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魔王「今日も平和だ飯がうまい」
魔王の娘「今日も平和でご飯がおいしい」【前編】【後編】



 
106 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/12(月) 00:45:18
    洞窟─

    竜「む」
    娘「……」
    竜「帰ったのではなかったのか。何の用だ」
    娘「……仕事」
    竜「そうか」


    娘「貴方じゃ……なかったの?」
    竜「何がだ」
    娘「この報告書の、内容」
    竜「ああ」
    娘「どうなの?」
    竜「私ではない」

107 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/12(月) 00:47:08
    竜「私はここ一年以上、この洞窟から出ていないし、人間など見てもいない」
    娘「じゃあ……この近くの街道にも、行っていないのね?」
    竜「ああ」
    娘「そっか……」
    竜「仕事は終わりか? ならば早く去れ」
    娘「ごめんなさい」


    娘「ごめんなさい……私……私は、貴方に何も聞かずに」
    竜「私を疑うのは至極当然だろう。お前でなくとも、な」
    娘「でも……決め付けて掛かったのは……私」
    竜「興味が無いな」
    娘「私が……もっと、ちゃんと調べて、貴方の声を引き出せていたなら……」
    竜「偽の姫よ」

108 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/12(月) 00:48:39
    竜「私は何も感じない。お前が気に病む必要はない」
    娘「ありがとう……でも、そんなわけにはいかないよ」
    竜「お前は陛下に似ず、頭が固いな」
    娘「駄目……かな? やっぱり、私は魔王には程遠いのかな……」
    竜「さあな。ただ、偽の姫よ」


    竜「陛下が“魔王”に相応しいかと聞かれれば、私は首を横に振らざるを得ない」
    娘「え? だって、主はお父さんのこと、認めてるって」
    竜「真の“魔王”とは、先代様のような方のことを指すのだろうよ」
    娘「じゃあお父さんは何なの?」
    竜「我らの“王”だ」
    娘「王……」

109 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/12(月) 00:50:57
    竜「とは言え、陛下も生来から王として在った訳ではない」
    娘「い、今もそうは見えないけどなあ……」
    竜「陛下はある時、王になられた。それ以降、我らの王はあの方しかいない」
    娘「……そっか」
    竜「あのお方は王だよ……我らの、唯一の王だ」


    竜「だから、お前も今は駄目かも知れんが、いつか……まともになるのではないか?」
    娘「え」
    竜「その……疑われる私にも、非があったと言うか」
    娘「そ、そんなことないよ! 私が全部悪くて」
    竜「いや。私が」
    娘「私が!!」

110 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/12(月) 00:52:35
    竜「……」
    娘「……ごめんなさい」
    竜「いや……」
    娘「あ、あの。本当に、これだけは言っておくね」
    竜「何だ」


    娘「貴方のこと信じてあげられなくて、ごめんなさい」
    竜「止せ。上に立つ者が、軽々しく頭を下げるな」
    娘「仲間に上とか下とか関係ないよ」
    竜「……全く、そのような所だけ陛下に似おって」
    娘「え、似てる? 私、お父さんに似てる?」
    竜「ああ」
    娘「え……えへへ」

111 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/12(月) 00:53:41
    竜「しかし、だ。私が嘘を付いていた場合などは考慮しないのか?」
    娘「仲間の言葉は、信じるよ」
    竜「そうか」
    娘「今の私が言っても……あんまり説得力無いけどね」
    竜「己を卑下して、良いことなど一つもありはしない」
    娘「卑下じゃないよ。反省だよ」
    竜「違いが分からんな」


    竜「これで仕事は済んだな。もう帰るのか?」
    娘「ううん、まだ終わってないよ。貴方に迷惑を掛けた人間を、どうにかしてやらなきゃ気が済まない」
    竜「難儀なことだな」
    娘「自己満足だって分かってる。でも、出来る事をしてみたいの」
    竜「そうか。ならば、何も言うまい」

112 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/12(月) 00:54:44
    竜「また明日来るがいい」
    娘「ごめんね、そしてありがとう。またね」
    竜「さらばだ、姫」
    娘「うん…………え」
    竜「……」
    娘「あ、あの今」
    竜「何だ、姫」
    娘「う、ううん! 何でもない! ありがとう! また明日来るね!!」


    竜「全く。騒がしい奴だ」
    竜「しかし」
    竜「陛下は良き子を持ったのだな」
    竜「……陛下」
    竜「貴方はようやく、救われたのですね……」

114 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/12(月) 22:47:02
    娘「はあ……」
    娘「主はああ言ってくれたけど」
    娘「こんな調子で、よくお父さんの代わりが出来たものだよ」
    娘「側近がいたからかな」
    娘「私は一人じゃ、何の力にもならないのかな……」


    娘「そりゃ、頭使うより、暴れる方が好きだけど」
    娘「お父さんよりはデスクワークが出来る方だと思うんだけど」
    娘「何だろうなー……」
    娘「“王”か」
    娘「私は王になれるのかな」
    娘「なれなくてもいいけど……王のお父さんを支えることは出来るのかな」
    娘「分かんないなあ……」

115 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/12(月) 22:48:49
    娘「人か魔物か」
    娘「勿論、私は魔物の世界で生きていきたい」
    娘「でも……このままで、本当に大丈夫かな」
    娘「私が主を迷わず疑ったのは、人間の心が残っているから?」
    娘「私は肝心な部分を棄てきれていない?」
    娘「私は……魔物として、生きていけるの?」


    娘「これまで沢山の人間を殺めてきた」
    娘「私と彼らは別の種族なのだから、気に留める必要は無い」
    娘「そう思って……排除してきた」
    娘「でも本当に、そう思い切れている?」
    娘「私には魔物の自覚が、ちゃんと備わっているのかな」

116 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/12(月) 22:49:56
    娘「私は人間と変わらない姿をしているし、人間に紛れて動かなきゃならない場面がまたいつか、きっとある」
    娘「その度魔物と人間の間で揺れて」
    娘「人の優しさに触れて……」
    娘「こんな風に悩むつもり?」
    娘「不毛だなあ」


    娘「不毛すぎる」
    娘「我武者羅になれる目標がないと、私は駄目なのかもね」
    娘「お父さんがまたいなくなるのは困るけど……」
    娘「『全ての魔物に認めてもらえるように頑張る』っていうのも、なんかこー、曖昧だしなあ」
    娘「……はあ」
    娘「とりあえず、この仕事を終わらせてから考えよ……」

118 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/13(火) 00:30:16
    続編だー
    確かにここらへんの娘の心情には前作踏み込んでなかったから楽しみにしてる


122 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 01:34:20 ID:7q2CWRQU
    街─

    娘「さすがにもう暗くなっちゃったなあ……」
    娘「灯りがついてるのは酒場くらいか」
    娘「今から宿に戻るのも、ちょっと寄り道して戻るのも、きっと変わらないよね」
    娘「確かあっちの方だったかな」
    娘「……あの人が泊まっている、駐屯所は」


    娘「ここか」
    娘「偉い人なんだから、自分だけ良い所に泊まったっていいはずなのに、真面目なんだなあ」
    娘「……さて」
    娘「結構リークして貰ってるけど、まだまだ機密情報とかがあるかもしれないし」
    娘「早速、裏に回って侵入ルートの確保といきますか」

123 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 01:35:14 ID:7q2CWRQU
    娘「っとと……危ない危ない」
    娘(声……)
    娘(男が二人)
    娘(見張りか)
    娘(何の話を?)
    娘(…………)

    「計画……思った以上に」
    「女が…………」
    「仕方ない……明日……決行……王子……」
    「手筈は…………」
    「……紛れ……始末……」

    娘「あらまー」

124 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 01:36:03 ID:7q2CWRQU
    娘「つまりまとめると魔物の被害を訴え、標的を連れ出し」
    姫「人目につかない森などで殺害」
    姫「魔物のせいにすれば完璧……と」
    姫「世間知らずで希望まみれの王子様なら、食い付くネタと踏んだのかな?」


    姫「そして被害者の数字を出すために、街の人間を無差別に殺していった……と」
    娘「同胞の利益のために他の同胞を平気でその手に掛ける」
    娘「どんな物でも利用する。それが弱者であればより気軽に、使い棄てる」
    姫「これだから人間は」

125 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 01:37:19 ID:7q2CWRQU
    姫「……さて困った」
    娘「おいしいかもしれない情報は、真偽を問わないなら手に入ったけれど」
    娘「私には使い道の無いシロモノだなあ……」
    娘「魔物の私には、彼の命を救う理由が無い」
    娘「人間の私であっても……そんな理由、あるはず無い」
    娘「……お腹減ったし帰ろ。用は済んだし」


    娘「ご飯食べれるとこないかなー……とりあえず、うろうろ探して」
    騎士「あれ、娘さん? 用事はお済みになったんですね」
    娘「……あはは今晩はー」
    娘(セーフ! 何かもう色々セーフ!)
    騎士「まさか……わざわざ駐屯所までいらしてくれたんですか?」
    娘「え、えっと……はあ、そんなところです……はい」

126 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 01:38:22 ID:7q2CWRQU
    騎士「それは嬉しいですが……女性がこんな夜中に出歩くなど、感心しませんよ」
    娘「えっと……兵の方々が近くにいますし、この辺なら安全だと思いますよ」
    騎士「よ、余計に駄目です! 部下達が貴女を紹介しろとうるさくて」
    娘「え、どうしてですか?」
    騎士「い……いえ、何でもありません」
    娘「はあ」


    騎士「ごほん……そ、それで何かご用でしょうか」
    娘「あ、あの……そうですね、あの男の人、どうなりましたか?」
    騎士「ああ、部下達が着いた時には殺されていたようです」
    娘「……そうですか」
    騎士「仲間が戻ってきて口封じをしたのか、それとも別の何かなのか……経緯は不明ですがね」
    娘(その『部下達』ってのを疑わないのね)

127 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 01:39:47 ID:7q2CWRQU
    騎士「とりあえず明日、街道沿いに調査に向かうつもりです」
    娘「……そうですか」
    騎士「これでまあ、一段落ですよ。問題は山積みですがね」
    娘「ええ……これで山の魔物も安心して暮らせますね」
    騎士「え?」
    娘「え……?」


    娘「えっと、私何か変なことを言いましたか……?」
    騎士「いえ……娘さんはその……お優しい方ですね」
    娘「な、何故ですか?」
    騎士「魔物などに同情を寄せるなど……普通の人間では、考えられないことですからね」
    娘「……そうです、よね。普通じゃ、ないですよね」
    騎士「あ、いえ! 娘さんがおかしいというわけではなくて……その」
    娘「いいんですよ。ちょっと変わってるのは、自覚していますから」
    騎士「……すみません」

128 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 01:41:04 ID:7q2CWRQU
    騎士「山の魔物の件ですが……このまま放置というわけにはいきません」
    娘「今回の一連の出来事が、全て人間のせいだったとしてもですか?」
    騎士「はい。魔物が住んでいるという事実が不味いのです」
    娘「……被害は年に一度くらいだと」
    騎士「それでもです。今回のことで、魔物に対する恐怖心が人々の心に深く刻まれてしまった」


    騎士「魔物は存在するだけで、人々の生活に悪影響を及ぼしますからね」
    娘「……隣国が滅んだせいで敏感ですものね、そういう話には」
    騎士「ええ。まだ調査が始まったばかりだというのに、街には魔物討伐が近いという噂まで流れていて、ほとほと参っていますよ」
    娘「討伐……するんですか?」
    騎士「これはまあ、極秘なんですが……いずれはそのつもりでいます」
    娘「……そうですか」
    騎士「出来ればの話ですよ。正直、魔物の力量も分かない今では何とも言えません」

129 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 01:42:15 ID:7q2CWRQU
    娘「魔物は……この世界で生きていてはいけないのでしょうか?」
    騎士「え」
    娘「どう思いますか?」
    騎士「そうですね……人間の立場から言わせて貰えば、身を引いて貰いたいな、と。我が身と同胞が可愛いですから」
    娘「……ええ、その通りだと思いますよ」


    娘「夜分遅くに失礼しました。私、そろそろ帰りますね」
    騎士「では、お送りしましょう。こんな時間ですし、断らないでくださいね」
    娘「ありがとう御座います。では、お言葉に甘えます」
    騎士「光栄ですね。さ、参りましょうか」
    娘「はい」

130 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 01:43:47 ID:7q2CWRQU
    娘(同胞が可愛い?)
    娘(同胞だった私を棄てたのは……人間だろう)
    娘(私は絶対に同胞を裏切らない。裏切られたとしても、だ)
    娘(賢く生きるくらいなら馬鹿を通して、高潔な魔物として死んでやる)
    娘(……なら、この人を助ける必要なんてないか)


    騎士「どうかなさいましたか? 娘さん」
    娘「いえ、今のうちにその……お別れを言っておこうかと思いまして」
    騎士「え?!」
    娘「私、明日にはこの街を発とうと思います」
    騎士「そ……そうですか」

131 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 01:44:38 ID:7q2CWRQU
    騎士「いつ頃ですか? 出来ましたらその……見送りたいな……と」
    娘「そうですね……恐らく夕方になると思います」
    騎士「……私が仕事を終えて戻ってくるまで、待って頂くことは」
    娘「構いませんよ。是非、お願いしますね」
    騎士「は、はい!」

    娘(…………)
    娘(これで、いい)

132 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 01:45:41 ID:7q2CWRQU
    ───………

    魔王「ほら、薬だ。飲め」
    偽姫「……おいしくない」
    魔王「我慢しろ。風邪が治ったら、何でもうまいものを食わせてやろう」
    偽姫「あ、あ。じゃあね、じゃあね、けーきがいい」
    魔王「分かった」
    偽姫「いっぱいたべてもいい?」
    魔王「腹を壊すから、二切れまでだ」
    偽姫「ぷう」
    魔王「拗ねても駄目だ」


    魔王「さて……少し出てくるが、大人しくしていろよ」
    偽姫「どこいくの?」
    魔王「お前の食事を作らせてくる。すぐ戻る」
    偽姫「……ほんと?」
    魔王「ああ。だから離せ、な」
    偽姫「……はやくかえってね」
    魔王「分かった」

133 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 01:46:40 ID:7q2CWRQU
    偽姫「まだかな」
    偽姫「……まだかなー」
    偽姫「『ちゃんとねておけと、いっただろう』」
    偽姫「……おこられちゃうかなー」
    偽姫「ごめんなさいしたら、ゆるしてくれるもん」


    偽姫「だって、まおうさんはやさしいもん」
    偽姫「こわくないもん」
    偽姫「まっくろで、こわいかもしれないけど……」
    偽姫「わたしは……すき」
    偽姫「えへへ……」

134 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 01:47:45 ID:7q2CWRQU
    偽姫「て……」
    偽姫「あったかかったなあ……」
    偽姫「あしたも……」
    偽姫「ううん、ずっと……」
    偽姫「いっしょにいれるかな」
    偽姫「いれたら、いまよりもっとすきになるのかな」


    偽姫「すき」
    偽姫「まおうさんは、わたしのことすきかな」
    偽姫「すきだったら、うれしいな」
    偽姫「わたしはまおうさんがすきで、まおうさんはわたしがすき」
    偽姫「いっしょで、おそろい」
    偽姫「おそろいは、うれしいな」

135 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/19(月) 13:23:54 ID:DWZp7apk
    昔の偽姫かわいすぎる(´;ω;`)


138 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/25(日) 01:25:56 ID:5wApOi/I
    魔王「む……」
    偽姫「おかえりなさい」
    魔王「ちゃんと寝ておけと、言っただろう」
    偽姫「ごめんなさい」
    魔王「仕方の無い奴だな。ほら、飯を持って来てやったぞ。食わせてやる」
    偽姫「はあい」
    魔王「うむ、良い返事だ」


    魔王「うまいか?」
    偽姫「うん。おいしい」
    魔王「そうか。良かったな」
    偽姫「わ……」
    魔王「ん……ああ、すまん」

139 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/25(日) 01:27:54 ID:5wApOi/I
    魔王「頭を触られるのは、嫌か」
    偽姫「い、いやじゃない」
    魔王「そうか。なら、もっと撫でてやろう」
    偽姫「……えへへー」
    魔王「ペットの世話をしている気分だ」
    偽姫「わたし、ぺっと?」
    魔王「いや、何か違うな。お前は私の、何だろうな」
    偽姫「なにかなあ」


    魔王「ああ、そうだ。姫ではないということを、他の者に言いふらすなよ。しばらくは私達だけの秘密にしておこう」
    偽姫「う、うん。わかった!」
    魔王「よし。お前は聞き分けが良いな。偉いぞ」
    偽姫「わたし、えらい?」
    魔王「ああ」
    偽姫「じゃ、じゃあね……わがまま、いってもいい?」
    魔王「何だ?」
    偽姫「あ、あのね」

140 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/25(日) 01:29:29 ID:5wApOi/I
    夜――


    偽姫(……)
    偽姫(えへへ……)
    偽姫(きょうは、いっしょ)
    偽姫(いっしょにねんね)
    偽姫(いいこにしてる、ごほうびだって)
    偽姫(あったかいな……)
    偽姫(こんなにあったかいのは……はじめて)
    偽姫(やさしいのも、はじめて)
    偽姫(まおうさんはひとじゃないけど……)


    偽姫「ね、ね」
    魔王「何だ?」
    偽姫「わたしね、まおうさんのことすき」
    魔王「……そうか」
    偽姫「おやすみなさい」
    魔王「お休み。私も、お前が嫌いではないな」
    偽姫「……うん」

141 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/25(日) 01:31:41 ID:5wApOi/I
    次の日─


    魔王「すっかり元気になったな」
    偽姫「うん!」
    魔王「では、今日は久々に散歩でも」

    バァンッ!!

    側近「大変だ魔王!!」
    魔王「何だ騒がしい」
    側近「あの国の奴等……姫を見捨てやがった!!」
    魔王「……何?」
    偽姫「え………」


    夜─

    偽姫「ふあ……」
    偽姫「…………あ」
    偽姫「そっか……ねちゃったんだ」
    偽姫「ないちゃったな……いっぱい」
    偽姫「まおうさん……どこいったのかな……」
    偽姫「……ぅ」

142 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/25(日) 01:34:29 ID:5wApOi/I
    偽姫「……うぐ」
    偽姫「ひっ……ぅ……あう」

    偽姫(わたしはにせもの)
    偽姫(にせものだから、すてられた)
    偽姫(にせものは……やっぱりいらなくなる)
    偽姫(まおうさんもいらなくなるのかな)
    偽姫(わたしのこと、すてちゃうのかな)

    偽姫「ひっく……う、ぇ……っく」
    偽姫「どうして……ど……して」
    偽姫「わたしは…………ど、して」
    偽姫「にんげんなんかに……うまれたの……」
    偽姫「う、う……うぇえ……ひ、ぐ」

143 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/25(日) 01:36:09 ID:5wApOi/I
    次の日─


    魔王「起きたか」
    偽姫「うん……」
    魔王「それでは、お前の処遇についてだが……」
    偽姫「………ぅぐ」
    魔王「聞く前に泣くな」


    魔王「悪い話ではない。まあ、聞け」
    偽姫「う、うん」
    魔王「ここにいたいと、昨夜言ったな」
    偽姫「……うん」
    魔王「ならば、お前…魔王になる気はないか」
    偽姫「……え」

144 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/25(日) 01:43:08 ID:5wApOi/I
    魔王「私には後継者…つまり、子供がいない」
    偽姫「……」
    魔王「お前さえ良ければ……私の跡継ぎとして、城に迎えてやろう。どうだ?」
    偽姫「そ、それ…って」
    魔王「魔王の父親は、嫌か?」
    偽姫「う………ううん、すき」
    魔王「決まりだ。よろしく、娘」
    偽姫「よ、よろしく!」


    魔王「今日からお前は魔王の娘だ」
    偽姫「むすめ……」
    魔王「つまり、本物の姫君だ」
    偽姫「ほん……もの?」
    魔王「ああ」
    偽姫「…………ない?」

145 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/25(日) 01:44:10 ID:5wApOi/I
    魔王「何だ」
    偽姫「わたしのこと……すてたり、しない?」
    魔王「……私はお前の何だ?」
    偽姫「え……あ、あの、おこらない?」
    魔王「ああ」
    偽姫「おと……さん……?」
    魔王「……ああ」


    魔王「お前が偽物なのではない」
    魔王「その、国王とやらが偽物の父親だったのだ」
    姫「あ」
    魔王「そう考えれば良いだけの話」
    姫「う、うん」
    魔王「お前は本物だよ。本物の、私の子だ。そして私は子を、捨てん」
    姫「うん。うん」

146 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/25(日) 01:45:56 ID:5wApOi/I
    魔王「まあ、今は難しいことを考えるな」
    偽姫「うん」
    魔王「お前は私……いや、私達が守ってやる」
    魔王「そして、お前が己のために生きられるよう、この世界を変えてやる」
    魔王「私はお前のために、魔王であろうと誓う」
    魔王「だから……もう、泣かなくていい」
    偽姫「う、うん。ごめんなさい……ごめ、なさい」


    魔王「泣くな、と言っているわけではない。謝るな」
    偽姫「うん。うん」
    魔王「…………全く。仕方のない奴だよ、お前は」
    偽姫「…………てね」
    魔王「何だ?」
    偽姫「ずっと、いっしょに、いてね」
    魔王「勿論だとも」

147 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/25(日) 01:47:40 ID:5wApOi/I
    ───………

    朝─


    娘「……ああ」
    娘「お父さん……」
    娘「そうだね、難しく考えることはないのかもね」
    娘「私が、私として生きるために」
    娘「彼を救いに行きますか」


    店主「そうかい……もう行くのか」
    娘「お世話になりました。これ……少ないですけど」
    店主「ああ、宿代……な?! こ、こんな大金貰えないよ!」
    娘「いえいえ、良くして頂いた分ちょっと色を付けただけですよ」

148 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/25(日) 01:49:07 ID:5wApOi/I
    店主「しかし、これじゃあ正規の値の倍以上だ……それにお嬢ちゃん、金に困っているって」
    娘「都合がついて、もう安心なんです。ですからどうかお納め下さい。お願いします」
    店主「……分かった。ありがとう」
    娘「こちらこそ、色々良くして下さって本当に感謝しています」
    店主「そんな大袈裟な。しかしお嬢ちゃん、随分すっきりした顔だが、何かいいことでもあったのかい?」
    娘「ふふふ、分かります?」


    娘「色々吹っ切れたんです。ここに来て良かったと思います」
    店主「そうかい、何か知らんが良かったなあ」
    娘「はい! あ、お土産をこの辺で買って行こうかと思うんですけど、お勧めがあれば教えて頂けますか?
    店主「おう、お安いご用さ。誰にあげるんだい?」
    娘「家で待つ、父と兄に」
    店主「家族想いなんだねえ」
    娘「えへへ……なんたって、自慢の家族ですから」

149 :みんなの暇つぶしさん:2009/10/25(日) 01:55:15 ID:5wApOi/I
    娘「それでは、本当にお世話になりました」
    店主「おう。またこっちに来ることがありゃ、是非ご贔屓に頼むよ」
    娘「ふふ……また近い内に来るかも知れません」
    店主「お、もしかしてあの騎士様絡みじゃあ……」
    娘「んー、ご想像にお任せします。ありがとうございました!」
    店主「ああ! またいつでも来てくれよ!」


    娘「ふう……お土産も買ったことだし、そろそろ行くかな」
    娘「これでこの街ともお別れか。いたのは数日だったけど、何だか名残惜しいな……」
    娘「ま、どうせまた来るんだけどね」
    娘「そう……また来るよ。来なくっちゃいけないものね」
    娘「さて、まずは主の所に行かなきゃ」

166 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/07(土) 02:13:08 ID:4DUhGw/g
    洞窟―


    娘「おは」
    竜「む」
    魔王「娘!!」
    娘「……へ?」


    魔王「ああ!夢にまで見た娘だ!本物だ!うちの娘だ!!」
    娘「な、何でお父さんがいるの」
    魔王「見ろ主!こいつが言っていた、私の娘だ!可愛いだろう?そのくせ凛々しいだろう?」
    竜「落ち着け陛下。何度も顔を合わせているのだから、知っている」
    魔王「何しろ国を一つ落とした実績があるのだからな。流石は私の娘。よく出来た子だ」
    竜「私の話に耳を傾けてはくれぬのだな、陛下」
    娘「何なの、これは」

167 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/07(土) 02:14:02 ID:4DUhGw/g
    竜「先程やって来られてな。それからずっと、お前の話を聞かされている」
    娘「それはその……父がご迷惑をお掛けして、すみません……」
    竜「構わん」
    魔王「……久々の再会だと言うのに、冷たいな。私はお前の顔が見れて、嬉しいぞ」
    娘「え……その……私もう、嬉しいけど」
    魔王「うんうん。そうだろうとも」


    娘「でも本当に、何しに来たの?」
    魔王「お前を迎えに来た。帰るぞ」
    娘「唐突に?!何かあったの?!」
    魔王「何を言う。それもこれも、お前達が勝手に動くから悪い」
    娘「……私、何かやっちゃった?」
    魔王「いや、少し抜けていただけだ」
    娘「?」

168 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/07(土) 02:16:17 ID:4DUhGw/g
    魔王「こいつが今の時期、人間を襲うわけがないだろう」
    娘「あ、それはもう分かって……うん?」
    竜「……」
    魔王「お前がいつ来ても、こいつはこの洞窟にいたはずだ」
    娘「そうだけど……何で知ってるの?」
    魔王「それはお前、卵を守るため動けないからに決まっているだろう」
    娘「え」


    娘「……え?もう一回」
    魔王「だから、数十年に一度卵を産み、孵化まで付きっ切りで見守るという」
    娘「卵?!どこに?!」
    魔王「何だ、やはり知らなかったのか」
    竜「姫からは、私が邪魔で見えてはおらなんだろうな」
    娘「え……えええ……」

169 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/07(土) 02:18:10 ID:4DUhGw/g
    魔王「と、言うことだ。こいつが外をうろつくはずがない」
    娘「じゃ、じゃあ最初から無駄足だったってこと?」
    魔王「ああ」
    娘「何よそれー……」
    竜「…………うむ」


    竜「我が子を狙う者が、極稀にやって来るため……なるべく卵のことは他に伏せておきたくてな。すまん」
    娘「あ、いいよ気にしないで。子供が大事なのは当然だもの」
    竜「……ああ」
    魔王「しかし、今の時期は気が立っているはずだろう。見知らぬ者が来て、よく牙を剥かなかったな」
    竜「仮にも陛下の子を名乗る者だ。そのようなこと、出来るはずが無い」
    魔王「……相変わらずだな、お前は」

170 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/07(土) 02:20:01 ID:4DUhGw/g
    娘「でもお父さんが主と知り合いだって知ってたら、無駄足にならずに済んだのにー……」
    魔王「私に言わぬ、お前と側近が悪いのだ。何かあったらこれからはまず、私に言え」
    娘「今回は知り合いだったけどさ……引き篭りのお父さんに、実際知り合いってそんなにいないよね?」
    魔王「何を言うか。私はこの世に生きる魔物の生態等、ありとあらゆる情報を把握しているのだぞ」
    娘「……はい?」


    娘「ぜ、全部?何百種類じゃ済まないくらいいるのに全部?」
    魔王「魔王としては当然のことだろう」
    娘「側近はそんなこと一言も」
    魔王「いや何、この知識をあいつの前で披露する機会が今まで皆無だったのでな。知らんのも無理は無い」
    娘「何よそれー……」
    魔王「どうした娘、いきなりへたり込んで」
    主「くっくっく……陛下も相変わらずのようだな」
    魔王「……どういう意味だ」

173 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/08(日) 14:18:45 ID:dSk8ANKU
    ようやく魔王の見せ場きたー


175 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/09(月) 00:23:57 ID:edA0enbg
    街道─


    騎士「はあ……まだ何の手がかりも見つからないとはな」
    兵1「隊長」
    騎士「何だ。にやにやして」
    兵1「知ってますよー。隊長は早く仕事を終わらせて、イイ人に会いたいんですよね」
    騎士「な、な、な?!」


    騎士「何を言い出すんだお前は?!」
    兵1「何って……あれだけあからさまに追っかけといて今更ですよ。他の皆もその噂で持ちきりですし」
    騎士「くっ……」
    兵1「まあいいじゃないっすか。家柄とか身分とか、障害があるほど燃えるって言うじゃないですか」
    騎士「一応言っておくが……彼女とは、お前達が思うような関係ではないからな」
    兵1「あー、まだいいお友達止まりなんすね。頑張って下さい隊長殿!」
    騎士「……」
    兵1「何ですか隊長ー。無視は酷いですよー」

176 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/09(月) 00:26:01 ID:edA0enbg
    騎士(ああ……)
    騎士(確かに最初は姫の面影を見ていた)
    騎士(だが……今になっては、本当に、彼女のことを……)
    騎士(もう会えなくなるなんて……嫌に決まっている)
    騎士(しかし引き止めるわけにもいかない……彼女には何か悩みを抱えているようだし……)
    騎士(また、私は思い人について、何一つ知らないままなのか)


    騎士「……いや。何とか、してみるさ」
    兵1「何をですか?」
    騎士「こちらの話だ」
    兵1「つれないですねー、そんなんじゃあ愛しの彼女に嫌われて」
    兵2「隊長!あちらから煙が上がっています!」
    騎士「?!今行く!」

177 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/09(月) 00:28:34 ID:edA0enbg
    洞窟─


    娘「ま……まあいいや。ちょっと荷物預かっててね、すぐ戻るから」
    魔王「仕事は終わりだぞ、どこに行く?」
    娘「ちょっと野暮用がね。あ、お父さんいい物持ってるじゃない」
    魔王「ああ、一応持って行けと側近がな」
    娘「貸してくれるよね」
    魔王「構わんが。剣など何に使うつもりだ?」
    娘「後で説明するよ」


    魔王「何かは知らんが、危ない事はするなよ。急ぐと転ぶぞ、気を付けてな。それから……」
    娘「えへへ、ありがと。じゃあ行って来るね」
    竜「……待て」
    娘「どうしたの?」
    竜「何処からか微かに、人間の血の臭いがする。それも複数」
    娘「……始まったか」
    魔王「む?」
    竜「やはりか。首を突っ込んで、何になると言うのだ姫よ」

178 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/09(月) 00:29:53 ID:edA0enbg
    竜「人間の争いなど、我ら魔物には何の関係も無いはずだ」
    娘「……」
    竜「何をするつもりだ、姫」
    娘「とある人間を、助けるつもり」
    竜「何」
    魔王「ほう」


    竜「まさかとは思うが……人間に情が移ったか?」
    娘「……説明している暇は無い。行くね」
    魔王「ああ、行ってこい」
    竜「陛下?!」
    娘「じゃあ二人とも待っててね!行って来ます!」

179 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/09(月) 00:32:56 ID:edA0enbg
    竜「……陛下」
    魔王「何。子を信じて送り出すのも、親の責務だろう。あいつなら心配いらんよ」
    竜「……」
    魔王「納得出来んか?ならば私の代わりに、あいつの野暮用とやらを見届けて来るが良い」
    竜「な」
    魔王「卵なら私が見ていてやろう。どうだ?」
    竜「……」


    娘「さあて」
    娘「ふんふん……あっちか」
    娘「血の臭いと悲鳴と怒号」
    娘「どうか間に合って」
    娘「私達のために……!」

180 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/09(月) 00:36:14 ID:edA0enbg
    街道外れ─


    娘「……おっと」


    キィンッ…!
    「大人しく降伏しろ!そうすれば、命までは取らない!!」
    「クソ!こんな大人数が来るなんざ聞いてねえぞ……?!」
    「一人たりとも逃がすな!追え!!」


    娘「随分と荒っぽい捕り物だなあ……やれやれ」
    娘「あの人は……ああ」
    娘「怪我した部下を庇いながら剣を振るうだなんて。全く騎士の鏡だね」
    娘「とりあえず生きていたか。良かった」

181 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/09(月) 01:00:09 ID:edA0enbg
    ガギッ!!
    騎士「くっ……!」
    賊「おらおらどうした?!早くくたばっちまえ!」
    騎士「くそ!!」
    ザシュッッ!!
    賊「ぎあぁあっ?!」
    騎士「生憎……まだ、やるべき事があるんでね」


    兵1「……た、隊長」
    騎士「さあ、傷を見せてみろ。この程度なら、応急処置で何とかなるだろう」
    兵1「……隊長」
    騎士「どうした、早く手当てを」
    兵1「すみません」
    騎士「な」

188 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/15(日) 03:10:31 ID:V5yqxoxE
    キイン!!!!

    娘「……残念」
    兵1「なっ?!」
    騎士「……な、何故」
    娘「ごめんなさい。でもね」
    兵1「ひ……や、やめ」
    娘「ちょっと黙ってて」


    ガギィイイイッ──ン!!

    騎士「ま、待って下さい!!」
    娘「……何をするんですか。貴方の命を狙った輩を、何故庇うのですか」
    騎士「助けて頂いたことは感謝します!しかし、部下を守るのも私の使命だ!」
    娘「全く……もう。貴方のせいで逃げられたじゃないですか。ああ、違うか。逃がしたのでしょうか?」
    騎士「……そう取って頂いても、構いません」
    娘「ふふ……愚直ですね。私はそういうの、大好きですよ」
    騎士「……」

189 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/15(日) 03:12:31 ID:V5yqxoxE
    騎士「本当に何故、貴女がここに」
    娘「嫌な噂を耳にしましてね。貴方が命を狙われているとか、何とか」
    騎士「……彼がその手先だったと」
    娘「その様子じゃあ、慣れているみたいですね。話が早くて助かりますよ。あ、どこに行くんですか」
    騎士「少し離れていますが、聞こえるでしょう……私の部下が、まだ戦っています」
    娘「そうですね」


    騎士「私は、行かねばなりません」
    娘「まだ部下の中に裏切り者がいないと限らないのに?そうそう都合よく、助けが入る保障はありませんよ?」
    騎士「それでも私は部下を……民を見捨てることなど出来ません」
    娘「ふふ……」
    騎士「?」
    娘「良かった」

190 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/15(日) 03:15:45 ID:V5yqxoxE
    騎士「何が……でしょうか?」
    娘「お気になさらず。私もご一緒しますよ」
    騎士「い、いけません!娘さんはここにいて下さい!」
    娘「あら、先程実力はお見せしたと思いますよ。私にも、何か出来ることがあるはずです」
    騎士「……どうあってもついて来るおつもりですね」
    娘「よくお分かりで」


    騎士「分かりました……私の側を離れないようにして下さいね」
    娘「ありがとうございます」
    騎士「貴女のことが、ますます分からなくなってきましたよ……一体、何が目的なんですか?」
    娘「ふふ。でしたら道すがら、私の話を聞いて下さいませんか。手短に済ませますから」
    騎士「……はい」

191 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/15(日) 03:38:37 ID:V5yqxoxE
    娘「どこから話せばいいのやら……私は小さい頃、とあるお方に拾われたんです」
    娘「とても立派な身分あるお方でしたけど……ちょっと怖くて、最初はあまり好きになれませんでした」
    娘「でも何の気紛れか、そのお方は私をとても可愛がってくれました」
    娘「美味しいものを食べさせてくれたり、綺麗なお花を見せてくれたり」
    娘「風邪を引いた時なんか、一晩中手を握っていてくれたんですよ」
    娘「あの時は本当に、暖かくて、嬉しかったな……ふふ」


    娘「気付けば私はそのお方のことが、大好きになっていました」
    娘「気付けば大好きなそのお方は、私の父になっていました」
    娘「優しい父は約束してくれました。私を守ってくれると。そしてずっと、私と一緒にいてくれると」
    娘「やむを得ない事情があって、二つ目は最近まで破られていましたけど……」
    娘「それでも今は私のことを、ちゃんと側で守ってくれているんですよ」

192 :みんなの暇つぶしさん:2009/11/15(日) 03:44:01 ID:V5yqxoxE
    娘「守られていると感じることは、それだけでとても幸せなことです」
    娘「でも私はもう、守られるだけの子供じゃありません」
    娘「まだまだ半人前ですけど……自分で考え戦うことが出来る」
    娘「だから私は決めました。父が私のために生きると誓ったように、私も父のために生きると」
    娘「父がいつまでも側にいて、私に微笑みかけてくれるような……そんな平和な世界を作るんだって……誓ったんです」
    娘「守る幸せも、欲張りな私は味わってみたいんです」


    娘「そのためには、貴方が必要なの」
    騎士「……娘さん」
    娘「私の平和な世界のためには……」
    騎士「娘さん、わ、私は」

    ザン……ッ

    娘「貴方のような、愚かな人間が必要なの」
    騎士「……?!」

206 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 21:41:04 ID:u.sOYEjs
    騎士「くっ……ぁ」
    娘「急所は外してあるから、死にはしないでしょう。動けないとも思うけど」
    騎士「ま、まさか……貴女も、私の命を」
    娘「貴方を殺したって、私に利益はない。むしろ生きててもらわなきゃ」
    騎士「なら……ば一体……、っがは」


    騎士「ぅ……あぁ」
    娘「無駄口はそこまで。続きは後にしましょう」
    騎士「ま、まて」
    娘「すぐ戻るわ。そこで黙って待っていてね」
    騎士「なに……を」
    娘「ふふ。下準備、かな?」

207 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 21:41:58 ID:u.sOYEjs
    兵2「そこまでだ!!」
    賊2「ち、畜生……あ?」
    娘「……」
    兵2「何故こんな所に人が……!危険だ!下がれ!」
    賊2「よ、よし!そこの女!この剣が見えるな?!大人しく一緒に来てもら――――ぅぁがっ?!」
    兵2「?!」
    娘「……ふ」


    兵2「つ……強いな、あんた」
    娘「まあね」
    兵2「しかし、ここは危険だ。非難しろ」
    娘「いいえ、それは出来ません」
    兵2「見て分からないのか?!ここは戦場」
    娘「いいえ」

208 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 21:43:51 ID:u.sOYEjs
    娘「ここが戦いの場所?」
    娘「そんな大それたものではないわ」
    娘「ちょっとした遊び場、と言った方が正しいんじゃないかな」
    娘「ねえ、貴方はどう思う?」
    娘「何だ……もう動かないなんて拍子抜け」


    騎士「な……な、なぜ」


    娘「別に期待していたわけじゃあないんだけどね……」
    娘「弱いなあ、本当弱い。っと、また一人」
    娘「二人、三人……はい、これで六人目」
    娘「所謂悪者側が何人で、自己申告の善人側が何人だか数える気も無いけれど」
    娘「どの道、もう少し斬り応えのある得物じゃなきゃ……」
    娘「折角の剣が泣くじゃない」


    騎士「何故……っ!何故だ?!」

209 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 21:45:28 ID:u.sOYEjs
    兵13「た、隊長?!しっかりして下さい隊長!」
    騎士「あ、あ……生きて、いたか」
    兵13「あの女にやられたんですか?!何なんですかあの女!突然現れて!!」
    騎士「に……逃げろ」
    兵13「隊長を放って逃げられる訳が――――ぁ、」
    騎士「あ、あ……」
    娘「これで最後かな?」


    娘「はい、終わり?」
    騎士「……く」
    娘「その顔は終わりみたいね。さっきで全部。本当静かになったもんだね」
    騎士「くそ……くそ……クソっっ!!」
    娘「この場所でもある程度見えるように、悲鳴が届くように、工夫してあげたんだからね。感謝してよ」
    騎士「お前は……い、いった……ぐ」
    娘「あ、まずい死んじゃう」

210 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 21:46:42 ID:u.sOYEjs
    娘「はいはい仕方ないな。治癒魔法掛けてあげるからさ」
    騎士「……な」
    娘「ちょっとはマシになったでしょ? あ、でも動かないでね。手元が狂うと本当に殺しちゃうから」
    騎士「何故、私を生かす?!何故他の者たちと同じように殺さない?!」
    娘「さっき言ったじゃない。貴方が必要なんだってば」
    騎士「必要……だと?」


    娘「そう。貴方がいないと困るの。まあ別に……貴方でなくてもいいことはいいんだけど」
    騎士「……」
    娘「その辺は私個人の裁量と言うかー……うん、まあ、適当に決めちゃったの」
    騎士「お前は、一体……何者なんだ」
    娘「私?」

211 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 21:48:27 ID:u.sOYEjs
    娘「ふふ……聞きたい?聞きたいわよね?」
    娘「貴方が昔思いを寄せていた、姫様の面影を宿した女」
    娘「さぞかし気になったことでしょうね」
    娘「興味以上の感情も、抱いてしまっていたかもしれないけれど」
    娘「ごめんなさい。貴方、私のタイプじゃないの」
    騎士「そんなことは聞いていない!!」
    娘「もう……大きな声を出さないでよ。分かったわよ」


    娘「まずは出て来てもらいましょうか」
    騎士「何の話だ……?」
    娘「いるんでしょ、主」

    ズンッ!
    騎士「な?!」
    竜「よく分かったな。この辺りは見通しが悪いと言うのに」
    娘「匂いで分かるよ」
    騎士「な、な、あ……」

212 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 21:51:08 ID:u.sOYEjs
    娘「紹介するわね。この近辺の主よ」
    竜「ふん」
    騎士「な、何故」
    娘「何故ばかりね。少しは自分で考えて御覧なさい」
    竜「……私は何をすべきなんだ。食えと?」
    娘「いてくれるだけでいいよ。あと、食べちゃダメ。こんなの絶対マズイから」


    騎士「な、何故魔物が、平気なんだ」
    娘「……」
    騎士「答えろ!!」
    娘「……私は亡き姫の姿をやつして世を歩く、高貴な魔物」
    騎士「?!」
    娘「そして……魔王の娘よ」
    騎士「魔王?!」

213 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 21:56:33 ID:u.sOYEjs
    娘「ええそうよ。そしてあの国を滅ぼし、父を再び解き放ったのは私」
    騎士「あ……あああ!!!」
    娘「これでようやく、ご理解できたかしら?」
    騎士「嘘だ……!ウソだ!!!」
    娘「この期に及んで尚その言葉が出るとはね」
    騎士「出鱈目を言うな!そんな話、聞いたことがない!!」
    娘「だからよ。だから、貴方を生かすんじゃない!」


    娘「私の存在は、人間に知られていない」
    娘「だってそうよね。この前の一件では、あの場にいた人間は皆殺しにしちゃったから」
    娘「だから人間達は知らないのよ。魔物達を率い、あの国を落としたのが一体誰なのか」
    娘「別に今まではそれで良かった。私はお父さんを取り戻せただけで、満足だった」
    娘「でもね、今回色々あって心を入れ替えたの。私はこれから、立派な魔王の娘として生きることにしたわ」

214 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 21:58:31 ID:u.sOYEjs
    娘「私ね、近々あの街を潰すつもりなの。人間も、皆殺し一歩手前にするわ」
    騎士「な、何だって?!」
    娘「今日はその予告。これはその予告がはったりじゃないっていう、証拠よ」
    騎士「何故だ!何故街を襲う?!」
    娘「決まってるでしょ。主が、安心して暮らせるように、よ」
    竜「……姫」


    娘「ね。いいわよね、主」
    竜「私としては喧しい人間が減れば嬉しいが……陛下にお伺いは立てたのか?」
    娘「ううん。これは私の独断で、一人でやるつもりだったから」
    竜「そうか。まあ、陛下なら僻地の街一つなど、問題になさらぬだろうよ」
    娘「ふふ……だよね」
    騎士「な、な」

215 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:00:32 ID:u.sOYEjs
    騎士「ふざけるな!人の命を、何だと思っているんだ?!」
    娘「何とも?だって私、人間じゃないもの」
    騎士「く、く……」
    娘「貴方達だってそうでしょ。魔物の命なんて、何とも思っていないんでしょ?」
    騎士「それは……」
    娘「第一、私は今まで何人もの人間を斬り捨ててきたわ。今更思うところなんて無い」


    娘「そしてもう一つ予告。この国も、貰うわ」
    騎士「?!」
    娘「この顔と名を広めるため、せいぜい派手に盗らせてもらうわ。期待しててね」
    騎士「……ない!やらせない!貴様に我が国を好きにはさせない!!」
    娘「そう!その意気込みよ!」

216 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:03:04 ID:u.sOYEjs
    娘「貴方みたいな希望と夢しか知らないような人間が、私は欲しいのよ」
    娘「私の悪行を声高に弾劾し、私の悪名を心地よい悲鳴で叫んでくれるような、貴方みたいな人間が!」
    娘「絶望まみれの世界なんかもういらない!私が欲しいのは平和な世界!」
    娘「愛する人が側にいて、美味しいご飯を食べられる……そんな平和な世界が欲しい!!」
    娘「そこに邪魔者はいらないの。人間という、邪魔者なんか!!」


    娘「だから、これは宣戦布告のほんのご挨拶。せいぜいこれから、よろしくね」
    騎士「……一つ、聞かせて欲しい」
    娘「何かしら」
    騎士「姫は……あの国の、姫は」
    娘「『私が殺した』。これでいい?」
    騎士「っっ貴様あああああ!!!」

217 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:05:29 ID:u.sOYEjs
    ザンッ…ドサ。

    娘「あーあ」
    騎士「あ、う……うで、が……」
    娘「余計な事をするからよ。利き腕じゃないだけ、マシと思ってくれないと」
    騎士「ひ、がぁ……く」
    娘「まあ、これで余計に因縁は増えたかしらね。思わぬ展開も、良い方向に転ぶものだね」


    娘「……ちょっと、聞いてるの?」
    竜「加減を間違えたようだな。死んではおらぬようだが、すっかり気を失っておるわ」
    娘「うわー……ちょっとやりすぎたかも」
    竜「して、どうするのだ。この人間の処遇は」
    娘「街の外れまで運ぶわ。ここに放置して、死なれると困るもの」
    竜「これに、姫の存在を広めさせるのだったな」
    娘「ええそうよ」

218 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:10:19 ID:u.sOYEjs
    娘「これで、人間の方にも私の名前が広まるわ。魔物の姫としてね」
    竜「その上また国を一つ落としたともなれば、他の魔物にも聞こえが良いものな」
    娘「魔王陛下の娘は魔物のためならば、人間なんか根絶やしにする。その実力と覚悟がある、ってね」
    竜「……滅茶苦茶だな。後も先も、考えてはいない」
    娘「先なんか考えてちゃ、魔王の娘なんかやってらんないよ」
    竜「そうだな。そうかもしれんな」


    娘「さてと……行ってくるね」
    竜「私も行こう」
    娘「あ、じゃあちょっと目立っちゃおうか」
    竜「何をするつもりだ」
    娘「この人返すついでに、先にちょっと暴れておこうかと。入口付近で何人か、ね」
    竜「……本当に、良いのか。仮にもお前は元来」
    娘「違うわ。私は違う」

219 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:12:58 ID:u.sOYEjs
    娘「私は魔物で、あの人の娘だから」
    娘「あの人と過ごした時間……それが私の全てだから」
    娘「魔王の娘になったあの日に、人だった私は死んだのよ」
    娘「私が生きていける場所は、お父さんの側だから」
    娘「人との繋がりなんて願い下げ」
    竜「……そう、か」


    娘(そう)
    娘(……これでようやく、人を捨てられる)
    娘(だから……嬉しいはずなのに)
    娘(この人のこと、何とも思っていないはずなのに)
    娘(どうして……胸が苦しいの)
    娘(変なの)


    竜「……なあ、姫よ」
    娘「何?」
    竜「私も、お前の世界に居ても良いのか?」
    娘「もちろん!」
    竜「ふっ……ありがとう」
    娘「こちらこそ、ありがとう!」

220 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:15:02 ID:u.sOYEjs
    兵1「く、くそ……あの女、本当に強いとは」
    兵1「失敗が都に伝わる前に……次の手を打たないと……」
    兵1「妹……待っててくれ。これが終われば……お前とまた、暮らせるんだ」
    兵1「人質なんて、もう終わりにしてやるからな……」
    兵1「……ひとまずここに隠れるか」


    洞窟─


    魔王「遅い……」
    魔王「遅いな……」
    魔王「あいつらは一体、どこまで行って、何をしているのだか」
    魔王「なあ卵よ。お前の母はまだ帰らんぞ」
    魔王「……遅いな」

221 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:17:39 ID:u.sOYEjs
    兵1「?!」
    魔王「お」
    兵1「ま、ま、魔物?!」
    魔王「人間か……まさかこの卵を狙ってか?」
    兵1「何だってこんなところに魔物がいるんだ?!」
    魔王「違うようだな。しかし、ならば何故こんな場所に」
    兵1「う、う、う、うわあああああああああ!!!」
    魔王「む」


    ガキィッン──!!!!

    兵1「あ、あ……!!」
    魔王「いきなり斬りかかるとは、不躾な奴だな。折角の剣を無駄にするな」
    兵1「く、来るな!来るな化け物!!」
    魔王「あれこれと注文の多い奴だな。少し、喧しいぞ」
    兵1「ひ、ひぃ!」

222 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:19:26 ID:u.sOYEjs
    兵1「た、た」
    魔王「た?」
    兵1「助けてくれ!この通りだ!!」
    魔王「ほう」
    兵1「何でもするから、い、命だけは!!」
    魔王「……そうだな」
    兵1「た、頼む!助けてくれ助け」


    パチン

    兵1「っっっああああああああっ!!!」
    魔王「悪いな、人間よ」
    兵1「あ、ぐ、だ、すけ……」
    魔王「別段お前を殺すことに、意味などないのだ」
    兵1「い……いもう、と」
    魔王「ただ、私は昔決めてしまってな。これだけはどうしても破れんのだ」
    兵1「…………」
    魔王「私が救う人間は、あいつが最後でいい。とな」

223 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:21:08 ID:u.sOYEjs
    魔王「そうだろう、娘よ」
    娘「そうだね、お父さん」
    魔王「何をして来たんだ、あちこち血で汚しおって。お前の血ではないようだが」
    娘「ちょっと運動。ねー、主」
    竜「ああ」
    魔王「全く……」


    娘「ねえねえ、お父さん。ちょっと聞いて欲しいことがあるの」
    魔王「何だ?」
    娘「私ね、これからもいっぱい頑張るよ。お父さんの、娘として!」
    魔王「そうか。頑張れよ」
    娘「だからね、ずっと側で……見ていてね」
    魔王「勿論だとも」
    娘「うん!」


    娘「主も一緒に頑張ろうね!」
    竜「ああ」
    魔王「ふっ……一体何を始めるつもりだ?」
    娘「平和のために、努力するの!」
    魔王「平和か。良い言葉だな」
    竜「全くだ」
    娘「ふふ……いいよねー」

224 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:23:35 ID:u.sOYEjs
    ──……


    魔王城─


    娘「んー。今日もいい天気だねー」
    魔王「そうだな」
    娘「平和だねー。いいことだねー」
    魔王「全くだらけおって……もう少し、しゃんとしろ」
    娘「だって……今日は久々のお休みなんだもの。いいじゃない」
    魔王「まあ、確かにそうだな……ゆっくりするか」
    娘「うん。えへへー……」


    バァンッ!

    側近「お前は仕事だ馬鹿野郎!!」
    魔王「……はあ」
    娘「あ、大丈夫。片付けておいたよー」
    側近「ああああ?!」
    魔王「……ふう」

225 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:25:24 ID:u.sOYEjs
    娘「お父さんと一緒にまったりしたいの!」
    魔王「よしよし。よく出来た子だ。褒美に撫でてやろう」
    娘「わーい」
    側近「……頼むから、これに仕事させてくんね?外聞があるから」
    娘「もう構わないじゃない。その分私が頑張るって決めたんだから」
    側近「いやまあ……そうなんだけど、釈然としねえ……」
    魔王「我が儘な」
    側近「うるせえ。お前はこの件に関して口を開くな」


    側近「ったく……調子はどうだ?」
    娘「もう絶好調だよ」
    側近「そうだろうなあ」
    魔王「これでもう、あの国の三割を手中に収めたのだったな」
    娘「うん。これからもじっくり追いつめていくつもり」
    側近「ま、あまり無理はするなよ?」
    娘「えへへ。ありがと」

226 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:27:20 ID:u.sOYEjs
    側近「ああ、娘ちゃんにいくつか報告。あそこの主の卵、最近孵ったってさ」
    娘「わあ!じゃあ早速、明日にでもお祝いに行かなきゃね!」
    魔王「では、一緒に行くか」
    娘「うん!」
    側近「そしてもう一つ……」


    側近「言ってた、隻腕の王族さん?そいつが主体になって、他国と同盟結んでうちに対抗するそうだ」
    娘「……ふうん」
    側近「如何なされますかな?我らが姫様は」
    娘「当然、一網打尽よ」
    側近「ふはは……だろうな。頼もしいよ、ほんと」

227 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:30:28 ID:u.sOYEjs
    娘「この戦いが終われば、魔物の勢力は一体どれだけ増すんだろうね」
    側近「さあね。ま、好きにやってみろよ。また、俺らがしっかりフォローするからさ」
    娘「うん。よろしくね」
    魔王「娘。無理はするなよ?」
    娘「大丈夫!」


    娘「私にはお父さんと、側近と、魔物達がいるんだもの。何だって平気よ」
    魔王「そうか……良かったよ」
    側近「嬉しいこと言うなあ。褒めてやるよ、よーしよし」
    娘「わーい」
    魔王「おい、私の許可なくそいつに触るな」
    側近「堅いこと言うんじゃねえよ。お前がいない間、誰が面倒見てたと思ってるんだ」
    魔王「む……」
    娘「あはは」

228 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:32:18 ID:u.sOYEjs
    娘「ねえ。私、頑張るね」
    魔王「ああ」
    娘「もっともっと平和な、世界のために!」
    魔王「頑張ろうな……娘」
    側近「嫌というほど協力してやるよ」
    娘「うん!」


    その昔、人を捨てた娘がいた。

    それは理を断ち切る悪しき選択だった。
    交わってはいけない縁だった。
    取ってはいけない手だった。
    愛してはいけないはずだった。

    彼女はただ、一つを願っただけだった。
    愛する者達が側にいて、共に歩んでいける当たり前の世界。
    それは果たして悪なのか。善なのか。きっと誰にも分からない。

    ただ一つ言えるのは……。


229 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:34:27 ID:u.sOYEjs
    娘「さーて、まずはご飯にしましょ。お腹減ったよ」
    魔王「そうだな、昼にするか」
    側近「じゃあ俺もご一緒させて頂こうかね」
    魔王「親子の団欒を邪魔する気か」
    側近「当たり前だろ。なんか腹立つんだよ」
    魔王「くっ……魔王に向かって、何だその言い草は」
    娘「あーもう、二人とも喧嘩しないの!」



    彼女は平和をこの上なく、愛していた。
    それだけだった。



    魔王の娘「今日も平和でご飯がおいしい」
    【終】

230 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:37:52 ID:B.xqVGQY
    一番乗りの乙


232 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/01(火) 22:43:48 ID:YC5RorF2
    大作お疲れ様でした!
    この展開は予想外で…なんだろこの読後感……ビタースイートとでも言うんだろうか


234 :おつかい ◆5G.VrtfN/g:2009/12/01(火) 22:47:25 ID:u.sOYEjs
    終わった!粗が目立つけど終わった!!

    こういう、勢いに任せた微妙なものが書きたかったという話です。
    前作を読んでいない人でも読めるようなものが目標でしたが…早々と諦めました。難しい。
    人により好き嫌い別れるオチかもしれませんが、個人的にはとても楽しめたので満足です。
    しかし三ヶ月もかかるとは…。並行して色々書きすぎか。猛省。

    支援下さった方、読んで下さった方。本当にありがとうございました!
    幾分かでも、暇潰しになれば幸いです。またお会いできましたら、よろしくお願いします。


235 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/02(水) 00:05:28 ID:beHkKFNE
    乙!
    おもろかった!!


236 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/02(水) 01:53:18 ID:qm6qaFdc
    乙でした!
    結局しがらみは捨てられたのかな?


237 :ななし:2009/12/02(水) 03:31:06 ID:gE8az9xI
    ご飯が美味しい。素晴らしい事だよね。

238 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/02(水) 13:44:21 ID:KLzfq/S2

    おもしろかったです!今後も(・∀・)つ



239 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/02(水) 17:22:40 ID:abv9SEgs
    少し悲しい部分もあったけど,面白かったです.


240 :みんなの暇つぶしさん:2009/12/03(木) 00:27:07 ID:2A9OWb/A
    最初の方から見てましたが、「終わるまで心の中ひっそり支援していよう」と思って潜んでいましたが終わってしまえば短く感じました
    相変わらずの予想も出来ないような展開で常にドキドキしながら見させて頂きました
    そしてオチも王道の「王子様とのハッピーエンド」なんてのじゃなくて最高でした
    家族ENDみたいなほんわかしたオチ、大好きです!
    最後に、約3ヶ月間の素敵なSSありがとうございました 別作品も心の中で支援してます><



この作者さんのほかの作品はこちら

作者さんのサイトはこちら


魔王の娘「今日も平和でご飯がおいしい」おしまい

引用元
魔王の娘「今日も平和でご飯がおいしい」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12874/1251215452/

魔王「どうか、***」へつづく


 
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