487 :◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/11(水) 20:49:18.49 ID:nWMC.kAO
第二話「狼達の街」



【4月8日PM・8:40】



タラオ「なんだか知らないけどカツオ兄ちゃんからの臨時収入です〜♪
またカツオ兄ちゃんの後をついていくです〜♪」


夜は良い……


こんな小さい僕でも『王』になった気分がするから……です。


昼間は賑やかなこの通りも今じゃすっかり閑古鳥が鳴いてるです。


まるで僕だけがこの世界を闊歩しているかのようです。
 

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のび太「これが…スタンド…」

カツオ「これが…スタンド…」【第1話】



 
488 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/11(水) 20:57:53.55 ID:nWMC.kAO
タラオ「夜の風が気持ち良いですゥ〜〜」


風が優しく僕の髪をなびかせるです。

空にはキラキラと星が瞬いて、それを僕は見ていたんです。

考えながら。




タラオの心にはある不安があった。

それは誰しもが一度は…いや、一生考えるであろう事。


タラオ「……何で僕は生きているんですかね〜〜…」


タラオはこの歳にして既に『生きる』事について、悩み、考えていたのであるッ!

夜に浮かぶ『星』が消えるたびにタラオは思う!

タラオ「僕もお星様のようにいつ死ぬか分からないんですよね……」

489 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/11(水) 21:04:09.73 ID:nWMC.kAO
この『時代』という抗えない『悪夢』が産んだタラオは、70年近く生きてきた老人のように、時々自分の『人生』について考えていた。

タラオは、この『悩み』を誰にも言った事は無い。

言う必要が無いし、言ったとしても自分の望む答えを教えてくれる人間など周りにはいないと思っていた。


タラオは考えるッ!

人から教わる事が出来ないなら自分で見つけるしかないとッ!

490 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/11(水) 21:08:46.30 ID:nWMC.kAO
タラオ「あ……」


家の前にママがエプロン姿で立っているです。

みっともない姿で出ないでほしいですね。周りで自分のママがエプロン姿で突っ立ってたなんて冷やかされたらたまったもんじゃないです。


サザエ「………あッ!!タラちゃん!!!」


サザエはタラオを見つけると物凄い力で抱きしめた。


タラオ「く…苦しいです……」

サザエ「心配したのよッ!?ああ…良かった、無事で…!」

491 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/03/11(水) 21:10:00.59 ID:WQXWaI6o
支援
492 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/11(水) 21:14:08.01 ID:nWMC.kAO
〜磯野家〜


限界でママと感動(笑)の再開を終えた僕は、ママの手に引かれ皆が待つ『ちゃぶ台の間』に行きましたです。


マスオ「タラちゃん!!良かったよォ〜〜、何事も無くて」

マスオはどうやら『ちゃぶ台の間』で座りもせず、タラオの帰りを待っていたようで、タラオの姿を見るとへなへなと座り込み、タラオの頭を撫でた。

タラオ「ごめんなさいです」
493 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/11(水) 21:21:52.67 ID:nWMC.kAO
サザエ「本当に困った子ね……
『警察には伝えないでほしい』って書いた紙があったから、一人で犯人のアジトに乗り込んだのかと思ったわよ」

クシャクシャと、サザエはタラオが残した紙を手で丸めながら言った。


マスオ「タラちゃん、リッグスみたいだねぇ〜〜〜!!」

サザエ「あなたッ!!」

波平「ハッハッハッハッハ!!!マスオ君、タラちゃんは『リーサル・ウェポン』は古すぎるよ。
サザエも、タラちゃんが無事に帰ってきたんだから良いじゃないか」

マスオがサザエの一喝で落ち込んでいるのを、波平の乾いた笑いが吹き飛ばした。

494 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/11(水) 21:25:27.94 ID:nWMC.kAO
タラオ「ジャックならわかるです♪
バーン!バーン!バーン!」

タラオは指で作った銃でマスオを撃った。

マスオ「ぐ、ぐえぇぇ〜〜〜〜!!!さすがリッグス…射撃の腕はピカイチだ……グフッ」

サザエ「あなたッッ!!!!」

波平「ハッハッハッハッハ!!!将来有望じゃのォタラちゃんは!」

495 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/11(水) 21:29:16.76 ID:nWMC.kAO
ワカメ「ねえ、タラちゃん、こんな時間にどこに行ってたの?」

艶やかな天然パーマのワカメが、サザエとマスオのやり取りを気にせずタラオに聞いた。


タラオ「カツオ兄ちゃんと学校に行ってたです♪」


ワカメ「ええぇ!?」


マスオ「ちょ…ワカメちゃん、それ僕のセリフ…」

ワカメ「お兄ちゃんと何してたの??」

タラオ「追いかけっこしてたです♪」

496 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/11(水) 21:32:46.40 ID:nWMC.kAO
サザエ「追いかけっこォ!?カツオったら…忘れ物したから取りに行くとか行ってたくせに遊んでるなんて…」

波平「アイツは本当に困ったやつじゃな!!!このワシの後を継ぐ者としての自覚が足りんッ!!」

マスオ「?」

タラオ「後を継ぐってなーんですか?」

波平「おっと…こっちの話じゃよ」

497 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/11(水) 21:37:30.82 ID:nWMC.kAO
フネ「タラちゃん、お腹減ってるんじゃないのかい?」

タラオ「そういえばペコペコです♪」

フネ「そうかい、じゃあオニギリでもこしらえてあげようね」


フネはタラオに微笑みかけ、いそいそと台所に向かい、オニギリを作り始めた。


サザエ「それでカツオは?」

タラオ「まーだ遊んでるんじゃないですか」

サザエ「はあ……カツオったら…」

498 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/11(水) 21:43:29.05 ID:nWMC.kAO
【PM・10:00】


オニギリを食べ終えたタラオは部屋に戻り、用意された布団に入っていた。

胃の中に溜まったオニギリがギュルギュルとタラオの腹を鳴らす。


タラオ「うー、お腹苦しくて寝れないです……」





波平「バッッカモーーーーン!!!!!」


玄関の方から聞こえてきたのは波平の怒号。


タラオ「やかましい親父です…」

タラオはいいキッカケだ、と布団を取っ払い、玄関に向かった。

499 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/11(水) 21:46:53.91 ID:nWMC.kAO
波平「こんな遅くまで出歩いてからにッッ!!!」


タラオ「何事ですか…」

ひょい、と頭だけ覗かせ玄関を見ると、そこにはタコみたいに真っ赤になった波平に怒られているカツオと、


タラオ「(あれは…あの時の男です…)」


バツが悪そうにいる億泰であった。

500 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/11(水) 21:55:24.88 ID:nWMC.kAO
波平「何を考えているんだお前はッ!!!皆に心配かけおって!!」

カツオ「ごめんなさい…」


億泰「ま、まァまァ、おとうさん…カツオ君も反省してるようですし…」

止まる気配の無い波平の説教に、億泰が申し訳無さそうに言った。


波平「先生には関係ないことですッ!!!!」


億泰「は、ハイィィ〜〜〜!」

カツオ「(駄目だコリャ…)」


ピシャリ!と波平は億泰を一蹴し、再びカツオに説教を始めた。
この終わることが無いと思われた説教は40分程で一応の終息を迎え、

途中、ワカメは『眠いから』と自分の部屋に戻り、マスオは『会社の仕事があるから…』と逃げるようにいなくなり、億泰も『ペットのエサの時間なので…』と外に停めてあった車に戻った。

503 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/03/13(金) 12:05:49.70 ID:zkfgZQAO
ジョジョエさん始まってたのかwwwwww
先生の作品がまた読めて嬉しいです!

505 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/13(金) 22:47:47.53 ID:8hDqSwAO
〜億泰の車中〜



億泰「ふゥ〜〜……」


車に戻った億泰は、エンジンをかけ、教員を始めるにあたって、慣れない手つきで毎日締めているネクタイをけだるそうに緩めた。


億泰「学校戻って『後始末』しないとなァ〜〜。めんどくしェ〜〜〜」


ハンドルに手をかけ、シートベルトをしめようとした時、億泰はハッと気付いたようにポケットから携帯電話を取り出した。
 
506 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/13(金) 22:56:15.44 ID:8hDqSwAO
億泰「そうだ……忘れるとこだったぜ」


押し慣れている感じで億泰は携帯の番号を押す。


億泰「…………」


とぅるるるるるるる

とぅるるるるるるる


億泰「!…あ、もしもし。…ハイ、ハイ……そうです」


億泰「やっぱり磯野は『スタンド使い』でしたよ」


億泰「……いえ、それはまだ何とも……」


億泰「わかりました。これからも磯野は注意して見張っておきますよ」


億泰「……ハイ…それじゃあ……」


億泰「承太郎さんも気ィつけて下さいよ…」


ピッ


億泰「…………」


億泰「二度と……二度とあんな事は起きさせねェ……!」

507 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/13(金) 23:01:18.30 ID:8hDqSwAO
〜磯野家〜



薄暗い部屋の中、二人の男女が押し殺した声で会話をしている……



フネ「…お父さんったら…うっかりしすぎですよ」


波平「ムゥ……すまん」


フネ「サザエならまだしも……ワカメやカツオにタラちゃん、それにマスオさんがいる前であんな事を…」


波平「ああ、わかっている!!あやつらが知るにはまだ早過ぎる」


フネ「…………」

509 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/13(金) 23:05:19.39 ID:8hDqSwAO
波平「しかしカツオにはもう少ししっかりしてもらわんと困る!アイツはワシの後を継ぐ長男なんじゃからな…」


フネ「ええ……それに『今年』なんですからね……」


波平「………長かった……」

510 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/03/13(金) 23:07:59.10 ID:fQXaSfQo
sien
511 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/13(金) 23:11:00.63 ID:8hDqSwAO
ギシ……

ギシ……


タラオ「ふわァ〜〜〜〜〜。です」


タラオ「オシッコしたいです」


タラオ「僕くらいの歳の子は『幽霊』とやらが恐くて一人でトイレに行けないようですけど僕はそんなことないです♪」


タラオ「………おや?です」



波平「…………」


フネ「…………」


タラオ「こんな遅くに電気も点けずなにやってるんですかね?」


タラオ「……はは〜ん、プロレスごっこですね?パパとママもたまにやるです」


タラオ「将来のために解説席横の特等席で技を学ぶですぅ♪」

512 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/13(金) 23:16:53.34 ID:8hDqSwAO

波平「遂に……遂に……この時がやってきたのじゃ…」


フネ「………」


波平は掛け軸の前に行き、そっと掛け軸をめくった。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


波平「我が磯野家に代々伝わる『矢』……」


波平「この時のために大切に守ってきた……」


波平「この時のために苦痛にも耐えてきた……」


波平が着物をずらすと、胸の辺りに小さな刺し傷があった…


フネ「子供達にも………」


波平「……………」






タラオ「掛け軸の裏にあんなものが隠されていたとはねぇ」

513 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/13(金) 23:20:14.01 ID:8hDqSwAO
【4月9日】

〜磯野家〜


カツオ「行ってきます」


ワカメ「行ってきまぁ〜す」


マスオ「行ってきまーす」


波平「行ってくるよ」


サザエ「行ってらっしゃ〜〜い!」


フネ「行ってらっしゃいませ」


タラオ「行ってらっしゃいです♪」

514 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/13(金) 23:30:30.11 ID:8hDqSwAO
サザエ「ふゥ!朝食の後片付けしないと!」

フネ「始めましょうか」


サザエ「…!」


サザエ「タラちゃぁん!!大人しくしてるよのォ!」


タラオ「分かってるです♪」


サザエ「そう!あー忙しいィ!」


サザエとフネはちゃぶ台の上に散乱した食器を持って台所へとかけていった。


タラオ「………」




タラオ「今のうちに『掛け軸』の裏に隠されていたモノをじいぃぃぃぃぃぃっくりと観賞させてもらうですゥ!!」

515 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/13(金) 23:39:48.42 ID:8hDqSwAO
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


タラオが昨晩見た光景の通り、掛け軸の裏には古びた『矢』が置かれていた。


タラオ「こんなふうに隠してるってことはきっと『スゴイお宝』に違いないです!!」

タラオは『矢』を手にとる。

『矢』は所々、欠けていたり、黒ずんでいて、その、何と言うか、一言で言うとボロかったのだ。

タラオ「……けど僕にはゴミにしか見えないです」


『矢』は小さくかったが、タラオの手にはズシリと重たさが感じられた…


タラオ「……なんか不気味です」


タラオは視線を感じた。それは他でもない『矢』から…?
タラオの背中に言い知れぬ寒気が走った。


「タラちゃん!!!」

516 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/13(金) 23:47:38.63 ID:8hDqSwAO


タラオ「ビクゥ!!」

タラオは慌てて『矢』を後ろ手に隠した。


サザエ「そんなところで何やってるの?」


タラオ「マ…ママですか……ちょっと散歩してたですよ」


タラオは安堵したッ!
もしフネに見られては『矢』で遊んでいた事がばれてしまうッ!こんなにも大事そうに隠していた代物だ。
それを勝手に触っていたと知ったらどうなるか……

それに…


サザエ「?そう。変な事しちゃだめよ」

タラオ「ハーイです」


タラオ「………」


タラオ「へへへ…です。この『矢』は古物商にでも売り払って小遣いの足しにするです」

517 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/13(金) 23:55:40.01 ID:8hDqSwAO
サザエ「あ、ちょっとどこ行くのタラちゃん!!?」


タラオ「諭吉さんに会いにいくんですッ!!」


サザエ「はあ??」


フネ「…………」



バンッ!



タラオは家を飛び出したッ!


『矢』を抱えてッ!

519 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/03/14(土) 00:09:29.39 ID:DEHltxso
タラヲ黒いなwwww

520 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/03/14(土) 00:16:22.48 ID:gOgQRIAo
このタラオは間違いなく線が太くなっている

521 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/14(土) 21:29:31.75 ID:8ayQygAO
【4月9日AM・9:00】


友達と昨日みたテレビの話をしながら小学校に向かう小学生の集団も、
毎朝のヘドが出そうなほど窮屈な電車に会社に行くためにはしょうがないと駅に向かうサラリーマン達で賑わっていたこの道も、
9時を回ると早起きな年寄りの足音が聞こえるほど静かになる。


タラオ「……」

タラオ「僕はまだヤニも買えないようなガキだって事は分かっていますが、『矢』は『弓』が無いと意味が無いってことは知ってますゥ」


タラオが大事そうに抱えている『矢』は、タラオのピカピカの服とは正反対にとてつもなく古さを感じるものだった。

何百年も経っている。

そんな感じだった。



タラオ「まッ、僕にはどうでもいい事ですけどね〜〜〜〜」

タラオ「(だが僕はこれを『知って』いる……?脳裏をかすめちまうんだ…)」

522 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/14(土) 21:33:26.67 ID:8ayQygAO
〜磯野家〜



サザエ「ったく、あの子ったらどこ行ったのかしらァ!」


サザエ「……?母さん?」


フネ「………」


フネ「………え?」


サザエ「どしたのボーッとして?」


フネ「あら…まだボケて無いわよ。何でもないわよ」


サザエ「そう……ならいいんだけど…」


サザエ「タラちゃん大丈夫かしら……」


フネ「すぐ見付かるわよ」


サザエ「?」

523 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/14(土) 21:39:02.60 ID:8ayQygAO
掛け軸の間で『矢』が無くなっている事にフネは気付いた。

タラオがこんな何も無い部屋で何をしていたのか?
何を慌てて飛び出したのか?

答えは掛け軸をめくり、そこにあるはずのものが無くなっている事が全てを物語っていた。


フネ「なんてこと……ッ!あのガキャア………サザエにあれほど『掛け軸みたいなめくれそうなものはめくらせないように躾といて』と言ったのに……」


フネ「こんな事がお父さんに知られたら………」

524 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/14(土) 21:42:55.76 ID:8ayQygAO
フネは着物の裾からポケベルを取り出した。


フネ「……フッ……時代は進んで携帯電話が今やこの日本の連絡ツールとしての天下をとっているが……」


フネ「あれほど足がつきやすい物もないわ……それに比べてポケベルは良い……」


525 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/14(土) 21:48:19.68 ID:8ayQygAO

タラオ「でも、なんでこんな物を大事そうに保管してたんですかね〜〜〜?」


タラオ「『弓』も無いのに……まッ、僕にはどうでもいいですけどね〜〜〜〜」


タラオは上機嫌に鼻歌を歌いながら知り合いの古物商の家へと向かっていた。

なんでもソイツ(タラオと同い年)は家が代々古物商でこーゆうアンティークな物には目が無いらしい。



ブオォォォォォォ……


タラオ「?」

526 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/14(土) 21:58:13.52 ID:8ayQygAO
タラオの後方、聞き覚えのある原付のエンジン音が聞こえたかと思うと、タラオの耳に、これまた聞き覚えのある声が聞こえた。


サブ「あッ、タラちゃんじゃない!」

原付を停め、ヘルメットを脱ぎながらサブ…三河屋はタラオに言った。


タラオ「サブ」


サブ「呼び捨て?……まぁ、その方が仲も深まるか!タラオ!どこいくんだい?」


タラオ「気安く呼ぶなです」


サブ「ぐッ……(我慢我慢、相手は子供だ……こんな時こそ得意の営業スマイル!)」


ニカァッ!


サブ「ハハハ!ごめんごめん、馴れ馴れしかったね!」


タラオ「何がおかしいんですか?僕は急いでるのでこれで…」


サブ「ちょ、まッ…(優しくしてりゃあつけあがりやがってエェェ〜〜〜〜)」

527 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/14(土) 22:07:29.59 ID:8ayQygAO
タラオ「…無駄な時間費やしたです……あんなふうに人に愛想笑いふりまってペコペコして客掴もうとするヤツなんてキャバ嬢と変わらないです。僕はおしとやかなメガネを外したら実は美人タイプが好きなんです


サブ「タラちゃぁ〜〜〜〜ん!その大事そうに抱えてる『モノ』は何かなァ〜〜〜?」


タラオ「!?」


タラオ「こ、これは……『希望』ですよ!!」


サブ「『希望』…?」


タラオ「そ、そうです!!僕がこの胸に抱えてるのはいつだって未来への『希望』です!!」


タラオ「この世の中……殺人、学級崩壊、派遣切り、逆チョコ……僕みたいな弱いガキが生きて行くには辛過ぎる環境です……」


タラオ「でも、そんな世の中でも生きていく方法が一つだけあるんです!!!」

528 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/14(土) 22:11:40.55 ID:8ayQygAO
タラオ「それは未来への『希望』を持つ事です!!!」


タラオ「僕はきっといつかは幸せな時代が来ると信じています……そして抱いているんです!!」


タラオ「いつだってこの胸に『希望』をッッ!!!」


タラオ「だから僕は進むです……この『希望』が示す未来へと…」


サブ「タラちゃん……」


サブ「ぺらぺらぺらぺらよくも回る口だよ感心したよけれど僕を騙すのだけは感心しないななぜならこの僕を怒らしてしまったんだからねタラちゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

529 : ◆Z62ETnTQww [saga]:2009/03/14(土) 22:20:26.38 ID:8ayQygAO
サブは原付に乗ると、毎日の運転のおかげで身についたプロ級のドライビングテクであっという間にタラオの前につけ、
タラオの足を持ち上げたッ!


タラオ「な、何するですッ!離せですゥッ!!」

サブ「大人しくしろガキッ!大人を舐めた罰は大きいぜェ〜〜〜〜!!」

タラオ「あっ!!」


サブ「やはりッ!!ババアの言ったとおりだぜェ〜〜〜」


サブ「『矢』ッ!!」


タラオ「その薄汚い手を離すですゥ〜〜〜〜!!」


サブ「しつこいガキだッ!!離せコラァッ!!」


タラオ「こんな『金の成る木』を離すほどバカじゃないですウゥゥゥゥゥ!!」


サブ「なんて欲の皮の突っ張ったガキだッ!親の顔がみてやりたいッ!!」

536 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/03/23(月) 12:39:29.84 ID:s87sTJs0
タラオにいらつかない!
不思議!

551 :◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/26(日) 22:20:35.46 ID:pauRaQAO
タラオ「こ…この……」

タラオ「離すDEATHッ!!」

バッ!

スルリとサブの剛腕から逃れることに成功したタラオ。

タラオ「アンタみたいな変態野郎は直ちに社会的制裁を受けるべきですゥ〜〜〜!それが世の常ってもんですゥ!!」

サブ「へぇ〜〜〜〜、タラちゃん難しい言葉を知ってるねェ。ふむ。ふむ。それでその『社会的制裁』ってのは一体なんだい?」

タラオ「ハッ!その余裕しゃくしゃくのマヌケ面が泣きっ面にサブに変わるのも時間の問題です!!」

サブ「!」

サブにも見える。タラオの自信の根拠が。
すぐそこを歩いているのは制服を身に纏った国家の従順な犬!法のしもべッ!


巡査「………」

パトロール中の警察官であったッ!!


タラオ「サブゥ……、終わりです」

552 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/26(日) 22:31:44.18 ID:pauRaQAO
サブ「おいおい……まさか……」

一瞬歪むサブの顔。
それに合わせてニヤリとタラオの口角が上がるッ!

タラオ「今の内にケツの穴をよく洗っておいたほうがいいですよ。豚箱では最低限のマナーですからね」

ダダッ!

そう言い残してタラオは巡査の元へと走り出したッ!

昨今、児童が誘拐されるという事件が多発している。タラオが大人の男に乱暴されたとなれば、警察もマスコミも黙ってはいないだろう。

サブ「待つんだッ!!」

タラオ「待ったないでーーーす♪(ククク……明日の朝刊が楽しみです♪)」


タラオ「お巡りさーーーーーん!!変態原付き男が僕の体をまさぐってきたでーーーす!!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

サブ「タラちゃん……」

サブ「僕は『待て』って言ったからね…」

554 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/26(日) 22:37:40.41 ID:pauRaQAO
巡査「え?何だって?」

タラオ「だーかーらーDEATH!あそこにいる変態原付き男がいやらしい手つきで僕の体を…」

巡査「何……?」

タラオ「だから捕まえてください!そんでもって沢山テレビに映してください!二度と社会で幸せを得られないようにしてください!!」

巡査「よし、わかった……。君も大変だったね」

タラオ「全くデス!(これでサブも終わりですゥ〜〜)」


カチャ


巡査「今、楽にしてあげるからね…」

タラオ「えっ!?」

555 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/26(日) 22:45:11.56 ID:pauRaQAO
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


巡査「………」

タラオ「な……な…」

巡査「………」

タラオ「何で安全装置を外した拳銃を僕に向けてるですかァーーーーーーッッ!!?」


ドドドドドドドドド


巡査「ふゥ〜〜〜、ふゥ〜〜〜〜〜」

タラオ「拳銃はサブではなく僕を狙っている!!何をしてるんだコイツはァ!?」

巡査「ふゥ〜〜〜〜、ふゥ〜〜〜〜、落ち着け……訓練通りに……」

タラオ「僕がッ!!すべきことはッ!!冷静に状況を判断することでもなくッ!相手の思惑を探ることでもなくッ!
ただ『逃げる』だけですッ!!」

巡査「ふゥ〜〜〜〜、フッ!!!」

ズキュウウウウゥゥゥゥゥン!!

556 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/26(日) 22:50:22.85 ID:pauRaQAO
タラオ「あ…」

タラオ「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!です」

タラオ「そんな…撃たれた…本当に撃たれたですか…?」

銃弾が醜く肉をえぐった左腕を抑え、もがくタラオ。

タラオ「確かに僕は撃たれたらしいです…。しかし何故…」

タラオ「……い…痛いですゥゥ……」

557 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/26(日) 23:07:11.19 ID:pauRaQAO
サブ「可哀相なタラちゃん……」

サブの乾いた、そして心の底から愉しそうにあげる笑い声が朝の住宅街にこだまする。



タラオ「サブ……サブの野郎……あいつが何か吹き込んだですか…?」

タラオ「そんなことよりここから逃げないと……!」

巡査「どどどどどこへ行くんだァァァァァァァァァ!!!」

ズキュウウウウゥゥゥゥゥン!

ズキュウウウウゥゥゥゥゥン!

タラオ「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

558 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/26(日) 23:16:16.47 ID:pauRaQAO
ドドドドドドドドド


タラオ「何かがおかしいッ!!この『矢』と出会ってから!」

タラオ「人間とは恐ろしいものです…。死を覚悟しながらもこの『矢』を手放さない僕。子供の勘ですが…」

タラオ「この『矢』は僕が思っている以上に価値のあるものですッ!!サブの異常な程の執着……それで確信したです!」

タラオ「これこそが僕の求めていた感覚…ッ!」

タラオ「『スリル』!!」

タラオ「『ワンダフル』!!」

タラオ「『アブノーマル』ですうぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

562 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/27(月) 22:29:25.34 ID:oqRXs2AO
ドドドドドドドドド

サブ「おやおやァーーー、タラちゃん、腕を撃たれちゃったかァ〜〜〜」

サブ「しょうがないかァ、タラちゃん、悪い子だもんねェ〜〜〜〜」

ニタァ〜

サブはねっとりとした笑みを顔に浮かべる。
道路に点々と続くタラオの血痕に沿って原付きを動かす。

サブ「この世の中は悪い子には厳しい!
それを身をもって味わうがいいさタラちゃんッ!!」

巡査「……………」

サブ「…おっと、僕もそろそろ行かないとね。この調子じゃあ楽に『矢』は手に入る。僕は高みの見物としゃれこもうか」

563 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/27(月) 22:36:48.28 ID:oqRXs2AO
タラオ「ハァーーッ、ハァーーッ」

その頃、タラオを傷付いた腕を庇いつつ、商店街へと足を踏み入れていた。


通行人「……ジロジロ」

通行人「ジィーー…」

タラオ「ジロジロこっち見てんじゃないですダボハゼ共ッ!!」

タラオ「チッ…確かにこのままじゃ人目につきすぎるです…」

タラオ「やはり一度家に帰って病院に行った方が……」

タラオ「……」

タラオ「だ め で す」

タラオ「そんなことしたら『矢』を取り上げられてしまいます。それなら死んだほうがマシです」

564 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/27(月) 22:45:25.55 ID:oqRXs2AO
主婦「…………」

タラオ「?」

思索を巡らせていたタラオは、自分に向かって近付いてくる生物を察知した。

それはどこにでもいる主婦。
スーパーの袋をぶら下げ、足には履き古したサンダル、髪はパーマがとれかかり化粧のノリも悪い。

タラオ「何ですか……?」

主婦「ジィーーーッッ」

タラオ「見世物じゃねェゾォーーーッ!!!今時のガキは腕から血ぐらい流すDEATHUUUUUUUU!!」

主婦「………」

主婦「キイィィィエエェェェェェェ!!!!!」

565 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/27(月) 23:03:04.74 ID:oqRXs2AO
刹那、振り下ろされる果物ナイフッ!

タラオは反射的に身をよじらせ、それをかわす!

タラオ「な……」

主婦「ヒーー、フーーッ」

タラオ「殺す気かァァァァーーーーーー!!??」

主婦「悪いやつには罰を与えなければ……罰を与えなければ…」

タラオ「シット……いかれてやがるです…」

566 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/27(月) 23:10:17.89 ID:oqRXs2AO
通行人「………」

通行人「………」

タラオ「…………」

タラオ「何をボサッと見てるですかァ〜〜〜〜。今ッ!コイツは僕に向かってナイフを振り下ろしたのですッ!!早くサツを呼ぶですゥーーーッ!」

タラオ「!?」

気づくと商店街に居た人々はタラオの周りへと集まっていた。

何かにとり憑かれたかのようにタラオを見つめ…

通行人「…………」

通行人「捕まえろ……悪いやつには罰を与えろ……」

通行人「そうだ…罰を……」

タラオ「バ……バカなァ〜〜〜〜ッ…僕が何をしたというのですかァ!?」

568 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/28(火) 20:38:49.54 ID:z1OzAkAO
通行人「アンギャアアーーーー!!!」

小学生「死ねやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

老婆「お国のためにイィィィィィィィィ!!!!」

タラオ「な、何をするだァーーーッ!!」

何が何だか理解出来ないタラオに容赦無く襲い掛かる人々ッ!

タラオは背が低いことを生かし上手くすり抜けていたが、次々に群がる人、人、人。

タラオ「だ、だめです……『ふくらはぎ』がパンパンです…」


ブオォーーン…

タラオ「あッ!?」

タラオは半ば諦めかけていた。その時、一台のタクシーが通りかかったのだ!

569 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/28(火) 20:43:20.20 ID:z1OzAkAO
タラオ「HEYッ!HEYッ!タクシーッ!!」

タラオはタクシーに向かって必死に手を挙げ合図を送った。


キキィーッ

タラオ「よ、良かったです、停まった…」

タラオ「このタクシーは郊外ナンバーですッ!ここを通ったのも偶然に過ぎませんッ!サブと裏で話を合わせている可能性は低いです!!」

ドアが開いたのを確認したタラオは滑り込むようにタクシーに乗り込む。

570 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/28(火) 20:55:03.43 ID:z1OzAkAO
バタムッ!

タラオがシートに腰掛けるとドアが勢いよく閉まる。

タラオ「タクシーか……なかなかのパワーとスピードだ」

運転手「……ボクゥ、お金持ってるのォ〜〜〜?嫌だよォ、行くとこまで行って『すみません、お金無いです』は。温厚な僕でも怒っちゃうよ〜」

タラオ「ブツブツ言ってないでハンドルを握れ……!運転してもらおう…」

タラオはポケットからくしゃくしゃの一万円札をちらつかせた。
家を出るときにフネのサイフからくすねてきたのだ。

運転手「……今時の子供は金持ちですねぇ〜〜〜 」

571 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/28(火) 21:01:36.58 ID:z1OzAkAO
運転手「行き先はァ?」

タラオ「そうですね……とにかく遠くへ」

運転手「遠くねぇ…」

タラオ「早くするですッ!!!」

運転手「はいはい……」


オオォォォォ……

オオォォォォ……


運転手「!」

タラオ「しまったッ!!囲まれたッ!?」

572 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/28(火) 21:13:49.21 ID:z1OzAkAO
運転手「な、なんだコイツらはァーーッ!?」

通行人「オオォォォォ……」

タラオ「まるでラクーンシティですね……。運転手ッ!!早く車を発進させるですッ!!」

運転手「む、ムリに決まってんだろッ!!車道はこいつらで通れるスペースなんてありゃしねぇ!!」

タラオ「歩道が広いではないか……行け」

運転手「ほ、歩道〜〜〜!?それでも人は歩いているんだぞォ!!」

確かに車道よりは人口密度は低かったが、それでも歩道にはまばらに人の姿があった。

タラオ「関係ない。行け」

574 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/28(火) 21:17:22.29 ID:z1OzAkAO
通行人「オオォォォォ……」

遂にタクシーの周りを囲んでいた通行人はタクシーを揺らしはじめたッ!


グラグラ


運転手「洗車したばっかりなのだぞォーーーッ!!!」

タラオ「このままではアンタも死ぬです」

運転手「チ……チクショオォォォォォォ!!!!」

運転手がアクセスを踏み込むッ!
激しくエンジンが音を立て、車は飛び出すッ!

578 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 12:39:09.24 ID:jMkMJIAO
通行人「ぎゃああぁぁぁぁぁぁ!!!」


ドンッ!ドンッ!ドンッ!


人間の知恵と技術の詰まった夢の動く箱、自動車は恐ろしいパワーとスピードで通行人を薙ぎ倒した!

タラオ「1Hit!2Hit!3Hit!!いいです、このまま夢の連続100コンボを目指すですうぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

運転手「…………」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

580 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 18:40:20.06 ID:jMkMJIAO
運転手「…………」

タラオ「スピードが落ちているぞ。飛ばせ」

ギュイン!


ド ド ド ド ド ド ド ド ド

通行人「WAAAAAAAA!!!」

通行人「ギャーーース!!!」

タラオ「HAHAHAHAHA!!良いですッ!飛ばすですッ!気持ちがイイィ〜〜〜〜〜ですゥ!!」

運転手「クイッ」

タラオ「ハハハハハハハァーーー………ハーァ?」

運転手「………」


タラオは我が目を疑った。今自分が乗っている車が明らかに進路を変え、その巨体を電柱にぶつけようとしているのだ。

581 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 18:43:14.26 ID:jMkMJIAO
タラオ「き…」

タラオ「貴様何をやっているウゥゥゥゥゥ!?!?」

運転手「…お客さん、サービスですゥ〜〜〜。お代は結構ですのでェ」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

サブ「ぶつかって死ねよ。タラオ…」

582 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 18:48:29.87 ID:jMkMJIAO
ドゴオォォォォン!!!!


サブ「終わったな……呆気ない」

サブ「『矢』は無事かな?…まあ報酬は前払いでタンマリ貰ってる。この金で海外にでも行かせてもらうぜ。
二度とクソみたいな三河屋の仕事をしないでいいと思うとスゲーッ爽やかな気分だぜ。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ〜〜〜〜〜〜ッ」

583 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 19:02:08.56 ID:jMkMJIAO
サブ「………」

プスプス…

タクシーは電柱にぶつかった衝撃で運転席はめちゃめちゃで既に原型は留めてなかった。
衝撃で開いたのだろうか、運転席のドアの隙間からぶらりと垂れた運転手の血まみれの腕が、
このタクシーだったものの中に生存者がいるという可能性を限りなく0にしていた…

サブ「………」

サブ「念には念を入れとくとするか。磯野家の血統は頭をかちわってもヘラヘラ生きてそうだからな。
死んだように見せかけてだましているかもしれん」


ドシュウゥゥゥン!

サブ「我がサブは常にパーフェクトであるッ!この『ソルジャー・ボーイ』で『それ』は揺るぎないものとなったッ!」

586 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 20:07:44.60 ID:jMkMJIAO
ドドドドドドドドド

サブ「我が『ソルジャー・ボーイ』はァッ!!」

サブ「『敵』を発見すれば必ず仕留めるッ!!」

サブ「周りの人間達はソイツを『敵』として認識しッ!!盲目的にただ、ひたすらに、『敵』を追い詰めるッ!!」

サブ「命令は簡単なものしか遂行出来ないが、『敵』を始末するには充分ッ!」

サブ「これが『ソルジャー・ボーイ』の『能力』ウゥッ!!!」

サブ「ババアには感謝しないといけねぇな。あの『矢』で刺されたおかげで俺はパーフェクトになれた」

サブ「『ソルジャー・ボーイ』、タラオにパーフェクトなるとどめを……」

サブ「刺せ!!!」

588 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 20:12:12.80 ID:jMkMJIAO
通行人「タラオォォォォォォォォ…」

通行人「タラオォォォォォォォォ…」

サブ「よし。忠実なる『兵士』達よ」

サブ「命令を遂行しろォーーーッッ!!」

通行人「キシャアアァァァァァァ!!!」

『ソルジャー・ボーイ』の『能力』によってサブの忠実なる兵士になってしまった通行人達は破壊されたタクシーに群がり!

通行人「オオォォォォ!」

ズル…


車内から血まみれのタラオを引きずりだしたッ!
 
589 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 20:20:31.63 ID:jMkMJIAO
タラオ「…………」


車内から道路に引きずりだされたタラオの肉体から命あるもの輝きを感じることは難しかった。

サブ「ふむ…」

サブ「タラオは完全に死んでいる」

サブ「念のため首をはねて確実なる安心という形にしておくか」


サブはタラオに近付き、『ソルジャー・ボーイ』の鍛えぬかれた手刀をタラオの首にかざした。

サブ「『ソルジャー・ボーイ』は純粋な肉体的能力は高水準だ。この手刀でお前の首は俺のリビングに飾られる事になる」

ブオォン!

『ソルジャー・ボーイ』の手刀は振り下ろされ、

ドシュオゥ!


ゴロ…


タラオの首を切断したッ!

590 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 20:24:32.89 ID:jMkMJIAO
ドドドドドドドドド

サブ「フ……任務完了」

サブ「……ヒ…」

サブ「ヒャハハハハハハハハハハ!!!」

サブ「やっちまったァ〜〜〜、遂に人を殺しちまったァ〜、案外なんてことないなァ♪」

サブは腹を抱えて笑った。

サブ「ヒャハハハハハハハハハハァーーーッ!ヒィーヒッヒッヒッ……苦しい…癖になりそうだぜェ〜〜〜〜♪」

592 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 20:28:56.09 ID:jMkMJIAO
サブ「お……そうだそうだ、あのクソガキの頭を戦利品として持って帰らないとな」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


サブ「………」

サブは口をポカンと開けて目の前のタラオを見た。

サブ「し…死体が……ねぇ……」

だがそこにタラオはいなかった。
それに加え、切断した首から噴き出した血液すらも無かったのだ。

593 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 20:32:57.93 ID:jMkMJIAO
サブは首を乱舞させ周囲にタラオがいないか捜した。

自分が操っている人間がタラオの死体を持っているんではないか。

その可能性も考えていたが周りの人間はただ棒のように立ちつくしているだけだった。


サブ「ど…どこだ!どこに消えたッ!どこに消えたのだァーーーッ!!」

タラオ「こっこでーす」

サブ「はっ!?」

594 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 20:38:38.28 ID:jMkMJIAO
ドドドドドドドドド

サブは声を頼りに後方を見たッ!

そこにいたのは紛れも無いタラオッ!

首をはねたはずのタラオッ!

確かに死んでいたはずのタラオッ!

だがそこに立っているタラオは多少服に血が滲む程度のいたって健常なタラオであった!

サブ「て、テメェ……テメェも『スタンド』を……!!」

タラオ「ふぅーん」


ドドドドドドドドド

タラオの横に、真っ黒なバットマンのような男が立っていた。

タラオ「『スタンド』って言うんですか、コレ」

595 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 20:46:11.24 ID:jMkMJIAO
サブ「ス、『スタンド』…!!」

タラオ「しこたまやってくれて……大事な服に穴があいたです」

サブ「(聞いてねぇぞ、タラオが『スタンド』持っているなんてよォーーー。……落ち着け…平常心だサブ……戦場では心を乱した者から死ぬ……素数を数えて落ち着くんだ…)」

タラオ「来週のサザエさんは」

サブ「!!」

タラオ「サブ、ミンチになって死ぬ。
サブ、粉みじんになって死ぬ。
サブ、頭をブッ飛ばされて死ぬ。
の三本です♪」

サブ「く…クソが…」

タラオ「どれがいいですか?」

サブ「決めたァーーーッ!!!答えは4!!お前が俺に殺されてハッピーエンドだあぁぁぁぁ!!!」

タラオ「やれやれです」

596 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 20:51:36.12 ID:jMkMJIAO
ガシィィッ!!

タラオは息を殺して近付いていた通行人二人に羽交い締めにされたッ!

サブ「連携攻撃だァーーーッ!!『ソルジャー・ボーイ』!!」

間髪入れずにサブはタラオに向かって走り出し、『ソルジャー・ボーイ』の剛腕をタラオの腹に食い込ませたッ!

サブ「今度こそ終わった!!!」

タラオ「僕はここですよー」

597 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 20:55:39.76 ID:jMkMJIAO
ドドドドドドドドド

サブ「タ、タラオが二人…?」

タラオ「僕は一人でーす」

気付くと『ソルジャー・ボーイ』の腕が貫通したタラオは消えていた。

サブ「リアルだった、腕に伝わる肉と血の感触はリアルだった…!」

タラオ「凄いですね〜、『スタンド』って。実に馴染むッ!!」

598 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 21:01:55.77 ID:jMkMJIAO
サブ「自分の偽物を作り出す『能力』かッ!!タラオッ!」

タラオ「違うですよ」

サブ「何がッ!」

タラオ「現れるのは紛れも無い僕自身ですぅ」


ドドドドドドドドド

タラオ「ホラ」

タラオ「こいつも僕で僕もこいつです」

現れたもう一人のタラオは『本物』のタラオと何を変わりなくサブに声をかけた。

600 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 21:36:52.04 ID:jMkMJIAO
サブは混乱するッ!

タラオが『スタンド』を土壇場で発現させたことに!
タラオが二人いることに!

そして現れたもう一人のタラオが『本物』のタラオと何一つ変わりなく言葉を交わし、笑っているのがサブの不安に拍車をかけたッ!

現れる『タラオ』は動くことは出来ないと思っていたのだッ!

601 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 22:51:30.09 ID:jMkMJIAO
タラオ「サブゥ〜、ヒドイ顔ですねぇ」

タラオ「今までよくもいたぶってくれましたね。そろそろ僕の番です♪」

二人のタラオがまるでステレオのように同じ事を喋る。
小悪魔のような笑顔も同じだ。

シュバァ!!

二人のタラオは同時にスタートを切り、ジグザグに入れ代わりながらサブ目掛けて走り出した!

タラオ「いっくでーす♪」

タラオ「殺っるでーす♪」

602 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 22:57:48.87 ID:jMkMJIAO
サブ「へ、兵士どもォーーーッ!!!タラオを止めろォォォォォォォォ!!!」

通行人「タラオ……」

通行人「二人いる…」

通行人「どっちがタラオ…」

サブ「どっちもタラオだァーーー!!!どっちもだ!!どっちも止めろォ!!」

通行人「どっちも…」

通行人「オオォォォォ!」

タラオ「所詮は」

タラオ「一般人」

タラオ「いなすのは」

タラオ「簡単です」

タラオは通行人の波状攻撃を気にも止めずにサブだけを見据えて走る!

603 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/04/30(木) 23:03:22.30 ID:jMkMJIAO
シュッ!

シュッ!

小動物のようなチョコマカした、しかし素早い動きでサブを翻弄するタラオ達!

その距離1m!!

タラオ「一瞬です…僕が『スタンド』を発現し、サブがそれを認識した時、僕の『スタンド』はサブをミンチにした後です」

サブ「や、やめ……」


ドゴッ


タラオ「……!」

サブ「やっぱガキだよ、お前」

605 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/05/01(金) 13:05:39.34 ID:maJxisAO
サブはゆっくりと、タラオの腹に貫通した『ソルジャー・ボーイ』の腕を引き抜いた。


ズルリィ…


サブ「例えテメェが自分自身を作り出す事が出来たとしても、自分自身を変えることは出来ないッ!そうだろッ!?」

サブ「その証拠にィ!テメェはッ!もう一人のタラオより服に染み込んでいる血液の量が多いッ!!
これから導き出せる答えはただ一つゥッ!!『タラオ』!テメェが本物だァッ!!!」

腹にポッカリと穴の開いたタラオはその場に膝をつき、

タラオ「あ……ああ…」

タラオ「引っ掛かったです」


フッ


消えてしまった。

サブ「…………」

608 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/05/01(金) 13:16:10.78 ID:maJxisAO
タラオ「僕の『能力』は分身を作り出すことじゃあありません」

タラオ「5秒前までの僕を実体化させる『能力』ですゥ」

タラオ「今アンタが殺したタラオは、アンタに向かって僕が走り出す直前に生み出した5秒前の僕ですゥ」

サブ「じゃ、じゃあ服に染み込んだ血液の量が多かったのは何故だ…」

タラオ「まだわかんないですかね、過去の僕だって『血』ぐらい流しますよ。アンタがもう一人の僕の首をはねた時だって噴水みたいに血が出たでしょ?」

タラオ「そして何故僕達二人はジグザグに交差しながらアンタに向かったのか…まさかどっちが本物かわからなくするためだと思ってましたか?」

サブ「ち、違うのか」

タラオ「ハァーーー、そんなこと今時幼児でも考えませんよ」

タラオ「あの交差した瞬間、僕は『もう一人の僕』を傷つけたんです。死なない程度に」

サブ「なッ…」

609 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/05/01(金) 13:21:47.41 ID:maJxisAO
タラオ「幸運な事に過去の僕は痛みを感じないようですね。まッ、やり過ぎたら消えてしまうですけどねェ〜〜」

タラオ「そうしてもう一人の僕は血を流す…僕より多くのね」

サブ「お、俺は罠にハマったというのか……こんなガキのッ!!」

タラオ「もしかしたら両方の僕に攻撃されてたら危なかったですけどね」

タラオ「しかし僕には自信があったッ!
アンタみたいにパーフェクトを好む男はあてずっぽうで攻撃することはない、自分の推理のパーフェクトさに溺れて攻撃してくると」

タラオ「間違った推理だとも知らないでねェェ〜〜〜〜〜〜〜!!!」

610 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/05/01(金) 13:30:52.14 ID:maJxisAO
サブ「お…俺はパーフェクトなんだ…」

サブ「パーフェクトに任務を遂行して報酬で海外に行って、ロスがいいな……カジノで更に金を増やして、キャメロン・ディアスとかアン・ハサウェイとかハリウッド女優を家に呼んで…
あ、あんなボロっちい原付きは海にでも棄ててよ…車を買うんだ、真っ赤なポルシェなんかがいいな…」

サブ「……そうだ、俺にはパーフェクトなビジョンがあるんだ、パーフェクトビジョンが…」

サブ「それをこんなガキにぶっこわされるなんてよォ…」

サブ「誰だって嫌だよなァーーーッ!!!俺だって嫌だァァァァァァァ!!!!『ソルジャー・ボー」

タラオ「それじゃああの世で夢を叶えるですゥゥゥゥゥタラタラタラタラタラタラタラタラタラタラタラァァァッシュ!!!!!」

611 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/01(金) 13:42:28.76 ID:pTnavqIo
タラタラwwwwwwwwww

612 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/05/01(金) 13:45:32.28 ID:maJxisAO
サブ「ぐぼおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーー!!」


ドサッ


タラオ「フゥーーーーーー」

タラオ「まだまだ人生も捨てたもんじゃないですね」

サブが死亡したことによって、『ソルジャー・ボーイ』の能力によって操られていた通行人達は正気を取り戻し、皆、思い思いに商店街の惨状に困惑し、恐怖した。

タラオ「そうですゥ、コイツにも名前をつけてあげないとです」

タラオは『スタンド』を観察し、今までの過去の記憶を絞り出し、総合的に考え、決めた。

タラオ「『ラスト・デイズ・オブ・エイプリル』にするです♪」

タラオ「真実なんて最期の日までわからないです。でも僕は『知る』です。『コイツ』を使ってッッ!!!!」




三河屋のサブ→『ソルジャー・ボーイ』
死亡

タラオ、スタンドに覚醒し、『ラスト・デイズ・オブ・エイプリル』と名付ける。
この後、ケガを治療するため文房具店に行く。


TO BE CONTINUED→→

613 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/05/01(金) 14:16:02.85 ID:maJxisAO
〜これまでのスタンド〜

【スタンド名】ソルジャー・ボーイ
【本体】三河屋のサブ
【破壊力】A
【スピード】B
【射程距離】2m(能力は100m前後)
【持続力】B
【精密動作性】C
【能力】
「周囲の人間を操る(スタンド使いは操れない)」
「操られた人間は本体が指定した『敵』に向かって攻撃する」
「簡単な命令も聞ける」

614 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/05/01(金) 14:22:44.05 ID:maJxisAO
【スタンド名】ラスト・デイズ・オブ・エイプリル
【本体】タラオ
【破壊力】B
【スピード】A
【射程距離】2m(能力は本体から半径1m)
【持続力】C
【精密動作性】B
【能力】
「本体の5秒前過去の自分自身を生み出す」
「生み出された自分自身はスタンド能力は使えない」
「自分自身は本体と同じように言葉を発し、笑い、血を流す。ただ本体の命令には絶対服従」

615 : ◆XEAenziT2k [saga]:2009/05/01(金) 14:25:57.38 ID:maJxisAO
ふゥ…まさか二話を終えることが出来たとは。
これもずっとまっていてくれた皆のおかげです。

616 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/01(金) 14:36:39.16 ID:gkdh4pQo
乙なんだぜ!!毎日まってたかいがあった……

621 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/02(土) 00:39:56.19 ID:ivUuliEo
乙!

第三話に期待

622 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/02(土) 02:36:50.88 ID:S3Vs4nwo
オツオツオツオツオツオツオツオツーッ!! 


カツオ「これが…スタンド…」【第3話】へつづく(予定)


引用元
カツオ「これが…スタンド…」

http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1235916147/
 

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