかしたら女の背後の連中が関係していたのかも、

と今にして思うことがある。

とにかく俺は、一人で住むにしては少々広すぎる家へと女を運ぶ。


216:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 22:03:42.08 ID:3D0J4Mbj0
女「それでは、このケーブルを私とその端末に繋いでください」

部屋に運ばれるなり、女は俺に自分の鞄を漁らせ、そのケーブルを出させた。

途中、どう見ても生理用品入れです本当に……、な感触の小さいポーチがあったが、

最近トラブル続きでスキルを身に付けた俺は華麗にスルーする。

ん? だがロボットに生理ってあるのか? いやでも人間社会に溶け込み本人まで騙すんならそれくらい……

って待て、スルーしろ俺。やましい方向じゃないにしてもこの議題は色々とヤバい。

男「……これは」

片方の端子は、キーボードやマウスなどを端末に取り憑けるための一般的な形状だが、

もう一方は見たこともない形状をしていた。こちらを女の首筋に繋げばいいのか……。


219:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 22:09:43.04 ID:3D0J4Mbj0
一方を俺の端末に繋ぎ、もう一方を挿すべく女の首筋に手を伸ばす。

男「――っ!?」

これは、見ない方がよかったな……。

赤黒い血で濡れた端子挿入口と、無理矢理千切られた無惨な皮膚の断面、痛々しいことこの上ない。

いくらこいつが人間じゃなくて、今は痛みを感じてないらしくとも、

こんなものを見て平気な奴がいるとは思えないし思いたくない。

男「……挿入口が三つあるけど、どれだ?」

女「私の右手側にあるプラグに挿してください」

男「……分かった」

血でベッタリと濡れた首筋を、見ないように指先の感覚だけで探り、女の右手側の穴に端子を差し込む。

女「それで、端末の電源を入れてください……」


222:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 22:12:02.08 ID:3D0J4Mbj0
すると、見たこともないOSの起動画面になった。なんだこれは。

男「なぁ、これって……」

女「それは私の『脳』のOSです」

男「この、GDA2.0ってのは何の略だ?」

女「GreatDoctorAzuma ver2.0です」

男「………………」


225:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 22:16:33.52 ID:3D0J4Mbj0
女「ちなみに男型だとADA2.0です」

男「なんとなく想像はつくが、その心は……?」

女「AdmirableDoctorAzuma ver2.0です」

男「………………」


228:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 22:22:19.76 ID:3D0J4Mbj0
起動したOSは、黒い背景に白文字のシンプルなインターフェイスだった。

キャラクタベースインターフェイスか……、前世紀の遺物かよ。

女「起動したみたいですね、それでは私の言う通りに操作をしてください」

俺は女の言う通りに文字を入力していく。

何らかの命令文なのだろうが、見たこともないものばかりで俺には意味が分からなかった。

女「ありがとうございます、あとは私一人で出来ますので、男さんは休んでいてください」
女「しばらくこの端末のコントロールを独占してしまいますが、構いませんか?」

男「あぁ……、いいぞ」

すると、俺が操作していた時とは比べ物にならない……。

っていうか人間が操作するのとは訳が違う速度で、画面上を文字が流れては消えていった。


229:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 22:27:58.71 ID:3D0J4Mbj0
それをぼんやりと眺めていると、突然女が苦悶の表情を受かべた。

女「うぁ! ぅう……ぁう……うっ!」

男「お、女!? どうしたんだ!」

何が何だか分からないが、女の首に繋がっているケーブル、これが元凶に思えてならない俺は、

それを抜かんとケーブルに手を伸ばす。すると、それまで微動だにしなかった女が、手を伸ばし俺の手を掴んできた。

男「――っ!?」

女『やめたまえ、少年。手荒なことをするとこの少女のメモリが消失してしまうぞ?』

その声は確かに女の口から発せられていた。だがその口調は、普段の女のものでも、

緊急時対応人格サブルーチンなる『女』のものとも違っていた。

人間らしい感情は感じとれる。だが、それはどちらの女とも似わない、不適なもののようだった……。


230:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 22:37:06.58 ID:3D0J4Mbj0
女『フハハハハハハハハ!』
女『やっとで『ホスト』と接続《ネット》出来たぞ、いやぁ実に長かった』

男「な……なに?」

女は無表情のまま、高笑いをし、そして不適な口調でまくしたてる。
そして俺の方を目だけでギョロリと見詰めた。

女『フムフム、君が男くんかな? いやぁ、先程は私のアーシアがお邪魔したみたいで、悪かったね』
女『しかし私はどうしてもこの子とネットする必要があったのだよ』
女『そのために実に手間取ったが、どうやらその甲斐はあったようだな』

男「お、お前は一体誰なんだ! さっき女を襲った奴と関係があるのか!?」


232:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 22:42:31.46 ID:3D0J4Mbj0
女『関係があるもなにも、アーシアをけしかけたのは私なのだよ?』
女『ま、それは君の知る由のないことだったね、すまないすまない』
女『彼女の応対はどうだったかね? 私がしつけたんだが、何か粗相をしなかったかな?』

粗相……だと? あれをそんな一言で片付けるつもりかよ、こいつは……?

女『いやはや彼女はどうも私といる時とそれ以外で、人格サブルーチンを切り替えてる節があってね』
女『私もそちらにお邪魔した『アーシア』がどんな感じだったのか把握していないんだよ』

男「て、てめぇ! あんなことしておいて、知らねぇで済ますつもりなのかよ!?」

女『あんなこと? 彼女は態度はともかく命令には忠実なはずなんだが……う〜む』

そいつはしばらく悩んでいたようだが、すぐに合点がいったのか、

女『あぁ、なるほどそういうことか。いやいや、その女さんを襲えってのは
女『私の命令でね、彼女はそれに従ったまでなんだよ。誤解を招く表現だったか、すまないね』

こいつ、どこまでもふざけやがって!


233:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 22:47:55.47 ID:3D0J4Mbj0
女『う〜む、それじゃあこれで手を打とう!』
女『先程のお詫びに、私が君の疑問に答えて差し上げよう、これでどうだね?』

男「――くっ!」

ふざけた野郎だ、まったく頭にくる。

だが今は情報が必要だ、聞き出せるだけ聞き出しておきたい……。

男「てめぇは誰なんだ、なんで女にこんなことをしたんだ!」

女『おいおい、同時に複数質問をするのは無礼ってもんじゃないかい、男くん?』
女『まぁ今回は特別に答えてやらんでもないさ。といっても、私が何者かについては答えられないけどね』

男「くそっ!! 馬鹿にしやがって!」

俺は再び女の首筋に手を伸ばす。すると、女の手がまたしても俺の手を掴み、

ギリギリと締め上げていく。

女『だからやめとけ、っつってんだろうが物分りの悪ぃガキだな、おい』
女『今その嬢ちゃんがどうなるかは、オレの胸三寸にかかってる、って理解してねぇのかよ?』


236:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 22:52:55.79 ID:3D0J4Mbj0
男「なっ!?」

いきなり口調が粗野になったぞ。だがそんなことよりも、俺には訊くべきことがあった。

男「そりゃあ一体どういう意味だ、え?」

女『だからよぅ、オレがその気になりゃあその嬢ちゃんの脳を、
女『今すぐこんがりローストしちまうのも楽勝なわけよ、分かる?』
女『テメェに今出来ることは大人しくオレの話を聞くことだけなんだよ』
女『いい加減その辺理解しろよ、これだからガキは嫌なんだよ』

男「…………っ!」

女『で、オレがなぜこんなことをしたか、についてだったな、え?』
女『一言で言やぁ、嬢ちゃんをボコボコにして、こうして端末に繋がせて、
女『オレがネットするチャンスを作ろう、ってのが一番の目的だな』


238:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 23:01:01.03 ID:3D0J4Mbj0
女『最後に嬢ちゃんの『中』にオレの特製プログラムをアーシアに入れさせたよな?』
女『アレで嬢ちゃんの体の自由を奪っただけじゃなく、嬢ちゃんのネットする機能も
女『一時的に停止させてもらったわけよ、つまり本部に救助を要請するには、
女『ネット出来る端末が必要不可欠、って状況を作らせてもらった、ってわけだ』
女『ドゥーユーアンダスタン?』

そうして女が俺の端末からネットするのを悠々と待っていやがった、ってわけかよ……。
俺はそんな罠にも気付かずまんまと乗せられちまった、ってわけか……くそっ!

女『おっとあんまり自分を責めんなよ少年?』
女『その嬢ちゃんにはその時一緒に、時限起動式の自壊プログラムも入れといたんだ』

男「な、なにっ!?」

女『だぁら落ち着けっての。そりゃあオレがもう解除してやったさ』
女『つまり嬢ちゃんを助けるには否が応にも一度俺にハックさせる必要があったってわけだ』
女『だがいいじゃねぇかよ、オレはその嬢ちゃんに用がある、嬢ちゃんはオレに用が出来た』
女『つまりオレらの利害は一致してるわけよ、それの何が問題なんだ?』

こいつ……いけしゃあしゃあとふざけた事を……!


240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 23:06:02.83 ID:3D0J4Mbj0
男「……その、女への用ってのは何なんだよ」

女『そいつはちょっと言えねぇなぁ、オレ様のグレートな計画が破綻しちまう』

???『(ザァザァ)……くん、やは、彼女に、触してき、か。網を、ってお、たのは正、だった、うだな……』

女『なに――っ!?』


242:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 23:12:33.52 ID:3D0J4Mbj0
その声もまた、女の口から発せられるものだった。

だがその口調、そして会話の流れから見ても、おそらくまったく別の人物だろう。

???『……君が『その』機体から情報を得ようとしたように、
???『私もまたその機体から情報を得ようとしたまでだよ』

女『まさか、オレがそいつをハッキングすることを読んでいやがったのか!?』

???『その機体に寄越した護衛を倒してしまったのはマズかったね』
???『おかげで次のターゲットがその機体であることはすぐに分かった』

女『だがなぜオレがこいつに直接ネットする、だなんて分かった!?』

???『物理的な接触はこれまで散々試みて失敗していたじゃないか?』
???『だからそろそろ別の趣向を凝らしてくるだろう、と踏んだまでさ』
???『他にも数パターンの接触法を予想し網を張っていたが、
???『まさかこんな方法を試してくるとはね、君ならもう少し頭のいい方法が思い付いたろうに』


244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 23:20:10.87 ID:3D0J4Mbj0
???『だがお陰で君の計画を阻止する糸口が掴めそうだよ』
???『君には過去に色々と世話になったが……』
???『まさか君の馬鹿さ加減に感謝する日が来るとは、皮肉なものだね』

女『畜生ッ!!』

いったいどうなっているんだ、俺はどちらを味方と見做せばいいんだ?

いやそもそも、こいつらは誰で何を企んでいやがる……?

???『さて、男くんと言ったね』

男「――っ!?」

???『私はその『女くん』を用いた計画の、責任者の一人だ』
???『今し方君と話していた男の手によって、その子の脳には重大なトラブルが発生している』
???『それを取り除くためにも、その子のボディを回収したい』
???『今すぐ人をやるので、彼らのその子のボディを差し出してくれたまえ』

女『させるかっ! アーシア、行け!!』
女『……いいか坊主、その嬢ちゃんを本当に救いたいなら、オレにつけ!』
女『アーシアを送った、さっきのガイノイドだ。そいつに嬢ちゃんを差し出せ、いいな!』

男「………………」
――
ここで安価なんて出したら叩かれそうだなぁ……


251:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 23:27:24.27 ID:3D0J4Mbj0
どちらを選ぶような間もなく、階下でインターホンが鳴った。

この状況で、まったく無関係の来客、なんてのは万に一つもありはしないだろう……。

いったいどっちだ……?

男「…………」

階下に降りると、俺は玄関の覗き穴から外を窺う。

立っていたのは、一見すると宅配業者然とした格好をした、大柄な男だった。

大男「すみませーん、荷物を引き取りに参りましたー」

荷物を引き取りに、ねぇ。俺は当然そんなもの頼んでいない。

これはつまり、あの責任者とかいう奴が寄越したに違いない。

とすれば、俺がすべきことは………………。


253:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 23:31:34.61 ID:3D0J4Mbj0
俺は二階へ戻ると、女の様子を確認した。

端末の電源は、切れている。女も先程とは違い、物音一つ立てず、微動だにしない。

どうする、ここから動かすにはケーブルを抜かなくてはなららないが、

突然抜いたりして問題が起きないだろうか……。

俺は女の首筋に手を伸ばし、そしてそこに繋がったケーブルの先端を摘む。

そしてゆっくり力を込め、少しだけ引き抜いてみる。が、女に異常が起きる様子はない。

そのまま一気に引き抜くと、俺は女の体を抱え階下に降りた。

そして……、

先程から喧しく鳴り続けているインターホンは無視し、

静かに裏口へと回り、外へ出た。


255:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 23:34:45.68 ID:3D0J4Mbj0
男「――!? くそっ!」

だが、裏には玄関の大男と同じ制服を着たものがいた。

どうやら俺の行動を予想して先回りされていたらしい。

俺は女を抱えたまま後退し家の中へと戻るが、そいつは驚くべき速度で間合を詰め、

裏口の扉をタックルで破壊しつつ中に侵入してきた。

男「っく! こいつもロボットかよ!?」


256:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 23:40:08.94 ID:3D0J4Mbj0
するとその気配を察知したのか、表にいた大男も同じく扉を破壊して中に侵入する。

俺はリビングへと逃げ、その窓から庭へ逃げようとした。

が、それすら読まれているのか、リビングの前の庭にももう一体のロボットが……。

そうこうしているうちに、侵入してきた二体もリビングへと駆け付けた。

三体のヒトガタに密室の中で追い詰められたわけか、さすがに万事休すか……。

その時、二階から凄まじい轟音と、家全体を揺らす振動が響いた。

かと思えば、何かが天井を突き破り、リビングにいたロボットの一体に激突したのだった。

男「な、なんだ!?」


258:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 23:47:19.74 ID:3D0J4Mbj0
舞い上がる粉塵の影に見え隠れするその姿は、少女のものだった。

露出の高い服を身に纏い健康的な肢体をさらす彼女の手には、

その矮躯には不釣り合いな得物を携えていた。

それは、箱としか言い様がなかった。

黒光りする、鉄製の箱。長さ1メートルはあろうかというその箱は、

少女の右手にアタッチメントか何かのように装着されていた。

そして彼女の腕と反対側に穿たれた穴からは、太く鋭い杭が伸びていた。

よくロボットなんかが武器に使っている、パイルバンカーという奴だった。

???「お待たせした上に屋根と床をぶち抜いてしまったみたいで申し訳ありません」

全然申し訳なくなさそうな顔で、少女は言った。

男「アーシア、か……?」

アーシア「何如にも。今後ともよしなに」


259:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 23:54:30.96 ID:3D0J4Mbj0
ア「ふむ、今度の獲物は戦闘用にチューニングされた義体のようですね」
ア「これは久し振りに腕が鳴ります」

アーシアはさっきの去り際と同じく不適な笑みを湛えて、残り二体のアンドロイドを一瞥する。

ア「さて男さん、危険ですので避難するなり物陰に隠れるなり読経するなり憲法九条暗唱するなり
十字を切るなり二拝二拍手一拝するなりコー○ンの音読をするなりお好きにどうぞ」

男「……じゃ、じゃあせっかくだから避難するのを選ばせてもらうよ」

ア「了解しました。ただしあまり遠くには行かない方がいいですよ」
ア「こいつらの仲間がどこで待ち構えているか分かりませんので」


261:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 00:01:50.23 ID:3D0J4Mbj0
言うなりアーシアは、室内にいたもう一体のロボットへ向けて疾駆する。

そのまま杭を打ち込もうとするが、相手はそれを見た目に反した機敏さで躱すと、

アーシアの横腹に渾身の殴打を加える。

パイルバンカーの側面で打撃を防御するが、勢いまでは殺せず、

アーシアは壁を比喩でなくマジで突き破り、隣の部屋まで吹っ飛んでいく。

男「お、俺の家が……」

しかし、次の瞬間には体勢を立て直したアーシアが敵に向かって突進する。

アーシアの予想外の復活の早さに、敵は判断が一瞬送れたらしい。

それは人間同士ならいざ知らず、ヒトガタの対決においては十分な隙となった。

得物を両の手で構えるアーシア、次の瞬間にはその杭が敵を穿つだろう。

だが、庭にいたもう一体のロボットが、アーシアの側面に向けてタックルをかます。

己と敵の脚力の両方を加算した運動エネルギーが、再びアーシアを吹っ飛ばす。

が、それすらものともせず、すぐに得物を構え直すアーシア。

こいつ……、不死身かよ……。


262:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 00:08:24.74 ID:3D0J4Mbj0
ア「どうやら、このような狭い戦場で大振りな武器は少々不利なようですね……」

言うなりアーシアは、一度構え直したパイルバンカーを、ガチャガチャと駆動音をさせながら腕から外す。

っていうかそれ、一体どういう形にくっついてやがんだよ……。

少女の腕が内側から展開して特大のパイルバンカーと合体するところ、あまり見たくはない。

そして身軽になったアーシアは、何か拳法のような構えを取った。

ア「徒手空拳はロマンに欠けるのですが……」

そういう問題だったのか……。

先程とは打って変って、ジリジリを間合いを測る三者。

一触即発、触れたら切れるワイヤーのような殺気が絡み合う。

それを最初に破ったのは、敵の一体だった。


266:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 00:18:03.74 ID:3D0J4Mbj0
アーシアに向けて疾駆するロボット。

しかしさっきのような勢い任せの猪突猛進とは違う。

アーシアの一挙手一投足に注意を払い、アーシアの何如なる反撃も凌いでみせよう、という意思の宿った疾駆だった。

対するアーシアもまた、何如なる攻め手も通じぬとばかりに、射貫くような視線で敵を見据える。

そうしてぶつかりあう両者。

敵は渾身の正拳突きを繰り出す。それをアーシアは、必要最低限の動作でいなすと、

突き出された敵の腕を狙い掌底をぶつける。

骨、というより鉄筋が折られたのかとさえ思える音が響き、敵の右腕はあらぬ方向へと曲がる。

ア「何如な強靭なアンドロイドと言えど、それが人の造物である以上ウィークポイントは必ず存在する――」
ア「まして渾身の力を込めて引き伸ばされた関節だ、然るべき角度で然る可き方向へ曲げれば、この通り――」
ア「お前木偶人形、千騎束になっても私には勝てない――」


268:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 00:25:46.49 ID:3D0J4Mbj0
そんな挑発にも表情一つ変えず、臆することなくアーシアへと襲い掛かるロボットたち。

が、二体による完全なタイミングの波状攻撃さえ、アーシアには届かない。

敵の直線的な打撃を、アーシアは傍目にはほとんど力を使うことなく、

ただベクトルをほんの少しズラしてやることで、易々と躱してみせる。

そうして生じた敵の隙を決して見逃さず、確実に敵にダメージを与えていく。

そんなことを繰り返すうちに、敵は体中の関節を破壊され、無様に地面に這い蹲った。

二体の地を這う敵を感情の込もらない目で一瞥したアーシアは、

一度は置いた得物を再び手にすると、未だ諦めようとしない敵に止めを刺した。


269:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 00:32:33.35 ID:3D0J4Mbj0
半壊した家の中で、動くものは俺とアーシアのみ。女は一向に意識を取り戻す様子はない。

いや、動くものはもう一人いた……。

白衣を着た、何如にも怪しげな中年の男。

細い、細すぎる不健康な体躯に無精髭、しかも表情まで怪しいときた。最悪だ。

白「その様子だと、どうやらどっちも選ばなかったみてぇだな、え?」
白「ま、次善の選択って奴だな。最良はオレにその子を渡すこと。最悪は奴に渡すこと」
白「最良ではなかったが、最悪でもなかった、ってことで今回は特別に褒めてやっかな」

男「……アンタは?」

白「俺か? オレぁそこのアーシアの保護者に決まってんだろ」
白「そうだなぁ、うん、ドクター・イーストとでも呼んでくれ、それがいい」

男「……分かりました、東博士ですね」

白「うわっ! なんでオレの名前が分かったんだよ、え!?」

男「……アンアバカ? ひょっとしてアンタってすっげぇバカ?」


270:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 00:37:21.56 ID:3D0J4Mbj0
男「さっきの女のOS、グレートドクターアズマだったし……」
男「しかもアンタ今自分でイーストとか名乗ったじゃねぇか」

白「う……ぐっ……、フ、フハハハハ! 少年よ、実はなかなかどうして頭が切れるじゃないか!」
白「見直したよ、この私から一本取るとはねぇ!」

あ、こいつ猫被りやがった。

白「で、なんで博士だって分かったんだよ……」

男「いや、ハッキングにも精通してそうだし医者というよりは博士かなと」
男「でもOS作ったりハッキングしたりって、アンタようするにプログラマなんじゃねぇか」
男「なんで白衣なんか着てんだよ意味ねぇだろ」

白「それはだなぁ、その方が格好良いからに決まってんだろバーカ!」

うわぁ、俺こんなアホにさっきまでいいように乗せられただなんて……。


273:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 00:46:39.42 ID:3D0J4Mbj0
東「ま、正直なとこ嬢ちゃんを傷付けたのは悪いと思ってるさ」
東「だがオレにはどうしてもやらなきゃならないことがあった」
東「ま、それはさっき失敗しちまったがな」
東「しかしその嬢ちゃんさえこっちにあるなら十分だ、まだ挽回出来る」

言いつつ東は女の体を俯せにすると、懐から取り出したモバイルに繋がったケーブルを、女の首筋に挿した。

東「さ〜てオレの可愛いベイビィはどうなってるかなと……ん?」

男「どうしたんだ……?」

東「………………っ! くそ! やられた、この嬢ちゃんのじゃねぇ!!」

男「な、ちょ、どういうことなんだよ!?」


274:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 00:49:18.82 ID:3D0J4Mbj0
東「ボディが挿げ替えられてやがる……、このボディを本物の嬢ちゃんが遠隔操作してたんだ!」

男「っ!? じゃあ、本物の女は別の場所にいるってのか!?」

東「そうだ……。くそっ、通りでこんなお粗末な作戦が上手くいってたわけだぜ」
東「網張るだけじゃなく疑似餌まで撒いてやがったとは……」


276:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 01:01:40.88 ID:3D0J4Mbj0
男「ちょっと待て、女は自発的にあの責任者って奴に協力してんのかよ?」

東「さぁね、そいつぁオレには分からねぇよ……。確かめたきゃ嬢ちゃんに直接訊くんだな」

男「女の居場所が分かるのか!?」

東「うるせぇ! そいつが知りたいのはオレの方だ!!」
東「こっちは必要な情報は何一つ得られず、奴らにこっちの情報だけ奪われちまった」
東「その情報が解析される前に嬢ちゃんを回収したいが、完全に八方塞がりだ、手掛かりはない」

男「……その情報ってのが解析されたらいったい何が起こるってんだよ?」

東「ふんっ、俺が作ってあの嬢ちゃんの兄弟姉妹らに仕込んでたプログラムが解除されちまうんだよ」

男「そのプログラムってのはなんなんだよ」

東「連中の計画を一網打尽にする破壊プログラムさ」

男「……なんだって?」


279:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 01:13:18.35 ID:3D0J4Mbj0
東「あの嬢ちゃんたちのOSには、情報を収集し、学習し、
東「自分を進化させられるプログラムを仕込んでおいた……」
東「それは仕込まれたアンドロイドがネットする度に学習し、
東「自分と繋りのあるネットの範囲がどこかを知るようになる」
東「そしてオレの命令が下った瞬間、自分が繋がっている
東「全てのテクノロジーを破壊し尽くす、そういうプログラムだ」

男「………………」

東「しかしそのプログラムを保持した『キャリア』は山ほどいても、
東「オレの命令を受け付け実行に移せるほどの『ホスト』はそうそういない」
東「いたとしても、連中に先に嗅ぎ付けられて、その個体だけ破壊されるだけだ」
東「オレはもう何年も、俺が命令を下せる『ホスト』を求め歩いた……」

言うなり東は、自嘲のような笑みを受かべた。

東「そうして次のホストとして見付けたのが、あの嬢ちゃんさ」
東「オレは何としても嬢ちゃんと接触したかった……」
東「だが、今までの方法ではだめだった。だからオレは考えた」


280:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 01:23:32.91 ID:3D0J4Mbj0
男「それで、物理的な接触じゃなく、ハッキングを試みた、ってわけか?」

東「そうだ。だがどうやら勇み足だったらしいな、見事にはめられちまった」
東「プログラムの抽出法が割れた以上、無力化されるのも時間の問題だ」
東「そうなりゃオレの計画も終わりだな、ハハハ」
――
すみません、中途半端ですか今日はこの辺で終わります

朝か昼頃再開したいと思ってますが、今度はさすがに落ちるかもしれません……
もし落ちてたら加筆修正をしてまた立て直します
それではノ





260:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 23:59:58.24 ID:Ikb6skTgO
追い付いただと?!

寝れないじゃないか…



またひまっぴーがまとめてくれないかな…


263:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 00:09:00.69 ID:4jpYsdm0O
ダメだ眠い…


誰か朝まで保守を頼む…


もしくはひまっぴーよ… まとめといてくれ…ガクッ…


ヒマッピー「まとめるの遅くなってごめんなさい」


少女「人間は勝手なんだよ」
ヲタ「初音ミクを嫁にしてみた」
新幹線乗り間違えて全裸になった男を逮捕
教えてご主人様ぁッ!〜メイド型アンドロイドの正しい調教方法〜
アンドロイドメイドのナナミさんはご奉仕大好きでご主人様はすぐにイっちゃうの。


女「実は私ロボットだったんです」【後編】へつづく

元スレ
女「実は私ロボットだったんです」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1245682313/


 

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