1 :みんなの暇つぶしさん:2010/05/18(火) 00:34:23 ID:4cElcmOY
ええと、男「はあ!?お前ら付き合ってんの!?」とか、男兄「朝だっぞー、朝だっぞー!」の、続きというか同じ登場人物が出ます。うひひー。
2 :豆腐:2010/05/18(火) 00:36:06 ID:4cElcmOY
学校、食堂
女「な、何、急に」
男「急にではない。この想いは約一ヵ月前から徐々に温めてきたわけだ」
女「う、うん」
男「あー、この胸のときめき、高鳴り、切なさ」
女「…」
男「苦しさ…」
女「そ、それは大変ですね」
男「これが…恋の苦しみ?」
女「知らん知らん!ていうか何で私に言うわけ?」
男「誰かに言わねば爆発してしまいそうだった」
女「別に私じゃなくても、友とかイケメンくんとかに相談すりゃいいじゃん。ていうか何なの、さっきから。その芝居口調」
VIPから書籍化!
3 :豆腐:2010/05/18(火) 00:37:47 ID:4cElcmOY
男「相談じゃねえもん」
女「じゃあ、なに」
男「何ていうか、吐露?」
女「とろぉ?」
男「俺は恋愛の相談なんか友達にはしない。俺は知ってんだ、友達の恋愛の悩みを聞く程だるいことはないということを」
女「えーと、してんじゃん、今、まさに」
男「違うっつうの!これは相談じゃねえ!俺はただ、この心の痛み、切なさを誰かに聞いてほしかったんす。そして『いけるいける、がーんば』とか言ってほしかったんす。で、たまたま目の前にあんたがいたんす」
女「…いけるいけるがーんば」
男「棒読みだもの!それ棒読みだもの!」
4 :豆腐:2010/05/18(火) 00:39:37 ID:4cElcmOY
女「ええと…男くん、一言いいでしょうか?」
男「待って!それは俺を傷つける系?傷つける系の一言?」
女「いや、うーん、どうだろ」
男「そうか…。ふう、ふう」
女「…」
男「よし、心の準備は出来た…来い!」
女「こほん。それでは…」
男「お、おう…」
女「…」
男「…」
女「うっぜーよ、このすっとこどっこい!」
男「ぎゃあ!」
5 :豆腐:2010/05/18(火) 00:40:58 ID:4cElcmOY
女「でこすけ!」
男「ひい!」
女「雑巾野郎!」
男「うあー!」
女「以上です!」
男「あ、あわわわ」
女「男くん」
男「は、はい」
女「相談したいなら素直にそう言いなさい。女性としての私の力が必要なら最初からそう言いなさい。回りくどいのよ、あなた」
男「す…」
男「すいませんでしたー!うえーん!」
隣の席の男子「(す、すげえ、プロだ…。あの子、プロフェッショナルだ)」ヒソヒソ
隣の席の女子「(いやーん、私もあんなふうに男の子操縦したーい!)」ヒソヒソ
6 :豆腐:2010/05/18(火) 09:03:24 ID:4cElcmOY
女「で、どんな子どんな子ー?なんか楽しいな〜、男くんのコイバナなんてさ。ぷぷぷ」
男「どんな子…なんて言うか、綺麗っていうか可愛い系で」
女「ふんふん」
男「すげえ細くて」
女「ふんふん。ねえ、その子はなに?うちの学校なの?」
男「うん。ため」
女「おー、なになにー、遊びとお酒にしか興味なさそうな顔して見るとこ見てんじゃーん、男くーん」
男「な、なんなのあんた、その超上から目線」
女「そりゃ私のが上じゃない?男くんよりかは」
男「(こ、この野郎…勝負したろか。でも多分、俺が負ける…)」
7 :豆腐:2010/05/18(火) 09:04:40 ID:4cElcmOY
女「ほらほら、で?で?」
男「で…」
女「うんうん」
男「…」
女「?」
男「きた…」
女「へ?」
男「ききききたきたきた、ほら、あそこ、あそこの、ほら、水色のスカート、ほら、ボブカットの」
女「んー?」
男「可愛いなあ…今日も」
女「え、ごめん、解んない、どの子?」
男「あそこあそこ、水汲んでる女の子グループ、あそこ!」
8 :豆腐:2010/05/18(火) 09:06:25 ID:4cElcmOY
女「ほーほー、えーと、ああ、可愛いらしい子じゃん」
男「でしょ!ミスだよミス!ミス俺史!」
女「いやそれは知らないけど、あー可愛いわ、確かに」
男「そうなんですよー、可愛いんですよー」
女「諦めたほうがいいんじゃん?」
男「そうなんですよー、諦めたほうがいいんですよーっておい!」
女「だって超可愛いじゃん。彼氏とかいるんじゃないの?」
男「あ、彼氏はいないらしいっす」
女「ふーん、って、…何で知ってんの?ま、まさか男くん!ス、ストー…」
男「ちがーう!やめて!こんな人が一杯いるとこで滅多なこと言わんとって!」
9 :豆腐:2010/05/18(火) 09:09:00 ID:4cElcmOY
女「じゃあ一体…」
男「いや、だからさ…」
かわいこちゃん「男くーん!」
女「んん!?」
男「はう!」
かわいこちゃん「はろー」
男「…おーす」
10 :豆腐:2010/05/18(火) 09:10:04 ID:4cElcmOY
かわいこちゃん「元気ー?」
男「うん、元気だよ。今からご飯?」
かわいこちゃん「うん、今からー。男くんは?もう食べた?」
男「うん、もう」
かわいこちゃん「そっかー」チラ
女「…」ペコリ
かわいこちゃん「こんにちは」ペコリ
女「こんにちはー」
かわいこちゃん「じゃ、また、あ、今度一緒にお昼食べようねー」
男「あ、うん、そうだね」
かわいこちゃん「じゃねー」テクテク
11 :豆腐:2010/05/18(火) 09:11:08 ID:4cElcmOY
女「…」
男「…」
女「おいおいおーい、どうなってんの男くーん!会話交わしてんじゃーん!知らない仲じゃないじゃーん!えーなにあんた、うわー、いつの間にー!きゃー!エロいー!不純異性交遊ー!きゃー!しかもこいつちょっと格好つけてたー!」
男「せ、静粛にお願いします!」
12 :豆腐:2010/05/18(火) 09:12:46 ID:4cElcmOY
「かわいこちゃん」のままでは書いてる豆腐が笑けてしまうので、これより、かわいこちゃん→愛子ちゃんと表記を変えます。
女「えー、なになに、どうなってんのどうなってんの?」
男「ええとですね…」
以下男回想
一ヵ月前、学校、喫煙所
男『(生徒手帳ももらったし、あとは定期更新するだけだ)』
男『(んー、この時期は人少ないなあ…今日すげえあったかいし気持ちいいなあ…ベンチの上で昼寝でもして帰ろうかなー)』シュボッ
男『…』シュボッ
男『ぬ?』シュボッ
男『うわー、オイル切れかよー。生協…は開いてないよなあ』シュボッ
13 :豆腐:2010/05/18(火) 09:14:51 ID:4cElcmOY
男『つけ!この!』シュボッ
テクテク
愛子『はい、ライター』
男『へ?あ、どうも』
愛子『いいえー、ふふ、今日もライターないんですね』
男『…?』シュボッ
男『スー、プハー。ええと…?』
愛子『…』ニコニコ
男『………ああ!前も、貸してくれましたよね、ライター』
愛子『はい貸しました。そして忘れられてました』ニコニコ
男『あー、いやいや!違うんすよ!忘れてたわけじゃなくて、ええと、いや、まあ、忘れてたといえば忘れてたとも言えるし、いやいやいや!』
愛子『あははは、超必死じゃないですかー』
男『いやいや!必死じゃないですって!まじでまじで!いや、今は必死ですよ?でもそれは、さっきは必死じゃなかったということを伝えたいがために必死になってるだけですよ!?』
愛子『あははは、わけわかんない!』
14 :豆腐:2010/05/18(火) 09:15:56 ID:4cElcmOY
男『いやー、あ、ライターありがとうございました。助かりました』
愛子『いえいえ。今日は?授業の抽選か何か?』
男『いや、散歩がてら学校に新しい生徒手帳をもらいに。定期も更新しなきゃだし』
愛子『へー、この辺に住んでるんですか?』
男『いや、ここからだと二時間くらい歩きますよ』
愛子『えー?それって散歩とは言わないと思いますよ?』
男『あー…そうですね。ええと…イベント?』
愛子『イベントって!あはは!今年から何年生ですか?』
男『あ、ええと、三年生になります』
愛子『あ、ためじゃないですかー』
男『あ、そうなんすか。いやいや、どうもどうも』
愛子『あはは。どうもどうも。三年生の愛子と申します。よろしく』ペコリ
男『あ、はい、ええと、男と申します』ペコリ
15 :豆腐:2010/05/18(火) 09:17:03 ID:4cElcmOY
愛子『男くん。ふふ、友達増えちゃった』
男『(か、かわえー…)今日は何で学校に?』
愛子『私?私はサークルの用事で。ちょっと早くつきすぎちゃったんですけどね』
男『へー。何のサークルなんですか?』
愛子『軽音サークルです』
男『軽音!へー。楽器は何やってるんですか?』
愛子『ベースやってます』
男『ベースかあ、ふーん。いやあ、楽器出来る人って尊敬しますよ(兄貴は別として)』
愛子『そんな大したものじゃないですよー。あ、そうだ、聞きたいことがあるんですけど』
男『はい?何でしょう』
愛子『ええと…』ニマー
男『?』
16 :豆腐:2010/05/18(火) 09:18:16 ID:4cElcmOY
愛子『ちょっと前なんですけど』
男『はい』
愛子『なんかすごい全力疾走してませんでした?学校の中で。あれ、男くんですよね?』
男『!!み、見られてました?』
愛子『ふふ、見てました。あれ、何で?』
男『ええと』
愛子『うん』
男『け、喧嘩して』
愛子『?』
男『友達と喧嘩して…やむにやまれず…こう…いたたまれなくなって』
17 :豆腐:2010/05/18(火) 09:25:13 ID:4cElcmOY
愛子『…ぷ』
男『…』
愛子『あはははは!喧嘩して、で、走って逃げた、みたいな?』
男『ま、まあ、そうなりますね』
愛子『あはは、可愛い!小学生みたい!』
男『あ、あははは…』
18 :豆腐:2010/05/18(火) 09:27:04 ID:4cElcmOY
男「というようなことがありまして」
女「ふんふん」
男「で、授業始まったら、同じ授業を二つ取ってることが発覚しまして」
女「おお」
男「で、連絡先など交換しまして」
女「いいねいいね」
男「今に至ります」
女「へー。いいじゃんいいじゃん。何かさ、話だけ聞いてるとすごいいい感じじゃん」
男「そ、そうかな」
女「さっさと告っちゃいなよ。そして玉砕」
男「おい!」
女「まあでもさ、愛子ちゃんは、男くんのこと、憎からず思ってるんじゃない?わざわざここでも話し掛けてきたしさあ」
男「いや」
女「ん?」
19 :豆腐:2010/05/18(火) 09:29:08 ID:4cElcmOY
男「あの子はね、すごい愛嬌のある子なんだ」
女「ああうん、そんな感じかもね」
男「俺への態度も多分、その愛嬌の範囲内なんだよ」
女「ふーん」
男「でももしかしたら本当に俺に好意を抱いているかも知れない」
女「なんなのあんた」
男「いやだから解んないんだって!どっちか解んないから辛い!心が痛い!つねられるように!」
20 :豆腐:2010/05/18(火) 09:30:22 ID:4cElcmOY
女「んー、まあその気持ちは解らなくはないけどさ、ゲームじゃないんだから。人の心の問題なんだから。今はどうか知らんけどさ、今から愛子ちゃんともっと仲良くなって、遊んだりお喋りしたりしてさ、本当の好意をものにすればいいじゃん。悩むことないよ。男くんの魅力見せつけちゃれ。まあそんなもんがあればの話だけど」
男「でもさ、その過程で失敗したり愛子ちゃんに嫌われたりしたらもう俺立ち直れんです」
女「そうなの?」
男「そうだろ!お前、恋愛を何と心得る!あとさっきからちょいちょい呪いの言葉吐くのやめれ!」
女「んー」
男「で」
女「うん」
21 :豆腐:2010/05/18(火) 09:32:14 ID:4cElcmOY
男「まあ、お前がさっき言ったことは正論だよ。確かに、こう、愛子ちゃんが俺を今、どう思ってようが、これからが大事なんだよ」
女「うんうん」
男「だから俺は愛子ちゃんをデートに誘おうと思っとります」
女「おお」
男「…どうやって誘ったらいい?」
女「知らないよ!自分で考えてよそんなのー」
男「アドバイスくれよー女性目線のアドバイスをよー」
22 :豆腐:2010/05/18(火) 09:33:27 ID:4cElcmOY
女「えー?デート行こうよ!って言えばいいじゃん」
男「そ、そんなストレートでいいの?」
女「いや知らないけど」
男「うおーい!」
女「女性目線どうこうって言うけどさあ、女の子だって人それぞれなんだし、私あの子のことよく知らないし、そんないいアドバイスはなあ…してあげたいけどさ、もちろん。応援はします、はい」
男「…女よ、それを解決する、ただ一つの方法があるのだ」
女「…なんでしょう」
23 :豆腐:2010/05/18(火) 09:39:27 ID:4cElcmOY
男「愛子ちゃんと友達になってくれないか」
女「はあ?」
男「で、愛子ちゃんの好みのタイプ、彼氏がいるのかいないのか、理想のデートコース、全部聞いてきてくれ!」
女「…き、きもー!発想がもうそれあんた、スト…」
男「言うなー!それ以上言うなー!」
24 :豆腐:2010/05/18(火) 09:40:27 ID:4cElcmOY
女「そもそも何であたしがそんな面倒くさいこと…」
男「お前、友達の恋を応援してやろうという乙女心はねえのかよ!」
女「いやだから応援はするって」
男「だったら愛子ちゃんと友達に…」
女「だからそれは面倒くさいって」
男「面倒くさい面倒くさいっておまえはゆとり教育の弊害か!」
女「なにそれ」
男「俺にも解らん!あれ?どこまで話したっけ」
女「男くんが私に三泊四日沖縄の旅をプレゼントしてくれるってところまで」
男「してねーよそんな話!なんだお前どさくさに紛れて!恐ろしいやつだなこのやろう!」
女「そうかしら」
25 :豆腐:2010/05/20(木) 08:55:29 ID:fjn3Ra5w
男「くっそー、大体、俺がお前と友のキューピッドやってやったんだから、そのお返しとしてさあ」
女「はあ!?キューピッド!?誰がキューピッド!?」
男「え?お、俺が?」
女「男くんが?誰の?」
男「あ、あなたと友の…」
女「何言ってんの、馬鹿じゃないの、全然違うし」
男「え?違うの?」
女「うん」
男「そうだったのか…」
女「うん」
26 :豆腐:2010/05/20(木) 08:56:42 ID:fjn3Ra5w
男「え、じゃあ俺は誰のキューピッドなの?」
女「誰のキューピッドでもないと思うよ」
男「そ、そんな馬鹿な…」
女「さあ、馬鹿は誰でしょうね」
男「ぬう…」
女「ていうか友は知ってんの?男くんが恋してるってこと」
男「いや、たぶん知らない」
女「えーなんで?イケメンくんは?」
男「言ってない」
女「うえー?なんでよー。こういう面白い話は言い触らさなきゃー」
男「(こ、この女…)いや、なんつうか、単純に最近、遊ぶ機会なかったしさ」
27 :豆腐:2010/05/20(木) 08:57:29 ID:fjn3Ra5w
女「あー、そういやそうだね。友、教職とってるしゼミもあるし授業けっこうきちきちだもんね。イケメンくんなんかそもそも忙しい人だったのにバンドやりはじめちゃったしねー」
男「そうだよあのくそ兄貴、イケメンとりやがってー。真面目に仕事に勤しめよ。社会人一年生としての自覚たんねーんじゃねーか」
女「だらだらしてんの私たちくらいよね。ま、就活始まったら否がおうにも忙しくなるんだろうけど」
男「はあ…就活かあ」
女「容赦ないよねー、人生。そうだよねー、皆、少しずつ色々変わってくよね。そりゃ男くんだって恋もするわ」
友「ういーす」
男「おーう」ダラダラ
女「お疲れー」ダラダラ
友「な、なんかここだけ春にあるまじき暗いオーラがほとばしってんぞ」
女「人生の無常を嘆いてたところなのさ」
友「なにそれ」
28 :豆腐:2010/05/20(木) 09:01:07 ID:fjn3Ra5w
男「授業終わり?」
友「ん?うん、今日は終わり」
女「今から映画行くんだぜー、@ららぽーと」
男「ららぽーと?豊洲?」
女「そうそう。男くんも行く?」
友「アリス見た?まだなら一緒に行こうぜ」
男「あー…いや、今日はバイトだわ」
友「そっか」
女「まあただの社交辞令だったんですけどね」
男「おいお前、日に日に俺に対する毒が成長してんぞ。俺だって無敵じゃねんだぞ」
女「ちょっと友、人の彼女捕まえてあんなこと言ってるよ」
友「はいはい、じゃあ行きますよ」
女「おお、しかとだ。じゃーねー男くん」
男「ん、また」
友「おう、お疲れー」
29 :豆腐:2010/05/20(木) 09:02:09 ID:fjn3Ra5w
ポツーン
男「(思わず気ぃ使ってしまった…今さら気ぃ使うのもどうなんだって話だけど、でもまあ、最近、友、まじ忙しそうだもんな…)」
男「(なんつうか…、寂しいなあ…、はあ。こんな感じになることは解ってたのになあ)」
男「(ん?)」
男「(俺、もしかして、寂しいから…恋してんじゃねーのか?)」
男「(友とか女とかイケメンくんとかの代替として愛子ちゃんを求めてるとか?)」
男「(うわー…)」
男「(だとしたら俺、かなり最低じゃない?)」
男「(うわー…)」
30 :豆腐:2010/05/20(木) 09:03:08 ID:fjn3Ra5w
友「なんか食ってく?」
女「んーん、お腹は別に。友、お腹減ってる?」
友「ちょっと。豊洲着いたら考えようか」
女「うん(男くん、気使ってたんだろうな、あれ多分。明後日までバイトないって言ってたくせに)」
女「(今さらだよー、とんまだなー)」
女「(思わずこっちまで気使っちゃったよ。毒?私の毒には優しさが含まれてることを知らないね)」
女「あ」
友「ん?」
女「あ、いや、友達に電話かけるの忘れてただけ」
友「いーの?」
女「うん。あとでメールだけ返しとく」
友「おう」
女「(男くんが恋してるってことを話題に出しそびれた…)」
女「(まいっか。本人のいないとこで話題にしても楽しくないし。またにしましょう)」
31 :豆腐:2010/05/21(金) 12:26:28 ID:TvMG3kMk
翌日、四限前、教室
男「(デートしませんか!いや、これは露骨過ぎる…。このあと暇だったら飯でもいかねー?…ちゃらい。んー)」
愛子「あ、男くん、おはよー」
ドキッ
男「あ、お、おはよう」
愛子「何か今日、肌寒いねー」
男「あー、うん、その格好は寒いかも」
愛子「失敗したー。天達に騙されたー」
男「あはは」
愛子「よいしょ」
男「(今日も可愛いな…そしてデートに誘うきっかけが解らん…)」
32 :豆腐:2010/05/21(金) 17:49:02 ID:TvMG3kMk
授業後
愛子「疲れたー」
男「(いい匂いがする)」
愛子「あれ?」ポチポチ
男「ん?」
愛子「あー、次の授業、休講だ。帰ろっかなー」
男「(おお!?)」
愛子「男くんは今日は四限までだよね」
男「うん(ま、まさか!?)」
愛子「一緒に駅まで行こうよ」
男「う、うん(き、)」
男「(きたー!!!)」パンパカパンパカパーン!←ファンファーレ(男の心象風景)
33 :豆腐:2010/05/21(金) 17:51:35 ID:TvMG3kMk
愛子「…でね、その先輩たちは、自分がやってる楽器じゃない楽器で、まず演奏すんの。ルナシーとかやんの。ルナシーなんか私たちの世代でも微妙じゃん。しかも超下手くそなのね」
男「うん」
愛子「で、一曲終わるたびに、皆、パート変えんのね。それもまた下手くそなのね。でも、すっごい一所懸命なの、皆」
男「うん」
34 :豆腐:2010/05/21(金) 17:53:48 ID:TvMG3kMk
愛子「で、最後の曲になってやっと皆、本来のパートになるんだけど、バンドがいきなり超上手くなんの」
男「うん、あはは」
愛子「で、それまでさ、下手くそだったしルナシーとかやってたからぼおっと見てた一年生たちが『え、何なのいきなり』みたいな感じでびっくりすんの」
男「あー、なんか面白そう」
愛子「うん、面白かった。なんかさ、私、高校の頃から音楽はやってたけど、大学に入って、音楽で遊ぶとはどういうことかって教えてもらった気がする」
男「ふんふん」
35 :豆腐:2010/05/23(日) 15:01:21 ID:45ZoSPog
愛子「それはすごい自由で、何でもありで、でも、真面目にふざけないと駄目で、もちろん人に見せたり聞かせたりするものだからある程度の技術に裏打ちされてなきゃ駄目で…って、何で私こんな熱血音楽論語ってんだっけ」
男「いやー、なんかでも、面白い話だよ」
愛子「そう?」
男「うん。愛子ちゃん、先生の素質あるんじゃない?人の興味を膨らますのが上手い話し方だと思う」
愛子「えー、本当に?うわー、そんなこと初めて言われたー、…うー、寒いー」
男「大丈夫?」
愛子「天達めー」
男「あはは」
愛子「…」
男「(あれ?これは、『じゃあ今からちょっと温かいコーヒーでも飲みませんか』的なことを言うチャンスじゃねえか?え?違う?どうなの?そんなこと言ったらきもい?あ、もう少し行ったらドトールがある…どうしよどうしよ)」
36 :豆腐:2010/05/23(日) 15:06:32 ID:45ZoSPog
愛子「男くん、どんな音楽聞くの?」
男「ん?そうだなあ…(ぎゃー!話が変わったー!)」
愛子「あんまり聞かない?」
男「んー、なんだろ、俺の兄貴も音楽やってんのね(俺のへたれ…)」
愛子「えー、そうなの?」
男「うん、だから、兄貴がよく家で流してる音楽はなんとなくぼんやりとよく聞いてるけど、バンド名とかアーティスト名とかは解んないや。でも、昔の音楽が多い気がする。ひできとか聞いてたりするよ」
37 :豆腐:2010/05/23(日) 16:24:39 ID:45ZoSPog
愛子「ひでき?西条秀樹?あはは!でもねでもね、昔の日本の歌謡曲って訳解んないテクニック使ってたりして、結構面白かったりするんだよ」
男「へー、そうなんだ」
愛子「うん、あ、男くん、今日バイトとかある?」
男「へ?いや、今日は帰るだけ」
愛子「あ、じゃあちょっとドトール寄っていこうよ。コーヒー飲まない?」
男「あ、うん、いいね(うわー!ぎゃー!きたー!うひょー!)」ドカーンドカーン←花火(男の心象風景)
38 :豆腐:2010/05/25(火) 15:48:35 ID:nETPEJWY
ドトール
愛子「んー、うまー」
男「暖まるね(奢ったほうが良かったのかな…いや、それはきもいだろう…え?どうなの?わかんねー)」
愛子「あ、『アリス・イン・ワンダーランド』のポスターだ。かわいー。男くん、見た?」
男「んーん、見てない。愛子ちゃんは?」
愛子「まだー。見たいんだけどさー、一緒に見に行く人がいないんだー」
男「い」
39 :豆腐:2010/05/26(水) 14:08:54 ID:b2hlaOsQ
愛子「い?」
男「ん?いや、いつまでやってんのかなーって」
愛子「あー、でも結構ヒットしてるんだよね?まだ、だいぶやるんじゃないかな」
男「そうだよね」
愛子「うん」
男「…」
男「(一緒に行こうよって言えよ俺!千載一遇のチャンス、タイミングだったじゃねえか!いやいやいや!それはきもい!それはきもいって!愛子ちゃんはそんなつもりで言ったんじゃないって!いや、でも…、くそー!胸が!胸が痛い!)」
40 :みんなの暇つぶしさん:2010/05/26(水) 17:26:45 ID:MK8W7YQw
「男」とかと普通の個人名が混ざってるのが
たまらなくキモイ
41 :みんなの暇つぶしさん:2010/05/26(水) 17:29:15 ID:R23oYaDM
かわいこちゃん→可愛子ちゃん→愛子
42 :豆腐:2010/05/27(木) 23:39:01 ID:ncMNsk26
愛子「そういや男くんって、バイト何やってんの?」
男「え?あ、えーと…飲食関係かな」
愛子「へー、レストランとかそんな感じ?」
男「うん?うん、まあまあまあ、そんな感じ。…愛子ちゃんは?」
愛子「私?私はねー、友達の伝手なんだけど、麻布十番のバー」
男「バー!?すげー。酒振ったりしてんの?」
43 :豆腐:2010/05/27(木) 23:39:53 ID:ncMNsk26
愛子「あはは、まさか。ウエイターみたいなもんだよ。まあ、シェイカー使わない簡単なカクテルくらいなら作ることもあるけど」
男「へー」
愛子「今度友達とかとおいでよ。といっても私ぺーぺーだからサービスとかは出来ないけどさ」
男「あ、うん、ぜひぜひ(社交辞令社交辞令、調子に乗るな勘違いするな…)」
愛子「ごめん、ちょっとお化粧室行ってくるね」
男「あ、うん」
44 :豆腐:2010/05/27(木) 23:40:46 ID:ncMNsk26
男「…」
男「…」
男「(えー何俺嘘ついてんの!?レストランとかそんな感じ、じゃねえだろ!弁当屋だよ弁当屋!まんぷく亭だろ!なんなのその嘘!レストラン!?働いたことねー!)」
男「(うわー弁当屋が格好わりいとか思ってんだ、俺。で、愛子ちゃんに嘘ついちゃった…あとなんなの今日の俺のへたれ具合!へたれにも程があんだろ!俺のへたれ!しかも嘘つき!でこすけ!雑巾野郎!)」
男「(俺…超格好わりい…。いや、格好わりいのは知ってたけど、ここまでとは…)」
45 :豆腐:2010/05/27(木) 23:45:00 ID:ncMNsk26
男「あー…」
男「…」ズズズ…
男「にが…」
男「(そして意味もなく格好つけて飲み慣れないブラックコーヒーを飲む俺…阿呆か!飲めねえし!カップからコーヒーがいつまでたっても減らねえし!だいたいブラック飲むのが格好いいって、高校生か俺は!)」
男「…はあ」
男「(しかも、寂しいから愛子ちゃんに恋しているという説もあるし。最低。最悪)」
愛子「もしもーし」
男「うわ!」
46 :豆腐:2010/05/27(木) 23:46:37 ID:ncMNsk26
愛子「あはは、そんなびっくりしなくても」
男「あー、一瞬、いきかけた…」
愛子「やばかったねー。ちゃんと帰ってきてねー。ねえねえ、ていうか、何考えてたの?」
男「え?」
愛子「超深刻な顔してたよ、男くん」
男「そ、そう?」
愛子「うん。どしたの?悩みがあるなら言うんだー」
男「んー、…何て言えばいいのやら(きみ!きみのこと!)」
48 :豆腐:2010/05/28(金) 10:38:52 ID:46KzNhAY
愛子「言いにくい?」
男「んー。悩み。悩みかあ…(デートの誘い方とか、恋をしたから見えてしまった自分の格好悪さとかそもそも寂しいから恋したんじゃないかとか…)」
愛子「うんうん」
男「…まあ、なんつうか」
愛子「うん」
49 :豆腐:2010/05/28(金) 10:52:02 ID:46KzNhAY
男「コーヒーが苦くて飲めないってことでしょうか(言えないよなあ…当事者目の前にして)」
女「…」
男「…」
女「あはははは!本当だ!全然減ってない!なんで?なんで飲めないのにブラック?」
男「か、格好つけてしまいました」
女「あはははは!そっかー。格好つけちゃったんだ。それじゃあ仕方ないよね。あのね、私の好きな人が言ってたんだけどね」
男「(…はい?)」
50 :豆腐:2010/05/28(金) 14:54:28 ID:46KzNhAY
愛子「人間は、そもそも格好悪いもんで、それはその通りで、でもそれに甘んじないで、格好つける人間こそ好感がもてるって言うのね」
男「うん…(好きな人って言った…)」
愛子「だから男くんは好感がもてる人だよ。自分から格好つけてるのをばらしちゃうのも可愛いし。ふふふ」
男「あはは…」
51 :豆腐:2010/05/28(金) 14:55:06 ID:46KzNhAY
愛子「でね、でね…」
男「(好きな人…いますよね、そりゃ)」
愛子「…みたいなかんじでね…」
男「(あーやばい。なんか…耳が聞こえねー)」
愛子「…でさあ…」
男「(泣きたい。おいおいと泣きたい。むせび泣きたい。滅びろ世界。いや、それじゃあ友とか女とかイケメンくんとか愛子ちゃんが死んじゃうから俺だけ滅びろ。ぼーんて。ぼーんて爆発しろ)」
愛子「…はおかしいじゃん?だからね…」
男「(爆発したら雲になろう。そして乾いた土地に恵みの雨を降らそう)」
愛子「おーい、聞いてますかー?」
男「へ?う、うん。もちろん」
52 :豆腐:2010/05/28(金) 14:56:52 ID:46KzNhAY
愛子「本当にー?怪しいなあ。つまんない話だった?」
男「いやいやいや!そんなことないって!とてもためになるお話しでござんした!(ござんした?)」
愛子「ふーん。じゃあ私はどんな話をしていたでしょうか」
男「…えーと」
愛子「…」
男「…」
愛子「…」
男「ごめんなさい聞いてませんでした」
愛子「ほらやっぱりー」
53 :豆腐:2010/05/28(金) 14:58:57 ID:46KzNhAY
男「でも別に愛子ちゃんの話がつまらないとかそういうことじゃなくて、考え事してて…いや本当失礼な話だよね。本当、ごめん」
愛子「別にいいんだけどさ。なに考えてたの?」
男「(言えるか!)んー」
愛子「内緒?」
男「ってほど、大げさではないけど…うん、かなりどうでもいいことです」
愛子「そっかー。がーん。かなりどうでもいいことに私の話は負けたのか」
男「え!?いやいやいや!そういうつもりで言ったんじゃないよ!?」
愛子「あはは、解ってるって。焦りすぎ焦りすぎ」
男「あ、あははは…」
54 :豆腐:2010/05/28(金) 15:00:04 ID:46KzNhAY
学校
友「(うおー、疲れたー。やっべーな、身体が破裂しそうだよ。明日も朝早いしその後バイトか。早く帰ってさっさと寝よ)」ヴヴヴヴ…
友「ん?もしもし」
男『駄目だ…』
友「…は?」
55 :豆腐:2010/05/28(金) 15:00:49 ID:46KzNhAY
男『駄目だ…俺なんかもう駄目だ…』
友「なにが?」
男『好きな子に、好きな人がいました…』
友「…え?え?え?」
男『でも本当に好きだったのかどうなのか…そんなふうに思ってしまうことが何かいやらしくて気持ち悪くてもう訳が解らんくて…』
友「待て待て待て。順序よく話せ。お前今、家?」
男『ドトールです…』
友「ドトール?駅の近くの?一人?」
男『一人です…愛子ちゃんは帰りました、俺は帰れません、何故ならコーヒーがまだまだ残っているからです』
友「何言ってんのか解んねえけどとりあえず俺も今からそこ行くわ。待ってて」
56 :豆腐:2010/06/01(火) 10:07:57 ID:1f.zL0a2
ドトール
友「おす」ドスッ
男「…おす」
友「…」
男「…」
友「…よし。んじゃまあとりあえず飲み行こうぜ」
男「…うん」
友「ほら、はよコーヒー飲め」
男「…これ、苦くて」
友「は?」
57 :豆腐:2010/06/01(火) 10:08:38 ID:1f.zL0a2
男「…」
友「んー」ガタッ
男「…」
友「ほれっ」ポイッ
男「…」
友「この世にはミルクと砂糖ってもんがあんだよ。よく解んねえけどそれ入れて、さっさと飲め。行くぞ」
58 :豆腐:2010/06/01(火) 10:09:43 ID:1f.zL0a2
目黒、某居酒屋
友「…それは別に振られたってわけでもないし、そんな落ち込むってほどでもないんじゃねえの?」
男「…」
友「だってさ、好きな人がいるっていうのは今、現在の話だろ?未来はどうなるか解んねえじゃん。人の心はそんなに頑なじゃねえと思うけど」
男「…女もなんかそんなこと言ってたわ」
友「俺と女だけじゃない。皆、知ってることだろ」
男「…あのさ」
友「うん」
59 :豆腐:2010/06/01(火) 10:10:35 ID:1f.zL0a2
男「確かに、愛子ちゃんに好きな人がいたっていうのはショックだったんだけど、それだけじゃなくて」
友「うん」
男「あのさ」
友「うん」
男「すげー恥ずかしいこと言ってもいい?」
友「おう」
男「俺、確かに愛子ちゃんは好きなんだ。でもさ、それはなんつうか…」
友「…」
60 :豆腐:2010/06/01(火) 10:11:22 ID:1f.zL0a2
男「俺、最近、友とか女とかイケメンくんとかと遊ぶ機会なかったじゃん。何か、それで好きになったんじゃないかとか思って」
友「ん?」
男「なんかこう、つまんねーとか寂しいなとか、そういう気持ちを恋愛で紛らわそうとしたんじゃないかとか…うわー、俺、超気持ち悪いこと言ってんね」
友「いいから全部話せ」
男「でさ。愛子ちゃんに好きな人がいるって聞いた途端、ショックはショックなんだけど、さめたっていうかさ。俺は本当にこの子のこと、好きだったのかなあ、なんてさ。寂しかったから好きになっただけなんじゃねーの、みたいな」
友「ふんふん」
61 :豆腐:2010/06/01(火) 10:12:15 ID:1f.zL0a2
男「でも、それもまた、言い訳くさいじゃん。傷つかないためにはってた予防線、発動、みたいな」
友「まーなぁ(やりたいだけの気持ちを自己弁護で押し通す奴らが多い中で、なんて希少価値の高いやつ…)」
男「なんかさ、どっち向いても最悪な俺がいるんだよ」
友「最悪ねぇ」
男「ぐじぐじしてるだけってのは解るんだけどさ…」
友「俺さ」
男「…」
62 :豆腐:2010/06/01(火) 10:13:00 ID:1f.zL0a2
友「お前覚えてるかしんねーけど、入学式のとき、食堂で隣にいたお前に話しかけたのが、初対面だったじゃん?」
男「うん…」
友「あのとき俺、下心あったよ。こいつと友達になれるかなとか、とりあえず友達いなきゃ始まんねーとかさ」
男「…」
友「正直言って、お前じゃなくても良かった」
男「…!」
63 :豆腐:2010/06/01(火) 10:13:43 ID:1f.zL0a2
友「でも、こんなに仲良くなれたのは、お前がお前だったからだと思うよ。きっかけなんてどうでもいいだろ。恋愛も同じことだと思うよ。あー、ちっと、トイレ」ガタッ
男「…」
トイレ
友「ぐおー、こっぱずかしー!」
友「…」
女『でね、男くん私にね、好きなやつに好きだっつって何が悪いか!みたいに言うのね。あはは。恥ずかしいやつだよねー。でも、嬉しかったなー』
友「…」
友「(好きなやつに好きって言う…か。そのまんまじゃねえか)」
友「(ま、俺の場合は今みたいなやり方が限界だな。だって恥ずかしいもん。うあー、今のも充分恥ずかしいけれども)」
64 :豆腐:2010/06/04(金) 12:46:13 ID:bEtr.J7.
男「(俺も友に話しかけられたとき…)」
男「(嬉しかったっていうよりは、…ほっとしたような気がする。友達ができたっていう、安心)」
男「(あの、『ほっとした』ってのは、確かに、あれが友じゃなくてもそう感じたのかも知れない)」
男「(でも、今、あいつは親友だ)」
65 :豆腐:2010/06/04(金) 12:47:28 ID:bEtr.J7.
男「(誰でも良かったはずの人間が、そいつじゃなきゃ駄目な人間になった。それは、時間の流れがないと解らないことだった)」
男「(そうか…時間は動いているのだな。くだんないことで悩んでいる暇、ないな)」
友「ただいまー。何か食おうぜ。腹減った。メニューくれ…何、手、合わせてんの?」
男「感謝の気持ちをあらわしております」
友「…ふ、普通に口で言ってくれ」
男「ナマステ」なーむー
友「ナ、ナマステ…」
66 :豆腐:2010/06/04(金) 12:48:43 ID:bEtr.J7.
二日後、学校、ラウンジ
イケメン「愛子ちゃんだろ?知ってるよ」
男「な、何で知ってんの!?」
イケメン「何でって…、彼女、軽音サークルだろ?俺、今年から、軽音サークル入ったもん」
男「…そうだったー!いたー!ここに女より頼りになる人がいたー!」
女「おい」
男「なんだよー、じゃあ、イケメンくんに愛子ちゃんの色々を調べてもらえば良かったよー」
女「あ、あんた、まーだそんなストーカーチックなことを言うか」
男「ジョ、ジョークだって。イッツ、ナマステンジョーク」
女「なにそれ!?どっから出てきたの、ナマステは!?」
67 :豆腐:2010/06/04(金) 15:36:21 ID:bEtr.J7.
友「なあなあ、その、愛子ちゃんて子は、男の話とかしてないの?サークルとかで」
男「うお!?ついに話の核心に!」
イケメン「んー。つっても俺も入ったばっかりであの子とろくに喋ったことねーっす。わりーね」
男「そりゃそうだ、そりゃそうだ」ハア、ハア
女「うわ、はあはあ言うな、きもい」
68 :豆腐:2010/06/04(金) 15:37:21 ID:bEtr.J7.
イケメン「ふーん、男があの子をねえ。ふふ、いいんじゃん?可愛らしい子だよな」
男「そうなんすよー、可愛らしい子なんすよー」
友「その可愛らしい子と、今からデートなんだろ?すげーじゃん」
イケメン「おお」
男「…」
女「…」
友「あれ?」
69 :豆腐:2010/06/04(金) 15:39:01 ID:bEtr.J7.
女「ななななんだとー!」
友「あ、言ってなかったんだ」
女「なんだそれなんだそれなんだそれー!聞いてないぞー!」
イケメン「へー、すげーじゃん、どこ行くの?」
男「え、映画。昨日、メールしてたら、なんかそんな感じに…」
女「ひゃー!あの男くんがデート。しかも今から!ひゃー!」
男「…ぶっちゃけ今、心臓がばくばくで訳解らんとです。あー…やばい、まじ緊張してきた。はきそー」
70 :豆腐:2010/06/04(金) 15:39:44 ID:bEtr.J7.
イケメン「まあただのデートなんだから、気楽にさあ」
男「ただのデート…。出たなイケメン発言」
イケメン「いや別にそういうつもりじゃないんだけどさ」
友「デートしたことないわけじゃないんだろ?」
男「…とうとう俺のデートの歴史を語るときがきたな。あれは俺が高校のころでした…」
女「おお、なんか語り始めた」
71 :豆腐:2010/06/04(金) 15:40:26 ID:bEtr.J7.
男「友達の友達の友達とメルアドを交換するっていうのが流行ってたんです」
女「目、つむってるよこの人」
友「喋ることによって気を落ち着かせようとしてるんだろう。そのまま喋らせてやれ…」
男「私もその流行に乗っかりました。相手は隣町の女子高の人でした」
男「私たちは何度かメールを交換し、電話も何回かし、そして、会うことになったのです、バッティングセンターで」
イケメン「バ、バッティングセンター!?初デートにバッティングセンター!?」
男「そうです」
女「うわ、返事した」
72 :豆腐:2010/06/04(金) 15:41:14 ID:bEtr.J7.
男「電話で、彼女がバッティングセンターに行ってみたいのだけど、行ったことがないと言っていたのです。そこで私は言ったのです。一緒に行きませんかと」
友「ふんふん」
男「次の日、うちの近くのバッティングセンターで待ち合わせをしました。彼女はにこりと笑って初対面の私に挨拶をしてくれました」
男「そして、私は彼女の目の前で、バッティングケージに入り、コインを入れ、バットを持ち、球を待ったのです」
73 :豆腐:2010/06/04(金) 15:42:06 ID:bEtr.J7.
五年前、バッティングセンター
男『(よしこい、打ったる!ホームラン打ったる!)』
ガガガ…シュッ
男『(きた!)うおおお!』
ドスッ
友「デ、デッドボール?」
男「…」コクリ
イケメン「な、なんでバッティングセンターでデッドボール?」
男「何かの間違いだと思いました。そこで私はもう一度、構えたのです」
74 :豆腐:2010/06/04(金) 15:42:53 ID:bEtr.J7.
男『こいやー!うおおお!』
男『ぐはっ』ドスッ
男『のうっ』ドスッ
男『あうっ』ドスッ
男『げふっ』ドスッ
イケメン「ぜ、全球、デッドボール…?」
男「…」コクリ
女「ひー!ひー!お、お腹が…」
友「ふははは、は!腹が!腹が!」
イケメン「な、なんでそんなことに…」
75 :豆腐:2010/06/04(金) 15:43:40 ID:bEtr.J7.
男「あとで聞いたところによると、そのマシーンは故障していたらしいです。バッティングセンターのおっちゃんが超謝ってきました…」
友「ていうか、出ろよ!ケージから出ろよ!」
男「確かにその通りです。私は出るべきだったのです。しかし、球に当たった瞬間、私はこうも思ったのです。『あ、これはおいしいな』と」
女「駄目だこりゃ」
男「私はおいしい方を選びました。全球に当たり、痛い思いをして、女の子を笑わせようとしたのです」
76 :豆腐:2010/06/04(金) 15:46:19 ID:bEtr.J7.
男「しかし、痛い思いをして、彼女を振り返ると、そこにあったのは笑顔の彼女ではなく、どん引きしていた彼女だったのです」
イケメン「どん引きっていうか、心配してただけなんじゃないの?」
男「私は笑ってほしかった。しかしそれは叶わなかった…。彼女とはそれっきりです」
友「何の話だよ!」
男「それ以来、デートらしいデートはしたことありません」
イケメン「…ええと、うん、お前の緊張がよく伝わるいい話だったよ」
77 :豆腐:2010/06/04(金) 15:47:14 ID:bEtr.J7.
女「ねえねえ、デートは何時からー?」
男「五限終わりに、正門前で待ち合わせ…」
女「五限終わり?よし、行ける!」
友「俺も」
イケメン「じゃあ俺も」
男「なんでだよ!馬鹿かおまえら!」
女、友、イケメン「ふふふ」
男「なんだその含み笑い!あ、四限始まる…おまえらまじ来んなよ!来てもまくからな!」ガタッ
女、友、イケメン「ふふふ」
78 :豆腐:2010/06/04(金) 15:48:10 ID:bEtr.J7.
女「さて、変装道具を買ってこなきゃ」
友「な、なに、お前、まじでつけんの?」
女「だって男くんのデートだよ?見たくないの?」
友「ん、んなわけあるかおまえ馬鹿やろう友達のデートつけるっておまえ」ソワソワ
イケメン「(すげえそわそわしてる!)」
79 :豆腐:2010/06/04(金) 15:49:04 ID:bEtr.J7.
五限後、校門
友「おお…あれが愛子ちゃん」
女「そう、あれが愛子ちゃん」スチャッ
イケメン「(サングラス…!いつの間に…)」
友「男はまだきてないみたいだな」スチャッ
イケメン「(こいつもサングラス!なにこのカップル!)」
女「女の子待たすなんて、10ポイント減点だぜい」
友「なにそのポイント制」
80 :豆腐:2010/06/04(金) 15:49:49 ID:bEtr.J7.
イケメン「…お、来た」
男「ごめんごめん、授業が長引いてさ」
愛子「んーん、大丈夫だよ、うちの授業が早く終わりすぎただけー」
男「そっかー。…じゃあ、行きましょうか」
愛子「行きましょー」
81 :豆腐:2010/06/13(日) 04:47:47 ID:lMQ52U1s
女「うーむ。なんだか爽やかじゃん。とっても普通」
友「お前は何を期待してたんだ」
イケメン「デートかあ。いいなあ」
友「そういやイケメン、なんで彼女いないの?」
イケメン「何でって言われても…。俺が知りたいっす」
女「よし、じゃあ今日は男くんハブにして、三人で飲みにいこーぜー」
友「行くかー」
イケメン「おーす」
82 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:21:02 ID:RGUlcorg
渋谷、居酒屋
友「はい乾杯ー」
イケメン、女「ういーす」
友「うあー、なんかイケメンと飲むの久々じゃない?」
イケメン「だね」
女「どうなのどうなの最近どうなのよー」
イケメン「いやー、お前らに見せたいよ、男兄さんのスパルタ加減」
友「え!?あの人、スパルタなの!?」
イケメン「基本的には優しいんだけどさ、スタジオの中だと鬼だね、鬼」
女「ふえー。想像できなーい。あれ?イケメンくん、ドラムだよね?」
83 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:21:56 ID:RGUlcorg
イケメン「ん?うん」
女「え、じゃあお兄ちゃんは何やってんの?」
イケメン「…何だろう、基本、ドラムスティック握ってうろうろしてる。スタジオの中を」
友、女「なんだそりゃ!」
イケメン「なんていうか…サウンドプロデューサー?みたいなもんなのかなあ…。俺、初心者だからよく解んないけど、でも、的確な指示、してくれてると思うよ」
友「うーむ…」
84 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:22:47 ID:RGUlcorg
女「じゃあ男兄さん、もう、ドラムやらないのかなあ。仕事も忙しいみたいだし、ていうかあの人、新人の分際で5月の売り上げ、全国一位だったらしいよ」
友「それ俺も聞いた!すげえよなあの人!」
イケメン「それ俺、100回くらい聞いたよ、本人に」
女「あはは、うざーい」
イケメン「あ、でもなんか来月あたりからもう一個バンド始めるみたいなこと言ってたよ」
女「うええ!?あの人、昔から思ってたけど、サドだよね、サド。自分に対するサド」
友「自分が恥ずかしい…学生の分際で『うわー俺今超忙しい』とか思ってた自分が…」
女「弟と一体どこで差がついたのか…」
85 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:23:28 ID:RGUlcorg
友「いやー、男兄さんが異常なんだって」
女「女の子好きになっただけであんなに大騒ぎするのも変だよー」
友「あはは、まーな」
女「は!そういや、男くん、どうやって誘ったんだろう?」
友「俺も詳しくは聞いてねーなー」
女「よし、想像しようぜー」
友「んー、まあ、電話はあいつからだろうなあ」
女「うん!で、あれだよ、授業の課題とかレポートとかそういうのを口実にしたと見た!」
86 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:24:17 ID:RGUlcorg
イケメン「通話ボタン押すのに一時間くらい悩んでそうだよな」
女「三日くらいかかったんじゃない?」
友「ははは、かけてそうだな。あ、すいませーん、ビールを…イケメンは?あ、二つください」
女「でも多分、その段階で映画に誘おうって気はなかったと思うの」
イケメン「あー、声だけ聞きたかったみたいな?」
女「そうそう、で…」
ケンケンガクガク…
品川、某映画館前
愛子「わー、可愛い映画だったねー」
男「うん、は、は、は、はっくしょん!」
87 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:26:15 ID:RGUlcorg
愛子「ありゃりゃ、大丈夫?」
男「噂してるな、どこかで誰かが」
愛子「男子は一歩外に出たら敵が七人いるって言うもんねー」
男「そ、それは意味が違うのでは…」
愛子「えへへー。ご飯食べいこーよ、お腹減ったー」
男「え?う、うん」
愛子「るーるーらー♪」テクテク
男「…?」
88 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:27:10 ID:RGUlcorg
愛子「にゃーにゃーにゃー♪」テクテク
男「…!あ、あの、愛子さん、つかぬことをお伺いしますが…」
愛子「はーい、なんでしょー?」
男「酔ってます?」
愛子「酔ってますーん!」
男「うん…え?どっち?」
愛子「たかがビール一杯で!」
男「い、いや、あなた、三杯は飲んでましたけど…」
愛子「あははー、うけるねー」ダラーン
男「う、うけますか、そりゃ良かった…」
89 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:27:52 ID:RGUlcorg
愛子「何食べるー?何食べたいー?」ビシッ!ビシッ!
男「た、たたかないでください…。あー、どうしよっか、渋谷とか恵比寿まで出る?」
愛子「お任せしやっす!」
男「んじゃとりあえず駅に向かおうか」
愛子「あいっ!」
男「…」テクテク
愛子「てーてててー♪」←アリスのテーマ
男「(おいおいおいおい…)」テクテク
男「(可愛い可愛いとは聞いてましたが…)」テクテク
男「(絶望的に可愛いやんけー!)」ヤンケーヤンケーヤンケー…
90 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:29:03 ID:RGUlcorg
渋谷、居酒屋
友「あー、男、上手くいってんのかな、今日」
女「気になるー」
イケメン「…」
友「どした?」
イケメン「ん、いや、んー、なんつうか、俺さ、あんま人の噂話っつうか、その場にいない人間の話で盛り上がるのが好きじゃなくてさあ。ほら、気ぃ抜いたらそれってすぐ、悪口になるじゃん?でも、男の場合は全然気になんないんだよなあ、不思議だなあと思って」
友「あー、確かに」
91 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:30:03 ID:RGUlcorg
女「ていうか、悪口言いたくなるってことは、あんま好きじゃないんでしょ?その人を」
イケメン「え?う、うん」
女「そんな好きでもない人の噂話するほど私たちは暇じゃないのですわ」
友「ですわってお前」
イケメン「…」
女「人生は短いんだから、誉めるのも悪口言うのも、対象は好きな人のみ!いえい!」
友「あー、酔っ払ってんなー」
イケメン「相当ね。男が聞いたら照れ臭さのあまり喧嘩始めるね、女ちゃんと」
友「間違いないね」
女「むむ!すいませーん、焼酎ロックおかわりー!」
イケメン「楽しいお酒でよかった」
友「本当に」
イケメン「(そうか、ゴシップは、話す人間たちが、話される人間のことを好きなら、俺が嫌いなあの嫌な感じにはならないのか…)」
92 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:30:53 ID:RGUlcorg
品川駅
男「さーて、とりあえずは渋谷方面に乗って…」
愛子「あ!はいっ!はいっ!」
男「はい愛子さん」
愛子「私、男くんのバイト先行きたい!レストラン!」
男「…え?」
93 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:31:49 ID:RGUlcorg
愛子「だめー?」
男「だ、駄目っていうかなんつうか、ええと」
愛子「うん」
男「き、今日は定休日かな…」
愛子「そっかー、残念ー」
男「ざ、残念でした、本当…」
愛子「じゃあどこ行く?」
男「えーと、飯食いたい感じ?それともお酒飲みたい?」
愛子「ご飯食べたい!お酒はあれば飲む!そんな感じっす!」
94 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:32:42 ID:RGUlcorg
男「そっか…あー、そしたら、五反田に美味しいハンバーグ屋さんがあるからそこ行こうか」
愛子「おーう!」
男「(うーん)」
男「(ただ事じゃねえぞ、この子の可愛らしさ…)」
男「(ていうか…)」
男「(俺、結構うまくやってない?どうですか皆さん?)」
男「(映画館を出たあと、流れるようにご飯屋さんを決める!このスキル!こりゃあもう、デートマスターだな、うん)」
95 :豆腐:2010/07/13(火) 21:38:56 ID:6ot8XGwM
五反田、某ハンバーグ屋
愛子「ん、まーい!なにこれー!」
男「ね。俺も初めてここのハンバーグ食ったとき感動したよ」
愛子「男くん!中が!中がレアで!中がレアでこれ!」
男「興奮しすぎ興奮しすぎ」
愛子「うわー、世界はまだ見ぬ美味しいもので満ちてるのねー」モグモグ
男「長生きしないとね」モグモグ
愛子「おいしー」モグモグ
男「…」モグモグ
96 :豆腐:2010/07/13(火) 21:39:46 ID:6ot8XGwM
男「(なんか…)」モグモグ
男「(すげえ普通じゃん)」
男「(俺、すげえ普通に、好きな子と飯食ってるじゃん)」
男「(もっとドキドキしたりパッパラパーになったり訳解んなくなったりすると思ってたのに)」
男「(それにしても…)」ジーッ
愛子「?」モグモグ
男「いや、うん、美味いね」
愛子「うん」ニコッ
男「(…あー、うん。俺、この子のこと、まじで好きだ)」
97 :豆腐:2010/07/13(火) 21:40:33 ID:6ot8XGwM
男「(きっかけがどうこう代替がどうこう言ってたころが懐かしい…。そうか、人を好きになるって、こういうふうに、いつのまにか、ぬるっと、なるのだなあ…。でも…)」
愛子「…ふー、お腹一杯」
男「(好きな人、いるんだよなあ、この子)」
男「(すげえ男前だったらどうしよう…いや、もしかしたら社会人でものすごい金持ちかも)」
男「(男前で金持ちって可能性もある…。え!?まさか社長!?)」
男「(三年前に学生時代の仲間と起業してあっという間に成功をおさめ今やヒルズに事務所を構え背の丈は180センチ、語学に堪能、女子アナやプロ野球選手と交流がありそして…)」ガクガク
愛子「(また遠くに行ってる…)」
98 :豆腐:2010/07/13(火) 21:41:18 ID:6ot8XGwM
愛子「帰ってこーい」
男「あふ!?」ビクンッ
愛子「一つ発見したことがあります」
男「な、なんでしょう」
愛子「男くんはよく異次元に行ってしまいます」
男「あ、あ、うん、ごめん」
愛子「寂しいな〜、つまんないな〜」
男「あわわわ、ご、ごめんなさい!」
愛子「とうっ!おしぼり攻撃!」
男「ぎゃあっ」バフッ
愛子「これで、おあいこね」ニコッ
男「は、はい」
99 :豆腐:2010/07/13(火) 21:41:57 ID:6ot8XGwM
愛子「あ…」
男「…」
愛子「…」
男「…?」
愛子「…」
男「ど、どうしたの?」
愛子「…おしぼり」ズーン
男「へ?」
愛子「おしぼり投げるなんて私、行儀悪かったー…」
男「え?」
100 :豆腐:2010/07/13(火) 21:42:59 ID:6ot8XGwM
愛子「あー駄目だ、酔ってるとはいえ、ご飯食べるとこでこんな…」ブツブツ
男「…」
愛子「はあ…」
男「あ、愛子ちゃん」
愛子「…ん?」
男「すごくいいと思う」
愛子「え?なにが?」
男「いや、俺にも上手く言えないけど、うん、すごく愛子ちゃん、いいと思う」
愛子「えーと。…なんかよく解んないけど、ありがとう」
男「…なんかよく解んないのにありがとうって言ってくれてありがとう」
愛子「…」
男「…」
愛子「…ぷ」
男「ふふ」
愛子「あはは!何、この会話!あはは!」
男「意味わかんねー、あはは」
愛子「ふふふ、あ、ハンバーグが冷めちゃう。食べよ食べよ」
男「うん」
101 :豆腐:2010/07/13(火) 21:43:42 ID:6ot8XGwM
五反田、路上
愛子「美味しかったー」
男「ふふ、でしょ」
愛子「川沿いっていうのがまたお洒落だよねー」
男「かな?」
愛子「これ目黒川でしょ?で、ずっとあっち行ったら中目黒でしょ?」
男「だね。多分」
愛子「私ねー、中目黒にすっごく美味しい居酒屋さん知ってるの。そこも目黒川沿い。今度行こうよ」
102 :豆腐:2010/07/13(火) 21:44:33 ID:6ot8XGwM
男「うん、是非(社交辞令でもいい!それでも嬉しい男心!)」ドンッ
酔っぱらい「あいたー!」
男「あ…す、すいません」
酔っぱらい「すいませんじゃねえよ兄ちゃん、いってーなー」
男「か、肩がぶつかっただけじゃないですか」
酔っぱらい「ああ?待て待て待て。兄ちゃん、面白いなあ。ええ?君、加害者よ?そして僕、被害者よ?」
連れの女「ねえもういいじゃん、行こうよ」
酔っぱらい「お前は黙ってろ。おい兄ちゃん、ちょっとこっち来いや」
男「…」チラッ
愛子「…」
男「(うおおー!こえー!でも愛子ちゃんの前だし)…いいっすよ、付き合いますよ」
103 :豆腐:2010/07/13(火) 21:45:23 ID:6ot8XGwM
愛子「や、やめなよ、男くん」
連れの女「ねえ、もういいじゃんって!君もやめなって、こいつ空手とかやってて超強いよ?」
酔っぱらい「うるせえっつってんだろ!」ゲシッ
連れの女「きゃあ!」
男「うわ!あ、あ、あの、女の人に手を出すのは…」
酔っぱらい「ああ?」グイッ
男「い、いつつ…」
酔っぱらい「お前なんかムカつくなあ。なめてんだろ?え?」
男「い、いや、そんなつもりは…(あ、やばい、漏らしそう)」
104 :豆腐:2010/07/13(火) 21:46:12 ID:6ot8XGwM
酔っぱらい「彼女の前で格好つけたかったんか知んねーけどよ、人見て粋がれや」
男「か、か」
酔っぱらい「ああ?」
男「肩がぶつかったのは、あ、謝ります。で、で、でも(あ、やばい、心臓が爆発しそう)、それだけでこんなことされる筋合いはないし、それと、僕が誰を連れてるかとかあなたがどんな人だとか、関係ないです。手を放してください」
酔っぱらい「…はい、もうお前、ぼこぼこになるの決定ね。泣いて謝ってもぜってえ許さねえから」
105 :豆腐:2010/07/13(火) 21:47:07 ID:6ot8XGwM
連れの女「いい加減にして」バシッ
酔っぱらい「いた!何すんだてめえ!」
連れの女「もう嫌!何なの!?何であんたいっつもこうなの!?もう沢山!もう嫌だ!馬鹿!死ね!くそ野郎!」
酔っぱらい「あ、おい、待てよ!おい!おい!」
連れの女「うるさい!」テクテク
酔っぱらい「ちっ、てめえのせいで行っちまったじゃねえか!」バキッ
男「あがっ!」
酔っぱらい「おい!待てって!おい!」タッタッタッ
106 :豆腐:2010/07/13(火) 21:48:15 ID:6ot8XGwM
愛子「男くん!大丈夫!?」
男「だ、大丈夫…(じゃない。怖かった…すげえ怖かった…)」
愛子「怪我は!?」
男「ん、全然大丈夫」
愛子「よかったー。ていうかなんなのあいつ!超むかつく!」
男「い、色んな人がいるから…」
愛子「かばうことないよ、あんなやつ!でもよかった、怪我がなくて」
男「うん、ありがとう」
愛子「…」
男「…」
愛子「どしたの?」
男「いや…」
愛子「?」
男「(た、立てない…。これが、俗に言う、腰が抜けたってやつ?)」
愛子「も、もしかして、腰が抜けたとか?」
男「…うん」
愛子「…」
107 :豆腐:2010/07/13(火) 21:48:58 ID:6ot8XGwM
男「(か、格好悪すぎる…あーひかれた…最悪…)」
愛子「…腰が抜けた」
男「(あー死にてー…)」
愛子「ぷっ」
男「!」
108 :豆腐:2010/07/13(火) 21:49:50 ID:6ot8XGwM
愛子「あ…、あはははは!えー!?大丈夫!?腰が抜けた人なんか、初めて見たー!あはははは、男くん、格好わるーい!」
男「…」
愛子「あはは…!ご、ごめんなさい、笑い事じゃないよね」
男「…」
男「心の声に耳を澄ます…」
愛子「え?」
男「愛子ちゃん」
愛子「は、はい」
男「…好きです」
109 :豆腐:2010/07/13(火) 21:50:35 ID:6ot8XGwM
愛子「…」
男「…」
愛子「…え?」
男「愛子ちゃんのことが、好きです」
愛子「…えーと、え?」
男「…」
愛子「あ、えっと、…すごいタイミングで、すごいことを言う、ね」
男「俺もそう思う」
愛子「ムードも何も、ないよね」
男「俺もそう思う。ごめんなさい」
110 :豆腐:2010/07/13(火) 21:51:45 ID:6ot8XGwM
愛子「…とりあえず、立てる?」
男「うん、多分」ヨロヨロ
愛子「大丈夫?」
男「うん」
愛子「…」
男「…」
愛子「あのね」
男「うん」
112 :豆腐:2010/11/16(火) 12:11:35 ID:r27RvCAg
愛子「何だろ…ええと、うわ、びっくりしたー。あはは」
男「…ごめん」
愛子「…だってさ、出会ったばっかだしさ、男くん、私のことよく知らないだろうしさ」
男「(ああ…)」
男「(多分これ、ふられるな…。そんな感じ、するもん)」
愛子「…」
男「(諦めなきゃ…すっぱり…)」
男「そうだよね」
愛子「え?」
113 :豆腐:2010/11/16(火) 12:12:17 ID:r27RvCAg
男「愛子ちゃん、好きな人いるんだもんね、ごめんね、迷惑だよね」
愛子「…はい?」
男「…え?」
愛子「好きな人?」
男「…え?あ、ほら、前、言ってたじゃん、好きな人がいるって。ドトールで」
愛子「…北方謙三のこと?」
男「きたかたけんぞう?」
愛子「…作家」
男「…は?」
愛子「私の好きな、作家」
男「…ん?」
114 :豆腐:2010/11/16(火) 12:13:29 ID:r27RvCAg
愛子「何なの?それも聞いてなかったの?」
男「さ、作家?」
愛子「言ったじゃん。覚えてないの?違うか。聞いてないんだもんね、私の話なんか」
男「え、いや、あの(な、なんか話が剣呑な方向に)」
愛子「私のどこが好きなわけ?だってさ、私の話聞いてないってことは、私に興味がないってことでしょ?」
男「い、いや、そんなわけ…」
115 :豆腐:2010/11/16(火) 12:14:35 ID:r27RvCAg
愛子「そんなわけあるじゃん!馬鹿にしてるよ!何なの!?」
男「ば、馬鹿になんかしてない!ちょっと待って、話を聞いて!」
愛子「いい」
男「…」
愛子「聞きたくない。どうせ中身のない言い訳だもん」
男「…」
愛子「見た目でしょ?」
男「…え?」
愛子「どうせ私の見た目だけでしょ?」
男「いや…あの…」
116 :豆腐:2010/11/16(火) 12:15:25 ID:r27RvCAg
愛子「ほら、何も言えない。最低。もう明日から私に話し掛けないでください。さようなら」スタスタスタ
男「」
男「…ま、待って」タッタッタッ
愛子「…何ですか。回り込まないでください」
男「…見た目だったかも知れない!」
愛子「…」
男「だってそうじゃん!見た目って大事じゃん!恋愛のこととか俺よく解んないけど、多分そうじゃん!」
愛子「…」
男「でも、それだけじゃないよ。上手く言えないけど、それだけじゃない。話、聞いてなかったときもあった、確かに。それについて言い訳はしません。でもさ、俺、解んないけど好きなんだよ!愛子ちゃんのこと、好きなんだよ!」
愛子「もういいよ…」
男「よくない!」
117 :豆腐:2010/11/16(火) 12:16:11 ID:r27RvCAg
愛子「…」
男「俺が愛子ちゃんと付き合える付き合えないは置いといて、そこ誤解されたくない。そこっていうのは、愛子ちゃんは、見た目だけじゃなくて、そこも含めてだけど、色んなところも含めて俺は好きになって、ただ、その、色んなところ、というのを言葉にするのは無理ですごめんなさい!」
愛子「…意味が解らない」
男「わか…え!?解んない!?」
愛子「うん」
男「さっぱり!?」
愛子「さっぱり」
男「…」
愛子「…」
男「ええと」
愛子「正直だよね」
男「え?」
118 :豆腐:2010/11/16(火) 12:17:01 ID:r27RvCAg
愛子「男くん。すごく正直。まだ男くんと知り合って間もないけど、それはすごく解る」
男「…」
愛子「自分にも、他人にも。誠実だよね」
男「…」
愛子「本気で怒ってはなかったんだ」
男「は?」
愛子「さっき」
男「…え!?そうなの!?」
愛子「うん。ていうか…うん、最低は私だよね。ごめんね。怒ったふりして、逃げようとしてた」
男「逃げる…」
愛子「正直に、誠実に、男くんは私にむかってきてくれたのにね」
男「…」
119 :豆腐:2010/11/16(火) 12:19:17 ID:r27RvCAg
愛子「人って何で嘘つくのかな。傷つけたくないからかな。自分を?他人を?解んないや。解んないけど、多分、私は今、私のことしか考えてなかった」
男「…」
愛子「男くん」
男「…はい」
愛子「いきます。正直に」
男「お、おす」
愛子「好きって言ってくれてありがとう。でも私は、男くんを、そういうふうに見ることは、出来ません」
男「…」
愛子「…」
男「…そっか」
愛子「…うん」
男「よかったー」
愛子「…え?」
120 :豆腐:2010/11/16(火) 12:20:08 ID:r27RvCAg
男「愛子ちゃん、本気で怒ったと思ったからさー。そっか…そっか。怒ってなかったんだ」
愛子「…うん」
男「…」
愛子「ごめんね」
男「あはは、何で謝んのさ」
愛子「ごめんね」
男「…」
愛子「これからも、友達でいてくれる?」
男「もちろん!当たり前じゃん」
愛子「…ありがとう」
男「あはは、お礼言われる意味が解んないよ」
愛子「…」
男「…」
愛子「じゃあ、今日はもう帰るね」
男「…うん」
愛子「…じゃあ」
男「うん」
愛子「…」スタスタスタ
男「…愛子ちゃん!」
愛子「…ん?」
男「友達だから!ずっと!」
愛子「…」
愛子「うん」
121 :豆腐:2010/11/16(火) 12:21:08 ID:r27RvCAg
男「そっかそっか」
男「怒ってなかったんだ」
男「よかった」
男「本当に…」
男「よかった」グスッ
男「なんだよ」グスッ
男「何で涙出るんだよ」グスッ
男「…」
男「う、う、う、ヒグッ」
122 :豆腐:2010/11/16(火) 12:21:59 ID:r27RvCAg
翌日、学校、昼休み、食堂
女「(ねえ、ちょっと、聞いてよ)」ヒソヒソ
友「(ええ!?いや、無理だよ、お前が聞けって!)」ヒソヒソ
女「(えええ!?あ、イケメンくん、任せた!)」ヒソヒソ
イケメン「(ええ!?俺!?)」ヒソヒソ
友「(頼む、イケメン!)」ヒソヒソ
イケメン「(ひー!)な、なあ、男」
男「ん?」
イケメン「え、ええと、その、あの」
男「愛子ちゃんのこと?」
友、女、イケメン「…!」ドキーン!
123 :豆腐:2010/11/16(火) 12:23:04 ID:r27RvCAg
男「うん。ふられた」
友、女、イケメン「え!?」
男「俺のこと、そういうふうに見れないんだってさ」
イケメン「そ、そうか」
女「…諦めきれるの?」
男「んー。どうだろう。ちょっとすぐには、難しいかも」
友「…」
男「でもさ、何か良かったよ。結果的にはさ、その、ふられたけどさ。俺、あんなに真剣に女の子と向き合ったのって、初めてだし」
イケメン「…そっか」
男「…ふふ」
女「ん?」
124 :豆腐:2010/11/16(火) 12:23:53 ID:r27RvCAg
男「なんか気持ちわりーな、と思って。恋に我を忘れてさ。すげー恥ずかしいことばっかやってさ。ていうか今のセリフも大概だよな。『真剣に女の子と向き合った』って。くだんねー」
友、イケメン「…」
女「いいじゃん」
男「え?」
女「我を忘れるのが、楽しいんじゃん。我を忘れない恋するほうが、よっぽど恥ずかしいよ」
男「…」
125 :豆腐:2010/11/16(火) 12:24:43 ID:r27RvCAg
女「気持ち悪いとか、くだらないとか、言うな、恋愛を」
126 :豆腐:2010/11/16(火) 12:25:36 ID:r27RvCAg
男「…うん」
女「と、私のひい爺ちゃんが申しておりました」
男「そうですか…」
女「そのようですね」
そのあと男くんは、ぽつりぽつりと、自分のした恋について話してくれました。格好悪いところを笑ってくれて、で、好きが沸騰して思わず告白してしまったというくだり、男くんらしいなあと感心してしまいました。それは物語にもなりそうにない、ちっぽけなお話だったし、もちろん美談なんかじゃないし、面白いわけでもない、愛子ちゃんも変な子だなあと思ったのだけど、目黒川沿いで二人はきっと一所懸命だったんだろうなあと思うと、何だか愛しい気持ちになりました。
127 :豆腐:2010/11/16(火) 12:26:32 ID:r27RvCAg
誰でもいいのだけど、誰でもよくない。その微妙なとこで私たちはふらふらしながら友情や恋愛を作っていて、それがなくなったときにいかにそれを笑えるか。嗤う、ではなく、笑う。むん、と背筋がのびます。
あ、三日後、男くんを励ます会と称して飲み会を開いたら、男くんのバイト先のパートのおばさんも何故だかやってきました。で、私はいっぺんにそのおばさんを好きになってしまいました。だって彼女は男くんにこんなことを言うのです。「大丈夫大丈夫!若いうちに出来た傷なんて舐めてりゃ治るもんよ!それに、古傷はあればあるほどおばちゃんくらいの歳になったときに光り輝くのよ!ほら、おばちゃんを見てごらん、もう、後光がさしちゃってるでしょ、あはは!」
128 :豆腐:2010/11/16(火) 12:27:25 ID:r27RvCAg
飲み会のち、とあるカラオケ店
イケメン「うおー、友、歌うめー」
友「そう?サンキュー」
おばちゃん「いやー、若い子に囲まれてカラオケなんて、今日はいい日だわー」
男「別に今日はおばちゃんを囲む会じゃないっすからね!?俺を励ます会なんすからね!?」
女「自分で言うなー」
おばちゃん「そうだそうだー」
男「うおお、何でもうこの人たち既に息があってんの!?」
イケメン「お、次、男じゃん…て、あれ?この曲…」
男「それでは聞いてください!『もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対』!」
友「だっはっはっは!」
女「お前、大げさなんじゃー!」
男「あ、ものを投げるのはやめてください、うわ、それは洒落にならん、駄目だって、ジョッキはいかんジョッキはいかんて!」
終わり
129 :豆腐:2010/11/16(火) 12:29:05 ID:r27RvCAg
ふう。やっと終わりました。夏が終わる前には終わらせたかったのにもう冬やし!
ヤマなしオチなし、しかし意味はあると思いたい!そんなお話です。面白いとはとても言えませんが、気に入っていただけたら嬉しいです。またお会いしましょうさようなら。
130 :みんなの暇つぶしさん:2010/11/17(水) 02:38:03 ID:8qAY2qoY
ああ、ジョッキはいかんジョッキはいかんよな
てか誰か男を幸せにしてやれよ
面白かった
無事完結、乙です
VIPから書籍化!まおゆうが2010年12月29日発売!!
転載元
男「恋をしてしまった」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12874/1274110463/
ええと、男「はあ!?お前ら付き合ってんの!?」とか、男兄「朝だっぞー、朝だっぞー!」の、続きというか同じ登場人物が出ます。うひひー。
2 :豆腐:2010/05/18(火) 00:36:06 ID:4cElcmOY
学校、食堂
女「な、何、急に」
男「急にではない。この想いは約一ヵ月前から徐々に温めてきたわけだ」
女「う、うん」
男「あー、この胸のときめき、高鳴り、切なさ」
女「…」
男「苦しさ…」
女「そ、それは大変ですね」
男「これが…恋の苦しみ?」
女「知らん知らん!ていうか何で私に言うわけ?」
男「誰かに言わねば爆発してしまいそうだった」
女「別に私じゃなくても、友とかイケメンくんとかに相談すりゃいいじゃん。ていうか何なの、さっきから。その芝居口調」
VIPから書籍化!
3 :豆腐:2010/05/18(火) 00:37:47 ID:4cElcmOY
男「相談じゃねえもん」
女「じゃあ、なに」
男「何ていうか、吐露?」
女「とろぉ?」
男「俺は恋愛の相談なんか友達にはしない。俺は知ってんだ、友達の恋愛の悩みを聞く程だるいことはないということを」
女「えーと、してんじゃん、今、まさに」
男「違うっつうの!これは相談じゃねえ!俺はただ、この心の痛み、切なさを誰かに聞いてほしかったんす。そして『いけるいける、がーんば』とか言ってほしかったんす。で、たまたま目の前にあんたがいたんす」
女「…いけるいけるがーんば」
男「棒読みだもの!それ棒読みだもの!」
4 :豆腐:2010/05/18(火) 00:39:37 ID:4cElcmOY
女「ええと…男くん、一言いいでしょうか?」
男「待って!それは俺を傷つける系?傷つける系の一言?」
女「いや、うーん、どうだろ」
男「そうか…。ふう、ふう」
女「…」
男「よし、心の準備は出来た…来い!」
女「こほん。それでは…」
男「お、おう…」
女「…」
男「…」
女「うっぜーよ、このすっとこどっこい!」
男「ぎゃあ!」
5 :豆腐:2010/05/18(火) 00:40:58 ID:4cElcmOY
女「でこすけ!」
男「ひい!」
女「雑巾野郎!」
男「うあー!」
女「以上です!」
男「あ、あわわわ」
女「男くん」
男「は、はい」
女「相談したいなら素直にそう言いなさい。女性としての私の力が必要なら最初からそう言いなさい。回りくどいのよ、あなた」
男「す…」
男「すいませんでしたー!うえーん!」
隣の席の男子「(す、すげえ、プロだ…。あの子、プロフェッショナルだ)」ヒソヒソ
隣の席の女子「(いやーん、私もあんなふうに男の子操縦したーい!)」ヒソヒソ
6 :豆腐:2010/05/18(火) 09:03:24 ID:4cElcmOY
女「で、どんな子どんな子ー?なんか楽しいな〜、男くんのコイバナなんてさ。ぷぷぷ」
男「どんな子…なんて言うか、綺麗っていうか可愛い系で」
女「ふんふん」
男「すげえ細くて」
女「ふんふん。ねえ、その子はなに?うちの学校なの?」
男「うん。ため」
女「おー、なになにー、遊びとお酒にしか興味なさそうな顔して見るとこ見てんじゃーん、男くーん」
男「な、なんなのあんた、その超上から目線」
女「そりゃ私のが上じゃない?男くんよりかは」
男「(こ、この野郎…勝負したろか。でも多分、俺が負ける…)」
7 :豆腐:2010/05/18(火) 09:04:40 ID:4cElcmOY
女「ほらほら、で?で?」
男「で…」
女「うんうん」
男「…」
女「?」
男「きた…」
女「へ?」
男「ききききたきたきた、ほら、あそこ、あそこの、ほら、水色のスカート、ほら、ボブカットの」
女「んー?」
男「可愛いなあ…今日も」
女「え、ごめん、解んない、どの子?」
男「あそこあそこ、水汲んでる女の子グループ、あそこ!」
8 :豆腐:2010/05/18(火) 09:06:25 ID:4cElcmOY
女「ほーほー、えーと、ああ、可愛いらしい子じゃん」
男「でしょ!ミスだよミス!ミス俺史!」
女「いやそれは知らないけど、あー可愛いわ、確かに」
男「そうなんですよー、可愛いんですよー」
女「諦めたほうがいいんじゃん?」
男「そうなんですよー、諦めたほうがいいんですよーっておい!」
女「だって超可愛いじゃん。彼氏とかいるんじゃないの?」
男「あ、彼氏はいないらしいっす」
女「ふーん、って、…何で知ってんの?ま、まさか男くん!ス、ストー…」
男「ちがーう!やめて!こんな人が一杯いるとこで滅多なこと言わんとって!」
9 :豆腐:2010/05/18(火) 09:09:00 ID:4cElcmOY
女「じゃあ一体…」
男「いや、だからさ…」
かわいこちゃん「男くーん!」
女「んん!?」
男「はう!」
かわいこちゃん「はろー」
男「…おーす」
10 :豆腐:2010/05/18(火) 09:10:04 ID:4cElcmOY
かわいこちゃん「元気ー?」
男「うん、元気だよ。今からご飯?」
かわいこちゃん「うん、今からー。男くんは?もう食べた?」
男「うん、もう」
かわいこちゃん「そっかー」チラ
女「…」ペコリ
かわいこちゃん「こんにちは」ペコリ
女「こんにちはー」
かわいこちゃん「じゃ、また、あ、今度一緒にお昼食べようねー」
男「あ、うん、そうだね」
かわいこちゃん「じゃねー」テクテク
11 :豆腐:2010/05/18(火) 09:11:08 ID:4cElcmOY
女「…」
男「…」
女「おいおいおーい、どうなってんの男くーん!会話交わしてんじゃーん!知らない仲じゃないじゃーん!えーなにあんた、うわー、いつの間にー!きゃー!エロいー!不純異性交遊ー!きゃー!しかもこいつちょっと格好つけてたー!」
男「せ、静粛にお願いします!」
12 :豆腐:2010/05/18(火) 09:12:46 ID:4cElcmOY
「かわいこちゃん」のままでは書いてる豆腐が笑けてしまうので、これより、かわいこちゃん→愛子ちゃんと表記を変えます。
女「えー、なになに、どうなってんのどうなってんの?」
男「ええとですね…」
以下男回想
一ヵ月前、学校、喫煙所
男『(生徒手帳ももらったし、あとは定期更新するだけだ)』
男『(んー、この時期は人少ないなあ…今日すげえあったかいし気持ちいいなあ…ベンチの上で昼寝でもして帰ろうかなー)』シュボッ
男『…』シュボッ
男『ぬ?』シュボッ
男『うわー、オイル切れかよー。生協…は開いてないよなあ』シュボッ
13 :豆腐:2010/05/18(火) 09:14:51 ID:4cElcmOY
男『つけ!この!』シュボッ
テクテク
愛子『はい、ライター』
男『へ?あ、どうも』
愛子『いいえー、ふふ、今日もライターないんですね』
男『…?』シュボッ
男『スー、プハー。ええと…?』
愛子『…』ニコニコ
男『………ああ!前も、貸してくれましたよね、ライター』
愛子『はい貸しました。そして忘れられてました』ニコニコ
男『あー、いやいや!違うんすよ!忘れてたわけじゃなくて、ええと、いや、まあ、忘れてたといえば忘れてたとも言えるし、いやいやいや!』
愛子『あははは、超必死じゃないですかー』
男『いやいや!必死じゃないですって!まじでまじで!いや、今は必死ですよ?でもそれは、さっきは必死じゃなかったということを伝えたいがために必死になってるだけですよ!?』
愛子『あははは、わけわかんない!』
14 :豆腐:2010/05/18(火) 09:15:56 ID:4cElcmOY
男『いやー、あ、ライターありがとうございました。助かりました』
愛子『いえいえ。今日は?授業の抽選か何か?』
男『いや、散歩がてら学校に新しい生徒手帳をもらいに。定期も更新しなきゃだし』
愛子『へー、この辺に住んでるんですか?』
男『いや、ここからだと二時間くらい歩きますよ』
愛子『えー?それって散歩とは言わないと思いますよ?』
男『あー…そうですね。ええと…イベント?』
愛子『イベントって!あはは!今年から何年生ですか?』
男『あ、ええと、三年生になります』
愛子『あ、ためじゃないですかー』
男『あ、そうなんすか。いやいや、どうもどうも』
愛子『あはは。どうもどうも。三年生の愛子と申します。よろしく』ペコリ
男『あ、はい、ええと、男と申します』ペコリ
15 :豆腐:2010/05/18(火) 09:17:03 ID:4cElcmOY
愛子『男くん。ふふ、友達増えちゃった』
男『(か、かわえー…)今日は何で学校に?』
愛子『私?私はサークルの用事で。ちょっと早くつきすぎちゃったんですけどね』
男『へー。何のサークルなんですか?』
愛子『軽音サークルです』
男『軽音!へー。楽器は何やってるんですか?』
愛子『ベースやってます』
男『ベースかあ、ふーん。いやあ、楽器出来る人って尊敬しますよ(兄貴は別として)』
愛子『そんな大したものじゃないですよー。あ、そうだ、聞きたいことがあるんですけど』
男『はい?何でしょう』
愛子『ええと…』ニマー
男『?』
16 :豆腐:2010/05/18(火) 09:18:16 ID:4cElcmOY
愛子『ちょっと前なんですけど』
男『はい』
愛子『なんかすごい全力疾走してませんでした?学校の中で。あれ、男くんですよね?』
男『!!み、見られてました?』
愛子『ふふ、見てました。あれ、何で?』
男『ええと』
愛子『うん』
男『け、喧嘩して』
愛子『?』
男『友達と喧嘩して…やむにやまれず…こう…いたたまれなくなって』
17 :豆腐:2010/05/18(火) 09:25:13 ID:4cElcmOY
愛子『…ぷ』
男『…』
愛子『あはははは!喧嘩して、で、走って逃げた、みたいな?』
男『ま、まあ、そうなりますね』
愛子『あはは、可愛い!小学生みたい!』
男『あ、あははは…』
18 :豆腐:2010/05/18(火) 09:27:04 ID:4cElcmOY
男「というようなことがありまして」
女「ふんふん」
男「で、授業始まったら、同じ授業を二つ取ってることが発覚しまして」
女「おお」
男「で、連絡先など交換しまして」
女「いいねいいね」
男「今に至ります」
女「へー。いいじゃんいいじゃん。何かさ、話だけ聞いてるとすごいいい感じじゃん」
男「そ、そうかな」
女「さっさと告っちゃいなよ。そして玉砕」
男「おい!」
女「まあでもさ、愛子ちゃんは、男くんのこと、憎からず思ってるんじゃない?わざわざここでも話し掛けてきたしさあ」
男「いや」
女「ん?」
19 :豆腐:2010/05/18(火) 09:29:08 ID:4cElcmOY
男「あの子はね、すごい愛嬌のある子なんだ」
女「ああうん、そんな感じかもね」
男「俺への態度も多分、その愛嬌の範囲内なんだよ」
女「ふーん」
男「でももしかしたら本当に俺に好意を抱いているかも知れない」
女「なんなのあんた」
男「いやだから解んないんだって!どっちか解んないから辛い!心が痛い!つねられるように!」
20 :豆腐:2010/05/18(火) 09:30:22 ID:4cElcmOY
女「んー、まあその気持ちは解らなくはないけどさ、ゲームじゃないんだから。人の心の問題なんだから。今はどうか知らんけどさ、今から愛子ちゃんともっと仲良くなって、遊んだりお喋りしたりしてさ、本当の好意をものにすればいいじゃん。悩むことないよ。男くんの魅力見せつけちゃれ。まあそんなもんがあればの話だけど」
男「でもさ、その過程で失敗したり愛子ちゃんに嫌われたりしたらもう俺立ち直れんです」
女「そうなの?」
男「そうだろ!お前、恋愛を何と心得る!あとさっきからちょいちょい呪いの言葉吐くのやめれ!」
女「んー」
男「で」
女「うん」
21 :豆腐:2010/05/18(火) 09:32:14 ID:4cElcmOY
男「まあ、お前がさっき言ったことは正論だよ。確かに、こう、愛子ちゃんが俺を今、どう思ってようが、これからが大事なんだよ」
女「うんうん」
男「だから俺は愛子ちゃんをデートに誘おうと思っとります」
女「おお」
男「…どうやって誘ったらいい?」
女「知らないよ!自分で考えてよそんなのー」
男「アドバイスくれよー女性目線のアドバイスをよー」
22 :豆腐:2010/05/18(火) 09:33:27 ID:4cElcmOY
女「えー?デート行こうよ!って言えばいいじゃん」
男「そ、そんなストレートでいいの?」
女「いや知らないけど」
男「うおーい!」
女「女性目線どうこうって言うけどさあ、女の子だって人それぞれなんだし、私あの子のことよく知らないし、そんないいアドバイスはなあ…してあげたいけどさ、もちろん。応援はします、はい」
男「…女よ、それを解決する、ただ一つの方法があるのだ」
女「…なんでしょう」
23 :豆腐:2010/05/18(火) 09:39:27 ID:4cElcmOY
男「愛子ちゃんと友達になってくれないか」
女「はあ?」
男「で、愛子ちゃんの好みのタイプ、彼氏がいるのかいないのか、理想のデートコース、全部聞いてきてくれ!」
女「…き、きもー!発想がもうそれあんた、スト…」
男「言うなー!それ以上言うなー!」
24 :豆腐:2010/05/18(火) 09:40:27 ID:4cElcmOY
女「そもそも何であたしがそんな面倒くさいこと…」
男「お前、友達の恋を応援してやろうという乙女心はねえのかよ!」
女「いやだから応援はするって」
男「だったら愛子ちゃんと友達に…」
女「だからそれは面倒くさいって」
男「面倒くさい面倒くさいっておまえはゆとり教育の弊害か!」
女「なにそれ」
男「俺にも解らん!あれ?どこまで話したっけ」
女「男くんが私に三泊四日沖縄の旅をプレゼントしてくれるってところまで」
男「してねーよそんな話!なんだお前どさくさに紛れて!恐ろしいやつだなこのやろう!」
女「そうかしら」
25 :豆腐:2010/05/20(木) 08:55:29 ID:fjn3Ra5w
男「くっそー、大体、俺がお前と友のキューピッドやってやったんだから、そのお返しとしてさあ」
女「はあ!?キューピッド!?誰がキューピッド!?」
男「え?お、俺が?」
女「男くんが?誰の?」
男「あ、あなたと友の…」
女「何言ってんの、馬鹿じゃないの、全然違うし」
男「え?違うの?」
女「うん」
男「そうだったのか…」
女「うん」
26 :豆腐:2010/05/20(木) 08:56:42 ID:fjn3Ra5w
男「え、じゃあ俺は誰のキューピッドなの?」
女「誰のキューピッドでもないと思うよ」
男「そ、そんな馬鹿な…」
女「さあ、馬鹿は誰でしょうね」
男「ぬう…」
女「ていうか友は知ってんの?男くんが恋してるってこと」
男「いや、たぶん知らない」
女「えーなんで?イケメンくんは?」
男「言ってない」
女「うえー?なんでよー。こういう面白い話は言い触らさなきゃー」
男「(こ、この女…)いや、なんつうか、単純に最近、遊ぶ機会なかったしさ」
27 :豆腐:2010/05/20(木) 08:57:29 ID:fjn3Ra5w
女「あー、そういやそうだね。友、教職とってるしゼミもあるし授業けっこうきちきちだもんね。イケメンくんなんかそもそも忙しい人だったのにバンドやりはじめちゃったしねー」
男「そうだよあのくそ兄貴、イケメンとりやがってー。真面目に仕事に勤しめよ。社会人一年生としての自覚たんねーんじゃねーか」
女「だらだらしてんの私たちくらいよね。ま、就活始まったら否がおうにも忙しくなるんだろうけど」
男「はあ…就活かあ」
女「容赦ないよねー、人生。そうだよねー、皆、少しずつ色々変わってくよね。そりゃ男くんだって恋もするわ」
友「ういーす」
男「おーう」ダラダラ
女「お疲れー」ダラダラ
友「な、なんかここだけ春にあるまじき暗いオーラがほとばしってんぞ」
女「人生の無常を嘆いてたところなのさ」
友「なにそれ」
28 :豆腐:2010/05/20(木) 09:01:07 ID:fjn3Ra5w
男「授業終わり?」
友「ん?うん、今日は終わり」
女「今から映画行くんだぜー、@ららぽーと」
男「ららぽーと?豊洲?」
女「そうそう。男くんも行く?」
友「アリス見た?まだなら一緒に行こうぜ」
男「あー…いや、今日はバイトだわ」
友「そっか」
女「まあただの社交辞令だったんですけどね」
男「おいお前、日に日に俺に対する毒が成長してんぞ。俺だって無敵じゃねんだぞ」
女「ちょっと友、人の彼女捕まえてあんなこと言ってるよ」
友「はいはい、じゃあ行きますよ」
女「おお、しかとだ。じゃーねー男くん」
男「ん、また」
友「おう、お疲れー」
29 :豆腐:2010/05/20(木) 09:02:09 ID:fjn3Ra5w
ポツーン
男「(思わず気ぃ使ってしまった…今さら気ぃ使うのもどうなんだって話だけど、でもまあ、最近、友、まじ忙しそうだもんな…)」
男「(なんつうか…、寂しいなあ…、はあ。こんな感じになることは解ってたのになあ)」
男「(ん?)」
男「(俺、もしかして、寂しいから…恋してんじゃねーのか?)」
男「(友とか女とかイケメンくんとかの代替として愛子ちゃんを求めてるとか?)」
男「(うわー…)」
男「(だとしたら俺、かなり最低じゃない?)」
男「(うわー…)」
30 :豆腐:2010/05/20(木) 09:03:08 ID:fjn3Ra5w
友「なんか食ってく?」
女「んーん、お腹は別に。友、お腹減ってる?」
友「ちょっと。豊洲着いたら考えようか」
女「うん(男くん、気使ってたんだろうな、あれ多分。明後日までバイトないって言ってたくせに)」
女「(今さらだよー、とんまだなー)」
女「(思わずこっちまで気使っちゃったよ。毒?私の毒には優しさが含まれてることを知らないね)」
女「あ」
友「ん?」
女「あ、いや、友達に電話かけるの忘れてただけ」
友「いーの?」
女「うん。あとでメールだけ返しとく」
友「おう」
女「(男くんが恋してるってことを話題に出しそびれた…)」
女「(まいっか。本人のいないとこで話題にしても楽しくないし。またにしましょう)」
31 :豆腐:2010/05/21(金) 12:26:28 ID:TvMG3kMk
翌日、四限前、教室
男「(デートしませんか!いや、これは露骨過ぎる…。このあと暇だったら飯でもいかねー?…ちゃらい。んー)」
愛子「あ、男くん、おはよー」
ドキッ
男「あ、お、おはよう」
愛子「何か今日、肌寒いねー」
男「あー、うん、その格好は寒いかも」
愛子「失敗したー。天達に騙されたー」
男「あはは」
愛子「よいしょ」
男「(今日も可愛いな…そしてデートに誘うきっかけが解らん…)」
32 :豆腐:2010/05/21(金) 17:49:02 ID:TvMG3kMk
授業後
愛子「疲れたー」
男「(いい匂いがする)」
愛子「あれ?」ポチポチ
男「ん?」
愛子「あー、次の授業、休講だ。帰ろっかなー」
男「(おお!?)」
愛子「男くんは今日は四限までだよね」
男「うん(ま、まさか!?)」
愛子「一緒に駅まで行こうよ」
男「う、うん(き、)」
男「(きたー!!!)」パンパカパンパカパーン!←ファンファーレ(男の心象風景)
33 :豆腐:2010/05/21(金) 17:51:35 ID:TvMG3kMk
愛子「…でね、その先輩たちは、自分がやってる楽器じゃない楽器で、まず演奏すんの。ルナシーとかやんの。ルナシーなんか私たちの世代でも微妙じゃん。しかも超下手くそなのね」
男「うん」
愛子「で、一曲終わるたびに、皆、パート変えんのね。それもまた下手くそなのね。でも、すっごい一所懸命なの、皆」
男「うん」
34 :豆腐:2010/05/21(金) 17:53:48 ID:TvMG3kMk
愛子「で、最後の曲になってやっと皆、本来のパートになるんだけど、バンドがいきなり超上手くなんの」
男「うん、あはは」
愛子「で、それまでさ、下手くそだったしルナシーとかやってたからぼおっと見てた一年生たちが『え、何なのいきなり』みたいな感じでびっくりすんの」
男「あー、なんか面白そう」
愛子「うん、面白かった。なんかさ、私、高校の頃から音楽はやってたけど、大学に入って、音楽で遊ぶとはどういうことかって教えてもらった気がする」
男「ふんふん」
35 :豆腐:2010/05/23(日) 15:01:21 ID:45ZoSPog
愛子「それはすごい自由で、何でもありで、でも、真面目にふざけないと駄目で、もちろん人に見せたり聞かせたりするものだからある程度の技術に裏打ちされてなきゃ駄目で…って、何で私こんな熱血音楽論語ってんだっけ」
男「いやー、なんかでも、面白い話だよ」
愛子「そう?」
男「うん。愛子ちゃん、先生の素質あるんじゃない?人の興味を膨らますのが上手い話し方だと思う」
愛子「えー、本当に?うわー、そんなこと初めて言われたー、…うー、寒いー」
男「大丈夫?」
愛子「天達めー」
男「あはは」
愛子「…」
男「(あれ?これは、『じゃあ今からちょっと温かいコーヒーでも飲みませんか』的なことを言うチャンスじゃねえか?え?違う?どうなの?そんなこと言ったらきもい?あ、もう少し行ったらドトールがある…どうしよどうしよ)」
36 :豆腐:2010/05/23(日) 15:06:32 ID:45ZoSPog
愛子「男くん、どんな音楽聞くの?」
男「ん?そうだなあ…(ぎゃー!話が変わったー!)」
愛子「あんまり聞かない?」
男「んー、なんだろ、俺の兄貴も音楽やってんのね(俺のへたれ…)」
愛子「えー、そうなの?」
男「うん、だから、兄貴がよく家で流してる音楽はなんとなくぼんやりとよく聞いてるけど、バンド名とかアーティスト名とかは解んないや。でも、昔の音楽が多い気がする。ひできとか聞いてたりするよ」
37 :豆腐:2010/05/23(日) 16:24:39 ID:45ZoSPog
愛子「ひでき?西条秀樹?あはは!でもねでもね、昔の日本の歌謡曲って訳解んないテクニック使ってたりして、結構面白かったりするんだよ」
男「へー、そうなんだ」
愛子「うん、あ、男くん、今日バイトとかある?」
男「へ?いや、今日は帰るだけ」
愛子「あ、じゃあちょっとドトール寄っていこうよ。コーヒー飲まない?」
男「あ、うん、いいね(うわー!ぎゃー!きたー!うひょー!)」ドカーンドカーン←花火(男の心象風景)
38 :豆腐:2010/05/25(火) 15:48:35 ID:nETPEJWY
ドトール
愛子「んー、うまー」
男「暖まるね(奢ったほうが良かったのかな…いや、それはきもいだろう…え?どうなの?わかんねー)」
愛子「あ、『アリス・イン・ワンダーランド』のポスターだ。かわいー。男くん、見た?」
男「んーん、見てない。愛子ちゃんは?」
愛子「まだー。見たいんだけどさー、一緒に見に行く人がいないんだー」
男「い」
39 :豆腐:2010/05/26(水) 14:08:54 ID:b2hlaOsQ
愛子「い?」
男「ん?いや、いつまでやってんのかなーって」
愛子「あー、でも結構ヒットしてるんだよね?まだ、だいぶやるんじゃないかな」
男「そうだよね」
愛子「うん」
男「…」
男「(一緒に行こうよって言えよ俺!千載一遇のチャンス、タイミングだったじゃねえか!いやいやいや!それはきもい!それはきもいって!愛子ちゃんはそんなつもりで言ったんじゃないって!いや、でも…、くそー!胸が!胸が痛い!)」
40 :みんなの暇つぶしさん:2010/05/26(水) 17:26:45 ID:MK8W7YQw
「男」とかと普通の個人名が混ざってるのが
たまらなくキモイ
41 :みんなの暇つぶしさん:2010/05/26(水) 17:29:15 ID:R23oYaDM
かわいこちゃん→可愛子ちゃん→愛子
42 :豆腐:2010/05/27(木) 23:39:01 ID:ncMNsk26
愛子「そういや男くんって、バイト何やってんの?」
男「え?あ、えーと…飲食関係かな」
愛子「へー、レストランとかそんな感じ?」
男「うん?うん、まあまあまあ、そんな感じ。…愛子ちゃんは?」
愛子「私?私はねー、友達の伝手なんだけど、麻布十番のバー」
男「バー!?すげー。酒振ったりしてんの?」
43 :豆腐:2010/05/27(木) 23:39:53 ID:ncMNsk26
愛子「あはは、まさか。ウエイターみたいなもんだよ。まあ、シェイカー使わない簡単なカクテルくらいなら作ることもあるけど」
男「へー」
愛子「今度友達とかとおいでよ。といっても私ぺーぺーだからサービスとかは出来ないけどさ」
男「あ、うん、ぜひぜひ(社交辞令社交辞令、調子に乗るな勘違いするな…)」
愛子「ごめん、ちょっとお化粧室行ってくるね」
男「あ、うん」
44 :豆腐:2010/05/27(木) 23:40:46 ID:ncMNsk26
男「…」
男「…」
男「(えー何俺嘘ついてんの!?レストランとかそんな感じ、じゃねえだろ!弁当屋だよ弁当屋!まんぷく亭だろ!なんなのその嘘!レストラン!?働いたことねー!)」
男「(うわー弁当屋が格好わりいとか思ってんだ、俺。で、愛子ちゃんに嘘ついちゃった…あとなんなの今日の俺のへたれ具合!へたれにも程があんだろ!俺のへたれ!しかも嘘つき!でこすけ!雑巾野郎!)」
男「(俺…超格好わりい…。いや、格好わりいのは知ってたけど、ここまでとは…)」
45 :豆腐:2010/05/27(木) 23:45:00 ID:ncMNsk26
男「あー…」
男「…」ズズズ…
男「にが…」
男「(そして意味もなく格好つけて飲み慣れないブラックコーヒーを飲む俺…阿呆か!飲めねえし!カップからコーヒーがいつまでたっても減らねえし!だいたいブラック飲むのが格好いいって、高校生か俺は!)」
男「…はあ」
男「(しかも、寂しいから愛子ちゃんに恋しているという説もあるし。最低。最悪)」
愛子「もしもーし」
男「うわ!」
46 :豆腐:2010/05/27(木) 23:46:37 ID:ncMNsk26
愛子「あはは、そんなびっくりしなくても」
男「あー、一瞬、いきかけた…」
愛子「やばかったねー。ちゃんと帰ってきてねー。ねえねえ、ていうか、何考えてたの?」
男「え?」
愛子「超深刻な顔してたよ、男くん」
男「そ、そう?」
愛子「うん。どしたの?悩みがあるなら言うんだー」
男「んー、…何て言えばいいのやら(きみ!きみのこと!)」
48 :豆腐:2010/05/28(金) 10:38:52 ID:46KzNhAY
愛子「言いにくい?」
男「んー。悩み。悩みかあ…(デートの誘い方とか、恋をしたから見えてしまった自分の格好悪さとかそもそも寂しいから恋したんじゃないかとか…)」
愛子「うんうん」
男「…まあ、なんつうか」
愛子「うん」
49 :豆腐:2010/05/28(金) 10:52:02 ID:46KzNhAY
男「コーヒーが苦くて飲めないってことでしょうか(言えないよなあ…当事者目の前にして)」
女「…」
男「…」
女「あはははは!本当だ!全然減ってない!なんで?なんで飲めないのにブラック?」
男「か、格好つけてしまいました」
女「あはははは!そっかー。格好つけちゃったんだ。それじゃあ仕方ないよね。あのね、私の好きな人が言ってたんだけどね」
男「(…はい?)」
50 :豆腐:2010/05/28(金) 14:54:28 ID:46KzNhAY
愛子「人間は、そもそも格好悪いもんで、それはその通りで、でもそれに甘んじないで、格好つける人間こそ好感がもてるって言うのね」
男「うん…(好きな人って言った…)」
愛子「だから男くんは好感がもてる人だよ。自分から格好つけてるのをばらしちゃうのも可愛いし。ふふふ」
男「あはは…」
51 :豆腐:2010/05/28(金) 14:55:06 ID:46KzNhAY
愛子「でね、でね…」
男「(好きな人…いますよね、そりゃ)」
愛子「…みたいなかんじでね…」
男「(あーやばい。なんか…耳が聞こえねー)」
愛子「…でさあ…」
男「(泣きたい。おいおいと泣きたい。むせび泣きたい。滅びろ世界。いや、それじゃあ友とか女とかイケメンくんとか愛子ちゃんが死んじゃうから俺だけ滅びろ。ぼーんて。ぼーんて爆発しろ)」
愛子「…はおかしいじゃん?だからね…」
男「(爆発したら雲になろう。そして乾いた土地に恵みの雨を降らそう)」
愛子「おーい、聞いてますかー?」
男「へ?う、うん。もちろん」
52 :豆腐:2010/05/28(金) 14:56:52 ID:46KzNhAY
愛子「本当にー?怪しいなあ。つまんない話だった?」
男「いやいやいや!そんなことないって!とてもためになるお話しでござんした!(ござんした?)」
愛子「ふーん。じゃあ私はどんな話をしていたでしょうか」
男「…えーと」
愛子「…」
男「…」
愛子「…」
男「ごめんなさい聞いてませんでした」
愛子「ほらやっぱりー」
53 :豆腐:2010/05/28(金) 14:58:57 ID:46KzNhAY
男「でも別に愛子ちゃんの話がつまらないとかそういうことじゃなくて、考え事してて…いや本当失礼な話だよね。本当、ごめん」
愛子「別にいいんだけどさ。なに考えてたの?」
男「(言えるか!)んー」
愛子「内緒?」
男「ってほど、大げさではないけど…うん、かなりどうでもいいことです」
愛子「そっかー。がーん。かなりどうでもいいことに私の話は負けたのか」
男「え!?いやいやいや!そういうつもりで言ったんじゃないよ!?」
愛子「あはは、解ってるって。焦りすぎ焦りすぎ」
男「あ、あははは…」
54 :豆腐:2010/05/28(金) 15:00:04 ID:46KzNhAY
学校
友「(うおー、疲れたー。やっべーな、身体が破裂しそうだよ。明日も朝早いしその後バイトか。早く帰ってさっさと寝よ)」ヴヴヴヴ…
友「ん?もしもし」
男『駄目だ…』
友「…は?」
55 :豆腐:2010/05/28(金) 15:00:49 ID:46KzNhAY
男『駄目だ…俺なんかもう駄目だ…』
友「なにが?」
男『好きな子に、好きな人がいました…』
友「…え?え?え?」
男『でも本当に好きだったのかどうなのか…そんなふうに思ってしまうことが何かいやらしくて気持ち悪くてもう訳が解らんくて…』
友「待て待て待て。順序よく話せ。お前今、家?」
男『ドトールです…』
友「ドトール?駅の近くの?一人?」
男『一人です…愛子ちゃんは帰りました、俺は帰れません、何故ならコーヒーがまだまだ残っているからです』
友「何言ってんのか解んねえけどとりあえず俺も今からそこ行くわ。待ってて」
56 :豆腐:2010/06/01(火) 10:07:57 ID:1f.zL0a2
ドトール
友「おす」ドスッ
男「…おす」
友「…」
男「…」
友「…よし。んじゃまあとりあえず飲み行こうぜ」
男「…うん」
友「ほら、はよコーヒー飲め」
男「…これ、苦くて」
友「は?」
57 :豆腐:2010/06/01(火) 10:08:38 ID:1f.zL0a2
男「…」
友「んー」ガタッ
男「…」
友「ほれっ」ポイッ
男「…」
友「この世にはミルクと砂糖ってもんがあんだよ。よく解んねえけどそれ入れて、さっさと飲め。行くぞ」
58 :豆腐:2010/06/01(火) 10:09:43 ID:1f.zL0a2
目黒、某居酒屋
友「…それは別に振られたってわけでもないし、そんな落ち込むってほどでもないんじゃねえの?」
男「…」
友「だってさ、好きな人がいるっていうのは今、現在の話だろ?未来はどうなるか解んねえじゃん。人の心はそんなに頑なじゃねえと思うけど」
男「…女もなんかそんなこと言ってたわ」
友「俺と女だけじゃない。皆、知ってることだろ」
男「…あのさ」
友「うん」
59 :豆腐:2010/06/01(火) 10:10:35 ID:1f.zL0a2
男「確かに、愛子ちゃんに好きな人がいたっていうのはショックだったんだけど、それだけじゃなくて」
友「うん」
男「あのさ」
友「うん」
男「すげー恥ずかしいこと言ってもいい?」
友「おう」
男「俺、確かに愛子ちゃんは好きなんだ。でもさ、それはなんつうか…」
友「…」
60 :豆腐:2010/06/01(火) 10:11:22 ID:1f.zL0a2
男「俺、最近、友とか女とかイケメンくんとかと遊ぶ機会なかったじゃん。何か、それで好きになったんじゃないかとか思って」
友「ん?」
男「なんかこう、つまんねーとか寂しいなとか、そういう気持ちを恋愛で紛らわそうとしたんじゃないかとか…うわー、俺、超気持ち悪いこと言ってんね」
友「いいから全部話せ」
男「でさ。愛子ちゃんに好きな人がいるって聞いた途端、ショックはショックなんだけど、さめたっていうかさ。俺は本当にこの子のこと、好きだったのかなあ、なんてさ。寂しかったから好きになっただけなんじゃねーの、みたいな」
友「ふんふん」
61 :豆腐:2010/06/01(火) 10:12:15 ID:1f.zL0a2
男「でも、それもまた、言い訳くさいじゃん。傷つかないためにはってた予防線、発動、みたいな」
友「まーなぁ(やりたいだけの気持ちを自己弁護で押し通す奴らが多い中で、なんて希少価値の高いやつ…)」
男「なんかさ、どっち向いても最悪な俺がいるんだよ」
友「最悪ねぇ」
男「ぐじぐじしてるだけってのは解るんだけどさ…」
友「俺さ」
男「…」
62 :豆腐:2010/06/01(火) 10:13:00 ID:1f.zL0a2
友「お前覚えてるかしんねーけど、入学式のとき、食堂で隣にいたお前に話しかけたのが、初対面だったじゃん?」
男「うん…」
友「あのとき俺、下心あったよ。こいつと友達になれるかなとか、とりあえず友達いなきゃ始まんねーとかさ」
男「…」
友「正直言って、お前じゃなくても良かった」
男「…!」
63 :豆腐:2010/06/01(火) 10:13:43 ID:1f.zL0a2
友「でも、こんなに仲良くなれたのは、お前がお前だったからだと思うよ。きっかけなんてどうでもいいだろ。恋愛も同じことだと思うよ。あー、ちっと、トイレ」ガタッ
男「…」
トイレ
友「ぐおー、こっぱずかしー!」
友「…」
女『でね、男くん私にね、好きなやつに好きだっつって何が悪いか!みたいに言うのね。あはは。恥ずかしいやつだよねー。でも、嬉しかったなー』
友「…」
友「(好きなやつに好きって言う…か。そのまんまじゃねえか)」
友「(ま、俺の場合は今みたいなやり方が限界だな。だって恥ずかしいもん。うあー、今のも充分恥ずかしいけれども)」
64 :豆腐:2010/06/04(金) 12:46:13 ID:bEtr.J7.
男「(俺も友に話しかけられたとき…)」
男「(嬉しかったっていうよりは、…ほっとしたような気がする。友達ができたっていう、安心)」
男「(あの、『ほっとした』ってのは、確かに、あれが友じゃなくてもそう感じたのかも知れない)」
男「(でも、今、あいつは親友だ)」
65 :豆腐:2010/06/04(金) 12:47:28 ID:bEtr.J7.
男「(誰でも良かったはずの人間が、そいつじゃなきゃ駄目な人間になった。それは、時間の流れがないと解らないことだった)」
男「(そうか…時間は動いているのだな。くだんないことで悩んでいる暇、ないな)」
友「ただいまー。何か食おうぜ。腹減った。メニューくれ…何、手、合わせてんの?」
男「感謝の気持ちをあらわしております」
友「…ふ、普通に口で言ってくれ」
男「ナマステ」なーむー
友「ナ、ナマステ…」
66 :豆腐:2010/06/04(金) 12:48:43 ID:bEtr.J7.
二日後、学校、ラウンジ
イケメン「愛子ちゃんだろ?知ってるよ」
男「な、何で知ってんの!?」
イケメン「何でって…、彼女、軽音サークルだろ?俺、今年から、軽音サークル入ったもん」
男「…そうだったー!いたー!ここに女より頼りになる人がいたー!」
女「おい」
男「なんだよー、じゃあ、イケメンくんに愛子ちゃんの色々を調べてもらえば良かったよー」
女「あ、あんた、まーだそんなストーカーチックなことを言うか」
男「ジョ、ジョークだって。イッツ、ナマステンジョーク」
女「なにそれ!?どっから出てきたの、ナマステは!?」
67 :豆腐:2010/06/04(金) 15:36:21 ID:bEtr.J7.
友「なあなあ、その、愛子ちゃんて子は、男の話とかしてないの?サークルとかで」
男「うお!?ついに話の核心に!」
イケメン「んー。つっても俺も入ったばっかりであの子とろくに喋ったことねーっす。わりーね」
男「そりゃそうだ、そりゃそうだ」ハア、ハア
女「うわ、はあはあ言うな、きもい」
68 :豆腐:2010/06/04(金) 15:37:21 ID:bEtr.J7.
イケメン「ふーん、男があの子をねえ。ふふ、いいんじゃん?可愛らしい子だよな」
男「そうなんすよー、可愛らしい子なんすよー」
友「その可愛らしい子と、今からデートなんだろ?すげーじゃん」
イケメン「おお」
男「…」
女「…」
友「あれ?」
69 :豆腐:2010/06/04(金) 15:39:01 ID:bEtr.J7.
女「ななななんだとー!」
友「あ、言ってなかったんだ」
女「なんだそれなんだそれなんだそれー!聞いてないぞー!」
イケメン「へー、すげーじゃん、どこ行くの?」
男「え、映画。昨日、メールしてたら、なんかそんな感じに…」
女「ひゃー!あの男くんがデート。しかも今から!ひゃー!」
男「…ぶっちゃけ今、心臓がばくばくで訳解らんとです。あー…やばい、まじ緊張してきた。はきそー」
70 :豆腐:2010/06/04(金) 15:39:44 ID:bEtr.J7.
イケメン「まあただのデートなんだから、気楽にさあ」
男「ただのデート…。出たなイケメン発言」
イケメン「いや別にそういうつもりじゃないんだけどさ」
友「デートしたことないわけじゃないんだろ?」
男「…とうとう俺のデートの歴史を語るときがきたな。あれは俺が高校のころでした…」
女「おお、なんか語り始めた」
71 :豆腐:2010/06/04(金) 15:40:26 ID:bEtr.J7.
男「友達の友達の友達とメルアドを交換するっていうのが流行ってたんです」
女「目、つむってるよこの人」
友「喋ることによって気を落ち着かせようとしてるんだろう。そのまま喋らせてやれ…」
男「私もその流行に乗っかりました。相手は隣町の女子高の人でした」
男「私たちは何度かメールを交換し、電話も何回かし、そして、会うことになったのです、バッティングセンターで」
イケメン「バ、バッティングセンター!?初デートにバッティングセンター!?」
男「そうです」
女「うわ、返事した」
72 :豆腐:2010/06/04(金) 15:41:14 ID:bEtr.J7.
男「電話で、彼女がバッティングセンターに行ってみたいのだけど、行ったことがないと言っていたのです。そこで私は言ったのです。一緒に行きませんかと」
友「ふんふん」
男「次の日、うちの近くのバッティングセンターで待ち合わせをしました。彼女はにこりと笑って初対面の私に挨拶をしてくれました」
男「そして、私は彼女の目の前で、バッティングケージに入り、コインを入れ、バットを持ち、球を待ったのです」
73 :豆腐:2010/06/04(金) 15:42:06 ID:bEtr.J7.
五年前、バッティングセンター
男『(よしこい、打ったる!ホームラン打ったる!)』
ガガガ…シュッ
男『(きた!)うおおお!』
ドスッ
友「デ、デッドボール?」
男「…」コクリ
イケメン「な、なんでバッティングセンターでデッドボール?」
男「何かの間違いだと思いました。そこで私はもう一度、構えたのです」
74 :豆腐:2010/06/04(金) 15:42:53 ID:bEtr.J7.
男『こいやー!うおおお!』
男『ぐはっ』ドスッ
男『のうっ』ドスッ
男『あうっ』ドスッ
男『げふっ』ドスッ
イケメン「ぜ、全球、デッドボール…?」
男「…」コクリ
女「ひー!ひー!お、お腹が…」
友「ふははは、は!腹が!腹が!」
イケメン「な、なんでそんなことに…」
75 :豆腐:2010/06/04(金) 15:43:40 ID:bEtr.J7.
男「あとで聞いたところによると、そのマシーンは故障していたらしいです。バッティングセンターのおっちゃんが超謝ってきました…」
友「ていうか、出ろよ!ケージから出ろよ!」
男「確かにその通りです。私は出るべきだったのです。しかし、球に当たった瞬間、私はこうも思ったのです。『あ、これはおいしいな』と」
女「駄目だこりゃ」
男「私はおいしい方を選びました。全球に当たり、痛い思いをして、女の子を笑わせようとしたのです」
76 :豆腐:2010/06/04(金) 15:46:19 ID:bEtr.J7.
男「しかし、痛い思いをして、彼女を振り返ると、そこにあったのは笑顔の彼女ではなく、どん引きしていた彼女だったのです」
イケメン「どん引きっていうか、心配してただけなんじゃないの?」
男「私は笑ってほしかった。しかしそれは叶わなかった…。彼女とはそれっきりです」
友「何の話だよ!」
男「それ以来、デートらしいデートはしたことありません」
イケメン「…ええと、うん、お前の緊張がよく伝わるいい話だったよ」
77 :豆腐:2010/06/04(金) 15:47:14 ID:bEtr.J7.
女「ねえねえ、デートは何時からー?」
男「五限終わりに、正門前で待ち合わせ…」
女「五限終わり?よし、行ける!」
友「俺も」
イケメン「じゃあ俺も」
男「なんでだよ!馬鹿かおまえら!」
女、友、イケメン「ふふふ」
男「なんだその含み笑い!あ、四限始まる…おまえらまじ来んなよ!来てもまくからな!」ガタッ
女、友、イケメン「ふふふ」
78 :豆腐:2010/06/04(金) 15:48:10 ID:bEtr.J7.
女「さて、変装道具を買ってこなきゃ」
友「な、なに、お前、まじでつけんの?」
女「だって男くんのデートだよ?見たくないの?」
友「ん、んなわけあるかおまえ馬鹿やろう友達のデートつけるっておまえ」ソワソワ
イケメン「(すげえそわそわしてる!)」
79 :豆腐:2010/06/04(金) 15:49:04 ID:bEtr.J7.
五限後、校門
友「おお…あれが愛子ちゃん」
女「そう、あれが愛子ちゃん」スチャッ
イケメン「(サングラス…!いつの間に…)」
友「男はまだきてないみたいだな」スチャッ
イケメン「(こいつもサングラス!なにこのカップル!)」
女「女の子待たすなんて、10ポイント減点だぜい」
友「なにそのポイント制」
80 :豆腐:2010/06/04(金) 15:49:49 ID:bEtr.J7.
イケメン「…お、来た」
男「ごめんごめん、授業が長引いてさ」
愛子「んーん、大丈夫だよ、うちの授業が早く終わりすぎただけー」
男「そっかー。…じゃあ、行きましょうか」
愛子「行きましょー」
81 :豆腐:2010/06/13(日) 04:47:47 ID:lMQ52U1s
女「うーむ。なんだか爽やかじゃん。とっても普通」
友「お前は何を期待してたんだ」
イケメン「デートかあ。いいなあ」
友「そういやイケメン、なんで彼女いないの?」
イケメン「何でって言われても…。俺が知りたいっす」
女「よし、じゃあ今日は男くんハブにして、三人で飲みにいこーぜー」
友「行くかー」
イケメン「おーす」
82 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:21:02 ID:RGUlcorg
渋谷、居酒屋
友「はい乾杯ー」
イケメン、女「ういーす」
友「うあー、なんかイケメンと飲むの久々じゃない?」
イケメン「だね」
女「どうなのどうなの最近どうなのよー」
イケメン「いやー、お前らに見せたいよ、男兄さんのスパルタ加減」
友「え!?あの人、スパルタなの!?」
イケメン「基本的には優しいんだけどさ、スタジオの中だと鬼だね、鬼」
女「ふえー。想像できなーい。あれ?イケメンくん、ドラムだよね?」
83 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:21:56 ID:RGUlcorg
イケメン「ん?うん」
女「え、じゃあお兄ちゃんは何やってんの?」
イケメン「…何だろう、基本、ドラムスティック握ってうろうろしてる。スタジオの中を」
友、女「なんだそりゃ!」
イケメン「なんていうか…サウンドプロデューサー?みたいなもんなのかなあ…。俺、初心者だからよく解んないけど、でも、的確な指示、してくれてると思うよ」
友「うーむ…」
84 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:22:47 ID:RGUlcorg
女「じゃあ男兄さん、もう、ドラムやらないのかなあ。仕事も忙しいみたいだし、ていうかあの人、新人の分際で5月の売り上げ、全国一位だったらしいよ」
友「それ俺も聞いた!すげえよなあの人!」
イケメン「それ俺、100回くらい聞いたよ、本人に」
女「あはは、うざーい」
イケメン「あ、でもなんか来月あたりからもう一個バンド始めるみたいなこと言ってたよ」
女「うええ!?あの人、昔から思ってたけど、サドだよね、サド。自分に対するサド」
友「自分が恥ずかしい…学生の分際で『うわー俺今超忙しい』とか思ってた自分が…」
女「弟と一体どこで差がついたのか…」
85 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:23:28 ID:RGUlcorg
友「いやー、男兄さんが異常なんだって」
女「女の子好きになっただけであんなに大騒ぎするのも変だよー」
友「あはは、まーな」
女「は!そういや、男くん、どうやって誘ったんだろう?」
友「俺も詳しくは聞いてねーなー」
女「よし、想像しようぜー」
友「んー、まあ、電話はあいつからだろうなあ」
女「うん!で、あれだよ、授業の課題とかレポートとかそういうのを口実にしたと見た!」
86 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:24:17 ID:RGUlcorg
イケメン「通話ボタン押すのに一時間くらい悩んでそうだよな」
女「三日くらいかかったんじゃない?」
友「ははは、かけてそうだな。あ、すいませーん、ビールを…イケメンは?あ、二つください」
女「でも多分、その段階で映画に誘おうって気はなかったと思うの」
イケメン「あー、声だけ聞きたかったみたいな?」
女「そうそう、で…」
ケンケンガクガク…
品川、某映画館前
愛子「わー、可愛い映画だったねー」
男「うん、は、は、は、はっくしょん!」
87 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:26:15 ID:RGUlcorg
愛子「ありゃりゃ、大丈夫?」
男「噂してるな、どこかで誰かが」
愛子「男子は一歩外に出たら敵が七人いるって言うもんねー」
男「そ、それは意味が違うのでは…」
愛子「えへへー。ご飯食べいこーよ、お腹減ったー」
男「え?う、うん」
愛子「るーるーらー♪」テクテク
男「…?」
88 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:27:10 ID:RGUlcorg
愛子「にゃーにゃーにゃー♪」テクテク
男「…!あ、あの、愛子さん、つかぬことをお伺いしますが…」
愛子「はーい、なんでしょー?」
男「酔ってます?」
愛子「酔ってますーん!」
男「うん…え?どっち?」
愛子「たかがビール一杯で!」
男「い、いや、あなた、三杯は飲んでましたけど…」
愛子「あははー、うけるねー」ダラーン
男「う、うけますか、そりゃ良かった…」
89 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:27:52 ID:RGUlcorg
愛子「何食べるー?何食べたいー?」ビシッ!ビシッ!
男「た、たたかないでください…。あー、どうしよっか、渋谷とか恵比寿まで出る?」
愛子「お任せしやっす!」
男「んじゃとりあえず駅に向かおうか」
愛子「あいっ!」
男「…」テクテク
愛子「てーてててー♪」←アリスのテーマ
男「(おいおいおいおい…)」テクテク
男「(可愛い可愛いとは聞いてましたが…)」テクテク
男「(絶望的に可愛いやんけー!)」ヤンケーヤンケーヤンケー…
90 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:29:03 ID:RGUlcorg
渋谷、居酒屋
友「あー、男、上手くいってんのかな、今日」
女「気になるー」
イケメン「…」
友「どした?」
イケメン「ん、いや、んー、なんつうか、俺さ、あんま人の噂話っつうか、その場にいない人間の話で盛り上がるのが好きじゃなくてさあ。ほら、気ぃ抜いたらそれってすぐ、悪口になるじゃん?でも、男の場合は全然気になんないんだよなあ、不思議だなあと思って」
友「あー、確かに」
91 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:30:03 ID:RGUlcorg
女「ていうか、悪口言いたくなるってことは、あんま好きじゃないんでしょ?その人を」
イケメン「え?う、うん」
女「そんな好きでもない人の噂話するほど私たちは暇じゃないのですわ」
友「ですわってお前」
イケメン「…」
女「人生は短いんだから、誉めるのも悪口言うのも、対象は好きな人のみ!いえい!」
友「あー、酔っ払ってんなー」
イケメン「相当ね。男が聞いたら照れ臭さのあまり喧嘩始めるね、女ちゃんと」
友「間違いないね」
女「むむ!すいませーん、焼酎ロックおかわりー!」
イケメン「楽しいお酒でよかった」
友「本当に」
イケメン「(そうか、ゴシップは、話す人間たちが、話される人間のことを好きなら、俺が嫌いなあの嫌な感じにはならないのか…)」
92 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:30:53 ID:RGUlcorg
品川駅
男「さーて、とりあえずは渋谷方面に乗って…」
愛子「あ!はいっ!はいっ!」
男「はい愛子さん」
愛子「私、男くんのバイト先行きたい!レストラン!」
男「…え?」
93 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:31:49 ID:RGUlcorg
愛子「だめー?」
男「だ、駄目っていうかなんつうか、ええと」
愛子「うん」
男「き、今日は定休日かな…」
愛子「そっかー、残念ー」
男「ざ、残念でした、本当…」
愛子「じゃあどこ行く?」
男「えーと、飯食いたい感じ?それともお酒飲みたい?」
愛子「ご飯食べたい!お酒はあれば飲む!そんな感じっす!」
94 :みんなの暇つぶしさん:2010/07/04(日) 12:32:42 ID:RGUlcorg
男「そっか…あー、そしたら、五反田に美味しいハンバーグ屋さんがあるからそこ行こうか」
愛子「おーう!」
男「(うーん)」
男「(ただ事じゃねえぞ、この子の可愛らしさ…)」
男「(ていうか…)」
男「(俺、結構うまくやってない?どうですか皆さん?)」
男「(映画館を出たあと、流れるようにご飯屋さんを決める!このスキル!こりゃあもう、デートマスターだな、うん)」
95 :豆腐:2010/07/13(火) 21:38:56 ID:6ot8XGwM
五反田、某ハンバーグ屋
愛子「ん、まーい!なにこれー!」
男「ね。俺も初めてここのハンバーグ食ったとき感動したよ」
愛子「男くん!中が!中がレアで!中がレアでこれ!」
男「興奮しすぎ興奮しすぎ」
愛子「うわー、世界はまだ見ぬ美味しいもので満ちてるのねー」モグモグ
男「長生きしないとね」モグモグ
愛子「おいしー」モグモグ
男「…」モグモグ
96 :豆腐:2010/07/13(火) 21:39:46 ID:6ot8XGwM
男「(なんか…)」モグモグ
男「(すげえ普通じゃん)」
男「(俺、すげえ普通に、好きな子と飯食ってるじゃん)」
男「(もっとドキドキしたりパッパラパーになったり訳解んなくなったりすると思ってたのに)」
男「(それにしても…)」ジーッ
愛子「?」モグモグ
男「いや、うん、美味いね」
愛子「うん」ニコッ
男「(…あー、うん。俺、この子のこと、まじで好きだ)」
97 :豆腐:2010/07/13(火) 21:40:33 ID:6ot8XGwM
男「(きっかけがどうこう代替がどうこう言ってたころが懐かしい…。そうか、人を好きになるって、こういうふうに、いつのまにか、ぬるっと、なるのだなあ…。でも…)」
愛子「…ふー、お腹一杯」
男「(好きな人、いるんだよなあ、この子)」
男「(すげえ男前だったらどうしよう…いや、もしかしたら社会人でものすごい金持ちかも)」
男「(男前で金持ちって可能性もある…。え!?まさか社長!?)」
男「(三年前に学生時代の仲間と起業してあっという間に成功をおさめ今やヒルズに事務所を構え背の丈は180センチ、語学に堪能、女子アナやプロ野球選手と交流がありそして…)」ガクガク
愛子「(また遠くに行ってる…)」
98 :豆腐:2010/07/13(火) 21:41:18 ID:6ot8XGwM
愛子「帰ってこーい」
男「あふ!?」ビクンッ
愛子「一つ発見したことがあります」
男「な、なんでしょう」
愛子「男くんはよく異次元に行ってしまいます」
男「あ、あ、うん、ごめん」
愛子「寂しいな〜、つまんないな〜」
男「あわわわ、ご、ごめんなさい!」
愛子「とうっ!おしぼり攻撃!」
男「ぎゃあっ」バフッ
愛子「これで、おあいこね」ニコッ
男「は、はい」
99 :豆腐:2010/07/13(火) 21:41:57 ID:6ot8XGwM
愛子「あ…」
男「…」
愛子「…」
男「…?」
愛子「…」
男「ど、どうしたの?」
愛子「…おしぼり」ズーン
男「へ?」
愛子「おしぼり投げるなんて私、行儀悪かったー…」
男「え?」
100 :豆腐:2010/07/13(火) 21:42:59 ID:6ot8XGwM
愛子「あー駄目だ、酔ってるとはいえ、ご飯食べるとこでこんな…」ブツブツ
男「…」
愛子「はあ…」
男「あ、愛子ちゃん」
愛子「…ん?」
男「すごくいいと思う」
愛子「え?なにが?」
男「いや、俺にも上手く言えないけど、うん、すごく愛子ちゃん、いいと思う」
愛子「えーと。…なんかよく解んないけど、ありがとう」
男「…なんかよく解んないのにありがとうって言ってくれてありがとう」
愛子「…」
男「…」
愛子「…ぷ」
男「ふふ」
愛子「あはは!何、この会話!あはは!」
男「意味わかんねー、あはは」
愛子「ふふふ、あ、ハンバーグが冷めちゃう。食べよ食べよ」
男「うん」
101 :豆腐:2010/07/13(火) 21:43:42 ID:6ot8XGwM
五反田、路上
愛子「美味しかったー」
男「ふふ、でしょ」
愛子「川沿いっていうのがまたお洒落だよねー」
男「かな?」
愛子「これ目黒川でしょ?で、ずっとあっち行ったら中目黒でしょ?」
男「だね。多分」
愛子「私ねー、中目黒にすっごく美味しい居酒屋さん知ってるの。そこも目黒川沿い。今度行こうよ」
102 :豆腐:2010/07/13(火) 21:44:33 ID:6ot8XGwM
男「うん、是非(社交辞令でもいい!それでも嬉しい男心!)」ドンッ
酔っぱらい「あいたー!」
男「あ…す、すいません」
酔っぱらい「すいませんじゃねえよ兄ちゃん、いってーなー」
男「か、肩がぶつかっただけじゃないですか」
酔っぱらい「ああ?待て待て待て。兄ちゃん、面白いなあ。ええ?君、加害者よ?そして僕、被害者よ?」
連れの女「ねえもういいじゃん、行こうよ」
酔っぱらい「お前は黙ってろ。おい兄ちゃん、ちょっとこっち来いや」
男「…」チラッ
愛子「…」
男「(うおおー!こえー!でも愛子ちゃんの前だし)…いいっすよ、付き合いますよ」
103 :豆腐:2010/07/13(火) 21:45:23 ID:6ot8XGwM
愛子「や、やめなよ、男くん」
連れの女「ねえ、もういいじゃんって!君もやめなって、こいつ空手とかやってて超強いよ?」
酔っぱらい「うるせえっつってんだろ!」ゲシッ
連れの女「きゃあ!」
男「うわ!あ、あ、あの、女の人に手を出すのは…」
酔っぱらい「ああ?」グイッ
男「い、いつつ…」
酔っぱらい「お前なんかムカつくなあ。なめてんだろ?え?」
男「い、いや、そんなつもりは…(あ、やばい、漏らしそう)」
104 :豆腐:2010/07/13(火) 21:46:12 ID:6ot8XGwM
酔っぱらい「彼女の前で格好つけたかったんか知んねーけどよ、人見て粋がれや」
男「か、か」
酔っぱらい「ああ?」
男「肩がぶつかったのは、あ、謝ります。で、で、でも(あ、やばい、心臓が爆発しそう)、それだけでこんなことされる筋合いはないし、それと、僕が誰を連れてるかとかあなたがどんな人だとか、関係ないです。手を放してください」
酔っぱらい「…はい、もうお前、ぼこぼこになるの決定ね。泣いて謝ってもぜってえ許さねえから」
105 :豆腐:2010/07/13(火) 21:47:07 ID:6ot8XGwM
連れの女「いい加減にして」バシッ
酔っぱらい「いた!何すんだてめえ!」
連れの女「もう嫌!何なの!?何であんたいっつもこうなの!?もう沢山!もう嫌だ!馬鹿!死ね!くそ野郎!」
酔っぱらい「あ、おい、待てよ!おい!おい!」
連れの女「うるさい!」テクテク
酔っぱらい「ちっ、てめえのせいで行っちまったじゃねえか!」バキッ
男「あがっ!」
酔っぱらい「おい!待てって!おい!」タッタッタッ
106 :豆腐:2010/07/13(火) 21:48:15 ID:6ot8XGwM
愛子「男くん!大丈夫!?」
男「だ、大丈夫…(じゃない。怖かった…すげえ怖かった…)」
愛子「怪我は!?」
男「ん、全然大丈夫」
愛子「よかったー。ていうかなんなのあいつ!超むかつく!」
男「い、色んな人がいるから…」
愛子「かばうことないよ、あんなやつ!でもよかった、怪我がなくて」
男「うん、ありがとう」
愛子「…」
男「…」
愛子「どしたの?」
男「いや…」
愛子「?」
男「(た、立てない…。これが、俗に言う、腰が抜けたってやつ?)」
愛子「も、もしかして、腰が抜けたとか?」
男「…うん」
愛子「…」
107 :豆腐:2010/07/13(火) 21:48:58 ID:6ot8XGwM
男「(か、格好悪すぎる…あーひかれた…最悪…)」
愛子「…腰が抜けた」
男「(あー死にてー…)」
愛子「ぷっ」
男「!」
108 :豆腐:2010/07/13(火) 21:49:50 ID:6ot8XGwM
愛子「あ…、あはははは!えー!?大丈夫!?腰が抜けた人なんか、初めて見たー!あはははは、男くん、格好わるーい!」
男「…」
愛子「あはは…!ご、ごめんなさい、笑い事じゃないよね」
男「…」
男「心の声に耳を澄ます…」
愛子「え?」
男「愛子ちゃん」
愛子「は、はい」
男「…好きです」
109 :豆腐:2010/07/13(火) 21:50:35 ID:6ot8XGwM
愛子「…」
男「…」
愛子「…え?」
男「愛子ちゃんのことが、好きです」
愛子「…えーと、え?」
男「…」
愛子「あ、えっと、…すごいタイミングで、すごいことを言う、ね」
男「俺もそう思う」
愛子「ムードも何も、ないよね」
男「俺もそう思う。ごめんなさい」
110 :豆腐:2010/07/13(火) 21:51:45 ID:6ot8XGwM
愛子「…とりあえず、立てる?」
男「うん、多分」ヨロヨロ
愛子「大丈夫?」
男「うん」
愛子「…」
男「…」
愛子「あのね」
男「うん」
112 :豆腐:2010/11/16(火) 12:11:35 ID:r27RvCAg
愛子「何だろ…ええと、うわ、びっくりしたー。あはは」
男「…ごめん」
愛子「…だってさ、出会ったばっかだしさ、男くん、私のことよく知らないだろうしさ」
男「(ああ…)」
男「(多分これ、ふられるな…。そんな感じ、するもん)」
愛子「…」
男「(諦めなきゃ…すっぱり…)」
男「そうだよね」
愛子「え?」
113 :豆腐:2010/11/16(火) 12:12:17 ID:r27RvCAg
男「愛子ちゃん、好きな人いるんだもんね、ごめんね、迷惑だよね」
愛子「…はい?」
男「…え?」
愛子「好きな人?」
男「…え?あ、ほら、前、言ってたじゃん、好きな人がいるって。ドトールで」
愛子「…北方謙三のこと?」
男「きたかたけんぞう?」
愛子「…作家」
男「…は?」
愛子「私の好きな、作家」
男「…ん?」
114 :豆腐:2010/11/16(火) 12:13:29 ID:r27RvCAg
愛子「何なの?それも聞いてなかったの?」
男「さ、作家?」
愛子「言ったじゃん。覚えてないの?違うか。聞いてないんだもんね、私の話なんか」
男「え、いや、あの(な、なんか話が剣呑な方向に)」
愛子「私のどこが好きなわけ?だってさ、私の話聞いてないってことは、私に興味がないってことでしょ?」
男「い、いや、そんなわけ…」
115 :豆腐:2010/11/16(火) 12:14:35 ID:r27RvCAg
愛子「そんなわけあるじゃん!馬鹿にしてるよ!何なの!?」
男「ば、馬鹿になんかしてない!ちょっと待って、話を聞いて!」
愛子「いい」
男「…」
愛子「聞きたくない。どうせ中身のない言い訳だもん」
男「…」
愛子「見た目でしょ?」
男「…え?」
愛子「どうせ私の見た目だけでしょ?」
男「いや…あの…」
116 :豆腐:2010/11/16(火) 12:15:25 ID:r27RvCAg
愛子「ほら、何も言えない。最低。もう明日から私に話し掛けないでください。さようなら」スタスタスタ
男「」
男「…ま、待って」タッタッタッ
愛子「…何ですか。回り込まないでください」
男「…見た目だったかも知れない!」
愛子「…」
男「だってそうじゃん!見た目って大事じゃん!恋愛のこととか俺よく解んないけど、多分そうじゃん!」
愛子「…」
男「でも、それだけじゃないよ。上手く言えないけど、それだけじゃない。話、聞いてなかったときもあった、確かに。それについて言い訳はしません。でもさ、俺、解んないけど好きなんだよ!愛子ちゃんのこと、好きなんだよ!」
愛子「もういいよ…」
男「よくない!」
117 :豆腐:2010/11/16(火) 12:16:11 ID:r27RvCAg
愛子「…」
男「俺が愛子ちゃんと付き合える付き合えないは置いといて、そこ誤解されたくない。そこっていうのは、愛子ちゃんは、見た目だけじゃなくて、そこも含めてだけど、色んなところも含めて俺は好きになって、ただ、その、色んなところ、というのを言葉にするのは無理ですごめんなさい!」
愛子「…意味が解らない」
男「わか…え!?解んない!?」
愛子「うん」
男「さっぱり!?」
愛子「さっぱり」
男「…」
愛子「…」
男「ええと」
愛子「正直だよね」
男「え?」
118 :豆腐:2010/11/16(火) 12:17:01 ID:r27RvCAg
愛子「男くん。すごく正直。まだ男くんと知り合って間もないけど、それはすごく解る」
男「…」
愛子「自分にも、他人にも。誠実だよね」
男「…」
愛子「本気で怒ってはなかったんだ」
男「は?」
愛子「さっき」
男「…え!?そうなの!?」
愛子「うん。ていうか…うん、最低は私だよね。ごめんね。怒ったふりして、逃げようとしてた」
男「逃げる…」
愛子「正直に、誠実に、男くんは私にむかってきてくれたのにね」
男「…」
119 :豆腐:2010/11/16(火) 12:19:17 ID:r27RvCAg
愛子「人って何で嘘つくのかな。傷つけたくないからかな。自分を?他人を?解んないや。解んないけど、多分、私は今、私のことしか考えてなかった」
男「…」
愛子「男くん」
男「…はい」
愛子「いきます。正直に」
男「お、おす」
愛子「好きって言ってくれてありがとう。でも私は、男くんを、そういうふうに見ることは、出来ません」
男「…」
愛子「…」
男「…そっか」
愛子「…うん」
男「よかったー」
愛子「…え?」
120 :豆腐:2010/11/16(火) 12:20:08 ID:r27RvCAg
男「愛子ちゃん、本気で怒ったと思ったからさー。そっか…そっか。怒ってなかったんだ」
愛子「…うん」
男「…」
愛子「ごめんね」
男「あはは、何で謝んのさ」
愛子「ごめんね」
男「…」
愛子「これからも、友達でいてくれる?」
男「もちろん!当たり前じゃん」
愛子「…ありがとう」
男「あはは、お礼言われる意味が解んないよ」
愛子「…」
男「…」
愛子「じゃあ、今日はもう帰るね」
男「…うん」
愛子「…じゃあ」
男「うん」
愛子「…」スタスタスタ
男「…愛子ちゃん!」
愛子「…ん?」
男「友達だから!ずっと!」
愛子「…」
愛子「うん」
121 :豆腐:2010/11/16(火) 12:21:08 ID:r27RvCAg
男「そっかそっか」
男「怒ってなかったんだ」
男「よかった」
男「本当に…」
男「よかった」グスッ
男「なんだよ」グスッ
男「何で涙出るんだよ」グスッ
男「…」
男「う、う、う、ヒグッ」
122 :豆腐:2010/11/16(火) 12:21:59 ID:r27RvCAg
翌日、学校、昼休み、食堂
女「(ねえ、ちょっと、聞いてよ)」ヒソヒソ
友「(ええ!?いや、無理だよ、お前が聞けって!)」ヒソヒソ
女「(えええ!?あ、イケメンくん、任せた!)」ヒソヒソ
イケメン「(ええ!?俺!?)」ヒソヒソ
友「(頼む、イケメン!)」ヒソヒソ
イケメン「(ひー!)な、なあ、男」
男「ん?」
イケメン「え、ええと、その、あの」
男「愛子ちゃんのこと?」
友、女、イケメン「…!」ドキーン!
123 :豆腐:2010/11/16(火) 12:23:04 ID:r27RvCAg
男「うん。ふられた」
友、女、イケメン「え!?」
男「俺のこと、そういうふうに見れないんだってさ」
イケメン「そ、そうか」
女「…諦めきれるの?」
男「んー。どうだろう。ちょっとすぐには、難しいかも」
友「…」
男「でもさ、何か良かったよ。結果的にはさ、その、ふられたけどさ。俺、あんなに真剣に女の子と向き合ったのって、初めてだし」
イケメン「…そっか」
男「…ふふ」
女「ん?」
124 :豆腐:2010/11/16(火) 12:23:53 ID:r27RvCAg
男「なんか気持ちわりーな、と思って。恋に我を忘れてさ。すげー恥ずかしいことばっかやってさ。ていうか今のセリフも大概だよな。『真剣に女の子と向き合った』って。くだんねー」
友、イケメン「…」
女「いいじゃん」
男「え?」
女「我を忘れるのが、楽しいんじゃん。我を忘れない恋するほうが、よっぽど恥ずかしいよ」
男「…」
125 :豆腐:2010/11/16(火) 12:24:43 ID:r27RvCAg
女「気持ち悪いとか、くだらないとか、言うな、恋愛を」
126 :豆腐:2010/11/16(火) 12:25:36 ID:r27RvCAg
男「…うん」
女「と、私のひい爺ちゃんが申しておりました」
男「そうですか…」
女「そのようですね」
そのあと男くんは、ぽつりぽつりと、自分のした恋について話してくれました。格好悪いところを笑ってくれて、で、好きが沸騰して思わず告白してしまったというくだり、男くんらしいなあと感心してしまいました。それは物語にもなりそうにない、ちっぽけなお話だったし、もちろん美談なんかじゃないし、面白いわけでもない、愛子ちゃんも変な子だなあと思ったのだけど、目黒川沿いで二人はきっと一所懸命だったんだろうなあと思うと、何だか愛しい気持ちになりました。
127 :豆腐:2010/11/16(火) 12:26:32 ID:r27RvCAg
誰でもいいのだけど、誰でもよくない。その微妙なとこで私たちはふらふらしながら友情や恋愛を作っていて、それがなくなったときにいかにそれを笑えるか。嗤う、ではなく、笑う。むん、と背筋がのびます。
あ、三日後、男くんを励ます会と称して飲み会を開いたら、男くんのバイト先のパートのおばさんも何故だかやってきました。で、私はいっぺんにそのおばさんを好きになってしまいました。だって彼女は男くんにこんなことを言うのです。「大丈夫大丈夫!若いうちに出来た傷なんて舐めてりゃ治るもんよ!それに、古傷はあればあるほどおばちゃんくらいの歳になったときに光り輝くのよ!ほら、おばちゃんを見てごらん、もう、後光がさしちゃってるでしょ、あはは!」
128 :豆腐:2010/11/16(火) 12:27:25 ID:r27RvCAg
飲み会のち、とあるカラオケ店
イケメン「うおー、友、歌うめー」
友「そう?サンキュー」
おばちゃん「いやー、若い子に囲まれてカラオケなんて、今日はいい日だわー」
男「別に今日はおばちゃんを囲む会じゃないっすからね!?俺を励ます会なんすからね!?」
女「自分で言うなー」
おばちゃん「そうだそうだー」
男「うおお、何でもうこの人たち既に息があってんの!?」
イケメン「お、次、男じゃん…て、あれ?この曲…」
男「それでは聞いてください!『もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対』!」
友「だっはっはっは!」
女「お前、大げさなんじゃー!」
男「あ、ものを投げるのはやめてください、うわ、それは洒落にならん、駄目だって、ジョッキはいかんジョッキはいかんて!」
終わり
129 :豆腐:2010/11/16(火) 12:29:05 ID:r27RvCAg
ふう。やっと終わりました。夏が終わる前には終わらせたかったのにもう冬やし!
ヤマなしオチなし、しかし意味はあると思いたい!そんなお話です。面白いとはとても言えませんが、気に入っていただけたら嬉しいです。またお会いしましょうさようなら。
130 :みんなの暇つぶしさん:2010/11/17(水) 02:38:03 ID:8qAY2qoY
ああ、ジョッキはいかんジョッキはいかんよな
てか誰か男を幸せにしてやれよ
面白かった
無事完結、乙です
VIPから書籍化!まおゆうが2010年12月29日発売!!
みんなの暇つぶし掲示板から書籍化!なってくれたら嬉しいなw
転載元
男「恋をしてしまった」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12874/1274110463/
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あれは男が高校位の頃の話かな?