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1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/27(木) 22:51:01.45 ID:ueknf0CsO

    …ッパー!…ッ…パー!

    俺が自分という物を取り戻せたのは、何処からか聞こえてくるその声のお陰であった。


    …ッパー!…ッ…パー!

    後から考え直すから理解出来るのだが、其処は暗いのでは無くて視界が無く、感覚が無いのではなく五体が無い。
    言ってる今でも良く分からないが、まぁつまり、よく分からん場所……?……いや、とにかく分からない何かだった。

    その良く分からん何かに、俺は上に挙げた全てを飲み込まれ様としていたんだと思う……今考えてみればな。

    それは言い様もなく、心地良い物で……覚えちゃいないが、カーチャンに抱かれてるみたいなそんな感じで。

    俺は、もうこのままで良いか、と。
    そう思った。



    …ッパー!…ッ…パー!







    ――その声が届くまでは。


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/27(木) 22:58:39.08 ID:ueknf0CsO

    …ッパー!…ッ…パー!

    あぁ?何だ……うるせぇなぁ。


    …ッパー!…ッ…パー!

    誰だ?……ベジータ、か?


    …ッパー!…ッ…パー!

    分かった。分かったからよ。
    起きるから、だからよ。いい加減にしろよ。


    …ッパー!…ッ…パー!

    俺は……俺の名は―

    声が、ハッキリと聞こえだす。









    『パパッー!


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/27(木) 23:04:46.36 ID:ueknf0CsO

    ナッパ「――俺はナッパだ!」


    そう、傍らで叫んでいるであろうベジータに向かって叫び返した……

    ……つもり、だった。






    女の子「パパッー!!」






    ナッパ「パパ……だと?」



    俺の傍らに居たのはベジータではなく、見た事もない地球人のメスガキだった。


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/27(木) 23:07:53.61 ID:ueknf0CsO



    『ナッパはパパのようです』






 
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/27(木) 23:24:39.98 ID:ueknf0CsO

    女の子「パパ、ごはんもってきたよ!」

    そう言って、地球人のメスガキは俺に茶色の塊を差し出した。
    香ばしい、良い臭いが漂ってくる。

    この食い物は、『パン』という名前らしい。

    ナッパ「ケッ」

    俺は舌打ちしながらも、その『パン』を奪い取る様にして受け取った。

    女の子「パパ、おいしい?」

    『パン』をモソモソと食べ始める俺をニコニコと見つめながら、メスガキがそんな事を言ってくる。

    その表情は嬉しいという感情が一目で分かる正にガキの表情で、俺はやたらとイラついていた。

    ナッパ「こんな、文明レベルも低い下等生物の食い物が……うまいわけがないだろうが」モキュモキュ

    女の子「……」ニコニコ

    憎まれ口を叩きながらも、正直な俺の口は『パン』を求めて咀嚼を続ける。

    それにも、それを見抜いた様に笑顔でいるメスガキにも、苛立ちは募っていた。

    ナッパ「ケッ」

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/27(木) 23:41:32.98 ID:ueknf0CsO
    目が覚めて、メスガキと過ごす様になって、もう3日が経過していた。どうも、メスガキの話によると俺が空から降ってきてからだと5日立っているらしい。

    ナッパ「クソがっ」

    思い返すと、今でも腹立たしい。

    俺は……

    『動けないサイヤ人など、必要ない』

    そう言って、ベジータは笑って。

    俺は、俺はベジータの野郎にッッ!!

    ナッパ「――ッッ!!」

    声も出せない程の怒りが、体の底からわいてくる。

    …チキショウ、チキショウッッ!!

    怒りで、我を失いそうになる。
    だが――

    女の子「パパ、どうしたの?お顔恐いよ?」

    ――その度に、このメスガキにうやむやにされていた。

    ナッパ「ケッ」

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/27(木) 23:50:09.76 ID:ueknf0CsO

    思えば、このメスガキは本当に訳が分からない。
    俺が起きた時には既に側にいて

    『パパー!』

    などと呼んできやがる。
    どうも、俺を自分の父親か何かと勘違いしている様なのだが。

    女の子「パパ、早く良くなると良いね」

    そう言って、ずっと俺の側に付いている。

    動けなくなってしまったので、飯を持ってくるのは便利だが、うっとうしい事この上無かった。

    ………………………
    …………………
    ……………
    ………
    …


15 :◆O4oIDvTQAw :2008/11/27(木) 23:58:20.52 ID:ueknf0CsO

    ナッパ「パパ……だと?」

    女の子「パ、パパー!!」

    目覚めた瞬間から目の前にいた地球人のメスガキは、俺が目を覚ましのを確認した直後。
    表情をクシャクシャに崩して、俺に抱き付いてきた。

    女の子「生きてたぁ……パパ生きてたぁ……良かったよぉ……うぁあああああああ!!」

    すすりなく様に呟いてから、地球人のメスガキは大声で泣き出す。

    俺と言えば、状況が掴めず目を白黒させていた。

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 00:06:14.15 ID:QNKRqqwGO

    ナッパ(何だ、何が起こった)

    それが、最初に思考出来たまともな感情だった。

    女の子「うわぁあああああ!怖かった…怖かったよぉ……ぁああああああ!!」

    だが、その場に居たもう一人が非常に興奮していた事もあって、段々と冷静さを取り戻していく。
    と、同時に、覚えたのは地球人なんていう下等生物に抱きつかれているという不快感だった。

    それは、即座に怒りに変わる。

    女の子「うわぁあああああ!」

    ナッパ「……消えろ」

    そう呟いて、その地球人のメスガキを消すべく腕を――

20 : ◆O4oIDvTQAw :2008/11/28(金) 00:08:39.14 ID:QNKRqqwGO



    ――ピクリとも、動かす事は出来なかった。




24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 00:15:32.66 ID:QNKRqqwGO

    驚きに、顔が青ざめるのが分かった。
    何かの間違いかと思い、もう一度利腕に力を込める。

    ナッパ「――ッ!!?」

    其処で気が付いた。














    利腕が、無かった。

27 ::2008/11/28(金) 00:24:42.63 ID:QNKRqqwGO

    ナッパ「は、はは……」

    女の子「どうしたの、パパ?」

    今まで泣いていた地球人のメスガキも、思わず漏らした乾いた笑いに反応して、泣くのやめて顔を除き込んでくる。

    だけど、そんなもんに構ってなどいられなかった。

    ナッパ「ハ、ハハハは……」

    自分でも、声が震えているのが分かる。

    俺はサイヤ人だ。
    サイヤ人が生きる事とは、即ち戦う事なのだ。
    ベジータでは無いが、戦えないサイヤ人など、本当にゴミでしかない。



    ……それが、利腕が無くなっただと?

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 00:32:01.39 ID:QNKRqqwGO

    ナッパ「馬鹿な……そうだ何処に転がって」

    ……腕がまだ残っていれば、手術で付け直せばまた元の様に使える。

    そう思った俺は、立ち上がろうと腰に力を入れる。

    ナッパ「……」

    嫌な予感がしたが、腰にちゃんと力が入った。

    ナッパ「杞憂だったか……」

    女の子「?」

    隣で不思議そうな顔をしている地球人のメスガキを無視して、俺は立ち上がる。

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 00:33:02.68 ID:QNKRqqwGO



    ――いや、立ち上がろうとした。





31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 00:36:41.22 ID:QNKRqqwGO

    ナッパ「馬鹿な……ッ!」

    吐き捨てて、足元を見る。












    ――見えたのは、片足だけで立ち上がろうとする。
    みっともない左足だった。

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 00:42:16.50 ID:QNKRqqwGO

    ナッパ「――」

    もう、言葉も何も出せ無かった。

    女の子「どうしたの、パパ?」

    メスガキのイラつく気遣いの声も、まるで現実感が無い。

    ナッパ「――」

    ぼんやりと、思い出す。

    浮かぶのは、赤く光るカカロットに、放り投げられた先のベジータ。

    ナッパ「――」

    怒りも何もわかなかった。



    今の自分は、正にゴミだったから。

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 00:46:51.57 ID:QNKRqqwGO

    女の子「パァーパ、ねぇパパー?」

    ナッパ「――」

    幸い、左腕は僅かだが動く。

    手のひらをゆっくりと少女に向け、力を込めた。












    ――当然の様に、何も出ない。

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 00:53:14.16 ID:to7fYDHOO
    ナッパ…

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 00:54:51.04 ID:QNKRqqwGO

    女の子「ねぇー」

    メスガキが、俺の首元をユサユサと揺さぶる。

    うっとうしかった。
    今すぐ消えて欲しかった。

    でも、今の俺ではそんな事すら出来ない。

    ナッパ「ぐ……うぐ…」

    女の子「ど、どうしたのパパッ!?

    女の子「……泣いてるの?」

    そのイラ付くメスガキの言葉でやっと気が付けた。

    ――自分が、生涯ではじめて泣いているという事に。


    ………………………
    …………………
    ……………
    ………
    …


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 01:07:28.67 ID:QNKRqqwGO

    女の子「パパー!ねぇパパ起きてぇ!!」

    ナッパ「ん……ああ゛?」

    小五月蝿いメスガキの声に、自分が寝てしまっていたのだという事に気が付いた。
    こうなってしまってから、寝てばかりいる。

    嫌な、傾向だ。

    ナッパ「ちっ」

    女の子「包帯変えるから、動く手どかしてー」

    廃墟からくすねて来た包帯を、以前巻かれた俺の傷跡の包帯と変える気らしい。
    サイヤ人と言え、それなりに効果のある事なので、俺は黙って従っった。

    女の子「♪」

    何が楽しいのか、嬉しそうに包帯を変えるメスガキを横目に、俺は自身の夢を反芻する。

    ナッパ「……ケッ」

    ただの、自身の記憶を再生するだけの夢であったが、素直に悪夢だと思えた。

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 01:18:28.28 ID:QNKRqqwGO

    女の子「〜♪」

    地球人のメスガキは、妙に手慣れた様子で包帯を巻いている。
    それとなく理由を聞けば、
    『だってパパ、いつもケガしてたじゃない。ま、こんな大ケガははじめてだけど』
    と答えていた。

    勿論、俺はコイツのパパなんかじゃない。

    あの後、ひとしきり泣いた後。
    あまりにウザかったので一応伝えたが、
    『パパ、私知ってるよ。それってキオクソーシツって言うんだよ』
    と言って取り合わなかった。
    証拠と言って出す写真には、このメスガキとハゲた中年のオッサンが写っているだけで、俺は写っていない。

    下等生物の子供とは言え、一応知的生命体の筈だが、あまりにアホウだ。

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 01:31:05.58 ID:QNKRqqwGO

    俺はこのメスガキを消し飛ばす力も残っていなかったし、説得するのも無理だったので、放っておいた。
    すると、このメスガキは頼んでもいないのに、俺達のいる廃墟となった町から食い物やら包帯やら探して持ってくる。

    だから、力がある程度回復した今も、殺さずにおいた。

    女の子「はいっ、出来た!」

    そう言って、メスガキは屈託なく笑う。
    そして、何かを期待する様にこちらを見上げてきた。

    女の子「えへへー、偉いでしょ?」

    ナッパ「……何だよ」
    女の子「なでて!」

    ナッパ「……」

    ……体が動く様になったら殺そう。








    ――とりあえず、虫も殺さぬ程度にデコピンしておいた。

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 01:44:29.94 ID:QNKRqqwGO

    ――そんな風にメスガキとの生活を続けて、一週間がたとうとしていた。

    俺はと言えば、相変わらずまともに五体を動かせない……いや、もう三体しか無いのだけれど。

    ナッパ「……嫌になるぜ」

    廃墟の中の残骸の上でそんな風に呟いていると、メスガキが瓦礫の隙間から出てきた。

    女の子「んーっしょっ、抜けたッ!……パパー、今日は缶詰見付けたよ!鯖缶ッ!!」

    メスガキは、いつもの様にこの廃墟となった町から食い物を探してきた様だ。

    ナッパ「サバ……かん?」

    女の子「かんずめー!」

    そう言ってメスガキが差し出す物は、保存食品の容器に似ていた。

    この星の文明レベルでも、この程度はあるらしい。

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 01:51:14.26 ID:QNKRqqwGO

    女の子「パパ好きだったでしょー、鯖缶。家の地下の倉庫で見付けたんだー」

    メスガキはそんな事を言いながら、ソレを並べていく。
    ソレだけでなく、『パン』と水も見付けてきた様である。

    だが、それより気になる言葉があった。

    ナッパ「家……だぁ?」

    その疑問に、メスガキは不思議そうな顔をする。

    女の子「?…そうだよ。だってココ、私達の町じゃん」

    そう、至極当然の様に答えた。

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 01:59:31.34 ID:QNKRqqwGO

    ナッパ「馬鹿言うな、この残骸の山が……町だぁ?」

    そうなのだ。
    俺達がいる場合は廃墟の残骸の中、かつては町であったかもしれないが、決して町では無い。

    だが、メスガキはあぁそっか、という風に手を打った。

    女の子「そういえば、パパはキオクソーシツだったね」

    女の子「ここは町だよ。ついこの間までは」

    そう、あっけらかんと言って、メスガキは鯖缶を食べる。

    その言葉が、何故か引っかかった。

    ナッパ「どういう事だ?話せ」

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 02:06:01.21 ID:QNKRqqwGO

    女の子「んーと、わたしも良く覚えて無いんだけどー」モキュモキュ

    そう言って、メスガキはパンをかじる。

    女の子「確か、パパとデパートに行ってて……」

    ナッパ「……」

    女の子「そしたら、急に地面が光って……ピカーッって」

    ナッパ「……」

    女の子「そしたら……皆、パパも…消え、…ヒッグ」

    ナッパ「もう良い」

    メスガキが泣き出すと面倒だったので、途中で止めさせる。

    もう、結論は出ていた。

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 02:08:26.56 ID:QNKRqqwGO



    ――ここは、俺が吹き飛ばした町だ。





50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 02:06:41.76 ID:jS4aU+ii0
    あいさつの犠牲者か・・・

56 ::2008/11/28(金) 02:43:48.23 ID:QNKRqqwGO

    女の子「えへ、えへへ……で、でも、パパ生きてたから、だから大丈夫だよ!」

    そう言って、メスガキは笑う。
    だけど、その顔は何処か痛々しい。

    ナッパ「俺はお前のパパじゃない……」

    女の子「もぉー!またそんな事言う!!キオクソーシツなの、分かるパパ!!?」

    ナッパ「……勝手にしろ」

    女の子「うん、勝手にするー!」

    そう言って、メスガキは抱きついてくる。

    その様子に――

    ナッパ「……ぐ」

    ――言いようの無い感覚に襲われる。

    なんだ?何だよ、泣きたいのかよ俺は!!

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 02:51:12.03 ID:QNKRqqwGO

    ナッパ「……スマン」

    女の子「え?」

    泣いてしまう代わりに、絶対に聞こえないくらいの声でそう呟いて。

    ナッパ「……いいから、離れろ」

    女の子「やー!」

    俺は、自身の涙とした。




    ナッパ(何だ?一体俺は何を言ってやがる……)










    ――いつの間にか、俺はコイツを殺そうとは思わなくなっていた。

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 03:03:44.58 ID:QNKRqqwGO

    そんな風な、風化していくだけの町の残骸の中で、まるで俺自身も風化していく様な日々はあっという間に過ぎていった。

    俺は動けないし、メスガキは離れない。
    動かなくても食わせて貰える俺は、このまま風化していっても良いかと、随分と自分勝手な事を思っていたと思う。

    サイヤ人の誇りなど、看板すらも残っていなかった。
    あのガキの笑顔に、俺は笑顔見せてしまう事さえあったのだ。

    でも、それでも良いと。
    この止まった時間で良いと。

    俺は意識せずとも思っていた様な気がする。

    だけど、当然、時間は動き出す。




    食料が、尽きた。

67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 03:11:50.36 ID:QNKRqqwGO

    女の子「パパ……ごめんなさい、今日も…何も無いの」

    痩せコケた顔で、メスガキはそう言った。
    顔は、空腹だけでなく、感情でうなだれている。

    感情その物を表すガキの顔で、それが読み取れるのだ。
    本当に悪いと思っているのだろう。

    ……なんという、アホウだろうか。

    ナッパ「……」

    俺は何も言う事が出来ない。

    以前なら皮肉の一つも言っている所だが、この3日本当に少女は何も見つける事が出来ていない。
    事態は、かなり危険な状態だった。

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 03:21:14.58 ID:QNKRqqwGO

    腹の音が、鳴った。

    ナッパ「腹ぁ……減ったな」

    本当に、それは何気ない一言だった。
    真実、あらゆる意味で他意は無かった。

    女の子「……」

    しかし、メスガキの顔で、それは失言だったと気が付いた。

    女の子「ごめんなさ……パパ、お腹空いてるのに…アタシ……ゴメ、ごめんなさいぃぃ!」

    そう言って、メスガキは泣き出す。

    自身も、腹の音をグーグー鳴らしながらも、他人の空腹に対して詫びている。

    ナッパ(理解出来ねえ……)

    そう呟やくのをグッ、と我慢して、
    気付ば俺は、
    メスガキの頭に、
    手を伸ばしていた。

71 ::2008/11/28(金) 03:30:08.25 ID:QNKRqqwGO

    ナッパ(あぁね……)

    と俺は思う。

    ナッパ(ついに、我慢出来なくなったのかな?)

    間違いなくそうだろう。

    ナッパ(思えば、コイツはうるせぇし……酷くうっとうしい)

    役立たずになったしな、コレできっとスッキリする筈だ。

    ナッパ(きっと、俺は……)



    コイツノアタマヲ ニギ リ ツ ブ シ  テ コイツヲ ク ウ ダロウ









    そして俺はゆっくりと、 はメスガキの頭に触れて――


73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 03:31:24.46 ID:RNsGP66I0
    え?

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 03:37:11.30 ID:QNKRqqwGO



    ――ただ、優しく頭を撫でた。




77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 03:45:22.42 ID:QNKRqqwGO

    ナッパ(……あれ?)

    女の子「パ…パ?」

    メスガキは泣きながら俺を見上げてくる。
    俺は、その涙を掻き乱す様にワシワシと撫で続ける。

    何故か、俺はメスガキの頭を潰していない。

    ナッパ「泣くな……お前が泣くと、余計腹が減る」

    ナッパ(何だ?何を言ってるんだ俺は……)

    自分の口が、自分の意思とは無関係に喋っている様な錯覚を覚える。

    女の子「だけど、パパ……」

    ナッパ「良いから。それより良く聞け……俺を食うんだ」

    ナッパ(馬鹿な!?何を言ってるんだ!!)

    俺は叫ぶが、声にはならず、代わりに口がつらつらと勝手に言葉をつむぐ。

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 03:53:39.75 ID:QNKRqqwGO
    ナッパ「お前が衰弱して死ぬ前に、俺を食え」

    考えられない事だった。
    俺が、このナッパ様が。

    ナッパ(地球人なんぞに……)

    メスガキはしばらくキョトンとしていたが、内容を把握したのかブンブンと頭を振る。

    女の子「やー!」

    ナッパ(そうだ!ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなッッ!!)

    そんな少女に俺は笑って言った。

    ナッパ「テメェに、生きていて欲しいんだ」

    そこで、やっとやっと俺も気が付いた。

    俺が――







    ――もう、サイヤ人じゃ無くなってるって事に。

82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 03:56:36.75 ID:QNKRqqwGO



    ――その日、俺はサイヤ人であった自身を失った



83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 04:02:23.46 ID:QNKRqqwGO

    その数日後に、俺達は近くを通り掛った旅団に助けられた。

    結局最後まで少女は俺を食べ様とはせず、餓死一歩手前まで行っていたという。

    俺としても、今考えれば何故あんな有り得無い事を口走ったのか分からない。

    まぁ、とにかくあのガキンチョは生きていたし。




    俺は死んだも同然だった。

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 04:12:28.49 ID:QNKRqqwGO

    女の子「パパー!早く行こうよー!!」

    ナッパ「……だからパパじゃぁ無い」

    女の子「もうそんなのどうでも良いから、早く行こう!」

    ナッパ「……ケッ」

    俺は、相変わらず生きていた。
    生き恥じを晒していた。

    皆殺しすると誓った地球人を一人も殺す事なく、それどころかその地球人に混ざって、俺は生きていた。

    ナッパ「……」ツカツカ

    女の子「義足、慣れた?」

    ナッパ「あぁ…」

    俺の無くなった足の方には、今は棒の様な義足が付いている。

    このメスガキが何処かで拾ってきたらしくて、何故かピッタリ俺に合った。
    腕の方は相変わらず無い。

    助けられてから、結構な月日がたっていた。

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 04:18:13.93 ID:QNKRqqwGO

    女の子「良かったね、パパ!」

    そう言って、くるくると踊るように歩いている。
    このメスガキは、相変わらず俺の事を親だと勘違いしているらしい。

    最早当たり前過ぎて、どうでも良い事実になっていた。

    もしかすると俺も、錯覚しだしている可能は……

    ナッパ「おい、メスガキ」

    女の子「ん?」

    ……いや、無いな。

93 ::2008/11/28(金) 04:41:33.23 ID:QNKRqqwGO

    言葉を繋げようとすると。

    女の子「そう言えば、パパ。メスガキじゃなくてちゃんと名前言ってよ!」

    遮るようにそう言って、プンプンと頬を膨らませている。

    ナッパ(……まだ用件を言ってねぇだろうが)

    この、細かな所のウザさが、このメスガキの特徴だ。

    ナッパ「名前を言わんからだろうが」

    女の子「だ・か・ら!自分で思い出して言ってよ!!」

    ナッパ「だから、俺はパパじゃない。無い記憶をどう思い出せと……」

    女の子「あー、うるさいうるさい!聞きたくないよー!!」

    自分で話を振っておいて、この態度である。

    女の子「そんなだから、ママにも逃げられるんだよ!」

    ナッパ(うぜぇ……)


    俺は童貞だ!

95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 04:53:43.81 ID:n2OADjohO
    |ω・`)

96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 04:54:22.60 ID:QNKRqqwGO

    そんなやりとりをしていると、不意に腹が鳴った。

    ナッパ「……腹が減った。集合場所に行く前に、飯にしよう」

    女の子「またぁ、パパそればっかりだね?」
    呆れた様な声をメスガキは出す。
    心なしか、以前より生意気になっている気がする。

    ナッパ「サイヤ人は、お前ら下等生物と違って腹が減りやすいんだ」

    女の子「まぁ〜たサイヤ人?もう、耳タコだよ」

    俺のこんな言動も、このメスガキは気にしていない。
    どうもコイツの親父は、変人だったらしくて、俺のこんな言動はまともに受け取られた事は無い。

    メスガキは両耳をピッと引っ張って、パタパタと羽ばたく真似をしてみせる。

    ナッパ「……」

    そんな様子にホッとしてしまう自分に苛立つには、もう少女とは長く過ごし過ぎていた。

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 05:07:11.29 ID:QNKRqqwGO

    俺達は、助けられた旅団にそのまま居座っている。

    荷物運びや、雑用以外に俺やメスガキに出来る事は特に無いが、以前ティラノサウルスとかいうのに襲われた時にソイツを片手で倒した俺を団長が気に入ったらしく、
    俺達を殆ど無償で置くと申し出てきた。

    俺としては、煩わしい地球人との関係など築きたくも無かったが、僅かな時間で団の奴らと親しくなったメスガキは二つ返事で承諾してしまった。

    思えば、この時もう義足は合ったのだから。
    このメスガキを置いてさっさと何処かに行けば良かったのだが、寝ても覚めても俺のそばにいるこのメスガキと離れるのは……

    ……何故か、躊躇われた。

99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 05:16:10.23 ID:QNKRqqwGO

    女の子「うー、じゃぁピザ食べよ」

    ナッパ「かまわねぇが、酒が飲める所にしてくれ」

    女の子「やー!お酒ある所じゃピザ無いもん」

    ナッパ「じゃぁ、ピザは諦め…」

    女の子「やー!」

    ナッパ「……ケッ、分かった」

    女の子「〜♪」

    嬉しそうに鼻歌を歌いながら、メスガキは腕を絡めてくる。

    最近、良いように使われてばかりだ。

    ナッパ(サイヤ人が泣くぜ……)

102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 05:33:22.88 ID:QNKRqqwGO
    ナッパ「……」ヒョイ、ドサッ

    無言で、荷物を運ぶ。

    あの後メスガキとピザとやらを食べ(惑星ベジータでいうマルボーニャだな)、集合場所に行くと、もう荷物の詰め込みが始まっていた。
    居候の身であるので、当然俺も手伝う。

    ナッパ「……」ヒョイ、ドサッ

    思えば、俺は随分無口になったと思う。
    ベジータとつるんでいた頃は、そりゃぁひっきりなしに喋って――

    『動けないサイヤ人など、必要ない』


    ――クソがッッ!!

    ナッパ(チッ……)

    方向を持ちかけた思考のベクトルを無理矢理断ち切る。

    ナッパ(イカンイカン、もう衰弱している訳じゃない……キレたら、ここら辺一体が……)

    ふと、気が付いた。




    ――俺は、一体何を気にしているんだ?

104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 05:42:01.93 ID:QNKRqqwGO

    久々に訪れた自らの思考への嫌悪に、苛立ちを隠せなくなってきた頃。

    女の子「パパー!」

    メスガキに、抱きつかれた。

    女の子「もう終ったんでしょぉ?早く乗り込もうよ、皆待ってるよー!」

    ナッパ「……」

    女の子「どしたのー?」

    その声に、その瞳に、さっきまでの感情が……

    女の子「パパー?」

    ……もうどうでも良くなった。

    ナッパ「……」

    俺は、何故かデコピンしていた。

    女の子「あぅっ」

    ナッパ「分かったよ」

    ……色々とな。

111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 05:59:42.03 ID:QNKRqqwGO

    それから、しばくは特に特筆すべき事は無かった。

    俺は旅団では浮いていたし、メスガキや団長以外は誰も話掛けてこない。
    外交はアイツ担当だからだ。

    俺はただ黙って黙々と、頼まれた雑用をこなすだけ。
    それに文句もない。

    妙な関係を築く必要も無かったし、つもりもない。
    俺はただ、いつでも食えるメシを食い。
    たまに酒を飲むだけ。

    何故かサイヤ人特有の『戦いたい』という欲求にも見舞われなくなった俺は、それで全て満たされていた。

    ……これはコレで、良いな。

    と思う感情に激昂しそうになっては、それを酒で誤魔化す。

    そんな日々が続いていた。

114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 06:09:07.10 ID:QNKRqqwGO

    夕食の席。
    皆集まって、焚火を囲んで夕食を取っている。

    俺はいつもの様に、皆とは離れた場合にいた。
    最初の頃は気にして俺の側にいたメスガキも、今は皆の輪の中にいる。

    楽しそうに笑っていた。

    ナッパ「……コレで完璧だ」

    そう呟いて、俺はトレーラーによっかかった。
    フゥと、ため息なんぞ吐いてみる。

    手には、度数のやたらと高い酒。
    パンも肉もある。
    いわゆる、『何の問題も無い』という状態だった。

    後は、かぶりつくだけ。

    ナッパ「さて……あ゛?」

    そこに、空気を読まない問題が来てしまった。

116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 06:20:18.11 ID:QNKRqqwGO

    団長「いやぁあおー……ナッパさん!どぉおおですかなぁ〜?お、調子は♪?」

    空気を読まずにやってきた団長は、随分と酒に酔っていた様だった。
    全く顔に似合っていないのに、音符なんぞを飛ばしている。

    ナッパ「…まぁまぁだ」

    普段はこんな風に絡んでくる様な男ではない。
    いや、こんな風な絡み方をしてくるのは始めてだ。
    どうも、しこたま飲んでいるらしい。

    団長「隣、よろしいかな?」

    ナッパ「好きにしろ」

    そう言って、隣を開けてやる。



    昔の自分だったらもう殺しているだろうな、などと思いつつ。
    それを今しなくなった自分への激昂を抑える為、空きっ腹にやたらと度数の高いアルコールを流し込んだ。

118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 06:32:40.17 ID:QNKRqqwGO

    団長「いやぁ、ありがとうナッパさん!いや、いい人だよあんた!!」

    ナッパ「……」グビッ

    団長「ホント、アハハハァ!」

    ナッパ「……」モキュモキュ

    団長「いやホント、伊達にハゲてはいないですよ!苦労されたかほりを感じますよ!!」

    ナッパ「……」

    団長「いやぁ〜、本当!毛は無いけど暖かな人だよ、ウハハハハハッ!!」ペチペチペチペチ

    ナッパ「……」ビキビキ

    団長はそんな事を言いながら、ペチペチと頭を叩いてくる(勿論、俺の)。

    ナッパ(よし……殺すか)

    その決意を実行すべく、立ち上がる。

120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 06:35:23.41 ID:QNKRqqwGO



    団長「――でも、それと同じくらい冷たい人だよアンタ」





121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 06:37:23.38 ID:QNKRqqwGO

    あまりに真顔で。

    そう、完全に酒気が抜けきった顔でそう言われてしまった為。

    ナッパ「……」ストンッ

    俺は、そのまま座り直してしまった。

123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 06:42:08.30 ID:QNKRqqwGO

    ナッパ「……」

    団長「冷てぇよ、ナッパさん冷てぇよ。ナッパさん来てから、どんぐらい時間が立ったと思う?」

    ナッパ「……」

    俺は答えない。
    正確な時間が分からないからだ。

    だが、

    団長「年月……って言っても良いくらい。私ら一緒にいる筈ですよ?」

    そう、長い月日……いや、年月がたっていた。

126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 06:50:58.68 ID:QNKRqqwGO

    団長「私はね……一緒にこうやって旅してる奴ら、皆家族だって思ってる」

    そう言って、団長は目を細めて周りを見回した。
    多分、一人一人の顔を眺めているのだろう。

    その顔は、何か誇らしげだ。

    団長「家族ですよ家族……分かります?」

    正直、俺は家族という概念は良く理解出来ていなかったが、団長に先を促す。

    団長「……そう、家族」

    団長はそう呟くと、手にしていた泡の出る酒を一気にあおった。
    ダンッ、という音を立てて、簡易式のテーブルに容器を打ち付ける。

    団長「ナッパさん……そいつはアンタもなんすよ」

    ナッパ「……」

    俺は、無言で先を促した。

127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 06:57:59.57 ID:QNKRqqwGO

    団長「まぁ最初はね。話しにくいんだろうから、待ってれば話してくれるだろうとね。思ってました」

    団長「でもねぇ……もう限界ですよワタシゃぁ、知りたいんですよかぁーぞくの事を」

    ナッパ「……」

    さっきのシラフぶりは何処へやら、また酔いが回ってきている様だ。

    団長「聞きますよ!きーちゃいますよ!色々とー!?」

    団長「いいですね?」

    それは、有無を言わさぬ様な口ぶりだった。
    多分、拒否させない気なのだろう。
    しかし、

    ナッパ「好きにしろ」

    そんな物は杞憂だ。

129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 07:01:58.98 ID:QNKRqqwGO

    団長「……あれ?」

    簡単に言われたのが、意外だったらしい。

    ナッパ「何を思って聞かったのか知らんが、聞かれなければ話す事など出来ねぇぜ」

    そう言って、俺は酒を煽った。

    団長「は、はは…」

    ナッパ「フッ……」

    団長は笑う。
    それを、俺は鼻で笑う。

    でも、久しぶりに笑った気がした。

132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 07:07:41.57 ID:QNKRqqwGO

    団長「そっか…そうだね。じゃぁストレートに……あの子、ナッパさんの子じゃ無いでしょ?」

    とうも、結構核心を付く質問だったらしい。

    ナッパ「あぁ」

    と、簡単に答えたら、意外そうな顔をした。

    団長「アッサリだね」

    ナッパ「別に、子だと言った事は無い」

    団長「そうかい」

    そこで、しばらく会話は止まった。

134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 07:16:16.40 ID:QNKRqqwGO

    しばしの沈黙。

    団長「……」

    ナッパ「……」

    別にこのままでも良かったが、ただ質問されるだけというのもしゃくだったので、こちらからも質問してみる事にした。

    ナッパ「なぁ」

    団長「なんだい?」

    ナッパ「オメェ、何でこんな旅団組んでんだ?」

    この質問には慣れているのか、団長は酷く落ち着いた様子で返してくる。

    団長「どうして?」

    ナッパ「だって、イラねぇだろコレ」

    そこまでストレートに言われた事は無かったらしく、団長は少し眉をしかめた。

144 ::2008/11/28(金) 08:09:27.76 ID:QNKRqqwGO

    団長「ハッキリ言うね」

    そう言って、団長はビールを煽る。

    ナッパ「だって、そうだろ?俺にだって分かるぜ……この旅団ってヤツは、完全に時代遅れだ」

    団長「……」

    団長は微妙な表情を浮かべながらも、聞いてはいる様だった。
    俺は続ける。

    ナッパ「この星には既に小型の飛行機があるし……なんだったか、エアカー?…とか言う奴もあるんだろ?ある程度、政府による流通ラインは出来ている。こんなオンボロトレーラーで、わざわざ群れて荷物を運ぶ必要はない」

    言って、俺はそのオンボロトレーラーを拳の背で軽く叩く。

    そう、俺は以前から不思議だったのだ。
    この星の文明レベルなら、こんな流通のさせ方は手前ばかりでまるで利益が出ない。

    まぁ田舎ばかり行けば損はしないのかもしれないが、ハッキリ言って無駄である。

    団長「は、はは…結構、しゃべるんじゃないか」

    照れ臭そうに団長はそう言って、頭を掻いた。

145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 08:22:38.44 ID:QNKRqqwGO

    団長「そうだね。確かに、私らが居なくても誰も困らない」

    団長は遠くを見る様な目で、そう呟く。

    団長「でもさ……いらないって事は無いよ」

    ナッパ「ほぅ?」

    団長「やっぱ、田舎の人とかはね。何処の誰とも分からない奴らより、昔馴染みの……そう、父の代からの私らと取引したがるよ」

    団長「それにさぁ…」

    団長「少なくとも、ココに居る奴らには必要だよ!」

    そう言って、団長は両手を大袈裟に広げる。その手の先は、きっと周辺でドンチャン騒ぎをしている団員に繋がるのだろう。

    団長「それは、ナッパさんもだよね」

    そう言って、団長は朗らかに笑う。

    ナッパ「……ケッ」



    上手く否定する事が出来なかったので、とりあえず酒を煽っておいた。

147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 08:27:58.12 ID:QNKRqqwGO

    それからしばらくは、俺達は黙って夕食喰らい、酒を煽っていた。

    俺にも酒がまわってきたかな?と思い始めた頃、不意に団長が言った。

    団長「時に、ナッパさん。貴方、地球の人じゃ無いでしょ?」

    ムセた。

150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 08:36:14.98 ID:QNKRqqwGO

    ナッパ「ゴホッ、カハッ……テメェ!」

    団長「あははは、やっぱりムセた!やっぱ、コイツが一番の本題だったかぁ!!」

    俺の度肝を抜いたのがよっぽど嬉しかったのか、団長はケラケラと心底嬉しそうに笑う。
    俺にもひけを取らない、地球人としてはかなり大型の体をよじらせて、笑っている。

    ……なるほど、こういうヤツか。

    団長「いやぁ、実はテレビ見てたんですよ。知ってました?ナッパさん写ってましたよ」

    ナッパ「知らん」

    団長「でしょうね、かなり望遠でしたから」

    そう言って、団長はクックと笑っている。

    ナッパ(地球人とはおかしな奴らばかりだ)

    俺は心底そう思った。

151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 08:44:26.20 ID:QNKRqqwGO

    団長「最初は良く似た人かと思ったんですけどね、尻尾ついてるから間違いないなぁと」

    ナッパ「そうかよ」

    ケラケラと、団長は笑う。
    テレビに写っていたのならば、他の団員も知っているのかもしれない。

    ……しかし、知ってるなら知ってるで、この態度はおかしい。

    ナッパ「何とも思わんのか?」

    団長「何がですか?」

    ナッパ「知ってるんだろう、俺が何したか?」

    団長「あぁ……軍団とか、都を吹き飛ばした事ですか」

    そう、思い出した様に団長は言う。

    ……そう、俺は吹き飛ばした……あのメスガキの町も。

    ナッパ「……ケッ」

    言い様の無い感情に襲われた俺は、再び酒を煽った。

155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 08:55:38.88 ID:QNKRqqwGO

    団長「んー、特に何も思いませんけど」

    それは、俺にしてみれば意外な答えだった。

    ナッパ「あ゛?」

    団長「だってねぇ……別に都や軍隊に知り合いが居た訳でもありませんし、ここでこうやって仲良くやってるんだから、それで良いんじゃありません?」

    言いながら、団長は俺の飲みきった杯に酒を継ぎ足す。
    泡の出るヤツだ。

    ナッパ「そんな、もんか」

    団長「そーんなもんですよ」

    ナッパ「……そうか」

    団長「目の前で精一杯です」

    ナッパ「確かに、な」

    俺も、確かに目の前で一杯だったんじゃないか。
    今、この瞬間も。



    俺は、俺としては物足りないその泡の出る酒を一息で煽った。

156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 09:05:59.98 ID:QNKRqqwGO
    団長「おっと、もうこんな時間ですな。じゃぁ私はここで」

    既に真っ赤になった顔で、団長はヨロヨロと立ち上がり、去ろうとする。
    それを、俺は呼び止めた。

    ナッパ「待て」

    団長「およ?添い寝はしませんよ」

    何やらワケの分からん事を言っているが、ソレを無視して尋ねる。

    ナッパ「最後に答えてけ……どうして、アイツが俺の子じゃないって確信した?」

    実は、結構気になっていた。

    団長「んー…」

    団長はしばらく悩んでから、口を開く。

    団長「まぁ、宇宙人だとか色々あるんですが一番の理由は――」







    団長「――童貞931?」

157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 09:10:02.95 ID:QNKRqqwGO

    ナッパ「……」

    団長「……」

    ナッパ「……く」

    団長「……うはw」











    団長&ナッパ「「あーっはっはっはっはっはっはッッ!!」」

    怒りを覚えるべき内容であったが、
    漏れたのは、

    何故か笑いであった。

158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 09:14:48.18 ID:QNKRqqwGO

    俺達は、他の団員が奇異の目で見つめてくるぐらい笑い合う。


    ナッパ「クックク、確かにな、俺は童貞だ」

    団長「そうでしょうそうでしょう!年上は騙せませんよ!」

    ナッパ「年上だぁ?ケッ、多分同い年だよ」

    団長「おや?ナッパさん私よりかは若そうですが」

    ナッパ「サイヤ人だからな」

    団長「そうですかそうですか!」


    そうして、俺達はまたも爆笑した。

159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 09:21:32.18 ID:QNKRqqwGO

    ひとしきり笑い合って、団長は再び立ち上った。

    団長「じゃぁ、今度こそ」

    そう言って、団長は背を向ける。

    ナッパ「――うまかった」

    団長「え?」

    ナッパ「美味い酒だったよ!」

    俺がそう言うと、団長は本当に嬉しそうに笑って、鼻歌混じりに立ち去って行く。

    そうして、俺は気が付いた。

    自分で言って、自分で気が付いた。

    ナッパ「そうか、俺は――」






    ――アイツとの酒が、美味かっんだな。

    と。

221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 20:23:36.56 ID:QNKRqqwGO

    思えば、この時俺はあのメスガキに完全に懐柔されていて。
    さらに、団長に懐柔されようとしていたんだと思う。

    プライドなんてちっぽけな物で、さっさと捨てた方が良いのは前から知っている。
    だけど、それは自分より格上の相手に対してだけだと思っていた。

    でも、そうじゃない。
    上だろうが下だろうが、安堵する為には捨てるべきであったのだ。

    ……クソッタレッ!


    だけど、そんなのは認められない。
    こんな星での安堵なんて、認める訳にはいかない。

    認めたくないから、俺は酒を煽るだろう。
    だけど、

    ――あぁ、何でこんなに……酒が美味い。


    酒の美味さを知った俺は、ポロポロと崩れ出す他無かったのだ。

    だから言っただろう、プライドなんて、ちっぽけもんなんだって……。

    そうやって、俺は崩れ出した。

225 ::2008/11/28(金) 20:33:46.64 ID:QNKRqqwGO

    女の子「パパー!」

    メスガキが、こっちに向かって走ってくる。
    へにゃぁ、とした笑顔を携えて、こちらにかけてくる。

    ナッパ「……」

    俺はアイツが何をするのか知っている。
    アイツが何をしたくて、それが俺にとってどういう事なのかちゃんと分かっている。

    だけれど、俺は何もしない。
    アイツのする事を、口では嫌がりながらも、結局受け止めてしまうだろう。

    ナッパ「……ケッ」

    ……ほら、この言葉だ。
    この言葉で、俺はまた自分を誤魔化す。

    足元までやって来たメスガキは、ピョンと飛び跳ねて言った。

    女の子「パパ、抱っこ!」

    普段なら問答無用で飛び付いてくる癖に、何故か今日は俺に要求する。

230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 20:43:18.76 ID:QNKRqqwGO

    ……クソッタレッ!

    そう思った。

    それは、要求するメスガキに言っているのか、要求に答えるべくしゃがみ込んだ自分に言っているのか。

    俺自身も、分からない。

    女の子「パパ、早くー!」

    ナッパ「……ケッ」

    言い訳の言葉を吐いて、メスガキに手を伸ばす。

235 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 20:50:16.09 ID:QNKRqqwGO

    ――そうやって、抱き上げたのは――
















    『遅いぞナッパッッ!!』


    ――憎たらしい面で笑う。在りし日のクソガキだった。

    ………………………
    …………………
    ……………
    ………
    …

240 ::2008/11/28(金) 21:03:59.12 ID:QNKRqqwGO

    ベジータ「遅いぞナッパッッ!」

    タオルを持って来た俺に向かって、トンガリ頭のクソガキはそう吐き捨てた。
    そのまま、俺の手からタオルを奪い取る。

    ベジータ「トレーニングが終わったら、3秒以内に持ってこいと言っているだろう!」

    ナッパ「へへ、そう言うなよベジータ」

    ベジータ「グズがッ!」

    ベジータは言い終えると、タオルで汗を拭いながら強化型サイバイマンの死骸を踏み越えていく。
    俺も慌てて後を追った。

    ナッパ「お、おい…何処行くんだよベジータ」

    ベジータ「メシだ」

    ナッパ「お、俺も行くぜ」

    そんな俺の様子を、ベジータは鼻で笑った。

    ベジータ「ふんっ、まるで金魚のフンだな」

    ナッパ「はは……仕事なんだよ」

    ベジータ「……ケッ」

242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 21:17:32.44 ID:QNKRqqwGO

    まだまだガキンチョと呼べるこの当時のベジータにさえ、俺は言われてたい放題だった。

    付き人の様な物をやらされていた事もあるが、それ以上に――

    ベジータ「見ろよ、ナッパ。またお前と俺との戦闘力に差がついたな」

    ナッパ「ぐッ……へへ」

    ――戦闘力の差が、大きかった。

    サイヤ人は戦闘民族である。
    全てを決めるのは、戦闘力なのだ。

    既にこの時、俺とベジータの間には分かりやすい程開きが出ていたのである。

    ベジータ「弱いサイヤ人など、何の役にも立たん」

    ナッパ(こ、このクソガキ)

    ベジータ「何だ?」

    ナッパ「い、いや…言う通りだ」

    ベジータ「だろう?」

    そう言って、ベジータはガキらしからぬイヤらしい笑みを漏らした。

244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 21:38:21.49 ID:QNKRqqwGO

    食堂に着くと、多くのサイヤ人が食事をする為に集まっていた。
    見ると、バーダックのチームが居るのも分かる。

    ベジータ「ほぅ…」

    ベジータが漏らす呟きに、嫌な予感がした。

    ベジータ「おい、ナッパ。お前バーダックと同期なんだらう?」

    ナッパ「あ゛…あぁ」

    ベジータ「ちょっとやり合ってみろよ。ヤツは下級生戦士なんだ。楽勝だろう?」

    そう言って、ニタニタとベジータは笑っている。

    ナッパ(コイツ……)

    バーダックとは、下級戦士からの叩き上げでかなり有名な戦士であった。
    はじめは100にも届かない戦闘力だったらしいが、死線を何度も潜り抜けて今で一万前後もあるという。

    俺どころか、ベジータが戦ってもタダで済む相手では無かった。

248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 21:45:12.15 ID:QNKRqqwGO

    ナッパ「む、無茶言うなよ……ベジータ」

    曖昧に笑って見せたが、ベジータは不遜そうに鼻を鳴らす。

    ベジータ「フンッ、弱いだけでなく臆病者か……どうしようもないヤツだな」

    そう言って、ベジータはサイバイマンにかじり付いた。
















    ――その夜、俺はクズの最下級生戦士を何人か殺した気がする。

    惑星ベジータの日々っていうのは、そんなものだった。

253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 22:02:35.66 ID:QNKRqqwGO
    …………………
    ……………
    ………
    …
    女の子「パパー、朝だよー!」

    メスガキの朝のダイブで、俺は目を覚ました。

    ナッパ「あ、あぁ……」

    女の子「どうしたの、パパ?お顔青いけど?」

    ナッパ「何でもねぇよ」

    そう答えておいたが、何でも無い事は無かった。
    額からは汗が流れ、体は震えている。

    ……何故だ?

    ただ、昔の夢を見ただけだ。
    特に、悪夢というわけでも無かったはず。
    それなのに、何故か震えは止まらない。

    女の子「パパ、大丈夫?」

    ナッパ「……」

    女の子「笑ってー」ニコッ

254 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 22:13:20.05 ID:QNKRqqwGO

    そんな、メスガキの何でもない笑顔で、

    俺の震えは止まってしまった。

    そうして、
    俺は理解してしまう。



    ――あれは、悪夢になったんだと。

257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 22:25:10.72 ID:QNKRqqwGO

    それから、月日はさらに流れていった。

    崩れていく自身に抵抗するかの様に、過去の俺が悪夢という形で顔を出すが、その度にあの笑顔で震えを止めて、酒で記憶を流していく。

    そんな事を何度も何度も繰り返す。
    まるで、『俺』の中身を新しく『オレ』に総取っ替えしている気分だった。

    いや、それは間違いじゃないのかも知れない。
    事実、俺は段々と思考に激昂しなくなり、酒で押しながす事もなくってきている。
    そんな、俺の酒は減っていた。

    勿論、酒自体が減った訳じゃない。
    むしろ増えたかもしれない。
    だって、
    どうしようもなく、


    オレの酒は美味すぎる。

259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 22:45:14.72 ID:QNKRqqwGO

    とある日、の昼下がりの事である。

    オレ達の旅団は、休憩の為に開けた森の野原に立ち寄っていた。

    季節は調子春先というものだったらしく、野原にはチンケな花共が我先にと押し合って空を目指している。
    それらが流す臭いにつられて、虫共が本能に従って花々を飛び交う。

    搾取しているようで、利用されている。
    そんな良くある関係で広がった場所だった。

    女の子「〜♪」

    そんな活気広がるの絨毯の上を、メスガキはくるくる回って踊っている。

    いや、本当に踊っている訳じゃないだろう。
    実際は、フラフラと動き回っているだけだ。

    でも、団員の誰かが『踊っている』と言ったので、それならば踊っているんだろうと思わせるだけの何かはあった。

    つまり何が言いたいかと言うと、
    俺はそんな会話を交わすくらい、団員達と親しくなっていたという事だ。

261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 22:59:25.55 ID:QNKRqqwGO

    花々を踏みしめて、笑って踊る様を眺めながら。
    オレは皆と遅めの昼食を取っていた。

    そう、オレは皆と取っていた。
    もう、『何の問題もない』に、孤独は含まれなくなっていたのである。

    団員「ナッパさん…」

    ナッパ「あぁ?」

    団員「嬢ちゃん……楽しそうですね」

    その団員の言う通り、メスガキは楽しそうにキャッキャと笑って、はしゃいでいた。

    ナッパ「そうだな…」

    見てみると、皆がみな、メスガキの方を見てボーッとしている。
    多分、いやきっと、ホッとしているのだと思う。

    事実、メスガキはこの中では唯一の子供で、ちょっとしたマスコットみたいな扱いであった。

    理解出来なかった、
    理解出来ないかったけど、
    ……理解、出来ている。

263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 23:13:18.09 ID:QNKRqqwGO

    唐突に、メスガキが歌い出した。

    顔を上げ、身をくねらせ、ステップを踏み、手拍子を取る。

    女の子「しーあわせならてーをたたこう♪」パンパンッ

    サイヤ人のオレは、聞いた事もない曲だ。
    だけど、地球人の団員達は知っている様で、チラホラと手拍子を取りだしている者もいる。

    女の子「しーあわせならてーをたたこう♪」パンパンッ

    メスガキは、そんな風に手拍子を叩き出した団員達を一人一人立たせていく。
    そのまま、手拍子だけでなく自分に続けさせる。

    女の子「しーあわせならてーをたたこう♪」パンパンッ

    それは、おそらく曲の冒頭なのだろう。
    メスガキはその先を続けずに、同じフレーズを繰り返し、どんどん団員達を立たせていく。

    何がやりたいのか、オレにも段々分かってくる。


    そうして、最後にオレの番が来た。

266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 23:26:29.46 ID:QNKRqqwGO

    女の子「しーあわせならてーをたたこう♪」パンパンッ

    そう言って、メスガキはオレの前に来た。
    手拍子を叩きながら、ニコニコと無防備な笑顔で、笑っている。

    女の子「しーあわせならてーをたたこう♪」パンパンッ

    なるほど、と思う。
    こうやって、同じフレーズ、リズムを繰り返して、呼んでいるのだ。
    来いよと、楽しげに。
    女の子「しーあわせならてーをたたこう♪」パンパンッ

    楽しげに、楽しげに、一緒懸命。
    メスガキは呼んでいる。



    誰を?そう、オレを。

    女の子「しーあわせならてーをたたこう♪」パンパンッ

    ナッパ「……」

271 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 23:36:50.76 ID:QNKRqqwGO

    女の子「……」

    歌が、止まった。

    ナッパ「……」

    いつまでも立ち上がらないオレに、メスガキは口をつむぐ。

    一瞬の静寂、そして――




    女の子「しーあわせなら――」

    同じフレーズを繰り返すのかと思った。
    だけど、

    女の子「――たいどでしめそうよー♪」

    はちきれんばかりの笑顔で続けられたのは、おそらく次の歌詞。
    そして、多分一番オレに伝えたかった歌詞。



    ――メスガキは、俺に手を伸ばす。

273 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 23:43:21.92 ID:QNKRqqwGO

    女の子「ほ〜ら、みーんなでてーをたたこう♪」







    ――パン、パンッ。







    皆で、一つの音を奏でる時には、
    俺も立ち上がり。

    メスガキと、
    二人で、

    ――一つの音を奏でていた。

277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 23:53:28.48 ID:QNKRqqwGO

    それから、俺達はメスガキにつられて色々と歌った。
    殆どは知らない物だったから、歌詞も全く分からない。
    それでも、俺は歌っていた。

    知りもしない歌詞、合いもしない音程でも、俺は歌う。

    そうして分かった事は、知っていようが知らなかろうが俺は音痴だという事だ。
    くだらない事だが、重要な事の様に感じられる。

    俺は、笑った。

279 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 23:55:42.80 ID:LnByrz+8O
    やべえこのスレやべえナッパのアナザーストーリーやべえ
    鳥山明これ描いてくれ


281 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/28(金) 23:58:12.74 ID:DjkVLV7W0
    >>279
    鳥山はナッパのことなんて忘れてますよ


283 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/29(土) 00:05:20.91 ID:tssDYnJyO
    >>281
    鳥山「もも……しろしろ…?」


285 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/29(土) 00:14:45.80 ID:I825LIKO0
    鳥山「てん・・・つめし・・・?」

286 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/29(土) 00:22:25.28 ID:tssDYnJyO
    鳥山「ぎょうざ……?」

287 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/29(土) 00:23:32.20 ID:bK04ii260
    鳥山「ご…そら……?」

284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/29(土) 00:13:39.95 ID:67JW+hy6P
    鳥山「ちょう…ざん?…めい?」

288 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/29(土) 00:24:45.19 ID:+XO6jmZy0
    >>284
    ちょっとマテw

289 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/29(土) 00:26:44.03 ID:cv66Qa8kO
    >>284
    そこ忘れるなw

291 : ◆O4oIDvTQAw :2008/11/29(土) 00:27:52.73 ID:MB+m1qelO

    幸せな時、幸せの訪れというのは、人によって違う。

    生まれた瞬間幸せの絶頂の奴もいれば、死ぬ時がそうだという奴もいるだろう。
    実際に、その時が訪れて、過ぎさってみないと、本当に幸せだったかどうかは分からない。

    だけど、少なくとも俺に関しては、この時間は違いなく幸せだと言えた。
    あのメスガキと会った時、不幸のどん底が始まったと思ったが、実際は幸せの始まりであったのだ。

    本当に、ゆっくりゆっくりと、年月をかけて、幸せという形を成したんだと思う。
    本当に、長かったのだ。
    長い時間だったのだ。
    この俺が、幸せと平気で口に出してしまう位の、長い時間をかけたのだ。










    しかし、積もった時間とはウラハラに――

292 : ◆O4oIDvTQAw :2008/11/29(土) 00:29:57.33 ID:MB+m1qelO




    ――ソイツは、唐突に現れた。







ナッパ「俺はナッ!……パパだと?」【後編】へつづく

引用元
ナッパ「俺はナッ!……パパだと?」
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1227793861/

 

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