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141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 11:27:39.12 ID:WNOBycVB0
    女勇者「もーあたしとしては凄い幸せな気分だったのに」

    魔王「だが……いや……意思の弱さが」ブツブツ


    女勇者「本当にこの魔王は……」クス

    女勇者「こんなにも幸せなんだから、そーぶつくさ言わないの」

    女勇者「幸せなんだから……ずっと傍にいさせて、よ?」

    魔王「……」

    魔王「言われんでもお前の手を放すつもりなど無い」


142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 11:29:48.22 ID:HqejK68pO
    事後か…


 
144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 11:33:41.72 ID:WNOBycVB0
    女勇者「あたしとしては、もっと魔王らしいところを見たかったんだけどなぁ」

    魔王「何だ、辞めた事を言っているのか」

    女勇者「そりゃあね。もっとお前の事知りたかったし」

    女勇者「南の大陸にいた時とは状況も違うからね」

    魔王「国で聞いていた俺の評判や、今までのやりとりそう違いは無い」

    女勇者「あんなやりとりで国を統治する姿を見てみたい」

146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 11:37:16.05 ID:WNOBycVB0
    女勇者「泳ぎたい……」

    魔王「諦めろ」

    女勇者「……あたしの水着姿とか見たくない?」

    魔王「無理なものは……泳げはしないが入り江なら安全かもな」

    女勇者「うわぁ」

    魔王「泳ぐのが目的なら、水遊び程度の入り江はなしだろ」

    女勇者「ごめんなさい、水遊びでもいいので海で遊びたいです」

147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 11:42:00.49 ID:WNOBycVB0
    大海蛇「キシャーーーー!!」

    魔王「……」

    女勇者「……」

    魔王「あー、いかんなあ、こんな、いかんいかん」

    女勇者「……」

    魔王「……あいつとやり合うと感電死するからな、お前が」

    女勇者「ちくしょーーー!海の馬鹿野郎ーーーー!!」

    魔王「海は悪くないっ」

148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 11:45:39.84 ID:WNOBycVB0
    剣の国

    魔王「お久しゅうございます」

    断ち切る魔王「……何をしに来た」

    女勇者(うわっ、この人凄い怖い!)

    魔王「祝・魔王辞任慰安旅行」

    断ち切る魔王「祝うな……本当に辞めたのか」

    魔王「まあな。で、今この書物について調べているんだが、ちょっとそっちの学者達に見てもらえないか?」

    断ち切る魔王「……随分古い言葉だな。俺でも解読にどれだけかかるか分からん代物だな」

    女勇者「か、解読できるんですか?」

    魔王「くやしいが、ここの国は文武両道なんだ。こいつを含めて。あ、それ故郷にあった本の写しだから少し汚れても構わんよ」

    断ち切る魔王「お前の故郷……生きては帰れないが定説の死の島にこんな物が?」

    魔王「探究心という名の食指が動いていらっしゃるご様子で」

    断ち切る魔王「いいだろう、最終的な結果の報告を条件にだ」

    魔王「任せろ……結果がでる代物であればだがな」

152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 11:58:26.60 ID:WNOBycVB0
    魔王「特産物は食い物じゃないから正直、全力では楽しめない国だ」

    女勇者「でも、やたらと武具が充実しているような」

    魔王「大陸一の軍事国家でもあるからな……これがこの国の収益の頭だ」

    女勇者「どうやって扱うか分からないような武器まで……」

    魔王「ここの兵士はやたらとトリッキーな武器を使ってくるからな……熟練度も高いから、何処の国も怖がっているのさ」

155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 12:04:09.08 ID:WNOBycVB0
    魔王「そうだった、これを渡し忘れていた」

    断ち切る「……潮風の国の土産か。気が利くな」

    魔王「……ふ、当然だ」

    女勇者(土産を渡す魔王対魔王の図とか)

157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 12:08:34.31 ID:WNOBycVB0
    女勇者「初めは仲悪いのかと思ったけど、そうでもないんだね」

    断ち切る魔王「会ってから半年も経っていないがな」

    女勇者「へえ……」

    魔王「因みにこいつが征服派のトップだった」

    女勇者「だった?」

    魔王「話してもいいか?」

    断ち切る魔王「別に話されて困る話題ではないからな」

158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 12:12:59.02 ID:WNOBycVB0
    ……
    断ち切る魔王「ふむ……一先ずはこんなものか。午後は兵士の方を見るか」

    側近「ま、魔王様。こちらの手紙が……」

    断ち切る魔王「差出人は誰だ」

    側近「それが……荒ぶる魔王でして」

    断ち切る魔王(荒ぶる……代が変わって若い魔族がなったそうだが、まだ会った事もないな)

    側近「それも、自身でお持ちしまして……いかが致しましょう」

    断ち切る魔王「何を考えているのだ、その魔王は……」

159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 12:19:24.83 ID:WNOBycVB0
    断ち切る魔王「……」

    側近「な、内容は……まさか、宣戦布告っ!?おのれ、愚かな蛮……」

    断ち切る魔王「……」ピラ

    側近「……?」

163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 12:24:48.38 ID:WNOBycVB0
    剣の国
    代表 断ち切る魔王様
                            農商国家
                            代表 荒ぶる魔王
               慰安旅行のご案内

     拝啓 歳晩の侯 断ち切る魔王様におかれましては
    益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。平素より
    格別のご愛顧を承り、誠にありがとうございます。
     さて、この度当国では、秘湯を発見した故に慰安旅行を
    行わせていただくことになりました。
     つきましては、ご多忙中誠に恐縮ではございますが、是非とも
    ご参加いただきたくお願い申し上げます。当日は、美酒や
    宴も予定しております。
     何卒ご参加賜りたくお願い申し上げます。
                                  敬具


164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 12:29:55.61 ID:WNOBycVB0
    側近「な、なんですか、これは」

    断ち切る魔王「見ての通り、慰安旅行参加を促した内容だ」

    側近「は、はは、何という無礼な男だ、荒ぶる魔王!」

    側近「魔王様に対し、このようなふざけた文を自ら届けるなど!」

    側近「魔王様!今すぐ相応の対応を取りましょう!」

    断ち切る魔王「そうだな……」

167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 12:36:02.05 ID:WNOBycVB0
    断ち切る魔王「お前が荒ぶる魔王か」

    魔王「……という事は、貴方が断ち切る魔王と」

    断ち切る魔王「如何にも。話には聞いていたが、確かに若い魔王だな」

    魔王(大柄ではないが……大男だった先代とは比べ物にならない威厳が……)

    断ち切る魔王「さて……つまらない物ではございますが、我が国の秘蔵の酒、『大切断』を……」

    魔王「!これはこれはご丁寧に……こちらもお帰りの際にはお土産をご用意しております。ささ、こちらへ」

168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 12:42:58.93 ID:WNOBycVB0
    断ち切る魔王「ふう……こんな所に温泉が湧いていたとは」

    魔王「周辺を調査させていた兵士が発見致しました……どうやら他国もあずかり知らぬ様で」

    断ち切る魔王「いい加減腹を割ったらどうだ……何が目的だ」

    魔王「……」

    魔王「……ふ、ふふ」

    魔王「何処までが演技だったかは分からないが、あんたが土産物を持ってきて……」

    魔王「この湯に入った時点でもう終わりなのだよっ!!」

    断ち切る魔王「ほう……?」

169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 12:49:32.54 ID:WNOBycVB0
    魔王「さあ、喰らってもらおうか!」

    魔王「我が国の地酒、『鳥の涙』!」

    魔王「そして特産の、誇れるチーズ!」

    魔王「で作った、スモークチーズをっ!!」

    断ち切る魔王「……っ」ざわ ざわ

170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 12:54:13.57 ID:WNOBycVB0
    断ち切る魔王「風の噂で聞いていたが……」

    断ち切る魔王「やはり道理の分かる奴だな」

    魔王(あれぇ?噂がおかしいのか……こいつの道理がおかしいのか)

    断ち切る魔王「……そのおかしい道理に投球したのは誰だ」

    魔王「大陸はESPが多くて困るぜ」

173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 13:02:31.29 ID:WNOBycVB0
    魔王「まあ、何だ。今まで協議の出席がすれ違っていて、うまく会えなかったからな」

    魔王「こっちも風の噂でどういった人物かは知っていたが」

    魔王「征服派を推し進めるような人柄には思えなかったんだ」

    断ち切る魔王「だから、もう直球でいいじゃないか、と」

    魔王「やべぇ一字一句読まれてる」

174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 13:09:08.41 ID:WNOBycVB0
    断ち切る魔王「……風呂で語るには上せてしまうな」

    魔王「……結構時間も経っているな」

    断ち切る魔王「仕方が無い話は……」

    魔王「卓球に致しますか?マッサージに致しますか?それとも、」

    断ち切る魔王「宴だ」

    魔王「それを即答できる魔王って俺以外にいるもんだなぁ」

176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 13:13:49.28 ID:WNOBycVB0
    断ち切る魔王「流石は農商国家だ……素晴らしい料理の数々」

    魔王「お褒め頂き光栄に存じます」

    断ち切る魔王「おっと杯が空いているではないか」

    魔王「いやはやかたじけない、おっとっと……」


    侍女(魔王様が凄い生き生きしている)

    兵(というより、うちの魔王様と互角に渡り歩いている!)

177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 13:18:34.10 ID:WNOBycVB0
    断ち切る魔王「さぁて……そろそろ本題に入るか?」

    魔王「いやぁ……はっは、だいぶ呑んだ後に真面目に話すとか」

    断ち切る魔王「貴様の言う事など聞く耳持たぬわ。とっとと聞け」

    魔王「意外とこの人も酔っていらっしゃるご様子で」

178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 13:23:03.02 ID:WNOBycVB0
    断ち切る魔王「征服というより、こちら側で統治したいと考えている」

    魔王「面倒を見てやる、とな」

    断ち切る魔王「理由の前に、先ずはお前が人間の大陸に行った事で各国に出した報告書にある」

    断ち切る魔王「人間を襲う魔物の王について話しておこう」

    魔王「知っているのか?!」

    断ち切る魔王「我が国は……恐らく水の都市と並ぶ歴史がある」

    魔王「つまり……最古の国に部類されるのか」

180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 13:28:08.42 ID:WNOBycVB0
    断ち切る魔王「奴らは定期的に復活しては、その魔力で周囲の生き物を魔物化している」

    断ち切る魔王「遥か昔、慈しむ魔王の暴走後、派閥が生まれ」

    断ち切る魔王「人間の大陸への渡来が禁止されるまでの間、我が国は人間に干渉していた」

    断ち切る魔王「先祖代々、魔物の王を討伐していたんだ」

    魔王「本当か、それ……」

    断ち切る魔王「今も昔、の話だがな」

    断ち切る魔王「だから、逐一討伐するのは面倒だから、統治しようという考えの下、征服派でいるのだ」

182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 13:40:39.67 ID:WNOBycVB0
    魔王「ちなみに……魔物の王の出現に関する情報は」

    断ち切る魔王「恐らく転生を繰り返しているのでは、と考えられている」

    魔王「周期的に、常に魔物の王に?」

    断ち切る魔王「まあ、仮説程度で証拠も何も無いがな」

    魔王「……これが真実か」

    断ち切る魔王「そうだ。それが真実だ」

    魔王「なんて素晴らしいんだろう」

    断ち切る魔王「……は?」

    魔王「いや、何でもない」

183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 13:44:14.13 ID:WNOBycVB0
    魔王「なあ……共存派にならないか?」

    断ち切る魔王「何故?」

    魔王「共存派と征服派の摩擦で何百年と今の状態が続いている」

    魔王「もし、水の魔王と断ち切る魔王が手を組んだら」

    魔王「他の征服派も潰えるだろう。多少の争いはあるが、共存派となるのも時間の問題だ」

185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 13:49:39.34 ID:WNOBycVB0
    断ち切る魔王「それによって、俺に何の利益が?」

    魔王「あんたは争いそのものを望んじゃいない。征服派であったにせよ」

    魔王「それに平和の為の統治をしたいんだろ?」

    魔王「俺もあんたも……水の魔王も、持っている志は大して変わらない」

    魔王「あんたは得るのさ。共存派のトップとの絆と、共存派全体の助力を」

187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 13:53:27.08 ID:WNOBycVB0
    女勇者「……え、終わり?」

    魔王「その後了承されてからは、仕切りなおしてか〜んぱい」

    断ち切る魔王「高鳴る脈動、跳ね上がるテンション、あの月夜に向かってマラソンだ」

    女勇者「魔王が悪酔いとか質悪すぎる」

    魔王「真冬だったから御互い風邪をひいた」

    断ち切る魔王「同じ摩り下ろしたリンゴを食った仲だ」

192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 14:16:56.65 ID:WNOBycVB0
    ……
    断ち切る魔王「これが結果だ」

    魔王「おおう、助かる。これでやっと美味い物を食いにいけるぜ」

    断ち切る魔王「中身は読んでいないから、最後にじっくりと聞かせてもらうぞ?」

    魔王「好きな物は最後に食べるタイプですか」

    断ち切る魔王「満遍なく食していくのがテーブルマナーだ。何より」

    断ち切る魔王「つまみ食いよりもしっかりと調理されたものの方が美味いのだ」

    女勇者「これが魔王の会話か……」

194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 14:26:49.72 ID:WNOBycVB0
    魔王「……」

    断ち切る魔王「どうかしたか?」

    魔王「すまん、しばらく勇者を預かっていてもらえないか。間に合わなかったら二人で水の都市へ!」

    女勇者「え……ちょ!」

    魔王「一旦島に帰る、確かめたい事がある。よろしく頼む!」

    断ち切る魔王「返答も聞かずに行きよって。よほど重要な事を思いついたらしいな」

    女勇者(この人つかみ所が無いのに、二人っきりにされるとかっ)

195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 14:31:39.12 ID:WNOBycVB0
    「全てを解読できた訳ではないので、辻褄が合う仮説を記しておきます」
    「これは恐らく転生や輪廻について書かれた物と思われます」
    「地獄と地上の絵については、術を施したい相手には天国がありえない、という判断であるのでしょう」
    「どの時代にも天国は存在しないという思想はありませんでしたので」
    「そして、大人と子供の絵については」
    「死後の世界、地獄を飛ばして、転生後ある程度自分一人で生きていく事が可能な子供」
    「その過程を飛ばして、大人から子供へと成すのが、この研究の内容と思われます」

    「魔方陣は術の完成までのメモでしょう。天秤については」
    「恐らく、先に記した地獄を飛ばす上での何かの考えではないでしょうか」

    魔王(……何を意図して行ったんだ、この男は)

197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 14:37:27.53 ID:WNOBycVB0
    魔王「日記……日記の山は、これかっ」

    魔王「くそ、もうちょい文字が読めれば……」

    魔王「……死の整理はつかず……希望をもった……禁忌だとしても、行いたい……」

    魔王「……肝心な内容は抜けているが、これだけ分かれば十分だ。もう、パズルの図面が分かっている」

    魔王(根拠となる証拠が残ってはいないが……いや、まだ天秤の謎も残っているのか)


199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 14:43:44.47 ID:WNOBycVB0
    魔王「……っ」

    魔王(急に腕が……)

    魔王「く……くそ」ガチャガチャ

    魔王「刺青みたいな、痣が……」

    魔王「っ!痛みが、増してっ」

    魔王「……思い、出した……思いだした、ぞ」

201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 14:55:00.69 ID:WNOBycVB0
    ……
    ハルピュイア「……ついに知ってしまったかい?」

    魔王「お陰様でな……これが凡そ全ての真実か」

    ハルピュイア「……そう、それが真実だ」

    魔王「お前達はどうなるんだ……?」

    ハルピュイア「術があるうちは私達も生き永らえる」

    魔王「酷い話だ。誰の意思も尊重されなさそうだ」

203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 15:04:52.70 ID:WNOBycVB0
    ハルピュイア「そ、そんな事は……」

    魔王「気休めが欲しいわけじゃない。御互い被害者のようなものだ」

    魔王「それに、貴方には感謝している」

    魔王「あの時、共に過ごした日々がどれほど幸福な事だったか。今でも覚えている」

    魔王「……だが、困ったな」

    魔王「もう、時間がないな」

204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 15:07:07.17 ID:gb1d3z+OO
    女勇者を泣かせたら許さないんだからッ!

205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 15:10:32.12 ID:WNOBycVB0
    魔王「……俺の言葉じゃ、貴女には届かないだろうが」

    魔王「今まで、本当にありがとう」

    魔王「貴女のお陰で、俺はここまで生きてこれた」

    ハルピュイア「よしなさいな。坊やがそんな生真面目なんて似合わないよぉ」

    魔王「俺なんかよりよっぽど被害者なのに……本当に酷い話だ」

    ハルピュイア「そうでもないねぇ」

    ハルピュイア「坊やと過ごしたあの日々。あたしにはかけがえの無い、幸せな時間だったよ」

    ハルピュイア「あたしからも……ありがとう」

207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 15:14:15.96 ID:WNOBycVB0
    魔王「俺は……いや、何でもない」

    魔王「もう、行くな」

    ハルピュイア「ええ、そうしなさいな」

    魔王「……」

    ハルピュイア「……」

    魔王「また会おう。さようなら」

    ハルピュイア「そうだねぇ……その時まで、さようなら」

208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 15:20:12.96 ID:WNOBycVB0
    魔王(協議まで少し日があるが……水の都市に来ているだろうか?)

    女勇者「あー来た来た!遅ーーい!」

    魔王「遅くなってすまなかったな」

    断ち切る魔王「全く、お陰でこの娘と何回デートをした事か」

    魔王「……」ピク

    断ち切る魔王「……」

    女勇者「……妬いてる?妬いてるの?うわぁ、ほんと魔王って可愛い所あるなぁ」

    断ち切る魔王「だから言っただろう、まだまだ中身は子供だと」

    魔王「お、お前らぁ……」

209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 15:27:48.66 ID:WNOBycVB0
    女勇者「……あれ?どうしたの、何か脂汗掻いてるっぽいけど」

    魔王「急いで飛んできたからだ……大変なんだぞ、飛ぶという行為そのものは」

    女勇者「ふ〜ん……」

    断ち切る魔王「何にせよ、少し休んだ方が良くはないか?」

    魔王「ああ……流石に無理をし過ぎた。俺は先に休ませてもらう」

    魔王(流石に身がもたんからな)

211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 15:32:46.35 ID:WNOBycVB0
    断ち切る魔王「もしや、体調が優れんのかもしれないな」

    女勇者「え……うわ、悪い事したなぁ」

    断ち切る魔王「あの本の真相を確かめに行ったのだろうから……」

    断ち切る魔王「よほど酷い内容だったのかもしれないな」

    女勇者「……どうしたらいいんだろう」

    断ち切る魔王「しばらく距離を置いておけ。落ち着いたら、自ずと寄ってくるだろう」

212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 15:37:45.27 ID:WNOBycVB0
    魔王「……」

    魔王「この数日、ずっと温存に努めていたのに、一向に楽にならんとは」

    魔王「これはもう呪いだな……いや、元から呪いか」

    魔王「協議の日か……あいつが部屋に来なくて助かった」

    魔王「……残り僅かな時間さえ、あいつと共に居られなかったか」

    魔王「しんどいが行くか……」

213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 15:43:40.89 ID:WNOBycVB0
    魔王(……歩くのすらきつい)

    側近「遅い!魔王様、貴方で最後で……ど、どうなされたんですか?」

    側近「こんな顔色は見た事が……体調が優れないようでしたら」

    魔王「構わん……協議の間だけだ」

    側近(この人がこんな顔するなんて……)

215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 15:50:40.44 ID:WNOBycVB0
    女勇者「ど、どうしたんだよ……この間より、酷くなっていないか?」

    女勇者「何があったんだ、病気なのか?無理してここに居なくても……」

    魔王「そうしたいが……やらなきゃいけない事が残っているからな」

    水の魔王「……事情は分かりませんが、無理をなさる事は」

    魔王「そうも言ってられない……だから、伝えたい事だけ先に言わせて欲しい」

217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 16:01:02.19 ID:WNOBycVB0
    魔王「まだ知らない者もいるだろうが、剣の国は共存派になった」

    ザワザワ

    魔王「この事については、水の魔王にも伝えており、今後については二人が中心となるだろう」

    魔王「詳しい事は二人から聞いてくれ。後、俺は魔王を辞めた。事実上、その報告に来た一魔族だ」

218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 16:07:05.01 ID:WNOBycVB0
    魔王「それと……」ガチャガチャ ガチン

    女勇者「……何だよその痣、呪いなのか?大丈夫、なのか?」

    魔王「これも含めてこれから話す事は、我々魔王にとっても常軌を逸する話だ。できれば、静かに全て聞いて欲しい……」

    魔王「俺は北西の島、巨大な生き物ばかりの弱肉強食の世界、死の島出身だ」

    魔王「そこにある本で、謎の魔方陣による実験を記録した本がある」

    魔王「最近、これを調べていたんだが……しょーもないお話に辿り着いてしまったんだ」

    魔王「強制的に、転生する研究だ」

219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 16:15:40.92 ID:WNOBycVB0
    魔王「そこには大人から子供に矢印が伸びている絵、丸い輪の上下に地上と地獄が描かれた絵」

    魔王「幾つもの魔方陣と天秤で心臓と羽を測る絵があった」

    魔王「剣の国の学者は、それが大人が死んで、死後の世界を向かえ、そして転生して少年に育つ」

    魔王「その過程をすっ飛ばして、大人から子供に成る為の研究じゃないか、と言っていた」

    魔王「見ての通り、俺はきつい状況だ。皆、これから俺が転生するのだろうと思っているだろう」


    魔王「……どうやら俺は、既に転生した姿らしい」

221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 16:20:23.92 ID:WNOBycVB0
    魔王「俺の同族がいない事、親がいない事、親がいた記憶がない事」

    魔王「大陸にはいない種族、ハルピュイアが死の島にいる事」

    魔王「現農商国家の初代建国者慈しむ魔王……彼の、翼を持つ眷属の事、彼がその種族最後の一人だった事……」

    魔王「そして死の島に張り巡らされた巨大な魔方陣と、その研究資料」

    魔王「転生の術は、慈しむ魔王その人にかけられたんだ」

223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 16:30:21.73 ID:WNOBycVB0
    「これを思い出す時、自身の崩御が始まっているだろう」

    「何も分からずに逝かせるのは忍びないと思った」

    「お前は慈しむ魔王である私の転生した姿、もう一人の私だ」

    「無理に転生しているのだ、輪廻からも弾き出された存在」

    「長く存在し続ければ、周囲にも影響を与えるだろう……」

    「だから、目的が達せられるか、道を誤った時に魂と肉体が崩御するように仕掛けた」

    「私は世界と自分に絶望していた。それでも、世界には……未来にはきっと希望があると思ってしまった」


224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 16:32:29.15 ID:WNOBycVB0
    「だが、自分の目で見るのは恐ろしかった。故に、自分の記憶の全てに鍵をかけて転生しようと考えた」

    「平和な世を望んだ。作り上げたかった。その意思をお前に託そう」

    「もし、お前が心からこの世界が平和になっていくと確信した時は、私の望みが適ったものとし」

    「もし、お前が破壊の道に走った時は、私の絶望が再び形になったものとし」

    「お前は崩御するだろう」


226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 16:37:05.21 ID:WNOBycVB0
    「勝手な話で申し訳ないとは思う……だが、私にはこれをせずにはいられない」

    「これはお前が目を覚ます前の記憶として、崩御が始まった際に思い出すように設定した」

    「だから、これから生きるお前に言葉を残しても、覚えてはいまい」

    「だが……せめて、お前はお前が信じる道を歩いていって欲しいと思う」

    「そしてこれが……」


227 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 16:38:52.77 ID:WNOBycVB0
    魔王「私の望んだ結末で見る事を願っている……」

    魔王「慈しむ魔王からのメッセージがこれだ……酷い話だ」

228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 16:40:28.17 ID:WNOBycVB0
    魔王「さあ、俺のお話は終わりだ。少しなら質問を受け付けるぞ」

    断ち切る魔王「俺自身は知っているが他者の代弁をしよう。お前は何故、平和になると確信した」

    魔王「派閥のパワーバランスを考えると、剣の国と水の都市が頭だ」

    魔王「その二つが手を取り合うんだ。多少意見の違いはあるだろうが、両者共に大人だから、うまくやっていくだろう」

    魔王「それに、他の国では征服派として行動、存続していく事すら無理だ」

233 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 17:41:53.70 ID:WNOBycVB0
    魔王「だから、そう遠くはない未来に平和が来ると考えた。他にはあるか?」

    水の魔王「身体の調子はどうなのですか?」

    魔王「……正直、もう出歩くのも無理だ。悪いがこの国で死なせてもらいたいんだが、いいだろうか?」

    側近「何を仰っているんですか。貴方ほどの魔王は今だかつていないのに……貴方はまだ、これからなのに」

    水の魔王「その通りです。貴方にはまだ成すべき事も……」

    魔王「無理を言うな。これから朽ちるまでの間、寝たきりを決め込むつもりなんだからな」

234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 17:47:21.14 ID:WNOBycVB0
    断ち切る魔王「お前は我々二人に何をさせたいのだ」

    魔王「前にも言ったがお前も水の魔王も俺も志は同じだ」

    魔王「なら、俺がいようといまいと、取られる舵は変わらない……二人の信じる道を歩いていけ」

    魔王「……やっぱもう無理だ。お暇させてもらう」

236 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 17:56:25.74 ID:WNOBycVB0
    女勇者「……この国に来た時、あたしはお前の所に行くべきだったのか」

    魔王「そんな事をすれば、協議どころじゃない騒ぎにしていただろう」

    女勇者「それは……うん、そうだけど」

    女勇者「だけどこんな事って、酷すぎるよ」

    魔王「どうだろうか」

    魔王「俺が今いる事を考えると、不思議に酷いとは思えないな」

    魔王「巻き込まれて、俺が死ぬまで生き続ける眷属達の方がよっぽど酷い話だ」

237 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 18:02:31.59 ID:WNOBycVB0
    女勇者「……ずっと、傍にいていい?」

    魔王「俺にはもう、拒否する権利も拒む力も残ってはいないだろう」

    魔王「お前が望むように、できるだけ悔いの無いように動いてくれれば幸いだ」

238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 18:03:22.83 ID:Nj+rcrrJi
    なんか悲しい

239 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 18:03:57.45 ID:WNOBycVB0
    女勇者「ほら、魚介類のスープ作ってきたよ」

    魔王「お前が作ったのか?」

    女勇者「変、かな」

    魔王「いや、凄く嬉しいよ。ありがとう」

241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 18:14:53.39 ID:WNOBycVB0
    女勇者「……」シャリシャリ

    魔王「流石、というべきか。随分とリンゴの皮を綺麗に剥くな」

    女勇者「まあね」シャリシャリ

    女勇者「はい、完成っ」

    魔王「……いつつつつ。上半身、起こすのもきつくなってきたな」

    女勇者「……」

242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 18:21:58.34 ID:WNOBycVB0
    女勇者「……魔王?」

    魔王「……ああ、すまん、気づかなかった」

    女勇者「具合、悪いのか?」

    魔王「いや……万感の思いに浸っていただけだ」

    魔王「短いようで長かった……色々な事があったよ」

    女勇者「話して欲しいけど、辛いよね」

    魔王「いや、喋るだけなら平気だ。まずは島暮らしの頃でも話すか……」

243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 18:29:59.68 ID:WNOBycVB0
    女勇者「……」

    魔王「……なんだその顔は」

    女勇者「お前の変人っぷりが幼少の頃に決まっていたんだな」

    魔王「失礼な奴だな」

    魔王「農業は立派な職業だぞ」

    女勇者「魔王なのにそういうところが、もうね」

245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 18:38:22.78 ID:WNOBycVB0
    魔王「大陸に渡ってからは大変なものだった」

    魔王「一時期狂っていたようなものだ。無駄な略奪に怒り覚え、賊を切り伏せていた」

    魔王「賊狩りではなかった。一方的な殺戮をしていただけだ」

    女勇者「……それは、魔王が自分の考えをどう示すか」

    女勇者「身の振り方が分からなかっただけだよ」

    魔王「……そうだな、あれでもまだまだ幼かったんだ。俺は」

    魔王「世界は歪んでいるとか本気で思っていたものだ。思い出すのも恥ずかしい話だ」

246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 18:44:22.33 ID:WNOBycVB0
    魔王「圧政を行っていた魔王を討ち、俺自身が魔王になってしまって」

    魔王「侵略してきた他国を落としもした……」

    魔王「その時だな。世界は歪んでいるのではなく」

    魔王「全ての者が歪みや悪意を持っている」

    魔王「自分の中のそれと、どう向き合えるかが肝心だという事に気づいたのは」

247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 18:51:15.33 ID:WNOBycVB0
    女勇者「それからしばらくして、あたしと出合った、と」

    魔王「実際には何年も間があるがな」

    女勇者「……気になっていたんだけど、いくつなの?」

    魔王「四十くらいまでは数えていた」

    女勇者「……やっぱ魔王って、寿命が長いものなんだ」

250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 19:00:40.15 ID:WNOBycVB0
    女勇者「はい、桃」

    魔王「……すまないな、起こしてもらって」

    女勇者「そういう事言わない。ほら、あーん」

    魔王「……美味いな」

    女勇者「うん、とびっきりいい奴買って来たんだ」

    魔王(もう、本当に時間が無いな)

252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 19:05:00.27 ID:WNOBycVB0
    水の魔王「荒ぶる魔王の容態は……」

    女勇者「……もう、上半身を自力で起こす事もできないです」

    女勇者「腕の痣も……全身に」

    水の魔王「彼は、貴女と共にいる事を選びました。貴女に全てを託します」

    水の魔王「全ての魔王に代わり……彼を看取ってあげて下さい」

    女勇者「……はい」

253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 19:11:02.76 ID:WNOBycVB0
    魔王「勇者か」

    女勇者「……ねえ、今日は一緒に寝てもいい?」

    魔王「構わんよ」

    女勇者「……いつもなら少しは渋るのに、どうかしたの?」

    魔王「目も見えんし、聴力も落ちてきた」

    魔王「今日が山かもしれないな……」

254 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 19:18:34.11 ID:WNOBycVB0
    女勇者「そんな事、聞きたくない」

    魔王「……それでも、伝えておきたかった」

    女勇者「……」モゾモゾ

    魔王「上に乗っかるな、寝苦しいぞ」

    女勇者「離さない。何が起こるかは分からないけど……お前を絶対離したりしない」

    魔王「……」

    女勇者「だから、起こして。前みたくさ……おはようって言って起こしてよ」

    魔王「ああ……分かったよ。おやすみ……勇者」

    女勇者「うん……おやすみ、魔王」

256 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 19:25:26.33 ID:WNOBycVB0
    ……
    魔王の手を握り締めていたはずの手の中には、しわくちゃになったシーツが握られていた。
    ただ一人、うつ伏せで眠っていたようだ。

    女勇者「いくら、体調が良くなかったからって、いきなり出歩くなよなぁ……」

    女勇者「……早く戻って来いよ」

    女勇者「起こして……くれるんじゃなかった、のかよ……」

    女勇者「嫌だよ……こんなの……魔王」グス

257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 19:28:52.37 ID:oHFflJauO
    泣かすな魔王!

259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 19:33:17.82 ID:WNOBycVB0
    ……

    女勇者「こんな所にいたんですか」

    側近「勇者様こそ、このような所で何を?」

    女勇者「あいつだったらさ、湿っぽく送り出されるの嫌がると思って」

    女勇者「せめてあたしは、笑顔でさ……送り……グス、はは、あたしには難しいや」

    女勇者「表情を崩さないでいられる側近さんが羨ましいや」

    側近「あの人の為に涙を流しているとか思われるのは非常に癪なので」

    女勇者「それは流石にひねくれ過ぎでは」

260 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 19:38:19.76 ID:WNOBycVB0
    側近「そんな訳で後で人知れず泣こうと思います」

    女勇者「宣言するのもどうかと……」

    側近「まだ泣いてませんからね。それに泣いた事実を誰も知らなければ泣いていないのと同じです」

    側近「……どう足掻いても、悲しんでいるのを隠しきれはしませんがね」

    女勇者(確かに沈んでいる様子は垣間見えるけど……)

261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 19:46:43.21 ID:WNOBycVB0
    女勇者「でも、仮にも家臣なんですから、他の魔王が集まる葬儀くらいは出た方が」

    側近「将来を誓い合った貴女もですよ」

    女勇者「あー……だからこそ、かな」

    側近「御互い苦労させられる人に惹きつけられたという事です」

    女勇者「なるほど……」

    城下町に鐘が鳴り響いた。
    葬儀の終わりを告げる音の後も、人々の嗚咽は止む事が無かった。

263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 19:53:09.40 ID:WNOBycVB0
    ……
    女勇者「魔王は死んだ……」

    女勇者「あれからもう半年」

    女勇者「やっと全ての国が共存派として動き出した」

    女勇者「あたしは今、農商国家の一人の騎士として、事実上魔王となった側近さんと駆け回っている」

265 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 19:57:22.96 ID:WNOBycVB0
    女勇者「少しずつではあるけども、人間の大陸にもアプローチをかけている」

    女勇者「まだまだ前途多難だけど、きっといい未来が待っていると思う」

    女勇者「彼が何処かで見ていると思うから……」

266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 20:00:21.65 ID:WNOBycVB0
    女勇者「それじゃあ、あたしは休ませてもらいます」

    側近「はい、お疲れ様です。明日は御互い休みなのでゆっくり休みましょう」

    女勇者「もう今日だけどもねぇ……」

    側近「ですねぇ……」

    女勇者「それでは、失礼します」

267 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 20:03:19.89 ID:WNOBycVB0
    女勇者「さぁて、ゆっくり寝ますか」

    女勇者「……明日とは言わないけど、またおはようって起こして欲しいな……」

    彼がくれた数少ない贈り物。その中で唯一洒落たペンダント。
    今も整理がつかないあたしは、毎晩彼に語りかけて眠る。明日もその次も。

    女勇者「おやすみ……魔王。あたし、早く平和に出来るよう頑張るから、見ていてね……」

    明日もその次も生きていこう。この世界の明るい未来の為。
    彼のいないこの世界を守る為。

    何時か終わるその日まで。














270 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 20:14:01.88 ID:WNOBycVB0
    「……」

    「……っ」パチ

    魔王(これは……やはりこうなったか)

    魔王(痣も痛みも消えている……服装は寝巻きのままか、格好はつかんな)

275 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 20:20:22.52 ID:WNOBycVB0
    魔王(わざわざメッセージを残したり、自分の思うように生きろと言ったり)

    魔王(優柔不断な性格が見て取れる……だからこそ迷ったんだな)

    魔王(自分とは別の自分、その人格を自分の意思だけで消滅させるかどうかを)

    魔王(あの天秤の絵……正に審判だ)

    魔王「生かすべきか否か……」

277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 20:26:49.08 ID:WNOBycVB0
    「何故だ……何故彼女が殺される」

    「我々が何をしたというのだ……こんな、世界ならば……!」

    魔王(前世様の言う鍵付きの記憶……その一部か)

    「私は何という事を……」

    「民を……土地を……同胞を……」

    「私は……何がしたかったのだろうか……何を成したかったのだ」

278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 20:31:00.25 ID:WNOBycVB0
    魔王「こんな鑑賞会の為に俺を生まれさせたのか!」

    魔王「いい加減姿を見せろ、慈しむ魔王!」

    慈しむ魔王「……それほど望むのなら始めようか」

    慈しむ魔王「お前が世界に必要とされるほどの人物かどうか。それを見定めさせてもらう」

    慈しむ魔王「あの時代……そして今の時代、お前なら私の苦悩にどう答えを出す」

    魔王「簡単な話だ……答えを求めるなど酔狂だ」

279 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 20:31:51.39 ID:XbKc/VxX0
    天秤ってここのことなのね

280 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 20:36:03.16 ID:WNOBycVB0
    魔王「この話題に答えがあるとしたら、如何に自分の為に生きる事ができるか」

    魔王「あんたがエゴイストじゃなかっただけの話さ」

    慈しむ魔王「それが答えか」

    魔王「……あんたも元は王族じゃないとは思うが、それでも俺とは別の暮らしだったんだろう」

    魔王「どれだけ寵愛と慈しみをかけられて来たか……」

    魔王「俺だって受けてきた。あんたの眷属達から」

    魔王「だがそれでも、俺はいざという時は一人で生きるしかなかった」

    魔王「生きる手助けはしてもらえても、生かしてはもらえなかった」

281 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 20:41:08.33 ID:WNOBycVB0
    魔王「だから酔狂なのさ。他者に答えを求めた所で、同じ環境で育っていない自分が同じ決断をできたとでも?」

    魔王「仮に出来たとしても、決断しなかった時よりかは小さいであろう後悔に苛まれるだろう」

    魔王「あんたみたいな優柔不断な奴ならな」

    魔王「で、ここからどうしようもなく、答えを求めるあんたに送る俺の言葉だ」

    魔王「……この術中にしか残らない、あんたの自我に言っても今更だがな」

    魔王「てめえで見つけろ、そんなもん」

283 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 20:46:00.99 ID:WNOBycVB0
    慈しむ魔王「……なに?」

    魔王「確かに残念ではあるが……今後生き続けられるかなんてものはこの審判の」

    魔王「あんたとの話し合いのおまけみたいなものだ」

    魔王「取り巻く環境が違ったかもしれないが、歯に衣着せずに言わせて貰う」

    魔王「もっと多くの国を見ろ、何故自分が抜けても問題ないように国を動かさなかった」

    魔王「何故、想い人を第一に考えてやらなかった」

    魔王「何故……他者が内包する悪意を知らずに生きていたんだ」

285 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 20:51:55.29 ID:WNOBycVB0
    魔王「俺があんたに言える事はこれだけだ」

    魔王「全く……あんたは何年生きた。俺はそのうちの何割生きた?」

    魔王「俺は他国の魔王を殺めた時に、この答えを出せただろうよ」

    魔王「そんな程度の時間で出した答えだ。満足か、あんたは」

    慈しむ魔王「……不満だらけだ」

    慈しむ魔王「だが、それがお前の答えなら受け取ろう……審判を下す」

287 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 20:58:36.40 ID:WNOBycVB0
    ……
    「全くいつまで寝ている。さっさと起きろ」

    女勇者「う〜ん……昨晩遅かったんだよ……もう少し……」

    「もう日が傾き始めているぞ……」

    女勇者「今日は……ゆっくり……寝るぅ」

    「確かに時間はかかったが、起こせと頼まれて来たんだぞ……」

    女勇者「ふえぇ……?」

    「さあ、とっとと起きろ」

    「おはよう」


     女勇者「魔王は死んだ……」 完

289 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 21:00:07.19 ID:vU1oubxM0
    乙です!
    ハッピーエンドd(^_^o)

291 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 21:04:41.62 ID:/JusmPlj0
    乙乙
    話作り込まれてたし読みやすかった


292 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 21:05:11.56 ID:5O3HFcXbO
    おつ

    感動をありがとう


296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 21:20:57.88 ID:9pciGwglO
    乙!
    良かった…
    本当に良かった!

298 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 21:24:14.35 ID:FD53gSzc0
    よつし今度こそ>>1超乙!
    久しぶりに神作(ry

    もう俺の脳内は魔王と女勇者の息子編を妄想し始めてる
    それはともかく>>1お疲れ様


300 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 21:25:44.54 ID:hWIkfnW8O
    ハッピーエンド!やっぱいいね
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女勇者「魔王は死んだ……」おしまい

引用元
女勇者「魔王は死んだ……」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1248534549/l50
 

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