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264 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/30(月) 23:44:03 ID:AX4/ZIzM
剣士「ってかお前飯食ったら何か落ち着いてきたな。腹減って怒りっぽくなってたのか? ダメだぞー、ちゃんと食わねえと。ほらほら食え食えー」
息子「やめろ……単に、お前がこういう人間である以上、私が平静でいなければと思っただけだ」
剣士「ふーん。あ、これウマいぞ。どんどん食え」
息子「勝手に皿に盛るな。お前は親か。まあ……食うが」
剣士「うはは! まあ相棒を頼りにしてるからこちとら勝手に突っ走れるんだぜ!」
息子「ははは」
剣士「痛い痛い! フォークは武器じゃありません!!」


剣士「ふー……でもお前何だかんだで結構食ったじゃねえか」
息子「お前には負けるがな。何故そこまで食うんだお前は」
剣士「軽い運動したら腹減るじゃん」
息子「十人抜きが軽い運動か……まあいい。とっとと払って帰るぞ」
剣士「これからが本番だろ!? まだ飲み足んねえよ!!」
息子「明日、酒臭いままで、国の要人に面会を求める気か?」
剣士「……会いに行って、会えるかどうかも分からんのに」
息子「それはそうだが、備えるに越したことはない。我慢しろ」
剣士「く……そぅ」
息子「息絶えるな面倒臭い」


265 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/31(火) 00:23:54 ID:hqr.zid6
剣士「仕方ねえ……んじゃまあ全部で幾らかな……っと」
息子「待て」
剣士「ん? 何だよ」
息子「ここも私が払う」
剣士「え? いいっていいって。たまには払わせろって」
息子「だからお前に払わせると、こう……いいから奢らせろ」
剣士「うーん、わーったよ。じゃ、御馳走さま」
息子「ああ」


剣士「じゃあ宿代だけでも払うわ」
息子「いや。それも私が払う」
剣士「お前……そんなに財布になるのが快感だったなんて」
息子「違う。その金で、もう少しマシな恰好をしろと言っている」
剣士「えー?」

266 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/31(火) 00:36:31 ID:hqr.zid6
剣士「何か問題あるか?」
息子「大ありだ。前から言おうと思っていたがな、旅人と言うより、落ち延びた何かにしか見えん。みすぼらしいにも程がある」
剣士「だって金が無いんだもんよ。服とか買ってる余裕なんか」
息子「だから、その金を使えと言っている。衣食住のうち二つは保障してやるがな、残る一つくらいは何とかしろ」
剣士「うーん……この金でねえ」
息子「そうだ。その金で」
剣士「こんだけあれば、もうちょい丈夫な剣が買えるな!」
息子「今から見繕いに行くぞ!」


息子「まあ、こんなものでいいだろう」
剣士「…………服って、高いんだな」
息子「公の場に出ても困らない程度の装いといえば、これで最小限だ」
剣士「くっ……こんな面倒なことにならなきゃ、布切れなんかに金なんか出さねえってのに……!」
息子「面倒の原因は、その金だと思うのだがな。第一、少しは身なりに気を使え」
剣士「小奇麗にしたって腹が膨れるもんか!」
息子「小奇麗でなければ、飯にありつけぬ場合というものは、世の中には多々あってな」


269 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/31(火) 23:01:21 ID:hqr.zid6
宿―

息子「……」
剣士「っでさー、六人目に出てきたのが、これがまたグラマーな姉ちゃんでさあ」
息子「……ああ」
剣士「うわあ……って見てたら針だの鎌だの何だの飛んでくるんだもんよー、あれにはちぃっとばかし参ったわ」
息子「お前は……中年か」
剣士「やっだなあ見ての通りまだまだ若いんだぞ! いいなーって憧れ抱いたっていいだろ!」
息子「お前には決して手に入らん物だと思うぞ」
剣士「分からねえだろそんなことは! 万が一があんだろ万が一が!」


剣士「でもまあ余裕で避けて余裕の勝利でしたとさー」
息子「手加減はしたのか」
剣士「女でも容赦しねえ主義なんでね。手加減すると、変に恨み買いそうだから。んでも下手な傷は付けなかったからな! 褒めろ!」
息子「お前はそういう奴だろうと思ったわ……ところで」
剣士「何?」

270 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/31(火) 23:01:34 ID:hqr.zid6
息子「いい加減、部屋に戻ったらどうだ?」
剣士「……まだいいだろ」
息子「そろそろ夜も遅い。寝かせろ。出ていけ」
剣士「うあああああ! 頼むから! 頼むから今夜はこっちに置いてくれよぉぉおおおお!」
息子「喧しい! 夜中だぞ今は!」
剣士「お前も人のこと言えた義理か!」


剣士「ま、万が一寝込みを襲われたら困るだろうが!」
息子「野宿ですら安眠しておった貴様が何を言うか」
剣士「そうだけどよー……何か具体的にお縄の危機をうっすら感じちまうと寝付きが悪そうでさあ」
息子「規律の取れた兵卒共が何人お前の寝込みを襲ったところで、掠り傷を幾つか与える程度が関の山だろうよ」
剣士「つべこべ言うな! 決めたからな! 今夜はここで寝るぞ!」

271 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/31(火) 23:01:47 ID:hqr.zid6
息子「……寝台はやらんぞ」
剣士「え?ここの床広いじゃん」
息子「ちっ……早く死なぬものかな……この社会不適合者は……」
剣士「どうしようエライ言われようだ」
息子「はあ……」


息子「分かった。部屋を取り替えよう。それで文句は無いだろう?」
剣士「へ?」
息子「宿主はお互いにどちらの部屋を使うか言ってあるだろう。賊だか軍だかがやって来た所で、部屋を替えておけば先に訪れるのは隣の、お前が眠るはずであった部屋だ」
剣士「そ、そりゃそうかもしんねーけど……その場合お前が危なくね?」
息子「来る可能性は非常に低い。来たところで、私がそのような者達に後れを取るはずがないだろう」
剣士「そういえばお前も結構強いんだよな……あんまり闘わねえから忘れてたわ」
息子「お前が無闇に剣を抜くから、私の出る幕が無いのだろうが」

272 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/31(火) 23:06:46 ID:hqr.zid6
息子「そういう訳だ。私は向こうで寝るぞ」
剣士「お、おう。ありがとな!」
息子「……早く休め」
剣士「分かったよ。お休み!」
息子「……」

パタン

剣士「いやあ……よく分かんねえ奴だよなあ」
剣士「まあいっか。ややこしいことになって怒るかと思ったけど、案外普通だったし」
剣士「しっかしあいつ……見ず知らずの人間を有名にしてやるとか何を考えてるのかねえ……どうやら本気みたいだし」
剣士「今が楽しいから別に良いんだがな……興味本意でも、何か企みがあってもどうでもいい」
剣士「こんな命でもよ……お前が使いたいんなら、好きに使えばいいよ」
剣士「そうすりゃ少しはいい人生」

273 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/31(火) 23:06:58 ID:hqr.zid6
バァアアアアンッ!!

息子「きっ、貴様ぁぁぁぁああああああっ!!」
剣士「うわあ!?」
息子「何だあの部屋は!?」
剣士「へ……部屋ぁ?」


剣士「何かあったっけか?」
息子「何だあの散らかり様は! 食い物や着替えやら何やらあちこちに……!」
剣士「おいおいそれだけかよ。お前どうせ寝るだけなんだし、んなもん横に避けといてくれりゃ」
息子「今すぐに片付けて来い!」
剣士「……へーい」

274 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/31(火) 23:07:13 ID:hqr.zid6
剣士「おーい! 片したぞ!」
息子「どれ……まあ、いいだろう」
剣士「しっかしお前変なところで潔癖症だな」
息子「あの状態で寝ろと言う、お前の方がどうかしているだろう……では、今度こそ寝る」
剣士「はいはいお休みー」
息子「……ああ」


剣士「うーん」
剣士「気にするような奴だったとは」
剣士「……」
剣士「うはは……変なのー」

275 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/31(火) 23:07:25 ID:hqr.zid6
次の日一

息子「……うむ」
息子「久しぶりによく寝た気がするな」
息子「しかし未だ飛び込んで来ないところを見ると、あいつはまだ寝ているのか?」
息子「あれだけごねておいて……」
息子「はあ……面倒だが起こしに行かねば。全く……」

ガチャ

息子「む」
宿主「お、っと……すまんすまん!」
息子「……何か用だろうか?」
宿主「あ、あれ、剣士さんは」
息子「隣だ。部屋を交換した」
宿主「なんだ……」
息子「……」

276 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/31(火) 23:07:58 ID:hqr.zid6
宿主「しかし、部屋に何か不都合でもあったかい?」
息子「いや、特に。それより」
宿主「ああそうそう。急ぎみたいだし、この際あんたでも構わないかな。ちょっと降りてきてくれ」
息子「……?」


息子「……何用だ」
衛兵「今日は。剣士様のお連れの方ですね?」
息子「そちらの言う“剣士”とやらが、私の連れであるかどうか」
衛兵「昨日、闘技場でご活躍なされた剣士様ですが」
息子「ああ……それならうちのバカに間違いはないだろう」

277 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/31(火) 23:12:27 ID:hqr.zid6
衛兵「お達しが出ております。城にご同行願えますか?」
息子「生憎だが、そちらの目当ての“剣士”は未だ眠りの中でな」
衛兵「……そろそろ昼になる頃合いですが?」
息子「そういう生き物だ」
衛兵「は、はあ……随分イメージと違う方なんですね。将軍の仰っていた話ではもっと」
息子「やめてくれ……」
衛兵「はい?」
息子「あれの良い評判は何故か腹が立つので、極力聞き流すことにしている」
衛兵「はあ……」


衛兵「では、剣士様の支度が整い次第」
息子「待ってくれ。用件は何だ? あれが何か無礼な事を、将軍殿にしたとか、そのようなことか?」
衛兵「私は単に剣士様と話がしたいとしか承ってはおりませんので……」
息子「その将軍殿がか?」
衛兵「いえ、我が国の姫様が」
息子「…………はあ?」

278 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/31(火) 23:29:21 ID:hqr.zid6
宿・剣士の部屋─

息子「おい、もう起きているのか?」

ドンドン

息子「おーい……」

ドン…

息子「ちっ……もういい入るぞ」


息子「おいこら起きんかニート!!」
剣士「……おお、おっはよー」
息子「もう昼だ! 早く顔を洗って着替えんか!」
剣士「えーっと……何で朝からそんな慌ててんの?」
息子「昼だと言うに……!」

279 :みんなの暇つぶしさん:2010/08/31(火) 23:49:35 ID:hqr.zid6
剣士「ああ、だから腹が減ってるのか……んじゃまあ何か食いに」
息子「その前に着替え……まず顔を洗って来んか馬鹿者が!!」
剣士「うぉう!? 朝っぱらから鋭い蹴りとは、流石の最強剣士様も避けるのが結構難しかったぞ!」
息子「ごちゃごちゃ言っておる暇があればとっとと用意をしろ!!」
剣士「本当何なんだよー……」
息子「お前に召喚命令が出たらしい」
剣士「はい?」


息子「しかもその将軍殿ではなく、一国の姫君からな」
剣士「何だ……まだ夢かいだだだだだだ……」
息子「残念ながら夢ではない」
剣士「意味が分かんねえよ!」
息子「安心しろ。私もだ」

280 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/01(水) 00:10:25 ID:KBNcsH7w
息子「どうやら、その将軍から話がいったようなのだが」
剣士「にしても昨日の今日だぜ? なんか陰謀めいたものを感じね?」
息子「何、役職の与えられていない王族など、得てして暇なものだ。大方お前の話を聞き、暇潰しにでもと呼び出したのだろうよ」
剣士「何か発言が具体的だけど、流してやんよ。んでもなあ……」
息子「良かったな、昨日の買い物が無駄にならずに済んで」
剣士「あー……気が重い」


剣士「ってか指名手配の件バレてねえよな……それだけが怖い」
息子「バレておったのら、姫の呼び出しと言うのは嘘で、のこのこ出向いた所を……という流れだろうな」
剣士「うわあ、ありそう」
息子「ならばどうする。逃げるか?」
剣士「いんや」

281 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/01(水) 00:22:11 ID:KBNcsH7w
剣士「行くさ。罠だったら罠だった時のことだ!」
息子「ほう」
剣士「大立ち回り演じるのも悪くはねえし、それはそれで名前が上がるだろ?」
息子「いや……悪名を轟かせるのはどうかと思うが」
剣士「じゃあその辺お前が上手く立ち回って調整してくれや。肉体労働と頭脳労働。きっちり分けようぜ」
息子「……どうした、やけにやる気だな」
剣士「うはは。なんか色々、ぱーっといってみたくなってな」
息子「そう、か……」


剣士「んじゃまあ行きますかー相棒」
息子「分かった分かった」
剣士「とりあえず朝飯ってか昼飯は」
息子「我慢しろ。私は下に待たせている衛兵に、道筋などを聞いてくる」
剣士「ちっくしょー!!」

282 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/01(水) 23:45:14 ID:rLR2TfhY
城―

息子「ふむ……」
剣士「おい……これはマズイだろ」
息子「そう、だな」
剣士「あんまりさあ……こういうとこ来たためしがねえから、確証はねえんだけど」
息子「言ってみろ」
剣士「ここってさ……すっげー偉いさんに謁見するような広間だよな」
息子「ご丁寧に人払いまでした上にな」


剣士「……気配もしねえから、何か隠れてることは無さそうだしな」
息子「油断させておいて……というのは常套手段ではあるが」
剣士「油断なんか出来るわけがねえだろ。こんなイイ待遇受けといて」
息子「城内の人間とすれ違う度、会釈されておったしな」
剣士「うおお分からん」

283 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/01(水) 23:47:36 ID:rLR2TfhY
息子「これはひょっとするとあれかも知れんな」
剣士「どれだよ」
息子「お前を特別に雇い入れたいとか、そのような僥倖かもな」
剣士「んなバカな。どこの馬の骨かも分からねーような奴って、昨日お前が言ってたじゃねえか」
息子「お偉い方の考えることなど、やはり分からんものだ。ただ会って話がしたいという建前が、真実かも知れぬし」


剣士「ううむ……とりあえずお縄の心配は無いかなあ?」
息子「ふっ……さあな。あちらの思惑がはっきりするまで、せいぜい怯えて静かにしていろ」
剣士「くっ……人事だと思いやがって! お前だって何だ、逃亡幇助とかになるんじゃねえの!?」
息子「ほう、難しい言葉を知っているな。しかし私は捕まるような愚行を犯さぬわ。お前を囮に、早々逃げるかな」
剣士「外道!」
息子「短い付き合いだった……せめてまあ、安らかに眠れ」
剣士「殺すな諦めんな助けろよ相棒だろ!」

284 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/02(木) 00:21:14 ID:cKObi3.Q
将軍「あの……」
剣士「うわあ!?……ってあんたは」
息子「む?」
将軍「お連れの方は初めてお会いしますね」
息子「ああ……噂の将軍殿か」
将軍「はい。昨日そちらの剣士殿に負けた者です」
剣士「あ……あはは」


剣士「き、昨日はどうもすみませんでした……えっと、ちょっと、驚いて……?」
将軍「いえお構いなく! こちらこそ……申し訳ありませんでした!」
剣士「え、え?」
将軍「昨日貴方が戦う様を見て、つい立場も忘れて挑んでしまい……ご迷惑をおかけしました」
剣士「いやいやいや! 何で頭下げるんすかやめて下さい!!」
息子「……」


286 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/02(木) 01:08:49 ID:cKObi3.Q
息子「で……要件というのは」
将軍「…………いえ、その……」
剣士「あれ、何? 何でそんなこっち申し訳なさそうに見るんすか」
息子「こいつが何か?」
将軍「……姫様から、直接お伺い下さい」
剣士「?」
将軍「姫様……どうぞ」


姫「……」
将軍「姫様、こちらが剣士様。そしてその、お連れの方です」
姫「ふふ……初めまして」
剣士「は、初めまして……?」
息子「うむ……」


288 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/02(木) 01:35:10 ID:cKObi3.Q
剣士(おいおい……)
息子(何だ小声で)
剣士(すっげえ美人さんだなあ。流石はお姫様ってやつか……)
息子(……はあ?)
剣士(えっ、何か今変な事言ったか?)
息子(いや……お前は、そういう奴だ)
剣士(意味が分からん……)


姫「突然お呼びしてしまい、申し訳ございません。私、貴方とお話がしたくて」
剣士「え、えーっと……そりゃまさかそっちの将軍さんを負かしちまったから、とか?」
姫「それも一つの理由です。お強いのですよね、剣士様」
剣士「あはは……ありがとうございます。ま、まあ人並みよりちょっと上くらいには」
姫「ふふ……そうですわよね。当然そうなりますわよね」

289 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/02(木) 02:12:57 ID:cKObi3.Q
姫「では、こちら。貴方様……ですね?」
剣士「な!?」
息子「……!」
姫「ふふ。良かった。図星ですか」
将軍「……」


剣士「……何で、それを」
将軍「恥ずかしながら……貴方の事を少々調べさせて頂きまして」
姫「でも、辿り着けたのは本当に偶然だったとか。このような手配書、よく残っていたものですよ」
将軍「……ええ。本当に」
剣士「ぐ……」
息子「すまぬが」

290 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/02(木) 02:21:19 ID:cKObi3.Q
息子「一体、何が目的だろうか?」
姫「あら」
息子「こいつの身元が完全に割れたのであれば、とっとと捕縛すればいいだけのこと」
剣士「おいこらてめえ……」
息子「まあ尤も、この馬鹿は大人しく捕まるような人間ではないぞ」
姫「ええ。そうでしょうね」


姫「我が国で一二を争うそこの将軍が負けてしまったのですもの。どう取り押さえてよいものか、皆目見当が付きませんわ」
息子「そうだろうよ。ならば第一、ここで何故王族の出る必要がある。追い詰められれば、流石のこいつとて手荒な真似も辞さんぞ」
将軍「なっ」
姫「あら、それは大丈夫ですわ。私は偽物。影武者ですから」
息子「嘘だな」
姫「ええ。嘘ですわ。ふふ……」

291 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/02(木) 02:22:04 ID:cKObi3.Q
剣士「何か当事者蚊帳の外なんだけど……」
息子「情けない顔をするな。向こうには何か要求があるんだろう」
姫「ええ。要求と言いますか、取引ですわね」
剣士「取引ぃ……?」
姫「剣士様。どうかこの城にいらして下さい」
剣士「へ?」


剣士「あ、あはは……もう、来てますよ?」
姫「ふふ……この国に『仕えて』下さいと仰ったのですよ」
息子「断れば?」
姫「そうですわねえ。貴方様の消息を、国にお伝えするとか」
剣士「…………はは、面倒くせえ」


294 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/02(木) 21:12:22 ID:cKObi3.Q
姫「勿論、お話を呑んでくださるのでしたら、このことは私と将軍の胸に仕舞っておきます。如何でしょう?」
剣士「……戦争の片棒を担ぐのは、もうまっぴらだ」
姫「ご安心を。今のところ、その予定はございませんわ」
剣士「どうだか。じゃあ何をさせようってんだよ」
姫「貴方のそのお力を生かせる場所は、何も戦場に限ったことではないでしょう」


姫「兵の指南に当たって頂くとか……ああ、私の護衛なんかも頼めそうですわね」
息子「取って付けたような職務だな」
姫「あら、当然ですわ。剣士様のようなお方がいるだけで、兵達の士は格段に変わることでしょう?」
息子「……だろうな」
剣士「ちっ……」

295 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/02(木) 21:12:59 ID:cKObi3.Q
姫「さあ、どうなさいますか。剣士様」
剣士「どうするよ相棒」
息子「従うも一騒動起こすも、お前の好きにするがいい」
剣士「……はいよ」
将軍「……」


将軍「申し訳ありませんが……姫様に刃を向けると仰るのであれば……」
剣士「やめとけやめとけ。昨日と違って、今日は一対二だぜ。言っておくがうちの相棒もそこそこやるんだからな」
姫「まあ」
将軍「まさか……貴方も追われる身ですか?」
息子「これと一緒にしてくれるな。ただの真っ当な一般人だ」
剣士「どうだかー」
息子「喧しい」

296 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/02(木) 21:13:10 ID:cKObi3.Q
姫「では、剣士様とご一緒に貴方もいらして下さいますわね」
息子「さあな。こいつの返事次第だ」
姫「剣士様……どうかご決断下さい」
剣士「何でそんな下手から脅迫出来んのかが分からねえ……」


将軍「剣士殿。どうか私からも」
剣士「ええー……普通に頭下げられても困りますよ、この場合も」
将軍「私は……貴方と戦いたくはありません。出来ることなら、その……共に我が国を守っていきたいと……」
剣士「いやほんと、そんなこと言われても」
息子「……」

297 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/02(木) 21:13:27 ID:cKObi3.Q
姫「ふふ……ではこうしましょう。返事は明日までお待ちします」
剣士「はあ」
息子「良かったな」
剣士「いいのかねえ」
将軍「……よろしく、お願いします」
剣士「だからそれこっちが悪者みたいだからやめてくれって!!」


姫「では宿まで兵をお付けしますわね」
剣士「ん?道案内とかなら平気だから」
姫「お荷物をまとめて、城まで戻って来て下さいね」
剣士「……え?」
姫「今宵は城でお過ごし下さいませ」
剣士「……」
姫「逃げられては、私少し困ってしまいますから……ふふ」
将軍「その……すみません。本当に」


300 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/03(金) 21:57:35 ID:GPipKrUg
夜─

剣士「はー……飯はまあ豪華だったし……うまかったなあ」
息子「……ああ」
剣士「でも何か食った気がしねえんだよな……やっぱりあれかな、気持ちの問題かな」
息子「……そう、だな」
剣士「あーあー勿体ねえことをした……ってお前ずっとテンション低いよなあ。どうした」
息子「何故……」
剣士「ああ?」


息子「何故……お前と同室なんだ……っ!!」
剣士「はあ? 姫さん言ってたじゃねえか。急なことで、使える部屋が空いてなかったって」
息子「そんなわけがあるか! これ程広大な城だぞ!?」
剣士「言われても知るかよ。まあまあ、折角なんだし仲良くやろうじゃないか……てもう寝るのか? 待てよ」
息子「離せ! 床にでも入らねばやっていれるか!!」
剣士「そんなにイヤかおい。傷付くなあ」

301 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/03(金) 21:57:50 ID:GPipKrUg
剣士「まあまあ待て待て。積もる話もあるだろうよ。今後のこととか」
息子「……それはお前に任せると、何度も」
剣士「言われてもなあ。選択肢なんてあってないようなもんじゃね? 無理に蹴っても利益なんてねえし」
息子「まあな。しかし考え方を変えてみろ」
剣士「どんな風に?」
息子「今名乗っている方の名前を売り出す好機だと」
剣士「うーん」


剣士「程ほどに、食っていくのに困らないくらいが目標なんだけどなあ……話が大きくなったよなあ……」
息子「お前、魔王を倒すのが目的だの、大きなことを言っていただろう」
剣士「あれはその……なんつーかなあ」
息子「お前ならば、案外いけると思うのだがな」
剣士「まぁたお前は適当なことを言う」


303 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/03(金) 23:24:14 ID:GPipKrUg
剣士「そりゃまあ魔王なんざいない、平和な世の中でのんびり生きたいよ? 魔王なんざ倒したとあっちゃ、掛けられた手配書が無かったことになるかもしんねえし」
息子「まあ、世界を救えば、当然な」
剣士「剣の腕には自信がある。大概負ける気はしねえな」
息子「ならば話は早いだろう」
剣士「そうかなあ」


息子「この国に居つき、大きな功績を立てる。お前であれば、そのようなこと造作もないはずだ」
剣士「何その無茶振り」
息子「その上で魔王を倒すと名乗りを上げる。小国とはいえ、サポートが得られるのは大きいぞ」
剣士「いやでも強いつってもさー、それで世界をどうこう出来るかって聞かれれば無理だと答えるぜ?」
息子「……ふむ」

304 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/03(金) 23:47:33 ID:GPipKrUg
息子「お前は何の根拠も無く、強さに胡坐を掻いて猛進する奴だと思っていたが」
剣士「んな生き方命がいくつあっても足りねえよ。見極めが肝心だわ」
息子「そのようなものかな」
剣士「魔王に辿り着くにはえらい数の魔物を蹴散らさなきゃなんねえ。その上今まで出会った魔物共には余裕で勝てたが、それ以上の規格外が出てこないとも限らない。数で圧倒されちゃ、それこそ話にもなんねーよ」
息子「まあ……その通りだが」
剣士「大体だな、国一つ救えない奴が、世界なんか救えるわけがねえだろう」
息子「……」


息子「ならば、あの大口は何だったんだ」
剣士「んー? まあ、生きてく目標かなあ」
息子「まさか、お前がそのような殊勝なことを言うとはな」
剣士「お前の目には一体どんな人間に映ってるのか気になって仕方がねえ」
息子「社会不適合者だな」
剣士「否定はしねー」

305 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/04(土) 00:07:23 ID:FVYL69mM
剣士「何しろ国追われてますし? 不適合ってか、すっぱりいらない人間ってーか」
息子「どうした。今日はやけに愚痴っぽいな」
剣士「そりゃまあ今まで一人で生きてきたからな。今は吐く相手がいるからさ」
息子「面倒な。いつもの大口を叩くお前はどうした」
剣士「大口叩いて……でっかい目標でも掲げてねえとさ、生きてくのって疲れるんだぜ」
息子「……」


息子「私も……」
剣士「あ?」
息子「私も協力してやると言えば?」
剣士「……」
息子「お前の剣に、お前の盾になってやる。そう言えばどうする? 魔王を討つ気になるか?」
剣士「お前は何だ。魔王に恨みでもあるのか」
息子「そのようなものだ」
剣士「ふうん」

306 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/04(土) 00:07:58 ID:FVYL69mM
息子「で、どうする」
剣士「……お前は何で、そこまでしようと思えるんだよ」
息子「何故だと思う」
剣士「さあな。その答えも含め、今はまだ何も分かんねえや」
息子「ならばいつかお前が、答えに辿り着く時を願っている」
剣士「はあ。そうっすかー」


剣士「まあとりあえず今日のまとめはさあ」
息子「何だ」
剣士「……女って、怖いよなあ」
息子「全くだ……!」
剣士「えっ?」

307 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/04(土) 01:08:57 ID:FVYL69mM
次の日─

姫「では、お返事をお聞かせ願いますか?」
剣士「へいへい。もちろん、そちらの言う通りにしますよ」
姫「ありがとうございます。ところで、お連れ様も同じご意見ですの?」
剣士「そういうことで。ああ、その相棒から伝言があるんだけど」
姫「何でしょうか?」
剣士「部屋を別にしてくれだってさー」
姫「まあ」


姫「分かりました。そのように手配致しましょう」
剣士「悪いね。なんか案外小さいところがあってさあ」
姫「いえいえ……ふふ。では将軍にも伝えておかなくては」
剣士「ああ、あの人は今頃仕事か。大変だねえ」
姫「きっと剣士様が首を縦に振って下さったこと、とても喜ぶと思いますわよ」
剣士「はあ。そんなもんかねえ。随分気にかけてくれてたみたいだけど」
姫「良い知らせが二つもあるんですもの。喜ぶに決まっていますわ」
剣士「二つ?」

308 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/04(土) 01:14:52 ID:FVYL69mM
姫「そういえば、そのお連れの方はどちらに?」
剣士「さっき出かけるって出ていったよ。荷物は置いてあるから、逃げたわけではねえぜ」
姫「あら、どちらに?」
剣士「さあ?」
姫「ふふ……随分あっさりしたお付き合いですのね」


剣士「まあ、つい最近知り合ったばかりで、素性も詳しくは知らねえしなあ」
姫「昨日は共に雇い入れると申し上げましたが……信用に、足る人物なのでしょうか?」
剣士「多分ね。あんな仏頂面で嫌味な奴だが、いい奴だよ」
姫「剣士様がそう仰るのでしたら……分かりましたわ」
剣士「おう。ありがと」
姫「……いえ」

309 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/04(土) 01:31:36 ID:FVYL69mM
剣士「ところでさー……もう一つ頼みがあるんだけど」
姫「何なりと」
剣士「あの手配書……処分して貰えないかなあ?」
姫「ふふ……」
剣士「ああうん。無理ですよねー。言ってみただけだよ」
姫「申し訳ありません」
剣士「思ってもいないことをー」


姫「でも、昨日は聞きそびれてしまいましたが、本当の所はどう思っていらっしゃるのですか?」
剣士「何が?」
姫「お国での、貴方様のご評判」
剣士「あー……仕方ないんじゃね?」
姫「……戦争の間は英雄と崇められ、敗戦後は人斬りの鬼と罵られ、国を追われたことが仕方ないこと?」
剣士「ああ」

310 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/04(土) 01:36:47 ID:FVYL69mM
剣士「一人に責任を被せりゃ、かなり気が楽になっただったろうよ。当然の流れさ。悲しいとは思うが、恨んではいない」
姫「……お優しいのですね」
剣士「ま、人斬りってのは本当のことだしな」
姫「それは戦争だったから仕方なく」
剣士「ダメだぜー」
姫「え」
剣士「国の偉いさんがそんなこと言っちゃダメだ。思っていても言うな」
姫「……はい」


姫「で、では……明日から色々とお仕事を頼むと思います」
剣士「言える立場じゃねえのは重々承知だが、お手柔らかに頼むぜ」
姫「勿論ですわ。生活面は完全に城で保障しますし、お給金も弾みます」
剣士「おお、良待遇。ま、そう思って今日の所は昼寝でも」
姫「いえ……少し、私にお付き合い下さりますか?」
剣士「へ?」
姫「私……剣士様のことを……もっと知りたくなりましたの」
剣士「……はい?」


313 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/04(土) 01:45:20 ID:FVYL69mM


魔王城─

息子「という顛末で、その城に、あいつ共々仕える事になった」
魔物「意味が分からん」
息子「だろうな」
魔物「ま、上手くやればいいんじゃねえの? 計画の前提が整いかけてるってことだろ。有名にするって前提が」
息子「……ああ」


魔物「そうなると、あの人間の経歴について裏付けを取った俺の苦労は、完全に無意味だったと」
息子「たまにはあることだろうよ。許せ」
魔物「へいへい。暇つぶしにはなったしな。しかし良く出来た手配書だねえ」
息子「……何だ、お前も入手していたのか」
魔物「おう。しかしあれだな。これは酷い」
息子「ああ」
魔物「これじゃあ『本人そのまま』だ。捕まるどころか、信じる人間なんてまずいないだろうよ」
息子「……全くだ」

314 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/04(土) 01:49:54 ID:FVYL69mM
息子「余程あの将軍とやら、こいつの素性が気になったのであろうよ」
魔物「総当たりで調べたんだろうなあ。でなきゃ、こんな眉唾手配書なんかに辿り着くわきゃねえぞ」
息子「……何故、楽しそうにしている」
魔物「お前に降りかかるであろう、大した面倒事を予感してな」
息子「お前もまたよく分からぬことを言うな……」


息子「では、この辺りで帰るとする」
魔物「魔王様には会っていかねえのか?」
息子「冗談が上手くなったな」
魔物「あはは。お前も大概あの方嫌っていやがるよなあ」
息子「……」

315 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/04(土) 01:54:16 ID:FVYL69mM
魔物「しかし、ご機嫌を窺っておくのも重要だと俺は思うぜ?」
息子「何かあったのか?」
魔物「いんや。お前が進言したあの日から、えらく大人しいものさ」
息子「ならば」
魔物「だからこそ、だろうよ。思い通りに動きたいのなら、首尾よくいってますってのを報告して来た方が絶対にいい」
息子「……お前の方から、頼む」
魔物「嫌に決まってるだろ」
息子「ちっ……仕えぬ手足だ」


息子「分かった分かった。軽く話をしてくる」
魔物「俺は一緒には行ってやんねーからなー」
息子「最早期待もしておらぬわ。ではな」
魔物「おう。頑張って死んでこい」
息子「人事だと思いおって……」


317 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 00:13:00 ID:GSXGDbzQ
魔王の間─

息子「……父上」
魔王「ほう」
息子「御無沙汰しておりました」
魔王「全くだ。して、どうだ」
息子「と……仰りますと」
魔王「お前の言っていた、余興に決まっておろう」
息子「はあ……」


息子「順調……かと思われます」
魔王「そうかそうか」
息子「随分と、上機嫌でございますね」
魔王「当然だ。何しろ近頃、血を見ていない」
息子「……」

318 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 00:20:56 ID:GSXGDbzQ
息子「父上にも、そのようなお心が」
魔王「単に飽きたのだ」
息子「……」
魔王「悲鳴も慣れれば静寂と変わらず、血飛沫もただ不快な泥水と変わらぬわ。たまには良いな。休息というものも」
息子「……さようでございますか」
魔王「しばらくはまだ待ってやる。せいぜい派手に暗躍しておけ」
息子「はい」


魔王「しかし肝に銘じておけよ」
息子「はい?」
魔王「私は……戦争それ自体に倦んでいるわけではないのだからな」
息子「……は」
魔王「愉快で仕方がないぞ、戦争は。私の声一つで、どこもかしこも地獄を見る」
息子「そのようで……」
魔王「お前は興味が薄いようだがな。何度物見に呼んでも、出て来た試しがないとは」
息子「生憎ですが……」
魔王「別に構わぬ」

319 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 00:29:36 ID:GSXGDbzQ
魔王「その内、お前にも分かるはずだ」
息子「……」
魔王「何しろ私の血を引いている」
息子「……父上」
魔王「お前も所詮、血に塗れている方が似合っているのだと、気付く日が」
息子「この辺りで……失礼します」
魔王「……ああ」
息子「それでは」


魔王「……別に構わぬよ」
魔王「お前が何を厭い、何を好んだ所で、私は構わない」
魔王「ただ肝に銘じておけ」
魔王「どの道、私もお前も……」
魔王「……さて」
魔王「後、如何程休んでやるものだろうかな」
魔王「くっく……」

320 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 00:38:37 ID:GSXGDbzQ
城─

息子「はあ……」
息子「だから嫌なんだ。だから」
息子「嫌っているとか、そういう話ではない」
息子「面倒なんだ……あのお方は」
息子「あいつを相手にしていた方が、桁違いに好ましい疲れ方だ……」
息子「……部屋にはおらぬようだが……どこに行ったんだ、全く……」


息子「お」
将軍「……貴方は」
息子「将軍殿か。すまぬが聞きたいことがある」
将軍「何でしょうか」
息子「私の連れを知らないだろうか。先程から探しているのだが」
将軍「剣士様でしたら……姫様の部屋かと思われますが」
息子「何?」

321 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 00:43:22 ID:W2hO32cc
なにっ!支援

322 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 00:51:10 ID:GSXGDbzQ
息子「そちらの姫君は何を考えているんだ……仮にもあいつはお尋ね者だろう」
将軍「姫様は剣士殿を気に入ったようですね」
息子「ますます分からんな。あのような粗暴な者を?」
将軍「はあ……その、失礼ですが貴方は」
息子「何だろうか」
将軍「剣士殿に……随分と辛辣ですね」
息子「そのようなつもりはないのだが」


息子「あれは甘やかすと付け上がる」
将軍「やはり……いえ、何でもありません」
息子「渋い顔で、何だと言うのだ……。まあいい。教えてくれて感謝する。では」
将軍「ああ、少しお待ちください」
息子「……今度は何だ」

323 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 01:01:28 ID:GSXGDbzQ
将軍「剣士殿と決断して下さったようで、ありがとうございました」
息子「私は何もしていない。全てあれの好きにさせただけだ」
将軍「はあ……しかし、そうだとしても」
息子「何だ」
将軍「私は貴方に感謝します」
息子「……ほう」


将軍「それだけです。では、失礼します」
息子「……ああ。一つ言っておくが」
将軍「何でしょうか」
息子「勝手にしろ」
将軍「ええ。勝手に、感謝しておきますよ。それでは」
息子「……ちっ」

324 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 01:15:25 ID:GSXGDbzQ
おっと将軍の呼び方が剣士様とか剣士殿とかまちまちですね。剣士殿で統一します。


姫の部屋─

姫「お口に合いますか、剣士様」
剣士「ああ。うめー菓子だなあ」
姫「たくさんありますから、いくら召し上がって下さっても構いませんわよ」
剣士「んじゃまあ遠慮なくー」
姫「ふふ……」


姫「そうですわ剣士様」
剣士「んあ?」
姫「折角ですし、剣士様のお召物もご用意いたしましょう」
剣士「えー、昨日これ買ったばっかなんだけど」
姫「それはそれですわ。私、剣士様に似合うものを選んで差し上げたいのです」
剣士「いやでもそこまでしてもらうのはちょっと」
姫「だって剣士様、もう少し身嗜みに気を付ければきっと」

325 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 01:19:51 ID:GSXGDbzQ
コンコン

姫「あら」
息子「失礼する……」
剣士「おー、お帰りー。早かったなあ」
息子「…………何をしているんだ、貴様は」
姫「仲良くお茶をしておりましたの」
息子「ほう……」
剣士「えっ。何で睨まれてんの」


姫「ふふ……無断でお借りして、申し訳ございませんわね」
息子「構わん。構わんが」
剣士「え、何。何だよお前」
息子「少々話があるため、返してもらう」
姫「どうぞ」
剣士「ちょ、待て待てまだ食い足りてねえのに!!」
姫「またお越しくださいね。剣士様」
息子「……」


327 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 01:47:38 ID:GSXGDbzQ
剣士「ちょ、何なんだよーいきなり。折角楽しくやってたってのに」
息子「いいご身分だなお前は」
剣士「えー……そんなバカな。ただちょっと姫さんと二人っきりで話がしたいとか言われて、部屋に連れ込まれてただけで」
息子「ははは」
剣士「ますますバカな」


息子「昼間っから女と乳繰り合っているような奴は、憎まれた所で仕方がないだろう」
剣士「ちっ!? お前何言ってんの!? マジでもう何言ってんの!?」
息子「喧しいわ。で、どうなんだ。結局どのような雑務をやらされることになったんだ」
剣士「え……えーっと、明日言うってさ。面倒なのはやめてくれとは言っておいたけど」
息子「まあ、それほどの仕事は回しては来ないだろうよ。まだな」
剣士「ちょ、やめろよなーそういう不安煽るような言い方ー」

328 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 01:55:10 ID:GSXGDbzQ
剣士「と、とりあえず早い夕飯でも食いに行こうぜ」
息子「ここで食うのか?」
剣士「いんや。街に出て」
息子「そう言うと思った」
剣士「だってこんな堅苦しい所じゃ味なんて分かんねーもん」
息子「貧乏人の舌は合わぬだろうな」
剣士「お前も昨日の飯、えらい面で食ってたくせに……」


息子「そういえば、先程将軍殿に会ったぞ」
剣士「へー。なんか言ってた?」
息子「……感謝された」
剣士「ああ? お前あの人に何かしたの?」
息子「していない……と思われたのであろうな」
剣士「意味分からん」
息子「分からんで良い」



331 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 20:50:00 ID:GSXGDbzQ
街─

剣士「さーてとお前は何食いたい?」
息子「酒」
剣士「……何か嫌なことでもあったのか、お前」
息子「ただ飲みたい気分なだけだ」
剣士「まあそんな時もあるかなあ。よし! んじゃまあ今日はお前に付き合ってやるよ!」
息子「言ったな」
剣士「え」


酒場─

息子「……この瓶を、後三本頼む」
剣士「おいおい、そりゃ飲みすぎだって」
息子「私が払うんだ。気にするな」
剣士「いや、そういうことじゃなくって……お前が荒れるなんて、珍しい事もあるんだなあ」
息子「ふん……」

332 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 20:52:23 ID:GSXGDbzQ
息子「そもそもの原因は全て貴様だろう」
剣士「言いがかり臭いけど、一応は聞いておくか。何でだよ」
息子「私はな、面倒な事は全て嫌いなんだ」
剣士「はあ」
息子「だからお前のことも嫌いだ」
剣士「えー」


剣士「何があったか知らねえけど、相棒に酷い言い草だねえ」
息子「喧しいわ社会不適合者」
剣士「ははは。お前も大概不適合で面倒な奴だと思うけど」
息子「私はいいんだ。私は」
剣士「そうっすか」

333 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 21:05:57 ID:GSXGDbzQ
剣士「んでもお前の心の広い相棒様は、結構お前のこと好きみたいよ?」
息子「そういう趣味は無い」
剣士「このバッサリ感も最早心地いいわ。好きよー相棒」
息子「そういう相手なら、他を当たれ」
剣士「もういいっつーの。ああほら、酒が来たぞ……って」
息子「はーあ……」
剣士「一瓶一気とかバカ………いっでぇ……」
息子「バカと言う方がバカだろう」
剣士「さ、酒瓶で人を殴る方がよっぽどのバカだ!!」


息子「まあまあ、あれだ」
剣士「何だよ!?」
息子「私の相棒は酒瓶程度ものともしない猛者だと、信じているが故の行動だ」
剣士「そういう信頼はいらねえ! ドブに捨てろ! 見ろ瘤になっちまっただろうが!!」
息子「やめろ。鬱陶しい頭を近付けるな」
剣士「ぐぐぐ」

334 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 21:15:28 ID:GSXGDbzQ
剣士「まあ、言われてみれば髪もそろそろ鬱陶しくなってきたかなー」
息子「……切るのか?」
剣士「んー、どうしよ。お前はどう思う? やっぱ切った方が良い?」
息子「切らぬ方が良いだろう」
剣士「何という面倒な奴」


剣士「お前さっき鬱陶しいって言っただろ!?」
息子「言いはしたが、今の方が遠目から目立っていい」
剣士「見つけやすいから?」
息子「それ以外に何がある」
剣士「はあ……もうやだ面倒臭い。でもまあわーったよ。しばらく切らねえ」
息子「出来ればそうしておけ」


336 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 22:03:03 ID:GSXGDbzQ
剣士「何はともあれ、これからまさかの城勤めが始まるぜ」
息子「まさかの、な」
剣士「はっはっはー。お前せいぜい先輩に従うんだぞ!」
息子「は?」
剣士「目の前の! このつっええ剣士様は元城勤めだぜ!」
息子「ああ……なるほど」


息子「故郷ではやはりあれか、要職にでも就いていたのか」
剣士「おうよ。あれよあれよという間に出世街道驀進だったぜ」
息子「お頼もしい事で」
剣士「その分僻みやっかみ諸々えげつなかったけどな」
息子「想像に難くないな」

337 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 22:58:19 ID:GSXGDbzQ
息子「そして、それを物ともしないお前の姿もな」
剣士「だっろー? 政略結婚とか色々話もあったけど全部蹴ってやったわ!」
息子「後悔しているだろう」
剣士「……ちょっとだけ」
息子「うむ。とりあえずまあ……飲め」
剣士「おう……」


剣士「まあ何にせよ、先輩のお言葉には従えよ」
息子「分かった分かった。では先輩殿。何か言うことは」
剣士「そうだなあ。お前の実力だったら、さくっと武功上げてさくっと昇進って感じだろう」
息子「その通りだろうな。で?」
剣士「だから、あんま目立つのはやめとけ」
息子「……言うと思ったわ」
剣士「だっろー?」

338 :みんなの暇つぶしさん:2010/09/05(日) 23:15:29 ID:GSXGDbzQ
剣士「そういうわけで! まあ適当に目立たず行こうぜ!」
息子「与えられる仕事次第だがな」
剣士「それでも! 極力!」
息子「……まあいいだろう」
剣士「そうそう。その調子で従順に」
息子「お前が果たしてどの程度、大人しくしていられるものか、見ものだな」
剣士「ぐっ……」


剣士「お前はそう言うけどなー、一回失敗してるんだからいくらなんでも学んで」
息子「手を抜くなどといった高度な芸当が、お前に出来るとは思えんがな」
剣士「うはは、何だよそれくらい余裕で…………」
息子「どうした」
剣士「わざと負けるなんてやったことねえや、そういえば」
息子「ほらな」
剣士「み、見てろ! ぜってーに上手くやってやるんだからな! 不可能は無い!」
息子「まあ、期待して見ておくか。側でほくそ笑みながら」
剣士「てめぇ……」



魔王「どうか、***」【その5】へつづく

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転載元
魔王「どうか、***」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12874/1262700852/


 
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