153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 02:21:12.73 ID:Qnnpj8xL0
男「結局なんだったんだろうあの人・・・」
男「あんな派手な帰り方して大丈夫なのかな」
男「てか、あの黒い服の下に翼があったのか」
男「玄関羽まみれだし・・・・」
男「おまけに・・・」
男「もう学校間にあわねえし・・・」
天使「やってしまった・・・」【前編】【中編】【後編】
友達「やってしまった・・・」【前編】【後編】
死神「やってしまった・・・」【前編】【中編】【後編】
兄「やってしまった・・・」【前編】【後編】
男「やってしまった・・・」【前編】【中編】【後編】
女「やってしまった・・・」【前編】【後編】
男「結局なんだったんだろうあの人・・・」
男「あんな派手な帰り方して大丈夫なのかな」
男「てか、あの黒い服の下に翼があったのか」
男「玄関羽まみれだし・・・・」
男「おまけに・・・」
男「もう学校間にあわねえし・・・」
天使「やってしまった・・・」【前編】【中編】【後編】
友達「やってしまった・・・」【前編】【後編】
死神「やってしまった・・・」【前編】【中編】【後編】
兄「やってしまった・・・」【前編】【後編】
男「やってしまった・・・」【前編】【中編】【後編】
女「やってしまった・・・」【前編】【後編】
155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 02:25:26.08 ID:Qnnpj8xL0
長くも短くも感じない時間だった
あの死神さんと話している時間は
感情も湧き出ることもなく
気付けば流れているような、少し変わった時間だった
周りの人が俺たちの姿と話してる内容を聞いたら
きっと変な人達だとか思うだろう
けど俺はもう
完全に信じきっていた
162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:01:24.46 ID:Qnnpj8xL0
学校への途中道
確実に遅刻な俺は
もはや開き直ってトロトロ歩いていた
男「・・・そういえば」
男「あの死神は、一体何を願おうと思ってたんだろう」
男「少し気になる・・・・」
男「っていうか俺にはホントに10秒時を止める力なんてあるのだろうか・・・」
男「そもそもどうやればその力は使えるんだ?・・・」
163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:02:19.84 ID:Qnnpj8xL0
学校 教室
ガラッ
教師「・・・・・・」
男「・・・・・・」
男「・・・おはようございます」
教師「・・・もう2時限目なんだが?」
男「まじですか」
教師「まじだ」
教師「遅刻の連絡も無いとはどういうことだ」
男「いや・・・話せば長くなるんですが・・・」
164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:04:22.84 ID:Qnnpj8xL0
教師「ほう、話せる理由があるのか」
男「はいそうなんですよ」
教師「よし、言ってみろ」
男「それがですね」
男「玄関を開けた瞬間大男に襲われ」
男「さらに長話を延々と聞かされました」
男「いわゆる監禁みたいなものです」
教師「なるほど」
教師「・・・放課後職員室に来い」
男「はい・・・ 」
165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:08:29.77 ID:Qnnpj8xL0
友A「どうしたんだよ今日は」
男「なにが」
友A「お前があそこまで遅刻するのは珍しいなって思って」
友A「ギリギリとかはしょっちゅうだけど」
男「だから言ったろ」
男「玄関開けたら大男がいて、延々話聞かされたって」
友B「どんなホラー映画だよ」
男「現実だ」
友A「・・・現実と夢の区別位つけようぜ」
男「おい、そんな目で俺を見るな」
166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:09:22.45 ID:Qnnpj8xL0
放課後
俺は先生との2人きりの密会を
1時間ほどこなした
教師「・・・・話は以上だ」
教師「これに懲りたら、せめて遅刻する時は連絡位しろ、いいな」
男「・・・・はい」
男(話なげえよ・・・・・)
男(足の血流悪くなりそう・・・)
教師「あ、そうだ」
教師「教室に戻るついでにこれもってっといてくれ」
167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:11:06.87 ID:Qnnpj8xL0
教師「明日使うからさ 」
そう言って先生が指差した先には
大量の本、恐らく教科書
男「・・・・・」
男「俺が、ですか?」
教師「がんばれ」
教師「無断遅刻の罰だとでも思ってくれ」
168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:14:13.08 ID:Qnnpj8xL0
結局俺は
クラス全員の資料を運ぶ羽目になった
男「くそ・・・・重い・・・・」
男「特にこの階段は堪える・・・・」
男「あの野朗・・・覚えてろ・・・」
男「絶対今度教壇の前でヅラ取ってやる・・・・」
170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:16:53.94 ID:Qnnpj8xL0
男「前が見えねえ・・・・」
ヨロヨロ
ドサッ
男「うおっ」
「きゃっ」
172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:18:39.37 ID:Qnnpj8xL0
ドサッドサ
俺は何かにぶつかった
というより誰かにぶつかった
衝撃で床にちらばる教科書
男(・・・・・・)
男(・・・・最悪だ)
「・・・いたた」
174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:19:52.09 ID:Qnnpj8xL0
男「どうもすいません」
男「前しっかり見てなくて・・・」
女「いえいえ・・・」
女「こちらこそボーッとしててすいません・・・」
女「お詫びに手伝いますよ」
男「いえいえ」
男「悪いのでいいですよ」
女「でもこの量を1人でまとめるのは・・・」
確かに
正直泣きたくなる量だ
男「・・・・・・」
男「・・・じゃあ、お願いできます?」
181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:02:15.67 ID:Qnnpj8xL0
女「じゃあ私そろそろ行きますね」
女「それじゃあまた」
そう言って女の子は階段を上がっていった
182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:04:48.62 ID:Qnnpj8xL0
結局俺は彼女に手伝ってもらってしまった
そしてその甲斐あってか、早めに片付いた
男「いやぁ、すいません」
男「おかげで早く片付け終わりました」
女「いえいえ」
女「余所見していた私が悪いんですから、当然ですよ」
男「いえいえそんな・・・」
186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:08:43.33 ID:Qnnpj8xL0
教室
ドサッ
男は荷物を教壇の脇に置いた
男「はぁ・・・ここらへんに置いときゃあいいよな」
男「やっと終わった」
男「よし、帰ろう。我が家が待ってる」
男「・・・・・・」
男「・・・それにしてもあの子どうしたんだろう」
189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:13:08.35 ID:Qnnpj8xL0
男「なんであの子階段を上っていったんだろう」
男「もうこんな時間なのに」
男「普通この時間はもう帰る時間だと思うんだが」
男「部活に行くにしても微妙な時間だし」
男「友達と待ち合わせでもしてるのかな」
男「それとも俺みたいに説教の後だったり」
男「・・・それはないだろうな、うん」
192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:17:17.15 ID:Qnnpj8xL0
翌日 学校
友A「どうだったよ」
男「何がだ」
友A「昨日放課後に呼び出しくらってたじゃねえか」
男「ああ」
男「とりあえず長かったとだけ言っておこう」
友B「だろうな」
友B「あのハゲ帰りの会すら長いからな」
友A「まぁドンマイだ」
男「おまけに荷物運び手伝わされるわ女の子にぶつかるわ」
男「最悪だったよ」
193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:21:47.89 ID:Qnnpj8xL0
友A友B「女の子?」
男「荷物には食いつかないんだな」
男「さっき配られた資料全部運んだの俺なんだぞ」
友A「女の子について詳しく話せ」
男「無視かよ」
友B「お前なにさりげなくドラマみたいな出会い体験してんだよ」
男「・・・何も起きなかったけどな」
男「荷物散らばるわで大変なだけだったし」
194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:28:04.32 ID:Qnnpj8xL0
友A「ちなみにその女の子は誰よ?」
男「見たことない顔だったからなぁ」
男「別のクラスか下手したら別学年かも」
友B「なんだよ」
友B「それじゃあ縁がねえじゃねえか」
男「俺が知るか」
男「それより早く食堂行こうぜ」
男「時間なくなるぞ」
正直今の俺にとっては
女より食欲が優先だった
友A「そういえば4時限目体育だったからな」
友A「さっさと行くか」
195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:32:44.30 ID:Qnnpj8xL0
昼休み 食堂
昼休みから少し時間が経っていたこともあり
既に大分テーブルが埋まっていた
友A「やっぱ大分混んでるな」
友B「まぁ奥の方なら空いてんだろ」
男「空いてる席空いてる席っと・・・・」
俺達は仕方なく席を探すことにした
その時・・・・・
男「あ」
197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:35:34.75 ID:Qnnpj8xL0
友A「ん?席見つけた?」
男「あれ・・・」
俺は、奥の端の席に1人で座っている生徒を指差した
どこかで見たことがある
確か・・・・
男「・・・・多分あの子だよ」
男「昨日ぶつかったって言った子」
199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:01:52.89 ID:Qnnpj8xL0
友A「・・・・・・」
友B「あいつか・・・・・・・」
200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:04:30.34 ID:Qnnpj8xL0
男「知り合いか?」
友B「まさか」
友B「個人的にはまったく関わりはない」
男「じゃあなんで知ってんだ」
友A「あいつは有名人だからな・・・・」
友A「悪い意味で」
友A「・・・てか俺達の学年の奴は大体知ってるぞ」
201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:06:16.02 ID:Qnnpj8xL0
男「どういうこった」
男「てか俺達と同学年なのか」
友B「・・・あいつ3組の女っていう奴なんだけど」
友B「一時期ひどい噂がはやった」
友B「そしてそれが学年全体に広がったせいで有名になった」
男「噂?」
友A「ああ」
友A「屋上で自殺しようとしたって噂がね」
202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:09:44.80 ID:Qnnpj8xL0
それは
微かに空が曇る6月のとある日に
1人の生徒が忘れ物をした時の出来事
その日
その生徒は屋上で授業をした時に忘れ物をしてしまい
放課後屋上に取りに行った
その頃はまだこの学校は屋上に自由に出入りができて
その生徒もそれを知っていた為
部活を終えた後の遅い時間に屋上に行った
そしてその時、生徒は見てしまった
203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:13:43.90 ID:Qnnpj8xL0
屋上の扉を開け
その生徒の目に入ってきた光景
そこには
フェンスに足をかける女の子の姿があった
206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:18:05.67 ID:Qnnpj8xL0
その生徒がすぐに女の子を引き止め
先生に連絡した為
大事には至らなかった
結局この事件は
一部の教師とその生徒だけが知ることとなり
その後屋上にも鍵がかけられた
それでこの話は終わり
のはずだった
208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:32:42.34 ID:Qnnpj8xL0
生徒「まさか自殺しようとしてた子がいるなんて」
生徒「驚いた・・・・・」
生徒「でも何事もなくて本当に良かった」
生徒「人を助けられたってなんか嬉しいな・・・」
生徒「・・・・・・」
その時
その生徒に芽生えた僅かばかりの欲が
話を大きく捻じ曲げた
生徒「・・・少しくらい誰かに喋っても大丈夫だよね?」
209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:39:27.38 ID:Qnnpj8xL0
友A「・・・そうして気付けばその話は全クラスに広まり」
友A「彼女は有名人になった」
友B「そして当然ながら」
友B「それからイジメとかひどかったらしい」
男「結構最近の話なんだな・・・」
男「・・・ちなみに」
男「その生徒って誰なんだ?」
友A「さあ」
友A「俺らも噂から聞いたクチだからな」
男「・・・・そうか」
210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:41:20.42 ID:Qnnpj8xL0
その話の後
俺達はなんとか席を見つけ飯にありついた
食事中にはもうその話も出ることはなく
よくあるどうでもいい話を適当にだべりながら食事した
やっぱり人間の興味とは薄いもので
俺も食堂を出る頃には、もうその話は頭からすっぽぬけていた
229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 11:54:14.68 ID:Qnnpj8xL0
放課後
友A「なぁ、今日どっか行かね?」
男「どこに?」
友A「う〜ん」
友B「決めてないんかい」
友A「いや、今思いついたから・・・」
男「う〜ん・・・」
友B「あ」
友B「じゃあさ、あそこにしない?」
230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 11:55:50.84 ID:Qnnpj8xL0
友B「スーパーの近くにさ、新しく喫茶店できたじゃん」
友A「できたの?」
友B「らしい」
友B「だからそこ行ってみようぜ」
友A「俺はいいが」
友B「男は?」
男「スーパーの・・・近く・・・・」
俺が・・・事故った場所の近くか・・・・
232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:05:10.56 ID:Qnnpj8xL0
俺は
あの事件の事は誰にも話していない
知っているのは
関係者と俺と警察の人と家族だけ
もしかしたら学校には伝わっているのかもしれないが
先生達も特に俺を呼び出したりとかはしなかった
そして
俺も友達に話す気はさらさら起きなかった
234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:06:44.96 ID:Qnnpj8xL0
友A「どうした?」
男「あ、いや」
男「なんでもない」
男「俺も行くよ」
友B「じゃあ決まりだな」
友B「そうと決まればさっさと行こうぜ」
男「・・・・・・」
落ち着け俺
事故こそあったが、俺は死んではいない
同じような事もきっともうないだろう
落ち着け俺
男「・・・そうだな、時間ももったいないし」
236 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:10:57.36 ID:Qnnpj8xL0
それから俺達は、喫茶店に向かった
その喫茶店は最近オープンした小さな個人経営の店らしく
スーパーで買い物ついでによる人が多いらしい
ちなみにここからは俺のどうでもいい話なんだが
あの日と違って信号待ちはあまりしなかった気がする
まぁ信号なんて気にしてもしょうがないとは思うが
ちなみに
当然の如く、例の道路はいつも通りの姿になっていた
まぁこれで未だにお祭り騒ぎしてたら焦るけど
237 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:15:47.92 ID:Qnnpj8xL0
俺は
何事もなく喫茶店についた
男「・・・意外と遠くねーか」
友A「予想外なんだぜ・・・」
友B「・・・すまん」
友B「てかこれスーパーの近くって言うのか?」
友A「スーパーから大分歩いた気がするな」
男「まぁ無事に着いたんだしよしとしようぜ」
友A「なんだそのサバイバル精神」
238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:18:01.20 ID:Qnnpj8xL0
喫茶店内
友A「何頼む?」
友B「う〜ん・・・」
友B「夕飯は家にあっからなぁ・・・」
友B「軽く飲み物だけでいいんでね?」
友A「じゃあドリンクバーでいいか」
男「・・・・・・」
240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:22:03.47 ID:Qnnpj8xL0
友A「どうしたんだ男」
友B「お前がその顔をするときは、絶対何かやらかした時だ」
男「顔で判断するな」
男「・・・当たってるけど」
友B「ほらな」
友A「ちなみに何をやらかしたんだ」
男「・・・・・・」
男「学校に忘れ物した・・・」
友A友B「・・・・・・」
241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:29:06.93 ID:Qnnpj8xL0
友A「このタイミングでそれはないわ」
友B「せめて喫茶店出た後で気付けよ」
男「そんな事言われても困る・・・」
友A「まぁどうせ大したもんじゃないんだろ?」
友A「忘れ物の事は忘れろ」
友B「さっきまで忘れてたんだけどね」
男「その変なノリやめろ」
男「てか・・・そういうわけにもいかない・・・・」
男「宿題一式忘れた・・・・・」
243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:33:32.07 ID:Qnnpj8xL0
友A「・・・・・・」
友B「・・・・・・」
友A「ああもう!取りに行って来い!」
友B「俺らまってっから!」
男「悪いな・・・」
そう言って
俺は喫茶店を出た
245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:38:11.34 ID:Qnnpj8xL0
外
男「意外とここから学校遠いよなぁ」
男「ましてやそれを往復すんのかよ」
男「めんどくさいわ」
男「・・・・・・」
男「宿題取ったらそのまま帰っちゃおうかな・・・」
男「いや、それはだめだよね・・・・」
246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:43:04.44 ID:Qnnpj8xL0
学校
部活をやってる人以外は
普通に下校しているであろう時間に
俺は学校に戻ってきた
男「・・・はぁ」
男「・・・ホントついてねえ」
俺は溜め息を何度もついた
つきながら教室に向かった
249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:03:07.77 ID:Qnnpj8xL0
教室
俺は机の中を漁った
男「あったあった・・・」
男「ったく、何してんだか俺は」
男「机の中に入れっぱなしとか」
俺はお目当ての宿題(提出者教師)を発見した
あいつは出す宿題も多い
男「結構あるなあ・・おい・・・」
男「ああ・・・・」
男「これからまた喫茶店戻んのか・・・」
250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:05:14.36 ID:Qnnpj8xL0
心底家に帰りたいと思う俺だったが
戻ると約束してしまった以上
戻らないわけにもいかず
俺は仕方なく宿題をバッグに詰めた後
喫茶店に向かうことにした
しかし、その道中に
変な再会を果たした
251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:07:45.01 ID:Qnnpj8xL0
男「あ・・・・・」
女「あ・・・・・・」
階段を下りようとした矢先
下から女の子が上がってきた
その顔は、何回か見たことがある顔だった
そして、相手も同じくそう思ったらしかった
男「この前はどうも・・・」
女「いえいえ」
女「こちらこそあの時はすいません」
男「いえいえ」
252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:11:19.13 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・・・・」
女「・・・・・・」
男(気まずい・・・・)
実質一回しか会ってないんだから
当然と言っちゃあ当然だが
男「・・・・・・・」
男「・・・じゃあ、俺はこれで」
よし、逃げよう
女「あ、はい」
女「それじゃあまた」
254 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:15:29.91 ID:Qnnpj8xL0
何とか話を切ることができた俺は
さっさと退散することにし
彼女とすれちがった
・・・・すれちがった?
男「・・・・・・」
男「・・・また上の階に行くのか」
257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:19:21.08 ID:Qnnpj8xL0
そう
彼女はまた階段を上がっていった
あの時と同じように
この微妙な時間帯に
男「一体いつも何をしてるんだ・・・・」
男「・・・・・・」
261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:27:01.06 ID:Qnnpj8xL0
―自殺願望の少女
―フェンスに足をかける女の子
―大事には至らなかった
―しかし、噂が広まってしまった
―そして彼女はイジメを受けた
―彼女は孤立した
『彼女はそうなった時、何を思ったのだろう?』
263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:29:48.30 ID:Qnnpj8xL0
それは、思いつかない事じゃなかった
自殺を止められた彼女が
1人の生徒によって
学年全体に事実を晒された彼女が
それによってイジメを受けたらしい彼女が
食堂で1人で飯を食うぐらいだから
きっと友達もいない彼女が
264 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:34:10.21 ID:Qnnpj8xL0
再び
再びあの屋上で
毎日
毎日自殺を図ろうとしているかもしれない
そんな考えを
思いつかないはずがなかった
267 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:01:09.26 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・何言ってんだよ」
男「さすがにそれはないって」
男「屋上には鍵がかかってるらしいし」
男「彼女も」
男「その事件で目が覚めたろうに」
男「ないない・・・・ったく、思春期もいい加減にしろ俺」
男「・・・・・・」
268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:03:34.87 ID:Qnnpj8xL0
俺は階段を下りるのをやめ
階段を上りはじめた
屋上に向かうために
男「・・・まぁあれだ」
男「安全確認だ安全確認」
男「先生達も忙しいだろうし」
男「今回は俺が屋上の点検作業でもしてあげよう」
269 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:07:46.97 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・・・・」
男「・・・・もし」
男「もし俺が思った通りだったら」
男「・・・・・・」
男「・・・俺はどうすればいいんだ?」
271 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:11:00.69 ID:Qnnpj8xL0
もし本当に彼女が
毎日自殺するために屋上に通いつめていたら
そしてもし俺が屋上に着いた時
彼女がしようとしている最中だったら
俺は、なんて言って止めればいいんだろう
あの話の生徒みたく
強引に止めてしまうのが
一番いいのだろうか
274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:17:09.47 ID:Qnnpj8xL0
たくさんの不安を抱えながらも
俺は足を止めることはせず
そして
俺は屋上に着いた
276 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:22:09.83 ID:Qnnpj8xL0
屋上 扉前
男「・・・・」
男「鍵が・・・開いてる・・・」
扉に付いている南京錠が
見事に開いていた
男「・・・・・」
男「悪い予感しかしねぇ・・・・」
278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:23:38.39 ID:Qnnpj8xL0
扉を開けて
屋上に飛び込んだ俺の目に
最初に入ってきた光景
久しぶりの屋上の風景と
そしてもう一つ
男「・・・あの生徒もこんな気持ちだったのかな」
フェンスに足をかける女の子の姿
280 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:27:33.77 ID:Qnnpj8xL0
屋上
見つめあう2人
ロマンスは欠片もないが
女「あ・・・あなたは・・・」
女「さっきの・・・」
男「・・・・・・」
男「何をしてるんです?」
男「いや」
男「何でそんなことをしてるんです?」
女「・・・・・・」
282 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:33:48.71 ID:Qnnpj8xL0
女「・・・知ってますよね?」
女「私の話・・・・・」
男「・・・・・・」
男「はい」
女「・・・だったら」
女「私がなぜこんな事をしているのかなんて」
女「すぐ分かりますよね・・・・?」
男「・・・・・・」
確かに分かる
だが、納得したくはない
283 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:38:16.69 ID:Qnnpj8xL0
女「あなたの知るとおり私は、確かに自殺を試み」
女「そして見つかって失敗しました」
女「おまけにその見つけた人に噂を流され」
女「私は余計に孤立しました」
女「私は悲しかった」
女「でも、私がなによりも淋しかったのは」
女「誰一人同情もしてくれなかったこと」
288 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:51:01.47 ID:Qnnpj8xL0
女「誰一人・・・・・・」
女「誰一人として、私を見てくれた人はいなかった・・・・」
女「家族」
女「先生」
女「同級生」
女「ほんのわずかな友達、いや、ただの知り合い」
女「私が見上げる風景全て」
女「私が関わっている他人全てが」
女「私に何かを突き立てた」
289 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:53:39.14 ID:Qnnpj8xL0
『ねぇ知ってる?』
『あの子自殺しようとしたんだって』
『まじで?キモイわ〜』
『道理で友達いないわけだわ〜』
『もう私話しかけるのやめよ、友達と勘違いされたらやだし』
『てかあいつ可愛くもねーしよ』
『おまけに喋り下手だし暗いし』
『あいつ勉強もダメらしいぜ』
『まじで?取り得ねえじゃんただのクソだな』
『ていうかあれじゃね』
『むしろ』
『死んでくれれば良かったのにな』
293 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:00:24.51 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・ちなみに扉の鍵はどうやって開けたんだ」
女「開けるも何も」
女「あれは私が付けた鍵なのよ」
男「あの鍵を?」
男「あれは先生とかが付けたんじゃないのか?」
女「誰かが付ける前に私が付けたのよ」
女「先生達は他の先生が付けたとでも思ってるでしょうけどね」
女「・・・・・そうよ」
女「・・・・・みんなそうなのよ」
294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:03:04.24 ID:Qnnpj8xL0
女「みんな!!!みんなそうなのよ!!!!」
女「家族は!!!知り合いは!!!先生は!!!他人は!!!」
女「みんな興味なんてないのよ!!」
あれほど大人しく見えた女の子が
荷物を片付けるのを手伝ってくれた女の子が
遠慮できる優しさを持っているであろう女の子が
俺の目の前で今
突然声を荒げてきた
いや
発狂したと言ってもいい状態
295 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:09:29.47 ID:Qnnpj8xL0
女「家族はきっとこう思ってる!!!!」
『変な娘を産んでしまった』
女「先生達はきっとこう思ってる!!!」
『死人がでなくて良かった』
女「同級生はきっとこう思ってる!!!」
『死ねばよかったのに』
女「世界は私にこう言ってる!!!」
『お前のいるべき世界は』
『ここにはないよ』
女「そうよ・・・・・」
女「私には・・・・立ち位置がないのよ・・・・・」
296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:15:21.33 ID:Qnnpj8xL0
現実で
現実でこんな悲しい人に会うのは
きっと初めて
画像を通して悲痛な現実を見る事はあっても
テレビの報道で悲しい世界を知る事はあっても
目の前で
涙を流されるのは初めて
そしてこんなにも悲しくなることは
この先の人生の中でもそうそうないと思う
297 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:17:20.83 ID:Qnnpj8xL0
女「だから・・・・」
女「私は・・・・死ぬのよ・・・・」
彼女は、フェンスを登り始めた
男「お、おい・・・」
男「やめろ・・・・」
その悲しい女の子は
俺の静止の言葉を聞く事もなく
フェンスを登りきった
299 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:24:27.73 ID:Qnnpj8xL0
女「ああ・・・・」
女「これでやっと死ねる・・・・」
女「やっと願いが叶う・・・・」
嘘だ
女「私はいつから死にたかったんだろう」
嘘をつくな
女「さようなら、知らない人」
女「あなたと喋れて少し楽になった気がする」
まだだ
まだ終わりじゃない
300 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:26:39.84 ID:Qnnpj8xL0
分かる
彼女は誰かの助けを待っている
それを表現するために
死という変わった演出をしてる
そして俺は
助けられる位置にいる
そして俺には
助けられる力がある
303 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:28:58.67 ID:Qnnpj8xL0
俺は祈る
あの力をもう一度
見知らぬ子供を助けた時のように
今度は
目の前の彼女を救わせてくれと
304 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:33:47.21 ID:Qnnpj8xL0
頭の中で目一杯念じた
頭が壊れるんじゃないかというほど念じた
頭の中はそれ一色で染まった
そんでもって精一杯祈った
だが
時間は非情にも針を進め
彼女はフェンスの外に落ちていった
307 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:46:05.72 ID:Qnnpj8xL0
時間は止まらなかった
10秒どころか1秒も止まることはなく
当然彼女も時間の流れに逆らうことはなく
彼女はゆっくりとフェンスの外に落ちていった
男(・・・・・・・・)
俺は、ただただ立ち尽くすだけだった
308 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:50:26.67 ID:K9fyp2Ve0
落ちちゃった…
310 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:55:14.24 ID:WSbgVi1P0
あわわ…
314 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:00:50.67 ID:Qnnpj8xL0
彼女はどうなったのだろう
いや、どうなったかなんてすぐに分かる
男「ここは学校の最上階・・・・・」
男「彼女は・・・・・」
男「・・・・・・」
男「・・・俺は」
男「救えなかった
涙がでた
315 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:03:31.24 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・・・・」
男「・・・恐ろしく気が引ける」
男は
フェンスに近づいた
男「でも・・・これは俺のせいだ」
男「力だなんだ言わないでさっさと彼女のとこに突っ走っていけば」
男「間に合ってたかもしれないのに・・・」
男は、目をつぶったまま
フェンスの外に目線を向けた
316 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:04:51.33 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・・・・」
男「・・・・・・・」
男「・・・・・・」
男は目を開けた
男「・・・・・・・」
男「・・・・・・」
男「・・・あれ?」
317 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:06:27.78 ID:Qnnpj8xL0
俺は下を見回した
だが
男「あれれ・・・・?」
下には彼女もいなければ
何かが落ちたような形跡もない
男「あれれれ」
男「どういうこった・・・」
男「落ちるとこは見たのに・・・・」
318 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:08:08.38 ID:Qnnpj8xL0
バッサバッサ
突如
後ろから何か聞こえた
バサバサ
何の音だ?
頭の上に何かがのっかった
なんだ?
これは・・・・
黒い羽?
319 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:10:21.19 ID:Qnnpj8xL0
俺は後ろを振り向いた
そこには
黒いフードを被った
全身黒服の
そして背中に
黒い羽の生えた人がいた
そしてその両手には
落ちたはずの彼女を抱きかかえていた
男「死神・・・・・さん?」
321 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:13:44.56 ID:Qnnpj8xL0
見たことのある風貌
感じたことのある雰囲気
死神「久しぶりだな」
男「なんでここに・・・・」
死神「そんなもの決まっているだろう」
死神「光る指輪の再生成を終えたからだ」
男「そうなんですか・・・」
322 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:16:16.91 ID:Qnnpj8xL0
死神「まぁもっとも」
死神「すぐに使ってしまったんだがな・・・・・」
男「え?」
323 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:18:50.73 ID:Qnnpj8xL0
男「使ってしまったって・・・?」
死神「本当は別の事に使う予定だったんだがな・・・」
死神「さっき空を飛んでる時につい使ってしまった」
男「な・・なぜ?」
死神「・・・つい目に入ってしまったんだよ」
死神「人が落ちる姿が」
死神「そして」
死神「こう願ってしまった」
彼女に追いつける位
早く飛べるようにしてくれ、と
324 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:19:45.28 ID:K9fyp2Ve0
死神良い奴w
327 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:41:58.56 ID:llTrwZqfO
死神なのに助けるの?ww
331 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:05:56.83 ID:Qnnpj8xL0
男「じゃあ今彼女を抱きかかえてるのは・・・」
死神「・・・俺が助けたからだ」
死神「願い石の力を使ってまでな」
男「そうだったん・・・・ですか・・・」
死神「間に合って良かったよ」
死神「結構この子の事は」
死神「気にかけてたからね」
男「え?」
332 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:06:38.35 ID:Qnnpj8xL0
俺は、よく地上に来ることがあった
魔界と地上は繋がりは薄いが
魔界からは地上に行けない事もなく
俺はちょくちょく遊びに行っていた
遊びに行く一番の理由は
人間の感情という物が
俺にはとても美しく見えて
とても眩しかったから
335 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:07:31.74 ID:Qnnpj8xL0
そんなある日
俺はいつものように空を飛び
地上を観察していた
笑いあう人々
喧嘩しあう子供達
泣きながら祝福を喜ぶ家族
俺にはとても心地よく
見ているだけで実に楽しかった
なんだが・・・・
337 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:08:46.31 ID:Qnnpj8xL0
どこかの学校の屋上で
少し変わった人間を見つけた
暗そうな顔をして
ただ虚空を見つめていて
そんでもって
見ていてまったく楽しくない人間を
339 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:09:32.51 ID:Qnnpj8xL0
毎回夕刻前後に
その人間はその学校の屋上に来た
見た目は普通の人間の女
ただ
恐ろしく覇気のない
死んだような人間に見えた
そしてその人間は
時々フェンスに登っては
そこからただただ
下を見つめるのだった
342 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:15:13.93 ID:Qnnpj8xL0
俺は少しばかり理解した
ああ、この人間はきっと
楽しいことを知らない人間なのだろうと
感情すらあらわに出来ない
可愛そうな人間であるのだろうと
そして更に俺は理解した
地上は、平等な世界ではないと
345 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:19:03.52 ID:Qnnpj8xL0
死神「俺は、その子から眼が離せなかった」
死神「そして俺は思った」
死神「笑う人間がこの地上の真実ではないと」
死神「1人嘆き憂いむ人間こそが」
死神「この地上の本当の姿なんじゃないかと」
死神「そうして考えてながら彼女を見ていたら」
死神「死神の俺ですら涙を流した」
348 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:23:30.68 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・・・・」
男「・・・じゃあ」
男「じゃあ、死神さんの願いって・・・」
死神「ああ」
死神「人間が皆幸せになれとか」
死神「ああいう風に悲しむ人間がいなくなれとか」
死神「そういう感じのことを願おうとした」
男「・・・・・・」
350 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:26:05.35 ID:Qnnpj8xL0
死神「まぁでも」
死神「結果的に彼女の役に立ったのなら」
死神「俺はそれで満足だ」
死神「これで彼女に笑ってもらえたら」
死神「俺はもっと喜ぶけど」
男「・・・・・・」
351 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:26:05.62 ID:w4JB9uwpO
死神いいやつすぎる
352 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:26:09.10 ID:K9fyp2Ve0
優しい死神だ
353 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:28:32.17 ID:Qnnpj8xL0
女さん
この世界にも、あなたの居場所はありますよ
それはちょっと変わった足場だけれど
とてもあたたかい物ですよ
ある意味、なによりも素晴らしい場所かもしれません
だからどうか
元気になってくださいね
俺は
気を失っている彼女に
そう語りつげるかのように思った
355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:30:36.67 ID:Qnnpj8xL0
男「死神さん・・・・」
死神「・・・・ん?」
男「・・・・・・」
男「ありがとうございます」
俺は
そう一言告げた
357 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:31:58.70 ID:Qnnpj8xL0
死神「・・・・・まさか」
死神「人間にそんな事を言われるとは思ってなかったよ」
死神「こちらこそありがとう」
死神「おかげで」
死神「もう悔いはないよ」
358 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:33:14.89 ID:Qnnpj8xL0
悔い・・・・?
男「悔い・・・・ですか?」
死神「ああ」
死神「もう悔いは無いよ」
男「悔いって」
男「どういうことですか?」
死神「・・・・・・」
死神「・・・・あそこを見てごらん」
361 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:35:35.39 ID:Qnnpj8xL0
俺は
死神さんが指差した方向を見た
その先には
見たことも無い風景が広がってた
空に開いた穴
そして
そこから小さな何かがいくつか出てきた
362 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:37:48.66 ID:Qnnpj8xL0
俺は愕然とした
男「な、なんですかあれ・・・・」
死神「魔界と地上を繋ぐ穴だ」
男「穴・・・・?」
死神「そう」
死神「そしてその穴からでてきたのは」
死神「魔界の警備隊さ」
363 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:39:22.69 ID:K9fyp2Ve0
死神逃げてー!
364 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:39:27.31 ID:Qnnpj8xL0
男「警備隊・・・・?」
死神「そう」
死神「俺を捕まえるためのな・・・・」
男「捕まえるって・・・」
男「なんで・・・・」
死神「ばれたからさ」
死神「俺が」
死神「願い石を地上に持ち出したことに」
367 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:41:44.39 ID:Qnnpj8xL0
願い石は、地上では願いを叶えられるほどの力を発揮する
俺は前にそう聞いたことがある
そしてそれゆえに
魔界から持ち出すことは禁じられているらしい
男「でもなんで・・・・」
死神「さぁな」
死神「俺の身の回りの死神誰かがチクったのか」
死神「はたまた俺の様子を怪しいと思って調べたのか」
死神「そう考えると死神も」
死神「人間とそう大して変わらなく汚いのかもな」
男「そんな事言ってる場合じゃ・・・・」
370 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:43:58.88 ID:Qnnpj8xL0
男「とにかく」
男「今すぐ逃げましょう!」
男「まだその警備隊とやらは遠くにいるんですから」
死神「・・・それは無理だよ」
男「どうして!?」
死神「俺の住むべき場所は魔界」
死神「魚が地上で生きられないように」
死神「鳥が地上では無力なように」
死神「俺は、地上には住めない」
死神「そして、魔界にはもう俺の居場所は無い」
死神「それになにより」
死神「もうするべきこともない」
371 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:45:10.16 ID:Qnnpj8xL0
男「何言ってるんですか!」
男「だからって簡単に捕まっていいわけありません!」
男「それに事情を話せば分かってもらえるかも・・・」
死神「無駄だよ」
死神「多分話し終える前に俺は処刑される」
男「そんな・・・・」
死神「願い石の持ち出しは、即処刑レベルの重罪ってこった」
男「・・・・・・」
432 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:33:00.47 ID:Qnnpj8xL0
だめだ
こんなのはだめだ
こんなのは
だめにきまってる
死神「俺はもう時間を楽しんだ」
死神「やりたいことも終わった」
男「でも・・・・」
433 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:33:52.91 ID:Qnnpj8xL0
死神「・・・・・・」
死神「・・・・最後に」
死神「お前には勘違いしてほしくないことがあるんだ」
435 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:38:47.23 ID:Qnnpj8xL0
死神「俺は、何一つ後悔はしていない」
死神「例え万人が笑おうとも、俺は何一つ後悔はしない」
死神「例えどんなに批評されようとも」
死神「笑う奴がいたら」
死神「俺は笑い返して」
死神「大きな声でこう言ってやる」
死神「悔しかったら俺みたく死んでみろって」
439 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:46:08.40 ID:Qnnpj8xL0
そう喋りながら笑いかける死神さんは
あの時の不安になるような雰囲気は無く
フードから時々見える笑顔が
とてつもなくかっこよくて
でも
やはりこの笑顔は
普通とは少し違くて
男「・・・・・・」
男「死ぬ前提での決意じゃねえか・・・・・」
440 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:51:35.06 ID:Qnnpj8xL0
空の穴から見えた小さないくつかの影は
段々こちらに近づいてきた
そして
それにつれて形を見せ始め
いよいよ容姿が見えるまでに近くなり
俺が死神さんと口論を終えた頃には
すでに屋上に降り立っていた
死神「やってしまった・・・」【後編】へつづく
引用元
死神「やってしまった・・・」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1239547468/
長くも短くも感じない時間だった
あの死神さんと話している時間は
感情も湧き出ることもなく
気付けば流れているような、少し変わった時間だった
周りの人が俺たちの姿と話してる内容を聞いたら
きっと変な人達だとか思うだろう
けど俺はもう
完全に信じきっていた
162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:01:24.46 ID:Qnnpj8xL0
学校への途中道
確実に遅刻な俺は
もはや開き直ってトロトロ歩いていた
男「・・・そういえば」
男「あの死神は、一体何を願おうと思ってたんだろう」
男「少し気になる・・・・」
男「っていうか俺にはホントに10秒時を止める力なんてあるのだろうか・・・」
男「そもそもどうやればその力は使えるんだ?・・・」
163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:02:19.84 ID:Qnnpj8xL0
学校 教室
ガラッ
教師「・・・・・・」
男「・・・・・・」
男「・・・おはようございます」
教師「・・・もう2時限目なんだが?」
男「まじですか」
教師「まじだ」
教師「遅刻の連絡も無いとはどういうことだ」
男「いや・・・話せば長くなるんですが・・・」
164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:04:22.84 ID:Qnnpj8xL0
教師「ほう、話せる理由があるのか」
男「はいそうなんですよ」
教師「よし、言ってみろ」
男「それがですね」
男「玄関を開けた瞬間大男に襲われ」
男「さらに長話を延々と聞かされました」
男「いわゆる監禁みたいなものです」
教師「なるほど」
教師「・・・放課後職員室に来い」
男「はい・・・ 」
165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:08:29.77 ID:Qnnpj8xL0
友A「どうしたんだよ今日は」
男「なにが」
友A「お前があそこまで遅刻するのは珍しいなって思って」
友A「ギリギリとかはしょっちゅうだけど」
男「だから言ったろ」
男「玄関開けたら大男がいて、延々話聞かされたって」
友B「どんなホラー映画だよ」
男「現実だ」
友A「・・・現実と夢の区別位つけようぜ」
男「おい、そんな目で俺を見るな」
166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:09:22.45 ID:Qnnpj8xL0
放課後
俺は先生との2人きりの密会を
1時間ほどこなした
教師「・・・・話は以上だ」
教師「これに懲りたら、せめて遅刻する時は連絡位しろ、いいな」
男「・・・・はい」
男(話なげえよ・・・・・)
男(足の血流悪くなりそう・・・)
教師「あ、そうだ」
教師「教室に戻るついでにこれもってっといてくれ」
167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:11:06.87 ID:Qnnpj8xL0
教師「明日使うからさ 」
そう言って先生が指差した先には
大量の本、恐らく教科書
男「・・・・・」
男「俺が、ですか?」
教師「がんばれ」
教師「無断遅刻の罰だとでも思ってくれ」
168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:14:13.08 ID:Qnnpj8xL0
結局俺は
クラス全員の資料を運ぶ羽目になった
男「くそ・・・・重い・・・・」
男「特にこの階段は堪える・・・・」
男「あの野朗・・・覚えてろ・・・」
男「絶対今度教壇の前でヅラ取ってやる・・・・」
170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:16:53.94 ID:Qnnpj8xL0
男「前が見えねえ・・・・」
ヨロヨロ
ドサッ
男「うおっ」
「きゃっ」
172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:18:39.37 ID:Qnnpj8xL0
ドサッドサ
俺は何かにぶつかった
というより誰かにぶつかった
衝撃で床にちらばる教科書
男(・・・・・・)
男(・・・・最悪だ)
「・・・いたた」
174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 03:19:52.09 ID:Qnnpj8xL0
男「どうもすいません」
男「前しっかり見てなくて・・・」
女「いえいえ・・・」
女「こちらこそボーッとしててすいません・・・」
女「お詫びに手伝いますよ」
男「いえいえ」
男「悪いのでいいですよ」
女「でもこの量を1人でまとめるのは・・・」
確かに
正直泣きたくなる量だ
男「・・・・・・」
男「・・・じゃあ、お願いできます?」
181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:02:15.67 ID:Qnnpj8xL0
女「じゃあ私そろそろ行きますね」
女「それじゃあまた」
そう言って女の子は階段を上がっていった
182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:04:48.62 ID:Qnnpj8xL0
結局俺は彼女に手伝ってもらってしまった
そしてその甲斐あってか、早めに片付いた
男「いやぁ、すいません」
男「おかげで早く片付け終わりました」
女「いえいえ」
女「余所見していた私が悪いんですから、当然ですよ」
男「いえいえそんな・・・」
186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:08:43.33 ID:Qnnpj8xL0
教室
ドサッ
男は荷物を教壇の脇に置いた
男「はぁ・・・ここらへんに置いときゃあいいよな」
男「やっと終わった」
男「よし、帰ろう。我が家が待ってる」
男「・・・・・・」
男「・・・それにしてもあの子どうしたんだろう」
189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:13:08.35 ID:Qnnpj8xL0
男「なんであの子階段を上っていったんだろう」
男「もうこんな時間なのに」
男「普通この時間はもう帰る時間だと思うんだが」
男「部活に行くにしても微妙な時間だし」
男「友達と待ち合わせでもしてるのかな」
男「それとも俺みたいに説教の後だったり」
男「・・・それはないだろうな、うん」
192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:17:17.15 ID:Qnnpj8xL0
翌日 学校
友A「どうだったよ」
男「何がだ」
友A「昨日放課後に呼び出しくらってたじゃねえか」
男「ああ」
男「とりあえず長かったとだけ言っておこう」
友B「だろうな」
友B「あのハゲ帰りの会すら長いからな」
友A「まぁドンマイだ」
男「おまけに荷物運び手伝わされるわ女の子にぶつかるわ」
男「最悪だったよ」
193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:21:47.89 ID:Qnnpj8xL0
友A友B「女の子?」
男「荷物には食いつかないんだな」
男「さっき配られた資料全部運んだの俺なんだぞ」
友A「女の子について詳しく話せ」
男「無視かよ」
友B「お前なにさりげなくドラマみたいな出会い体験してんだよ」
男「・・・何も起きなかったけどな」
男「荷物散らばるわで大変なだけだったし」
194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:28:04.32 ID:Qnnpj8xL0
友A「ちなみにその女の子は誰よ?」
男「見たことない顔だったからなぁ」
男「別のクラスか下手したら別学年かも」
友B「なんだよ」
友B「それじゃあ縁がねえじゃねえか」
男「俺が知るか」
男「それより早く食堂行こうぜ」
男「時間なくなるぞ」
正直今の俺にとっては
女より食欲が優先だった
友A「そういえば4時限目体育だったからな」
友A「さっさと行くか」
195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:32:44.30 ID:Qnnpj8xL0
昼休み 食堂
昼休みから少し時間が経っていたこともあり
既に大分テーブルが埋まっていた
友A「やっぱ大分混んでるな」
友B「まぁ奥の方なら空いてんだろ」
男「空いてる席空いてる席っと・・・・」
俺達は仕方なく席を探すことにした
その時・・・・・
男「あ」
197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 04:35:34.75 ID:Qnnpj8xL0
友A「ん?席見つけた?」
男「あれ・・・」
俺は、奥の端の席に1人で座っている生徒を指差した
どこかで見たことがある
確か・・・・
男「・・・・多分あの子だよ」
男「昨日ぶつかったって言った子」
199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:01:52.89 ID:Qnnpj8xL0
友A「・・・・・・」
友B「あいつか・・・・・・・」
200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:04:30.34 ID:Qnnpj8xL0
男「知り合いか?」
友B「まさか」
友B「個人的にはまったく関わりはない」
男「じゃあなんで知ってんだ」
友A「あいつは有名人だからな・・・・」
友A「悪い意味で」
友A「・・・てか俺達の学年の奴は大体知ってるぞ」
201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:06:16.02 ID:Qnnpj8xL0
男「どういうこった」
男「てか俺達と同学年なのか」
友B「・・・あいつ3組の女っていう奴なんだけど」
友B「一時期ひどい噂がはやった」
友B「そしてそれが学年全体に広がったせいで有名になった」
男「噂?」
友A「ああ」
友A「屋上で自殺しようとしたって噂がね」
202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:09:44.80 ID:Qnnpj8xL0
それは
微かに空が曇る6月のとある日に
1人の生徒が忘れ物をした時の出来事
その日
その生徒は屋上で授業をした時に忘れ物をしてしまい
放課後屋上に取りに行った
その頃はまだこの学校は屋上に自由に出入りができて
その生徒もそれを知っていた為
部活を終えた後の遅い時間に屋上に行った
そしてその時、生徒は見てしまった
203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:13:43.90 ID:Qnnpj8xL0
屋上の扉を開け
その生徒の目に入ってきた光景
そこには
フェンスに足をかける女の子の姿があった
206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:18:05.67 ID:Qnnpj8xL0
その生徒がすぐに女の子を引き止め
先生に連絡した為
大事には至らなかった
結局この事件は
一部の教師とその生徒だけが知ることとなり
その後屋上にも鍵がかけられた
それでこの話は終わり
のはずだった
208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:32:42.34 ID:Qnnpj8xL0
生徒「まさか自殺しようとしてた子がいるなんて」
生徒「驚いた・・・・・」
生徒「でも何事もなくて本当に良かった」
生徒「人を助けられたってなんか嬉しいな・・・」
生徒「・・・・・・」
その時
その生徒に芽生えた僅かばかりの欲が
話を大きく捻じ曲げた
生徒「・・・少しくらい誰かに喋っても大丈夫だよね?」
209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:39:27.38 ID:Qnnpj8xL0
友A「・・・そうして気付けばその話は全クラスに広まり」
友A「彼女は有名人になった」
友B「そして当然ながら」
友B「それからイジメとかひどかったらしい」
男「結構最近の話なんだな・・・」
男「・・・ちなみに」
男「その生徒って誰なんだ?」
友A「さあ」
友A「俺らも噂から聞いたクチだからな」
男「・・・・そうか」
210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 05:41:20.42 ID:Qnnpj8xL0
その話の後
俺達はなんとか席を見つけ飯にありついた
食事中にはもうその話も出ることはなく
よくあるどうでもいい話を適当にだべりながら食事した
やっぱり人間の興味とは薄いもので
俺も食堂を出る頃には、もうその話は頭からすっぽぬけていた
229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 11:54:14.68 ID:Qnnpj8xL0
放課後
友A「なぁ、今日どっか行かね?」
男「どこに?」
友A「う〜ん」
友B「決めてないんかい」
友A「いや、今思いついたから・・・」
男「う〜ん・・・」
友B「あ」
友B「じゃあさ、あそこにしない?」
230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 11:55:50.84 ID:Qnnpj8xL0
友B「スーパーの近くにさ、新しく喫茶店できたじゃん」
友A「できたの?」
友B「らしい」
友B「だからそこ行ってみようぜ」
友A「俺はいいが」
友B「男は?」
男「スーパーの・・・近く・・・・」
俺が・・・事故った場所の近くか・・・・
232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:05:10.56 ID:Qnnpj8xL0
俺は
あの事件の事は誰にも話していない
知っているのは
関係者と俺と警察の人と家族だけ
もしかしたら学校には伝わっているのかもしれないが
先生達も特に俺を呼び出したりとかはしなかった
そして
俺も友達に話す気はさらさら起きなかった
234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:06:44.96 ID:Qnnpj8xL0
友A「どうした?」
男「あ、いや」
男「なんでもない」
男「俺も行くよ」
友B「じゃあ決まりだな」
友B「そうと決まればさっさと行こうぜ」
男「・・・・・・」
落ち着け俺
事故こそあったが、俺は死んではいない
同じような事もきっともうないだろう
落ち着け俺
男「・・・そうだな、時間ももったいないし」
236 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:10:57.36 ID:Qnnpj8xL0
それから俺達は、喫茶店に向かった
その喫茶店は最近オープンした小さな個人経営の店らしく
スーパーで買い物ついでによる人が多いらしい
ちなみにここからは俺のどうでもいい話なんだが
あの日と違って信号待ちはあまりしなかった気がする
まぁ信号なんて気にしてもしょうがないとは思うが
ちなみに
当然の如く、例の道路はいつも通りの姿になっていた
まぁこれで未だにお祭り騒ぎしてたら焦るけど
237 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:15:47.92 ID:Qnnpj8xL0
俺は
何事もなく喫茶店についた
男「・・・意外と遠くねーか」
友A「予想外なんだぜ・・・」
友B「・・・すまん」
友B「てかこれスーパーの近くって言うのか?」
友A「スーパーから大分歩いた気がするな」
男「まぁ無事に着いたんだしよしとしようぜ」
友A「なんだそのサバイバル精神」
238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:18:01.20 ID:Qnnpj8xL0
喫茶店内
友A「何頼む?」
友B「う〜ん・・・」
友B「夕飯は家にあっからなぁ・・・」
友B「軽く飲み物だけでいいんでね?」
友A「じゃあドリンクバーでいいか」
男「・・・・・・」
240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:22:03.47 ID:Qnnpj8xL0
友A「どうしたんだ男」
友B「お前がその顔をするときは、絶対何かやらかした時だ」
男「顔で判断するな」
男「・・・当たってるけど」
友B「ほらな」
友A「ちなみに何をやらかしたんだ」
男「・・・・・・」
男「学校に忘れ物した・・・」
友A友B「・・・・・・」
241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:29:06.93 ID:Qnnpj8xL0
友A「このタイミングでそれはないわ」
友B「せめて喫茶店出た後で気付けよ」
男「そんな事言われても困る・・・」
友A「まぁどうせ大したもんじゃないんだろ?」
友A「忘れ物の事は忘れろ」
友B「さっきまで忘れてたんだけどね」
男「その変なノリやめろ」
男「てか・・・そういうわけにもいかない・・・・」
男「宿題一式忘れた・・・・・」
243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:33:32.07 ID:Qnnpj8xL0
友A「・・・・・・」
友B「・・・・・・」
友A「ああもう!取りに行って来い!」
友B「俺らまってっから!」
男「悪いな・・・」
そう言って
俺は喫茶店を出た
245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:38:11.34 ID:Qnnpj8xL0
外
男「意外とここから学校遠いよなぁ」
男「ましてやそれを往復すんのかよ」
男「めんどくさいわ」
男「・・・・・・」
男「宿題取ったらそのまま帰っちゃおうかな・・・」
男「いや、それはだめだよね・・・・」
246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 12:43:04.44 ID:Qnnpj8xL0
学校
部活をやってる人以外は
普通に下校しているであろう時間に
俺は学校に戻ってきた
男「・・・はぁ」
男「・・・ホントついてねえ」
俺は溜め息を何度もついた
つきながら教室に向かった
249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:03:07.77 ID:Qnnpj8xL0
教室
俺は机の中を漁った
男「あったあった・・・」
男「ったく、何してんだか俺は」
男「机の中に入れっぱなしとか」
俺はお目当ての宿題(提出者教師)を発見した
あいつは出す宿題も多い
男「結構あるなあ・・おい・・・」
男「ああ・・・・」
男「これからまた喫茶店戻んのか・・・」
250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:05:14.36 ID:Qnnpj8xL0
心底家に帰りたいと思う俺だったが
戻ると約束してしまった以上
戻らないわけにもいかず
俺は仕方なく宿題をバッグに詰めた後
喫茶店に向かうことにした
しかし、その道中に
変な再会を果たした
251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:07:45.01 ID:Qnnpj8xL0
男「あ・・・・・」
女「あ・・・・・・」
階段を下りようとした矢先
下から女の子が上がってきた
その顔は、何回か見たことがある顔だった
そして、相手も同じくそう思ったらしかった
男「この前はどうも・・・」
女「いえいえ」
女「こちらこそあの時はすいません」
男「いえいえ」
252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:11:19.13 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・・・・」
女「・・・・・・」
男(気まずい・・・・)
実質一回しか会ってないんだから
当然と言っちゃあ当然だが
男「・・・・・・・」
男「・・・じゃあ、俺はこれで」
よし、逃げよう
女「あ、はい」
女「それじゃあまた」
254 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:15:29.91 ID:Qnnpj8xL0
何とか話を切ることができた俺は
さっさと退散することにし
彼女とすれちがった
・・・・すれちがった?
男「・・・・・・」
男「・・・また上の階に行くのか」
257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:19:21.08 ID:Qnnpj8xL0
そう
彼女はまた階段を上がっていった
あの時と同じように
この微妙な時間帯に
男「一体いつも何をしてるんだ・・・・」
男「・・・・・・」
261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:27:01.06 ID:Qnnpj8xL0
―自殺願望の少女
―フェンスに足をかける女の子
―大事には至らなかった
―しかし、噂が広まってしまった
―そして彼女はイジメを受けた
―彼女は孤立した
『彼女はそうなった時、何を思ったのだろう?』
263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:29:48.30 ID:Qnnpj8xL0
それは、思いつかない事じゃなかった
自殺を止められた彼女が
1人の生徒によって
学年全体に事実を晒された彼女が
それによってイジメを受けたらしい彼女が
食堂で1人で飯を食うぐらいだから
きっと友達もいない彼女が
264 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 13:34:10.21 ID:Qnnpj8xL0
再び
再びあの屋上で
毎日
毎日自殺を図ろうとしているかもしれない
そんな考えを
思いつかないはずがなかった
267 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:01:09.26 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・何言ってんだよ」
男「さすがにそれはないって」
男「屋上には鍵がかかってるらしいし」
男「彼女も」
男「その事件で目が覚めたろうに」
男「ないない・・・・ったく、思春期もいい加減にしろ俺」
男「・・・・・・」
268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:03:34.87 ID:Qnnpj8xL0
俺は階段を下りるのをやめ
階段を上りはじめた
屋上に向かうために
男「・・・まぁあれだ」
男「安全確認だ安全確認」
男「先生達も忙しいだろうし」
男「今回は俺が屋上の点検作業でもしてあげよう」
269 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:07:46.97 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・・・・」
男「・・・・もし」
男「もし俺が思った通りだったら」
男「・・・・・・」
男「・・・俺はどうすればいいんだ?」
271 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:11:00.69 ID:Qnnpj8xL0
もし本当に彼女が
毎日自殺するために屋上に通いつめていたら
そしてもし俺が屋上に着いた時
彼女がしようとしている最中だったら
俺は、なんて言って止めればいいんだろう
あの話の生徒みたく
強引に止めてしまうのが
一番いいのだろうか
274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:17:09.47 ID:Qnnpj8xL0
たくさんの不安を抱えながらも
俺は足を止めることはせず
そして
俺は屋上に着いた
276 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:22:09.83 ID:Qnnpj8xL0
屋上 扉前
男「・・・・」
男「鍵が・・・開いてる・・・」
扉に付いている南京錠が
見事に開いていた
男「・・・・・」
男「悪い予感しかしねぇ・・・・」
278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:23:38.39 ID:Qnnpj8xL0
扉を開けて
屋上に飛び込んだ俺の目に
最初に入ってきた光景
久しぶりの屋上の風景と
そしてもう一つ
男「・・・あの生徒もこんな気持ちだったのかな」
フェンスに足をかける女の子の姿
280 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:27:33.77 ID:Qnnpj8xL0
屋上
見つめあう2人
ロマンスは欠片もないが
女「あ・・・あなたは・・・」
女「さっきの・・・」
男「・・・・・・」
男「何をしてるんです?」
男「いや」
男「何でそんなことをしてるんです?」
女「・・・・・・」
282 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:33:48.71 ID:Qnnpj8xL0
女「・・・知ってますよね?」
女「私の話・・・・・」
男「・・・・・・」
男「はい」
女「・・・だったら」
女「私がなぜこんな事をしているのかなんて」
女「すぐ分かりますよね・・・・?」
男「・・・・・・」
確かに分かる
だが、納得したくはない
283 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:38:16.69 ID:Qnnpj8xL0
女「あなたの知るとおり私は、確かに自殺を試み」
女「そして見つかって失敗しました」
女「おまけにその見つけた人に噂を流され」
女「私は余計に孤立しました」
女「私は悲しかった」
女「でも、私がなによりも淋しかったのは」
女「誰一人同情もしてくれなかったこと」
288 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:51:01.47 ID:Qnnpj8xL0
女「誰一人・・・・・・」
女「誰一人として、私を見てくれた人はいなかった・・・・」
女「家族」
女「先生」
女「同級生」
女「ほんのわずかな友達、いや、ただの知り合い」
女「私が見上げる風景全て」
女「私が関わっている他人全てが」
女「私に何かを突き立てた」
289 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 14:53:39.14 ID:Qnnpj8xL0
『ねぇ知ってる?』
『あの子自殺しようとしたんだって』
『まじで?キモイわ〜』
『道理で友達いないわけだわ〜』
『もう私話しかけるのやめよ、友達と勘違いされたらやだし』
『てかあいつ可愛くもねーしよ』
『おまけに喋り下手だし暗いし』
『あいつ勉強もダメらしいぜ』
『まじで?取り得ねえじゃんただのクソだな』
『ていうかあれじゃね』
『むしろ』
『死んでくれれば良かったのにな』
293 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:00:24.51 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・ちなみに扉の鍵はどうやって開けたんだ」
女「開けるも何も」
女「あれは私が付けた鍵なのよ」
男「あの鍵を?」
男「あれは先生とかが付けたんじゃないのか?」
女「誰かが付ける前に私が付けたのよ」
女「先生達は他の先生が付けたとでも思ってるでしょうけどね」
女「・・・・・そうよ」
女「・・・・・みんなそうなのよ」
294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:03:04.24 ID:Qnnpj8xL0
女「みんな!!!みんなそうなのよ!!!!」
女「家族は!!!知り合いは!!!先生は!!!他人は!!!」
女「みんな興味なんてないのよ!!」
あれほど大人しく見えた女の子が
荷物を片付けるのを手伝ってくれた女の子が
遠慮できる優しさを持っているであろう女の子が
俺の目の前で今
突然声を荒げてきた
いや
発狂したと言ってもいい状態
295 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:09:29.47 ID:Qnnpj8xL0
女「家族はきっとこう思ってる!!!!」
『変な娘を産んでしまった』
女「先生達はきっとこう思ってる!!!」
『死人がでなくて良かった』
女「同級生はきっとこう思ってる!!!」
『死ねばよかったのに』
女「世界は私にこう言ってる!!!」
『お前のいるべき世界は』
『ここにはないよ』
女「そうよ・・・・・」
女「私には・・・・立ち位置がないのよ・・・・・」
296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:15:21.33 ID:Qnnpj8xL0
現実で
現実でこんな悲しい人に会うのは
きっと初めて
画像を通して悲痛な現実を見る事はあっても
テレビの報道で悲しい世界を知る事はあっても
目の前で
涙を流されるのは初めて
そしてこんなにも悲しくなることは
この先の人生の中でもそうそうないと思う
297 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:17:20.83 ID:Qnnpj8xL0
女「だから・・・・」
女「私は・・・・死ぬのよ・・・・」
彼女は、フェンスを登り始めた
男「お、おい・・・」
男「やめろ・・・・」
その悲しい女の子は
俺の静止の言葉を聞く事もなく
フェンスを登りきった
299 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:24:27.73 ID:Qnnpj8xL0
女「ああ・・・・」
女「これでやっと死ねる・・・・」
女「やっと願いが叶う・・・・」
嘘だ
女「私はいつから死にたかったんだろう」
嘘をつくな
女「さようなら、知らない人」
女「あなたと喋れて少し楽になった気がする」
まだだ
まだ終わりじゃない
300 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:26:39.84 ID:Qnnpj8xL0
分かる
彼女は誰かの助けを待っている
それを表現するために
死という変わった演出をしてる
そして俺は
助けられる位置にいる
そして俺には
助けられる力がある
303 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:28:58.67 ID:Qnnpj8xL0
俺は祈る
あの力をもう一度
見知らぬ子供を助けた時のように
今度は
目の前の彼女を救わせてくれと
304 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:33:47.21 ID:Qnnpj8xL0
頭の中で目一杯念じた
頭が壊れるんじゃないかというほど念じた
頭の中はそれ一色で染まった
そんでもって精一杯祈った
だが
時間は非情にも針を進め
彼女はフェンスの外に落ちていった
307 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:46:05.72 ID:Qnnpj8xL0
時間は止まらなかった
10秒どころか1秒も止まることはなく
当然彼女も時間の流れに逆らうことはなく
彼女はゆっくりとフェンスの外に落ちていった
男(・・・・・・・・)
俺は、ただただ立ち尽くすだけだった
308 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:50:26.67 ID:K9fyp2Ve0
落ちちゃった…
310 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:55:14.24 ID:WSbgVi1P0
あわわ…
314 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:00:50.67 ID:Qnnpj8xL0
彼女はどうなったのだろう
いや、どうなったかなんてすぐに分かる
男「ここは学校の最上階・・・・・」
男「彼女は・・・・・」
男「・・・・・・」
男「・・・俺は」
男「救えなかった
涙がでた
315 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:03:31.24 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・・・・」
男「・・・恐ろしく気が引ける」
男は
フェンスに近づいた
男「でも・・・これは俺のせいだ」
男「力だなんだ言わないでさっさと彼女のとこに突っ走っていけば」
男「間に合ってたかもしれないのに・・・」
男は、目をつぶったまま
フェンスの外に目線を向けた
316 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:04:51.33 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・・・・」
男「・・・・・・・」
男「・・・・・・」
男は目を開けた
男「・・・・・・・」
男「・・・・・・」
男「・・・あれ?」
317 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:06:27.78 ID:Qnnpj8xL0
俺は下を見回した
だが
男「あれれ・・・・?」
下には彼女もいなければ
何かが落ちたような形跡もない
男「あれれれ」
男「どういうこった・・・」
男「落ちるとこは見たのに・・・・」
318 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:08:08.38 ID:Qnnpj8xL0
バッサバッサ
突如
後ろから何か聞こえた
バサバサ
何の音だ?
頭の上に何かがのっかった
なんだ?
これは・・・・
黒い羽?
319 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:10:21.19 ID:Qnnpj8xL0
俺は後ろを振り向いた
そこには
黒いフードを被った
全身黒服の
そして背中に
黒い羽の生えた人がいた
そしてその両手には
落ちたはずの彼女を抱きかかえていた
男「死神・・・・・さん?」
321 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:13:44.56 ID:Qnnpj8xL0
見たことのある風貌
感じたことのある雰囲気
死神「久しぶりだな」
男「なんでここに・・・・」
死神「そんなもの決まっているだろう」
死神「光る指輪の再生成を終えたからだ」
男「そうなんですか・・・」
322 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:16:16.91 ID:Qnnpj8xL0
死神「まぁもっとも」
死神「すぐに使ってしまったんだがな・・・・・」
男「え?」
323 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:18:50.73 ID:Qnnpj8xL0
男「使ってしまったって・・・?」
死神「本当は別の事に使う予定だったんだがな・・・」
死神「さっき空を飛んでる時につい使ってしまった」
男「な・・なぜ?」
死神「・・・つい目に入ってしまったんだよ」
死神「人が落ちる姿が」
死神「そして」
死神「こう願ってしまった」
彼女に追いつける位
早く飛べるようにしてくれ、と
324 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:19:45.28 ID:K9fyp2Ve0
死神良い奴w
327 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:41:58.56 ID:llTrwZqfO
死神なのに助けるの?ww
331 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:05:56.83 ID:Qnnpj8xL0
男「じゃあ今彼女を抱きかかえてるのは・・・」
死神「・・・俺が助けたからだ」
死神「願い石の力を使ってまでな」
男「そうだったん・・・・ですか・・・」
死神「間に合って良かったよ」
死神「結構この子の事は」
死神「気にかけてたからね」
男「え?」
332 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:06:38.35 ID:Qnnpj8xL0
俺は、よく地上に来ることがあった
魔界と地上は繋がりは薄いが
魔界からは地上に行けない事もなく
俺はちょくちょく遊びに行っていた
遊びに行く一番の理由は
人間の感情という物が
俺にはとても美しく見えて
とても眩しかったから
335 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:07:31.74 ID:Qnnpj8xL0
そんなある日
俺はいつものように空を飛び
地上を観察していた
笑いあう人々
喧嘩しあう子供達
泣きながら祝福を喜ぶ家族
俺にはとても心地よく
見ているだけで実に楽しかった
なんだが・・・・
337 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:08:46.31 ID:Qnnpj8xL0
どこかの学校の屋上で
少し変わった人間を見つけた
暗そうな顔をして
ただ虚空を見つめていて
そんでもって
見ていてまったく楽しくない人間を
339 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:09:32.51 ID:Qnnpj8xL0
毎回夕刻前後に
その人間はその学校の屋上に来た
見た目は普通の人間の女
ただ
恐ろしく覇気のない
死んだような人間に見えた
そしてその人間は
時々フェンスに登っては
そこからただただ
下を見つめるのだった
342 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:15:13.93 ID:Qnnpj8xL0
俺は少しばかり理解した
ああ、この人間はきっと
楽しいことを知らない人間なのだろうと
感情すらあらわに出来ない
可愛そうな人間であるのだろうと
そして更に俺は理解した
地上は、平等な世界ではないと
345 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:19:03.52 ID:Qnnpj8xL0
死神「俺は、その子から眼が離せなかった」
死神「そして俺は思った」
死神「笑う人間がこの地上の真実ではないと」
死神「1人嘆き憂いむ人間こそが」
死神「この地上の本当の姿なんじゃないかと」
死神「そうして考えてながら彼女を見ていたら」
死神「死神の俺ですら涙を流した」
348 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:23:30.68 ID:Qnnpj8xL0
男「・・・・・・」
男「・・・じゃあ」
男「じゃあ、死神さんの願いって・・・」
死神「ああ」
死神「人間が皆幸せになれとか」
死神「ああいう風に悲しむ人間がいなくなれとか」
死神「そういう感じのことを願おうとした」
男「・・・・・・」
350 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:26:05.35 ID:Qnnpj8xL0
死神「まぁでも」
死神「結果的に彼女の役に立ったのなら」
死神「俺はそれで満足だ」
死神「これで彼女に笑ってもらえたら」
死神「俺はもっと喜ぶけど」
男「・・・・・・」
351 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:26:05.62 ID:w4JB9uwpO
死神いいやつすぎる
352 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:26:09.10 ID:K9fyp2Ve0
優しい死神だ
353 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:28:32.17 ID:Qnnpj8xL0
女さん
この世界にも、あなたの居場所はありますよ
それはちょっと変わった足場だけれど
とてもあたたかい物ですよ
ある意味、なによりも素晴らしい場所かもしれません
だからどうか
元気になってくださいね
俺は
気を失っている彼女に
そう語りつげるかのように思った
355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:30:36.67 ID:Qnnpj8xL0
男「死神さん・・・・」
死神「・・・・ん?」
男「・・・・・・」
男「ありがとうございます」
俺は
そう一言告げた
357 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:31:58.70 ID:Qnnpj8xL0
死神「・・・・・まさか」
死神「人間にそんな事を言われるとは思ってなかったよ」
死神「こちらこそありがとう」
死神「おかげで」
死神「もう悔いはないよ」
358 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:33:14.89 ID:Qnnpj8xL0
悔い・・・・?
男「悔い・・・・ですか?」
死神「ああ」
死神「もう悔いは無いよ」
男「悔いって」
男「どういうことですか?」
死神「・・・・・・」
死神「・・・・あそこを見てごらん」
361 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:35:35.39 ID:Qnnpj8xL0
俺は
死神さんが指差した方向を見た
その先には
見たことも無い風景が広がってた
空に開いた穴
そして
そこから小さな何かがいくつか出てきた
362 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:37:48.66 ID:Qnnpj8xL0
俺は愕然とした
男「な、なんですかあれ・・・・」
死神「魔界と地上を繋ぐ穴だ」
男「穴・・・・?」
死神「そう」
死神「そしてその穴からでてきたのは」
死神「魔界の警備隊さ」
363 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:39:22.69 ID:K9fyp2Ve0
死神逃げてー!
364 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:39:27.31 ID:Qnnpj8xL0
男「警備隊・・・・?」
死神「そう」
死神「俺を捕まえるためのな・・・・」
男「捕まえるって・・・」
男「なんで・・・・」
死神「ばれたからさ」
死神「俺が」
死神「願い石を地上に持ち出したことに」
367 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:41:44.39 ID:Qnnpj8xL0
願い石は、地上では願いを叶えられるほどの力を発揮する
俺は前にそう聞いたことがある
そしてそれゆえに
魔界から持ち出すことは禁じられているらしい
男「でもなんで・・・・」
死神「さぁな」
死神「俺の身の回りの死神誰かがチクったのか」
死神「はたまた俺の様子を怪しいと思って調べたのか」
死神「そう考えると死神も」
死神「人間とそう大して変わらなく汚いのかもな」
男「そんな事言ってる場合じゃ・・・・」
370 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:43:58.88 ID:Qnnpj8xL0
男「とにかく」
男「今すぐ逃げましょう!」
男「まだその警備隊とやらは遠くにいるんですから」
死神「・・・それは無理だよ」
男「どうして!?」
死神「俺の住むべき場所は魔界」
死神「魚が地上で生きられないように」
死神「鳥が地上では無力なように」
死神「俺は、地上には住めない」
死神「そして、魔界にはもう俺の居場所は無い」
死神「それになにより」
死神「もうするべきこともない」
371 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:45:10.16 ID:Qnnpj8xL0
男「何言ってるんですか!」
男「だからって簡単に捕まっていいわけありません!」
男「それに事情を話せば分かってもらえるかも・・・」
死神「無駄だよ」
死神「多分話し終える前に俺は処刑される」
男「そんな・・・・」
死神「願い石の持ち出しは、即処刑レベルの重罪ってこった」
男「・・・・・・」
432 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:33:00.47 ID:Qnnpj8xL0
だめだ
こんなのはだめだ
こんなのは
だめにきまってる
死神「俺はもう時間を楽しんだ」
死神「やりたいことも終わった」
男「でも・・・・」
433 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:33:52.91 ID:Qnnpj8xL0
死神「・・・・・・」
死神「・・・・最後に」
死神「お前には勘違いしてほしくないことがあるんだ」
435 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:38:47.23 ID:Qnnpj8xL0
死神「俺は、何一つ後悔はしていない」
死神「例え万人が笑おうとも、俺は何一つ後悔はしない」
死神「例えどんなに批評されようとも」
死神「笑う奴がいたら」
死神「俺は笑い返して」
死神「大きな声でこう言ってやる」
死神「悔しかったら俺みたく死んでみろって」
439 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:46:08.40 ID:Qnnpj8xL0
そう喋りながら笑いかける死神さんは
あの時の不安になるような雰囲気は無く
フードから時々見える笑顔が
とてつもなくかっこよくて
でも
やはりこの笑顔は
普通とは少し違くて
男「・・・・・・」
男「死ぬ前提での決意じゃねえか・・・・・」
440 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:51:35.06 ID:Qnnpj8xL0
空の穴から見えた小さないくつかの影は
段々こちらに近づいてきた
そして
それにつれて形を見せ始め
いよいよ容姿が見えるまでに近くなり
俺が死神さんと口論を終えた頃には
すでに屋上に降り立っていた
死神「やってしまった・・・」【後編】へつづく
引用元
死神「やってしまった・・・」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1239547468/
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