しばらくの間、再投稿の記事ですがご了承下さい。

引用元
【5:30】妹「お兄ちゃん……」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1231922450/


 
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:40:50.51 ID:u3Aj+Y9O0

……。
…………。
………………。

あの日は初夏を感じさせるような、
暑い日差しが降り注ぐ、雲一つない快晴な一日だった。

さらにその上、
心地よいと感じるほどの涼しい風が吹いていて、
絶好の外出日和と言って間違いなかったんだ。

俺「今日はピクニックだーーーー!!ヤッフー!!」

久しぶりの家族一緒の外出に、
小学生の高学年とは思えないほど、はしゃいでいたっけ。

あの頃の両親も、共働きで家にいることが多くなく、
みんなで集まって外出する日は一年で数回。
少しはしゃいでしまったのは仕方ない……。

前日、興奮して眠れなかったのは、
かなり恥ずかしい記憶だけどね…。


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:41:23.62 ID:u3Aj+Y9O0

…………。
…………。

俺「皆さん、起きとりますかーー!!
雲一つない最高のピクニック日和だよ!」

睡眠が足りてないとハイになることって良くあるじゃん。
しかも、楽しい一日の朝ゆえに拍車をかけて。

父・母・姉「あ……………」

リビングのただならぬ空気を察することが出来なかったわけですよ。

そして……

妹「お兄ちゃん……」

…………。

…そこにはひどく汗をかいて、呼吸も苦しそうな妹。
ソファーにもたれ、肩で息している姿は本当に痛々しかった。

それなのに……


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:42:50.83 ID:u3Aj+Y9O0

妹「…き、今日のお天気いいんだ…、良かったあ…。
きちんと、て、手つないでいく約束…忘れてないよね…?」

今にも倒れそうで、苦しそうで、喋るのもキツそうなのに…
健気な笑顔で、手を差し伸べる彼女の姿は、
幼い自分の胸にも、確かに刺さるものがあったんだ。

その胸にあった、今日への期待もいつの間にかに縮んでいて。

姉「……………(フルフル)」

姉に助けの視線を投げかけても、
ただただ首を振るだけだった。

母「昨日、風呂上がりにすぐに髪を乾かさないで、
うろうろしてたのが原因かもね」

母「だから、いつも湯冷めは気を付けなさい…
って言ってたんだけど…母さんも昨日は甘く許しちゃったわ
ごめんなさいね」

父「まあ、妹がこんな状態だし仕方ないな…」


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:43:33.53 ID:u3Aj+Y9O0

母「そう…ね。この体調だとどうしようもないし
無理して肺炎にでもなったらもっと大変…」

父「だな」

父「そういうことだ、俺」

父が何を言ってるかは理解していた。
でも、今までこの日を楽しみにしてたのに…
こんな仕打ちはないんじゃないかって、思ったんだ。

分かっていても、父のそのあとの言葉は聞きたくなかった。

父「今日の外出は……、中止な」

まあ…、当然なことだよね…。

姉「………俺」

一番外出を楽しみにしてたのが俺ならば、
みんなの笑顔を一番楽しみにしてたのは常に姉さんだった。


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:44:09.74 ID:u3Aj+Y9O0

だからこそ、そんな悲しそうな目で見ないでよ…。
姉さんにはいつも笑ってて欲しいんだ。

そのために…そろそろ、
無理にでも自分の頭を切り替えようと思っていた、

そんな矢先……

妹「…………行けるもん……(ボソッ」

……微かな声だったけど、確かに妹がそう発したんだ。

母「え?」
父「ん?」

二人は聞き直す。

すると……


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:44:50.70 ID:u3Aj+Y9O0

妹「行けるもん!!!私は大丈夫だもん!!
今日はお兄ちゃんと手つないで遊びに行くんだもん!」

こんどははっきりと。
妹の胸の中にあった大きなわだかまりが、
口からどんどん出ていくようだった。

妹「山に付いたら、お花畑でお姉ちゃんと一緒に冠を作るの!!
それでパパとママにその冠を褒めてもらって…」

出鼻をくじかれた俺は、ただただ妹を見つめることしか出来ず。

妹「お昼にはママが作ったお弁当をみんなで食べて…
お兄ちゃんに私が作った卵焼きを食べてもらって…
おいしいねって言われて、私も嬉しくて…みんなも笑顔で」

妹「久しぶりの家族一緒をめーいっぱい、楽しむの!」

それは留まることを知らなかった。

姉「妹……もういいのよ……」

妹「……それで……それで……ゴホッゴホっ…」
母「ちょっと妹、大丈夫!?」


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:45:27.46 ID:u3Aj+Y9O0

体調が悪いのに急に大きな声を出したもんだから、
盛大にむせてしまう妹。

そんな妹を見て…
ただ立ち尽くしてるだけの自分がひどく情けなくて…

でも俺なら今の状況を変えれるはずだとその時、思ったんだ。

妹「……え?」

妹の小さく細い右手を自分の右手でしっかりと握ってやる。
握って初めてわかったが、相当熱があるようだった。

姉「……俺」

さきほどまでの想い通りにいかない悔しさは、
当に無くなっていて…

涙ぐんでいる目の前の少女を助けてやりたい…
ただそれだけだったんだ。

俺「別にピクニックなんてどうでもいいよ」

それは自分にも言い聞かせるように。


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:46:02.81 ID:u3Aj+Y9O0
それは自分にも言い聞かせるように。

俺「今日は運が無かっただけ。
ピクニックなんてこれからいつだって行けるし、
妹が無理する必要なんてない」

妹「で、でも……、
前からお兄ちゃんとの約束楽しみにしてて……
私のせいで………うぅっ…うっ…」

遂に堰を切ったように妹の目から涙が溢れ出す。
逆効果だったかな…と、不安になりながらも、
握りしめた右手がふと目に入って、いい案が思いついたんだ。

俺「だったらそうだ!」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:48:15.64 ID:u3Aj+Y9O0

俺「妹が今日横になって安静にしている間、
側にいるよ。勿論、手を握ったままでね!
それなら約束、果たせたことにならないかな?」

妹「ひ、ひっく…お、お兄ちゃんが手握っててくれるの…?」

俺「うん!」

妹「……ず、ずっと…?」

俺「うん!ずっと」

妹「…そ、それなら、私、十分、嬉しいよぉ……」

ぐちゃぐちゃの顔で、
でも、その垣間からふと姿を現した笑顔。

それはその日、初めて見た、妹のどびっきり可愛い笑顔だった。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:48:51.62 ID:u3Aj+Y9O0

…………。
…………。

妹「……すぅすぅ……」

俺「……………」

プニッ

妹「……う、ウう…ん………すぅすぅ……」

俺「………寝た…かな…?」

妹「……すぅすぅ……」

妹「……お、おにぃ…ちゃあ……ヘヘ…大好き…」

俺「!?」

妹「エヘ………すぅすぅ……」

俺「ね……寝言か……」

俺「……(///)」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:49:31.13 ID:u3Aj+Y9O0

ガチャン

姉「……ど、どう?妹寝た…?(ボソッ)」

俺「お!!!……あ、うん」

姉「ちょっ…大きな声出さない、ね?
妹起きちゃうでしょ…」

俺「あ……いや、普通にごめん」

タイミングが悪いんだよなあ…。

姉「駄目よ?静かにしてないと…。
熱もかなりあったみたいだからね」

姉「でもねえ…」

そういって妹の顔をじっと見つめる姉。

姉「さっきまであんなに駄々捏ねてたのに、
大好きなお兄ちゃんと手繋いでるだけで、
こんなにすやすや寝ちゃって……、もう」

ツンツン


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:50:42.88 ID:u3Aj+Y9O0

妹「……うぅん……」

俺「こ、こら姉さん!」

妹「…………すぅすぅ………」

姉「ハハ、悪い悪い。
ちょっと生意気な奴だなと、悪戯心が」

目の前で手を合わせて、テへってペコちゃん。

こういうの本当にずるいよなあ……。
綺麗だと何やっても様になるから困った。

俺「べ、別にいい、けどさ…(///)………ってよくない!
姉さんが言ったんだから、自分も守ってよ。
起こしちゃ可哀想」

危ない危ない。


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:51:37.72 ID:u3Aj+Y9O0

姉「はいはい拙者、心しまする!
……愛する妹のためだもんねー。
お兄ちゃん頑張ってる頑張ってる」

俺「……また、馬鹿にして」

姉「あれ?
もしかして拗ねちゃった?」

俺「………べつに…」

姉「ごめんごめん。
姉ちゃんちょっと調子乗っちゃったみたい。
二人の仲良さぶりに、嫉妬しちゃったのかなあ」

俺「っ!?」

顔が紅くなるのも自分で分かったんだ。
あの時は、部屋が暗くて正直助かった。


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:52:20.87 ID:u3Aj+Y9O0

姉「でもね。
ほんとうに俺はよくやってると思うよ」

俺「え?」

姉「一番ピクニック楽しみにしてたのは俺だもんねー。
妹は一緒になって騒いでるって感じで、
本当にショックだったのは俺」

俺「…………」

姉「あの場面なら普通は駄々こねたいよねー。
やっぱり、あそこで一言ぐらい言いたかったんじゃない?
『なんで、想い通りにいかないんだ』って」

俺「…………」

あーあ……。
本当に姉さんには叶わない。

俺は、口をつぐんで黙っていることしか出来なかった。
でもそれは……

結果的に肯定してることになっちゃうんだよなあ…。


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:53:05.10 ID:u3Aj+Y9O0

姉「妹がいたから我慢したんだよね?
よく頑張りました。本当にありがとね」

そんな素直に褒められたら、感謝されたら…

姉「だから、もう良いんだよ」

そんな風に優しい声でささやかれたら…

姉「私の前では強がんなくって良いの。
ね?」

甘えたくなっちゃうじゃないか…。

グイ

いつの間にか、俺の体が抱き寄せられていた。
柔らかい姉さんの体が俺を包み込み、
胸の奥のものが次第に流れていく。

本当に温かくて、
自分はやっぱり姉さんには叶わないんだなって、
その日、再度自覚させられたんだ。


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:53:42.92 ID:u3Aj+Y9O0

…………。
…………。

そしてそのあと。
泣きはしなかったけど、
ちょっと弱音は吐いちゃった。

あと二年で中学生になるってのに、
この程度のことで幼いなって、今は思うよ。

…………。

こんな毎日が幸せな日。
六年前のとある一日の話。

そして……

時はあっという間に過ぎていったんだよなあ。

………………。
…………。
……。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:56:54.58 ID:u3Aj+Y9O0

何か懐かしい夢をみていた気がする。

それはとっても温かくて…
いつまでも浸っていたくて…

けど…

俺「…………」

俺「…………あ」

微かに聞こえる小鳥の鳴き声。

俺「……………ん……ン、
……朝か……」

時計を見ると、時刻は五時半。
いつも通りだ。

俺「?」

ふと瞼を擦ろうとしたところ、
その“いつも”とは違う異常に気が付く。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:57:39.36 ID:u3Aj+Y9O0



俺「あれ……?
なんで俺泣いてんだろ……」



…………。

懐かしい夢を見ていた。

それはとっても温かくて…
いつまでも浸っていたくて…

そんな幸せな日々。

みんなが笑っていて。
家族が笑っていて。
俺も笑っていて。



けど……

それを悲しいと感じてしまうのは…。




28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:58:24.53 ID:u3Aj+Y9O0

…………。

俺「よし!今日も頑張るぞ!!」

誰もいないリビングで一人喝を入れる。

やらなきゃいけないことは数多とある。
時間はいつも足りない。

ただ、そんな現実から逃避していても始まらないのだ。

適切な時機を判断し、
優先順位を付けながら少しずつこなしていく。

今で言えば……

俺「飯だな」

男の料理なんだから大雑把でいいものの、
今日は気分を代えて、弁当でも作ってみるか。

俺「よし、俺ちん頑張っちゃうぞ♪」

……やってから後悔。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:59:05.95 ID:u3Aj+Y9O0

…………。
…………。

俺「何たってカツだろ」

俺「お肉ちゃん出ておいで」

俺「ええと……衣と卵…」

俺「油油」

ジュジュジュ

俺「あ、やべ………。
飯炊くの忘れてた!!!」

俺「ん?」

俺「カツサンドもいいな……」

俺「まあ、アイツはごはん派だからいいか…」

………男の料理、開催中。
独り言が多くなるのは仕方ない……うん。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 17:59:39.33 ID:u3Aj+Y9O0

…………。

一通りの準備を終えて、自分の支度をし始める。

そして何だかんだしてるうちに時間は過ぎて…。

…………。

妹「……………」

俺「あっ……おはよ」

いつまで経っても降りてこないので、
先に飯を食べていたら、妹が支度を終えてリビングに現れた。

妹「……………」

俺「……………」

妹「……………ご飯」

ぼそっと一言呟く。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:00:21.15 ID:u3Aj+Y9O0

俺「あ……ああ!!
今日はなんか気分が乗って豪華にしてみたんだ!」

ちょっとの反応が嬉しくて…
体裁なんか気にしてられなくて…

妹「……………」

俺「妹はごはん党だからきちんとそっちも用意してあるよ。
あ、こっちのカツサンド欲しかったらいってくれ!」

畳み掛ける。

俺「でもちょっと兄ちゃん作り過ぎちゃったなあ、ハハ…。
俺は弁当で持ってくつもりなんだけど!
どうだ!妹の分も用意出来るぞ!」

……まあ、大体の返答は分かりきってる…。

妹「悪いけど……
今日から朝食抜くって言いたかっただけだから…」


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:01:00.06 ID:u3Aj+Y9O0

俺「あ………。
えっとダイエットか……?」

妹「ま、そんなとこ……」

俺「……じゅ、十分、いいと思うけど……」

妹「……………」

妹「…………んじゃ私、もう行く…」

俺「あ…………」

それでも何とか諦めずに…

俺「ひ、昼は抜かないんだろ!
んじゃカツサンド、お弁当にどうだ!!」

もっと良い台詞無かったのかよ……。
ダイエットを考えている女が、
揚げ物なんか食わないだろうことに後で気付く。

妹「……………」

妹「…………じゃ」

ガチャン


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:02:23.13 ID:u3Aj+Y9O0

リビングの扉が閉まる。

足は止ったものの、一瞥すらせずに去っていた妹。

完全なる拒絶……か。

俺「ふぅ……」

俺「………なんでこんなになっちゃったんだろうな」

誰に問うわけでもなく…
あえて言うなら、自分自身に言い聞かせるように。


また今日が始まる。



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:05:54.42 ID:u3Aj+Y9O0

…………。
…………。

黙々と数学の教師が黒板に方程式を書いていく。

つまらない授業。

一体これらが何の訳に立つのだろうか。
この問題が解けることに何の意味があるのだろうか。

?「………ぉ…」

先が見えなかった。
自分の数年後が全く想像出来ない。

?「………んぞ!」

今と変わらない日々を送っているのか。
そもそも、その頃までに生きているのかさえ今は疑わしい。

結局は答えの出ない問いばかり…。
朝の件以来、ずっと自問自答を続けている。

せっかく、今日は頑張ろうと思っていたのに…
少し、頭の中が悪い方向に行っているようだった。

──と、突然。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:06:30.21 ID:u3Aj+Y9O0

背後を誰かにどつかれた。

ゴッ!

俺「いっ……いって〜〜!!!」

担任「俺君、さっきから私の話聞いてなかったでしょ?」

俺「えっ!?えっ!?」

そこには頬を小動物のように膨らませた、担任様が立っていた。
あ、可愛い…。

友1「俺は声かけたかんな……」



担任「さっきから、ボーッとボーッと。
眠いのかと思って当てたら案の上、無視ですよ」

俺「い、いや…」

担任「私が新任だから、『このアマ調子こくなよゴラア』
『腐れビッチは一人で悲しく板書してろよカス』
とか思っていたに違いないです!」

俺「……そ、そんなこと思ってま──」


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:07:07.97 ID:u3Aj+Y9O0

友1「俺知らね」

担任「そりゃ私だって……
自分の授業が心底要領悪いって自覚してますよ…
だから、眠ってしまうのも仕方ないかなって…」

俺「あ、あの…先生…?」

担任「だから、眠ってる子をあえて起こそうとはしません…。
寝てしまうのは私の力不足みたいなものですし、
他人に迷惑かけてるわけじゃありませんし…」

担任「……後で私が独り涙を流せば済む話なんです(ボソッ)」

俺「…え?先生、聞こえな──」

担任「ですが!!!」

俺「!?」


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:07:46.55 ID:u3Aj+Y9O0

担任「無視は絶対駄目です!
先生はA型なんです!無視が何よりも堪えるんです!」

俺「そ、そうなんですか…」

友1「…どっちかというと奇人変人のABのような…(ボソッ)」

ギロッ

友1「ヒッ!?」

担任「………とにかく。
起きてるんだったらきちんと私の授業聞いてくださいね。
これ以上反抗的……無視を続けたら先生泣きます」

俺「罰とかじゃなくて、泣くんですか…」

担任「はい。もう盛大に泣いてやります。
上からもグチグチ、下からは無視されて……
そんなの続いたら先生の涙で学校は沈没です」

俺「ち、沈没…」

担任「授業を聞くこと!返事は?」

俺「は、はい!」


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:08:33.39 ID:u3Aj+Y9O0

担任「よろしいです!素直な子は先生大好きです」

怒った顔が一瞬で変わる。

とってもキュートな笑顔。
少しドキッとしてしまったのはお約束。

担任「ではさきほどの続きから──」

…………。


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:09:10.05 ID:u3Aj+Y9O0

なんか嵐のようにやってきて…
過ぎ去っていった…。

でもあれ?

胸の中の鬱憤が取れた感じ。

もしかして先生──

…………。

担任「それと…」

担任「友1君は後で職員室でじっくりお話しましょう」

友1「ちょっ?!」

…………。



まさか、ねぇ……?





44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:09:49.84 ID:u3Aj+Y9O0

…………。
…………。

帰宅中。

友1「……なんで俺がこっぴどく説教されてんだよ……」

俺「んま、仕方ねぇ仕方ねぇ」

友1「俺はお前を起こそうとしただけなのに…シクシク。
余計なこと言わなきゃ良かったぜ…」

俺「結局お前は何言ったんだ?
声が小さくて全然聞こえなかったけど…」

友1「別にちょっとからかっただけだよ…。
しかし担任、耳良いよなあ。地獄耳マジ有り得んし」

俺「そんなこと言ってるとどこかで聞いてるかもしれんぞ。
ギロッ!……って」

友1「ヒッ!?……おま…脅かすなよ…」

担任のあの一瞬の目つきは、相当やばかった…。
尿意があったらチビリそうだったぜ…ふぅ…。


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:10:33.77 ID:u3Aj+Y9O0

友1「あれは絶対、殺気が籠ってた。
マジで『殺される!?』って思ったもん…。
しかしなんか逆鱗に触れちゃったのかな…」

今になっては分かるわけもなく。
増してや、本人に聞くなんて──

俺「確実に、殺されるな」

友1「ん?……確かになあ。やばかったぜ」

俺「ま、それはそれとして」

友1「どうした?」

俺「今日は、この後どうする?」

今から家に帰っても当然のことながら誰もいないわけで。
一人で悲しくしてるのは、出来るだけ避けたいお年頃で。

友1「んじゃ、どっか遊びにいくか!
カラオケ……二人だから無しだな。
ボーリング……たけぇな」

俺「んま、その辺うろうろして、ゲーセンでも行こうぜ」

友1「それがいいかもな。
目的が無くても時間はつぶれる」


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:11:19.42 ID:u3Aj+Y9O0

俺「よっしゃ!」

俺「んじゃ、いこ──」

いざ街の中心に向かおうかと足を向けた時、

偶然目にしてしまう。

友1「どうした?」

俺「……い、いや……何でも無い」

出来るだけ平静を装おうと、
必死に頭を切り替えようとする。

けれども、唐突過ぎる出来事に、
自分の頭も付いていく事が出来ず。


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:11:59.34 ID:u3Aj+Y9O0

いけないと分かっているのに…

そちらに再度、目を向けてしまう。

友1「…ん?」

やはり、気付かれてしまった…。

友1が俺の視線を辿る。

そしてその先には──

友1「おお、可愛い子いんな…。
でもあれ…?あの子、お前の妹じゃなかったっけ?」

ほんと……


今日ばかりはコイツの勘の良さを心底恨む…。



49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:12:40.65 ID:u3Aj+Y9O0

二人の視線の先にいたのは、
恐らく帰宅途中と思われる一人の少女。

ショートへヤーに少し色が入っていて、毛先は跳ねていた。
すらっとした体型に……だけど何故かひどく脆そうで。

間違うことはない。

何十年も一緒に暮らしてきた、俺の妹だった。

友1「何だよ…お前が挙動不審だから見てみたら…。
昔見た時に比べると、可愛くなりすぎ…。
やべぇ、これからはお兄さんと呼ばせて下さい」

俺「なめんな」

まあ、今の俺が言えた義理じゃないけどさ。

友1「そういえばお兄さん、妹さんと相当仲良かったよね?
俺が遊びに行くといつもお兄さんの後ろ付いてきたし…」

友1「んじゃ、呼んでみますか!」

俺「な!?」

俺が一番危惧していた事態になってしまった!


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:13:27.77 ID:u3Aj+Y9O0

友1「いも〜うと〜さーーーん!!!!
初めて見たときから、決めてま、シターーー!!」

妹「?」

終わった…。

友1「とっ、突撃ーーーー!!」

凄い勢いで駆けていく一人の男。
絶賛彼女募集中だそうです。

妹「え?あ、あのぉ……」

戸惑う娘。

まだ、俺には気付いていないようだった。

しぶしぶ俺は二人に近づいていく。

友1「初めて見た時から、あなたに決めてました!
どうか私めを罵っ…いえいえ、兎に角好きなんです!」

駄目な性癖が見え隠れ。


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:14:04.10 ID:u3Aj+Y9O0

妹「えっと……そ、あ………」

慌てる妹。

正直、こんな様子の妹を見るのは久しぶりだった。
そういえば、人見知りするんだったよなあと思い出す。

久しぶりにみる、妹らしい姿。

そんな姿をずっと見ていたいな、と思いながらも──



それが叶うことはなかった。




52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:14:40.69 ID:u3Aj+Y9O0

妹「あ……」

そこで初めて、俺の存在に気が付く。

軽く俺と視線を合わせ、

一瞬で“いつも”の無機質な表情に変わった…。

友1「え?」

その変わりように、この男も付いていけないようで。

妹「では失礼します」

そう冷酷に言いつけて、
俺達の前を通り過ぎていった。

友1「え?…え??どういうこと?」

俺「……………」


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:15:22.19 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

この場面で俺が妹に話しかけることはない。

語りかけた言葉も全ては霧消し、
そこに残るのは後味の悪さだけ。

本当はこんなはずじゃなかったんだ。

あの夢のような幸せな日々はずっと続いて、

みんなが笑顔でいる世界が、
家族全員揃う世界が、

そして──

俺と妹が時には喧嘩しながらも、
手を取り合う世界があるはずだった。


全ての歯車が狂ったのは、三年前の夏のこと。

特に暑かった、あの日──


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:16:01.11 ID:u3Aj+Y9O0


家族の中心だった、姉さんが、死んだ。


……………。

俺「うっ……」

ザザー…

ノイズが走る。

忘れようとしていた記憶が蘇る。


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:16:54.89 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

そうだ。

そうだよ。

思い出した。

忘れようだなんて、俺も馬鹿だな。




そう──
俺が姉さんを殺したんだった…。





59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:24:27.73 ID:u3Aj+Y9O0

……。
…………。
………………。

──三年前 夏

それはまだ、家族みんなが幸せで、
手を伸ばせばそこに誰かいる…
そんな温かい日常。

でも、それが当然だと思ってた。

何も変わらずに、数年後も、何十年後も続く…って信じてたんだ。

だからこそ、あの日の夕方。

俺は些細なことで姉さんと喧嘩して、
家のソファーでふて腐れていた。

どうせまたすぐに仲直りできるんだから、
自分が怒ってることだけは伝えておこうと思ったんだ。

ことの発端は、数週間前のこと。

成績が伸び悩んでる俺に、
姉さんがある提案をした。


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:25:24.12 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

姉「俺、もう少し頑張んないと駄目じゃん!
こんな成績だと私の学校に来れないよ。
最後の一年ぐらい一緒に登校しようって約束したのにさー」

俺「だ、だってさ……。数学は苦手なんだよ……。
あと受験は再来年だからまだ大丈夫じゃん……」

姉「うーーん。
どうすればやる気になってくれるのかなあ」

俺「え?」

姉「そうね。
じゃあ、こんどのテストで平均点を越えたら、
一緒にデートしてあげる。凄い譲歩だよぉー」

俺「……あ(///)」

姉「……ん?
お姉様とのデートだけだとご不満ですかい?
我侭小僧めぇ〜(ツンツン)」

俺「…………うぅ(別にそれだけで十分なんだけど///)」


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:25:56.74 ID:u3Aj+Y9O0

姉「よし!!じゃあ、お姉ちゃんフンパツしちゃうぞ!
俺が前から欲しがってたゲーム機だっけ??
あれ買って上げる!」

俺「!!!
…で、でもあれかなり高いぜ…。
姉さんの小遣いじゃ相当キツ──」

姉「いいのいいの。
どうせ他に使い道がないし、
だったら自分の好きなように使っちゃう」

姉「私が高校を卒業する最後の一年ぐらい、
前みたいに一緒に登校したいしね!
………一つ違いの妹がいつも羨ましいだよなあ」

俺「………何て言ったらいいか分かんないけど…
ありがと(///)」

姉「あっ照れてる!
もうそういうとこ、ほんと大好き♪(グリグリ)」

俺「……うぅ……」

姉「じゃあご褒美ゲットできるように頑張るんだぞー?
テスト返却後、クリアしてたらすぐ次の日に行こうね」

俺「あ!うん、俺マジ頑張るよ!」


64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:27:38.35 ID:u3Aj+Y9O0

姉「姉さん期待してるぞー?」

俺「了解しました!」

?「…おはよー……(ガチャ)……あれー??
……おにいちゃーんは…おねえちゃーーん…どこー。
…昼寝しちゃってる間にどっかいっちゃったのかなあ…」

姉「あ…我が家の眠り姫が起きなさったな。
さっきの話は私と俺との二人だけの秘密ね♪
妹に悪いけど、今回は俺を独占しちゃうもんねー」

俺「姉さん(///)」

?「みんなどこー…」

妹「(ガチャ)…あれ?二人ともお兄ちゃんの部屋にいたんだ?
で、何してたの?」

姉「べっつにーー。
ちょっと俺クンの成績が悪いから、
叱っておりました」

俺「あ、うん」


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:28:50.52 ID:u3Aj+Y9O0

俺「あ、うん」

妹「ふーん。そうなんだ。
お兄ちゃん勉強頑張ってね…
じゃ、邪魔者は失礼しまーす(ガチャ)」

俺・姉「ふーー」

……………。

そして、あの日の前日。

……………。

俺「(ガチャ)姉さん!やったよ!
平均点どころかほら!」

俺「(バサッ)ジャジャーーーーン!!
クラスで三ばーん!!イエイ!
俺でも本気出せば行けるんだぜ!」

姉「…あ。
す、すごいね。
やっぱ姉ちゃんの見込みは正しかったわけだ」

俺「だろ?!
俺も人間本気出せばやれるところまでいけるって、
初めて分かったよ!姉さんのおかげだ!」


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:30:42.36 ID:u3Aj+Y9O0

姉「そ、そんなことないよー。
俺の埋もれた才能が発揮されただけ!
私はちょっとそれにやる気というスパイスを加えただけよ」

俺「て、照れるぜ(///)
なんてほめ殺しだ……。
これからは姉さんのことを褒めキラーとお呼びします」

姉「ふふん、我が輩は褒めキラー(笑)だぞ。
ちょっとでも油断したら、褒め殺してやる!
うらうらうら(グリグリグリ)」

俺「ちょっ!(///)
姉さん、胸当たってる当たってる!」

姉「当ててやってるのだ!
祝福の時だと思いなされ!(グリグリ)」

俺「おぉ……(///)」

姉「で、でね。
明日のデートのことなんだけど姉ちゃん、よう──」


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:31:19.99 ID:u3Aj+Y9O0

俺「あ!そのことなんだけど、
ゲーム機はやっぱり高いし姉さんに悪いから…
デートだけで十分だよ!」

俺「明日楽しみにしてる!!」

姉「………俺……あ、あのね…」

俺「ん?どうしたの、そんな深刻そうな顔しちゃって…」

姉「そ、そのー。
引っ越す友達のお別れ会が明日、急遽被っちゃって…」

姉「ほんとにごめん!!
明日は姉ちゃん無理だけど、明後──」

俺「……なんだよそれ……」


68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:31:53.94 ID:u3Aj+Y9O0

俺「明日一緒に行くんじゃないの?
姉さんそっちの友達のほうが大事なわけ?」

姉「そ、そういうことじゃ、ないじゃない!
俺との出かける約束は私も凄く楽しみにしてたけど、
引っ越しちゃう友達は明日が最後だから」

俺「そんなの関係ない!
約束はこっちの方が先だったのに…」

俺「どうせ姉さんにとっては、
弟とのデートなんかどうでもいいだろ!」

姉「俺!!」

俺「もういいよ!
その友達によろしく伝えといて!
『弟よりあなたが大事なんです』って!」

姉「ちょっ待ちなさ──」

バンッ


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:32:36.82 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

本当今思うと、この時の自分のことを最低だなって。

姉さんの優しさに甘えきって、
少し想い通りにいかないだけでムクれて。

そうやって自分が怒っていることを
意図的にアピールしてたんだと思う。

妹の前で強がる俺も、
姉さんの前ではいつも子供だった。

だからあの日。


71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:33:13.03 ID:u3Aj+Y9O0

約束の日を反故にされたことに対して、
何もする事が無いのに…
リビングのソファーで姉さんの帰りを待ってたんだ。

抗議の意味も込めて。

いつもは、駅まで姉さんを迎えにいくのに。


そして──
歯車はこの辺りから、『確実に』狂い始めてたんだ。



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:33:51.13 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

──リビング  17:20

母「もういつまでも子供みたいにムクれてないで、
お姉ちゃん迎えに行って上げなさい。
駅であんたのこと待ってるかもよ」

俺「……いいよ別に」

母「はぁ……そんなこと言って……」

妹「お兄ちゃん……」

母「朝からずっとソファーで、だらーっ…と。
いい加減、少しはそこから動いたらどうなの。
正直、女々し過ぎて母さん情けないわよ」

俺「別にいいさ……どうせ女々しいよ」


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:34:58.83 ID:u3Aj+Y9O0

母「もう……」

妹「……うぅー……」

妹「……ん?……あっ、お兄ちゃん!
じゃあ私と、し、しりとりでもやろうよ!」

俺「…………」

妹「え、ええと、しりとりの『り』で……うんと…」

妹「り、『利口』」

俺「『ウルトラマン』」

妹「……うぅ……。
も、もう…終わっちゃったよ……」

母「はあ………」


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:35:50.62 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

──駅  18:20

姉「ああ……遅くなっちゃったな」

姉「俺待ってるかなあ……待ってないよなあ……」

(キョロキョロ)

姉「……………」

姉「…………やっぱりいない」

姉「少し待ってたら来てくれるかな」

姉「でも、かなり怒ってたしなあ……無理か……」

姉「……………」

姉「……………」

姉「…………あ、で、電話すれば………」

姉「………うぅ……」


75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:36:55.87 ID:u3Aj+Y9O0

姉「迎えにきてとか……気まずい上に恥ずかしすぎるよぉ……」

姉「………ちょっと想像…」

姉「『もしもし……あ、私だけど、俺に替わってくれる?』」

姉「『え?嫌がってる?…いいから無理矢理替わってお願い』」

姉「『あ、…わ、わたし……だけど』」

姉「『い、いや、そうじゃなくて、……迎えに……』」

姉「……………」

姉「ぜぇーーったい!無理!……。
キャラ違いすぎて、自分でも恐ろしいわ……」

姉「…………仕方ない、帰るか……」

姉「……………」

姉「……………」

姉「………もう二十分、待ってみよ……」


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:37:32.48 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

──リビング  19:00

母「………姉、遅いわねぇ……」

母「ほんと、俺、迎えにいかないの?」

俺「……………行かね」

妹「…………お兄ちゃん、私と行こうよ」

母「そうよ。二人で迎えにいって上げなさいな。
どうせ姉のことだからあんたが来るの待ってるんでしょ。
姉も本当は素直じゃないんだから……」

俺「……………」

母「………もう……またダンマリ…」

母「なんでウチの子はこんなに捻くれ者が多いのかしら…」


77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:38:05.22 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

──駅  19:20

姉「……………暑い」

姉「………結局、一時間も待ってしまった……」

姉「なんてことだ……」

姉「でも、もうすぐ来そうな気がするんだよなあ………」

姉「………………」

姉「…………まあ、帰るか…」

姉「(トコトコ)」

姉「あ!!良い事思いついた…!」

姉「ふふ……我ながら策士であるー」


78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:38:45.65 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

時間はそうやってどんどん過ぎていった。

転換期は何度もあった。

そしてその一つさえ選べば、
最悪な事態から逃れることが出来たんだ。

だけれども、変わることは無かった。

そう、今思うと分岐点は幾つもあったんだよ。
けど…それらの全ては、
俺しか変えることが出来ないものだった。


79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:39:18.47 ID:u3Aj+Y9O0

狂った運命。
狂った歯車。

それは確実に。
着実に。


………いつの間にか、
時計の針は、20:00ちょうどを指していた──



81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:40:04.99 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

──リビング  20:00

母「…連絡も無いと……ちょっと心配ね…」

妹「………何かあったのかな……」

俺「……………」

俺「……………」

俺「…………分かった」

母「え?」

妹「お、お兄ちゃん!」


82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:40:47.13 ID:u3Aj+Y9O0

俺「……迎えにいってくるよ」

母「そう!
なら、早くいってらっしゃい」

妹「あ、私も──」

俺「ううん。
ついでに仲直りしてくるから、一人でいいよ」

俺「俺、ちょっと大人げなかったわ、ごめん」

母「ん」

妹「なら、いいよ…、お兄ちゃんも気をつけてね!」

俺「おう。じゃあ、行ってきます」


83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:41:24.21 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

だけど、遅かったんだ。
すでに狂った歯車は、新たな軌跡を描き始めていた。

もう止める事は出来ない。

誰にでも。
俺にでも。

あと数時間早ければ。

あと数分早ければ。

あと、




……数秒早ければ







84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:42:37.28 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

俺「ん?」

俺「なんだろ……なんか音が聞こえたような……」

俺「……………」

俺「……気のせいか」

俺「…(トコトコ)」

俺「駅に着いたけど…いない…。
姉さん、どこ行ったんだろ……」

ざわざわ

俺「…………なんだ?」

ざわざわ

俺「向こうに人だかりが出来てる……」

ざわざわ


85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:43:22.99 ID:u3Aj+Y9O0

俺「……………」

俺「………おいおい……」

──……ドクッ

俺「待てよ……んな、いやいや……」

俺「ま、まさかねぇ……(トコトコ)」

ざわざわ

──少しずつ、喧騒が明らかになっていく

男「……な…か、ト………が突………だ………ぞ」
女「……ゲ……店………だ…て」

俺「…あ………」

トコトコ………タッタッタッタ……



──聞きたくない……聞きたくない……聞きたくない




86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:43:57.80 ID:u3Aj+Y9O0













男「女子高生が一人、トラックに巻き込まれたんだって…」















88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:44:39.65 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

……タッタッタッタ……タッタッ……タッ…………

俺「……………ぁ」

俺「うああ……」

俺「あああああ………」




俺「う、うあああああああああああ!!!」





90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:45:34.46 ID:u3Aj+Y9O0

……………。

飲酒運転のトラックが、
駅の近くの小さなゲーム店に突っ込んだらしいんだ。

そして偶然そこに立ち寄って、
会計を済ませて店から出ようとした女子高生がいたそうで…

バンッ

目撃者によると、一瞬だったそうな。



91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします フィクション 投稿日:2009/01/14(水) 18:46:15.38 ID:u3Aj+Y9O0

……………。


そう、

そうだよ。

俺が殺した。

あの優しくて、
温かくて、

家族のいつも中心にいて、
俺が唯一甘えられる存在で、

長い黒髪がとても綺麗な、あの女性を、姉を、

間違いなく、

三年前の、あの日…

俺が、殺したんだ──


………………。
…………。
……。


94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします フィクション 投稿日:2009/01/14(水) 18:49:47.68 ID:u3Aj+Y9O0

?「………た、…………ぃ」

?「…………い!」

………あれ?

?「俺、大丈夫か!」

友1「おーーーい!!!急にどうした!?」

友1の声が聞こえる。

……どうやらまた、
過去の記憶に酔っていたみたいだ。

俺「ああ……悪い……」

友1「一体、どうしちゃったんだよ…」

友1「妹さんが行っちゃったと思ったら…
急にお前がしゃがみ込んで」

友1「さっぱり分けが分からんぞ…」

俺「すまんな、心配させちまって……」

コイツには、自分の嫌な姿を見せてしまった。


96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:51:25.30 ID:u3Aj+Y9O0

しかし、ここ最近、周期は減ってきていたのだが…
懐かしい夢を見たせいだろうか…。

友1「……で、説明はしてくれないのか?」

俺「わ、悪い……」

話すことは出来ない。

友1「んま、無理には聞かねぇよ…。
ただ、いつでも相談してくれていいだぜ?」

友1「一人でふさぎ込んでも、いいことなんて何もないぞ。
……って、じっちゃが言ってた、ハハ」

俺「………ああ、分かった。
気を遣わせて本当に悪かった……」

友1「ん。しかしそんな様子じゃ、
今日は早めに帰った方がいいな」


98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:52:17.26 ID:u3Aj+Y9O0

正直、その気遣いはありがたかった。
今は立っているだけでもしんどい。

俺「……助かる」

そう言って俺は踵を返す。

後ろの方で、アイツが何か言っているのが聞こえた。
だが、それには軽く手を振るだけで、
俺はひっそりと家路についたのだった。

…………。
…………。

ガチャ

俺「ただいま……」

誰もいない我が家に着く。


100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 18:53:01.62 ID:u3Aj+Y9O0

姉さんが死んでからというもの、
負の連鎖が続くように家族は皆バラバラになっていった。

制服を脱がずに、そのまま小さな祭壇の前に座り込む。

俺「………姉さん」

聞こえているだろうか…?

俺は祭壇の中にある彼女の笑った写真に向かって、
心の中で語りかける。

あなたがいなくなって、家族はバラバラになってしまいました。
全ては俺の責任です。

まずは、母さんが心労で倒れ、
検査してみると、体の中に腫瘍が出来ていて、

入院生活を余儀なくされました。

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 19:00:56.08 ID:zP2GxrKW0

父さん。

父さんは母さんの入院のために莫大なお金が必要で、
海外への転勤を断ることが出来ず、
現在はブラジルで必死に働いています。

一人、また、一人といなくなって、
既にこの家は、俺と妹の二人だけ。

笑い声が絶えなかったあの家族が、あの家庭が、
いまはもう、見る影も無いんです。

姉さん。
俺はどうすればいいですか。

俺の罪はどうすれば償えますか。

………妹は、何時の日か、
俺とのコミュニケーションを拒絶するようになりました。

「…………………せめて」

せめて、今近くにいる唯一の家族、
妹とだけでも、仲良くして、この現実を乗り切りたいんです。


107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 19:02:46.78 ID:zP2GxrKW0

あと少しで、母さんの手術が始まります。
かなりの転移があり、手術の成功は限りなく低いそうです。

でも、それでも、
その少ない可能性に縋るしか……
もう大切な人を失いたくない、ただそれだけなんです。

母が何年か立って退院し、家に戻ってくる時、
父が転勤先から帰国し、家に戻ってくる時、

その時までには、妹と昔のような関係に戻れたら…。

姉さんがいた頃の、あの幸せな毎日は無理かもしれないけど、
時には笑い合い、互いに支え合う…
そんな家庭を、……もう一度……作りたいんです。


108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 19:03:19.89 ID:zP2GxrKW0

俺「……ね、姉さん……聞こえてますか?」

あなたにもう一度会えたら、あの日のことを謝りたい。
それで罪が消えるとは思っていません。
でも、それでも………


……………。

気が付くと、外から夕陽が差し込んでいた。
少し寝てしまったようだ。

俺「………飯の準備しないとな」

まずは顔を洗わないと駄目かもしれない…。


今のひどい顔は………妹には見せれない…。




109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 19:05:20.64 ID:zP2GxrKW0

……………。
……………。

俺「遅いな……」

着替えてすぐに飯を作り始め、
いつもより遅れながらも、もう、カレーが出来ていた。

ただ、作り終わったのが二時間前ぐらい…。

いつも、妹との二人だけの食卓。
会話がないものの、夕飯だけはきちんと一緒に取ってくれた。

しかし、今日は九時になっても帰ってこない。
一体どこで何をしているのだろうか?

色んな不安が過るものの…

俺「俺が口出すわけには……いかないか……」

先に飯を食べ始めてもいいのだが、
せめて夕飯だけは…という思いが強くて、
今もまだ妹の帰宅を待ち続けている。

連絡もなし。


111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 19:07:14.31 ID:zP2GxrKW0

男の影は今のところ見えないので安心してはいるが、
自分が知らないだけなのかもしれない。

思い出すのは……三年前の記憶。

俺「…………もしも、ってことは無いよな……」

一旦、心配になると、それは止められなくて。

俺「………やべぇ……嫌な予感がする……」

早る気持ちを抑えきれなくて。

俺「……と、とりあえず……外に出るか!」

勢い良く立ち上がり、
すぐさま、ダウンジャケットを取りにいく。

もしも、

もしも………

妹が事故にあったら………

俺「……!?……やべぇ、急がないと!!」


112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 19:07:57.31 ID:zP2GxrKW0

繰り返すことは避けないといけない。

あの日の、俺の罪は一生消えない。

しかし、
妹までもいなくなってしまったら、

もう俺の心は絶えられない!

……………。

駆け足で、玄関に向かう。
靴を急いで履き替えて──



113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 19:09:26.26 ID:zP2GxrKW0


──すると、

玄関の扉が、目の前でゆっくりと開く。

……………。

妹「……ただい…ま……?」

俺「………妹……!あ、良かったあ……」

バッ

思わず反射的に抱きしめてしまう。
瞬間、妹の懐かしい匂いがした。

本当ならすぐに離さないと駄目なのに…
俺の手は……

すぐに…動いてはくれなかった…。

妹「え?え??」

俺の唐突で、且つ、
不可解な行動に妹は戸惑っているようで。

でも──


115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 19:10:04.50 ID:zP2GxrKW0

俺「本当に、本当に良かったあ…
お前だけなんだから……マジで…心配かけんなよぉー…」

……今日は何故か、
涙腺が緩い一日なのかもしれない…。

……………。

そのあと、二人で遅めの飯を食べた。

何故、帰りが遅くなったのかは聞かない。
食卓もいつものように会話は皆無だった。

ただ、妹が帰ってきてくれた、
その事実だけで、自分はこれからもやっていける。

夕飯のカレーを食べ、
早々に自分の部屋に戻っていく妹の後ろ姿を見ながら、
ふとそんなことを思ったんだ。


116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  投稿日:2009/01/14(水) 19:10:53.82 ID:zP2GxrKW0

……………。
……………。

俺「でも……やっぱり今のままじゃ駄目だよな」

さっきまでは、あんなことを思っていながら、
今の現状は全く好ましくない。

夕飯後、
茶碗あらいをし、風呂に入って…
今は、自分の部屋にいる。

後は寝るだけなんだが……

俺「このままだとずるずる行っちゃうよなあ……」

妹が無事で帰ってきてくれたのは本当に良かったが、
結局は何も変わっていない…。

思い出してみる。

何時の日から、彼女は俺を避けるようになったのだろうか。

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします お猿「だからさ…早いんだよ君」 投稿日:2009/01/14(水) 19:20:54.71 ID:Lo6+aZr30

俺「………姉さんが死んじゃった時……か?」

確かに、それなら納得がいく。

しかし…

俺「………覚えてないんだよなあ…」

あの日のことは今でも鮮明に覚えているのだが、
その後、葬式はどうしたのか、などは全く覚えていない。

肝心なピースが抜けている…。

自暴自棄になって塞ぎ込んでしまった結果、
記憶が朧げなのだ。

となると……


122 名前:1 >>119了解 投稿日:2009/01/14(水) 19:22:11.62 ID:Lo6+aZr30

俺「やっぱり、『姉の死の原因』ってことか…」

辿り着いた結果は、一番キツかった。

……口喧嘩をして今の状況ならば…どんなに楽か。
互いにすれ違って今に至ったならば…どんなに楽か。

幾ら俺が頑張っても…

死んでしまった姉さんは絶対に生き返らない。

もし、妹が『姉を死なせてしまった』ことに対して…
俺を怨んでいるのなら。

結局はその事実を変えられない限り、
現状の打開は難しい。

俺「……打つ手無し………か」

考えれば考えるほど…
妹と仲良かった、あの頃は……


遠く、遠く──
遙か彼方に消えていく──


123 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:24:13.55 ID:Lo6+aZr30

……………。
……………。

コンコン

俺「妹……まだ起きてるか………」

コンコン

俺「………開けるぞ?……いいか?」

返事無し。

躊躇いながらも、妹の部屋のドアを開ける。

ガチャ……キー

俺「あ」

真っ暗な部屋の、
片隅にあるベットの中で、既に妹は眠っていた。

妹「…………………」

妹「…………すぅすぅ………」


124 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:25:01.07 ID:Lo6+aZr30

俺「…………」

彼女が起きないように、ゆっくりと近づいていく。

久しぶりに入った、妹の部屋。
昔の記憶とは、ほぼ様変わりしていた。

……。
…………。
………………。

父「今日から俺は一人部屋な」

俺「え!?」

母「そろそろあんたもお年頃だし、
姉と妹とは別部屋の方がいいわ」

俺「…………そ、そんな」

姉「んま、これは諦めな」

俺「ね、姉さ〜ん……」


125 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:25:40.78 ID:Lo6+aZr30

姉「甘えた声出してもダメー。
ベーっだ」

俺「おろおろ……マジカ」

妹「…………うぅ……」

妹「わ、わたし、お兄ちゃんと一緒の部屋がいい!!」

母「あらあら。
ほんと、この子はお兄ちゃん大好きっ子ね…。
困ったわ……」

父「ふむ……しかし、姉とは別々になっちゃうぞ?
いいのか妹?」

妹「……ふぇ?」

姉「しくしく。姉さん寂しいよぉー…」

妹「あわわ、ど、どうしよ…。
お姉ちゃんとも一緒がいいよぉ……うぅ…」

母「ふふ、優柔不断ねぇー。
ほら、俺。
あんたからなんか言う事無いの?」


127 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:27:10.57 ID:Lo6+aZr30

俺「お、れ?」

父「そうだぞ、男の見せ所じゃないか、ほれ」

俺「あ、うん」

俺「妹……俺、これからは一人の部屋でいいよ」

妹「わ、私……お兄ちゃんとも同じがいいもん!」

俺「んまあ、そう言わずさ…。
寝る時以外はいつでも来ていいんだから、
全然無問題じゃないかな?」

妹「……うぅ……で、でも……」

俺「そ、そうだ。
父さん、この部屋二人になるなら、
二段ベッド買ってあげてよ」

父「ん?
別に構わんが、この話に関係あるのか?」

俺「ほら!父さんいいってよ!
二段ベットで妹寝れるんだぞ!」

妹「二段ベッド……」


128 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:28:46.46 ID:Lo6+aZr30

俺「姉さんと妹が同じベットに寝るんだけど、
段になっていて、すごくカッコいいんだ!
友達の家で見たから間違いない」

姉「ふふ。じゃー、ね?
妹は二段ベットが来たらどっちがいい?」

妹「上……かな?」

姉「じゃあ、妹に上譲ってあげる。
ね?俺はいないけど、二人でも楽しいよ?」

妹「………(チラッ)」

俺「姉さんの言う通りだよ」

妹「う…じゃあ、私、我慢する……」

姉「楽しくやろうね〜♪(コチョコチョ)」

妹「うハっ!ハハハハ、お、お姉ちゃん、くすぐったい!」

父「よし、これで万々歳だな」

母「ふふ、ほんと…俺は妹がいると見違えるわね」

………………。
…………。
……。

130 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:32:04.40 ID:Lo6+aZr30

懐かしい記憶……。

しかし、
今妹が寝ているのはあの頃の二段ベットではなかった。

姉が死んでしまって……恐らく…

その時に思い出が強過ぎるから、
新しく買い替えたのかもしれない。

一人には……
二段ベットは辛過ぎるわな。

俺「………なあ、妹」

ベットの横に静かに座り、
そっと話しかける。

俺「………俺、お前と…昔みたいに仲良くしたい…な…」

妹「……………」

俺「……どうしちゃったんだろうなあ……」

俺「今日は、お前のことが心配で……
なんか感情の起伏が激しくなってるわ…」


131 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:32:52.06 ID:Lo6+aZr30

妹「…………すぅすぅ……」

俺「…………妹……」

安らかに眠っている、その綺麗な顔に…
そっと手を伸ばそうとして…

触れようとした瞬間──

俺「………ッ!?」

心に根付いている罪の意識が…
俺を寸前のところで食い留めた。

立ち上がる。

駄目だ。

今の状態だと、何をするか分からない。

137 名前:1 お猿「…忠告聞いてなかったの?」 投稿日:2009/01/14(水) 19:45:10.44 ID:RSDGq7Ja0

自分の罪を忘れて……
妹が寝ている間に、仲良くなった気になって……

彼女の、俺に対する、憎悪を…
正面から受け止めてこそ初めて……

ガチャン

扉が閉まる。

急ぎ過ぎては駄目だ。

物事には必ず順序がある。

それを、見失っては絶対いけないんだ。

俺「これが………罪……か」

……………。


138 名前: 投稿日:2009/01/14(水) 19:46:35.92 ID:RSDGq7Ja0

……………。

ガチャ

自分の部屋に戻り、すぐさま横になる。

いつもの、平凡な天井を見つめがら…
今日という一日が、何かの節目になる気がした。

俺「何か、変えなきゃいけない」

漠然と。
但し、心の中で強く決意して。

いつまでと変わらない日常、
会話のない兄妹、

いつかまた…
二人で笑え合える日を夢見て…

俺の意識は少しずつ……
……薄れていった。


142 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:48:33.08 ID:RSDGq7Ja0

……………。

妹「………………」

妹「………………」

妹「………………ふぅ」

妹「…………兄さん、わたし……」

妹「………………」

妹「…………うぅん…」

妹「………おやすみ…なさい…」



143 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:49:21.20 ID:RSDGq7Ja0

……。
…………。
………………。

夢の中で、
俺は一人の少女と出会っていた。

白いワンピースをただ羽織っただけの、
とても綺麗な女の子だった。

近づいて、
名前を聞こうかと思った矢先、

少女「あなたは……」

少女「あなたは……世界を恨んでますか?」

俺「え?」

唐突に聞かれた、その“異質”に思わず戸惑ってしまう。

何か、何か返答しないといけないのだが…。


144 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:50:08.34 ID:RSDGq7Ja0

少女「………答え辛いようですね」

少女「では言い方を変えます」

少女「大切な人を失わせた…この世界」

少女「あなたは…怨んでますか?」

はっきりと、
少女から発せられた言葉は俺の胸を確かに抉った。

この世界を怨んでるか…って?

あの大切な人を失わせた世界を怨んでるか……だって?

何だよ。

そんなこと、今更分かりきったことじゃないか。


145 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:50:51.10 ID:RSDGq7Ja0

俺「怨んではいない。
姉さんが死んだのは全て俺の、責任だから」

それが、罪だ。

俺「で、でも。
それでも今は、これ以上の悲劇は作りたくない」

俺「過去は、変えられない」

そう、死んだ人は蘇らない。

だから………

俺「ただがむしゃらに…今を頑張ろうって、
決めたんだ」

何だ俺、意外と良い事言えるじゃん。

少女「……………」


146 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:51:38.38 ID:RSDGq7Ja0

少女「………そうですか」

少女「でも、もし」

少女「あなたがあの日、
数秒でも早かったことで何か変わりますか?」

俺「ッ!?」

少女「結果は同じです。
あなたの姉は死んでしまいます」

数秒早ければ…
俺が数秒早く姉さんを見つけていれば…

いや、確かにそれは無理か…。

俺「で、でも!」

俺「数秒とは言わず、数分でも数時間でも早ければ──」

少女「……………」


147 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:52:25.17 ID:RSDGq7Ja0

少女「では、お姉さんの事故は防げたとしましょう」

少女「しかしお母さんの病気はどうするのですか」

俺「あ…」

盲点だった。

少女「あなたの母は体に大きな病気を抱えていました」

少女「皮肉にも、それが分かるのはあなたの姉の死によって」

少女「結局」

少女「あなたが望む、
みんなが笑ってる世界はどんな場合でも無いんです」

彼女は淡々と続ける。


148 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 19:53:09.12 ID:RSDGq7Ja0

少女「あなたは言いました」

少女「『これは……俺の責任だと』」

少女「あなたは思ってるのでしょう」

少女「『これが……俺の罪なのだと』」

俺「……………」

少女「現実を見て、あなたはまだそう思いますか」

少女「まだ『自分の責任だと』『自分の罪だと』」

少女「そうやって…」




少女「いつまであなたは、
自分のエゴティズムに酔いしれてるんですか?」

152 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:04:25.82 ID:+nLZsixj0

俺「………………」

あまりにも的確で、
あまりにも完全で、

俺はただ、口をつぐむしか術は無かった。

でも──
そこで、初めて少女は感情を表に出した。

少女「ごめんなさい。
別にこんなことを言いたかったわけじゃないんです」

その顔はひどく悲しそうで…

少女「脱線してしまいましたね…」

少女「今言ったことは、あまり気にしないで下さい」

それでも彼女の言った事を気にしないなんて…

出来るわけ、ないじゃないか……。

俺「分かりました…。気にしないことにします…」

ただ口では強がりながら、
言葉が敬語に変わっていることに自分でも驚いた。


153 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:05:42.29 ID:+nLZsixj0

少女「……………どうも」

少女「では、再度問います」

少女「あなたは」

少女「“この世界”を、怨んでますか?」

俺「………………」

どうなんだろうか…。

もしも彼女の言う通りだとして、
俺はこの世界を怨むのだろうか。

姉さんが死んだのが必然なのだとして…
母さんが病気になったのも必然なのだとしたら…

俺「……お、おれ……」

迷う必要がどこにある。

“この世界”が、幸せの日々を壊したのなら、

躊躇う必要などないではないか。


154 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:06:33.29 ID:+nLZsixj0

……………。

俺は言った。

俺「それでも…」

俺「それでも、俺は、“この世界”を怨むことは…出来ません」

少女「……………」

少女は静かに俺のことを見つめる。

何故かそれは…
俺の本当の真意を見透かそうとしているように感じられた。

だからこそ、
はっきりと、迷うことなく伝えるのだ。

俺「確かに……」


156 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:07:21.65 ID:+nLZsixj0

俺「…“この世界”は悲惨な事ばかりです…」

俺「時に負が負を呼び、さらにどん底に堕ちていく…」

俺「お世辞にも、理想の世界とは言い難い…」

少女「……………」

俺「でも、そんな世界でも怨むことは出来ないんです」

俺「昔の楽しかった、幸せだったあの頃の記憶」

目をつぶり、そこに広がるのは…家族の笑顔。

苦しいことを共に乗り越え、
時にはすれ違いながらもすぐに笑い合った。

過去は飽くまでも過ぎ去ったものにすぎないのかもしれない。

俺「今の現実を否定することは、
今の世界を否定することは──」

ただの揚げ足取りだと思われるかもしれない。


俺「結果的に、幸せだったあの過去を、
否定することになってしまうんです」



158 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:08:00.14 ID:+nLZsixj0

少女「……………」

だからこそ、俺は怨めない。

俺「今の現実が苦しくて、誰かの拒絶が本当に悲しくて…」

俺「だけども、あの頃の幸せが取り戻せるのだと信じて」

少女は俺を問う。

少女「お姉さんは生き返らないと分かっていても?」

俺「分かっていても」

少女「お母さんが病気で死んでしまっても?」

俺「例えそうだとしても」

少女「加えて、いつまでも妹に拒絶され続けても?」

俺「……………」

俺「…………また、その次の日に頑張ればいいさ」

明日が続く限り、
何度だって諦めない。


160 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:08:44.94 ID:+nLZsixj0

この少女は『姉の死』が俺の責任じゃないと言ったけど、
結果的に至らしめたのは俺だ。

いつも姉さんに甘えきって、
駄々をこねて、

それが直接的な原因とは言えないけど、
正しく、俺の罪なのだと思う。

……………。

少女はしばらく黙っていた。

俺の言葉の端々から、何かを読み取っているのだろう。
本当に正しいのかを。


162 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:10:04.99 ID:+nLZsixj0

俯いていた頭が、さっと持ち上がる。
俺の目をじっと見つめ…

少女「…………」

少女「いい目をしてますね」

そう言って、初めて笑った。

俺「あ……」

少女「で、あるのなら、最早私から言う事はありません」

少女「…では、足掻いてみてください、“この世界”で」

少女「例え、これからひどい困難が待ち受けていたとしても…
決して諦めないで下さい」

少女「時には逃げ出したくなるような現実がやってきても…
立ち向かって下さい」

少女「そして──」


164 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:11:20.46 ID:+nLZsixj0

少女「絶対に無理だと思っていることでも…
何か手があるはずと…
闇に向かって手を差し伸ばして下さい」

俺は今やっと気が付いた。

どうして、突然言葉遣いが敬語になってしまったのかを。

この少女。
体は本当に幼児ぐらいの大きさなのに、

こんなに安心させる包容力と、温かさを感じるのだ。

俺「……え?それは一体?」


167 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:12:22.53 ID:+nLZsixj0

少女「明日…
あなたは“この世界”の隙間を覗くことが出来ます」

少女「ただ、覗くも覗かないも…あなた次第」

少女「あとで見なければよかったと…
知らなければよかったと、思うかもしれません」

少女「もしかしたら、その転機を逃してしまうかもしれません」

少女「それでも……私はあなたを信じてます」

少女「抗えば……開けてくるはずですよ」

俺「……?」

何を言ってるんだろう……。
世界の隙間って?

少女「…………」

少女「最後に一つだけ」


169 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:13:45.70 ID:+nLZsixj0










少女「死んだ後の、魂って、どこに行くんだと思います?」










俺「………………………………え?」

176 名前:1 >>172悪い… 投稿日:2009/01/14(水) 20:24:05.07 ID:o1+8DNtx0

???


少女「あなたに幸あらんことを──」

少女が最後にそう告げると、
今いるこの空間が、自分たちが、一瞬で崩れ落ちていった。

まだ聞きたいことがあるのに!!
何だよ、世界の隙間って!!!

問いかけようと欲しても、
すでに口は無く。


ああ、

そういえば……


夢を見てたんだっけ…。


と、
意識は闇の中へ沈んでいった。

………………。
…………。
……。

177 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:25:15.55 ID:o1+8DNtx0

ピピピピピ

ん?

ピピピピピ

俺「…あ、……朝か……」

目覚まし時計で時刻を確認する。
五時半。

いつも通り………なんだが、

俺「なんだ……この脱力感は……」

何か大切な夢を見ていた気がする…。
寸前までは覚えていたと思ったんだが……。

俺「一体…なんなんだ??」

まあいいか……少し経てば思い出すだろう。

今日は休日。
久しぶりの休みを十二分に満喫しよう。


178 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:25:51.03 ID:o1+8DNtx0

俺「……妹にどんどんアプローチしてくぞ!」

……って。

俺「…あれ?」

昨夜までは、
心の中に深い靄がかかっていたというのに。

妹との接し方に悩んで、罪の意識を再確認したはず…。
それで、ひどく落ち込んでるうちに寝てしまった…。

それなのに。

俺「……気分最高…。今日は何でも出来る気がする…」

脱力感はあるものの、何故か清々しい一日だった。

俺「……まあ、いいか」

いつもの如く、飯の支度にとりかかった。


179 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:26:23.57 ID:o1+8DNtx0

……………。





【1st Day】





……………。


181 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:27:16.06 ID:o1+8DNtx0

俺「うし……」

朝食の用意をし終え、
テーブルに食器を並べているところ…

妹「……………」

俺「………あ」

いつもより早く、妹が降りてきた。

俺「お、おはよう」

昨日のことをまだ鮮明に覚えているせいか、
少々、どもってしまったのは致し方ない。

しかし──
今日はいつもと違ったんだ。

妹「………おはよ…(ボソッ)」

俺「………ふぇ?」

何年ぶりの挨拶だろうか。


183 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:28:25.29 ID:o1+8DNtx0

妹「……お…おはようぐらいは…
言わないと駄目…だなって…」

俺「…………あ、ああ」

ただ単に、朝の挨拶をされただけなのに…

……何でだろう。

胸に込み上げるものがあって、何も言えなかった。

妹「…………なに…?(///)」

俺「ええ……?」

俺「……あっ!ああ、お、おはよう!」

気を緩めれば、何か男泣きしちゃいそうで。
こんなことで一々泣いてたら、妹も困っちゃいそうで。

とりあえず慌てて返答をする。

すると──


184 名前:1 >>182お前ひでぇww 投稿日:2009/01/14(水) 20:29:19.36 ID:o1+8DNtx0

妹「さ……さっき聞いたから……別に二回言わなくても……」

小さい声だったけど、確かにそう聞こえた。

俺「そ、そうだよな!!兄ちゃん、駄目だな!
二回言ったら……
もう一回返事してもらえるとか思っちゃ駄目だよな!!」

ついつい本音が漏れちゃって、
言ってから後で後悔する……。

また、やっちゃったな、っと。


でも──
やっぱり今日は何かが違った。


妹「…………う…」


妹「……うぅ………おはよ……」


恥ずかしそうに、妹がそう言った。


185 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:30:07.50 ID:o1+8DNtx0

その瞬間…
何かがサーッと俺の胸を洗い流す。

あ、もうダメ……。

ダンッ

俺「…ち、ちょっ……と待ってろ…。
兄ちゃん、顔洗ってないの思い出したわ!」

急いで洗面所へ向かう。

見せられない。

こんな姿は見せられない。

たかが挨拶ぐらいで…
ただが会話が続いたぐらいで…

声を出して泣きそうだ、
なんて…そんな姿……妹には見せられないさ…。


186 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:30:43.02 ID:o1+8DNtx0

……………。

嬉しかった。

それは涙が出てしまうほど、嗚咽が漏れてしまうほど、
本当に嬉しかったんだ。

今日と昨日までの妹の心情に、
どんな変化があったのかは全く分からない。

ただ、ほんの少しだけ…
心を開いてくれたのは事実だと思う。

開きかかった心の扉。

今を逃したら、二度と開くことはないかもしれない。
閉じるときは一瞬だ。

何も出来ずに、
ただそれを見つめるだけで、
俺の願いは…即座に潰える。

だからこそ、この時を逃すわけにはいかない。

もう一度、二人が手を取る世界を見るために。

姉さん俺はやるよ。


187 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:31:17.82 ID:o1+8DNtx0

……………。

会話は無かったが、
少しだけいつもより温かい食卓だった。

互いに何故か気恥ずかしくて、
“無機質”だった妹の表情も…
少しだけ赤みを帯びていた気がする。

昨日に比べると、格段の進歩だ。

ダイエット云々は大丈夫なのだろうか…とも思ったが、
それは選択しなくて良かったみたい。

朝食を取り終え、妹は現在、自分の部屋にいる。
外出の予定はないみたいだ。

食器を洗いながら、
俺は今日という休日をどのように使うのか考えた。

190 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:39:07.61 ID:zWfKzR5C0

ジャー…シャカシャカ…

俺「……このチャンス……逃すわけにはいかないな…」

最早理由なんてどうでもいい。

だだそこに好機なるものが落ちていて、
俺はそれを逃すまいと必死になる。

ジャー……キュ……キュ………

蛇口をしめる。

俺「………久しぶりに…
…遊びでも誘ってみるかな?」

少し大胆な決断。
昨日までの俺なら、明らかに選ばない選択肢だ。

何たって今日は、何かが違うんだから。

もしかしたら……。
そんな期待を胸に、妹の部屋に向かった。


191 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:39:58.47 ID:zWfKzR5C0

……………。
……………。

俺「……ハアーーー」

俺「ふぅーー……」

部屋の前で、大きく深呼吸をする。

よし、いつでもOKだ…。

コンコン

俺「……お、おれだけど…入って良いか…」

妹「ひゃ?!」

素っ頓狂な声が中から聞こえる。

思えば、日中俺が妹の部屋を訪れることは殆ど無かった。
そう考えると…昔の俺は口だけで、完全に受け身だったんだな…
と気付かされる。

よし。今日ならやれる。

俺「いいか?」


193 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:40:44.21 ID:zWfKzR5C0

妹「……えぇ、と、は、はい」

たじたじに返事をする妹を想像すると、
昔と全然変わってないなって、少し嬉しくなった。

…昨日までなんで気付けなかったんだ…。

ん……止めよう。反省は後でも幾らでも出来る。

今はこの瞬間に賭けるだけ。

…ガチャ……キーー……

扉をゆっくりと開く。

夜に入った、真っ暗な闇じゃない、
とても明るい部屋が視界に入った。

それは今の俺の心情を表すかのように。


194 名前:1  投稿日:2009/01/14(水) 20:41:26.39 ID:zWfKzR5C0

俺「……ちょっと話があるんだけど、いいか?」

高鳴る鼓動。

妹「………あ、うん」

もう迷わない。

俺「……あのさ、今日──」

椅子に腰掛けた妹の、
少し恥ずかしそうに俯いている姿を見ただけで…

俺「一緒に……遊びにでもいかないか?」

断られるかもしれないって恐怖なんて、
どっかにいっちゃったんだ。



【5:30】妹「お兄ちゃん……」 中編へ続く

 
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