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1、妹「野球的な何か」
2、妹「野球しようよ」
3、妹「野球の話だよ」
SS作者HP
涙のピースサイン
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 19:43:12.86 ID:tjykEtRh0
俺「あん? 何の話だって?」
妹「今回は野球の話だって」
俺「だから何が?」
妹「タイトルよ」
俺「タイトルか」
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 19:45:45.61 ID:tjykEtRh0
妹「引退だって」
俺「誰が?」
妹「赤星」
俺「ふーん……赤星ね」
俺「え?」
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 19:49:17.44 ID:tjykEtRh0
俺「野球が上手い人の代名詞と言えば」
妹「4番エース」
俺「そりゃ昔の話だな」
妹「じゃあ4番サード」
俺「誰の漫画だっけそれ」
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 19:54:04.33 ID:tjykEtRh0
俺「プロと大学生が試合したらしい」
妹「引き分けだったね」
俺「アレは引き分けというよりむしろ痛み分けだったな」
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:01:55.53 ID:tjykEtRh0
俺「そういえば、プロVS大学生の試合で解説が怒ってたな’田中! 出て来いよ!’って」
妹「星野さん?」
俺「うん」
妹「でもWBC……」
俺「それは言っちゃダメ」
妹「なんで?」
俺「ダメったらダメ」
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:05:08.73 ID:tjykEtRh0
俺「村田に引き続き内川もか……」
妹「何が?」
俺「1年契約」
妹「来期にFAするため?」
俺「首位打者とホームラン王が抜けたら一体どうなるんだ……」
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:13:19.30 ID:tjykEtRh0
妹「21と言えば?」
俺「江夏の21球」
妹「福盛の」
俺「もう許してやれよ」
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:15:11.86 ID:tjykEtRh0
俺「野球部だった奴にしかわからない事?」
妹「う〜ん、色々あると思うけど」
俺「アレだな」
妹「うん?」
俺「’ユニフォームで一番汚れない箇所は内もも’ってのはどうだ?」
妹「あ〜……、そうかも」
俺「ここだけ汚れてないもんな」
妹「お兄ちゃん!」
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:18:48.46 ID:tjykEtRh0
俺「かっこいいと思うプレー?」
妹「うん」
俺「外野のクッションボールを素手で捕球して二塁で刺す、とか」
妹「それよりフェンス直撃の打球を捕球できると見せかけて進塁止めるプレーの方が」
俺「あー」
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:22:03.28 ID:tjykEtRh0
俺「それ新庄がよくやってたな」
妹「あたしもこの前やってみたの」
俺「おぉ、どうだった?」
妹「上手くいったんだけど……」
俺「?」
妹「ランナー刺せなかった……」
俺「仕方ない、あれはあいつにしかできん」
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:28:31.63 ID:XBeZKqetO
もしかして野球的な何かの人?
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:55:12.70 ID:tjykEtRh0
>>19
そです。
規制解除来てたからスレ立ててみますた
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:45:28.70 ID:tjykEtRh0
俺「野村夫妻が訪れる100均ショップがあるらしい」
妹「ちょっと最近テレビ出すぎじゃない?」
俺「連日引っ張りダコだな」
妹「そうだね、三タコ四タコだね」
俺「それはなんか違う気が……」
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:48:54.64 ID:tjykEtRh0
俺「監督に必要なのは判断力と決断力らしい」
姉「さっきテレビで聞いたわよそれ」
俺「俺に足りないのは……」
姉「ルックスじゃない?」
俺「ほっとけ」
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:50:46.03 ID:tjykEtRh0
姉「このダルなんとかって人、すごいわね」
俺「あぁ、日本を代表するエースだな」
姉「年俸三億円だって」
俺「らしいな」
姉「あんたと同い年なのにね」
俺「うるさいよ」
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:52:48.44 ID:tjykEtRh0
俺「だいたい、ダルビッシュの事何か知ってるのかよ、ねーちゃん」
姉「失礼ね、あたしだってそれくらい知ってるわよ」
俺「あん?」
姉「サエコの旦那さんでしょ?」
俺「そこか……」
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:58:24.53 ID:tjykEtRh0
俺「日本シリーズで魅せたあの投球術とか」
姉「知らない」
俺「WBC決勝のあのウイニングショットとか」
姉「わかんない」
俺「さすがねーちゃんというか何と言うか……」
姉「あたし野球の事なんかわかんないもん」
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:01:03.43 ID:tjykEtRh0
俺「中学の時ダルビッシュと対戦したけど、その時から別格だったよ。バットに掠りもしなかった」
姉「ふーん」
俺「ふーんって」
姉「興味ない」
俺「あ、そ」
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:02:27.77 ID:tjykEtRh0
姉「でも、あたしにもあんな稼いでくれる旦那さんが居ればとは思うけどね」
俺「そういえば」
姉「?」
俺「ねーちゃんの彼氏さんって、何やってる人だっけ? 俺会った事ないんだけどさ」
姉「言いたくない」
俺「あん?」
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:06:20.45 ID:tjykEtRh0
俺「未成年なのに飲酒して契約解消されそうな選手が居るらしい」
妹「未成年なのに喫煙して謹慎くらった選手も居るよね」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:09:08.15 ID:tjykEtRh0
俺「日ハムの藤井がFAで巨人入りするらしい」
妹「巨人キラーが巨人入りかぁ」
俺「今年のオフは話題がいっぱいだな、元オリックス・古木のプロレス参戦とか」
妹「ある意味シーズンより面白いよね」
俺「シーズンオフの正しい楽しみ方だよ」
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:13:31.34 ID:tjykEtRh0
俺「休日だしキャッチボールでもするか」
妹「うん」
俺「カーブの様な愚痴〜♪」
妹「消える魔球の様な優しさ〜♪」
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:18:13.36 ID:tjykEtRh0
俺「ちょっと身体の開きが早いな」
妹「開き?」
俺「左肩でタメを作る感じで投げてみろ、サイドハンドなら尚更だ」
妹「こう?」
俺「違う違う、もっとこう……」
妹「こう?」
俺「そうそう、そんな感じで」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:21:34.16 ID:tjykEtRh0
姉「ねぇ、母さん」
母「なあに?」
姉「いつも思うけどあの二人くっつきすぎじゃない? スキンシップにも程ってもんが」
母「あらあら、うふふ」
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:24:16.69 ID:tjykEtRh0
俺「ところで妹よ」
妹「な〜に? お兄ちゃん」
俺「ねーちゃんの彼氏について何か知らんか?」
妹「お姉ちゃんの彼氏さん?」
俺「うん」
妹「あぁ、どこだかの球団の選手でしょ?」
俺「あん?」
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:26:06.92 ID:tjykEtRh0
妹「どこって言ってたかな……でもたぶん関東のどこかだと思う」
俺「え? マジな話?」
妹「そうだよ」
俺「知らなかった……」
妹「そりゃそうだよ、誰にも言っちゃだめって……あ」
俺「あん?」
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:29:33.36 ID:cDAbWdxpO
ダルビッシュは高校生の頃は変化球でかわしすぎかなと思ってたけど
なんか凄くなっちゃった
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:30:11.53 ID:tjykEtRh0
妹「言っちゃダメだよ?」
俺「言わないって」
妹「あたしから聞いたって言わないでね」
俺「言わない、言わないから」
妹「絶対、絶対だよ! もしお姉ちゃんにバレたら……」
姉「バレたらどうなるって?」
妹「あたしがお兄ちゃんに、お姉ちゃんの彼氏さんがプロ野球選手だよ、って言った事がお姉ちゃんにバレたらお兄ちゃんのせいなんだからね!」
姉「へー」
俺「……」
妹「……」
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:38:45.85 ID:tjykEtRh0
妹「ご……、ごめんね。お姉ちゃん」
姉「別にいいわよ、それよりご飯よ」
妹「え? あ、うん……」
姉「今日はお父さんお得意のオムライスだってさ」
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:46:05.93 ID:tjykEtRh0
妹「ねぇ」ヒソヒソ
俺「なんだよ」ヒソヒソ
妹「お姉ちゃん、あれ絶対怒ってるよね」ヒソヒソ
俺「そうか?」ヒソヒソ
妹「そうだよ」ヒソヒソ
俺「ねーちゃんが怒ったらもっと怖いよ」ヒソヒソ
妹「だからって普段どおりに接せられる方がもっと怖いよ」ヒソヒソ
俺「たしかに……」ヒソヒソ
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:48:04.98 ID:tjykEtRh0
父「はっはっは! 今日はとーさんが腕にヨリをかけて作ったオムライスだ! 魂で食せ、少年少女たちよ」
姉「いただきまーす」
妹「……いただきまーす」
俺「……いただきまーす」
父「あ? あれ? なんか暗くない?」
姉「そう? 普通よ」
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:53:05.38 ID:tjykEtRh0
姉「……」
妹「……」
俺「……」モグモグ
父「……うぅ」
50 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/09(水) 21:55:33.71 ID:TrC2bC/Y0
父www
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:55:56.42 ID:tjykEtRh0
父「とーさんは、とーさんはなぁ……」
父「こんな一昔前のパリーグの外野席みたいな食卓は嫌だぁあああ!」
母「あらあら、うふふ」
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:02:24.94 ID:tjykEtRh0
俺「……」
妹「……」
姉「ごちそうさま」
俺「!」
妹「ね、ねぇ。お姉ちゃん」
姉「なあに?」
妹「ちょ、ちょっといいかな?」
姉「ごめん、午後からちょっと出かけなきゃいけないの。後でもいい?」
妹「あ……、うん……」
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:12:53.67 ID:tjykEtRh0
父「キミタチ、お姉ちゃんと何かあったのか?」
俺「それが、何もなかったんだよ」
父「あん?」
俺「だから、何もなかったんだって」
父「ほほう?」
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:18:32.43 ID:tjykEtRh0
俺「カクカクシカシカ」
父「なるほどなぁ」
俺「そうなんだよ、ねーちゃんの彼氏さんがまさかプロ野球選手だったとは」
父「とーさんは知ってたよ」
俺「え?」
父「この間、挨拶に来てたからな」
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:20:18.56 ID:tjykEtRh0
俺「いや、ちょっと待て。初耳だぞそれ」
父「あー、すまんすまん。お前と妹は野球部の練習で居なかったからな。後で言おうとしてたんだがすっかり忘れてたよ」
俺「忘れてたっておい」
父「はっはっは、すまんすまん」
俺「いや、別にいいんだけどさ」
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:22:03.01 ID:tjykEtRh0
俺「に、しても」
妹「結婚かぁ」
俺「あのねーちゃんがなぁ……」
妹「野球全然知らないお姉ちゃんが……」
俺「世の中わからんなぁ……」
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:30:05.37 ID:tjykEtRh0
俺「どこで式挙げるんだろうな」
妹「野球場じゃない?」
俺「東京ドームとか?」
妹「西武ドームかも」
俺「すげぇな……」
73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:35:00.95 ID:tjykEtRh0
姉「ただいま〜」
妹「あ、お姉ちゃんおかえり!」
姉「ただいま」
妹「お姉ちゃん結婚おめでとう!」
姉「あ、聞いたの?」
妹「うん! お姉ちゃん何も言ってくれないから、聞いた時すごくびっくりしちゃった! でも嬉しい!」
姉「うん、ありがとね」
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:36:53.43 ID:tjykEtRh0
俺「ねーちゃん、おめでと」
姉「あんた、後でちょっと部屋きなさい」
俺「あん?」
姉「いいから、来なさい」
俺「なにこの妹との対応の温度差……」
76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:39:33.69 ID:tjykEtRh0
俺「で、何なのさ?」
姉「あんた、野球辞めた時どうだった?」
俺「あん?」
姉「いいから」
俺「ん〜、なんかカラッポになった感じかな。俺の場合怪我で野球続けられなくなったけど、やっぱり急には切り替えられなかったよ。今思えば恥ずかしい事も色々としてたと思うし、まわりに迷惑もかけたと思うよ」
姉「そう……」
77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:40:52.71 ID:AZZCpjg10
これって結構実話を基にしちゃったりしてる?
82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:48:37.60 ID:tjykEtRh0
>>77
よかったら
妹「野球的な何か」
妹「野球しようよ」
を読んでくれ、一応それの続きなんだ。
たぶんググったら出てくると思う。
怪我したのは実話です。
85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:50:59.07 ID:tjykEtRh0
姉「確かに、あんたから野球取ったら何も残らないもんね」
俺「実際に何も残らなかったからな、本当に。大学に行ってもただ単にダラダラと、空虚な時間を過ごすだけだったよ」
姉「笑えるわね」
俺「今だったら笑い話にできるけどな」
姉「ふーん」
俺「ただ、ちょっと時間は必要だったよ」
姉「時間、ね」
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:58:32.42 ID:tjykEtRh0
俺「ま、今は何の因果か野球部の監督やらせてもらってるけどさ」
姉「良かったじゃない、野球にまた戻ってこれて」
俺「だなぁ。たまたま野球観戦してて一緒に喋ってたおじさんがまさか理事長だなんて、あだち充の漫画でも中々ないパターンだもんな」
姉「ちょっとしたミラクルよね、それ」
俺「たまたま、運が良かっただけだよ。それでも」
姉「?」
俺「俺ってやっぱり野球以外何も無いんだなって思った」
姉「何よそれ」
93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:03:50.05 ID:tjykEtRh0
俺「たまにな、言うんだよ。部員に’どうして野球やってるのか?’って」
俺「ある奴は野球が好きだからとか、ある奴はモテる為だとか、プロを目指してるヤツだってうちの部にはいる」
俺「思うに理由なんかどうだっていいんだよな、野球さえ楽しんでくれれば。俺はそのちょっとした手伝いをしてるだけなんだって」
俺「でもそれが面白くて仕方がない、ねーちゃんは仕事してる時は別の自分で居ろって言ったけどさ。俺には出来そうにないよ」
姉「あんたって本当、バカね。この野球バカ」
俺「褒め言葉だよねそれ」
姉「もちろん貶してるわよ」
俺「笑顔で言われちゃ何も言い返せないな……」
95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:05:56.68 ID:tjykEtRh0
姉「野球バカ……ね」
俺「ねーちゃんの彼氏さんも野球やってるんだろ?」
姉「うん……」
俺「だったら同じさ、その人も野球バカだろ」
96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:07:32.77 ID:tjykEtRh0
姉「別に隠してたわけじゃないんだけどさ」
俺「うん?」
姉「その……」
俺「その?」
姉「なんかね、今年でチームから解雇されそうなの」
俺「あん?」
97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:10:06.18 ID:tjykEtRh0
姉「今日その話されて……あたしどうしていいかわからなくて」
俺「あー……」
姉「誰にも相談できなくて、あんたしか居ないのよ。頼る人が……」
俺「でも結婚するって」
姉「仕方ないじゃない、そんな話知らなかったんだもの。まさかクビになるなんて」
98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:14:47.51 ID:tjykEtRh0
姉「ねぇどうしよう、あたしどうしたらいいの?」
俺「いや、落ち着いて。解雇ってあれだろ? 再就職先とかは球団が用意してくれるんじゃないの?」
姉「球団職員は大卒じゃないと厳しいみたい……、トライアウトは一応受けるけど厳しいって話だし……」
俺「八方塞りの四面楚歌か……」
姉「嫌だよ……新婚なのに旦那が無職とか……」
フラッ
俺「ねーちゃん、しっかり」
姉「ごめん、ちょっと休む……」
100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:20:41.32 ID:tjykEtRh0
俺「しかし」
俺「考えてみれば当たり前の事だな」
俺「選手登録の人数は限られてるんだから、入る選手が居れば誰かが抜けなきゃいけない」
俺「当事者にとっては残酷な話だけどな……」
101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:23:51.67 ID:tjykEtRh0
父「プロ野球選手の再就職は厳しいぞ」
俺「どこで聞き耳立ててたこの変態親父」
父「それは言わないお約束」
102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:25:37.16 ID:tjykEtRh0
俺「で、プロ野球選手から再就職を果たした父上は何か知恵を貸してくれるんだろうな」
父「無論、貸さん」
俺「その言葉を待ってた──。って、……え?」
父「とーさんこの話題に関してはノータッチを決め込んでる」
俺「なんでだよ、父親だろ? こんな時くらい父親らしくするのがとーさんなんじゃないのか?」
父「お前な、お姉ちゃんはとーさんじゃなくてお前を頼ったんだぞ? この意味わかるな?」
俺「……」
父「こんな時くらいしっかり役に立ってみせろ、長男だろう?」
103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:30:13.56 ID:tjykEtRh0
俺「って、言ってもな……」
俺「この件に関して俺に出来る事なんかあるのか……」
俺「ダルビッシュのスライダーを打つより難しいかもしれん……」
104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:31:41.11 ID:tjykEtRh0
部員「何がスライダーなんですか?」
俺「あ、いや。何でもないよ」
部員「午前中のメニュー終わりました」
俺「そうか、それじゃ軽くダウンしてから昼食な」
部員「はい!」
105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:35:04.93 ID:tjykEtRh0
俺「よう」
少年「……っす」
俺「調子はどうだ?」
少年「……べつに」
俺「そうか、絶好調だな。ところで変な事聞いて良いか?」
少年「……何スか?」
俺「お前、野球好きか?」
少年「……もちろんっす」
俺「プロになりたいんだよな」
少年「……まぁ」
俺「じゃあプロ野球が無くなったら、それでも野球続けるか?」
少年「?」
俺「ごめん、変な事聞いてるよな。あー、いい。忘れてくれ」
106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:35:25.78 ID:XBeZKqetO
そういえばこの兄は監督以外の仕事してるのか?
前回クビになってなかったっけ
107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:38:51.82 ID:tjykEtRh0
>>106
描写になかったけど大卒で教員免許を持ってるので、
社会科教師として採用されてます
108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:41:41.68 ID:tjykEtRh0
少年「……何でそんな事聞くかわからないけど」
俺「まったくだ」
少年「長いことあいつと一緒に居るあんたならわかりそうなのにな」
109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:44:57.27 ID:tjykEtRh0
俺「妹か」
少年「あいつは、あいつの野球を楽しんでるだけ。舞台は関係なく、な」
俺「野球が好きだから、か」
少年「……少なくとも、言える事は」
俺「?」
少年「……僕もあいつもあんたも、ただの野球バカって事だろ」
俺「ははっ、言えてるな」
110 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/09(水) 23:45:10.45 ID:z5iKZHYQ0
この少年は妹の彼氏候補だった少年か
113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:52:36.09 ID:tjykEtRh0
少年「……それより、いいのかよ」
俺「あん?」
少年「最近打撃投手なんかやってるけどさ、……あんた腰悪いんじゃなかったっけ?」
俺「何? 心配してくれてんの?」
少年「べつに……」
114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:55:47.54 ID:tjykEtRh0
俺「最近リハビリ行ってるからな、腕の良い医者がいるんだよ」
少年「医者ね……」
俺「完治はしないんだけどさ、たまに打撃投手やるくらいなら全然いけるよ」
少年「……へぇ」
俺「お前らくらいなら抑える自信あるよー?」
少年「……ふん」
115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:58:22.97 ID:tjykEtRh0
先生「あ、俺くん。あの……お弁当作ってきたんだけど……、一緒に食べない?」
俺「おう、ありがとな」
先生「うん……」
俺「それじゃ行くわ」
少年「……さっさと行けよ、この色ボケ野郎」
俺「ひどくない? 監督だよ俺?」
少年「……関係ないね」
116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:01:40.46 ID:z8xMv6HU0
先生「さっき何話してたの?」
俺「少年とか?」
先生「彼があんなに長いこと喋ってるのって珍しいから、気になっちゃって」
俺「どこぞの宇宙人か」
先生「?」
俺「あ、いや。こっちの話」
117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:09:23.49 ID:z8xMv6HU0
先生「んー、ちょっと冷えてきたね。最近」
俺「そうだな、秋も随分深まってきたな。でも良い秋だったよ、収穫も色々とあったしな」
先生「この前の試合、わたし感動しちゃった」
俺「そうか?」
先生「うん……みんな、ほんとに一生懸命になって。とっても楽しそうだった」
俺「うん、俺もそう思うよ。楽しみながらのびのびとやってくれるのが一番良い、高校野球は教育の一環だからな」
先生「教育の一環、ね」
俺「教育は共に育つと書いて「きょういく」なんだってさ。生徒も俺も日々成長だよ、実際には子供達に教えられる事の方が多いけどな」
先生「なんかだんだん教師っぽくなってきたね、俺くん」
俺「一応これでも社会科教師なんですけど……」
118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:17:57.55 ID:z8xMv6HU0
先生「すごいな……俺くん。あたしもちょっとは成長してるのかな……」
俺「俺からしたら委員長のほうが凄く見えるよ」
先生「そ、そうかな?」
俺「そうだよ、ちゃんと先生になるって夢を叶えてさ。それを継続してるだろ? それって本当にすごい事だと思うんだよな」
先生「う〜ん……そうなのかな」
俺「そうだよ。だから」
先生「うん?」
俺「これからも一緒に頑張ろうな、よろしくたのむ」
先生「お、俺くん……こんなとこで……」
119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:22:34.94 ID:z8xMv6HU0
部員C「隊長!」
部員D「どうした部員C隊員」
部員C「監督と先生が熱い抱擁を交わしておりますです」
部員D「くぁー! なんたる破廉恥! けしからん! じつにけしからん!」
部員C「涙で前が見えません!」
部員D「寝るな部員C隊員! 寝たら死ぬぞ!」
部員C「もうだめです、もちません……」
部員D「応答せよ部員C隊員! 部員C隊員ッー!」
部員C「……」
部員D「キミの死は無駄にはしない……ッ。サンタ・マリアの名に誓い、全ての不義に鉄槌をッ!」
121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:24:41.41 ID:z8xMv6HU0
妹「ちょっと、何やってんのよ。アンタら」
部員D「何とは失礼な、これは神聖な儀式」
妹「覗きが趣味なの?」
部員D「違う、これは決して覗きなどという行為では……」
妹「あ? 警察ですか? 実は──」
部員D「さ、練習練習」
122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:31:48.73 ID:z8xMv6HU0
妹「お兄ちゃん、午後練始めるよ!」
俺「おう、もうそんな時間か」
妹「ほら、早く来て!」
俺「今行くよ」
124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:33:14.71 ID:z8xMv6HU0
妹「先生と何話してたの?」
俺「気になるか?」
妹「ライバルだからね」
俺「あん?」
妹「いや、こっちの話」
126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:44:34.54 ID:z8xMv6HU0
俺「なぁ、お前はさ」
妹「うん?」
俺「今、何で野球やってんだ?」
妹「あたし?」
俺「おう」
妹「さっき先生とそんな話してたの?」
俺「まぁな、それっぽい話だ」
妹「……お兄ちゃんには教えてあげないもん」
俺「何だそれ、意地悪せず教えてくれよ」
妹「ヤ」
127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:46:36.70 ID:z8xMv6HU0
俺「なぁ、頼むよ」
妹「ヤダったらヤダ」
俺「今日プリン買ってあげるから」
妹「う」
俺「しかも2個、これでどうだ」
妹「2個なら仕方ない」
128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:50:00.01 ID:z8xMv6HU0
妹「女だから公式戦には出場できないけどさ。それでも、野球の近くにいると、わかる気がするの」
俺「何だそれ、哲学的だなぁ」
妹「お兄ちゃんが居たからだよ、あたしが野球を好きになったのは」
俺「ほう」
妹「野球をやってるお兄ちゃんのそばに居たかった、できれば一緒にプレーしたかったけど……。お兄ちゃんがまた野球やってくれて、今はそれだけで嬉しい」
俺「そっか」
妹「うん……」
俺「ほんと、兄妹揃って野球バカだな」
妹「誰のせいだと思ってるのよ、ちゃんと責任とってよね」
俺「ははっ」
129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:54:31.98 ID:z8xMv6HU0
俺「さて」
俺「結局何も対策らしい対策を立てられず……」
俺「さて……」
姉「ただいま〜」
俺「どうする俺、どうする?!」
俺「つづく!」
姉「……あんた何1人で騒いでるの?」
俺「……帰ってたのならそう言えよ、恥ずかしいから……」
130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:57:25.07 ID:z8xMv6HU0
俺「あのさ、ねーちゃん」
姉「ん? 何?」
俺「あの話なんだけどさ」
姉「あの話?」
俺「怒らないで聞いてくれよ」
姉「怒らないから言ってみなさい?」
俺「はい」
姉「素直でよろしい」
131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:58:18.50 ID:z8xMv6HU0
俺「すまん、正直俺じゃ役に立てねぇ」
姉「いや、その話なんだけどね。実はあんたのお陰で何とかなりそうなのよ」
俺「あん?」
132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:03:26.72 ID:z8xMv6HU0
俺「どゆこと?」
姉「彼にね、あんたの話をしたの」
俺「俺の?」
姉「怪我して野球やめたけど、今は野球部の監督やってるって話」
俺「なんかそれだけだとすごく美談に聞こえるんですけど」
姉「ちゃんと自堕落な時期の話もしたから安心しなさい」
俺「どうしよう、幕張の土嚢みたいに全然安心できない」
133 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 01:04:46.38 ID:Lfv5c9ml0
嗚呼、野球したくなってきた・・・
バイクで事故って肩の神経やってから球投げて無いから投げれるか不安だけど(´・ω・`)
134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:11:09.80 ID:z8xMv6HU0
>>133
怪我持ちつらいよな、冬になると寒さで腰が痛くて仕方ない
言葉のキャッチボールならいくらでもしてやるぜw
137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:13:33.73 ID:z8xMv6HU0
姉「そしたら、前向きにガンバってみるって。指導者の道を進むって」
俺「指導者の道、か」
姉「なんか、元気出たみたい」
俺「そりゃ良かった」
姉「あんたに感謝してたよ、いつかちゃんとお礼させてくれってさ」
俺「いや、俺は別にそんな……」
姉「義兄の言う事は聞いときなさいって」
144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:39:23.21 ID:z8xMv6HU0
俺「ヘッドスライディングは危険だから禁止しろという声があるらしい」
妹「ふーん」
俺「って、そう言われてもなぁ。咄嗟に出ちまうもんな、アレは」
妹「そうだね」
148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:41:25.47 ID:z8xMv6HU0
俺「……」
妹「なによ」
俺「いや、べつに」
妹「怒らないから今思ってる事を正直に言ってよ」
俺「ヘッドスライディングした時、その、……胸とか大丈夫かなと」
妹「お兄ちゃん!」
151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:50:35.04 ID:z8xMv6HU0
妹「……見てみる?」
俺「あん?」
妹「胸」
俺「おいちょっと待て、俺はお前の裸なんぞに興味は無い。俺はお前のユニフォーム姿にだな」
妹「もう! お兄ちゃん!」
152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:52:29.36 ID:z8xMv6HU0
姉「ねぇねぇ」
俺「なんだよ」
姉「野球とソフトボールって何が違うの?」
俺「呼び方が違うよ」
姉「ふーん、なるほどねぇ」
俺「(納得しちゃったよこの人)」
153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:53:14.94 ID:z8xMv6HU0
姉「ねぇねぇ」
俺「なんだよ」
姉「それじゃ、野球と三角ベースって何が違うの?」
俺「三角ベースにはロマンがあるんだよ」
姉「ロマンねぇ……なるほどねぇ……」
俺「さては探偵ナイトスクープの録画をみたな……」
154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:54:37.90 ID:z8xMv6HU0
TV『この前初めてホームランを打ったの』
俺「買ったは良いが、一人じゃ使えないんだなコレ」
妹「どうしたの?」
俺「おぉ妹よ、ちょうど良い所に。そのジップを引いてくれ、一人じゃヒットできない」
シュゴー カン
シュゴー カン
姉「あたしが言うのも何だけど、シュールな光景ね」
母「あらあらうふふ」
174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 14:26:31.97 ID:z8xMv6HU0
俺「引退発表から一夜明けてみたけれど」
妹「まだ実感が沸かないね」
俺「53番の背中はずっと忘れません」
妹「9年間お疲れ様でした」
俺「でした」
175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 14:50:55.33 ID:z8xMv6HU0
俺「とあるバッティングセンターに180キロのストレートを打ち返す小学生が出没するらしい」
妹「この前テレビで見たよ」
俺「ちなみにそこのバッティングセンターだけどな」
妹「うん?」
俺「今220キロくらい出るらしい」
妹「クルーンのも目が回りそうな速さね」
俺「クルーンだけにクルクルってか?」
妹「……」
176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 15:06:27.49 ID:z8xMv6HU0
俺「最近、科学的な練習方法を導入する動きがあるらしい」
妹「なにそれ」
俺「なんでも怪我をしないための安全かつ効果的な指導方法らしいが、たしかEBBとかって言ってたか」
妹「怪我をしない為、ね」
177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 15:13:32.02 ID:z8xMv6HU0
俺「お前、ゴロが飛んできたらどうやってさばく?」
妹「追いつける打球なら正面に回り込むわね」
俺「まぁそれが教科書通りだわな」
妹「野球はじめた時最初に教わるよね。キャッチボールは相手の胸に、ゴロは右足と左足とグラブの三角形を意識して正面で処理」
俺「それがEBBでは違うらしい、ゴロの打球は全部逆シングルで処理するんだと」
妹「なんでわざわざそんな難しい事を」
俺「正面に回りこんで胸に打球が当たって心臓が止まった事例が報告されてるらしい」
妹「?」
俺「ようするに危ないから辞めなさいって事」
178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 15:33:46.18 ID:z8xMv6HU0
俺「とにかく怪我を無くして安全に野球するための指導方法らしい」
妹「何かヘンな話」
俺「ま、指導の方法論としては面白かったよ。まだ新しい方法だし浸透するかしないかはこれからって話だったし」
妹「ふ〜ん……」
俺「?」
妹「あたし、お兄ちゃんの野球が好きだよ」
俺「そう言ってもらえると指導者冥利に尽きるよ」
180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 15:49:08.54 ID:z8xMv6HU0
妹「でもそれが定着したら緒方や赤星みたいな選手は出てこなくなるかもね 」
俺「俺が敢えて伏せていたワードを軽々と……」
妹「面白くないよ、そんなの」
俺「まぁな……。何が面白いかは、見てる人に任せるよ」
181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 15:53:37.73 ID:z8xMv6HU0
俺「例えばキャッチボールの後にどうしてトスバッティングをするのか、お前わかるか?」
妹「う〜ん……、練習の最初の方だから目を慣らすため?」
俺「それも一つの答えだとは思う。だけど一番大事なのは生徒が自分で意味を考える事だと思うんだよな。こっちが一方的に何でもかんでも与えるんじゃなくてさ」
妹「たしかに、今やってる事は何に繋がるのか、練習の意味を考えながらやると楽しいよ」
俺「そっか」
妹「うん」
182 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 15:54:42.07 ID:zfNwN641O
プロはそれでもいいかもしれんが、子供の時やっぱり基本が大事だよ
ボールへの恐怖心を無くすためにもね
サード怖い
183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 15:58:07.07 ID:z8xMv6HU0
>>182
そこらへん微妙だと思った。
まぁでもEBBに関して言えば怪我しないようにしないようにっていうよりむしろケアの方が大事なんじゃない?
ってのが感想
参考までに
ttp://www.youtube.com/watch?v=Snh4sHCnPdk
184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 16:00:16.45 ID:z8xMv6HU0
俺「最近思うんだけどな、指導者ってのは結局飾りみたいなもんなんだよ。野球をやるのは選手で、じゃあ指導者は何なんだって言ったらそれをお手伝いするだけなんだと思うんだよな」
妹「お手伝いさんね」
俺「少なくとも俺は皆が楽しくのびのびと野球をやってくれればそれで良いと思う、だったら俺にできる事は何だろうって考えたとき、そういう環境を作ってあげる事かもなって思ったんだ」
妹「たしかに、お兄ちゃん来てから部の空気変わったもん。前はみんなやる気なくて、部にいくのちょっとヤだった」
俺「生徒のやる気を引き出すとか、可能性を引き出すとか、それが指導者に出来る事なんだと思うよ。その方法は人によって違うと思うけども」
妹「まずやってみろが口癖だもんね」
俺「そうか?」
185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 16:02:36.62 ID:z8xMv6HU0
妹「そうだよ、中学の時の監督は’それやっちゃだめだ’とか、’どうしてこうしないんだ’とかばっかりだったけど」
妹「お兄ちゃんは’こうした方がいいんじゃないか?’とか’お前はどうしたい?’とか’じゃあやってみよう’っていう教え方するもん」
妹「お兄ちゃん来てから部員Aとか少年とか、何か変わったよ。良くなったもん」
俺「なんでもやってみる前から無理とか不可能とか思うのを辞めて欲しかったんだが」
妹「うちの野球部、バカばっかりだから余計に効果覿面だったのかも」
俺「それさり気なく酷いこと言ってるよ?」
妹「そう?」
俺「そうだよ」
186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 16:05:52.41 ID:z8xMv6HU0
俺「まぁEBBの指導方法そのものは面白かったよ、野球はじめたての子にヒジの使い方を教えるには丁度良さそうだったし」
妹「へぇ」
俺「試行錯誤だよ、チャレンジは尊い事だ」
妹「うん」
俺「じゃ、そろそろ練習いくか」
妹「はーい」
189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 17:07:47.97 ID:z8xMv6HU0
俺「あああああああああああああああ……また負けた」
妹「ど、どうしたの?」
俺「冥球島」
妹「いつのパワプロだっけそれ」
190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 17:13:15.29 ID:z8xMv6HU0
俺「野球ゲームなのに野球をしない野球ゲームがあるらしい」
妹「最近新作出たらしいね」
俺「戦争編200週いった時は泣いたよ」
妹「何の涙よ」
俺「こればかりはクリアした人にしかわからんのだよ」
妹「あ、そ」
191 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 17:16:15.32 ID:6W3sVsYM0
>>190
お前とはいい酒がのめそうだ
192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 17:23:02.61 ID:z8xMv6HU0
>>191
パワポケをパワプロのノリで遊んでたら普通に人が死んだりしてトラウマだった中学生の頃
193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 17:24:17.98 ID:z8xMv6HU0
俺「好きな野球作品?」
妹「うん」
俺「不屈闘志が出てくるアレ……何て言ったかな」
妹「逆境ナイン?」
俺「あぁ、そうそう」
194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:07:05.94 ID:z8xMv6HU0
俺「あ」
妹「?」
俺「すまん、病院の予約入れてたの忘れてた。先に学校行っててくれないか? 遅れていくからさ」
妹「わかった、皆に伝えとくね」
俺「あぁ、よろしく頼む」
195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:10:15.80 ID:z8xMv6HU0
俺「というわけで近所の病院に来てみました」
医者「やあ、久しぶりだね」
俺「おう、そうだな」
医者「具合はどうだい?」
俺「それをまさに今見てもらいにきてんだが」
196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:14:11.43 ID:z8xMv6HU0
医者「うん。一年前と比べると随分よくなったね」
俺「なんか最近ウソみたいに腰が軽いよ」
医者「だからリハビリにはちゃんと来いってあれほど言っただろ?」
俺「う……」
医者「全く、昔から君は自分の事となると無頓着というか。それにもう自分一人の身体じゃないんだろ?」
俺「ばか言うな。……というか、まだ……その、なんだ。……何もしとらん」
医者「そうなのか? 君は奥手というかヘタレというか、もっと積極的にいったらどうだ? 女は案外攻める男に弱いんだぞ?」
俺「アンタには俺がそんな野獣に見えるのか? 俺には俺のぺースってもんがだな」
医者「私の胸を見て鼻血をたらしていた子供が強がるなよ」
俺「うるさいよ」
医者「ふふ」
197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:16:28.13 ID:z8xMv6HU0
俺「ってかいつの話引っ張り出してるんだよ」
医者「懐かしいな、君ははまだ幼稚園だったかな?」
俺「……いくら家が近所同士だからって風呂に一緒に入れる親も親だ」
医者「君の両親は実に思慮深い人物だよ、私が尊敬する数少ない人間だ」
俺「そうかい、伝えとくよ」
医者「そうしておいてくれるとありがたい」
198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:19:48.03 ID:z8xMv6HU0
俺「で、確か完治しないんだったよなコレ」
医者「あぁ、でもまぁ激しい運動を控えさえすれば症状は治まる。夜の営み程度なら構わないと思うが」
俺「仮にも女なんだからそんなセリフをサラっと言うなよ」
医者「ふふ、そんな心配してくれるのはもう君だけになってしまったよ」
俺「あー、はいはい」
199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:23:55.48 ID:z8xMv6HU0
俺「最近どうなのよ、儲かってるの?」
医者「食べるのに困らない程度には」
俺「そりゃ結構な事ですね、センセ?」
医者「君と私の間柄だろ? 先生は辞めてくれよ」
俺「冗談冗談」
医者「君こそよく野球部の監督の話など受ける気になったな? 野球はもうコリゴリなんじゃなかったのか?」
俺「あー、そんな事も言ったっけ」
医者「夜中に泣きながら電話してきたのを覚えてるよ。全く、何事かと思った」
俺「あー、はいはい……。ありましたね、そんな事も……」
200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:25:43.40 ID:z8xMv6HU0
医者「小学校4年生まで寝ションベンしてて怒られてた事も覚えてるよ」
俺「俺のプライバシーはどこへいった……」
医者「ふふ」
俺「っかー。よく覚えてるな、そんな昔の事」
医者「記憶力には自信があるのでね」
俺「さいでっか」
201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:31:00.20 ID:z8xMv6HU0
俺「開業医って忙しそうなイメージだけど、そんな事ないのな」
医者「君とお茶を飲む時間くらいならある」
俺「長居しちゃ悪いし、そろそろ午後練の時間だから行くわ」
医者「そうか、またな」
俺「もう当分来ないよ」
医者「腰を舐めてるといかんぞ? 少しでも異変を感じたら相談に来い」
俺「もう大丈夫だって」
医者「くれぐれも、気をつけたまえ」
俺「へいへい、痛くなったら飛んできますよ。センセ?」
医者「その分だとすぐに再会できそうだな」
俺「なるべくそうならないように頑張りますよ」
202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:32:29.33 ID:z8xMv6HU0
妹「いくよー」
部員B「まずは直球20球っす」
妹「はーい」
シュ
バシン
部員B「ナイスボール!」
203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:35:21.28 ID:z8xMv6HU0
俺「すまん、遅れた」
部員「こんちゃーっす」
俺「おう、もう午後練始まってたか。すまんなキャプテン」
部員「いえ。それより腰、大丈夫なんですか?」
俺「はっは、軽い軽い。背中に羽が生えてるみたいだよ」
204 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 18:38:02.58 ID:H0KWRz9Z0
なんかフラグ立ちすぎて怖い
206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:01:23.84 ID:z8xMv6HU0
俺「よーし、今日は俺がバッティングピッチャーをやろう」
部員A「え?」
俺「なんだなんだ? そんなカオして、たまには良いだろう?」
部員A「で……でも監督、腰はいいんですか? 前やった時大変だったじゃないですか、急に痛みだして途中で救急車呼ぼうかって話になって……」
俺「はっはっは、それはもう過去の話だ。聞け部員A、実は俺は悪魔と知り合いでな?」
部員A「はぁ……悪魔、ですか?」
俺「あぁ、その悪魔は血の代償と引き換えに何でも願いを叶えてくれるんだ、ちなみに俺は腰を治してもらった。もう完治だ、はっはっは」
部員A「ま、まじっすか?」
俺「まじまじ、ちょっと肩作ってくるからゲージの用意しといてくれ」
部員A「はい!」
207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:09:07.58 ID:z8xMv6HU0
俺「お〜い、少年」
少年「……っす」
俺「すまんがちょっとキャッチボール付き合ってくれ」
少年「……っす」
シュ
パシ
シュ
パシ
シュ
パシ
208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:10:34.39 ID:z8xMv6HU0
俺「う〜ん、なんだか久しぶりだなぁこの感覚。体動かすのってやっぱりいいな」
少年「……いいのかよ」
俺「あん?」
少年「腰、……悪いんじゃないの?」
俺「なんか今日は皆に心配されるな」
少年「……あんたしか居ないんだ」
俺「あん?」
少年「……僕らの監督は」
俺「んな心配しなくても大丈夫だって、さっき医者に診てもらってきたし」
少年「……べつに心配してるわけじゃ」
俺「お前らを抑えるくらいなら、たぶんイケる」
少年「……言うね」
209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:12:58.59 ID:z8xMv6HU0
俺「なぁ少年」
少年「……?」
俺「ぶっちゃけ、お前からみてこのチームはどうだ?」
少年「……どう、とは」
俺「甲子園いけそうか?」
少年「……行けるも何も……」
俺「?」
少年「……その為にここに居るんだろ、俺も、アンタも」
俺「ちょっと見ない間に随分な事を言う様になったじゃないか」
少年「……ふん」
俺「頼むぞ、お前がエースだからな」
少年「……言われなくても」
少年「……僕が、あんたを日本一の監督にしてやるよ」
210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:15:47.48 ID:z8xMv6HU0
俺「あんがとよ、そんな言葉貰えて嬉しいよ」
少年「……ち」
俺「素直じゃないなあ」
少年「……」
俺「何か言いたそうな目だな」
少年「……そっちは、何か聞かれたそうな口だね」
俺「あ、バレた?」
少年「……」
俺「いや〜、実はさ。甲子園いけたら結婚しようかと思って」
少年「……へぇ、結婚ね」
俺「お互いいつまでもダラダラってワケにはいかんからなぁ。頼むぞエース、なんせ俺の結婚はお前にかかってるからな、はっはっは」
211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:22:24.75 ID:z8xMv6HU0
俺「よーし、ちょっと集合してくれ」
部員「集合!」
俺「今日は俺が打撃投手をやろうと思う」
部員B「え? まじですか?」
俺「まじです」
妹「また何で急に」
俺「だってお前ら見てたら俺も野球したくなってきたんだもん」
妹「子供か」
212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:24:31.25 ID:z8xMv6HU0
俺「とりあえずそれは置いといて、だ。お前らに一つ良い知らせがある」
部員A「良い知らせ?」
俺「一人十球、俺が投げる。全員分だから百八十球な、その内3割をヒットにできたら今日の晩メシは俺のオゴリで焼肉食べ放題だ!」
部員A「まじかよ!」
俺「まじだ、昨日給料日だったからな」
部員B「3割ならイケるんじゃないか……」
部員A「こりゃ焼肉は頂いたな!! うっしゃ! やるぞ!」
妹「ほんっと、男って単純なんだから」
213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:28:23.57 ID:z8xMv6HU0
先生「ちょ、ちょっと俺くん……そんな約束しちゃって大丈夫なの?」
俺「大丈夫、まかせとけって」
先生「で、でも……」
俺「たまにはいいだろ、こんな事も」
先生「んー……、そうなの?」
俺「あいつらきっちり抑えるからさ、今日どっか一緒に食べにいこうよ」
先生「ほ、ほんと?」
俺「あぁ」
先生「……が、がんばって。俺くん」
俺「よっしゃ、なんか頑張れる気がしてきた」
214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:32:24.03 ID:z8xMv6HU0
少年「……」
俺「最初はお前か」
少年「……投手交代、いつでも待ってますよ」
俺「うるせー、さっさと打ち取られてろ」
少年「……それが監督の言葉かよ」
俺「今日のデートがかかってるんだ、悪いが本気で行くぞ」
少年「……ふん」
部員A「なんか少年と監督って仲良いよな」
部員B「あ、お前もそう思う?」
部員A「あんな喋ってる少年珍しいもん」
217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:15:57.56 ID:z8xMv6HU0
俺「ヒット3本か、なかなかやるな少年」
少年「……ち」
俺「さ〜次いってみよう次」
部員A「よっしゃ! 俺いくぜ! 焼肉焼肉〜♪」
妹「はい終わり、0本」
部員A「あ、あれ……?」
妹「あんた大振りしすぎよ、それじゃ当たんないわよ」
部員「は……、はい……」
218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:19:30.84 ID:z8xMv6HU0
部員C「な、なんか……」
部員D「監督のボール、なんか速くないか?」
部員C「とても腰を痛めてる人のピッチングとは思えないんだな……」
俺「あ〜、そうだ。一つ言い忘れてたけどな」
部員A「何スか?」
俺「俺が勝ったら、お前ら全員ポール走50本だから」
部員C「なん……だと……」
部員A「きたねぇぞ! 最初に言えよ監督!」
俺「はっはっは! 勝負事に綺麗も汚いもあるか!」
部員D「打て……とにかく打つんだ……それしか我々の生きる道は無い……ッ」
219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:22:24.45 ID:z8xMv6HU0
妹「良いボール投げるでしょ、お兄ちゃん」
先生「ほんとね、素人のわたしが見ても凄いってわかるわ」
妹「最近いつも家であたしとキャッチボールしてるもん」
先生「あら、そうなの? ありがとうね、妹ちゃん」
妹「へ?」
先生「俺くんって妹ちゃんの事大好きだから、相手してあげてるのよね。ありがとね」
妹「……先生には敵わないなぁ……」
先生「?」
220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:27:26.63 ID:z8xMv6HU0
部員D「くっそ〜……、打てなかった……」
俺「はっはっは、これでデートに王手が掛かったってわけだ」
部員C「後残ってるの誰?」
部員A「妹さん」
部員C「もうアイツに全てを託すしか無いのか……」
部員D「頼む……亡国の女神となってくれ……」
妹「誰が亡国だ」
部員C「打て、打ってくれ。な?」
部員D「部員全員がお前を応援してるぞ」
部員A「行くんだ……焼肉に……焼肉に……」
妹「あ〜、もう。うるさいな、アンタらに言われなくてもあんなヘロヘロボール打ってやるわよ」
221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:31:42.85 ID:z8xMv6HU0
俺「最後はお前か、妹よ」
妹「さすがに全員分投げるのは疲れたんじゃない? お兄ちゃん」
俺「あぁ、ちょっと疲れたよ。もう足元がフラフラだ」
妹「打たれる前にマウンド降りたら?」
俺「男にはな、やらなきゃいけない時があるんだよ」
妹「それって……、先生のため?」
俺「もちろん」
妹「……ばか」
223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:35:23.80 ID:z8xMv6HU0
妹「焼肉なんかどうでもいいけど」
俺「あん?」
妹「なんか、負けたくない」
俺「そうこなくちゃ面白くない」
妹「マウンドに沈めてあげる、お兄ちゃん」
俺「簡単には打たせんよ」
224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:42:45.21 ID:z8xMv6HU0
バシン
部員B「ストライク」
妹「……今のがストライク?」ギロリ
部員「ひっ、外いっぱいギリギリです……」
妹「……」
俺「はっはっは、どうかね。良いボールだろ」
妹「……」
225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:45:37.52 ID:z8xMv6HU0
俺「と、言っても。さすがに疲れたな……」
俺「あと7球か」
俺「さっさと終わらせます……か!」
カキーン
俺「あ、あれ?」
部員A「完璧に捉えた!」
部員C「光が見えてきたぞ!」
部員D「まだだ……まだ終わらんよ……」
226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:50:12.46 ID:z8xMv6HU0
俺「やるね」
妹「内角のさばき方教えてくれたのはお兄ちゃんだよ」
俺「疲れてちょっと甘く入ったかな」
妹「いつまで軽口叩いてられるかしらね」
俺「あー、こんな事ならスイッチなんか薦めるんじゃなかった」
妹「今更後悔しても遅いわよ」
俺「だな」
妹「さっさと投げてきなさいよ、お兄ちゃん」
俺「頼もしい妹様だ事」
227 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:54:24.05 ID:z8xMv6HU0
部員A「おい、次ラストだよな?」
部員C「そうだよ」
部員A「次でヒット打てば焼肉なんだよな?」
部員C「そうだよ」
部員A「一時は崖っぷちまで追い込まれたが、まさか神さまはこんなシナリオを俺たちに用意していたのか……」
部員D「あぁ、野球の神さまありがとう」
先生「俺くん……がんばれ!」
俺「任せなさいって、良い店知ってるだ。終わったら予約しなきゃな」
妹「はやく投げてきなさいよ」
俺「急かしなさんな、言われなくても今投げる……よ!」
228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:00:28.05 ID:z8xMv6HU0
部員A「焼肉焼肉焼肉焼肉焼肉焼肉焼肉焼肉……」
部員C「ポール走はどげんかせんといかんですよ!」
部員D「打て! 打ってくれ!」
229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:03:26.68 ID:z8xMv6HU0
妹「っ!」
カキィ……
俺「あれ?」
俺「ボール、近っ……」
……ィン
妹「あ……?」
俺「え……?」
ゴシュ
230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:04:45.78 ID:hnUIjIbdO
まさかのゴシュッ
231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:10:20.36 ID:z8xMv6HU0
先生「俺くん?!」
少年「部員A! タンカもってこい! それと救急車!」
部員A「わ、わかった!」
先生「なんで俺くんが倒れてるの……? ねぇ、なんで、なんで……?」
部員B「先生、落ち着いてください! とにかく、今は監督を安静な所に……」
232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:16:08.16 ID:z8xMv6HU0
◇ ◇
医者「……こんな形で再会するなんて、皮肉なものだな」
妹「……」
医者「綺麗な顔してるだろ?」
先生「……」
医者「マウンドで死ねて、満足だったのかな。彼は」
先生「ちょっとアナタ! さっきから黙って聞いていれば!」
医者「ここは病院だ、静かにしてくれないか」
先生「……っ」
233 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:18:14.52 ID:z8xMv6HU0
先生「……妹ちゃん、行きましょう」
妹「……」
先生「……妹ちゃん」
妹「……あ、……え? 何ですか?」
先生「外へ行くのよ……」
妹「ヤだ、あたしお兄ちゃんと一緒に居るもん」
先生「妹ちゃん」
妹「寝てるだけなんだよ、お兄ちゃん。昔こうやってよく遊んだもん、寝た振りしてあたしをびっくりさせる気だもん」
先生「妹ちゃん」
妹「だからね、待ってるの。お兄ちゃん、言ってくれるもん。’お前のマヌケな顔が見れて面白い’ってだから待ってなきゃいけないもん」
先生「……妹ちゃん」
妹「ねぇ、お兄ちゃん。起きてよ、もう夕方だよ? ねぇ、ねぇ。起きてよ、お兄ちゃん」
妹「焼肉行くんじゃないの? ねぇ、お兄ちゃん」
妹「あたしの事、嫌いになっちゃったの? だから目を覚ましてくれないの? 意地悪だなぁ、お兄ちゃん」
妹「はやく起きないと、怒るよ? 怒っちゃうよ? お兄ちゃん、ねぇ。聞いてるの?」
234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:21:06.84 ID:z8xMv6HU0
医者「いい加減にしろ!」
妹「……っ」
医者「死んだんだよ」
妹「死ぬわけないじゃない! お兄ちゃんが! 死ぬわけないじゃない!」
医者「……あんたの兄は、もう」
妹「嫌! 聞きたくない!」
医者「逃げるんじゃない、事実なんだ」
妹「嫌だ! いやいやいやイヤ……イヤ……いや、だ……何も聞きたくない……」
先生「……妹ちゃん」
237 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:28:09.66 ID:z8xMv6HU0
父「ども」
医者「父上」
父「すみませんね、兄妹揃って迷惑かけて」
医者「いえ、そんな」
父「後は任せてください」
医者「……お願いします」
父「ほら、妹。行くよ?」
240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:30:26.74 ID:z8xMv6HU0
医者「運ばれてきた時にはもう」
母「そうですか……」
医者「手は尽くしたのですが……」
母「妹がご迷惑をかけたそうで、すみませんね」
医者「いえ、そんな迷惑だなんて」
母「ありがとうね、本当に」
医者「私は、……何も」
母「ふふ。あなたは昔から変わらないわね」
医者「あの、母上」
母「はい?」
医者「いえ……なんでもありません」
母「そう、私はちょっと息子の顔を見てきますね」
医者「……はい」
242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:35:46.68 ID:z8xMv6HU0
医者「すぐに、再会できる。か」
医者「ははっ、皮肉なものだな」
医者「どうしてだろうな」
医者「どうして、こうもすれ違うんだろうな。私と君は」
医者「誰も救えやしない……何が医者だ……私はまた……」
243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:38:25.79 ID:z8xMv6HU0
妹「……」
妹「……」
妹「あたしが」
妹「……」
妹「……」
妹「お兄ちゃんを」
妹「……」
妹「アタシガ、オニイチャンヲ、コロシタノ?」
245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:41:00.25 ID:7U1itQiIO
なんだこの超展開
246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:49:50.71 ID:ZTMESDeO0
どうゆうことなの・・・
248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 22:03:17.64 ID:z8xMv6HU0
姉「何やってんのよ妹!」
妹「ふふ……アハハ……、おねーちゃん、ドウシタノ?」
姉「バカ! あんたまで死んでどうするのよ……」
妹「死ぬ? チガウヨ、お兄ちゃんに会いに行くだけだよ?」
姉「しっかりしなさいよ……ねぇ、お願いだから……」
妹「ふふ……あはは……」
250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 22:10:08.56 ID:z8xMv6HU0
部員「おい」
部員A「あ? 何スか?」
部員「練習の時間だ」
部員A「あ、……そっスか」
部員C「なんか……みんな暗いね」
部員D「無理もないだろ」
部員C「うん……、聞いた? 妹ちゃん」
部員D「誰かが付きっ切りで居てあげないとな、今が一番辛いだろうし」
部員C「今は先生が家に行ってるみたいだけど」
部員D「明日は俺が行くよ、順番決めて部員全員で行こう」
部員C「うん……」
251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 22:14:58.93 ID:z8xMv6HU0
先生「俺くん」
先生「俺くん……」
先生「もう、委員長って言ってくれる人は居ないのね」
先生「俺、くん……」
253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 22:20:31.60 ID:z8xMv6HU0
少年「……」
少年「……」
少年「……約束は必ず守るからな」
少年「あんたを、日本一の監督に、してやる」
少年「僕らが、……生きた証になります」
255 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 22:23:51.95 ID:Cg+2LRd10
最初から読んでるがまさかこんな…
256 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 22:29:30.12 ID:z8xMv6HU0
妹「ねぇ、お兄ちゃんはどこ?」
父「う〜ん、どうしたのかな?」
妹「ねぇ、お兄ちゃんは? なんで居ないの?」
父「お兄ちゃんはね、遠いトコに行っちゃったんだよ?」
妹「お兄ちゃんは? ねぇ、お兄ちゃんは?」
257 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 22:29:48.10 ID:Hsv347uy0
え?
え?
258 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 22:33:59.51 ID:z8xMv6HU0
父「寝たか?」
姉「とりあえずは、ね」
父「お前ももう寝てなさい、もうずっと起きっぱなしだろう? 気持ちはわかるが体は大切だ」
姉「あたし、あの子に何もしてあげられないから。せめて傍に居てあげたいの」
父「だったらなおさら、今は寝なさい。いいね?」
姉「……はい」
261 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 22:49:32.78 ID:z8xMv6HU0
母「あなた、お飲み物でもどうですか?」
父「あぁ、すまないね。母さん」
母「この家もすっかり静かになってしまいましたね」
父「だなぁ」
母「この間ね、あの子がこんな事を言っていたんですよ」
父「?」
母「野球に出会えて良かったって、今の自分があるのはそのお陰だって言うんですよ」
父「……」
母「あの子。父さんのキャッチャー姿が、世界で一番格好良いって言ってましたよ」
父「バカタレが……」
262 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 22:52:43.73 ID:z8xMv6HU0
父「どうしてだろうな」
父「こんな時、どうしようもなく自分が無力に思えてくるよ」
父「歳ばかり取って勝手に大人になったつもりで居たが」
父「バカタレが……」
父「俺はダメな大人だな……」
母「そんな事はないですよ、あの子の父さんだもの」
264 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 22:59:07.87 ID:z8xMv6HU0
姉「じゃあ、ちょっと先に寝かせてもらうわね」
母「はい、おやすみ」
姉「なんかあったらすぐ起こして」
母「はいはい、わかりましたよ」
姉「それじゃ、おやすみ……」
………………………………
…………
……
266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:27:49.71 ID:z8xMv6HU0
……
…………
………………………………
「……」
「……」
「……」
「……」
「ふあぁ、よく寝た」
268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:33:01.26 ID:z8xMv6HU0
???「あ、起きた?」
???「キミ、ボクのこと覚えてる?」
「……?」
???「あ、そっか……」
「……ここどこ?」
269 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:36:22.35 ID:z8xMv6HU0
???「よ〜こそ〜ココへ〜♪」
「えらく古くないかそれ」
???「エヘ」
「いや、可愛くないから」
???「ボクは死神、よろしくね」
「死神だ?」
死神「そう、死神です」
「いくら女の子だからってそりゃ笑えないジョークだな」
死神「ジョークじゃないよ」
「マジなの?」
死神「マジです」
271 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:39:15.87 ID:z8xMv6HU0
「死神って……あれか、俺を殺しにきたのか?」
死神「ぶっぶーハズレ」
「だから可愛くないってそのポーズ」
死神「エヘ」
「で? お前は誰なんだ、それとここはどこなんだ? あと俺は誰だ?」
死神「あ〜、いっぺんに質問しないで」
「で、ホントは誰なんだ? これはドッキリなんだろ?」
死神「だから死神だって、ついでにここは死後の世界」
「あ〜……。はい、そうですか。と信じると思うか?」
死神「う〜ん、ボクとしては信じてくれなくても別にいいんだけど。ボクは上まで送っていくだけだし」
「送る?」
死神「うん、だってキミもう死んでるもん」
「父さん母さん、俺死んだらしいです」
272 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:40:10.55 ID:z8xMv6HU0
「……」
死神「へぇ」
「……あん?」
死神「冷静なんだねキミ、普通の人だったら’生き返らせろ!’とか叫んだり暴れたり大変なんだよ? だからこの鎌を使って静かにしてもらうんだけど、キミはその必要なさそうだね」
「そのおっかないブツを仕舞ってくれ、寒気がする」
死神「ふふ、ザクっといっちゃう?」
「カンベンしてくれ」
274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:43:08.10 ID:z8xMv6HU0
「で、マジなのか? ……死んだって話」
死神「神さまはウソつかないもん」
「ドッキリなら今のうちだぞ?」
死神「ヤだなぁ、そんなわけないよ」
「……あくまで本当だと?」
死神「じゃあ試しにこれ握ってみて。そこに置いてあったものだよ」
「……バット?」
死神「いいから」
「なんでバットなんか……、……つかめない」
死神「さて何故でしょう?」
「……」
死神「はいタイムオーバー」
「わかったよ、オーケー、信じよう。ここは俺の住んでた場所と違うトコだってな」
死神「ふふ、理解が早くて助かるよ」
277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:45:23.98 ID:z8xMv6HU0
死神「ところでキミ、自分の名前覚えてないの?」
「俺の名前?」
死神「そう、キミの名前」
「……」
死神「何か頭にショック受けちゃったのかな? まぁいいや、ちょっと治しておくね」
「うお、まぶしっ」
死神「どう? 思い出した?」
俺「まぁ、だいたいは……」
死神「ふふ、よかった」
278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:48:07.40 ID:z8xMv6HU0
死神「ところで。キミ、死ぬ直前のことで何か思い出せる事って無い?」
俺「う〜ん……たしかバッティングピッチャーをやってて……」
死神「ふむふむ」
俺「だめだ、そっから思い出せない」
死神「よかった、曖昧なんだね?」
俺「あ? あぁ、そうだが……」
死神「あんまり鮮明に覚えてたりしたら呪縛霊とかになっちゃうんだけど、俺くんはその心配なさそうだね」
俺「呪縛霊って……」
死神「あぁ、心配しないで大丈夫だから、もし呪縛霊になってもボクは痛くしないから」
俺「痛くしないって、問題そこなのか」
死神「この鎌でだいたい一撃だからね」
俺「だからそれ仕舞ってくれ」
死神「はーい」
279 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:52:46.99 ID:z8xMv6HU0
死神「ここに来た人間は、だんだん新しい記憶から無くなっていくんだ」
俺「そうなのか」
死神「一つ一つ、消えていって。そして、全ての記憶が無くなれば」
俺「無くなれば?」
死神「また、生まれるんだよ」
俺「ほう?」
死神「ボクは魂の循環を促してる、それが仕事なんだ」
俺「なんか随分イメージと違うんだな」
死神「はは、よく言われる」
280 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:55:13.63 ID:z8xMv6HU0
死神「っていうか、君も野球やってたんだね」
俺「あぁ、そうだよ」
死神「野球場で死んじゃうなんてキミらしいね」
俺「そうか?」
死神「うん。実はね、最近ボクも野球始めたんだ。良かったらボクの草野球チームに入らない?」
俺「死神も野球やるのか」
死神「当たり前さ、天国にはプロ野球リーグだってあるんだよ?」
俺「まじか、天国すげぇな……」
282 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:00:35.26 ID:L4Zr9fLL0
死神「今年は天界交流戦があるからきっと盛り上がるよ」
俺「っていうか、死んだら野球もクソもねぇだろう?」
死神「それがね、神様が野球好きでね。野球をやりたいって言えば身体を残してくれるんだよ」
俺「は?」
死神「だから、一緒に野球しよう?」
俺「何の神さまだよそいつは……」
死神「野球の神さまだよ?」
284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:04:10.66 ID:z8xMv6HU0
俺「野球の神さまが天界を牛耳ってんのか」
死神「野球面白いからね」
俺「えらく単純な理由だなおい」
死神「そこは言わないお約束」
俺「う〜ん……野球か、よし。やってやるよ」
死神「やったぁ!」
俺「はは……変なヤツだなお前」
死神「よく言われる」
俺「死神の友達が出来るなんて一生の自慢だよ、もう死んだからそれも無いか」
死神「はは、死神ジョークわかってるね。慣れてきた証拠だよ?」
俺「あんまり笑えねぇ……」
285 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:06:38.46 ID:L4Zr9fLL0
死神「じゃあさ、今から上にいくけど」
俺「とうとう天国に召されるんだな俺」
死神「それは俺くん次第かな」
俺「するってぇと?」
死神「天国に行くか地獄に行くか、まず裁かれるんだ」
俺「審判のなんちゃらっていうアレか、誰が裁くんだ?」
死神「もちろん野球の神さまだよ」
俺「どんだけ野球の権力高いんだよ」
286 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:13:27.94 ID:L4Zr9fLL0
俺「ココまで来たら天国でも地獄でもどっちでもいいよ」
死神「地獄は辛いよ? 天国に行きたくないの?」
俺「短い人生だったけど別に後悔してねぇよ、死んだ後の事まで考えてなかったし」
死神「強いんだね」
俺「ただ、心残りなのは」
死神「うん?」
俺「妹が居るんだよ」
死神「へぇ、妹さん?」
俺「えらく強がってるわりに泣き虫でな? せめて最後に別れの一言でも言ってやれないのが、心残りかな」
死神「……」
俺「なんてな、はは。わかってるって、無理なんだろ? さ、もう行こうぜ」
死神「……ごめんね、俺くん」
俺「なんか言ったか?」
死神「何も」
287 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:16:53.26 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
神さま「ワシが神である」
俺「こんちは」
神さま「うむ、死神から伺っておるぞ。お主の事は」
俺「はぁ」
神さま「数々の蛮行を働いた大悪党と聞き及んでおる」
俺「え?」
神さま「実の妹に非道な行いをした罪、地獄で償うが良い」
俺「なん……だと……?」
289 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:23:57.14 ID:L4Zr9fLL0
俺「という事で地獄に落ちました」
死神「あら」
俺「おい、死神。ちょっと待て、大悪党って何だよおい」
死神「さ、さぁ……?」
俺「思い当たる節が……ないわけでもないが……」
死神「た、たぶんそれの事じゃないかな?」
俺「まじか……ユニフォームフェチって問答無用で地獄送りなの……?」
290 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:32:19.00 ID:L4Zr9fLL0
俺「ところで」
死神「うん?」
俺「俺は地獄に落ちたとして、なんで死神のお前まで地獄に居るの?」
死神「だってボクの家、ここにあるし」
俺「お前も一応神なんだろ? なんでわざわざ地獄なんかに家が」
死神「う、うるさいな! キミには関係ないだろ?!」
俺「確かにな、じゃ俺はこの辺りで」
死神「ちょ、どこ行くの?」
俺「どこだっていいだろ? 俺には俺の生き方ってもんが……」
死神「もう死んでるのに?」
俺「う……」
死神「どこかにアテあるの?」
俺「それは……これから考えて」
死神「そんなんじゃすぐに蒸発しちゃうよ、ちゃんと食べないと空腹で消えちゃうんだから」
俺「まじか……死んでも空腹になるとかどんだけだよ……」
291 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:33:15.65 ID:L4Zr9fLL0
死神「だ……だから、ボクの家に来てくれたら……その……食べ物もあるし……」
俺「あん?」
死神「あの……その……」
俺「?」
死神「あぁもう! 女の子にそこまで言わせる?! 一緒に住もうって言ってるの!」
俺「どこで?」
死神「ボクの家で」
俺「お前ん家?」
死神「うん」
俺「お前、死神だろ?」
死神「そうだけど」
俺「いいのかよ?」
死神「別に禁止されてるわけじゃないもん」
俺「自由すぎるだろ天界……」
292 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:35:33.13 ID:BLccS1yd0
死神かわいい
301 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 01:40:43.49 ID:L4Zr9fLL0
俺「しかし、地獄って言っても案外やる事無いんだな」
死神「最近は色々とうるさいらしいから」
俺「そうなのか? どこでも一緒なんだなそういうのって」
死神「まぁね」
俺「じゃあキャッチボールでもするか」
死神「キャッチボール?」
俺「するんだろ? 野球」
死神「あぁ……、うん」
俺「適当に道具借りるぞ」
死神「あ、待ってよ」
344 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 18:24:00.01 ID:L4Zr9fLL0
俺「まさか死んでまで野球やるとは思わなかったな」
死神「キミは野球得意なんだよね?」
俺「昔ちょっとやってたからな」
死神「ボクは苦手かな……」
俺「そうなの?」
死神「うん、あんまり上手くないし」
俺「野球始めてどれくらいなんだ?」
死神「えーっと、ここに来てからだから。1ヶ月くらいかな」
俺「野球暦浅っ」
死神「一緒に野球する人も居なかったし、だから下手だよボク?」
俺「いいよそんなの、これから上手くなれば良い話だろ」
死神「うん」
346 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 18:29:20.48 ID:L4Zr9fLL0
俺「じゃあキャッチボールやるか、投げ方とかは大丈夫なんだよな?」
死神「いくらボクが下手だからってそれくらい出来るよ!」
死神「えいっ!」
死神「あれ?」
死神「えいっ!」
俺「頼むから前に投げてくれ、後ろに投げられても捕れん」
死神「おっかしーな、前にやった時は上手くいったのに。よーし、こんどこそ」
死神「え〜いっ!」
俺「……これは骨が折れそうだな」
347 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 18:37:59.00 ID:L4Zr9fLL0
俺「えっとな。まず軽く肩幅くらいに両足間隔とって、投げたい方向に肩を向けて両手を開いて」
死神「こう?」
俺「そうそう、それで左足で軽く上げてみ?」
死神「こ、こうかな?」
俺「荒ぶる鷹のポーズ完成」
死神「ひょっとしてボクで遊んでる?」
俺「あ、ばれました?」
死神「もう!」
ビュン!
俺「おぉ、今の感じ」
349 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 18:44:53.83 ID:L4Zr9fLL0
俺「左足を下ろした時に重心移動、それと一緒に肘を動かして軽くスナップを効かせて投げるんだ、投げた後に小指が上を向いてるのがベストだ。あと、最後に右足で蹴るのも忘れるな」
死神「そんないっぺんに言われても……」
俺「さっきは上手い事いってたから、後は感覚を掴んでいこう。こういうのは反復練習しかないんだ」
死神「うん、わかった」
350 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 18:55:58.18 ID:L4Zr9fLL0
俺「あとな、ボールの縫い目があるだろ?」
死神「赤い紐のこと?」
俺「そうそう、それに指の腹を乗せる感じで投げると。指にかかって投げやすいんだ」
死神「こう?」
俺「ちょっと深く握りすぎだな、もう少し指をずらしてみて」
死神「うん」
俺「例えばゴロをさばいた時、グラブの中のボールを取り出した瞬間にその形になってるのがベストだ」
死神「そ、そんな一瞬で正確にボールの縫い目なんかつかめるの?」
俺「スローイングのミスを無くす工夫だよ、一回そういう形で投げてみ?」
死神「あ……、投げやすい」
俺「だろ? 今言ったのは基本だけど、一番投げやすい形を見つけて自分のモノにすると良いよ」
351 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:09:21.16 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
死神「えい!」
俺「なんとか普通に前に投げられるようになったな」
死神「えへへ」
俺「昨日からしたら大進歩だな」
死神「でしょ?」
俺「どこか筋肉とか痛くないか?」
死神「昨日からずっと全身痛いよ……」
俺「じゃあ帰ったらマッサージしてやるよ」
352 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:10:11.10 ID:L4Zr9fLL0
死神「え? いいよ……そんな……」
俺「良いって、俺のはキクって部員にも評判なんだよ? ……、部員?」
死神「?」
俺「あ、いや。こっちの話。とにかく帰ったらマッサージな」
死神「えっち」
俺「残念だが俺は死神フェチでも何でもないから安心しろ」
死神「ちぇー」
俺「ちぇーって何、ちぇーって」
死神「なんでもなーい」
353 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:18:58.86 ID:L4Zr9fLL0
俺「にしても、何か拍子抜けだな」
死神「何がさ?」
俺「地獄ってもっと仰々しいとこだと思ってたのにさ、意外そんなことないんだなって」
死神「……ここは大きな監獄だからね、娯楽も何も無いただの入れ物だから」
俺「?」
死神「キミは知らなくてもいいの」
俺「そっか、まー色々あるんだな。俺としては平和で過ごせればそれでいいよ」
死神「でも、油断してるとここは危ないよ」
俺「危ない?」
死神「ここには鬼がいっぱいいるんだ、気を抜いてたら襲われるよ」
俺「どうしよう、急に震えてきた」
死神「怖くなった?」
俺「いや、そりゃそうだろう。鬼に襲われるとか、俺自慢じゃないけど普通の人間だよ?」
354 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:20:55.83 ID:L4Zr9fLL0
死神「でもココに居たら安心だからね? ボクの家の近くは中立地帯なんだ」
俺「中立って、まさか地獄の鬼同士で抗争とか勃発してるわけ?」
死神「あれ? キミ、よく知ってるね」
俺「……できれば当たって欲しくなかったよ」
死神「ボクが派遣される前から地獄には二つの大きなグループがあって、ずーっと睨み合いの状態なんだってさ」
俺「冷戦ってわけか」
死神「だから、何も知らないキミが出歩いたら恰好の餌食ってわけ。わかる?」
355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:32:13.41 ID:L4Zr9fLL0
俺「その鬼の抗争とお前は何か関係してるのか?」
死神「地獄に派遣された者には地獄の監視っていう使命があるんだけど……。最近死神グループの権力も落ちちゃってね、それで」
俺「それで、誰もやりたがらない地獄での仕事をお前が押し付けられた……と」
死神「うん……」
俺「ひどい話だ」
死神「ついでにもう一つ、ひどい話があるんだけどさ」
俺「?」
死神「ボクが野球を始めた理由なんだけど」
俺「そうだ、それをまだ聞いてなか──」
357 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:41:06.67 ID:L4Zr9fLL0
天使A「あれ? どちら様と思ったら落ちこぼれの死神様じゃないですか?」
天使B「本当だ、こんな地獄に左遷されて可愛そうな死神様だ」
死神「あ……」
天使A「なんだなんだ? 天使様が直々に出向いてやったってのにそのツラはよ」
天使B「こいつ俺らにビビって声もでねーんじゃねぇの?」
俺「誰だよ、お前ら」
358 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:42:26.39 ID:L4Zr9fLL0
天使A「あん? なんだこの人間」
天使B「へぇ、こいつが新しい生贄ってわけ?」
天使A「ふん。どんな選手を連れてくると思ったらこんな弱そうなヤツで大丈夫なのか?」
天使B「どんなメンツを揃えても無駄無駄、お前じゃ天国野球チームには勝てないよ」
天使A「この前の代の死神が連れてきたヤツも全然だったじゃん。もう少し歯ごたえがないとつまらねぇよな」
天使B「今回も軽く捻ってやるから覚悟しとけよな」
360 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:44:32.72 ID:L4Zr9fLL0
天使A「試合はもうすぐだからな、また死神の泣き面が見れると思うと今から楽しみだぜ」
天使B「あー弱いもの虐めって楽しいねぇ」
天使A「じゃあな、せいぜい這いずり回ってろ」
俺「……今のやつらは?」
死神「天国の人たち」
俺「で、なんでその天国のヤツらにお前はボロカスに言われてたわけ?」
死神「……」
俺「ま、無理に聞こうとはしねぇよ。今日は疲れたろ? もう帰ろうぜ?」
死神「……うん」
361 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:47:16.91 ID:BLccS1yd0
天使DQNすぎるw
なんだかパワポケくさい展開になってきた
363 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:51:57.06 ID:4gZo21S+0
>>361
確かに
ちょっと違和感でてきたところだったから丁度いいわ
パワポケの世界観で読んでいこう
362 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:50:45.52 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
俺「なんかキナ臭くなってきたな」
俺「あいつらと試合するんだろ?」
俺「あの態度からするとただの試合、ってわけでもなさそうだし」
俺「一波乱ありそうだな……」
俺「とにかく……今は寝るか」
366 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:59:04.91 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
俺「で、朝になったわけだが」
俺「死神は……居ないみたいだな」
俺「いい機会だし適当にここらを探検してみようかな」
俺「ちょろっと地獄の一丁目まで、なんつって」
俺「笑ってくれる人も居ないなんて寂しい……」
369 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 20:09:46.15 ID:L4Zr9fLL0
俺「なーんもねぇな、ココは」
俺「わかる事と言えば見渡す限り荒野が広がってる、無駄にデカイ空間って事くらいか」
俺「鬼なんか本当に居るのかね、こんな場所に」
「こんにちは。見ない顔だね、君」
俺「こんにちは。この間来たばかりなんですよ」
「へぇ、そうなんだ。ここは何も無い場所だろう?」
俺「地獄って言うくらいだから、もっとマグマとか火山とかあるのかと思ってんですけどね」
「そうかい? 君からしたらそういうイメージなのかな?」
俺「まぁ、感想としては普通じゃないですか?」
370 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 20:20:47.75 ID:L4Zr9fLL0
「ここに来た人間はいつも言うね」
俺「はは、そうなんですか。……? ここに来た人間?」
「あぁ、自己紹介が遅れたね。僕はここに住んでる鬼だよ、よろしくね」
俺「なん……だと……」
鬼「おや? 驚かないのかい?」
俺「いや、もう。驚きすぎて返ってリアクションに困ってるというか……」
鬼「はは、不思議な事を言う人間だね」
俺「よくみりゃツノ生えてる……」
鬼「このツノが珍しいかい?」
俺「ちょっと触ってみてもいいですか?」
鬼「いいよ、ほら」
俺「すごく……堅いです……」
372 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 20:48:37.44 ID:L4Zr9fLL0
鬼「地獄にはツノが生えてる鬼と、君みたいな人間が住んでるんだ」
俺「そうなんですか……親切にどうも」
鬼「にしても、君は珍しいね。ちゃんと肉体があるなんて、普通人間は魂だけでフワフワ浮かんでるんだよ?」
俺「あぁ、なんか野球をやる人は残してもらえるみたいで」
鬼「君が野球を?」
俺「まぁ……、一応」
鬼「……悪いことは言わない、辞めておいたほうがいいよ」
俺「どうしてですか?」
鬼「天使に目をつけられる」
373 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 20:49:34.38 ID:L4Zr9fLL0
俺「あ〜、あのいけ好かない野郎ですか」
鬼「天使に会ったのか?!」
俺「えぇ、まぁ。俺死神のとこに世話になってるんで、その時に」
鬼「なんという事だ……君、悪い事は言わない。今すぐそこから逃げなさい」
俺「は?」
鬼「天使と野球をやっちゃいけない、魂ごと消されるぞ」
俺「なん……だと……」
375 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:01:41.70 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
俺「ただいま〜」
死神「おかえり、どこ行ってたの?」
俺「散歩だよ」
死神「誰とも会わなかった?」
俺「誰か居るのか? いたら友達になろうと思ってたんだが」
死神「……鬼、とか」
俺「はは、そんなツノの生えたヤツとは会わなかったよ」
死神「……そう」
376 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:06:59.27 ID:L4Zr9fLL0
俺「それより、今日は野球しないのか?」
死神「体が痛くてそれどころじゃないの」
俺「あ〜、結局マッサージしてなかったもんな」
死神「えっち」
俺「あん?」
死神「触りたいならそう言えばいいのに」
俺「勘違いするなよ」
死神「な、何さ」
俺「俺はユニフォームフェチであってお前の体なんぞに興味は無い」
死神「ユニフォーム姿なら良いの……?」
俺「どうしてそうなる」
死神「だってそう言ってるもん……」
俺「からかうのもいい加減にしろ。何か食わせてくれ、ハラが減った」
377 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:13:51.56 ID:L4Zr9fLL0
『死神はね、地獄の鬼たちを消したいんだよ』
『消す?』
『天界からすれば鬼は異物らしいからね、でも強攻策に出ると最近は色々とまずいらしいから。目立たないように徐々に消していくんだ』
『徐々にって?』
『そう、例えば野球の試合で負けたら……とかね』
『まさかそんな……』
『死神は選定人だよ。鬼達を無理矢理天使達との野球の試合に駆り立てるんだ、地獄の治安維持っていう名目のね』
『あいつがそんな……』
『とにかく、君も早く死神のところから逃げたほうがいい。どこにも行くアテがなかったらうちに来ると良いよ』
378 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:18:32.14 ID:L4Zr9fLL0
死神「……ねぇ。キミ、聞いてる?」
俺「え? あ、すまん。何だっけ?」
死神「天国チームと地獄チームで野球の試合をするっていう話だよ」
俺「あぁ、そうそう。その話だったな」
死神「何年かに一度、天界交流戦っていう名前で天国チームと地獄チームが試合するんだ」
俺「天国チームってのは前に来たヤツらの事?」
死神「うん。天国にはプロ野球リーグがあるから、強いんだ」
俺「で、地獄チームってのは?」
死神「今のところ、メンバーはキミとボクだけだよ」
379 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:23:35.00 ID:L4Zr9fLL0
俺「野球の試合をするには最低あと7人必要だぞ?」
死神「そうなんだよね……それでお願いなんだけど。キミ、ボクの代わりにメンバーを集めてくれない?」
俺「あん?」
死神「なんか昨日あたりから急に仕事が忙しくてさ、そこまで手が回らないんだよね……」
俺「誰かから妨害されてんのか?」
死神「たぶん……」
俺「あの天使達か……」
死神「だから、おねがい!」
俺「わかったよ、お前は早く仕事片付けてこい」
死神「ありがとう」
380 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:29:29.94 ID:L4Zr9fLL0
『俺から質問してもいいか?』
『なんだい?』
『あんたら鬼が仲間同士で争ってるって聞いたけど』
『天使は地獄の食料を管理してるんだ』
『……?』
『随分昔に、食料の供給が止まった事があってね。それで備蓄してあった食糧を巡って仲間内で揉めたのさ、言うならば過激派と保守派にね』
『やりたい放題だな……あの天使』
381 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:31:22.53 ID:L4Zr9fLL0
『まぁ今では、争い合っているというより単純に違う所に住んでいるって感じだけどね。食料の供給も再開されたし、昔より減ったけどさ』
『なるほどね』
『みんな怖いんだよ、天使が。いつまた食料の供給が止められるかもしれない。あいつらに嫌われないようにひっそりと暮らしてる。だから君もなるべく目立った動きは避けてくれ』
『避けたくれって言われても』
『あと夜も危険だ、厄介なヤツラが出てくるからね』
『厄介なヤツ?』
『ちょっとした問題児だよ』
『問題だらけだなここは』
『だから地獄って呼ばれてるんだよ』
『なるほど』
俺「さて……どうしたもんかね」
382 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:38:21.19 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
俺「とにかく、一度会いに行くか。その厄介なヤツらに」
俺「そうは言っても、どこに行けば会えるんだろうか」
下っ端A「ヘイヘイヘイ! ニイちゃん! 俺らのシマで何やってくれてんの!?」
俺「会えちゃったよ、わりとすぐに」
下っ端B「あ〜ん? なんだコラ?」
俺「何でもねぇよ」
下っ端C「見ねぇ顔だな、新入りか?」
俺「おう、よろしくな」
下っ端D「俺らの事全然怖がってねぇよコイツ、気に入らねぇな。アネゴんとこ連れていくか?」
383 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:40:30.25 ID:L4Zr9fLL0
餓鬼「なんだいなんだい、騒がしいね」
下っ端A「あ、アネゴ!」
俺「アネゴ?」
餓鬼「見ない顔だね、あんた」
俺「どうも」
下っ端「アネゴ、こいつアレですぜ……死神嬢ちゃんとこの……」
餓鬼「あぁ、新しい人間かい」
下っ端「聞いた特徴もぴったりですぜ、野球帽に野球のユニフォーム」
餓鬼「ケッ。で、その人間がアタイらに何の用だって?」
俺「お前がボスだよな?」
餓鬼「だったら何だってんだい?」
俺「一緒に野球しようぜ」
384 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:42:12.88 ID:L4Zr9fLL0
餓鬼「……」
下っ端「……」
俺「……?」
餓鬼「……プ、ククク……アハハハハハハハ!」
下っ端A「コイツはお笑いだ!」
餓鬼「おい今こいつ何て言った? 野球しよう? バカじゃね? マジモンのバカじゃね?」
下っ端B「ですぜですぜ、ゲヒャヒャヒャ」
餓鬼「いいか? 野球なんかやったら最後、天使のヤツラに消されちまうのさ。そんな死にたがりはここにャいねェよ、他当たりな他」
下っ端C「オラ行った行った! 帰れ帰れ!」
俺「ま、最初から上手く行くとは思ってなかったさ。今日は顔見せだ」
餓鬼「ふん……いくよ、アンタ達。何かシケちまった」
下っ端「へいアネゴ」
388 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:02:16.48 ID:L4Zr9fLL0
俺「おい、ちょっと待てよ」
シュ!
下っ端「アブねぇ! アネゴ!」
餓鬼「……っ」
パシッ!
俺「ナイスキャッチ、いい反射神経してるな。サード向きだ」
389 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:07:30.01 ID:L4Zr9fLL0
下っ端「おいコラァ! いきなりアネゴに向かってボール投げるとはどういう了見だコラァ!」
餓鬼「……」
下っ端「あんの野郎、ヤっちまいますか? アネゴ」
餓鬼「……」
俺「今日はもう帰る、そのボールは預けとくから気が向いたら返しに来てくれ」
下っ端「ちょっと待てオラァ! ケンカ売っといて帰るだぁ?!」
餓鬼「……やめな」
下っ端「アネゴ? どうしたんで?」
餓鬼「……」ポッ
下っ端「ポ?」
餓鬼「……ポ……ポポポ、帰ってポ○モン見なきゃ! 今日はもう解散だよ!」
下っ端「えぇぇええぇ?! ちょっとアネゴ?!」
390 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:14:12.19 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
鬼「やあ」
俺「ども」
鬼「こっちにくる気になったかい?」
俺「いえ、今日は別の話で」
鬼「別の話?」
俺「一緒に野球やりませんか?」
鬼「……、本気で言ってるのかい?」
俺「えぇ、まぁ。一応」
391 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:23:24.26 ID:L4Zr9fLL0
鬼「言っただろ? 負ければ消されるって」
俺「負けなきゃいいんだろ?」
鬼「はっ?! そんなの無理だよ」
俺「無理?」
鬼「むこうは凄く強いんだよ? 僕らが勝てるわけがないだろ?」
俺「……」
鬼「君も正気かい? 野球なんかやらずにこっちへ来なよ、今ならまだ間に合う」
俺「やってもないのに結果を決め付けるなよ、あいつらに一泡吹かせようと思わないのか?」
鬼「そんな事をしなくても生きていけるんだ、僕らは平穏に生きていけさえすればそれで良い」
俺「それは逃げじゃないのか?」
鬼「違う!」
俺「どこが違うってんだ」
鬼「違う……僕らは……!」
392 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:32:06.78 ID:L4Zr9fLL0
俺「僕ら僕らって、お前はどうなんだよ。お前はどうしたいんだ?」
鬼「僕?」
俺「やられっぱなしで悔しくないのか? 見返してやりたいとは思わないのか?」
鬼「……」
俺「確かに強い相手かもしれない、だけど勝負事に絶対は無いんだ。可能性があるなら、掛けてみたっていいじゃないか」
鬼「む、無理だよ……」
俺「無理? 誰が決めたそんな事、やる前から言い訳して逃げてんじゃねえよ。野球はな、強いほうが勝つんじゃないんだよ、勝った方が強いんだ」
鬼「僕は逃げてなんか……」
俺「いいか? もう一度言うけどな──」
下っ端A「た、大変だ!」
393 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:38:47.94 ID:L4Zr9fLL0
俺「どうしたんだよ、血相変えて」
下っ端A「あぁ、あんたか! 丁度良かった、ツレが天使のヤツらに因縁つけられて……」
鬼「なんだって?!」
下っ端A「このままじゃアイツ……消されちまう……! あんた、助けてくれよ!」
俺「どこだ? 連れてけ」
下っ端A「こっちだ!」
394 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:43:00.08 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
下っ端「ここですぜ」
俺「天使……」
天使A「おや? どこの誰かと思ったら死神が連れてきた人間じゃないか」
俺「何やってんだよ、ここで」
天使A「いやぁ、久々に散歩でもしようかと思ってね。ここらを歩いていたんだが目の前にゴミが落ちてたから消してあげたんだよ」
俺「ゴミ……だと……?」
天使A「あぁ、そうさ。掃除をしてあげたんだから感謝してほしいね」
395 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:56:15.64 ID:L4Zr9fLL0
餓鬼「ちょっと良いかい?」
天使A「何かな?」
餓鬼「ここらにあたしの手下が一人居たと思うんだが」
天使A「あぁ。居たっけ、そんなの」
餓鬼「どこにやったんだい?」
天使A「さあ、ゴミと一緒に消えちゃったのかもね」
餓鬼「てめぇ……」
天使A「あぁ、思い出した。最後までアネゴ! アネゴ! って叫んでたよ、声がでなくなるまでね。ははっ、傑作だったなあれは」
餓鬼「……覚悟は出来てるんだろうね、天使」
天使A「あれあれ? 鬼の分際で天使に逆らうの? 立場わきまえてる? 消すよ?」
俺「おい、ちょっと待て」
397 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:58:28.45 ID:QVGHhKEgO
これは長編になりそうな予感
398 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 23:03:59.56 ID:L4Zr9fLL0
俺「さっき聞いたんだが、なんでもこの世界じゃ、ゴトには野球で決着をつけるそうじゃないか」
天使「そうだね、問題が起きたら野球で解決。それがルールだよ」
俺「だったら俺とお前で勝負しないか?」
天使「勝負だって? やめておけ、とてもじゃないけど勝負にならないよ」
俺「一打席勝負だ、俺が地獄代表で投手をやる。打ち取ったら俺の勝ちって事でとっととご退場願えないか?」
天使「ふん、いいだろう。君が負けたらココから消えてもらうけどいいのかな?」
俺「当たりま──」
鬼「ちょ、ちょっと待て! 負けたら消されるんだぞ、わかってんのかい?」
俺「わかってるよ」
鬼「だったら何で」
俺「バカやろう!」
鬼「……っ」
俺「放っておけるか! 同じトコに住む仲間じゃねぇか!」
餓鬼「あんた……」
俺「袖振り合うも多生の縁ってな、俺が生まれた場所の言葉だ。まかせとけ、あんなヤツに負けやしないさ。あんなのよりもっと強いヤツを俺は知ってる」
400 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 23:09:28.38 ID:L4Zr9fLL0
魑「たいへんだー」
魅「たいへんだー」
魍「へんたいだー」
魎「たいへんだー」
魑「なんかー」
魅「人間とー」
魍「天使がー」
魎「勝負するってー」
魑「たいへんだー」
魅「たいへんだー」
魍「へんたいだー」
魎「たいへんだー」
401 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 23:13:41.60 ID:L4Zr9fLL0
鬼「今からでも良い、辞めるんだ。まだ遅くない」
俺「あん?」
鬼「消されるんだぞ? わかっているのか?!」
俺「男にはな、やらなきゃいけない時があるんだよ」
鬼「……っ」
俺「良いから、そこで見とけ」
鬼「バカだ……君はバカだよ……、天使には勝てないのに……」
402 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 23:17:50.81 ID:L4Zr9fLL0
天使「どうした? さっさと投げてこい」
俺「言われなくても」
シュッ
天使「ん?」
鬼「この局面でスローボール……だと」
天使「……ふん、あまりに遅すぎて打ち気を削がれた」
俺「ストライクワンだぜ」
天使「カウントなど関係ない、次で仕舞いだ」
404 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 23:20:25.70 ID:L4Zr9fLL0
俺「さ〜、次はストレートでいくかな?」
天使「……」
俺「それとも変化球?」
天使「……」
俺「やっぱり変化球だよなぁ」
天使「はやく投げてこい」
俺「へいへい、天使様?」
シュッ
鬼「ま、またスローボール」
405 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 23:31:40.62 ID:L4Zr9fLL0
天使「お前……ふざけているのか?」
俺「ストライクツー」
天使「真面目にやれ!」
俺「真面目ですよ」
鬼「彼は……、一体……」
魑「やるねー」
魅「ねー」
魍「やらないか?」
魎「やるねー」
下っ端「へへっ! アネゴ、これで追い込みましたね。ひょっとして勝っちゃうかもしれませんね!」
餓鬼「うるさいよ、男の勝負だ。黙って見てな」
411 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:00:02.09 ID:L4Zr9fLL0
天使「二球続けてスローボール……」
天使「三球目は……無い」
天使「勝負球は次だ」
415 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:41:39.66 ID:o9tOmBp20
俺「さぁ、追い詰めたぜ」
天使「どっちが」
俺「余裕だね、天使様?」
天使「ふん」
俺「これで……心置きなく投げられるぜ」
天死「なに?」
俺「とっておきは最後まで隠しておくもんだろ?」
天使「なん……だと……?」
鬼「一体どんなボールなんだ……」
俺「くらえ! これで終わりだ!」
416 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:43:15.21 ID:o9tOmBp20
鬼「え?」
天使「……っ」
鬼「ス……スローボール……、空振り三振……」
俺「はい三振、俺の勝ち」
419 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:48:05.12 ID:o9tOmBp20
餓鬼「あいつ……、勝っちまいやがった……」
下っ端「はは! やりましたね、アネゴ! ザマぁ見ろ天使!」
鬼「……何者なんだ、君は」
俺「ただの野球選手だよ」
鬼「あの天使に勝つなんて、信じられない」
俺「な? 無理じゃねぇんだよ、全部一緒さ。やってみなきゃわからない、そうだろ?」
鬼「……」
俺「だから一緒に野球しようぜ?」
鬼「少し、……考えさせてくれないか」
俺「あぁ、いつでも待ってるさ」
420 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:50:22.04 ID:o9tOmBp20
天使「認めない……認めない……、こんなの認めない……ッ!!」
俺「お前の負けだよ」
天使「こんな、こんな、こんな……、屈辱だ……」
俺「お前なんかな、うちの妹に比べりゃ全然大した事ないんだよ。あいつはまだ野球始めたばっかりだけどよ」
天使「キ・サ・マあぁ……、消す……消してやる……ッ!」
ピー!
ピピピピピー!
神の使い「はいはいそこまでそこまで〜」
421 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:53:45.65 ID:o9tOmBp20
神の使い「全員その場から動かないで」
天使「ち……、やっかいなヤツに見つかった」
餓鬼「て、天界警察だ……」
天使「このカリは次の試合で返す、首を洗って待っていろ」
餓鬼「あ! 待ちやがれ!」
神の使い「あー、天使さん行っちゃった。事情聴取しなきゃいけないのに……あぁもうめんどくさいなぁ。そこのキミ」
俺「あん?」
神の使い「今ここで起こった事全部ナイショにしてくれる? 上にバレたら色々めんどくさいのよ」
俺「俺は別に構わんが……」
餓鬼「……」
422 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:55:33.80 ID:o9tOmBp20
餓鬼「下っ端D……あんたのことは忘れないよ……」
餓鬼「いつもドジでマヌケで役に立たない三下だけど……仲間だった……」
餓鬼「なかま……だった……」
神の使い「あぁ、あの下っ端Dくんなら今頃お家でおねんねしてるわよ」
餓鬼「え?」
神の使い「コッソリ戻しておいたの。勝手に消しちゃうと問題になっちゃうからね」
餓鬼「……」
神の使い「まったく天使さんも困ったもんよねぇ、最近カリカリしちゃってさ。何をそんなにムキになってるのかしら?」
餓鬼「ありがてぇ!」
神の使い「言っとくけどコレ、ナイショだからね?」
餓鬼「あぁ! もちろん!」
423 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:57:29.34 ID:o9tOmBp20
餓鬼「それもこれもアンタのおかげだ! ありがとう! ……って、居ない?」
俺「やべぇやべぇ、すっかり忘れてたんだけどおつかいの途中だったんだ。死神に怒られちまう」
鬼「彼なら……あるいは……」
死神「おっそーーーい! 野菜買うのに何時間かかってるの!」
俺「すまんすまん、ちょっとコレがコレでコレでな?」
死神「言い訳はケッコーです!」
俺「わかった! 俺が悪かった! だからその大鎌仕舞ってくれ!」
424 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:01:00.89 ID:o9tOmBp20
死神「はい、ボクの野菜スープ召し上がれ」
俺「いただきます」
死神「どう? おいしい?」
俺「あぁ、おいしいよ」
死神「よかった」
俺「どうだ、仕事片付きそうか?」
死神「それが、何か急に無くなっちゃって」
俺「無くなった?」
死神「さっき天界警察の人が来て、総務のミスで本当は違う人にいくはずだった依頼がボクのとこに来てたみたいで」
俺「……さっきのあいつかな?」
死神「とにかく、これでボクも練習できるよ」
俺「そうか、その事なんだけどさ」
死神「?」
427 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:15:21.00 ID:o9tOmBp20
俺「さっき、地獄の鬼達に会ってきたんだ」
死神「え? 誰に?」
俺「だから、鬼達に」
死神「何もされなかった? 大丈夫? 襲われなかった?」
俺「意外ににイイ奴等だったよ、鬼にも色んなのが居るんだな」
死神「そ……そう」
俺「お前が鬼を恐れる理由は、嫌われてるからか?」
死神「!」
俺「天界から派遣されてるってだけでここでは避けられてるんだろ? あいつらはお前の事を文字通り死神だと思ってるみたいだしさ」
死神「……うん」
俺「メンバーを俺に集めさせようとしたのもそういう事か?」
死神「……うん」
俺「はぁ……、なるほどね」
429 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:19:37.85 ID:o9tOmBp20
死神「だ、だって」
俺「お前はあいつらに歩み寄ろうとしたのか?」
死神「……ううん」
俺「やる前から怖がってちゃだめだろ? 速いゴロだからって目を逸らすと捕球できないのと同じだ」
死神「ごめんなさい……」
俺「実はな、そいつらを野球チームに勧誘してみたんだ」
死神「え?」
俺「でも見事に断られたよ」
死神「そう……」
俺「明日もあいつらのトコに行こうと思う。もちろん、お前も一緒にな?」
死神「ボ、ボクも?」
俺「当たり前だろ、一緒に野球するんだ。仲間だ」
430 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:23:18.86 ID:o9tOmBp20
死神「仲間……ともだち?」
俺「そうだな、友達だ」
死神「ボク……友達なんか一人も……」
俺「そんなのこれから作っていけばいいさ、過去は変えられないけど、未来は作っていける。そうだろ? 死んだ俺が言うのも変だけどよ」
死神「……うん、わかった」
433 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:31:20.27 ID:o9tOmBp20
俺「もう少し聞きたいんだが、天国チームとの試合で負けたら魂ごと消えるってのは本当か?」
死神「な……なんでそれをキミが知ってるの?」
俺「鬼から聞いた」
死神「……」
俺「どうなんだ」
死神「……うん」
俺「どうしてそんな大切な事を黙ってたんだ?」
死神「だって……なんだか切り出しにくくて……、ごめんなさい」
俺「いや、怒ってるわけじゃないんだ。あと一つ確認させてくれ」
434 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:33:36.79 ID:o9tOmBp20
俺「お前を苦しめてるのは天使のヤツか?」
死神「……」
俺「これは俺の仮定だけどよ、お前を地獄チームの代表なんかに仕立て上げたのは天使のヤツなんじゃないのか?」
俺「おかしいとおもったんだよ。野球始めて一ヶ月、ボールもまともに投げられないお前が代表なんてな」
死神「それは……」
俺「その試合とやらであの天使を倒せば、お前は楽になるのか?」
死神「……」
俺「どうなんだ」
死神「……うん。勝てばね、神さまが何でも願い事一つ叶えてくれるの」
俺「そうか、よし。じゃあ一緒に勝とう。勝ってこんな事終わらせよう」
435 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:35:55.86 ID:o9tOmBp20
◇ ◇
死神「それじゃお仕事いってきまーす」
俺「おう、行ってらっしゃい」
死神「夜には戻るね、お留守番よろしくね」
俺「あぁ、戻ってきたら一緒に鬼達のトコに行こうな?」
死神「うん!」
436 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:36:43.44 ID:o9tOmBp20
ピンポーン
俺「おや? 来客?」
ピンポン
ピンポン
俺「はいはい、今出ますよ」
ドンドンドン
俺「今出るって」
ガチャ
下っ端「迎えにきやしたぜ、旦那」
俺「あん?」
437 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:38:56.34 ID:o9tOmBp20
下っ端「アネゴ、連れてきやしたぜ。件の旦那」
餓鬼「ご苦労」
俺「あの〜?」
餓鬼「ようそこ、アタイらのアジトに。大した振る舞いはできねぇがゆっくりしてってくれ」
俺「は、はぁ……」
餓鬼「宴だ! てめぇら! 騒ぎやがれ!」
一同「オォー!」
俺「どうしてこうなった」
438 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:40:43.94 ID:o9tOmBp20
下っ端D「へへ、ありがとな。旦那が助けてくれたんだろ? まぁ飲めよ」
俺「うっぷ、もう飲めねぇよ」
下っ端D「ンな事言うなよ、ささっ」
俺「おう……ありがとよ……」
下っ端D「注いで貰った酒を一気にクーっと行くのがココの流儀だぜ旦那」
俺「……」グイ
一同「オォー!」
俺「……」グイグイ
一同「オォオー!」
俺「……プハーッ」
下っ端D「大した飲みっぷりだな旦那!」
俺「水腹だ……うっぷ……」
440 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 02:06:20.46 ID:o9tOmBp20
魑「よろしくなー」
魅「よろしくなー」
魍「よろちくびー」
魎「よろしくなー」
俺「あ……、あぁ……。よろしくな。お前らも鬼なのか?」
魑「そうだぞー」
魅「そうだぞー」
魍「うそだッ!」
魎「そうだぞー」
俺「なんだか賑やかなヤツらだな……」
441 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 02:09:20.83 ID:o9tOmBp20
餓鬼「オメェら! 新しい仲間を紹介する! 今日からアタイの右腕になる男だ」
一同「オォー!」
俺「あん? 右腕」
餓鬼「コイツはアタイらの仲間を救った! あのクソ忌々しい天使に一泡吹かせたんだ! ケツまくって逃げるクソ天使のザマったらなかったぜ!」
俺「女の子がケツって……」
餓鬼「だから特別にアタイのトコに置いてやる事にした! 文句あるヤツはいねぇか!」
一同「ねぇぞー!」
餓鬼「じゃあ今日からコイツは仲間だ! オラ! 自己紹介でもしやがれ!」
俺「ってててて、蹴るなっての」
一同「……」
俺「えー……、えーっと」
俺「俺です、よろしく」
一同「オォー!」
餓鬼「ケツのしまらねぇ野郎だ」
俺「うるさいよ」
442 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 02:12:27.25 ID:o9tOmBp20
俺「って、うわ。もうこんな時間か。おい、俺は一旦帰るぞ」
餓鬼「へ? あ、ちょ。ちょっと待て、待てってば」
俺「あん?」
餓鬼「こっち来い」
俺「いてててて……ひっぱるなって」
餓鬼「いいから」
俺「なんだよ」
餓鬼「野球、メンバーが要るんだろ?」
俺「あん?」
餓鬼「だから。野球、メンバーがいるんだろ?」
俺「そうだけど」
餓鬼「だったら、アタイがメンバーになってやるから……」
俺「あん? この前はダメだって──」
444 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 02:14:19.07 ID:o9tOmBp20
餓鬼「ボール!」
俺「お、おう」
餓鬼「このボールが、アタイとアンタを結んでくれたんだ」
俺「そ、そうなのか」
餓鬼「か、勘違いするんじゃねーぞ! アタイは野球がしたいだけで……、あ……アンタが好き、……とかそんなんじゃ……ないんだからな……」
俺「ん? すまん最後の方がちょっと聞こえなかった」
餓鬼「な……なんでもない!」
俺「なんだ? ヘンなヤツだな」
445 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 02:17:12.04 ID:o9tOmBp20
餓鬼「た、建前が必要なんだよ。アタイはこれでも組織の上に立つ人間だ、アタイが動くにはアンタっていう理由が要るんだよ」
俺「めんどくさいんだな」
餓鬼「う、うるせー。アタイが野球をやりたいだけで、アンタの為とかじゃないんだからな!」
俺「はいはい」
餓鬼「違うんだからな!」
俺「ありがとう」
餓鬼「?!」
俺「嬉しいよ、一緒に頑張ろう」
餓鬼「……うん」
俺「じゃあ、そろそろお暇するよ。皆によろしくな」
餓鬼「……うん」
俺「たまには女の子らしくしても誰も文句言わないと思うぞ」
餓鬼「なっ……余計なお世話だ!」
俺「じゃあまたな!」
餓鬼「そんな風に言われたら……もっと好きになるじゃない……」
446 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 02:19:18.22 ID:o9tOmBp20
死神「で、キミ」
俺「おう」
死神「帰ったら一緒に行こうって言ってた本人が家に居ないでどうするの?」
俺「おう」
死神「なんで約束破るかな?」
俺「それが、聞いてくれよ。すげぇ良い知らせが──」
死神「何かな〜? あんまり面白くない話だと間違って右手が動いちゃうかもしないよ」
俺「落ち着け、素数を数えるんだ。素数は割り切れないマヌケな数字……」
死神「……はぁ……」
俺「落ち着いてくれたか」
死神「呆れてるの」
俺「似たようなもんだ、だから早くその大鎌を仕舞ってくれ。な?」
473 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:26:32.46 ID:o9tOmBp20
ピンポーン
俺「おや? 来客?」
死神「こんな時間に? ……ボクの家に?」
俺「ほら、行ってやれよ。待たせちゃ悪いだろ?」
死神「う、うん」
ガチャ
鬼「や、やぁ」
死神「!」
474 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:29:04.64 ID:o9tOmBp20
死神「ど、……どうしたの?」
鬼「い……いや、その……」
死神「……?」
鬼「あのですね……」
死神「うん……?」
鬼「や……」
死神「や?」
鬼「やき……」
死神「焼き? 焼肉?」
鬼「そうそう、焼肉」
死神「なあんだ、焼肉かぁ」
鬼「そうそう。美味しいよね、焼肉」
475 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:34:02.44 ID:o9tOmBp20
鬼「って、……そうじゃなくてですね」
死神「うん?」
鬼「僕も一緒に野球やってもいいかな?」
死神「……え?」
鬼「色々考えてみたんだけどさ、良い機会だと思うんだ」
死神「……そう」
鬼「俺さんに言われんだよ、やる前から諦めてどうするんだって。たぶん、僕らがずっとこんな調子だったから、ここもこんな風になってしまったのかもしれない」
死神「……」
鬼「僕も死神の事をよく知りもしないで拒絶してた。すまない、許してくれるかい?」
死神「そんな……ボクも鬼達の事、よく知りもしないで怖がって……ごめんね?」
鬼「いいさ、それより。野球の話、いいかな?」
死神「うん! 大歓迎だよ!」
476 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:38:29.16 ID:o9tOmBp20
俺「雨降って、なんとやら。か」
死神「また、キミに助けられたね」
俺「俺は何もしてないよ」
死神「ううん、キミが居なかったらボク、きっと何もできなかった……ありがとう」
俺「おいおい、まだ何も始まってないだろ? その涙は最後までとっとけよ」
死神「……うん」
俺「それじゃあ明日から練習するからな!」
鬼「はい!」
477 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:39:12.24 ID:o9tOmBp20
俺「……それより、焼肉って言葉が何かひっかかるな?」
俺「なんだかよく思い出せないが……そんな約束をしてた気がする」
俺「ま、いっか。忘れるくらいだからきっと大した事じゃないんだろう」
478 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:43:02.39 ID:o9tOmBp20
◇ ◇
神の使い「あ。天使さん、こんなとこに居たの?」
天使A「ふん……お前か」
神の使い「さっき死神ちゃんから連絡があって、野球のメンバーを揃えたらしいわよ」
天使A「どうせ寄せ集めのクズだろ」
神の使い「それが、どうやら地獄の二大グループのリーダーを懐柔したらしいわ」
天使A「何?」
神の使い「今年の交流戦は盛り上がりそうね?」
天使A「……」
479 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:49:13.65 ID:o9tOmBp20
神の使い「それじゃあ、仕事があるからまたね〜」
天使A「おい。ちょっと待て」
神の使い「なによ〜、こう見えても忙しいんだからね」
天使A「あの人間は何者なんだ」
神の使い「さあ? ただの人間でしょ?」
天使A「……ただの人間に、負けたとでも?」
神の使い「そうね、天使さんはただの人間に負けたのよ」
天使A「……何を企んでいる」
神の使い「人聞きの悪いこと言わないでよ、ただちょっと腰が悪そうだから治してあげただけよ」
482 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:53:14.63 ID:o9tOmBp20
神の使い「じゃあね、こっちは試合の準備でホント忙しいんだから。バイバイ」
天使A「……」
天使A「地獄の二大グループのリーダーに、あの人間……」
天使A「落ちこぼれの死神のくせに噛み付いてくるじゃないか」
天使A「気に入らないな……」
486 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 13:00:14.72 ID:o9tOmBp20
天使A「少し……調べてみるか……、おい。そこのお前」
「は、はい!」
天使A「早く来いウスノロが。誰が地獄へ落ちるはずだったお前を救ってやったと思うんだ?」
「へへ……その節はどうも……。それより、な……なんでございましょうか天使様」
天使A「お前、今から地獄へ行け」
「えぇ?! 地獄ですか?!」
天使A「……」
「わ……わかりました……」
487 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 13:04:13.44 ID:o9tOmBp20
◇ ◇
俺「はい、ストライクバッターアウト」
餓鬼「っかー! どうしてこう当たらないもんかね!」
俺「インパクトの瞬間に顔が明後日の方向を向いてるからな、それで当たったらマグレの部類だよ」
餓鬼「アタイのバッティングにケチつけよってのかい!」
俺「どうしてそうなる」
餓鬼「……教えろよ」
俺「あん?」
餓鬼「どうしたら……打てるようになるんだよ」
俺「なかなか素直じゃないか」
餓鬼「う、う……うるせー! 早く教えろってんだい!」
488 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 13:23:03.34 ID:o9tOmBp20
死神「ねぇ、ゴロの捕り方なんだけど……」
俺「ん? 前言った通りに膝を軽く曲げてだな……」
餓鬼「ちょっと! 今はアタイが教わってるんだよ!」
死神「う……。ちょ、ちょっとくらいいいじゃないか。餓鬼は朝からずっとバッティング見てもらってるじゃないか」
餓鬼「なんだって? おい死神、ちょっと可愛いからって調子に乗ってんじゃ……」
俺「はいはい、そこまでそこまで。順番に見てやるから、ケンカすんな」
死神「うん」
餓鬼「アンタがそう言うなら……」
522 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 22:03:43.61 ID:o9tOmBp20
魑「すなおじゃないなー」
魅「すなおじゃないなー」
魍「餓鬼様ー顔真っ赤ー」
魎「すなおじゃないなー」
餓鬼「うるさいよアンタ達! 黙って見てな!」
523 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 22:19:16.24 ID:o9tOmBp20
鬼「すまない、少し遅れてしまった」
俺「おう、来たな」
鬼「ちょっと道具を探していてね」
俺「そうかそうか、じゃあ早速練習するか」
鬼「わかったよ」
525 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 22:24:06.63 ID:o9tOmBp20
餓鬼「まさかアンタも野球するなんてね、どういう風の吹き回しだい?」
鬼「餓鬼……」
餓鬼「いつも穴倉に篭りっきりのあんたがこんなとこに出てくるなんてね」
鬼「いや、その……。僕も変わりたいんだよ」
餓鬼「へぇ」
鬼「あの人と一緒だったら、不思議とやれそうな気がするんだ」
526 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 22:49:58.87 ID:o9tOmBp20
餓鬼「……アタシはまだ、今までアタシらの間に起こった事を全部許したわけじゃないんだよ」
鬼「餓鬼……」
餓鬼「でも、今はアタイらは野球をやりにきたんだよ」
鬼「そ、そうだな」
餓鬼「だから、いつまでもそんな暗い顔してんじゃないよ」
534 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 23:54:57.55 ID:o9tOmBp20
◇ ◇
魑「あのねー」
魅「さっきー」
魍「そこでー」
魎「野球ー」
魑「やりたいってー」
魅「いってるー」
魍「にんげんがー」
魎「いたよー」
535 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:00:05.31 ID:i70Q0rbZ0
餓鬼「人間?」
魑「うん」
魅「そうだよー」
魍「だからー」
魎「つれてきたー」
「ほ……ホントにツノが生えてる……」
餓鬼「野球やりたいってのはアンタかい?」
「……お……鬼だ……」
餓鬼「?」
「……うぅ……早く帰りたい……こんなところ……」
餓鬼「ったく、独り言の多い人間だね」
536 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:01:02.97 ID:tWSD0SE50
まさか・・・
539 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:05:53.84 ID:i70Q0rbZ0
死神「捕球と同時にスタートを切るんだね?」
俺「そうそう、それがタッチアップな。フライが上がったらハーフウェイに出るか塁にタッチアップ狙ってヘバり付くかは状況判断が必要だ」
餓鬼「あ、丁度いいところに戻ってきたね」
俺「あん?」
餓鬼「なんでもこの人間が野球やりたいらしい」
俺「野球を?」
「あぁ……そうだ……野球がやりたいんだ」
俺「もちろん大歓迎さ」
「本当か?!」
俺「あぁ、もちろんだとも」
541 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:09:58.53 ID:i70Q0rbZ0
俺「よろしく頼むよ、あなたの名前を聞かせてもらってもいいかな?」
「……」
俺「どうしたんだ?」
「お前……!」
俺「うん?」
「前に一緒に働いていたろ? 覚えてないか?!」
俺「?」
餓鬼「なんだ、知り合いだったのかい?」
俺「いや……? 誰だ……?」
先輩「お前の先輩だよ、ほら! よく酒をオゴってやっただろ?!」
542 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:13:41.83 ID:i70Q0rbZ0
俺「先輩?」
先輩「そうだよ! いやぁ、よかった。地獄で野球やってる人間ってお前の事だったのか」
俺「……?」
先輩「どうしたんだよ、久しぶりに会えたんだからもっと喜べよ!」
俺「どこかで会いましたっけ?」
先輩「おいおい、とぼけるなよ。俺とお前の仲だろ?」
俺「う〜ん……思い出せない……」
餓鬼「ちょっと、アンタ。本当に知り合いなのかい?」
俺「らしいな」
餓鬼「らしいって何さ」
俺「いや、それが俺にもよくわからないんだ」
543 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:17:40.79 ID:i70Q0rbZ0
俺「まぁとにかく野球をやりたいなら大歓迎さ、さっそく練習しよう」
先輩「あ……あぁ、そうだな。練習だ、練習」
餓鬼「ちょっと本気かい? こんな見るからに弱そうなヤツ入れて大丈夫なのかい?」
俺「野球をやりたいって言ってるんだ、断る理由は無いだろう?」
餓鬼「それはそうだけど……」
俺「人数は多いに越したことは無いだろ? 練習の効率も上がるさ」
餓鬼「あんたがそう言うなら……」
544 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:22:54.10 ID:i70Q0rbZ0
俺「よーし、今日はこれまで。各自解散してくれ」
鬼「おつかれさま」
俺「おう、お前はこの中で一番捕球が上手いからな。ファーストは任せたぞ」
鬼「うん、なんとかがんばってみるよ」
俺「帰ったらストレッチも忘れるなよ? 明日に響くぞ」
鬼「うん」
先輩「あぁ疲れた」
俺「お疲れ様です」
先輩「ところでお前、ほんとに覚えてないの? 人の事忘れるとかひどくない?」
俺「はぁ……すんません……」
餓鬼「……おい死神」
死神「……うん?」
餓鬼「あとでちょっとツラ貸せや」
545 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:27:26.68 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
餓鬼「どこまで進んでるんだ」
死神「?」
餓鬼「とぼけんな! アイツの記憶の話だ、どれくらい消えてるのかって聞いてるんだよ!」
死神「く……くるしい……、離して……」
546 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:33:20.67 ID:i70Q0rbZ0
餓鬼「知り合いの顔を忘れてるくらいだ、相当進行してるんだろ。いつだ? いつがリミットなんだ?」
死神「し、試合の日がリミットだよ……」
死神「試合が終わったら、俺くんは……」
餓鬼「試合の日って……もうすぐじゃないか」
死神「……うん」
餓鬼「せっかく……、せっかく会えたってのに……」
547 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:43:50.74 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
天使A「で、どうだった。そっちの様子は」
先輩「と、特には。何も変わった様子は無いようで……」
天使A「何も?」
先輩「は、はい」
天使A「そんなわけないだろう、だってあの人間は……」
先輩「?」
天使A「ふん……まぁ良い。おい、お前、もういいぞ」
先輩「え? あ、あの? もう良いとは?」
天使A「消えてろ、クズが」
549 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:46:35.60 ID:i70Q0rbZ0
神の使い「はい待った待った、そこまでよ」
天使A「……ち」
神の使い「もう、そういう行為は控えるようにって言ってるよね? 後で大変なのはこっちなんだから」
天使A「知るか」
神の使い「試合の正式な日程が決まったから通達に来たわ」
天使A「いつだ?」
神の使い「2週間後よ」
550 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:50:36.05 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
死神「試合、2週間後だって」
俺「ついに来たか。長かった事やら短かった事やら」
死神「そうだね」
俺「不安は無いか?」
死神「……うん」
俺「珍しく強気じゃないか」
死神「キミと一緒だからね」
俺「はは、それは光栄な事ですね。死神様」
553 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 01:00:12.60 ID:i70Q0rbZ0
死神「でも。もし試合に負ければボクたちみんな……」
俺「そんな事にはならないさ」
死神「でも」
俺「でも禁止、言い出したらキリが無いだろ?」
死神「うん……」
俺「前に勝つって約束したろ? 勝ってお前を楽にしてやるからさ」
585 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 12:52:59.84 ID:i70Q0rbZ0
俺「それじゃそろそろスタメンと発表しようと思う」
投手 魑
捕手 下っ端
一塁 鬼
二塁 死神
三塁 餓鬼
遊撃 俺
外野 魅
魍
魎
俺「最初はこれで行くけど、やばいと思ったら投手はすぐ変えていくつもりだ」
586 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 12:54:59.27 ID:GtPs3owH0
何気に魑魅魍魎が超優遇されてんなwww
587 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 12:56:14.00 ID:i70Q0rbZ0
魑「おれピッチャーかー」
魅「おれ外野だー」
魍「おもろー」
魎「おれもー」
餓鬼「あいつが投手で大丈夫なのかい?」
俺「たぶん……」
餓鬼「たぶんって」
俺「どんな強打者でも初対戦の投手ってのはやりにくいもんさ、それに掛ける」
餓鬼「たいしてアテにしてないって事かい?」
俺「まぁそう言うなって、これでも必死に考えた結果だよ」
588 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:03:44.58 ID:i70Q0rbZ0
餓鬼「に、しても。結局あの人間も来なくなっちまったし、根性の無いヤツだったね?」
俺「何か用事でもあるんじゃないか?」
餓鬼「こんなトコで人間がする用事って何だろうね?」
俺「さぁ……。まぁいいさ、試合の日は来てくれるだろ」
餓鬼「いいのかい? 来ないかもしれないよ、天国チームのスパイだったのかも」
俺「だとしても」
餓鬼「?」
俺「俺は、信じてる」
餓鬼「まったく、アンタって人は……」
589 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:07:33.70 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
俺「とうとう明日だな、試合」
死神「……うん」
俺「ここに来てお前と会って野球して、色んなヤツとも知り合えた。楽しかったよ」
死神「そう」
俺「負けたらどうなるとか、そんな事よりも。明日は精一杯野球を楽しもう。もちろん勝つのは俺たちだけどな」
死神「あのね、キミ……覚えてないかな?」
俺「ん?」
死神「ボクね、ずっと前にキミと会ってるんだよ?」
590 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:11:14.94 ID:i70Q0rbZ0
俺「そうなのか?」
死神「やっぱり、覚えてない?」
俺「すまんな、最近思い出せない事が多くて」
死神「……ねぇ」
俺「?」
死神「ボク、言ったよね。生前の記憶が無くなったらどうなるか」
俺「あぁ、そんな事言ってたような気がするな」
死神「明日なんだ」
俺「?」
死神「明日、キミの記憶は全部消えちゃうんだよ」
俺「そうか」
592 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:14:44.78 ID:i70Q0rbZ0
死神「そうかって……そんな、他人事みたいに」
俺「試合が終わってからの話だろ?」
死神「……っ」
俺「だったら、それで良い」
死神「キミは……」
俺「大好きな野球を最後までやっていられるなんて、俺は幸せ者だよ。ありがとな、死神」
死神「え?」
俺「お前が俺を誘ってくれただろ? 野球しないかって。今まで凄く楽しかったよ」
死神「そんな……ボクは……、キミを……」
俺「ほら、そんな顔すんな。試合の前日はリラックスしてなきゃだめだぞ?」
594 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:21:27.84 ID:i70Q0rbZ0
俺「勝って天使に一泡吹かせるんだ、明日な」
死神「ごめんね……ごめん……」
俺「何泣いてるんだよ、お前が謝ることないだろ?」
死神「うぅん……ボク、キミにひどい事……」
俺「いいから、もう寝てろ?」
死神「でも……」
俺「いいから、俺はちょっと素振りしてくるからさ」
死神「……うん」
595 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:22:11.89 ID:i70Q0rbZ0
餓鬼「……明日、か」
餓鬼「行っちまうんだね、アンタ」
餓鬼「……明日で終わり」
餓鬼「いや、一つだけ」
餓鬼「……だめだね、それでもあいつは自分よりも死神を優先するだろう」
餓鬼「まったく、アタイもとんだ男に惚れちまったね」
597 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:30:30.20 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
俺「という事で試合の日がやってきました」
鬼「こ……ここが天国かあ……」
俺「地獄とは違って随分華やかな場所だな」
鬼「そ、そうだね」
俺「緊張してんの?」
鬼「そ、そりゃちょっとは」
俺「平常心で居れば大丈夫さ」
598 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:31:46.31 ID:i70Q0rbZ0
魑「俺がエースだー」
魅「お前がエースだったのかー」
魍「俺もエースだー」
魎「そーなのかー」
俺「ほら、あいつらみたいに」
鬼「はは……、善処するよ」
600 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:37:57.35 ID:i70Q0rbZ0
俺「俺らが先攻か、まぁビジターだし当然か」
餓鬼「さっさと始まってくれないかね、さっきからえらく待たせるじゃないか」
俺「頼もしいな、お前は緊張してないみたいだな」
餓鬼「野球の試合なんかで緊張してたまるかってんだ」
俺「心強いよ、サード頼むな。球際をミスしてもショートである程度カバーしてやるから思いっきりやってくれ」
餓鬼「……」
俺「?」
餓鬼「な……なんでもないよ!」
俺「そうか?」
601 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:40:43.08 ID:i70Q0rbZ0
死神「わぁ……すごい人」
俺「だな、甲子園みたいだ」
死神「こうしえん?」
俺「おう、俺も一度は甲子園に出場してみたいと思ってたんだよ」
死神「そ、そうなんだ」
俺「いや……? 出場したんだっけ?」
死神「キミ……もう記憶が」
俺「はは、野球の試合するのに記憶なんて関係ないよ」
審判「集合!」
俺「よっしゃ! いこうか!」
「オォ!」
602 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:00:28.39 ID:i70Q0rbZ0
1回裏
下っ端「あれ? 表の攻撃は?」
俺「見事に三者凡退だったよ」
下っ端「え? あ、あぁ。そうでやしたか」
餓鬼「おい三下、それ以上でしゃばったら後でコロス……」
下っ端「ひぃ?! いくら三振したからって当たらないでくださいよ?!」
603 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:02:14.18 ID:i70Q0rbZ0
キィン!
俺「サード!」
餓鬼「あらよ……っと」
審判「アウト!」
俺「やるじゃないか」
餓鬼「これくらい朝飯前だよ、誰に教えてもらったと思ってるんだい」
俺「頼もしいな」
餓鬼「へへへ……」
605 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:08:17.03 ID:i70Q0rbZ0
俺「ピッチャー! ボール走ってるよ!」
魑「俺がエースだー」
魅「あいつがエースだったのかー」
魍「いやいや俺がー」
魎「どうぞどうぞー」
キィン!
死神「ライト! 行ったよ!」
魍「まかせとけー」
魍「オーライーライーラーイー」
審判「アウト! チェンジ!」
606 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:14:16.30 ID:i70Q0rbZ0
2回表
天使A「来たな、人間」
俺「お手柔らかに頼みますよ」
天使A「……ふん」
シュッ!
俺「速っ……」
審判「ットライク!」
天使A「どうした人間、手も足も出ないか」
俺「鬼に金棒。死神には大鎌」
天使A「……?」
俺「俺にはバットってね」
天使A「何を……」
俺「こっちは今日、負けるわけにはいかないんだよ」
607 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:20:01.22 ID:i70Q0rbZ0
俺「お前から特大のホームランを打って仕舞いだ」
天使A「なん……だと……」
俺「さぁ来いよ、打ち砕いてやる」
天使A「減らず口を!」
サッ
天使A「バント……だと……?」
審判「セーフ!」
天使A「……ち、小賢しいマネを」
608 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:23:47.24 ID:i70Q0rbZ0
天使A「まぁ良い、後のヤツを仕留めれば……」
俺「クイックがなってないぜ、天使様」
遊撃手「走った!」
天使A「何……?」
審判「セーフ!」
鬼「ノーアウトランナー2塁……す、すごい……」
天使A「ち……チョロチョロ動きやがって……」
609 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:27:44.29 ID:i70Q0rbZ0
俺「……」
鬼「三盗だ!」
俺「……っ」
ズサァァアア
審判「セーフ!」
餓鬼「やった! やりやがった!」
俺「へへっ、これで一気にチャンス到来ってな」
天使A「……く」
610 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:31:08.86 ID:i70Q0rbZ0
俺「……」ササッ
下っ端「むむ、あのサインは……」
俺「……」コクリ
下っ端「わかりやしたぜ旦那……男下っ端、命にかえてでも旦那を……」
審判「バッターアウト!」
下っ端「あ」
餓鬼「何やってんだよ! バカやろう!」
下っ端「し……しまった……恰好つけようとしてるうちに三振していた……」
611 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:36:19.71 ID:i70Q0rbZ0
審判「バッターアウト! チェンジ!」
餓鬼「くそ……今ので1点もとれなかったか」
俺「まだ試合は始まったばかりだよ」
餓鬼「でも……! せっかくアンタがチャンスを作ったのに!」
俺「いいって、あと7回もあるんだ。じっくり攻めるさ」
613 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:42:52.88 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
神の使い「やあ」
天使A「試合中に何の用だ」
神の使い「野球の神さまが到着されたわよ」
天使A「……そうか」
神の使い「この試合で負けようもんならあんたの信頼、ガタ落ちね?」
天使A「……負けるとでも?」
神の使い「まさか、そうならないように私がココに来たのよ」
天使A「余計な事はするな」
神の使い「あら?」
615 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:01:06.81 ID:i70Q0rbZ0
天使A「お前の力など無くても勝てる」
神の使い「後悔するわよ?」
天使A「落ちこぼれの死神なんかに負けてたまるか……、俺が次の神になるんだ……」
神の使い「あらあら」
616 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:05:23.81 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
俺「……マズいな……」
鬼「あぁ……」
俺「ベンチの空気が死んだ……」
鬼「まあ……3点も一気に取られればね……しかも連続タイムリーエラーで……」
618 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:09:44.69 ID:i70Q0rbZ0
魑「しっかりとれよー」
魅「おれのせいかよー」
魍「おまえのせいだよー」
魎「おまえのエラーだろー」
俺「あー、はいはい。ケンカすんなお前ら」
死神「ごめんね、ボクがしっかり捕っていれば……」
俺「いいっていいって、気にすんな。3点くらいいつでも取り返してやる。そうだろ?」
餓鬼「って言っても……こっちはここまであんたの一安打だけじゃないか」
俺「どんな投手にも一試合に何球かはヌけた球が来るもんだ、それを見逃さず打っていけば必ずチャンスは来る」
餓鬼「そう簡単に打たせてくれるかい、あの天使が」
俺「できる」
餓鬼「……っ」
俺「できるさ」
餓鬼「……うん」
620 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:16:11.27 ID:i70Q0rbZ0
俺「さあ、次はお前の打順からだろ? しっかり頼むぜ」
餓鬼「あ……あぁ……」
俺「まずは塁に出る事だ、かっこ悪くたって何でも良い。お前のスイングはこの中で一番速いからな、当たれば飛ぶはずさ」
餓鬼「気休めは良いよ」
俺「ボールをしっかり見るんだぞ!」
餓鬼「はいはい、わかったよ」
審判「プレイ!」
餓鬼「……バカなのかい? アンタは」
餓鬼「この試合が終わったら……消えちまうってのに」
餓鬼「あぁ……負けたらどうせアタイらも全員消えちまうんだった」
餓鬼「それなのに、」
餓鬼「どうして、そんなに笑ってられるんだい」
餓鬼「まったく、わからない男だよ。アンタは」
621 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:26:23.54 ID:i70Q0rbZ0
審判「ットライクツー!」
餓鬼「ボールをよく見ろって言われてもね」
餓鬼「さっきからぼやけてよく見えないんだよ」
餓鬼「アンタのせいだ、バカやろう」
餓鬼「そんなバカに惚れちまったアタイは、大馬鹿だけど……ね!」
キィィン!
俺「おおお!」
鬼「打った……! あの天使から……」
死神「餓鬼……」
俺「よーし、この回だ。一気に畳み掛けるぞ」
623 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:30:42.97 ID:i70Q0rbZ0
天使A「バカな……」
餓鬼「へへっ、どんなもんだい」
天使A「くそっ」
俺「鬼! 続けよ!」
鬼「そんな無茶言わないで……」
キィン!
鬼「う、打てちゃった……」
魑「なんだー?」
魅「れんだー」
魍「なんだー?」
魎「れんだー」
天使A「く……地獄の住人の分際で……」
624 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:43:37.56 ID:i70Q0rbZ0
死神「宜しくお願いします」
天使A「死神ぃぃ……」
死神「……」
天使A「打たせるわけにはいかない……こんな落ちこぼれに」
死神「……早く投げておいでよ」
天使A「死神のくせに命令すんな! 俺がお前より優れてるって事をあのジジイにわからせてやる!」
死神「……」
天使A「くらえ! 死神!」
死神「……」
コツン
天使A「バント……、くそ!」
625 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:46:44.24 ID:i70Q0rbZ0
死神「キミの方がボクよりも凄いって事くらい、皆知ってるよ」
天使A「?!」
死神「でもボクらは勝つよ。チームでね」
天使A「チーム……だと……」
俺「ナイスバント」
死神「……うん」
俺「後は任せとけ」
死神「うん……まかせた」
626 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:49:53.73 ID:i70Q0rbZ0
天使A「人間……」
俺「よろしくな」
天使A「……」
俺「ありがとな天使、楽しかったよ」
天使A「?」
俺「お前みたいな凄いピッチャーが居てくれて良かった」
天使A「……何を」
俺「俺の最後の試合なんだ、もっと楽しませてくれるんだろうな?」
天使A「……ふん、お前に言われるまでもない」
俺「そうこなくちゃ」
628 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:00:26.38 ID:i70Q0rbZ0
俺「さあ、来いよ!」
天使A「いくぞ! 人間!」
餓鬼「アンタ……」
鬼「俺さん……」
下っ端「旦那……」
魑「うてよー」
魅「うてよー」
魍「男なーらー」
魎「ボールにくらいつけー」
死神「打って! 俺くん!」
631 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:03:42.58 ID:i70Q0rbZ0
カキィィ……
天使A「……」
俺「……」
……ィィン
餓鬼「えっと、フライが上がったらどうするんだっけ」
鬼「タッチアップでいいのかな?」
俺「あー……」
俺「ホームランだからそのまま進んでいいんだよ」
633 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:08:33.19 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
俺「さて、そんなこんなで9回の裏なわけだが」
鬼「どうしたんですか? マウンドに内野手集めて」
俺「一通り全員投げたよな」
鬼「えぇ、まぁ」
俺「そんじゃ、最後の美味しいトコいただいでも?」
餓鬼「嫌って言っても投げるんだろ?」
俺「あ、バレました?」
餓鬼「あんたが居たからアタシら集まったんだ、今更誰も文句言わないよ」
俺「それじゃあ、お言葉に甘えるとするよ」
634 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:10:13.37 ID:i70Q0rbZ0
俺「懐かしいな、この感覚」
俺「こうやって投げるのは、一体どれくらい振りなんだろうか」
俺「まぁいいや」
俺「今は、最後のマウンドを楽しみますか」
635 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:12:10.28 ID:i70Q0rbZ0
審判「ットライク! バッターアウト!」
魑「すげー」
魅「はえー」
魍「すげー」
魎「はえー」
餓鬼「あと一人だよ!」
俺「その後一人がやっかいなんだよ」
天使A「……」
638 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:15:18.89 ID:i70Q0rbZ0
天使A「人間……」
俺「野球の神さまってのはこんな展開が好きなのかな」
天使A「ジジイの趣味なんざ知らねぇよ」
俺「そうかい」
天使A「お前を打って、勝つ。前の様にはいかない」
俺「だろうね……、ホントに厄介な打者だよ……」
640 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:19:21.07 ID:i70Q0rbZ0
天使A「さあ来いよ、マウンドに沈めてやる」
俺「不思議だ、どっかで聞いた台詞だよ」
天使A「早く投げて来い」
俺「あぁ……そうさせてもらう……よっ!」
審判「ットライク!」
俺「ふいぃ……」
天使A「今回はスローボールじゃなかったな」
俺「あぁ。全力でいかせてもらいますよ、死神様」
天使A「そうでなくては面白くない」
俺「これが俺の……全力投球……だっ!」
641 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:21:31.74 ID:i70Q0rbZ0
カキィィィィン!
俺「サード!」
餓鬼「……っ」
審判「ファール!」
餓鬼「アタイが……打球に反応できなかった……」
俺「打たせるぞ! 集中しろよ!」
餓鬼「わかってるよ!」
642 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:23:45.45 ID:i70Q0rbZ0
天使A「ち……捉えたつもりが……」
俺「恐ろしいからバット振らないでくれって言ってもいいかな?」
天使A「願い下げだ」
俺「あ、やっぱり?」
天使A「ふふ……不思議だな。お前との勝負は面白い」
俺「俺も同じ意見だよ、できればもっと戦っていたいけどな」
天使A「ふん」
俺「そろそろ決着の時だよ、天使」
天使A「あぁ」
643 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:26:26.87 ID:i70Q0rbZ0
俺「俺が勝ったら、もう死神を苛めるなよ」
天使A「……」
俺「あいつと仲良くしてやってくれ。あいつは、ほんとはもっと友達が欲しいだけなんだよ」
天使A「……」
俺「な? 頼むよ」
天使A「関係ない話だ、俺が勝つんだからな」
俺「おっと、それじゃあ是が非でも勝って願いを聞いてもらわなくちゃな」
651 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:28:28.78 ID:i70Q0rbZ0
天使A「こい! お前を打って! 勝ってやる!」
俺「打てるもんなら……、打ってみやがれ!」
……………………
…………
……
審判「ゲームセット!」
654 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:32:33.16 ID:i70Q0rbZ0
俺「……この場合どうなるんだ」
天使A「さぁな……」
655 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:34:11.38 ID:i70Q0rbZ0
審判「規定により延長戦は無し! 以上3対3により引き分け!」
餓鬼「……アタイらはどうなるんだい?」
鬼「なんか球場が騒然としてきましたね」
魑「なんだー?」
魅「ひきわけだー」
魍「三振とって勝ちじゃないのかー?」
魎「ひきわけだー」
神の使い「……へぇ、誰がこんなシナリオ用意したのかしらね」
656 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:37:06.86 ID:i70Q0rbZ0
俺「ちょっとまて、俺の勝ちだろ?」
天使A「なんでそうなるんだ!」
俺「いや、だって最後三振とったし!」
天使A「な……関係ないだろ! 試合は引き分けだ!」
俺「あぁ?! お前がそれで良くてもこっちは納得いかねぇんだよ!」
天使A「……死神と友達になればいいんだな?」
俺「あん?」
天使A「と……友達に……なればいいんだろ?」
俺「あ。あぁ……、そうだけど」
天使A「ならなってやる、それでいいだろう」
俺「お前……実は良い奴なのか?」
天使A「う……うるせー」
658 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:42:24.69 ID:i70Q0rbZ0
天使A「い……色々苛めて悪かったよ……」
死神「ううん、ボクもう気にしてないよ?」
天使A「そ、そうか?」
死神「うん」
天使A「……次の神になるのは死神、お前だって話を聞いてな……。それで……俺、お前を貶めようとして酷いことを……」
死神「そうだったんだ」
659 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:43:52.25 ID:i70Q0rbZ0
天使A「本当にすまない、今更許して貰えるとは思わないが……」
死神「顔あげてよ、ボクは気にしてないから大丈夫だよ?」
天使A「この試合でわかった……お前こそ次の神に相応しいよ」
死神「ううん、ボクなんかダメだよ。みんなが居ないと何もできなかったもん」
天使A「友達……か」
死神「うん! 今日からボクら、友達だよ!」
天使A「はは……いいのか? こんな天使だぞ?」
死神「ボクだって、こんな死神だよ?」
天使A「ははは……それもそうだな」
死神「うん!」
661 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:49:18.08 ID:i70Q0rbZ0
餓鬼「引き分けか……なんとも締まらない終わり方だね」
俺「そんな事ないさ」
餓鬼「どうして?」
俺「地獄の仲間が一つになった結果だよ、立派だ」
餓鬼「……」
俺「これからずっと皆で仲良く暮らせよな? 死神ともな」
餓鬼「あんた……体が」
俺「あぁ……なんかもうダメらしい、短い間だったけどありがとな」
662 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:51:42.98 ID:i70Q0rbZ0
死神「俺くん!」
俺「死神、お前ってすぐ泣くし何かあったら大鎌もってきてすげー怖かったけど。一緒に居て楽しかったよ、ありがとな」
死神「そんな……ボクこそ!」
俺「だから泣くなって」
死神「キミが……キミが居たから……ボク……」
俺「もう言うな、いいんだ」
死神「……」
俺「もう、いいんだよ」
663 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:53:50.49 ID:i70Q0rbZ0
天使A「人間!」
俺「天使」
天使A「決着はまだついてないからな!」
俺「ふざけんな、アレは俺の勝ちだ」
天使A「だとしたら尚更」
俺「?」
天使A「次は勝ってやる」
俺「はは、楽しみだね」
天使A「……」
俺「最後にお前と戦えてよかったよ、野球ってやっぱり良いもんだな」
天使A「あぁ……」
664 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:56:38.44 ID:i70Q0rbZ0
餓鬼「……」
俺「悲しい顔すんな、餓鬼。またどこかで会えるさ」
餓鬼「もう……! もう会えないんだよ! アタイらは!」
俺「会えるさ」
餓鬼「……っ」
俺「きっと、会える。だからお別れじゃないんだ」
餓鬼「バカ……バカだよ……あんた」
俺「野球、楽しかったろ?」
餓鬼「うん……うん」
俺「だったらずっと続けてくれよ、な?」
餓鬼「わかった……、わかったよ……」
俺「よしよし、良い子だ」
665 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:00:45.51 ID:i70Q0rbZ0
俺「さて、そろそろダメらしい」
俺「一緒に野球やれて、すげー楽しかった。ありがとな!」
俺「また一緒に野球できたらいいな!」
俺「じゃあな!」
669 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:10:07.73 ID:i70Q0rbZ0
……………………
…………
……
部員A「やっきにく! やっきにく!」
俺「うるせー! こっちはデートがかかってんだ!」
670 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:11:14.65 ID:i70Q0rbZ0
妹「はやく投げてきなさいよ! お兄ちゃん!」
俺「おい! お前も空気読んでさっさと打ち取られてろ!」
妹「絶対ヤだ、焼肉なんかどうでもいいけど絶対打つもん」
俺「くっそ……くらえ!! これでゲームセットだ!」
妹「っ!」
カキィィィィン!
俺「なん……だと……」
部員A「うおおおおおおおおおおおおお!! よっしゃあ焼肉だ!!」
部員C「ポール走なくなったぁああああ!!!!!」
部員D「やった! やったぜ!!」
673 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:13:23.79 ID:i70Q0rbZ0
俺「嘘だろ……渾身のストレートだよ……?」
妹「ふふん? どう? お兄ちゃん」
俺「畜生! お前ら! 焼肉いくぞ! バカヤロウ!」
部員A「もちろん食べ放題っすよね?!」
俺「あぁもう! 好きなだけ食べてろ!」
先生「ふふ、みんな楽しそうだなあ」
妹「バカばっかりですよ、野球部」
先生「いいじゃない、それで」
妹「まぁ……そうですね」
俺「いいわけあるかー!」
674 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:18:37.85 ID:i70Q0rbZ0
神の使い「えぇ……滞りなく……はい」
神の使い「時間を戻しておきましたので……えぇ」
神の使い「こちらでの記憶は全て消去しましたので、問題は無いかと」
神の使い「彼らもですか?」
神の使い「わかりました。神さまがそう言うなら」
675 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:21:25.62 ID:i70Q0rbZ0
神さま「……あれほどの人間、転生させるには惜しい」
神さま「まだまだ面白い野球を見せてくれそうじゃからの」
神さま「ついでにお前らの望みも叶えてやろう」
神さま「ふぉっふぉっふぉ……」
676 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:25:11.73 ID:i70Q0rbZ0
-春-
妹「春だね」
俺「あー、もうそんな季節?」
妹「そうだよ、甲子園決勝すごかったね。一回戦から決勝まで完封勝利だったもん」
俺「だな。全国にはあんなのがゴロゴロいるからな〜」
妹「楽しみ?」
俺「監督としては楽しめないな……個人的には楽しみなんだが」
妹「結局楽しんでるんじゃない」
俺「ははは、バレたか」
678 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:29:55.26 ID:i70Q0rbZ0
妹「それで、今年の夏は甲子園には行けそうですか。監督」
俺「春といえば新入生、新戦力に期待だよ」
妹「期待しないほうが良いよ? ほとんど毎年サッカー部と陸上部にもっていかれちゃうんだよね」
俺「え? そうなの?」
妹「うん」
俺「それは困った……」
妹「だから勧誘しないと、一年生が入部しないと話にならないもん」
680 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:34:12.41 ID:i70Q0rbZ0
俺「まじか……」
妹「頼むよ、カントク?」
俺「ま、その辺りはなんとかなるでしょ」
妹「あれ? 部室の前に誰か居るよ? 新入生かな」
俺「あれ。ほんとだ、おーい」
「あの……」
妹「野球部に入部希望かな?」
「アタイら、ここの野球部に入りたいんだけど」
俺「おう! 一緒に野球しよう!」
ED曲「sugar!!」
682 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:36:39.72 ID:i70Q0rbZ0
妹「で、あたしの話きいてた?」
俺「あぁ、すまんすまん。何の話だっけ?」
妹「もう! しっかりしてよ!」
俺「それで、何の話だって?」
妹「野球の話だよ」
687 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 19:00:16.22 ID:i70Q0rbZ0
おしまいおしまい。
一応本編的なものは終わりです
読んでくれてありがとうでした
688 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 19:04:15.53 ID:yaLG2JgYO
乙です
面白かった
691 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/13(日) 19:11:42.60 ID:swsVa0M6O
おつ!野球はいいものだぞー
694 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/13(日) 19:24:13.93 ID:qCEFVWaFO
乙
697 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 19:43:17.50 ID:9/oAG9DE0
乙!
楽しめたよ!
698 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 19:43:43.83 ID:/5x7sahQ0
sugar!!と野球って・・・
>>1はhttp://www.nicovideo.jp/watch/sm7134953これ見ただろww
701 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 19:53:52.58 ID:i70Q0rbZ0
>>697
ありがとう!
>>698
なんだこれワロタww
ttp://www.youtube.com/watch?v=-lNeSKssRus
俺が見てたのはこっちだったよw
723 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 20:40:33.95 ID:a6OP3Jo9O
乙でした。
次回作も楽しみにしています。
死神もえ
730 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 20:48:05.10 ID:DM2/orPp0
乙
しばらく野球してなかったけどやりたくなってきたあああ
755 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/13(日) 21:05:34.84 ID:5vKfBjN10
乙、面白かったぜー
甘酸っぱい!でもしょっぱい!
769 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 21:25:01.90 ID:i70Q0rbZ0
俺「高校野球の応援がすごいらしい」
妹「ブラスバンド聴くと夏! って感じするよね」
俺「俺はチアリーダーに目がいってしまうけどな」
妹「え?」
俺「え?」
774 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 21:31:45.66 ID:i70Q0rbZ0
俺「好きな外国人選手とか居るか?」
妹「ムーアかな」
俺「お前阪神好きだもんな」
妹「オリックスに行ってからも応援してたよ!」
俺「おぉ、そうなのか」
妹「うん」
810 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 22:39:12.87 ID:i70Q0rbZ0
ピ
TV『芸能人IQクイズ!』
ピ
TV『みんな知ってる?! 常識! 非常識?』
ピ
TV『この件に対し容疑者は「ユニフォーム姿が見たかった」と意味不明な事を述べており〜』
ブチン
妹「あー、もうシーズンオフだっけ」
826 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 22:59:35.12 ID:i70Q0rbZ0
俺「来年の順位予想?」
妹「まずはセリーグからいってみよう」
姉「あたしはあそこの球団が勝つと思うんだけど」
妹「どこ?」
姉「セレッソ」
俺「ある意味球団だけどそれサッカーだから」
857 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 23:52:29.26 ID:KvYGZW4j0
>>855
乙!
楽しかったよ!
859 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 23:53:21.71 ID:Vr+43m2QO
気が向いたらまた続編書いてくれ
乙でした
860 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 23:59:54.71 ID:i70Q0rbZ0
>>859
涙のピースサインでググってくだしあ
ではノシ
転載元
妹「野球の話だよ」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1260355392/
関連記事
1、妹 「野球的な何か」
2、妹 「野球しようよ」
3、妹 「野球の話だよ」
SS作者HP
涙のピースサイン
1、妹「野球的な何か」
2、妹「野球しようよ」
3、妹「野球の話だよ」
SS作者HP
涙のピースサイン
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 19:43:12.86 ID:tjykEtRh0
俺「あん? 何の話だって?」
妹「今回は野球の話だって」
俺「だから何が?」
妹「タイトルよ」
俺「タイトルか」
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 19:45:45.61 ID:tjykEtRh0
妹「引退だって」
俺「誰が?」
妹「赤星」
俺「ふーん……赤星ね」
俺「え?」
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 19:49:17.44 ID:tjykEtRh0
俺「野球が上手い人の代名詞と言えば」
妹「4番エース」
俺「そりゃ昔の話だな」
妹「じゃあ4番サード」
俺「誰の漫画だっけそれ」
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 19:54:04.33 ID:tjykEtRh0
俺「プロと大学生が試合したらしい」
妹「引き分けだったね」
俺「アレは引き分けというよりむしろ痛み分けだったな」
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:01:55.53 ID:tjykEtRh0
俺「そういえば、プロVS大学生の試合で解説が怒ってたな’田中! 出て来いよ!’って」
妹「星野さん?」
俺「うん」
妹「でもWBC……」
俺「それは言っちゃダメ」
妹「なんで?」
俺「ダメったらダメ」
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:05:08.73 ID:tjykEtRh0
俺「村田に引き続き内川もか……」
妹「何が?」
俺「1年契約」
妹「来期にFAするため?」
俺「首位打者とホームラン王が抜けたら一体どうなるんだ……」
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:13:19.30 ID:tjykEtRh0
妹「21と言えば?」
俺「江夏の21球」
妹「福盛の」
俺「もう許してやれよ」
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:15:11.86 ID:tjykEtRh0
俺「野球部だった奴にしかわからない事?」
妹「う〜ん、色々あると思うけど」
俺「アレだな」
妹「うん?」
俺「’ユニフォームで一番汚れない箇所は内もも’ってのはどうだ?」
妹「あ〜……、そうかも」
俺「ここだけ汚れてないもんな」
妹「お兄ちゃん!」
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:18:48.46 ID:tjykEtRh0
俺「かっこいいと思うプレー?」
妹「うん」
俺「外野のクッションボールを素手で捕球して二塁で刺す、とか」
妹「それよりフェンス直撃の打球を捕球できると見せかけて進塁止めるプレーの方が」
俺「あー」
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:22:03.28 ID:tjykEtRh0
俺「それ新庄がよくやってたな」
妹「あたしもこの前やってみたの」
俺「おぉ、どうだった?」
妹「上手くいったんだけど……」
俺「?」
妹「ランナー刺せなかった……」
俺「仕方ない、あれはあいつにしかできん」
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:28:31.63 ID:XBeZKqetO
もしかして野球的な何かの人?
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:55:12.70 ID:tjykEtRh0
>>19
そです。
規制解除来てたからスレ立ててみますた
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:45:28.70 ID:tjykEtRh0
俺「野村夫妻が訪れる100均ショップがあるらしい」
妹「ちょっと最近テレビ出すぎじゃない?」
俺「連日引っ張りダコだな」
妹「そうだね、三タコ四タコだね」
俺「それはなんか違う気が……」
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:48:54.64 ID:tjykEtRh0
俺「監督に必要なのは判断力と決断力らしい」
姉「さっきテレビで聞いたわよそれ」
俺「俺に足りないのは……」
姉「ルックスじゃない?」
俺「ほっとけ」
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:50:46.03 ID:tjykEtRh0
姉「このダルなんとかって人、すごいわね」
俺「あぁ、日本を代表するエースだな」
姉「年俸三億円だって」
俺「らしいな」
姉「あんたと同い年なのにね」
俺「うるさいよ」
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:52:48.44 ID:tjykEtRh0
俺「だいたい、ダルビッシュの事何か知ってるのかよ、ねーちゃん」
姉「失礼ね、あたしだってそれくらい知ってるわよ」
俺「あん?」
姉「サエコの旦那さんでしょ?」
俺「そこか……」
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 20:58:24.53 ID:tjykEtRh0
俺「日本シリーズで魅せたあの投球術とか」
姉「知らない」
俺「WBC決勝のあのウイニングショットとか」
姉「わかんない」
俺「さすがねーちゃんというか何と言うか……」
姉「あたし野球の事なんかわかんないもん」
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:01:03.43 ID:tjykEtRh0
俺「中学の時ダルビッシュと対戦したけど、その時から別格だったよ。バットに掠りもしなかった」
姉「ふーん」
俺「ふーんって」
姉「興味ない」
俺「あ、そ」
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:02:27.77 ID:tjykEtRh0
姉「でも、あたしにもあんな稼いでくれる旦那さんが居ればとは思うけどね」
俺「そういえば」
姉「?」
俺「ねーちゃんの彼氏さんって、何やってる人だっけ? 俺会った事ないんだけどさ」
姉「言いたくない」
俺「あん?」
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:06:20.45 ID:tjykEtRh0
俺「未成年なのに飲酒して契約解消されそうな選手が居るらしい」
妹「未成年なのに喫煙して謹慎くらった選手も居るよね」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:09:08.15 ID:tjykEtRh0
俺「日ハムの藤井がFAで巨人入りするらしい」
妹「巨人キラーが巨人入りかぁ」
俺「今年のオフは話題がいっぱいだな、元オリックス・古木のプロレス参戦とか」
妹「ある意味シーズンより面白いよね」
俺「シーズンオフの正しい楽しみ方だよ」
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:13:31.34 ID:tjykEtRh0
俺「休日だしキャッチボールでもするか」
妹「うん」
俺「カーブの様な愚痴〜♪」
妹「消える魔球の様な優しさ〜♪」
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:18:13.36 ID:tjykEtRh0
俺「ちょっと身体の開きが早いな」
妹「開き?」
俺「左肩でタメを作る感じで投げてみろ、サイドハンドなら尚更だ」
妹「こう?」
俺「違う違う、もっとこう……」
妹「こう?」
俺「そうそう、そんな感じで」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:21:34.16 ID:tjykEtRh0
姉「ねぇ、母さん」
母「なあに?」
姉「いつも思うけどあの二人くっつきすぎじゃない? スキンシップにも程ってもんが」
母「あらあら、うふふ」
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:24:16.69 ID:tjykEtRh0
俺「ところで妹よ」
妹「な〜に? お兄ちゃん」
俺「ねーちゃんの彼氏について何か知らんか?」
妹「お姉ちゃんの彼氏さん?」
俺「うん」
妹「あぁ、どこだかの球団の選手でしょ?」
俺「あん?」
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:26:06.92 ID:tjykEtRh0
妹「どこって言ってたかな……でもたぶん関東のどこかだと思う」
俺「え? マジな話?」
妹「そうだよ」
俺「知らなかった……」
妹「そりゃそうだよ、誰にも言っちゃだめって……あ」
俺「あん?」
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:29:33.36 ID:cDAbWdxpO
ダルビッシュは高校生の頃は変化球でかわしすぎかなと思ってたけど
なんか凄くなっちゃった
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:30:11.53 ID:tjykEtRh0
妹「言っちゃダメだよ?」
俺「言わないって」
妹「あたしから聞いたって言わないでね」
俺「言わない、言わないから」
妹「絶対、絶対だよ! もしお姉ちゃんにバレたら……」
姉「バレたらどうなるって?」
妹「あたしがお兄ちゃんに、お姉ちゃんの彼氏さんがプロ野球選手だよ、って言った事がお姉ちゃんにバレたらお兄ちゃんのせいなんだからね!」
姉「へー」
俺「……」
妹「……」
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:38:45.85 ID:tjykEtRh0
妹「ご……、ごめんね。お姉ちゃん」
姉「別にいいわよ、それよりご飯よ」
妹「え? あ、うん……」
姉「今日はお父さんお得意のオムライスだってさ」
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:46:05.93 ID:tjykEtRh0
妹「ねぇ」ヒソヒソ
俺「なんだよ」ヒソヒソ
妹「お姉ちゃん、あれ絶対怒ってるよね」ヒソヒソ
俺「そうか?」ヒソヒソ
妹「そうだよ」ヒソヒソ
俺「ねーちゃんが怒ったらもっと怖いよ」ヒソヒソ
妹「だからって普段どおりに接せられる方がもっと怖いよ」ヒソヒソ
俺「たしかに……」ヒソヒソ
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:48:04.98 ID:tjykEtRh0
父「はっはっは! 今日はとーさんが腕にヨリをかけて作ったオムライスだ! 魂で食せ、少年少女たちよ」
姉「いただきまーす」
妹「……いただきまーす」
俺「……いただきまーす」
父「あ? あれ? なんか暗くない?」
姉「そう? 普通よ」
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:53:05.38 ID:tjykEtRh0
姉「……」
妹「……」
俺「……」モグモグ
父「……うぅ」
50 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/09(水) 21:55:33.71 ID:TrC2bC/Y0
父www
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 21:55:56.42 ID:tjykEtRh0
父「とーさんは、とーさんはなぁ……」
父「こんな一昔前のパリーグの外野席みたいな食卓は嫌だぁあああ!」
母「あらあら、うふふ」
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:02:24.94 ID:tjykEtRh0
俺「……」
妹「……」
姉「ごちそうさま」
俺「!」
妹「ね、ねぇ。お姉ちゃん」
姉「なあに?」
妹「ちょ、ちょっといいかな?」
姉「ごめん、午後からちょっと出かけなきゃいけないの。後でもいい?」
妹「あ……、うん……」
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:12:53.67 ID:tjykEtRh0
父「キミタチ、お姉ちゃんと何かあったのか?」
俺「それが、何もなかったんだよ」
父「あん?」
俺「だから、何もなかったんだって」
父「ほほう?」
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:18:32.43 ID:tjykEtRh0
俺「カクカクシカシカ」
父「なるほどなぁ」
俺「そうなんだよ、ねーちゃんの彼氏さんがまさかプロ野球選手だったとは」
父「とーさんは知ってたよ」
俺「え?」
父「この間、挨拶に来てたからな」
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:20:18.56 ID:tjykEtRh0
俺「いや、ちょっと待て。初耳だぞそれ」
父「あー、すまんすまん。お前と妹は野球部の練習で居なかったからな。後で言おうとしてたんだがすっかり忘れてたよ」
俺「忘れてたっておい」
父「はっはっは、すまんすまん」
俺「いや、別にいいんだけどさ」
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:22:03.01 ID:tjykEtRh0
俺「に、しても」
妹「結婚かぁ」
俺「あのねーちゃんがなぁ……」
妹「野球全然知らないお姉ちゃんが……」
俺「世の中わからんなぁ……」
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:30:05.37 ID:tjykEtRh0
俺「どこで式挙げるんだろうな」
妹「野球場じゃない?」
俺「東京ドームとか?」
妹「西武ドームかも」
俺「すげぇな……」
73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:35:00.95 ID:tjykEtRh0
姉「ただいま〜」
妹「あ、お姉ちゃんおかえり!」
姉「ただいま」
妹「お姉ちゃん結婚おめでとう!」
姉「あ、聞いたの?」
妹「うん! お姉ちゃん何も言ってくれないから、聞いた時すごくびっくりしちゃった! でも嬉しい!」
姉「うん、ありがとね」
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:36:53.43 ID:tjykEtRh0
俺「ねーちゃん、おめでと」
姉「あんた、後でちょっと部屋きなさい」
俺「あん?」
姉「いいから、来なさい」
俺「なにこの妹との対応の温度差……」
76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:39:33.69 ID:tjykEtRh0
俺「で、何なのさ?」
姉「あんた、野球辞めた時どうだった?」
俺「あん?」
姉「いいから」
俺「ん〜、なんかカラッポになった感じかな。俺の場合怪我で野球続けられなくなったけど、やっぱり急には切り替えられなかったよ。今思えば恥ずかしい事も色々としてたと思うし、まわりに迷惑もかけたと思うよ」
姉「そう……」
77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:40:52.71 ID:AZZCpjg10
これって結構実話を基にしちゃったりしてる?
82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:48:37.60 ID:tjykEtRh0
>>77
よかったら
妹「野球的な何か」
妹「野球しようよ」
を読んでくれ、一応それの続きなんだ。
たぶんググったら出てくると思う。
怪我したのは実話です。
85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:50:59.07 ID:tjykEtRh0
姉「確かに、あんたから野球取ったら何も残らないもんね」
俺「実際に何も残らなかったからな、本当に。大学に行ってもただ単にダラダラと、空虚な時間を過ごすだけだったよ」
姉「笑えるわね」
俺「今だったら笑い話にできるけどな」
姉「ふーん」
俺「ただ、ちょっと時間は必要だったよ」
姉「時間、ね」
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 22:58:32.42 ID:tjykEtRh0
俺「ま、今は何の因果か野球部の監督やらせてもらってるけどさ」
姉「良かったじゃない、野球にまた戻ってこれて」
俺「だなぁ。たまたま野球観戦してて一緒に喋ってたおじさんがまさか理事長だなんて、あだち充の漫画でも中々ないパターンだもんな」
姉「ちょっとしたミラクルよね、それ」
俺「たまたま、運が良かっただけだよ。それでも」
姉「?」
俺「俺ってやっぱり野球以外何も無いんだなって思った」
姉「何よそれ」
93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:03:50.05 ID:tjykEtRh0
俺「たまにな、言うんだよ。部員に’どうして野球やってるのか?’って」
俺「ある奴は野球が好きだからとか、ある奴はモテる為だとか、プロを目指してるヤツだってうちの部にはいる」
俺「思うに理由なんかどうだっていいんだよな、野球さえ楽しんでくれれば。俺はそのちょっとした手伝いをしてるだけなんだって」
俺「でもそれが面白くて仕方がない、ねーちゃんは仕事してる時は別の自分で居ろって言ったけどさ。俺には出来そうにないよ」
姉「あんたって本当、バカね。この野球バカ」
俺「褒め言葉だよねそれ」
姉「もちろん貶してるわよ」
俺「笑顔で言われちゃ何も言い返せないな……」
95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:05:56.68 ID:tjykEtRh0
姉「野球バカ……ね」
俺「ねーちゃんの彼氏さんも野球やってるんだろ?」
姉「うん……」
俺「だったら同じさ、その人も野球バカだろ」
96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:07:32.77 ID:tjykEtRh0
姉「別に隠してたわけじゃないんだけどさ」
俺「うん?」
姉「その……」
俺「その?」
姉「なんかね、今年でチームから解雇されそうなの」
俺「あん?」
97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:10:06.18 ID:tjykEtRh0
姉「今日その話されて……あたしどうしていいかわからなくて」
俺「あー……」
姉「誰にも相談できなくて、あんたしか居ないのよ。頼る人が……」
俺「でも結婚するって」
姉「仕方ないじゃない、そんな話知らなかったんだもの。まさかクビになるなんて」
98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:14:47.51 ID:tjykEtRh0
姉「ねぇどうしよう、あたしどうしたらいいの?」
俺「いや、落ち着いて。解雇ってあれだろ? 再就職先とかは球団が用意してくれるんじゃないの?」
姉「球団職員は大卒じゃないと厳しいみたい……、トライアウトは一応受けるけど厳しいって話だし……」
俺「八方塞りの四面楚歌か……」
姉「嫌だよ……新婚なのに旦那が無職とか……」
フラッ
俺「ねーちゃん、しっかり」
姉「ごめん、ちょっと休む……」
100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:20:41.32 ID:tjykEtRh0
俺「しかし」
俺「考えてみれば当たり前の事だな」
俺「選手登録の人数は限られてるんだから、入る選手が居れば誰かが抜けなきゃいけない」
俺「当事者にとっては残酷な話だけどな……」
101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:23:51.67 ID:tjykEtRh0
父「プロ野球選手の再就職は厳しいぞ」
俺「どこで聞き耳立ててたこの変態親父」
父「それは言わないお約束」
102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:25:37.16 ID:tjykEtRh0
俺「で、プロ野球選手から再就職を果たした父上は何か知恵を貸してくれるんだろうな」
父「無論、貸さん」
俺「その言葉を待ってた──。って、……え?」
父「とーさんこの話題に関してはノータッチを決め込んでる」
俺「なんでだよ、父親だろ? こんな時くらい父親らしくするのがとーさんなんじゃないのか?」
父「お前な、お姉ちゃんはとーさんじゃなくてお前を頼ったんだぞ? この意味わかるな?」
俺「……」
父「こんな時くらいしっかり役に立ってみせろ、長男だろう?」
103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:30:13.56 ID:tjykEtRh0
俺「って、言ってもな……」
俺「この件に関して俺に出来る事なんかあるのか……」
俺「ダルビッシュのスライダーを打つより難しいかもしれん……」
104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:31:41.11 ID:tjykEtRh0
部員「何がスライダーなんですか?」
俺「あ、いや。何でもないよ」
部員「午前中のメニュー終わりました」
俺「そうか、それじゃ軽くダウンしてから昼食な」
部員「はい!」
105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:35:04.93 ID:tjykEtRh0
俺「よう」
少年「……っす」
俺「調子はどうだ?」
少年「……べつに」
俺「そうか、絶好調だな。ところで変な事聞いて良いか?」
少年「……何スか?」
俺「お前、野球好きか?」
少年「……もちろんっす」
俺「プロになりたいんだよな」
少年「……まぁ」
俺「じゃあプロ野球が無くなったら、それでも野球続けるか?」
少年「?」
俺「ごめん、変な事聞いてるよな。あー、いい。忘れてくれ」
106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:35:25.78 ID:XBeZKqetO
そういえばこの兄は監督以外の仕事してるのか?
前回クビになってなかったっけ
107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:38:51.82 ID:tjykEtRh0
>>106
描写になかったけど大卒で教員免許を持ってるので、
社会科教師として採用されてます
108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:41:41.68 ID:tjykEtRh0
少年「……何でそんな事聞くかわからないけど」
俺「まったくだ」
少年「長いことあいつと一緒に居るあんたならわかりそうなのにな」
109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:44:57.27 ID:tjykEtRh0
俺「妹か」
少年「あいつは、あいつの野球を楽しんでるだけ。舞台は関係なく、な」
俺「野球が好きだから、か」
少年「……少なくとも、言える事は」
俺「?」
少年「……僕もあいつもあんたも、ただの野球バカって事だろ」
俺「ははっ、言えてるな」
110 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/09(水) 23:45:10.45 ID:z5iKZHYQ0
この少年は妹の彼氏候補だった少年か
113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:52:36.09 ID:tjykEtRh0
少年「……それより、いいのかよ」
俺「あん?」
少年「最近打撃投手なんかやってるけどさ、……あんた腰悪いんじゃなかったっけ?」
俺「何? 心配してくれてんの?」
少年「べつに……」
114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:55:47.54 ID:tjykEtRh0
俺「最近リハビリ行ってるからな、腕の良い医者がいるんだよ」
少年「医者ね……」
俺「完治はしないんだけどさ、たまに打撃投手やるくらいなら全然いけるよ」
少年「……へぇ」
俺「お前らくらいなら抑える自信あるよー?」
少年「……ふん」
115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /09(水) 23:58:22.97 ID:tjykEtRh0
先生「あ、俺くん。あの……お弁当作ってきたんだけど……、一緒に食べない?」
俺「おう、ありがとな」
先生「うん……」
俺「それじゃ行くわ」
少年「……さっさと行けよ、この色ボケ野郎」
俺「ひどくない? 監督だよ俺?」
少年「……関係ないね」
116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:01:40.46 ID:z8xMv6HU0
先生「さっき何話してたの?」
俺「少年とか?」
先生「彼があんなに長いこと喋ってるのって珍しいから、気になっちゃって」
俺「どこぞの宇宙人か」
先生「?」
俺「あ、いや。こっちの話」
117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:09:23.49 ID:z8xMv6HU0
先生「んー、ちょっと冷えてきたね。最近」
俺「そうだな、秋も随分深まってきたな。でも良い秋だったよ、収穫も色々とあったしな」
先生「この前の試合、わたし感動しちゃった」
俺「そうか?」
先生「うん……みんな、ほんとに一生懸命になって。とっても楽しそうだった」
俺「うん、俺もそう思うよ。楽しみながらのびのびとやってくれるのが一番良い、高校野球は教育の一環だからな」
先生「教育の一環、ね」
俺「教育は共に育つと書いて「きょういく」なんだってさ。生徒も俺も日々成長だよ、実際には子供達に教えられる事の方が多いけどな」
先生「なんかだんだん教師っぽくなってきたね、俺くん」
俺「一応これでも社会科教師なんですけど……」
118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:17:57.55 ID:z8xMv6HU0
先生「すごいな……俺くん。あたしもちょっとは成長してるのかな……」
俺「俺からしたら委員長のほうが凄く見えるよ」
先生「そ、そうかな?」
俺「そうだよ、ちゃんと先生になるって夢を叶えてさ。それを継続してるだろ? それって本当にすごい事だと思うんだよな」
先生「う〜ん……そうなのかな」
俺「そうだよ。だから」
先生「うん?」
俺「これからも一緒に頑張ろうな、よろしくたのむ」
先生「お、俺くん……こんなとこで……」
119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:22:34.94 ID:z8xMv6HU0
部員C「隊長!」
部員D「どうした部員C隊員」
部員C「監督と先生が熱い抱擁を交わしておりますです」
部員D「くぁー! なんたる破廉恥! けしからん! じつにけしからん!」
部員C「涙で前が見えません!」
部員D「寝るな部員C隊員! 寝たら死ぬぞ!」
部員C「もうだめです、もちません……」
部員D「応答せよ部員C隊員! 部員C隊員ッー!」
部員C「……」
部員D「キミの死は無駄にはしない……ッ。サンタ・マリアの名に誓い、全ての不義に鉄槌をッ!」
121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:24:41.41 ID:z8xMv6HU0
妹「ちょっと、何やってんのよ。アンタら」
部員D「何とは失礼な、これは神聖な儀式」
妹「覗きが趣味なの?」
部員D「違う、これは決して覗きなどという行為では……」
妹「あ? 警察ですか? 実は──」
部員D「さ、練習練習」
122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:31:48.73 ID:z8xMv6HU0
妹「お兄ちゃん、午後練始めるよ!」
俺「おう、もうそんな時間か」
妹「ほら、早く来て!」
俺「今行くよ」
124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:33:14.71 ID:z8xMv6HU0
妹「先生と何話してたの?」
俺「気になるか?」
妹「ライバルだからね」
俺「あん?」
妹「いや、こっちの話」
126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:44:34.54 ID:z8xMv6HU0
俺「なぁ、お前はさ」
妹「うん?」
俺「今、何で野球やってんだ?」
妹「あたし?」
俺「おう」
妹「さっき先生とそんな話してたの?」
俺「まぁな、それっぽい話だ」
妹「……お兄ちゃんには教えてあげないもん」
俺「何だそれ、意地悪せず教えてくれよ」
妹「ヤ」
127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:46:36.70 ID:z8xMv6HU0
俺「なぁ、頼むよ」
妹「ヤダったらヤダ」
俺「今日プリン買ってあげるから」
妹「う」
俺「しかも2個、これでどうだ」
妹「2個なら仕方ない」
128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:50:00.01 ID:z8xMv6HU0
妹「女だから公式戦には出場できないけどさ。それでも、野球の近くにいると、わかる気がするの」
俺「何だそれ、哲学的だなぁ」
妹「お兄ちゃんが居たからだよ、あたしが野球を好きになったのは」
俺「ほう」
妹「野球をやってるお兄ちゃんのそばに居たかった、できれば一緒にプレーしたかったけど……。お兄ちゃんがまた野球やってくれて、今はそれだけで嬉しい」
俺「そっか」
妹「うん……」
俺「ほんと、兄妹揃って野球バカだな」
妹「誰のせいだと思ってるのよ、ちゃんと責任とってよね」
俺「ははっ」
129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:54:31.98 ID:z8xMv6HU0
俺「さて」
俺「結局何も対策らしい対策を立てられず……」
俺「さて……」
姉「ただいま〜」
俺「どうする俺、どうする?!」
俺「つづく!」
姉「……あんた何1人で騒いでるの?」
俺「……帰ってたのならそう言えよ、恥ずかしいから……」
130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:57:25.07 ID:z8xMv6HU0
俺「あのさ、ねーちゃん」
姉「ん? 何?」
俺「あの話なんだけどさ」
姉「あの話?」
俺「怒らないで聞いてくれよ」
姉「怒らないから言ってみなさい?」
俺「はい」
姉「素直でよろしい」
131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 00:58:18.50 ID:z8xMv6HU0
俺「すまん、正直俺じゃ役に立てねぇ」
姉「いや、その話なんだけどね。実はあんたのお陰で何とかなりそうなのよ」
俺「あん?」
132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:03:26.72 ID:z8xMv6HU0
俺「どゆこと?」
姉「彼にね、あんたの話をしたの」
俺「俺の?」
姉「怪我して野球やめたけど、今は野球部の監督やってるって話」
俺「なんかそれだけだとすごく美談に聞こえるんですけど」
姉「ちゃんと自堕落な時期の話もしたから安心しなさい」
俺「どうしよう、幕張の土嚢みたいに全然安心できない」
133 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 01:04:46.38 ID:Lfv5c9ml0
嗚呼、野球したくなってきた・・・
バイクで事故って肩の神経やってから球投げて無いから投げれるか不安だけど(´・ω・`)
134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:11:09.80 ID:z8xMv6HU0
>>133
怪我持ちつらいよな、冬になると寒さで腰が痛くて仕方ない
言葉のキャッチボールならいくらでもしてやるぜw
137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:13:33.73 ID:z8xMv6HU0
姉「そしたら、前向きにガンバってみるって。指導者の道を進むって」
俺「指導者の道、か」
姉「なんか、元気出たみたい」
俺「そりゃ良かった」
姉「あんたに感謝してたよ、いつかちゃんとお礼させてくれってさ」
俺「いや、俺は別にそんな……」
姉「義兄の言う事は聞いときなさいって」
144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:39:23.21 ID:z8xMv6HU0
俺「ヘッドスライディングは危険だから禁止しろという声があるらしい」
妹「ふーん」
俺「って、そう言われてもなぁ。咄嗟に出ちまうもんな、アレは」
妹「そうだね」
148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:41:25.47 ID:z8xMv6HU0
俺「……」
妹「なによ」
俺「いや、べつに」
妹「怒らないから今思ってる事を正直に言ってよ」
俺「ヘッドスライディングした時、その、……胸とか大丈夫かなと」
妹「お兄ちゃん!」
151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:50:35.04 ID:z8xMv6HU0
妹「……見てみる?」
俺「あん?」
妹「胸」
俺「おいちょっと待て、俺はお前の裸なんぞに興味は無い。俺はお前のユニフォーム姿にだな」
妹「もう! お兄ちゃん!」
152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:52:29.36 ID:z8xMv6HU0
姉「ねぇねぇ」
俺「なんだよ」
姉「野球とソフトボールって何が違うの?」
俺「呼び方が違うよ」
姉「ふーん、なるほどねぇ」
俺「(納得しちゃったよこの人)」
153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:53:14.94 ID:z8xMv6HU0
姉「ねぇねぇ」
俺「なんだよ」
姉「それじゃ、野球と三角ベースって何が違うの?」
俺「三角ベースにはロマンがあるんだよ」
姉「ロマンねぇ……なるほどねぇ……」
俺「さては探偵ナイトスクープの録画をみたな……」
154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 01:54:37.90 ID:z8xMv6HU0
TV『この前初めてホームランを打ったの』
俺「買ったは良いが、一人じゃ使えないんだなコレ」
妹「どうしたの?」
俺「おぉ妹よ、ちょうど良い所に。そのジップを引いてくれ、一人じゃヒットできない」
シュゴー カン
シュゴー カン
姉「あたしが言うのも何だけど、シュールな光景ね」
母「あらあらうふふ」
174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 14:26:31.97 ID:z8xMv6HU0
俺「引退発表から一夜明けてみたけれど」
妹「まだ実感が沸かないね」
俺「53番の背中はずっと忘れません」
妹「9年間お疲れ様でした」
俺「でした」
175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 14:50:55.33 ID:z8xMv6HU0
俺「とあるバッティングセンターに180キロのストレートを打ち返す小学生が出没するらしい」
妹「この前テレビで見たよ」
俺「ちなみにそこのバッティングセンターだけどな」
妹「うん?」
俺「今220キロくらい出るらしい」
妹「クルーンのも目が回りそうな速さね」
俺「クルーンだけにクルクルってか?」
妹「……」
176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 15:06:27.49 ID:z8xMv6HU0
俺「最近、科学的な練習方法を導入する動きがあるらしい」
妹「なにそれ」
俺「なんでも怪我をしないための安全かつ効果的な指導方法らしいが、たしかEBBとかって言ってたか」
妹「怪我をしない為、ね」
177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 15:13:32.02 ID:z8xMv6HU0
俺「お前、ゴロが飛んできたらどうやってさばく?」
妹「追いつける打球なら正面に回り込むわね」
俺「まぁそれが教科書通りだわな」
妹「野球はじめた時最初に教わるよね。キャッチボールは相手の胸に、ゴロは右足と左足とグラブの三角形を意識して正面で処理」
俺「それがEBBでは違うらしい、ゴロの打球は全部逆シングルで処理するんだと」
妹「なんでわざわざそんな難しい事を」
俺「正面に回りこんで胸に打球が当たって心臓が止まった事例が報告されてるらしい」
妹「?」
俺「ようするに危ないから辞めなさいって事」
178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 15:33:46.18 ID:z8xMv6HU0
俺「とにかく怪我を無くして安全に野球するための指導方法らしい」
妹「何かヘンな話」
俺「ま、指導の方法論としては面白かったよ。まだ新しい方法だし浸透するかしないかはこれからって話だったし」
妹「ふ〜ん……」
俺「?」
妹「あたし、お兄ちゃんの野球が好きだよ」
俺「そう言ってもらえると指導者冥利に尽きるよ」
180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 15:49:08.54 ID:z8xMv6HU0
妹「でもそれが定着したら緒方や赤星みたいな選手は出てこなくなるかもね 」
俺「俺が敢えて伏せていたワードを軽々と……」
妹「面白くないよ、そんなの」
俺「まぁな……。何が面白いかは、見てる人に任せるよ」
181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 15:53:37.73 ID:z8xMv6HU0
俺「例えばキャッチボールの後にどうしてトスバッティングをするのか、お前わかるか?」
妹「う〜ん……、練習の最初の方だから目を慣らすため?」
俺「それも一つの答えだとは思う。だけど一番大事なのは生徒が自分で意味を考える事だと思うんだよな。こっちが一方的に何でもかんでも与えるんじゃなくてさ」
妹「たしかに、今やってる事は何に繋がるのか、練習の意味を考えながらやると楽しいよ」
俺「そっか」
妹「うん」
182 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 15:54:42.07 ID:zfNwN641O
プロはそれでもいいかもしれんが、子供の時やっぱり基本が大事だよ
ボールへの恐怖心を無くすためにもね
サード怖い
183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 15:58:07.07 ID:z8xMv6HU0
>>182
そこらへん微妙だと思った。
まぁでもEBBに関して言えば怪我しないようにしないようにっていうよりむしろケアの方が大事なんじゃない?
ってのが感想
参考までに
ttp://www.youtube.com/watch?v=Snh4sHCnPdk
184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 16:00:16.45 ID:z8xMv6HU0
俺「最近思うんだけどな、指導者ってのは結局飾りみたいなもんなんだよ。野球をやるのは選手で、じゃあ指導者は何なんだって言ったらそれをお手伝いするだけなんだと思うんだよな」
妹「お手伝いさんね」
俺「少なくとも俺は皆が楽しくのびのびと野球をやってくれればそれで良いと思う、だったら俺にできる事は何だろうって考えたとき、そういう環境を作ってあげる事かもなって思ったんだ」
妹「たしかに、お兄ちゃん来てから部の空気変わったもん。前はみんなやる気なくて、部にいくのちょっとヤだった」
俺「生徒のやる気を引き出すとか、可能性を引き出すとか、それが指導者に出来る事なんだと思うよ。その方法は人によって違うと思うけども」
妹「まずやってみろが口癖だもんね」
俺「そうか?」
185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 16:02:36.62 ID:z8xMv6HU0
妹「そうだよ、中学の時の監督は’それやっちゃだめだ’とか、’どうしてこうしないんだ’とかばっかりだったけど」
妹「お兄ちゃんは’こうした方がいいんじゃないか?’とか’お前はどうしたい?’とか’じゃあやってみよう’っていう教え方するもん」
妹「お兄ちゃん来てから部員Aとか少年とか、何か変わったよ。良くなったもん」
俺「なんでもやってみる前から無理とか不可能とか思うのを辞めて欲しかったんだが」
妹「うちの野球部、バカばっかりだから余計に効果覿面だったのかも」
俺「それさり気なく酷いこと言ってるよ?」
妹「そう?」
俺「そうだよ」
186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 16:05:52.41 ID:z8xMv6HU0
俺「まぁEBBの指導方法そのものは面白かったよ、野球はじめたての子にヒジの使い方を教えるには丁度良さそうだったし」
妹「へぇ」
俺「試行錯誤だよ、チャレンジは尊い事だ」
妹「うん」
俺「じゃ、そろそろ練習いくか」
妹「はーい」
189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 17:07:47.97 ID:z8xMv6HU0
俺「あああああああああああああああ……また負けた」
妹「ど、どうしたの?」
俺「冥球島」
妹「いつのパワプロだっけそれ」
190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 17:13:15.29 ID:z8xMv6HU0
俺「野球ゲームなのに野球をしない野球ゲームがあるらしい」
妹「最近新作出たらしいね」
俺「戦争編200週いった時は泣いたよ」
妹「何の涙よ」
俺「こればかりはクリアした人にしかわからんのだよ」
妹「あ、そ」
191 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 17:16:15.32 ID:6W3sVsYM0
>>190
お前とはいい酒がのめそうだ
192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 17:23:02.61 ID:z8xMv6HU0
>>191
パワポケをパワプロのノリで遊んでたら普通に人が死んだりしてトラウマだった中学生の頃
193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 17:24:17.98 ID:z8xMv6HU0
俺「好きな野球作品?」
妹「うん」
俺「不屈闘志が出てくるアレ……何て言ったかな」
妹「逆境ナイン?」
俺「あぁ、そうそう」
194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:07:05.94 ID:z8xMv6HU0
俺「あ」
妹「?」
俺「すまん、病院の予約入れてたの忘れてた。先に学校行っててくれないか? 遅れていくからさ」
妹「わかった、皆に伝えとくね」
俺「あぁ、よろしく頼む」
195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:10:15.80 ID:z8xMv6HU0
俺「というわけで近所の病院に来てみました」
医者「やあ、久しぶりだね」
俺「おう、そうだな」
医者「具合はどうだい?」
俺「それをまさに今見てもらいにきてんだが」
196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:14:11.43 ID:z8xMv6HU0
医者「うん。一年前と比べると随分よくなったね」
俺「なんか最近ウソみたいに腰が軽いよ」
医者「だからリハビリにはちゃんと来いってあれほど言っただろ?」
俺「う……」
医者「全く、昔から君は自分の事となると無頓着というか。それにもう自分一人の身体じゃないんだろ?」
俺「ばか言うな。……というか、まだ……その、なんだ。……何もしとらん」
医者「そうなのか? 君は奥手というかヘタレというか、もっと積極的にいったらどうだ? 女は案外攻める男に弱いんだぞ?」
俺「アンタには俺がそんな野獣に見えるのか? 俺には俺のぺースってもんがだな」
医者「私の胸を見て鼻血をたらしていた子供が強がるなよ」
俺「うるさいよ」
医者「ふふ」
197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:16:28.13 ID:z8xMv6HU0
俺「ってかいつの話引っ張り出してるんだよ」
医者「懐かしいな、君ははまだ幼稚園だったかな?」
俺「……いくら家が近所同士だからって風呂に一緒に入れる親も親だ」
医者「君の両親は実に思慮深い人物だよ、私が尊敬する数少ない人間だ」
俺「そうかい、伝えとくよ」
医者「そうしておいてくれるとありがたい」
198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:19:48.03 ID:z8xMv6HU0
俺「で、確か完治しないんだったよなコレ」
医者「あぁ、でもまぁ激しい運動を控えさえすれば症状は治まる。夜の営み程度なら構わないと思うが」
俺「仮にも女なんだからそんなセリフをサラっと言うなよ」
医者「ふふ、そんな心配してくれるのはもう君だけになってしまったよ」
俺「あー、はいはい」
199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:23:55.48 ID:z8xMv6HU0
俺「最近どうなのよ、儲かってるの?」
医者「食べるのに困らない程度には」
俺「そりゃ結構な事ですね、センセ?」
医者「君と私の間柄だろ? 先生は辞めてくれよ」
俺「冗談冗談」
医者「君こそよく野球部の監督の話など受ける気になったな? 野球はもうコリゴリなんじゃなかったのか?」
俺「あー、そんな事も言ったっけ」
医者「夜中に泣きながら電話してきたのを覚えてるよ。全く、何事かと思った」
俺「あー、はいはい……。ありましたね、そんな事も……」
200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:25:43.40 ID:z8xMv6HU0
医者「小学校4年生まで寝ションベンしてて怒られてた事も覚えてるよ」
俺「俺のプライバシーはどこへいった……」
医者「ふふ」
俺「っかー。よく覚えてるな、そんな昔の事」
医者「記憶力には自信があるのでね」
俺「さいでっか」
201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:31:00.20 ID:z8xMv6HU0
俺「開業医って忙しそうなイメージだけど、そんな事ないのな」
医者「君とお茶を飲む時間くらいならある」
俺「長居しちゃ悪いし、そろそろ午後練の時間だから行くわ」
医者「そうか、またな」
俺「もう当分来ないよ」
医者「腰を舐めてるといかんぞ? 少しでも異変を感じたら相談に来い」
俺「もう大丈夫だって」
医者「くれぐれも、気をつけたまえ」
俺「へいへい、痛くなったら飛んできますよ。センセ?」
医者「その分だとすぐに再会できそうだな」
俺「なるべくそうならないように頑張りますよ」
202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:32:29.33 ID:z8xMv6HU0
妹「いくよー」
部員B「まずは直球20球っす」
妹「はーい」
シュ
バシン
部員B「ナイスボール!」
203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 18:35:21.28 ID:z8xMv6HU0
俺「すまん、遅れた」
部員「こんちゃーっす」
俺「おう、もう午後練始まってたか。すまんなキャプテン」
部員「いえ。それより腰、大丈夫なんですか?」
俺「はっは、軽い軽い。背中に羽が生えてるみたいだよ」
204 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 18:38:02.58 ID:H0KWRz9Z0
なんかフラグ立ちすぎて怖い
206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:01:23.84 ID:z8xMv6HU0
俺「よーし、今日は俺がバッティングピッチャーをやろう」
部員A「え?」
俺「なんだなんだ? そんなカオして、たまには良いだろう?」
部員A「で……でも監督、腰はいいんですか? 前やった時大変だったじゃないですか、急に痛みだして途中で救急車呼ぼうかって話になって……」
俺「はっはっは、それはもう過去の話だ。聞け部員A、実は俺は悪魔と知り合いでな?」
部員A「はぁ……悪魔、ですか?」
俺「あぁ、その悪魔は血の代償と引き換えに何でも願いを叶えてくれるんだ、ちなみに俺は腰を治してもらった。もう完治だ、はっはっは」
部員A「ま、まじっすか?」
俺「まじまじ、ちょっと肩作ってくるからゲージの用意しといてくれ」
部員A「はい!」
207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:09:07.58 ID:z8xMv6HU0
俺「お〜い、少年」
少年「……っす」
俺「すまんがちょっとキャッチボール付き合ってくれ」
少年「……っす」
シュ
パシ
シュ
パシ
シュ
パシ
208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:10:34.39 ID:z8xMv6HU0
俺「う〜ん、なんだか久しぶりだなぁこの感覚。体動かすのってやっぱりいいな」
少年「……いいのかよ」
俺「あん?」
少年「腰、……悪いんじゃないの?」
俺「なんか今日は皆に心配されるな」
少年「……あんたしか居ないんだ」
俺「あん?」
少年「……僕らの監督は」
俺「んな心配しなくても大丈夫だって、さっき医者に診てもらってきたし」
少年「……べつに心配してるわけじゃ」
俺「お前らを抑えるくらいなら、たぶんイケる」
少年「……言うね」
209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:12:58.59 ID:z8xMv6HU0
俺「なぁ少年」
少年「……?」
俺「ぶっちゃけ、お前からみてこのチームはどうだ?」
少年「……どう、とは」
俺「甲子園いけそうか?」
少年「……行けるも何も……」
俺「?」
少年「……その為にここに居るんだろ、俺も、アンタも」
俺「ちょっと見ない間に随分な事を言う様になったじゃないか」
少年「……ふん」
俺「頼むぞ、お前がエースだからな」
少年「……言われなくても」
少年「……僕が、あんたを日本一の監督にしてやるよ」
210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:15:47.48 ID:z8xMv6HU0
俺「あんがとよ、そんな言葉貰えて嬉しいよ」
少年「……ち」
俺「素直じゃないなあ」
少年「……」
俺「何か言いたそうな目だな」
少年「……そっちは、何か聞かれたそうな口だね」
俺「あ、バレた?」
少年「……」
俺「いや〜、実はさ。甲子園いけたら結婚しようかと思って」
少年「……へぇ、結婚ね」
俺「お互いいつまでもダラダラってワケにはいかんからなぁ。頼むぞエース、なんせ俺の結婚はお前にかかってるからな、はっはっは」
211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:22:24.75 ID:z8xMv6HU0
俺「よーし、ちょっと集合してくれ」
部員「集合!」
俺「今日は俺が打撃投手をやろうと思う」
部員B「え? まじですか?」
俺「まじです」
妹「また何で急に」
俺「だってお前ら見てたら俺も野球したくなってきたんだもん」
妹「子供か」
212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:24:31.25 ID:z8xMv6HU0
俺「とりあえずそれは置いといて、だ。お前らに一つ良い知らせがある」
部員A「良い知らせ?」
俺「一人十球、俺が投げる。全員分だから百八十球な、その内3割をヒットにできたら今日の晩メシは俺のオゴリで焼肉食べ放題だ!」
部員A「まじかよ!」
俺「まじだ、昨日給料日だったからな」
部員B「3割ならイケるんじゃないか……」
部員A「こりゃ焼肉は頂いたな!! うっしゃ! やるぞ!」
妹「ほんっと、男って単純なんだから」
213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:28:23.57 ID:z8xMv6HU0
先生「ちょ、ちょっと俺くん……そんな約束しちゃって大丈夫なの?」
俺「大丈夫、まかせとけって」
先生「で、でも……」
俺「たまにはいいだろ、こんな事も」
先生「んー……、そうなの?」
俺「あいつらきっちり抑えるからさ、今日どっか一緒に食べにいこうよ」
先生「ほ、ほんと?」
俺「あぁ」
先生「……が、がんばって。俺くん」
俺「よっしゃ、なんか頑張れる気がしてきた」
214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 19:32:24.03 ID:z8xMv6HU0
少年「……」
俺「最初はお前か」
少年「……投手交代、いつでも待ってますよ」
俺「うるせー、さっさと打ち取られてろ」
少年「……それが監督の言葉かよ」
俺「今日のデートがかかってるんだ、悪いが本気で行くぞ」
少年「……ふん」
部員A「なんか少年と監督って仲良いよな」
部員B「あ、お前もそう思う?」
部員A「あんな喋ってる少年珍しいもん」
217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:15:57.56 ID:z8xMv6HU0
俺「ヒット3本か、なかなかやるな少年」
少年「……ち」
俺「さ〜次いってみよう次」
部員A「よっしゃ! 俺いくぜ! 焼肉焼肉〜♪」
妹「はい終わり、0本」
部員A「あ、あれ……?」
妹「あんた大振りしすぎよ、それじゃ当たんないわよ」
部員「は……、はい……」
218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:19:30.84 ID:z8xMv6HU0
部員C「な、なんか……」
部員D「監督のボール、なんか速くないか?」
部員C「とても腰を痛めてる人のピッチングとは思えないんだな……」
俺「あ〜、そうだ。一つ言い忘れてたけどな」
部員A「何スか?」
俺「俺が勝ったら、お前ら全員ポール走50本だから」
部員C「なん……だと……」
部員A「きたねぇぞ! 最初に言えよ監督!」
俺「はっはっは! 勝負事に綺麗も汚いもあるか!」
部員D「打て……とにかく打つんだ……それしか我々の生きる道は無い……ッ」
219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:22:24.45 ID:z8xMv6HU0
妹「良いボール投げるでしょ、お兄ちゃん」
先生「ほんとね、素人のわたしが見ても凄いってわかるわ」
妹「最近いつも家であたしとキャッチボールしてるもん」
先生「あら、そうなの? ありがとうね、妹ちゃん」
妹「へ?」
先生「俺くんって妹ちゃんの事大好きだから、相手してあげてるのよね。ありがとね」
妹「……先生には敵わないなぁ……」
先生「?」
220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:27:26.63 ID:z8xMv6HU0
部員D「くっそ〜……、打てなかった……」
俺「はっはっは、これでデートに王手が掛かったってわけだ」
部員C「後残ってるの誰?」
部員A「妹さん」
部員C「もうアイツに全てを託すしか無いのか……」
部員D「頼む……亡国の女神となってくれ……」
妹「誰が亡国だ」
部員C「打て、打ってくれ。な?」
部員D「部員全員がお前を応援してるぞ」
部員A「行くんだ……焼肉に……焼肉に……」
妹「あ〜、もう。うるさいな、アンタらに言われなくてもあんなヘロヘロボール打ってやるわよ」
221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:31:42.85 ID:z8xMv6HU0
俺「最後はお前か、妹よ」
妹「さすがに全員分投げるのは疲れたんじゃない? お兄ちゃん」
俺「あぁ、ちょっと疲れたよ。もう足元がフラフラだ」
妹「打たれる前にマウンド降りたら?」
俺「男にはな、やらなきゃいけない時があるんだよ」
妹「それって……、先生のため?」
俺「もちろん」
妹「……ばか」
223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:35:23.80 ID:z8xMv6HU0
妹「焼肉なんかどうでもいいけど」
俺「あん?」
妹「なんか、負けたくない」
俺「そうこなくちゃ面白くない」
妹「マウンドに沈めてあげる、お兄ちゃん」
俺「簡単には打たせんよ」
224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:42:45.21 ID:z8xMv6HU0
バシン
部員B「ストライク」
妹「……今のがストライク?」ギロリ
部員「ひっ、外いっぱいギリギリです……」
妹「……」
俺「はっはっは、どうかね。良いボールだろ」
妹「……」
225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:45:37.52 ID:z8xMv6HU0
俺「と、言っても。さすがに疲れたな……」
俺「あと7球か」
俺「さっさと終わらせます……か!」
カキーン
俺「あ、あれ?」
部員A「完璧に捉えた!」
部員C「光が見えてきたぞ!」
部員D「まだだ……まだ終わらんよ……」
226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:50:12.46 ID:z8xMv6HU0
俺「やるね」
妹「内角のさばき方教えてくれたのはお兄ちゃんだよ」
俺「疲れてちょっと甘く入ったかな」
妹「いつまで軽口叩いてられるかしらね」
俺「あー、こんな事ならスイッチなんか薦めるんじゃなかった」
妹「今更後悔しても遅いわよ」
俺「だな」
妹「さっさと投げてきなさいよ、お兄ちゃん」
俺「頼もしい妹様だ事」
227 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 20:54:24.05 ID:z8xMv6HU0
部員A「おい、次ラストだよな?」
部員C「そうだよ」
部員A「次でヒット打てば焼肉なんだよな?」
部員C「そうだよ」
部員A「一時は崖っぷちまで追い込まれたが、まさか神さまはこんなシナリオを俺たちに用意していたのか……」
部員D「あぁ、野球の神さまありがとう」
先生「俺くん……がんばれ!」
俺「任せなさいって、良い店知ってるだ。終わったら予約しなきゃな」
妹「はやく投げてきなさいよ」
俺「急かしなさんな、言われなくても今投げる……よ!」
228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:00:28.05 ID:z8xMv6HU0
部員A「焼肉焼肉焼肉焼肉焼肉焼肉焼肉焼肉……」
部員C「ポール走はどげんかせんといかんですよ!」
部員D「打て! 打ってくれ!」
229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:03:26.68 ID:z8xMv6HU0
妹「っ!」
カキィ……
俺「あれ?」
俺「ボール、近っ……」
……ィン
妹「あ……?」
俺「え……?」
ゴシュ
230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:04:45.78 ID:hnUIjIbdO
まさかのゴシュッ
231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:10:20.36 ID:z8xMv6HU0
先生「俺くん?!」
少年「部員A! タンカもってこい! それと救急車!」
部員A「わ、わかった!」
先生「なんで俺くんが倒れてるの……? ねぇ、なんで、なんで……?」
部員B「先生、落ち着いてください! とにかく、今は監督を安静な所に……」
232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:16:08.16 ID:z8xMv6HU0
◇ ◇
医者「……こんな形で再会するなんて、皮肉なものだな」
妹「……」
医者「綺麗な顔してるだろ?」
先生「……」
医者「マウンドで死ねて、満足だったのかな。彼は」
先生「ちょっとアナタ! さっきから黙って聞いていれば!」
医者「ここは病院だ、静かにしてくれないか」
先生「……っ」
233 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:18:14.52 ID:z8xMv6HU0
先生「……妹ちゃん、行きましょう」
妹「……」
先生「……妹ちゃん」
妹「……あ、……え? 何ですか?」
先生「外へ行くのよ……」
妹「ヤだ、あたしお兄ちゃんと一緒に居るもん」
先生「妹ちゃん」
妹「寝てるだけなんだよ、お兄ちゃん。昔こうやってよく遊んだもん、寝た振りしてあたしをびっくりさせる気だもん」
先生「妹ちゃん」
妹「だからね、待ってるの。お兄ちゃん、言ってくれるもん。’お前のマヌケな顔が見れて面白い’ってだから待ってなきゃいけないもん」
先生「……妹ちゃん」
妹「ねぇ、お兄ちゃん。起きてよ、もう夕方だよ? ねぇ、ねぇ。起きてよ、お兄ちゃん」
妹「焼肉行くんじゃないの? ねぇ、お兄ちゃん」
妹「あたしの事、嫌いになっちゃったの? だから目を覚ましてくれないの? 意地悪だなぁ、お兄ちゃん」
妹「はやく起きないと、怒るよ? 怒っちゃうよ? お兄ちゃん、ねぇ。聞いてるの?」
234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:21:06.84 ID:z8xMv6HU0
医者「いい加減にしろ!」
妹「……っ」
医者「死んだんだよ」
妹「死ぬわけないじゃない! お兄ちゃんが! 死ぬわけないじゃない!」
医者「……あんたの兄は、もう」
妹「嫌! 聞きたくない!」
医者「逃げるんじゃない、事実なんだ」
妹「嫌だ! いやいやいやイヤ……イヤ……いや、だ……何も聞きたくない……」
先生「……妹ちゃん」
237 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:28:09.66 ID:z8xMv6HU0
父「ども」
医者「父上」
父「すみませんね、兄妹揃って迷惑かけて」
医者「いえ、そんな」
父「後は任せてください」
医者「……お願いします」
父「ほら、妹。行くよ?」
240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:30:26.74 ID:z8xMv6HU0
医者「運ばれてきた時にはもう」
母「そうですか……」
医者「手は尽くしたのですが……」
母「妹がご迷惑をかけたそうで、すみませんね」
医者「いえ、そんな迷惑だなんて」
母「ありがとうね、本当に」
医者「私は、……何も」
母「ふふ。あなたは昔から変わらないわね」
医者「あの、母上」
母「はい?」
医者「いえ……なんでもありません」
母「そう、私はちょっと息子の顔を見てきますね」
医者「……はい」
242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:35:46.68 ID:z8xMv6HU0
医者「すぐに、再会できる。か」
医者「ははっ、皮肉なものだな」
医者「どうしてだろうな」
医者「どうして、こうもすれ違うんだろうな。私と君は」
医者「誰も救えやしない……何が医者だ……私はまた……」
243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:38:25.79 ID:z8xMv6HU0
妹「……」
妹「……」
妹「あたしが」
妹「……」
妹「……」
妹「お兄ちゃんを」
妹「……」
妹「アタシガ、オニイチャンヲ、コロシタノ?」
245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:41:00.25 ID:7U1itQiIO
なんだこの超展開
246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 21:49:50.71 ID:ZTMESDeO0
どうゆうことなの・・・
248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 22:03:17.64 ID:z8xMv6HU0
姉「何やってんのよ妹!」
妹「ふふ……アハハ……、おねーちゃん、ドウシタノ?」
姉「バカ! あんたまで死んでどうするのよ……」
妹「死ぬ? チガウヨ、お兄ちゃんに会いに行くだけだよ?」
姉「しっかりしなさいよ……ねぇ、お願いだから……」
妹「ふふ……あはは……」
250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 22:10:08.56 ID:z8xMv6HU0
部員「おい」
部員A「あ? 何スか?」
部員「練習の時間だ」
部員A「あ、……そっスか」
部員C「なんか……みんな暗いね」
部員D「無理もないだろ」
部員C「うん……、聞いた? 妹ちゃん」
部員D「誰かが付きっ切りで居てあげないとな、今が一番辛いだろうし」
部員C「今は先生が家に行ってるみたいだけど」
部員D「明日は俺が行くよ、順番決めて部員全員で行こう」
部員C「うん……」
251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 22:14:58.93 ID:z8xMv6HU0
先生「俺くん」
先生「俺くん……」
先生「もう、委員長って言ってくれる人は居ないのね」
先生「俺、くん……」
253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 22:20:31.60 ID:z8xMv6HU0
少年「……」
少年「……」
少年「……約束は必ず守るからな」
少年「あんたを、日本一の監督に、してやる」
少年「僕らが、……生きた証になります」
255 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 22:23:51.95 ID:Cg+2LRd10
最初から読んでるがまさかこんな…
256 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 22:29:30.12 ID:z8xMv6HU0
妹「ねぇ、お兄ちゃんはどこ?」
父「う〜ん、どうしたのかな?」
妹「ねぇ、お兄ちゃんは? なんで居ないの?」
父「お兄ちゃんはね、遠いトコに行っちゃったんだよ?」
妹「お兄ちゃんは? ねぇ、お兄ちゃんは?」
257 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 22:29:48.10 ID:Hsv347uy0
え?
え?
258 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 22:33:59.51 ID:z8xMv6HU0
父「寝たか?」
姉「とりあえずは、ね」
父「お前ももう寝てなさい、もうずっと起きっぱなしだろう? 気持ちはわかるが体は大切だ」
姉「あたし、あの子に何もしてあげられないから。せめて傍に居てあげたいの」
父「だったらなおさら、今は寝なさい。いいね?」
姉「……はい」
261 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 22:49:32.78 ID:z8xMv6HU0
母「あなた、お飲み物でもどうですか?」
父「あぁ、すまないね。母さん」
母「この家もすっかり静かになってしまいましたね」
父「だなぁ」
母「この間ね、あの子がこんな事を言っていたんですよ」
父「?」
母「野球に出会えて良かったって、今の自分があるのはそのお陰だって言うんですよ」
父「……」
母「あの子。父さんのキャッチャー姿が、世界で一番格好良いって言ってましたよ」
父「バカタレが……」
262 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 22:52:43.73 ID:z8xMv6HU0
父「どうしてだろうな」
父「こんな時、どうしようもなく自分が無力に思えてくるよ」
父「歳ばかり取って勝手に大人になったつもりで居たが」
父「バカタレが……」
父「俺はダメな大人だな……」
母「そんな事はないですよ、あの子の父さんだもの」
264 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/10(木) 22:59:07.87 ID:z8xMv6HU0
姉「じゃあ、ちょっと先に寝かせてもらうわね」
母「はい、おやすみ」
姉「なんかあったらすぐ起こして」
母「はいはい、わかりましたよ」
姉「それじゃ、おやすみ……」
………………………………
…………
……
266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:27:49.71 ID:z8xMv6HU0
……
…………
………………………………
「……」
「……」
「……」
「……」
「ふあぁ、よく寝た」
268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:33:01.26 ID:z8xMv6HU0
???「あ、起きた?」
???「キミ、ボクのこと覚えてる?」
「……?」
???「あ、そっか……」
「……ここどこ?」
269 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:36:22.35 ID:z8xMv6HU0
???「よ〜こそ〜ココへ〜♪」
「えらく古くないかそれ」
???「エヘ」
「いや、可愛くないから」
???「ボクは死神、よろしくね」
「死神だ?」
死神「そう、死神です」
「いくら女の子だからってそりゃ笑えないジョークだな」
死神「ジョークじゃないよ」
「マジなの?」
死神「マジです」
271 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:39:15.87 ID:z8xMv6HU0
「死神って……あれか、俺を殺しにきたのか?」
死神「ぶっぶーハズレ」
「だから可愛くないってそのポーズ」
死神「エヘ」
「で? お前は誰なんだ、それとここはどこなんだ? あと俺は誰だ?」
死神「あ〜、いっぺんに質問しないで」
「で、ホントは誰なんだ? これはドッキリなんだろ?」
死神「だから死神だって、ついでにここは死後の世界」
「あ〜……。はい、そうですか。と信じると思うか?」
死神「う〜ん、ボクとしては信じてくれなくても別にいいんだけど。ボクは上まで送っていくだけだし」
「送る?」
死神「うん、だってキミもう死んでるもん」
「父さん母さん、俺死んだらしいです」
272 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:40:10.55 ID:z8xMv6HU0
「……」
死神「へぇ」
「……あん?」
死神「冷静なんだねキミ、普通の人だったら’生き返らせろ!’とか叫んだり暴れたり大変なんだよ? だからこの鎌を使って静かにしてもらうんだけど、キミはその必要なさそうだね」
「そのおっかないブツを仕舞ってくれ、寒気がする」
死神「ふふ、ザクっといっちゃう?」
「カンベンしてくれ」
274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:43:08.10 ID:z8xMv6HU0
「で、マジなのか? ……死んだって話」
死神「神さまはウソつかないもん」
「ドッキリなら今のうちだぞ?」
死神「ヤだなぁ、そんなわけないよ」
「……あくまで本当だと?」
死神「じゃあ試しにこれ握ってみて。そこに置いてあったものだよ」
「……バット?」
死神「いいから」
「なんでバットなんか……、……つかめない」
死神「さて何故でしょう?」
「……」
死神「はいタイムオーバー」
「わかったよ、オーケー、信じよう。ここは俺の住んでた場所と違うトコだってな」
死神「ふふ、理解が早くて助かるよ」
277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:45:23.98 ID:z8xMv6HU0
死神「ところでキミ、自分の名前覚えてないの?」
「俺の名前?」
死神「そう、キミの名前」
「……」
死神「何か頭にショック受けちゃったのかな? まぁいいや、ちょっと治しておくね」
「うお、まぶしっ」
死神「どう? 思い出した?」
俺「まぁ、だいたいは……」
死神「ふふ、よかった」
278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:48:07.40 ID:z8xMv6HU0
死神「ところで。キミ、死ぬ直前のことで何か思い出せる事って無い?」
俺「う〜ん……たしかバッティングピッチャーをやってて……」
死神「ふむふむ」
俺「だめだ、そっから思い出せない」
死神「よかった、曖昧なんだね?」
俺「あ? あぁ、そうだが……」
死神「あんまり鮮明に覚えてたりしたら呪縛霊とかになっちゃうんだけど、俺くんはその心配なさそうだね」
俺「呪縛霊って……」
死神「あぁ、心配しないで大丈夫だから、もし呪縛霊になってもボクは痛くしないから」
俺「痛くしないって、問題そこなのか」
死神「この鎌でだいたい一撃だからね」
俺「だからそれ仕舞ってくれ」
死神「はーい」
279 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:52:46.99 ID:z8xMv6HU0
死神「ここに来た人間は、だんだん新しい記憶から無くなっていくんだ」
俺「そうなのか」
死神「一つ一つ、消えていって。そして、全ての記憶が無くなれば」
俺「無くなれば?」
死神「また、生まれるんだよ」
俺「ほう?」
死神「ボクは魂の循環を促してる、それが仕事なんだ」
俺「なんか随分イメージと違うんだな」
死神「はは、よく言われる」
280 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /10(木) 23:55:13.63 ID:z8xMv6HU0
死神「っていうか、君も野球やってたんだね」
俺「あぁ、そうだよ」
死神「野球場で死んじゃうなんてキミらしいね」
俺「そうか?」
死神「うん。実はね、最近ボクも野球始めたんだ。良かったらボクの草野球チームに入らない?」
俺「死神も野球やるのか」
死神「当たり前さ、天国にはプロ野球リーグだってあるんだよ?」
俺「まじか、天国すげぇな……」
282 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:00:35.26 ID:L4Zr9fLL0
死神「今年は天界交流戦があるからきっと盛り上がるよ」
俺「っていうか、死んだら野球もクソもねぇだろう?」
死神「それがね、神様が野球好きでね。野球をやりたいって言えば身体を残してくれるんだよ」
俺「は?」
死神「だから、一緒に野球しよう?」
俺「何の神さまだよそいつは……」
死神「野球の神さまだよ?」
284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:04:10.66 ID:z8xMv6HU0
俺「野球の神さまが天界を牛耳ってんのか」
死神「野球面白いからね」
俺「えらく単純な理由だなおい」
死神「そこは言わないお約束」
俺「う〜ん……野球か、よし。やってやるよ」
死神「やったぁ!」
俺「はは……変なヤツだなお前」
死神「よく言われる」
俺「死神の友達が出来るなんて一生の自慢だよ、もう死んだからそれも無いか」
死神「はは、死神ジョークわかってるね。慣れてきた証拠だよ?」
俺「あんまり笑えねぇ……」
285 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:06:38.46 ID:L4Zr9fLL0
死神「じゃあさ、今から上にいくけど」
俺「とうとう天国に召されるんだな俺」
死神「それは俺くん次第かな」
俺「するってぇと?」
死神「天国に行くか地獄に行くか、まず裁かれるんだ」
俺「審判のなんちゃらっていうアレか、誰が裁くんだ?」
死神「もちろん野球の神さまだよ」
俺「どんだけ野球の権力高いんだよ」
286 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:13:27.94 ID:L4Zr9fLL0
俺「ココまで来たら天国でも地獄でもどっちでもいいよ」
死神「地獄は辛いよ? 天国に行きたくないの?」
俺「短い人生だったけど別に後悔してねぇよ、死んだ後の事まで考えてなかったし」
死神「強いんだね」
俺「ただ、心残りなのは」
死神「うん?」
俺「妹が居るんだよ」
死神「へぇ、妹さん?」
俺「えらく強がってるわりに泣き虫でな? せめて最後に別れの一言でも言ってやれないのが、心残りかな」
死神「……」
俺「なんてな、はは。わかってるって、無理なんだろ? さ、もう行こうぜ」
死神「……ごめんね、俺くん」
俺「なんか言ったか?」
死神「何も」
287 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:16:53.26 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
神さま「ワシが神である」
俺「こんちは」
神さま「うむ、死神から伺っておるぞ。お主の事は」
俺「はぁ」
神さま「数々の蛮行を働いた大悪党と聞き及んでおる」
俺「え?」
神さま「実の妹に非道な行いをした罪、地獄で償うが良い」
俺「なん……だと……?」
289 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:23:57.14 ID:L4Zr9fLL0
俺「という事で地獄に落ちました」
死神「あら」
俺「おい、死神。ちょっと待て、大悪党って何だよおい」
死神「さ、さぁ……?」
俺「思い当たる節が……ないわけでもないが……」
死神「た、たぶんそれの事じゃないかな?」
俺「まじか……ユニフォームフェチって問答無用で地獄送りなの……?」
290 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:32:19.00 ID:L4Zr9fLL0
俺「ところで」
死神「うん?」
俺「俺は地獄に落ちたとして、なんで死神のお前まで地獄に居るの?」
死神「だってボクの家、ここにあるし」
俺「お前も一応神なんだろ? なんでわざわざ地獄なんかに家が」
死神「う、うるさいな! キミには関係ないだろ?!」
俺「確かにな、じゃ俺はこの辺りで」
死神「ちょ、どこ行くの?」
俺「どこだっていいだろ? 俺には俺の生き方ってもんが……」
死神「もう死んでるのに?」
俺「う……」
死神「どこかにアテあるの?」
俺「それは……これから考えて」
死神「そんなんじゃすぐに蒸発しちゃうよ、ちゃんと食べないと空腹で消えちゃうんだから」
俺「まじか……死んでも空腹になるとかどんだけだよ……」
291 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:33:15.65 ID:L4Zr9fLL0
死神「だ……だから、ボクの家に来てくれたら……その……食べ物もあるし……」
俺「あん?」
死神「あの……その……」
俺「?」
死神「あぁもう! 女の子にそこまで言わせる?! 一緒に住もうって言ってるの!」
俺「どこで?」
死神「ボクの家で」
俺「お前ん家?」
死神「うん」
俺「お前、死神だろ?」
死神「そうだけど」
俺「いいのかよ?」
死神「別に禁止されてるわけじゃないもん」
俺「自由すぎるだろ天界……」
292 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 00:35:33.13 ID:BLccS1yd0
死神かわいい
301 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 01:40:43.49 ID:L4Zr9fLL0
俺「しかし、地獄って言っても案外やる事無いんだな」
死神「最近は色々とうるさいらしいから」
俺「そうなのか? どこでも一緒なんだなそういうのって」
死神「まぁね」
俺「じゃあキャッチボールでもするか」
死神「キャッチボール?」
俺「するんだろ? 野球」
死神「あぁ……、うん」
俺「適当に道具借りるぞ」
死神「あ、待ってよ」
344 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 18:24:00.01 ID:L4Zr9fLL0
俺「まさか死んでまで野球やるとは思わなかったな」
死神「キミは野球得意なんだよね?」
俺「昔ちょっとやってたからな」
死神「ボクは苦手かな……」
俺「そうなの?」
死神「うん、あんまり上手くないし」
俺「野球始めてどれくらいなんだ?」
死神「えーっと、ここに来てからだから。1ヶ月くらいかな」
俺「野球暦浅っ」
死神「一緒に野球する人も居なかったし、だから下手だよボク?」
俺「いいよそんなの、これから上手くなれば良い話だろ」
死神「うん」
346 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 18:29:20.48 ID:L4Zr9fLL0
俺「じゃあキャッチボールやるか、投げ方とかは大丈夫なんだよな?」
死神「いくらボクが下手だからってそれくらい出来るよ!」
死神「えいっ!」
死神「あれ?」
死神「えいっ!」
俺「頼むから前に投げてくれ、後ろに投げられても捕れん」
死神「おっかしーな、前にやった時は上手くいったのに。よーし、こんどこそ」
死神「え〜いっ!」
俺「……これは骨が折れそうだな」
347 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 18:37:59.00 ID:L4Zr9fLL0
俺「えっとな。まず軽く肩幅くらいに両足間隔とって、投げたい方向に肩を向けて両手を開いて」
死神「こう?」
俺「そうそう、それで左足で軽く上げてみ?」
死神「こ、こうかな?」
俺「荒ぶる鷹のポーズ完成」
死神「ひょっとしてボクで遊んでる?」
俺「あ、ばれました?」
死神「もう!」
ビュン!
俺「おぉ、今の感じ」
349 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 18:44:53.83 ID:L4Zr9fLL0
俺「左足を下ろした時に重心移動、それと一緒に肘を動かして軽くスナップを効かせて投げるんだ、投げた後に小指が上を向いてるのがベストだ。あと、最後に右足で蹴るのも忘れるな」
死神「そんないっぺんに言われても……」
俺「さっきは上手い事いってたから、後は感覚を掴んでいこう。こういうのは反復練習しかないんだ」
死神「うん、わかった」
350 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 18:55:58.18 ID:L4Zr9fLL0
俺「あとな、ボールの縫い目があるだろ?」
死神「赤い紐のこと?」
俺「そうそう、それに指の腹を乗せる感じで投げると。指にかかって投げやすいんだ」
死神「こう?」
俺「ちょっと深く握りすぎだな、もう少し指をずらしてみて」
死神「うん」
俺「例えばゴロをさばいた時、グラブの中のボールを取り出した瞬間にその形になってるのがベストだ」
死神「そ、そんな一瞬で正確にボールの縫い目なんかつかめるの?」
俺「スローイングのミスを無くす工夫だよ、一回そういう形で投げてみ?」
死神「あ……、投げやすい」
俺「だろ? 今言ったのは基本だけど、一番投げやすい形を見つけて自分のモノにすると良いよ」
351 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:09:21.16 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
死神「えい!」
俺「なんとか普通に前に投げられるようになったな」
死神「えへへ」
俺「昨日からしたら大進歩だな」
死神「でしょ?」
俺「どこか筋肉とか痛くないか?」
死神「昨日からずっと全身痛いよ……」
俺「じゃあ帰ったらマッサージしてやるよ」
352 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:10:11.10 ID:L4Zr9fLL0
死神「え? いいよ……そんな……」
俺「良いって、俺のはキクって部員にも評判なんだよ? ……、部員?」
死神「?」
俺「あ、いや。こっちの話。とにかく帰ったらマッサージな」
死神「えっち」
俺「残念だが俺は死神フェチでも何でもないから安心しろ」
死神「ちぇー」
俺「ちぇーって何、ちぇーって」
死神「なんでもなーい」
353 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:18:58.86 ID:L4Zr9fLL0
俺「にしても、何か拍子抜けだな」
死神「何がさ?」
俺「地獄ってもっと仰々しいとこだと思ってたのにさ、意外そんなことないんだなって」
死神「……ここは大きな監獄だからね、娯楽も何も無いただの入れ物だから」
俺「?」
死神「キミは知らなくてもいいの」
俺「そっか、まー色々あるんだな。俺としては平和で過ごせればそれでいいよ」
死神「でも、油断してるとここは危ないよ」
俺「危ない?」
死神「ここには鬼がいっぱいいるんだ、気を抜いてたら襲われるよ」
俺「どうしよう、急に震えてきた」
死神「怖くなった?」
俺「いや、そりゃそうだろう。鬼に襲われるとか、俺自慢じゃないけど普通の人間だよ?」
354 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:20:55.83 ID:L4Zr9fLL0
死神「でもココに居たら安心だからね? ボクの家の近くは中立地帯なんだ」
俺「中立って、まさか地獄の鬼同士で抗争とか勃発してるわけ?」
死神「あれ? キミ、よく知ってるね」
俺「……できれば当たって欲しくなかったよ」
死神「ボクが派遣される前から地獄には二つの大きなグループがあって、ずーっと睨み合いの状態なんだってさ」
俺「冷戦ってわけか」
死神「だから、何も知らないキミが出歩いたら恰好の餌食ってわけ。わかる?」
355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:32:13.41 ID:L4Zr9fLL0
俺「その鬼の抗争とお前は何か関係してるのか?」
死神「地獄に派遣された者には地獄の監視っていう使命があるんだけど……。最近死神グループの権力も落ちちゃってね、それで」
俺「それで、誰もやりたがらない地獄での仕事をお前が押し付けられた……と」
死神「うん……」
俺「ひどい話だ」
死神「ついでにもう一つ、ひどい話があるんだけどさ」
俺「?」
死神「ボクが野球を始めた理由なんだけど」
俺「そうだ、それをまだ聞いてなか──」
357 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:41:06.67 ID:L4Zr9fLL0
天使A「あれ? どちら様と思ったら落ちこぼれの死神様じゃないですか?」
天使B「本当だ、こんな地獄に左遷されて可愛そうな死神様だ」
死神「あ……」
天使A「なんだなんだ? 天使様が直々に出向いてやったってのにそのツラはよ」
天使B「こいつ俺らにビビって声もでねーんじゃねぇの?」
俺「誰だよ、お前ら」
358 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:42:26.39 ID:L4Zr9fLL0
天使A「あん? なんだこの人間」
天使B「へぇ、こいつが新しい生贄ってわけ?」
天使A「ふん。どんな選手を連れてくると思ったらこんな弱そうなヤツで大丈夫なのか?」
天使B「どんなメンツを揃えても無駄無駄、お前じゃ天国野球チームには勝てないよ」
天使A「この前の代の死神が連れてきたヤツも全然だったじゃん。もう少し歯ごたえがないとつまらねぇよな」
天使B「今回も軽く捻ってやるから覚悟しとけよな」
360 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:44:32.72 ID:L4Zr9fLL0
天使A「試合はもうすぐだからな、また死神の泣き面が見れると思うと今から楽しみだぜ」
天使B「あー弱いもの虐めって楽しいねぇ」
天使A「じゃあな、せいぜい這いずり回ってろ」
俺「……今のやつらは?」
死神「天国の人たち」
俺「で、なんでその天国のヤツらにお前はボロカスに言われてたわけ?」
死神「……」
俺「ま、無理に聞こうとはしねぇよ。今日は疲れたろ? もう帰ろうぜ?」
死神「……うん」
361 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:47:16.91 ID:BLccS1yd0
天使DQNすぎるw
なんだかパワポケくさい展開になってきた
363 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:51:57.06 ID:4gZo21S+0
>>361
確かに
ちょっと違和感でてきたところだったから丁度いいわ
パワポケの世界観で読んでいこう
362 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:50:45.52 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
俺「なんかキナ臭くなってきたな」
俺「あいつらと試合するんだろ?」
俺「あの態度からするとただの試合、ってわけでもなさそうだし」
俺「一波乱ありそうだな……」
俺「とにかく……今は寝るか」
366 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 19:59:04.91 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
俺「で、朝になったわけだが」
俺「死神は……居ないみたいだな」
俺「いい機会だし適当にここらを探検してみようかな」
俺「ちょろっと地獄の一丁目まで、なんつって」
俺「笑ってくれる人も居ないなんて寂しい……」
369 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 20:09:46.15 ID:L4Zr9fLL0
俺「なーんもねぇな、ココは」
俺「わかる事と言えば見渡す限り荒野が広がってる、無駄にデカイ空間って事くらいか」
俺「鬼なんか本当に居るのかね、こんな場所に」
「こんにちは。見ない顔だね、君」
俺「こんにちは。この間来たばかりなんですよ」
「へぇ、そうなんだ。ここは何も無い場所だろう?」
俺「地獄って言うくらいだから、もっとマグマとか火山とかあるのかと思ってんですけどね」
「そうかい? 君からしたらそういうイメージなのかな?」
俺「まぁ、感想としては普通じゃないですか?」
370 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 20:20:47.75 ID:L4Zr9fLL0
「ここに来た人間はいつも言うね」
俺「はは、そうなんですか。……? ここに来た人間?」
「あぁ、自己紹介が遅れたね。僕はここに住んでる鬼だよ、よろしくね」
俺「なん……だと……」
鬼「おや? 驚かないのかい?」
俺「いや、もう。驚きすぎて返ってリアクションに困ってるというか……」
鬼「はは、不思議な事を言う人間だね」
俺「よくみりゃツノ生えてる……」
鬼「このツノが珍しいかい?」
俺「ちょっと触ってみてもいいですか?」
鬼「いいよ、ほら」
俺「すごく……堅いです……」
372 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 20:48:37.44 ID:L4Zr9fLL0
鬼「地獄にはツノが生えてる鬼と、君みたいな人間が住んでるんだ」
俺「そうなんですか……親切にどうも」
鬼「にしても、君は珍しいね。ちゃんと肉体があるなんて、普通人間は魂だけでフワフワ浮かんでるんだよ?」
俺「あぁ、なんか野球をやる人は残してもらえるみたいで」
鬼「君が野球を?」
俺「まぁ……、一応」
鬼「……悪いことは言わない、辞めておいたほうがいいよ」
俺「どうしてですか?」
鬼「天使に目をつけられる」
373 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 20:49:34.38 ID:L4Zr9fLL0
俺「あ〜、あのいけ好かない野郎ですか」
鬼「天使に会ったのか?!」
俺「えぇ、まぁ。俺死神のとこに世話になってるんで、その時に」
鬼「なんという事だ……君、悪い事は言わない。今すぐそこから逃げなさい」
俺「は?」
鬼「天使と野球をやっちゃいけない、魂ごと消されるぞ」
俺「なん……だと……」
375 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:01:41.70 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
俺「ただいま〜」
死神「おかえり、どこ行ってたの?」
俺「散歩だよ」
死神「誰とも会わなかった?」
俺「誰か居るのか? いたら友達になろうと思ってたんだが」
死神「……鬼、とか」
俺「はは、そんなツノの生えたヤツとは会わなかったよ」
死神「……そう」
376 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:06:59.27 ID:L4Zr9fLL0
俺「それより、今日は野球しないのか?」
死神「体が痛くてそれどころじゃないの」
俺「あ〜、結局マッサージしてなかったもんな」
死神「えっち」
俺「あん?」
死神「触りたいならそう言えばいいのに」
俺「勘違いするなよ」
死神「な、何さ」
俺「俺はユニフォームフェチであってお前の体なんぞに興味は無い」
死神「ユニフォーム姿なら良いの……?」
俺「どうしてそうなる」
死神「だってそう言ってるもん……」
俺「からかうのもいい加減にしろ。何か食わせてくれ、ハラが減った」
377 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:13:51.56 ID:L4Zr9fLL0
『死神はね、地獄の鬼たちを消したいんだよ』
『消す?』
『天界からすれば鬼は異物らしいからね、でも強攻策に出ると最近は色々とまずいらしいから。目立たないように徐々に消していくんだ』
『徐々にって?』
『そう、例えば野球の試合で負けたら……とかね』
『まさかそんな……』
『死神は選定人だよ。鬼達を無理矢理天使達との野球の試合に駆り立てるんだ、地獄の治安維持っていう名目のね』
『あいつがそんな……』
『とにかく、君も早く死神のところから逃げたほうがいい。どこにも行くアテがなかったらうちに来ると良いよ』
378 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:18:32.14 ID:L4Zr9fLL0
死神「……ねぇ。キミ、聞いてる?」
俺「え? あ、すまん。何だっけ?」
死神「天国チームと地獄チームで野球の試合をするっていう話だよ」
俺「あぁ、そうそう。その話だったな」
死神「何年かに一度、天界交流戦っていう名前で天国チームと地獄チームが試合するんだ」
俺「天国チームってのは前に来たヤツらの事?」
死神「うん。天国にはプロ野球リーグがあるから、強いんだ」
俺「で、地獄チームってのは?」
死神「今のところ、メンバーはキミとボクだけだよ」
379 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:23:35.00 ID:L4Zr9fLL0
俺「野球の試合をするには最低あと7人必要だぞ?」
死神「そうなんだよね……それでお願いなんだけど。キミ、ボクの代わりにメンバーを集めてくれない?」
俺「あん?」
死神「なんか昨日あたりから急に仕事が忙しくてさ、そこまで手が回らないんだよね……」
俺「誰かから妨害されてんのか?」
死神「たぶん……」
俺「あの天使達か……」
死神「だから、おねがい!」
俺「わかったよ、お前は早く仕事片付けてこい」
死神「ありがとう」
380 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:29:29.94 ID:L4Zr9fLL0
『俺から質問してもいいか?』
『なんだい?』
『あんたら鬼が仲間同士で争ってるって聞いたけど』
『天使は地獄の食料を管理してるんだ』
『……?』
『随分昔に、食料の供給が止まった事があってね。それで備蓄してあった食糧を巡って仲間内で揉めたのさ、言うならば過激派と保守派にね』
『やりたい放題だな……あの天使』
381 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:31:22.53 ID:L4Zr9fLL0
『まぁ今では、争い合っているというより単純に違う所に住んでいるって感じだけどね。食料の供給も再開されたし、昔より減ったけどさ』
『なるほどね』
『みんな怖いんだよ、天使が。いつまた食料の供給が止められるかもしれない。あいつらに嫌われないようにひっそりと暮らしてる。だから君もなるべく目立った動きは避けてくれ』
『避けたくれって言われても』
『あと夜も危険だ、厄介なヤツラが出てくるからね』
『厄介なヤツ?』
『ちょっとした問題児だよ』
『問題だらけだなここは』
『だから地獄って呼ばれてるんだよ』
『なるほど』
俺「さて……どうしたもんかね」
382 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:38:21.19 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
俺「とにかく、一度会いに行くか。その厄介なヤツらに」
俺「そうは言っても、どこに行けば会えるんだろうか」
下っ端A「ヘイヘイヘイ! ニイちゃん! 俺らのシマで何やってくれてんの!?」
俺「会えちゃったよ、わりとすぐに」
下っ端B「あ〜ん? なんだコラ?」
俺「何でもねぇよ」
下っ端C「見ねぇ顔だな、新入りか?」
俺「おう、よろしくな」
下っ端D「俺らの事全然怖がってねぇよコイツ、気に入らねぇな。アネゴんとこ連れていくか?」
383 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:40:30.25 ID:L4Zr9fLL0
餓鬼「なんだいなんだい、騒がしいね」
下っ端A「あ、アネゴ!」
俺「アネゴ?」
餓鬼「見ない顔だね、あんた」
俺「どうも」
下っ端「アネゴ、こいつアレですぜ……死神嬢ちゃんとこの……」
餓鬼「あぁ、新しい人間かい」
下っ端「聞いた特徴もぴったりですぜ、野球帽に野球のユニフォーム」
餓鬼「ケッ。で、その人間がアタイらに何の用だって?」
俺「お前がボスだよな?」
餓鬼「だったら何だってんだい?」
俺「一緒に野球しようぜ」
384 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 21:42:12.88 ID:L4Zr9fLL0
餓鬼「……」
下っ端「……」
俺「……?」
餓鬼「……プ、ククク……アハハハハハハハ!」
下っ端A「コイツはお笑いだ!」
餓鬼「おい今こいつ何て言った? 野球しよう? バカじゃね? マジモンのバカじゃね?」
下っ端B「ですぜですぜ、ゲヒャヒャヒャ」
餓鬼「いいか? 野球なんかやったら最後、天使のヤツラに消されちまうのさ。そんな死にたがりはここにャいねェよ、他当たりな他」
下っ端C「オラ行った行った! 帰れ帰れ!」
俺「ま、最初から上手く行くとは思ってなかったさ。今日は顔見せだ」
餓鬼「ふん……いくよ、アンタ達。何かシケちまった」
下っ端「へいアネゴ」
388 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:02:16.48 ID:L4Zr9fLL0
俺「おい、ちょっと待てよ」
シュ!
下っ端「アブねぇ! アネゴ!」
餓鬼「……っ」
パシッ!
俺「ナイスキャッチ、いい反射神経してるな。サード向きだ」
389 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:07:30.01 ID:L4Zr9fLL0
下っ端「おいコラァ! いきなりアネゴに向かってボール投げるとはどういう了見だコラァ!」
餓鬼「……」
下っ端「あんの野郎、ヤっちまいますか? アネゴ」
餓鬼「……」
俺「今日はもう帰る、そのボールは預けとくから気が向いたら返しに来てくれ」
下っ端「ちょっと待てオラァ! ケンカ売っといて帰るだぁ?!」
餓鬼「……やめな」
下っ端「アネゴ? どうしたんで?」
餓鬼「……」ポッ
下っ端「ポ?」
餓鬼「……ポ……ポポポ、帰ってポ○モン見なきゃ! 今日はもう解散だよ!」
下っ端「えぇぇええぇ?! ちょっとアネゴ?!」
390 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:14:12.19 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
鬼「やあ」
俺「ども」
鬼「こっちにくる気になったかい?」
俺「いえ、今日は別の話で」
鬼「別の話?」
俺「一緒に野球やりませんか?」
鬼「……、本気で言ってるのかい?」
俺「えぇ、まぁ。一応」
391 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:23:24.26 ID:L4Zr9fLL0
鬼「言っただろ? 負ければ消されるって」
俺「負けなきゃいいんだろ?」
鬼「はっ?! そんなの無理だよ」
俺「無理?」
鬼「むこうは凄く強いんだよ? 僕らが勝てるわけがないだろ?」
俺「……」
鬼「君も正気かい? 野球なんかやらずにこっちへ来なよ、今ならまだ間に合う」
俺「やってもないのに結果を決め付けるなよ、あいつらに一泡吹かせようと思わないのか?」
鬼「そんな事をしなくても生きていけるんだ、僕らは平穏に生きていけさえすればそれで良い」
俺「それは逃げじゃないのか?」
鬼「違う!」
俺「どこが違うってんだ」
鬼「違う……僕らは……!」
392 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:32:06.78 ID:L4Zr9fLL0
俺「僕ら僕らって、お前はどうなんだよ。お前はどうしたいんだ?」
鬼「僕?」
俺「やられっぱなしで悔しくないのか? 見返してやりたいとは思わないのか?」
鬼「……」
俺「確かに強い相手かもしれない、だけど勝負事に絶対は無いんだ。可能性があるなら、掛けてみたっていいじゃないか」
鬼「む、無理だよ……」
俺「無理? 誰が決めたそんな事、やる前から言い訳して逃げてんじゃねえよ。野球はな、強いほうが勝つんじゃないんだよ、勝った方が強いんだ」
鬼「僕は逃げてなんか……」
俺「いいか? もう一度言うけどな──」
下っ端A「た、大変だ!」
393 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:38:47.94 ID:L4Zr9fLL0
俺「どうしたんだよ、血相変えて」
下っ端A「あぁ、あんたか! 丁度良かった、ツレが天使のヤツらに因縁つけられて……」
鬼「なんだって?!」
下っ端A「このままじゃアイツ……消されちまう……! あんた、助けてくれよ!」
俺「どこだ? 連れてけ」
下っ端A「こっちだ!」
394 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:43:00.08 ID:L4Zr9fLL0
◇ ◇
下っ端「ここですぜ」
俺「天使……」
天使A「おや? どこの誰かと思ったら死神が連れてきた人間じゃないか」
俺「何やってんだよ、ここで」
天使A「いやぁ、久々に散歩でもしようかと思ってね。ここらを歩いていたんだが目の前にゴミが落ちてたから消してあげたんだよ」
俺「ゴミ……だと……?」
天使A「あぁ、そうさ。掃除をしてあげたんだから感謝してほしいね」
395 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:56:15.64 ID:L4Zr9fLL0
餓鬼「ちょっと良いかい?」
天使A「何かな?」
餓鬼「ここらにあたしの手下が一人居たと思うんだが」
天使A「あぁ。居たっけ、そんなの」
餓鬼「どこにやったんだい?」
天使A「さあ、ゴミと一緒に消えちゃったのかもね」
餓鬼「てめぇ……」
天使A「あぁ、思い出した。最後までアネゴ! アネゴ! って叫んでたよ、声がでなくなるまでね。ははっ、傑作だったなあれは」
餓鬼「……覚悟は出来てるんだろうね、天使」
天使A「あれあれ? 鬼の分際で天使に逆らうの? 立場わきまえてる? 消すよ?」
俺「おい、ちょっと待て」
397 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 22:58:28.45 ID:QVGHhKEgO
これは長編になりそうな予感
398 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 23:03:59.56 ID:L4Zr9fLL0
俺「さっき聞いたんだが、なんでもこの世界じゃ、ゴトには野球で決着をつけるそうじゃないか」
天使「そうだね、問題が起きたら野球で解決。それがルールだよ」
俺「だったら俺とお前で勝負しないか?」
天使「勝負だって? やめておけ、とてもじゃないけど勝負にならないよ」
俺「一打席勝負だ、俺が地獄代表で投手をやる。打ち取ったら俺の勝ちって事でとっととご退場願えないか?」
天使「ふん、いいだろう。君が負けたらココから消えてもらうけどいいのかな?」
俺「当たりま──」
鬼「ちょ、ちょっと待て! 負けたら消されるんだぞ、わかってんのかい?」
俺「わかってるよ」
鬼「だったら何で」
俺「バカやろう!」
鬼「……っ」
俺「放っておけるか! 同じトコに住む仲間じゃねぇか!」
餓鬼「あんた……」
俺「袖振り合うも多生の縁ってな、俺が生まれた場所の言葉だ。まかせとけ、あんなヤツに負けやしないさ。あんなのよりもっと強いヤツを俺は知ってる」
400 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 23:09:28.38 ID:L4Zr9fLL0
魑「たいへんだー」
魅「たいへんだー」
魍「へんたいだー」
魎「たいへんだー」
魑「なんかー」
魅「人間とー」
魍「天使がー」
魎「勝負するってー」
魑「たいへんだー」
魅「たいへんだー」
魍「へんたいだー」
魎「たいへんだー」
401 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 23:13:41.60 ID:L4Zr9fLL0
鬼「今からでも良い、辞めるんだ。まだ遅くない」
俺「あん?」
鬼「消されるんだぞ? わかっているのか?!」
俺「男にはな、やらなきゃいけない時があるんだよ」
鬼「……っ」
俺「良いから、そこで見とけ」
鬼「バカだ……君はバカだよ……、天使には勝てないのに……」
402 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 23:17:50.81 ID:L4Zr9fLL0
天使「どうした? さっさと投げてこい」
俺「言われなくても」
シュッ
天使「ん?」
鬼「この局面でスローボール……だと」
天使「……ふん、あまりに遅すぎて打ち気を削がれた」
俺「ストライクワンだぜ」
天使「カウントなど関係ない、次で仕舞いだ」
404 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 23:20:25.70 ID:L4Zr9fLL0
俺「さ〜、次はストレートでいくかな?」
天使「……」
俺「それとも変化球?」
天使「……」
俺「やっぱり変化球だよなぁ」
天使「はやく投げてこい」
俺「へいへい、天使様?」
シュッ
鬼「ま、またスローボール」
405 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /11(金) 23:31:40.62 ID:L4Zr9fLL0
天使「お前……ふざけているのか?」
俺「ストライクツー」
天使「真面目にやれ!」
俺「真面目ですよ」
鬼「彼は……、一体……」
魑「やるねー」
魅「ねー」
魍「やらないか?」
魎「やるねー」
下っ端「へへっ! アネゴ、これで追い込みましたね。ひょっとして勝っちゃうかもしれませんね!」
餓鬼「うるさいよ、男の勝負だ。黙って見てな」
411 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:00:02.09 ID:L4Zr9fLL0
天使「二球続けてスローボール……」
天使「三球目は……無い」
天使「勝負球は次だ」
415 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:41:39.66 ID:o9tOmBp20
俺「さぁ、追い詰めたぜ」
天使「どっちが」
俺「余裕だね、天使様?」
天使「ふん」
俺「これで……心置きなく投げられるぜ」
天死「なに?」
俺「とっておきは最後まで隠しておくもんだろ?」
天使「なん……だと……?」
鬼「一体どんなボールなんだ……」
俺「くらえ! これで終わりだ!」
416 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:43:15.21 ID:o9tOmBp20
鬼「え?」
天使「……っ」
鬼「ス……スローボール……、空振り三振……」
俺「はい三振、俺の勝ち」
419 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:48:05.12 ID:o9tOmBp20
餓鬼「あいつ……、勝っちまいやがった……」
下っ端「はは! やりましたね、アネゴ! ザマぁ見ろ天使!」
鬼「……何者なんだ、君は」
俺「ただの野球選手だよ」
鬼「あの天使に勝つなんて、信じられない」
俺「な? 無理じゃねぇんだよ、全部一緒さ。やってみなきゃわからない、そうだろ?」
鬼「……」
俺「だから一緒に野球しようぜ?」
鬼「少し、……考えさせてくれないか」
俺「あぁ、いつでも待ってるさ」
420 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:50:22.04 ID:o9tOmBp20
天使「認めない……認めない……、こんなの認めない……ッ!!」
俺「お前の負けだよ」
天使「こんな、こんな、こんな……、屈辱だ……」
俺「お前なんかな、うちの妹に比べりゃ全然大した事ないんだよ。あいつはまだ野球始めたばっかりだけどよ」
天使「キ・サ・マあぁ……、消す……消してやる……ッ!」
ピー!
ピピピピピー!
神の使い「はいはいそこまでそこまで〜」
421 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:53:45.65 ID:o9tOmBp20
神の使い「全員その場から動かないで」
天使「ち……、やっかいなヤツに見つかった」
餓鬼「て、天界警察だ……」
天使「このカリは次の試合で返す、首を洗って待っていろ」
餓鬼「あ! 待ちやがれ!」
神の使い「あー、天使さん行っちゃった。事情聴取しなきゃいけないのに……あぁもうめんどくさいなぁ。そこのキミ」
俺「あん?」
神の使い「今ここで起こった事全部ナイショにしてくれる? 上にバレたら色々めんどくさいのよ」
俺「俺は別に構わんが……」
餓鬼「……」
422 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:55:33.80 ID:o9tOmBp20
餓鬼「下っ端D……あんたのことは忘れないよ……」
餓鬼「いつもドジでマヌケで役に立たない三下だけど……仲間だった……」
餓鬼「なかま……だった……」
神の使い「あぁ、あの下っ端Dくんなら今頃お家でおねんねしてるわよ」
餓鬼「え?」
神の使い「コッソリ戻しておいたの。勝手に消しちゃうと問題になっちゃうからね」
餓鬼「……」
神の使い「まったく天使さんも困ったもんよねぇ、最近カリカリしちゃってさ。何をそんなにムキになってるのかしら?」
餓鬼「ありがてぇ!」
神の使い「言っとくけどコレ、ナイショだからね?」
餓鬼「あぁ! もちろん!」
423 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 00:57:29.34 ID:o9tOmBp20
餓鬼「それもこれもアンタのおかげだ! ありがとう! ……って、居ない?」
俺「やべぇやべぇ、すっかり忘れてたんだけどおつかいの途中だったんだ。死神に怒られちまう」
鬼「彼なら……あるいは……」
死神「おっそーーーい! 野菜買うのに何時間かかってるの!」
俺「すまんすまん、ちょっとコレがコレでコレでな?」
死神「言い訳はケッコーです!」
俺「わかった! 俺が悪かった! だからその大鎌仕舞ってくれ!」
424 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:01:00.89 ID:o9tOmBp20
死神「はい、ボクの野菜スープ召し上がれ」
俺「いただきます」
死神「どう? おいしい?」
俺「あぁ、おいしいよ」
死神「よかった」
俺「どうだ、仕事片付きそうか?」
死神「それが、何か急に無くなっちゃって」
俺「無くなった?」
死神「さっき天界警察の人が来て、総務のミスで本当は違う人にいくはずだった依頼がボクのとこに来てたみたいで」
俺「……さっきのあいつかな?」
死神「とにかく、これでボクも練習できるよ」
俺「そうか、その事なんだけどさ」
死神「?」
427 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:15:21.00 ID:o9tOmBp20
俺「さっき、地獄の鬼達に会ってきたんだ」
死神「え? 誰に?」
俺「だから、鬼達に」
死神「何もされなかった? 大丈夫? 襲われなかった?」
俺「意外ににイイ奴等だったよ、鬼にも色んなのが居るんだな」
死神「そ……そう」
俺「お前が鬼を恐れる理由は、嫌われてるからか?」
死神「!」
俺「天界から派遣されてるってだけでここでは避けられてるんだろ? あいつらはお前の事を文字通り死神だと思ってるみたいだしさ」
死神「……うん」
俺「メンバーを俺に集めさせようとしたのもそういう事か?」
死神「……うん」
俺「はぁ……、なるほどね」
429 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:19:37.85 ID:o9tOmBp20
死神「だ、だって」
俺「お前はあいつらに歩み寄ろうとしたのか?」
死神「……ううん」
俺「やる前から怖がってちゃだめだろ? 速いゴロだからって目を逸らすと捕球できないのと同じだ」
死神「ごめんなさい……」
俺「実はな、そいつらを野球チームに勧誘してみたんだ」
死神「え?」
俺「でも見事に断られたよ」
死神「そう……」
俺「明日もあいつらのトコに行こうと思う。もちろん、お前も一緒にな?」
死神「ボ、ボクも?」
俺「当たり前だろ、一緒に野球するんだ。仲間だ」
430 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:23:18.86 ID:o9tOmBp20
死神「仲間……ともだち?」
俺「そうだな、友達だ」
死神「ボク……友達なんか一人も……」
俺「そんなのこれから作っていけばいいさ、過去は変えられないけど、未来は作っていける。そうだろ? 死んだ俺が言うのも変だけどよ」
死神「……うん、わかった」
433 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:31:20.27 ID:o9tOmBp20
俺「もう少し聞きたいんだが、天国チームとの試合で負けたら魂ごと消えるってのは本当か?」
死神「な……なんでそれをキミが知ってるの?」
俺「鬼から聞いた」
死神「……」
俺「どうなんだ」
死神「……うん」
俺「どうしてそんな大切な事を黙ってたんだ?」
死神「だって……なんだか切り出しにくくて……、ごめんなさい」
俺「いや、怒ってるわけじゃないんだ。あと一つ確認させてくれ」
434 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:33:36.79 ID:o9tOmBp20
俺「お前を苦しめてるのは天使のヤツか?」
死神「……」
俺「これは俺の仮定だけどよ、お前を地獄チームの代表なんかに仕立て上げたのは天使のヤツなんじゃないのか?」
俺「おかしいとおもったんだよ。野球始めて一ヶ月、ボールもまともに投げられないお前が代表なんてな」
死神「それは……」
俺「その試合とやらであの天使を倒せば、お前は楽になるのか?」
死神「……」
俺「どうなんだ」
死神「……うん。勝てばね、神さまが何でも願い事一つ叶えてくれるの」
俺「そうか、よし。じゃあ一緒に勝とう。勝ってこんな事終わらせよう」
435 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:35:55.86 ID:o9tOmBp20
◇ ◇
死神「それじゃお仕事いってきまーす」
俺「おう、行ってらっしゃい」
死神「夜には戻るね、お留守番よろしくね」
俺「あぁ、戻ってきたら一緒に鬼達のトコに行こうな?」
死神「うん!」
436 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:36:43.44 ID:o9tOmBp20
ピンポーン
俺「おや? 来客?」
ピンポン
ピンポン
俺「はいはい、今出ますよ」
ドンドンドン
俺「今出るって」
ガチャ
下っ端「迎えにきやしたぜ、旦那」
俺「あん?」
437 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:38:56.34 ID:o9tOmBp20
下っ端「アネゴ、連れてきやしたぜ。件の旦那」
餓鬼「ご苦労」
俺「あの〜?」
餓鬼「ようそこ、アタイらのアジトに。大した振る舞いはできねぇがゆっくりしてってくれ」
俺「は、はぁ……」
餓鬼「宴だ! てめぇら! 騒ぎやがれ!」
一同「オォー!」
俺「どうしてこうなった」
438 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 01:40:43.94 ID:o9tOmBp20
下っ端D「へへ、ありがとな。旦那が助けてくれたんだろ? まぁ飲めよ」
俺「うっぷ、もう飲めねぇよ」
下っ端D「ンな事言うなよ、ささっ」
俺「おう……ありがとよ……」
下っ端D「注いで貰った酒を一気にクーっと行くのがココの流儀だぜ旦那」
俺「……」グイ
一同「オォー!」
俺「……」グイグイ
一同「オォオー!」
俺「……プハーッ」
下っ端D「大した飲みっぷりだな旦那!」
俺「水腹だ……うっぷ……」
440 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 02:06:20.46 ID:o9tOmBp20
魑「よろしくなー」
魅「よろしくなー」
魍「よろちくびー」
魎「よろしくなー」
俺「あ……、あぁ……。よろしくな。お前らも鬼なのか?」
魑「そうだぞー」
魅「そうだぞー」
魍「うそだッ!」
魎「そうだぞー」
俺「なんだか賑やかなヤツらだな……」
441 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 02:09:20.83 ID:o9tOmBp20
餓鬼「オメェら! 新しい仲間を紹介する! 今日からアタイの右腕になる男だ」
一同「オォー!」
俺「あん? 右腕」
餓鬼「コイツはアタイらの仲間を救った! あのクソ忌々しい天使に一泡吹かせたんだ! ケツまくって逃げるクソ天使のザマったらなかったぜ!」
俺「女の子がケツって……」
餓鬼「だから特別にアタイのトコに置いてやる事にした! 文句あるヤツはいねぇか!」
一同「ねぇぞー!」
餓鬼「じゃあ今日からコイツは仲間だ! オラ! 自己紹介でもしやがれ!」
俺「ってててて、蹴るなっての」
一同「……」
俺「えー……、えーっと」
俺「俺です、よろしく」
一同「オォー!」
餓鬼「ケツのしまらねぇ野郎だ」
俺「うるさいよ」
442 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 02:12:27.25 ID:o9tOmBp20
俺「って、うわ。もうこんな時間か。おい、俺は一旦帰るぞ」
餓鬼「へ? あ、ちょ。ちょっと待て、待てってば」
俺「あん?」
餓鬼「こっち来い」
俺「いてててて……ひっぱるなって」
餓鬼「いいから」
俺「なんだよ」
餓鬼「野球、メンバーが要るんだろ?」
俺「あん?」
餓鬼「だから。野球、メンバーがいるんだろ?」
俺「そうだけど」
餓鬼「だったら、アタイがメンバーになってやるから……」
俺「あん? この前はダメだって──」
444 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 02:14:19.07 ID:o9tOmBp20
餓鬼「ボール!」
俺「お、おう」
餓鬼「このボールが、アタイとアンタを結んでくれたんだ」
俺「そ、そうなのか」
餓鬼「か、勘違いするんじゃねーぞ! アタイは野球がしたいだけで……、あ……アンタが好き、……とかそんなんじゃ……ないんだからな……」
俺「ん? すまん最後の方がちょっと聞こえなかった」
餓鬼「な……なんでもない!」
俺「なんだ? ヘンなヤツだな」
445 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 02:17:12.04 ID:o9tOmBp20
餓鬼「た、建前が必要なんだよ。アタイはこれでも組織の上に立つ人間だ、アタイが動くにはアンタっていう理由が要るんだよ」
俺「めんどくさいんだな」
餓鬼「う、うるせー。アタイが野球をやりたいだけで、アンタの為とかじゃないんだからな!」
俺「はいはい」
餓鬼「違うんだからな!」
俺「ありがとう」
餓鬼「?!」
俺「嬉しいよ、一緒に頑張ろう」
餓鬼「……うん」
俺「じゃあ、そろそろお暇するよ。皆によろしくな」
餓鬼「……うん」
俺「たまには女の子らしくしても誰も文句言わないと思うぞ」
餓鬼「なっ……余計なお世話だ!」
俺「じゃあまたな!」
餓鬼「そんな風に言われたら……もっと好きになるじゃない……」
446 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 02:19:18.22 ID:o9tOmBp20
死神「で、キミ」
俺「おう」
死神「帰ったら一緒に行こうって言ってた本人が家に居ないでどうするの?」
俺「おう」
死神「なんで約束破るかな?」
俺「それが、聞いてくれよ。すげぇ良い知らせが──」
死神「何かな〜? あんまり面白くない話だと間違って右手が動いちゃうかもしないよ」
俺「落ち着け、素数を数えるんだ。素数は割り切れないマヌケな数字……」
死神「……はぁ……」
俺「落ち着いてくれたか」
死神「呆れてるの」
俺「似たようなもんだ、だから早くその大鎌を仕舞ってくれ。な?」
473 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:26:32.46 ID:o9tOmBp20
ピンポーン
俺「おや? 来客?」
死神「こんな時間に? ……ボクの家に?」
俺「ほら、行ってやれよ。待たせちゃ悪いだろ?」
死神「う、うん」
ガチャ
鬼「や、やぁ」
死神「!」
474 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:29:04.64 ID:o9tOmBp20
死神「ど、……どうしたの?」
鬼「い……いや、その……」
死神「……?」
鬼「あのですね……」
死神「うん……?」
鬼「や……」
死神「や?」
鬼「やき……」
死神「焼き? 焼肉?」
鬼「そうそう、焼肉」
死神「なあんだ、焼肉かぁ」
鬼「そうそう。美味しいよね、焼肉」
475 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:34:02.44 ID:o9tOmBp20
鬼「って、……そうじゃなくてですね」
死神「うん?」
鬼「僕も一緒に野球やってもいいかな?」
死神「……え?」
鬼「色々考えてみたんだけどさ、良い機会だと思うんだ」
死神「……そう」
鬼「俺さんに言われんだよ、やる前から諦めてどうするんだって。たぶん、僕らがずっとこんな調子だったから、ここもこんな風になってしまったのかもしれない」
死神「……」
鬼「僕も死神の事をよく知りもしないで拒絶してた。すまない、許してくれるかい?」
死神「そんな……ボクも鬼達の事、よく知りもしないで怖がって……ごめんね?」
鬼「いいさ、それより。野球の話、いいかな?」
死神「うん! 大歓迎だよ!」
476 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:38:29.16 ID:o9tOmBp20
俺「雨降って、なんとやら。か」
死神「また、キミに助けられたね」
俺「俺は何もしてないよ」
死神「ううん、キミが居なかったらボク、きっと何もできなかった……ありがとう」
俺「おいおい、まだ何も始まってないだろ? その涙は最後までとっとけよ」
死神「……うん」
俺「それじゃあ明日から練習するからな!」
鬼「はい!」
477 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:39:12.24 ID:o9tOmBp20
俺「……それより、焼肉って言葉が何かひっかかるな?」
俺「なんだかよく思い出せないが……そんな約束をしてた気がする」
俺「ま、いっか。忘れるくらいだからきっと大した事じゃないんだろう」
478 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:43:02.39 ID:o9tOmBp20
◇ ◇
神の使い「あ。天使さん、こんなとこに居たの?」
天使A「ふん……お前か」
神の使い「さっき死神ちゃんから連絡があって、野球のメンバーを揃えたらしいわよ」
天使A「どうせ寄せ集めのクズだろ」
神の使い「それが、どうやら地獄の二大グループのリーダーを懐柔したらしいわ」
天使A「何?」
神の使い「今年の交流戦は盛り上がりそうね?」
天使A「……」
479 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:49:13.65 ID:o9tOmBp20
神の使い「それじゃあ、仕事があるからまたね〜」
天使A「おい。ちょっと待て」
神の使い「なによ〜、こう見えても忙しいんだからね」
天使A「あの人間は何者なんだ」
神の使い「さあ? ただの人間でしょ?」
天使A「……ただの人間に、負けたとでも?」
神の使い「そうね、天使さんはただの人間に負けたのよ」
天使A「……何を企んでいる」
神の使い「人聞きの悪いこと言わないでよ、ただちょっと腰が悪そうだから治してあげただけよ」
482 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 12:53:14.63 ID:o9tOmBp20
神の使い「じゃあね、こっちは試合の準備でホント忙しいんだから。バイバイ」
天使A「……」
天使A「地獄の二大グループのリーダーに、あの人間……」
天使A「落ちこぼれの死神のくせに噛み付いてくるじゃないか」
天使A「気に入らないな……」
486 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 13:00:14.72 ID:o9tOmBp20
天使A「少し……調べてみるか……、おい。そこのお前」
「は、はい!」
天使A「早く来いウスノロが。誰が地獄へ落ちるはずだったお前を救ってやったと思うんだ?」
「へへ……その節はどうも……。それより、な……なんでございましょうか天使様」
天使A「お前、今から地獄へ行け」
「えぇ?! 地獄ですか?!」
天使A「……」
「わ……わかりました……」
487 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 13:04:13.44 ID:o9tOmBp20
◇ ◇
俺「はい、ストライクバッターアウト」
餓鬼「っかー! どうしてこう当たらないもんかね!」
俺「インパクトの瞬間に顔が明後日の方向を向いてるからな、それで当たったらマグレの部類だよ」
餓鬼「アタイのバッティングにケチつけよってのかい!」
俺「どうしてそうなる」
餓鬼「……教えろよ」
俺「あん?」
餓鬼「どうしたら……打てるようになるんだよ」
俺「なかなか素直じゃないか」
餓鬼「う、う……うるせー! 早く教えろってんだい!」
488 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 13:23:03.34 ID:o9tOmBp20
死神「ねぇ、ゴロの捕り方なんだけど……」
俺「ん? 前言った通りに膝を軽く曲げてだな……」
餓鬼「ちょっと! 今はアタイが教わってるんだよ!」
死神「う……。ちょ、ちょっとくらいいいじゃないか。餓鬼は朝からずっとバッティング見てもらってるじゃないか」
餓鬼「なんだって? おい死神、ちょっと可愛いからって調子に乗ってんじゃ……」
俺「はいはい、そこまでそこまで。順番に見てやるから、ケンカすんな」
死神「うん」
餓鬼「アンタがそう言うなら……」
522 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 22:03:43.61 ID:o9tOmBp20
魑「すなおじゃないなー」
魅「すなおじゃないなー」
魍「餓鬼様ー顔真っ赤ー」
魎「すなおじゃないなー」
餓鬼「うるさいよアンタ達! 黙って見てな!」
523 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 22:19:16.24 ID:o9tOmBp20
鬼「すまない、少し遅れてしまった」
俺「おう、来たな」
鬼「ちょっと道具を探していてね」
俺「そうかそうか、じゃあ早速練習するか」
鬼「わかったよ」
525 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 22:24:06.63 ID:o9tOmBp20
餓鬼「まさかアンタも野球するなんてね、どういう風の吹き回しだい?」
鬼「餓鬼……」
餓鬼「いつも穴倉に篭りっきりのあんたがこんなとこに出てくるなんてね」
鬼「いや、その……。僕も変わりたいんだよ」
餓鬼「へぇ」
鬼「あの人と一緒だったら、不思議とやれそうな気がするんだ」
526 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 22:49:58.87 ID:o9tOmBp20
餓鬼「……アタシはまだ、今までアタシらの間に起こった事を全部許したわけじゃないんだよ」
鬼「餓鬼……」
餓鬼「でも、今はアタイらは野球をやりにきたんだよ」
鬼「そ、そうだな」
餓鬼「だから、いつまでもそんな暗い顔してんじゃないよ」
534 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /12(土) 23:54:57.55 ID:o9tOmBp20
◇ ◇
魑「あのねー」
魅「さっきー」
魍「そこでー」
魎「野球ー」
魑「やりたいってー」
魅「いってるー」
魍「にんげんがー」
魎「いたよー」
535 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:00:05.31 ID:i70Q0rbZ0
餓鬼「人間?」
魑「うん」
魅「そうだよー」
魍「だからー」
魎「つれてきたー」
「ほ……ホントにツノが生えてる……」
餓鬼「野球やりたいってのはアンタかい?」
「……お……鬼だ……」
餓鬼「?」
「……うぅ……早く帰りたい……こんなところ……」
餓鬼「ったく、独り言の多い人間だね」
536 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:01:02.97 ID:tWSD0SE50
まさか・・・
539 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:05:53.84 ID:i70Q0rbZ0
死神「捕球と同時にスタートを切るんだね?」
俺「そうそう、それがタッチアップな。フライが上がったらハーフウェイに出るか塁にタッチアップ狙ってヘバり付くかは状況判断が必要だ」
餓鬼「あ、丁度いいところに戻ってきたね」
俺「あん?」
餓鬼「なんでもこの人間が野球やりたいらしい」
俺「野球を?」
「あぁ……そうだ……野球がやりたいんだ」
俺「もちろん大歓迎さ」
「本当か?!」
俺「あぁ、もちろんだとも」
541 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:09:58.53 ID:i70Q0rbZ0
俺「よろしく頼むよ、あなたの名前を聞かせてもらってもいいかな?」
「……」
俺「どうしたんだ?」
「お前……!」
俺「うん?」
「前に一緒に働いていたろ? 覚えてないか?!」
俺「?」
餓鬼「なんだ、知り合いだったのかい?」
俺「いや……? 誰だ……?」
先輩「お前の先輩だよ、ほら! よく酒をオゴってやっただろ?!」
542 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:13:41.83 ID:i70Q0rbZ0
俺「先輩?」
先輩「そうだよ! いやぁ、よかった。地獄で野球やってる人間ってお前の事だったのか」
俺「……?」
先輩「どうしたんだよ、久しぶりに会えたんだからもっと喜べよ!」
俺「どこかで会いましたっけ?」
先輩「おいおい、とぼけるなよ。俺とお前の仲だろ?」
俺「う〜ん……思い出せない……」
餓鬼「ちょっと、アンタ。本当に知り合いなのかい?」
俺「らしいな」
餓鬼「らしいって何さ」
俺「いや、それが俺にもよくわからないんだ」
543 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:17:40.79 ID:i70Q0rbZ0
俺「まぁとにかく野球をやりたいなら大歓迎さ、さっそく練習しよう」
先輩「あ……あぁ、そうだな。練習だ、練習」
餓鬼「ちょっと本気かい? こんな見るからに弱そうなヤツ入れて大丈夫なのかい?」
俺「野球をやりたいって言ってるんだ、断る理由は無いだろう?」
餓鬼「それはそうだけど……」
俺「人数は多いに越したことは無いだろ? 練習の効率も上がるさ」
餓鬼「あんたがそう言うなら……」
544 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:22:54.10 ID:i70Q0rbZ0
俺「よーし、今日はこれまで。各自解散してくれ」
鬼「おつかれさま」
俺「おう、お前はこの中で一番捕球が上手いからな。ファーストは任せたぞ」
鬼「うん、なんとかがんばってみるよ」
俺「帰ったらストレッチも忘れるなよ? 明日に響くぞ」
鬼「うん」
先輩「あぁ疲れた」
俺「お疲れ様です」
先輩「ところでお前、ほんとに覚えてないの? 人の事忘れるとかひどくない?」
俺「はぁ……すんません……」
餓鬼「……おい死神」
死神「……うん?」
餓鬼「あとでちょっとツラ貸せや」
545 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:27:26.68 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
餓鬼「どこまで進んでるんだ」
死神「?」
餓鬼「とぼけんな! アイツの記憶の話だ、どれくらい消えてるのかって聞いてるんだよ!」
死神「く……くるしい……、離して……」
546 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:33:20.67 ID:i70Q0rbZ0
餓鬼「知り合いの顔を忘れてるくらいだ、相当進行してるんだろ。いつだ? いつがリミットなんだ?」
死神「し、試合の日がリミットだよ……」
死神「試合が終わったら、俺くんは……」
餓鬼「試合の日って……もうすぐじゃないか」
死神「……うん」
餓鬼「せっかく……、せっかく会えたってのに……」
547 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:43:50.74 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
天使A「で、どうだった。そっちの様子は」
先輩「と、特には。何も変わった様子は無いようで……」
天使A「何も?」
先輩「は、はい」
天使A「そんなわけないだろう、だってあの人間は……」
先輩「?」
天使A「ふん……まぁ良い。おい、お前、もういいぞ」
先輩「え? あ、あの? もう良いとは?」
天使A「消えてろ、クズが」
549 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:46:35.60 ID:i70Q0rbZ0
神の使い「はい待った待った、そこまでよ」
天使A「……ち」
神の使い「もう、そういう行為は控えるようにって言ってるよね? 後で大変なのはこっちなんだから」
天使A「知るか」
神の使い「試合の正式な日程が決まったから通達に来たわ」
天使A「いつだ?」
神の使い「2週間後よ」
550 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 00:50:36.05 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
死神「試合、2週間後だって」
俺「ついに来たか。長かった事やら短かった事やら」
死神「そうだね」
俺「不安は無いか?」
死神「……うん」
俺「珍しく強気じゃないか」
死神「キミと一緒だからね」
俺「はは、それは光栄な事ですね。死神様」
553 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 01:00:12.60 ID:i70Q0rbZ0
死神「でも。もし試合に負ければボクたちみんな……」
俺「そんな事にはならないさ」
死神「でも」
俺「でも禁止、言い出したらキリが無いだろ?」
死神「うん……」
俺「前に勝つって約束したろ? 勝ってお前を楽にしてやるからさ」
585 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 12:52:59.84 ID:i70Q0rbZ0
俺「それじゃそろそろスタメンと発表しようと思う」
投手 魑
捕手 下っ端
一塁 鬼
二塁 死神
三塁 餓鬼
遊撃 俺
外野 魅
魍
魎
俺「最初はこれで行くけど、やばいと思ったら投手はすぐ変えていくつもりだ」
586 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 12:54:59.27 ID:GtPs3owH0
何気に魑魅魍魎が超優遇されてんなwww
587 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 12:56:14.00 ID:i70Q0rbZ0
魑「おれピッチャーかー」
魅「おれ外野だー」
魍「おもろー」
魎「おれもー」
餓鬼「あいつが投手で大丈夫なのかい?」
俺「たぶん……」
餓鬼「たぶんって」
俺「どんな強打者でも初対戦の投手ってのはやりにくいもんさ、それに掛ける」
餓鬼「たいしてアテにしてないって事かい?」
俺「まぁそう言うなって、これでも必死に考えた結果だよ」
588 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:03:44.58 ID:i70Q0rbZ0
餓鬼「に、しても。結局あの人間も来なくなっちまったし、根性の無いヤツだったね?」
俺「何か用事でもあるんじゃないか?」
餓鬼「こんなトコで人間がする用事って何だろうね?」
俺「さぁ……。まぁいいさ、試合の日は来てくれるだろ」
餓鬼「いいのかい? 来ないかもしれないよ、天国チームのスパイだったのかも」
俺「だとしても」
餓鬼「?」
俺「俺は、信じてる」
餓鬼「まったく、アンタって人は……」
589 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:07:33.70 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
俺「とうとう明日だな、試合」
死神「……うん」
俺「ここに来てお前と会って野球して、色んなヤツとも知り合えた。楽しかったよ」
死神「そう」
俺「負けたらどうなるとか、そんな事よりも。明日は精一杯野球を楽しもう。もちろん勝つのは俺たちだけどな」
死神「あのね、キミ……覚えてないかな?」
俺「ん?」
死神「ボクね、ずっと前にキミと会ってるんだよ?」
590 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:11:14.94 ID:i70Q0rbZ0
俺「そうなのか?」
死神「やっぱり、覚えてない?」
俺「すまんな、最近思い出せない事が多くて」
死神「……ねぇ」
俺「?」
死神「ボク、言ったよね。生前の記憶が無くなったらどうなるか」
俺「あぁ、そんな事言ってたような気がするな」
死神「明日なんだ」
俺「?」
死神「明日、キミの記憶は全部消えちゃうんだよ」
俺「そうか」
592 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:14:44.78 ID:i70Q0rbZ0
死神「そうかって……そんな、他人事みたいに」
俺「試合が終わってからの話だろ?」
死神「……っ」
俺「だったら、それで良い」
死神「キミは……」
俺「大好きな野球を最後までやっていられるなんて、俺は幸せ者だよ。ありがとな、死神」
死神「え?」
俺「お前が俺を誘ってくれただろ? 野球しないかって。今まで凄く楽しかったよ」
死神「そんな……ボクは……、キミを……」
俺「ほら、そんな顔すんな。試合の前日はリラックスしてなきゃだめだぞ?」
594 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:21:27.84 ID:i70Q0rbZ0
俺「勝って天使に一泡吹かせるんだ、明日な」
死神「ごめんね……ごめん……」
俺「何泣いてるんだよ、お前が謝ることないだろ?」
死神「うぅん……ボク、キミにひどい事……」
俺「いいから、もう寝てろ?」
死神「でも……」
俺「いいから、俺はちょっと素振りしてくるからさ」
死神「……うん」
595 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:22:11.89 ID:i70Q0rbZ0
餓鬼「……明日、か」
餓鬼「行っちまうんだね、アンタ」
餓鬼「……明日で終わり」
餓鬼「いや、一つだけ」
餓鬼「……だめだね、それでもあいつは自分よりも死神を優先するだろう」
餓鬼「まったく、アタイもとんだ男に惚れちまったね」
597 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:30:30.20 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
俺「という事で試合の日がやってきました」
鬼「こ……ここが天国かあ……」
俺「地獄とは違って随分華やかな場所だな」
鬼「そ、そうだね」
俺「緊張してんの?」
鬼「そ、そりゃちょっとは」
俺「平常心で居れば大丈夫さ」
598 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:31:46.31 ID:i70Q0rbZ0
魑「俺がエースだー」
魅「お前がエースだったのかー」
魍「俺もエースだー」
魎「そーなのかー」
俺「ほら、あいつらみたいに」
鬼「はは……、善処するよ」
600 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:37:57.35 ID:i70Q0rbZ0
俺「俺らが先攻か、まぁビジターだし当然か」
餓鬼「さっさと始まってくれないかね、さっきからえらく待たせるじゃないか」
俺「頼もしいな、お前は緊張してないみたいだな」
餓鬼「野球の試合なんかで緊張してたまるかってんだ」
俺「心強いよ、サード頼むな。球際をミスしてもショートである程度カバーしてやるから思いっきりやってくれ」
餓鬼「……」
俺「?」
餓鬼「な……なんでもないよ!」
俺「そうか?」
601 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 13:40:43.08 ID:i70Q0rbZ0
死神「わぁ……すごい人」
俺「だな、甲子園みたいだ」
死神「こうしえん?」
俺「おう、俺も一度は甲子園に出場してみたいと思ってたんだよ」
死神「そ、そうなんだ」
俺「いや……? 出場したんだっけ?」
死神「キミ……もう記憶が」
俺「はは、野球の試合するのに記憶なんて関係ないよ」
審判「集合!」
俺「よっしゃ! いこうか!」
「オォ!」
602 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:00:28.39 ID:i70Q0rbZ0
1回裏
下っ端「あれ? 表の攻撃は?」
俺「見事に三者凡退だったよ」
下っ端「え? あ、あぁ。そうでやしたか」
餓鬼「おい三下、それ以上でしゃばったら後でコロス……」
下っ端「ひぃ?! いくら三振したからって当たらないでくださいよ?!」
603 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:02:14.18 ID:i70Q0rbZ0
キィン!
俺「サード!」
餓鬼「あらよ……っと」
審判「アウト!」
俺「やるじゃないか」
餓鬼「これくらい朝飯前だよ、誰に教えてもらったと思ってるんだい」
俺「頼もしいな」
餓鬼「へへへ……」
605 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:08:17.03 ID:i70Q0rbZ0
俺「ピッチャー! ボール走ってるよ!」
魑「俺がエースだー」
魅「あいつがエースだったのかー」
魍「いやいや俺がー」
魎「どうぞどうぞー」
キィン!
死神「ライト! 行ったよ!」
魍「まかせとけー」
魍「オーライーライーラーイー」
審判「アウト! チェンジ!」
606 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:14:16.30 ID:i70Q0rbZ0
2回表
天使A「来たな、人間」
俺「お手柔らかに頼みますよ」
天使A「……ふん」
シュッ!
俺「速っ……」
審判「ットライク!」
天使A「どうした人間、手も足も出ないか」
俺「鬼に金棒。死神には大鎌」
天使A「……?」
俺「俺にはバットってね」
天使A「何を……」
俺「こっちは今日、負けるわけにはいかないんだよ」
607 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:20:01.22 ID:i70Q0rbZ0
俺「お前から特大のホームランを打って仕舞いだ」
天使A「なん……だと……」
俺「さぁ来いよ、打ち砕いてやる」
天使A「減らず口を!」
サッ
天使A「バント……だと……?」
審判「セーフ!」
天使A「……ち、小賢しいマネを」
608 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:23:47.24 ID:i70Q0rbZ0
天使A「まぁ良い、後のヤツを仕留めれば……」
俺「クイックがなってないぜ、天使様」
遊撃手「走った!」
天使A「何……?」
審判「セーフ!」
鬼「ノーアウトランナー2塁……す、すごい……」
天使A「ち……チョロチョロ動きやがって……」
609 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:27:44.29 ID:i70Q0rbZ0
俺「……」
鬼「三盗だ!」
俺「……っ」
ズサァァアア
審判「セーフ!」
餓鬼「やった! やりやがった!」
俺「へへっ、これで一気にチャンス到来ってな」
天使A「……く」
610 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:31:08.86 ID:i70Q0rbZ0
俺「……」ササッ
下っ端「むむ、あのサインは……」
俺「……」コクリ
下っ端「わかりやしたぜ旦那……男下っ端、命にかえてでも旦那を……」
審判「バッターアウト!」
下っ端「あ」
餓鬼「何やってんだよ! バカやろう!」
下っ端「し……しまった……恰好つけようとしてるうちに三振していた……」
611 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:36:19.71 ID:i70Q0rbZ0
審判「バッターアウト! チェンジ!」
餓鬼「くそ……今ので1点もとれなかったか」
俺「まだ試合は始まったばかりだよ」
餓鬼「でも……! せっかくアンタがチャンスを作ったのに!」
俺「いいって、あと7回もあるんだ。じっくり攻めるさ」
613 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 14:42:52.88 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
神の使い「やあ」
天使A「試合中に何の用だ」
神の使い「野球の神さまが到着されたわよ」
天使A「……そうか」
神の使い「この試合で負けようもんならあんたの信頼、ガタ落ちね?」
天使A「……負けるとでも?」
神の使い「まさか、そうならないように私がココに来たのよ」
天使A「余計な事はするな」
神の使い「あら?」
615 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:01:06.81 ID:i70Q0rbZ0
天使A「お前の力など無くても勝てる」
神の使い「後悔するわよ?」
天使A「落ちこぼれの死神なんかに負けてたまるか……、俺が次の神になるんだ……」
神の使い「あらあら」
616 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:05:23.81 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
俺「……マズいな……」
鬼「あぁ……」
俺「ベンチの空気が死んだ……」
鬼「まあ……3点も一気に取られればね……しかも連続タイムリーエラーで……」
618 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:09:44.69 ID:i70Q0rbZ0
魑「しっかりとれよー」
魅「おれのせいかよー」
魍「おまえのせいだよー」
魎「おまえのエラーだろー」
俺「あー、はいはい。ケンカすんなお前ら」
死神「ごめんね、ボクがしっかり捕っていれば……」
俺「いいっていいって、気にすんな。3点くらいいつでも取り返してやる。そうだろ?」
餓鬼「って言っても……こっちはここまであんたの一安打だけじゃないか」
俺「どんな投手にも一試合に何球かはヌけた球が来るもんだ、それを見逃さず打っていけば必ずチャンスは来る」
餓鬼「そう簡単に打たせてくれるかい、あの天使が」
俺「できる」
餓鬼「……っ」
俺「できるさ」
餓鬼「……うん」
620 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:16:11.27 ID:i70Q0rbZ0
俺「さあ、次はお前の打順からだろ? しっかり頼むぜ」
餓鬼「あ……あぁ……」
俺「まずは塁に出る事だ、かっこ悪くたって何でも良い。お前のスイングはこの中で一番速いからな、当たれば飛ぶはずさ」
餓鬼「気休めは良いよ」
俺「ボールをしっかり見るんだぞ!」
餓鬼「はいはい、わかったよ」
審判「プレイ!」
餓鬼「……バカなのかい? アンタは」
餓鬼「この試合が終わったら……消えちまうってのに」
餓鬼「あぁ……負けたらどうせアタイらも全員消えちまうんだった」
餓鬼「それなのに、」
餓鬼「どうして、そんなに笑ってられるんだい」
餓鬼「まったく、わからない男だよ。アンタは」
621 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:26:23.54 ID:i70Q0rbZ0
審判「ットライクツー!」
餓鬼「ボールをよく見ろって言われてもね」
餓鬼「さっきからぼやけてよく見えないんだよ」
餓鬼「アンタのせいだ、バカやろう」
餓鬼「そんなバカに惚れちまったアタイは、大馬鹿だけど……ね!」
キィィン!
俺「おおお!」
鬼「打った……! あの天使から……」
死神「餓鬼……」
俺「よーし、この回だ。一気に畳み掛けるぞ」
623 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:30:42.97 ID:i70Q0rbZ0
天使A「バカな……」
餓鬼「へへっ、どんなもんだい」
天使A「くそっ」
俺「鬼! 続けよ!」
鬼「そんな無茶言わないで……」
キィン!
鬼「う、打てちゃった……」
魑「なんだー?」
魅「れんだー」
魍「なんだー?」
魎「れんだー」
天使A「く……地獄の住人の分際で……」
624 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:43:37.56 ID:i70Q0rbZ0
死神「宜しくお願いします」
天使A「死神ぃぃ……」
死神「……」
天使A「打たせるわけにはいかない……こんな落ちこぼれに」
死神「……早く投げておいでよ」
天使A「死神のくせに命令すんな! 俺がお前より優れてるって事をあのジジイにわからせてやる!」
死神「……」
天使A「くらえ! 死神!」
死神「……」
コツン
天使A「バント……、くそ!」
625 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:46:44.24 ID:i70Q0rbZ0
死神「キミの方がボクよりも凄いって事くらい、皆知ってるよ」
天使A「?!」
死神「でもボクらは勝つよ。チームでね」
天使A「チーム……だと……」
俺「ナイスバント」
死神「……うん」
俺「後は任せとけ」
死神「うん……まかせた」
626 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 15:49:53.73 ID:i70Q0rbZ0
天使A「人間……」
俺「よろしくな」
天使A「……」
俺「ありがとな天使、楽しかったよ」
天使A「?」
俺「お前みたいな凄いピッチャーが居てくれて良かった」
天使A「……何を」
俺「俺の最後の試合なんだ、もっと楽しませてくれるんだろうな?」
天使A「……ふん、お前に言われるまでもない」
俺「そうこなくちゃ」
628 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:00:26.38 ID:i70Q0rbZ0
俺「さあ、来いよ!」
天使A「いくぞ! 人間!」
餓鬼「アンタ……」
鬼「俺さん……」
下っ端「旦那……」
魑「うてよー」
魅「うてよー」
魍「男なーらー」
魎「ボールにくらいつけー」
死神「打って! 俺くん!」
631 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:03:42.58 ID:i70Q0rbZ0
カキィィ……
天使A「……」
俺「……」
……ィィン
餓鬼「えっと、フライが上がったらどうするんだっけ」
鬼「タッチアップでいいのかな?」
俺「あー……」
俺「ホームランだからそのまま進んでいいんだよ」
633 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:08:33.19 ID:i70Q0rbZ0
◇ ◇
俺「さて、そんなこんなで9回の裏なわけだが」
鬼「どうしたんですか? マウンドに内野手集めて」
俺「一通り全員投げたよな」
鬼「えぇ、まぁ」
俺「そんじゃ、最後の美味しいトコいただいでも?」
餓鬼「嫌って言っても投げるんだろ?」
俺「あ、バレました?」
餓鬼「あんたが居たからアタシら集まったんだ、今更誰も文句言わないよ」
俺「それじゃあ、お言葉に甘えるとするよ」
634 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:10:13.37 ID:i70Q0rbZ0
俺「懐かしいな、この感覚」
俺「こうやって投げるのは、一体どれくらい振りなんだろうか」
俺「まぁいいや」
俺「今は、最後のマウンドを楽しみますか」
635 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:12:10.28 ID:i70Q0rbZ0
審判「ットライク! バッターアウト!」
魑「すげー」
魅「はえー」
魍「すげー」
魎「はえー」
餓鬼「あと一人だよ!」
俺「その後一人がやっかいなんだよ」
天使A「……」
638 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:15:18.89 ID:i70Q0rbZ0
天使A「人間……」
俺「野球の神さまってのはこんな展開が好きなのかな」
天使A「ジジイの趣味なんざ知らねぇよ」
俺「そうかい」
天使A「お前を打って、勝つ。前の様にはいかない」
俺「だろうね……、ホントに厄介な打者だよ……」
640 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:19:21.07 ID:i70Q0rbZ0
天使A「さあ来いよ、マウンドに沈めてやる」
俺「不思議だ、どっかで聞いた台詞だよ」
天使A「早く投げて来い」
俺「あぁ……そうさせてもらう……よっ!」
審判「ットライク!」
俺「ふいぃ……」
天使A「今回はスローボールじゃなかったな」
俺「あぁ。全力でいかせてもらいますよ、死神様」
天使A「そうでなくては面白くない」
俺「これが俺の……全力投球……だっ!」
641 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:21:31.74 ID:i70Q0rbZ0
カキィィィィン!
俺「サード!」
餓鬼「……っ」
審判「ファール!」
餓鬼「アタイが……打球に反応できなかった……」
俺「打たせるぞ! 集中しろよ!」
餓鬼「わかってるよ!」
642 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:23:45.45 ID:i70Q0rbZ0
天使A「ち……捉えたつもりが……」
俺「恐ろしいからバット振らないでくれって言ってもいいかな?」
天使A「願い下げだ」
俺「あ、やっぱり?」
天使A「ふふ……不思議だな。お前との勝負は面白い」
俺「俺も同じ意見だよ、できればもっと戦っていたいけどな」
天使A「ふん」
俺「そろそろ決着の時だよ、天使」
天使A「あぁ」
643 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 16:26:26.87 ID:i70Q0rbZ0
俺「俺が勝ったら、もう死神を苛めるなよ」
天使A「……」
俺「あいつと仲良くしてやってくれ。あいつは、ほんとはもっと友達が欲しいだけなんだよ」
天使A「……」
俺「な? 頼むよ」
天使A「関係ない話だ、俺が勝つんだからな」
俺「おっと、それじゃあ是が非でも勝って願いを聞いてもらわなくちゃな」
651 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:28:28.78 ID:i70Q0rbZ0
天使A「こい! お前を打って! 勝ってやる!」
俺「打てるもんなら……、打ってみやがれ!」
……………………
…………
……
審判「ゲームセット!」
654 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:32:33.16 ID:i70Q0rbZ0
俺「……この場合どうなるんだ」
天使A「さぁな……」
655 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:34:11.38 ID:i70Q0rbZ0
審判「規定により延長戦は無し! 以上3対3により引き分け!」
餓鬼「……アタイらはどうなるんだい?」
鬼「なんか球場が騒然としてきましたね」
魑「なんだー?」
魅「ひきわけだー」
魍「三振とって勝ちじゃないのかー?」
魎「ひきわけだー」
神の使い「……へぇ、誰がこんなシナリオ用意したのかしらね」
656 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:37:06.86 ID:i70Q0rbZ0
俺「ちょっとまて、俺の勝ちだろ?」
天使A「なんでそうなるんだ!」
俺「いや、だって最後三振とったし!」
天使A「な……関係ないだろ! 試合は引き分けだ!」
俺「あぁ?! お前がそれで良くてもこっちは納得いかねぇんだよ!」
天使A「……死神と友達になればいいんだな?」
俺「あん?」
天使A「と……友達に……なればいいんだろ?」
俺「あ。あぁ……、そうだけど」
天使A「ならなってやる、それでいいだろう」
俺「お前……実は良い奴なのか?」
天使A「う……うるせー」
658 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:42:24.69 ID:i70Q0rbZ0
天使A「い……色々苛めて悪かったよ……」
死神「ううん、ボクもう気にしてないよ?」
天使A「そ、そうか?」
死神「うん」
天使A「……次の神になるのは死神、お前だって話を聞いてな……。それで……俺、お前を貶めようとして酷いことを……」
死神「そうだったんだ」
659 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:43:52.25 ID:i70Q0rbZ0
天使A「本当にすまない、今更許して貰えるとは思わないが……」
死神「顔あげてよ、ボクは気にしてないから大丈夫だよ?」
天使A「この試合でわかった……お前こそ次の神に相応しいよ」
死神「ううん、ボクなんかダメだよ。みんなが居ないと何もできなかったもん」
天使A「友達……か」
死神「うん! 今日からボクら、友達だよ!」
天使A「はは……いいのか? こんな天使だぞ?」
死神「ボクだって、こんな死神だよ?」
天使A「ははは……それもそうだな」
死神「うん!」
661 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:49:18.08 ID:i70Q0rbZ0
餓鬼「引き分けか……なんとも締まらない終わり方だね」
俺「そんな事ないさ」
餓鬼「どうして?」
俺「地獄の仲間が一つになった結果だよ、立派だ」
餓鬼「……」
俺「これからずっと皆で仲良く暮らせよな? 死神ともな」
餓鬼「あんた……体が」
俺「あぁ……なんかもうダメらしい、短い間だったけどありがとな」
662 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:51:42.98 ID:i70Q0rbZ0
死神「俺くん!」
俺「死神、お前ってすぐ泣くし何かあったら大鎌もってきてすげー怖かったけど。一緒に居て楽しかったよ、ありがとな」
死神「そんな……ボクこそ!」
俺「だから泣くなって」
死神「キミが……キミが居たから……ボク……」
俺「もう言うな、いいんだ」
死神「……」
俺「もう、いいんだよ」
663 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:53:50.49 ID:i70Q0rbZ0
天使A「人間!」
俺「天使」
天使A「決着はまだついてないからな!」
俺「ふざけんな、アレは俺の勝ちだ」
天使A「だとしたら尚更」
俺「?」
天使A「次は勝ってやる」
俺「はは、楽しみだね」
天使A「……」
俺「最後にお前と戦えてよかったよ、野球ってやっぱり良いもんだな」
天使A「あぁ……」
664 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 17:56:38.44 ID:i70Q0rbZ0
餓鬼「……」
俺「悲しい顔すんな、餓鬼。またどこかで会えるさ」
餓鬼「もう……! もう会えないんだよ! アタイらは!」
俺「会えるさ」
餓鬼「……っ」
俺「きっと、会える。だからお別れじゃないんだ」
餓鬼「バカ……バカだよ……あんた」
俺「野球、楽しかったろ?」
餓鬼「うん……うん」
俺「だったらずっと続けてくれよ、な?」
餓鬼「わかった……、わかったよ……」
俺「よしよし、良い子だ」
665 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:00:45.51 ID:i70Q0rbZ0
俺「さて、そろそろダメらしい」
俺「一緒に野球やれて、すげー楽しかった。ありがとな!」
俺「また一緒に野球できたらいいな!」
俺「じゃあな!」
669 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:10:07.73 ID:i70Q0rbZ0
……………………
…………
……
部員A「やっきにく! やっきにく!」
俺「うるせー! こっちはデートがかかってんだ!」
670 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:11:14.65 ID:i70Q0rbZ0
妹「はやく投げてきなさいよ! お兄ちゃん!」
俺「おい! お前も空気読んでさっさと打ち取られてろ!」
妹「絶対ヤだ、焼肉なんかどうでもいいけど絶対打つもん」
俺「くっそ……くらえ!! これでゲームセットだ!」
妹「っ!」
カキィィィィン!
俺「なん……だと……」
部員A「うおおおおおおおおおおおおお!! よっしゃあ焼肉だ!!」
部員C「ポール走なくなったぁああああ!!!!!」
部員D「やった! やったぜ!!」
673 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:13:23.79 ID:i70Q0rbZ0
俺「嘘だろ……渾身のストレートだよ……?」
妹「ふふん? どう? お兄ちゃん」
俺「畜生! お前ら! 焼肉いくぞ! バカヤロウ!」
部員A「もちろん食べ放題っすよね?!」
俺「あぁもう! 好きなだけ食べてろ!」
先生「ふふ、みんな楽しそうだなあ」
妹「バカばっかりですよ、野球部」
先生「いいじゃない、それで」
妹「まぁ……そうですね」
俺「いいわけあるかー!」
674 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:18:37.85 ID:i70Q0rbZ0
神の使い「えぇ……滞りなく……はい」
神の使い「時間を戻しておきましたので……えぇ」
神の使い「こちらでの記憶は全て消去しましたので、問題は無いかと」
神の使い「彼らもですか?」
神の使い「わかりました。神さまがそう言うなら」
675 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:21:25.62 ID:i70Q0rbZ0
神さま「……あれほどの人間、転生させるには惜しい」
神さま「まだまだ面白い野球を見せてくれそうじゃからの」
神さま「ついでにお前らの望みも叶えてやろう」
神さま「ふぉっふぉっふぉ……」
676 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:25:11.73 ID:i70Q0rbZ0
-春-
妹「春だね」
俺「あー、もうそんな季節?」
妹「そうだよ、甲子園決勝すごかったね。一回戦から決勝まで完封勝利だったもん」
俺「だな。全国にはあんなのがゴロゴロいるからな〜」
妹「楽しみ?」
俺「監督としては楽しめないな……個人的には楽しみなんだが」
妹「結局楽しんでるんじゃない」
俺「ははは、バレたか」
678 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:29:55.26 ID:i70Q0rbZ0
妹「それで、今年の夏は甲子園には行けそうですか。監督」
俺「春といえば新入生、新戦力に期待だよ」
妹「期待しないほうが良いよ? ほとんど毎年サッカー部と陸上部にもっていかれちゃうんだよね」
俺「え? そうなの?」
妹「うん」
俺「それは困った……」
妹「だから勧誘しないと、一年生が入部しないと話にならないもん」
680 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:34:12.41 ID:i70Q0rbZ0
俺「まじか……」
妹「頼むよ、カントク?」
俺「ま、その辺りはなんとかなるでしょ」
妹「あれ? 部室の前に誰か居るよ? 新入生かな」
俺「あれ。ほんとだ、おーい」
「あの……」
妹「野球部に入部希望かな?」
「アタイら、ここの野球部に入りたいんだけど」
俺「おう! 一緒に野球しよう!」
ED曲「sugar!!」
682 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 18:36:39.72 ID:i70Q0rbZ0
妹「で、あたしの話きいてた?」
俺「あぁ、すまんすまん。何の話だっけ?」
妹「もう! しっかりしてよ!」
俺「それで、何の話だって?」
妹「野球の話だよ」
687 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 19:00:16.22 ID:i70Q0rbZ0
おしまいおしまい。
一応本編的なものは終わりです
読んでくれてありがとうでした
688 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 19:04:15.53 ID:yaLG2JgYO
乙です
面白かった
691 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/13(日) 19:11:42.60 ID:swsVa0M6O
おつ!野球はいいものだぞー
694 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/13(日) 19:24:13.93 ID:qCEFVWaFO
乙
697 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 19:43:17.50 ID:9/oAG9DE0
乙!
楽しめたよ!
698 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 19:43:43.83 ID:/5x7sahQ0
sugar!!と野球って・・・
>>1はhttp://www.nicovideo.jp/watch/sm7134953これ見ただろww
701 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 19:53:52.58 ID:i70Q0rbZ0
>>697
ありがとう!
>>698
なんだこれワロタww
ttp://www.youtube.com/watch?v=-lNeSKssRus
俺が見てたのはこっちだったよw
723 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 20:40:33.95 ID:a6OP3Jo9O
乙でした。
次回作も楽しみにしています。
死神もえ
730 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 20:48:05.10 ID:DM2/orPp0
乙
しばらく野球してなかったけどやりたくなってきたあああ
755 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2009/12/13(日) 21:05:34.84 ID:5vKfBjN10
乙、面白かったぜー
甘酸っぱい!でもしょっぱい!
769 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 21:25:01.90 ID:i70Q0rbZ0
俺「高校野球の応援がすごいらしい」
妹「ブラスバンド聴くと夏! って感じするよね」
俺「俺はチアリーダーに目がいってしまうけどな」
妹「え?」
俺「え?」
774 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 21:31:45.66 ID:i70Q0rbZ0
俺「好きな外国人選手とか居るか?」
妹「ムーアかな」
俺「お前阪神好きだもんな」
妹「オリックスに行ってからも応援してたよ!」
俺「おぉ、そうなのか」
妹「うん」
810 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 22:39:12.87 ID:i70Q0rbZ0
ピ
TV『芸能人IQクイズ!』
ピ
TV『みんな知ってる?! 常識! 非常識?』
ピ
TV『この件に対し容疑者は「ユニフォーム姿が見たかった」と意味不明な事を述べており〜』
ブチン
妹「あー、もうシーズンオフだっけ」
826 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 22:59:35.12 ID:i70Q0rbZ0
俺「来年の順位予想?」
妹「まずはセリーグからいってみよう」
姉「あたしはあそこの球団が勝つと思うんだけど」
妹「どこ?」
姉「セレッソ」
俺「ある意味球団だけどそれサッカーだから」
857 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 23:52:29.26 ID:KvYGZW4j0
>>855
乙!
楽しかったよ!
859 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 23:53:21.71 ID:Vr+43m2QO
気が向いたらまた続編書いてくれ
乙でした
860 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12 /13(日) 23:59:54.71 ID:i70Q0rbZ0
>>859
涙のピースサインでググってくだしあ
ではノシ
転載元
妹「野球の話だよ」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1260355392/
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