1 :おつかい ◆5G.VrtfN/g:2010/01/05(火) 23:14:12 ID:SADUfMuw
僭越ながら、再び場所をお借りします!

このSSは、魔王「今日も平和だ飯がうまい」及び、魔王の娘「今日も平和でご飯がおいしい」の過去編となっています。
前作二つを読まずとも楽しめる。または、読めば細かい点が繋がり、楽しめるようなものを目指すつもりです。
考えながら書くため今回もゆっくり目の進行となりますが、またのんびりお付き合い下さると嬉しいです。


関連記事
魔王「今日も平和だ飯がうまい」

続編
魔王の娘「今日も平和でご飯がおいしい」
↓過去編
魔王「どうか、***」

短編
魔王の娘「無くはない!無くはないもん!」



このSSの作者さんの過去作品一覧



 

2 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/05(火) 23:15:34 ID:SADUfMuw
魔王城─

魔王「話はそれで終わりか?」
息子「……」
魔王「私に意見するつもりならば、もう少し出来た物を持って来るがいい」
息子「……そう、ですか。休むおつもりは、ないと」
魔王「くどい。今進撃を止めて、利になる点は一つもない」
息子「分かりました……失礼します」
魔王「ああ」


息子「はあ……」
息子(父上は相変わらず、か)
息子(このようなことを続けていて、何になると言うのだろうか)
息子(悪戯に人間共の領土を侵略し、無益な戦いを引き起こす)
息子(人間がいくら減ろうと私は構わない。だが、それが魔物となれば話は違う)
息子(最早魔物の誰一人として、戦いを望んではいない。皆、疲れ果ててしまったと言うのに……)

3 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/05(火) 23:16:43 ID:SADUfMuw
息子(城の魔物が皆、晴れぬ顔ばかりとなったのは、いつからだろう)
息子(戦いに赴く度、顔ぶれが減り……またどこからか連れて来られる。その繰り返しだ)
息子(人間は弱い。だが団結し、技術を磨き……侮れない敵だと言うのに、父上は理解しようとしない)
息子(いや……魔物にすら、興味がないのであろうな)
息子(全て生き物は、父上のために生きて死ぬ……父上の、逸遊のために)
息子(それが不自然だと思うのは、私だけなのだろうか)


息子「私は……」
息子「私はただ、平和な日々が欲しいだけだ」
息子「緩やかに変化するだけの、静かな日々が……」
息子「同士が倒れる戦いを活劇として眺めて、何が楽しいのだか……」
息子「はあ……私には分からぬ」
息子「……こうしてぼやくだけでは、意味が無い、か」

4 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/05(火) 23:18:07 ID:SADUfMuw
とある世界の昔の話。
それほど遠くない未来に魔王となる彼には、昔から秘めた願いが二つありました。
一つは、同士である魔物達が安穏であること。
一つは、何にも囚われず平和に暮らすこと。
そして……ある時を境に、もう一つの願いを抱えるようになります。



とある町─

「はあ……」
「この山を越えねえと、次の町には行けないとか……聞いてねえよ」
「やったら強い魔物が住み着いてるってのもな……」
「あーもう!誰か強い奴いねえかなー!タダで一緒に行ってくれねえかなー!」

5 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/05(火) 23:19:47 ID:SADUfMuw
彼はその願いを誰に語ることもなく、ずっと胸に留め続けました。
叶うかどうかも分からない、彼に出来ることなど何もない、儚い願いでした。
それでも彼は願い続けました。報われないと知りながら、彼は今もなお願い続けています。

これは彼の願いの始まりの、誰も知らない区切りの話の、その全て。



【魔王「どうか、***」】

6 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/05(火) 23:21:20 ID:SADUfMuw
とある町─

息子「はあ……」
息子(やはり息抜きは人間の町に限るな)
息子(魔物がいると気を遣わせてしまうし、人の姿に化ければ問題は無い)
息子(適当に城から離れた町を選んだが、正解だったな。まだ活気のある方だ)
息子(酷い場所だと、酒場すら無いからな……)


息子(全く……何をするにもやりにくい)
息子(腹を割って話せる者も、共に酒を飲み交わす相手もいない)
息子(孤独……と言うより、暇で仕方がない、と言うか……)
息子「はあ……それもこれも父上が……む?」

7 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/05(火) 23:23:15 ID:SADUfMuw
剣士「だーかーらー!謝ってんだろさっきから!!」
ならず者1「それが謝る態度かって言ってるんだ」
ならず者2「誠意がねえよなあ、誠意が」
剣士「はっ、金ならねえぞ!やる気か?!こう見えても剣には自信あるんだ!!」
ならず者「『剣の腕』、だあ?」
ならず者2「…………っぷ」
ならず者3「あはははっはっはは!寝言は寝て言えってんだ!!」
剣士「く、く、くそ!笑うなてめえら!ぶっ殺してやる!!」


息子「騒がしいと思えば……単なる揉め事か」
息子(しかし威勢のいい奴だな。数人の男に囲まれてなお、啖呵を切れるか)
息子(本当に自信があるのか、単なる馬鹿か)
息子「……」
息子「よし」


11 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/07(木) 02:24:08 ID:WEEgEmr6
剣士「見てろ!せーぜー吠え面かきやが……あ?」
ならず者1「何だお前?」
息子「まあ、単なる助太刀といった者だ」
ならず者2「助太刀だあ?」
剣士「なっ?!馬鹿ヤロウ!丸腰で何言ってんだ!関係ない奴は下がってろ!!」
息子「ふむ」
パチン


息子「これで良いか?」
剣士「ま……魔法かよ」
息子(よし、死んではいないようだ。後が面倒だからな。さて)
剣士「……お、おいあんた」
息子「おいお前、時間は」
剣士「話がある!」
息子「……む」

12 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/07(木) 02:25:36 ID:WEEgEmr6
酒場─

息子「お前から誘った割に、奢りではないのか」
剣士「うるせー。本当にすっからかんなんだよ」
息子「ところで、先程の悶着は何が原因だ?まあ……粗方想像はつくがな」
剣士「そうそう。最初はそんな感じ。ああもう面倒だったー」
息子「向こうもまさか、あのような喧嘩の売買に発展するとは思っていなかったろうに」
剣士「うるせえ」


剣士「まあとりあえず。あんたが出て来なくたって一人で片付けられたけど、一応礼は言うぜ。ありがとよ」
息子「うむ。ではその礼のついでだ。奢らせろ」
剣士「何で?!」
息子「隣で貧乏臭く飲む奴がいては、安酒が一層まずくなる」
剣士「おま……声抑えろ。店員睨んでるぞ」

13 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/07(木) 02:26:52 ID:WEEgEmr6
剣士「それじゃあまあ遠慮なく……食い物も頼んでいい?」
息子「好きにしろ」
剣士「やった!久々に腹いっぱい食えるぞー!」
息子「……」


息子(うむ)
息子(これで酒の相手はひとまず確保、と)
息子(しかし騒がしい奴だな……変わっている、と言うか)
息子(本当にこんな奴が強いのか?)
息子(……ますますそうは見えんな。どう見ても普通の)

14 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/07(木) 02:29:46 ID:WEEgEmr6
剣士「おいこら、人のことじろじろ見てんじゃねえよ」
息子「ああ、すまん。剣が使える、というのは本当か?」
剣士「おう。こう見えても、この身一つ剣一つで旅をしてるんだ」
息子「ほう。どこに行くつもりだ?」
剣士「ん、ああ。別にこれと言って目的地ってのは無いんだ」
息子「ほう……?」


剣士「それで、あんたに話ってのはだな……あ、これウマい」
息子「私はあまり腹が減っていないから、全て食っても構わんぞ」
剣士「!!」
息子「勿論支払いは私だ」
剣士「ちょっとそこのおねーちゃん!これもう一皿追加!」
息子「……恥ずかしい奴め」

15 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/07(木) 02:32:07 ID:WEEgEmr6
息子「もう少し落ち着きを持ってはどうだ」
剣士「さっきから一々うるせえな。初対面だぞ」
息子「その台詞、そっくりそのまま返してやる。それで、話とは?」
剣士「その前にあんた、一人?」
息子「でなくば、お前なんぞ構うわけがなかろう」
剣士「引っかかる言い方だけど……良しとするか」


剣士「あんたに頼みがある!一緒に旅をしてくれないか?!」
息子「……は?」
剣士「見たところ、あんたこの町の人間じゃないだろ?旅人なんだろ?」
息子「まあ……そのようなもの、だが」
剣士「旅の魔法使いと、旅の剣士!ちょうどおあつらえ向きのパーティーじゃないか!」
息子「待て待て、初対面だぞ」
剣士「こういうのは直感が大事なんだよ!あんたとなら上手くやっていけそうだし!」
息子「本当に、待ってくれ」

16 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/07(木) 02:33:27 ID:WEEgEmr6
剣士「何だよ。あんたは山を越える気が無いのか?」
息子「山?」
剣士「ああ。あの山を越えないと、次の町には行けないんだが……やったら強い魔物がいるって話でさ」
息子「ほう……」
剣士「一人で行くのはちょっと心許ないし。どこかに強くて羽振りのいい旅人はいないかなーって探しててさ!そこにあんたが現れたってわけよ!」
息子「お前、同行者と言うよりも、単にカモを探していただけだろう」
剣士「細かいことは気にすんなよ!そんなんじゃ女にモテねえぞ!!」
息子「お前にだけは言われたくない」


剣士「な!これで決まりだよな?!」
息子「私が肯定すること前提の台詞を吐くな」
剣士「何でだよ。旅は道連れって言うだろ?」
息子「相手を選ぶ権利もある」
剣士「……あんた、いつまでこの町にいるつもりだ?」
息子「何だいきなり」
剣士「付きまとって、誠心誠意説得するつもりだから」
息子「……説得の前に、まずは会話をしろ。会話を」

17 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/07(木) 02:34:49 ID:WEEgEmr6
息子(しかし人間と旅をする、か)
息子(中々良い気分転換、もとい暇潰しになりそうだな)
息子(……まあ、この件は保留にして)
息子(このような僻地に『強い魔物』、か……どのような奴だろう)


剣士「よし、じゃあ早速飲み食いしたら行くか!」
息子「……少し聞き流していただけで、話が見えなくなっているのだが」
剣士「ああ?同じ宿に部屋取るってことで納得しただろうが」
息子「知らん知らん」
剣士「上の空での相槌でも撤回は無理だかんな!よーっし頑張るぞー!」
息子「…………」

息子(声を掛けたのは、間違いだったかもしれん……)


19 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/18(月) 01:38:46 ID:1QiMOOcY
数時間後─

息子「おい……起きろ」
剣士「……ぐう」
息子「ああくそ。幸せそうな顔して酔い潰れおって。憎たらしい。いっそ燃やすか」
剣士「むにゃ、まだ、くえる……ぐう」
息子「食わんでいい。いいから起きろ」
剣士「……ぐう」
息子「ちっ……」


息子(捨て置いてもいいのだが……)
息子(あれだけ騒いで飲み食いしていたんだ。周囲の目があるな)
息子(もうしばらく気晴らしに居るつもりではあるし……見咎められるのは避けなくば)
息子(……仕方ない。言っていた宿に叩きこむか)
息子「はあ……」

20 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/18(月) 01:39:33 ID:1QiMOOcY
息子「……」
息子「……成り行きで」
息子「成り行きで、部屋を取ってしまった……」
息子「しかも、あれの隣……」
息子「人間め……おかしな気を使いおって……仲間ではない、と言うに」


息子「……はあ」
息子「仕方ない、か」
息子「まあいい。どうせ数日帰らぬつもりだったのだ」
息子「それより折角だ。会ってみるか」
息子「その、『強い魔物』とやらに」

21 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/18(月) 01:40:22 ID:1QiMOOcY
山─

息子「暗くなってしまったな」
息子「別段困ることはないが……」
息子「その魔物とやらは何処にいるのだろうか」
息子「気配がどうも掴み辛いな」
息子「ふむ。私に気取られぬ程の力の持ち主か……幾分かは骨がありそうだ」
息子「……しかし、どうすれば会えるのだか」


息子「おーい」
息子「魔物やーい」
息子「出て来てくれないかー」
息子「……おーい」
息子「……」
息子「段々虚しくなってきた」

22 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/18(月) 01:41:25 ID:1QiMOOcY
息子「はあ……」
息子「私は何をやっているのだろう」
息子「ふと我に返ると……何なのだろうな、これは」
息子「このような些細な自由ですら、そのうち叶わなくなるのだろうか」
息子「私は……何をすべきなのだろう」
息子「願うだけでは駄目だ。だが……私に何が出来ると言うのだ」


息子「はあ……」
息子「……そろそろ夜中か」
息子「仕方ない。今夜は諦めて」

ザッ──

息子「おお」
魔物「……」
息子「何だ、そちらから出向いてくれるとは感謝す」
魔物「……!」
息子「おっと」

23 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/18(月) 01:42:18 ID:1QiMOOcY
息子「待て待て。ああ、この姿では分からぬか。ほら、術を解いたぞ」
魔物「……お前も、魔物か」
息子「ああ」
魔物「ちっ……何の用だ。また、魔王様からの命令か?」
息子「『また』?」
魔物「ああ?惚けるんじゃねえよ」


魔物「この前の戦いでちょっと意見を言っただけで、俺をこんなつまんねー場所に閉じ込めやがったのは魔王様だろうが」
息子「お前……父上に刃向かったと言うのか」
魔物「はあ?!父上?!魔王様がか?!」
息子「ああ」
魔物「気楽なバカ息子がいるとは聞いていたが……本当か?」
息子「好き好んで魔王の血筋を騙る馬鹿はいないだろう」
魔物「そりゃまー……確かにな」


27 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/29(金) 01:29:03 ID:kXqA5NGc
魔物「で……その、魔王様のご子息様とやらが、俺に何の用だ」
息子(ふむ……そう言えば用と言う用はないな)
魔物「俺だって仕事があるんだ。暇じゃねえんだよ」
息子「こんな僻地で、どのような任務に?」
魔物「そんな御大層なもんじゃあねえよ」


魔物「ただ単に、人間の行き来を邪魔しろってだけだ」
息子「ほう」
魔物「物資や人間の流通を妨げ、奴らの弱体化を図るだの何だの。そんなくっだらねー仕事だよ」
息子「大層なものではないか」
魔物「場所を見て物言いやがれカス。こんな田舎の流通妨げて何になるんだってんだ」
息子「……随分とやさぐれているようだな」
魔物「ったりめーだろうが」

28 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/29(金) 01:30:04 ID:kXqA5NGc
魔物「自分で言うのもなんだが、俺は腕に自信がある方でな。昔は先陣切って人間どもを狩ったもんだ」
息子「そうだろうな」
魔物「だがもう、何もかも飽きた。戦うことも、従うことも、だ」
息子「ほう……」
魔物「ご子息様は良いだろうよ。城でぬくぬくと引き籠ってりゃ仕舞だかんな。所詮俺ら下っ端は総じて、魔王様の玩具以下だ」
息子「否定はせん」
魔物「けっ」


魔物「で……本当に何の用だ。ご子息様直々とは、穏やかじゃねえにも程が……」
息子「何。単に、話でもしようかと」
魔物「…………はあ?」
息子「息抜きにこの辺りまで出たのだが、強い魔物がいると聞いてな。どんな奴だろうと思って来てみただけだ」
魔物「……っとーに呑気な奴だな」
息子「でなくば、このような地位など甘受出来んわ」

29 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/29(金) 01:31:29 ID:kXqA5NGc
魔物「ちっ……俺は話すことなんかねえよ。とっとと帰れ」
息子「そう言うな。こちらとて、黙って引き下がれぬ理由があるのだ」
魔物「ああ……?何だ、言ってみろ」
息子「今、途轍もなく暇なのだ」
魔物「ぶん殴るぞてめえ」


息子「それと、お前のような私に物怖じせず話す魔物は久々でな。珍しい」
魔物「へいへい。そうかよ」
息子「仮にも魔王の血筋だぞ。そのような口を利けば、処断される可能性もあるだろうに」
魔物「そん時はそん時だ。もうどうでもいい」
息子「そうか。余計に気に入ったぞ」
魔物「畜生。変なのに懐かれた」

30 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/29(金) 01:32:44 ID:kXqA5NGc
息子「そうだな。お前自身の話や、外の世界の話を聞いてみたい。私は城に籠りっきりだから情報に疎くてな」
魔物「だから帰れって言ってんだろ」
息子「良いではないか。同じ魔物、それも男同士だ。腹を割って話そうではないか」
魔物「喧しいわ。何が魔物同士だ。さっきから言おうと思っていたがな、お前妙に人間臭いんだよ」
息子「む、分かるのか。面白い奴がいてな、さっきまで飲み交わしていた」
魔物「……暇に任せて何やってんだてめえは」


息子「ただの暇潰しに、構ってやっただけのこと。勘違いするな」
魔物「ああうん、もうどうでもいいわ。好きにしやがれ」
息子「何だその目は」
魔物「ご子息様は気楽でいいなーって僻みの目だよ」
息子「なるほど。分かりやすい」

31 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/29(金) 01:36:25 ID:kXqA5NGc
魔物「お前がいつか俺らの頭になるのかと思うと……頭痛がするわ」
息子「いつか、な。まあ、その時は和やかに認めてくれ」
魔物「……お前はどうなんだ?今の、この状況をどう思っている?」
息子「……随分と直球だな」
魔物「認めるかどうかはその返答と、今後の身の振り方次第だな」


息子「好ましくはない。それだけだ。今後はどうすべきか、まだ分からん」
魔物「……そうかよ」
息子「しかし、今の私に何かを変えさせようとしても無駄だぞ。出来ることなど、たかが知れている」
魔物「んなこと末端の俺が知るかよ。せいぜいこの行き辛い世を変えてくれや。未来の頭よ」
息子「ふむ……」

32 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/29(金) 01:37:29 ID:kXqA5NGc
魔物「お望み通り話をしたぞ。俺だって少しは眠りてえんだ。帰れ」
息子「分かった。では、また来よう」
魔物「来るなら来るで、手土産の一つでも持って来るんだな」
息子「心得たよ」
魔物「けっ」


息子「ふむ……」
息子(現状を『変える』、か)
息子(今まで父上という原因を変えようとしていたが……問題そのものに着手するのも、ありかもしれんな)
息子(ならば私に出来ることは……出来ることは……)
息子(……何が、あるのだろうな)

33 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/29(金) 01:44:14 ID:kXqA5NGc
朝─

息子「……朝か」
息子「結局ろくな案も出ず……」
息子「……はあ」
息子「ひと眠りして……もう一度魔物の所に行くか」
息子「他の意見を取り入れるのも、良いだろ」


ドンドンドンバタン!


剣士「爽やかな朝だな!おはよう!」
息子「…………おい、こら」
剣士「いやー、宿の人に聞いたぞ!酔い潰れたところを運んでくれたんだってな!礼を言うよ!」
息子「黙れ。勝手に入って来るな。私はこれから眠る。出て行け」
剣士「やっぱり仲間っていいよな!」
息子「聞け」

34 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/29(金) 01:51:44 ID:kXqA5NGc
剣士「何だよ、昨日以上にテンション低いなあ。二日酔いか?」
息子「そんなところだ。理解が出来たら速やかに去れ。それと、仲間になった覚えはない」
剣士「ちぇっ。じゃあ昼過ぎにまた来るわ。仲間の件、考えといてくれよな!」
息子「知るか。とっとと消えろ」
剣士「口先だけの快い返答すら華麗に拒絶かよ。まあいいや、お大事になー」


バタン


息子「……はあ」
息子「思わぬ面倒を拾ってしまった気がするぞ」
息子「全く。人間の仲間になど、何を馬鹿げた……」
息子「…………」
息子「……ふむ」
息子「案外、使えるか?」


37 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/31(日) 23:41:07 ID:wjn6iCkA
昼─

バタン!

剣士「よう!飯でも食いに行かねえか!」
息子「……ノックぐらい、しろ」
剣士「固い事言うんじゃねえよ。全くの他人じゃああるまいし」
息子「他人だろう?」
剣士「わー、素の顔だー」
息子「まあいい。そろそろ腹が減ってきた所だ。付き合ってやろう」
剣士「そう来なくっちゃな!」


食堂─

息子「では、これと、これと……これを頼む。お前はどうするんだ」
剣士「水とパンだけでいいかなー」
息子「……今注文した品を、それぞれ二つずつ頼む」
剣士「え、ちょっと待て。そんなの払える余裕なんか」
息子「奢ってやるから大人しく食え」
剣士「マジ?!」

38 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/31(日) 23:41:24 ID:wjn6iCkA
剣士「いやーなんか悪いねえ」
息子「お前、少しは外聞を考えてみろ。外聞を」
剣士「そんなもの気にしてちゃスカウトなんざ出来ないんだぜ!」
息子「ほう。ならば運ばれてくる料理、全て私が平らげてやっても良いのだぞ?」
剣士「すいません。マジ腹減ってます。外聞超重要」
息子「いいだろう」


剣士「でもあれだな。あんた予想以上に羽振りいいよなあ」
息子「予想?」
剣士「着てるもんで結構持ってるだろうなーって思ってたから」
息子「まあ、不自由せん程度には身銭を持っている」
剣士「やっぱりね。つまり決まりだ」
息子「何がだ」

39 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/31(日) 23:43:01 ID:wjn6iCkA
剣士「そんな大金持って旅するなんて危険だろ?ボディーガードがてらに仲間なんてどうよ!」
息子「胸を張られてもな」
剣士「維持費は一日三食と寝床、そして適度な間食と小遣いだ!」
息子「明らかに投資と収益が釣り合わんだろう」
剣士「やだなー、あんたどんな計算してんだよ」
息子「こちらの台詞だ」


息子「第一、そのような大それた売り込みは、力ある者にのみ許されるものだ」
剣士「だから言ってるだろ強いって!昨日のあれはタイミングが」
息子「ぱっとお前を見ただけで、容易く信じられなくなる話だな」
剣士「そりゃ、今まで強そうに見られたことなんてねえけどよ」
息子「ほらな」
剣士「くっ……馬鹿にしやがって!表に出ろ!今すぐ実力を見せ」
息子「料理が来たぞ」
剣士「ありがたく頂きます!!」

40 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/31(日) 23:46:58 ID:wjn6iCkA
剣士「ふー……食った食った」
息子「満足して頂けたようで何よりだ」
剣士「仏頂面で言うんじゃねえよ」
息子「そうさせているのはお前だろう」
剣士「酷い言い草だなあ……。まあいいや、御馳走さま」
息子「ああ」


息子「ところで、お前が強いという証明だが、そうするつもりだ?」
剣士「んー、じゃあ腹も膨れたところだし、手合わせ願うわ」
息子「構わんが。昨日の魔法を見て、よく私に挑む気になるな」
剣士「そりゃまあ、強いですし?」
息子「面白い冗談だな。さすが腕の立つ剣士様は、一味違うことを仰られる」
剣士「うわあ腹立つ」

41 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/31(日) 23:51:42 ID:wjn6iCkA
空き地─

剣士「この辺でいいだろ。丁度あんたも剣を持ってるようだし、いざ尋常に勝負!」
息子「ああ、せいぜい手加減してやろう」
剣士「本気で!全力で!やり合うんだよバカ!!」
息子「駄々をこねるな。お前は子供か」
剣士「うるせえ!余裕かましてられんのも今のうちだ!いくぜ!!」


キン!

息子「ほう……中々の早さと、重さだな」
剣士「あんたも今の一撃を受け止めるたあ、やるじゃないか」
息子「当然だ」
剣士「やっぱり強い者同士手を組むべきだと」

ガギィンッ!!

息子「その口が、いつまで持つかな?」
剣士「言うね言うね!よっしゃ!あんた負けたら仲間になれよ!!」
息子「はっ、ほざけ」

42 :みんなの暇つぶしさん:2010/01/31(日) 23:55:39 ID:wjn6iCkA
剣士「……」
息子「……」
剣士「……どう、する?」
息子「そうだな……一時休戦といくか」
剣士「さんせーい……」


剣士「はあ……あんた強いな。こんなに長く戦って勝てないなんて初めてだ」
息子「そう言うお前こそ……何だあの動きは。人間離れしているぞ」
剣士「はっはっは。それについて来れるあんたも大概だろうよ」
息子「私は……いや、何でもない」
剣士「?」

43 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/01(月) 00:04:15 ID:Kn5w4RnQ
息子(何なのだ、こいつは)
息子(手加減したとは言え……魔物である私とほぼ互角だと?)
息子(このような奴が我が軍とぶつかれば……被害は甚大だ)
息子(目を離さないようにしなければ)
息子(…………)


剣士「なーなー腹減らね?」
息子「……お前、先程までの緊張感はどこに行った」
剣士「メリハリって重要じゃね?」
息子「まあいい……何か食いに行くか」
剣士「ご馳走になります!!」
息子「……まあ、いい」


46 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/03(水) 01:50:51 ID:569/Lsbs
食堂─

剣士「いっただきまーす!!」
息子「……ああ」
剣士「あれ、あんたは食わないのか?残しちゃ勿体無いぞ」
息子「狙うな。食欲は失せるが、食わねばやってられん」
剣士「ちぇー。あ、追加もありだよな」
息子「勝手にしろ」
剣士「よっしゃあ!!」


息子「……お前、それほどまでに路銀に困っているのか?」
剣士「んー、まあな」
息子「お前ほどの実力があれば、金などいくらでも稼げると思うのだが」
剣士「こんなご時世だからか?」
息子「ああ。腕の立つ者を欲するのは、どの国でも同じだろう?」
剣士「そうだなあ」

47 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/03(水) 01:51:06 ID:569/Lsbs
剣士「どっかの国に仕えるとか、そういうの嫌いなんだよなー。たまに用心棒やったりして、小銭稼いでるけどさ」
息子「ならばとっとと働き口を探せ」
剣士「でも宵越しの金は持たない主義だからさー。すぐ無くなっいっってえ!何すんだ!」
息子「拳はお気に召さなんだか。ならば鞘が良いか?柄が良いか?」
剣士「暴力反対!」
息子「お前が言うな」


剣士「っつーわけで、今後ともよろしく!」
息子「またその話か。勝負に勝ったら、という約束だったろう」
剣士「剣を交える。友情芽生える。仲間成立。そして今は三段階目に入ったとこだ!」
息子「二段階目でその理論は破綻しているぞ」
剣士「えー……。で、でも何か生まれただろ?」
息子「腹が減っただけだ」
剣士「何でこいつこんなノリが悪いんだ……」

48 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/03(水) 01:51:26 ID:569/Lsbs
息子「それよりお前、少し黙れ」
剣士「ん、なんで?」
息子「周りの目が、非常に鬱陶しい」
剣士「いいじゃねえか別に。楽しく食べて飲んで騒ごうぜ!」
息子「楽しいのはお前だけだろう」
剣士「あっはっは、何言ってんだ。全く楽しきゃねえなら、とっととあんた逃げてるはずだろ」
息子「……はあ」


息子「おい」
剣士「ぐー」
息子「ああ……結局また、このパターンか……」
剣士「ぐごごごご」
息子「いびきまで。こいつはもう、本当に」

49 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/03(水) 01:51:38 ID:569/Lsbs
宿─

息子「とりあえず部屋に放り込んだが……ああくそ」
息子「確実にあれだ、周囲に仲間だのなんだのと認識され始めているな」
息子「あれが悪目立ちするのが悪い」
息子「私は空気と同化して余暇を楽しみたいと言うのに……」
息子「やはり声を掛けたのは失敗だったか……」


息子「しかし……そうだな、『利用』はありかもしれんな」
息子「あいつを……あの人間を使えば」
息子「どう転ぶかは分からんが、試してみる価値はある」
息子「はあ……」
息子「……一度、帰るか」


51 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/06(土) 01:52:35 ID:dx6IXAeo
魔王城─

魔王「ほう」
息子「……如何、でしょうか」
魔王「ふ」
息子「……?」
魔王「くっ……く……くくく!!」


魔王「お前にしては愉快な企みを思いつくではないか!」
息子「は、はあ……」
魔王「良かろう。お前に全て任せる」
息子「!」
魔王「好きにしろ。そしてせいぜい、私を楽しませるがいい」
息子「は……はい」

52 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/06(土) 01:52:49 ID:dx6IXAeo
息子「そして、あの、山の魔物の件ですが」
魔王「全てお前に任せると言ったはずだが」
息子「は。感謝します」
魔王「あれ一匹、どうなろうと構わんからな。お前の好きに使うがいい」
息子「……では、失礼します」


息子「……はあ」
息子「まさか、これだけの説明で許しが出るとはな」
息子「……他の娯楽を見出せぬまま、惰性に地獄を続けていたのか」
息子「せいぜい、か」
息子「ええ。せいぜい、舞台を整えさせて頂きますよ」

53 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/06(土) 01:53:06 ID:dx6IXAeo
朝─

息子「ふう」
息子「一瞬で行き来出来るのは助かるな」
息子「……時間を巻き戻せればもっと助かるのだが」
息子「まあいい。昼まで寝」

バンッ

剣士「おは」

ガッキィツッン

息子「去れ悪魔」
剣士「何で朝から立ち回りせにゃならん」

54 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/06(土) 01:53:20 ID:dx6IXAeo
息子「私はこれから寝る。さっさと出て行け」
剣士「何だよあんた。さっき来たらいなかったから、てっきり今日はちゃんと朝起きたのかと」
息子「いい加減ノックという知性あるスキルを覚えろ。この原始生命体が」
剣士「いいじゃねーかよ、部屋に見られて困るもんでも……あるのか?!」
息子「何も出て来んわ。目を輝かせるな」
剣士「ちっ……何かヤバいのが出てきたらそれをネタに脅迫も視野にいやいや冗談ですよ。怖い顔すんなって」
息子「……次はないぞ、覚えておけ」


息子「それと、私を脅迫しようとしても無駄だ」
剣士「まあ、あんた何に対しても動じなさそうだしなあ」
息子「お前の旅に、付き合ってやろう」
剣士「てことは金か女か? 用意するのがこれまためんど…………え?」
息子「期限は特になし。飽きるまで同行してやる。だから脅迫などは、最早無意味だ」
剣士「え?」
息子「分かったのであれば、今は出ていけ。昼にまた話し合おう」
剣士「え、ちょ、まっ」

バタン

剣士「………えええ?」

55 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/06(土) 02:08:06 ID:dx6IXAeo
昼─

息子「よう」
剣士「……」
息子「浮かない顔でだんまりか。仲間の目覚めに対し、何か言うことは無いのか」
剣士「……いきなりどんな心境の変化だよ。怪しいな。あんた本物かあ?」
息子「何。これ以上付きまとわれるくらいなら、いっそ飼い慣らそうと思ったまでだ」
剣士「お、おおー……?」
息子「その上いざとなれば、高値で売り飛ばせるだろうしな」
剣士「ああ安心した。この口の悪さは本物だ」


剣士「ってことで!改めてよろしくな!」
息子「ああ。よろしく」
剣士「よしよし!リーダーをちゃんと敬うんだぞ!」
息子「……?」
剣士「おうおう、素で理解不能って顔してんじゃねえよ兄ちゃん」

56 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/06(土) 02:13:09 ID:dx6IXAeo
剣士「リーダー挙手!はい!はい!」
息子「二人しかいないパーティーで、リーダーも何もないと思うのだが」
剣士「あったっていいじゃねえか。よろしく下っ端!」
息子「今ここでお前の首を刎ね、リーダーの座を奪ってやってもよいのだぞ」
剣士「よ、よろしく相棒!」
息子「よろしく」


剣士「じゃあ昼も済ませたところで、早速山越え行ってみようぜ!」
息子「今日か?」
剣士「早い方がいいだろー」
息子「いや、食糧や装備などを買い足さねば危険だ」
剣士「だってそんな金」
息子「ほれ」
剣士「ちーっす!」
息子「現金な」

57 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/06(土) 02:20:35 ID:dx6IXAeo
剣士「うわー。ほんっと札束の匂いは心が安らぐな!」
息子「頬擦りするな気色悪い。何を買うかはお前に任せる。夜までに粗方用意しておけよ」
剣士「あれ、どっかに行くのか?」
息子「暮れには戻る。では、頼んだぞ」
剣士「お……おーう?」


山─

息子「よう」
魔物「土産」
息子「ほれ。城からくすねて来た」
魔物「酒か。いいねえ、偉いさんは毎日こんなもんが飲めてよ」
息子「このような物、毎日開けていては飽きがくる。お前もそのうち分かるだろうよ」
魔物「あ?」


65 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/26(金) 00:56:03 ID:sL5SBUgY
魔物「で、昨日の今日で何の用だ」
息子「お前の異動が決まった」
魔物「けっ……まぁた妙なとこに飛ばされるんじゃねえだろうな」
息子「いや、異例の昇格だぞ」
魔物「胡散臭え。で、どこに行けばいいんだ」
息子「城だ」
魔物「はあ?!」


魔物「し、城ってまさか……」
息子「父上の住まう、魔王城だ」
魔物「嫌だね!魔王様直属なんざ、どんな無茶を要求されるか」
息子「いやいや、父上付きではないぞ。お前は今日から私の側近に」
魔物「もっと嫌に決まってんだろ道楽馬鹿息子!!」

66 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/26(金) 00:56:16 ID:sL5SBUgY
息子「しかしここに父上の書状が」
魔物「『全て我が息子に任せる』……」
息子「つまり、私の言葉は魔王の言葉だ。異論は認めぬからな」
魔物「マジかよ……こんな紙切れ一つで俺の余生は……」
息子「まあ、楽をさせてやるから、喜んでついて来るがいい」
魔物「その『楽』ってのはどっちの意味だ……?」


息子「ただ、城に向かうその前に……お前にはやってもらわねばならない、重要な仕事が一つある」
魔物「な、何だよ改まって」
息子「明日の朝から昼にかけて、人間がここにやって来る」
魔物「おお、そいつを殺せばいいんだな?いつものことじゃねえか」
息子「逆だ」
魔物「ああ?」
息子「その人間と戦い、負けてもらいたい」
魔物「はああ?!」

67 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/26(金) 00:56:32 ID:sL5SBUgY
魔物「ちょっと待て!どういうことだそれは?!」
息子「いや、何も殺されろと言っているのではない。適度に負け、逃げてくれればいい」
魔物「理由の説明になってねえよ!ってか、人間に負けるなんざフリでも嫌だね!!!」
息子「お前もこの地は飽きたのだろう。負けてくれれば、この地での任は晴れて免除となるぞ」
魔物「それでも次の勤務先がお前のとこじゃなあ……」
息子「頼む」
魔物「……」

息子「お前にしか頼めないことなんだ」
魔物「……お前が頭を下げるなんてねえ。目的は何だ?」
息子「強いて言えば……『平和』のため、だな」
魔物「へっ……魔王陛下のご子息ともあろう方が、妙な言葉を吐きやがる」
息子「どうだ、引き受けてくれるか」
魔物「へいへい、わーったよ。何か面白そうだし、付き合ってやるよ」
息子「感謝する」
魔物「やめろ、気色悪い」

68 :みんなの暇つぶしさん:2010/02/26(金) 01:00:06 ID:sL5SBUgY
魔物「で、その人間ってのはどんな奴なんだよ。誰彼かまわず負けろってんじゃねえんだろ?」
息子「私が側にいるだろうから、標的は一目で分かるはずだ」
魔物「まさか、昨日からお前に付いてる臭いの……?」
息子「ああ。しばらくそいつと旅をすることとなった」
魔物「えーっと……殴っていいか?」
息子「後日説明してやるから、拳を収めろ。これから明日の打ち合わせをするぞ」
魔物「釈然としねえが……了解」


息子「では、そろそろ戻る。明日は頼んだぞ」
魔物「へいへい。せいぜい無様に負けてやりますよ」
息子「なるべく怪我の無いようにな」
魔物「わざと負けるとはいえ、俺が人間に後れを取るとでも?」
息子「……まあ、明日になれば分かるだろう。では、また」
魔物「ああ。またな」



80 :みんなの暇つぶしさん:2010/04/05(月) 23:47:48 ID:mghGCbCo
宿─

コンコン
息子「……入るぞ」
剣士「よーっすお帰り!」
息子「ほう」
剣士「ほらほら、中々のもんだろ!万全だろ?この上更に、馬も二頭手に入ったんだぜ!」
息子「この小さな町で、よくぞこれほど物資を集められたものだな」
剣士「はっはっは!もっと褒め称え……なくてもいいっす」
息子「そうだな。殺意に敏感でなくば、この先生き残れんぞ」


息子「さて、釣りは返せよ」
剣士「え?」
息子「あれ全て使い切ったわけではないだろう?返せ」
剣士「いいじゃねえかよー……仲間なんだし」
息子「ああ仲間だ。だからこそ、金銭面はきちんと線引きしておかねばな」
剣士「く……金持ちのくせにセコイじゃねえか!」
息子「せこいと言うよりも、お前に無駄金を持たせていると、何かしら不安だからな」

81 :みんなの暇つぶしさん:2010/04/05(月) 23:48:01 ID:mghGCbCo
剣士「ちっ……ほらよ、返してやるわ!」
息子「何故そのような上から目線で…………何?」
剣士「な、何だよ」
息子「お前……この金はどうした」
剣士「どうしたって、お前に貰った残りだけど?あ、別に金額誤魔化してるなんてこたあ」
息子「逆だ。その……多すぎないか?」


息子「これだけの物資を揃えたのなら、もっと残金は少ないはずだが」
剣士「あ? ああ、そうだろうなあ」
息子「そうか、お前強盗」
剣士「するか!普通にオマケしてもらえただけだ!!」
息子「……オマケで、市価の三分の一以下になるものか?」
剣士「え、買い物って普通こんなもんじゃねえの?たまにタダになったりとか」
息子「恐らく、稀だろう」
剣士「へー。やっぱこりゃ人望のなせる技ってやつだな!」
息子「…………ああ、そうだな」

82 :みんなの暇つぶしさん:2010/04/05(月) 23:48:15 ID:mghGCbCo
息子「何というか……やはりお前は」
剣士「んあ?」
息子「……いや、何でもない」
剣士「なんだよ変な奴だなー」
息子「お前にだけは決して言われたくない言葉だな」
剣士「やだなあ、お前あれか?今流行ってるらしいツンデレか?」
息子「デレて欲しくば態度を改めろ」


息子「では……明日も遅い。私は部屋に戻ろう」
剣士「そーだな。じゃ」
息子「何だ、その手は。また金か」
剣士「ばっか握手に決まってんだろ!改めてよろしくってな!」
息子「……いいだろう」
剣士「よろしくな!相棒!」
息子「ああ、よろしく。えー……相棒?」
剣士「うはは!ぜってえデレさせてみせる!!」


84 :みんなの暇つぶしさん:2010/04/07(水) 00:49:18 ID:1HSWyo5.
朝―

バタンッ

剣士「おはよう!!」
息子「…………おはよう」
剣士「うはは!ようやく諦めたか!」
息子「……ああ」
剣士「やっぱあれだよな!仲間なんだしノックなんてまどろっこしい真似いらね
えよな!!」
息子「単に留意するという真似が出来ないだけでは」


剣士「まあいいじゃねえか。とっとと朝飯済ましてここを出ようぜ!」
息子「分かった分かった……」
剣士「そんで、宿の支払いも任せたぜ!」
息子「ほう」
剣士「おーう待て待て刃物持ち出したって、何も生み出さねえんだぞ!知ってるか?!」

85 :みんなの暇つぶしさん:2010/04/07(水) 00:49:31 ID:1HSWyo5.
息子「お前、本物の一文無しだったのか」
剣士「やだな、このご時世金がなきゃ生きていけるわけねえじゃん」
息子「では自分で払え」
剣士「ガキの小遣い程度の有り金で、十日分の宿代なんざ払えるわけねえじゃん!」
息子「ほう」
剣士「……うう……お願いしますよ頭ぁ……」
息子「案外、プライドを売るのは早かったな」


剣士「なんとか働き口を見つけようと思ったんだけどよ……やっぱどーも不景気でさあ……」
息子「喧しいわ社会不適合者」
剣士「くそっ!それもこれも魔王のせいだ!魔王が暴れるから金がないんだ!!」
息子「当たらずとも遠からずだろうが、お前にもかなりの非があると思うぞ」
剣士「うるせえ!全部魔王が悪いんだ!ぜってーぶっ倒してやる!!」
息子「…………そうかそうか」

86 :みんなの暇つぶしさん:2010/04/07(水) 00:49:43 ID:1HSWyo5.
息子「では、ここは私が持ってやる」
剣士「ちーっす!」
息子「その代わり、いつか恩を返せよ」
剣士「ありゃ、金じゃねえの?」
息子「お前に金の返済を求めるより、体で払わせた方が遥かに建設的だ」
剣士「えー……お前、その発言はさすがに引」
息子「斬り捨てて埋めてやろうか貴様」
剣士「えー……それもどうかと思うぞ」


剣士「まあまあ、わーったよ。いつか倍にして返してやるよ!」
息子「ふっ……返事だけはいいな」
剣士「何をー!そんな生意気言ってると、今日はお前に出番なんざやんねーからな!後でそのことねちねち弄ってやるからな!」
息子「ほどほどに、期待しておこう」
剣士「せいぜい刮目してろよ根暗!」
息子「黙れ躁病」


88 :みんなの暇つぶしさん:2010/04/10(土) 02:34:28 ID:P5f0xDcU
山─

剣士「うう……何で馬がいるのに徒歩なんだよー……」
息子「魔物が急に襲って来てみろ。折角買った馬が無駄になるかもしれん上、動きが制限されて、危険だろう」
剣士「いやだー……山登りはもういやだー……」
息子「愚痴をこぼすな」
剣士「くっそー……魔物も魔王もぜってーぶっ倒してやる」
息子「大事も小事も、同レベルで愚痴るのだなお前は」


剣士「だってそーだろー。ここいらが不便なのも、いや……世の中がどんよりしちまってるのも全部魔王のせいだ」
息子「まあ、そうだな」
剣士「だから倒す!」
息子「……まさかと思うが、今朝言っていた『魔王を倒す』というのは」
剣士「あ?」
息子「本気、なのか?」
剣士「あったりめーじゃん」

89 :みんなの暇つぶしさん:2010/04/10(土) 02:34:42 ID:P5f0xDcU
剣士「魔王を倒して世の中を平和にする!それが旅の大きな目的!」
息子「ほう……何とまあ、御大層な」
剣士「今はまだ名前を売るためと、腕を磨くためにぶらぶらしてるだけだけどな!」
息子「……」
剣士「何だよ悪いか」
息子「いや、悪くはない」


息子(無名の、そこそこに力ある人間)
息子(本物かは判別し難いが、野心もあるようだ)
息子(これはますます……適任か)
息子(…………ああ。こいつ以外には、あり得ない)

90 :みんなの暇つぶしさん:2010/04/10(土) 02:58:26 ID:P5f0xDcU
剣士「しっかしあれだな、一向に魔物ってのも出て来ねえし。簡単に山越えしちまえそうじゃねえか」
息子「む」
剣士「うはは。何だか拍子抜けだな」
息子「油断するなよ。相手は魔物だ」
剣士「心配しなさんなって、こー見えて修羅場はいくつもくぐ」


ザシュ!!!


魔物「ぐおっ?!」
息子「な……!」
剣士「……」
魔物「な、くっ!!」
剣士「お、何かと思えば……ようやっと出やがったのか」

91 :みんなの暇つぶしさん:2010/04/10(土) 02:59:15 ID:P5f0xDcU
魔物「く、くそ!」
剣士「まーまーそう慌てなさんな。まだチャンスはあるかも知れないし?」
魔物「人間風情がコケにしやがって!!」
剣士「その人間風情に先手取られちゃってるのはどこのどいつだろうな?!」
魔物「お、おおう?!!」


息子(魔物は完璧に気配を立ち、近付いて来ていた)
息子(だがこいつは魔物の気配を察し、先制した)
息子(魔物に手を抜くよう命じているからとはいえ、今は明らかに押している)
息子(剣を交えたあの時は、まさかこれほどまでとは思わなかったが……)
息子(いや、まさかこいつ……)
息子(私を相手に、『手を抜いていた』……?!)


94 :みんなの暇つぶしさん:2010/04/11(日) 00:58:44 ID:g1/Hw0bA
魔物「死ね!」
剣士「おっと」
魔物「ええいクソちょこまかと!!」
剣士「うはははは!強い魔物がいるってのは単なる噂だったのかね!」
魔物「黙れ!!もう関係ねえ!ぶっ殺してやる!!」
剣士「無理だね!」


ドスッッ!!


魔物「う……が?!」
剣士「な?」
魔物「ぐっ……な、なんだ、てめえは?!本当に人間か?!」
剣士「悪かったな人間で」
魔物「は、話がちが」
剣士「はあ? 何を」

ゴゥッ!!

剣士「?!」


魔王「どうか、***」【その2】へつづく

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転載元
魔王「どうか、***」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12874/1262700852/

 
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