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862 :創る名無しに見る名無し:2009/09/10(木) 18:58:37 ID:/CeVFOIc
ある日

友「〜♪」

女友さんが空中遊泳を楽しんでいたら

友「……あら?」

ウミネコの群れに鉢合わせになり

友「キャー!」

ガツンッ!!

友「きゅう…」

そのまま意識を失い、潮に流された。



空中人魚スピンオフストーリー・「女友さん」




 
867 :創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 23:48:05 ID:40DqCF3t
友「……」

友「……う、ん」

友「……!?」

友「どこ、ここ」

友「なんで私、こんなところに居るの……?」

ちゃぷん


868 :創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 23:57:47 ID:40DqCF3t
友「えーと、まずは状況を整理するとこから始めよう」

友「私は、夜間に空中遊泳するため空を飛んでた。そしたら鳥の群れに突っ込んで意識を失った」

友「そして気づいたら見たこともないこんな場所にいる……」

友「今私の周囲には、人間が沿岸養殖とかで魚を囲う時に使う網が張られている模様」

友「……ってことは私、人間に捕まっちゃった?」

友「ヤバいじゃん! 冷静になってる場合じゃないよこれ!!」

友「あぁ〜どうしよう……早く逃げなきゃ……」

漁師「……あんた、何喋りようとね?」

友「ハッ!?」


869 :創る名無しに見る名無し:2009/09/19(土) 00:09:09 ID:9IFIVbIN
友「だ、誰よあなた!? 人の独り言を立ち聞きなんて趣味悪いわよ!」

漁師「はぁー、ようやく起きたと思うたらやかましか姉さんじゃね」

友「あんた誰!? 私を一体どうするつもりなのよ!!」

漁師「安心せんね。俺はあんたの様子見に来ただけのただの漁師じゃけん」

友「漁師? あんたが?」

漁師「ほいじゃ」

友「そう……やっぱり私、人間に捕まってたんだ」

漁師「捕まったっちゅうんはちょっと人聞き悪かなかね? 俺は定置網に引っ掛かっちょったあんたを保護しただけばい」

友「え? そうだったの?」

漁師「そうじゃ。いつまで経っても目ば覚まさんから、漁協から養殖用の網ば借りて来て海に転がしちょったとこよ」

友「あ、そうだったの……にしても扱いがかなり雑じゃない?」

漁師「そがんこつ言われても、こっちは人魚の扱い方なんか知らんもん」

友「それもそうね」


870 :創る名無しに見る名無し:2009/09/19(土) 00:16:43 ID:9IFIVbIN
友「にしてもあんた、やけに落ち着いてるわね。人魚に会うの初めてでしょ?」

漁師「あんた呼ばわりは止めちくれ。漁師でよかよ」

友「じゃあ漁師さん。あなた、なんで初対面でそんなにフランクなの? もっと驚いたりしないの?」

漁師「フランクなのはお互い様じゃ。あんたこそ俺に対して、ずいぶん馴れ馴れしいばい」

友「私は人間相手にするの、初めてじゃないもの。でもあなたは人魚は初めてのはずじゃない」

漁師「さぁ? それはあんたがべっぴんさんだからかじゃなかね?」

友「調子いいこと言わないでちょうだい」


875 :創る名無しに見る名無し:2009/09/23(水) 01:06:06 ID:x7AUB6OI
漁師「ま、もともと俺は物怖じしない性格じゃけん。あんまり気にせんごとよ」

友「気になるわよ。今まで人魚の姿を見て色めき立たなかった人間なんて、いないんだから」

漁師「そげん珍しいもんでもなかとよ。足が魚になっただけやらせんか」

友「そこが大きな違いなんじゃない」

漁師「なぁんも違やせんよ。それにお姉さんべっぴんさんやけんね、ずっとここにいて欲しいくらいじゃが」

友「……あなたって、すごく軽い男の人なのね」

漁師「そうか? そう言われるとそうかもしれんばい」


876 :創る名無しに見る名無し:2009/09/23(水) 01:14:20 ID:x7AUB6OI
友「助けてくれたことには感謝してるわ。けど、人魚には人間と関わったらいけない掟があるの」

漁師「へぇ、それは知らんかった」

友「その掟を破ったら、私達のことを知った人間を殺さなきゃならなくなるのよ?」

漁師「そりゃあ何でまた」

友「人間は、私達人魚を売り物としてしか考えてないから。人魚には長く人間に虐げられてきた歴史があるのよ」

漁師「ふぅん。難儀じゃねえ」

友「って言っても、私はそんな掟、前時代的だと思ってるんだけどね」

漁師「お姉さんは時代の先駆者っちゅう訳やね」

友「お姉さんは止めてよ、なんか面映ゆいわ」

漁師「ばってんそしたら何ち呼べばいいと?」

友「友でいいよ。私の名前は友人魚って言うの」

漁師「分かった、友さんやね」


879 :創る名無しに見る名無し:2009/09/23(水) 13:06:37 ID:x7AUB6OI
友「今日のところはあなたの優しさに免じて何もせずに帰ってあげる。どうもお世話になったわね」

漁師「帰るって、網に囲まれちょうとにどげんして帰るとな?」

友「ふっふっふっ、私を只の人魚だと思ったら大間違いよ。ちょあっ!」

ふわり

漁師「おぉ!?」

友「私はお空も自由に飛べちゃうハイスペック人魚なんだから」

漁師「はー……人魚が空飛ぶち、世の中は広かなぁ」

友「じゃあね、漁師さん。多分もう会わないだろうけど、助けてくれたことは忘れないわ」

ふわふわ、すいー

漁師「あっ……」

友「バイバーイ」

漁師「行ってしもうた……」

ふわり

友「……」

漁師「と思ったら、Uターンして帰ってきたばい」

友「……漁師さん。そういえば、ここどこなの? 私どこまで流されてきたの?」

漁師「え?」


880創る名無しに見る名無し:2009/09/29(火) 21:35:55 ID:qYpPnhP8
友「今軽く周りを見回した限りでは、私の見知った場所が見当たらないんだけど」

漁師「ここは○○町の○○区やが」

友「人間の番地で言われて分かるはずないでしょ!」

漁師「それもそうじゃなぁ……」

友「もしかして私、かなり遠くまで流されてきた?」

漁師「んなこと聞かれても分からんがね」

友「どうしよう、私すごい困ったことになったのかも……」

漁師「普通そんなに長く流されたら魚でも死ぬばい」

友「そうね、今は人魚の体の丈夫さに感謝しなきゃ」


881 :創る名無しに見る名無し:2009/09/29(火) 21:50:12 ID:qYpPnhP8
友「でもどうしよう、このままじゃ本当に帰れなくなっちゃうよ」

漁師「そんなら、帰れる算段がつくまでここにおればよかじゃなかね」

友「でも、人間のそばにいたらそれだけ見つかりやすくなっちゃう」

漁師「なんちこちゃなかよ。昼間はここに隠れて、夜に探しに出ればよかだけじゃが」

友「……あなた、まさか私を売ったりしないでしょうね?」

漁師「何言いよっとね。海の男はそげん軽くはなかとよ」

友「分かった。この状況じゃ信用せざるを得ないし、あなたのお言葉に甘えるわ」

漁師「そうしんしゃい」

友「でも、もし仮にあなたが私を裏切ったら、私は何を置いてもあなたの命をいただくからね」

漁師「おう、望むところばい」


882 :創る名無しに見る名無し:2009/09/29(火) 22:15:41 ID:qYpPnhP8
漁師「とりあえず今日はゆっくり寝らんね」

友「うん、そうする」

漁師「腹減っとらんね? なんか用意した方がよかかね」

友「気を使わなくても、自分で魚をとって食べるから大丈夫」

漁師「人魚は魚ば食べるんか、なんか矛盾しとりゃせんか?」

友「それは人間の偏見よ。ってそんなことどうでもいいの」

友「とにかく一刻も早く私は故郷に帰りたいの。だから、あなたも出来るだけ協力してね」

漁師「遭難したっちゅうに気の強か姉さんじゃ、はっはっはっ」

友「笑ってる場合じゃないの」


886 :創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 23:06:21 ID:q0FJz8ZR
〜翌日〜

友「結局昨日はあんまり寝らんなかった……」

友「あーあ、私これからどうなるんだろ」

漁師「おーい、友さんよーい」

友「あ、漁師さん。お仕事もう終わったの?」

漁師「なん言うとうか。今は朝の漁が終わって市場に魚を卸してきたけん、様子見に帰ってきただけじゃ」

友「あらそう、わざわざ悪いわね私なんかのために」

漁師「なんか言葉に刺がなかね?」

友「そりゃあまだあなたのこと信用してないもの。私が逃げてないか確認しに来たんじゃないか、くらいは考えるわよ?」

漁師「こげんよか男捕まえて、酷か女もあったもんじゃの」

友「いい男は自分で自分のことをいい男だなんて言わないのよ」

漁師「そうか、それは一本取られたばい」


887 :創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 23:13:30 ID:q0FJz8ZR
友「ところで、まだ仕事も終わってないのにどうして私のところへ?」

漁師「おぉ、そうじゃった。実は昨日うちの雑誌溜まりを探っちょったら、この辺の地図を見つけての」

ぱらり

漁師「聞き覚えのある地名やらあっとなら、これで分かるんじゃなかろうかち思ったと」

友「うーん、そもそも人間の地図じゃ限界があると思うけどなぁ。私たち人魚は地理には特に疎いし」

漁師「役に立たんか?」

友「一応確認だけでもしてみるよ、ありがとうね漁師さん」

漁師「そうか、早く帰れるとよかね」

友「うん……」


888 :創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 23:26:25 ID:q0FJz8ZR
漁師「友人魚さんには、家族とかおらんと?」

友「いるよ。ただ、全員同じ島で離ればなれに暮らしてるけどね」

漁師「なんごちな? 人魚は家族で暮らさんと?」

友「うん。大体の人魚は成人したら、一人一人別々に暮らすようになるの」

漁師「へぇー、なんか変わっちょうなぁ」

友「稀に例外もいるけどね。私の友達がお姉さんと暮らしてたり」

友「だから私が早く帰りたいのも、家族のためっていうよりかはその友達に早く会いたいからって意味合いが強いかな」

漁師「寂しか人魚じゃね、友さんは」

友「そんなことないよ、人魚なんて大概はそうなんだから」

漁師「そういうもんかねぇ……」

友「……あっ!」

漁師「? どうしたね?」


889 :創る名無しに見る名無し:2009/10/04(日) 07:42:32 ID:kRd0BZ+k
友「ここ、この地名。私たしか聞いたことある!」

漁師「人間の地理には疎いんじゃなかったとね?」

友「私の友達に人間が一人いて、その人が前にこんな町の名前言ってた気がする!」

漁師「どれどれ……△△町? 友さん、こりゃここから三つも離れた町じゃが。本当に聞いたことあっと?」

友「期待薄でも行くしかないの」

漁師「けど、俺もまだ仕事が終わらんけん。これから漁協に行かないかんとよ」

友「じゃあ、お仕事終わったら私をそこまで連れてって」

漁師「よかよ、夕方になってしまうけんそれでもよかならね」
友「全然オッケー。じゃ、決まりね」


893 :創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 00:12:54 ID:b1tsqagX
そして、夕方……

漁師「おーい、友さーん。今仕事終わったばい」

友「おーそーいっ! 待ちくたびれたわよ!!」

漁師「そりゃすまんの、おわびに魚やるけん許さんね」

友「あなた、私をアザラシか何かと勘違いしてない? もらうけど」

漁師「もらうんかい」

友「もらうわよ。この辺潮の流れが悪くてあんまり魚取れないんだから」

漁師「沖にまで出れば違うんじゃろうけどねえ」

友「そういう訳にはいかないでしょ? いいから早く魚ちょうだい」

漁師「わかったばい。ほれ」

友「ありがとう」


894 :創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 00:20:33 ID:b1tsqagX
漁師「ところで、町まで行く話やがね」

友「なぁに?」ムシャムシャ

漁師「さすがに今から動いたら、他ん人にバレる確率が高くないかね?」

友「まぁ、そうだね。まだ薄明かるいし、いつ人目につくか分からないし」

漁師「けど、俺も朝早いけんあんまり遅くまでは動けんとよ」

友「えー、ホントに? ……じゃあどうしよっか」

漁師「あんたさえ良ければトラックの荷台に乗せて行けるんじゃが、どうするね?」

友「それしか出来ないならそれでいいよ。あんまり漁師さんにも迷惑かけられないし」

漁師「よし、決まりじゃな。それじゃあ車をこっちまで動かしてくるけん、いっと待っちょらんね」

友「なるべく急いでねー」


895 :創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 00:35:35 ID:b1tsqagX
ブゥン、キキィッ

漁師「お待たせ。ちょっと魚臭か軽トラじゃが、ばってんあんたは人魚やけぇ気にならんよな」

友「……へぇ」

漁師「ん? どうかしたと?」

友「なんか私の知ってる車と形が全然違うなぁと思って」

漁師「妙な期待されても困るばい。俺の安月給じゃあ仕事用の軽トラ買うだけで手一杯やもんね」

友「でもこの車、すごくカッコいい! ねえ、これって私は後ろのここに乗ればいいの?」

漁師「それしかなかろうもん。一応漁協でトロ箱も借りてきたけん、それ被って姿隠しとかんね」

友「なんか、私ワクワクしてきた」

漁師「車乗るのが初めてじゃれば、そげんドキドキするのも当たり前かもしれんね」


898 :創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 20:19:30 ID:b1tsqagX
漁師「トロ箱は被ったと?」

友「オッケー、今の私はただの箱だよ」

漁師「そうね、ほんなら行くけんな」

キュルン、ブロロロロ……

友「わ、動いた! すごいすごい!!」

漁師「……友さん、静かにせんと隠れよう意味がなかとばい」

友「だって初めてなんだもん、動いてる車に乗るの」

漁師「はしゃぐのも良かが、車酔いせんように気ぃつけえな」

友「車酔い? ナニソレ」

漁師「人間は車に乗っとうと気分悪くなることがあっとよ。特に乗りなれてないあんたにはキツいかもしれん」

友「へーきへーき。それより早く出かけないと日が暮れるよ?」

漁師「大丈夫じゃろか…?」

十分後……

友「おえェェ……」

漁師「じゃけぇはしゃぐなっちゅうたとに。案の定車に酔うちょるやないか」

友「気分悪いよ……うげェ」

漁師「自業自得ばい」


899 :創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 20:33:19 ID:b1tsqagX
漁師「どうすっとね? まだ隣町にも来てないのにダウンすると?」

友「ううん、まだ諦めない……ぅゲホゲホ」

漁師「俺は無理じゃと思うがなぁ」

友「そしたら私、永遠にここに居なきゃならないじゃない。そんなの嫌」

漁師「したら、今度は大人しく荷台におることじゃ」

友「……ぁぃ」

漁師「それと、いくら気持ち悪いっちゅうても、ガラス越しに荷台から運転席叩くのやめんね」

友「だってそうしなきゃ、あなた私が気分悪いのに気づかなかったじゃない」

漁師「ガラスが割れたら俺が大怪我すると。誰でもそれは嫌じゃろうが」

友「う……分かったよ、私が悪かったよ」

漁師「それで良か。目的地についたら教えるけん、それまで荷台で昼寝でもしとかんね」

友「はーい…」


900 :創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 20:59:28 ID:b1tsqagX
それからさらに一時間……

漁師「ついたとよ」

友「……」

漁師「どげんした。グッタリしちょうが、友さん」

友「また気分悪くなったの……」

漁師「慣れん車の移動で疲れたからかね。水、飲むね?」

友「うん、ちょうだい……」

漁師「で、一応人目につかんように海沿いを走って来た訳じゃが、どこか見覚えある風景はあったと?」

友「さっぱり…てゆーか気持ち悪すぎてそれどころじゃなかったし…」

漁師「そうかね。やっぱり無駄足じゃったかなぁ」

友「もともと私の記憶だけが頼りだったし、期待薄ではあったんだけど……ごめんなさい、ここまで連れてきてくれたのに……」

漁師「なぁに、困った時は人魚も人間も関係なかよ。それより今はどうやって帰るか考えんと」

友「そうだね。どうしよっか……」


901 :創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 21:43:40 ID:b1tsqagX
漁師「そういえば、ここのこと前に喋っとったっちゅう人とは連絡とれんとね?」

友「取れないよ、人間の通信機器なんか持ってないもん」

漁師「そうかね。しかし、人魚と仲良くなれるなんて羨ましか人間もいたもんじゃのう」

友「あなただって、人魚とお近づきになれてるじゃない」

漁師「あんたの友達っちゅうそん人は、どんな人やったとな?」

友「どんな人って……強いて言うなら変な人?」

漁師「なんじゃそりゃ」

友「だって、いつもニヤニヤなよなよしてるかと思ったら、お嫁さんに会いに人魚の住む島に来たりする人なのよ?」

漁師「お嫁さんっちか? たしか人魚は人間に見られたら、その相手を殺さにゃならんのやなかったとね?」

友「その通り。だけど、その人は考えなしに突っ走って、結果的にその前例を覆したの」

友「今では私の人魚友達と結婚して、幸せに暮らしてるわ。新婚旅行の話題が出た時に、ここに行くって話してたの」

漁師「人魚と新婚旅行ちゅうのも、難儀そうな話じゃの」

友「でも、やると言ったらやる人だから。おかしな方向に向かって情熱溢れる人なのよ」

漁師「よか男じゃね、その人は」


904 :創る名無しに見る名無し:2009/10/20(火) 02:29:39 ID:8XXjZ/F+
友「あーあ、男さんがいてくれたら、私もこんなに不安にならずに済むのになぁ……」

漁師「男さんち言うんか、その人間は」

友「そうだよ」

漁師「そげん不安がらんでも、諦めなきゃいつかは故郷に帰れるばい」

友「そうだといいけど……」

漁師「そうに決まっとる。それにもし駄目じゃったら、俺がバレんようにあんたの世話しちゃるけんね」

友「ありがたいけど、あそこで人にバレずに生活するのってほとんど不可能じゃない?」

漁師「それならあんたがうちに嫁にくればよか。周りが反対しても、俺がその男さんちゅう人みたいに押し切ってやるでよ」

友「ふふ、なんだか必死で口説き落とそうとしてるみたい」

漁師「そりゃ、あんたは美人やけん。嫁にも欲しくなるわ」

友「漁師さんは素直だねぇ。そゆとこ、男さんに似てるかもね」


905 :創る名無しに見る名無し:2009/10/20(火) 02:40:12 ID:8XXjZ/F+
漁師「ともかく、あんたは大船に乗ったつもりで安心しちょればよかってことよ」

友「でも、具体的な方策が見つからないんじゃねぇ……」

漁師「う〜ん、その男さんと連絡が取れりゃ一発なんじゃがのぅ……あっ」

友「どうしたの?」

漁師「……俺は馬鹿か。なんでこげん簡単なことに気づかんかったとやろか」

友「何々、何をそんなに落胆してるの?」

漁師「あんたが男さんの連絡先を知らんでも、人間は名前さえ分かっとればいくらでも連絡先を調べる方法があると。それを今さら思い出したとよ」

友「えぇっ、本当に!?」

漁師「少なくとも、名前が知れちょるなら電話番号くらい調べられると。ほんになんでこげな簡単なことに気づかんかったとやろか!」

友「じゃあ、じゃあ私帰れるの!?」

漁師「その男さんち人が電話さえ引いちょればな」

友「やったー!!」


908 :創る名無しに見る名無し:2009/11/01(日) 00:17:54 ID:MWP/bd7p
女友「それなら早く帰って電話しよ。お願いだよ!」

漁師「せからしか姉さんじゃね。慌てる乞食は貰いが少ないち言うやろうに」

女友「私は即刻、素早く、早急に、急いで帰りたいの。たった二日だけどあんな網の中はもう沢山!」

漁師「そげなもんかねぇ」

女友「あなただって、私みたいな人魚をいつまでも匿ってるの大変でしょ? 厄介払いは早い方がいいよ」

漁師「いやぁ、そげんこつはなかよ。俺はあんたといれて楽しかと」

女友「楽しいって、もうちょっと事態を深刻に受け止めてよ」

漁師「あいや、すまん。けど俺はできれば、あんたと離れたくなかとよ」

女友「え?」


909 :創る名無しに見る名無し:2009/11/01(日) 00:29:14 ID:MWP/bd7p
漁師「うちは女っ気のない生活が長かったけんね。あんたみたいな美人さんと一緒におれて
   年甲斐もなくウキウキしちょったと」

女友「自分勝手な理屈は止めてよ。私の住み処は海なのよ?」

漁師「そうじゃの、これはただの俺のワガママじゃ」

漁師「けど、あんたは華があるけん。きっと人魚の島でもモテちょったとやろ?」

女友「だーかーらー、そんなことはどうでもいいんだってば」

女友「私のことを誰にも言わずに救ってくれたのには感謝してる、けどあなたと私は人魚と人なの。赤の他人以下なのよ」

女友「お願いだからそこんところ理解してよ。理解して、早く私を返して?」

漁師「……分かった。お姫様がそう言うならもう車を出そうかね」

女友「ありがとう。そうしてちょうだい」

漁師(……ハッキリ拒絶されてしもうたなぁ)


914 :創る名無しに見る名無し:2009/11/11(水) 00:21:47 ID:MYftthCX
そして、帰宅……

漁師「着いたばい」

女友「お疲れ様。無駄足踏ませて悪かったわね」

漁師「謝らんでよかち。それより、今から男さんの電話番号調べちゃるけん待っとき」

女友「あ、うん……あのさ」

漁師「なんね? いけんしたと」

女友「あの、さっきはごめん。あなたは一生懸命頑張ってくれてたのに、八つ当たりみたいな言い方しちゃった」

漁師「なーんが。それはあんたの気持ちば考えんかった俺が悪かったとよ」

女友「じゃあ、気にしてない?」

漁師「気にしよう訳がなか!」

女友「ありがとう。そう言ってくれたら少しは楽になるよ」

漁師「不安がるなっちゅうても無理か話やろうが、まぁ大船に乗った気でいんしゃい」

女友「うん、そうする」

ちゃぷん


916 :創る名無しに見る名無し:2009/11/12(木) 22:50:33 ID:at9Wa3m3
漁師「さて、わだかまりも解けたし後は男さんの電話番号調べるだけじゃな」

漁師「番号案内は確か104じゃったはずじゃが……」





男宅……

男「ふんふふんふふーんwwwww今日もお仕事おつかるさまwwwwwww」

男「時間はあるけどお金がないからwwwww水でも飲んで寝るとしますかねwwwwwww」

Prrr、Prrr・・・

男「おや?wwww誰だこんな時間にwwwwwww」

ガチャ

男「はいもすもすwwwwwこちら葛飾区亀有公園前派出所wwwwwww」

漁師『は?』

男「むむっwwww聞き覚えのない声wwwwwww誰だ貴様wwww」

漁師『あの……そちらは男さんのお宅じゃないんかの?』

男「そうだけど?wwwwwwwwwww」


917 :創る名無しに見る名無し:2009/11/12(木) 23:00:14 ID:at9Wa3m3
漁師「今、葛飾区亀有公園前なんとかち言わんかったやろうか?」

男「ギャグっすよギャグwwwwwwwこう言うと間違い電話と勘違いして振り込め詐欺の予防になんのwwww」

漁師「はぁ……」

男「んでwwwwそういうあんたは一体何者?wwwwww」

漁師「あ、あぁ……俺は漁師っちゅうもんなんじゃが、男さんにちょっと用事があって電話させてもろうたとこやったとです」

男「ほうほうwwwwwww赤の他人が電話してくるような要件とはなんじゃらほい?wwwww」

漁師「……あんた、友人魚さんっち人魚を知っとうとね?」

男「え?wwwwなんであんた人魚のことを知ってるの?wwwwww」

漁師「話せば長くなるけん手短に話すが、今友人魚さんは俺が保護しとうと」

男「ちょwwwイミフすぐるwwwww詳細kwskwwwwwww」

漁師「あの、実はな……」


918 :創る名無しに見る名無し:2009/11/12(木) 23:08:08 ID:at9Wa3m3
友「……」ちゃぷちゃぷ

漁師「おーい、友人魚さん」

友「あ、漁師さん。どうだった、電話繋がった?」

漁師「バッチリばい、番号案内で探したらすぐ見つかりおった」

友「本当に!? やったぁ!!」

漁師「ほいでな、今男さんと電話が繋がっちょるんやが、男さんあんたのこと心配しようからちょっと代わってくれち」

友「え? 私が電話に出るの?」

漁師「そうばい。電話器の使い方は分かると?」

友「わ、分かるわよ!? 早く貸してちょうだい」

漁師「ほれ」

友「お兄さん、私だよ。友人魚だよ!……あれ、声全然聞こえないんだけど」

漁師「受話器が逆さまばい」


921 :創る名無しに見る名無し:2009/11/15(日) 22:33:24 ID:agPaezab
漁師「電話機はこっちを耳に当ててこっちから喋るとよ」

友「こ、こう……?」

男『おーwwww友か?wwwwwwおひさひさーwwwwwwwwww』

友「お兄さん!」

男『なんか大変なことになってるみたいだけどwwwwwww大丈夫か?wwwww』

友「全然大丈夫じゃないよ。ここはどこなの?」

男『どこと言われると説明しづらいんだけどなwwwwwまぁ簡単に言えば

  いつもの岩場からかなり離れた場所だwwwwwwwwwwwwww』

友「そんな……具体的な場所が分かんなきゃ、そっちまで帰れないよ」

男『安心汁wwwwwwwお前が自力で帰ってこれないならwwwww

  俺がレンタカー借りて迎えにきてやっからwwwwwwww』

友「本当に?」

男『うんwwwwwただ、俺も仕事あるから週末にならないとそっちまで行けないんだよなwwwwwwwwww』

友「えー、そんなぁ……」

男『なんならwwwww人間の地理を理解してるそっちの漁師に連れてきてもらえば?wwwwwwwwww』

友「あ、そっか。それもアリだね」


922 :創る名無しに見る名無し:2009/11/15(日) 22:40:54 ID:agPaezab
友「漁師さん、場所はお兄さんが教えてくれるから、私をもといた場所まで返すの協力してくれない?」

漁師「それは構わんが、漁師はそっちの男さん以上に休みなんか取れんばい」

友「そうなのー? んー……」

友「お兄さん、漁師さんも私を連れてくのは無理みたい。週末にお兄さんが来るのを待つしかないかも……」

男「うはwwwwww不憫wwww気を落とすな友人魚wwwwwwwww」

友「あーあ、せっかく帰れると思ったのに……」

男『電話だけでよければ毎日してやるからwwwww泣くんじゃないぞwwwwwwww』

友「泣いてなんかいないよ、ただ相当ガックリきちゃっただけ」

男『女にはこっちから伝えとくわwwww最近姿を見ないって言ってたからなwwww』

友「心配はしてないだろうけど、いちおそうして」


923 :創る名無しに見る名無し:2009/11/15(日) 22:48:08 ID:agPaezab
男『落ち込んでるとこ悪いんだけどwwwww電話代は漁師持ちだからそろそろ切るぜwwwwwwww』

友「え、ちょ、ちょっと待って、もう切るの?」

男『これ以上うだうだ話してても進展なさそうだしなwwwwwww

  まぁ気をしっかり持って週末までガンガレwwwwwwww』

友「私に対する慰めとかないの!?」

男『慰め?wwwwwwwうーんwwwwww』

男『……ファイト!wwwwwwwwwwww』

友「軽っ!!」

男『じゃーなー友人魚wwwwwwwwまた明日電話すっからwwwwwww』

友「待ってよお兄さん、お兄さっ……」

ガチャッ、ツーッ、ツーッ

友「……もうっ、薄情者なんだから!!」

漁師「まだ話したいことがあったとなら、掛けなおそうか?」

友「いい、知らない!」


924 :創る名無しに見る名無し:2009/11/15(日) 23:11:39 ID:agPaezab
友「人の気も知らないで、よくも簡単に頑張れなんて……」

漁師「ぶつくさ言うちょってもしょうがなかばい。ぷりぷりしようと肌が荒れるとよ」

友「人魚は肌荒れなんかおこしません!」

漁師「そうかね、でも友人魚さんはもっと笑った方がよかよ」

友「笑えるような心境じゃないよっ……!」

漁師「そうとも限らんばい。友さん、あんた初めて車ば乗った時はニコニコしよったとやなかね」

友「え? あ、あの時は年甲斐もなくはしゃいじゃっただけで……」

漁師「そんなら、その楽しかった時を思い出して笑えばよか。腹立ったことがあっても笑えば忘れがなるもんばい」

友「そんなものかなぁ」

漁師「そうばい。笑えば嫌なことは吹き飛ぶと、だから笑わんね」

友「……うん」


925 :創る名無しに見る名無し:2009/11/15(日) 23:21:20 ID:agPaezab
友「そうだよね、少なくとも帰れる目処だけはついたんだし、そんなに絶望的って状況でもないんだよね」

漁師「そうばい。それに今よりはるかに助かる見込みのなかったさっきでさえ、友さんは笑いおったばい」

友「うん、なんか私、ちょっと余裕がなくなってたかも。それにお兄さんがあんな性格なのは今に始まったことじゃないし」

友「ありがと、漁師さん。私、元気出たよ」

ニコリ

漁師「そうばい、女は笑った方が可愛か。友さんみたいな美人なら尚更ばい」

友「誉めても何も出ないわよ、漁師さん」

漁師「軽口聞けるなら、もう大丈夫じゃな」

友「そうだね」

漁師「ほんなら、俺はもう寝ることにしようかね」

友「そう? じゃあ、お休みなさい」

漁師「おう、また明日な」


928 :創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 20:22:54 ID:ERo2DEJ8
翌日、早朝

友「ふ〜ん…むにゃむにゃ…」

漁師「おはよう、友人魚さん」

友「……う? もう朝なの?」

漁師「まだおねむじゃったか。仕事ん前に一言かけとこうと思うてな」

友「こんな朝早くから、ご苦労様……」

漁師「起こしてしもうてすまんね、ゆっくり寝らんね」

友「もう目が覚めちゃったし。あ〜あ、週末まで暇だなぁ」

漁師「なんか暇潰しでもあればいいんじゃが」

友「う〜ん……」


929 :創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 20:32:26 ID:ERo2DEJ8
漁師「音楽でも聞くか?」

友「誰もいないのに音楽なんかかけたら、私がいるのバレちゃうよ」

漁師「そいなら、本でも読むか?」

友「恋愛小説なら読みたいけど」

漁師「そげなもん持っちょらん」

友「じゃあ却下」

漁師「う〜ん……ほんなら、絵でも描いてみるね?」

友「絵なんか描いたことないよ」

漁師「な〜んが、初めて挑戦するなら下手で当たり前ばい。それに、人魚が絵ば描くっちゅうのも、新鮮で良かかもしらん」

友「そっか……それなら、ちょっとやってみようかなぁ」

漁師「なら、鉛筆と紙持ってきちゃるけん、ちょっと待ってな」

友「うん、お願い」


930 :創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 20:56:11 ID:ERo2DEJ8
・・・

漁師「ほい、友さん。ご要望の紙と鉛筆ばい」

友「ん。ありがと」

漁師「色鉛筆かなんかあれば良かったけどな。じゃけんうちにはなかったからそれで我慢しちくれ」

友「全然オッケー。でも、絵ってどうやって描けばいいんだろ?」

漁師「自分の好きなもん描けば良かとじゃなかね?」

友「あぁ、なるほど」

漁師「ほいじゃ、そろそろ仕事に遅れるけん俺はいくばい」

友「うん、行ってらっしゃい」

漁師「絵ば完成したら、俺にも見せちくれよ」

友「わかった、ちょっと恥ずかしいけど約束するよ」

漁師「じゃあな」

友「はーい」



友「さて、私の好きなものか。何を描こうかな……」


931 :創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 21:46:16 ID:ERo2DEJ8
友「そうだなぁ。まずは練習がてら前に流れてきた雑誌の絵の真似して描こう」

友「あとは……女とお兄さんの絵も描こうかなぁ」

友「なんかワクワクしてきた! よ〜し、描くぞ〜!」

--------------------------------------------------

友「〜♪」

漁師「ただいま。おぉ、いっぱい描いちょるなぁ」

友「あれ? 漁師さん。もうお仕事終わったの?」

漁師「おう。時間も忘れるほど熱中しちょったか」

友「やっぱり海端で絵って無理があるね。紙がふにゃふにゃになっちゃう」

漁師「どれどれ……ほー。初めて描いたにしてはなかなかうまかね」

友「あっ、勝手に見ちゃ駄目!」

漁師「じゃけん出来上がったら見せてくれる約束じゃったが」

友「その辺りのは最初に描いたのだからまだ下手なの。見るならこっちにして?」


932 :創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 22:08:04 ID:ERo2DEJ8
友「ね? こっちのやつの方が最初のより上手に描けてるでしょ?」

漁師「俺は最初のも好きじゃがな」

友「そうかなぁ……」

漁師「これは、イルカね?」

友「イルカっていうの?」

漁師「海に住んじょっとるのに知らんとな?」

友「それは前に見た雑誌の絵を真似ただけだから」

漁師「そうかね。……ん?」

友「あ、それは私の自信作だよ!」

漁師「これは……」


933 :創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 22:29:29 ID:ERo2DEJ8
漁師「この絵も、なんかの絵を真似して描いたと? 人間が描いちょるが」

友「ううん、それは前に話した私の友達だよ」

漁師「ちゅうと、昨日の電話の?」

友「そう、男さんとそのお嫁さん」

漁師「はー、そうかね…」

友「どうしたの? その絵に見入っちゃって。気に入った?」

漁師「これは、結婚式かなんかね?」

友「やっぱりわかる?」

漁師「お嫁さんの人魚が花嫁のヴェールば着けちょるが」

友「すっごく綺麗だったから、思い出して描いてみたの」

漁師「……友さん」

友「なあに?」

漁師「あんた、もしかしてこの男さんち人んこと好きやったとじゃなかと?」

友「!?」


934 :創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 22:37:33 ID:ERo2DEJ8
友「な、なんでそんなこと分かるのよ……」

漁師「いや、昨日の電話応対ん時から薄々思うちょったとやが」

漁師「それに、女の子が不安な時は、好いとう男を頼りにするっち相場は決まっとるばい」

友「……ハァ」

漁師「ど、どうしたと?」

友「漁師さんに図星指されたせいで、嫌なこと思い出しちゃった……」

漁師「な、なんね。俺のせいか?」

友「あなたの言う通り、私はお兄さんのことが好きだった」

漁師「やっぱりそうじゃったか……」

友「けど、どうしても諦めきれなくて、危うく結婚式を台無しにするとこだったのよ」

漁師「ちゅうと?」

友「……あのね」


935 :創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 22:49:58 ID:ERo2DEJ8
・・・

漁師「なるほど。簡単に言うと、結婚式まで未練を引きずっちょったら花嫁に余計な気を使わせてしもうたと」

友「そういうこと。我ながらなんであんなこと言っちゃったのか……」

漁師「そげん良か男なのかね、その男さんち人は? あんたもそこまで分別つかんようには見えんが」

友「悔しかったっていうのもあったかもね。もしも女より先にお兄さんに

  会ってたら、多分お兄さんは私を選んでくれただろうし」

漁師「乙女心は複雑じゃのう。もしかして、まだそのことを引きずっちょるんか?」

友「まさか。そこまで私は執念深くないよ……ただ」

漁師「ただ?」

友「男さんが迎えに来てくれるって言ってくれた時、私、すごく嬉しかったの」

友「やっぱり、自分でも知らないうちに未練アリアリなのかな……?」

漁師「……」


936 :創る名無しに見る名無し:2009/11/20(金) 23:51:35 ID:T3cPN2c9
漁師「…なぁ、友さん」

友「なに?」

漁師「その男さんの代わり、俺じゃ駄目じゃろうか」

友「え?」

漁師「俺もあんたのこと好いとうと。やけん、友さんに不満がなければ

   俺があんたのこと幸せにしてやりたかち思うちょるんよ」

友「ちょ、ちょっと待ってよ漁師さん。話が飛躍しすぎだよ」

友「第一私たち、会ってまだ数日しか経ってないんだよ?お互いの

  ことわかってもいないのに付き合うなんて、無理だよ」

漁師「ばってん友さんは、週末になったら自分の住処に帰ってしまうとやろ?」

漁師「そしたら俺は、連絡の取りようもなくなるばい。そげんこつは嫌じゃ」

友「そ、それはそうだけど……」


939 :創る名無しに見る名無し:2009/12/05(土) 21:45:11 ID:nwOB8B2u
友「うーん……そのぅ、なんていうか、ごめんなさい」

漁師「……そうか、駄目か」

友「あっ、あのね? 駄目っていうのとは違うの。ただ私、こういうことに

  慣れてないから、なんて返事したらいいか分からなくて……」

漁師「それは、断り方が分からんちゅうことか?」

友「ううん、そうじゃなくて……私自身にも、あなたとどうなりたいかまだ分からないのよ」

漁師「遠回しな拒絶にも聞こえるが……」

友「もう、そうじゃないってば」

友「はっきり言って、私もあなたのことは嫌いじゃないの。でも、好きになれるかって

  聞かれたら、まだそんな段階じゃないってだけなんだよ」

漁師「お、おう……」

友「いくら残り時間が少ないからっていっても、あんまり急いで進められる

  話じゃないでしょ?そこんとこはちゃんと理解して?」

漁師「……分かった。俺もちっと積極的に出過ぎたな」

漁師「すまんかった。都合のよか話じゃが、今のことは水に流してくれんか」

友「うん、私こそうやむやにしちゃってごめん」


940 :創る名無しに見る名無し:2009/12/05(土) 22:13:19 ID:nwOB8B2u
漁師「よし、俺は腹ぁくくったばい」

友「え?」

漁師「要するに、週末までの短い時間で、友さんを俺ん方に振り向かせればいい訳じゃな?」

友「え、えーと……そうなる、の、かな?」

漁師「それなら、俺は友さんに今まで以上にアピールしまくるだけじゃ」

友「え、あ……」

漁師「な、友さん。もし俺があんたの頭ん中にある男さん以上の男になれたら、俺と付き合ってくれんか」

友「う、うーん……分かった、約束する」

漁師「よっしゃ! じゃあ約束の指切りじゃ」

友「指切り?」

漁師「お互いに約束は破ったらいかんっちゅう人間同士の誓いじゃ。ほれ、こうして指をかけて……」

漁師「ゆーびきーりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきった」

漁師「……と、こうするんじゃよ」

友「なんか、私が思ってる以上に大事になってない?」

漁師「ははは、指切りくらいで大事もなかばい」


941 :創る名無しに見る名無し:2009/12/05(土) 22:26:32 ID:nwOB8B2u
漁師「そいじゃ、俺は明日も早いけんもう帰るばい」

友「あ……うん」

漁師「きょとんとしちょるが、大丈夫か?」

友「そりゃそうよ、あんな言い方されたら……」

漁師「はっはっはっ、明日からの俺に期待しちょってくれよ?」

友「うんと言っていいのか……」

漁師「それじゃあの」

友「……なんか、私一人だけ置いてきぼりにされた気分……」 


950 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 19:06:57 ID:EAUHumPg
そして翌朝

友「……」チャプチャプ

漁師「おーい、おはようさん」

友「あ、おはよ」

漁師「なんじゃ? もう起きちょったとね。俺はてっきりまだぐっすりじゃと思うちょったが」

友「うん。昨日はなんだか寝つかれなかったから、波と戯れてたらもう朝になってた」

漁師「ははは、友さんはずいぶんと優雅じゃのう」

友「寝てないんだから笑い事じゃないし。ていうか、寝れなかったのは漁師さんのせいでもあるんだからね?」

漁師「俺? 俺がなんかしたかね?」

友「昨日、お兄さんが迎えに来るまでに私にアピールするなんて言うから、意識しちゃって寝れなかったんだから」

漁師「なんじゃ、そんなことね。そげなこつ気にせんで寝れば良かったとに」

友「あんな風に言われて気にせず通りすぎれる訳ないでしょ!」

漁師「そりゃあ俺には好都合ばい。俺の発言が気になるっちゅうことは、まだ脈はあるっちゅうことじゃからな」

友「あぁもう、人間ってなんでこう『ああ言えばこう言う』なんだろ……」


951 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 19:18:54 ID:EAUHumPg
友「はぁ……なんで私ってこんなにツイてないんだろ……」

漁師「そげん溜め息ばつかんと。そうじゃ、夜通し起きちょったなら腹も空いとうやろ?」

友「……そう言われれば、お腹ペコペコかも」

漁師「じゃろう? じゃと思って、今日は握り飯ば作って来たんじゃ」

友「ニギリメシ?」

漁師「あんたら、穀物は食べたりせんのじゃろ? なら、俺といる間くらい食わせてやりたいち思うてな」

友「なにこれ……真珠貝みたいに真っ白だ。これ、本当に食べれるの?」

漁師「当然ばい。こん黒かとは海藻を集めて乾かしたもんじゃ。海藻くらいは、人魚でも分かるじゃろ?」

友「へぇ……うわ、見た目に反してなんかベタベタしてる」

漁師「海水で手も濡れちょるけん、まだマシな方じゃと思うがね」

友「ふーん……」パクッ

漁師「……どうね?」

友「……うわぁっ、美味しい!!」


952 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 19:25:13 ID:EAUHumPg
友「美味しい、これ美味しいよ漁師さん!!」パクパク

漁師「ほうかい。どうやらお気にに召してくれたようじゃな」

友「しょっぱいのに甘いのに、噛めば噛むほどいろんな味がしてくる!」

漁師「あぁ、そげん急いで詰め込むと喉に詰まらすばい」

友「人間ってこんな美味しいもの毎日食べてるの? ズルーい!」パクパク

漁師「おおう、まさか怒られるとは思ってもみんかった」

友「これが毎日食べられるなら、私は人魚の尊厳をかなぐり捨ててもいい」

漁師「友さんにそこまで言わすとは、恐るべし握り飯じゃな」


953 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 19:32:16 ID:EAUHumPg
友「けふぅ……ごちそうさま」

漁師「よか食べっぷりじゃったねぇ。見ちょって惚れ惚れするほどじゃ」

友「……あっ」

漁師「どうした? 友さん」

友「昨日言ってた私へのアピールって、まさかこれのこと?」

漁師「んなこたなかばい。そげん物で釣るような真似しても、意味はなか」

友「あぁ危なかった。もし今のニギリメシがアピールの一種だったら、私かなり揺らいでたよ」

漁師「そんなら俺は、毎日握り飯食べさせてやるけん嫁に来いっち言ってやるばい」

友「う……それ、本当?」

漁師「友さん、あんた意外と単純じゃな」


954 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 19:51:07 ID:EAUHumPg
漁師「まぁそれは冗談じゃが、その握り飯はただの俺からの気持ちじゃけん」

友「そんなこと言っても、私は漁師さんに負い目なんか感じませんからねーだ」

漁師「もちろん、そんなもん感じなくてよかよ。俺はたとえ友さんを

   恋人に出来なくても、この何日か夢のように楽しかったけんね」

友「……あれ、急に遠い目なんかして、どうしたの?」

漁師「いや……今週末を過ぎれば、また寂しい独身男に戻るかと思うと、切なくなってなぁ」

友「なぁんだ。そんなの、人間の女の子と仲良くなればいいじゃない」

漁師「友さん。漁師っちゅう仕事は、想像以上に出会いの少ない仕事なんよ」

友「仕事のせいにして出会いを放棄してたら、それこそ寂しい一生を送っちゃうじゃない」

漁師「……いや、今のは俺の言い方が悪かったな」

友「え?」

漁師「あのなぁ、俺はどんだけ人間の女の子と接点があっても、やっぱり友さんのこと好きになるち思うんよ」

友「ちょっ、何馬鹿なこと言ってるの」

漁師「なんせ、一目惚れじゃったからなぁ……あんたを保護した時から、まるで電気ば走ったみたいにビビっと来たんじゃ」

友「そ、そんな……」

漁師「友さん。俺、やっぱりあんたのこと好いとうと。色々考えたばってん、真っ直ぐに好きち伝えるんが一番のアピールじゃけんな」

漁師「どうじゃろう、駄目かな?」

友「駄目かなって……昨日同じこと言われて『考えさせて』って言ったばっかりじゃなかったっけ?」

漁師「そうじゃな。けど、白黒はっきりするまで好きち言い続けるんは俺の自由じゃろ?」

友「う、うーん……」


955 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 19:57:12 ID:EAUHumPg
友「じゃあ、ひとまずの折衷案としてこうしましょうよ」

漁師「なんじゃろう」

友「とりあえず、私たちは友達って関係から始めましょう。そこから進展するか何も無しかは、あなたの技量次第ってことで」

漁師「ぬぅ……なんか、なし崩しで週末を迎えてしまいそうじゃな」

友「ごめんね。私もあなたは嫌いじゃないし、仲良くなりたいんだけど、まだ恋人までの踏ん切りはつかないのよ」

漁師「まぁ、若干の進展は見られたことじゃし、良しとするか」

友「ホッ……」


956 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 20:06:44 ID:EAUHumPg
漁師「なんか、そうと決まると一分一秒も惜しくなってくるな」

友「そりゃ、週末まであと二日しかない訳だし」

漁師「……よし、決めた。友さん、今からドライブ行かんね?」

友「え? お仕事は?」

漁師「最近はデカい漁もなかし、一日だけなら休んでも平気じゃろ」

友「……それ、本当に大丈夫なの?」

漁師「なぁに、残り少ない日数を友さんと楽しく過ごす方が、今の俺にはよっぽど大事じゃけん」

友「漁師さんって、意外に軽いんだね」

漁師「そうじゃ、握り飯もたくさん作って持っていこう。そしたら友さんも楽しめるじゃろ?」

友「本当!? 行く行く!!」

漁師「あんたも意外に軽い女の子じゃな」


958 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 20:19:39 ID:EAUHumPg
友「ところで、ドライブってなぁに?」

漁師「あ、そうか。あんたは人魚じゃけんドライブなんて言葉知らんか」

漁師「えーっとな……こないだあんたを乗せた軽トラックがあるじゃろ? あれに乗ってどこかへ出かけるのがドライブじゃ」

友「げっ。またあの車に乗るの!?」

漁師「今度はゆっくり走るし、酔い止めの薬も家にあったはずじゃから持ってくればよか」

友「お出かけは楽しみだけど、あの車かぁ……」

漁師「……握り飯」

友「!!」

漁師「友さん、あんた軽い上に単純な女の子なんじゃな」

友「う、うるさいなぁ!」

漁師「ははは、そいじゃあ漁協に連絡してから準備してくるばい」


959 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 20:35:30 ID:EAUHumPg
三十分後……

漁師「お待たせ」

友「あれ? 思ったより早かったね」

漁師「おう。仕事の方は猛烈な風邪をひいたち嘘ついたら案外すんなり休めたばい」

友「なんか、今さらだけどズルいねぇ」

漁師「これも俺の迫真の演技と、日頃の勤務態度の賜物じゃな。はっはっはっ」

友「でも、こんな朝早くからどこに出かけるの? まだ日もあける前だけど」

漁師「俺も起きた時は普通に仕事ば行くつもりじゃったからなぁ。海手側は知り合いに見つかったらヤバかけん、山にでも行こうか」

友「オッケー。それで、漁師さん。例の物は?」

漁師「ん? あぁ、握り飯もちゃあんと用意しとるばい」

友「やった! じゃあ早く行って早く食べよ?」

漁師「花より団子とはこのことじゃな。ま、そんなに待ち遠しいなら早く出発しようか」

友「おー!」


960 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 20:45:07 ID:EAUHumPg
ブロロロ……

友「空き箱被って荷台に乗って〜今日はお出かけ日和かな〜♪」

漁師「えらい楽しそうじゃな、友さん」

友「うん。やっぱり自由に動けない分だけ、ストレス溜まってたのかもね」

漁師「海を自在に泳ぎ空も飛べる人魚も、身動き取れんば陸の魚じゃからね」

友「ね、ところで今はどこに向かってるの?」

漁師「ん、俺がガキん頃から遊んじょる川に連れてってやろうかと思うてな」

友「川って、鰻とか鮭とかがいるあの川?」

漁師「今から行く川には鰻も鮭もおらんが、間違いじゃなか。あんたは川も見たことないんじゃなぁ」

友「そうだよ。人魚の住みかは海と空だもの」

漁師「それなら、滝ば見たら驚くじゃろうねぇ」

友「タキ? 何それ」

漁師「着くまで秘密じゃ。楽しみに待っちょらんね」

友「……?」


961 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 20:54:44 ID:EAUHumPg
漁師「着いたよ」

友「おー、ここが山かぁ」

漁師「どうね、初めての山の感想は」

友「そんなことより、今日は車乗っても気持ち悪くならなかったことの方がすごいと思った」

漁師「そりゃ、薬飲んで安全運転すればな。……もっとこう、うわぁとかビックリしたぁとかないのか?」

友「木や草がいっぱい。今のところそんだけ」

漁師「……まぁ、良か。こっから川までは少し歩くけん、下生えで肌ば切らんよう気ぃつけんね」

友「漁師さん。あなた、何かお忘れでない?」ふわり

漁師「あ、そうか、あんた空を飛べるんじゃったな。なら、張り出した枝の方が危なかね」

漁師「俺があんたの飛ぶ高さの枝ば折っちゃるけん、なるべくゆっくり後ろばついてこんね」

友「はーい」


962 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 21:04:49 ID:EAUHumPg
ガサガサ……

友「なんか、海と違って山の中ってすごいごちゃごちゃしてるね」

漁師「まだ朝も早いけん、なおのことそう見えるんじゃろうな」

友「あ……今、あっちの方で鳥が飛んだよ」

漁師「多分、あれはルリカケスじゃな。ガキの頃はよう見たばってん、最近はあんまり見んようになった」

友「漁師さん、漁師なのに山にも詳しいんだね」

漁師「元は山側の人間じゃけんな。高校出て働き口なかったけん、町まで下りて漁師になったと」

友「へー、色々大変なんだね」

漁師「じゃが、今はもちろん漁師の仕事を好いとうとよ」

友「……ん? なんか、あっちから水の音がしない?」

漁師「さすがは人魚、水音には敏感じゃねぇ。もうそろそろ川に出る頃ばい」


963 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 21:18:04 ID:EAUHumPg
漁師「ここを抜けると川じゃよ」

友「私、なんかドキドキしてきた……」

漁師「ははは、そげん緊張せんでも。ほら、見えたじゃろ?」

友「うわ、水だ。水が流れてる」

漁師「もうちょっと視界が開けたら、滝も見えてくるけんね」

友「そういえば、さっきも言ってたけどそのタキって何なの? 川の仲間みたいなものなの?」

漁師「今は木に遮られちょるが、音は聞こえてくるじゃろ?」

友「うん、なんかすごいドドドドーって水の音がする」

漁師「それが滝の音じゃ」

友「滝って、水なのに音がするんだ」

漁師「そうじゃよ。……あ、見えたばい。友さん、あれが滝じゃ」

友「……おぉっ!?」

ドドドドドドドド・・・・


964 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 21:24:10 ID:EAUHumPg
友「すごーい!! 水があんなに高いとこから落ちてきてるー!!」

漁師「どうじゃ、すごいじゃろ? ここは地元の者も知らん、俺だけの秘密の遊び場じゃけんね」

友「ねぇねぇ、ちょっと上まで見てきていい!?」

漁師「よかけど、はしゃぎ過ぎて怪我ばせんようにな」

友「大丈夫大丈夫!!」

ふわん、ふわふわ

友「……おぉー。上の方にまた川があって、それが流れて落ちてきてるのかぁー」

友「すごいすごい、こんなすごいもの初めて見たよ!!」

漁師「そうかい。喜んでもらえたなら、俺も嬉しか」

965 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 21:51:57 ID:EAUHumPg
友「ほぁー……なんか、エチゼンクラゲを生で見た時以来の衝撃だよ」

漁師「エチゼンクラゲは見たことあるんじゃな」

友「あそこから飛び込んだらどうなるかな?」

漁師「危ないことはしたらいけんよ」

友「あはは、冗談冗談」

ザパーンッ

漁師「あっ……」

友「……ぷはーっ、すごいね。川の水って海の水とは全然違うんだ」

漁師「気持ちよかね?」

友「うん。海の水ほどまとわりついてくる感じがしないし、水温も冷たくてキリッとしてるし」

漁師「楽しんじょるなぁ、俺はこの気温じゃ泳げんから羨ましか」

友「へっへ〜ん、いいだろ〜」

漁師「ははは……」


966 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 22:05:27 ID:EAUHumPg
友「〜♪」スーイ、スイ

漁師「ストレス、よっぽど溜まってたんじゃな。連れてきて良かったばい」

友「うん、私からもお礼言っとく。ありがとうね漁師さん」

漁師「そげんこつば言われると、余計に返したくなくなるばい」

友「私も、ここなら毎日でも来たいくらい」

漁師「ほんなら、俺と一緒に暮らせばよか。ここなら仕事帰りにでも毎日連れてきてやれるし」

友「駄目駄目。私には私の居場所がちゃんとあるんだから」

漁師「そうかぁ……」

友「そんなに寂しい顔しないで。それより、そろそろご飯にしよ? 私、お腹減ったよ」

漁師「友さん、朝に握り飯食べたとに、俺より腹減るのが早かね」

友「漁師さんがじっとしてるからでしょ? ね、それより早く、持ってきたニギリメシちょうだい!」

漁師「しようがなかねぇ。まだ昼飯には早かばってん、友さんの腹の虫には負けたばい」


968 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 23:32:51 ID:EAUHumPg
漁師「ほい、握り飯」

友「わぁい♪」

漁師「しかし、我ながら不恰好な握り飯じゃね」

友「そう? 比較になるほど綺麗なニギリメシ見たことないからわかんないや」パクパク

漁師「友さんは、握り飯好いとうと?」

友「大好き、今まで食べたものの中で一番好き!!」

漁師「そうかぁ……。俺は友さんが握り飯を好いとうのと同じくらい、友さんが好きじゃ」

友「ブッ……な、何言ってるのよ!?」

漁師「本心じゃけん、今さら隠す必要もなかろ?」

友「おかげでニギリメシ吹いちゃったじゃない。あーあ、勿体ない」

漁師「すまんの。ちょっと突然過ぎたか」

友「人間の男の人って、皆そんな風にストレートに告白するものなの?」

漁師「いいや、こんな不器用な告白ばするのは俺くらいじゃろう。駆け引きとか苦手じゃし、握り飯にもそれがよう現れちょる」


969 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 23:40:05 ID:EAUHumPg
友「……あのね、漁師さんには話してないけど、私の好きだった男の人もそんな人だったんだよ」

漁師「そうなんか?」

友「うん。ちゃらんぽらんでヘラヘラしてるくせに、いつもいつも好きだ、

  愛してるなんて言って、ついには私の友達を射止めちゃったの」

漁師「ふぅん……凄か人じゃねぇ、そん人は。突拍子もないっちゅうか」

友「漁師さんも似たようなものだよ。私、そういうの嫌いじゃないし」

漁師「なんじゃろうな、人魚に好かれるのはそういう人間なんじゃろうか」

友「逆じゃない? 人魚を好きになるのが、そういう人ばっかりなんだよ」

漁師「なるほどねぇ……ためになるばい」

友「私も、一つ利口になった気分だよ」


970 :創る名無しに見る名無し:2010/01/29(金) 23:56:08 ID:EAUHumPg
漁師「しかし、いよいよ友さんも観念して俺のところに来てくれるか」

友「ちょ、なんでそんな話になってるの!?」

漁師「だって今、『私もそういうの嫌いじゃないし』って。これはつまり俺との関係を好意的に修正してくれるっちことじゃろ?」

友「違う違う、それは単なる言葉の綾で……」

漁師「分かっちょるよ、全部冗談ばい」

友「あ、なんだ。そうだったの」

漁師「今は友達でよか。そん代わり、俺も友さんが愛想つかすまでは諦めんけん」

友「それなら私も、構わない」

漁師「人間じゃったら、そこまで思われると重たいとか言われるとこなんじゃろうな。友さんが人魚で、良かったばい」


971 :創る名無しに見る名無し:2010/01/30(土) 00:13:41 ID:Dt+BO6dd
漁師「……」

友「……」

漁師「友さん、もう遊ばんと?」

友「一人ではしゃいでも、あんまり楽しくないし。今は漁師さんの横にいてあげる」

漁師「あれだけワーキャーしときながら、楽しくないか」

友「うるさいな、これでも漁師さんに気を遣ってあげてるんだからね」

漁師「そりゃすまん。なら俺も泳ぐことにしようか」

友「本当に風邪ひいても知らないよ? それより、なんか話ししてよ」

漁師「なんも話すことなんかなかよ」

友「何かあるでしょ。たとえば、この場所に関する思い出とか」

漁師「思い出なぁ……一人で来ることしかなかったから、あんまりないな」

友「寂しっ! せっかくいい場所なのに、勿体なーい」

漁師「俺には、友さんと出会えてここに連れてきてあげれたことが、この場所での一番の思い出ばい」

友「またそういう臭い台詞を言う……」

漁師「でも、本心じゃけん」


973 :創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 00:46:04 ID:PFDXrk5i
漁師「俺、友さんと知り合えて良かったばい。友さん、うっかり俺んところに流れてきてくれてありがとな」

友「複雑なお礼の言い方するね。喜んでいいのか悲しんでいいのか」

漁師「悲しむ必要はなかばい。そういう間抜けなところも可愛かけんね、ははは」

友「人を間抜け呼ばわりとは、いい度胸してるじゃない」

漁師「人じゃなかよ、人魚じゃよ」

友「あ、それもそっか」

漁師「その素直な性格も、魅力的じゃ」

友「だから誉めるならちゃんと誉めろと」

漁師「誉めとるよ。そう聞こえんのは心が曲がってる証拠ばい」

友「むぐ……じゃあ今は素直に受け止めてやろう」


974 :創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 01:22:03 ID:PFDXrk5i
友「あー、でも楽しいな。まさか私の人生で陸に上がれる日がくるなんて」

漁師「俺も人魚と関わりあいを持つようになるとは思わんかったよ」

友「これで私の夢もかなえば、言うことなしなんだけどなー」

漁師「夢? 夢っち何ね?」

友「ふふふ、よくぞ聞いてくれました!」

友「私の夢は、好きな人と一緒に散歩すること! それが叶ったら、もう私の人生に悔いはないの」

漁師「慎ましい夢じゃね。そんなんならすぐにでも叶いそうじゃ」

友「それがそう簡単にはいかないのよ。だって、私達には足がないんだから」

漁師「そうか……まず歩くっちゅう時点でつまずいてる訳か」

友「そう。だから私の夢も、結局は叶わぬ夢って訳よ」

漁師「……じゃあ、こういうんはどうじゃ?」

友「こういうのってどういうの?」

漁師「友さん、こっちおいで」

友「なぁに?」

漁師「いいから、いいから」


975 :創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 08:35:37 ID:PFDXrk5i
友「来たよ」

漁師「うん、ほいじゃあ……」

ザバァッ

友「うわぁっ!!」

漁師「じっとしよらんね。あんまり動くと抱えばならんち」

友「な、何するのよ! ビックリするじゃない!!」

漁師「何って、俺が友さんを抱きかかえて歩けば、一緒に散歩出来るがね」

友「そんなことして恥ずかしくないの!?」

漁師「じぇーんじぇん。そもそもここには誰も来よらんばい」

友「嫌だよ、私が恥ずかしいよ。下ろしてよ」

漁師「嫌じゃ」

友「なんでよー!!」

漁師「友さんの夢は俺が叶えちゃるけん。そげん照れんでよか」


976 :創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 08:42:19 ID:PFDXrk5i
友「うぅ、恥ずかしいよぅ……」

漁師「さ、友さん。そいじゃあ一緒に散策しようか」

友「私、重くない? 重かったらすぐに下ろしていいよ?」

漁師「ははは、友さんも女の子なんじゃねぇ。気にせんでも、冬場の寒ブリに比べたら軽いもんばい」

友「……」

漁師「そげん力ば入れんと、リラックスリラックス」

友「……ねぇ、これって、お姫様抱っこって言うんだよね?」

漁師「そうじゃな」

友「……なんか、すごく変な気分」

漁師「じきに慣れるけん、我慢し」


977 :創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 08:49:22 ID:PFDXrk5i
友「ねぇ、もう散歩はしなくていいから、このままお姫様抱っこ続けててよ」

漁師「立ちっぱなしでか? それは歩くよりキツかかもしれんなぁ」

友「じゃあ座ってもいいから。とにかく、このままでいて?」

漁師「ん、分かった。しかし、そんなにこれが気にいったね?」

友「だって、心臓の音が聞こえそうなくらい体が密着してるし、顔だってこんなに近い」

漁師「本当じゃな、改めて見ると俺はとんでもないことばしちょるな」

友「自覚なしにこういうこと出来るのってある意味すごいよ」

漁師「本心を言えば、下心ありありだったんじゃがな」

友「そうだったの?」

漁師「じゃが、友さんも気に入ってくれたなら満足じゃ」

友「下心あるなら下ろしてもらおうかな……」

漁師「駄目」


979 :創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 18:57:26 ID:o6yHVGDw
友「……」

漁師「どうね、夢ば叶った気分は」

友「うん、悪くない。悪くないけど……」

漁師「なんね、なんか不満があると?」

友「私、人の好きなようにされるのって、あんまり好きじゃないんだよね」

漁師「え?」

友「という訳で、戦線離脱!!」ふわり

漁師「あっ……」

友「私のこと捕まえられたら、付き合うの考えてあげてもいいよ」

漁師「な、なんち?」

友「じゃ、そういうことで。車まで競争ね!!」ヒュンッ

漁師「あ、こら。友さん、友さん!!」タッ


980 :創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 19:10:07 ID:o6yHVGDw
友「到着〜」

漁師「ハァ、ハァ……ゼェ、ゼェ……」

友「残念ながら今回のチャレンジは失敗でーす。漁師さん、またの挑戦をお待ちしてます」

漁師「そらぁ、空飛ばれたら追いつけるはずなかばい……ゼェゼェ」

友「ふふん、でも勝負は私の勝ちね」

漁師「あぁ、そうじゃな。けど俺は、まだ諦めんばい」

友「……ふふ」

漁師「な、何が可笑しかとね……」

友「あはははっ、冗談だよ冗談。空飛ぶ人魚と早さで競争して勝てるはずないじゃん」

漁師「それはそうじゃが……冗談って友さん」

友「私の冗談を真に受けて、がっくりしてる漁師さんが可笑しかったのよ」

漁師「あんた、性格悪かね」

友「ふふ……」


981 :創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 19:16:12 ID:o6yHVGDw
友「ね、漁師さん。さっきのやつ、ここでもう一回やってよ」

漁師「さっきのやつ?」

友「あの、私を抱き抱えたあのやり方よ」

漁師「あぁ、お姫様抱っこか。しかし、この藪の中でやるんか?」

友「いいじゃない。どうせ誰も来ないんでしょ?」

漁師「友さんが良ければ、俺は構わんが……」

友「じゃ、お願い」

漁師「ん。分かった」ヒョイッ

友「ふぅ……やっぱりいいなぁ、これ」

漁師「俺で良かったらいつでも抱えてあげるばい」

友「ありがとう。じゃあそのお礼に、私からも一つプレゼントをあげる」

漁師「プレゼント? なんね、それ」

友「プレゼントっていうか、約束かな」


982 :創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 19:24:47 ID:o6yHVGDw
友「私さぁ、ここに来て遊ぶまでは、明後日私を迎えにきてくれる人以外には、深入りしないようにしようと思ってたんだ」

漁師「うん、それで?」

友「けど、漁師さんがあんまり真面目に迫ってくるもんだから、ちょっと考えを変えてみたの」

漁師「ふうん、一体何がどう変わったんじゃろうな」

友「あのさ、私は明日までしか漁師さんとこにいない訳じゃん?」

漁師「そうじゃな」

友「そこで思ったんだけどさ、漁師さんが望むなら、向こうに帰って

  からも、たまには漁師さんとこに遊びに来てあげても、いいよ」

漁師「え? ちゅうと、それは……」

友「明日までじゃなくて、何度もアピールするチャンスが増えるってことだね」

漁師「ほ、本当か!?」

友「うん、そうすることに決めた」


983 :創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 19:42:44 ID:o6yHVGDw
漁師「つまりは、友さんが俺に惚れるまで、俺は何度でもアタックしていい訳じゃな?」

友「うん。私も何だかんだでここが気に入っちゃったし、ニギリメシ美味しかったし」

漁師「じゃあ、これから友さんが遊びに来るときは、山ほど握り飯ば用意しとくけん」

友「それは嬉しいねぇ。それだけで私、漁師さんに惚れちゃうかも」

漁師「何ば言いよっとね。俺の魅力は握り飯にも負けよらんばい」

友「ふふふ、そうだね……」


985 :創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 20:59:12 ID:o6yHVGDw
友「よーし、それじゃ帰ろっか!」

漁師「なんね、まだ昼間じゃが勿体なくなかね?」

友「だって、いっぱい遊んでお腹空いたんだもん」

漁師「あんなに早くに握り飯ば食べるからばい」

友「いいのいいの、帰ったらまたニギリメシお腹いっぱい食べさせてよ」

漁師「友さんは色気より食い気じゃな」

友「そうだよ、あんな美味しいもの食べないなんて人生の損失だよ」

漁師(米、明日まで持つじゃろうか……)


986 :創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 21:06:32 ID:o6yHVGDw
そして、ついに週末……


987 :創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 21:18:38 ID:o6yHVGDw
友「……」

漁師「友さん」

友「あ、漁師さん。どうだった?」

漁師「あん兄さんとは連絡取れたばい。今日の夕方五時ごろには迎えに来るち」

友「そっか、良かった。やっと帰れるんだ」

漁師「はぁ……しかし、友さんとももうお別れなんじゃなぁ。明日から何を頼りに生きていけばいいか分からんばい」

友「もう、そんなに落ち込まないでよ。場所さえ分かったら遊びに来るって言ったじゃない」

漁師「そりゃそうじゃが、やっぱり寂しかもんは寂しかよ」

友「ありがとう。私も、漁師さんと離れるのにちょっと未練があるかも」

漁師「そうかね。……友さん、最後じゃけん少しワガママ言わせてもらってよかね?」

友「なあに?」

漁師「この間みたいに、友さんをお姫様抱っこで抱えさせてくれんかね」

友「いいよ、それくらい。お安いご用だよ」

漁師「ありがとう。じゃあ……」

ヒョイッ

友「ん。これで満足?」

漁師「おう。悪かばってんしばらくこのままでおらしてくれな」

友「オッケー」


988 :創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 23:35:06 ID:o6yHVGDw
友「ねえ、漁師さん。海入った後の私なんか抱っこしたら磯臭くてべたべたしない?」


漁師「大丈夫、むしろこのままずっと抱きしめてたいくらいばい」

友「そう……」

漁師「友さん、俺やっぱり友さんのこと離したくなかよ。それでも帰ってしまうんか?」

友「うん。だって友達もほっとけないし、私自身ふるさとに帰りたいし」

漁師「そうかぁ……そうじゃよなぁ」

友「心配しなくても、たまに遊びに来るって言ってるじゃん? その時まで我慢我慢」

漁師「……はぁ」

友「溜め息なんかつかないでよ。笑って送り返して、ね?」

漁師「友さん……」ぎゅっ


989 :創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 23:57:13 ID:o6yHVGDw
友「何々、どうしたの漁師さん」

漁師「いや、このまま終わってしまうんが嫌だから抱きしめただけばい」

友「終わりじゃないでしょ? これからが始まり。だからそんなに寂しがらないでよ」

漁師「……そうじゃな、せめて友さんに釣り合うような男になれるようにならんとな」

友「そうそう、その意気だよ」

漁師「……あのな、友さん」

友「え? 何、どうかした?」

漁師「非常に言いにくいことなんじゃが、一つお願いばしてよかね?」

友「内容によるけど、何?」

漁師「その……しばらく会えなくなるけん、思い出に、き、キスばさせてくれんじゃろうか」

友「え?……ええええ!?」

漁師「い、嫌ならよかよ! ちゅうか、俺もオッケーがもらえるとは思うちょらんけん…」

友「そ、それオッケーしちゃったらもう恋人も同然じゃん……」

漁師「……じゃよな」


990 :創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 00:06:38 ID:vb8Ez1+D
漁師「……」

友「……」

漁師「……変なこと言うて、すまんかったな」

友「いや、いいよ。なんとなく気持ちは分かるし……」

漁師「……」

友「……」

漁師「……気まずくさせてしもうたなぁ」

友「……ほっぺた」

漁師「え」

友「ほっぺたになら、キスさせてあげてもいいよ」

漁師「えぇ!?」

友「不満があるならさせてあげない」

漁師「い、いや、充分、充分ばい!」

友「それなら、目を瞑っておくから早くしてよ。恥ずかしいんだから!」

漁師「な、なんかツンツンしちょるな……申し訳なかばい」


991 :創る名無しに見る名無し2010/02/11(木) 00:15:22 ID:vb8Ez1+D
友「ほら、早く済ます!」

漁師「(これは照れ隠しに怒っちょるところじゃろうか…)それなら、失礼して……」ゴクリ

友「……んっ」

―――チュッ

漁師「……ふぅ、ありがとう友さん。もうよかばい」

友「あぁ、恥ずかしかった。もう変な提案しないでよね」

漁師「友さんが受け入れてくれてくれたからやっただけばい。そうでなきゃ、とてもこんなことしきらんかったよ」

友「人に責任転嫁しないの。私は最後の思い出にっていうから仕方なくのってあげただけなんだから」

漁師「友さん。顔真っ赤ばい」

友「うるさい! 漁師さんだって似たような顔色だよ!!」


993 :創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 00:40:54 ID:vb8Ez1+D
友「もう、漁師さんったら……もうっ」

漁師「そんなに膨れんと。可愛いか顔が台無しばい」

友「またそんなこと言うし。もう知らないから!」ふわっ

漁師「あっ、友さん。不用意に空飛んだら人にバレてしまうばい」

友「べーだ。その時はその時だし……」

――ドカッ

友「痛っ……え!?」

男「オゥフwwwwwwwいてぇwwwwwwwwww」

友「ちょっ……お兄さん。なんでここにいるの!?」

男「チョイーッスwwwwww友人魚久しぶりwwwwwwww」

友「久しぶり。じゃなくて、質問に答えてよ!」

男「いやぁwwwwww実は友を驚かそうと思って予定より早く出てきたんだけどwwwwww

  なんかお邪魔虫だったみたいだから物陰からこっそり見守ってますたwwwwwwwwwwwww」

友「……ってことは、今までの一連の行動、全部見てたの?」

男「おうよwwwwwちなみに俺んちで漁師の連絡を受けたのは質屋なんだぜwwwww

  面識ないから声質だけじゃ判断出来なかったみたいだなwwwwwww」

友「嘘……あんな恥ずかしい場面、全部見られてたなんて……」

男「そんなに恥ずかしがるなよwwwwwwラブラブちゅっちゅなんて俺と女もよくするしwwwwwww」


994 :創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 22:32:56 ID:vb8Ez1+D
男「いやぁwwwwwそれにしても友人魚にあんないい人がいたとはなwwwww」

友「いや、あれはただのお別れの挨拶っていうか……」

男「照れなくてもいいんだぜwwwwそれに嫌いな相手となんかちゅっちゅしないだろwww」

友「それはそうだけど」

漁師「友さん、何ばしようとね?」

男「チョイーッスwwwwwww」

友「漁師さん、この人が私を迎えに来てくれたお兄さん」

漁師「え? 電話じゃ夕方に来るはずじゃなかったとね?」

男「それが俺なりのサプライズwwww友をビックリさせるために早めに来たのさwwwwww」

漁師「は、はぁ……(何じゃこん人は)」

友(呆気に取られてるねぇ、無理もないけど)


995 :創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 22:44:01 ID:vb8Ez1+D
男「驚かそうと思ったらお邪魔しちゃったみたいでwwwwサーセンwwww」

漁師「あ……あんた、今の見ちょったとな?」

友「全部見てたみたいだよ」

男「悪気はなかったwwww反省しているwwwww」

漁師「俺は別に良かけんが、友さんは……」

友「な、何よ。私だって見られて困るようなことしてた訳じゃないんだから!」

男「まぁまぁお二人さんwwwww喧嘩はなしよwwwwww」

男「仲良きことは美しきかなwwww愛しあう二人はイチャイチャして当然だしwwww」

友「愛しあうって、あのねぇ……」

漁師「……そうじゃ、俺は友さんのこと好いとうと」

男「お?wwww」

友「ちょっと、何言ってるの?」

漁師「再確認ばい。俺はあんたが好きじゃ、だからあんたが振り向くまで好きっち言い続けるだけばい」

男「うはwwwww熱烈wwwwwさぁ友人魚、この思いにどう答えるwwww」

友「えぇ〜、何この展開……」


996 :創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 08:21:52 ID:xYG7tXPr
友「何度も言ってるけど、そんなすぐに結論なんか出せないってば」

漁師「うん、分かっちょる。だから返事は友さんの好きな時でよか」

男「なんだよwwww冷たいなぁwwwこんなに歓迎してくれてるんだから付き合っちゃえばいいのにwwwww」

友「そんなに簡単じゃないって知ってるでしょ?」

漁師「それも分かる。やけん、嫌いなら嫌いになってくれて構わんよ」

男「ちゅーまでしてるくせにwwww空気読めwwwwww」

友「それ、お兄さんだけには言われたくない」

漁師「変わった人じゃな、あんたも」

男「よく言われるwwwwwww」


997 :創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 08:48:25 ID:xYG7tXPr
男「不毛な議論をしてるのもアレだしwwwwもうそろそろ帰りますかwwww」

友「え、ちょ、ちょっと待って。まだ早くない?」

男「何?wwwwまだなんか心残りがあるの?wwwww」

友「帰るの夕方ごろって聞いてたから、いろいろ心の準備が……」

男「残りたきゃここに残ってもいいんだぜ?wwwww女や姉ちゃんにはちゃんと説明しとくからさwwwww」

友「……もうちょっとだけ、時間をくれない?」

男「おう、いいよwwwwじゃあお邪魔虫はあっち行ってるから二人きりで語り合えよwwwww」

友「そういう訳だから、漁師さん、あとちょっと話できる?」

漁師「え、あ、あぁ……」

男「んじゃ、さっきみたいに喧嘩すんなよーwwww」テクテク

友「相変わらずお気楽なんだから……」


998 :創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 08:59:20 ID:xYG7tXPr
漁師「それで、話って何じゃろうか」

友「えっと、まぁ別れる前にちょっと言っとこうと思って」

漁師「何を?」

友「いや、あのね、前からずっと言ってるけど、私は人魚だから人間とはお付き合い出来ないのよ」

漁師「おう、もう何度も聞かされて耳にタコが出来るほどじゃ」

友「でも、漁師さんと過ごしたこの何日か、夢みたいにすごく楽しかった。そのお礼がしたかったのよ」

漁師「お礼なんかしなくてよかよ。俺はたまたま網にかかった友さんを助けただけじゃけん」

友「偶然って本当にあるんだね……そうやってたまたま助けてくれた人に一目惚れされちゃうなんて」

漁師「そうじゃな、俺も友さんと一緒におれて楽しかったばい。出来れば、これから先もずっとそうしたいくらいじゃ」

友「ありがとう、漁師さん。私も漁師さんのこと、好きだよ」

漁師「……それは友達としてっちゅうことじゃよな」

友「そうだね、今はまだそう」


999 :創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 09:12:57 ID:xYG7tXPr
漁師「友さん、近いうちにまた必ず遊びに来てくれるんじゃよな?」

友「うん、きっとね」

漁師「そしたら、握り飯ばたくさん用意して待っちょるけん。友さんが食べきれんくらい用意して待っちょるけん」

友「うん、うん」

漁師「じゃから、この小汚いおっさんのこと、忘れんでくれよ。俺は友さんがここに来なくなっても、絶対忘れんから」

友「まだお別れもしてないのに、気が早いよ」

漁師「それもそうじゃ。なんか、友さんがいなくなるち思うたら切なくてなぁ」

友「漁師さんはセンチメンタルだねぇ」クスクス

漁師「じゃが、最後くらいは笑って送り出してやらんとな。それが男の務めじゃけん」

友「さすが漁師さん。それでこそ男だね!」

漁師「本当はけっこう無理もしちょるがな」


1000 :やっぱり終わらんかった…続きは台詞系総合で:2010/02/12(金) 09:30:23 ID:xYG7tXPr
漁師「ほいじゃな、友さん。元気でな」

友「……うん」

ふわり

男「お?wwwwwなんだwwwwwもうお別れの挨拶は済んだのか?ww」

友「うん、あんまり引きずって未練たらしくするのも嫌だしね」

男「そっかwwwwじゃあもう車出すからwww荷台に乗っとけwwwww」

友「うん……」

漁師「友さーん、元気でなー!!」

男「うはwwww漁師テラ健気wwwww返事しなくていいのか?wwwwwww」

友「……いいから、早く車出して」

男「おkwwww把握したwwwそれじゃ、俺たちの町へ帰りますかwwwwww」

友「……」

漁師「…行ってしもうたか……」



新ジャンル「空中人魚」〜完結編へ続く〜



810 :1/12:2010/02/19(金) 21:05:53 ID:VU7cJfhW

恋しい人の面影を

求め人魚は空を飛ぶ

ふわり、ふわりとたおやかに

ふわり、ふわりとしなやかに――




空中人魚完結編『あの空の下で』


811 :2/12:2010/02/19(金) 21:07:07 ID:VU7cJfhW
少年「……」

少女「…ねぇ、あんた」

少年「うぉ!? ビビったぁ!!」

少女「そんなにビックリしなくても……あなた、そんなとこで何やってんの?」

少年「あぁ、海見てたのよ海」

少女「海? ふ〜ん」

少年「あんたこそ、こんな人通りの少ないとこで何してんだ?」

少女「別に。こっちに越してきたばっかだから町を見て回ってただけよ」

少年「ふ〜ん、引っ越してきたのか」

少女「そうよ悪い?」

少年「なんも悪いこちゃないけどさwwwこんな田舎に珍しいと思ってwww」

少女「そうね。なんでこんな何もないとこに越して来なきゃならなかったのかしら」

少年「地元民泣かすようなこと言うなよwwwここも結構いいところだぜ?」

少女「あんたから言ってきたんでしょ」


812 :3/12:2010/02/19(金) 21:07:55 ID:VU7cJfhW
少女「ねぇ、隣に行ってもいい?」

少年「いいよ。来なよ」

少女「ありがと」ぺたん

少年「あんた、名前は?」

少女「少女よ。あんたは?」

少年「俺、少年。みんなからはしょーちゃんって呼ばれてるwww」

少女「ふうん、少年くんかぁ。学校どこ?」

少年「○○小学校の五年生DE☆SUwww」

少女「あぁ、やっぱり。私が転校する学校もそこよ」

少年「そうなのか! 学年は一緒か?」

少女「ううん、一個下。もしかしたら顔見知りが出来るかもと思って、少年くんに声かけたのよ」

少年「ほほうwwwそれは策士ですなぁwwww」

少女「どうでもいいけど、そのニヤニヤ笑いすごく鼻につくね」

少年「これは遺伝だから仕方ないんだwwwwすまぬwwwww」

少女「謝らなくても、いいけどさ」


813 :4/12:2010/02/19(金) 21:08:51 ID:VU7cJfhW
少女「あのさ、なんでこんなところで一人きりで海なんか見てんの?」

少年「そりゃ、友達あんまりいないからなwwww」

少女「そうなの?」

少年「うん。なんか俺、産まれが複雑だったみたいでさ、あんまりみんなと仲良くしてもらえないんだよね」

少女「大変ね、田舎って」

少年「でも、ニヒルな俺ってかっこよくね?wwwww」

少女「全然。でも、そう思いたい気持ちは理解出来るよ。私も似たようなものだから」

少年「何が?wwwww」

少女「私、お母さんの顔よく知らないの。引っ越してきたのは、お母さんに会うためなんだよ」

少年「へーwwww」

少女「お母さんがあんまりうちには居れないから、お母さんの実家に近いこの町に越してきたんだってお父さんが言ってた」

少年「少女ちゃんちの父ちゃん優しいなwwwなんか、うちの父ちゃんと似てるかもwwww」

少女「私も、なんだかあんたが他人のような気がしないわ」

少年「初対面なのにwwwこれが運命ってやつ?wwww」

少女「知らないけど」


814 :5/12:2010/02/19(金) 21:09:53 ID:VU7cJfhW
少年「でも、よくこんなド田舎に越してきてくれたな。歓迎するぜwwww」

少女「しなくていいです。それより、この町に越してきてまだ少ししか経ってないから

  スーパーとか公共施設とかの場所を教えてくれたらありがたいんだけど」

少年「よっしゃwww承ったぜwwwwつっても一時間程度で終わるだろうけどなwwwww」

少女「いくらなんでもそんなことはないでしょ」

・・・

少女「……」

少年「な? 言った通りだったろ?wwwww」

少女「驚いたわ。まさか、三十分でもと居た場所に戻ってくるなんて」

少年「図書館と本屋くらいしか娯楽施設がないからなここはwwwww」

少女「いろいろ不便しそうね、やんなっちゃう」

少年「少女ちゃんが前に住んでたとこって、ここよりマシだったのか?」

少女「××市。大して差はないけど、市街地まで行けばもう少しだけ華やかだったわ」

少年「うはwww市民っすかwwwwこりゃまたえらいとこから来なすってwwww」

少女「だから大して差はないってば」


816 :6/12:2010/02/19(金) 21:11:12 ID:VU7cJfhW
少女「でも、海が近いのはいいよね。たとえ田舎でも」

少年「田舎は余計だけどなwww少女ちゃんは海好きなのか?」

少女「大好き! お父さんが漁師してるからかな、泳ぎも得意だし」

少年「そうかwww俺も海好きだぜwwwww」

少女「まぁ、こんなとこで一人で海見てるくらいだしね」

少年「そうだなwwww海見てると寂しいのとかが紛れてすごく和やかな気分になるwwwwwwなんでかな」

少女「それ、分かる。私もお母さんに会いたい時とか、海を見てたら会えるような気がするもの」

少年「フィーリングばっちりっすねwwwwもういっそ付き合っちゃわね?wwwww」

少女「馬鹿は休み休み言いなさい」

少年「うはwww怒られたwwwww」


818 :7/12:2010/02/19(金) 21:12:21 ID:VU7cJfhW
少女「けどさ、少年くんって、いい人だね。初対面なのに親切にしてくれて、笑わせようとしてくれるし」

少年「そりゃあwwwwこんなにふざけてても紳士っすからwwww」

少女「こんな胡散臭げな紳士はいないと思うわ」


少年「まぁ本当は、話しかけてもらうことすら珍しいからなwwwwww」

少女「ふーん……苦労してるのね」

少年「でも寂しくはないんだぜ?wwwww俺には優しい父ちゃんと美人な母ちゃんがいるからなwwwww」

少女「……マザコン?」

少年「ノーノーwwwwwせめて家族愛と言ってくれよwwwwwww」

少女「冗談だよ。でも、羨ましいな、それ」

少年「少女ちゃんも近いうちに母ちゃんに会えるんだろ? だったらそんなに寂しがることねーじゃんwww」

少女「そうだけどさ、なんか上手くいくのかなって思っちゃって」

少年「ダイジョブダイジョブwwwwきっと少女ちゃんの母ちゃんも美人で優しくてスタイル抜群だぜ!wwwww」

少女「そうかな……」クスッ

少年「そうそうwwwwwwww」


819 :8/12:2010/02/19(金) 21:13:30 ID:VU7cJfhW
少女「ねぇ、少年くんのお父さんとお母さんって、どんな人?」

少年「えっ……な、なんでそんなこと聞くの?」

少女「いや……私のお母さんに対して何か参考にならないかと思って。もしかして、あんまり話したくない?」

少年「うーん、うちはかなり特殊だから参考にならないだろうなぁwwwww」

少女「なんで?」

少年「えーっと……実はさ、うち、母ちゃんが外国人なんだよねwwww」

少女「そうなの!? てことは君、ハーフなんだ?」

少年「まぁ、そうなるかなwwwwwwww」

少女「へぇー、人は見かけによらないって本当だね」

少年「しかも、うちの父ちゃんが借金苦で自殺しそうな時に、母ちゃんに助けられたのが馴れ初めらしいwwww」

少女「すっごーい、なんかロマンチック」

少年「そういう訳だから、俺の口から親がどうこうっつうのはあんまり言えないんだ。ごめんなwwwww」

少女「ううん、分かった。それじゃあ話せないのも仕方ないね。私の方こそ根掘り葉掘り聞いてごめん」

少年(ほっ……)


820 :9/12:2010/02/19(金) 21:14:39 ID:VU7cJfhW
少年「俺からアドバイスは出来ないけどさwwwwきっとそんなにビビんなくてもいいと思うぜwwwwwww」

少女「そんなものかなぁ……」

少年「そうだぜwwwだって、子供が可愛くない親なんて絶対にいないんだからwwwwwww」

少女「……そうだよね、今まで一緒に暮らせなかったのも、何か理由があったからなんだよね」

少年「そうそうwwwwだから、母ちゃんに会っても泣かないで、胸はって甘えなきゃ駄目なんだぜwwwww」

少女「うん、ありがとう。でも、小学校高学年にもなって甘えるのはおかしくない?」

少年「そんなことないしwwwwテレビとかでも、数年ぶりの再会とかでは泣いて抱き合うじゃんwwww」

少女「それとは違うよぉ」クスクス

少年「同じ同じwwwwwうははははwwww」 


822 :10/12:2010/02/19(金) 22:06:30 ID:VU7cJfhW
少女「はぁ……なんか、初対面なのにいろいろ喋っちゃったね」

少年「俺もwwww妹でも出来たような気がしてたwwwww」

少女「うん。少年くんは頼りになるお兄ちゃんだったよ」

少年「うはwwww照れるなコンチクショウwwwwww」

少女「……あ、そうだ。今何時か分かる?」

少年「んあ? えーと、五時前くらいじゃね?wwwww」

少女「じゃあ、そろそろお家に帰ろっかな。お母さんをもてなすために料理作らなきゃいけないし」

少年「買い物とかは?」

少女「君がスーパーの場所とか教えてくれたから、何か買って帰るよ」

少年「そっか。じゃあまた明日、学校で見かけたら声かけてくれよwwwww」

少女「ありがとう、少年くんも私を見かけたら声かけてね」

少年「おうよwwwwそれじゃあ母ちゃんと仲良くしろよwwww可愛いマイシスターwwwwww」

少女「何それ、私はあなたの妹になった覚えはありませんからねーだ。べー!」

少年「うはは、じゃーなー!!」

少女「ばいばーい」


823 :11/12:2010/02/19(金) 22:07:31 ID:VU7cJfhW
・・・

少年「……うっし、帰ったな。まさかこんな人気のないとこに人がくるとは思わんかったwwwwww」

少年「今日は父ちゃんと母ちゃんにいっぱい話すことが出来たなwwww楽しみだwwwwww」

少年「ほんじゃあ俺も帰ろっかな」

少年「人影なーし、船影なーし、空撮飛行機なーし」

少年「セットポジションオッケー、足場オッケー。それでは俺、いきまーすwwwwww」

ふわり

少年「空飛ぶの便利だかんなー、飛ぶなと言われても我慢ができんwwww」

少年「少女ちゃんには飛ぶとこ見せてやっても良かったかなwwwwうははははwwwwww」

少年「そんじゃあ、自宅まで空中遊泳を楽しみますかねー」

ふわふわ


824 :12/12:2010/02/19(金) 22:08:32 ID:VU7cJfhW




その後、帰宅した少年をニヤケ顔の父と美しい母が出迎えたり

少女が母親と驚愕の対面を果たしたり

仲良くなった二人が恋仲になったり、その両親に多大な驚きをもたらしたりしたようですが…

その全ては、あの青い空の下で飛ぶ

人魚と、その子供たちに

いつまでも伝えられていることでしょう



空中人魚完結編〜あの空の下で〜

おしまい




転載元
新ジャンル「空中人魚」
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1232358971/
【新ジャンル】「台詞系SS総合スレ」( ^ω^)
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1250934033/
 

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